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特開2024-96689没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法、没食子酸を含有する水性濃縮物、ならびにこの水性濃縮物を含有する食品および栄養補助食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096689
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法、没食子酸を含有する水性濃縮物、ならびにこの水性濃縮物を含有する食品および栄養補助食品
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/42 20060101AFI20240709BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
C12P7/42
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033762
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021189562の分割
【原出願日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】20209040
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510221733
【氏名又は名称】レッド・ブル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RED BULL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ナハバガウアー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・イェニー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・リンダー
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ・ビンター
(57)【要約】      (修正有)
【課題】確実かつ高効率で良好な収量にて没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法を提供する。
【解決手段】タンニンを含有する植物または植物成分に対して、水または水性系を用い、酵素タンナーゼの存在下において、抽出処理を行なうことによって、没食子酸を含有する生成混合物を得る工程を含む、没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法と、タンニンを含有する植物または植物成分に対して、極性有機溶媒と水とを含有する混合物を用いて、抽出処理を行なうことによって、ポリフェノールを含有する生成混合物を得る工程と、植物または植物成分を生成混合物から分離することによって液体抽出物を得る工程と、液体抽出物から極性有機溶媒を除去する工程と、水性抽出物を酵素タンナーゼを用いて処理することによって没食子酸を含有する水性系を得る工程とを含む、没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法とを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法であって、
a)タンニン、特にタンニン酸を含有する、特に乾燥されたおよび/または、特におよび、細砕された、植物または植物成分を提供する工程と、
b)酵素タンナーゼを提供する工程と、
c)少なくとも1種の極性有機溶媒を提供する工程と、
d)任意に、前記工程a)に係る植物または植物成分をそれぞれ細砕するまたはさらに細砕する工程と、
e)前記工程a)および/またはd)に従って得られる、特に細砕された、植物または植物成分に対して、水または水性系を用い、前記酵素タンナーゼの存在下において、抽出処理を行なうことによって、没食子酸を含有する生成混合物を得る工程とを含む、方法。
【請求項2】
f)特に細砕された、前記植物もしくは植物成分を、前記工程e)に従って得られる生成混合物から、特に前記工程e)の後に、分離する工程、ならびに/または、特にならびに、
g)前記工程e)もしくはf)に従って得られる没食子酸を含有する生成混合物を、特に蒸発によって、特に前記工程e)もしくはf)の後および/もしくは前記工程h)の前に、濃縮する工程、ならびに/または、特にならびに、
h)前記工程e)もしくはf)に係る生成混合物を、前記少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールおよび/もしくはメタノールを用いて、処理する、および/または、特におよび、
前記工程e)もしくはf)もしくはg)に係る生成混合物を熱処理する工程、ならびに
i)任意に、前記工程h)に従って処理された生成混合物をろ過する工程、ならびに/または、特にならびに
j)任意に、前記工程h)に従って処理された生成混合物もしくは前記工程i)に従ってろ過された生成混合物から、前記工程h)において添加された極性有機溶媒を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程e)に係る抽出処理は、20~45℃の範囲の温度において行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程h)に係る、前記少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールを用いる、前記生成混合物の処理は、40~75℃の範囲の温度において行なわれることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程h)において、前記少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールは、極性有機溶媒および前記水または前記水性系の総重量にそれぞれ基づいて、15~70重量%の範囲、好ましくは20~65重量%の範囲、特に好ましくは40~60重量%の範囲の量にて添加されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法であって、
1)タンニン、特にタンニン酸を含有する、特に細砕されたおよび/または、特におよび、乾燥された植物または植物成分を提供する工程と、
2)酵素タンナーゼを提供する工程と、
3)少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールを提供する工程と、
4)任意に、前記工程1)に係る植物または植物成分を細砕するまたはさらに細砕する工程と、
5)前記工程1)および/または4)に係る、特に細砕された、植物または植物成分に対して、前記極性有機溶媒、特にエタノールと、水とを含有する混合物を用いて、抽出処
理を行なうことによって、ポリフェノールを含有する生成混合物を得る工程と、
6)特に細砕された、前記植物または植物成分を、前記工程5)に係る生成混合物から分離することによって、前記ポリフェノールを含有する液体抽出物を得る工程と、
7)前記工程6)に係る液体抽出物から、前記極性有機溶媒、特にエタノールを除去することによって、前記ポリフェノールを含有する水性抽出物を得る工程と、
8)前記工程7)に係る水性抽出物を前記酵素タンナーゼを用いて処理することによって、没食子酸を含有する水性系を得る工程とを含む、方法。
【請求項7】
特に粉砕された、好ましくは細砕された、前記植物または植物成分は、前記工程e)または前記工程5)のそれぞれにおいて固定される、特にシーブサポート中に固定されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程e)または前記工程5)のそれぞれに係る抽出処理はパーコレーションプロセスを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程e)または前記工程5)のそれぞれにおけるタンナーゼの量は、前記植物または植物成分の量に基づいて、0.1U/g~100.0U/gの範囲、好ましくは0.2U/g~50.0U/gの範囲であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程i)もしくはj)に従って、特に前記工程j)に従って得られる没食子酸を含有する水性抽出物、または前記工程8)に係る没食子酸を含有する水性系を、それぞれ、特に蒸発によって、濃縮することによって、水性濃縮物、特にスピッスム抽出物を得る工程をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性濃縮物は、1°~100°Brixの範囲、好ましくは10°~70°Brixの範囲、特に好ましくは20°~50°Brixの範囲のBrix値を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程5)に係る抽出処理は、50~70℃の範囲、特に55~65℃の範囲の温度において行なわれることを特徴とする、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
酵素タンナーゼを用いる、前記工程e)に係る抽出処理または前記工程8)に係る水性抽出物の処理は、35~40℃の範囲の温度であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程5)において、エタノールは、エタノールおよび前記水の総重量にそれぞれ基づいて、60~90重量%の範囲、好ましくは70~85重量%の範囲の量にて添加されることを特徴とする、請求項6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
乾燥重量が、水性濃縮物の総重量にそれぞれ基づいて、5~80重量%の範囲、好ましくは10~50重量%の範囲、特に好ましくは15~40重量%の範囲であることを特徴とする、特に先行する請求項のいずれか1項に係る方法に従って得られるまたは得ることができる、没食子酸を含有する水性濃縮物。
【請求項16】
pHが1.5~5.5の範囲、好ましくは1.75~4.5の範囲、特に好ましくは2.0~4.0の範囲であることを特徴とする、請求項15に記載の水性濃縮物。
【請求項17】
前記水性濃縮物の総重量にそれぞれ基づいて、没食子酸の量が少なくとも10g/乾燥重量kg、好ましくは少なくとも50g/乾燥重量kg、特に好ましくは少なくとも75
g/乾燥重量kgである、および/または没食子酸の量が10~250g/乾燥重量kgの範囲、好ましくは50~200g/乾燥重量kgの範囲、特に好ましくは75~175g/乾燥重量kgの範囲であることを特徴とする、請求項15または16に記載の水性濃縮物。
【請求項18】
§35 LMBG 36.0 3a(麦汁およびビールの相対密度d20/20の決定)に従う屈曲振動子法によって求められる相対密度[20/20]が、1,001~1,400の範囲、好ましくは1,0100~1,2500の範囲であることを特徴とする、請求項15~17のいずれか1項に記載の水性濃縮物。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか1項に記載の水性濃縮物を含有するまたはこれから作られる食品、特に飲料、または栄養補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載
本発明は、没食子酸を特に高濃度で含有する抽出物を調製するための方法に関する。また、本発明は、没食子酸を含有する水性濃縮物にも関する。さらに、本発明は、本発明に係る水性濃縮物を含有する食品および栄養補助食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)は、加水分解性タンニンであるガロタンニンの酸成分である。これは、たとえば、オーク(oak)の樹皮および没食子(oak apples)中に見いだされる。没食子酸は、酸化防止剤、日焼け止め剤、および色素を製造するために使用される。さらに、没食子酸は、血糖降下特性を有しているために、没食子酸に富む食物を摂取する肥満体の人々において、健康への有害な影響を防止するのを助けると仮定されている。没食子酸の摂取は、明らかなDNAの保護またはDNA塩基酸化の低減および炎症パラメータの低減に関連すると言われている(T. Setayesh et al. “Gallic acid, a common dietary phenolic protects against high fat diet induced DNA damage” in European Journal of Nutrition, vol. 58, pages 2315 to 26,
2019も参照)。
【0003】
EP1942919B1によれば、ブドウ(没食子酸を400~1,500ppm含み得る)からのポリフェノール抽出物を含有する組成物は、メタボリックシンドロームまたは高血圧前症の治療に好適であると言われている。
【0004】
EP2095718B1によれば、茶抽出物(没食子酸と非重合体カテキンとの重量比が0.3を上回ってはならない)に基づく茶飲料は、苦さが低減され、かつ酸味も低減されていることを特徴とする。
【0005】
EP2143344B1は、0.5~25.0重量%の非重合体カテキン、炭水化物、およびヒドロキシカルボン酸を含有する飲料組成物を記載する。こうした組成物においては、没食子酸の含有量は0.6重量%未満でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許EP1942919B1号
【特許文献2】欧州特許EP2095718B1号
【特許文献3】欧州特許EP2143344B1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Setayesh et al. “Gallic acid, a common dietary phenolic protects against high fat diet induced DNA damage” in European Journal of Nutrition, vol. 58, pages 2315 to 26, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、没食子酸は、多くの場合、水性抽出法を用いることによって得られる。しかしながら、こうした方法は、しばしば、没食子酸の収量が低く、原料、機器、およびコストの観点において厳しい。
【0009】
よって、本発明の目的は、先行技術の欠点を有さず、特に、確実かつ高効率で良好な収量にて没食子酸を生成できるような、没食子酸を得るための方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって、没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法であって、
a)タンニン、特にタンニン酸を含有する、特に細砕されたおよび/または、特におよび、乾燥された、植物または植物成分を提供する工程と、
b)酵素タンナーゼ(IUB 3.1.1.20)を提供する工程と、
c)少なくとも1種の極性有機溶媒を提供する工程と、
d)任意に、工程a)に係る植物または植物成分をそれぞれ細砕するまたはさらに細砕する工程と、
e)工程a)および/または、特にまたは、d)に従って得られる、特に細砕された、植物または植物成分に対して、水または水性系を用い、酵素タンナーゼ(IUB 3.1.1.20)の存在下において、抽出処理を行なうことによって、没食子酸を含有する生成混合物を得る工程とを含む方法(本発明に係る方法の第1の実施形態とも称される)が、見いだされた。
【0011】
この、特に細砕されたおよび/または乾燥された、植物または植物成分について、以下のものが使用され得る:たとえばマメおよびエンドウマメなどのマメ科植物の葉、木部、樹皮、果実、種子、および/または地下部、好ましくは果実;たとえばクルミ(Juglans regia)などの堅果;穀類;樹木、たとえば、オーク(Quercus)、好ましくはその殻斗および/または果実(Valonea)、特に好ましくは小アジアおよび/または南部バルカンに生育する多種多様なオークからのもの、および/または没食子(oak galls)(Galla)、特にQuercus infectoria、Quercus petraea、またはQuercus roburからのもの、トウヒ(spruces)(Picea)、カロブ樹(carob tree)(St John’s breadとも称される)(Ceratonia siliqua)、ジビジビの木(Divi-Divi-tree)(Caesalpinia coriaria)、カキノキ(kaki tree)(Diospyros kaki)、オウシュウナナカマドの木(sorb tree)(Sorbus domestica)、アカシア(Acacieae)、たとえば、アセンヤクノキ(cutchtree)(catechuとも称される)(Senegalia catechu)、ヤナギ(willow)(Salix)、ミロバランの木(Myrobalan tree)、マングローブの木(mangrove tree)(Rhizophora)、マンゴーの木(mango tree)(Mangifera indica)、特にマンゴーの木の樹皮、果肉、および/または仁、ツガ(hemlock)(Tsuga)、ウルンダイの木(urunday tree)(Astronium balansae)、カバノキ(birch)(Betula)、ホルトノキ属(Elaeocarpus)、特にその外樹皮、ニワウルシ(tree of heaven)(Ailanthus altissima)、クリ(chestnut)(Castanea)、特にクリの果実および葉、ビンロウジュ(betel nut palm)(Areca catechu)、カシューの木(cashew tree)(Anacardium occidentale)、および/またはケブラコ(quebracho)(Aspidosperma quebracho-blanco);ミモザ(Mimosa);スマック(sumac)植物(Rhus)、特にシシリアンスマック(Sicilian sumac)(Rhus coriaria)、特にその果実;ホップ(hops)(Humlulus);果実、たとえば、リンゴ(Malus)、西洋ナシ(Pryus)、イチゴ(Fragaria)、ラズベリー(Rubus idaeus)、ブラックベリー(Rubus sect.R
ubus)、クランベリー(Vaccinium vitis-idaea)、バナナ(Musa)、ブドウ(Vitis vinifera)、モモ(Prunus persica)、マルメロ(Cydonia oblonga)、および/またはスモモ(Prunus domestica);コーヒー豆(たとえば、たとえば、Coffea arabicaまたはCoffea canephor);緑茶(たとえば、日本、中国、および/またはインドの茶)などの茶の木(tea plants)(Camellia
sinensis)、特に煎茶緑茶、紅茶の葉、特にダージリン、白茶の葉、特に中国ウーロン白茶の葉、および/またはルイボス(Aspalathus linearis);クローブ(cloves)(Syzygium aromaticum)、好ましくはその芽および/または葉、ノコギリソウ(yarrow)(Achillea millefolium);ブラックコホシュ(black cohosh)(Actaea racemosa);ベアベリー(bearberry)(Arctostaphylos uva-ursi);タラゴン(tarragon)(Artemisia dracunculus)、タチキジムシロ(tormentil)(Potentilla erecta);および/またはピート(peat)。さらに、この、特に細砕されたおよび/または乾燥された、植物または植物成分について、以下のものが使用され得る:チェブリックミロバラン(chebulic myrobalan)、マンゴーの木(Mangifera indica)、特にその樹皮、果肉、および仁、ホルトノキ属(Elaecoarpus ganitrus)、特にその外樹皮、モロヘイヤ(jute mallow)(Corchorus olitorius)、レッドアマランス(red
amaranth)(Amaranthus cruentus)、ササゲ(cowpea)(Vigna unguiculata)、フダンソウ(chard)(Beta
vulgaris var.cicla.)、グリークマウンテンティー(Greek
mountain tea)(Sideritis raseri)、アメリカマンサク(American witch-hazel)(Hamamelis virginiana)、特にその樹皮、アレッポオーク(Aleppo oak)、ダイヤーズオーク(dyer’s oak)(Quercus infectoria)、スグリ(currants)(Vitis vinifera apyrena)、チコリーコーヒー(chicory coffee)(Cichorium intybus)、カロブ粉末(carob powder)(Ceratonia siliqua)、グリーンオート(green oat)(Avena sativa L.)、ニレ(elm)の樹皮(Ulmus)、チョークベリーポマース(chokeberry pomace)(Aronia melanocarpa)、シナノキ(linden)の樹皮(Tilia)、ニワトコ(elder)の樹皮(Sambucus nigra)、ラパチョ(lapacho)の樹皮(Tabebuia impetiginosa)、チコリー(chicory)(Cichorium intybus)、アムラ(amla)(Phyllanthus emblica)、チャイニーズブラックベリー(Chinese blackberry)(Rubus suavissimus)、ザクロ(pomegranate)(Punica granatum L.)、セージ(sage)(Salvia)、オレガノ(oregano)(Origanum vulgare)、クラウドベリー(cloudberry)(Rubus chamaemorus)、およびデーツ(date palms)(Phoenix)。ノコギリソウ(Achillea
millefolium)、ブラックコホシュ(Actaea racemosa)、ベアベリー(Arctostaphylos uva-ursi)、タラゴン(Artemisia dracunculus)、およびタチキジムシロ(Potentilla
erecta)からは、好ましくは植物全体が抽出に使用される。ビンロウジュ(Areca catechu)およびカシューの木(Anacardium occidentale)の場合には、好ましくは種子が抽出に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい一実施形態において、本発明に係る第1の実施形態に係る方法は、さらに、(工程f))特に細砕された、植物または植物成分を、工程e)に従って得られる生成混合物から、特に工程e)の後に、好ましくはふるいを用いて、分離する工程を含む。
【0013】
追加的にまたは代替的には、本発明に係る第1の実施形態に係る方法は、さらに、(工程g))工程e)またはf)に従って得られる没食子酸を含有する生成混合物を、特に蒸発によって、特に工程e)もしくはf)の後および/または工程h)の前に、濃縮する工程を含み得る。
【0014】
また、本発明に係る第1の実施形態に係る方法は、さらに追加的にまたは代替的に、(工程h))工程e)もしくはf)に係る生成混合物を、少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールおよび/もしくはメタノールを用いて、処理する、ならびに/または、工程e)もしくは工程f)もしくはg)に係る生成混合物を熱処理する工程を含み得る。極性有機溶媒、特にエタノールを用いた処理、または、特におよび、さらなる熱処理は、酵素タンナーゼを確実に不活性化させることができる。特に、これは、生成混合物を、工程h)において、少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールを用いて、40~80℃または45超~80℃、好ましくは40~75℃または48~75℃、特に好ましくは50~70℃の範囲の温度において処理することによっても達成される。方法工程h)をさらに最適化するために、この工程において、追加的にまたは代替的に、特に追加的に、少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールが、極性有機溶媒および水または水性系の総重量にそれぞれ基づいて、15~70重量%の範囲、好ましくは20~65重量%の範囲、特に好ましくは25~60の範囲、特に40~60重量%の範囲の量にて添加されてよい。工程h)、特に極性溶媒、特にエタノールを用いた処理は、酵素の不活性化と、植物性タンパク質(phytoproteins)および/または多糖の変性および沈殿との両方を確実に行なうことができる。
【0015】
好都合な一実施形態において、工程f)およびg)は連続して生じる。また、工程f)およびh)を結合して工程g)を省略してもよい、または、工程g)およびh)を結合して工程f)を省略してもよい。特に好ましい一実施形態において、方法工程e)の後に方法工程f)、g)、およびh)が行われ、f)/g)/h)の順序が好ましい。
【0016】
本発明に係る第1の実施形態に係る方法の好ましい一実施形態において、工程h)に従って処理された生成混合物が、たとえばメッシュサイズが0.10~1.0μmの範囲、好ましくは0.25~1.0μmの範囲であるフィルタを使用して、ろ過される。このようにして、一般的に、透明な抽出物が得られる。
【0017】
多くの場合には、続いて、工程h)に従って処理された生成混合物から、または工程i)に従ってろ過された生成混合物から、工程h)において添加された極性有機溶媒を除去すること(工程j)も好都合であることもわかった。
【0018】
工程e)に係る抽出処理は、好ましくは、20~45℃または30~43℃の範囲の温度において行なわれ、35~40℃の範囲、特に36~38℃の範囲の温度が特に好ましい。
【0019】
本発明の目的は、さらに、没食子酸を含有する抽出物を調製するための方法であって、
1)タンニン、特にタンニン酸を含有する、特に細砕されたおよび/または、特におよび、乾燥された、植物または植物成分を提供する工程と、
2)酵素タンナーゼ(IUB 3.1.1.20)を提供する工程と、
3)少なくとも1種の極性有機溶媒、特にエタノールを提供する工程と、
4)任意に、工程1)に係る植物または植物成分を細砕するまたはさらに細砕する工程
と、
5)工程1)および/または、特にまたは、4)に係る、特に乾燥されたおよび/または細砕された、植物または植物成分に対して、極性有機溶媒、特にエタノールと、水とを含有する混合物を用いて、抽出処理を行なうことによって、ポリフェノールを含有する生成混合物を得る工程と、
6)特に細砕された、植物または植物成分を、工程5)に係る生成混合物から、特にふるいを用いて、分離することによって、ポリフェノールを含有する液体抽出物を得る工程と、
7)工程6)に係る液体抽出物から、極性有機溶媒、特にエタノールを除去することによって、ポリフェノールを含有する水性抽出物を得る工程と、
8)工程7)に係る水性抽出物を酵素タンナーゼ(IUB 3.1.1.20)を用いて処理することによって、没食子酸を含有する水性系を得る工程とを含む方法(本発明に係る方法の第2の実施形態とも称される)によって達成される。
【0020】
また、本発明の目的は、工程5)に係る抽出処理を50~70℃の範囲、特に55~65℃の範囲の温度において行なうことによる、第2の実施形態に係る方法によって、特に良好に達成される。
【0021】
また、好ましい一実施形態において、本発明に係る方法の第2の実施形態変形体は、工程5)において、エタノールが、エタノールおよび水の総重量にそれぞれ基づいて、60~90重量%の範囲、好ましくは70~85重量%の範囲の量にて添加されることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る方法の第2の実施形態において、工程8)に係る酵素タンナーゼを用いる水性抽出物の処理は、好ましくは20~45℃の範囲、好ましくは30~43℃、特に好ましくは35~40℃、特に36~38℃の範囲の温度において行なわれる。
【0023】
驚くべきことに、特に粉砕された、好ましくは細砕された、植物または植物成分が、第1の実施形態に係る工程e)または第2の実施形態に係る工程5)のそれぞれにおいて固定されること、特にシーブサポート(sieve support)中に固定されることによっても、特に効率の良い方法が達成されるということが示された。
【0024】
第1の実施形態における工程e)または第2の実施形態における工程5)に係る抽出処理は、好ましくは、パーコレーションプロセスを含む、またはパーコレーションプロセスである。
【0025】
また、第1の実施形態に係る工程e)または第2の実施形態に係る工程5)において、タンナーゼの量を、植物または植物成分の量に基づいて、0.1U/g~100.0U/gの範囲、好ましくは0.2U/g~50.0U/gの範囲に調整することによる本発明に係る方法を用いて、特に高い没食子酸収量または濃度を達成できる。
【0026】
また、第1の実施形態に係る工程i)もしくはj)に従って得られる没食子酸を含有する水性抽出物または第2の実施形態に係る工程8)に係る没食子酸を含有する水性系を、特に蒸発によって、濃縮することにより、水性濃縮物を得ることが、特に実用的であることがわかった。この水性濃縮物は、好ましくは、いわゆるスピッスム(spissum)抽出物である。この水性濃縮物またはこのスピッスム抽出物は、特に、1°~100°Brixの範囲、好ましくは10°~70°Brixの範囲、特に好ましくは20°~50°Brixの範囲のBrix値を有する。非常に特に好ましくは、20°~40°Brixの範囲、特に25°~35°Brixの範囲のBrix値を有する濃縮物が、濃縮工程において、目的とされるまたは得られる。Brixの程度の決定法は、当業者によく知ら
れている。液体は、その液体が、サッカロース/水の溶液100g中にサッカロース1gを含む溶液と同じ密度である場合に、Brix値1°を有し、その液体の密度がサッカロース/水の溶液100g中にサッカロース10gを含む溶液のものと同じである場合にBrix値10°を有する。よって、Brixの程度として示される数値は、測定対象である液体の密度が、上記程度を示す数値と同じグラム数のサッカロースを溶液100gあたりに含有するサッカロース水溶液の密度に対応するということを意味する。
【0027】
本発明の目的は、さらに、特に第1の実施形態に従って得られる、没食子酸を含有する水性濃縮物であって、当該水性濃縮物について使用される乾燥重量が、水性濃縮物の総重量にそれぞれ基づいて、5~80重量%の範囲、好ましくは10~50重量%の範囲、特に好ましくは15~40重量%の範囲であるものによっても達成される。この水性濃縮物は、特に飲料の形態の、食品および栄養補助食品を製造するために、特に好適である。
【0028】
本発明での意味における乾燥重量は、本発明に係る方法に従って得ることができる抽出物からすべての水性溶媒および非水性溶媒を除去することによって得られる乾燥重量であることが理解される。
【0029】
特に、本発明に係る第1の実施形態に係る方法または本発明に係る第2の実施形態に係る方法のいずれかに従って得られる水性濃縮物が好ましく、本発明に係る第1の実施形態に係る方法に従って得ることのできる水性濃縮物が特に好ましい。
【0030】
特に、本発明に係る、特に第1の実施形態に従って得られる水性濃縮物は、1.5~5.5の範囲、好ましくは1.75~4.5の範囲、特に好ましくは2.0~4.0の範囲のpHを有する、または、1.5~5.5の範囲、好ましくは1.75~4.5の範囲、特に好ましくは2.0~4.0の範囲のpHに調節される。
【0031】
特に第1の実施形態に従って得られる、本発明に係る好ましい水性濃縮物において、没食子酸の量は、少なくとも10g/乾燥重量kg、好ましくは少なくとも50g/乾燥重量kg、特に好ましくは少なくとも75g/乾燥重量kgである。没食子酸が、水性濃縮物の総重量にそれぞれ基づいて、10~250g/乾燥重量kgの範囲、好ましくは50~200g/乾燥重量kgの範囲、特に好ましくは75~175g/乾燥重量kgの範囲の量であるような水性濃縮物が、特に好都合である。
【0032】
特に第1の実施形態に従って得られる、本発明に係る好適な水性濃縮物は、1.001~1.4000の範囲、好ましくは1.010~1.2500の範囲の相対密度[20/20]を有することが好ましい。相対密度[20/20]は、試験される試料の密度(20℃において測定)と20℃における水の密度との商である。測定は、特に、§35 LMBG 36.0 3a(出願日の時点で適用されるバージョンの、ドイツの食品および日用品の法律(German Foodstuffs and Commodities Act))(麦汁およびビールの相対
密度d20/20の決定(屈曲振動子法))に従う屈曲振動子を用いることによって実施される。特に好適な水性濃縮物は、総フェノール含有量が、抽出物の乾燥重量にそれぞれ基づいて、5~350g GAE/kgの範囲、好ましくは50~300g GAE/kgの範囲、特に好ましくは75~250g GAE/kgの範囲、特に125~200g
GAE/kgの範囲であることを特徴とする。
【0033】
総フェノール含有量は、DIN ISO 14502-1:2007-11(緑茶および紅茶に特徴的な物質の決定、第1部:茶における総ポリフェノール含有量、フォリン-チオカルトー試薬を使用する比色法(Determination of substances characteristic of green and black tea - Part 1: Content of total polyphenols in tea - Colorimetric
method using Folin-Ciocalteu reagent))に従う方法によって求めることができる。
【0034】
さらに、本発明の目的は、本発明に係る水性濃縮物を含有するまたはこれから形成される食品、たとえば飲料、および栄養補助食品によって達成される。
【0035】
本発明は、本発明に係る抽出方法が、第1の実施形態に従っておよび第2の実施形態変形体に従って、ただし特には第1の実施形態に従って、使用される場合に、多種多様の植物原料またはそれらの成分から、高効率かつ安価に、高い没食子酸収量を得ることができる、すなわち非常に高い没食子酸濃度を有する水性濃縮物を得ることができる、という驚くべき知見を伴うものである。驚くべきことに、特に、本発明に係る水性濃縮物が、抽出物の乾燥重量にそれぞれ基づいて、500~6,000μmol/gの範囲、好ましくは1,000~5,000μmol/gの範囲、特に好ましくは2,000~4,000μmol/gという、トロロックス(Trolox)と同等の抗酸化能力を有することが見いだされた。トロロックスと同等の抗酸化能力は、便宜的に、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)アッセイによって求めることができる。この決定方法は当業者によく知られており、たとえば、O. SharmaおよびT. N. Bhatによって“DPPH antioxidant assay revisited”, Food Chemistry 113(4):1202-1205, April 2009中に、および、A. Kariotiらによって“Composition and antioxidant activity of the essential oils of Xylopia aethiopica (Dun) A. Rich. (Annonaceae) leaves, stem bark, root bark, and fresh and dried fruits, growing in Ghana”, J. Agric. Food Chem. 29;52(26):8094-8, December 2004中に、記載されている。たとえば、この方法において、10
mgの安定なラジカルDPPHをメタノール100ml中に溶解し、特定の試料抽出物または標準(トロロックス)と混合し、次いで室温で30分間インキュベートし、続いて測光法によって517nmにおける吸光度を求めることができる。次いで、吸光度と標準濃度との間の直線的な関係性から、試料の抗酸化能力を求めることができる。結果は、トロロックス当量またはトロロックスのマイクロモル/試料gとして、および乾燥重量との関連において、計算できる。記載される方法によって吸光度の差が求められ、これから、異なる濃度におけるトロロックスにより引き起こされる吸光度の低下と比較することによって、試験物質の抗酸化能力を求めることができる。
【0036】
本発明に係る水性濃縮物は、食品、特に飲料、および栄養補助食品を製造するために、直接使用することができる。
【0037】
上記記載および請求項において開示される本発明の特徴は、本発明の様々な実施形態を実施するために個別にまたは任意の望ましい組み合わせで必須であり得る。
【外国語明細書】