(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096735
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アレルギーの抗原およびそのエピトープ
(51)【国際特許分類】
C07K 14/46 20060101AFI20240709BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240709BHJP
G01N 33/02 20060101ALI20240709BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240709BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240709BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240709BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240709BHJP
A23L 17/30 20160101ALI20240709BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240709BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240709BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K14/46
G01N33/53 Q ZNA
G01N33/53 M
G01N33/02
C07K16/18
C12Q1/6876 Z
A23L33/10
A23L17/00 Z
A23L17/30 Z
A61K39/00 H
A61P37/08
C07K7/06
C07K7/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054192
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2022127820の分割
【原出願日】2017-12-20
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/017018
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松永 佳世子
(72)【発明者】
【氏名】矢上 晶子
(72)【発明者】
【氏名】下條 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大野 史晃
(57)【要約】 (修正有)
【課題】魚に対するアレルギーの新規抗原のエピトープを含むポリペプチド、当該ポリペプチドを含むアレルギーの診断キット、診断用組成物、及び診断方法、当該ポリペプチドを含む医薬組成物、ならびに、当該ポリペプチドを含む抗原が除去若しくは低減された原料又は加工品に関する。本発明はさらに、対象物における抗原の有無を判定するためのテスターを提供する。
【解決手段】アレルギー患者のIgE抗体に特異的に結合するポリペプチドであって、特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、アレルギーがポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、ポリペプチドが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー患者のIgE抗体に特異的に結合するポリペプチドであって、以下:
(3α)配列番号156、157、231~237からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(11α)配列番号186、366~370からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(14α)配列番号198、418~420からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のいずれか一つであり、
ここで、前記アレルギーが、前記ポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、前記ポリペプチド。
【請求項2】
アミノ酸残基数が500以下である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つを含む、アレルギーの診断キットであって、ここで、前記アレルギーが、前記ポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、前記診断キット。
【請求項4】
アレルギーの診断用組成物であって、請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つ、を抗原として含み、ここで、前記アレルギーが、前記ポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、前記診断用組成物。
【請求項5】
対象のアレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つであり、前記アレルギーが、前記ポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、前記方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つを含む医薬組成物。
【請求項7】
アレルギーを治療するための、請求項6に記載の医薬組成物であって、ここで、前記アレルギーが、前記ポリペプチドを含むアレルゲンに対するアレルギーである、前記医薬組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項9】
以下のいずれかのプライマー:
(a)請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードする核酸の塩基配列の一部及び/またはその相補鎖の一部を含むプライマー;または
(b)配列番号109、または143で示される塩基配列の少なくとも1つの一部であるプライマーおよび/または配列番号109、または143で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な配列の一部であるプライマー;
を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項10】
抗原が除去若しくは低減されていることを特徴とする原料又は加工品であって、当該抗原は請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つである、前記原料又は加工品。
【請求項11】
抗原が除去若しくは低減されている加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去若しくは低減されていることを確認するステップを有し、ここで当該抗原は請求項1又は2に記載のポリペプチドの少なくとも一つである、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚に対するアレルギーの新規抗原に関する。本発明はまた、魚に対するアレルギーの診断キット、診断用組成物、および診断方法に関する。本発明はまた、当該抗原を含む医薬組成物、および当該抗原が除去または低減された魚、魚卵、当該魚もしくは当該魚卵加工品、または当該魚卵を産むもしくは当該魚卵から生まれた魚に関する。本発明はさらに、対象物における魚抗原の有無を判定するためのテスターに関する。
【0002】
本発明はまた、抗原のエピトープを含むポリペプチドに関する。本発明はまた、当該ポリペプチドを含むアレルギーの診断キット、診断用組成物、及び診断方法に関する。本発明はまた、当該ポリペプチドを含む医薬組成物、及び当該ポリペプチドが除去若しくは低減された原料又は加工品に関する。本発明はさらに、当該ポリペプチドが除去若しくは低減された加工品の製造方法に関する。本発明はさらにまた、対象物における当該ポリペプチドを含む抗原の有無を判定するためのテスターに関する。
【背景技術】
【0003】
アレルギー患者の血液および組織中では、特定の抗原に特異的なIgE抗体が産生される。このIgE抗体と特定の抗原の相互作用により生じた生理学的結果によりアレルギー反応が惹起される。
【0004】
従来のアレルギー検査薬においては、単にアレルゲン候補の食品・食材等をすりつぶして抗原試薬を作成していることが多い(特許文献1)。このため、試薬中には無数のタンパク質が含まれており、個々のタンパク質の含有量は非常に少ないものであった。このため、従来の抗原試薬中に含まれる多数のタンパク質の中で、IgE抗体との結合について陽性反応が判定可能な閾値を超える含有量のタンパク質が当該アレルギー反応を引き起こす特定の抗原タンパク質(アレルゲンコンポーネント)であった場合にのみ、アレルギー検査における陽性反応を検出することが可能であった。逆に、食品・食材等のアレルゲン中の含有量が少ないアレルゲンコンポーネントにIgE抗体が結びつく患者については、従来のアレルギー検査薬を用いても陽性反応が判定できず、診断効率は十分に高いとはいえない状態であった。
【0005】
また、アレルギー反応の症状や重篤度は、アレルゲンコンポーネントの含有量とは必ずしも相関しない。アレルゲン候補の食品・食材中に微量に含まれるアレルゲンコンポーネントに患者のIgE抗体が反応する場合であってもアレルギー症状が現れたり、重篤度に関与したりする場合がある。
【0006】
食品・食材を構成する一つ一つのタンパク質に対するIgE抗体を調べることにより、診断に直結する感作と汎アレルゲン等による交差抗原性に基づく感作を区別して診断効率を上げる試みも進められている。魚アレルゲンに関しては、現在、以下の表に示すものなどが知られている(非特許文献1~4)。
【0007】
【表1】
しかしながら、アレルギー検査の信頼度を高めるためには、アレルゲン候補の食品・食材において、アレルゲンコンポーネントを網羅的に特定する必要があるところ、上記アレルゲンコンポーネントの測定による患者検出率はまだまだ不十分である。魚の新規アレルゲンを同定することは、診断薬の精度を高めるだけでなく、低アレルゲン食品、低アレルゲン食材や治療薬のターゲットとしても非常に重要である。
【0008】
一方、タンパク質の分離・精製に関しては、従来、細胞抽出物などからタンパク質や核酸を分離・精製する方法が種々に検討されてきている。塩濃度を利用した透析、遠心分離などはその一例であるといえる。
【0009】
また、タンパク質や核酸の残基が有する電荷や、分子量の違いを利用した精製方法も多数検討されている。電荷を利用した精製方法としては、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーや等電点電気泳動を例示できる。分子量の違いを利用した精製方法としては遠心分離、分子量ふるいによるカラムクロマトグラフィーやSDS-PAGE(ドデ
シル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を例示できる。
【0010】
近年、少量のサンプルから多様なタンパク質を分離精製する方法として、1次元目に等電点電気泳動を行い、2次元目にSDS-PAGEを行う2次元電気泳動法が用いられている。出願人らはこれまでに、分離能が高い2次元電気泳動法を開発してきた(特許文献2~5)。
【0011】
アレルゲン特異的IgE抗体はアレルゲンコンポーネント中の特定のアミノ酸配列であるエピトープを認識して結合する。しかしながら、アレルゲンコンポーネントについてエピトープまで解析されている例は若干数あるものの(非特許文献5)、極めて少ないのが現状である。また、エピトープを含むポリペプチドを利用したアレルギーの診断キットも現時点では市場に存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-286716
【特許文献2】特開2011-33544
【特許文献3】特開2011-33546
【特許文献4】特開2011-33547
【特許文献5】特開2011-33548
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Allergen Nomenclature, WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-Committee, [平成28年6月9日検索],インターネット<URL: http://www.allergen.org/search.php?allergenname=&allergensource=&TaxSource=Animalia+Chordata&TaxOrder=&foodallerg=1&bioname= >
【非特許文献2】Kuehn, A., et al., Clin. Exp. Allergy, (2013), Vol.43, No.7, pp.811-22
【非特許文献3】Gonzalez-Mancebo, E., et al., Ann. Allergy Asthma Immunol., (2014), Vol.113, No.1, pp.114-115
【非特許文献4】van der Ventel, M. L., et al., Mol. Immunol., (2011), Vol.48, No.4, pp.637-646
【非特許文献5】Matsuo, H., et al., J. Biol. Chem., (2004), Vol.279, No.13, pp.12135-12140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、魚に対するアレルギーの新規抗原を提供する。本発明はまた、魚に対するアレルギーの診断方法および診断キットを提供する。本発明はまた、当該抗原を含む医薬組成物、および当該抗原が除去または低減された魚、魚卵、当該魚もしくは当該魚卵加工品、または当該魚卵を産むもしくは当該魚卵から生まれた魚を提供する。本発明はさらに、対象物における魚抗原の有無を判定するためのテスターを提供する。
【0015】
本発明はまた、抗原のエピトープを含むポリペプチドを提供する。本発明はまた、当該ポリペプチドを含むアレルギーの診断キット、診断用組成物、及び診断方法を提供する。
本発明はまた、当該ポリペプチドを含む医薬組成物、及び当該ポリペプチドを含む抗原が除去若しくは低減された原料又は加工品を提供する。本発明はさらに、当該抗原が除去若しくは低減された加工品の製造方法に関する。本発明はさらにまた、対象物における当該ポリペプチドを含む抗原の有無を判定するためのテスターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために魚に対するアレルギーの原因抗原特定について鋭意研究を行った。その結果、魚アレルギーを有する患者の血清中のIgE抗体が特異的に結合する新規な抗原を特定することに成功した。当該知見に基づいて、本発明は完成された。
【0017】
すなわち、一態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
【0018】
[1]魚アレルギーの診断キットであって、以下(10)~(14)のタンパク質の少なくとも一つ:
(10)(10A)ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライク(myosin heavy chain, fast skeletal muscle-like)またはその変異体であって、魚に対す
るアレルギーの抗原である、以下の(10A-a)~(10A-e)のいずれかのタンパク質:
(10A-a)配列番号70において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入また
は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A-b)配列番号70で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸
配列を含むタンパク質;
(10A-c)配列番号69において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入
または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(10A-d)配列番号69で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列によ
りコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(10A-e)配列番号69で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸
とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(10B)配列番号70~108からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(11)(11A)グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライク(glycogen
phosphorylase, muscle form-like)またはその変異体であって、魚に対するアレルギーの抗原である、以下の(11A-a)~(11A-e)のいずれかのタンパク質:
(11A-a)配列番号110において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入ま
たは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(11A-b)配列番号110で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ
酸配列を含むタンパク質;
(11A-c)配列番号109において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿
入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(11A-d)配列番号109で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列に
よりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(11A-e)配列番号109で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(11B)配列番号110~119からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(12)(12A)ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライク(myosin-binding protein C, fast-type-like)またはその変異体であって、魚に対する
アレルギーの抗原である、以下の(12A-a)~(12A-e)のいずれかのタンパク質:
(12A-a)配列番号121において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入ま
たは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(12A-b)配列番号121で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ
酸配列を含むタンパク質;
(12A-c)配列番号120において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿
入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(12A-d)配列番号120で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列に
よりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(12A-e)配列番号120で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(12B)配列番号121~136からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(13)(13A)ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアル(ATP synthase
subunit beta, mitochondrial)またはその変異体であって、魚に対するアレルギーの抗原である、以下の(13A-a)~(13A-e)のいずれかのタンパク質:
(13A-a)配列番号138において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入ま
たは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(13A-b)配列番号138で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ
酸配列を含むタンパク質;
(13A-c)配列番号137において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿
入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(13A-d)配列番号137で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列に
よりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(13A-e)配列番号137で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(13B)配列番号138~142からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
(14)(14A)L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライク(L-lactate dehydrogenase A chain-like)またはその変異体であって、魚に対するアレルギーの抗原である、以下の(14A-a)~(14A-e)のいずれかのタンパク質:
(14A-a)配列番号144において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入ま
たは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(14A-b)配列番号144で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ
酸配列を含むタンパク質;
(14A-c)配列番号143において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿
入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(14A-d)配列番号143で示される塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列に
よりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;もしくは
(14A-e)配列番号143で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核
酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(14B)配列番号144~149からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質;
を抗原として含む、前記診断キット。
【0019】
[2]魚アレルギーの診断用組成物であって、上記[1]において(10)~(14)
として特定されるタンパク質の少なくとも一つを抗原として含む、前記診断用組成物。
【0020】
[3]対象の魚アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が魚アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、上記[1]において(10)~(14)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法。
【0021】
[4]上記[1]において(10)~(14)として特定されるタンパク質の少なくとも一つを含む医薬組成物。
【0022】
[5]魚アレルギーを治療するための、上記[4]に記載の医薬組成物。
【0023】
[6]抗原が除去または低減されていることを特徴とする魚または魚加工品であって、当該抗原は上記[1]において(10)~(14)として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記魚または魚加工品。
【0024】
[7]上記[1]において(10)~(14)として特定されるタンパク質の少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における魚抗原の有無を判定するためのテスター。
【0025】
[8]配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つの一部と相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における魚に対するアレルギーの原因となる抗原の有無を判定するためのテスター。
【0026】
[9]魚由来の抗原であって、上記[1]において(10)~(14)として特定されるタンパク質の少なくとも1つであり、そして魚に対するアレルギーの原因となる、前記抗原。
【0027】
本発明者らはまた、上記抗原を含む魚由来の抗原についてのエピトープを見出すことにも成功した。
【0028】
エピトープは比較的短いアミノ酸配列を有するものであるため、異なるアレルゲンコンポーネントにも同一のアミノ酸配列が存在すれば、当該IgE抗体は、複数のアレルゲンコンポーネントに結合可能である。異なるアレルゲンコンポーネントに共通するエピトープが存在する結果、両者にアレルギー患者のIgE抗体が結合するため、その抗原は交差性を有する。したがって、本願により特定されたエピトープは、交差性を含めたアレルギーの診断や治療、および当該エピトープを含む複数のアレルゲンコンポーネントの検出等を可能にするものである。
【0029】
当該知見に基づいて、本発明は完成された。すなわち、別の態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
【0030】
[10]アレルギー患者のIgE抗体に特異的に結合するポリペプチドであって、以下:
(1α)配列番号150~154、205~227からなる群より選択される少なくとも
一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2α)配列番号155、228~230からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3α)配列番号156、157、231~237からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4α)配列番号158、159、238~247からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(5α)配列番号160~162、248~261からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(6α)配列番号163~167、262~279からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(7α)配列番号168~171、280~300からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(8α)配列番号172~174、301~310からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(9α)配列番号175~178、311~326からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(10α)配列番号179~185、327~365からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(11α)配列番号186、366~370からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(12α)配列番号187~196、371~413からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(13α)配列番号197、414~417からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(14α)配列番号198、418~420からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(15α)配列番号199、421~425からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(16α)配列番号200~202、426~436からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(17α)配列番号203、204、437~444からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のいずれか一つである、前記ポリペプチド。
【0031】
[11]アミノ酸残基数が500以下である、上記[10]に記載のポリペプチド。
【0032】
[12]上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つを含む、アレルギーの診断キット。
【0033】
[13]アレルギーの診断用組成物であって、上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つ、を抗原として含む、前記診断用組成物。
【0034】
[14]対象のアレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つである、前記方法。
【0035】
[15]上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つを含む医薬組成物。
【0036】
[16]アレルギーを治療するための、上記[15]に記載の医薬組成物。
【0037】
[17]上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【0038】
[18]以下のいずれかのプライマー:
(a)上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドをコードする核酸の塩基配列の一部及び/またはその相補鎖の一部を含むプライマー;または
(b)配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つの一部であるプライマーおよび/または配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な配列の一部であるプライマー;
を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【0039】
[19]抗原が除去若しくは低減されていることを特徴とする原料又は加工品であって、当該抗原は上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つである、前記原料又は加工品。
【0040】
[20]抗原が除去若しくは低減されている加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去若しくは低減されていることを確認するステップを有し、ここで当該抗原は上記[10]又は[11]に記載のポリペプチドの少なくとも一つである、前記製造方法。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、魚に対するアレルギーの新規抗原を提供することができる。本発明において魚アレルギーを引き起こす新規な抗原(アレルゲンコンポーネント)が同定されたことから、魚に対するアレルギーの高感度な診断方法および診断キット、当該抗原を含む医薬組成物、当該抗原が除去または低減された魚、魚卵、当該魚もしくは当該魚卵加工品、または当該魚卵を産むもしくは当該魚卵から生まれた魚、ならびに対象物における魚抗原の有無を判定するためのテスターを提供することができる。
【0042】
また、本発明により、抗原のエピトープを含む新規ポリペプチドを提供することができる。本発明のポリペプチドを利用することにより、アレルギーの高感度な診断キット、診断用組成物、及び診断方法、当該ポリペプチドを含む医薬組成物、対象物における当該ポリペプチドを含む抗原の有無を判定するためのテスター、並びに当該ポリペプチドが除去若しくは低減された原料又は加工品、及びその加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】
図1Aは、サケの身の抽出物に含まれるタンパク質について、二次元電気泳動によるタンパク質の泳動パターンを示すゲルの写真(左図)および二次元電気泳動パターンに対して、魚アレルギー患者1の血清を用いたイムノブロットの写真(右図)である。ゲルの写真の左側のバンドは分子量マーカーのバンドであり、ゲルの写真の左側の数値は各分子量マーカーの分子量(KDa)である。写真上部の数値は、等電点を表す。
【
図1B】
図1Bは、サケの身の抽出物に含まれるタンパク質についての二次元電気泳動パターンに対して、魚アレルギー患者2の血清を用いたイムノブロットの写真(左図)および魚アレルギー患者3の血清を用いたイムノブロットの写真(右図)である。各写真上部の数値は、等電点を表す。
【
図2】
図2は、10種類の魚の身の抽出物に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、魚アレルギー患者1の血清を用いたイムノブロットの写真である。
【
図3】
図3は、10種類の魚の身の抽出物に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、魚アレルギー症状を有さない被験者(非魚アレルギー被験者)の血清を用いたイムノブロットの写真である。
【
図4】
図4は、6種類の魚の身の抽出物に含まれるタンパク質の二次元電気泳動パターンに対して、魚アレルギー患者4の血清を用いたイムノブロットの写真である。
【
図5】
図5は、サケのヒートショックコグネート70kDaプロテイン由来のアミノ酸配列「SMVLVKMKEIAEAYL」を有するエピトープNo.11(配列番号160)のペプチドと、ヒラメのヒートショックコグネート70kDaプロテイン由来のアミノ酸配列「AMVLVKMKETAEAYL」を有するペプチドに対して、それぞれ魚アレルギー患者および非魚アレルギー被験者の血清を用いた化学発光の測定結果を示す図である。縦軸の数値は、波長450nm光に対する吸光度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0046】
本明細書においてアレルギーとは、ある抗原に感作されている生体に、再びその抗原が入った場合に起こる、生体に不都合な過敏反応を示す状態をいう。抗原と接触した場合、あるいは当該抗原を摂取した場合に、アレルギー反応を生じ得る。ここで接触は物体に触れることをいい、特に人体に対しては皮膚、粘膜(眼、口唇等)等に付着することをいう。また、摂取は体内に取り込むことをいい、吸入、経口等の手段で取り込むことをいう。一般的に食物を摂取した場合に生じるアレルギー反応を特に食物アレルギーという。好ましい態様においてアレルギーは食物アレルギーであってもよい。食物におけるアレルギー疾患の多くにおいて、血液および組織で抗原に特異的なIgE抗体が産生される。IgE抗体は、肥満細胞または好塩基球と結合する。当該IgE抗体に特異的な抗原が再びアレルギー疾患患者の体内に入ると、当該抗原は肥満細胞または好塩基球と結合したIgE抗体と組み合わさり、そして当該IgE抗体が細胞表面で架橋し、IgE抗体-抗原相互作用の生理学的効果を生ずる。これらの生理学的効果として、ヒスタミン、セロトニン、ヘパリン、好酸球遊走因子または各種ロイコトリエン等の放出が挙げられる。これらの放出物質は、IgE抗体と特定の抗原の組み合わせにより起こるアレルギー反応を惹起する。詳しくはIgE抗体は、特定の抗原中の特定のアミノ酸配列であるエピトープを認識して結合し、当該抗原によるアレルギー反応は、上記の経路を通じて現れる。
【0047】
本発明が対象とするアレルギーは、使用するエピトープを含むアレルゲンに対するアレルギーである限り、特に限定されない。そのようなアレルギーは、モクセイ科、キク科、イネ科、パイナップル科、クルミ科、ウリ科、マメ科などの植物に対するアレルギー、キジ科、ウシ科などの動物に対するアレルギー、アジ科、タイ科、サケ科、クルマエビ科、タラバガニ科、マダコ科、マルスダレガイ科などの魚介類に対するアレルギー、アニサキス科などの寄生虫に対するアレルギーを含んでいてもよい。モクセイ科の植物としてはオリーブ(学名olea europaea)等が挙げられ、キク科の植物としてはチョウセンアザミ(
学名Cynara scolymus)等が挙げられ、イネ科の植物としてはパンコムギ(学名Triticum aestivum)、タルホコムギ(学名Aegilops tauschii)等が挙げられ、パイナップル科の
植物としてはパイナップル(学名Ananas comosus)等が挙げられ、クルミ科の植物としてはクルミ(学名Juglans regia)等が挙げられ、ウリ科の植物としてはカボチャ(学名Cucurbita moschata)等が挙げられ、マメ科の植物としてはダイズ(学名Glycine max)等が挙げられる。キジ科の動物としてはウズラ(学名Conturnix japonica)、シチメンチョウ(学名Meleagris gallopavo)等が挙げられ、ウシ科の動物としてはウシ(学名Bos taurus)等が挙げらる。アジ科の魚介類としてはカンパチ(学名Seriola dumerili)等が挙げ
られ、タイ科の魚介類としてはマダイ(学名Pagrus major)等が挙げられ、、サケ科の魚介類としてはニジマス(学名Oncorhynchus mykiss)等が挙げられる。クルマエビ科の魚
介類としてはバナメイエビ(学名Litopenaeus vannamei)等が挙げられ、タラバガニ科の魚介類としてはタラバガニ(学名Paralithodes camtschaticus)等が挙げられ、マダコ科の魚介類としてはミズダコ(学名Enteroctopus dofleini)等が挙げられ、マルスダレガ
イ科の魚介類としてはアサリ(学名Ruditapes philippinarum)等が挙げられる。アニサ
キス科の寄生虫としてはアニサキス(学名Anisakis simplex)等が挙げられる。
【0048】
本明細書において魚とは、魚類のうち硬骨魚類、軟骨魚類、好ましくは硬骨魚類、より好ましくはサケ目、スズキ目、ウナギ目、タラ目、カレイ目に属するもの、さらに好ましくはサケ科、アジ科、アナゴ科、タイ科、サバ科、タラ科、ウナギ科、ヒラメ科に属するもの、さらにより好ましくはサケ、アジ、アナゴ、クロダイ、サバ、タイ、タラ、ハマチ、ウナギ、ヒラメを意味する。魚は食用のものであってもよい。
【0049】
本明細書において「魚卵」とは、魚の卵を意味し、主に鳥類の卵を意図する「卵」と区別して表示する。魚卵は食用のものであってもよい。
【0050】
本明細書において魚に対するアレルギーとは、魚に含まれるタンパク質等を抗原として生じるアレルギー反応を有する状態をいう。魚に対するアレルギーは、魚に含まれる抗原と接触した場合、あるいは当該抗原を摂取した場合に、アレルギー反応を生じ得る。一般的に食物を摂取した場合に生じるアレルギー反応を特に食物アレルギーという。魚に対するアレルギーは食物アレルギーであってもよい。
【0051】
本明細書において抗原とは、アレルギー反応を惹起させる物質であり、アレルゲンコンポーネントとも称される。抗原は好ましくはタンパク質である。
【0052】
本明細書においてタンパク質とは、天然のアミノ酸がペプチド結合により連結された構造を有する分子である。タンパク質に含まれるアミノ酸の数は特に限定されない。本明細書において「ポリペプチド」の用語もまた、天然のアミノ酸がペプチド結合により連結された構造を有する分子を意味する。ポリペプチドに含まれるアミノ酸の数は特に限定されない。「ポリペプチド」は、「タンパク質」を含む概念である。また、2~50個程度のアミノ酸がペプチド結合により連結されたポリペプチドを、特にペプチドと呼ぶことがある。また、アミノ酸に関して光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。本明細書で用いるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのアミノ酸配列の表記法は、標準的用法及び当業界で慣用されている表記法に基づき、アミノ酸の一文字表記で表され、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。なお、アミノ酸の一文字表記においてXは、両端のアミノ酸と結合できるアミノ基およびカルボキシル基を有する物質であればいずれでもよく、特に20種類の天然のアミノ酸のいずれかであってもよいことを表す。Xで表される残基は、実施例10に示すアラニンスキャンにより、アラニンに置換してもアレルギー患者のIgE抗体への結合性が維持された部位のアミノ酸残基である。このような部位については、他のいずれかのアミノ酸に置換した場合も当該IgE抗体への結合性を維持する蓋然性が高いことは、当業者に周知である。
【0053】
抗原の特定
魚に含まれるタンパク質について、上記の手法を利用して魚に対するアレルギーの抗原の特定を行った。具体的には、魚の身からタンパク質を抽出し、下記の条件で2次元電気泳動に供した。
【0054】
1次元目の電気泳動は、等電点電気泳動用ゲルとして、ゲル長が5~10cmの範囲内であって、ゲルのpH範囲が3~10であり、泳動方向に対するゲルのpH勾配が、ゲルの全長を1とし、pH5までのゲル長をa、pH5~7のゲル長をb、pH7以上のゲル長をcとした場合において、aが0.15~0.3の範囲内、bが0.4~0.7の範囲内、cが0.15~0.3の範囲内であるゲルを用いて、具体的には、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社(以下、GE社と省略する)製のIPGゲルImmobiline Drystrip (pH3-10NL)を用いて等電点泳動を行った。電気泳動機器は、GE社製のIPGphorを用い
た。電気泳動機器の電流値の上限をゲル1本当たり75μAに設定し、電圧プログラムを、(1)300V定電圧で750Vhrまで定電圧工程を行い(当該工程終了前の泳動30分間の電流変化幅が5μAであった)、(2)300Vhrかけて1000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(3)更に4500Vhrかけて5000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(4)その後5000V定電圧で総Vhrが12000になるまで、1次元目の等電点電気泳動を行った。
【0055】
2次元目の電気泳動は、泳動方向基端部のゲル濃度が3~6%に設定され、泳動方向先端側の部分のゲル濃度が泳動方向基端部のゲル濃度よりも高く設定されたポリアクリルアミドゲルを用いて、具体的にはlife technologies社製のNuPAGE 4-12% Bris-Tris Gels IPG well mini 1mmを用いてSDS-PAGEを行った。電気泳動機器は、life technologies社製
のXCell SureLock Mini-Cellを用いた。泳動緩衝液として50mM MOPS、50mM
Tris塩基、0.1%(w/v)SDS、1mM EDTAを用い、200V定電圧で約45分間泳動を行った。
【0056】
その結果、魚のタンパク質について上記の条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、以下のスポットが、魚に対するアレルギー患者であって即時型アレルギーと診断された患者のIgE抗体に特異的に結合することを明らかにした。
スポット1:分子量80~160kDa、pI3.0~7.0
スポット2:分子量110~260kDa、pI4.0~8.0
スポット3:分子量80~160kDa、pI4.0~10.0
スポット4:分子量80~160kDa、pI5.0~11.0
スポット5:分子量50~110kDa、pI3.0~7.0
スポット6:分子量60~110kDa、pI4.0~8.0
スポット7:分子量40~80kDa、pI4.0~8.0
スポット8:分子量40~80kDa、pI3.0~7.0
スポット9:分子量20~50kDa、pI3.0~7.0
スポット10:分子量160~300、pI3.0~7.0
スポット11:分子量80~160、pI4.0~8.0
スポット12:分子量100~160、pI4.0~7.0
スポット13:分子量30~70、pI3.0~7.0
スポット14:分子量20~50、pI5.0~9.0
抗原
(10)スポット10の抗原
スポット10について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号71~108のアミノ酸配列が検出された。
【0057】
また、スポット10について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号71~
108)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライク(myosin heavy chain, fast skeletal muscle-like)(アミノ酸配列:配列番号70、それをコードする塩基配列:配列番号69)
であることが同定された。配列番号71は配列番号70のアミノ酸13~19、配列番号72は配列番号70のアミノ酸262~271、配列番号73は配列番号70のアミノ酸996~1014、配列番号74は配列番号70のアミノ酸951~961、配列番号75は配列番号70のアミノ酸1293~1303、配列番号76は配列番号70のアミノ酸1082~1091、配列番号77は配列番号70のアミノ酸1847~1856、配列番号78は配列番号70のアミノ酸172~186、配列番号79は配列番号70のアミノ酸919~937、配列番号80は配列番号70のアミノ酸249~258、配列番号81は配列番号70のアミノ酸706~717、配列番号82は配列番号70のアミノ酸50~59、配列番号83は配列番号70のアミノ酸415~430、配列番号84は配列番号70のアミノ酸834~845、配列番号85は配列番号70のアミノ酸617~630、配列番号86は配列番号70のアミノ酸1556~1567、配列番号87は配列番号70のアミノ酸1391~1408、配列番号88は配列番号70のアミノ酸1025~1040、配列番号89は配列番号70のアミノ酸1813~1836、配列番号90は配列番号70のアミノ酸743~755、配列番号91は配列番号70のアミノ酸1172~1192、配列番号92は配列番号70のアミノ酸353~364、配列番号93は配列番号70のアミノ酸1261~1292、配列番号94は配列番号70のアミノ酸1783~1789、配列番号95は配列番号70のアミノ酸1502~1519、配列番号96は配列番号70のアミノ酸1484~1497、配列番号97は配列番号70のアミノ酸1194~1212、配列番号98は配列番号70のアミノ酸1304~1314、配列番号99は配列番号70のアミノ酸369~384、配列番号100は配列番号70のアミノ酸1315~1322、配列番号101は配列番号70のアミノ酸1536~1555、配列番号102は配列番号70のアミノ酸237~248、配列番号103は配列番号70のアミノ酸1699~1725、配列番号104は配列番号70のアミノ酸1092~1104、配列番号105は配列番号70のアミノ酸407~414、配列番号106は配列番号70のアミノ酸1897~1917、配列番号107は配列番号70のアミノ酸1458~1470、配列番号108は配列番号70のアミノ酸1373~1388、にそれぞれ相当する。
【0058】
したがって、本願においてスポット10の抗原は、以下(10A-a)~(10A-e)および(10B)のいずれかであってよい。
(10A-a)配列番号70において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A-b)配列番号70で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A-c)配列番号69において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A-d)配列番号69で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10A-e)配列番号69で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(10B)配列番号70~108からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、
35、36、37、38種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号70~108のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0059】
上記(10A-a)~(10A-e)および(10B)のタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0060】
上記(10A-a)~(10A-e)および(10B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量160kDa~300kDa、好ましくは分子量160kDa~260kDa、さらに好ましくは分子量200kDa~230kDa付近、および等電点3.0~7.0、好ましくは等電点4.0~6.0、さらに好ましくは等電点4.5~5.5のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0061】
好ましくは、スポット10の抗原であるタンパク質は、魚に対するアレルギーの抗原である。
【0062】
また、上記(10A-a)~(10A-e)および(10B)の抗原のエピトープは、配列番号70のアミノ酸61~75(配列番号179)、アミノ酸471~485(配列番号180)、アミノ酸621~635(配列番号181)、アミノ酸981~995(配列番号182)、アミノ酸1011~1025(配列番号183)、アミノ酸1041~1055(配列番号184)、及びアミノ酸1741~1755(配列番号185)に存在する。スポット10の抗原が、配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、少なくとも一つの当該エピトープに対応するアミノ酸については、配列番号70における配列を保持していてもよい。
【0063】
また、アミノ酸配列が変異しても感度(患者を陽性と判断できる度合い)や特異度(健常を陽性と判断しない度合い)等のIgE抗体との結合性が残存する観点から、スポット10の抗原は、以下の変異体であってもよい。
【0064】
配列番号179の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号179の1~11番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号327若しくは328又は1~9番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号330若しくは331においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸61~75の1~11番目のアミノ酸が、配列番号327若しくは328又は1~9番目のアミノ酸が、配列番号330若しくは331のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0065】
配列番号180の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号180の7~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号333又は334においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸471~485の7~15番目のアミノ酸が、配列番号333又は334のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0066】
配列番号181の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号181の1~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号3
36又は337においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸621~635の1~10番目のアミノ酸が、配列番号336又は337のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0067】
配列番号182の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号182の2~9番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号339若しくは340、2~11番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号342若しくは343、7~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号345若しくは346又は9~14番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号348若しくは349においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸981~995の2~9番目のアミノ酸が、配列番号339若しくは340、2~11番目のアミノ酸が、配列番号342若しくは343、7~15番目のアミノ酸が、配列番号345若しくは346又は9~14番目のアミノ酸が、配列番号348若しくは349のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0068】
配列番号183の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号183の5~14番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号351又は352においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸1011~1025の5~14番目のアミノ酸が、配列番号351又は352のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0069】
配列番号184の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号184の5~12番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号354若しくは355又は9~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号357若しくは358においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸1041~1055の5~12番目のアミノ酸が、配列番号354若しくは355又は9~15番目のアミノ酸が、配列番号357若しくは358のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0070】
配列番号185の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号185の5~12番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号360若しくは361又は7~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号363若しくは364においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット10の抗原が配列番号70のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号70におけるアミノ酸1741~1755の5~12番目のアミノ酸が、配列番号360若しくは361又は7~15番目のアミノ酸が、配列番号363若しくは364のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0071】
(11)スポット11の抗原
スポット11について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号111~119のアミノ酸配列が検出された。
【0072】
また、スポット11について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号111~119)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、グリコーゲンホス
ホリラーゼ,マッスルフォーム-ライク(glycogen phosphorylase, muscle form-like)(アミノ酸配列:配列番号110、それをコードする塩基配列:配列番号109)であることが同定された。配列番号111は配列番号110のアミノ酸471~479、配列番号112は配列番号110のアミノ酸547~555、配列番号113は配列番号110のアミノ酸203~215、配列番号114は配列番号110のアミノ酸727~741、配列番号115は配列番号110のアミノ酸508~520、配列番号116は配列番号110のアミノ酸742~755、配列番号117は配列番号110のアミノ酸13~29、配列番号118は配列番号110のアミノ酸775~784、配列番号119は配列番号110のアミノ酸643~656、にそれぞれ相当する。
【0073】
したがって、本願においてスポット11の抗原は、以下(11A-a)~(11A-e)および(11B)のいずれかであってよい。
(11A-a)配列番号110において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(11A-b)配列番号110で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(11A-c)配列番号109において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(11A-d)配列番号109で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(11A-e)配列番号109で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(11B)配列番号110~119からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号110~119のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0074】
上記(11A-a)~(11A-e)および(11B)のタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0075】
上記(11A-a)~(11A-e)および(11B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量80kDa~160kDa、好ましくは分子量80kDa~110kDa、さらに好ましくは分子量90kDa~110kDa付近、および等電点4.0~8.0、好ましくは等電点5.0~7.5、さらに好ましくは等電点6.5~7.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0076】
好ましくは、スポット11の抗原であるタンパク質は、魚に対するアレルギーの抗原である。
【0077】
また、上記(11A-a)~(11A-e)および(11B)の抗原のエピトープは、配列番号110のアミノ酸261~275(配列番号186)に存在する。スポット11の抗原が、配列番号110のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該エピトープに対応するアミノ酸については、配列番号110における配列を保持していてもよい。
【0078】
また、アミノ酸配列が変異しても感度や特異度等のIgE抗体との結合性が残存する観点から、スポット11の抗原は、以下の変異体であってもよい。
【0079】
配列番号186の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号186の1~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号366又は11~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号368若しくは369においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット11の抗原が配列番号110のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号110におけるアミノ酸261~275の1~10番目のアミノ酸が、配列番号366又は11~15番目のアミノ酸が、配列番号368若しくは369のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0080】
(12)スポット12の抗原
スポット12について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号122~136のアミノ酸配列が検出された。
【0081】
また、スポット12について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号122~136)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライク(myosin-binding protein C, fast-type-like)(アミノ酸配列:配列番号121、それをコードする塩基配列:配列番号120)であることが同定された。配列番号122は配列番号121のアミノ酸197~204、配列番号123は配列番号121のアミノ酸421~434、配列番号124は配列番号121のアミノ酸329~336、配列番号125は配列番号121のアミノ酸413~420、配列番号126は配列番号121のアミノ酸240~246、配列番号127は配列番号121のアミノ酸214~228、配列番号128は配列番号121のアミノ酸1014~1024、配列番号129は配列番号121のアミノ酸842~855、配列番号130は配列番号121のアミノ酸260~274、配列番号131は配列番号121のアミノ酸672~685、配列番号132は配列番号121のアミノ酸506~512、配列番号133は配列番号121のアミノ酸205~213、配列番号134は配列番号121のアミノ酸165~182、配列番号135は配列番号121のアミノ酸321~328、配列番号136は配列番号121のアミノ酸70~82、にそれぞれ相当する。
【0082】
したがって、本願においてスポット12の抗原は、以下(12A-a)~(12A-e)および(12B)のいずれかであってよい。
(12A-a)配列番号121において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12A-b)配列番号121で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12A-c)配列番号119において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12A-d)配列番号119で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12A-e)配列番号119で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12B)配列番号121~136からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも
一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号121~136のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0083】
上記(12A-a)~(12A-e)および(12B)のタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0084】
上記(12A-a)~(12A-e)および(12B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量100kDa~160kDa、好ましくは分子量110kDa~150kDa、さらに好ましくは分子量120kDa~140kDa付近、および等電点4.0~7.0、好ましくは等電点4.0~6.0、さらに好ましくは等電点5.0~6.0のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0085】
好ましくは、スポット12の抗原であるタンパク質は、魚に対するアレルギーの抗原である。
【0086】
また、上記(12A-a)~(12A-e)および(12B)の抗原のエピトープは、配列番号121のアミノ酸181~195(配列番号187)、アミノ酸211~225(配列番号188)、アミノ酸221~235(配列番号189)、アミノ酸231~245(配列番号190)、アミノ酸251~265(配列番号191)、アミノ酸371~385(配列番号192)、アミノ酸491~505(配列番号193)、アミノ酸651~665(配列番号194)、アミノ酸831~845(配列番号195)、及びアミノ酸951~965(配列番号196)に存在する。スポット12の抗原が、配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、少なくとも一つの当該エピトープに対応するアミノ酸については、配列番号121における配列を保持していてもよい。
【0087】
また、アミノ酸配列が変異しても感度や特異度等のIgE抗体との結合性が残存する観点から、スポット12の抗原は、以下の変異体であってもよい。
【0088】
配列番号187の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号187の2~11番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号371若しくは372又は7~14番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号374若しくは375においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸181~195の2~11番目のアミノ酸が、配列番号371若しくは372又は7~14番目のアミノ酸が、配列番号374若しくは375のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0089】
配列番号188の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号188の1~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号377若しくは378又は8~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号380若しくは381においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸211~225の1~10番目のアミノ酸が、配列番号377若しくは378又は8~15番目のアミノ酸が、配列番号380若しくは381のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0090】
配列番号189の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号189の2~8番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号383においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸221~235の2~8番目のアミノ酸が、配列番号383のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0091】
配列番号190の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号190の2~9番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号385、1~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号387又は9~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号389においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸231~245の2~9番目のアミノ酸が、配列番号385、1~10番目のアミノ酸が、配列番号387又は9~15番目のアミノ酸が、配列番号389のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0092】
配列番号191の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号191の6~11番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号391又は6~12番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号393若しくは394においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸251~265の6~11番目のアミノ酸が、配列番号391又は6~12番目のアミノ酸が、配列番号393若しくは394のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0093】
配列番号192の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号192の5~8番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号396又は7~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号398若しくは399においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸371~385の5~8番目のアミノ酸が、配列番号396又は7~15番目のアミノ酸が、配列番号398若しくは399のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0094】
配列番号193の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号193の1~7番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号401又は6~15番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号403若しくは404においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸491~505の1~7番目のアミノ酸が、配列番号401又は6~15番目のアミノ酸が、配列番号403若しくは404のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0095】
配列番号194の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号194の3~7番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号406においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸651~665の3~7番目のア
ミノ酸が、配列番号406のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0096】
配列番号195の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号195の2~13番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号408においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸831~845の2~13番目のアミノ酸が、配列番号408のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0097】
配列番号196の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号196の1~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号410又は1~8番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号412においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット12の抗原が配列番号121のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号121におけるアミノ酸951~965の1~10番目のアミノ酸が、配列番号410又は1~8番目のアミノ酸が、配列番号412のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0098】
(13)スポット13の抗原
スポット13について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号139~142のアミノ酸配列が検出された。
【0099】
また、スポット13について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号139~142)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアル(ATP synthase subunit beta, mitochondrial)(アミノ酸配列:配列番号138、それをコードする塩基配列:配列番号137)であることが同定された。配列番号139は配列番号138のアミノ酸191~201、配列番号140は配列番号138のアミノ酸449~469、配列番号141は配列番号138のアミノ酸202~214、配列番号142は配列番号138のアミノ酸178~187、にそれぞれ相当する。
【0100】
したがって、本願においてスポット13の抗原は、以下(13A-a)~(13A-e)および(13B)のいずれかであってよい。
(13A-a)配列番号138において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13A-b)配列番号138で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13A-c)配列番号137において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13A-d)配列番号137で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13A-e)配列番号137で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13B)配列番号138~142からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号138~142のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されて
いてもよい。
【0101】
上記(13A-a)~(13A-e)および(13B)のタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0102】
上記(13A-a)~(13A-e)および(13B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量30kDa~70kDa、好ましくは分子量40kDa~60kDa、さらに好ましくは分子量45kDa~55kDa付近、および等電点3.0~7.0、好ましくは等電点3.0~6.0、さらに好ましくは等電点4.0~5.5のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0103】
好ましくは、スポット13の抗原であるタンパク質は、魚に対するアレルギーの抗原である。
【0104】
また、上記(13A-a)~(13A-e)および(13B)の抗原のエピトープは、配列番号138のアミノ酸211~225(配列番号197)に存在する。スポット13の抗原が、配列番号138のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該エピトープに対応するアミノ酸については、配列番号138における配列を保持していてもよい。
【0105】
また、アミノ酸配列が変異しても感度や特異度等のIgE抗体との結合性が残存する観点から、スポット13の抗原は、以下の変異体であってもよい。
【0106】
配列番号197の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号197の7~10番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号414又は9~14番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号416においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット13の抗原が配列番号138のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号138におけるアミノ酸211~225の7~10番目のアミノ酸が、配列番号414又は9~14番目のアミノ酸が、配列番号416のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0107】
(14)スポット14の抗原
スポット14について質量分析による配列同定を行った結果、配列番号145~149のアミノ酸配列が検出された。
【0108】
また、スポット14について、質量分析装置から得られた質量データ(配列番号145~149)をNCBIのタンパク質データと照合して解析したところ、L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライク(L-lactate dehydrogenase A chain-like)(アミノ酸配列:配列番号144、それをコードする塩基配列:配列番号143)であることが同定された。配列番号145は配列番号144のアミノ酸119~126、配列番号146は配列番号144のアミノ酸7~22、配列番号147は配列番号144のアミノ酸9~22、配列番号148は配列番号144のアミノ酸270~278、配列番号149は配列番号144のアミノ酸91~118、にそれぞれ相当する。
【0109】
したがって、本願においてスポット14の抗原は、以下(14A-a)~(14A-e)および(14B)のいずれかであってよい。
(14A-a)配列番号144において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入また
は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質。
(14A-b)配列番号144で示されるアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(14A-c)配列番号143において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(14A-d)配列番号143で示される塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(14A-e)配列番号143で示される塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(14B)配列番号144~149からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも一つを含むタンパク質、好ましくは当該アミノ酸配列の少なくとも2、3、4、5種またはすべての配列を含むタンパク質。ここにおいて、配列番号144~149のいずれかで示されるアミノ酸配列は、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されていてもよい。
【0110】
上記(14A-a)~(14A-e)および(14B)のタンパク質には、リン酸化や糖鎖修飾、アミノアシル化、開環、脱アミノ化などにより当該タンパク質のアミノ酸残基が修飾を受けているタンパク質もまた、含まれる。
【0111】
上記(14A-a)~(14A-e)および(14B)のタンパク質は、上記「抗原の特定」の項目に記載した条件で2次元電気泳動を行った際のゲルにおいて、分子量20kDa~50kDa、好ましくは分子量30kDa~50kDa、さらに好ましくは分子量30kDa~40kDa付近、および等電点5.0~9.0、好ましくは等電点6.0~8.0、さらに好ましくは等電点6.5~7.5のスポットとして現れるタンパク質であってもよい。
【0112】
好ましくは、スポット14の抗原であるタンパク質は、魚に対するアレルギーの抗原である。
【0113】
また、上記(14A-a)~(14A-e)および(14B)の抗原のエピトープは、配列番号144のアミノ酸11~25(配列番号198)に存在する。スポット14の抗原が、配列番号144のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該エピトープに対応するアミノ酸については、配列番号144における配列を保持していてもよい。
【0114】
また、アミノ酸配列が変異しても感度や特異度等のIgE抗体との結合性が残存する観点から、スポット14の抗原は、以下の変異体であってもよい。
【0115】
配列番号198の配列を有するエピトープのうち、アレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なのは、配列番号198の5~13番目のアミノ酸の位置に相当する配列番号418又419においてX以外のアミノ酸で示される部位である。したがって、別の好ましい態様において、スポット14の抗原が配列番号144のアミノ酸配列に対して変異を含むものである場合、当該抗原は、配列番号144におけるアミノ酸11~25の5~13番目のアミノ酸が、配列番号418又419のアミノ酸配列であるものであってよい。
【0116】
本明細書において、アミノ酸配列について「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加された」という場合は、対象となるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸(例えば、アミノ酸配列の全長に対して30%、好ましくは25%、2
0%、15%、10%、5%、3%、2%または1%のアミノ酸)が欠失しているか、他のアミノ酸に置換されているか、他のアミノ酸が挿入されているか、および/または他のアミノ酸が付加されているアミノ酸配列をいう。
【0117】
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。以下に、アミノ酸残基の保存的置換について置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、メチオニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、
E群:セリン、スレオニン
F群:フェニルアラニン、チロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができる。例えば、不用意な糖鎖修飾を排除するために上記のB、D、E群のアミノ酸をそれ以外の群のアミノ酸に置換してもよい。または、3次構造でタンパク質中に折りたたまれることを防ぐためにシステインを欠失させるか、他のアミノ酸に置換してもよい。あるいは、親水性/疎水性のバランスが保たれるように、または合成を容易にするために親水度を上げるように、アミノ酸に関する疎水性/親水性の指標であるアミノ酸のハイドロパシー指数(J. Kyte およびR. Doolittle, J. Mol. Biol., Vol.157, p.105-132, 1982)を考慮して、アミノ酸を置換してもよい。
【0118】
別の態様として、元のアミノ酸よりも立体障害の少ないアミノ酸への置換、例えばF群からA、B、C、D、E群への置換;電荷を持つアミノ酸から電荷を持たないアミノ酸への置換、例えばB群からC群への置換、をしてもよい。そうすることで、IgE抗体との結合性が向上することがある。
【0119】
本明細書において、2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLASTおよびClustalW等があげられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝
情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DINASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
【0120】
本明細書において、塩基配列について「1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入もしくは付加された」という場合は、対象となる塩基配列において、1個もしくは数個のヌクレオチド(例えば、塩基配列の全長に対して30%、好ましくは25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%または1%のアミノ酸)が欠失しているか、他のヌクレオチドに置換されているか、他のヌクレオチドが挿入されているか、および/または他のヌクレオチドが付加されている塩基配列をいう。上記ヌクレオチドの欠失、置換、挿入もしくは付加により、アミノ酸をコードする配列にフレームシフトを生じないことが好ましい。
【0121】
本明細書において、2つの塩基配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性%を決定することもできる。そのような配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10):バージョン2.2.7、またはWU-BLAST2.0アルゴリズム等があげられる。WU-BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されているものを用いることができる。
【0122】
本明細書における「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件としては、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6-7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示されている。好ましくは、中程度にストリンジェントな条件は、ハイブ
リダイゼーション条件として、1×SSC~6×SSC、42℃~55℃の条件、より好ましくは、1×SSC~3×SSC、45℃~50℃の条件、最も好ましくは、2×SSC、50℃の条件があげられる。ハイブリダイゼーション溶液中に、例えば、約50%のホルムアミドを含む場合には、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採用する。洗浄条件としては、0.5×SSC~6×SSC、40℃~60℃があげられる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄時には、一般に、0.05%~0.2%、好ましくは約0.1%SDSを加えてもよい。高度にストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般に、高度にストリンジェント(ハイストリンジェント)な条件としては、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を含む。例えば、ハイブリダイゼーション条件として、0.1×SSC~2×SSC、55℃~65℃の条件、より好ましくは、0.1×SSC~1×SSC、60℃~65℃の条件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件があげられる。洗浄条件として、0.2×SSC~2×SSC、50℃~68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60~65℃が挙げられる。
【0123】
抗原は、魚から当業者に周知のタンパク質精製方法を組み合わせて分離・精製することによって得てもよい。または、抗原は、当業者に周知の遺伝子組換え技術により抗原を組換えタンパク質として発現させ、そして当業者に周知のタンパク質精製方法により分離・精製することによって得てもよい。
【0124】
タンパク質の精製方法としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGEなど分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
【0125】
遺伝子組換え技術によるタンパク質の調製は、抗原をコードする核酸を含む発現ベクターを調製し、当該発現ベクターを適切な宿主細胞中に遺伝子導入または形質転換により導入し、当該宿主細胞を組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養し、そして当該宿主細胞中で発現された組換えタンパク質を回収することにより行う。
【0126】
「ベクター」は、それに連結させた核酸を宿主細胞内に導入するために用いることが可
能な核酸であり、「発現ベクター」はベクターにより導入された核酸がコードするタンパク質の発現を導くことが可能なベクターである。ベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が含まれる。当業者は、使用する宿主細胞の種類に応じて、組換えタンパク質の発現に適切な発現ベクターを選択することができる。精製を容易にするために、His×6残基等のアフィニティータグを含むようにしてもよい。また、シグナル配列を含んで細胞外に排出されるように合成してもよい。
【0127】
「宿主細胞」は、ベクターにより遺伝子導入または形質転換を受ける細胞である。宿主細胞は、使用するベクターに応じて当業者が適切に選択することができる。宿主細胞は、例えば、大腸菌(E. coli)などの原核生物由来であることが可能である。大腸菌のよう
な原核細胞を宿主として使用する場合、本発明の抗原は、原核細胞内での組換えタンパク質の発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えタンパク質から切り離すこともできる。あるいは、酵母などの単細胞真核生物、植物細胞、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)などの、真核生物由来の細胞やカイコであることが可能である。
【0128】
発現ベクターの宿主細胞への遺伝子導入または形質転換は、当業者に公知の手法により適宜行うことができる。また、当業者は、宿主細胞の種類に応じて組換えタンパク質の発現に適する条件を適宜選択し、宿主細胞を培養することにより組換えタンパク質を発現させることができる。そして、組換えタンパク質を発現した宿主細胞をホモジナイズし、得られたホモジネートから上述したタンパク質の精製方法を適宜組み合わせて行うことにより、組換えタンパク質として発現された抗原を分離・精製することができる。
【0129】
診断キット・診断方法(1)
本発明は、対象の魚アレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が魚アレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は上記(10)~(14)の抗原として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法を提供する。
【0130】
対象から得られた試料とは、対象から採取されたIgE抗体、が含まれる溶液である。そのような溶液には、例えば、血液、唾液、痰、鼻水、尿、汗、涙が含まれる。対象から得られた試料は、抗原に接触させる前に、試料中のIgE抗体濃度を高めるための前処理が施されていてもよい。試料の前処理としては、例えば血液から血清、血しょうを得ることが含まれてもよい。またさらに、抗原との結合部分であるFab部分を精製してもよい。特に好ましい態様において、上記工程(i)は、対象から得られた血清中のIgE抗体と抗原を接触させることにより行われる。
【0131】
IgE抗体は、IgE抗体そのものであってもよく、IgE抗体が結合した肥満細胞等であってもよい。
【0132】
対象から得られた試料と抗原との接触およびその結合の検出は、既知の方法により行うことが可能である。そのような方法には、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorvent Assay)、サンドイッチ免疫測定法、イムノブロット法、免疫沈降法、イムノクロ
マト法による検出を用いることができる。これらはいずれも、抗原に対象のIgE抗体を
接触させて結合させ、抗原に特異的に結合したIgE抗体を検出する手法である。例えば、酵素標識した二次抗体を作用させ、酵素の基質(通常は発色あるいは発光試薬)を加えて酵素反応の生成物を検出する方法、ビオチン標識した二次抗体を作用させ、アビジン結合色素を加えて色素を検出する方法、蛍光標識した二次抗体を検出する方法等が挙げられる。あるいは、表面プラズモン共鳴(SPR)等の、抗原とIgE抗体の結合を評価可能な
測定方法による検出を用いることもできる。複数種の抗原特異的IgE抗体が混合されていてもよい。
【0133】
抗原は、単離された抗原が担体に固定されている状態であってもよい。この場合は上記工程(i)および(ii)においてELISA、サンドイッチ免疫測定法、イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴等が利用でき、また、上記工程(i)では、対象から得られた試料を抗原を固定した面に接触させることにより行う。単離された抗原は、魚から当業者に周知のタンパク質精製方法を組み合わせて分離・精製することによって、または遺伝子組換え技術により調製することによって得てもよい。また、抗原を結合する抗体が固定されている状態であってもよい。
【0134】
抗原は担体に固定されていない状態であってもよい。この場合は、上記工程(i)および(ii)において、フローサイトメトリー等が利用でき、レーザー光により抗体が結合した抗原の存在を確認できる。例えば、抗原が抗体と結合し、試料中の好塩基球を活性化すると発現される表面抗原CD203cの量を測定する好塩基球活性化試験(BAT)等が挙げられる。また、抗原を試料中の抗体との結合を介して血球に接触させることにより、ヒスタミンを遊離するかどうかを調べるヒスタミン遊離試験(HRT)も挙げられる。
【0135】
また、抗原は2次元電気泳動により分離した状態から転写してイムノブロット法による検出を行ってもよい。2次元電気泳動は、1次元目に等電点電気泳動、2次元目にSDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行うことで、タンパク質試料を分離する手法である。この場合、2次元電気泳動の条件は、本願発明の抗原が分離できる条件であれば特に限定されない。例えば、上記「抗原の特定」の項目において記載した2次元電気泳動の条件を利用できる。あるいは、上述の特許文献1~4の記載を参考にして電気泳動の条件を定めることもでき、例えば、以下:
(A)1次元目の等電点電気泳動ゲルとして、ゲル長が5~10cmの範囲内であって、ゲルのpH範囲が3~10であり、泳動方向に対するゲルのpH勾配が、pH5までのゲル長をa、pH5~7のゲル長をb、pH7以上のゲル長をcとした場合において、「a<b]および「b>c」の関係を満たす;
(B)(A)の場合であって、ゲルの全長を1とした場合、aが0.15~0.3の範囲内、bが0.4~0.7の範囲内、cが0.15~0.3の範囲内である;
(C)1次元目の等電点電気泳動において、検体を含むゲル1本につき100V~600Vの範囲内の値の定電圧の印加による定電圧工程を行い、泳動30分あたりの泳動変化幅が5μAの範囲内となった後に前記定電圧から電圧を上昇させる電圧上昇行程を始める;(D)(C)の場合に、電圧上昇工程の最終電圧を3000V~6000Vの範囲内とする;
(E)1次元目の等電点電気泳動ゲルの長手方向のゲル長が5~10cmであって、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向基端部のゲル濃度を3~6%とする;および
(F)(E)の場合に、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向先端側の部分のゲル濃度が、泳動方向基端部のゲル濃度よりも高く設定する;
からなる群より選択される少なくとも一つを満たす条件で2次元電気泳動を行うことができる。
【0136】
上記(10)~(14)の抗原は、魚に対するアレルギーの患者のIgE抗体と特異的に結合する抗原である。したがって、対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された
場合、対象が魚に対するアレルギーであることの指標が提供される。
【0137】
本発明はまた、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを含む魚に対するアレルギーの診断キットを提供する。本発明の診断キットは、上記の魚に対するアレルギーを診断するための指標を提供する方法、または下記の診断方法に用いてもよい。本発明の診断キットは、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを含むほか、酵素標識された抗IgE抗体および当該酵素の基質となる発色基質もしくは発光基質、またはビオチン標識された抗IgE抗体および当該ビオチンと結合するアビジン結合色素を含んでいてもよい。また、蛍光標識された抗IgE抗体を用いてもよい。本発明の診断キットにおいて、抗原は担体に固定化された状態で提供されてもよい。本発明の診断キットはまた、診断のための手順についての説明書や当該説明を含むパッケージと共に提供されてもよい。
【0138】
別の態様において、上記の診断キットは、魚に対するアレルギーについてのコンパニオン診断薬を含む。コンパニオン診断薬とは、医薬品の効果が期待される患者の特定または医薬品の重篤な副作用リスクを有する患者の特定、あるいは医薬品を用いた治療の最適化のために当該医薬品の反応性を検討するために用いるものである。ここで治療の最適化とは、例えば、用法容量の決定や投与中止の判断、どのアレルゲンコンポーネントを使って免疫寛容するかの確認等が含まれる。
【0139】
本発明はまた、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを含む魚に対するアレルギーの診断用組成物を提供する。本発明の診断用組成物は、下記の診断方法に用いることができる。本発明の診断用組成物は、必要に応じて本発明の抗原とともに一般的に用いられる、薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。
【0140】
一態様において、本発明は、対象の魚に対するアレルギーを診断する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象が魚に対するアレルギーであると判断する;
ことを含み、ここで当該抗原は上記(10)~(14)の抗原として特定されるタンパク質の少なくとも一つ、である、前記方法を提供する。ここにおいて(i)および(ii)の各工程は、魚に対するアレルギーを診断するための指標を提供する方法の各工程について説明したとおりに行われる。
【0141】
別の態様において、本発明は、対象の魚に対するアレルギーを診断する方法であって、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを対象に投与することを含む、前記方法を提供する。当該方法は、皮膚に抗原を適用することを特徴とする皮膚テストの形式で行ってもよい。皮膚テストには、皮膚上に診断用組成物を適用した後に、出血しない程度に微少な傷をつけることで皮膚に抗原を浸透させて皮膚反応を観察するプリックテスト、診断用組成物を適用した上に皮膚を少し引っ掻いて反応を観察するスクラッチテスト、クリームや軟膏などの形態の診断用組成物を皮膚に適用して反応を観察するパッチテスト、抗原を皮内に投与して反応を観察する皮内テスト、などの形態が含まれる。プリックテストやスクラッチテストにおいて皮膚に診断用組成物を浸透する方法としては、ランセットの先端を診断用組成物に接触し、その接触部位を皮膚にさすことで傷をつけて浸透させる方法であってもよい。抗原を適用した部分の皮膚に腫れなどの皮膚反応が生じた場合、その対象は魚に対するアレルギーを有すると診断する。ここで、皮膚に適用する抗原の量は、例えば、1回あたり100μg以下の用量であってよい。
【0142】
アレルギーの診断においては、抗原の特定を目的とした負荷試験がしばしば行われてい
る。上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つは、魚に対するアレルギーであることを診断するための負荷試験の有効成分として用いることができる。ここで、負荷試験に用いる抗原タンパク質としては、発現精製したタンパク質であってもよく、例えば、イネにスギ花粉抗原の遺伝子を形質転換し、その抗原タンパク質を米内に発現させた花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0143】
また別の態様において、本発明は魚に対するアレルギーの診断に使用するための上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを提供する。ここで、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを、既知の抗原と混合して提供することも含む。
【0144】
さらなる別の態様において、本発明は魚に対するアレルギーの診断薬の製造のための上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0145】
医薬組成物・治療方法(1)
本発明は、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを含む医薬組成物を提供する。
【0146】
一態様において、上記の医薬組成物は、魚に対するアレルギーを治療するために用いられる。アレルギーの治療とは、体内に取り込んでも発症しない抗原の限界量を増やすことであり、最終的には通常の抗原の摂取量では発症しない状態(寛解)を目指すものである。
【0147】
本発明はまた、魚に対するアレルギーの治療を必要とする患者に対して、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを投与することを含む、魚に対するアレルギーを治療する方法を提供する。
【0148】
別の態様において、本発明は魚に対するアレルギーの治療に使用するための上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つを提供する。さらに別の態様において本発明は、魚に対するアレルギーの治療薬の製造のための上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0149】
アレルギーの治療においては、患者に抗原を投与することで免疫寛容へと誘導することを目標とした、減感作療法がしばしば行われている。上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つは、魚に対するアレルギーに対する減感作療法のための有効成分として用いることができる。ここで、減感作療法に用いる抗原タンパク質としては、発現精製したタンパク質であってもよく、例えば、イネにスギ花粉抗原の遺伝子を形質転換し、その抗原タンパク質を米内に発現させた花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0150】
本発明の医薬組成物は、通常の投与経路により投与することができる。通常の投与経路には例えば、経口、舌下、経皮、皮内、皮下、血液内、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、直腸内の投与が含まれる。
【0151】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて本発明の抗原と共に、一般的に用いられる薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、または各種の添加剤(例えば安定剤、溶解補助剤、乳濁化剤、緩衝剤、保存剤、着色剤等)を常法により添加した医薬組成物として用いることができる。医薬組成物の剤型は、投与経路に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ、舌下錠、注射剤、鼻腔内噴霧剤、パップ剤、液剤、クリーム剤、ローション剤、坐剤等の形態であってよい。本発明の医薬組成物の投与量、投与回数および/または投与期間は、投与経路、症状、年齢や体重などの患者の特性
等に応じて医師が適宜選択することができる。例えば、成人の場合、1回あたり100μg以下の用量で投与してもよい。投与間隔は、例えば、毎日、毎週1回、月に2回、または3ヶ月に1回程度であってよい。投与期間は例えば、数週間から数年であってよい。投与期間内において、投与量を段階的に増加させる投与方法であってもよい。
【0152】
テスター(1)
本発明は、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つに対する抗体を含むテスターを提供する。
【0153】
当該抗体は、常法により作製することができる。例えば、ウサギなどの哺乳動物を上記(10)~(14)の抗原で免疫することにより作製してもよい。当該抗体は、IgE抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’)であってもよい。
【0154】
また、上記のテスターにおいて、当該抗体は担体に結合した形で提供されていてもよい。担体は、抗体と抗原の結合の検出に利用可能な担体であれば特に限定されない。当業者に公知の任意の担体が利用できる。
【0155】
抗原含有の有無を調べる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・作製したIgE抗体を含むテスターを食品・食材等から得られた試料に接触させて、例えばELISA法等を用いて当該IgE抗体と試料中の抗原との結合を検出し、当該IgE抗体と抗原との結合が検出された場合に、対象食品・食材等に当該抗原が残留していると判断する方法。
・食品・食材等からタンパク質を抽出し、電気泳動して抗原のスポットバンドがあるかどうかを抗体により検出する方法。
・ろ紙などに食品・食材等をしみこませ、そこに含まれる抗原を検出するように、抗体溶液を反応させる方法。
【0156】
本発明の別の態様において、配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つの一部と相補的な塩基配列を有するプライマーを含むことを特徴とする、対象物における魚に対するアレルギーの抗原の有無を判定するためのテスターを含む。非限定的に、上記プライマーは例えば、配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つの配列の3’末端の部分または中央部分の配列の、好ましくは、12残基、15塩基、20塩基、25塩基と相補的な塩基配列を有する。特にmRNAを対象とする場合は、ポリAテールの相補プライマーを有する。好ましい態様において、上記のプライマーを含むテスターは、さらに配列番号69、109、120、137または143で示される塩基配列の少なくとも1つの配列の5’末端の部分の塩基配列、好ましくは12塩基、15塩基、20塩基、25塩基からなる塩基配列を含むプライマーを含んでもよい。
【0157】
例えば、魚から得られたDNAまたはmRNAを鋳型として、前記プライマーを用い、RT-PCRを含むPCR(Polymerase Chain Reaction)でDNAまたはcDNAを増
幅し、増幅されたDNAまたはcDNAの配列を配列番号69、109、120、137または143と比較することで、抗原の有無を判断する。mRNAをPCRで増幅する方法は、RACE法等が例示できる。この時、増幅されたDNAまたはcDNAと配列番号69、109、120、137または143との比較において、同じアミノ酸をコードする点変異が存在する場合、または、増幅されたDNAまたはcDNAの塩基配列において、配列番号69、109、120、137または143の塩基配列に対する塩基の挿入、欠失、置換もしくは付加が存在しても、当該DNAまたはcDNAがコードするアミノ酸配列が配列番号70、110、121、138または144のアミノ酸配列に対して同一
性が70%以上、好ましくは80、90、95、98、99%以上となる場合は、抗原が存在すると判断する。
【0158】
一態様において、上記のテスターは、食材(魚もしくは魚卵)または食品製造ライン中などの対象物中の抗原含有の有無を調べるために用いられる。上記テスターは、製造業者による製造ラインおよび出荷前製品の品質検査用として用いてもよく、喫食者自身による対象食品・食材の抗原含有の有無のチェック用として用いてもよい。
【0159】
アレルゲン除去食品等
本発明は、上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つが除去または低減されていることを特徴とする魚、魚卵、当該魚もしくは当該魚卵加工品、または当該魚卵を産むもしくは当該魚卵から生まれた魚を提供する。
【0160】
魚、魚卵、当該魚もしくは当該魚卵加工品、または当該魚卵を産むもしくは当該魚卵から生まれた魚において、本発明の抗原を除去または低減する方法は限定されない。抗原の除去または低減は、本発明の抗原が除去または低減される限り、いかなる方法によって行われてもよい。
【0161】
例えば、本発明の抗原が除去または低減された魚または魚卵は、遺伝子ノックアウト技術を用いて、本発明の抗原の発現がノックアウトされた魚または魚卵を調製してもよい。
【0162】
遺伝子ノックアウト技術は、当業者に公知の手法のいずれかを用いることができる。例えば、Oishi, et al.(Scientific Reports, Vol.6, Article number: 23980, 2016, doi:10.1038/srep23980)は、ゲノム編集技術であるCRISPER/Cas9を始原生殖細胞に適用して、アレルゲンタンパク質遺伝子欠失個体を得ることを記載している。同様の手法を利用して、本発明の抗原が除去された魚または魚卵を得てもよい。また、抗原を含有しないまたは含有量の少ない魚または魚卵との人工授精による交配により、本発明の抗原が除去・低減された魚または魚卵を得てもよい。魚または魚卵の人工交配は、常法により行うことができる。
【0163】
本発明の抗原が除去または低減された魚加工品または魚卵加工品は、本発明の抗原が除去または低減された魚を原料とした加工品であってもよい。通常の魚または魚卵を原料とする場合は、魚加工品または魚卵加工品の調製前または調製後に本発明の抗原を除去または低減する処理を行う。通常の魚または魚卵を原料とした魚加工品または魚卵加工品において本発明の抗原を除去または低減する方法として、高圧処理および中性塩溶液による溶出や、高温スチーム等の、食品・食材中のタンパク質成分を除去する方法や、熱処理および酸処理による加水分解・変性・アミノ酸変化(側鎖の化学修飾・脱離等)する方法が挙げられる。 本発明の抗原が除去または低減された魚は、上記本発明の抗原が除去または低減された魚卵を孵化し、成長させた魚であってもよい。また、本発明の抗原が除去または低減された魚卵は、上記本発明の抗原が除去または低減された魚から得られたものであってもよい。
【0164】
アレルゲン除去加工品の製造方法(1)
本発明は、抗原が除去または低減されている魚加工品または魚卵加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップを有する、ここで当該抗原は上記(10)~(14)の抗原の少なくとも一つである、前記製造方法を提供する。
【0165】
抗原が除去または低減されている魚加工品または魚卵加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップは、上記「テスター(1)」の項目において記
載した方法により抗原の含有の有無を確認することにより行ってもよい。
【0166】
また、抗原が除去または低減されている魚加工品または魚卵加工品の製造は、上記「アレルゲン除去食品等」の項目において記載した方法により行ってもよい。
【0167】
抗原のエピトープ
実施例2、3、5~8に示すとおり特定した抗原ならびに公知のサケ等のアレルギー抗原であるアルドラーゼ(aldolase)、ベータ-エノラーゼ(β-enolase)、および公知のイワシ等のアレルギーの抗原であるグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)について、実施例10に示すとおり、エピトープおよびそのエピトープ内でアレルギー患者のIgE抗体との結合性に重要なアミノ酸を特定した。
【0168】
本発明は、アレルギー患者のIgE抗体に特異的に結合するアミノ酸配列を含むポリペプチドとして以下(1α)~(17α)のポリペプチドを提供する。
【0169】
(1α)α-アクチニン-3のエピトープ
本発明において、(1α)のポリペプチドは以下(1α-1)~(1α-6)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0170】
(1α-1)配列番号150~154、207、210、213、218、224、及び227からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0171】
(1α-2)XXXXXXKPDX(配列番号205)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、SXXXXXKPDK(配列番号206)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号207の1~6、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号207の2~6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0172】
別の態様において、DKXXXR(配列番号208)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号210の3~5番目のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0173】
(1α-3)XXXXXXXDPM(配列番号211)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YXXXXKDDPM(配列番号212)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号213の1~7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号213の2~5番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0174】
別の態様において、XXXXXXDXPM(配列番号214)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YSXXXXDXPM(配列番号215)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号213の1~6、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号213の3~6、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0175】
また別の態様において、PXGXLXX(配列番号216)のアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。好ましくは、PXGNLNT(配列番号217)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号218の2、4、6、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号218の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0176】
(1α-4)SXFYHAFAGAEQAET(配列番号219)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、配列番号152の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0177】
(1α-5)TXLXXXNXPXXXXSE(配列番号220)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、TXLRLXNRPXXXXSE(配列番号221)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。より好ましくは、配列番号153の2、4~6、8、10~13番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7、8又は9個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号153の2、6、10~13番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0178】
(1α-6)SXKTXXXXXEXR(配列番号222)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、SDKTXXXXXELR(配列番号223)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号224の2、5~9、11番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号224の5~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0179】
別の態様において、XXRE(配列番号225)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、LXRE(配列番号226)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号227の1、2番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号227の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0180】
一態様において、(1α)のポリペプチドは、α-アクチニン-3の全長アミノ酸配列(配列番号2)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0181】
(2α)EEF1A2バインディングプロテイン-ライクのエピトープ
本発明において、(2α)のポリペプチドは以下(2α-1)及び(2α-2)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0182】
(2α-1)配列番号155及び230からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0183】
(2α-2)XXNRXYYXXXE(配列番号228)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、LDNRLYYXVAE(配列番号229)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好
ましくは、配列番号230の1、2、5、8~10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸
配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号230の8番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0184】
一態様において、(2α)のポリペプチドは、EEF1A2バインディングプロテイン-ライクの全長アミノ酸配列(配列番号5)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0185】
(3α)α-1,4-グルカンホスホリラーゼのエピトープ
本発明において、(3α)のポリペプチドは以下(3α-1)~(3α-3)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0186】
(3α-1)配列番号156、157、232、235、及び237からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0187】
(3α-2)YXXXXXXR(配列番号231)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号232の2~7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0188】
別の態様において、GGYXQXXLXR(配列番号233)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、GGYIQXXLDR(配列番号234)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号235の4、6、7、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号235の6、7番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0189】
(3α-3)RXKXXXDY(配列番号236)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号237の2、4~6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0190】
一態様において、(3α)のポリペプチドは、α-1,4-グルカンホスホリラーゼの全長アミノ酸配列(配列番号10)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0191】
(4α)エロンゲーションファクター2のエピトープ
本発明において、(4α)のポリペプチドは以下(4α-1)~(4α-3)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0192】
(4α-1)配列番号158、159、239、242、245、及び247からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0193】
(4α-2)KKXXXR(配列番号238)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号239の3~5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0194】
別の態様において、KKXXXRN(配列番号240)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、KKSNXRN(配列番号241)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号242の3~5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号242の5番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0195】
(4α-3)LXXXLXXKXXI(配列番号243)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、LXDXLXXKXXI(配列番号244)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好
ましくは、配列番号245の2~4、6、7、9、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号245の2、4、6、7、9、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0196】
別の態様において、GKXXXXXXXXS(配列番号246)のアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。好ましくは、配列番号247の3~10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0197】
一態様において、(4α)のポリペプチドは、エロンゲーションファクター2の全長アミノ酸配列(配列番号19)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0198】
(5α)ヒートショックコグネート70kDaプロテインのエピトープ
本発明において、(5α)のポリペプチドは以下(5α-1)~(5α-4)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0199】
(5α-1)配列番号160~162、250、252(アミノ酸配列:QYK)、25
5、258、及び261からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0200】
(5α-2)EXXXXYL(配列番号248)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好まし
くは、EIXXAYL(配列番号249)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは
、配列番号250の2~5番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号250の3、4番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0201】
(5α-3)QXK(配列番号251)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは
、配列番号252の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0202】
別の態様において、XDXXXDK(配列番号253)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、DDVXXDK(配列番号254)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号255の1、3~5番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号255の4、5番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0203】
(5α-4)KXSXEXK(配列番号256)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好まし
くは、KLSXEDK(配列番号257)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは
、配列番号258の2、4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号258の4番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0204】
別の態様において、QXXXDKC(配列番号259)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、QKIXDKC(配列番号260)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号261の2~4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号261の4番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0205】
一態様において、(5α)のポリペプチドは、ヒートショックコグネート70kDaプロテインの全長アミノ酸配列(配列番号26)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0206】
(6α)セロトランスフェリンのエピトープ
本発明において、(6α)のポリペプチドは以下(6α-1)~(6α-5)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0207】
(6α-1)配列番号163~167、263、266、269、271、273、276、及び279からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0208】
(6α-2)XXCYY(配列番号262)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましく
は、配列番号263の1、2番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0209】
別の態様において、VXVXKKXXX(配列番号264)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、VAVAKKGXE(配列番号265)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号266の2、4、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号266の8番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0210】
(6α-3)XKXXXXEX(配列番号267)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、XKXGXGEX(配列番号268)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号269の1、3~6、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号269の1、3、5、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0211】
(6α-4)XXKXM(配列番号270)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましく
は、配列番号271の1、2、4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0212】
別の態様において、VTNFXXXS(配列番号272)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、配列番号273の5~7番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0213】
(6α-5)YXYXXXXXC(配列番号274)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ま
しくは、YXYNXXFXC(配列番号275)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好まし
くは、配列番号276の2、4~8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号276の2、5、6、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0214】
別の態様において、XXCLV(配列番号277)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、FXCLV(配列番号278)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましく
は、配列番号279の1、2番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号279の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0215】
一態様において、(6α)のポリペプチドは、セロトランスフェリンの全長アミノ酸配列(配列番号33)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0216】
(7α)ミオシンバインディングプロテインH-ライクのエピトープ
本発明において、(7α)のポリペプチドは以下(7α-1)~(7α-5)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0217】
(7α-1)配列番号168~171、282、284、287、290、292、295、297及び300からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0218】
(7α-2)YVKXXXXKI(配列番号280)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ま
しくは、YVKXVXEKI(配列番号281)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好まし
くは、配列番号282の4~7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号282の4、6番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0219】
別の態様において、NIXIP(配列番号283)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、配列番号284の3番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0220】
(7α-3)SXEXXXKXXXF(配列番号285)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、SXEXCXKXXXF(配列番号286)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好
ましくは、配列番号287の2、4~6、8~10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号287の2、4、6、8~10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0221】
別の態様において、KXDXFXXK(配列番号288)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、KXDXFXDK(配列番号289)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号290の2、4、6、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号290の2、4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0222】
(7α-4)EXXXYXXXXXXXXD(配列番号291)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号292の2~4、6~13番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0223】
(7α-5)XNXXYXXIXX(配列番号293)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、DNXXYXXIXT(配列番号294)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号295の1、3、4、6、7、9、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号295の3、4、6、7、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0224】
別の態様において、YXXIXT(配列番号296)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号297の2、3、5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0225】
別の態様において、XXXISXGG(配列番号298)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YXMISXGG(配列番号299)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号300の1~3、6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号300の2、6番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0226】
一態様において、(7α)のポリペプチドは、ミオシンバインディングプロテインH-ライクの全長アミノ酸配列(配列番号43)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0227】
(8α)デスミン(フラグメント)のエピトープ
本発明において、(8α)のポリペプチドは以下(8α-1)~(8α-4)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0228】
(8α-1)配列番号172、173、174、303、306、308、及び310からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0229】
(8α-2)KXXXSX(配列番号301)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、KXXXSD(配列番号302)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号303の2~4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号303の2~4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ
酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0230】
別の態様において、XKXKXXXXN(配列番号304)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、YKSKXSDLN(配列番号305)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号306の1、3、5~8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号306の5番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0231】
また別の態様において、VXKN(配列番号307)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号308の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0232】
(8α-4)DXGRXXE(配列番号309)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好まし
くは、配列番号310の2、5、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0233】
一態様において、(8α)のポリペプチドは、デスミン(フラグメント)のアミノ酸配列(配列番号56)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0234】
(9α)キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータのエピトープ
本発明において、(9α)のポリペプチドは以下(9α-1)~(9α-5)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0235】
(9α-1)配列番号175~178、312、314、317、320、323、及び326からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0236】
(9α-2)KKXXXG(配列番号311)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号312の3~5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0237】
別の態様において、SKXXK(配列番号313)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、配列番号314の3、4番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0238】
(9α-3)XXXXXQXKXXG(配列番号315)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、HXXXXQXKSSG(配列番号316)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好
ましくは、配列番号317の1~5、7、9、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号317の2~5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0239】
(9α-4)XYXGKXXXX(配列番号318)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ま
しくは、IYXGKTXDI(配列番号319)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好まし
くは、配列番号320の1、3、6~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号320の3、7番目のアミノ酸のいずれか1
又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0240】
別の態様において、XDXXNXXRS(配列番号321)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、KDXXNXLRS(配列番号322)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号323の1、3、4、6、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号323の3、4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0241】
(9α-5)QKYRQXXKXXXX(配列番号324)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、QKYRQXXKXLXQ(配列番号325)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号326の6、7、9~12番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号326の6、7、9、11番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0242】
一態様において、(9α)のポリペプチドは、キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータの全長アミノ酸配列(配列番号61)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0243】
(10α)ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライクのエピトープ
本発明において、(10α)のポリペプチドは以下(10α-1)~(10α-8)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0244】
(10α-1)配列番号179~185、329、332、335、338、341、344、347、350、353、356、359、362、及び365からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0245】
(10α-2)TXXXXDXXEGK(配列番号327)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、TXXXLDFREGK(配列番号328)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号329の2~5、7、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号329の2~4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0246】
別の態様において、XXEXXEXXD(配列番号330)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、FREXXEXXD(配列番号331)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号332の1、2、4、5、7、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号332の4、5、7、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0247】
(10α-3)LXXNFTXXK(配列番号333)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、LXINFTNEK(配列番号334)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号335の2、3、7、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号335の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0248】
(10α-4)XYXPPPXXXK(配列番号336)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、LYXPPPXXXK(配列番号337)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号338の1、3、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号338の3、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0249】
(10α-5)XXDEXVXK(配列番号339)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、SXDEXVXK(配列番号340)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号341の1、2、5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号341の2、5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0250】
別の態様において、XXDXXXAKXT(配列番号342)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、SXDEXVAKXT(配列番号343)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号344の1、2、4~6、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号344の2、5、9番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0251】
また別の態様において、VXXXXKXKK(配列番号345)のアミノ酸配列を含むポリペプ
チド。好ましくは、VAXXXKXKK(配列番号346)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
より好ましくは、配列番号347の2~5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号347の3~5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0252】
また別の態様において、KXXKXK(配列番号348)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、KXXKEK(配列番号349)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号350の2、3、5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号350の2、3番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0253】
(10α-6)XNXXXKXKXK(配列番号351)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、XNXXXKXKTK(配列番号352)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号353の1、3~5、7、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列
を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号353の1、3~5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0254】
(10α-7)DXXXSXXK(配列番号354)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、DXXXSXRK(配列番号355)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号356の2~4、6、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号356の2~4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0255】
別の態様において、SXXKXEX(配列番号357)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、SXRKXEG(配列番号358)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号359の2、3、5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号359の2、5番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0256】
(10α-8)XXRXXEXK(配列番号360)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、EXRXXEEK(配列番号361)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号362の1、2、4、5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号362の2、4、5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0257】
別の態様において、XXXEXKXKK(配列番号363)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、RXXEEKXKK(配列番号364)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号365の1~3、5、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号365の2、3、7番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0258】
(11α)グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライクのエピトープ
本発明において、(11α)のポリペプチドは以下(11α-1)及び(11α-2)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0259】
(11α-1)配列番号186、367、及び370からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0260】
(11α-2)GXYXXXXXXR(配列番号366)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号367の2、4~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0261】
別の態様において、NLXXN(配列番号368)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、NLXEN(配列番号369)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましく
は、配列番号370の3、4番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号370の3番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0262】
(12α)ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライクのエピトープ
本発明において、(12α)のポリペプチドは以下(12α-1)~(12α-11)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0263】
(12α-1)配列番号187~196、373、376、379、382、384、386、388、390、392、395、397、400、402、405、407、409、411、及び413からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0264】
(12α-2)KXTXXKKKXX(配列番号371)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、KXTXXKKKPV(配列番号372)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号373の2、4、5、9、10番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号373の2、4、5番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0265】
別の態様において、KXKPVVXX(配列番号374)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、KXKPVVDE(配列番号375)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号376の2、7、8番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号376の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0266】
(12α-3)YXXXXFXXXI(配列番号377)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YXXIXFEYXI(配列番号378)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号379の2~5、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6又は7個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号379の2、3、5、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0267】
別の態様において、XXIXDXRG(配列番号380)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YXIXDXRG(配列番号381)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号382の1、2、4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号382の2、4、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0268】
(12α-4)DXRGXXK(配列番号383)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ま
しくは、配列番号384の2、5、6番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0269】
(12α-5)KMXXXXPK(配列番号385)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号386の3~6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0270】
別の態様において、KXXKXXXPKH(配列番号387)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号388の2、3、5~7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0271】
また別の態様において、KXXXXFL(配列番号389)のアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。好ましくは、配列番号390の2~5番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0272】
(12α-6)KGKKXX(配列番号391)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号392の5、6番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0273】
別の態様において、KXKXXXLXXE(配列番号393)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、KXKXXXLQXE(配列番号394)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号395の2、4~6、8、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号395の2、4~6、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0274】
(12α-7)TXKX(配列番号396)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号397の2、4番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0275】
別の態様において、KYXXKKXXX(配列番号398)のアミノ酸配列を含むポリペプチド
。好ましくは、KYXXKKDGL(配列番号399)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より
好ましくは、配列番号400の3、4、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号400の3、4番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0276】
(12α-8)YXXXPDG(配列番号401)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ま
しくは、配列番号402の2~4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0277】
別の態様において、DGYXXSXSXK(配列番号403)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、DGYXLSLSXK(配列番号404)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号405の4、5、7、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号405の4、9番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0278】
(12α-9)PVTXX(配列番号406)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好まし
くは、配列番号407の4、5番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0279】
(12α-10)QXXXXXXXDKXN(配列番号408)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号409の2~8、11番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0280】
(12α-11)YXXXXXDXKT(配列番号410)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号411の2~6、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0281】
別の態様において、YXXQXXXK(配列番号412)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号413の2、3、5~7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0282】
(13α)ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアルのエピトープ
本発明において、(13α)のポリペプチドは以下(13α-1)及び(13α-2)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0283】
(13α-1)配列番号197、415、及び417からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0284】
(13α-2)GXYS(配列番号414)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号415の2番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0285】
別の態様において、YXXXXG(配列番号416)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号417の2~5番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0286】
(14α)L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライクのエピトープ
本発明において、(14α)のポリペプチドは以下(14α-1)及び(14α-2)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0287】
(14α-1)配列番号198及び420からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0288】
(14α-2)XPVGSXSKX(配列番号418)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好
ましくは、EPVGSXSKV(配列番号419)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ま
しくは、配列番号420の1、6、9番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号420の6番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0289】
(15α)アルドラーゼのエピトープ
本発明において、(15α)のポリペプチドは以下(15α-1)及び(15α-2)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0290】
(15α-1)配列番号199、423、及び425からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0291】
(15α-2)XYXRXXXXXXXK(配列番号421)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、SYXRXLXXXAXK(配列番号422)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号423の1、3、5~11番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7、8又は9個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号423の3、5、7~9、11番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0292】
別の態様において、SXXKXXG(配列番号424)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
好ましくは、配列番号425の2、3、5、6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0293】
一態様において、(15α)のポリペプチドは、アルドラーゼの全長アミノ酸配列(NCBIのタンパク質アクセッション番号NP_001133180.1、配列番号445)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0294】
(16α)ベータ-エノラーゼのエピトープ
本発明において、(16α)のポリペプチドは以下(16α-1)~(16α-4)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0295】
(16α-1)配列番号200~202、428、431、434、及び436からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0296】
(16α-2)RYLGKXXX(配列番号426)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、RYLGKGXV(配列番号427)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号428の6~8番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号428の7番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0297】
(16α-3)YXXIXDXXXH(配列番号429)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、YXXIXDLXGH(配列番号430)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号431の2、3、5、7~9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号431の2、3、5、8番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0298】
別の態様において、DXXXHXDVXL(配列番号432)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、DXXXHKDVIL(配列番号433)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号434の2~4、6、9番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4又は5個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含
むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号434の2~4番目のアミノ酸のいずれか1、2又は3個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0299】
(16α-4)IKXXXXKDAT(配列番号435)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号436の3~6番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0300】
一態様において、(16α)のポリペプチドは、ベータ-エノラーゼの全長アミノ酸配列(NCBIのタンパク質アクセッション番号NP_001133193.1、配列番号446)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0301】
(17α)グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼのエピトープ
本発明において、(17α)のポリペプチドは以下(17α-1)~(17α-3)からなる群より選択されるポリペプチドのいずれかであってよい。
【0302】
(17α-1)配列番号203、204、441、及び444からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0303】
(17α-2)YXXXXXXXDXXXGRF(配列番号437)のアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。好ましくは、YXXXXXXXDSTXGRF(配列番号438)のアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。より好ましくは、配列番号203の2~8、10~12番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号203の2~8、12番目のアミノ酸のいずれか1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0304】
(17α-3)SYXXIXXV(配列番号440)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、配列番号441の3、4、6、7番目のアミノ酸のいずれか1、2、3又は4個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0305】
別の態様において、IKKXXK(配列番号442)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。好ましくは、IKKVXK(配列番号443)のアミノ酸配列を含むポリペプチド。より好ましくは、配列番号444の4、5番目のアミノ酸のいずれか1又は2個のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。さらに好ましくは、配列番号444の5番目のアミノ酸が別のアミノ酸、好ましくはアラニンに置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0306】
一態様において、(17α)のポリペプチドは、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼの全長アミノ酸配列(NCBIのタンパク質アクセッション番号NP_001117033.1、配列番号447)に対して同一または90%以上、80%以上もしくは70%以上の同一性を有する変異体またはホモログを含まないものであってもよい。
【0307】
上記(1α)~(17α)のポリペプチドの長さは特に限定されない。好ましい態様において、上記(1α)~(17α)のポリペプチドの長さは、500アミノ酸以下、300アミノ酸以下、200アミノ酸以下、100アミノ酸以下、50アミノ酸以下、30ア
ミノ酸以下、20アミノ酸以下、15アミノ酸以下、10アミノ酸以下、または5アミノ酸以下であってもよい。
【0308】
上記(1α)~(17α)のポリペプチドは、ペプチドの固相合成など化学合成の手法により調製してもよい。または、エピトープを含むポリペプチドは、当業者に周知の遺伝子組換え技術により組換えタンパク質として発現させ、そして当業者に周知のタンパク質生成方法により分離・生成することによって得てもよい。
【0309】
診断キット・診断方法(2)
本発明は、対象のアレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は上記(1α)~(17α)のポリペプチドの少なくとも一つであるポリペプチド、または2以上の上記(1α)~(17α)のポリペプチドがスペーサーを介してもしくは介さずに連結されたポリペプチドである、前記方法を提供する。
【0310】
以下、上記(1α)~(17α)のポリペプチドの少なくとも一つであるポリペプチド、または2以上の上記(1α)~(17α)のポリペプチドがスペーサーを介してもしくは介さずに連結されたポリペプチドを、本明細書において「上記(1α)~(17α)を含む抗原」と記載する。スペーサーの種類は特に限定されず、複数のペプチドを連結するのに当業者が通常使用するものを利用できる。スペーサーは例えば、Acp(6)-OH
などの炭化水素鎖であってもよい。
【0311】
対象から得られた試料は、上記「診断キット・診断方法(1)」の項目において記載したとおりである。
【0312】
対照から得られた試料と当該抗原との接触およびその結合の検出は、上記「診断キット・診断方法(1)」の項目において記載した既知の方法、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorvent Assay)、サンドイッチ免疫測定法、イムノブロット、免疫沈降法
、イムノクロマト法等により行うことが可能である。
【0313】
上記(1α)~(17α)を含む抗原は、担体に固定されている状態であってもよい。この場合は上記工程(i)および(ii)においてELISA、サンドイッチ免疫測定法、イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴等が利用でき、上記工程(i)は、対象から得られた試料を、上記(1α)~(17α)を含む抗原を固定した面に接触させることにより行う。また、対象のIgE抗体が担体に固定されている状態のものを利用し、上記の手法により上記(1α)~(17α)を含む抗原との結合を検出してもよい。
【0314】
上記(1α)~(17α)を含む抗原は担体に固定されていない状態であってもよい。この場合は、上記工程(i)および(ii)において、フローサイトメトリー等が利用でき、レーザー光によりIgE抗体が結合した上記(1α)~(17α)を含む抗原の存在を確認できる。この方法は例えば、上記(1α)~(17α)を含む抗原の接触により好塩基球が活性化したときに現れる表面抗原CD203cを検出する方法である、好塩基球活性化試験(BAT)が挙げられる。また、上記(1α)~(17α)を含む抗原を試料中の血球にさらに接触させることにより、ヒスタミンを遊離するかどうかを調べるヒスタミン遊離試験(HRT)も挙げられる。
【0315】
上記(1α)~(17α)を含む抗原は、アレルギー患者のIgE抗体と特異的に結合する抗原である。したがって、対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される。
【0316】
本発明はまた、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを含むアレルギーの診断キットを提供する。本発明の診断キットは、上記のアレルギーを診断するための指標を提供する方法、または下記の診断方法に用いてもよい。本発明の診断キットは、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを含むほか、酵素標識された抗IgE抗体および当該酵素の基質となる発色基質または発光基質を含んでいてもよい。また、蛍光標識された抗IgE抗体を用いてもよい。本発明の診断キットにおいて、上記(1α)~(17α)を含む抗原は担体に固定化された状態で提供されてもよい。本発明の診断キットはまた、診断のための手順についての説明書や当該説明を含むパッケージと共に提供されてもよい。
【0317】
別の態様において、上記の診断キットは、アレルギーについてのコンパニオン診断薬を含む。コンパニオン診断薬とは、医薬品の効果が期待される患者の特定または医薬品の重篤な副作用リスクを有する患者の特定、あるいは医薬品を用いた治療の最適化のために当該医薬品の反応性を検討するために用いるものである。ここで治療の最適化とは、例えば、用法容量の決定や投与中止の判断、どのアレルゲンコンポーネントを使って免疫寛容するかの確認等が含まれる。
【0318】
本発明はまた、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを含むアレルギーの診断用組成物を提供する。本発明の診断用組成物は、下記の診断方法に用いることができる。本発明の診断用組成物は、必要に応じて本発明の抗原とともに一般的に用いられる、薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。
【0319】
一態様において、本発明は、対象のアレルギーを診断する方法であって、以下の工程:(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであると判断する;
ことを含み、ここで当該抗原は上記(1α)~(17α)を含む抗原として特定されるタンパク質の少なくとも一つである、前記方法を提供する。ここにおいて(i)および(ii)の各工程は、アレルギーを診断するための指標を提供する方法の各工程について説明したとおりに行われる。
【0320】
別の態様において、本発明は、対象のアレルギーを診断する方法であって、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを対象に投与することを含む、前記方法を提供する。当該方法は、皮膚に上記(1α)~(17α)を含む抗原を適用することを特徴とする皮膚テストの形式で行ってもよい。皮膚テストには、皮膚上に診断用組成物を適用した後に、出血しない程度に微少な傷をつけることで皮膚に上記(1α)~(17α)を含む抗原を浸透させて皮膚反応を観察するプリックテスト、診断用組成物を適用した上に皮膚を少し引っ掻いて反応を観察するスクラッチテスト、クリームや軟膏などの形態の診断用組成物を皮膚に適用して反応を観察するパッチテスト、上記(1α)~(17α)を含む抗原を皮内に投与して反応を観察する皮内テスト、などの形態が含まれる。上記(1α)~(17α)を含む抗原を適用した部分の皮膚に腫れなどの皮膚反応が生じた場合、その対象はアレルギーを有すると診断する。ここで、皮膚に適用する上記(1α)~(17α)を含む抗原の量は、例えば、1回あたり100μg以下の用量であってよい。
【0321】
アレルギーの診断においては、抗原の特定を目的とした負荷試験がしばしば行われている。上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つは、アレルギーであることを診断するための負荷試験の有効成分として用いることができる。ここで、負荷試験に用いるアレルゲンコンポーネントとしては、発現精製したポリペプチドであってもよく、例えば、イネにスギ花粉抗原の遺伝子を形質転換し、その抗原タンパク質を米内に発現させた花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0322】
また別の態様において、本発明はアレルギーの診断に使用するための上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを提供する。
【0323】
さらなる別の態様において、本発明はアレルギーの診断薬の製造のための上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0324】
本項目において、診断または検出対象となるアレルギーは、上記(1α)~(17α)を含む抗原に対するアレルギーであってよい。すなわち、アレルギーの検出は、単一の上記(1α)~(17α)を含む抗原に対するアレルギーのみならず、交差性を含めたアレルギーを検出するものであり得る。
【0325】
医薬組成物・治療方法(2)
本発明は、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを含む医薬組成物を提供する。一態様において、上記の医薬組成物は、アレルギーを治療するために用いられる。アレルギーの治療とは、体内に取り込んでも発症しない抗原の限界量を増やすことであり、最終的には通常の抗原の摂取量では発症しない状態(寛解)を目指すものである。
【0326】
本発明はまた、アレルギーの治療を必要とする患者に対して、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを投与することを含む、アレルギーを治療する方法を提供する。
【0327】
別の態様において、本発明はアレルギーの治療に使用するための上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを提供する。さらに別の態様において本発明は、アレルギーの治療薬の製造のための上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つの使用を提供する。
【0328】
アレルギーの治療においては、患者に抗原を投与することで免疫寛容へと誘導することを目標とした、減感作療法がしばしば行われている。上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つは、アレルギーに対する減感作療法のための有効成分として用いることができる。ここで、減感作療法に用いるアレルゲンコンポーネントとしては、発現精製したポリペプチドであってもよく、例えば花粉米のように、食品・食材において発現させたものであってもよい。
【0329】
本発明の医薬組成物の投与経路、投与量、投与回数および/または投与期間、医薬組成物に含まれる他の成分、ならびに剤型については、上記「医薬組成物・治療方法(1)」の項目において記載したものとすることができる。上記(1α)~(17α)を含む抗原を用いる場合の用量は、例えば、成人の場合、1回あたり100μg以下の用量であってもよい。
【0330】
本項目において、治療対象となるアレルギーは、上記(1α)~(17α)を含む抗原に対するアレルギーであってよい。すなわち、アレルギーの治療は、単一の上記(1α)~(17α)を含む抗原に対するアレルギーのみならず、交差性を含めたアレルギーを治療するものであり得る。
【0331】
テスター(2)
本発明は、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つに対する抗体を含むテスターを提供する。
【0332】
当該抗体は、常法により作製することができる。例えば、ウサギなどの哺乳動物を、上記(1α)~(17α)を含む抗原で免疫することにより作製してもよい。当該抗体は、Ig抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’)であってもよい。
【0333】
また、上記のテスターにおいて、当該抗体は担体に結合した形で提供されていてもよい。担体は、抗体と上記(1α)~(17α)を含む抗原の結合の検出に利用可能な担体であれば特に限定されない。当業者に公知の任意の担体が利用できる。また、上記(1α)~(17α)を含む抗原に対する抗体が、上記「抗原のエピトープ」の項目に記載されたエピトープに対する抗体であることが好ましい。それにより、交差性を含めて検出できるテスターとすることができる。
【0334】
上記(1α)~(17α)を含む抗原含有の有無を調べる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・作製した抗体を含むテスターを原料・加工品等から得られた試料に接触させて、例えばELISA法等を用いて当該抗体と試料中の上記(1α)~(17α)を含む抗原との結合を検出し、当該抗体と上記(1α)~(17α)を含む抗原との結合が検出された場合に、対象原料・加工品等に当該抗原が残留していると判断する方法。
・ろ紙などに原料・加工品等をしみこませ、そこに含まれる上記(1α)~(17α)を含む抗原を検出するように、抗体溶液を反応させる方法。
【0335】
本発明の別の態様において、エピトープに対応するプライマーを含むことを特徴とする、対象物におけるアレルギーの上記(1α)~(17α)を含む抗原の有無を判定するためのテスターを含む。非限定的に、上記プライマーは例えば、上記(1α)~(17α)で特定したアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列の一部またはその相補鎖を含むように設計されたものであってもよい。あるいは、上記プライマーは、上記(1α)~(17α)で特定したアミノ酸配列であるエピトープを含むタンパク質をコードする核酸において、当該エピトープをコードする部分の上流側の領域の塩基配列またはそのエピトープをコードする部分の下流側の領域の相補鎖の塩基配列となるように設計されたものであってもよい。そのようなプライマーとして、例えば配列番号1、4、9、18、25、32、42、55、60、69、109、120、137、143、448、449または450で示される塩基配列の少なくとも1つの一部であるプライマーおよび/または配列番号1、4、9、18、25、32、42、55、60、69、109、120、137、143、448、449または450で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な配列の一部であるプライマーが挙げられる。ここで、抗原の全長配列におけるエピトープの位置は、下記実施例10の表2において特定した通りである。また、特にmRNAを対象とする場合は、ポリAテールの相補プライマーを有していてもよい。
【0336】
例えば、試料から得られたDNAまたはmRNAを鋳型として、前記プライマーを用い、RT-PCRを含むPCR(Polymerase Chain Reaction)でDNAを増幅し、増幅さ
れたDNAの配列において、上記(1α)~(17α)で特定したアミノ酸配列をコードする核酸を含むか否かを判定することで、上記(1α)~(17α)を含む抗原の有無を判断する。mRNAを対象にPCRで増幅する方法は、RACE法等が例示できる。増幅されたDNAにおいて可能な3通りのオープンリーディングフレームがコードするアミノ酸配列の一つが、上記(1α)~(17α)で特定したアミノ酸配列を含む場合、抗原を
有すると判断する。DNAが増幅されない場合は、抗原を有しないと判断する。
【0337】
一態様において、上記のテスターは、原料または加工品製造ライン中などの対象物中の上記(1α)~(17α)を含む抗原含有の有無を調べるために用いられる。原料は食材であってもよく、化粧品原料、医薬品原料等であってもよい。加工品は食用加工品であってもよく、化粧品、医薬品等であってもよい。上記テスターは、原料として含まれる生物種の探索用として用いてもよく、製造業者による製造ラインおよび出荷前製品の品質検査用として用いてもよく、喫食者または使用者自身による対象原料・加工品の抗原含有の有無のチェック用として用いてもよい。
【0338】
アレルゲン除去原料等
本発明は、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つが除去又は低減されていることを特徴とする原料または加工品を提供する。
【0339】
原料または加工品において本発明の抗原を除去又は低減する方法は限定されない。抗原の除去又は低減は、上記(1α)~(17α)を含む抗原が除去又は低減される限り、いかなる方法によって行われてもよく、例えば上記「アレルゲン除去食品等」の項目に記載した手法を用いてもよい。
【0340】
上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つが除去又は低減されているとは、抗原全体が除去または低減されていることにより達成されてもよく、あるいは抗原タンパク質から、上記(1α)~(17α)で特定する配列部分が切断または取り除かれることにより達成されてもよい。「取り除かれる」には、上記(1α)~(17α)で特定する配列部分のすべてまたは一部の欠失および改変を含む。
【0341】
例えば、上記(1α)~(17α)を含む抗原が除去又は低減された原料は、遺伝子ノックアウト技術を用いて、上記(1α)~(17α)を含む抗原の発現がノックアウトされた原料を調製してもよい。遺伝子ノックアウト技術は、遺伝子改変等の当業者に公知の手法のいずれかを用いることができる。
【0342】
上記(1α)~(17α)を含む抗原が除去又は低減された加工品は、精製ペプチドを原料として用いた粉ミルクのように、上記(1α)~(17α)を含む抗原が除去又は低減された原料を用いた加工品であってもよい。通常の原料を用いる場合は、加工品の調製前または調製後に上記(1α)~(17α)を含む抗原を除去又は低減する処理を行う。通常の原料を用いた加工品において上記(1α)~(17α)を含む抗原を除去又は低減する方法として、上記「アレルゲン除去食品等」の項目に記載した手法を用いてもよい。上記(1α)~(17α)を含む抗原を切断する方法としては、特定の消化酵素で切断する処理をする方法が挙げられる。
【0343】
アレルゲン除去加工品の製造方法(2)
本発明は、抗原が除去又は低減されている加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するステップを有し、ここで当該抗原は上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つである、前記製造方法を提供する。
【0344】
当該製造方法において、抗原が除去又は低減されているとは、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つが除去又は低減されているか、前記抗原から、上記(1α)~(17α)で特定する配列部分が切断または取り除かれていることを意味する。
【0345】
加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認する手法は、特に限定さ
れず、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つを検出可能ないかなる手法を用いてもよい。例えば、当該加工品の製造過程で生じる材料を含む試料と、上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つに対する抗体との結合性により、当該加工品中の当該ポリペプチドまたは抗原の存在の有無を確認してもよい。そのような方法の詳細は、上記「診断キット・診断方法(2)」の項目において記載した通りである。すなわち、上記製造方法においては、上記「診断キット・診断方法(2)」の項目における「対象のIgE抗体」を「上記(1α)~(17α)を含む抗原の少なくとも一つに対する抗体」と置き換え、上記「診断キット・診断方法(2)」の項目における「抗原」を「加工品の製造過程で生じる材料を含む試料」と置き換えて、上記「診断キット・診断方法(2)」の項目において記載した手法を加工品の製造過程で抗原が除去又は低減されていることを確認するために用いることができる。また、上記「テスター(2)」の項目で記載したテスターを使用することもできる。
【実施例0346】
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって限定されない。
【0347】
実施例1:タンパク質パターンの確認
下記の二次元電気泳動方法を使用して、サケに含まれるタンパク質を調べた。
【0348】
タンパク質の抽出
サケに含まれるタンパク質の抽出及び精製は次のように行った。サケの身に、可溶化剤(Mammalian Lysis Buffer (MCLI), SIGMA社)を加えてタンパク質を抽出した後、尿素バッファーを添加してタンパク質抽出液を得た。尿素バッファーの組成は以下の通りである。
30mM Tris
2M チオ尿素
7M 尿素
4%(w/v) CHAPS:
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート
適量の希塩酸
蒸留水を加えて全体を100mLに調整した。pHは8.5であった。
その後、タンパク質重量として25μgずつを混合して抽出液を得た。
【0349】
その後、2D-CleanUPキット(GE社製)を使用して2回の沈殿操作を行った。第1回目の沈殿操作は、回収した上記蛋白質抽出液にTCA(トリクロロ酢酸)を加えて沈殿を行い、当該操作で生じた沈殿(TCA沈殿)を回収した。第2回目の沈殿操作は、回収した前記TCA沈殿にアセトンを加えて沈殿を行い、当該操作で得られた沈殿(検体)を回収した。
【0350】
検体溶液の調製
得られた検体の一部(タンパク質重量として40μg)を、1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)150μlに溶
解し、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)とした。DeStreak Rehydration Solutionの組成は以下の通りである。
7M チオ尿素
2M 尿素
4%(w/v) CHAPS
0.5%(v/v) IPGバッファー;GE社製
適量のBPB(ブロモフェノールブルー)
1次元目等電点電気泳動用ゲルへの検体の浸透
1次元目等電点電気泳動用ゲル(GE社製:IPGゲルImmobiline Drystrip (pH3-10NL))を前記した1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨張用検体溶液)140μlに浸漬し、一晩室温にて浸透させた。
【0351】
本実施例においては、電気泳動機器としてGE社製のIPGphorを使用した。
【0352】
泳動トレーにシリコンオイルを満たした。検体を浸透させたゲルの両端に水で湿らせた濾紙を設け、ゲルをシリコンオイルに覆われるよう、泳動トレーにセットし、ゲルとの間に当該濾紙を挟んだ状態で電極をセットした。
【0353】
等電点電気泳動機器の電流値の上限をゲル1本当たり75μAに設定し、電圧プログラムを、(1)300V定電圧で750Vhrまで定電圧工程を行い(当該工程終了前の泳動30分間の電流変化幅が5μAであった)、(2)300Vhrかけて1000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(3)更に4500Vhrかけて5000Vまで徐々に電圧を上昇させ、(4)その後5000V定電圧で総Vhrが12000になるまで、1次元目の等電点電気泳動を行った。
【0354】
等電点電気泳動ゲルのSDS平衡化
上記の1次元目の等電点電気泳動を行った後、等電点電気泳動機器からゲルを取り外し、還元剤を含む平衡化緩衝液に当該ゲルを浸漬して、15分・室温にて振とうした。上記還元剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris-HCl(pH8.0)
6M 尿素
30%(v/v) グリセロール
2%(w/v) SDS
1%(w/v) DTT
次に、上記還元剤を含む平衡化緩衝液を除き、ゲルをアルキル化剤を含む平衡化緩衝液に浸漬して、15分・室温にて振とうし、SDS平衡化したゲルを得た。上記アルキル化剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris-HCl(pH8.0)
6M 尿素
30%(v/v) グリセロール
2%(w/v) SDS
2.5%(w/v) ヨードアセトアミド
2次元目のSDS-PAGE
本実施例においては、電気泳動機器としてlife technologies社製のXCell SureLock Mini-Cellを使用した。2次元目泳動用ゲルはlife technologies社製NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gelsを使用した。また、以下の組成の泳動用緩衝液を調製し、使用した。
50mM MOPS
50mM Tris塩基
0.1%(w/v) SDS
1mM EDTA
また、本実施例においては泳動用緩衝液に0.5%(w/v)のアガロースS(ニッポンジーン社製)と適量のBPB(ブロモフェノールブルー)を溶解させた接着用アガロース溶液を使用した。
【0355】
SDS-PAGEのウェル中を十分に上記泳動用緩衝液で洗浄した後、当該洗浄に用いた緩衝液を取り除いた。次に、ウェルの中に充分に溶解させた接着用アガロース溶液を添加した。次に、SDS平衡化したゲルをアガロース中に浸漬させ、ピンセットでSDS平
衡化したゲルと2次元目泳動用ゲルを密着させた。当該両ゲルが密着した状態でアガロースが充分に固まったのを確認し、200V定電圧で約45分間泳動を行った。
【0356】
ゲルの蛍光染色
SYPRO Ruby(life technologies社製)を用いてゲルの蛍光染色を行った。
【0357】
まず、使用する密閉容器を事前に98%(v/v)のエタノールで十分に洗浄した。SDS-PAGE機器から泳動後の2次元目泳動用ゲルを取り外して、洗浄した密閉容器におき、50%(v/v)メタノール及び7%(v/v)酢酸含有水溶液に30分間浸漬する処理を2回行った。その後、当該水溶液を水に置換し、10分間浸漬した。次に、2次元目泳動用ゲルを40mlのSYPRO Rubyに浸漬し、室温で一晩振とうした。次に、SYPRO Rubyを除き、2次元目泳動用ゲルを水で洗浄した後、10%(v/v)メタノール及び7%(v/v)酢酸含有水溶液で30分間振とうした。更に当該水溶液を水に置換し、30分以上振とうした。
【0358】
解析
上記一連の処理を施した2次元目泳動用ゲルをTyphoon9500(GE社製)を使用した蛍
光イメージのスキャンに供した。サケの身に含まれるタンパク質について、2次元電気泳動の結果を
図1A左図に示す。ゲルの写真の左側には、分子量マーカーのバンドが見られ、バンドの位置が特定の分子量(KDa)を示す。
【0359】
実施例2:イムノブロットでの抗原確認(1)
イムノブロットでの抗原確認は、実施例1に記載した手順を「2次元目のSDS-PAGE」まで行った後、以下の「メンブレンへの転写」「イムノブロット」「解析」の操作を行うことにより行った。
【0360】
メンブレンへの転写
メンブレンへの転写は、以下の転写装置及び転写用緩衝液を用いて行った。
転写装置:XCell SureLock Mini-Cell およびXCell IIブロットモジュール(life technologies社製)
転写用緩衝液:NuPAGEトランスファーバッファー(×20)(life technologies社製)
をmilliQ水で20倍希釈して使用した。
【0361】
具体的には以下の手順に従って2次元目泳動用ゲル中のタンパク質をメンブレン(PVDF膜)へ転写した。
【0362】
(1)PVDF膜を、100%メタノールに浸漬し、次にmilliQ水に浸漬し、その後、転写用緩衝液に移して、PVDF膜の親水化処理を行った。
【0363】
(2)スポンジ、ろ紙、2次元目のSDS-PAGEが終わった2次元目泳動用ゲル、親水化処理済みPVDF膜、ろ紙、スポンジの順でセットし、転写装置中、30V定電圧で1時間通電した。
【0364】
イムノブロット
メンブレンのイムノブロットを、1次抗体として魚に対するアレルギーを有する患者1の血清または非魚アレルギー被験者の血清を用いて行った。この魚アレルギーの患者1は、魚による即時型アレルギーと診断された患者である。なお、この患者は、サケ、アジ、アナゴ、クロダイ、サバ、タイ、タラ、ハマチに対してアレルギー症状を発症し、プリックテストで陽性を示した。
【0365】
メンブレンのイムノブロットは、以下の手順に従って行った。
(1)転写したメンブレンを5%スキムミルク/PBST溶液(非イオン界面活性剤Tween 20を0.1%含むPBSバッファー)中、室温で1時間振とうした。
(2)1次抗体として、5%血清/5%スキムミルク/PBST溶液中、室温で1時間静置した。
(3)PBST溶液で洗浄した(5分×3回)。
(4)2次抗体として抗ヒトIgE-HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を5%スキムミルク/PBST溶液で5000倍に希釈した溶液中、室温で1時間静置した。
(5)PBST溶液で洗浄した(5分×3回)。
(6)Pierce Western Blotting Substrate Plus(Thermo社製)で、5分間静置した。
【0366】
解析
上記一連の処理を施したメンブレンをTyphoon9500(GE社製)を使用した蛍光イメー
ジのスキャンに供した。
【0367】
魚アレルギー患者1の血清を用いたイムノブロットを、対照である非魚アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。サケの身に含まれるタンパク質について魚アレルギー患者1の血清を用いて行ったイムノブロット(
図1A右図)において、非魚アレルギー被験者の血清を用いた場合(
図3)とは異なり、かつ公知のサケアレルゲンタンパク質とは異なる9つのスポットが検出された。検出されたスポットをイムノブロット上に示す(
図1A右図)。
【0368】
上記9つのスポットの分子量および等電点はそれぞれ以下の通りである。
スポット1:分子量90~120kDa、pI3.0~6.0
スポット2:分子量120~160kDa、pI4.0~7.0
スポット3:分子量90~120kDa、pI5.0~8.0
スポット4:分子量90~120kDa、pI6.0~8.0
スポット5:分子量60~90kDa、pI3.0~6.0
スポット6:分子量70~100kDa、pI5.0~7.0
スポット7:分子量40~70kDa、pI4.0~7.0
スポット8:分子量40~70kDa、pI4.0~7.0
スポット9:分子量20~50kDa、pI4.0~7.0
実施例3:質量分析および抗原の同定(1)
上記の9つのスポットを生じる抗原について、質量分析によるアミノ酸配列の同定を行った。
【0369】
具体的には、以下の手順でタンパク質の抽出および質量分析を行った。
(1)サケの身について、実施例1及び2の手順に従ってタンパク質抽出、2次元電気泳動及びメンブレン転写を行い、0.008%Direct blue/40%エタノール・10%酢
酸で振とうにより染色した。
(2)その後、40%エタノール・10%酢酸で5分間の処理を3回行って脱色し、水で5分間洗浄後、風乾した。
(3)目的のスポットをきれいなカッター刃で切り取り、遠心チューブに入れた。50μLのメタノールでメンブレン親水処理後、100μLの水で2回洗浄後遠心除去し、20μLの20mM NH4HCO3・50%アセトニトリルを加えた。
(4)1pmol/μLリシルエンドペプチダーゼ(WAKO)1μLを加え、37℃で60分間静置した後、溶液を新しい遠心チューブに回収した。20μLの20mM NH4HCO3・70%アセトニトリルをメンブレンに加え、室温にて10分間浸し、さらに回収した。0.1%ギ酸、4%アセトニトリル10μLで溶解し、チューブに移した。
(5)回収した溶液を減圧乾燥した後、A液(0.1%ギ酸、4%アセトニトリル溶液)
15μlで溶解し、質量分析(ESI-TOF6600, AB Sciex社製)を行った。
(6)質量分析計から得られた質量データに基づくタンパク質の同定は、NCBIまたはUniProtをサーチすることで行った。
【0370】
結果
各スポットについて、質量分析を行ったところ、以下のアミノ酸配列が検出された。
スポット1:配列番号3で示されるアミノ酸配列
スポット2:配列番号6~8で示されるアミノ酸配列
スポット3:配列番号11~17で示されるアミノ酸配列
スポット4:配列番号20~24で示されるアミノ酸配列
スポット5:配列番号27~31で示されるアミノ酸配列
スポット6:配列番号34~41で示されるアミノ酸配列
スポット7:配列番号44~54で示されるアミノ酸配列
スポット8:配列番号57~59で示されるアミノ酸配列
スポット9:配列番号62~68で示されるアミノ酸配列
さらに、各スポットについて、質量分析計から得られた質量データをスポット1についてはNCBIで、スポット2~9についてはUniProtで解析したところ、それぞれのスポットは以下のタンパク質であることが同定された。
スポット1:α-アクチニン-3(Alpha-actinin-3)(NCBIのタンパク質アクセッショ
ン番号XP_014051545.1、DNAアクセッション番号XM_014196070.1)(アミノ酸配列:配列
番号2、それをコードする塩基配列:配列番号1)
スポット2:EEF1A2バインディングプロテイン-ライク(EEF1A2 binding protein-like)(UniProtのタンパク質アクセッション番号B5RI29、DNAアクセッション番号ACH85270.1)(アミノ酸配列:配列番号5、それをコードする塩基配列:配列番号4)
スポット3:α-1,4-グルカンホスホリラーゼ(Alpha-1,4-glucan phosphorylase)(UniProtのタンパク質アクセッション番号B5DG55、DNAアクセッション番号ACH70729.1)(アミノ酸配列:配列番号10、それをコードする塩基配列:配列番号9)
スポット4:エロンゲーションファクター2(Elongation factor 2)(UniProtのタンパク質アクセッション番号C0H9N2、DNAアクセッション番号ACN10751.1)(アミノ酸配列:
配列番号19、それをコードする塩基配列:配列番号18)
スポット5:ヒートショックコグネート70kDaプロテイン(Heat shock cognate 70 kDa protein)(UniProtのタンパク質アクセッション番号B5X3U6、DNAアクセッション番
号ACI33977.1)(アミノ酸配列:配列番号26、それをコードする塩基配列:配列番号25)
スポット6:セロトランスフェリン(Serotransferrin)(UniProtのタンパク質アクセッション番号P79815、DNAアクセッション番号BAA13759.1)(アミノ酸配列:配列番号33
、それをコードする塩基配列:配列番号32)
スポット7:ミオシンバインディングプロテインH-ライク(Myosin binding protein H-like)(UniProtのタンパク質アクセッション番号B5DG45、DNAアクセッション番号ACH70719.1)(アミノ酸配列:配列番号43、それをコードする塩基配列:配列番号42)
スポット8:デスミン(フラグメント)(Desmin (Fragment))(UniProtのタンパク質アクセッション番号Q8UWF1、DNAアクセッション番号CAC83053.1)(アミノ酸配列:配列番
号56、それをコードする塩基配列:配列番号55)
スポット9:キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータ(Capping protein (Actin filament) muscle Z-line beta)(UniProtのタンパク質アクセッション番号B5DFX6、DNAアクセッション番号ACH70650.1)(アミノ酸配列:配列番
号61、それをコードする塩基配列:配列番号60)
実施例4:他の魚種での抗原確認(1)
サケ以外のアジ、アナゴ、クロダイ、サバ、タイ、タラ、ハマチ、ウナギ、およびヒラメの9種の魚の身を用い、実施例1および実施例2に記載した手順と同様の手順により、
抗原の確認を行った。
【0371】
魚アレルギー患者1の血清を用いたイムノブロットを、対照である非魚アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。9種の魚の身それぞれに含まれるタンパク質について魚アレルギー患者1の血清を用いて行ったイムノブロット(
図2)において、非魚アレルギー被験者の血清を用いた場合(
図3)とは異なり、サケにおいて得られた9つのスポットの一部に相当するスポットが検出された。
【0372】
それぞれの魚種で検出されたスポットは以下のとおりである。
アジ:スポット1、3~5、8、および9
アナゴ:スポット1、3、5、および9
クロダイ:スポット1~6、8、および9
サバ:スポット1、3、5、8、および9
タイ:スポット1、3~6、8、および9
タラ:スポット1、3、5、7~9
ハマチ:スポット1、3~5、8、9
ウナギ:スポット1、3、4、6、9
ヒラメ:スポット1、4、6
実施例5:イムノブロットでの抗原確認(2)
実施例2と同様に、魚アレルギー患者の血清を用いたイムノブロットを、対照である非魚アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。サケの身に含まれるタンパク質について魚アレルギー患者2の血清を用いて行ったイムノブロット(
図1B左図)において、実施例2で検出された9つのスポットのうちの7つ(スポット1~6、9)のほか、非魚アレルギー被験者の血清を用いた場合(
図3)とは異なり、かつ公知のサケアレルゲンタンパク質とは異なる3つのスポット(スポット11、12、14)が新たに検出された。検出された合計10のスポットをイムノブロット上に示す(
図1B左図)。
【0373】
新たに検出された上記3つのスポットの分子量および等電点はそれぞれ以下の通りである。
スポット11:分子量90~110、pI6.5~7.0
スポット12:分子量120~140、pI5.0~6.0
スポット14:分子量30~40、pI6.5~7.5
実施例6:質量分析および抗原の同定(2)
実施例3と同様に、新たに検出された上記の3つのスポットを生じる抗原について、質量分析によるアミノ酸配列の同定を行った。
【0374】
各スポットについて、質量分析を行ったところ、以下のアミノ酸配列が検出された。
スポット11:配列番号111~119で示されるアミノ酸配列
スポット12:配列番号122~136で示されるアミノ酸配列
スポット14:配列番号145~149で示されるアミノ酸配列
さらに、各スポットについて、質量分析計から得られた質量データをNCBIで解析したところ、それぞれのスポットは以下のタンパク質であることが同定された。
スポット11:グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライク(glycogen phosphorylase, muscle form-like)(NCBIのタンパク質アクセッション番号XP_013984904.1、DNAアクセッション番号XM_014129429.1)(アミノ酸配列:配列番号110、それをコ
ードする塩基配列:配列番号109)
スポット12:ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライク(myosin-binding protein C, fast-type-like)(NCBIのタンパク質アクセッション番号XP_014014310.1、DNAアクセッション番号XM_014158835.1)(アミノ酸配列:配列番号121
、それをコードする塩基配列:配列番号120)
スポット14:L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライク(L-lactate dehydrogenase A chain-like)(NCBIのタンパク質アクセッション番号XP_014003141.1、DNAア
クセッション番号XM_014147666.1)(アミノ酸配列:配列番号144、それをコードする塩基配列:配列番号143)
実施例7:イムノブロットでの抗原確認(3)
実施例2と同様に、魚アレルギー患者の血清を用いたイムノブロットを、対照である非魚アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。サケの身に含まれるタンパク質について魚アレルギー患者3の血清を用いて行ったイムノブロット(
図1B右図)において、実施例2で検出された9つのスポットのうちの2つ(スポット7、8)のほか、非魚アレルギー被験者の血清を用いた場合(
図3)とは異なり、かつ公知のサケアレルゲンタンパク質とは異なる2つのスポット(スポット10、13)が新たに検出された。検出された合計4つのスポットをイムノブロット上に示す(
図1B右図)。
【0375】
新たに検出された上記2つのスポットの分子量および等電点はそれぞれ以下の通りである。
スポット10:分子量200~230、pI4.5~5.5
スポット13:分子量45~55、pI4.0~5.5
実施例8:質量分析および抗原の同定(3)
実施例3と同様に、新たに検出された上記の2つのスポットを生じる抗原について、質量分析によるアミノ酸配列の同定を行った。
【0376】
各スポットについて、質量分析を行ったところ、以下のアミノ酸配列が検出された。
スポット10:配列番号71~108で示されるアミノ酸配列
スポット13:配列番号139~142で示されるアミノ酸配列
さらに、各スポットについて、質量分析計から得られた質量データをNCBIで解析したところ、それぞれのスポットは以下のタンパク質であることが同定された。
スポット10:ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライク(myosin
heavy chain, fast skeletal muscle-like)(NCBIのタンパク質アクセッション番号XP_014039990.1、DNAアクセッション番号XM_014184515.1)(アミノ酸配列:配列番号70、それをコードする塩基配列:配列番号69)
スポット13:ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアル(ATP synthase subunit beta, mitochondrial)(NCBIのタンパク質アクセッション番号XP_014007238.1、DNAアクセッション番号XM_014151763.1)(アミノ酸配列:配列番号138、それをコード
する塩基配列:配列番号137)
実施例9:他の魚種での抗原確認(2)
アジ、アナゴ、サケ、サバ、タイ、およびタラの6種の魚の身を用いて、実施例4と同様に、抗原の確認を行った。魚アレルギー患者4の血清を用いたイムノブロットを、対照である非魚アレルギー被験者の血清を用いたイムノブロットと比較した。6種の魚の身それぞれに含まれるタンパク質について魚アレルギー患者4の血清を用いて行ったイムノブロット(
図4)において、非魚アレルギー被験者の血清を用いた場合(
図3)とは異なり、サケにおいて魚アレルギー患者1~3の血清で得られた合計14のスポットの一部に相当するスポットが検出された。
【0377】
それぞれの魚種で検出されたスポットは以下のとおりである。
アジ:スポット1、3、4、8、10、11、および14
アナゴ:スポット1、4、10、および11
サケ:スポット2、8、および10~14
サバ:スポット4、8、10、11、13、および14
タイ:スポット1、4、6、8、10、および13
タラ:スポット1、5、8、10、11、および13
実施例10:エピトープの同定
魚のアレルゲンコンポーネントのエピトープ
魚のアレルゲンコンポーネントについて、以下の手順によりエピトープの同定を行った。
【0378】
(A)エピトープマッピング(1)
魚のアレルギーコンポーネントとして特定したアミノ酸配列ならびに公知の魚アレルギー抗原であるアルドラーゼ、ベータ-エノラーゼ、およびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(非特許文献2~4)のアミノ酸配列に対応するオーバーラップペプチド(長さ:15アミノ酸)のライブラリーによって、エピトープマッピングを行った。具体的には、α-アクチニン-3について配列番号2、EEF1A2バインディングプロテイン-ライクについて配列番号5、α-1,4-グルカンホスホリラーゼについて配列番号10、エロンゲーションファクター2について配列番号19、ヒートショックコグネート70kDaプロテインについて配列番号26、セロトランスフェリンについて配列番号33、ミオシンバインディングプロテインH-ライクについて配列番号43、デスミン(フラグメント)について配列番号56、キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータについて配列番号61、ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライクについて配列番号70、グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライクについて配列番号110、ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライクについて配列番号121、ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアルについて配列番号138、L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライクについて配列番号144、アルドラーゼについて配列番号445、ベータ-エノラーゼについて配列番号446、およびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼについて配列番号447のアミノ酸配列、に基づいてオーバーラップペプチドのライブラリーを調製した。
【0379】
合成する各ペプチドは、10アミノ酸ずつシフトさせた。すなわち各ペプチドは、前のペプチドおよび後のペプチドと、それぞれ5アミノ酸の重複を有する。
【0380】
ペプチドアレイの調製のため、Intavis CelluSpots(商標)技術を使用した。すなわち次の手順、(1)アミノ修飾セルロースディスク上に自動化合成装置(Intavis MultiPep
RS)を用いて目的のペプチドを合成し、(2)前記アミノ修飾セルロースディスクを溶
解させてセルロース結合ペプチド溶液を得て、(3)コーティングを施したスライドガラス上に前記セルロース結合ペプチドをスポットすることにより、ペプチドアレイを調製した。各手順の詳細は以下のとおりである。
(1)ペプチドの合成
384ウェル合成プレート中のアミノ修飾セルロースディスク上で、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学反応を利用して、ペプチド合成を段階的に行った。すなわち、Fmoc基がアミノ基に結合したアミノ酸をジメチルホルムアミド(DMF)中のN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の溶液で活性化し、前記セルロースディスクに滴下してセルロースディスク上のアミノ基へ前記Fmoc基結合アミノ酸を結合させ(カップリング)、未反応のアミノ基を無水酢酸によりキャッピングしてDMFにより洗浄し、さらにピペリジンで処理してDMFにより洗浄して、セルロースディスク上のアミノ基に結合したアミノ酸のアミノ基からFmoc基を除去した。前記セルロースディスク上のアミノ基に結合したアミノ酸に対して、上記カップリング、キャッピング、およびFmoc基の除去を反復して行うことにより、アミノ末端を伸長させてペプチド合成を行った。
(2)アミノ修飾セルロースディスクの溶解
上記「(1)ペプチドの合成」で得られた目的のペプチドが結合したセルロースディスクを96ウェルプレートに移し、アミノ酸の側鎖の脱保護のため、トリフルオロ酢酸(T
FA)、ジクロロメタン、トリイソプロピルシラン(TIPS)、および水の側鎖脱保護混合液で処理した。その後、脱保護されたセルロース結合ペプチドを、TFA、ペルフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)、TIPS、および水の混合液で溶解し、テトラブチルメチルエーテル(TBME)で沈殿させ、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に再懸濁し、NaCl、クエン酸Na、および水の混合液と混合し、スライドスポット用ペプチド溶液を得た。
(3)セルロース結合ペプチド溶液のスポット
上記「(2)アミノ修飾セルロースディスクの溶解」で得られたスライドスポット用ペプチド溶液を、Intavisスライドスポッティングロボットを用いて、Intavis CelluSpots
(商標)スライド上にスポットし、これを乾燥させてペプチドアレイを調製した。
【0381】
前記ペプチドアレイを用いて、抗原抗体反応により魚アレルギー患者の血清中のIgE抗体が結合するか否かを各ペプチド断片について測定した。測定は以下の手順に従って行った。
(1)ペプチドを、PBST中で、室温で1時間振盪した。
(2)5%血清/PBST中で、室温で一晩振盪した。
(3)PBST溶液(非イオン界面活性剤Tween 20を0.1%含むPBSバッファー)で5分洗浄した(×3回)。
(4)抗ヒトIgE抗体-HRP(1:5,000、PBST)を添加し、室温で1時間振盪した。
(5)PBST溶液で5分洗浄した(×3回)。
(6)Pierce ECL Plus Western Blotting Substrate(Thermo社製)を添加し、室温で5分間静置した。
(7)Amersham Imager 600を使用して、上記(1)~(6)の処理を施したペプチドの
化学発光を測定した。
【0382】
上記(7)において測定して得られた画像に対して、ImageQuant TL(GEヘルスケア社)
を用いて化学発光量を数値化した。4名の非魚アレルギー被験者の血清を使用した結果か
ら得られた画像からそれぞれ数値化されたその平均値で、5名の患者の血清を使用した結
果から得られた画像から数値化されたその平均値を除した値(患者群の平均値/非魚アレ
ルギー被験者群の平均値)が1.5以上で、かつマン・ホイットニーのU検定により有意差が0.05以下のペプチドを患者特異的にIgE抗体と結合したペプチドと判断した。
【0383】
(B)エピトープマッピング(2):オーバーラッピング
上記(A)により患者特異的に血清中IgE抗体が結合したペプチドの配列(α-アクチニン-3について配列番号150~154、EEF1A2バインディングプロテイン-ライクについて配列番号155、α-1,4-グルカンホスホリラーゼについて配列番号156および157、エロンゲーションファクター2について配列番号158および159、ヒートショックコグネート70kDaプロテインについて配列番号160~162、セロトランスフェリンについて配列番号163~167、ミオシンバインディングプロテインH-ライクについて配列番号168~171、デスミン(フラグメント)について配列番号172~174、キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータについて配列番号175~178、ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライクについて配列番号179~185、グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライクについて配列番号186、ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライクについて配列番号187~196、ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアルについて配列番号197、L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライクについて配列番号198、アルドラーゼについて配列番号199、ベータ-エノラーゼについて配列番号200~202、およびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼについて配列番号203および204)を基に、当該
ペプチドの配列および当該ペプチドの配列を含むアレルゲンコンポーネントのアミノ酸配列(α-アクチニン-3について配列番号2、EEF1A2バインディングプロテイン-ライクについて配列番号5、α-1,4-グルカンホスホリラーゼについて配列番号10、エロンゲーションファクター2について配列番号19、ヒートショックコグネート70kDaプロテインについて配列番号26、セロトランスフェリンについて配列番号33、ミオシンバインディングプロテインH-ライクについて配列番号43、デスミン(フラグメント)について配列番号56、キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータについて配列番号61、ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライクについて配列番号70、グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライクについて配列番号110、ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライクについて配列番号121、ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアルについて配列番号138、L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライクについて配列番号144、アルドラーゼについて配列番号445、ベータ-エノラーゼについて配列番号446、およびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼについて配列番号447)における当該ペプチドの前後の配列を付加した配列において、オーバーラップペプチド断片(長さ:10アミノ酸)のライブラリーを作製し、エピトープマッピングを行った。
【0384】
合成する各ペプチドは、1アミノ酸ずつシフトさせた。すなわち各ペプチドは、前のペプチドおよび後のペプチドと、それぞれ9アミノ酸の重複を有する。
【0385】
ライブラリーは上記(A)と同様の手順で調製し、上記と同様の手法で患者および非魚アレルギー被験者の血清中のIgE抗体が結合するか否かを各ペプチド断片について測定した。1アミノ酸ずつシフトさせたペプチドにより患者のIgE抗体への結合性が喪失あるいは減少し、非魚アレルギー被験者のIgE抗体への結合性が発生した位置のアミノ酸は、IgE抗体の結合の特異性に悪影響を及ぼすアミノ酸であると判断した。
【0386】
上記(A)と同様に、測定して得られた画像に対して、ImageQuant TL(GEヘルスケア
社)を用いて化学発光量を数値化した。5名の患者の血清を使用した結果から得られた画像から患者特異的にIgE抗体と結合したと判断したペプチドであって、オーバーラッピングの基礎とした配列(配列番号150~204)により得られた値を100%としたとき、20%未満はIgE抗体との結合性なし、20%以上50%未満はIgE抗体との結合性は劣るが、IgE抗体との結合性はあり、50%以上70%未満はIgE抗体との結合性は多少劣るが、IgE抗体との結合性あり、70%以上90%未満は、IgE抗体との結合性に差がほとんどない、90%以上はIgE抗体との結合性に差がないまたはIgE抗体との結合性がよいとして、IgE抗体との結合性が残存したペプチドであると判断した。
【0387】
この解析により、オーバーラッピングの基礎とした配列において、患者のIgE抗体との結合に重要な領域を見出した。
【0388】
(C)エピトープマッピング(3):アラニンスキャン
上記(A)で同定したアミノ酸配列について、アラニンスキャンと呼ばれる手法(非特許文献5)により、アミノ末端側から1アミノ酸ずつアラニンに置換したペプチド断片のライブラリーを、上記と同様の手法で調製し、上記と同様の手法で患者および非魚アレルギー被験者の血清中のIgE抗体が結合するか否かを各ペプチド断片について測定した。アラニン置換により患者のIgE抗体への結合性が喪失あるいは減少し、非魚アレルギー被験者のIgE抗体への結合性が発生した位置のアミノ酸は、本来の抗原性の発現のために重要なアミノ酸、または本来の抗原性の発現に影響するアミノ酸と判断した。また、アラニン置換によっても患者のIgE抗体への結合性が維持され、非魚アレルギー被験者の
IgE抗体への結合性も発生しなかった位置のアミノ酸は、本来の抗原性の発現のためには重要ではなく、置換が可能なアミノ酸と判断した。
【0389】
上記(A)と同様に、測定して得られた画像に対して、ImageQuant TL(GEヘルスケア
社)を用いて化学発光量を数値化した。5名の患者の血清を使用した結果から得られた画像から患者特異的にIgE抗体と結合したと判断したペプチドであって、オーバーラッピングの基礎とした配列(配列番号150~204)により得られた値を100%としたとき、20%未満はIgE抗体との結合性なし、20%以上50%未満はIgE抗体との結合性は劣るが、IgE抗体との結合性はあり、50%以上70%未満はIgE抗体との結合性は多少劣るが、IgE抗体との結合性あり、70%以上90%未満は、IgE抗体との結合性に差がほとんどない、90%以上はIgE抗体との結合性に差がないまたはIgE抗体との結合性がよいとして、IgE抗体との結合性が残存したペプチドであると判断した。
【0390】
この解析により、オーバーラッピングの基礎とした配列における患者のIgE抗体との結合に重要な領域において、本来の抗原性の発現のために重要な共通配列を見出した。
【0391】
(D)結果
上記(A)のエピトープマッピングの結果、α-アクチニン-3についてエピトープNo.1~5(それぞれ、配列番号150~154のアミノ酸配列を有するペプチド)に、EEF1A2バインディングプロテイン-ライクについてエピトープNo.6(配列番号155のアミノ酸配列を有するペプチド)に、α-1,4-グルカンホスホリラーゼについてエピトープNo.7および8(それぞれ、配列番号156および157のアミノ酸配列を有するペプチド)に、エロンゲーションファクター2についてエピトープNo.9および10(それぞれ、配列番号158および159のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ヒートショックコグネート70kDaプロテインについてエピトープNo.11~13(それぞれ、配列番号160~162のアミノ酸配列を有するペプチド)に、セロトランスフェリンについてエピトープNo.14~18(それぞれ、配列番号163~167のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ミオシンバインディングプロテインH-ライクについてエピトープNo.19~22(それぞれ、配列番号168~171のアミノ酸配列を有するペプチド)に、デスミン(フラグメント)についてエピトープNo.23~25(それぞれ、配列番号172~174のアミノ酸配列を有するペプチド)に、キャッピングプロテイン(アクチンフィラメント)マッスルZ-ラインベータについてエピトープNo.26~29(それぞれ、配列番号175~178のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ミオシンヘビーチェイン,ファストスケレタルマッスル-ライクについてエピトープNo.30~36(それぞれ、配列番号179~185のアミノ酸配列を有するペプチド)に、グリコーゲンホスホリラーゼ,マッスルフォーム-ライクについてエピトープNo.37(配列番号186のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ミオシン-バインディングプロテインC,ファスト-タイプ-ライクについてエピトープNo.38~47(それぞれ、配列番号187~196のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ATPシンターゼサブユニットβ,ミトコンドリアルについてエピトープNo.48(配列番号197のアミノ酸配列を有するペプチド)に、L-ラクテートデヒドロゲナーゼAチェイン-ライクについてエピトープNo.49(配列番号198のアミノ酸配列を有するペプチド)に、アルドラーゼについてエピトープNo.50(配列番号199のアミノ酸配列を有するペプチド)に、ベータ-エノラーゼについてエピトープNo.51~53(配列番号200~202のアミノ酸配列を有するペプチド)に、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼについてエピトープNo.54および55(配列番号203および204のアミノ酸配列を有するペプチド)に、それぞれ患者特異的にIgE抗体が結合したことが確認された。これらエピトープのペプチド配列が、それぞれ実施例2、3、5~8において同定されたアレルゲンコンポーネントならびに公知のアレルゲンコンポーネントであ
るアルドラーゼ、ベータ-エノラーゼ、およびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼの配列中のどの部分に相当するかについて、表2に示す。
【0392】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
各エピトープについて、上記(B)および上記(C)の結果、以下の通りエピトープ配列とアレルギー患者のIgE抗体との結合に重要なアミノ酸が同定された。
【0393】
(1)エピトープ1
エピトープ1(配列番号150)中で患者のIgE抗体との結合に重要な領域として、1~10番目のアミノ酸に相当する配列番号207及び9~14番目のアミノ酸に相当する配列番号210が同定された。
【0394】
結合に重要な領域である配列番号207の、7~9番目のアミノ酸がアレルギー患者のIgE抗体との結合に特に重要なアミノ酸であり、1及び10番目のアミノ酸がアレルギー患者のIgE抗体との結合に影響するアミノ酸であることが特定された。配列番号207の2~6番目のアミノ酸はアラニンに置換してもアレルギー患者のIgE抗体との結合性に影響しなかった。
【0395】
また、結合に重要な領域である配列番号210の、1、2及び6番目のアミノ酸がアレルギー患者のIgE抗体との結合に特に重要なアミノ酸であることが特定された。配列番号210の3~5番目のアミノ酸はアラニンに置換してもアレルギー患者のIgE抗体との結合性に影響しなかった。
【0396】
以下、エピトープ2~55についても同様に特定し、結果を以下の表3にまとめた。
【0397】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
実施例11:エピトープの交差性の確認
上記表3の、サケのヒートショックコグネート70kDaプロテインについて見出された「SMVLVKMKEIAEAYL」のアミノ酸配列(配列番号160)を有するエピトープNo.1
1中の、結合に重要な領域(配列番号250)中における特に重要なアミノ酸以外のアミノ酸を、任意のアミノ酸(X)としたアミノ酸配列「EXXXXYL」(配列番号248)につ
いて、同配列を有するタンパク質をNCBIで検索した結果、ヒラメのヒートショック70kDaプロテイン(アクセッション番号XP_019944736.1)の「AMVLVKMKETAEAYL」(配
列番号451)のアミノ酸配列がヒットした。
【0398】
配列番号160および451のアミノ酸配列を含むペプチドについて、サケおよびヒラメに対してアレルギーを有する患者(1名)のIgE抗体との結合性をELISA法により確認した。ペプチドは、Fmoc法によりN末端側でビオチン化されるように合成した。
【0399】
ELISA法は、具体的には以下の手順に従って行った。
(1)ビオチン化ペプチドの濃度が1μg/mLとなるようにPBSTで調製した。
(2)各ペプチド溶液をストレプトアビジン被覆した384ウェルプレートの各ウェルに40μL添加して、室温で1時間振盪した。溶液を回収後、PBSで5回洗浄した。
(3)40μLの5倍希釈Bloking one(MQで希釈)を添加して、室温で15分間振盪し
た。溶液を除去後、PBSで5回洗浄した。
(4)40μLの血清希釈液(1:10、希釈液:ナカライテスク社製ブロッキングワン)を添加し、室温で1時間振盪した。溶液を除去後、PBSで5回洗浄した。
(5)40μLの二次抗体希釈液(1:5000、希釈液:ナカライテスク社製ブロッキングワン)を添加し、室温で1時間振盪した。溶液を除去後、PBSで5回洗浄した。
(6)40μLの1-Step Ultra TMB-ELISA(サーモフィッシャーサイエンティフィックス)を添加し、室温で15分間振盪した。
(7)40μLの2M H2SO4を添加した。450nmの吸光度を測定した。
【0400】
このヒラメのヒートショック70kDaプロテインの「AMVLVKMKETAEAYL」のアミノ酸
配列を有するペプチドおよびサケのヒートショックコグネート70kDaプロテインの「SMVLVKMKEIAEAYL」のアミノ酸配列を有するペプチドを、実施例10の(A)と同様の手
順でそれぞれ調製し、同様の手法でサケとヒラメにアレルギー症状を有する魚アレルギー患者の血清および非魚アレルギー被験者の血清(4名分を混合)中のIgE抗体が結合するか否かを測定した。結果を
図5に示す。
【0401】
図5から明らかであるように、ヒラメのヒートショック70kDaプロテイン由来のアミノ酸配列を有するペプチドにも、サケのヒートショックコグネート70kDaプロテイン由来のアミノ酸配列を有するペプチドと同様に、患者特異的にIgE抗体が結合した。したがって、エピトープNo.11は、サケとヒラメの魚種間での交差性を示すエピトープであることが確認された。また、エピトープNo.11以外にも、実施例10で同定したエピトープNo.1~No.55(配列番号150~204)において交差性が確認された。
【0402】
なお、これらのエピトープは、ヒラメ以外にもアジ、アナゴ、クロダイ、サバ、タイ、タラ、ハマチ、ウナギなどにおいても交差性を有しており、このことは、これらのエピトープが魚種を越えた抗原の交差性を検出するのに利用できることを示している。