IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプス−12 インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096758
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電解槽および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 3/25 20210101AFI20240709BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240709BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240709BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20240709BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
C25B3/25
C25B3/03
C25B9/00 G
C25B1/23
C25B9/23
【審査請求】有
【請求項の数】57
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024059830
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2021528976の分割
【原出願日】2019-11-26
(31)【優先権主張番号】62/772,460
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/939,960
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520271481
【氏名又は名称】トゥエルブ ベネフィット コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイブ、エトーシャ アール.
(72)【発明者】
【氏名】マ、シチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン、クン
(72)【発明者】
【氏名】フネナー、サラ
(72)【発明者】
【氏名】クール、ケンドラ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ、アシュレー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】カシ、アジャイ アール.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸化炭素を電解還元するように構成された電気化学システム、酸化炭素を電解還元する方法および膜電極アセンブリを提供する。
【解決手段】電気化学システムは、(a)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、カソード層とアノード層との間に配置され、且つ、カソード層およびアノード層と接触している両極性ポリマー電解質膜(PEM)層とを含む膜電極アセンブリ(MEA)と、(b)アノード水がアノード層に接触しMEAに塩を提供する方式で、MEAに接続されているアノード水のソースとを備え、両極性PEM層は、アニオン伝導性ポリマー層、カチオン伝導性ポリマー層、およびアニオン伝導性ポリマー層とカチオン伝導性ポリマー層との間の両極性界面を含み、カチオン伝導性ポリマー層は、アノード層とアニオン伝導性ポリマー層との間に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極アセンブリ(MEA)であって、
酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、
水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、
前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)と、
前記MEAに接触する塩溶液からの塩イオンと
を備え、
前記塩溶液中の塩は、少なくとも約10μMの濃度を有する、
MEA。
【請求項2】
前記酸化炭素は二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のMEA。
【請求項3】
前記酸化炭素は一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のMEA。
【請求項4】
前記カソード層が、アニオン伝導性ポリマーを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項5】
前記アノード層が、カチオン伝導性ポリマーを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項6】
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項7】
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項8】
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを有し、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項7に記載のMEA。
【請求項9】
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを有する、請求項1に記載のMEA。
【請求項10】
前記塩イオンがアルカリ金属イオンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項11】
前記塩イオンが、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項12】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項13】
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項12に記載のMEA。
【請求項14】
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項12に記載のMEA。
【請求項15】
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩イオンはナトリウムイオンである、請求項12に記載のMEA。
【請求項16】
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって、2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩イオンはカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項12に記載のMEA。
【請求項17】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、請求項1に記載のMEA。
【請求項18】
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項17に記載のMEA。
【請求項19】
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項17に記載のMEA。
【請求項20】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩イオンがアルカリ金属イオンを含む、請求項17に記載のMEA。
【請求項21】
遷移金属イオンを実質的に含まない、請求項17に記載のMEA。
【請求項22】
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、請求項1に記載のMEA。
【請求項23】
前記塩が、約10mMから約15Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項22に記載のMEA。
【請求項24】
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項22に記載のMEA。
【請求項25】
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩イオンはナトリウムイオンを含む、請求項22に記載のMEA。
【請求項26】
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって、2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩イオンは、カリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項22に記載のMEA。
【請求項27】
酸化炭素を電解還元するように構成された電気化学システムであって、
(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(ii)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(iii)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)と、
(b)アノード水中に少なくとも約10μMの濃度を有する塩を含むアノード水ソースであって、前記アノード水が前記アノード層に接触し前記MEAに前記塩を提供することを可能にする方式で、前記MEAに接続されているアノード水ソースと
を備える電気化学システム。
【請求項28】
前記酸化炭素が二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の電気化学システム。
【請求項29】
前記酸化炭素が一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の電気化学システム。
【請求項30】
前記カソード層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項31】
前記アノード層がカチオン伝導性ポリマーを含む、請求項27から30のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項32】
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する、請求項27から31のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項33】
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、請求項27から32のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項34】
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを含み、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項33に記載の電気化学システム。
【請求項35】
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項27に記載の電気化学システム。
【請求項36】
前記塩がアルカリ金属イオンを含む、請求項27から35のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項37】
前記塩が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項38】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項39】
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項38に記載の電気化学システム。
【請求項40】
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項38に記載の電気化学システム。
【請求項41】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、請求項38に記載の電気化学システム。
【請求項42】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項38に記載の電気化学システム。
【請求項43】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、請求項27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項44】
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項43に記載の電気化学システム。
【請求項45】
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項43に記載の電気化学システム。
【請求項46】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩がアルカリ金属イオンを含む、請求項43に記載の電気化学システム。
【請求項47】
前記MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない、請求項43に記載の電気化学システム。
【請求項48】
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、請求項27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項49】
前記塩が約10mMから約15Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項48に記載の電気化学システム。
【請求項50】
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、請求項48に記載の電気化学システム。
【請求項51】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、請求項48に記載の電気化学システム。
【請求項52】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項48に記載の電気化学システム。
【請求項53】
前記MEAに接続された再循環ループであって、前記MEAからアノード水を回収し、回収されたアノード水を貯蔵および/または処理し、且つ、貯蔵または処理されたアノード水を前記MEAに供給するように構成された再循環ループをさらに備える、請求項27から52のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項54】
前記再循環ループが、前記アノード水を貯蔵するための槽を有する、請求項53に記載の電気化学システム。
【請求項55】
前記再循環ループが、前記アノード水から不純物を除去するように構成されたアノード水浄化要素を有する、請求項53に記載の電気化学システム。
【請求項56】
前記再循環ループが、浄水を受け入れるための入口を有する、請求項53に記載の電気化学システム。
【請求項57】
前記再循環ループが前記アノード水ソースに接続されている、請求項53に記載の電気化学システム。
【請求項58】
前記再循環ループに接続され、酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記再循環ループに提供するように構成された、カソード水導管をさらに備える、請求項53に記載の電気化学システム。
【請求項59】
前記カソード水導管に連結され、カソード水を前記酸化炭素ストリームから分離するように構成された水分離器をさらに備える、請求項58に記載の電気化学システム。
【請求項60】
酸化炭素を電解還元する方法であって、
(a)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(b)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(c)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)に塩溶液を提供する段階であって、前記塩溶液が少なくとも約10μMの塩を含む、段階と、
前記MEAが前記塩溶液と接触している間に、前記MEAの前記カソード層で酸化炭素を電解還元する段階と
を備える方法。
【請求項61】
前記酸化炭素が二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記酸化炭素が一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記カソード層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記アノード層がカチオン伝導性ポリマーを含む、請求項60から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する、請求項60から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、請求項60から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを含み、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記塩がアルカリ金属イオンを含む、請求項60から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記塩が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項60から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩がアルカリ金属イオンを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記塩が、約10mMから約15Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記MEAに塩溶液を提供する段階は、前記MEAの前記アノード層にアノード水を供給する段階を有する、請求項60から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
(i)前記MEAに供給されたアノード水を回収する段階と、(ii)回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる段階とをさらに備える、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる前に、前記回収されたアノード水を貯蔵および/または処理する段階をさらに備える、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記アノード水および/または前記回収されたアノード水を浄化して、前記アノード水から不純物を除去する段階をさらに備える、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
(i)酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に、前記酸化炭素ストリームから水を回収する段階と、(ii)前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記MEAの前記アノード層に提供する段階とをさらに備える、請求項60から89のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、2018年11月28日に出願された米国仮出願第62/772,460号、および2019年11月25日に出願された米国仮出願第62/939,960号の利益を主張し、これらは、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[政府支援の声明]
本発明は、アメリカ航空宇宙局によって授与された授与番号NNX17CJ02Cおよびアメリカ合衆国エネルギー省(ARPA-E)によって授与された授与番号DE-AR0000819の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般に、電解酸化炭素還元分野、具体的には、電解酸化炭素反応器の動作のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電解二酸化炭素反応器は、アノードとカソードとでの反応物の組成、アノードとカソードとに供給される電気エネルギー、並びに、電解質、アノード、およびカソードの物理化学的環境など、様々な動作条件のバランスをとる必要がある。これらの条件のバランスをとることは、電解反応器の動作電圧、ファラデー収率、および一酸化炭素(CO)および/または他の炭素含有生成物(CCP)と水素とを含むカソードで発生する生成物の混合に強い影響を与える可能性がある。
【0005】
本明細書に含まれる背景および文脈上の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することのみを目的として提供されている。本開示の多くは、発明者の研究を提示し、そのような研究が背景セクションに記載されているという理由、または本明細書の他の箇所で文脈として提示されているという理由だけで、そのような研究が先行技術として認められることを意味しない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、(a)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層、(b)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層、(c)カソード層とアノード層との間に配置され、且つ、それらと接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)、および(d)MEAに接触する塩溶液からの塩イオンであって、塩溶液中の塩は、少なくとも約10μMの濃度を有する、塩イオン、といった特徴によって特徴付けられ得る膜電極アセンブリ(MEA)に関する。塩溶液と接触するMEAは、塩溶液中の塩の濃度から外れる塩(または塩イオン)の濃度を有してよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、MEA中の塩または塩イオン(多価イオンによって供与される複数の対イオンから成る)の濃度は、塩溶液中の塩の濃度よりも低い。
【0008】
特定の実施形態では、酸化炭素は二酸化炭素であり、酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、酸化炭素は一酸化炭素であり、酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
特定の実施形態では、カソード層は、アニオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、アノード層は、カチオン伝導性ポリマーを含む。
【0010】
特定の実施形態では、MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する。いくつかの実装では、PEM層は、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む。一例として、PEM層はカチオン伝導性ポリマーを含んでよく、カソードバッファ層はアニオン伝導性ポリマーを含む。場合によっては、PEM層はアニオン伝導性ポリマーを含む。
【0011】
特定の実施形態では、塩イオンはアルカリ金属イオンを含む。場合によっては、塩イオンは、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む。
【0012】
特定の実施形態では、MEAは両極性MEAであり、酸化炭素還元触媒は銅を含む。そのようないくつかの場合は、塩は、(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む。そのような塩は、約1mMから約1M、または約1mMから約50mMの濃度で塩溶液中に存在し得る。
【0013】
場合によっては、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、塩イオンはナトリウムイオンである。場合によっては、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、塩イオンはカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む。
【0014】
特定の実施形態では、MEAは両極性MEAであり、酸化炭素還元触媒は金を含み、塩は(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む。いくつかの実施形態では、そのような塩は、約10μMから約200mM、または約100μMから約20mMの濃度で塩溶液中に存在する。
【0015】
場合によっては、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、塩イオンはアルカリ金属イオンを含む。場合によっては、両極性MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない。
【0016】
特定の実施形態では、MEA中の全てのポリマーはアニオン伝導性ポリマーであり、酸化炭素還元触媒は銅を含み、塩は(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む。いくつかの実装で、塩は、約10mMから約15M、または約50mMから約1Mの濃度で塩溶液中に存在する。
【0017】
特定の実施形態では、アニオン伝導性ポリマーを有するMEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、塩イオンはナトリウムイオンを含む。そのようなMEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成されてよく、塩イオンは、イオンカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含んでよい。
【0018】
本開示のいくつかの態様は、酸化炭素を電解還元するように構成された電気化学システムに関する。そのようなシステムは、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(ii)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(iii)カソード層とアノード層との間に配置され、且つ、それらと接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)、および(b)アノード水中に少なくとも約10μMの濃度を有する塩を含むアノード水ソースであって、アノード水がアノード層に接触しMEAに塩を提供することを可能にする方式で、MEAに接続されているアノード水ソース、といった特徴によって特徴付けられ得る。
【0019】
特定の実施形態では、酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、カソード層は、アニオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、アノード層は、カチオン伝導性ポリマーを含む。
【0020】
いくつかの実装では、PEM層は、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む。一例として、PEM層はカチオン伝導性ポリマーを含んでよく、カソードバッファ層はアニオン伝導性ポリマーを含む。いくつかの実装では、PEM層はアニオン伝導性ポリマーを含む。
【0021】
特定の実施形態では、塩はアルカリ金属イオンを含む。特定の実施形態では、塩は、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む。
【0022】
場合によっては、電気化学システムのMEAは、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する両極性MEAである。
【0023】
特定の両極性MEAの実施形態では、酸化炭素還元触媒は銅を含み、塩は(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む。一例として、塩は、約1mMから約1M、または約1mMから約50mMの濃度でアノード水中に存在する。いくつかの実装では、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、塩はナトリウムイオンを含む。いくつかの実装では、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、塩は、カリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む。
【0024】
特定の両極性MEAの実施形態では、酸化炭素還元触媒は金を含み、塩は(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む。
【0025】
場合によっては、塩は、約10μMから約200mM、または約100μMから約20mMの濃度でアノード水中に存在する。場合によっては、両極性MEAは、カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、塩はアルカリ金属イオンを含む。いくつかの実装では、一酸化炭素を生成するように構成された両極性MEAは、実質的に遷移金属イオンを含まない。
【0026】
特定の実施形態では、MEA中の全てのポリマーはアニオン伝導性ポリマーであり、酸化炭素還元触媒は銅を含み、塩は(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む。いくつかの実装では、塩は、約10mMから約15M、または約50mMから約1Mの濃度でアノード水中に存在する。特定の実施形態では、アニオン伝導性ポリマーを有するMEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、塩はナトリウムイオンを含む。特定の実施形態では、アニオン伝導性ポリマーを有するMEAは、カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、塩はカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む。
【0027】
特定の実施形態では、電気化学システムは、MEAに接続された再循環ループであって、MEAからアノード水を回収し、回収されたアノード水を貯蔵および/または処理し、且つ、貯蔵または処理されたアノード水をMEAに供給するように構成された再循環ループをさらに含む。場合によっては、再循環ループは、アノード水を貯蔵するための槽を含む。場合によっては、再循環ループは、浄水を受け入れるための入口を含む。特定の実施形態では、再循環ループは、アノード水から不純物を除去するように構成されたアノード水浄化要素を含む。いくつかの実施形態では、再循環ループは、アノード水ソースに接続されている。
【0028】
特定の実施形態では、電気化学システムは、アノード水再循環ループに接続されたカソード水導管をさらに含む。カソード水導管は、酸化炭素ストリームがMEAのカソード層に接触した後、酸化炭素ストリームから回収された水を再循環ループに提供するように構成され得る。場合によっては、電気化学システムは、カソード水導管に連結され、カソード水を酸化炭素ストリームから分離するように構成された水分離器をさらに含む。
【0029】
本開示の他の態様は、酸化炭素を電解還元する方法に関する。そのような方法は、(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(ii)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(iii)カソード層とアノード層との間に配置され、且つ、それらと接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)に塩溶液を提供する段階であって、塩溶液は少なくとも約10μMの塩を含む、段階、および(b)MEAが塩溶液と接触している間に、MEAのカソード層で酸化炭素を電解還元する段階、といった操作(任意の順序)によって特徴付けられ得る。
【0030】
様々な実施形態において、上記方法は、本開示のMEAおよび電気化学システムの態様について上述のとおり、MEA、塩、および関連付けられるシステム構成要素を使用することができる。上記のいくつかの態様はアノード水を介してMEAに塩を供給するが、全ての方法がこれを必要とするわけではないことに留意されたい。例えば、操作の前にMEAに塩を注入することによって、塩はMEAに事前装填され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記方法は、MEAのアノード層にアノード水を供給することによって、MEAに塩溶液を提供する。いくつかの実装では、上記方法は、(i)MEAに供給されたアノード水を回収する段階と、(ii)回収されたアノード水をMEAのアノード層に再循環させる段階とをさらに含む。いくつかの実装では、上記方法は、回収されたアノード水をMEAのアノード層に再循環させる前に、回収されたアノード水を貯蔵および/または処理する段階をさらに含む。いくつかの実装で、上記方法は、アノード水および/または回収されたアノード水を浄化して、アノード水から不純物を除去する段階をさらに含む。
【0032】
特定の実施形態では、上記方法は、(i)酸化炭素ストリームがMEAのカソード層に接触した後に、酸化炭素ストリームから水を回収する段階と、(ii)酸化炭素ストリームから回収された水をMEAのアノード層に提供する段階とをさらに含む。
【0033】
本開示のこれらおよび他の特徴は、関連付けられる図面を参照して以下により詳細に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】MEAセル内の水の組成および流れを制御するために使用できる電解酸化炭素還元システムの例を示している。
図1B】MEAセル内の水の組成および流れを制御するために使用できる電解酸化炭素還元システムの例を示している。
図2】本開示のある実施形態に係るCO還元に使用するための膜電極アセンブリの概略図である。
図3】炭酸水素イオンおよび/または炭酸イオンがカソード層とアノード層との間で水素イオンと結合して炭酸を形成することができ、炭酸が分解してガス状COを形成することができる両極性MEAを示している。
図4】COガスがカソード触媒層に供給されるMEAを示している。
図5】カソード触媒層と、アノード触媒層と、CO還元反応を促進するように構成されたアニオン伝導性PEMとを有するMEAを示している。
図6】触媒担持粒子上に触媒が担持されたカソード粒子の形態の例を示す概略図である。
図7図3に示したものと同様のMEAを示しているが、さらに、物質移送と、両極性界面でのCOと水の生成に関連する情報を示している。
図8A】層間剥離に抵抗し、任意選択的に反応生成物が界面領域を離れる経路を提供する特徴を含むMEA設計を提示している。
図8B】層間剥離に抵抗し、任意選択的に反応生成物が界面領域を離れる経路を提供する特徴を含むMEA設計を提示している。
図8C】層間剥離に抵抗し、任意選択的に反応生成物が界面領域を離れる経路を提供する特徴を含むMEA設計を提示している。
図8D】層間剥離に抵抗し、任意選択的に反応生成物が界面領域を離れる経路を提供する特徴を含むMEA設計を提示している。
図9】カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層と、カチオン伝導性ポリマー層であり得るポリマー電解質膜とを含む部分的MEAを示している。
図10】本発明のある実施形態に係るCO還元反応器(CRR)の主要な構成要素を示す概略図である。
図11】本発明の一実施形態に係る分子、イオン、および電子の流れを示す矢印と共に、CRRの主要な構成要素を示す概略図である。
図12】CRR反応器の主な入力と出力とを示す概略図である。
図13A】アノード水中に塩が含まれていない二酸化炭素電解槽の性能プロットを提示している。
図13B】アノード水中に2mMのNaHCOが含まれている二酸化炭素電解槽の性能プロットを提示している。
図14】塩がメタンとエチレンとを生成するCO電解槽システムのファラデー収率および電圧効率に性能向上効果を及ぼすことを示すプロットを提示している。セルは、両極性MEAおよび銅触媒(カソード)を使用した。
図15】2mM、8mM、および10mMの濃度と比較して、6mMのNaHCOが最高のファラデー収率を示したことを示す実験データを提示している。結果は、セルの表面積のサイズに依存する。全てのMEAセルは、両極性MEAおよび金触媒(カソード)を使用した。
図16】塩濃度がC2炭化水素(例えば、エチレンおよびエタノール)の生産収率に影響を与える例を示している。
図17】反応中にアノード水をNaHCOからKHCOに変更した実験のデータを提示している。メタンの選択性は低下したが、エチレンの選択性は増加した。
図18】KHCOとNaHCOとを使用した場合のエタノールに対する選択性の向上を示すデータを提示している。
図19A】新しい塩溶液が添加された後、またはアノード液槽内の古い溶液を取り替えた後の選択性および電圧の改善を示している。
図19B】新しい塩溶液が添加された後、またはアノード液槽内の古い溶液を取り替えた後の選択性および電圧の改善を示す表である。
図20】1mMから30mMのNaHCO3の範囲におけるメタンに対する銅触媒の選択性に対する塩濃度のスキャンを提示している。
図21A】様々な濃度でのエチレン選択性への影響に関する様々な塩の試験からのデータを提示している。
図21B】様々な濃度でのエチレン選択性への影響に関する様々な塩の試験からのデータを提示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[序論および概要]
ポリマー電解質膜電解槽は、水を電解して、アノードで酸素を生成し、カソードで水素を生成するために使用される。通常の水電解槽では、H+またはOH-以外のイオンが導入されないように膜電極アセンブリを準備するのに注意が必要である。また、動作中には、純水のみがセルのアノード側に導入される。
【0036】
本開示の電解槽システムは、水の酸化からアノードで酸素を生成し、カソードに導入された二酸化炭素または他の酸化炭素の電気化学的還元を通じて1つまたは複数の炭素系化合物を生成することができる。本明細書で使用される場合、酸化炭素という用語は、二酸化炭素および/または一酸化炭素を含む。いくつかの実施形態では、一酸化炭素は、還元可能な反応物として使用される。いくつかの実施形態では、二酸化炭素が還元可能な反応物として使用される。いくつかの実施形態では、二酸化炭素と一酸化炭素との混合物が還元可能な反応物として使用される。
【0037】
塩イオンが望ましくない水電解槽とは対照的に、本発明者らは、塩イオンが酸化炭素電解槽の性能にプラスの影響を及ぼし得ることを見出した。カチオンは、電解槽のアノードを通って循環する水を介して、または膜電極アセンブリを作製するために使用されるポリマー電解質膜、触媒、または触媒担体に組み込むことによって、酸化炭素電解槽に導入され得る。
【0038】
塩の存在は、MEAセル電圧を低下させ、ファラデー収率を改善し、生成物の選択性を変化させ、および/または酸化炭素還元電解槽の動作中の動作パラメータ(例えば、電圧効率)の減衰率を低下させることが観察されている。
【0039】
塩イオンの導入は、いくつかの考えられるメカニズムのいずれかを通じて、酸化炭素の電解性能に影響を与え得る。理論に束縛されることを望まないが、以下は、塩が電解酸化炭素還元中にMEAセルの動作に影響を及ぼし得るメカニズムの例のリストである。
【0040】
塩からのカチオンおよび/またはアニオンの存在は、1つまたは複数の触媒経路の活性化エネルギーを低下させる。これは、多くの考えられるメカニズムのいずれかが原因である可能性がある。例えば、塩は、触媒表面上の局所電解質構造および/または電子密度を変化させる可能性がある。いくつかの酸化炭素還元システムでは、塩イオンがファラデー収率を増加させることが観察されている。特定のイオンの存在が、ある反応についての触媒の選択性を別の反応についての触媒の選択性よりも変化させることも観察されている。
【0041】
塩からのカチオンおよび/またはアニオンは、ポリマー電解質、特にアニオン交換ポリマーの水和を助ける可能性がある。イオンは水和物として移動し、換言すれば、イオンはポリマー層を移動するときに水分子を運ぶ。MEA、特にカソード触媒に近いMEAの部分の水和は、流れる酸化炭素によりMEA内の水が蒸発しないようにすることによって還元反応を促進し得る。一般に、塩イオンは、特に乾燥しやすいMEAの領域で、MEAの水和を促進し得る。様々な実施形態において、ポリマー中の塩の存在により、ポリマーの吸湿性が高まる。
【0042】
塩および塩からのイオンの存在は、1つまたは複数のMEA層の伝導率を増加させることができる。特に、イオンは、カチオン交換ポリマーと比較して比較的低い伝導率を有する傾向があるアニオン交換ポリマーの伝導率を増加させることができる。ポリマーの伝導率を上げると、MEAセルの全体的な抵抗を低下させることができる。
【0043】
塩の存在は、1つまたは複数のポリマー電解質層のpHを上昇させる可能性がある。これは、ポリマーのpHを下げるプロトン供与添加剤と比較する必要がある。
【0044】
塩からのカチオンおよび/またはアニオンの存在は、水の取り込みとポリマー電解質層の膨潤とを変化させる。膨潤による体積変化がMEAのアノード側とカソード側との間で一致しない場合、MEAにかかる機械的応力がセルの性能を低下させる可能性がある。特定の実施形態では、定義された濃度の塩の存在は、MEAの2つ以上の異なる層における膨潤の相対量を調整して、これらの層によって示される膨潤を等しくする。
【0045】
塩によって提供されるカチオンおよび/またはアニオンの存在は、MEAの2つの層の間の界面での伝導率を変化させる可能性がある。例えば、両極性界面では、プロトンはアニオンに出会うために界面間隙をジャンプしなければならない場合がある。このジャンプには関連付けられる抵抗がある。塩の存在は、界面を横切って集まるプロトンとアニオンとへの障壁を減らし得る。ナフィオンおよび同様のポリマーの細孔は、プロトンが低抵抗で移動できるように、スルホン酸基を有することに留意されたい。両極性界面では、継続的な動きを容易にするためにこれらの基は存在しない。塩は、界面非帯電空乏領域を提供して、プロトンおよびアニオンが集まることを容易にすることができる(例えば、プロトンはアノード側から来て、カソード側からの炭酸水素イオンと反応する)。別の言い方をすれば、界面に存在する塩溶液は、アニオン伝導性ポリマーとカチオン伝導性ポリマーとの間に伝導性ブリッジまたはイオン伝導性ブリッジを提供し得る。
【0046】
塩によって提供されるカチオンおよび/またはアニオンは、カソード還元反応によって形成される荷電炭素系種の対イオンを提供することがある。そのような荷電種は、電荷的中性を維持するために利用可能な対イオンを必要とする。いくつかの実施形態では、カソードでの還元反応が、カルボン酸塩生成物(例えば、ギ酸塩、シュウ酸塩、または酢酸塩)を生成する。ただし、利用可能なカチオンが比較的少なければ、反応が好ましくないことがある。これは、カソード層が、プロトン(潜在的な対イオン)の流れを遮断するアニオン交換膜(AEM)などのアニオン交換ポリマーを含む場合であり得る。塩によって供与されたカチオンが、カルボン酸塩生成反応を促進するために必要な種を提供する可能性がある。
【0047】
塩濃度勾配は、浸透圧を誘発し得る。例えば、塩濃度はアノード側でより高くなる可能性があり、これはカソードから水を引き離し、それによってカソードフラッディングの発生を低減する。カソード側に存在する水は、少なくとも部分的に、MEA内部における水素イオンと炭酸水素イオンとの反応によって提供され得ることに留意されたい。この水は最初は塩イオンを含まず、これは濃度勾配に寄与する。
【0048】
[MEAセルで使用される塩の特性]
MEAセルでは様々な種類の塩を使用できる。そのような塩は、無機または有機のカチオンおよびアニオンを有し得る。塩の組成は、過電圧、ファラデー効率、および/または複数の酸化炭素還元反応間の選択性などのセル動作条件に影響を与える可能性がある。塩組成の選択に影響を与える様々な要因が本明細書に記載されている。
【0049】
[カチオン反応性]
塩の組成は、カソードで使用される触媒に依存し得る。特定の実施形態では、塩は、カソード触媒を毒する可能性のあるカチオンを含有しない。例えば、塩は、金または別の貴金属を含む触媒などのカソード触媒で還元され得るカチオンを含有しない場合がある。そのような触媒は、二酸化炭素を一酸化炭素または他の還元生成物に還元するように構成されたMEAセルで使用されることがある。触媒粒子上の鉄イオンまたは他の遷移金属イオンなどの金属イオンの還元は、触媒を毒する可能性があるか、さもなければ二酸化炭素の一酸化炭素などの還元生成物への触媒変換を減少させることが見出された。
【0050】
特定の実施形態では、酸化炭素還元反応器で使用される塩は、カソードでの二酸化炭素還元のための動作条件下で、水性媒体中で元素金属に還元できないカチオンのみを含有する。特定の実施形態では、反応器で使用される塩は、遷移金属イオンを有さない。特定の実施形態では、反応器で使用される塩は、アルカリ金属カチオンおよび/またはアルカリ土類元素カチオンのみを有する。
【0051】
二酸化炭素からの一酸化炭素の生成は、金または銀の触媒を使用して実行することができるが、酸化炭素からの炭化水素および/または有機酸素含有化合物の生成は、カソードで銅または他の遷移金属触媒を使用して実行することができる。場合によっては、炭化水素および/または有機酸素含有化合物を生成するように構成されたセルで使用される塩は、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類元素イオンではない1つまたは複数のカチオンを有する。例えば、遷移金属触媒を有するMEAは、1つまたは複数の遷移金属を含む塩で構成され得る。
【0052】
使用する塩の種類とその濃度とは、酸化炭素還元反応器が両極性MEAを使用するものか、アニオン交換ポリマーのみのMEA使用するものか、または他の何らかのMEA構成を使用するものかによって異なり得る。一酸化炭素を還元するように構成されたセルは、カソードで炭酸水素塩がほとんどまたはまったく形成されないため、アニオン交換ポリマーのみのMEAを使用することができ、従って、MEAは、二酸化炭素を遊離させる可能性のあるアノード(そうでなければ、二酸化炭素はカソードでの還元反応で使用される)への炭酸水素塩の移送を遮断するカチオン伝導性ポリマーを含む必要はない。そのようなセルは、貴金属触媒を毒する可能性のある遷移金属または他の金属のカチオンを含有する塩を使用することができる。特定の実施形態では、両極性MEAを有する二酸化炭素還元セルは、遷移金属イオンを有さない塩を使用する。
【0053】
特定の実施形態では、塩は、酸化炭素還元セル内の1つまたは複数の位置(例えば、アノード、カソード、または中間のイオン伝導性ポリマー層)でpHを調整するカチオンを含有する。場合によっては、動作中に、塩が、1つまたは複数のそのような位置でpHをより酸性またはより塩基性になるように調整する。特定の実施形態では、アニオンは、アンモニウム、第四級アンモニウムイオンなどの誘導体化アンモニウムカチオン、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンである。
【0054】
[アニオンの反応性]
塩の組成は、二酸化炭素還元セルのアノードでの反応の影響を受ける可能性がある。特定の実施形態では、塩は、セルの動作条件下で、アノードで容易に酸化しない、および/またはカソードで容易に還元しないアニオンを含有する。特定の実施形態では、アニオンはハロゲン化物ではない。場合によっては、アニオンは塩化物、臭化物、またはヨウ化物ではない。ハロゲン化物は、自らが元素ハロゲンを形成し得るアノードで酸化する。ただし、特定の実施形態では、ハロゲン化物は、還元生成物がハロゲン化合物である二酸化炭素還元セルで使用されることに留意されたい。特定の実施形態では、塩が、亜硝酸塩またはアミンなどの酸化可能な窒素含有アニオンではないアニオンを有する。特定の実施形態では、塩が、有機アニオンではないアニオンを有し、例えば、塩がカルボン酸イオンを含有しない。
【0055】
特定の実施形態では、塩は、酸化炭素還元セル内の1つまたは複数の位置(例えば、アノード、カソード、または中間のイオン伝導性ポリマー層)でpHを調整するアニオンを含有する。場合によっては、動作中に、塩が、1つまたは複数のそのような位置でpHをより酸性またはより塩基性になるように調整する。特定の実施形態では、アニオンが、水酸化物、炭酸水素塩、亜硫酸塩、または硫酸塩である。
【0056】
[イオン移動度]
塩のカチオンおよび/またはアニオンを選択する際の1つの考慮事項は、イオンの移動度である。特定の実施形態では、イオンは、MEAのポリマーにおいて比較的高い移動度を有する。場合によっては、塩が存在するMEAの1つまたは複数の層はそれぞれ、少なくとも約4mS/cmのイオン伝導率を有する。いくつかの実装では、原子量が比較的小さなイオンが使用される。場合によっては、塩のカチオンは、約140以下、または約90以下、または約40以下の原子量または分子量を有する。場合によっては、塩のアニオンの原子量または分子量は、約100以下である。
【0057】
[溶解度]
特定の実施形態では、塩は、水性媒体に比較的溶けやすい。例えば、塩は、25℃の脱イオン水において、少なくとも約1モル/L、または少なくとも約2モル/L、または少なくとも約10モル/Lの溶解度を有し得る。
【0058】
[生成物の選択性、電圧効率、寿命の改善、および減衰率の低下]
塩の種類は、MEAセルの生成物選択性に影響を与える可能性がある。あるカチオンを別のカチオンに対して選択することは、ある生成物の別の生成物に対する比率を、例えば、少なくとも約10%変化させ得る。
【0059】
特定の実施形態では、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩は、カソード上に金触媒を有するMEAセルで使用される場合、二酸化炭素還元中に副産物水素よりも一酸化炭素の生成を選択的に増加させる。一酸化炭素生成のこの増加は、塩を含有しない同様の金触媒含有MEAセルと比較して観察される。例えば、金触媒を有し、炭酸水素ナトリウムを使用するMEAセルは、塩を使用しない同様のMEAセルと比較した場合、一酸化炭素生成を少なくとも約100%増加させ得る。換言すれば、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩を使用するMEAセルは、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルによって生成されたものより、少なくとも約2倍高いモル量で一酸化炭素を生成する。いくつかの実施形態では、ナトリウム含有塩を使用するMEAセルは、少なくとも約3倍高いモル量で一酸化炭素を生成する。場合によっては、炭酸水素カリウムなどのカリウム含有塩を使用するMEAセルは、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルによって生成されたものより、少なくとも約2倍高いモル量で一酸化炭素を生成する。場合によっては、セシウムまたはルビジウムなどのより高い原子量のアルカリ金属を有する塩を使用するMEAセルは、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルによって生成されたものより、少なくとも約2倍高いモル量で一酸化炭素を生成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、二酸化炭素から一酸化炭素を生成するように構成されたMEAセルは、塩を含有するアルカリ金属を使用しており、様々な生成物のうち、少なくとも約70モル%の一酸化炭素または少なくとも約80モル%の一酸化炭素を有するが、未反応の二酸化炭素は含まない生成物をカソードで生成する方式で動作する。カソードで生成され得る他の生成物には、水素、1つまたは複数の炭化水素、および、1つまたは複数のカルボニル含有生成物などが含まれる。一酸化炭素を生成するように構成されたMEAセルは、カソードに金、銀、または他の貴金属を含んでよい。一酸化炭素を生成するように構成されたMEAセルは、両極性膜アセンブリを含んでよい。
【0061】
特定の実施形態では、MEAセルに伝達される水中のナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩の濃度は、約1mMから20mMである。この濃度範囲は、二酸化炭素から一酸化炭素を生成するように構成されたMEAセルに適用できる。特定の実施形態では、そのようなセルは、カソード触媒として金または他の貴金属を含む。本明細書で使用される場合、貴金属は、化学作用に強く抵抗する金属である。例には、金に加えて、プラチナおよび銀が含まれる。
【0062】
場合によっては、比較的小さな表面積(例えば、平面を想定すると約10cmから約50cm)を有するMEAセルは、約1mMから5mMなどの比較的低い濃度範囲に偏るが、比較的大きな表面積(例えば、約50cmから約1000cm)を有するMEAセルは、約5mMから20mMなどの比較的高い濃度範囲に偏る。
【0063】
特定の実施形態では、炭酸水素ナトリウムなどの塩は、アノード水を介して、カソード上に金触媒を有するMEAセルに供給される場合、エネルギー効率を約9%~25%向上させる。さらに、特定の実施形態では、セルの初期動作中に観察されるCOの選択性およびセル電圧の望ましいレベルは、塩溶液が使用される場合、一桁より大きく安定している。
【0064】
場合によっては、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩を使用するMEAセルは、一酸化炭素を生成するための電圧効率が、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルの電圧効率よりも少なくとも約5%高い。場合によっては、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩を使用するMEAセルは、一酸化炭素を生成するための電圧効率が、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルの電圧効率よりも少なくとも約10%高い、または少なくとも約20%高い。場合によっては、炭酸水素カリウムなどのカリウム含有塩を使用するMEAセルは、一酸化炭素を生成するための電圧効率が、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルの電圧効率よりも少なくとも約5%高い。場合によっては、セシウムまたはルビジウムなどのより高い原子量のアルカリ金属を含む塩を使用するMEAセルは、一酸化炭素を生成するための電圧効率が、同じ方式で動作するが実質的に塩を含まない同じMEAセルの電圧効率よりも少なくとも約5%高い。特定の実施形態では、金または他の貴金属カソード触媒を有する両極性MEAにおいて一酸化炭素を生成するための電圧効率は、少なくとも約25%である。
【0065】
一例として、アノード水中に塩のない試験済みセルは、0.5A/cmで最初の1時間の平均電圧が3.86V、平均COファラデー収率が0.53であり、500mA/cmで2~5時間の減衰率が144mV/時、COファラデー収率/時が0.018である。比較すると、2mMのNaHCOで動作する同じセルは、0.5A/cmで最初の1時間の平均電圧が3.52V、平均COファラデー収率が0.936であり、500mA/cmで2~5時間の減衰率が15.5mV/時、COファラデー収率/時が0.001である。特定の実施形態では、二酸化炭素から一酸化炭素を生成するように構成されたMEAセルは、動作の最初の1時間の間最大で約3.6Vの平均電圧を有し、2~5時間の間約16mV/時以下の減衰率を有する。
【0066】
特定の実施形態では、水中のナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルにおいて一酸化炭素を生成するための電圧効率および/または生成物選択性は、同じ方式で同じ期間にわたって動作するが、実質的に塩を含まない対応するMEAセルの動作期間より、少なくとも10倍長い動作期間にわたって安定している。特定の実施形態では、水性ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルにおいて一酸化炭素を生成するための電圧は、8時間を超える動作において600mA/cm以下の印加電流密度で、1時間あたり約16mVより多く、または約0.5%より多くは増加しない。特定の実施形態では、水性ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルのカソードで生成される他の全ての生成物(二酸化炭素を除く)の中で一酸化炭素のモル分率は、8時間を超える動作において600mA/cm以下の印加電流密度で、1時間あたり約1%より多くは減少しない。特定の実施形態では、水性ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルにおいて一酸化炭素を生成するための電圧は、100時間を超える動作において300mA/cm以下の印加電流密度で、1時間あたり約0.05mVより多く、または約0.03%より多くは増加しない。特定の実施形態では、水性ナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルのカソードで生成される他の全ての化学物質の中で一酸化炭素のモル分率は、100時間を超える動作において300mA/cm以下の印加電流密度で、1時間あたり約0.1%より多くは減少しない。
【0067】
ファラデー効率は、ファラデー収率、クーロン効率、または電流効率とも呼ばれることがあり、電気化学反応を促進するシステムで電荷が移動する効率である。ファラデー効率におけるファラデー定数の使用は、電荷を物質および電子のモルと相関させる。電子またはイオンが望ましくない副反応に関与するときに、ファラデー損失が生じる。この損失は、熱および/または化学的副産物として現れる。
【0068】
電圧効率は、MEAセル内の過電圧または電荷移動に対する抵抗によって失われるエネルギーの割合を表す。電解セルの場合は、これはセルの熱力学的ポテンシャルをセルの実験セル電圧で割った比率であり、パーセンタイルに変換される。過電圧によるセルの電圧の損失は、電圧効率によって表される。所与のタイプの電気分解反応について、比較的高い電圧効率を有する電解セルは、抵抗による全体的なセル電圧損失が比較的低い。
【0069】
特定の実施形態では、カソード上に銅触媒を有する両極性MEAセルで使用される場合の炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩は、塩濃度の増加に比例して改善された電圧効率でメタンを生成する。3mMから20mMの炭酸水素ナトリウムに塩濃度を増やすと、電圧効率が6.5%増加することが観察された。
【0070】
特定の実施形態では、カソード上に銅触媒を有する両極性MEAセルで使用される場合の炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩は、脱イオン水と比較して改善された電圧効率でメタンを生成する。炭酸水素ナトリウムをアノード液として使用した場合、脱イオン水と比較して、初期電圧効率が少なくとも約30%向上し、電圧減衰率が少なくとも約8倍向上した。
【0071】
特定の実施形態では、カソード上に銅触媒を有するMEAセルで使用される炭酸水素カリウムなどのカリウム含有塩は、二酸化炭素の還元中にメタンよりもエタノールおよびエチレンを選択的に生成する。対照的に、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム含有塩は、カソード上に銅触媒を有するMEAセルで使用される場合、二酸化炭素の還元中にメタンを選択的に生成する。銅還元触媒を使用するMEAセルでは、より高い原子量のカチオンを含む塩が、多炭素生成物(例えば、エチレン)のファラデー収率を増加させる。
【0072】
一例では、カソードに銅触媒を有する両極性MEA設定を3mMの濃度のアノード液炭酸水素ナトリウムと共に使用して、約61.3モル%のメタン、約3モル%のエチレン、約1.3モル%の一酸化炭素、および約28.5モル%の水素の生成物選択性分布を与えた。これは、ナトリウム塩の存在下で二酸化炭素の電気分解が行われる場合、メタンのエチレンに対する比率が高い(20:1を超える)ことを示した。
【0073】
一例では、カソードに銅触媒を有し、279マイクロジーメンスの伝導率(~3mMの濃度)のアノード液として炭酸水素ナトリウム塩を有する両極性MEAを含むセルは、約40%のメタン、約20モル%のエチレン、約1モル%の一酸化炭素、および約17モル%の水素を生成することが示された。同じ設定の塩溶液を同様の伝導率(~2mM)の炭酸水素カリウムに変更すると、生成物の選択性に大きな変化が観察された。エチレンおよび液体C2-C3の総生産量は、約170モル%増加し、メタンの生産量は約73モル%減少し、水素は約40モル%減少した。
【0074】
様々な実施形態において、カリウムカチオン塩は、メタンに対して少なくとも約5:1のモル比でエチレンの選択性に有利に働く。様々な実施形態において、ナトリウムカチオン塩は、エチレンに対して少なくとも約20:1のモル比でメタンの選択性に有利に働く。これらの実施形態は、両極性MEAセルに適用される。場合によっては、MEAセルは、銅触媒を使用する。セシウムは、両極性MEAセルでのカリウムと同様の効果を有する。
【0075】
特定の実施形態では、銅触媒およびナトリウム含有塩を有する両極性MEAセルは、二酸化炭素からのメタンに少なくとも約50%(例えば、最大約73%)のファラデー効率を与える。特定の実施形態では、銅触媒およびカリウム含有塩を有する両極性MEAセルは、二酸化炭素からのエチレンに少なくとも約20%(例えば、最大約33%)のファラデー効率を与える。セシウムは、両極性MEAセルでのカリウムと同様の効果で使用され得る。特定の実施形態では、銅触媒およびカリウム含有塩を有するアニオン伝導性ポリマーのみのセルは、二酸化炭素からのエチレンに少なくとも約30%(例えば、約41%)のファラデー効率を与える。
【0076】
いくつかの実装で、二酸化炭素からメタンを生成するように構成されたMEAセルは、ナトリウム含有塩を使用しており、少なくとも約50モル%のメタンまたは少なくとも約70モル%のメタンを有する生成物をカソードで生成するように動作する。カソードで生成され得る他の生成物は、水素、一酸化炭素、および1つまたは複数の、2つ以上の炭素有機分子などを含む。メタンを生成するように構成されたMEAセルは、カソードに銅または他の遷移金属を含んでよい。メタンを生成するように構成されたMEAセルは、両極性膜アセンブリを含んでよい。
【0077】
いくつかの実装で、二酸化炭素からエチレンおよび/または2つ以上の炭素原子を有する他の有機化合物を生成するように構成されたMEAセルは、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用しており、少なくとも約60モル%のエチレンおよび/もしくは2つ以上の炭素原子を有する他の有機化合物、または少なくとも約80モル%のエチレンおよび/もしくは2つ以上の炭素原子を有する他の有機化合物を有する生成物をカソードで生成するように動作する。カソードで生成され得る他の生成物は、水素、メタン、および一酸化炭素を含む。エチレンおよび/または2つ以上の炭素原子を有する他の有機化合物を生成するように構成されたMEAセルは、カソードに銅または他の遷移金属を含んでよい。エチレンおよび/または2つ以上の炭素原子を有する他の有機化合物を生成するように構成されたMEAセルは、両極性膜アセンブリを含んでよい。
【0078】
特定の実施形態では、水中のナトリウム、カリウム、セシウム、またはルビジウム含有塩を使用するMEAセルにおいてメタンまたは有機化合物を生成するための電圧効率および/または生成物選択性は、90A-hrで、約1%より多く、または約0.3%より多く、または約0.01%より多くは減少しない。
【0079】
本明細書に記載のカソード触媒は、合金、ドープされた物質、および記載された物質の他の変形例を含む。例えば、金または他の貴金属を含有すると記載されているMEAカソード触媒は、合金、ドープされた金属、および金または他の貴金属の他の変形例を含むと理解される。同様に、銅または他の遷移金属を含有すると記載されているMEAカソード触媒は、合金、ドープされた金属、および銅または他の遷移金属の他の変形例を含むと理解される。
【0080】
[塩の代表的な例]
特定の実施形態では、反応器で使用される塩は、遷移金属のイオンではないカチオンを有する。特定の実施形態では、塩は、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンであるカチオンを含有する。特定の実施形態では、塩は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、および/またはルビジウムイオンを含有する。特定の実施形態では、塩は、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオン以外のカチオンを含有しない。いくつかの実装では、塩は、アルカリ金属イオンなどの一価であるカチオンのみを含有する。
【0081】
特定の実施形態では、塩は、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩であるアニオンを含有する。場合によっては、塩は、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、または硫酸塩であるアニオンを含有する。特定の実施形態では、塩はハロゲン化物イオンを含有しない。特定の実施形態では、塩は、酸化炭素還元反応から生成されるアニオンを含有する。例には、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などのカルボン酸塩が含まれる。
【0082】
特定の実施形態では、塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素セシウム、硫酸セシウム、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0083】
場合によっては、MEAは、複数の塩または混合塩を使用する。例えば、MEAは、複数のカチオン(例えば、ナトリウムイオンおよびカリウムイオン)を使用し得るが、単一のアニオン(例えば、硫酸塩)のみを使用し得る。別の例では、MEAは、単一のカチオン(例えば、ナトリウムイオン)のみを使用するが、複数のアニオン(例えば、炭酸水素塩および硫酸塩)を使用する。さらに別の例では、MEAは、少なくとも2つのカチオンおよび少なくとも2つのアニオンを使用する。特定の実施形態では、塩は、炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムとの組み合わせを含む。特定の実施形態では、塩は、炭酸水素カリウムとリン酸カリウムとの組み合わせを含む。
【0084】
[MEAへの塩の伝達]
塩は様々な方法でセルに伝達され得る。一例では、塩は、製造されたままのMEAと共に提供され、および/または再構成されたMEAと共に提供される。別の例では、塩は、アノードまたはカソードへの供給原料(反応物含有組成物)と共に提供される。いくつかの実装では、水がアノードでの反応物であり、塩がアノード反応物と共に提供される。アノードに供給される水は、「アノード水」と呼ばれることもある。アノード水は、動作中にアノードに流れる水溶液であり得る。いくつかの実施形態では、アノード反応は、酸素を生成するための水の酸化である。いくつかの実施形態では、塩を含有する液体水は、様々な方法のいずれかでカソードに伝達される。例えば、塩は、動作中に溶液をカソードに流すことによって伝達され得る。液体は、溶存二酸化炭素または溶存一酸化炭素を含有してよい。場合によっては、塩の水溶液が、液体とガスとの混合物としてカソードに伝達される。例えば、塩溶液をMEA上に噴霧することができる。
【0085】
動作中に直接またはアノード水を介してMEAに提供される塩含有溶液は、様々な方法で調製することができる。場合によっては、塩含有溶液は塩を直接水に溶解させて作られる。場合によっては、塩含有溶液は、塩を水中に放出する樹脂(任意選択的に、カラム状)に水を通すことによって作られる。
【0086】
[塩濃度]
アノード水などの液体水を介して塩がMEAに提供される実施形態では、設定された濃度で塩が提供され得る。塩濃度は、MEA構成および使用される特定のカソード触媒、ならびに関連付けられる酸化炭素還元反応に応じて変化し得る。
【0087】
両極性膜MEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、水溶液中に、約1mMから約30mMの濃度で、または約3mMから約30mMの濃度で提供される。両極性膜MEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、約2mMから約15mMの濃度で提供される。両極性膜MEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、約0.1mMから約30mM、または約5mMから約10mMの濃度で提供される。
【0088】
二酸化炭素からの炭化水素生成のために構成された両極性膜MEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、約2mMから約50mMの濃度でアノード水または他のソースに提供される。二酸化炭素からのメタン生成のために構成されたセルで使用されるいくつかのMEAでは、塩は約10mMから30mMの濃度で提供される。様々な実装において、そのようなセルは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素セシウム、硫酸セシウム、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される塩および銅触媒を使用する。様々な実施形態において、メタン選択性のために使用される塩は炭酸水素ナトリウムであり、炭酸水素ナトリウムは、メタン対エチレン比を少なくとも約20:1で高めることが示されている。
【0089】
酸化炭素、特に二酸化炭素から炭化水素生成物を生成するために構成された両極性膜MEAを使用する特定の実施形態では、塩は、約2mMから1Mの濃度で提供される。いくつかの実装では、塩は炭酸水素カリウムであり、炭酸水素カリウムは、炭酸水素ナトリウムと比較して約5:1の比率でメタンに対するC2-C3生成物の選択性を高めることが示されており、塩は約100mMから約500mMの濃度で提供される。銅触媒をカソードとして二酸化炭素をエチレンに還元するようにMEAが構成されている特定の実施形態では、炭酸水素カリウム濃度は約1mMから5mMである。一酸化炭素をエチレンに還元するようにMEAが構成されている特定の実施形態では、塩濃度、特に炭酸水素カリウムは、約150mMから約250mMである。
【0090】
アニオン伝導性ポリマーのみを含有するMEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、約1mMから10モルの濃度で水溶液中に提供される。アニオン伝導性ポリマーのみを含有するMEAを使用するいくつかの実施形態では、塩は、約100mMから5モルの濃度で提供される。水酸化カリウムを塩として使用する特定の実施形態では、塩濃度が約50~150mMである。炭酸水素カリウムを塩として使用する特定の実施形態では、塩濃度が約4~10mMである。
【0091】
以下の濃度範囲は、アニオン伝導性ポリマーのみ、および水酸化カリウムおよび/または炭酸水素カリウムを含むアノード水を使用する両極性セルに有用である。水酸化カリウムを使用する特定のMEAセルでは、塩濃度が約10mMから15Mである。水酸化カリウムを使用するいくつかのMEAセルでは、塩濃度が約50~500mMである。水酸化カリウムを使用するいくつかのMEAセルでは、塩濃度が約0.5Mから15Mである。炭酸水素カリウムを使用する特定のMEAセルでは、塩濃度が約1mMから1Mである。炭酸水素カリウムを使用するいくつかのMEAセルでは、塩濃度が約1~50mMである。炭酸水素カリウムを使用するいくつかのMEAセルでは、塩濃度が約100mMから500mMである。
【0092】
二酸化炭素をMEAセル内の反応物として使用する特定の実施形態では、以下の塩濃度範囲が使用される。一酸化炭素を生成するための両極性膜(例えば、金含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約10μM~200mM、または約100μM~20mM、または約1mM~10mM、または約1mM~5mM、または約2mM~5mMである。特定の実施形態では、塩が炭酸水素ナトリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
メタンを生成するための両極性膜(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約1mM~40mM、または約10mM~30mM、または約3mM~20mMである。特定の実施形態では、塩が炭酸水素ナトリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
エチレンを生成するための両極性膜(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約100μM~20mM、または約1mM~10mM、または約1mM~5mM、または約2mM~5mMである。特定の実施形態では、塩が炭酸水素カリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
エチレンを生成するためのアニオン伝導性ポリマーのみのMEA(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約0.05M~5M、または約0.05M~1M、または約0.5M~1M、または約0.05M~0.5Mである。特定の実施形態では、塩が水酸化カリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
【0093】
一酸化炭素をMEAセル内の反応物として使用する特定の実施形態では、以下の塩濃度範囲が使用される。エチレンを生成するためのアニオン伝導性ポリマーのみのMEA(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約0.05M~5M、または約0.05M~1M、または約0.5M~1M、または約0.05M~0.5M、または約0.5M~10Mである。特定の実施形態では、塩が水酸化カリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
メタンを生成するためのアニオン伝導性ポリマーのみのMEA(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約0.05M~10M、または約0.05M~1M、または約0.05M~0.5M、または約0.5M~10M、または約0.5M~1Mである。特定の実施形態では、塩が水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
エチレンを生成するための両極性MEA(例えば、銅含有触媒):アノード水中の塩濃度は、約20mM~2M、または約50mM~500mM、または約50mM~250mM、または約100mM~500mMである。特定の実施形態では、塩が炭酸水素カリウムである場合、これらの濃度範囲のいずれかが使用される。特定の実施形態では、これらの濃度範囲のいずれかが、約25cmのカソード表面積を有するMEAセルに使用される。
【0094】
本明細書で提供される塩濃度は、任意のサイズのMEAに適切であり得るが、特定の実施形態では、それらは、約25cmの表面積を有するMEAを使用するセルに適切であり、列挙された範囲は、より大きな表面積を有するMEAを備えるセルについてスケーリングされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、塩濃度は、MEA面積の増加につれて約3:4の比率で増加する。従って、例えば、2mMの塩濃度が25cmのMEA面積を有するセルに適切であれば、100cmのMEA面積を有するセルについて濃度を6mMに増加させることができる。本明細書で使用される場合、MEAの面積は、MEA表面における幾何学的平面の面積であり、細孔、またはMEA表面の平面性からの他の偏差を考慮したものである。
【0095】
特定の実施形態では、MEA中の塩の濃度は、ポリマー電解質の質量あたりの塩のモルで、約1~3mM/gの間である。特定の実施形態では、ポリマー中の塩の濃度が、伝導率測定を使用して推定される。
【0096】
いくつかの実装では、アノード水またはカソード水に導入された塩以外の不純物は、いずれも濃度が非常に低い(例えば、百万分率程度)。これは、アノードで酸化可能なアニオンおよびカソードで還元可能なカチオンに特に当てはまる。特定の実施形態では、1つまたは複数の導入された塩を含有する水は、塩のイオン以外のイオンを実質的に有していない。例えば、水は、導入された塩に、約100ppb以下の任意の遷移金属以外の任意の遷移金属イオンを含有してよい。場合によっては、還元可能な遷移金属イオンの濃度は、10ppb以下、1ppb以下、または0.1ppb以下である。別の例では、水は、約10ppm以下の任意のハロゲン化物イオンを含有する。別の例では、水は、約10ppm以下の、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオン以外の任意のカチオンを含有する。別の例では、水は、約10ppm以下の、アルカリ金属イオン以外の任意のカチオンを含有する。特定の実施形態では、塩含有水は、約100ppm以下の意図せずに提供されたイオンを含有する。場合によっては、塩含有水は、約10ppm以下の意図せずに提供されたイオン、または約1ppm以下の意図せずに提供されたイオン、または約0.1ppm以下の意図せずに提供されたイオンを含有する。
【0097】
特定の実施形態では、不要なイオンおよび/または他の不純物は、二酸化炭素還元セルに水を伝達する前に水から除去される。これは、水が伝達されるアノードおよび/またはカソードの上流で水を浄化することによって達成することができる。水は、シグマアルドリッチから入手可能なCR11などのキレート系樹脂を含有する樹脂カラムに水を通過させるなどの様々な技術のいずれかによって浄化することができる。超高純度水を実現する技術の例には、大きな粒子の総濾過、炭素濾過、軟水化、逆浸透、TOCおよび/または細菌の静的制御のための紫外線(UV)光への曝露、イオン交換樹脂または電気脱イオン処理(EDI)を用いた研磨、および濾過または限外濾過が含まれる。特定の段階は、開始時の水質に影響される。段階の特定の組み合わせにより、抵抗が約18MOhmを超えるまで水を浄化することが可能である。特定の実施形態では、塩を意図的に添加する前にわずか約10MOhmの抵抗があれば、CO電気分解のための浄水に十分である。
【0098】
本明細書に提示される塩濃度値は、MEAセルに供給される水溶液中の塩濃度を定義し得る。そのような溶液は、セルの動作中に供給されるアノード水、および、MEAを浸漬するか、さもなければ接触させて塩を注入する溶液などを含む。塩濃度は、MEAと、MEAに塩を供給する溶液とでは、異なる場合がある。通常、塩イオンは溶液からMEAに浸透し、次に、1つまたは複数の移送メカニズムを介してMEA内を移動する。1つのメカニズムでは、塩イオンが供給溶液を介してMEAに流れ込む。これは、溶液がMEA内の細孔または他の開口部を介してMEAに浸透する場合であり得る。MEAに入ると、溶液は圧力勾配の下で移動し得る。移動する溶液は、塩イオンを一緒に運ぶ。塩イオンが供給溶液で運ばれている間、塩イオンはより大きな体積を占めるため、MEAにおける塩イオンの全体的な濃度は低下する可能性があり、塩イオンは、MEAポリマーの体積に加えて供給溶液の体積を占める。
【0099】
溶液中の塩イオンは、塩濃度勾配の影響下(拡散または浸透)または電場の影響下(泳動)で、バルク溶液とは独立して移動し得る。これらの移送現象は、MEA内の塩濃度も変更し得る。供給溶液内の動きとは無関係に、塩イオンは、MEAの伝導性ポリマーを通るイオン伝導によって移動し得る。例えば、塩カチオンは、スルホン化テトラフルオロエチレンなどのカチオン交換膜のポリマーマトリックス内のイオン伝導によって移動し得る。塩アニオンは、アニオン交換膜のマトリックスを通るイオン伝導によって移動し得る。そのようなポリマーマトリックス内の塩イオンの動きは、ホッピングと呼ばれることもあり、塩イオンはポリマーマトリックス内の隣接する帯電部位間をホッピングする。MEAセルの動作中、ポリマーマトリックス内の塩イオンは、MEA内の全体的な塩または塩イオンの濃度に寄与する独自の濃度を有する。
【0100】
上記の要因、および場合によっては他の要因により、MEA内の塩濃度は、供給溶液内の塩濃度と異なり得る。本明細書に提示される塩濃度値は、通常、供給溶液がMEAに浸透する前の供給溶液内の塩濃度を表すが、その値はMEA内の濃度を表すこともある。その値がMEA内の濃度を表す限り、それはMEA全体の平均値と見なされるべきである。塩イオンは、そのソースの塩とは異なるモル濃度を有し得ることに留意されたい。例えば、硫酸ナトリウムの1M溶液は、完全に解離すると、ナトリウムイオンの2M溶液を提供すると見なすことができる。
【0101】
[MEAを介した塩の伝達]
特定の実施形態では、塩は、少なくとも部分的に、MEAの1つまたは複数の構成要素への動作前の導入によって提供される。例えば、PEM、カソードバッファ層、アノードバッファ層、アノード触媒層、カソード触媒層、またはそれらの任意の組み合わせに、塩を事前装填することもできる。事前装填は、個々のMEA層をMEAスタックへと組み立てる前、途中、または後に実行できる。いくつかの実装では、組み立ての前に、様々な好ましい濃度の塩含有溶液にMEAの異なる層を浸すことによって事前装填が達成される。いくつかの実装では、組み立ての途中に、塩含有溶液の小滴をMEAの異なる層上に添加することによって、事前装填が達成される。いくつかの実装では、組み立ての後に、アノードおよび/またはカソードの区画で塩含有溶液を循環させることによって、事前装填が達成される。
【0102】
特定の実施形態では、MEAが酸化炭素還元セル内でしばらく動作した後、塩がMEAに導入される。場合によっては、一定量の使用後、MEAは使用中止となり、MEAのポリマーに塩を導入する組成物に露出される。これは、例えば、アノード水に塩を添加することによって、またはセルのカソードを介して塩含有水を入れることによって、達成することができる。
【0103】
[MEAセルから塩を除去する]
特定の実施形態では、塩は沈殿するか、そうでなければ溶液から出て、セル内の特定の位置に蓄積し得る。例えば、塩は、セルの流れ場および/またはMEA層に堆積し、最終的にセルを汚す可能性がある。
【0104】
この懸念に対処するため、または他の理由により、セルを定期的にオフラインにし、流れ場またはそれが形成された他の構造から固体塩を取り除く流体力学的条件(流速および圧力など)下で、水(例えば、脱イオン水)の流れに露出させることができる。場合によっては、固体塩の溶解を促進する熱力学的条件下で、セルに脱イオン水を流す。
【0105】
[MEAセルにおける塩濃度および水伝達の管理]
前述のように、塩は、事前装填されたMEAポリマー層およびアノード水を含む様々なソースからMEAに提供され得る。MEAセルに供給された塩は、セルの動作中に枯渇する可能性がある。これは、塩含有アノード水がMEAに再利用された場合でも発生し得る。様々なメカニズムがこの損失の原因となり得る。例えば、アノード水からの塩は、PEMまたは他のカチオン交換ポリマー層などの1つまたは複数のMEA構成要素によって取り込まれ得る。さらに、一部の塩は、拡散、移動、および/または浸透によって、高濃度の領域(アノード)から低濃度の領域(カソード)に移動し得る。アノード水の塩分だけでなく、アノード水自体が、アノードからカソードへのアノード水の浸透により移動することもあり、カソードでは、ガス状の酸化炭素の流れによってアノード水が一掃される。
【0106】
MEAセルの動作中の塩濃度を管理するために、様々なメカニズムを使用することができる。例えば、アノード水は、(a)塩を添加する、(b)不純物を除去する、および/または(c)浄水を添加するように処理されてもよい。そのような処理は、濃縮塩溶液および/または浄水をアノード水槽内のアノード水に投与することによって達成され得る。不純物の除去は、濾過および/またはイオン交換樹脂を用いた処理によって達成され得る。
【0107】
MEAセルの動作中のアノード水の枯渇を管理するために、様々なメカニズムを使用することができる。1つの方法は、アノードを離れる水を捕らえ、その水をアノード水入口に再循環させることである。別の方法は、カソード生成物のストリームで回収された水をリサイクルすることである。いくつかの実装では、カソード水は、アノード水を介して導入された塩を含む。
【0108】
図1Aは、MEAセル内の水の組成および流れを制御するために使用できる電解酸化炭素還元システムの例を示している。図示するように、システム101は、アノード105と、カソード107と、膜電極アセンブリ109とを含むMEAセル103を含む。システム101は、アノード水再循環ループ111と、ガス状酸化炭素再循環ループ125も含む。
【0109】
図示の実施形態では、アノード水再循環ループ111は、アノード105に水を伝達し、アノード105から水を除去する。ループ111は、アノード水槽113と、水流路115、117、および119とを含む。アノード水再循環ループ111は、水ソース121および/または濃縮塩溶液ソース123と相互作用してもよい。これらのソースは、アノード水の組成を調整するために、アノード水に浄水および/または濃縮塩溶液を投与するために使用され得る。特定の実施形態では、水ソース121は、高度に浄化された脱イオン水、例えば、少なくとも約10メガオーム-cmの抵抗率を有する水などの浄水を提供する。図示の実施形態では、濃縮塩溶液ソース123が、アノード水槽113に直接接続されている。いくつかの実施形態では、濃縮塩溶液ソース123が、アノード水再循環ループ111上の別の箇所に接続されている。
【0110】
図1Aには、フィルタ、樹脂カラム、またはアノード水から鉄イオンまたは他の遷移金属イオンなどの特定のイオンを除去するように構成された他の浄化器などの浄水構成要素は示されていない。浄水構成要素は、水流路115、117、または119のうちの1つに提供されてもよいし、水ソース121と共に提供されるか、水ソース121とアノード水再循環ループ111との間に提供されてもよい。
【0111】
特定の実施形態では、アノード水再循環ループの構成が、図1Aに示されているものとは異なる。例えば、アノード水再循環ループは、浄水ソースおよび濃縮塩ソースを別個に含まないことがある。いくつかの実施形態では、浄水ソースが使用されない。特定の実施形態では、浄水ソースおよび濃縮塩溶液ソースの両方がアノード水槽に直接接続されている。
【0112】
どの構成要素がアノード水再循環ループ中に存在するかに関係なく、ループは、MEAセルの動作に適切な塩組成のアノード水を提供または維持するように構成され得る。そのような塩組成は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0113】
図1Aに戻ると、ガス状酸化炭素再循環ループ125は、ガス状酸化炭素供給ストリームをカソード107に提供し、ガス状生成物ストリームをカソード107から除去する。反応生成物に加えて、カソード出口ストリームは、実質的な量の未反応ガス状酸化炭素を含有してよい。図示の実施形態では、再循環ループ125は、水分離器構成要素127(例えば、水凝縮器)と、還元生成物回収構成要素129と、加湿器131と、更には流路122、124、126、および128とを含む。新しい酸化炭素反応ガスは、ガス状酸化炭素再循環ループ125に接続する酸化炭素ソース133から提供されてよい。
【0114】
加湿器131は、カソード107から上流で、酸化炭素ガス状反応物の入力ストリームを加湿することができる。加湿器は、水蒸気分圧の比較的高い酸化炭素を提供し、これによって、本明細書でより完全に説明されるように、カソード107またはMEA109の任意の構成要素の乾燥が防止され得る。いくつかの実施形態では、加湿器はシステム中に存在しない。
【0115】
ガス状酸化炭素反応物は、カソード107に接触すると、アノード105からMEA109を通ってカソード107に到達したアノード水を除去し得る。再循環ループ125では、カソード107を離れるガス状酸化炭素ストリーム中に存在するアノード水を、酸化炭素出口ストリーム中に存在する水の少なくとも一部が除去される水分離器構成要素127と接触させる。水分離器127を離れる比較的乾燥した酸化炭素ストリームは、酸化炭素出口ストリームから1つまたは複数の還元生成物を除去する還元生成物回収構成要素129に入る。そのような還元生成物は、一酸化炭素、炭化水素、および/または他の有機化合物を含んでよい。
【0116】
MEAセル103のカソードで生成された還元生成物の一部は、水分離器127によって除去される水に溶解するか、他の方法で含まれ得る。この問題に対処するために、任意選択的に、分離器127で処理された水が、水分離器127によって提供される水から1つまたは複数の還元生成物を除去するように構成された還元生成物回収構成要素135に提供される。
【0117】
いくつかの実装では、実質的な量のアノード水が、塩が溶解したアノード水が失われる可能性がある、MEA109のアノードからカソードに渡る。塩および塩が溶解している他の高純度の水の価値が高いことを考えると、ガスループ125から水ループ111に水を戻すことができる2つのループ間の接続は、システムの技術的および商業的な実行可能性を改善し得る。説明したように、アノード水は、非常に低い濃度(例えば、ppmまたはppbのレベル)の特定の無機材料および/または有機材料を有し得ることに留意されたい。例えば、水は、非常に低い濃度の鉄イオンおよび他の遷移金属イオンを有してよい。アノード水に、意図的に塩が添加されている可能性もある。カソード側から回収され得るそのような処理されたアノード水はいずれも、アノードに戻されてよい。
【0118】
図示の実施形態では、ガス状酸化炭素再循環ループ125から除去された水は、ライン137を介してアノード水槽113に伝達され、そこでアノード水再循環ループ111に再び入ることができる。
【0119】
他の実施形態では、酸化炭素再循環ループ125とアノード水再循環ループ111との間に直接接続がない。また、還元生成物回収構成要素135は任意選択的であることに留意されたい。いくつかの実装では、水再循環ループ125内の還元生成物は除去されず、アノード水再循環ループ111に提供される水に含まれる。還元生成物のいくつかまたは全てが、アノード105で酸化されてよい。
【0120】
図1Bは、MEAセル内の水の組成および流れを制御するために使用できる電解酸化炭素還元システムの例を示している。この図では、システム151は、MEA酸化炭素還元セル153と、2つの再循環ループ(塩再循環ループ155および純水再循環ループ157)とを含む。2つのループの出力は、セル入力槽159で結合され、そこでMEAセル153と共に使用することに適した塩の組成および濃度、例えば、本明細書の他の箇所に記載されている組成および濃度を有するアノード水を生成する。アノード水は、セル入力槽159から導管152を介してMEAセル153に供給される。
【0121】
MEAセル153を離れるアノード水は、アノード水から塩の一部または全てを除去するように構成された塩イオンハーベスター161に提供される。比較的純粋な水は、望ましい塩イオンが収穫された後に残りの不純物を除去し得る浄水器構成要素165に水を供給する導管163を介して、塩イオンハーベスター161を離れる。構成要素165は、小さな細孔フィルタ(例えば、ドイツのダルムシュタットのミリポアシグマ社から入手可能なMilli-DI(登録商標)フィルタ)および/またはイオン交換樹脂(例えば、床内)を含んでよい。結果として得られる浄水は、遷移金属イオンおよび/またはハロゲン化物などの潜在的に有害なイオンの濃度が非常に低い(例えば、ppmまたはppbのレベル)可能性がある。浄水器165を離れる浄水は、導管167を介して槽169に提供される。次に、槽169内の浄水は、必要に応じて、セル入力槽159に提供され、そこで塩または濃縮塩溶液と結合されて、MEAセル153で使用するためのアノード水が調製される。図示のように、浄水は、導管171を介してセル入力槽159に提供される。
【0122】
示されているように、浄水再循環ループ157は、浄水器165と、槽169と、セル入力槽159と、塩イオンハーベスター161とを含む。特定の実施形態では、浄水ループは、これらの構成要素のうちの1つまたは複数を含まない。例えば、ループのいくつかの実施形態は、浄水器を含まない。ループのいくつかの実施形態は、槽を含まない。
【0123】
図1Bに戻ると、塩イオンハーベスター161によって生成された塩または濃縮塩溶液は、導管175を介して塩貯蔵槽177に伝達され、塩貯蔵槽177は、収穫された塩を固体または溶液の形態に維持する。塩は、必要に応じて、貯蔵槽177からセル入力槽159に提供され、そこで浄水と結合されて、MEAセル153で使用するためのアノード水が調製される。浄水は、導管179を介してセル入力槽159に提供される。塩貯蔵槽177は、所望の塩イオンをセル入力槽159に適宜ポンプで送り込むための保持点として機能し得る。
【0124】
示されているように、塩再循環ループ155は、セル入力槽159および塩イオンハーベスター161に加えて、貯蔵槽177を含む。特定の実施形態では、塩再循環ループは、これらの構成要素のうちの1つまたは複数を含まない。例えば、ループのいくつかの実施形態は、槽を含まない。
【0125】
塩イオンハーベスターの例には、イオン選択性膜を含有するデバイスと、塩キレート剤および放出剤で構成されるデバイスとが含まれる。そのようなデバイスは、アノード水ストリーム中の所望の塩イオン(例えば、カリウムイオンまたはナトリウムイオン)を選択してよい。特定の実施形態では、塩イオンハーベスターは、固体の塩沈殿物を生成し、固体の塩沈殿物は、次に、塩再循環ループまたはアノード水管理システムの他の部分に選択的に戻される。
【0126】
前述のように、水は、イオン交換樹脂を使用することによって、有害なイオンを除去するために浄化されてよい。そのような樹脂の例には、(a)カソード触媒上に堆積する可能性がある比較的大きな多価イオン(すなわち、遷移金属)を捕獲し、ナトリウムイオンを放出する、日本の東京の三菱ケミカル社から入手可能なDiaion(商標)CR11と、(b)全てのイオン(カチオンおよびアニオン)を捕獲し、プロトンおよび水酸化物のみを放出して、非常に純粋な水を残す、ドイツのウィルミントンのDuPont de Nemours、Inc.から入手可能なAmberlite(商標)MB20とが含まれる。特定の実施形態では、樹脂はイミノ二酢酸キレート樹脂である。特定の実施形態では、樹脂は、強酸カチオンおよび強塩基アニオンの交換樹脂の混合物である。
【0127】
図1Aおよび図1Bに示されるような電解酸化炭素還元システムは、コントローラと、ポンプ、センサ、バルブ、および電源などの1つまたは複数の制御可能な構成要素とを含む制御システムを使用してよい。センサの例には、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、伝導率センサ、電気化学機器を含む電解質組成センサ、クロマトグラフィーシステム、および吸光度測定ツールなどの光学センサなどが含まれる。そのようなセンサは、アノード水、浄水、塩溶液など、および/または電解酸化炭素還元システムの他の構成要素を保持するための槽内で、MEAセルの入口および/または出口(例えば、流れ場内)に連結されてよい。
【0128】
制御システムは、MEAセルの動作中にアノード水を供給するように構成されてよい。例えば、制御システムは、塩濃度を定義されたレベルに維持してよい、および/またはアノード水を回収および再循環させてよい。制御システムの制御下で、システムは、例えば、(a)アノードから流出するアノード水を再循環させ、(b)アノードへのアノード水の組成および/または流量を調整し、(c)カソード流出からの水をアノード水に戻し、および/または(d)アノードに戻る前に、カソードストリームから回収された水の組成および/または流量を調整してよい。(d)は、カソードから回収された水中の酸化炭素還元生成物を考慮し得ることに留意されたい。ただし、いくつかの実装では、いくつかの還元生成物がその後アノードで酸化して無害な生成物になり得るため、これを考慮する必要はない。
【0129】
特定の実施形態では、制御システムは、純水と導入された塩イオンとの混合を調整して、バルク伝導率または他のアノード水パラメータが所望のレベル内にあることを保証するために、センサからのフィードバック(例えば、伝導率/イオン固有のモニタリング)を利用するように構成される。いくつかの実施形態では、アノード水中のセンサが塩濃度を検出し、濃度が過度に低くなる場合は、より高濃度の槽からの塩が添加されてよい。塩濃度が過度に高くなる場合は、純水を添加して塩を希釈して、所望の濃度範囲に戻してよい。
【0130】
コントローラは、任意の数のプロセッサおよび/またはメモリデバイスを含んでよい。コントローラは、ソフトウェアまたはファームウェアなどの制御ロジックを含んでよい、および/または別のソースから提供された命令を実行してよい。酸化炭素を還元する前、途中、および後の電解セルの動作を制御するために、コントローラを電子機器と統合してよい。コントローラは、1つまたは複数の電解酸化炭素還元システムの様々な構成要素またはサブパーツを制御してよい。コントローラは、処理要件および/またはシステムのタイプに応じて、ガスの伝達、温度設定(例えば、加熱および/または冷却)、圧力設定、電力設定(例えば、MEAセルの電極に伝達される電圧および/または電流)、液体流量設定、流体伝達設定、および浄水および/または塩溶液の投与など、本明細書に開示されるプロセスのいずれかを制御するようにプログラムされてよい。これらの制御されたプロセスは、電解酸化炭素還元システムと協調して機能する1つまたは複数のシステムに接続されるか、そのシステムと相互作用してよい。
【0131】
様々な実施形態において、コントローラは、命令を受け取り、命令を発行し、本明細書に記載の動作を制御する様々な集積回路、ロジック、メモリ、および/またはソフトウェアを備える電子機器を含む。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または1つまたは複数のマイクロプロセッサ、またはプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含んでよい。プログラム命令は、電解酸化炭素還元システムの1つまたは複数の構成要素でプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個別の設定(またはプログラムファイル)の形でコントローラに伝達される命令であってもよい。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、一酸化炭素、炭化水素、および/または他の有機化合物などの特定の還元生成物の生成中に1つまたは複数の処理段階を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってもよい。
【0132】
いくつかの実装では、コントローラは、システムと統合されるか、システムに連結されるか、他の方法でシステムにネットワーク接続されるか、またはそれらの組み合わせがなされるコンピュータの一部であるか、そのコンピュータに連結されてよい。例えば、コントローラは、リモートで(例えば、「クラウド」に)格納された命令を利用してよい、および/またはリモートで実行してよい。コンピュータは、システムへのリモートアクセスを可能にすることで、電解動作の現在の進行状況を監視し、過去の電解動作の履歴を調べ、複数の電解動作からの傾向または性能測定基準を調べて、現在の処理のパラメータを変更するか、現在の処理に従うように処理段階を設定するか、新しいプロセスを開始してよい。いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)が、ローカルネットワークまたはインターネットを含み得るネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供することができる。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでよく、パラメータおよび/または設定は、次に、リモートコンピュータからシステムに伝達される。いくつかの例では、コントローラは、1つまたは複数の動作中に実行されるべき処理段階の各々についてパラメータを指定する命令を、データの形で受信する。
【0133】
コントローラは、一緒にネットワーク化され、且つ、本明細書に記載のプロセスおよび制御などの共通の目的に向けて動作する、1つまたは複数の個別のコントローラを含むことなどによって分散されてよい。そのような目的のための分散型コントローラの例は、MEAセル上の1つまたは複数の集積回路、または、チャンバーでのプロセスを制御するために結合する、(例えば、プラットフォームレベルで、またはリモートコンピュータの一部として)リモートに配置された1つまたは複数の集積回路と通信する再循環ループである。
【0134】
特定の実施形態では、電解酸化炭素還元システムは、MEA内の塩の沈殿を回避するように構成および制御される。沈殿した塩は、チャネルを遮断する可能性がある、および/またはMEAセルの性能を低下させる他の影響を及ぼす可能性がある。場合によっては、例えばカソード側で、セルが過度に乾燥する可能性があり、これは、乾燥したガス状反応物が、特にカソード側で、MEAから過剰の水を除去するからである。塩の沈殿を引き起こし得るこの問題には、ガス入口ストリーム内の水の分圧を制御することによって(例えば、ガス状の酸化炭素ソースガスを加湿することによって)対処することができる。場合によっては、アノード水中の塩濃度が十分に高いため、MEAでの塩の沈殿が促進される。この問題には、アノード水中の塩濃度を制御することによって、対処することができる。いくつかの実施形態では、システムを定期的にまたは必要に応じてオフラインにして、MEAセル内に蓄積されるいかなる実際の塩または潜在的な塩にも対処する。オフラインの間、カソード区画またはシステムの他の部分は、塩の蓄積を回避または除去するために水で洗い流されてよい。
【0135】
[MEA設計の実施形態]
[MEAの概要]
様々な実施形態において、MEAは、アノード層と、カソード層と、電解質と、任意選択的に1つまたは複数の他の層とを含有する。層は、固体および/またはゲルであってよい。層は、イオン伝導性ポリマーなどのポリマーを含んでよい。
【0136】
使用中、MEAのカソードは、CO、COと化学的に反応するイオン(例えば、プロトン)、および電子という3つの入力を組み合わせることにより、COの電気化学的還元を促進する。還元反応は、CO、炭化水素、および/または、酸素と水素とを含有する有機化合物、例えば、メタノール、エタノール、および酢酸を生成してよい。使用中、MEAのアノードは、水の電気分解などの電気化学的酸化反応を促進して、元素状酸素およびプロトンを生成する。カソードおよびアノードはそれぞれ、それぞれの対応する反応を促進するための触媒を含有してよい。
【0137】
MEAにおける層の組成および配置は、CO還元生成物の高収率を促進し得る。この目的のために、MEAは、(a)カソードでの最小の寄生還元反応(非CO還元反応)、(b)アノードまたはMEAの他の箇所でのCO反応物の少ない損失、(c)反応中にMEAの物理的完全性を維持する(例えば、MEA層の層間剥離を防止する)こと、(d)CO還元生成物のクロスオーバーを防止すること、(e)酸化生成(例:O)のクロスオーバーを防止すること、(f)酸化に適したカソードの環境を維持すること、(g)望ましくないイオンを遮断しながら、所望のイオンがカソードとアノードとの間を移動するための経路を提供すること、(h)電圧損失を最小限に抑えること、といった条件のいずれか1つまたは複数を促進してよい。本明細書で説明するように、MEA中の塩または塩イオンの存在は、これら全ての条件のうちのいくつかを容易にすることができる。
【0138】
[COx還元に関する考慮事項]
MEAなどのポリマー系の膜アセンブリは、水電解槽などの様々な電解システム、および燃料電池などの様々なガルバニックシステムで使用されてきた。ただし、COの還元は、水電解槽および燃料電池では発生しない、または発生する程度が少ない問題を提示する。
【0139】
例えば、多くの用途では、CO還元のためのMEAが、約50,000時間以上程度(約5年間の連続運転)の寿命を必要とし、これは、自動車用途の燃料電池の予想寿命(例えば、5,000時間程度)よりも大幅に長い。また、様々な用途において、CO還元のためのMEAは、自動車用途の燃料電池に使用されるMEAと比較して、比較的大きな表面積を有する電極を使用している。例えば、CO還元のためのMEAは、少なくとも約500cmの表面積(細孔および他の非平面の特徴を考慮しない)を有する電極を使用してよい。
【0140】
CO還元反応は、特定の反応物および生成物種の物質移送を容易にし、且つ、寄生反応を抑制する、動作環境で実装されてよい。燃料電池および水電解槽MEAは、多くの場合、そのような動作環境を作り出すことができない。例えば、そのようなMEAは、カソードでのガス状水素発生および/またはアノードでのガス状CO生成などの望ましくない寄生反応を促進する可能性がある。
【0141】
いくつかのシステムでは、CO還元反応の速度は、カソードでのガス状CO反応物の利用可能性によって制限される。対照的に、水の電気分解の速度は、反応物の利用可能性によって大幅に制限されず、液体の水は、カソードおよびアノードに容易にアクセスできる傾向があり、電解槽は、可能な限り最高の電流密度に近い状態で動作することができる。
【0142】
[MEA構成]
特定の実施形態では、MEAは、カソード層と、アノード層と、アノード層とカソード層との間のポリマー電解質膜(PEM)とを有する。ポリマー電解質膜は、短絡を引き起こすであろう電子伝達を防止しながら、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。カソード層は、還元触媒および第1のイオン伝導性ポリマーを含む。カソード層はまた、イオン伝導体および/または電子伝導体を含んでよい。アノード層は、酸化触媒および第2のイオン伝導性ポリマーを含む。アノード層はまた、イオン伝導体および/または電子伝導体を含んでよい。PEMは、第3のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0143】
特定の実施形態では、MEAが、カソード層とポリマー電解質膜との間にカソードバッファ層を有する。カソードバッファは、第4のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0144】
特定の実施形態では、MEAが、アノード層とポリマー電解質膜との間にアノードバッファ層を有する。アノードバッファは、第5のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0145】
特定のMEA設計に関連して、イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、およびカチオン-アニオン混合伝導体という3つの利用可能なクラスがある。特定の実施形態では、第1、第2、第3、第4、および第5のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーに由来する。
【0146】
[MEA層用のイオン伝導性ポリマーの伝導率と選択性]
「イオン伝導性ポリマー」という用語は、本明細書では、アニオンおよび/またはカチオンに対して約1mS/cmを超える比伝導率を有するポリマー電解質を説明するために使用される。「アニオン伝導体」という用語は、主にアニオンを伝導し(ただし、依然としていくらか少量のカチオン伝導があるであろう)、且つ、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。「カチオン伝導体」および/または「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、主にカチオンを伝導し(例えば、依然として付随的な量のアニオン伝導が存在し得る)、且つ、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるカチオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。アニオンおよびカチオンの両方を伝導すると説明されているイオン伝導性ポリマー(「カチオン-アニオン伝導体」)の場合は、アニオンもカチオンも、約100ミクロンの厚さで輸率が約0.85を超えることも約0.15を下回ることもない。材料がイオン(アニオンおよび/またはカチオン)を伝導すると言うことは、その材料がイオン伝導性材料またはアイオノマーであると言うことである。各クラスのイオン伝導性ポリマーの例を以下の表に示す。
【表1】
【0147】
いくつかのクラスAイオン伝導性ポリマーは、2259-60(Pall RAI)、Tokuyama CoのAHA、fumasep(登録商標)FAA-(fumatech GbbH)、Sustanion(登録商標)、SolvayのMorgane ADP、またはTosohアニオン交換膜材料のTosflex(登録商標)SF-17などの商品名として知られている。さらなるクラスAイオン伝導性ポリマーは、IonomrのHNN5/HNN8、FumatechのFumaSep、OrionのTM1、およびW7energyのPAP-TPを含む。いくつかのクラスCイオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)(DuPont(商標))、GORE-SELECT(登録商標)(Gore)、fumapem(登録商標)(fumatech GmbH)、およびAquivion(登録商標)PFSA(Solvay)の様々な製剤などの商品名として知られている。
【0148】
[COx還元のための両極性MEA]
特定の実施形態では、MEAは、アニオン伝導性ポリマーをMEAのカソード側に、相互作用するカチオン伝導性ポリマーをMEAのアノード側に有する両極性界面を含む。いくつかの実装では、カソードが、第1の触媒およびアニオン伝導性ポリマーを含有する。特定の実施形態では、アノードが、第2の触媒およびカチオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実装では、カソードとPEMとの間に位置するカソードバッファ層が、アニオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、アノードとPEMとの間に位置するアノードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマーを含有する。
【0149】
動作中に、両極性界面を備えたMEAは、ポリマー電解質を介してイオンを移動させ、カソード層およびアノード層における金属および/または炭素を介して電子を移動させ、層の細孔を介して液体およびガスを移動させる。
【0150】
カソードおよび/またはカソードバッファ層でアニオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、MEAは、望ましくない生成物を生成し、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を低減または遮断することができる。アノードおよび/またはアノードバッファ層にカチオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、所望の生成物の生成を減少させ、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を低減または遮断することができる。
【0151】
例えば、COのカソード還元に使用される電位のレベルでは、水素イオンが水素ガスに還元され得る。これは寄生反応であり、COを削減するために使用できる電流は、代わりに水素イオンを削減するために使用される。水素イオンは、CO還元反応器のアノードで実行される様々な酸化反応によって生成されてよく、MEAを横切って移動し、カソードに到達してよく、そこで還元されて水素ガスを生成することができる。この寄生反応が進行できる範囲は、カソードに存在する水素イオンの濃度の関数である。従って、MEAは、カソード層および/またはカソードバッファ層でアニオン伝導性材料を使用してよい。アニオン伝導性材料は、水素イオンがカソード上の触媒部位に到達することを少なくとも部分的に遮断する。その結果、水素ガス発生の寄生生成が減少し、COまたは他の生成物の生成速度とプロセスの全体的な効率とが向上する。
【0152】
回避可能な別の反応は、COを生成するアノードでの炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの反応である。水性炭酸イオンまたは炭酸水素イオンは、カソードでCOから生成され得る。そのようなイオンがアノードに到達すると、水素イオンと反応してガス状COを生成および放出し得る。その結果、COはカソードからアノードへ純移動し、そこで反応せず、酸化生成物と一緒に失われる。カソードで生成された炭酸イオンおよび炭酸水素イオンがアノードに到達するのを防止するために、アノードおよび/またはアノードバッファ層は、炭酸水素イオンなどの負イオンのアノードへの移送を少なくとも部分的に遮断するカチオン伝導性ポリマーを含んでよい。
【0153】
従って、いくつかの設計では、両極性膜構造が、カソードでのpHを上げて、CO還元を促進し、プロトン交換層などのカチオン伝導性ポリマーが、相当量のCOおよびCO還元生成物(例えば、炭酸水素塩)のセルのアノード側への通過を防止する。
【0154】
CO還元に使用するためのMEA200の例を図2に示す。MEA200は、イオンがカソード層220とアノード層240との間を移動するための経路を提供するイオン伝導性ポリマー層260によって分離された、カソード層220とアノード層240とを有する。特定の実施形態では、カソード層220は、アニオン伝導性ポリマーを含む、および/または、アノード層240は、カチオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、MEAのカソード層および/またはアノード層は多孔質である。細孔は、ガスおよび/または流体の移送を容易にすることができ、反応に利用可能な触媒表面積の量を増加させることができる。
【0155】
イオン伝導層260は、2つまたは3つの副層、すなわち、ポリマー電解質膜(PEM)265、任意選択的なカソードバッファ層225、および/または任意選択的なアノードバッファ層245を含んでよい。イオン伝導層の1つまたは複数の層が多孔質であってもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの層が非多孔質であるため、カソードの反応物および生成物は、ガスおよび/または液体の移送によってアノードに通過することができず、その逆も同様である。特定の実施形態では、PEM層265が非多孔質である。アノードバッファ層およびカソードバッファ層の特性の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。特定の実施形態では、イオン伝導層が、単一の層または2つの副層のみを含む。
【0156】
図3は、カソード305で水およびCO(例えば、加湿または乾燥したガス状CO)を反応物として受け取り、且つ、COを生成物として排出するように構成された、CO電解槽303を示している。電解槽303はまた、アノード307で水を反応物として受け取り、且つ、ガス状酸素を排出するように構成される。電解槽303は、カソード305に隣接するアニオン伝導性ポリマー309と、アノード307に隣接するカチオン伝導性ポリマー311(プロトン交換膜として示される)とを有する両極性層を含む。
【0157】
電解槽303の両極性界面313の拡大挿入図に示されているように、カソード305は、炭素担持粒子317と、担持粒子上に担持された金属ナノ粒子319とを電子的に伝導するアニオン交換ポリマー(この例では、両極性層にあるものと同じアニオン伝導性ポリマー309)を含む。COおよび水は、細孔321などの細孔を介して移送され、金属ナノ粒子319に到達し、そこで、この場合は、水酸化物イオンと反応して、炭酸水素イオンおよび還元反応生成物(図示せず)を生成する。COは、アニオン交換ポリマー315内の移送によって金属ナノ粒子319に到達することもできる。
【0158】
水素イオンは、アノード307から、カチオン伝導性ポリマー311を通って、両極性界面313に到達するまで移送され、そこで、水素イオンのカソードへのさらなる移送がアニオン交換ポリマー309によって妨害される。界面313では、水素イオンは、炭酸水素イオンまたは炭酸イオンと反応して炭酸(HCO)を生成してよく、炭酸は分解してCOおよび水を生成してよい。本明細書で説明するように、結果として得られるCOは気相で提供されてよく、それを還元することができるカソード305に戻るMEA内の経路で提供される必要がある。カチオン伝導性ポリマー311は、炭酸水素イオンなどのアニオンがアノードに移送され、そこでプロトンと反応し、カソードでの還元反応に関与できないCOを放出し得るのを妨害する。
【0159】
図示のように、アニオン伝導性ポリマーを有するカソードバッファ層は、カソードおよびそのアニオン伝導性ポリマーと協調して機能して、カソードへのプロトンの移送を遮断してよい。カソード、アノード、カソードバッファ層、およびアノードバッファ層(存在する場合)で適切な伝導性タイプのイオン伝導性ポリマーを使用するMEAは、カチオンのカソードへの移送とアニオンのアノードへの移送とを妨害し得るが、カチオンおよびアニオンは依然として、MEAの内部領域、例えば、MEA層で接触する可能性がある。
【0160】
図3に示すように、炭酸水素イオンおよび/または炭酸イオンは、カソード層とアノード層との間で水素イオンと結合して炭酸を形成し、炭酸は分解してガス状COを形成してよい。MEAが時として剥離することが観察されているが、これは容易な出口経路を有しないこのガス状COの生成が原因であり得る。
【0161】
層間剥離の問題には、不活性フィラーおよび関連付けられる細孔を有するカソードバッファ層を使用することによって対処することができる。その有効性の考えられる説明の1つは、ガス状二酸化炭素が、それが還元され得るカソードに戻るための経路を、細孔が生成することである。いくつかの実施形態では、カソードバッファ層は多孔質であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1つの層は非多孔質である。これにより、層間剥離を防止しながら、カソード層とアノード層との間のガスおよび/またはバルク液体の通過を防止することができる。例えば、非多孔質層は、アノードからカソードへの水の直接通過を防止することができる。MEAにおける様々な層のポロシティは、本明細書の他の箇所でさらに説明される。
【0162】
[両極性MEAの例]
一例として、MEAは、還元触媒および第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒および第1のカチオン伝導性ポリマー(例えば、PFSAポリマー)を含むアノード層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含み、且つ、カソード層とアノード層との間に配置されてカソード層とアノード層とを伝導的に接続する、膜層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含み、且つ、カソード層と膜層との間に配置されてカソード層と膜層とを伝導的に接続する、カソードバッファ層とを含む。この例では、カソードバッファ層は、約1~90容量パーセントのポロシティを有することができるが、追加的または代替的に、任意の適切なポロシティ(例えば、ポロシティがないことを含む)を有することができる。他の例では、カソードバッファ層は、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%など)を有することができる。
【0163】
ポロシティがありすぎると、バッファ層のイオン伝導度が低下し得る。いくつかの実施形態では、ポロシティは20%以下であり、特定の実施形態では、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。これらの範囲のポロシティは、イオン伝導性を失うことなく、水および/またはCOの移動を可能にするのに十分であり得る。ポロシティは、以下でさらに説明するように測定されてよい。
【0164】
関連する例では、膜電極アセンブリは、第3のカチオン伝導性ポリマーを含み、且つ、膜層とアノード層との間に配置されて膜層とアノード層とを伝導的に接続する、アノードバッファ層を含むことができる。アノードバッファ層は、好ましくは、約1~90容量パーセントのポロシティを有するが、追加的または代替的に、任意の適切なポロシティ(例えば、ポロシティがないことを含む)を有することができる。ただし、他の構成および例では、アノードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。カソードバッファ層と同様に、いくつかの実施形態では、ポロシティが20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
【0165】
ある例では、アノードバッファ層は、アニオン交換ポリマーを有するカソード触媒層と、アニオン交換ポリマーを有するカソードバッファ層と、カチオン交換ポリマーを有する膜と、アニオン交換ポリマーを有するアノードバッファ層とを有するMEAにおいて使用されてよい。そのような構造では、アノードバッファ層が、膜/アノードバッファ層界面への水の移送を容易にするために多孔質であってよい。水はこの界面で分割されて、膜を通って移動するプロトンと、アノード触媒層に移動する水酸化物とを生成する。この構造の利点の1つは、塩基性条件でのみ安定している低コストの水酸化触媒(NiFeOなど)を使用できる可能性があることである。
【0166】
別の具体例では、膜電極アセンブリが、還元触媒および第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒および第1のカチオン伝導性ポリマーを含むアノード層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含み、且つ、カソード層とアノード層との間に配置されてカソード層とアノード層とを伝導的に接続する、膜層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含み、且つ、アノード層と膜層との間に配置されてアノード層と膜層とを伝導的に接続する、アノードバッファ層とを含む。
【0167】
アニオン交換ポリマー膜を含有するMEAと、カチオン交換ポリマーを含有するアノードバッファ層とを、CO還元に使用してよい。この場合は、水が、膜/アノードバッファ層の界面で形成される。アノードバッファ層の細孔は、水の除去を容易にし得る。この構造の1つの利点は、酸安定性(例えば、IrO)水酸化触媒の使用であり得る。
【0168】
関連する例では、膜電極アセンブリは、第3のアニオン伝導性ポリマーを含み、且つ、カソード層と膜層との間に配置されてカソード層と膜層とを伝導的に接続する、カソードバッファ層を含むことができる。第3のアニオン伝導性ポリマーは、第1および/または第2のアニオン伝導性ポリマーと同じであっても異なってもよい。カソードバッファ層は、好ましくは、約1~90容量パーセントのポロシティを有するが、追加的または代替的に、任意の適切なポロシティ(例えば、ポロシティがないことを含む)を有することができる。ただし、他の構成および例では、カソードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。いくつかの実施形態では、ポロシティは20%以下であり、特定の実施形態では、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
【0169】
ある例では、カソード触媒層は、Vulcan XC72R炭素に担持され、且つ、TM1(mTPN-1)アニオン交換ポリマー電解質(Orion製)と混合された、直径4nmのAuナノ粒子で構成される。層の厚さは~15μmであり、Au/(Au+C)=20重量%、触媒に対するTM1の質量比は0.32、質量負荷は1.4~1.6mg/cm2(合計Au+C)、推定ポロシティは0.56である。アニオン交換ポリマー層は、TM1およびPTFE粒子で構成される。PTFEの直径は約200nmである。TM1の分子量は30k~45kである。層の厚さは~15μmである。PTFEは約8%のポロシティをもたらす可能性がある。プロトン交換膜層は、パーフルオロスルホン酸ポリマー(例えば、Nafion117)で構成される。厚さは約125μmである。膜は、層を通じたガス(CO、CO、H)の著しい移動を防止する連続層を形成する。アノード触媒層は、厚さ10μmのIrナノ粒子またはIrOxナノ粒子(100~200nmの集合体)で構成される。
【0170】
[COx還元のためのアニオン交換膜のみのMEA]
いくつかの実施形態では、MEAは、カチオン伝導性ポリマー層を含有しない。そのような実施形態では、電解質はカチオン伝導性ポリマーではなく、アノードは、イオン伝導性ポリマーを含む場合、カチオン伝導性ポリマーを含有しない。例がここに提供される。
【0171】
AEMのみのMEAは、MEA全体でアニオンの伝導を可能にする。いずれのMEA層もカチオンに対して有意な伝導性を有しない実施形態では、水素イオンは、MEA内で制限された移動度を有する。いくつかの実装では、AEMのみの膜が、高pH環境(例えば、少なくとも約pH7)を提供し、カソードでの水素発生寄生反応を抑制することによって、COおよび/またはCOの還元を促進し得る。他のMEA設計と同様に、AEMのみのMEAは、イオン、特に水酸化物イオンなどのアニオンが、ポリマー電解質を通って移動することを可能にする。いくつかの実施形態では、pHがより低くてもよく、4以上のpHは、水素の発生を抑制するのに十分な高さであり得る。AEMのみのMEAは、電子が触媒層内の金属および炭素に移動し、且つ、金属および炭素を通過することも可能にする。実施形態では、アノード層、カソード層、および/またはPEMに細孔を有するため、AEMのみのMEAは、液体およびガスが細孔を通って移動することを可能にする。
【0172】
特定の実施形態では、AEMのみのMEAが、いずれかの側(カソードおよびアノード)に電極触媒層を有するアニオン交換ポリマー電解質膜を含む。いくつかの実施形態では、一方または両方の電極触媒層も、アニオン交換ポリマー電解質を含有する。
【0173】
特定の実施形態では、AEMのみのMEAは、カソードおよびアノード電極触媒層をガス拡散層などの多孔質伝導性担体上に堆積させて、ガス拡散電極(GDE)を形成し、ガス拡散電極間にアニオン交換膜を挟み込むことによって形成される。
【0174】
特定の実施形態では、AEMのみのMEAが、CO還元に使用される。アニオン交換ポリマー電解質の使用は、CO還元を不利にする低pH環境を回避する。さらに、AEMが使用される場合は、水がカソード触媒層から離れて移送され、それにより、セルのカソードにおける反応性ガスの移送を遮断し得る水の蓄積(フラッディング)が防止される。
【0175】
MEAでの水の移送は、拡散や電気浸透抗力など、様々なメカニズムを通じて発生する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCO電解槽の電流密度では、電気浸透抗力が支配的なメカニズムである。水は、イオンがポリマー電解質を通って移動するときに、イオンと共に引きずられる。Nafion膜などのカチオン交換膜の場合は、水の移送量は、膜の前処理/水和に依存するように十分に特徴付けられ、膜の前処理/水和に依存すると理解されている。プロトンは正から負の電位(アノードからカソード)に移動し、前処理に応じて、それぞれが2~4個の水分子を運ぶ。アニオン交換ポリマーでは、同じタイプの効果が発生する。ポリマー電解質を通って移動する水酸化物、炭酸水素塩、または炭酸イオンは、水分子を「引きずる」。アニオン交換MEAでは、イオンが負から正の電圧、つまりカソードからアノードに移動し、水分子を運び、その過程で水をカソードからアノードに移動させる。
【0176】
特定の実施形態では、AEMのみのMEAは、CO還元反応で使用される。CO還元反応とは異なり、CO還元は、アノードに移送されて有益な反応物を放出する可能性のある炭酸塩または炭酸水素塩のアニオンを生成しない。
【0177】
図4は、カソード触媒層403と、アノード触媒層405と、アニオン伝導性PEM407とを有するCO還元MEA401の構造例を示している。特定の実施形態では、カソード触媒層403は、炭素粒子などの、導電性基板上に担持されていないか、担持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装では、カソード触媒層403が、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。金属触媒粒子は、特に7を超えるpHで、CO還元に触媒作用を及ぼし得る。特定の実施形態では、アノード触媒層405が、炭素粒子などの、導電性基板上に担持されていないか、担持されている金属酸化物触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装では、アノード触媒層403が、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層405のための金属酸化物触媒粒子の例には、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化ニッケル鉄、酸化イリジウムルテニウム、および酸化白金などが含まれる。アニオン伝導性PEM407は、例えば、IonomrによるHNN5/HNN8、FumatechによるFumaSep、OrionによるTM1、W7energyによるPAP-TP、Dioxide MaterialsによるSustainionなどの様々なアニオン伝導性ポリマーのいずれかを含んでよい。1.1~2.6の範囲のイオン交換容量(IEC)、0~14の動作pH範囲、いくつかの有機溶媒への耐えられる溶解度、適度な熱安定性および機械的安定性、優れたイオン伝導性/ASR、および許容可能な吸水/膨潤比を有するこれらおよび他のアニオン伝導性ポリマーが使用されてよい。ポリマーは、使用前に、ハロゲンアニオンの代わりに、特定のアニオンに化学的に交換されてよい。
【0178】
図4に示されるように、COガスなどのCOが、カソード触媒層403に提供されてよい。特定の実施形態では、COは、ガス拡散電極を介して提供されてよい。カソード触媒層403では、COが反応して、一般にCとして表示される還元生成物を生成する。カソード触媒層403で生成されるアニオンは、水酸化物、炭酸塩、および/または炭酸水素塩を含んでよい。これらは、アノード触媒層405に拡散するか、泳動するか、そうでなければ移動してよい。アノード触媒層405では、水の酸化などの酸化反応が起こって、二原子酸素イオンおよび水素イオンが生成され得る。いくつかの用途では、水素イオンが、水酸化物、炭酸塩、および/または炭酸水素塩と反応して、水、炭酸、および/またはCOが生成されてよい。界面が少ないほど、抵抗は低くなる。いくつかの実施形態では、高度に塩基性の環境が、C2およびC3炭化水素合成のために維持される。
【0179】
図5は、カソード触媒層503と、アノード触媒層505と、アニオン伝導性PEM507とを有するCO還元MEA501の構造例を示している。全体として、MEA501の構造は、図4のMEA401の構造と同様であり得る。ただし、カソード触媒は、CO還元反応を促進するように選択されてよく、これは、COおよびCO還元の実施形態では異なる還元触媒が使用されることを意味する。
【0180】
いくつかの実施形態では、AEMのみのMEAは、CO還元にとって有利であり得る。AEM材料の吸水数は、触媒界面での水分の調整に役立つように選択でき、それによって触媒へのCOの利用可能性が向上する。このため、AEMのみの膜は、CO還元に有利であり得る。両極性膜は、塩基性のアノード液媒体でのCOの溶解およびクロスオーバーに対する耐性がより優れているため、COの還元に有利であり得る。
【0181】
様々な実施形態において、カソード触媒層503は、炭素粒子などの、導電性基板上に担持されていないか、担持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装では、カソード触媒層503が、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。特定の実施形態では、アノード触媒層505が、炭素粒子などの、導電性基板上に担持されていないか、担持されている金属酸化物触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。いくつかの実装では、アノード触媒層503が、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層505の金属酸化物触媒粒子の例には、図4のアノード触媒層405について特定されたものが含まれてよい。アニオン伝導性PEM507は、例えば、図4のPEM407について特定されたものなどの様々なアニオン伝導性ポリマーのいずれかを含んでよい。
【0182】
図5に示されるように、COガスは、カソード触媒層503に提供されてよい。特定の実施形態では、COは、ガス拡散電極を介して提供されてよい。カソード触媒層503では、COが反応して、一般にCとして表示される還元生成物を生成する。
【0183】
カソード触媒層503で生成されるアニオンは、水酸化物イオンを含んでよい。これらは、アノード触媒層505に拡散するか、泳動するか、そうでなければ移動してよい。アノード触媒層505では、水の酸化などの酸化反応が起こって、二原子酸素イオンおよび水素イオンが生成され得る。いくつかの用途では、水素イオンが水酸化物イオンと反応して、水を生成してよい。
【0184】
MEA501の一般的な構成はMEA401の構成と同様であるが、これらのMEAには一定の違いがある。第1に、MEAはCO還元のためにより湿っている可能性があり、触媒表面がより多くの-Hを有することを助ける。また、CO還元の場合は、図4に示すように、相当量のCOが溶解されてから、AEMのみのMEAのアノードに移送され得る。CO還元の場合は、著しいCOガスのクロスオーバーが発生する可能性は低くなる。この場合は、反応環境が非常に塩基性であり得る。触媒を含むMEA材料は、高pH環境で良好な安定性を有するように選択してよい。いくつかの実施形態では、CO還元よりもCO還元のために、より薄い膜を使用してよい。
【0185】
[AEMのみのMEAの例]
1.銅金属(USRN40nm厚Cu、~0.05mg/cm)を、電子ビーム堆積によって多孔質カーボンシート(Sigracet39BCガス拡散層)上に堆積させた。Ir金属ナノ粒子を、ドロップキャスティングを介して3mg/cmの負荷で多孔質チタンシート上に堆積させた。Ionomrからのアニオン交換膜(25~50μm、80mS/cmのOH-伝導率、2~3mS/cmのHCO 伝導率、33~37%の吸水率)を、多孔質のカーボンシートとチタンシートとの間に挟み込んで、電極触媒層が膜に面するようにした。
2.Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合された、Sigma Aldrich 80nm球状Cuナノ粒子、上記のように設定された、触媒に対するFAA-3の質量比0.10。
【0186】
MEAの様々な特徴および例が記載されている、2017年11月9日に公開された米国特許出願公開第US2017/0321334号および2019年7月25日に公開された米国特許出願公開第20190226103号の全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で参照される全ての刊行物は、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により組み込まれる。
【0187】
[カソード触媒層-一般的な構造]
上記のように、カソード層またはカソード触媒層とも呼ばれるMEAのカソードは、COx変換を容易にする。MEAのカソードは、CO還元反応用の触媒を含有する多孔質層である。
【0188】
いくつかの実施形態では、カソード触媒層は、還元触媒粒子と、還元触媒粒子の担体を提供する電子伝導性担持粒子と、カソードイオン伝導性ポリマーとのブレンドを含有する。いくつかの実施形態では、還元触媒粒子は、担体なしでカソードイオン伝導性ポリマーとブレンドされる。
【0189】
還元触媒粒子に使用できる材料の例には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、およびHgなどの遷移金属、およびそれらの組み合わせ、並びに/または他の任意の適切な材料が含まれるが、これらに限定されない。他の触媒材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、およびSn、Si、Ga、Pb、Al、Tl、Sb、Te、Bi、Sm、Tb、Ce、Nd、およびInなどの遷移後金属、もしくはそれらの組み合わせ、および/または他の任意の適切な触媒材料を含むことができる。触媒の選択は、CRRのカソードで実行される特定の反応に依存する。
【0190】
触媒は、サイズが約1~100nmの範囲のナノ粒子、またはサイズが約0.2~10nmの範囲の粒子、またはサイズ範囲が約1~1000nmまたは他の任意の適切な範囲の粒子の形態であり得る。ナノ粒子およびより大きな粒子に加えて、フィルムおよびナノ構造化表面を使用してよい。
【0191】
使用される場合、カソード内の導電性担持粒子は、様々な形態の炭素粒子であり得る。他の考えられる伝導性担持粒子は、ホウ素ドープダイヤモンドまたはフッ素ドープ酸化スズを含む。一構成では、伝導性担持粒子がバルカン炭素である。伝導性担持粒子はナノ粒子であり得る。伝導性担持粒子のサイズ範囲は、約20nmから1000nmの間、または他の任意の適切な範囲である。これは、伝導性担持粒子が、CRRの動作時にカソード中に存在する化学物質と相溶性があり、還元的に安定しており、且つ、高い水素生成過電圧を有しており、その結果、いかなる電気化学反応にも関与しないといった場合に、特に有用である。
【0192】
Au/Cなどの複合触媒の場合は、金属ナノ粒子サイズの例は、約2nm~20nmの範囲であってよく、炭素サイズは、担持材料として約20~200nmであってよい。AgまたはCuなどの純金属触媒の場合は、粒子の結晶粒径は、2nm~500nmの広い範囲を有する。凝集はさらに大きく、マイクロメートルの範囲になり得る。
【0193】
一般に、そのような伝導性担持粒子は還元触媒粒子より大きく、各伝導性担持粒子は多くの還元触媒粒子を担持することができる。図6は、炭素粒子などの触媒担持粒子610に担持された2つの異なる種類の触媒の考えられる形態を示す概略図である。第1のタイプの触媒粒子630および第2のタイプの第2の触媒粒子650は、触媒担持粒子610に付着している。様々な配置において、触媒担持粒子610に付着しているのは、1つのタイプの触媒粒子のみ、または2つより多いタイプの触媒粒子である。
【0194】
2つのタイプの触媒を使用することは、特定の実施形態では有用であり得る。例えば、1つの触媒が1つの反応(例えば、CO→CO)に適していて、2番目の触媒が別の反応(例えば、CO→CH)に適している場合がある。総合的に、触媒層は、COからCHへの変換を実行するが、反応の様々な段階が様々な触媒で行われる。
【0195】
電子伝導性担体は、チューブ(例えば、カーボンナノチューブ)およびシート(例えば、グラフェン)を含む、粒子以外の形態であってもよい。体積に対する表面積が大きい構造は、触媒粒子が付着するための部位を提供するのに有用である。
【0196】
還元触媒粒子および電子伝導性担持粒子に加えて、カソード触媒層は、イオン伝導性ポリマーを含んでよい。カソード内のカソードイオン伝導性ポリマーの量を選択することには、トレードオフがある。十分なイオン伝導性を提供するのに十分なカソードイオン伝導性ポリマーを含めることが重要な場合がある。しかし、反応物および生成物がカソードを通じて容易に移動できるように、また反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するために、カソードが多孔質であることも重要である。様々な配置において、カソードイオン伝導性ポリマーは、カソード層中の材料の30~70重量%、20~80重量%、もしくは10~90重量%の範囲、または他の任意の適切な範囲のどこかを構成する。カソード内のイオン伝導性ポリマーの重量%は、CO還元のための最高の電流密度を与える、カソード層のポロシティおよびイオン伝導性をもたらすように選択される。いくつかの実施形態では、カソード内のイオン伝導性ポリマーの重量%は、20~60重量%または20~50重量%であってよい。カソード触媒層の厚さの例は、約80nm~300μmの範囲である。
【0197】
還元触媒粒子、カソードイオン伝導性ポリマー、および電子伝導性担体(存在する場合)に加えて、カソード触媒層は、PTFEなどの他の添加剤を含んでよい。
【0198】
ポリマー対触媒の質量比に加えて、触媒層は、質量負荷(mg/cm)およびポロシティによって特徴付けられてよい。ポロシティは、様々な方法によって決定し得る。1つの方法では、各構成要素(例えば、触媒、担体、およびポリマー)の負荷にそれぞれの密度を乗算する。これらを合計して、構成要素が材料に占める厚さを決定する。次に、これを既知の総厚さで割って、材料で満たされている層の割合を取得する。次に、結果として得られる割合を1から引いて、空気で満たされていると想定される層の割合、つまりポロシティを取得する。水銀ポロシメトリーまたはTEM画像の画像処理などの方法を使用してもよい。
【0199】
CO、メタン、およびエチレン/エタノールを生成するためのカソード触媒層の例を以下に示す。
・CO生成:Vulcan XC72Rカーボンに担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合された直径4nmのAuナノ粒子。層の厚さは約15μm、Au/(Au+C)=30%、触媒に対するTM1の質量比は0.32、質量負荷は1.4~1.6mg/cm、推定ポロシティは0.47。
・メタン生成:Vulcan XC72Rカーボンに担持され、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合された20~30nmサイズのCuナノ粒子。触媒に対するFAA-3の質量比は0.18。1~100μg/cmのより広い範囲内で、推定Cuナノ粒子負荷は~7.1μg/cm
・エチレン/エタノール生成:Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合された25~80nmサイズのCuナノ粒子。触媒に対するFAA-3の質量比は0.10。純粋なAEMの場合はSigracet39BC GDE上に、またはMEA電極アセンブリ上に堆積する。推定Cuナノ粒子負荷は270μg/cm
【0200】
カソード触媒層の構成要素の機能、材料、および構造を以下でさらに説明する。
【0201】
[水管理(カソード触媒層)]
カソード触媒層は、水の移動を容易にして、水がカソード触媒層に閉じ込められるのを防止することができる。閉じ込められた水は、触媒へのCOのアクセスを妨害し得る、および/またはカソード触媒層からの反応生成物の移動を妨害し得る。
【0202】
水管理の課題は、多くの点でCRRに固有のものである。例えば、PEM燃料電池の酸素電極と比較して、CRRははるかに低いガス流量を使用する。気相水の除去は、体積ガス流量によって決定されるため、CRRで実行される気相水の除去ははるかに少なくなる。CRRは、燃料電池より高い圧力(例えば、100psi~450psi)で動作してもよく、より高い圧力では、同じモル流量により、体積流量が少なくなり、気相水の除去が少なくなる。その結果、CRRのMEA内に除去されるべき液体の水が存在する。いくつかのMEAの場合は、気相水を除去する能力は、燃料電池に存在しない温度制限によってさらに制限される。例えば、COからCOへの還元は、約50℃で実行されてよく、エチレンおよびメタンの生成は20℃~25℃で実行されてよい。これは、燃料電池の通常の動作温度である80℃~120℃と比較される。その結果、除去する液相水が多くなる。
【0203】
水を除去するカソード触媒層の能力に影響を与える特性は、ポロシティと、細孔サイズと、細孔サイズの分布と、疎水性と、イオン伝導性ポリマー、金属触媒粒子、および電子伝導性担体の相対量と、層の厚さと、層全体にわたる触媒の分布と、層全体および触媒周辺のイオン伝導性ポリマーの分布とを含む。
【0204】
多孔質層は、水の出口経路を可能にする。いくつかの実施形態では、カソード触媒層は、1nm~100nmのサイズを有する細孔と、少なくとも1ミクロンのサイズを有する細孔とを含む細孔サイズ分布を有する。このサイズ分布は、水の除去に役立ち得る。多孔質構造は、炭素担持材料内の細孔、積み重ねられた球状カーボンナノ粒子間のスタッキング細孔、凝集した炭素球の間の二次スタッキング細孔(マイクロメートルスケール)、または、同様に数百nm~マイクロメートルの範囲の不規則な細孔を生成する、不活性フィラー(例えば、PTFE)とカーボンとの間の界面に多孔質が導入された不活性フィラーのうちの1つまたは複数によって形成することができる。
【0205】
カソード触媒層は、水管理に寄与する厚さを有してよい。より厚い層を使用することにより、触媒、ひいては反応をより大きな体積で分散させることができる。これにより、配水が広がり、管理が容易になる。
【0206】
非極性の疎水性骨格を有するイオン伝導性ポリマーを、カソード触媒層で使用してよい。いくつかの実施形態では、カソード触媒層が、イオン伝導性ポリマーに加えて、PTFEなどの疎水性ポリマーを含んでよい。いくつかの実施形態では、イオン伝導性ポリマーは、疎水性ポリマーも含むコポリマーの構成要素であってよい。
【0207】
[ガス移送(カソード触媒層)]
カソード触媒層は、ガス移送用に構造化されてよい。具体的には、COは触媒に移送され、気相反応生成物(例えば、CO、エチレン、メタンなど)は、触媒層から移送される。
【0208】
ガス移送に関連付けられる特定の課題は、CRRに固有のものである。ガスは、カソード触媒層の内外に移送される。すなわち、COは内に移送され、CO、エチレン、およびメタンなどの生成物は外に移送される。PEM燃料電池では、ガス(OまたはH)が内に移送されるが、外には何も出ないか、生成水が出る。また、PEM水電解槽では、水がOガス生成物およびHガス生成物との反応物である。
【0209】
反応器を通る圧力、温度、および流量を含む動作条件は、ガス移送に影響を及ぼす。ガス移送に影響を与えるカソード触媒層の特性は、ポロシティと、細孔サイズおよび分布と、層の厚さと、アイオノマー分布とを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、アイオノマーと触媒との接触が最小限に抑えられる。例えば、炭素担体を使用する実施形態では、アイオノマーが、触媒との接触を最小限に抑えながら、炭素の表面に沿って連続的なネットワークを形成してよい。アイオノマー、担体、および触媒は、アイオノマーが触媒表面よりも担体表面に対してより高い親和性を有するように設計されてよい。これは、アイオノマーが触媒との間でイオンを伝導できるようにしながら、アイオノマーによって遮断されることなく、触媒との間のガス移送を容易にすることができる。
【0211】
[アイオノマー(カソード触媒層)]
アイオノマーは、触媒層の粒子を一緒に保持することと、カソード触媒層を通るイオンの移動を可能にすることとを含むいくつかの機能を有してよい。場合によっては、アイオノマーと触媒表面との相互作用が、CO還元に有利な環境を作り出し、所望の生成物に対する選択性を高めてよい、および/または反応に必要な電圧を減少させてよい。アイオノマーは、カソード触媒層を通るイオンの移動を可能にするイオン伝導性ポリマーであることが重要である。例えば、水酸化物、炭酸水素塩、および炭酸イオンは、CO還元が発生する触媒表面から離れて移動する。以下の説明では、カソード触媒層のアイオノマーが、第1のイオン伝導性ポリマーと呼ばれ得る。
【0212】
第1のイオン伝導性ポリマーは、アニオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含むことができる。これは、プロトン伝導体と比較してpHを上げることから、有利な場合がある。
【0213】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、可動性の負帯電イオンを移送するように構成された1つまたは複数の共有結合した正帯電官能基を含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、アミノ化テトラメチルポリフェニレン、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)系の第四級アンモニウムポリマー、四級化ポリスルホン)、それらのブレンド、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群から選択され得る。第1のイオン伝導性ポリマーは、炭酸水素塩または水酸化物の塩を可溶化するように構成され得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオン-アニオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオンおよびアニオンを移送できるポリエーテルと、カチオンおよびアニオンを移送できるポリエステルとからなる群から選択され得る。第1のイオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、およびポリウレタンからなる群から選択され得る。
【0215】
カチオン-アニオン伝導体は(純粋なカチオン伝導体と比較して)pHを上昇させる。さらに、いくつかの実施形態では、アニオン伝導性ポリマーとカチオン伝導性ポリマーとの2D界面ではなく、より大きな体積で酸塩基の再結合を促進するために、カチオン-アニオン伝導体を使用することが有利な場合がある。これにより、水およびCOの生成、熱の発生を広げることができ、酸塩基反応に対する障壁を減少させることによって、潜在的に膜の抵抗を下げることができる。これらは全て、生成物の蓄積、熱を回避する手助けをするのに有利である場合があり、MEAでの抵抗損失を低下させてセル電圧を下げるのに有利である場合がある。
【0216】
典型的なアニオン伝導性ポリマーは、共有結合した正帯電官能基が付加されたポリマー骨格を有する。いくつかの実施形態では、これらは正帯電窒素基を含んでよい。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格は、上記のように非極性である。ポリマーは、任意の適切な分子量、例えば、25,000g/mol~150,000g/molであってよいが、この範囲外のポリマーが使用され得ることが解るであろう。
【0217】
CRRのイオン伝導性ポリマーの特定の課題は、COがポリマー電解質を溶解または可溶化することで、その機械的安定性を低下させ、膨潤しやすくし、ポリマーがより自由に移動できるようにし得ることを含む。これにより、触媒層全体とポリマー電解質膜の機械的安定性が低下する。いくつかの実施形態では、CO可塑化の影響を受けにくいポリマーが使用される。また、水電解槽および燃料電池の場合とは異なり、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの伝導は、CO還元の重要なパラメータである。
【0218】
水素結合を形成できるヒドロキシル基およびカルボキシル基などの極性官能基の導入により、疑似架橋ネットワークが形成される。エチレングリコールおよびアルミニウムアセチルアセトナートのような架橋剤を添加して、アニオン交換ポリマー層を強化し、ポリマーのCO可塑化を抑制することができる。ポリジメチルシロキサン共重合体のような添加剤も、CO可塑化を緩和するのに役立ち得る。
【0219】
様々な実施形態によると、イオン伝導性ポリマーは、少なくとも12mS/cmの炭酸水素イオン伝導性を有してよく、80℃以下の温度で化学的および機械的に安定しており、メタノール、エタノール、およびイソプロポナールなどの、製造中に使用される有機溶媒に溶けやすい。イオン伝導性ポリマーは、CO還元生成物の存在下で安定している(化学的に安定しており、安定した溶解度を有する)。イオン伝導性ポリマーは、そのイオン交換容量、いくつかの実施形態では2.1mmol/g~2.6mmol/gの範囲であり得る、イオン交換に関与する活性部位または官能基の合計によって特徴付けられてもよい。
【0220】
上記の表には、アニオン伝導性ポリマーの例がクラスAイオン伝導性ポリマーとして示されている。アニオン伝導性ポリマーの特定の例は、Orion mTPN1であり、m-トリフェニルフルオロアルキレンを骨格として有し、トリメチルアンモニウム(TMA+)をカチオン基として有する。化学構造を以下に示す。
【化1】
【0221】
さらなる例には、FumatechおよびIonomrによって製造されたアニオン交換膜が含まれる。Fumatech FAA-3アイオノマーはBr-形態で提供される。Ionomrによって製造されたポリベンズイミダゾールに基づくアニオン交換ポリマー/膜は、AF-1-HNN8-50-XとしてI-形態で提供される。
【0222】
受け取ったままのポリマーは、アニオン(例えば、I、Brなど)を炭酸水素塩と交換することによって調製されてよい。
【0223】
また、上記のように、特定の実施形態では、アイオノマーがカチオン-イオン伝導性ポリマーであってよい。上記の表には、例がクラスBイオン伝導性ポリマーとして示されている。
【0224】
[金属触媒(カソード触媒層)]
金属触媒は、COx還元反応に触媒作用を及ぼす。金属触媒は通常ナノ粒子であるが、いくつかの実施形態では、より大きな粒子、フィルム、およびナノ構造化表面を使用してよい。ナノ粒子の特定の形態は、より大きな活性を有する活性部位を露出および安定化させ得る。
【0225】
金属触媒は多くの場合、純粋な金属(例えば、Cu、Au、Ag)で構成されるが、特定の合金または他の二金属系は高い活性を有し、特定の反応に使用されてよい。触媒の選択は、所望の反応によって導かれてよい。例えば、COの生成にはAuを使用してよく、メタンおよびエチレンの生成にはCuを使用してよい。Agと、合金と、二金属系とを含む他の金属を使用してもよい。CO還元は、既知の触媒での水素発生および酸素発生など、他のよく知られた電気化学反応と比較して、高い過電圧を有する。少量の汚染物質は、CO変換用の触媒を毒する可能性がある。
【0226】
また、上記のように、Cu、Au、およびAgなどの金属触媒は、水素燃料電池で使用される白金などの触媒よりも開発が進んでいない。
【0227】
カソード触媒層の性能に影響を与える金属触媒の特性は、サイズ、サイズ分布、担持粒子上の被覆率の均一性、形状、負荷(金属の重量/金属の重量+炭素の重量、または触媒層の幾何学的面積あたりの粒子の質量として特徴付けられる)、表面積(触媒層の体積あたりの実際の金属触媒表面積)、純度、および合成からの被毒表面配位子の存在を含む。
【0228】
ナノ粒子は、例えば、Phanなどの「Role of Capping Agent in Wet Synthesis of Nanoparticles」、J.Phys.Chem.A2018、121、17、3213-3219と、Bakshiの「How Surfactants Control Crystal Growth of Nanomaterials」、Cryst.Growth Des.2016、16、2、1104-1133と、Morsyの「Role of Surfactants in Nanotechnology and Their Applications」、Int.J.Curr.Microbiol.App.Sci.2014、3、5、237-260とに記載されているものなどの任意の適切な方法によって合成されてよく、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0229】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、被毒表面配位子の存在なしで提供される。これは、アイオノマーを、ナノ結晶触媒の合成を指示するための配位子として使用することによって達成されてよい。金属ナノ触媒の表面は、イオン伝導性アイオノマーと直接接続されている。これにより、アイオノマーが金属と接触できるように触媒表面を処理する必要がなくなり、接触が改善される。
【0230】
いくつかの実施形態では、金属触媒は炭素担体上に配置されてよい。CO生成の場合は、例として、4~6nmのAu粒子サイズのVulcan XC-72Rカーボン上に担持されるPremetek20重量%Auと、5~7nmのAu粒子サイズのVulcan XC-72R上に担持される30%Au/Cとが含まれる。メタンの場合は、例として、20~30nmのCu粒子サイズのVulcan XC-72Rカーボン上に担持されたPremetek20重量%Cuが含まれる。いくつかの実施形態では、金属触媒が担持されていなくてもよい。エチレン生成の場合は、担持されていない金属触媒の例として、80nm粒子サイズのSigmaAldrichの担持されていないCuと、10nm~100nmの電子ビームまたはスパッタ堆積された薄いCu層とが含まれる。
【0231】
[担体(カソード触媒層)]
カソード触媒層の担体は、様々な機能を有してよい。カソード触媒層の担体は、金属ナノ粒子を安定化させてそれらが凝集するのを防止し、触媒層の体積全体に触媒部位を分散させて反応物の損失および生成物の形成を広げることができる。カソード触媒層の担体は、金属ナノ粒子への導電性経路を電子的に形成することもできる。例えば、炭素粒子は、接触する炭素粒子が導電性経路を提供するように一緒に充填される。粒子間のボイド空間は、ガスおよび液体が通過できる多孔質ネットワークを形成する。
【0232】
いくつかの実施形態では、燃料電池用に開発されたカーボン担体を使用することができる。多くの異なるタイプが開発されており、これらは、通常50nm~500nmのサイズであり、様々な形状(球、ナノチューブ、シート(例えば、グラフェン))、ポロシティ、体積あたりの表面積、電気伝導率、官能基(N-ドープ、O-ドープなど)で取得され得る。
【0233】
担体は疎水性であってよく、金属ナノ粒子に対する親和性を有してよい。
【0234】
使用できるカーボンブラックの例は次のとおりである。
・Vulcan XC-72R-密度256mg/cm2、30~50nm
・Ketjen Black-中空構造、密度100~120mg/cm2、30~50nm
・Printexカーボン、20~30nm
【0235】
[アノード触媒層]
アノード層またはアノード触媒層とも呼ばれるMEAのアノードは、酸化反応を促進する。MEAのアノードは、酸化反応用の触媒を含有する多孔質層である。反応の例は次のとおりである。
2HO→4H+4e+O(プロトン交換ポリマー電解質の酸性環境--両極性膜)、または、
4OH→4e+O+2HO(アニオン交換ポリマー電解質の塩基性環境)
【0236】
COを生成するための炭化水素、または塩素ガスを生成するための塩化物イオンなど、他の物質の酸化が実行されてもよい。
【0237】
いくつかの実施形態では、図2を参照すると、アノード240が、酸化触媒とアノードイオン伝導性ポリマーとのブレンドを含有する。アノードに供給される反応物とアノード触媒とに応じて、アノードでは様々な酸化反応が発生する。一構成では、酸化触媒は、Ir、Pt、Ni、Ru、Pd、Auの金属および酸化物とそれらの合金、IrRu、PtIr、Ni、NiFe、ステンレス鋼、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。酸化触媒は、炭素、ホウ素ドープダイヤモンド、およびチタンからなる群から選択される伝導性担持粒子をさらに含有することができる。
【0238】
酸化触媒は、構造化メッシュの形態であってもよいし、粒子の形態であってもよい。酸化触媒が粒子の形態である場合は、粒子は、電子伝導性担持粒子によって担持され得る。伝導性担持粒子はナノ粒子であり得る。これは、伝導性担持粒子が、CRRの動作時にアノード240中に存在する化学物質と相溶性があり、且つ、酸化的に安定しており、その結果、いかなる電気化学反応にも関与しないといった場合に、特に有用である。これは、伝導性担持粒子が、アノードでの電圧および反応物を念頭に置いて選択される場合に、特に有用である。いくつかの配置では、伝導性担持粒子がチタンであり、高電圧に非常に適している。他の構成では、伝導性担持粒子が炭素であり、低電圧で最も有用であり得る。一般に、そのような伝導性担持粒子は酸化触媒粒子より大きく、各伝導性担持粒子は多くの酸化触媒粒子を担持することができる。そのような配置の例が図3に示され、カソード触媒層に関連して上述されている。
【0239】
一構成では、酸化触媒がイリジウム酸化ルテニウムである。酸化触媒に使用できる他の材料の例には、上記のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの金属触媒の多くは、特に反応条件下で酸化物の形態を取り得ることを理解されたい。
【0240】
いくつかの実施形態では、MEAは、酸化触媒と第2のイオン伝導性ポリマーとを含むアノード層を有する。第2のイオン伝導性ポリマーは、可動性の正帯電イオンを移送するように構成された、共有結合した負帯電官能基を含有する1つまたは複数のポリマーを含むことができる。第2のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、およびそれらのブレンドからなる群から選択され得る。カチオン伝導性ポリマーの例には、例えば、Nafion115、Nafion117、および/またはNafion211が含まれる。
【0241】
アノード内のイオン伝導性ポリマーの量を選択することにはトレードオフがある。十分なイオン伝導性を提供するのに十分なアノードイオン伝導性ポリマーを含めることが重要である。しかし、反応物および生成物が、アノードを容易に移動できるように、また反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するために、アノードが多孔質であることも重要である。様々な配置において、アノード中のイオン伝導性ポリマーは、層の約50重量%、または約5~20重量%、10~90重量%、20~80重量%、25~70重量%、または任意の適切な範囲を構成する。これは、アノード240が、可逆水素電極に対して約1.2Vを超える電圧などの高電圧に耐えることができる場合に、特に有用である。これは、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化し、且つ、ガスおよび液体の移送を容易にするためにアノード240が多孔質である場合に、特に有用である。
【0242】
金属触媒の一例では、Ir粒子またはIrOx粒子(100~200nm)およびNafionアイオノマーが、約10μmの厚さの多孔質層を形成する。金属触媒の負荷は約0.5~3g/cmである。
【0243】
いくつかの実施形態では、NiFeOxは塩基性反応に使用される。
【0244】
[PEM]
MEAは、アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置され、且つ、アノード触媒層およびカソード触媒層に伝導的に連結された、ポリマー電解質膜(PEM)を含む。図2を参照すると、ポリマー電解質膜265は、高いイオン伝導性(約1mS/cmを超える)を有し、機械的に安定している。機械的安定性は、高い引張強度、弾性率、破断点伸び、および引き裂き抵抗など、様々な方法で証明され得る。多くの市販の膜を、ポリマー電解質膜265に使用することができる。例には、様々なNafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。
【0245】
一構成では、PEMが、カチオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。第3のイオン伝導性ポリマーは、可動性の正帯電イオンを移送するように構成された、1つまたは複数の共有結合した負帯電官能基を含むことができる。第3のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、およびそれらのブレンドからなる群から選択され得る。
【0246】
[カソードバッファ層]
図2を参照すると、ポリマー電解質膜265は、それがカチオン伝導体であり、且つ、プロトンを伝導している場合に、CRRの動作中に高濃度のプロトンを含有し、一方、カソード220は、低濃度のプロトンが存在する場合に最もよく動作することに留意されたい。高濃度のプロトンから低濃度のプロトンへの遷移領域を提供するために、ポリマー電解質膜265とカソード220との間にカソードバッファ層225を含めることが有用であり得る。一構成では、カソードバッファ層225が、カソード220内のイオン伝導性ポリマーと同じ特性のうちの多くを有するイオン伝導性ポリマーである。カソードバッファ層225は、プロトン濃度が、高いプロトン濃度を有するポリマー電解質膜265から低いプロトン濃度を有するカソード220へ遷移するための領域を提供する。カソードバッファ層225内で、ポリマー電解質膜265からのプロトンが、カソード220からのアニオンに出会って、それらは互いに中和する。カソードバッファ層225は、ポリマー電解質膜265からの有害な数のプロトンがカソード220に到達してプロトン濃度を上昇させないことを確実にするのに役立つ。カソード220のプロトン濃度が高すぎる場合は、COx還元が起こらない。高いプロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲であると見なされ、低濃度は約0.01モル未満であると見なされる。
【0247】
カソードバッファ層225は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。カソードバッファ層225が複数のポリマーを含む場合は、複数のポリマーを一緒に混合するか、別々の隣接する層に配置することができる。カソードバッファ層225に使用できる材料の例には、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換膜材料、およびポリエチレンオキシド(PEO)などのポリエーテル系ポリマー、並びにそれらのブレンドが含まれるが、これらに限定されない。さらなる例は、カソード触媒層の説明において上述されている。
【0248】
カソードバッファ層の厚さは、プロトン濃度が低いためにCOx還元活性が高くなるのに十分であるように選択される。この十分性は、カソードバッファ層の材料によって異なる可能性がある。一般に、カソードバッファ層の厚さは、約200nmから100μmの間、300nmから75μmの間、500nmから50μmの間、または任意の適切な範囲である。
【0249】
いくつかの実施形態では、カソードバッファ層は、50μm未満、例えば、1~5μm、5~15μm、または10~25μmの間など、1~25μmの間である。この範囲の厚さのカソードバッファ層を使用することにより、セルの全体的な伝導率を維持しながら、カソード内のプロトン濃度を低減することができる。いくつかの実施形態では、超薄層(100nm~1μm、およびいくつかの実施形態では、サブミクロン)を使用してよい。また、上記のように、いくつかの実施形態では、MEAがカソードバッファ層を有しない。いくつかのそのような実施形態では、カソード触媒層中のアニオン伝導性ポリマーで十分である。カソードバッファ層の厚さは、PEMの厚さに対して特徴付けられてよい。
【0250】
カソードバッファ層とPEMとの界面で形成された水とCOとは、ポリマー層が接続するMEAを剥離する可能性がある。層間剥離の問題には、不活性フィラー粒子および関連付けられる細孔を有するカソードバッファ層を使用することによって対処することができる。その有効性の考えられる説明の1つは、ガス状二酸化炭素が、それが還元され得るカソードに戻るための経路を、細孔が生成することである。
【0251】
不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、およびアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、または任意の適切なサイズ範囲である。粒子は、一般に球形であってよい。
【0252】
PTFE(または他のフィラー)の量が多すぎると、イオン伝導度が低くなるまでポリマー電解質が希釈される。ポリマー電解質の量が多すぎると、ポロシティに役立たないまで、PTFEを希釈する。多くの実施形態では、ポリマー電解質/PTFEの質量比は、0.25~2であり、より具体的には、0.5~1である。ポリマー電解質/PTFE体積比(または、より一般的には、ポリマー電解質/不活性フィラー)は、0.25~3、0.5~2、0.75~1.5、または1.0~1.5であってよい。
【0253】
他の構成では、ポロシティは、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザアブレーションである。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。
【0254】
一構成では、カソードバッファ層は、0.01%~95%(例えば、重量、体積、質量などで、だいたいその間)のポロシティを有する。ただし、他の構成では、カソードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。いくつかの実施形態では、ポロシティは50%以下であり、例えば、0.1~50%、5~50%、20~50%、5~40%、10~40%、20~40%、または25%~40%である。いくつかの実施形態では、ポロシティは20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
【0255】
ポロシティは、満たされたスペース対空のスペースを計算するために、水銀ポロシメトリー、X線回折(SAXSまたはWAXS)、およびTEM画像の画像処理などの方法で、構成要素の質量負荷および厚さを使用することを含めて、触媒層に関連して上述したように測定されてよい。ポロシティは、MEAが完全に乾燥したときに測定される。なぜなら、材料は、動作中に水に露出されると様々な程度に膨潤するからである。
【0256】
カソードバッファ層を含むMEAの層のポロシティは、以下でさらに説明される。
【0257】
[アノードバッファ層]
いくつかのCRR反応では、炭酸水素塩がカソード220で生成される。カソード220とアノード240との間のどこかに炭酸水素塩の移送を遮断するポリマーがある場合は、炭酸水素塩がカソードから離れて移動するのを防止することが有用であり得る。炭酸水素塩は移動するときにいくらかのCOを取り込むため、カソードでの反応に利用できるCOの量が減少する可能性がある。一構成では、ポリマー電解質膜265が、炭酸水素塩の移送を遮断するポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。別の構成では、ポリマー電解質膜265とアノード240との間にアノードバッファ層245があり、これが炭酸水素塩の移送を遮断する。ポリマー電解質膜がアニオン伝導体であるか、炭酸水素塩の移送を遮断しない場合は、炭酸水素塩の移送を防止するためのさらなるアノードバッファ層が有用であり得る。炭酸水素塩の移送を遮断するために使用できる材料には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。もちろん、CRRに炭酸水素塩がない場合に、イオン交換層260に炭酸水素塩遮断機能を含めることは特に望ましくない。
【0258】
本発明の別の実施形態では、アノードバッファ層245は、プロトン濃度がポリマー電解質膜265とアノード240との間で遷移するための領域を提供する。ポリマー電解質膜265中のプロトン濃度は、その組成と、それが伝導しているイオンとの両方に依存する。例えば、プロトンを伝導するNafionポリマー電解質膜265は、高いプロトン濃度を有する。水酸化物を伝導するFumaSep FAA-3ポリマー電解質膜265は、低いプロトン濃度を有する。例えば、アノード240での所望のプロトン濃度がポリマー電解質膜265と3桁より大きく異なる場合は、アノードバッファ層245は、ポリマー電解質膜265のプロトン濃度からアノードの所望のプロトン濃度への遷移をもたらすのに有用であり得る。アノードバッファ層245は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。アノードバッファ層245が複数のポリマーを含む場合は、複数のポリマーを一緒に混合するか、別々の隣接する層に配置することができる。pH遷移のための領域を提供するのに有用であり得る材料には、Nafion、FumaSep FAA-3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換ポリマー、およびポリエチレンオキシド(PEO)などのポリエーテル系ポリマー、それらのブレンド、並びに/または他の任意の適切な材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0259】
高いプロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲であると見なされ、低濃度は約0.01モル未満であると見なされる。イオン伝導性ポリマーは、伝導するイオンのタイプに基づいて、様々なクラスに分類され得る。これについては、上記で詳しく説明された。上記の表4に記載されているイオン伝導性ポリマーには3つのクラスがある。本発明の一実施形態では、カソード220と、アノード240と、ポリマー電解質膜265と、カソードバッファ層225と、アノードバッファ層245とにおけるイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも1つは、他のもののうちの少なくとも1つとは異なるクラスのものである。
【0260】
[層のポロシティ]
カソード220、カソードバッファ層225、アノード240、およびアノードバッファ層245といった層のうちのいくつかまたは全てが多孔質である場合は、それは有用であり得る。いくつかの配置では、ポロシティは、不活性フィラー粒子をこれらの層のポリマーと組み合わせることによって達成される。不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、およびアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、または任意の適切なサイズ範囲である。他の構成では、ポロシティは、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザアブレーションである。レーザアブレーションは、追加的または代替的に、表面下アブレーションによって層のポロシティを達成することができる。表面下アブレーションは、層内のある点にビームを集束させ、それによってその点の近くの層材料を気化させると、層内にボイドを形成することができる。このプロセスを繰り返して、層全体にボイドを形成し、それによって層にポロシティを達成することができる。ボイドの体積は、好ましくは、レーザ出力によって決定される(例えば、より高いレーザ出力は、より大きなボイド体積に対応する)が、追加的または代替的に、ビームの焦点サイズ、または他の任意の適切なレーザパラメータによって決定され得る。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。ポロシティは、層内に任意の適切な分布(例えば、均一、層を通じて増加するポロシティ勾配、ランダムなポロシティ勾配、層を通じて減少するポロシティ勾配、周期的なポロシティなど)を有することができる。
【0261】
上記の例および他の例並びに変形例のポロシティ(例えば、カソードバッファ層、アノードバッファ層、膜層、カソード層、アノード層、他の適切な層などのポロシティ)は、好ましくは均一な分布を有するが、追加的または代替的に任意の適切な分布(例えば、ランダム化された分布、層を通じてまたは層に渡って増加する細孔サイズの勾配、層を通じてまたは層に渡って減少する細孔サイズの勾配など)を有することができる。ポロシティは、不活性フィラー粒子(例えば、ダイヤモンド粒子、ホウ素ドープダイヤモンド粒子、ポリフッ化ビニリデン/PVDF粒子、ポリテトラフルオロエチレン/PTFE粒子など)などの任意の適切なメカニズムと、ポリマー層内に実質的に非反応性の領域を形成するための他の任意の適切なメカニズムとによって形成され得る。不活性フィラー粒子は、最小で約10ナノメートルおよび最大で約200ナノメートルなどの任意の適切なサイズ、および/または他の任意の適切な寸法または寸法の分布を有することができる。
【0262】
上記のように、カソードバッファ層は、好ましくは、約1~90容量パーセントのポロシティを有するが、追加的または代替的に、任意の適切なポロシティ(例えば、ポロシティがないことを含む)を有することができる。ただし、他の構成および例では、カソードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%など)を有することができる。いくつかの実施形態では、ポロシティは20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、または5~10%である。
【0263】
いくつかの実施形態では、カソードバッファ層は多孔質であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1つの層は非多孔質である。これにより、層間剥離を防止しながら、カソード層とアノード層との間のガスおよび/またはバルク液体の通過を防止することができる。例えば、非多孔質層は、アノードからカソードへの水の直接通過を防止することができる。
【0264】
[MEA製造]
CO還元のためのMEAは、様々な技術を使用して製造され得る。様々な実施形態において、MEA製造は複数の段階を使用する。製造プロセスのパラメータのわずかな違いが性能に大きな違いをもたらす可能性がある。
【0265】
特定の実施形態では、MEA製造は、ポリマー電解質膜(例えば、Nafion PEM)層を使用し、カソード上にアニオン交換ポリマー電解質層およびカソード触媒層を堆積させるか他の方法で形成し、アノード上にアノード触媒層を堆積させるか他の方法で形成する。別のルートは、多孔質ガス拡散層(例えば、カソード用の炭素またはアノード用のチタン)上に触媒層を製造し、触媒含有多孔質層間に膜(アニオン交換層を含んでよい)を挟み込むことである。特定の実施形態では、触媒層は、固体触媒および担持粒子とポリマー電解質とのインクを溶媒中に分散させることによって製造される。インクは、様々な方法でポリマー電解質膜またはGDLに塗布され得る。その後、溶媒は蒸発し、多孔質の固体触媒層が残る。
【0266】
厚さおよび均一性を特徴付けるために、イメージング法を使用してよい。厚さは一貫性があり、制御可能である必要があり、均一性は滑らかで、可能な限り欠陥のない必要がある。
【0267】
MEAの個々の層を形成するために、様々な技術を使用してよい。一般に、これらの技術は、本明細書で言及されるようなPEM層またはGDLなどの層を基板上に形成する。そのような技術の例には、超音波噴霧堆積、ドクターブレード塗布、グラビア、スクリーン印刷、およびデカール転写が含まれる。
【0268】
アニオン交換ポリマーを使用する触媒インクは(特に特定のポリマーについて)十分に研究されておらず、燃料電池および電解槽で使用される典型的なNafion系インクと同じ溶液構造を有していない。十分に分散された、安定した触媒インクを形成するために必要な製剤および段階は知られていなかった。Nafionは、水性媒体での比較的容易な懸濁を可能にするミセルのような構造を形成すると考えられている。他のイオン伝導性ポリマー、特にいくつかのアニオン伝導性ポリマーは、そのような構造を形成しないため、懸濁液で提供することがより困難である。
【0269】
特定の実施形態では、触媒層インクは、金属または炭素触媒に担持された金属をイオン伝導性ポリマー(例えば、アニオン伝導性ポリマー)と混合し、超音波処理によって溶媒(アルコールなど)中に分散させることによって調製される。
【0270】
示されているように、特定の製造技術は、ドクターブレード塗布、スクリーン印刷、デカール転写、エレクトロスピニングなどを用いる。グラビアまたはマイクログラビアなどのロールツーロール技術は、高スループット処理に使用されてよい。
【0271】
[MEA後処理]
MEAが製造された後、性能を向上させるためにさらなる処理を使用することができる。性能改善のタイプの例には、寿命および電圧が含まれる。いくつかの実施形態では、後処理は、塩または特定の塩イオンをMEAに導入する。いくつかの実施形態では、後処理は、層間のよりよい接着を含む処理から生じる構造的変更を有するMEAを生成する。
【0272】
ホットプレス:MEAを圧力下で加熱して、層を結合する。ホットプレスは、層を「溶融」させて、層間剥離を防止するのに役立つ。
・時間:約2分から10分(MEAのみ)、1.5分~2分(MEA+ガス分配層(GDL))、「MEA+GDL」を少なくとも2回押して、安定したアセンブリを形成することができる。
・温度:約100℃から150℃。
・圧力:約300psi~600psi(3×3インチ(7.62×7.62センチメートル)1/2MEAの場合)であるが、MEAはGDLなしで約2500psiに耐えることができる。
水和:セルを組み立てる前に、MEAを水または水溶液に浸して、ポリマー電解質を濡らす。いくつかの実施形態では、水溶液は、本明細書に記載されるような塩溶液である。
【0273】
Nafionまたは他のポリマー電解質MEAを沸騰させる。これにより、ポリマー電解質のマクロ構造が恒久的に変化し、ポリマーマトリックス内の水の量が増加する。これにより、イオン伝導度が増加するが、水輸率も増加する。
【0274】
加熱して乾かす。これにより、水分含有量を減らすことができ、動作中にポリマー電解質を介して移送される水の量を減らすことができる。
【0275】
[MEA層間の安定化させた界面]
アニオン伝導性層(例えば、カソードバッファ層)とカチオン伝導性膜(例えば、PEM)との界面で形成された水およびCOは、ポリマー層が接続する位置で2つの層を分離または剥離させ得る。両極性界面での反応を図3図7に示す。
【0276】
さらに、COは、自らが失われる代わりにアノードに還元され得る、セルのカソードに戻るのが望ましいので、アニオン交換層(例えば、カソードバッファ層および/またはカソード層)内の経路(例えば、細孔)は、界面から水およびCOを除去して層間剥離を防止する方法と、COを、それが反応できるカソードに戻す方法とを両方提供する。
【0277】
図7に示されている構造は、図3に示されている構造と同様であるが、図7は、物質移送と、両極性界面でのCOおよび水の生成とに関連する追加情報を含む。例えば、水酸化物とCOとがカソード側で反応して炭酸水素イオンを生成し、炭酸水素イオンが両極性界面713に向かって移動するのが示されている。アノード側では、水の酸化によって生成された水素イオンが両極性界面713に向かって移動し、そこで炭酸水素イオンと反応して水およびCOを生成する。水およびCOはどちらも、両極性層に損傷を与えることなく脱出できるようにする必要がある。
【0278】
また、図7には、(a)カソードから界面713へのアニオンによる電気浸透抗力と、(b)アノードから界面713へのカチオンによる電気浸透抗力と、(c)拡散とを含む水移送経路が示されている。水は、アノードとカソードとで蒸発する。
【0279】
様々なMEA設計は、層間剥離に抵抗し、任意選択的に反応生成物が界面領域を離れる経路を提供する特徴を含む。いくつかの実施形態では、両極性界面は平坦である。しかし、いくつかの設計では、界面が、組成勾配および/またはインターロッキング構造を備えている。これらは、層間剥離に抵抗するように構成されたMEA設計の両極性界面を示す図8A図8B図8C、および図8Dを参照して、以下でさらに説明される。
【0280】
いくつかの実施形態では、界面は勾配を含む。勾配は、例えば、噴霧堆積中に2つのノズルを使用し、且つ、カチオン交換層の堆積中にポリマーの相対量を変化させたアニオン交換ポリマーを添加することによって形成されてよい。同様に、アニオン交換層の堆積中に、カチオン交換ポリマーが添加されてよい。例えば、図7を参照すると、勾配は、アニオン交換領域およびカチオン交換領域の実質的に全てまたは一部を通って広がってよく、その結果、アニオン交換領域は、主にカソードに隣接するアニオン交換ポリマーを有し、カチオン交換ポリマーの相対量は、カソードから界面713に向かって増加する。同様に、カソード交換領域は、主にアノードカソードに隣接するカチオン交換ポリマーを有し、アニオン交換ポリマーの相対量は、アノードから界面713に向かって増加する。いくつかの実施形態では、純粋なアニオン交換領域および純粋なカチオン交換領域があり、2つの間に勾配がある。
【0281】
いくつかの実施形態では、両極性膜の層は一緒に溶融される。これは、適切な溶媒を選択することによって達成されてよい。例えば、Nafionは水/エタノール混合物に少なくともわずかに溶ける。その混合物(またはカチオン伝導性ポリマーが溶けやすい別の溶媒)をアニオン伝導性ポリマーの溶媒として使用することにより、Nafionまたは他のカチオン伝導性ポリマーを少なくともわずかに溶解させ、界面中に溶融させることができる。いくつかの実施形態では、これは、薄い勾配、例えば、アニオン伝導性ポリマー層の厚さ内へ0.5~10%延びる勾配をもたらす。
【0282】
いくつかの実施形態では、界面はポリマーの混合物を含む。図8Aは、カチオン伝導性ポリマー821と、アニオン伝導性ポリマー819とが混合された両極性界面813を示している。図8Aの例では、アニオン伝導性ポリマー層809の一部と、カチオン伝導性ポリマー層811の一部とが示されている。アニオン伝導性ポリマー層809は、純粋なアニオン伝導性ポリマーであってよく、カチオン伝導性ポリマー層811は、純粋なカチオン交換ポリマーであってよい。カチオン伝導性ポリマー821は、カチオン伝導性ポリマー層811の場合と同じまたは異なるカチオン伝導性ポリマーであってよい。アニオン伝導性ポリマー819は、アニオン伝導性ポリマー層809の場合と同じまたは異なるアニオン伝導性ポリマーであってよい。
【0283】
いくつかの実施形態では、界面は、界面を物理的に補強する第3の材料を含む。例えば、図8Bは、界面813にまたがる材料830の例を示している。すなわち、材料830は、アニオン伝導性ポリマー層809およびカチオン伝導性ポリマー層811に部分的に存在する。このため、材料830は、これら2つの層を、層間剥離に抵抗する方式で結合してよい。一例では、材料830は、多孔質PTFEなどの多孔質不活性材料である。そのような界面は、例えば、カチオン伝導性ポリマーおよびアニオン伝導性ポリマーを、PTFEまたは同様の多孔質フィルムの反対側にキャストするか他の方法で塗布し、続いてホットプレスすることによって製造されてよい。
【0284】
図8Cは、カチオン伝導性ポリマー層811からアニオン伝導性ポリマー層809中に延びるカチオン伝導性ポリマーの突起840を有する両極性界面813を示している。これらの突起は、界面813を機械的に強化して、COおよび水が界面で生成されたときにそれが剥離しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、突起がアニオン伝導性ポリマー層809からカチオン伝導性ポリマー層811中に延びる。特定の実施形態では、突起が両方向に延びる。寸法の例は、面内寸法で10μm~1mmであるが、より小さな寸法(例えば、500nm~1μm)も考えられる。面外寸法は、例えば、それが延びるポリマー層の全厚の10~75%または10~50%であってよい。突起は、例えば、リソグラフィー技術などの任意の適切な技術によって、またはポリマーを、後に除去されるパターン化されたメッシュ中に噴霧することによって製造されてよい。突起の形成には、表面粗面化技術を使用してもよい。いくつかの実施形態では、突起は、ポリマー層をインターロックし、且つ、界面を機械的に強化するのを助けるために、異なる材料、例えば、金属から形成されてよい。
【0285】
図8Dは、カチオン伝導性ポリマー層811とアニオン伝導性ポリマー層809との間に配置されるか、カチオン伝導性ポリマー層811およびアニオン伝導性ポリマー層809のうちの1つまたは複数と混合される、第3の材料850を有する両極性界面813を示している。いくつかの実施形態では、例えば、第3の材料850は、以下でさらに説明する添加剤であり得る。いくつかの実施形態では、第3の材料850は、界面におけるアニオン伝導性アイオノマーとカチオン伝導性アイオノマーとのブレンドであり得る。例えば、Nafion 5重量%アイオノマーとOrion 2重量% mTPN1との混合物であり得る。いくつかの実施形態では、第3の材料は、一緒に混合されるか、別個の層として提供される、イオンの受容体および供与体を含んでよい。
【0286】
いくつかの実施形態では、界面は、酸塩基反応を促進し、且つ、層間剥離を防止するための添加剤を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、酸塩基再結合を、アニオン伝導性ポリマーとカチオン伝導性ポリマーとの2D界面においてだけでなく、より大きな体積に広げることを容易にし得る。これにより、水およびCOの生成、熱の発生が広がり、酸塩基反応に対する障壁を低くすることによって、膜の抵抗を下げることができる。これらの効果は、生成物の蓄積、熱を回避する手助けをするのに有利である場合があり、MEAでの抵抗損失を低下させてセル電圧を下げるのに有利である場合がある。さらに、熱およびガスの生成による界面での材料の劣化を回避するのに役立つ。
【0287】
酸塩基反応を促進する添加剤の例には、プロトン受容体およびアニオン受容体の両方である分子が含まれ、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム水酸化物を有する水酸化物含有イオン液体が具体例である。他のイオン液体が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、アニオン伝導性ポリマー層およびカチオン伝導性ポリマー層のアイオノマーとは異なるアイオノマーを使用してよい。例えば、Sustainionなどの比較的高い伝導率のアニオン交換材料を使用してよい。そのようなアニオン交換材料は、カソードバッファ層として使用するには十分に選択的ではないかもしれないが、界面で使用され得る。
【0288】
界面に存在し得る材料のさらなる例には、異なる荷電基(例えば、カチオン固定荷電基およびアニオン固定荷電基の両方)を有するブロックコポリマー、カチオン-アニオン伝導性ポリマー、樹脂材料、酸化グラフェンを含む酸化物などのイオン供与体、酸/塩基再結合用の触媒、アノードとカソードとから拡散するHとOとを反応させる触媒、水分解触媒、CO吸収材料、およびH吸収材料が含まれる。
【0289】
いくつかの実施形態では、架橋剤を添加して、両極性膜の2つのポリマーを共有結合的に架橋してよい。架橋基の例には、アイオノマー上に提供され得るキシレンが含まれる。他の架橋基も使用してよい。架橋剤を、例えば、カチオン伝導性ポリマー上に提供し、その上にアニオン伝導性ポリマーを噴霧堆積させ、続いて、加熱して架橋反応を誘発し、界面全体に架橋を導入してよい。
【0290】
いくつかの実施形態では、両極性膜のアニオン伝導性ポリマーおよびカチオン伝導性ポリマーは、異なる固定荷電基を有する同じ骨格を有する。一例として、Orionアイオノマーが、異なる固定荷電基と共に使用されてよい。アイオノマーはより適合性があり、剥離しにくい。
【0291】
上記の例では、界面813は、両極性膜の全体の厚さの1%~90%の厚さ、または、両極性膜の全体の厚さの5%~90%、もしくは10%~80%、もしくは20%~70%、もしくは30%~60%の厚さを有する三次元体積であってよい。いくつかの実施形態では、界面813は、1%~45%、5%~45%、5%~40%、または5%~30%を含む、全体の厚さの半分未満である。
【0292】
ホットプレスは、上記の両極性界面設計のいずれかを製造する際に使用されてよい。
【0293】
[MEA層の相対的なサイズ]
特定の実施形態では、ポリマー電解質膜と、隣接するカソードバッファ層または他のアニオン伝導性ポリマー層とは、MEAの製造および/または動作性能を容易にする相対的な厚さを有してよい。
【0294】
図9は、カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層(AEM)903と、カチオン伝導性ポリマー層(例えば、プロトン交換ポリマー層)またはアニオン伝導性ポリマー層であり得るポリマー電解質膜(PEM)905とを含む部分的なMEAの例を示している。この例では、PEM905は、カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層903、およびカチオン伝導性ポリマー層(例えば、プロトン交換ポリマー層)またはアニオン伝導性ポリマー層であり得るポリマー電解質膜(PEM)905よりも相対的に厚い。この例では、PEM905は、アニオン伝導性ポリマー層903よりも相対的に厚い。例えば、PEM905は、AEM903の約10~20マイクロメートルの厚さと比較して、120マイクロメートルであってよい。
【0295】
場合によっては、アニオン伝導性ポリマー層903で使用されるものなどのアニオン伝導性ポリマーは、PEM905で使用されるものなどのカチオン伝導性ポリマーよりも実質的に伝導性が低い。従って、MEAの全体的な抵抗を実質的に増加させることなくカソードバッファ層(例えば、アニオン伝導性ポリマー層903)の利点を提供するために、比較的薄いカソードバッファが使用される。ただし、カソードバッファ層が過度に薄くなると、MEAの製造中および他の状況での取り扱いが困難になる。従って、特定の実施形態では、薄いカソードバッファ層が、カチオン伝導性ポリマー層などの相対的により厚いPEM層の上に製造される。アニオン伝導性ポリマー層は、例えば、本明細書の他の箇所に記載されている製造技術のいずれかを使用して、PEM層上に製造されてよい。
【0296】
様々な実施形態において、ポリマー電解質膜層は、厚さが約20~200マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、ポリマー電解質膜層は、厚さが約60~120マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、厚さ約20~60マイクロメートルの薄いポリマー電解質膜層が使用される。いくつかの実施形態では、厚さ約120~200マイクロメートルの比較的厚いポリマー電解質層が使用される。
【0297】
いくつかの実施形態では、より薄いカソードバッファ層が、より薄いポリマー電解質膜と共に使用される。これにより、界面で形成されたCOが、アノードではなくカソードに戻る移動が容易になり得る。いくつかの実施形態では、より厚いカソードバッファ層が、より厚いポリマー電解質膜と共に使用される。これにより、いくつかの実施形態では、セル電圧の低下が生じ得る。
【0298】
カソードバッファ層の厚さに影響を与え得る要因には、アニオン伝導性ポリマーのイオン選択性と、アニオン伝導性ポリマーのポロシティと、ポリマー電解質膜をコーティングするアニオン伝導性ポリマーの適合性とが含まれる。
【0299】
多くのアニオン伝導性ポリマーは、アニオンに対して95%の選択性の範囲にあり、電流の約5%がカチオンである。アニオンに対して99%を超える選択性を有する、より高い選択性のアニオン伝導性ポリマーは、十分なバッファを提供しながら、厚さの大幅な減少の減少を可能にし得る。
【0300】
アニオン伝導性層の機械的強度もその厚さに影響を与える可能性があり、より強い層はより薄い層を可能にする。アニオン伝導性ポリマーのポロシティを減少させると、アニオン伝導性層の厚さが減少し得る。
【0301】
いくつかの実装では、ポリマー電解質膜に隣接するカソードバッファ層または他のアニオン伝導性ポリマー層は、厚さが約10~20マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、99%を超える選択性のポリマーを使用することにより、カソードバッファ層を2~10ミクロンに減らすことが可能になり得る。
【0302】
場合によっては、ポリマー電解質膜と隣接するアニオン伝導性ポリマー層との厚さの比率は、約3:1~90:1であり、上限の比率は高度に選択的なアニオン伝導性ポリマー層と共に使用される。いくつかの実施形態では、比率は、約2:1~13:1、約3:1~13.1、または約7:1~13.1である。
【0303】
特定の実施形態では、PEMが比較的薄いと、MEAの性能のいくつかの側面が改善される。図9を参照すると、例えば、ポリマー電解質膜905は、約50マイクロメートルの厚さを有してよく、一方、アニオン伝導性層は、約10~20マイクロメートルの厚さを有してよい。PEMが薄いと、AEM/PEM界面で生成された水の移動が促進されて、アノードに向かって移動する。セルのカソード側のガスの圧力は、約80~450psiであってよく、これにより界面の水がアノードに移動する。ただし、場合によっては、PEMが厚いと、水の大部分がAEMを通ってカソードに移動し、フラッディングが起こる可能性がある。薄いPEMを使用することにより、フラッディングを回避することができる。
【0304】
[CO還元反応器(CRR)]
図10は、本開示のある実施形態に係るCO還元反応器(CRR)1005の主要な構成要素を示す概略図である。CRR1005は、本明細書の他の箇所に記載されているもののいずれかなどの膜電極アセンブリ1000を有する。膜電極アセンブリ1000は、イオン交換層1060によって分離されたカソード1020とアノード1040とを有する。イオン交換層1060は副層を含んでよい。図示の実施形態は、カソードバッファ層1025、ポリマー電解質膜1065、および任意選択的なアノードバッファ層1045という3つの副層を有する。さらに、CRR1005は、カソード1020に隣接するカソード担持構造1022と、アノード1040に隣接するアノード担持構造1042とを有する。
【0305】
カソード担持構造1022は、電圧を印加することができる、例えば、グラファイトで製造されるカソード極性プレート1024を有する。カソード極性プレート1024の内面に切り込まれた蛇行チャネルなどの流れ場チャネルが存在し得る。カソード極性プレート1024の内面に隣接するカソードガス拡散層1026もある。いくつかの構成では、複数のカソードガス拡散層(図示せず)がある。カソードガス拡散層1026は、膜電極アセンブリ1000に出入りするガスの流れを促進する。カソードガス拡散層1026の例には、炭素微孔質層を有するカーボン紙がある。
【0306】
アノード担持構造1042は、電圧を印加することができる、通常は金属で製造されるアノード極性プレート1044を有する。アノード極性プレート1044の内面に切り込まれた蛇行チャネルなどの流れ場チャネルが存在し得る。アノード極性プレート1044の内面に隣接するアノードガス拡散層1046もある。いくつかの構成では、複数のアノードガス拡散層(図示せず)がある。アノードガス拡散層1046は、膜電極アセンブリ1000に出入りするガスの流れを促進する。アノードガス拡散層1046の例には、チタンメッシュまたはチタンフェルトがある。いくつかの構成では、ガス拡散層1026、1046が微孔質である。
【0307】
膜電極アセンブリ1000への反応物および生成物の流れをそれぞれ可能にする、担持構造1022、1042に関連付けられる入口および出口(図示せず)もある。セルからの反応物および生成物の漏出を防止する様々なガスケット(図示せず)もある。
【0308】
一実施形態では、直流(DC)電圧が、カソード極性プレート1024およびアノード極性プレート1042を介して、膜電極アセンブリ1000に印加される。水は、アノード1040に供給され、酸化触媒上で酸化されて、分子酸素(O2)を形成し、プロトン(H+)および電子(e-)を放出する。プロトンは、イオン交換層1060を通ってカソード1020に向かって移動する。電子は、外部回路(図示せず)を通って流れる。一実施形態では、反応は以下のように説明される。
2HO→4H+4e+O
【0309】
他の実施形態では、他の反応物をアノード1040に供給することができ、他の反応が起こり得る。
【0310】
図示の実施形態は、3つの副層を有するイオン交換層を示しているが、特定の実施形態は、単一の層(例えば、カチオン伝導性ポリマー層またはアニオン伝導性ポリマー層)のみを有するイオン交換層を使用する。他の実施形態は、2つの副層のみを有する。
【0311】
図11には、ある実施形態に係る、CRR1105反応器を通る反応物、生成物、イオン、および電子の流れが示されている。CRR1105は、本明細書の他の箇所で説明されているMEAのいずれかなどの膜電極アセンブリ1100を有する。膜電極アセンブリ1100は、イオン交換層1160によって分離されたカソード1120とアノード1140とを有する。特定の実施形態では、イオン交換層1160は、カソードバッファ層1125、ポリマー電解質膜1165、および任意選択的なアノードバッファ層1145という3つの副層を有する。さらに、CRR1105は、カソード1120に隣接するカソード担持構造1122と、アノード1140に隣接するアノード担持構造1142とを有する。
【0312】
カソード担持構造1122は、電圧を印加することができる、グラファイトで製造され得るカソード極性プレート1124を有する。カソード極性プレート1124の内面に切り込まれた蛇行チャネルなどの流れ場チャネルが存在し得る。カソード極性プレート1124の内面に隣接するカソードガス拡散層1126もある。いくつかの構成では、複数のカソードガス拡散層(図示せず)がある。カソードガス拡散層1126は、膜電極アセンブリ1100に出入りするガスの流れを促進する。カソードガス拡散層1126の例には、炭素微孔質層を有するカーボン紙がある。
【0313】
アノード担持構造1142は、電圧を印加することができる、金属で製造され得るアノード極性プレート1144を有する。アノード極性プレート1144の内面に切り込まれた蛇行チャネルなどの流れ場チャネルが存在し得る。アノード極性プレート1144の内面に隣接するアノードガス拡散層1146もある。いくつかの構成では、複数のアノードガス拡散層(図示せず)がある。アノードガス拡散層1146は、膜電極アセンブリ1100に出入りするガスの流れを促進する。アノードガス拡散層1146の例には、チタンメッシュまたはチタンフェルトがある。いくつかの構成では、ガス拡散層1126、1146が微孔質である。
【0314】
膜電極アセンブリ1100への反応物および生成物の流れをそれぞれ可能にする、担持構造1122、1142に関連付けられる入口および出口も存在し得る。セルからの反応物および生成物の漏出を防止する様々なガスケットも存在し得る。
【0315】
COは、カソード1120に供給され、プロトンおよび電子の存在下でCO還元触媒上で還元され得る。COは、0psigから1000psigの圧力または他の任意の適切な範囲でカソード1120に供給され得る。COは、他のガスの混合物と共に、100%未満または他の任意の適切な割合の濃度でカソード1120に供給され得る。いくつかの構成では、COの濃度を、約0.5%まで、5%まで、または20%または他の任意の適切な割合まで低くすることができる。
【0316】
一実施形態では、未反応COの約10%から100%が、カソード1120に隣接する出口で収集され、還元反応生成物から分離され、次いで、カソード1120に隣接する入口に戻って再利用される。一実施形態では、アノード1140での酸化生成物は、0psigから1500psigの圧力に圧縮される。
【0317】
一実施形態では、複数のCRR(図10に示されているものなど)が電気化学スタックに配置され、一緒に動作する。スタックの個々の電気化学セルを構成するCRRは、電気的に直列または並列に接続され得る。反応物が個々のCRRに供給され、次いで、反応生成物が収集される。
【0318】
いくつかの実施形態によると、反応器への入力および出力が図12に示されている。反応器にはCOアノード供給材料および電気が供給される。CO還元生成物および任意の未反応のCOが反応器を離れる。未反応のCOは還元生成物から分離され、反応器の入力側に戻って再利用され得る。アノード酸化生成物および任意の未反応のアノード供給材料は、別のストリームで反応器を離れる。未反応のアノード供給材料は、反応器の入力側に戻って再利用され得る。
【0319】
CRRのカソードにある様々な触媒により、CO還元反応から様々な生成物または生成物の混合物が形成される。カソードで起こりうるCO還元反応の例を以下に説明する。
CO+2H+2e→CO+H
2CO+12H+12e→CHCH+4H
2CO+12H+12e→CHCHOH+3H
CO+8H+8e→CH+2H
2CO+8H+8e→CHCH+2H
2CO+8H+8e→CHCHOH+H
CO+6H+8e→CH+H
【0320】
いくつかの実施形態では、上記の実施形態で説明したように、CO還元反応器を動作させる方法は、DC電圧をカソード極性プレートおよびアノード極性プレートに印加する段階と、酸化反応物をアノードに供給し、酸化反応を起こさせる段階と、還元反応物をカソードに供給し、還元反応を起こさせる段階と、アノードから酸化反応生成物を収集する段階と、カソードから還元反応生成物を収集する段階とを含む。
【0321】
一構成では、DC電圧が約-1.2Vより大きい。様々な配置において、酸化反応物は、水素、メタン、アンモニア、水、またはそれらの組み合わせのいずれか、および/または他の任意の適切な酸化反応物であり得る。一構成では、酸化反応物が水である。様々な配置において、還元反応物は、二酸化炭素、一酸化炭素、およびそれらの組み合わせのいずれか、および/または他の任意の適切な還元反応物であり得る。一構成では、還元反応物が二酸化炭素である。
【0322】
[例:動作中のMEAセル内の水性塩]
[寿命とファラデー収率との改善]
アノード水に塩を添加すると、ファラデー収率を向上させ、セル電圧を低下させ、性能の減衰率を減少させることができる。図13Aおよび図13Bは、2つの二酸化炭素電解槽の性能プロットであり、1つはアノード水中に塩が含まれておらず、もう1つはアノード水中に2mMのNaHCOが含まれている。両方の電解槽は、両極性MEAおよび金触媒(カソード)を使用した。この例では、NaHCO塩を添加するとセルの性能が向上する。アノード水中に塩のないセルは、0.5A/cmで最初の1時間の平均電圧が3.86V、平均COファラデー収率が0.53であり、500mA/cmで2~5時間の減衰率が144mV/時、COファラデー収率/時が0.018である。比較すると、2mMのNaHCOがあるセルは、0.5A/cmで最初の1時間の平均電圧が3.52V、平均COファラデー収率が0.936であり、500mA/cmで2~5時間の減衰率が15.5mV/時、COファラデー収率/時が0.001である。
【0323】
塩の存在が、メタンとエチレンとを生成するCO電解槽システムのファラデー収率および電圧効率に性能向上効果を及ぼすことも証明された。この例では、NaHCOの存在により、0.2A/cm2 で電圧が5.19Vから3.86Vに向上し、改善された合計の検出可能なCOファラデー収率(CO、CH、Cを含む)が1%から38%に向上することが示された。セルは、両極性MEAおよび銅触媒(カソード)を使用した。図14を参照されたい。
【0324】
塩濃度のわずかな変動が大きな影響を与える可能性がある。以下のプロットでは、100cm2のCO電解セルのアノード水に様々な濃度のNaHCOを添加した。この例では、6mMのNaHCOが最大の性能向上を示し、低濃度(2mM)または高濃度(8および10mM)よりもファラデー収率が高くなった。塩の最適濃度は電解槽のサイズにも依存する。この例では、2mMのNaHCOが25cm電解槽について最高の性能を発揮する。全てのMEAセルは、両極性MEAおよび金触媒(カソード)を使用した。図15を参照されたい。
【0325】
同様に、CO電解槽がCOをメタン、エチレン、エタノール、その他の小鎖炭化水素および誘導体有機化合物に変換する銅系の触媒系では、塩濃度の影響が観察された。全てのMEAセルは、両極性MEAおよび銅触媒(カソード)を使用した。KHCO塩濃度の影響は、1.5mMから30mMのレベルでC2炭化水素の生成を最適化するためにスクリーニングされた。濃度を3mMのKHCOに設定すると、合計70%の炭化水素収率が見られた。この設定は、低濃度および高濃度と比較して、エタノール収率(40%)およびエチレン収率(24%)を改善することがわかった。図16を参照されたい。
【0326】
[塩のアイデンティティにより生成物の選択性が変わる]
塩のアイデンティティを変えると、生成物の選択性を変えることができる。例えば、カソードに銅触媒を使用し、3mMのKHCOまたは3mMのNaHCOがアノード水中に存在する場合のCO電解の生成物選択性を比較すると、KHCOの存在により、メタン選択性がわずかに改善され、エタノールとエチレンとに対する選択性が向上することがわかる。図17では、反応中にアノード水がNaHCOからKHCOに変更されると、メタンの選択性が40%から11%に低下し、エチレンの選択性が20%から35%に増加した。アニオンを炭酸水素塩から硫酸塩に切り替えると、生成物の選択性に対してより低い感度が示された。この例の全てのセルは、両極性MEAおよび銅触媒(カソード)を使用した。
【0327】
図18では、小さなカチオンNaHCOと比較して大きなカチオン塩KHCOを使用した場合にも、エタノールに対する選択性の向上が見られた。
【0328】
いくつかの実装では、イオン濃度が長期間の運転中に減少する。余分な塩を追加するか、電解液槽を新しい塩溶液に取り替えると、選択性および電圧を回復するのに役立つ。図19Aおよび図19B (表)は、新しい塩溶液が添加された後、またはアノード液槽内の古い溶液を取り替えた後の選択性および電圧の改善を示している。選択性は0.3~2%の範囲で向上し、電圧は10~100mVの範囲で低下する。この例では、全てのセルが両極性MEAおよび金触媒(カソード)を使用した。塩の組成は2mMのNaHCOであった。一試験では、溶液を直接交換することによって塩溶液を補充した。
【0329】
メタンに対する銅触媒の選択性に対する塩濃度のスキャンが、1mMから30mMのNaHCOの範囲で行われた。メタンの選択性は、100mA/cmの低電流密度で大きな影響を受け、水素生成を犠牲にして、55%から73%のメタンへの増加を示した。20mMを超える塩濃度では、塩の量を増やす効果が性能にプラスの影響を与えるようには見えなかった。250mA/cmでは、約52%から62%のメタンで同様の収率の改善が見られ、電圧が4.25から4.00Vに改善され、塩濃度が20mA/cmを超えるといくらか低下した。図20を参照されたい。この図は、両極性MEAセルで塩濃度を20mMのNaHCOまで増加させるとメタン選択性が向上することを示している。
【0330】
様々な塩を、様々な濃度でのエチレン選択性への影響について試験した。アニオン伝導性ポリマーのみのMEAを銅触媒(カソード)と共に使用した。炭酸水素カリウム塩の濃度依存性は、3mMレベルおよび6mMレベルで見られ、一酸化炭素からのエチレンの収率は6mMで33%であった。図21Aを参照されたい。この図は、アニオン伝導性ポリマーのみのMEAでのCORRエチレン収率に対するアノード液中の炭酸水素カリウム塩の影響を示している。対照的に、水酸化カリウム塩は同じ反応の電圧を改善することが示され、使用されるKOHの濃度が高いほど電圧が低くなった。エチレン収率の良好な性能は、約0.1および0.01Mのより低いKOH濃度で見られた。図21Bを参照されたい。この図は、アニオン伝導性ポリマーのみの設定におけるCORRエチレン収率に対するアノード液中の水酸化カリウム塩濃度の影響を示している。
【0331】
[他の実施形態]
簡潔にするために省略されているが、システムおよび/または方法の実施形態は、様々なシステム構成要素および様々な方法プロセスのあらゆる組み合わせおよび変更を含むことができ、本明細書に記載の方法および/またはプロセスの1つまたは複数のインスタンスは、本明細書に記載のシステム、要素、および/またはエンティティの1つまたは複数のインスタンスにより、および/またはそれらを使用して、非同期的に(例えば、順次)、同時に(例えば、並行して)、または他の任意の適切な順序で実行され得る。
【0332】
当業者が前述の詳細な説明と図面および特許請求の範囲とから認識するように、本発明の好ましい実施形態に対する修正および変更を、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく加えることができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化炭素を電解還元するように構成された電気化学システムであって、
(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(ii)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(iii)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触している両極性ポリマー電解質膜(PEM)層とを含む膜電極アセンブリ(MEA)と、
(b)アノード水のソースであって、前記アノード水が前記アノード層に接触し前記MEAに塩を提供することを可能にする方式で、前記MEAに接続されているアノード水のソースと
を備え、
前記両極性PEM層は、少なくとも1つのアニオン伝導性ポリマー層、少なくとも1つのカチオン伝導性ポリマー層、および前記アニオン伝導性ポリマー層と前記カチオン伝導性ポリマー層との間の両極性界面を含み、
前記カチオン伝導性ポリマー層は、前記アノード層と前記アニオン伝導性ポリマー層との間に配置される、
電気化学システム。
【請求項2】
前記カソード層が、アニオン伝導性ポリマーを有する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
前記アノード層が、カチオン伝導性ポリマーを有する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項4】
前記塩がアルカリ金属イオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項5】
前記塩が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項6】
前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項7】
前記塩が、約10μMから約1Mの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項6に記載の電気化学システム。
【請求項8】
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項6に記載の電気化学システム。
【請求項9】
前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項10】
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項9に記載の電気化学システム。
【請求項11】
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項9に記載の電気化学システム。
【請求項12】
前記MEAは遷移金属イオンを実質的に含まない、請求項9に記載の電気化学システム。
【請求項13】
前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項14】
前記塩が、約10mMから約15Mの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項13に記載の電気化学システム。
【請求項15】
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記アノード水の中に存在する、請求項13に記載の電気化学システム。
【請求項16】
前記MEAに接続された再循環ループであって、前記MEAからアノード水を回収し、回収されたアノード水を貯蔵および/または処理し、且つ、貯蔵または処理されたアノード水を前記MEAに供給するように構成された再循環ループをさらに備える、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項17】
前記再循環ループが、前記アノード水を貯蔵するための槽を有する、請求項16に記載の電気化学システム。
【請求項18】
前記再循環ループが、前記アノード水から不純物を除去するように構成されたアノード水浄化要素を有する、請求項16に記載の電気化学システム。
【請求項19】
前記再循環ループに接続され、酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記再循環ループに提供するように構成された、カソード水導管をさらに備える、請求項16に記載の電気化学システム。
【請求項20】
前記カソード水導管に連結され、カソード水を前記酸化炭素ストリームから分離するように構成された水分離器をさらに備える、請求項19に記載の電気化学システム。
【請求項21】
前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項22】
前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを含む、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項23】
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、塩溶液の中に存在する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項24】
前記塩が、約500μMから約10mMの濃度で、塩溶液の中に存在する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項25】
前記塩が、約1mMから約5mMの濃度で、塩溶液の中に存在する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項26】
酸化炭素を電解還元する方法であって、
(a)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(b)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(c)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触している両極性ポリマー電解質膜(PEM)層とを含む膜電極アセンブリ(MEA)に塩溶液を提供する段階と、
前記MEAが前記塩溶液と接触している間に、前記MEAの前記カソード層で酸化炭素を電解還元する段階と
を備える方法。
【請求項27】
前記両極性PEM層は、少なくとも1つのアニオン伝導性ポリマー層、少なくとも1つのカチオン伝導性ポリマー層、および前記アニオン伝導性ポリマー層と前記カチオン伝導性ポリマー層との間の両極性界面を含み、
前記カチオン伝導性ポリマー層は、前記アノード層と前記アニオン伝導性ポリマー層との間に配置される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記アノード層がカチオン伝導性ポリマーを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記両極性PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記両極性PEM層がカチオン伝導性ポリマーを含み、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記塩溶液がアルカリ金属イオンを含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記塩溶液が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩溶液が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、請求項26から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩溶液がナトリウムイオンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩溶液がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩溶液が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記MEAに塩溶液を提供する段階は、前記MEAの前記アノード層にアノード水を供給する段階を有する、請求項26から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
(i)前記MEAに供給されたアノード水を回収する段階と、(ii)回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる段階とをさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる前に、前記回収されたアノード水を貯蔵および/または処理する段階をさらに備える、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記アノード水および/または前記回収されたアノード水を浄化して、前記アノード水から不純物を除去する段階をさらに備える、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
(i)酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に、前記酸化炭素ストリームから水を回収する段階と、(ii)前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記MEAの前記アノード層に提供する段階とをさらに備える、請求項26から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
塩が、10μMから30mMの濃度で、前記塩溶液の中に存在する、請求項26から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記塩が、100μMから20mMの濃度で、前記塩溶液の中に存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記塩溶液の中のナトリウムイオンの濃度が、20mM以下である、請求項26から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記塩溶液の中のカリウムイオンの濃度が、6mM以下である、請求項26から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
膜電極アセンブリ(MEA)であって、
酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、
水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、
前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触している両極性ポリマー電解質膜(PEM)層と、
前記MEAに接触する塩溶液からの塩イオンと、
を備え、
前記カソード層はアニオン伝導性ポリマーを含む、
MEA。
【請求項50】
前記塩イオンが、10μMから30mMの濃度で、前記塩溶液の中に存在する、請求項49に記載のMEA。
【請求項51】
前記塩イオンが、100μMから20mMの濃度で、前記塩溶液の中に存在する、請求項50に記載のMEA。
【請求項52】
前記塩溶液の中のナトリウムイオンの濃度が、20mM以下である、請求項49から51のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項53】
前記塩溶液の中のカリウムイオンの濃度が、6mM以下である、請求項49から52のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項54】
前記酸化炭素が二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、請求項49から53のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項55】
前記両極性PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、請求項49から54のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項56】
前記塩イオンがアルカリ金属イオンを含む、請求項49から55のいずれか一項に記載のMEA。
【請求項57】
前記塩イオンが、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項49から56のいずれか一項に記載のMEA。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0332
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0332】
当業者が前述の詳細な説明と図面および特許請求の範囲とから認識するように、本発明の好ましい実施形態に対する修正および変更を、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく加えることができる。
[項目1]
膜電極アセンブリ(MEA)であって、
酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、
水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、
前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)と、
前記MEAに接触する塩溶液からの塩イオンと
を備え、
前記塩溶液中の塩は、少なくとも約10μMの濃度を有する、
MEA。
[項目2]
前記酸化炭素は二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目1に記載のMEA。
[項目3]
前記酸化炭素は一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒は、金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目1に記載のMEA。
[項目4]
前記カソード層が、アニオン伝導性ポリマーを有する、項目1から3のいずれか一項に記載のMEA。
[項目5]
前記アノード層が、カチオン伝導性ポリマーを有する、項目1から4のいずれか一項に記載のMEA。
[項目6]
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を備える、項目1から5のいずれか一項に記載のMEA。
[項目7]
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を有する、項目1から6のいずれか一項に記載のMEA。
[項目8]
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを有し、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目7に記載のMEA。
[項目9]
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを有する、項目1に記載のMEA。
[項目10]
前記塩イオンがアルカリ金属イオンを含む、項目1から9のいずれか一項に記載のMEA。
[項目11]
前記塩イオンが、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、項目1から10のいずれか一項に記載のMEA。
[項目12]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、項目1から11のいずれか一項に記載のMEA。
[項目13]
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目12に記載のMEA。
[項目14]
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目12に記載のMEA。
[項目15]
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩イオンはナトリウムイオンである、項目12に記載のMEA。
[項目16]
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって、2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩イオンはカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目12に記載のMEA。
[項目17]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、項目1に記載のMEA。
[項目18]
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目17に記載のMEA。
[項目19]
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目17に記載のMEA。
[項目20]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩イオンがアルカリ金属イオンを含む、項目17に記載のMEA。
[項目21]
遷移金属イオンを実質的に含まない、項目17に記載のMEA。
[項目22]
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、項目1に記載のMEA。
[項目23]
前記塩が、約10mMから約15Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目22に記載のMEA。
[項目24]
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目22に記載のMEA。
[項目25]
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩イオンはナトリウムイオンを含む、項目22に記載のMEA。
[項目26]
前記MEAは、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって、2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩イオンは、カリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目22に記載のMEA。
[項目27]
酸化炭素を電解還元するように構成された電気化学システムであって、
(a)(i)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(ii)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(iii)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)と、
(b)アノード水中に少なくとも約10μMの濃度を有する塩を含むアノード水ソースであって、前記アノード水が前記アノード層に接触し前記MEAに前記塩を提供することを可能にする方式で、前記MEAに接続されているアノード水ソースと
を備える電気化学システム。
[項目28]
前記酸化炭素が二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目27に記載の電気化学システム。
[項目29]
前記酸化炭素が一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目27に記載の電気化学システム。
[項目30]
前記カソード層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目27から29のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目31]
前記アノード層がカチオン伝導性ポリマーを含む、項目27から30のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目32]
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する、項目27から31のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目33]
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、項目27から32のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目34]
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを含み、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目33に記載の電気化学システム。
[項目35]
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目27に記載の電気化学システム。
[項目36]
前記塩がアルカリ金属イオンを含む、項目27から35のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目37]
前記塩が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、項目27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目38]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、項目27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目39]
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目38に記載の電気化学システム。
[項目40]
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目38に記載の電気化学システム。
[項目41]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、項目38に記載の電気化学システム。
[項目42]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目38に記載の電気化学システム。
[項目43]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、項目27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目44]
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目43に記載の電気化学システム。
[項目45]
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目43に記載の電気化学システム。
[項目46]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩がアルカリ金属イオンを含む、項目43に記載の電気化学システム。
[項目47]
前記MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない、項目43に記載の電気化学システム。
[項目48]
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、項目27から36のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目49]
前記塩が約10mMから約15Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目48に記載の電気化学システム。
[項目50]
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記アノード水中に存在する、項目48に記載の電気化学システム。
[項目51]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、項目48に記載の電気化学システム。
[項目52]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目48に記載の電気化学システム。
[項目53]
前記MEAに接続された再循環ループであって、前記MEAからアノード水を回収し、回収されたアノード水を貯蔵および/または処理し、且つ、貯蔵または処理されたアノード水を前記MEAに供給するように構成された再循環ループをさらに備える、項目27から52のいずれか一項に記載の電気化学システム。
[項目54]
前記再循環ループが、前記アノード水を貯蔵するための槽を有する、項目53に記載の電気化学システム。
[項目55]
前記再循環ループが、前記アノード水から不純物を除去するように構成されたアノード水浄化要素を有する、項目53に記載の電気化学システム。
[項目56]
前記再循環ループが、浄水を受け入れるための入口を有する、項目53に記載の電気化学システム。
[項目57]
前記再循環ループが前記アノード水ソースに接続されている、項目53に記載の電気化学システム。
[項目58]
前記再循環ループに接続され、酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記再循環ループに提供するように構成された、カソード水導管をさらに備える、項目53に記載の電気化学システム。
[項目59]
前記カソード水導管に連結され、カソード水を前記酸化炭素ストリームから分離するように構成された水分離器をさらに備える、項目58に記載の電気化学システム。
[項目60]
酸化炭素を電解還元する方法であって、
(a)酸化炭素の還元を促進する酸化炭素還元触媒を含むカソード層と、(b)水の酸化を促進する触媒を含むアノード層と、(c)前記カソード層と前記アノード層との間に配置され、且つ、前記カソード層および前記アノード層と接触しているポリマー電解質膜層(PEM層)とを含む膜電極アセンブリ(MEA)に塩溶液を提供する段階であって、前記塩溶液が少なくとも約10μMの塩を含む、段階と、
前記MEAが前記塩溶液と接触している間に、前記MEAの前記カソード層で酸化炭素を電解還元する段階と
を備える方法。
[項目61]
前記酸化炭素が二酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目60に記載の方法。
[項目62]
前記酸化炭素が一酸化炭素であり、前記酸化炭素還元触媒が金、銀、銅、またはそれらの組み合わせを含む、項目60に記載の方法。
[項目63]
前記カソード層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目60から62のいずれか一項に記載の方法。
[項目64]
前記アノード層がカチオン伝導性ポリマーを含む、項目60から63のいずれか一項に記載の方法。
[項目65]
前記MEAは両極性であり、カチオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層、およびアニオン伝導性ポリマーの少なくとも1つの層を有する、項目60から64のいずれか一項に記載の方法。
[項目66]
前記PEM層が、ポリマー電解質層およびカソードバッファ層を含む、項目60から65のいずれか一項に記載の方法。
[項目67]
前記PEM層がカチオン伝導性ポリマーを含み、前記カソードバッファ層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目66に記載の方法。
[項目68]
前記PEM層がアニオン伝導性ポリマーを含む、項目60に記載の方法。
[項目69]
前記塩がアルカリ金属イオンを含む、項目60から68のいずれか一項に記載の方法。
[項目70]
前記塩が、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物からなる群から選択されるアニオンを含む、項目60から69のいずれか一項に記載の方法。
[項目71]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、硫酸塩、または水酸化物のアニオンを含む、項目60から70のいずれか一項に記載の方法。
[項目72]
前記塩が、約1mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目71に記載の方法。
[項目73]
前記塩が、約1mMから約50mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目71に記載の方法。
[項目74]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、項目71に記載の方法。
[項目75]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目71に記載の方法。
[項目76]
前記MEAが両極性MEAであり、前記酸化炭素還元触媒が金を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩、水酸化物、または硫酸塩のアニオンを含む、項目60から70のいずれか一項に記載の方法。
[項目77]
前記塩が、約10μMから約200mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目76に記載の方法。
[項目78]
前記塩が、約100μMから約20mMの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目76に記載の方法。
[項目79]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素を還元することによって一酸化炭素を生成するように構成され、前記塩がアルカリ金属イオンを含む、項目76に記載の方法。
[項目80]
前記MEAが遷移金属イオンを実質的に含まない、項目76に記載の方法。
[項目81]
前記MEA中の全てのポリマーがアニオン伝導性ポリマーであり、前記酸化炭素還元触媒が銅を含み、前記塩が(i)アルカリ金属カチオン、および(ii)炭酸水素塩または水酸化物のアニオンを含む、項目60から70のいずれか一項に記載の方法。
[項目82]
前記塩が、約10mMから約15Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目81に記載の方法。
[項目83]
前記塩が、約50mMから約1Mの濃度で、前記塩溶液中に存在する、項目81に記載の方法。
[項目84]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによってメタンを生成するように構成され、前記塩がナトリウムイオンを含む、項目81に記載の方法。
[項目85]
前記MEAが、前記カソード層で二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元することによって2つ以上の炭素原子を有する1つまたは複数の有機化合物を生成するように構成され、前記塩がカリウム、セシウム、ルビジウム、またはそれらの任意の組み合わせのイオンを含む、項目81に記載の方法。
[項目86]
前記MEAに塩溶液を提供する段階は、前記MEAの前記アノード層にアノード水を供給する段階を有する、項目60から85のいずれか一項に記載の方法。
[項目87]
(i)前記MEAに供給されたアノード水を回収する段階と、(ii)回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる段階とをさらに備える、項目86に記載の方法。
[項目88]
前記回収されたアノード水を前記MEAの前記アノード層に再循環させる前に、前記回収されたアノード水を貯蔵および/または処理する段階をさらに備える、項目87に記載の方法。
[項目89]
前記アノード水および/または前記回収されたアノード水を浄化して、前記アノード水から不純物を除去する段階をさらに備える、項目87に記載の方法。
[項目90]
(i)酸化炭素ストリームが前記MEAの前記カソード層に接触した後に、前記酸化炭素ストリームから水を回収する段階と、(ii)前記酸化炭素ストリームから回収された水を前記MEAの前記アノード層に提供する段階とをさらに備える、項目60から89のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】