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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009674
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】工具測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01B21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111372
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】514128917
【氏名又は名称】株式会社木山合金
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 進
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA31
2F069AA51
2F069AA55
2F069AA71
2F069BB02
2F069DD15
2F069GG04
2F069GG07
2F069JJ17
2F069NN09
(57)【要約】
【課題】被測定工具の刃先に関する測定が簡単にかつ高精度に行えるようにする。
【解決手段】工具測定装置1は、被測定工具100を回転させる被測定工具回転用モータ4と、制御部と、被測定工具100の刃の数の入力を受け付ける入力部とを備えている。制御部は、被測定工具100の軸芯周りの1周の回動角度を刃の数で除して算出された角度に基づく所定の角度範囲だけ被測定工具を回動させつつ、非接触測定器3による測定を実行させて最も高い部分を探索する。探索された最も高い部分を刃先として特定する。特定した刃先の位置から所定の角度範囲ごとに被測定工具100を回動させて非接触測定器3により各刃先を測定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定工具を軸芯周りに回転可能に支持した状態で非接触測定器によって測定する工具測定装置であって、
前記被測定工具を回転させる被測定工具回転用モータと、
前記被測定工具回転用モータ及び前記非接触測定器に接続され、前記被測定工具回転用モータ及び前記非接触測定器を制御する制御部と、
前記被測定工具の刃の数の入力を受け付ける入力部とを備え、
前記制御部は、前記入力部により前記刃の数の入力が受け付けられた場合、前記被測定工具の軸芯周りの1周の回動角度を前記刃の数で除して算出された角度に基づく所定の角度範囲だけ前記被測定工具を回動させつつ、前記非接触測定器による測定を実行させて最も高い部分を探索し、探索された最も高い部分を刃先として特定した後、特定した前記刃先の位置から前記所定の角度範囲ごとに前記被測定工具を回動させて前記非接触測定器により各刃先に関連する寸法を測定することを特徴とする工具測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具測定装置において、
前記被測定工具回転用モータの高さを調整する高さ調整部を備え、
前記入力部は、前記被測定工具の外径の入力を受け付け可能に構成され、
前記制御部は、前記入力部により受け付けられた前記外径に基づいて、前記被測定工具回転用モータの出力軸の高さが前記被測定工具の軸芯の高さと一致するように、前記高さ調整部を制御することを特徴とする工具測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工具測定装置において、
前記所定の角度範囲は、前記被測定工具の軸芯周りの1周の回動角度を前記刃の数で除して算出された角度に、公差角度を加えた角度であることを特徴とする工具測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の工具測定装置において、
前記非接触測定器が固定される基台と、
前記被測定工具を前記非接触測定器に対して接離する方向に移動させる移動機構とを備え、
前記制御部は、前記移動機構により前記被測定工具を前記非接触測定器に対して接離する方向に移動させて、前記被測定工具の軸芯方向に離れた複数箇所の測定を前記非接触測定器に実行させることを特徴とする工具測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の工具測定装置において、
前記入力部は、前記被測定工具のネジレ角の入力を受け付け可能に構成され、
前記制御部は、前記入力部により受け付けられた前記ネジレ角に基づいて、前記非接触測定器による刃先の測定が可能になるように、前記被測定工具を前記被測定工具回転用モータにより回動させることを特徴とする工具測定装置。
【請求項6】
請求項4に記載の工具測定装置において、
前記入力部は、前記被測定工具のネジレ方向の入力を受け付け可能に構成され、
前記制御部は、前記入力部により受け付けられた前記ネジレ方向に基づいて、前記非接触測定器による刃先の測定が可能になるように、前記被測定工具の前記被測定工具回転用モータによる回転方向を決定することを特徴とする工具測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばエンドミル、ツイストドリルなどの回転工具が持つ刃先に関連する寸法や円筒度などを非接触方式で測定する工具測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンドミル、ツイストドリルなどの回転工具は回転軸周りに回転する複数の刃を持っている。回転工具の刃先に関連する寸法や振れ、円筒度などは工作精度に直接的に影響することから正確に測定し、管理しておく必要がある。回転工具の刃を非接触式で測定する測定装置としては、例えば特許文献1に開示されているように、被測定工具をモータによって回転させつつ、レーザ測定器によって測定するように構成されたものが知られている。レーザ測定器は、被測定工具の刃が形成されている部分に対して、軸芯と直交する方向からレーザ光を照射し、照射したレーザ光を照射側と反対側で受光することにより、被測定工具の刃先に関連する寸法、振れ、円筒度、真直度、テーパー度、バックテーパ等の測定が可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5621076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工具測定装置に被測定工具を取り付けただけでは、被測定工具の周面のどの位置に刃が位置しているのかが不明であり、特に刃先に関連する寸法の測定は困難である。従って、被測定工具の周面のどの位置に刃が位置しているのかをユーザが探索し、探索した位置でレーザ測定器による測定を実行する必要があり、測定作業が煩雑であった。また、ユーザが探索した位置が正確でない場合も考えられ、この場合は測定精度の低下の招くおそれがあった。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被測定工具の刃先に関する測定が簡単にかつ高精度に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、被測定工具を軸芯周りに回転可能に支持した状態で非接触測定器によって測定する工具測定装置を前提とすることができる。工具測定装置は、前記被測定工具を回転させる被測定工具回転用モータと、前記被測定工具回転用モータ及び前記非接触測定器に接続され、前記被測定工具回転用モータ及び前記非接触測定器を制御する制御部と、前記被測定工具の刃の数の入力を受け付ける入力部とを備えている。前記制御部は、前記入力部により前記刃の数の入力が受け付けられた場合、前記被測定工具の軸芯周りの1周の回動角度を前記刃の数で除して算出された角度に基づく所定の角度範囲だけ前記被測定工具を回動させつつ、前記非接触測定器による測定を実行させて最も高い部分を探索し、探索された最も高い部分を刃先として特定した後、特定した前記刃先の位置から前記所定の角度範囲ごとに前記被測定工具を回動させて前記非接触測定器により各刃先に関連する寸法を測定するように構成されている。
【0007】
この構成によれば、ユーザが被測定工具を工具測定装置に取り付けるとともに、取り付けた被測定工具の刃の数を入力すると、入力された刃の数が入力部により受け付けられる。入力部により刃の数の入力が受け付けられると、制御部は、被測定工具の軸芯周りの1周の回動角度を刃の数で除した角度に基づく所定の角度範囲だけ被測定工具を回動させる。例えば4つの刃を持っている被測定工具であれば、90°を前記角度範囲とすることができる。この角度範囲で被測定工具を回動させる間、非接触測定器に測定を実行させて最も高い部分を探索し、最も高い部分を刃先として特定する。従って、被測定工具の周面のどの位置に刃が位置しているのかをユーザが探索することなく、工具測定装置が自動で探索するので、ユーザの負担が少なくなる。そして、刃先が特定されると、例えば4つの刃を持っている被測定工具であれば、90°ごとに被測定工具を回動させることで、90°ごとに1つの刃が現れることになり、これを繰り返すことで、各刃先に関連する寸法を測定することが可能になる。
【0008】
別の態様では、被測定工具回転用モータの高さを調整する高さ調整部を備えていてもよい。この場合、入力部は、被測定工具の外径の入力を受け付け可能に構成され、制御部は、前記入力部により受け付けられた前記外径に基づいて、前記被測定工具回転用モータの出力軸の高さが前記被測定工具の軸芯の高さと一致するように、前記高さ調整部を制御する。これにより、外径が異なる複数種の被測定工具を高精度に測定できる。
【0009】
別の態様では、前記所定の角度範囲は、被測定工具の軸芯周りの1周の回動角度を刃の数で除して算出された角度に、公差角度を加えた角度とすることができる。これにより、被測定工具の公差を考慮した測定が可能になる。
【0010】
別の態様では、非接触測定器が固定される基台と、前記被測定工具を前記非接触測定器に対して接離する方向に移動させる移動機構とを備えていてもよい。この場合、前記制御部は、前記移動機構により前記被測定工具を前記非接触測定器に対して接離する方向に移動させて、前記被測定工具の軸芯方向に離れた複数箇所の測定を前記非接触測定器に実行させることができる。
【0011】
また、入力部は、前記被測定工具のネジレ角の入力を受け付け可能に構成されていてもよい。この場合、前記制御部は、前記入力部により受け付けられた前記ネジレ角に基づいて、前記非接触測定器による刃先の測定が可能になるように、前記被測定工具を前記被測定工具回転用モータにより回動させることができる。
【0012】
また、入力部は、前記被測定工具のネジレ方向の入力を受け付け可能に構成されていてもよい。この場合、前記制御部は、前記入力部により受け付けられた前記ネジレ方向に基づいて、前記非接触測定器による刃先の測定が可能になるように、前記被測定工具の前記被測定工具回転用モータによる回転方向を決定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、入力された刃の数に基づいて被測定工具の回動角度範囲を設定し、その角度範囲内で最も高い部分を刃先として特定するとともに、特定した刃先の位置から角度範囲ごとに被測定工具を回動させて各刃先に関連する寸法を測定することができるので、測定を簡単にかつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る工具測定装置を前方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る工具測定装置を前方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る工具測定装置の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る工具測定装置の平面図である。
図5図4におけるV-V線断面図である。
図6】被測定工具回転用モータ、被測定工具の押圧機構近傍の拡大図である。
図7】変形例に係る継手構造の側面図である。
図8図7におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】押圧位置にある押圧ローラの拡大図である。
図10】工具測定装置のブロック図である。
図11】測定メニュー画面の一例を示す図である。
図12】測定プログラム作成画面の一例を示す図である。
図13】検索画面の一例を示す図である。
図14】測定画面の一例を示す図である。
図15】測定時の被測定工具を先端側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1図5は、本発明の実施形態に係る工具測定装置1を示すものである。工具測定装置1は、例えばエンドミル、ボールエンドミル、ツイストドリルなどの回転工具の刃先に関連する寸法、外径、振れ、円筒度、真直度、テーパー度、バックテーパーなどを測定するための装置である。本明細書では、上記回転工具を被測定工具と呼び、各図には符号100で示している。被測定工具100の形状は、各図において単純な円柱状で示しているが、その形状は工具によって様々である。また、被測定工具100は、当該被測定工具100の基端側にあるシャンク部の外径が互いに異なる複数の種類が存在している。
【0017】
工具測定装置1は、被測定工具100を軸芯300(図2図5に示す)周りに回転可能に支持した状態で非接触測定器3によって測定可能に構成されている。この実施形態の説明では、各図に示すように軸芯300の延びる方向を前後方向とし、非接触測定器3が配置される側を「前」とし、その反対側を「後」とする。また、後から前に向かったときの右側を「右」とし、後から前に向かったときの左側を「左」と定義する。この方向の定義は実施形態の説明の便宜を図るためであり、工具測定装置1の方向を限定するものではない。また、工具測定装置1の前後方向は、工具測定装置1の奥行方向と呼ぶこともでき、また、工具測定装置1の左右方向は、工具測定装置1の幅方向と呼ぶこともできる。
【0018】
工具測定装置1は、鋼材等の高剛性な板材からなる基台2と、非接触測定器3と、被測定工具回転用モータ4とを備えている。基台2の下面には脚部2aが設けられており、基台2の下面は工具測定装置1が設置される設置面200(図5に示す)から上方に離れている。基台2は、前後方向に長い矩形に近い形状とされている。図2図4及び図5に示すように、基台2の中央部には、前後方向に長い開口部2bが形成されている。
【0019】
非接触測定器3は、従来から周知のレーザ光を測定光として用いた測定器であり、基台2の前側部分において当該基台2の上面から上方に離れた位置に固定されている。すなわち、非接触測定器3は、上下方向に所定の幅を持った帯状のレーザ光を測定対象物である被測定工具100に対して投光する投光側機器3aと、投光側機器3aから投光されたレーザ光を受光する受光側機器3bとを備えている。投光側機器3aは、被測定工具100に対して当該被測定工具100の軸芯300(図3図5等に示す)に直交する水平方向にレーザ光を照射するように配置されている。一方、受光側機器3bは、投光側機器3aと対向するように配置されている。つまり、投光側機器3aと受光側機器3bとは、被測定工具100を水平方向に挟むように配置される。
【0020】
基台2には、被測定工具回転用モータ4及び被測定工具100を前後方向、即ち非接触測定器3に対して接離する方向に移動させるための移動機構5と、案内レール6とが設けられている。移動機構5は、基台2の上面において開口部2bの右側に設けられており、前後方向に延びる固定側部材5aと、固定側部材5aに対して前後方向に摺動可能に設けられる可動側部材5bと、可動側部材5bを前後方向に駆動する送りモータ5cとを有している。固定側部材5aは基台2に固定されている。可動側部材5bは、固定側部材5aによって前後方向のみ移動可能になっており、左右方向や上下方向に移動不能になっている。送りモータ5cは、例えば図示しない送りネジを回転させるためのものである。可動側部材5bは送りネジに螺合するナット(図示せず)を有しており、送りネジの回転によって可動側部材5bが前後方向に移動する。可動側部材5bの移動方向、移動速度、移動量は、送りモータ5cによって制御される。移動量は、公知のリニアエンコーダ等によって取得可能である。
【0021】
案内レール6は、基台2の上面において開口部2bの左側に設けられており、前後方向に延びる固定側レール6aと、固定側レール6aに対して前後方向に摺動可能に設けられる可動側レール6bとを有している。固定側レール6aは基台2に固定されている。可動側レール6bは、固定側レール6aによって前後方向のみ移動可能になっており、左右方向や上下方向に移動不能になっている。
【0022】
移動機構5の可動側部材5bと、案内レール6の可動側レール6bとには、可動板7が固定されている。可動板7は、基台2の開口部2bの上方に位置するとともに左右方向に延びている。可動板7の右側部分が可動側部材5bに固定され、可動板7の左側部分が可動側レール6bに固定されている。従って、可動板7は、移動機構5によって前後方向に駆動されるとともに、案内レール6によって前後方向にのみ案内される。
【0023】
図1図5等に示すように、可動板7の前側部分には、金属製の被測定工具保持用ブロック8が取付部材9を介して固定されており、従って、被測定工具保持用ブロック8は、取付部材9、可動板7、移動機構5及び案内レール6を介して基台2に取り付けられることになる。この被測定工具保持用ブロック8には、被測定工具100を保持するV字溝8aが上方に開口するように形成されている。つまり、いわゆるVブロックで被測定工具保持用ブロック8を構成することができる。尚、被測定工具保持用ブロック8は、可動板7に対して着脱可能になっている。
【0024】
図5に示すように、可動板7には上下方向及び左右方向に延びる縦板11が固定されている。縦板11の上部は、可動板7における被測定工具保持用ブロック8よりも後側部分に締結されている。縦板11は、可動板7の下面から下方へ突出している。縦板11と可動板7における前側部分とは連結部材12によって連結されており、縦板11の剛性が高められている。
【0025】
縦板11の後面には、被測定工具回転用モータ4の高さを調整する高さ調整部20が設けられている。すなわち、高さ調整部20は、被測定工具回転用モータ4を上下動させる直動式のアクチュエータで構成されており、このアクチュエータは、被測定工具回転用モータ4が固定されるとともに上下方向に延びる姿勢となるように配置されたロッド20aと、ロッド20aを上下方向に駆動する本体部20bとを有している。本体部20bには、図示しないモータが設けられており、このモータによって駆動される送りネジ機構を利用してロッド20aを上下方向に駆動させることができる。高さ調整部20の構成は上述した構成に限られるものではなく、被測定工具回転用モータ4を昇降させて所定の高さで保持することが可能に構成されたものであればよい。被測定工具回転用モータ4の高さは、周知のリニアエンコーダ(図示せず)によって高精度に取得できる。
【0026】
高さ調整部20の本体部20bは、高さ調整部用ブラケット21を介して縦板11に固定されている。従って、本体部20bは、高さ調整部用ブラケット21、縦板11、可動板7、移動機構5及び案内レール6を介して基台2に取り付けられることになるので、高さ調整部20も移動機構5によって前後方向に移動可能である。
【0027】
高さ調整部20のロッド20aの上部には、モータ支持台23が固定されている。モータ支持台23は、左右方向及び前後方向に延びている。モータ支持台23の上面に被測定工具回転用モータ4が固定されている。よって、高さ調整部20のロッド20aを上下方向に駆動することで、被測定工具回転用モータ4がモータ支持台23と共に昇降動作する。高さ調整部20のロッド20aを停止させると、被測定工具回転用モータ4が所定の高さで保持される。被測定工具回転用モータ4の高さ調整の詳細については後述する。
【0028】
被測定工具回転用モータ4は、その出力軸4aが前後方向に向けて水平に延びる姿勢となるように、かつ、出力軸4aが前方へ向けて突出するように位置決めされている。出力軸4aには、ユニバーサルジョイント4bの一方側が固定されている。ユニバーサルジョイント4bの他方側には、被測定工具100のシャンク部が固定されるようになっている。従って、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aの回転力は、ユニバーサルジョイント4bを介して被測定工具100に伝達される。ユニバーサルジョイント4bを設けることで、出力軸4aと被測定工具100との僅かな芯ズレを吸収することができる。
【0029】
ユニバーサルジョイント4bの代わりに、図7及び図8に変形例として示す弾性継手25を、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aと、被測定工具100との間に介在させてもよい。弾性継手25は、例えばゴムやエラストマー等の弾性変形可能な部材からなり、筒状に形成されている。弾性継手25の後側(一端側)には、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aが固定される筒状の後側固定部25aが設けられている。出力軸4aは、後側固定部25aに嵌入された状態で固定されており、出力軸4aと弾性継手25とは相対回転不能になっている。
【0030】
弾性継手25の前側(他端側)には、被測定工具100のシャンク部が差し込まれる筒状の前側固定部25bが設けられている。弾性継手25の前側の外周部には、硬質部材からなるベースリング26が設けられている。ベースリング26の外周面には、ネジ山26aが形成されている。さらに、弾性継手25の前側の外周部には、硬質部材からなる筒状のキャップ27が設けられている。キャップ27の内周面には、ベースリング26のネジ山26aが螺合するネジ溝27aが形成されている。ベースリング26のネジ山26aをキャップ27のネジ溝27aに螺合させて締め込んでいくことで、前側固定部25bが被測定工具100のシャンク部に締め付けられるようになっている。これにより、被測定工具100と弾性継手25とが相対回転不能になる。ベースリング26及びキャップ27は、差し込まれた被測定工具100のシャンク部を締め付けるための締め付け部材である。
【0031】
弾性継手25における後側固定部25aと前側固定部25bとの間の部分は、弾性変形可能な変形部25cとされている。出力軸4aの回転中に変形部25cが弾性変形することで、出力軸4aと被測定工具100との僅かな芯ズレを吸収できる。
【0032】
図6等に示すように、工具測定装置1は、被測定工具保持用ブロック8のV字溝8aに保持された被測定工具100を上方から押圧する押圧ローラ(押圧部材)30と、押圧ローラ30を、被測定工具100から離間した退避位置(図6に実線で示す)と、被測定工具100を押圧する押圧位置(図6に仮想線で示す)とに切り替える切替機構40を備えている。押圧ローラ30は、例えば金属や硬質樹脂等の高剛性な部材で構成されている。
【0033】
図9に拡大して示すように、押圧ローラ30は、押圧位置にあるときに被測定工具100の外面に接触する。被測定工具100が被測定工具回転用モータ4によって駆動されると、その駆動力によって押圧ローラ30が被測定工具100の外面を転動するので、被測定工具100に対して上方から押圧力を作用させた測定する間に、押圧ローラ30が摩耗することは殆どない。また、被測定工具100に加わる負荷も軽減できるとともに、被測定工具100の摩耗も抑制できる。
【0034】
押圧ローラ30の外面は、当該押圧ローラ30の幅方向の縁部に近づけば近づくほど外径が小さくなるように形成されている。すなわち、押圧位置にあるときの押圧ローラ30の回転軸Bは前後方向に延びる姿勢となり、回転軸B方向が押圧ローラ30の幅方向になる。押圧ローラ30の外径は、幅方向中央部が最も大径であり、幅方向一縁部(前側の縁部)及び他縁部(後側の縁部)が中央部に比べて小径となっている。このような外径の変化により、押圧ローラ30の外周面は、湾曲した形状になる。これにより、図9に仮想線で示すように、例えば被測定工具100の外径が大きくなった場合には、押圧ローラ30の外周面のうち、後側の縁部寄りの部分を測定用工具100に接触させて測定用工具100を確実に押圧できるとともに、押圧ローラ30をスムーズに転動させることができる。つまり、被測定工具100の外径が異なると、押圧位置にある押圧ローラ30の被測定工具100に対する接触角度が変化することになるが、押圧ローラ30の幅方向の縁部が小径となるように当該押圧ローラ30の外面が形成されていることで、接触角度が異なっていても、被測定工具100を同様に押圧できる。
【0035】
図6等に示すように、切替機構40は、押圧ローラ30を回転可能に支持するアーム41と、アーム41を駆動するアーム駆動部42とを備えている。アーム駆動部42は、直動式アクチュエータで構成されており、前後方向に延びる姿勢となるように配置されたロッド42aと、ロッド42aを前後方向に駆動する本体部42bとを有している。本体部42bには、図示しないモータが設けられており、このモータによって駆動される送りネジ機構を利用してロッド42aを前後方向に駆動させることができる。尚、アーム駆動部42は、例えば流体圧シリンダ装置等で構成されていてもよい。
【0036】
図2に示すように、可動板7の後側部分には、被測定工具回転用モータ4よりも左側に、アーム駆動部用ブラケット43が固定されている。アーム駆動部用ブラケット43には、アーム駆動部42の本体部42bが左右方向に延びる回動軸42cを介して取り付けられている。本体部42bは、回動軸42c周りに回動可能となっている。
【0037】
一方、図4に示すように、可動板7におけるアーム駆動部用ブラケット43よりも前側部分には、左右両側にそれぞれ軸受部44が固定されている。左右の軸受部44の間に、被測定工具回転用モータ4が配置されている。各軸受部44には、それぞれ、左右方向に延びる支軸45が挿通されている。各支軸45は各軸受部44に対して回転可能に支持されている。
【0038】
各支軸45には、それぞれ、揺動部材46が固定されている。揺動部材46は、所定方向に長い板材で構成されており、長手方向一端部が支軸45に固定され、支軸45周りに揺動自在となっている。揺動部材46は、長手方向他端部が一端部よりも上に位置する姿勢となっている。左右の揺動部材46は、被測定工具回転用モータ4の側方に配置されている。
【0039】
工具測定装置1には、左右の揺動部材46の長手方向他端部同士(上端部同士)を連結する連結部材47が設けられている。連結部材47は、被測定工具回転用モータ4から上方に離れた箇所に配置され、左右方向に延びている。連結部材47の左側部分が、左側の揺動部材46の上端部に固定され、また、連結部材47の右側部分が、右側の揺動部材46の上端部に固定されている。
【0040】
工具測定装置1には、アーム駆動部42の力を左側の支軸45に伝達する伝達部材48が設けられている。伝達部材48は、揺動部材46と同様に上下方向に延びている。伝達部材48の下端部が左側の支軸45に固定されている。伝達部材48の上端部には、アーム駆動部42のロッド42aの先端部が左右方向に延びる連結軸(図示せず)により回動可能に連結されている。
【0041】
押圧ローラ30を支持するアーム41の基端部は、連結部材47の左右方向中央部に固定されている。アーム41は、連結部材47の左右方向中央部から前方へ向かって延びた後、下方へ屈曲し、下方へ向かって延びている。図9に示すように、アーム41の先端部には、ローラ支軸41aが設けられている。このローラ支軸41aにより、押圧ローラ30が被測定工具100の回転に伴って回転可能に支持される。
【0042】
したがって、アーム駆動部42のロッド42aを後退させると、ロッド42aに連結されている伝達部材48の上端部が後方へ向けて移動するように当該伝達部材48が左側の支軸45周りに揺動する。左側の支軸45には、左側の揺動部材46が固定されているので、左側の揺動部材46が左側の支軸45周りに後方へ揺動する。左側の揺動部材46が連結部材47を介して右側の揺動部材46と連結されているので、右側の揺動部材46にアーム駆動部42の力が伝達され、右側の揺動部材46が右側の支軸45周りに後方へ揺動する。これにより、アーム41が支軸45を中心とした円弧状の軌跡を描くように上方かつ後方へ移動するので、図6に実線で示すように、押圧ローラ30が被測定工具100から離間した退避位置になる。
【0043】
一方、押圧ローラ30が退避位置にある状態で、アーム駆動部42のロッド42aを前進させると、ロッド42aに連結されている伝達部材48の上端部が前方へ向けて移動するように当該伝達部材48が左側の支軸45周りに揺動する。これにより、左右の揺動部材46が支軸45周りに前方へ揺動するので、アーム41が支軸45を中心とした円弧状の軌跡を描くように下方かつ前方へ移動し、図6に仮想線で示すように、押圧ローラ30が被測定工具100を押圧する押圧位置に切り替わる。
【0044】
(制御部の構成)
図10に示すように、工具測定装置1は、制御部50、入力部51及び表示部52を備えている。制御部50は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータ、電源供給部等を含んでおり、被測定工具回転用モータ4、送りモータ5c、高さ調整部20及びアーム駆動部42に接続され、被測定工具回転用モータ4、送りモータ5c、高さ調整部20及びアーム駆動部42を制御する部分である。
【0045】
入力部51は、例えば上記パーソナルコンピュータを操作するためのキーボードやマウス、タッチ式操作パネル等の操作機器で構成されており、制御部50に接続されている。工具測定装置1を使用する際のユーザによる各種操作は、入力部51によって受け付けられる。入力部51は、入力インターフェース部等を含めてもよい。
【0046】
表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されており、制御部50に接続されて制御部50によって制御される。制御部50は、各種ユーザインタフェース画面を生成して表示部52に表示させる。
【0047】
工具測定装置1は、記憶部53を備えていてもよい。記憶部53は、例えばハードディスクドライブ装置や、ソリッドステートドライブ装置等で構成されており、制御部50に接続されている。制御部50を動作させるための動作プログラムや、後述する測定プログラム、測定データ等は記憶部53に記憶されており、制御部50は、任意のデータを記憶部53に記憶させることや、記憶部53に記憶された各種データを読み込み可能に構成されている。記憶部53は、例えばユーザのサーバで構成されていてもよいし、クラウド型サーバで構成されていてもよい。
【0048】
制御部50には、非接触測定器3も接続されている。制御部50には、非接触測定器3で測定された寸法が当該非接触測定器3から入力される。また、制御部50は、所定のタイミングで非接触測定器3による測定を実行させる測定開始信号を送信可能に構成されており、非接触測定器3は測定開始信号に従って測定を実行する。また、非接触測定器3の測定終了タイミングも制御部50によって決定できる。
【0049】
(測定の具体例)
制御部50について具体的に説明する。制御部50は、例えば中央演算処理装置、ROM、RAM等で構成することができ、動作プログラムに従って動作することで、以下に説明する動作を実行する。まず、制御部50は、図11に示す測定メニュー画面400を生成して表示部52に表示させる。測定メニュー画面400には、「単品測定」、「プログラム測定」、「新規プログラム作成」、「キャリブレーション」、「データ検索」、「設定」の各メニューボタン401~406が設けられている。
【0050】
単品測定は、所定の計測プログラムを読み込まずに測定する場合に選択されるメニューであり、単品測定には、挟み込み測定や振回測定等がある。プログラム測定は、所定の測定プログラムを読み込んで測定する場合に選択されるメニューであり、現場のラインでの使用頻度が高い。新規プログラム作成は、所定の測定プログラムを作成する場合に選択されるメニューである。キャリブレーションは、工具測定装置1のキャリブレーションを実行する場合に選択されるメニューであり、補正値の入力等を行う。データ検索は、これまでに蓄積された測定データの中から所望の測定データを検索する場合に選択されるメニューである。設定は、工具測定装置1の各種設定を行う場合に選択されるメニューである。
【0051】
制御部50は、新規プログラム作成のメニューボタン403が入力部51によって操作されたことを検出すると、図12に示す測定プログラム作成画面410を生成して表示部52に表示させる。測定プログラム作成画面410には、登録日及び登録者の入力欄411、登録項目の入力欄412、図面番号や品番、型式等の入力欄413、被測定工具の属性の入力欄414、被測定工具の測定位置における測定値が表示される表示欄415等が設けられている。各入力欄411~414には、ユーザが入力部51を操作することによって必要な情報が入力され、その入力が受け付けられるようになっている。尚、全ての欄に入力しなくてもよく、必要な欄にのみ入力すればよい。
【0052】
例えば被測定工具の属性の入力欄414には、被測定工具100の属性として、被測定工具100の刃の数である刃数、被測定工具100の外径、外径公差、振れ公差、シャンク径、ネジレ方向、ネジレ角、製品形状、テーパー角、テーパー角公差等の入力が可能になっている。入力部51によって入力欄414に入力された各情報は、制御部50で処理される。このようにして、入力された各情報が反映された測定プログラムが生成され、読み出し可能な状態で記憶部53に記憶される。
【0053】
制御部50は、図11に示す測定メニュー画面400でデータ検索ボタン405が入力部51によって操作されたことを検出すると、図13に示す検索画面420を生成して表示部52に表示させる。検索画面420は、例えば、プログラム、図面番号、受注先、品名、型番、社内規格、被測定工具の属性等を検索条件として、これまでに蓄積された測定データの中から所望の測定データを検索可能にする画面である。ユーザが入力部51を操作することにより、条件入力欄421に各種条件を入力することができる。制御部50は、入力された検索条件に基づいて、過去の測定データを検索し、該当する測定データがヒットした場合には、当該測定データを表示部52に表示させる。
【0054】
制御部50は、図11に示す測定メニュー画面400でプログラム測定ボタン402が入力部51によって操作されたことを検出すると、図14に示す測定画面430を生成して表示部52に表示させる。測定画面430には、測定プログラムの番号を表示するプログラム番号表示領域431と、測定日、測定者等を表示する表示領域432と、被測定工具100の属性を表示する属性表示領域433と、測定値表示領域434と、測定結果表示領域435とが設けられている。属性表示領域433には、図12に示す測定プログラム作成画面410で入力された被測定工具100の属性が表示される。
【0055】
図14に示す測定画面430には、測定を開始するための測定開始ボタン436、測定項目を保存するための測定項目保存ボタン437、測定結果を保存するための測定結果保存ボタン438、測定結果を印刷するための測定結果印刷ボタン439が設けられている。測定開始ボタン436、測定項目保存ボタン437、測定結果保存ボタン438、測定結果印刷ボタン439は、ユーザが入力部51によって操作可能になっている。
【0056】
被測定工具100の測定処理を実行する際には、ユーザが測定開始ボタン436を操作するが、その前に、ユーザは被測定工具100を工具測定装置1にセットする。具体的には、制御部50は、移動機構5の送りモータ5cを作動させて可動板7を後方へ移動させ、後退した状態にしておく。これにより、被測定工具保持用ブロック8や、被測定工具回転用モータ4、押圧ローラ30、切替機構40等が後退する。また、制御部50は、アーム駆動部42を制御してロッド42aを後退させ、押圧ローラ30を退避位置にする。
【0057】
その後、ユーザは、被測定工具100のシャンク部を被測定工具回転用モータ4の出力軸4aに連結するとともに、被測定工具100の軸芯方向方向中間部を被測定工具保持用ブロック8のV字溝8aに入れる。次いで、ユーザが入力部51によって所定のセット完了操作を行うと、制御部50は、アーム駆動部42を制御してロッド42aを前進させ、押圧ローラ30を押圧位置に切り替える。これにより、被測定工具100が被測定工具保持用ブロック8のV字溝8aと、押圧ローラ30とによって上下方向に挟持される。
【0058】
また、制御部50は、入力部51により受け付けられた被測定工具100の外径に基づいて、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aの高さが被測定工具100の軸芯の高さと一致するように、高さ調整部20を制御する。具体的には、例えば被測定工具100の外径が3mm以上12mm以下の範囲での測定に対応することができ、この場合、被測定工具100の外径が3mmのときに、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aの高さが被測定工具100の軸芯の高さと一致する被測定工具回転用モータ4の高さを予め求めておき、記憶部52に記憶させておく。また、被測定工具100の外径が12mmのときに、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aの高さが被測定工具100の軸芯の高さと一致する被測定工具回転用モータ4の高さを予め求めておき、記憶部52に記憶させておく。つまり、外径が小さな被測定工具100では外径が大きな被測定工具100に比べて軸芯が下に位置し、一方、外径が大きな被測定工具100では外径が小さな被測定工具100に比べて軸芯が上に位置することになる。被測定工具100の外径が3mmを超え、12mm未満の範囲である場合には、比例計算によって被測定工具回転用モータ4の高さを算出できる。また、被測定工具回転用モータ4の高さは、リニアエンコーダの出力に基づいて制御部50が把握可能である。このようにして、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aの高さと、被測定工具100の軸芯の高さとを一致させることができる。
【0059】
また、制御部50は送りモータ5cを作動させて可動板7を所定距離だけ前進させる。これにより、被測定工具100の測定箇所(例えば原点)が非接触測定器3の測定可能領域に入る。送りモータ5cによる可動板7の前進距離は、予め設定されていてもよいし、ユーザがマニュアル操作で設定してもよい。
【0060】
また、測定開始ボタン436が操作される前には、入力部51により被測定工具100の刃の数の入力が受け付けられている。制御部50は、入力部51により被測定工具100の刃の数の入力が受け付けられた状態で、測定開始ボタン436が操作されたことを検出すると、被測定工具199の軸芯周りの1周の回動角度を前記刃の数で除して算出された角度に基づく所定の角度範囲を算出する。軸芯周りの1周の回動角度は、360°であり、刃の数が例えば4つであれば、360°を4で除して90°を算出する。そして、算出された90°に公差角度を加えた角度を算出し、そのようにして算出された角度を上記所定の角度範囲とする。
【0061】
例えば、被測定工具100には製造時の公差が規定されており、その公差範囲内で、複数の刃の形成位置にずれが生じる場合がある。このずれ量を見込んで上記所定の角度範囲を決定する。公差角度は、例えば1°以上5°以下に設定することができ、公差角度の上限は3°以下であってもよい。また、上記所定の角度範囲は、被測定工具199の軸芯周りの1周の回動角度を刃の数で除して算出された角度であってもよい。
【0062】
上記所定の角度範囲を算出した後、制御部50は、被測定工具回転用モータ4を上記所定の角度範囲内で回転させつつ、非接触測定器3による測定を実行させる。制御部50は、非接触測定器3による測定結果に基づいて被測定工具100の最も高い部分を探索する。例えば、図15に示すように、4つの刃101~104を有する被測定工具100を先端部から見たとき、各刃101~104の刃先は被測定工具100の径方向について最も外側に位置する部分なので、非接触測定器3による測定結果では最も高い部分になる。よって、制御部50は、探索された最も高い部分を刃先として特定する。図15における符号150は、非接触測定器3から照射された測定光を示している。測定光150の幅W1は既知であるため、刃101の刃先から測定光150の上縁部までの幅W1と、刃103の刃先から測定光150の下縁部までの幅W2を測定することで、被測定工具100の外径を取得できる。
【0063】
1番目の刃101の刃先を特定した後、その特定した1番目の刃101の刃先の位置から上記所定の角度範囲ごとに被測定工具100を回動させて非接触測定器3により各刃102~104の刃先を特定する。要するに、4つの刃101~104を有する場合には、1番目の刃101の刃先の位置を特定した後、2番目の刃102の刃先は、上記所定の角度範囲内に存在することになるので、上記所定の角度範囲だけ被測定工具100を回動させることで、1番目の刃101の刃先の位置を特定した場合と同様に、2番目の刃102の刃先の位置を特定できる。同様にして、3番目の刃103の刃先の位置、4番目の刃104の刃先の位置も特定できる。4つの刃101~104の刃先を特定することで、刃先に関連する寸法を図14に示す測定値表示領域434に表示できる。
【0064】
制御部50は、測定によって取得された寸法が公差範囲に入っているか否かを判定する。公差範囲外である場合には、ユーザにそのことを報知可能な形態で表示部52に表示する。報知可能な形態とは、例えば、赤色等の目立つ色で測定値を示す等の形態である。
【0065】
図14に示す測定値表示領域434には、刃数A~Hまで存在しており、これは入力部51で入力した刃数に対応している。また、測定値表示領域434には、測定位置が1~5まで存在している。測定位置1は、例えば被測定工具100の先端部(原点)の寸法であり、測定位置2は、測定位置1から基端側へ所定寸法だけ離れた箇所の寸法であり、以下、同様に、測定位置3~5は被測定工具100の軸芯方向に離れた箇所の寸法である。
【0066】
軸芯方向に互いに離れた測定位置の測定を行う場合には、測定位置1の測定が終了した後、制御部50が送りモータ5cを作動させて可動板7を所定寸法だけ前進させる。これにより、測定位置2が非接触測定器3の測定可能領域に入る。その後、上述したように、非接触測定器3によって寸法を測定し、図14に示す測定値表示領域434に測定位置2の測定値が表示される。このようにして測定位置3~5についても測定値を表示できる。つまり、制御部50は、移動機構5により被測定工具回転用モータ4を非接触測定器3に対して接離する方向に移動させて、被測定工具100の軸芯方向に離れた複数箇所の測定を非接触測定器3に実行させることができる。
【0067】
被測定工具100の軸芯方向に離れた複数箇所の測定を行う際、制御部50は、入力部51により受け付けられたネジレ角に基づいて、非接触測定器3による刃先の測定が可能になるように、被測定工具100を被測定工具回転用モータ4により回動させる。具体的には、刃はネジレ角に基づいて螺旋状に形成されているので、被測定工具100を軸芯方向に移動させると、非接触測定器3の固定位置では、特定の刃先の位置がネジレ角に対応して周方向に移動することになる。被測定工具100の軸芯方向の送り量と、非接触測定器3の固定位置での特定の刃先の周方向の位置との関係は、ネジレ角に基づいて事前に算出することができる。制御部50は、被測定工具100を軸芯方向に送るとともに、非接触測定器3の固定位置で最も高い部分が測定されるように、被測定工具100を被測定工具回転用モータ4によって回動させる。
【0068】
また、制御部50は、入力部51により受け付けられた被測定工具100のネジレ方向に基づいて、非接触測定器3による刃先の測定が可能になるように、被測定工具100の被測定工具回転用モータ4による回転方向を決定する。具体的には、被測定工具100を先端から見た時、刃が時計回りに形成されているものと、反時計回りに形成されているものとがある。この刃の形成方向はネジレ方向である。被測定工具100を軸芯方向に移動させた際に、上述したように被測定工具100を被測定工具回転用モータ4によって回動させる方向は、時計回りに刃が形成されているものと、反時計周りに刃が形成されているものとで反対になる。制御部50は、軸芯方向に離れた複数箇所の測定を行う際、非接触測定器3の固定位置で最も高い部分が測定されるように、ネジレ方向に対応した回転方向で被測定工具100を回転させる。
【0069】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、押圧ローラ30を切替機構40によって退避位置にした状態で、被測定工具100を被測定工具保持用ブロック8のV字溝8aで保持し、その後、押圧ローラ30を切替機構40によって押圧位置にすることで、被測定工具100をV字溝8aの内面と押圧ローラ30とで径方向に挟持できる。被測定工具100を挟持する際、被測定工具回転用モータ4の高さ調整が可能であるため、外径が小さな被測定工具100では被測定工具回転用モータ4を下げ、反対に外径が大きな被測定工具100では被測定工具回転用モータ4を上げることで、被測定工具回転用モータ4の出力軸4aが被測定工具100の軸芯と一致する。これにより、外径が異なる被測定工具100の測定が容易に行える。そして、被測定工具保持用ブロック8は基台2に固定したままなので、測定の基準位置がずれにくくなり、測定精度が高まる。
【0070】
また、入力部51によって被測定工具100の刃の数の入力が受け付けられると、制御部50は、被測定工具100の軸芯周りの1周の回動角度を刃の数で除して算出された角度に基づく所定の角度範囲だけ被測定工具100を回動させる。この角度範囲で被測定工具100を回動させる間、非接触測定器3に測定を実行させて最も高い部分を探索し、最も高い部分を刃先として特定できる。従って、被測定工具100の周面のどの位置に刃が位置しているのかをユーザが探索することなく、工具測定装置1が自動で探索するので、ユーザの負担が少なくなる。そして、1番目の刃先が特定されると、2番目以降の刃先も測定できる。
【0071】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明に係る工具測定装置は、例えばエンドミル、ツイストドリルなどの回転工具が持つ刃先に関連する寸法や円筒度などを非接触方式で測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 工具測定装置
2 基台
3 非接触測定器
4 被測定工具回転用モータ
20 高さ調整部
50 制御部
51 入力部
100 被測定工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15