(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096763
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】水分散性複合構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/10 20060101AFI20240709BHJP
D21H 11/12 20060101ALI20240709BHJP
D21H 17/34 20060101ALI20240709BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20240709BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20240709BHJP
【FI】
D21H11/10
D21H11/12
D21H17/34
D04H1/26
D04H1/732
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060148
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2021500832の分割
【原出願日】2019-07-15
(31)【優先権主張番号】20180084
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】517179114
【氏名又は名称】パプティック オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】カリタ キンヌネン-ローダスコスキ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハグブロム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紙及び板紙産業で従来使用されている装置によって回収及びリサイクルすることができる、1つ以上の層を含む水分散性複合構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】層の少なくとも一部は、50~90重量部の木質繊維、10~90重量部の一年生又は多年生植物繊維、10~50重量部の合成短繊維、及び繊維の重量から計算される0.1~20重量%のバインダーを含有し、バインダーの少なくとも一部が水溶性ポリマーであり、他の部分が水分散性バインダーである繊維ウェブ又はシートによって形成され、繊維シート又はウェブは、湿式成形によって製造される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層を含む水分散性複合構造体であって、
- 前記繊維層の少なくとも一部が、50~90重量%の木質繊維と、10~50重量
%の非木材繊維と、前記繊維の重量から計算される0.1~20重量%のバインダーを含
有する繊維ウェブ又は繊維シートと、によって形成され、前記バインダーの少なくとも一
部が水溶性ポリマーであり、
- 前記繊維シート又は繊維ウェブが、湿式成形技術によって製造されることを特徴と
する、水分散性複合構造体。
【請求項2】
前記木質繊維が、化学パルプ繊維、再生繊維、機械パルプ繊維及び半機械パルプ繊維並
びにこれらの組み合わせの群から選択される、漂白又は非漂白の、精製又は未精製繊維で
ある、請求項1に記載の水分散性複合構造体。
【請求項3】
前記非木材繊維が、天然繊維、非木材繊維及び人工繊維、特にポリマー繊維からなる群
から選択され、例えば、
- 麻、亜麻、ケナフ、バガス、綿及びわら、並びにこれらの組み合わせのような一年
生植物繊維又は多年生植物繊維
- 熱可塑性繊維、例えばポリ乳酸(PLA)、グリコール酸ポリマー(PGA)、ポ
リヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)、ポリエステル(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)
- 熱可塑性ポリマーを含む複合繊維
- 鉱物繊維、ガラス繊維
- ビスコース繊維、リヨセル繊維、レーヨン繊維のような再生セルロース繊維
- 前記群のうち2つ以上から選択される繊維の組み合わせ
の群から選択される、請求項1又は2に記載の水分散性複合構造体。
【請求項4】
前記非木材繊維が、特に5~25mmの長さ、特に6~18mmの長さ、好ましくは0
.5dtex~20dtexの厚さ、特に1~15dtexの厚さ、例えば1.5~10
dtexの厚さを有する短繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水分散性複
合構造体。
【請求項5】
前記バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル分散液、エチルビニルアル
コール分散液、ポリウレタン分散液、アクリルラテックス、スチレンブタジエン分散液、
微細セルロースに基づくバインダー、セルロース誘導体に基づくバインダー、生体高分子
、デンプン誘導体に基づく生体高分子、天然ゴムラテックス、アルギン酸塩、グアーガム
、ヘミセルロース誘導体、キチン、キトサン、ペクチン、寒天、キサンタン、アミロース
、アミロペクチン、アルテルナン、ムタン、デキストラン、プルラン、フルクタン、ロー
カストビーンガム、カラギーナン、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、ムレイン、細
菌莢膜多糖類、及び同様のもの並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請
求項1~4のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項6】
前記バインダーの第1の部分が水溶性ポリマー又はポリマー混合物によって形成され、
前記バインダーの第2の部分が水分散性ポリマー又はポリマー混合物によって形成される
、請求項1~5のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項7】
前記繊維ウェブ又は繊維シートが、主に水素結合又は接着結合によって互いに保持され
る繊維網を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項8】
前記繊維ウェブ又は繊維シートが、サイジング剤、特にアルキルケテンダイマ又はアル
ケニルコハク酸無水物のような反応性サイジング剤をさらに含有する、請求項1~7のい
ずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項9】
前記サイジング剤が1つ以上の前記バインダーと混合される、請求項8に記載の水分散
性複合構造体。
【請求項10】
前記繊維ウェブ又は繊維シートが、スラッシング時に水性媒体中に分散可能である、請
求項1~9のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項11】
前記繊維ウェブ又は繊維シートが、10~75℃の温度及びpH6~8で水性媒体中に
分散可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項12】
10~250g/m2、特に約20~200g/m2の坪量を有する繊維ウェブ又は繊
維シートを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項13】
不織布ウェブ及び不織布シートの群から選択される繊維ウェブ又は繊維シートを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の水分散性複合構造体。
【請求項14】
木質繊維と、非木材繊維と、バインダーと、を含む層を含有する水分散性複合構造体を
製造する方法であって、
- 水性繊維スラッシュを有孔支持体に運ぶステップと、
- 前記有孔支持体を通して液体を排出して、繊維層を形成するステップと、
- 前記繊維層上にバインダーを塗布して、前記繊維を少なくとも部分的に結合するス
テップと、を含む方法であり、
- 前記バインダーは、水分散性ポリマーをさらに含有する水溶性ポリマーの水溶液を
含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記バインダーを発泡水性組成物として前記繊維層上に塗布し、
前記発泡水性組成物は、分散した水分散性ポリマーをさらに含有する水溶性ポリマーの
水溶液を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
繊維スラッシュが、セルロース繊維、リグノセルロース繊維又はこれらの混合物と共に
、人工繊維及び任意に天然非木材繊維を含み、
水性スラッシュが、0.01~6重量%、特に0.5~3重量%の濃度を有する、請求
項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
湿式成形を、抄紙機又は板紙機械、あるいは湿式不織布機械で行う、請求項14~16
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バインダーを前記繊維層上に塗布してから、前記繊維層を最終乾燥まで乾燥させる
、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バインダーを、99~10重量%、特に80~20重量%、例えば70~25重量
%の含水率を有する前記繊維層上に塗布する、請求項14~18のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項20】
前記繊維層を乾燥及びカレンダー加工して、繊維ウェブ又は繊維シートを形成するステ
ップを含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記バインダーを、ドクターブレードを用いて、塗布ロールを用いて、真空強化法によ
って又は前記繊維層の少なくとも片側への非接触塗布によって、前記繊維層上に塗布する
、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
水に分散可能なポリマーを水溶性ポリマーの水溶液中に分散させ、任意にこのようにし
て得られる組成物を発泡させて、前記バインダーを得る、請求項14~21のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項23】
前記バインダーが、1~50重量%、例えば1~30重量%、特に2.5~25重量%
の乾燥物含有量を有する水性組成物を備え、
前記水性組成物は、少なくとも1つの水溶性ポリマー及び少なくとも1つの水分散性ポ
リマーを含有する、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記バインダーが、少なくとも1つの水溶性ポリマー及び少なくとも1つの水分散性ポ
リマーを、前記ポリマーの乾燥物に基づいて計算される1:20~20:1、特に1:1
0~10:10の重量比で含有する、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル分散液、エチルビニルアル
コール分散液、ポリウレタン分散液、アクリルラテックス、スチレンブタジエン分散液、
微細セルロースに基づくバインダー、セルロース誘導体に基づくバインダー、生体高分子
、及びこれらの組み合わせの群から選択されるポリマーを含む、請求項14~24のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記バインダーが、水溶性ポリマーを水に溶解して前記ポリマーの水溶液を形成し、続
いて水分散性ポリマーを前記水溶液に分散させることによって得られる水性組成物である
、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記バインダーが、
ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル並びにこれらの組み合わせの群から選択する
少なくとも1つの水溶性ポリマーを、10~100℃、特に15~100℃の温度で、周
囲圧力で水に溶解して、前記ポリマーの水溶液を形成し、
続いて、ポリウレタン分散体、アクリルラテックス、スチレンブタジエン分散体、バイ
ンダーの群から選択する少なくとも1つのポリマーを、周囲圧力で20~100℃の温度
で前記溶液中に分散させること、
によって調製される水性組成物である、請求項10~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
バインダーを安定分散液として提供するステップを含む、請求項14~27のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項29】
サイジング剤、特にアルキルケテンダイマ又はアルケニルコハク酸無水物のような反応
性サイジング剤を、バインダーと混合するステップを含む、請求項14~28のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項30】
水性組成物を、特に界面活性剤不在下で発泡させるステップを含む、請求項14~29
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記繊維層の前記繊維の50~99重量%、特に60~90重量%が、セルロース又は
リグノセルロース繊維又はこれらの混合物によって構成され、
1~50重量%、特に10~40重量%が、非木材天然繊維又は人工繊維又はこれらの
組み合わせによって構成される、請求項14~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記木質繊維が、化学パルプ繊維、再生繊維、機械パルプ繊維及び半機械パルプ繊維並
びにこれらの組み合わせの群から選択される、漂白又は未漂白の、精製又は未精製繊維で
あり、
特に木質繊維が、本質的に未精製のセルロース繊維、リグノセルロース繊維及びこれら
の組み合わせの群から選択される、請求項14~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
人工繊維が、再生セルロース繊維、合成繊維、合成熱可塑性繊維及びこれらの混合物の
群から選択される、請求項14~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記再生セルロース繊維が、ビスコース繊維、リオセル繊維、レーヨン繊維及びこれら
の混合物の群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
非木材天然繊維が、例えば麻、亜麻、ケナフ、バガス、綿及びわら、並びにこれらの組
み合わせのような一年生繊維又は多年生繊維の群から選択される、請求項14~34のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
熱可塑性繊維が、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維及び生体高分子繊維、並びに
これらの混合物の群から選択される、請求項14~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記繊維層の乾燥物に基づいて計算されるバインダーの0.1~20重量%、例えば0
.5~15重量%、例えば1~10重量%を塗布するステップを含む、請求項14~36
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
10~250g/m2、特に約20~200g/m2の坪量を有する繊維ウェブを製造
するステップを含む、請求項14~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記繊維が、水素結合又は接着結合によって繊維網を形成する、請求項14~38のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
請求項14~39のいずれか一項に記載の方法によって得られる、水分散性複合構造体
。
【請求項41】
不織布ウェブ、不織布シート又は紙ウェブ若しくは紙シートの群から選択される不織製
品の調製に対して、請求項14~40のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維質原料から製造されるシート成形又はウェブ成形層状材料のような繊維
構造体に関する。このような材料を水性媒体中に別々に分散させて、原料の繊維の少なく
とも一部を回収することができる。より具体的には、本発明は、水性媒体中に分散し得る
複合材料を形成する、天然由来及び合成由来の繊維を含む構造体に関する。本発明はまた
、このような材料を製造する方法及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散性不織布は、当該技術分野において既知である。これらは、衛生的用途に対して分
散性繊維及び水洗可能繊維としての使用が見出されている。
【0003】
特許文献1は、水分散性配合物及び材料、並びにこれらの水分散性に影響を及ぼす方法
を教示している。水分散性配合物は、1~90重量%の少なくとも1つの水溶性セルロー
スエーテルバインダーを含む。加えて、配合物は、長さが約300ミクロン超~約2ミリ
メートル以上の、少なくとも約10~約99重量%の長セルロース繊維を含有する。この
文献には、かなりの量の長セルロース繊維を含むと、水溶性セルロースエーテルバインダ
ーの水分散性が増大することが記載されている。ガス放出剤を含み、配合物の水分散性の
速度を増加させることができる。
【0004】
医療及び食品産業における材料の使用方法が提案されている。
【0005】
特許文献2は、使い捨て目的の吸収性織物様構造体を開示している。この材料は、適切
な使用を可能にする強度及び耐久性を示すが、使用後に下水設備で処理可能である。この
構造体は、イオン化基を有する感水性繊維を含み、材料は、例えばシアノエチルセルロー
ス又はヒドロキシエチルセルロースから選択され得る。
【0006】
特許文献3及び特許文献4には、他の水洗可能なウェットティシュが教示されている。
【0007】
特許文献5には、迅速に分散可能なウェットティッシュに使用することができる、パル
プ及び溶剤紡糸繊維を含む織物が開示されている。溶剤紡糸繊維は、例えばテンセル(登
録商標)種のフィブリル化セルロースを含む。特許出願の例では、木材パルプとテンセル
短繊維とのブレンドを使用して湿式織物を作成した。繊維を精製し、分散助剤として1%
CMCを添加し、エピクロルヒドリン系湿潤強度樹脂を添加して湿潤強度を増大させる。
このようにして形成されたスラリーは、次に、例えば製紙機械に湿式堆積し、シートを形
成する。次いで、シートは、オンライン又は別のオフライン処理で水流交絡工程を通過し
て、織物を形成する。
【0008】
得られたティッシュは、標準的なトイレシステムを通して水洗可能であり、処理後に生
分解する分散性フラグメントに分解可能できると言われている。
【0009】
開示された材料は水中に分散可能であるが、これらは分解して廃棄可能な材料(使い捨
て材料)として使用するために構成されている。このため既知の分散性材料は、対応する
非分解性材料と比較したときに、強度及び構造的完全性の観点では依然として不足してい
る。結果として、これらの主な用途は、廃水及び下水設備で既に完全分解されていること
が可能な製品において見出されている。したがって、これらが含有する材料は使用後に廃
棄され、リサイクルは不可能である。
【0010】
当該技術分野における水流交絡の使用は、構成材料及び回収及びリサイクルのための材
料の再パルプ化を阻害する。
【0011】
紙及び板紙産業で採用されている従来のリサイクル処理によって、水相中に分散して構
成繊維の画分を生成し、リサイクルすることが可能でありながら、良好な機械的特性を有
する分散性構造材料が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5346541号明細書
【特許文献2】米国特許第3563241号明細書
【特許文献3】米国特許第5629081号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1285985号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2014/0318726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、繊維ウェブ又はシートによって形成される少なくとも1つの層、例え
ば複数の重なり合う層を含む新規な水分散性組成物及び構造体を提供することである。
【0014】
別の目的は、このような組成物の製造方法を提供することである。
【0015】
さらに第3の目的は、組成物の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、木質繊維、天然及び/又は合成非木材繊維及びバインダーを含有する繊維層
を湿式成形することによって製造するという概念に基づく。驚くべきことに、天然及び/
又は合成繊維と混合した木質繊維を少なくとも50%含む繊維組成物を提供し、湿式成形
に適合し、並びに水溶性ポリマー及び水分散性ポリマーを含むバインダーを使用して繊維
を一緒に結合することにより、機械的特性を有する水分散性シート又はウェブを製造する
ことができることを見出した。
【0017】
本材料は、以下のステップによる湿式成形によって製造することができる。
- 水性繊維スラッシュを支持体に運ぶステップ
- 支持体を通して液体を排出して繊維層を形成するステップ
- 繊維層上にバインダーを塗布して、繊維を少なくとも互いに部分的に結合するステ
ップであり、バインダーは、水溶性ポリマーの水溶液を含み、水分散性ポリマーをさらに
含有する。
【0018】
組成物及び方法を使用して、不織布ウェブ及び不織布シートのような不織布製品を提供
することができる。
【0019】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部に記載されていることを主な特徴とす
る。
【0020】
本発明によってかなりの利点が得られる。このように、本材料は、典型的な紙、板紙及
び不織布用途での使用を可能にする良好な機械的特性を有する。特に、本発明を使用して
、ウェブ及びシートの群から選択される不織布製品を調製することができる。
【0021】
加えて、材料を紙又は板紙産業で使用される種類の従来のパルパー中に分散させて、少
なくとも木質繊維を水分散性材料から分離することができる。材料の構造により、木質繊
維を少なくとも部分的に回収することができ、所望であれば、リサイクルして繊維材料及
び他の材料に使用することができる。
【0022】
湿式成形は、例えば不織布又は抄紙機で工業的に行うことができる。
【0023】
ハイドロエンタングルメント又はスパンレーシングのような機械的結合を必要とせずに
、接着結合を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】左側に基準材料の受容体を示し、右側にこのような材料の単繊維を示す顕微鏡写真である。
【
図2】左側に本技術による材料の受容体を示し、右側にこのような材料の単繊維を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本技術の実施形態を、添付の図を参照してより詳細に議論する。
【0026】
上述のように、本技術は、天然繊維又は合成繊維と組み合わせた木質繊維のような天然
繊維を含有する水分散性繊維層の形態の複合構造体を提供する。
【0027】
一実施形態では、水分散性複合構造体において、繊維ウェブ又はシートは、主に水素結
合及び接着結合によって互いに保持される繊維網を含む。
【0028】
本明細書における層は、天然繊維及び合成繊維の両方を含有するという点で「複合構造
体」と呼ばれる。
【0029】
「水分散性」とは、本の材料に関連して使用するとき、繊維マトリックスが破壊され、
構成繊維材料が材料から及び互いに分離され得ることを意味する。このように、木質繊維
又は他の天然繊維の少なくとも一部、例えば少なくとも5重量%、特に少なくとも10重
量%、好適には少なくとも20重量%を回収し、任意にリサイクルすることができる。
【0030】
一態様では、水分散性は、紙、ボール紙及び他の繊維ベースの製品のリサイクルに使用
される条件において、工業的に再パルプ化可能である材料の特性に関する。例えば、低濃
度(LC)パルプ化の一般的な条件は、2~7重量%の濃度及び30~60℃の温度であ
る。(HC)パルプ化の一般的な条件は、10~35重量%の濃度及び30~60℃の温
度である。パルプ化時間は、スラッシングに使用する装置及びロータの寸法のような工業
用パルパのレイアウトに依存する。典型的には、パルプ化処理は、初期材料構造体から適
切な量の繊維が考えられるまで行われる。パルプ化処理は、NaOH、H2O2、キレー
ト剤、ケイ酸ナトリウム及び界面活性剤のような化学物質を含むことができる。
【0031】
一実施形態によれば、水分散性複合構造体は、「木質繊維」の形態の天然繊維を含む。
一実施形態では、このような木質繊維は、化学パルプ繊維、再生繊維、機械パルプ繊維及
び半機械パルプ繊維並びにこれらの組み合わせの群から選択される、漂白及び非漂白の、
精製及び未精製繊維、特に未精製繊維から選択される。
【0032】
木質材料は、カバノキ、ブナ、ヨーロッパポプラのようなポプラ、ハンノキ、ユーカリ
、カエデ、アカシア、混合熱帯広葉樹、テーダマツのような松、モミ、アメリカツガ、カ
ラマツ、クロトウヒ又はノルウェートウヒのようなトウヒ、及びこれらの混合物であり得
る。
【0033】
本複合構造体の1つ以上の第2の繊維成分は、非木材繊維である。このような繊維は、
例えば一年生植物繊維等の天然繊維若しくは合成繊維、又はこれらの組み合わせであり得
る。合成繊維は、本明細書では非合成繊維と考えられる木質繊維及び天然非木材繊維とは
対照的に、「人工」であることを特徴付けることもできる。
【0034】
このように、一実施形態では、非木材繊維は、木材以外の植物材料(天然非木材(又は
「非木」材料とも呼ばれる))から得られる繊維及び合成繊維等の人工繊維、特にポリマ
ー繊維からなる群から選択される。
【0035】
非木材繊維は、例えば以下の群から選択され得る。
- 一年生又は多年生植物繊維、例えば麻、亜麻、ケナフ、バガス、綿、わら
- 熱可塑性繊維、例えばポリ乳酸(PLA)、グリコール酸ポリマー(PGA)、ポ
リヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)、ポリエステル(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)繊維
- 熱可塑性ポリマーを含む複合繊維
- 鉱物繊維、ガラス繊維
- ビスコース繊維、リヨセル繊維、レーヨン繊維のような再生セルロース繊維
及び上記の群のうちの2つ以上から選択される繊維の組み合わせ。
【0036】
一実施形態では、非木材繊維、特に合成繊維は「短(short-cut)」繊維であ
る。本明細書では、「短繊維」は、5~25mmの長さ、特に6~18mmの長さを有す
る繊維である。一実施形態では、これらは0.5dtex~20dtexの厚さ、特に1
~15dtexの厚さ、例えば1.5~10dtexの厚さを有することができる。
【0037】
一年生又は多年生植物繊維は、(上記で定義したように)短繊維として、又は対応する
植物材料の機械的、半機械的若しくは化学的離解を含む離解により得られる繊維として存
在し得る。
【0038】
一実施形態では、繊維層は、50~90重量部の木質繊維と、0~90重量部、例えば
10~90重量部の一年生若しくは多年生植物繊維と、0~50重量部、例えば10~5
0重量部の合成短繊維又はこれらの組み合わせと、を含む繊維ウェブ又はシートによって
形成される。非木材天然繊維及び合成繊維の総量は、典型的には10~50重量部である
。
【0039】
一実施形態では、繊維層の繊維の50~99重量%、特に60~90重量%は、セルロ
ース繊維若しくはリグノセルロース繊維又はこれらの混合物によって構成され、1~50
重量%、特に10~40重量%は、人工繊維によって構成される。
【0040】
一実施形態では、繊維層の繊維の50~99重量%、特に60~90重量%は、セルロ
ース繊維若しくはリグノセルロース繊維又はこれらの混合物によって構成され、1~50
重量%、特に10~40重量%は、例えば一年生若しくは多年生植物の繊維のような非木
材天然繊維、又は人工繊維と組み合わせたこのような繊維から構成される。
【0041】
一実施形態では、人工繊維は、再生セルロース繊維、合成繊維、合成熱可塑性繊維及び
これらの混合物の群から選択される。
【0042】
再生セルロース繊維は、ビスコース繊維、リオセル繊維、レーヨン繊維及びこれらの混
合物の群から選択され得る。熱可塑性繊維は、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維及
び生体高分子繊維、並びにこれらの混合物の群から選択される。
【0043】
一実施形態では、一年生及び他の非木材天然(典型的には植物)繊維は、穀類作物のわ
ら、麦わら、クサヨシ、葦、真麻、麻、ケナフ、ジュート、芋麻、種子、サイザル麻、マ
ニラ麻、コイア、竹、バガス、綿カポック、トウワタ、パイナップル、綿、米、葦、アフ
リカハネガヤ、リードカナリーグラス、及びこれらの組み合わせの群から選択される。さ
らなる非木材繊維は、種子毛繊維、葉繊維及び靱皮繊維の群から選択される。
【0044】
一実施形態では、本複合構造体は、バインダーの乾燥物及び繊維層の繊維部分の乾燥物
に基づいて計算される約0.1~20重量%をさらに含む。
【0045】
本明細書における「バインダー」という用語は、繊維を互いに結合して例えば繊維網の
形成に寄与することができる物質を意味する。「バインダー」という用語は、単一の物質
及び物質の混合物の両方を意味する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、水溶性ポリマーと水分散性ポリマーとの組み合わせを含む
。水溶性ポリマーは典型的には親水性ポリマーであるが、水分散性ポリマーは典型的には
疎水性ポリマーである。
【0047】
一実施形態では、バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル分散液、エチ
ルビニルアルコール分散液、ポリウレタン分散液、アクリルラテックス、スチレンブタジ
エン分散液、微細セルロースに基づくバインダー、セルロース誘導体に基づくバインダー
、デンプン誘導体に基づく生体高分子のような生体高分子、天然ゴムラテックス、アルギ
ン酸塩、グアーガム、ヘミセルロース誘導体、キチン、キトサン、ペクチン、寒天、キサ
ンタン、アミロース、アミロペクチン、アルテルナン、ジェラン、ムタン、デキストラン
、プルラン、フルクタン、ローカストビーンガム、カラギーナン、グリコーゲン、グリコ
サミノグリカン、ムレイン、細菌被膜多糖類、及び同様のもの並びにこれらの組み合わせ
からなる群から選択される。
【0048】
一実施形態は、以下の組み合わせを含むバインダーの使用方法を含む。
- 水溶性ポリマー又はこのようなポリマーの混合物によって形成されるバインダーの
第1の部分
- 水分散性ポリマー又はポリマー混合物によって形成されるバインダーの第2の部分
【0049】
一実施形態では、第1の部分(水溶性ポリマー又はこのようなポリマーの混合物によっ
て形成される)と第2の部分(水分散性ポリマー又はポリマー混合物によって形成される
)との間の重量比は、1:20~20:1、特に1:10~10:10、例えば1.5:
10~2:20である。
【0050】
水溶性ポリマー及び水分散性ポリマーの両方を含むバインダーは、水分散性シート又は
ウェブの繊維層の形成に使用する総バインダーの少なくとも一部、好ましくは大部分、特
に75~100重量%、有利には90~100重量%を形成する。
【0051】
上記で言及したように、水分散性複合構造体は、主に水素結合及び接着結合によって互
いに保持される繊維網を含む。しかし、繊維網の特性、特に化学的若しくは物理的又はそ
の両方の特性を変更する他の成分も存在し得る。
【0052】
一実施形態では、繊維ウェブ又はシートは、サイジング剤、特に反応性サイジング剤を
さらに含有する。このような薬剤の例は、アルキルケテンダイマ(慣用的に略語「AKD
」と呼ばれる)及びアルケニルコハク酸無水物(「ASA」)である。
【0053】
サイジング剤は、別々に添加することができる。しかし、一実施形態では、サイジング
剤は1つ以上のバインダーと混合される。
【0054】
サイジング剤は、繊維層の乾燥重量に応じて、0.01~10%、特に0.1~5%、
例えば0.15~3%の量で添加することができる。
【0055】
一実施形態では、木質繊維と、短繊維と、バインダー又はバインダー組成物と、を含む
層を含有する水分散性複合構造体の製造方法は、以下のステップを含む。
- 水性繊維スラッシュを有孔支持体、すなわち、例えば湿式成形用の従来のワイヤに
運ぶステップ
- 有孔支持体を通して液体を排出して、繊維層を形成するステップ
- 繊維層上にバインダーを塗布して、繊維を互いに少なくとも部分的に結合するステ
ップ。
【0056】
典型的には、本繊維層において、繊維は、水素結合及び/又は接着結合によって繊維網
を形成する。
【0057】
一実施形態では、繊維層は、任意の時点で乾燥及び任意のカレンダー処理をされて、繊
維ウェブ又はシートを形成する。
【0058】
一実施形態では、上記の方法は、抄紙機又は板紙機械又は湿式不織布機械で行う。
【0059】
典型的には、この処理は、任意の水流交絡ステップを伴わない。
【0060】
一実施形態では、バインダーを、発泡水性組成物として繊維層上に塗布する。このよう
な組成物は、分散した水分散性ポリマーをさらに含有する水溶性ポリマーの水溶液を含む
ことができる。
【0061】
一実施形態では、ワイヤ又は他の有孔支持体上に供給される繊維スラッシュは、セルロ
ース繊維、リグノセルロース繊維、又はこれらの混合物と共に、人工繊維若しくは天然非
木材繊維、又はこれらの組み合わせを含む。水性スラッシュの濃度は、例えば0.01~
5重量%、特に0.1~2重量%である。
【0062】
一実施形態では、バインダー組成物は、バインダーの乾燥物及び繊維層の繊維部分の乾
燥物に基づいて計算される、バインダーの0.1~20重量%、例えば0.1~15重量
%、特に1.5~10重量%の量を添加される。
【0063】
一実施形態では、バインダーは、「所定の段階で」繊維層上に塗布される。このように
バインダーは、最終的な乾燥状態まで乾燥する前に、又は乾燥後にのみ、繊維層上に塗布
することができる。
【0064】
一実施形態では、バインダーは、90~10%の含水率を有する繊維層上に塗布される
。
【0065】
一実施形態では、バインダーは、約85~65重量%の含水率を有する繊維層上に塗布
される。別の実施形態では、バインダーは、約2~10重量%の含水率を有する繊維層上
に塗布される。
【0066】
一実施形態では、バインダーを繊維層上に塗布してから繊維層をプレスする。好ましく
はこのようなプレスをして水分を除去してから、さらなる乾燥及びカレンダー処理をする
。
【0067】
一実施形態では、バインダーは塗布時間に関係なく、典型的には約10重量%未満の含
水率を有する繊維層上に、ドクターブレードを用いて、塗布ロールを用いて塗布される。
別の実施形態では、バインダーは、典型的には60重量%以上の含水率を有する繊維層上
に、真空強化法、非接触塗布、又はこれらの組み合わせによって塗布される。
【0068】
バインダーは、繊維層の少なくとも片側、好ましくは両側に塗布されるか、又は代替的
に若しくは加えて、吸引又は減圧(「真空」)を用いて塗布される。
【0069】
上述のように、「バインダー」は、1つ以上の物質を含むことができる。バインダーは
、水溶液として若しくは水性分散液として、又はこれらの混合物として塗布することがで
きる。
【0070】
一実施形態では、バインダーは、1~50重量%、例えば1~30重量%、特に2.5
~25重量%の乾燥物含有量を有する水性組成物を含み、この水性組成物は、少なくとも
1つの水溶性ポリマー及び少なくとも1つの水分散性ポリマーを含有する。
【0071】
一実施形態では、バインダーは、少なくとも1つの水溶性ポリマー及び少なくとも1つ
の水分散性ポリマーを、1:20~20:1、特に1:10~10:10の重量比で含有
する。重量比は、ポリマーの乾燥重量に基づいて計算される。
【0072】
上記に列挙したバインダーのうち、特に有利な種は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸
ビニル分散液、エチルビニルアルコール分散液、ポリウレタン分散液、アクリルラテック
ス、スチレンブタジエン分散液、微細セルロースに基づくバインダー、セルロース誘導体
に基づくバインダー、生体高分子、並びにこれらの組み合わせ及び混合物の群から選択さ
れるポリマーによって表される。
【0073】
このように、一実施形態では、バインダーは、水溶性ポリマーを水に溶解して前記ポリ
マーの水溶液を形成し、続いて水分散性ポリマーを前記水溶液に分散させることによって
得られる水性組成物である。
【0074】
バインダーは、例えば以下のステップによって調整される水性組成物を含むことができ
る。最初に、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル並びにこれらの組み合わせの群か
ら選択する少なくとも1つの水溶性ポリマーを、10~100℃、特に15~100℃の
温度で、周囲圧力で水に溶解して、ポリマーの水溶液を形成するステップと、続いて、ポ
リウレタン分散液、アクリルラテックス、スチレンブタジエン分散液、バインダーの群か
ら選択する少なくとも1つのポリマーを、20~100℃の温度で、周囲圧力で溶液中に
分散させるステップ。
【0075】
バインダー組成物の調製は、水相を強力に混合して任意に剪断力を加えることによって
、混合機又は分散機で行うことができる。
【0076】
好ましくは、バインダーは、安定分散液として提供される。
【0077】
一実施形態では、「安定分散液」とは、室温で24時間放置するとき、分散液から沈降
する分散固形物の重量が20%未満、特に10%未満、好適には5%未満であることを意
味する。
【0078】
一実施形態では、分散液は、分散剤をさらに含有する。このような分散剤は、分散固体
物質の5重量%まで、特に2.5重量%までの量で存在し得る。
【0079】
一実施形態では、水に分散可能なポリマーを水溶性ポリマーの水溶液に分散させること
によって得られるバインダー組成物を、次いで発泡させてから繊維層上に塗布する。
【0080】
実際に使用するバインダーに応じて、界面活性剤又は発泡剤を添加して、組成物を発泡
させることができる。界面活性剤又は発泡剤は、分散液の0.01~15重量%、特に0
.1~10重量%の量で添加することができる。しかし、一実施形態では、水性組成物は
界面活性剤不在下で発泡する。
【0081】
一実施形態では、発泡バインダー組成物は、40~80体積%、特に55~75体積%
の気体、特に空気を含む。
【0082】
本水分散性複合構造体は、典型的には10~250g/m2、特に約20~200g/
m2の坪量を有する繊維ウェブ又はシートを含む。このような繊維ウェブ又はシートは、
好ましくは不織布ウェブ又は紙ウェブ及びシートの群から選択される。
【0083】
本技術による材料は、優れた特性を有する。したがって、調製後、繊維シート又はウェ
ブは、部分的には繊維間の水素結合によって、及び部分的に繊維間の接着結合によって達
成される良好な機械的特性を示す。水流交絡又はスパンレーシングを必要としない。
【0084】
上述のように、本種の組成物は、紙及び板紙産業で従来使用されているように、好まし
くはパルパー中で分解可能である。
【0085】
このように一実施形態では、繊維ウェブ又はシートは、スラッシング時に水性媒体中に
分散可能である。一実施形態では、繊維ウェブ又はシートは、10~75℃の温度及びp
H6~8で、典型的には1~40重量%、例えば2~35重量%の濃度で、水等の水性媒
体中に分散可能である。
【0086】
以下で議論される実施例が示すように、材料中のバインダーはパルプ化中に容易に崩壊
するため、繊維が放出され、回収及びリサイクルされ得る。
【0087】
以下の非限定的な実施例は、本技術の実施形態を例示する。
【実施例0088】
本実施例では、本技術による水溶性ポリマー、水分散性ポリマー及び疎水性剤のバイン
ダー系で結合される繊維マトリックスの消費後シミュレーションの一実施形態を、パイロ
ット環境で評価した。
【0089】
試験のために、バインダー系で結合される繊維マトリックス450kgをパイロット湿
式成形処理で製造した。本発明の繊維マトリックスは、以下の繊維成分及びバインダー系
を含む。
【0090】
繊維成分:
- 漂白針葉樹松クラフトパルプ、未精製:繊維マトリックスの60重量%
- 長さ6mm、厚さ1.7dtexの人工繊維:繊維マトリックスの30重量%
【0091】
バインダー系:
- 水分散性ポリマー:バインダー系の12重量%
- 水溶性:バインダー系の4重量%
- 疎水剤:バインダー系の1.00重量%
【0092】
製造後、本材料を、JPロータ及びφ20mmスクリーンプレートを含むOptiSl
ushBaleパルパー中で再パルプ化した。再パルプ化処理条件は以下の通りである。
- 濃度:7.45%
- 温度:45°C
- 時間:20分
- pH:6.9
- エネルギー原単位:59,4kWh/トン
【0093】
Somervilleフレーク(TAPPI T275)の量は35.3%であり、こ
れは人工繊維及び水分散性ポリマーの量に匹敵する。この試験は、バインダー系が従来の
再パルプ化系に溶解し、パルプ繊維が考えられることを示した。さらに、パルプ繊維を粗
選別で他の成分から分離し、新しい消費者製品、すなわち紙に再利用し得る。