(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096696
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】エレクトロルミネッセントデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20240709BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240709BHJP
C07D 215/04 20060101ALI20240709BHJP
C07D 221/08 20060101ALI20240709BHJP
C07D 221/06 20060101ALI20240709BHJP
C07D 221/18 20060101ALI20240709BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20240709BHJP
C07D 471/14 20060101ALI20240709BHJP
C07D 471/22 20060101ALI20240709BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20240709BHJP
C07D 311/82 20060101ALI20240709BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240709BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20240709BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/60
C07D215/04
C07D221/08
C07D221/06
C07D221/18
C07D471/04 112
C07D471/14 101
C07D471/22
C07D307/91
C07D311/82
C09K11/06 610
C09K11/06 690
H10K101:40
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024040060
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2021514061の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】18194122.0
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】イロナ・ステンゲル
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・モルヘア
(72)【発明者】
【氏名】ファルク・マイ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ラックナー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・プフルム
(72)【発明者】
【氏名】アメル・メキック
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ハーゼ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な効率、寿命、さらには低電圧を有するデバイスを提供する。
【解決手段】増感剤と蛍光発光体とを含む蛍光電子デバイスであって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、好ましくは0.45以上、非常に好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物であり、前記増感剤と前記蛍光発光体の両方が、同じ層にあり、前記蛍光発光体が、特定の化合物から選択されることを特徴とする、蛍光電子デバイス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感剤と蛍光発光体とを含む蛍光電子デバイスであって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、好ましくは0.45以上、非常に好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物である、蛍光電子デバイス。
【請求項2】
下記の2つの条件(I)または(II)のうちの少なくとも一方が満たされなければならず、条件(I)が満たされるならば好ましく:
【数1】
(式中、使用したパラメーターは、下記の通りである:
X、Yは、それぞれ-0.5eVであり、
S
1
K(FE)は、前記蛍光発光体の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記蛍光発光体の第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
K(S)は、前記増感剤の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記増感剤の第1の励起状態のエネルギーであり;
S
1
max(FE)は、前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記蛍光発光体の前記第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
max(S)は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記増感剤の前記第1の励起状態のエネルギーである);
前記増感剤と前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルが、100mlのトルエン中1mgの濃度の溶液から室温で判定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
XおよびYが、-0.4eV、好ましくは-0.3eV、非常に好ましくは-0.2eV、さらにより好ましくは-0.1eV、とりわけ好ましくは0.0eV、最も好ましくは0.1eVであることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
条件(I)と(II)の両方が満たされることを特徴とする、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
励起エネルギーが前記増感剤から前記蛍光発光体に伝達され、前記蛍光発光体が前記増感剤により吸収される励起エネルギーを蛍光発光により放出することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記増感剤のフォトルミネッセンス発光スペクトルが、前記蛍光発光体の吸収スペクトルと重なることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの金属-配位子電荷移動(MLCT)帯域が、前記蛍光発光体の前記吸収スペクトルと重なることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域の大きさと前記蛍光発光体の吸収極大が、下記の条件(III):
【数2】
(式中、Vは、0.5eVであり、Vは、好ましくは0.4eVであり、Vは、非常に好ましくは0.3eVであり、Vは、とりわけ好ましくは0.2eVであり、Vは、最も好ましくは0.15eVであり;
【数3】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの前記三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおける前記エッジから見出され、
【数4】
は、前記蛍光発光体の長波長での前記第1の極大のピーク吸収波長である)
を満たし、前記値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
下記の条件(IV):
【数5】
(式中、Wは、0.5eVであり、Wは、好ましくは0.4eV以下であり、Wは、非常に好ましくは0.3eVであり、Wは、とりわけ好ましくは0.2eVであり;
【数6】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの前記三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおける前記エッジから見出され、
【数7】
は、前記蛍光発光体の長波長での前記第1の最大値のピーク吸収波長である)
が満たされ、前記値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記増感剤が、有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記増感剤が、Cu、Ir、Pt、Rh、Ru、OsまたはPd、好ましくはIrおよびPtを含有する前記有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記蛍光発光体が、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記蛍光発光体が、6~60個の芳香族環原子を有する縮合芳香族化合物の群から選択される、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、請求項1~12の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記蛍光発光体が、ピレン、ペリレン、ルブレン、アントラセン、フルオレンおよびインデノフルオレンの群から選択される、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記蛍光発光体が、置換されている形態の芳香族基を有する、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、請求項1~14の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記増感剤と前記蛍光発光体の両方が、同じ層にあることを特徴とする、請求項1~15の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記増感剤と前記蛍光発光体が、発光層にあることを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、電子輸送材料、正孔伝導材料、量子材料(好ましくは量子ドット)、双極性ホスト、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体、遅延蛍光を有する材料の群から選択されるさらなる材料を含有することを特徴とする、請求項1~17の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、いかなるさらなる材料も含有しないことを特徴とする、請求項1~18の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記増感剤と前記蛍光発光体が、互いに隣接する異なる層にあることを特徴とする、請求項1~15の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記デバイスが、層配列[SL/FEL]n-SL(式中、nは、1~5の整数であり、SLは、前記増感剤を含有する層であり、FELは、前記蛍光発光体を含有する層であって、異なるSL層中の前記増感剤が互いに異なるものでもよく、異なるFEL層中の前記蛍光発光体が互いに異なるものでもよい)を有する領域を含有することを特徴とする、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
少なくとも1種の増感剤と少なくとも1種の蛍光発光体とを含む組成物であって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、0.45以上、好ましくは0.5以上、非常に好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物である、組成物。
【請求項23】
前記組成物が、電子輸送材料、電子注入材料、電子阻止材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔阻止材料、n-ドーパント、p-ドーパント、量子材料(好ましくは量子ドット)、ホストまたはマトリックス材料、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体または遅延蛍光を有する発光体の群から選択される少なくとも1種のさらなる材料を含むことを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項22または23に記載の組成物と、少なくとも1種の溶媒とを含む、調合物。
【請求項25】
請求項22または23に記載の少なくとも1種の組成物を含む、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセントデバイス、および様々な有機機能材料を含む組成物に関する。
【0002】
有機半導体が機能材料として使用されている有機エレクトロルミネッセントデバイス、とりわけOLED(有機発光ダイオード)の構造が、たとえば、US4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。使用される発光材料は多くの場合、リン光を呈する有機金属錯体、および蛍光発光体である。量子力学的理由から、有機金属化合物をリン光発光体として使用すると、最大4倍のエネルギー効率および電力効率が可能である。一般論として、OLED、とりわけリン光を呈するOLEDにおいても、たとえば効率、作動電圧および寿命に関して改良の必要性が依然として存在する。蛍光発光体またはTADF(熱活性化型遅延蛍光)を呈する発光体を含む有機エレクトロルミネッセントデバイスも公知である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの特性は、単に使用した発光体によって決まるとは限らない。とりわけ使用した他の材料、たとえばホスト/マトリックス材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、および電子または励起子阻止材料も、ここでは特に重要である。これらの材料の改良が、エレクトロルミネッセントデバイスの明らかな改良につながる可能性がある。
【0004】
先行技術によると、有機エレクトロルミネッセントデバイスの性能データをさらに向上させるための様々なアプローチが存在する。WO2015/091716A1およびWO2016/193243A1は、発光層にリン光化合物と蛍光発光体の両方を含有し、エネルギーがリン光化合物から蛍光発光体に伝達されるOLEDを開示する。この文脈において、リン光化合物は結果としてホスト材料として挙動する。当業者が公知のように、ホスト材料からのエネルギーが最大効率で発光体に伝達されることも可能となるよう、ホスト材料は、発光体と比較して高い一重項および三重項エネルギーを有する。先行技術に開示の系は、正にそうしたエネルギー関係を有する。
【0005】
本発明は、増感剤と蛍光発光体とを含む蛍光電子デバイスであって、増感剤がリン光化合物であり、蛍光発光体が、好ましくは0.45以上、非常に好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物である、蛍光電子デバイスに関する。
【0006】
また、下記の2つの条件(I)または(II)のうちの少なくとも一方が満たされるならば好ましく、条件(I)が満たされるならば好ましく:
【0007】
【0008】
(式中、使用したパラメーターは、下記の通りである:
X、Yは、それぞれ-0.5eVであり;
S1
K(FE)は、蛍光発光体の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側のエッジから確認される、蛍光発光体の第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S1
K(S)は、増感剤の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側のエッジから確認される、増感剤の第1の励起状態のエネルギーであり;
S1
max(FE)は、蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルの短波長での第1の極大の位置から確認される、蛍光発光体の第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S1
max(S)は、増感剤のフォトルミネッセンススペクトルの短波長での第1の極大の位置から確認される、増感剤の第1の励起状態のエネルギーである);
増感剤と蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルが、100mlのトルエン中1mgの濃度の溶液から室温で判定される。
【0009】
規定のパラメーターの判定のさらなる詳細は、本発明の例の項に見出すことができる。
【0010】
エネルギー値の実験的判定は、例に開示されている。エネルギーは、この方法により判定すべきである。
【0011】
本発明における波長は常に、nmの単位を有する。したがって、表現、たとえば「正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側」は、nm単位の短波長から(たとえば300nmから)nm単位のより長い波長(たとえば700nm)へと移動することを意味する。したがって、波長が短いほどエネルギーが高いことも常に意味する。本明細書において規定される条件の場合、波長は、nm単位からeV単位に変換される。
【0012】
本発明のこうしたデバイスは、特に良好な性能データ、とりわけ非常に良好な効率、寿命、さらには低電圧を有することが見出されている。
【0013】
本発明の好ましい態様において、蛍光発光体は、立体的に遮蔽された蛍光発光体である。
【0014】
立体遮蔽は、遮蔽係数(SF)パラメーターにより判定される。本発明において、遮蔽係数(SF)は、遮蔽パラメーターとも呼ばれ、以下に続く方法により確認される。
【0015】
蛍光発光体(蛍光化合物とも呼ばれる)の場合、たとえばソフトウェアパッケージGaussian09 Rev.E.01を援用して量子化学計算が行われる。まず、B3PW91/6-31G(d)を用いて一重項基底状態の構造が最適化される。この最適化された構造について、B3PW91/6-31G(d)(多重度3;UDFT)を用いて三重項一点計算が行われ、そこから三重項の電子密度が得られる。一重項基底状態の電子密度が同様に、B3PW91/631-G(d)を用いた最適化された構造を求める一点計算から得られる。三重項の電子密度と一重項の電子密度(一重項の電子密度=一重項基底状態の電子密度)との差の絶対値は、位置依存パラメーターであり、三重項密度と呼ばれる。三重項密度を使用して三重項領域が判定される。これは、三重項密度が2*10-4である領域であり、それが等値面値2*10-4を有する三重項密度の等密度面であることを意味する。全ての計算について、Gaussian09の標準的な収束基準が使用される。
【0016】
蛍光化合物の「溶媒排除表面」(コノリー表面とも呼ばれる)も計算される。これは、溶媒排除体積の表面である(Michael L.Connolly、「Computation of Molecular Volume」、J.Am.Chem.Soc.、1985、Vol.107、p.1118-1124)。蛍光化合物のファンデルワールス体積が硬い、即ち、貫通できない体積であると考えられる場合、本発明の文脈における溶媒排除体積は、半径0.4nmの剛体球によって占有できない空間部分である。溶媒排除表面は、たとえば、Xu D、Zhang Y(2009)、「Generating Triangulated Macromolecular Surfaces by Euclidean Distance Transform」PLoS ONE 4(12):e8140(doi: 10.1371/journal.pone.0008140)に記載のアルゴリズムにより計算することができる。アルゴリズムは、たとえば、フリーウェアソフトウェアパッケージEDTSurfにおいて実施される。計算に使用されるファンデルワールス半径rVDWを、下記の表にまとめる:
【0017】
【0018】
次の工程において、三重項表面と溶媒排除表面との間の符号付き距離dが、溶媒排除表面上で計算される。符号の規約は下記の通りである:溶媒排除表面が三重項表面の外にある場合(蛍光化合物の中心から見て)、符号は正であり、そうでなければ負である。
【0019】
その後、スカラー関数e-d/0.2nmの面積分Iが、溶媒排除表面全体にわたり形成される。加えて、溶媒排除表面の総面積Aが判定される。遮蔽パラメーターSFは、SF=1-I/Aと定義される。
【0020】
当業者は、分子的関連性のパラメーターを判定するためのルーチンプロセスにおいて、市販のソフトウェアを援用して困難なくこの方法を実施することができる。
【0021】
遮蔽係数は、電子デバイスの効率に対して有意な効果を有することが見出されている。
【0022】
本発明の文脈において、Xおよび/またはYが-0.4eVであることがさらに好ましく、好ましくは-0.3eV、非常に好ましくは-0.2eV、さらにより好ましくは-0.1eV、とりわけ好ましくは0.0eV、最も好ましくは0.1eVである。
【0023】
Xは、-0.2eV以上、非常に好ましくは-0.15eV以上、より好ましくは-0.1eV以上、さらにより好ましくは-0.05eV以上、最も好ましくは0.00eV以上であるならば、さらに好ましい。
【0024】
Yは、0.00eV以上、さらにより好ましくは0.00eVを超え、さらにより好ましくは0.01eV以上、とりわけ好ましくは0.02eV以上、例外的に好ましくは0.03eV以上、非常に例外的に好ましくは0.05eV以上、さらにより好ましくは0.07以上、最も好ましくは0.10eV以上であるならば、さらに好ましい。
【0025】
好ましい態様において、Xは、-0.2eV以上であり、Yは、0.00eV以上、さらにより好ましくは0.00eVを超え、さらにより好ましくは0.01eV以上、とりわけ好ましくは0.02eV以上、例外的に好ましくは0.03eV以上、非常に例外的に好ましくは0.05eV以上、さらにより好ましくは0.07以上、最も好ましくは0.10eV以上である。
【0026】
好ましい態様において、Xは、-0.1eV以上であり、Yは、0.00eV以上、さらにより好ましくは0.00eVを超え、さらにより好ましくは0.01eV以上、とりわけ好ましくは0.02eV以上、例外的に好ましくは0.03eV以上、非常に例外的に好ましくは0.05eV以上、さらにより好ましくは0.07以上、最も好ましくは0.10eV以上である。
【0027】
好ましい態様において、Xは、-0.05eV以上であり、Yは、0.00eV以上、さらにより好ましくは0.00eVを超え、さらにより好ましくは0.01eV以上、とりわけ好ましくは0.02eV以上、例外的に好ましくは0.03eV以上、非常に例外的に好ましくは0.05eV以上、さらにより好ましくは0.07以上、最も好ましくは0.10eV以上である。
【0028】
Xが0.0eV以上であり、Yが0.00eV以上、Yは、さらにより好ましくは0.00eVを超え、さらにより好ましくは0.01eV以上、とりわけ好ましくは0.02eV以上、例外的に好ましくは0.03eV以上、非常に例外的に好ましくは0.05eV以上、さらにより好ましくは0.07eV以上、最も好ましくは0.10eV以上である。
【0029】
条件(I)が満たされるならば、さらに好ましい。加えて、条件(II)が満たされるならば、好ましい。最終的に、条件(I)と条件(II)の両方が満たされるならば、好ましい。
【0030】
増感剤が、電子デバイスにおいて吸収するエネルギーを蛍光発光体に直接伝達し、蛍光発光体が、増感剤により吸収される励起エネルギーを蛍光発光により放出するならば、好ましい。
【0031】
エネルギーは、様々な機構を介して増感剤から蛍光発光体に伝達されてもよい。エネルギーの伝達のための重要な経路は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRETまたはFET)であると考えられる。
【0032】
本発明の好ましい態様において、蛍光発光体の吸収スペクトルは、増感剤の
フォトルミネッセンス(発光)スペクトルと重なる。
【0033】
蛍光発光体の吸収スペクトルが増感剤のフォトルミネッセンススペクトルと重なり、増感剤のフォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(3MLCT)帯域と蛍光発光体の吸収極大との間のギャップの大きさが、下記の条件(III):
【0034】
【0035】
(式中、Vは、0.5eVであり、Vは、好ましくは0.4eVであり、Vは、非常に好ましくは0.3eVであり、Vは、とりわけ好ましくは0.2eVであり、Vは、さらにより好ましくは0.15eVであり、Vは、とりわけ好ましくは0.1Vである)
を満たすならば、さらに好ましい。
【0036】
増感剤のフォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(3MLCT)帯域は、パラメーター
【0037】
【0038】
によって特徴付けられ、ここでは、増感剤のフォトルミネッセンススペクトルにおける短波長でのエッジから見出される。したがって、
【0039】
【0040】
の値は、既に言及したS1
K(S)の値と同一である。
【0041】
【0042】
は、蛍光発光体の長波長での第1の極大のピーク吸収波長である。各値は、電子ボルト単位で計算される。
【0043】
条件(IV):
【0044】
【0045】
(式中、Wは、0.5eVであり、Wは、好ましくは0.4eVであり、Wは、非常に好ましくは0.3eVであり、Wは、とりわけ好ましくは0.2eVであり、Wは、さらにより好ましくは0.15eVであり、Wは、とりわけ好ましくは0.1Vである)
が満たされることがとりわけ好ましい。
【0046】
増感剤と蛍光発光体との間のフェルスター共鳴エネルギー移動は、下記の等式:
【0047】
【0048】
(式中、κは、双極子配向因子であり、φsは、増感剤の量子収率であり、nは、媒体の屈折率であり、NAは、アボガドロ定数であり、J(λ)は、スペクトル重なり積分である)
で与えられるフェルスター半径R6
FRET、を援用して記述することができる。スペクトル重なり積分は、下記の等式:
【0049】
【0050】
(式中、λは、波長であり、FS(λ)は、増感剤のフォトルミネッセンススペクトルの正規化された放射強度であり、εFEは、蛍光発光体の吸収のモル係数である)
により定義される。FS(λ)の判定のためのフォトルミネッセンススペクトルとεFEの判定のための吸収スペクトルの両方は、それぞれの化合物のトルエン溶液から測定される。フェルスター半径は、下記の設定を用いて計算される:n=1.7およびκ2=2/3。
【0051】
小さなフェルスター半径が好ましい。フェルスター半径が3nm未満、非常に好ましくは2.5nm以下、さらにより好ましくは2.3nm以下、とりわけ好ましくは2.1nm以下であるならば、好ましい。フェルスター半径を小さくすると、電子デバイスの寿命が明らかに改善することが見出されている。
【0052】
本発明の別の態様において、より大きなフェルスター半径が好ましい。これは、電子デバイスの効率の向上をもたらす。フェルスター半径が2.5nm以上、非常に好ましくは2.7nm以上、さらにより好ましくは2.8nm以上、とりわけ好ましくは3.0nm以上であるならば、好ましい。
【0053】
増感剤は基本的に、任意のリン光化合物であってもよく、ただし、系間交差(ISC)速度が十分に速いことが唯一の条件である。本分野の当業者は、自身が知っている多数の好適な化合物からこの目的のための好適な化合物を困難なく選択することができる。
【0054】
本発明の文脈におけるリン光化合物は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセントデバイスの中に存在するような環境での光学的または電気化学的励起下で、室温で光を発することができる化合物であり、ここで、発光は、スピン禁制遷移、たとえば励起三重項状態または混合一重項/三重項状態からの遷移から生じる。
【0055】
好適なリン光化合物(以下、短く三重項発光体とも呼ばれる)はとりわけ、適切に励起されると、好ましくは可視領域で光を発する化合物であり、原子番号が20より大きい、好ましくは38より大きく84より小さい、より好ましくは56より大きく80より小さい少なくとも1種の原子、とりわけこの原子番号を有する金属をさらに含有する。
【0056】
好ましくは、増感剤は、有機金属錯体の群、とりわけ遷移金属錯体の群からのリン光化合物である。
【0057】
好ましく使用されるリン光化合物は、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含有する有機金属錯体、とりわけ銅、イリジウムまたは白金、非常に好ましくはイリジウムおよび白金を含有する化合物である。本発明の文脈において、上記の金属を含有する発光性化合物は全て、リン光化合物とみなされる。
【0058】
特許出願WO2015/091716に記載のリン光有機金属錯体が特に好ましい。特に、WO00/70655、WO2001/41512、WO2002/02714、WO2002/15645、EP1191612、WO2005/033244、WO2005/019373、US2005/0258742、WO2006/056418、WO2007/115970、WO2007/115981、WO2008/000727、WO2009/050281、WO2009/050290、WO2011/051404、WO2011/073149、WO2012/121936、US2012/0305894、WO2012/170571、WO2012/170461、WO2012/170463、WO2006/121811、WO2007/095118、WO2008/156879、WO2008/156879、WO2010/068876、WO2011/106344、WO2012/172482、EP3126371、WO2015/014835、WO2015/014944、WO2016/020516、US2016/0072081、WO2010/086089、WO2011/044988、WO2014/008982、WO2014/023377、WO2014/094961、WO2010/069442、WO2012/163471、WO2013/020631、US2015/0243912、WO2008/000726、WO2010/015307、WO2010/054731、WO2010/054728、WO2010/099852、WO2011/032626、WO2011/157339、WO2012/007086、WO2015/036074、WO2015/104045、WO2015/117718、WO2016/015815に記載されているリン光有機金属錯体、これらは、好ましくはイリジウムおよび白金錯体である。これらはとりわけ、WO2004081017、WO2005042550、US20050170206、WO2009/146770、WO2010/102709、WO2011/066898、WO2016124304、WO2017032439、WO2018019688、EP3184534、WO2018/011186、WO2016/193243およびWO2015/091716A1に記載されるような、多脚配位子を有する有機金属錯体も含む。
【0059】
これらは加えて、WO2011/045337、US2015/0171350、WO2016/079169、WO2018/019687、WO2018/041769、WO2018/054798、WO2018/069196、WO2018/069197、WO2018/069273に記載されるような、二核有機金属錯体も含む。
【0060】
これらは加えて、WO2010/031485、US2013/150581、WO2013/017675、WO2013/007707、WO2013/001086、WO2012/156378、WO2013/072508、EP2543672に記載されるような銅錯体も含む。
【0061】
好適なリン光パラジウム錯体の例が、WO2014/109814に記載されている。
【0062】
一般に、先行技術によるリン光OLEDに使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野の当業者に公知のリン光錯体は全て好適であり、当業者は、独創的な技術を用いることなく、さらなるリン光錯体を使用することができる。
【0063】
本発明の好ましい態様において、発光層を蒸着により調製する場合、リン光化合物は、発光層において体積で5%~99.9%、好ましくは体積で5%~60%、より好ましくは体積で10%~50%、最も好ましくは体積で20%~40%の濃度であり、ここで、報告される体積でのパーセンテージ(体積%)は、発光層の総体積を基準とする。
【0064】
本発明のさらなる好ましい態様において、発光層を蒸着により調製する場合、リン光化合物は、発光層において体積で5%~99.9%、好ましくは体積で5%~60%、より好ましくは体積で5%~45%、最も好ましくは体積で5%~30%の濃度であり、ここで、報告される体積でのパーセンテージ(体積%)は、発光層の総体積を基準とする。
る。
【0065】
本発明のなおさらなる好ましい態様において、発光層を蒸着により調製する場合、リン光化合物は、発光層において体積で1%~50%、好ましくは体積で2%~40%、より好ましくは体積で3%~30%、最も好ましくは体積で4%~25%の濃度であり、ここで、報告される体積でのパーセンテージ(体積%)は、発光層の総体積を基準とする。
【0066】
本発明の好ましい態様において、発光層を溶液から調製する場合、リン光化合物は、発光層において重量で5%~99.9%、好ましくは重量で5%~60%、より好ましくは重量で10%~50%、最も好ましくは重量で20%~40%の濃度であり、ここで、報告される質量でのパーセンテージ(重量%)は、発光層の総質量を基準とする。
【0067】
本発明のさらなる好ましい態様において、発光層を溶液から調製する場合、リン光化合物は、発光層において重量で5%~99.9%、好ましくは重量で5%~60%、より好ましくは重量で5%~45%、最も好ましくは重量で5%~30%の濃度であり、ここで、報告される質量でのパーセンテージ(重量%)は、発光層の総質量を基準とする。
【0068】
本発明のなおさらなる好ましい態様において、発光層を溶液から調製する場合、リン光化合物は、発光層において重量で1%~50%、好ましくは重量で2%~40%、より好ましくは重量で3%~30%、最も好ましくは重量で4%~25%の濃度であり、ここで、報告される質量でのパーセンテージ(重量%)は、発光層の総質量を基準とする。
【0069】
リン光増感剤の明確な例は、Ir(ppy)3とその誘導体、および以下に続く概説に詳述する構造である。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
リン光増感剤のさらなる明確な例は、カルベン配位子を含有するイリジウム錯体および白金錯体、ならびに以下に続く概説に詳述する構造であり、ホモレプティックおよびヘテロレプティック錯体、ならびにメリジオナルおよびフェイシャル異性体が好適である:
【0078】
【0079】
リン光増感剤のさらなる明確な例は、銅錯体および下記の概説に詳述する構造である:
【0080】
【0081】
本発明の蛍光発光体は、原則として任意の蛍光化合物であってもよい。当業者は、多数の蛍光発光体から好適な発光体を容易に困難なく選択することができる。
【0082】
蛍光発光体は、好ましくはいずれの金属または金属イオンも含有しない、純粋に有機の化合物であるか、蛍光金属錯体である。蛍光発光体が蛍光金属錯体である場合、これらはより好ましくはアルミニウムまたは銅錯体である。
【0083】
一態様において、蛍光発光体は、蛍光銅またはアルミニウム錯体であり、さらに好ましくは、立体的に遮蔽されている。
【0084】
非常に好ましくは、蛍光発光体は、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であり、さらに好ましくは、立体的に遮蔽されている。
【0085】
蛍光化合物とも呼ばれる蛍光発光体のより詳細な説明が以下に続く。
【0086】
蛍光発光体は、好ましくは有機化合物である。本発明の文脈における有機化合物は、いずれの金属も含有しない炭素質の化合物である。より詳細には、有機化合物は、元素C、H、D、B、Si、N、P、O、S、F、Cl、BrおよびIから形成される。本発明のさらなる態様において、蛍光発光体はまた、蛍光金属錯体、たとえばアルミニウムまたは銅錯体であってもよい。
【0087】
本発明の文脈における蛍光化合物は、有機エレクトロルミネッセントデバイスの中に存在するような環境での光学的励起下で、室温で光を発することができる化合物であり、発光は、励起一重項状態から生じる。この化合物は、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、とりわけ好ましくは少なくとも95%の発光量子効率を有する。発光量子効率は、トルエン溶液中で判定される。本発明の文脈における発光量子収率の判定を行う方法は、WO2015/135624A1の「General description of the determination of the relevant parameters Part 4」に一般論として詳細に記載されている。
【0088】
好ましい態様において、蛍光化合物のピーク発光波長は、430乃至650nmである。本発明の文脈におけるピーク発光波長の判定を行う方法は、本発明の例に記載されている。
【0089】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの製造法の違いのため、蛍光化合物のドーパント濃度は、発光層を蒸着により製造する場合は体積%で、発光層を溶液から製造する場合は重量%で報告される。
【0090】
本発明の好ましい態様において、発光層を蒸着により製造する場合、蛍光化合物は、発光層に体積で0.1%~25%、好ましくは体積で1%~20%、より好ましくは体積で3%~10%のドーパント濃度で存在する。
【0091】
本発明の好ましい態様において、発光層を溶液から製造する場合、蛍光化合物は、発光層に重量で0.1%~25%、好ましくは重量で1%~20%、より好ましくは重量で3%~10%のドーパント濃度で存在する。
【0092】
ここで、とりわけ蛍光化合物のドーパント濃度が低い場合、OLEDは、蛍光化合物とリン光化合物の残存発光とで構成される混合発光を呈することが可能である。これは、制御された方式で混合色を生成するのに利用することもできる。
【0093】
蛍光化合物に使用される基本構造は、先行技術に従い蛍光OLEDに使用されるような任意の化合物であってもよい。
【0094】
蛍光発光体は、好ましくは下記の群の蛍光化合物から選択される:スチリルアミン、インデノフルオレン、多環芳香族化合物、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、フェニレン、フルオレン、アリールピレン、アリーレンビニレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン、チオピラン、ポリメチン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランテン、インデノペリレン、ビス(アジニル)イミンボロン、ビス(アジニル)メチン、カルボスチリル、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、アリールアミン、インデノフルオレンアミンおよびインデノフルオレンジアミン、ベンゾインデノフルオレンアミン、ベンゾインデノフルオレンジアミン、ジベンゾインデノフルオレンアミン、ジベンゾインデノフルオレンジアミン、置換または無置換のトリスチルベンアミン、ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル、トリアリールアミン、トリアゾロ化合物、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、トリアジン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、スピロフルオレン、ピラン、オキサゾン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、ケイ皮酸エステル、ジケトピロロピロール、ならびにアクリドン。
【0095】
さらなる好ましい蛍光発光体は、たとえば、C.H.Chenら:「Recent developments in organic electroluminescent materials」Macromol.Symp.125,(1997)、1-48ならびに「Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices」Mat.Sci.およびEng.R、39(2002)、143-222に開示されている。
【0096】
これらの化合物の立体遮蔽は、蛍光化合物の電子的に活性なコアを取り囲み、したがって、それを層内の隣接する分子との接触から実質的に遮蔽する電子的に不活性の立体的にかさ高い置換基により達成される。
【0097】
立体遮蔽の程度は、遮蔽パラメーターSFによって判定することができる。
【0098】
上記のように、蛍光化合物に使用される蛍光コアは、有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて蛍光発光体として通例使用されるような任意の基本構造であってもよい。好ましい蛍光化合物は、大きな脂肪族または脂環式ラジカルにより置換されている剛直なπ系である。加えて、脂肪族または脂環式ラジカルにより置換されていてもよい芳香族置換基も、それらが立体的な意味で本発明の文脈における活性基とならないように、即ち、関連する分子軌道におけるその割合が、以下に記載する限界未満となるように配置されている場合は選択肢である。これに対し、たとえば、アリールアミノ置換基またはヘテロアリール基は、HOMO(最高被占分子軌道)またはLUMO(最低空分子軌道)への関与が大きすぎ、したがって遮蔽基としては不適である。
【0099】
蛍光化合物の好適な芳香族の基本骨格の例は、以下に示す式(1)~(50)の基である:
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
蛍光化合物の好適なヘテロ芳香族の基本骨格の例は、縮合芳香族核中の1、2、3または4個の炭素原子が窒素により置きかえられている、上記の式(1)~(50)の基である。好ましくは、1、2または3個の炭素原子、より好ましくは、1または2個の炭素原子、最も好ましくは厳密に1個の炭素原子が窒素、酸素またはホウ素により置きかえられている。
【0105】
加えて、蛍光化合物の好適なヘテロ芳香族の基本骨格の例は、以下に示す式(51)~(73)の基である:
【0106】
【0107】
【0108】
これらの構造は、上記のように、立体的にかさ高い置換基により置換されており、また、立体的にかさ高いとみなすことができないさらなる置換基により置換されていてもよく、ただし、これらの置換基は、電子的に活性ではないか、立体的に遮蔽された置換基によりさらに置換されている。
【0109】
蛍光コア、たとえば上記の芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物を置換し、したがって、立体的に遮蔽された蛍光化合物に到達するために使用することができる、好適な立体的にかさ高い置換基の説明が以下に続く。
【0110】
好適な立体的にかさ高い置換基は、たとえば、とりわけ3~20個の炭素原子を有し、好ましくは4~10個の炭素原子を有するアルキル基であって、水素原子がF、とりわけ3~20個の炭素原子を有し、好ましくは4~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、とりわけ7~30個の炭素原子を有するアラルキル基、およびとりわけ6~30個の炭素原子を有する芳香族環系により置きかえられていてもよく、ここで、アラルキル基および芳香族環系中のアリール基が、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基により置換されることも可能である。ここでは、複数の隣接する置換基が互いに環系を形成することも可能である。
【0111】
置換基がアラルキル基または芳香族環系である場合、これらが、アリール基が共通の縁を介して互いに直接縮合している、10個を超える炭素原子を有するいかなる縮合アリール基も有さないならば好ましい。より好ましくは、アリール基が共通の縁を介して互いに直接縮合しているいかなる縮合アリール基も全く有さない。したがって、芳香族環系が、たとえば、いかなるアントラセンまたはピレン基も有さないならば好ましく、芳香族環系が、いかなるナフタレン基も有さないならば特に好ましい。これに対し、芳香族環系は、たとえば、ビフェニルまたはテルフェニル基を有してもよく、それは、これらがいかなる縮合アリール基も有さないためである。加えて、芳香族環系はまた、たとえば、フルオレンまたはスピロビフルオレン基を有してもよく、それは、これらの基では、アリール基が共通の縁を介して互いに直接縮合していないためである。
【0112】
立体的にかさ高い置換基がアルキル基である場合、このアルキル基は、好ましくは4~10個の炭素原子を有する。第2級または第3級炭素原子が蛍光基本骨格に直接結合しているか、蛍光基本骨格にCH2基を介して結合しているかのいずれかの第2級、第3級または環状アルキル基が好ましい。より好ましくは、このアルキル基は、下記式(R-1)~(R-33):
【0113】
【0114】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の蛍光基本骨格への結合を示す)
の構造から選択される。
【0115】
立体的にかさ高い置換基がアルコキシ基である場合、このアルコキシ基は、好ましくは3~10個の炭素原子を有し、好ましくは分枝または環状である。好ましくは、このアルコキシ基は、下記式(R-34)~(R-47):
【0116】
【0117】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の蛍光基本骨格への結合を示す)
の構造から選択される。
【0118】
立体的にかさ高い置換基がアラルキル基である場合、このアラルキル基は、好ましくは下記式(R-48)~(R-61):
【0119】
【0120】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の蛍光基本骨格への結合を示し、フェニル基は、それぞれ1つ以上のRaラジカルにより置換されていてもよく、
ここで:
Raは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、1~40個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~40個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRbラジカルにより置換されていてもよい)、5~60個の芳香族環原子を有する芳香族環系(これらのそれぞれは、1つ以上のRbラジカルにより置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRbラジカルにより置換されていてもよいアラルキル基からなる群から選択され、ここで、2つ以上の隣接するRa置換基が1つ以上のRbラジカルにより置換されていてもよい環系を形成することが任意に可能であり;
Rbは、H、D、F、1~20個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルラジカル、5~30個の芳香族環原子を有する芳香族環系からなる群から選択され、ここで、2つ以上の隣接するRb置換基は、一緒になって環系を形成してもよい)
の構造から選択される。
【0121】
蛍光化合物が芳香族環系で立体的に遮蔽されていると、電子デバイスの特に良好な性能データ、とりわけ非常に良好な効率が達成される。立体的にかさ高い置換基が芳香族環系である場合、この芳香族環系は、6~60個、好ましくは6~30個の芳香族環原子、より好ましくは6~24個の芳香族環原子を有する。加えて、この芳香族環系は、好ましくはフェニル基のみを含有する。この場合、芳香族環系は、好ましくは下記式(R-62)~(R-76):
【0122】
【0123】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の蛍光基本骨格への結合を示し、フェニル基は、それぞれ1つ以上のRaラジカルにより置換されていてもよく、Raは、先に定義した通りである)
の構造から選択される。
【0124】
蛍光化合物の立体遮蔽に好適な基のさらなる例と、置換基RaおよびRbの好ましい態様は、WO2015/135624に開示されている。
【0125】
本発明の非常に特に好ましい態様において、蛍光発光体は、6~60個の芳香族環原子を有する多環式縮合芳香族化合物の群からの、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物である。
【0126】
多環式縮合芳香族化合物の中で、ここでは、ピレン、ペリレン、ルブレン、アントラセン、テトラセン、フェナントレン、フルオレンおよびインデノフルオレンがとりわけ好ましく、ここで、芳香族系は、別の場所で既に詳細に述べたように、好ましくは芳香族環系により置換されていてもよい。ペリレンおよびルブレンが、本発明の文脈において最も好ましい。
【0127】
遮蔽された蛍光発光体としての使用に特に好適な好ましい置換ペリレンのいくつかを、以下に例として示す:
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
蛍光発光体としてのペリレンの詳細は、特許出願EP18194083.4にも見出すことができる。
【0135】
本発明の教示は、蛍光発光体(フォトルミネッセンススペクトルにおける)と本発明の電子デバイスの発光(エレクトロルミネッセンススペクトルにおける)の両方に関して発光のカラーパレット全体をカバーする。
【0136】
蛍光発光体が青色発光を有するならば好ましく、ここで、蛍光発光体の青色発光は、好ましくは、蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が380~500nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0137】
本発明の電子デバイスが青色発光を有する場合も好ましく、ここで、電子デバイスの青色発光は、好ましくは、本発明の電子デバイスのエレクトロルミネッセンススペクトルの発光全体の最大が380~500nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0138】
蛍光発光体が緑色発光を有するならば、さらに好ましく、ここで、蛍光発光体の緑色発光は、好ましくは、蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が501~570nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0139】
また、本発明の電子デバイスが緑色発光を有するならば、好ましく、ここで、電子デバイスの緑色発光は、好ましくは、本発明の電子デバイスのエレクトロルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が501~570nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0140】
加えて、蛍光発光体が黄色発光を有するならば好ましく、ここで、蛍光発光体の黄色発光は、好ましくは、蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が571~590nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0141】
本発明の電子デバイスが黄色発光を有するならば好ましく、ここで、電子デバイスの黄色発光は、好ましくは、本発明の電子デバイスのエレクトロルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が571~590nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0142】
最後に、蛍光発光体が赤色発光を有する場合も好ましく、ここで、蛍光発光体の赤色発光は、好ましくは、蛍光発光体のフォトルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が591~750nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0143】
本発明の電子デバイスが赤色発光を有するならば好ましく、ここで、電子デバイスの赤色発光は、好ましくは、本発明の電子デバイスのエレクトロルミネッセンススペクトルにおける発光全体の最大が591~750nmの範囲にある発光を意味するものと理解される。
【0144】
増感剤と蛍光発光体は、電子デバイスの同じ層にあっても、異なる層にあってもよい。
【0145】
本発明の一態様において、増感剤と蛍光発光体は同じ層にあり、ここで、この層は、好ましくはエレクトロルミネッセントデバイスの発光層である。
【0146】
この層または増感剤と蛍光発光体とを含む以下に言及する本発明の組成物は、好ましくは、電子輸送材料、正孔伝導材料、量子材料(好ましくは量子ドット)、双極性ホスト、大きなバンドギャップを有するホスト材料(ワイドバンドギャップ材料)、リン光化合物、蛍光化合物、および遅延蛍光を有する材料の群からの少なくとも1種のさらなる材料を含む。
【0147】
ここでのワイドバンドギャップ材料は、HOMOとLUMOのエネルギー準位の間に大きなバンドギャップを有する材料を意味する。2.5eV以上のバンドギャップを有する材料が特に好ましく、さらにより好ましくは3.0eV以上、とりわけ好ましくは3.5eV以上である。HOMOおよびLUMOの値は、以下に規定する量子化学的方法により計算すべきである。
【0148】
遅延蛍光を有する材料は、好ましくは熱誘発時間遅延蛍光(TADF)を有するものである。TADF材料は、S1およびT1エネルギー準位の間に小さなギャップを有し、それは、好ましくは0.3eV以下、非常に好ましくは0.2eV以下、最も好ましくは0.1eV以下である。S1およびT1エネルギーは、以下に規定する量子化学的方法により計算すべきである。標準的なTADF材料の例は、先行技術(たとえばY.Liuら、Nature Reviews Materials、Vol.3、18020、2018;Z.Yangら、Chem.Soc.ReV.、2017、46、915)に見出すことができる。
【0149】
材料のエネルギー準位および最低三重項状態T1と最低励起一重項状態S1のエネルギーは、特に断らない限り、量子化学計算によって判定される。金属を含まない有機物質の計算には、まず、「基底状態/半経験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/スピン一重項」法により構造最適化が行われる。続いて、最適化された構造に基づきエネルギー計算が行われる。これは、「6-31G(d)」基底系(電荷0、スピン一重項)を伴う「TD-SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法を用いて行われる。金属含有化合物の場合、構造は「基底状態/ハートリーフォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/スピン一重項」法により最適化される。エネルギー計算は、有機物質の場合の上記の方法と同様に行われるが、金属原子の場合は「LanL2DZ」基底系が用いられ、配位子の場合は「6-31G(d)」基底系が用いられるという違いがある。エネルギー計算から、HOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhがハートリー単位で得られる。これを使用して、サイクリックボルタンメトリ測定により較正された電子ボルト単位のHOMOおよびLUMOエネルギー準位が、下記のように決定される:
HOMO(eV)=((HEh*27.212)-0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh*27.212)-2.0041)/1.385
本願の文脈において、これらの値を材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位とみなすこととする。
【0150】
最低三重項状態T1は、最低エネルギーを有する三重項状態のエネルギーと定義され、これは、記載の量子化学計算から明らかである。
【0151】
最低励起一重項状態S1は、最低エネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーと定義され、これは、記載の量子化学計算から明らかである。
【0152】
電子デバイスの発光層または以下に言及する本発明の組成物に増感剤および蛍光発光体と組み合わせて使用できる好適な好ましいマトリックス材料は、たとえばWO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、たとえばWO2014/015935によるトリアリールアミン、とりわけモノアミン、カルバゾール誘導体、たとえばCBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)またはWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527もしくはWO2008/086851に開示のカルバゾール誘導体、たとえばWO2007/063754もしくはWO2008/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえばWO2010/136109およびWO2011/000455によるインデノカルバゾール誘導体、たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160によるアザカルバゾール誘導体、たとえばWO2007/137725による双極性マトリックス材料、たとえばWO2005/111172によるシラン、たとえばWO2006/117052によるアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえばWO2010/015306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746によるトリアジン誘導体、たとえばEP652273もしくはWO2009/062578による亜鉛錯体、たとえばWO2010/054729によるジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえばWO2010/054730によるジアザホスホール誘導体、たとえばUS2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080による架橋カルバゾール誘導体、たとえばWO2012/048781によるトリフェニレン誘導体、たとえばWO2011/116865、WO2011/137951もしくはWO2013/064206によるラクタム、たとえばWO2014/094963もしくはWO2015/192939による4-スピロカルバゾール誘導体、またはたとえばWO2015/169412、WO2016/015810、WO2016/023608もしくは未公開出願EP16158460.2およびEP16159829.7によるジベンゾフラン誘導体である。実際の発光体より短波長で発光するさらなるリン光発光体が発光層または組成物中に存在することも同様に可能である。
【0153】
さらなる材料は、好ましくは電子輸送材料の群から選択され、とりわけピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キナゾリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール、ラクタム、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンおよび/またはベンゾイミダゾールの群から選択されるものであり、ピリミジンおよびトリアジンが非常に特に好ましい。
【0154】
さらなる材料が正孔輸送材料の群から選択されるならば、さらに好ましく、ここでは、カルバゾール、ビスカルバゾール、アリールアミン、トリアリールアミン、インデノカルバゾールおよびインドロカルバゾールが非常に特に好ましい。
【0155】
増感剤と蛍光発光体およびさらなる材料を含む層が、少なくとも1種の第4の材料を含むならば、さらに好ましく、ここで、第4の材料は、ここでも既に先に言及した好ましいさらなる材料の群から選択されてもよい。
【0156】
本発明のさらなる態様において、増感剤と蛍光発光体とを含む層は、増感剤と蛍光発光体のみからなり、層は、好ましくは発光層である。
【0157】
本発明のさらなる態様において、増感剤と蛍光発光体は、異なる層にあり、ここで、この2層は、互いに直接隣接している。
【0158】
増感剤と蛍光発光体をそれぞれ含む複数の層が、交互形式で互いに隣接することも可能である。本発明は、したがって、層配列[SL/FEL]n-SL(式中、nは、1~5の整数であり、SLは、増感剤を含有する層であり、FELは、蛍光発光体を含有する層であって、異なるSL層中の増感剤は互いに異なるものでもよく、異なるFEL層中の蛍光発光体は互いに異なるものでもよい)を有する領域を含有する電子デバイスも提供する。
【0159】
本発明の電子デバイスは、好ましくは有機電子デバイスであり、非常に好ましくは、有機エレクトロルミネッセントデバイス、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機ソーラーセル、有機光学検出器、有機光受容器、有機電場消光デバイス、発光電気化学セルまたは有機レーザーダイオードの群からの有機電子デバイスである。
【0160】
最も好ましくは、電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセントデバイスである。電子デバイスが、OLEDおよびOLECの群からの有機エレクトロルミネッセントデバイスであるならば、さらにより好ましく、OLEDが最も好ましい。
【0161】
本発明の好ましい態様は、有機エレクトロルミネッセントデバイスである。有機エレクトロルミネッセントデバイスは、カソード、アノード、および少なくとも1つの発光層を含む。これらの層の他に、さらなる別の層、たとえば各場合において、1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層、電子阻止層、電荷生成層、および/または有機または無機p/n接合を含んでもよい。同時に、1つ以上の正孔輸送層をたとえば金属酸化物、たとえばMoO3またはWO3で、または(過)フッ素化電子不足芳香族系をpドープすること、および/または1つ以上の電子輸送層をnドープすることが可能である。たとえば励起子阻止機能を有する、および/またはエレクトロルミネッセンスデバイスにおける電荷バランスを制御する中間層を2つの発光層の間に導入することも同様に可能である。ただし、指摘すべきことであるが、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在する必要があるとは限らない。
【0162】
この場合、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、発光層を含有する、または複数の発光層を含有することが可能である。複数の発光層が存在する場合、これらは好ましくは全体として380nm乃至750nmにいくつかの発光極大を有し、全体として白色発光を生じるものである;換言すれば、蛍光またはリン光を発することができる様々な発光化合物が発光層に使用される。3層が青色、緑色およびオレンジ色または赤色発光を呈する3層系(基本構成については、たとえばWO2005/011013を参照されたい)、または4つ以上の発光層を有する系がとりわけ好ましい。さらに、タンデムOLEDも好ましい。系はまた、1つ以上の層が蛍光を発し、1つ以上の他の層がリン光を発するハイブリッド系であってもよい。
【0163】
好ましいカソードは、低い仕事関数を有する金属、金属合金、様々な金属、たとえばアルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)で構成される多層構造である。加えて、好適なのは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と銀で構成される合金、たとえばマグネシウムと銀で構成される合金である。多層構造の場合、記載した金属に加えて、比較的高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえばAgを使用することも可能であり、この場合、金属の組合せ、たとえばMg/Ag、Ca/AgまたはBa/Agなどが一般に使用される。高誘電率を有する材料の薄い中間層を金属製カソードと有機半導体の間に導入することが好ましいこともある。この目的に有用な材料の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物に加え、対応する酸化物または炭酸塩(たとえばLiF、Li2O、BaF2、MgO、NaF、CsF、Cs2CO3など)である。この目的に同様に有用なのは、有機アルカリ金属錯体、たとえばLiq(キノリン酸リチウム)である。この層の層厚は、好ましくは0.5乃至5nmである。
【0164】
好ましいアノードは、高い仕事関数を有する材料である。好ましくは、アノードは対真空で4.5eVを超える仕事関数を有する。第一に、高い酸化還元電位を有する金属がこの目的に好適であり、たとえばAg、PtまたはAuである。第二に、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiOx、Al/PtOx)が好ましいこともある。用途によっては、電極の少なくとも一方は、有機材料の照射(O-SC)または発光(OLED/PLED、O-レーザー)の何れかを可能とするため、透明または部分的に透明でなければならない。ここでの好ましいアノード材料は、導電性混合金属酸化物である。インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。さらに、導電性のドープされた有機材料、とりわけ導電性のドープされたポリマー、たとえばPEDOT、PANIまたはこれらのポリマーの誘導体が好ましい。pドープされた正孔輸送材料を正孔注入層としてアノードに適用することがさらに好ましく、この場合、好適なpドーパントは、金属酸化物、たとえばMoO3もしくはWO3、または(過)フッ素化電子不足芳香族系である。さらなる好適なp-ドーパントは、HAT-CN(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)またはNovaled製の化合物NPD9である。こうした層は、低いHOMO、即ち、強度に関して高いHOMOを有する材料への正孔注入を単純化する。
【0165】
さらなる層においては、層に対して先行技術に従い使用されるような任意の材料を使用することが一般に可能であり、当業者は、独創的な技術を用いることなく、電子デバイスにおいてこれらの材料のうちの任意の材料を本発明の材料と組み合わせることができる。
【0166】
本発明はさらに、少なくとも1種の増感剤と少なくとも1種の蛍光発光体とを含む組成物であって、増感剤と蛍光発光体が、本発明において規定された化合物である、組成物に関する。さらに、本発明の文脈において好ましい組成物のこの2成分の態様に関しては、即ち、増感剤と蛍光発光体に関しては、電子デバイスに関連して記載した、既に本明細書に開示した同じ優先傾向が適用可能である。
【0167】
したがって、組成物の蛍光発光体が、0.45以上、好ましくは0.5以上、非常に好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物であるならば好ましい。
【0168】
したがって、組成物の蛍光発光体と増感剤が、上記の条件(I)または(II)のうちの少なくとも一方を満たすならば、さらに好ましく、条件(I)が満たされるならば好ましく:ここで、たとえばXおよびYに関しては、上記の優先傾向がここでも適用可能である。
【0169】
したがって、この文脈における別の非常に好ましい組成物は、たとえば、少なくとも1種の増感剤、IrまたはPtを含有するリン光有機金属錯体、および先に詳述した遮蔽係数のうちの1つを有する立体的に遮蔽された蛍光発光体を含むものである。
【0170】
したがって、この文脈における別の非常に好ましい組成物は、少なくとも1種の増感剤、IrまたはPtを含有するリン光有機金属錯体、および蛍光発光体を含むものであり、ここで、2つの条件(I)および(II)のうちの少なくとも一方が満たされなければならない。
【0171】
前記組成物は、好ましくは、電子輸送材料、電子注入材料、電子阻止材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔阻止材料、n-ドーパント、p-ドーパント、量子材料(好ましくは量子ドット)、ホストまたはマトリックス材料、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体または遅延蛍光を有する発光体の群から好ましくは選択される少なくとも1種のさらなる材料を含み、材料は、電子デバイスに関連して言及した材料である。
【0172】
言及した材料は、当業者に周知である。当業者はここで、自身が知っている多数の容易に利用可能な材料から選ぶことができる。
【0173】
本発明の組成物は、増感剤を、好ましくは重量で5%~99.9%、非常に好ましくは重量で5%~60%、とりわけ好ましくは重量で10%~50%、最も好ましくは重量で20%~40%の濃度で含有し、ここで、数値は、全組成物を基準とする。
【0174】
本発明の組成物は、蛍光発光体を、好ましくは重量で0.1%~25%、非常に好ましくは重量で1%~20%、とりわけ好ましくは重量で3%~10%の濃度で含有し、ここで、数値は、全組成物を基準とする。
【0175】
本発明はまた、言及した組成物と、少なくとも1種の溶媒とを含む調合物を提供する。
【0176】
好適な溶媒は、好ましくは有機溶媒、たとえばアルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ジ-C1~C2-アルキルホルムアミド、硫黄化合物、窒素化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素(たとえば塩素化炭化水素)、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素、およびハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素である。
【0177】
好ましい溶媒は、下記の群から選択してもよい:置換および無置換の芳香族もしくは直鎖状エステル、たとえば安息香酸エチル、安息香酸ブチル、オクタン酸オクチル、セバシン酸ジエチル;置換および無置換の芳香族もしくは直鎖状エーテル、たとえば3-フェノキシトルエン、3,4-ジメチルアニソール、フェネトールもしくはアニソール;置換および無置換のアレーン、たとえばトルエン、キシレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2-メチルビフェニル、2,2’-ジメチルビフェニル;インダン、たとえばヘキサメチルインダン;置換および無置換の芳香族もしくは直鎖状ケトン;置換および無置換のヘテロ環式化合物、たとえばピロリジノン、環状もしくは非環状シロキサン、ピリジン、ピラジン;または他のフッ素化もしくは塩素化芳香族炭化水素。
【0178】
特に好ましい溶媒は、たとえば、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2-ジメチルナフタレン、1,3-ベンゾジオキソラン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジメチルナフタレン、1,4-ベンゾジオキサン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジメチルナフタレン、1,5-ジメチルテトラリン、1-ベンゾチオフェン、チアナフタレン、1-ブロモナフタレン、1-クロロメチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-メトキシナフタレン、1-メチルナフタレン、1-メチルインドール、2,3-ベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、2,5-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルナフタレン、2-ブロモ-3-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモナフタレン、2-エトキシナフタレン、2-エチルナフタレン、2-イソプロピルアニソール、2-メチルアニソール、2-メチルインドール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、3-ブロモキノリン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、5-デカノリド、5-メトキシインダン、5-メトキシインドール、5-tert-ブチル-m-キシレン、6-メチルキノリン、8-メチルキノリン、アセトフェノン、アニソール、ベンゾニトリル、ベンゾチアゾール、酢酸ベンジル、ブロモベンゼン、安息香酸ブチル、ブチルフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロナフトール、ジメトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジフェニルエーテル、プロピオフェノン、エチルベンゼン、安息香酸エチル、ヘキシルベンゼン、インダン、ヘキサメチルインダン、インデン、イソクロマン、クメン、m-シメン、メシチレン、安息香酸メチル、o-、m-、p-キシレン、安息香酸プロピル、プロピルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ペンチルベンゼン、フェネトール、エトキシベンゼン、酢酸フェニル、p-シメン、プロピオフェノン、sec-ブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、チオフェン、トルエン、ベラトロール、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジノン、モルホリン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、デカリンおよび/またはこれらの溶媒の混合物である。
【0179】
本発明はまた、電子デバイス、好ましくは上記の電子デバイスであって、組成物を、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスの発光層に好ましくは含む、電子デバイスを提供する。
【0180】
本発明は、電子デバイスを製造するための方法であって、本発明の調合物を使用して電子デバイスの少なくとも1つの層が溶液から製造される、方法をさらに提供する。
【0181】
本発明はまた、電子デバイスを製造するための方法であって、本発明の組成物を使用して電子デバイスの少なくとも1つの層を真空から蒸着させる、方法を提供する。
【0182】
これに対応し、デバイスは、(用途に応じて)構造化され、接点が接続され、こうしたデバイスの寿命は水および/または空気の存在下では大幅に短くなるため、最終的に密閉される。
【0183】
加えて好ましいのは、1つ以上の層が昇華プロセスによりコーティングされることを特徴とする電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスである。この場合、材料は、真空昇華系において、典型的には10-5mbar未満、好ましくは10-6mbar未満の初期圧力で蒸着により適用される。初期圧力をこれよりもさらに低くまたはさらに高く、たとえば10-7mbar未満とすることも可能である。
【0184】
同様に、1つ以上の層がOVPD(有機気相堆積)法により、または担体ガス昇華を援用してコーティングされることを特徴とする電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスが好ましい。この場合、材料は、10-5mbar乃至1barの圧力で適用される。この方法の特殊なケースが、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法であり、この方法では、材料がノズルにより直接適用され、したがって構造化される(たとえば、M.S.Arnoldら、Appl.Phys.Lett.2008、92、053301)。
【0185】
加えて、1つ以上の層が、溶液から、たとえばスピンコーティングにより、または任意の印刷法、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷であるが、より好ましくはLITI(光誘起熱イメージング、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷により生成されることを特徴とする電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスが好ましい。この目的のためには可溶性化合物が必要であり、これは、たとえば好適な置換によって得られる。
【0186】
電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスは、1つ以上の層を溶液から適用し、1つ以上の他の層を蒸着により適用することにより、ハイブリッド系として製造することもできる。したがって、たとえば、本発明の組成物を含む発光層を溶液から適用し、そこに正孔阻止層および/または電子輸送層を減圧下での蒸着により適用することが可能である。
【0187】
当業者はこれらの方法を一般論として認識しており、本発明の電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスに困難なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【
図1】
図1は、化合物FE-03およびPS-01のフォトルミネッセンススペクトルを示す。
【
図2】
図2は、実験6からのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。
【0189】
本発明のデバイスおよび本発明の組成物を含むデバイスは、先行技術に対する下記の驚くべき利点を特徴とする:
1.本発明のデバイスおよび本発明の組成物を含むデバイスは、先行技術の化合物および組成物と比較して、性能データ、とりわけ効率、寿命および作動電圧が向上する。
【0190】
2.本発明のデバイスおよび本発明の組成物を含むデバイスは、先行技術と比較して、蛍光発光体の実用的な、または幾分高い濃度の使用を可能とし、それは、発光層の加工性が向上するという利点を有する。
【0191】
3.本発明の組成物および調合物は、たとえば溶液からの単純な処理を含む、電子デバイスの単純で安価な処理を可能とする。したがって、それらは、商業的利用および大量生産に好適である。
【0192】
4.本発明の組成物および本発明の調合物は、安定性が向上しており、そのため、組成物および調合物は、保存が容易である。
【0193】
指摘すべきことであるが、本発明に記載の態様の変形は、本発明の範囲内に含まれる。本発明において開示される特徴は何れも、明確に除外されない限り、同じ目的、または同等もしくは類似の目的を果たす代替的特徴により置きかえてもよい。したがって、本発明において開示の特徴はいずれも、特に断らない限り、包括的シリーズの一例、または同等もしくは類似の特徴とみなすべきである。
【0194】
本発明の特徴は全て、特定の特徴および/または工程が相互に排他的でない限り、任意の方法で互いに組み合わせてもよい。これはとりわけ、本発明の好ましい特徴について当てはまる。同様に、必須ではない組合せの特徴は、個別に(かつ組み合わせることなく)使用してもよい。
【0195】
さらに指摘すべきことであるが、多くの特徴、とりわけ本発明の好ましい態様の特徴は、それ自体進歩性があり、本発明の態様の一部分に過ぎないとみなすべきではない。これらの特徴について、本発明で特許請求されている任意の発明に加えて、またはその代替として、独立した保護を求めることができる。
【0196】
本発明により開示される技術的教示を抽出し、他の例と組み合わせてもよい。
【0197】
本発明を以下に続く例により詳細に例示するが、それにより本発明を限定するいかなる意図もない。
【0198】
当業者は、与えられた詳細を使用して、独創的な技術を用いることなく、本発明のさらなる電子デバイスを製造することができ、したがって、特許請求された範囲全体を通じて本発明を実施することができる。
[例]
例1
光物理的測定
1.1)ピーク発光波長λ
maxからのS
1
maxの判定
増感剤と蛍光発光体のピーク発光波長を判定するため、特定の材料をトルエンに溶解させる。ここでは、1mg/100mlの濃度を使用する。Hitachi F-4500蛍光分光計において、各場合において分析すべき材料に波長を適合させた状態で溶液を励起する。測定は、室温で実施する。ピーク発光波長λ
maxは、得られる発光スペクトルが、短波長から進んでその第1の極大を達成する波長である(
図1)。第1の極大は、ここでは、典型的にはスペクトルの全体の最大値でもある。しかし、発光スペクトルの第1の極大が全体の最大値に対応しない場合、第1の極大は、正規化された発光スペクトルにおいて高強度を有し、その場合の第1の極大の強度は、少なくとも0.5以上である。
【0199】
1.2)発光エッジからのS
1
Kの判定
増感剤と蛍光発光体の発光エッジを判定するため、短波長での第1の極大の前の最急勾配の位置で正規化されたフォトルミネッセンススペクトルに対する接線を引く。この接線とx軸との交点が、発光エッジλ
edgeの波長を与える(
図1に示すように)。
【0200】
上記の光物理的測定は、表1の増感剤と蛍光発光体についてのピーク発光波長と発光エッジを与える。蛍光発光体については、遮蔽係数(SF)も同様に記載している。
【0201】
【0202】
例2
蛍光発光体の合成
ここで使用するペリレンは、以下に詳述する原理により製造することができる。
【0203】
合成スキーム:
【0204】
【0205】
(式中、X1~X3は、任意の置換基を表す)。
【0206】
トリフラートの合成:
【0207】
【0208】
(式中、R1~R3基は、X1~X3基と同じ意味を有する)。
【0209】
Arを満たされ、精密ガラス撹拌器を備えた焼成フラスコに、最初に2,5,8,11-テトラ-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ペリレン(38.0g、50.3mmol、1.0当量)、3-フェニル-[1,1’-ビフェニル]-2-イルトリフルオロメタンスルホナート(95.1g、251.3mmol、5.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.81g、5.0mmol、0.1当量)およびメタホウ酸ナトリウム四水和物(69.3g、502.5mmol、10.0当量)を充填する。これにTHF(1500ml)と水(500ml)を添加し、反応混合物を還流下3日間撹拌する。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製する。所望の生成物が、黄色固体として単離される(16g、13.7mmol、27.3%)。
【0210】
2,5,8,11-テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)ペリレン[FE-02]の合成
【0211】
【0212】
Arを満たされ、精密ガラス撹拌器を備えた焼成4つ口フラスコに、最初に2,5,8,11-テトラ-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ペリレン(40.0g、52.9mmol、1.0当量)、2-ブロモ-1,3-ジメチルベンゼン(293.7g、212.8ml、1587.0mmol、30.0当量)および炭酸セシウム(137.9g、423.2mmol、8.0当量)を充填する。トルエン(2000ml)を添加し、反応混合物をArで20分間脱気する。続いて、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(6.11g、5.3mmol、0.1当量)を添加し、反応混合物をさらに20分間脱気する。続いて、反応物を還流下72時間撹拌する。反応混合物をろ過する。母液を濃縮し、結果として得られる懸濁液をろ過し、結果として得られる母液にメタノール(1000ml)を添加する。この過程において、固体が沈殿する。固体を全て合わせ、AlOx上でのトルエンを用いた高温抽出に3回供する。AlOx上でトルエンとヘプタン(1:1)の混合物を用いてさらにもう一度高温抽出を行う。結果として得られる固体をトルエンから2回、1,4-ジオキサンから1回再結晶させる。所望の生成物が黄色固体として単離される(5.0g、7.47mmol、14.1%)。続いて、固体を昇華させる(4.5g、6.73mmol、12.7%)。
【0213】
2,5,8,11-テトラキス(2,6-ジフェニルフェニル)ペリレン[FE-03]の合成
【0214】
【0215】
Arを満たされ、精密ガラス撹拌器を備えた焼成4つ口フラスコに、最初に2,5,8,11-テトラ-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ペリレン(38.0g、50.3mmol、1.0当量)、1,3-ジフェニルフェニルトリフラート(95.1g、251.3mmol、5.0当量)およびメタホウ酸ナトリウム四水和物(69.3g、502.5mmol、10.0当量)を充填する。THF(1500ml)と水(500ml)を添加し、反応混合物をArで20分間脱気する。続いて、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.81g、5.0mmol、0.1当量)を添加し、反応混合物をArでさらに20分間脱気する。続いて、反応物を還流下72時間撹拌する。反応混合物を冷却し、AlOx上でのトルエンを用いた高温抽出に供する。この操作をさらに2回繰り返した後、固体をトルエン(700ml)から再結晶させる。再結晶をさらに5回行った後、所望の生成物が黄色固体として単離できる(16g、13.7mmol、27.3%)。続いて、固体を昇華させる(6.8g、5.8mmol、11.6%)。
【0216】
例3
有機エレクトロルミネッセントデバイス
OLEDの製造
厚さ50nmの構造化されたITO(インジウムスズ酸化物)でコーティングしたガラスプラークを、湿式洗浄(食洗機、Merck Extran洗浄剤)に供する。次いで、基板をUV/オゾンで15分間処理する。その後、20nmのPEDOT:PSS層を基板上にスピンオンする(2800rpm)。基板をホットプレート上180℃で10分間、再度焼成する。製造後、OLEDを酸素と水蒸気に対して保護するため、カプセルに収容する。エレクトロルミネッセントOLED(有機発光ダイオード)の正確な層構成は、例に見出すことができる。OLEDの製造に必要な材料を、表4に示す。
【0217】
材料は全て、真空チャンバにて熱蒸着により適用される。ここでの発光層は常に、少なくとも1種のマトリックス材料(ホスト材料)、(リン光)増感剤(PS)および蛍光発光体(FE)からなる。増感剤と蛍光発光体(FE)は、共蒸発により特定の体積割合でホスト材料(H)に添加される。H-01:PS-01(5%):FE-01(3%)のような形式で与えられる詳細は、ここでは、層中に材料H-01が体積で92%の割合で、PS-01が5%の割合で、FE-01が3%の割合で存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、2種の材料の混合物からなっていてもよい。
【0218】
OLEDは、標準的な方法で特徴決定される。この目的のため、エレクトロルミネッセンススペクトル(EL)および電流-電圧-輝度(UIL)特性を測定し、それからランバート発光特性を仮定する外部量子効率(EQE、%単位で測定)を判定することが可能である。パラメーターU100は、100cd/m2の輝度のために必要な電圧を指す。EQE100は、100cd/m2の作動輝度での外部量子効率を指す。
【0219】
寿命LDは、一定の電流での作動の過程で輝度が初期輝度から特定の割合L1に低下するまでの時間であると定義される。j0=10mA/cm2、L1=80%の数値は、10mA/cm2での作動の過程で時間LD後に輝度がその初期値の80%まで低下することを意味する。
【0220】
使用するリン光増感剤は、化合物PS-01、PS-02、PS-03、PS-04およびPS-05である。使用する蛍光発光体は、材料FE-01、FE-02、FE-03、FE-04、FE-05、FE-06およびFE-07である。
【0221】
青色発光を有するOLED:
OLEDは、PEDOT:PSS処理後に基板に適用される下記の層配列からなる:
実験1~16の場合:20nmのHTM:p-D(95%:5%)、30nmのHTM、10nmのH-02、25nmのH-01:PS:FE、10nmのH-01、20nmのETM:LiQ(50%:50%)、アルミニウム(100nm)。
【0222】
実験17~22の場合:20nmのHTM:p-D(95%:5%)、20nmのHTM、10nmのH-03、30nmのH-01:PS:FE、10nmのH-01、20nmのETM:LiQ(50%:50%)、3nmのLiQ、アルミニウム(100nm)。
【0223】
実験23~28の場合、湿式洗浄(食洗機、Merck Extran洗浄剤)に供した、50nmのITOを有する基板を使用する。その後、基板を窒素雰囲気中250°で15分間焼成する。OLEDは、焼成後に基板に適用する下記の層配列からなる:20nmのHTM:p-D(95%:5%)、180nmのHTM、20nmのH-03、25nmのH-01:PS-04:FE、10nmのH-01、20nmのETM:LiQ(50%:50%)、アルミニウム(100nm)。
【0224】
表2は、ホスト、増感剤および蛍光発光体の様々な組合せについての結果を記載する。100cd/m2でのEQEおよび電圧が、対応する実験について報告されている。ここでのXは、S1
K(FE)-S1
K(S)を表し、Yは、S1
max(FE)-S1
max(S)を表す。
【0225】
【0226】
リン光増感剤を含む発光層における遮蔽パラメーターSFがより高い蛍光化合物
SF値が0.41に過ぎないFE-01と比較して、蛍光発光体FE-02(SF=0.55)は、遙かに高い効率(EQE100=9.32%の実験4対EQE100=6.77%の実験2)が得られる。効率の上昇は、蛍光発光体FE-03(SF=0.72)を使用した場合、さらに大きい(EQE100=17.9%の実験7)。
【0227】
PS-01を用い、FEを使用しない参照実験において、EQE100=21.72%およびU100=3.67Vのリン光デバイスが得られる。驚くべきことに、本発明のデバイスの効率は、そのリン光デバイスよりもわずかに低いのみである。しかし、寿命は、FEを用いると、明らかに改善することができる。実験6において、本発明のデバイスは、蛍光発光体を含まないデバイスと比較して、j0=10mA/cm2、L1=80%では、2倍向上した寿命が得られる。
【0228】
PS-05を増感剤として使用した場合、遮蔽係数を増加させると、効率の上昇も得られる。例17と20または18と21または19と22を比較すると、同じ構成のFE-03は、FE-01よりも遙かに良好なEQE100値を与えることがわかる。
【0229】
蛍光発光体の濃度の影響
蛍光発光体の濃度が上昇すると、OLEDの寿命が有意に向上する(たとえば実験8対実験6)。
【0230】
実験9のように、FE-01を発光体として別のリン光増感剤(PS-02)と共に使用した場合、EQE100=13%、U100=3.33Vが得られる。
【0231】
表2の結果が明らかにすることであるが、遮蔽係数を上昇させると、効率(EQE)の予期せぬ物理的および統計的に有意な上昇がみられる(表1)。さらに、驚くべきことに、X値およびY値が上昇し、たとえ正となっても、効率(EQE)は依然として非常に高レベルにあると言うことができる。さらに、XおよびY値の上昇と共に、寿命が向上する。これも、増感剤/発光体の組合せPS-04とFE-01およびFE-03(実験23~28)の使用により示すことができる。
【0232】
黄色発光を有するOLED
OLEDは、基板に適用される下記の層配列からなる:20nmのHTM:p-D(95%:5%)、30nmのHTM、10nmのH-02、15nmのH-01:PS-03:FE、10nmのH-01、40nmのETM:LiQ(50%:50%)、アルミニウム(100nm)。発光層における様々な組合せを表3にまとめる:
【0233】
【0234】
青色発光OLEDと全く同様に、異なるクラスの蛍光発光体を含有する黄色発光OLEDでも同じ効果が観察される。
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感剤と蛍光発光体とを含む蛍光電子デバイスであって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、好ましくは0.45以上、非常に好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物であ
り、
前記増感剤と前記蛍光発光体の両方が、同じ層にあり、
前記蛍光発光体が、金属または金属イオンを欠く純粋に有機の化合物であり、以下の式(1)から(7)、(9)から(11)、(13)から(50)
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
のうちのいずれか1つの芳香族の基本骨格を有する、
または、以下の式(51)から(73)
【化2-1】
【化2-2】
のいずれか1つのヘテロ芳香族の基本骨格を有する、化合物から選択されることを特徴とする、蛍光電子デバイス。
【請求項2】
下記の2つの条件(I)または(II)のうちの少なくとも一方が満たされなければならず、条件(I)が満たされるならば好ましく:
【数1】
(式中、使用したパラメーターは、下記の通りである:
X、Yは、それぞれ-0.5eVであり、
S
1
K(FE)は、前記蛍光発光体の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記蛍光発光体の第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
K(S)は、前記増感剤の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記増感剤の第1の励起状態のエネルギーであり;
S
1
max(FE)は、前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記蛍光発光体の前記第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
max(S)は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記増感剤の前記第1の励起状態のエネルギーである);
前記増感剤と前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルが、100mlのトルエン中1mgの濃度の溶液から室温で判定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
XおよびYが、-0.4eV、好ましくは-0.3eV、非常に好ましくは-0.2eV、さらにより好ましくは-0.1eV、とりわけ好ましくは0.0eV、最も好ましくは0.1eVであることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
条件(I)と(II)の両方が満たされることを特徴とする、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
励起エネルギーが前記増感剤から前記蛍光発光体に伝達され、前記蛍光発光体が前記増感剤により吸収される励起エネルギーを蛍光発光により放出することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記増感剤のフォトルミネッセンス発光スペクトルが、前記蛍光発光体の吸収スペクトルと重なることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの金属-配位子電荷移動(MLCT)帯域が、前記蛍光発光体の吸収スペクトルと重なることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域の大きさと前記蛍光発光体の吸収極大が、下記の条件(III):
【数2】
(式中、Vは、0.5eVであり、Vは、好ましくは0.4eVであり、Vは、非常に好ましくは0.3eVであり、Vは、とりわけ好ましくは0.2eVであり、Vは、最も好ましくは0.15eVであり;
【数3】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの前記三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおけるエッジから見出され、
【数4】
は、前記蛍光発光体の長波長での第1の極大のピーク吸収波長である)
を満たし、値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
下記の条件(IV):
【数5】
(式中、Wは、0.5eVであり、Wは、好ましくは0.4eV以下であり、Wは、非常に好ましくは0.3eVであり、Wは、とりわけ好ましくは0.2eVであり;
【数6】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(
3MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおけるエッジから見出され、
【数7】
は、前記蛍光発光体の長波長での第1の最大値のピーク吸収波長である)
が満たされ、前記値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記増感剤が、有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記増感剤が、Cu、Ir、Pt、Rh、Ru、OsまたはPd、好ましくはIrおよびPtを含有する有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記芳香族の基本骨格または前記ヘテロ芳香族の基本骨格は、少なくとも1つの立体的にかさ高い置換基により置換されている、請求項1~11の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの立体的にかさ高い置換基は、とりわけ3~20個の炭素原子を有し、好ましくは4~10個の炭素原子を有するアルキル基、水素原子がF、とりわけ3~20個の炭素原子を有し、好ましくは4~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、とりわけ7~30個の炭素原子を有するアラルキル基、およびとりわけ6~30個の炭素原子を有する芳香族環系から選択され、ここで、アラルキル基および芳香族環系中のアリール基が、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基により置換されることも可能であり、ここでは、複数の隣接する置換基が互いに環系を形成することも可能であることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記蛍光発光体が、ピレン、ペリレン、ルブレン、アントラセン、フルオレンおよびインデノフルオレンの群から選択される、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記増感剤と前記蛍光発光体が、発光層にあることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、電子輸送材料、正孔伝導材料、量子材料、双極性ホスト、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体、遅延蛍光を有する材料の群から選択されるさらなる材料を含有することを特徴とする、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、いかなるさらなる材料も含有しないことを特徴とする、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
少なくとも1種の増感剤と少なくとも1種の蛍光発光体とを含む組成物であって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、0.45以上、好ましくは0.5以上、非常に好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物であり、
前記蛍光発光体が、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であり、式(1)から(7)、(9)から(11)、(13)から(50)のうちのいずれか1つの芳香族の基本骨格を有する、または、式(51)から(73)のいずれか1つのヘテロ芳香族の基本骨格を有する化合物から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項19】
前記組成物が、電子輸送材料、電子注入材料、電子阻止材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔阻止材料、n-ドーパント、p-ドーパント、量子材料、ホストまたはマトリックス材料、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体または遅延蛍光を有する発光体の群から選択される少なくとも1種のさらなる材料を含むことを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項18または19に記載の組成物と、少なくとも1種の溶媒とを含む、調合物。
【請求項21】
請求項18または19に記載の少なくとも1種の組成物を含む、電子デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0238
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0238】
【表5-4】
以下に、本願発明の実施態様を付記する。
[1] 増感剤と蛍光発光体とを含む蛍光電子デバイスであって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、好ましくは0.45以上、非常に好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物である、蛍光電子デバイス。
[2] 下記の2つの条件(I)または(II)のうちの少なくとも一方が満たされなければならず、条件(I)が満たされるならば好ましく:
【数9】
(式中、使用したパラメーターは、下記の通りである:
X、Yは、それぞれ-0.5eVであり、
S
1
K
(FE)は、前記蛍光発光体の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記蛍光発光体の第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
K
(S)は、前記増感剤の正規化されたフォトルミネッセンススペクトルの短波長側の第1の極大のエッジから確認される、前記増感剤の第1の励起状態のエネルギーであり;
S
1
max
(FE)は、前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記蛍光発光体の前記第1の励起一重項状態のエネルギーであり;
S
1
max
(S)は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの短波長での前記第1の極大の位置から確認される、前記増感剤の前記第1の励起状態のエネルギーである);
前記増感剤と前記蛍光発光体の前記フォトルミネッセンススペクトルが、100mlのトルエン中1mgの濃度の溶液から室温で判定される
ことを特徴とする、[1]に記載の電子デバイス。
[3] XおよびYが、-0.4eV、好ましくは-0.3eV、非常に好ましくは-0.2eV、さらにより好ましくは-0.1eV、とりわけ好ましくは0.0eV、最も好ましくは0.1eVであることを特徴とする、[2]に記載のデバイス。
[4] 条件(I)と(II)の両方が満たされることを特徴とする、[2]または[3]に記載のデバイス。
[5] 励起エネルギーが前記増感剤から前記蛍光発光体に伝達され、前記蛍光発光体が前記増感剤により吸収される励起エネルギーを蛍光発光により放出することを特徴とする、[1]~[4]の何れか1項に記載のデバイス。
[6] 前記増感剤のフォトルミネッセンス発光スペクトルが、前記蛍光発光体の吸収スペクトルと重なることを特徴とする、[1]~[5]の何れか1項に記載のデバイス。
[7] 前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの金属-配位子電荷移動(MLCT)帯域が、前記蛍光発光体の前記吸収スペクトルと重なることを特徴とする、[1]~[6]の何れか1項に記載のデバイス。
[8] 前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの三重項金属-配位子電荷移動(
3
MLCT)帯域の大きさと前記蛍光発光体の吸収極大が、下記の条件(III):
【数10】
(式中、Vは、0.5eVであり、Vは、好ましくは0.4eVであり、Vは、非常に好ましくは0.3eVであり、Vは、とりわけ好ましくは0.2eVであり、Vは、最も好ましくは0.15eVであり;
【数11】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの前記三重項金属-配位子電荷移動(
3
MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおける前記エッジから見出され、
【数12】
は、前記蛍光発光体の長波長での前記第1の極大のピーク吸収波長である)
を満たし、前記値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、[1]~[7]の何れか1項に記載のデバイス。
[9] 下記の条件(IV):
【数13】
(式中、Wは、0.5eVであり、Wは、好ましくは0.4eV以下であり、Wは、非常に好ましくは0.3eVであり、Wは、とりわけ好ましくは0.2eVであり;
【数14】
は、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルの前記三重項金属-配位子電荷移動(
3
MLCT)帯域であり、前記増感剤の前記フォトルミネッセンススペクトルにおける前記エッジから見出され、
【数15】
は、前記蛍光発光体の長波長での前記第1の最大値のピーク吸収波長である)
が満たされ、前記値がそれぞれ、電子ボルト単位で計算される
ことを特徴とする、[1]~[8]の何れか1項に記載のデバイス。
[10] 前記増感剤が、有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、[1]~[9]の何れか1項に記載のデバイス。
[11] 前記増感剤が、Cu、Ir、Pt、Rh、Ru、OsまたはPd、好ましくはIrおよびPtを含有する前記有機金属錯体の群からのリン光化合物であることを特徴とする、[1]~[10]の何れか1項に記載のデバイス。
[12] 前記蛍光発光体が、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、[1]~[11]の何れか1項に記載のデバイス。
[13] 前記蛍光発光体が、6~60個の芳香族環原子を有する縮合芳香族化合物の群から選択される、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、[1]~[12]の何れか1項に記載のデバイス。
[14] 前記蛍光発光体が、ピレン、ペリレン、ルブレン、アントラセン、フルオレンおよびインデノフルオレンの群から選択される、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、[1]~[13]の何れか1項に記載のデバイス。
[15] 前記蛍光発光体が、置換されている形態の芳香族基を有する、金属または金属イオンを欠く、純粋に有機の化合物であることを特徴とする、[1]~[14]の何れか1項に記載のデバイス。
[16] 前記増感剤と前記蛍光発光体の両方が、同じ層にあることを特徴とする、[1]~[15]の何れか1項に記載のデバイス。
[17] 前記増感剤と前記蛍光発光体が、発光層にあることを特徴とする、[1]~[16]の何れか1項に記載のデバイス。
[18] 前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、電子輸送材料、正孔伝導材料、量子材料(好ましくは量子ドット)、双極性ホスト、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体、遅延蛍光を有する材料の群から選択されるさらなる材料を含有することを特徴とする、[1]~[17]の何れか1項に記載のデバイス。
[19] 前記増感剤と前記蛍光発光体が存在する前記層が、いかなるさらなる材料も含有しないことを特徴とする、[1]~[18]の何れか1項に記載のデバイス。
[20] 前記増感剤と前記蛍光発光体が、互いに隣接する異なる層にあることを特徴とする、[1]~[15]の何れか1項に記載のデバイス。
[21] 前記デバイスが、層配列[SL/FEL]
n
-SL(式中、nは、1~5の整数であり、SLは、前記増感剤を含有する層であり、FELは、前記蛍光発光体を含有する層であって、異なるSL層中の前記増感剤が互いに異なるものでもよく、異なるFEL層中の前記蛍光発光体が互いに異なるものでもよい)を有する領域を含有することを特徴とする、[20]に記載のデバイス。
[22] 少なくとも1種の増感剤と少なくとも1種の蛍光発光体とを含む組成物であって、前記増感剤がリン光化合物であり、前記蛍光発光体が、0.45以上、好ましくは0.5以上、非常に好ましくは0.6以上、とりわけ好ましくは0.65以上の遮蔽係数(SF)を有する、立体的に遮蔽された化合物である、組成物。
[23] 前記組成物が、電子輸送材料、電子注入材料、電子阻止材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔阻止材料、n-ドーパント、p-ドーパント、量子材料(好ましくは量子ドット)、ホストまたはマトリックス材料、ワイドバンドギャップ材料、リン光発光体、蛍光発光体または遅延蛍光を有する発光体の群から選択される少なくとも1種のさらなる材料を含むことを特徴とする、[22]に記載の組成物。
[24] [22]または[23]に記載の組成物と、少なくとも1種の溶媒とを含む、調合物。
[25] [22]または[23]に記載の少なくとも1種の組成物を含む、電子デバイス。
【外国語明細書】