(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096766
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】繊毛病の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240709BHJP
A61K 33/14 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240709BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P43/00 ZNA
A61K48/00
A61K38/17
A61K33/14
A61P43/00 121
A61K31/198
A61K47/18
A61K47/10
C12N15/11 Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060297
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2021547511の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】19157210.6
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】512024886
【氏名又は名称】エスリス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ethris GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベレナ ムマート
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ クービッシュ-ドーメン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ドーメン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ガイガー
(72)【発明者】
【氏名】マニッシュ アネージャ
(72)【発明者】
【氏名】ルードヴィヒ ウェイス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイムート オムラン
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ ペネカンプ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ウォールゲムート
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ シンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ニキ トーマス ローゲス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンナ レイド
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン テア スティーグ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】繊毛病の治療に使用する医薬組成物および毛様体形成に対する効果を分析する方法を提供する。
【解決手段】繊毛病に罹患している対象において繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記ポリリボヌクレオチドは、欠損が繊毛病に関連するタンパク質の機能的バージョンをコードし、かつ、前記医薬組成物の前記対象の呼吸器系への投与は、前記対象が呼吸器系の炎症を示す場合に行われる、医薬組成物を提供する。さらに、本開示は、ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を分析する方法であって、前記ポリリボヌクレオチドは、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされるタンパク質をコードする、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊毛病に罹患している対象において繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチ
ドを含む医薬組成物であって、前記ポリリボヌクレオチドは、欠損が前記繊毛病に関連す
るタンパク質の機能的バージョンをコードし、かつ、前記医薬組成物の前記患者の呼吸器
系への投与は、前記患者が前記呼吸器系の炎症を示す場合に行われる(effected
)、医薬組成物。
【請求項2】
前記繊毛病が、原発性繊毛機能不全症(PCD)である、前出請求項のいずれかに記載
の繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項3】
前記繊毛病が、コイルドコイルドメイン含有40(CCDC40)タンパク質の欠損お
よび/またはコイルドコイルドメイン含有39(CCDC39)タンパク質の欠損に関連
する、前出請求項のいずれかに記載の繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチ
ドを含む医薬組成物。
【請求項4】
繊毛病に罹患している対象の呼吸器系の炎症の有無が、血液試料を分析することによっ
て、および/または吐き出された一酸化窒素の量を分析することによって決定される、前
出請求項のいずれかに記載の繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む
医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物の投与が、鼻腔スプレーおよび/またはネブライザーを使用する投与お
よび/または吸入による投与を含む、前出請求項のいずれかに記載の繊毛病の治療に使用
するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、週あたり少なくとも1回および/または少なくとも4週間の間投与
される、前出請求項のいずれかに記載の繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオ
チドを含む医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、N-アセチルシステイン(NAC)および/または、塩化ナトリウ
ムを含む高張溶液をさらに含む、前出請求項のいずれかに記載の繊毛病の治療に使用する
ためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、multiciliate differentiation a
nd DNA synthesis associated cell cycle(M
CIDAS)タンパク質をコードするポリリボヌクレオチドをさらに含み、かつ/または
、前記医薬組成物が、MCIDASタンパク質をコードするポリリボヌクレオチドを含む
第2の医薬組成物と一緒に投与される第1の医薬組成物である、前出請求項のいずれかに
記載の繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、式(V):
【化1】
に示される構造を有するリピドイドをさらに含む、前出請求項のいずれかに記載の繊毛病
の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
欠損が繊毛病に関連するタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド、およびN-ア
セチルシステイン(NAC)、塩化ナトリウムを含む高張溶液、ならびに/あるいはLF
92製剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を分析する方法であって、前記ポリリ
ボヌクレオチドは、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされるタンパク質をコー
ドし、該方法は、以下の工程を含む、方法:
(a) 繊毛病を有する対象の鼻ブラシを得る工程であって、該鼻ブラシは、未分化基底
細胞および分化した繊毛細胞を含む、工程、
(b) 未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を得るために、工程(a)から得られた細
胞を、水中細胞培養物として培養する工程、
(c) 工程(b)から得られた未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を、気液界面細胞
培養物として培養し、エアリフトを実施する工程、
(d) 工程(c)から得られた細胞を、毛様体形成に関連および/または必要なタンパ
ク質をコードするポリリボヌクレオチドでトランスフェクトする工程、
(e) 分化した繊毛細胞を得るために、工程(d)から得られたトランスフェクトされ
た細胞を培養する工程、および
(f) 前記ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を、乳酸デヒドロゲナーゼ
測定、NucGreenアッセイ、高速ビデオ顕微鏡法、毛様ビート周波数測定、粘膜毛
様クリアランスアッセイ、および/または免疫蛍光染色を用いて決定する工程。
【請求項12】
前記細胞が、工程(c)において前記エアリフトを実施した後0~48時間以内にトラ
ンスフェクトされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされるタンパク質をコードす
るポリリボヌクレオチドで、式(V)に示される構造を有するリピドイドを用いてトラン
スフェクトされる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、工程(b)~(e)において培地Gを用いて培養される、請求項11~1
3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記鼻ブラシが、線維芽細胞をさらに含み、かつ、前記線維芽細胞の増殖が、工程(b
)~(e)において阻害される、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊毛病に罹患している対象において繊毛病の治療に使用するためのポリリボ
ヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記ポリリボヌクレオチドは、欠損が前記繊毛
病に関連するタンパク質の機能的バージョンをコードし、かつ、前記医薬組成物の前記対
象の呼吸器系への投与は、前記対象が前記呼吸器系の炎症を示す場合に行われる(eff
ected)、医薬組成物に関する。本発明はさらに、ポリリボヌクレオチドの毛様体形
成に対する効果を分析する方法であって、前記ポリリボヌクレオチドは、毛様体形成に関
連するおよび/または必要とされるタンパク質をコードする、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素は、細胞のエネルギー供給にとってきわめて重要であるため、多くの多細胞生物に
とってきわめて重要である。哺乳動物では、空気中に含まれる酸素が呼吸に関連する器官
を指す呼吸器系を介して生物に入ることができる。これらには、例えば、鼻、喉、喉頭、
気管、気管支、および肺が含まれる。後者において、環境からのガスは内部血液循環系に
含まれるガスと交換され、これは酸素を肺から生物の異なる部分の細胞に輸送する。しか
しながら、必要とされる酸素の他に、汚染物質、病気を引き起こす物質および病原体(例
えば、ウイルスおよび細菌)を含む、空気中に含まれる刺激物質のような他の成分も、呼
吸器系を介して生物に入り得る。したがって、呼吸器系から刺激剤を排出するための咳反
射やくしゃみ等の防御機構が存在する。排出のために、刺激剤は、呼吸器系の上皮細胞に
よって分泌され、その後、繊毛細胞によって上皮表面を横切って輸送される粘稠な粘液中
に埋め込まれる。
【0003】
繊毛細胞は、多動性の運動性繊毛の同期拍動によって、粘液や刺激剤を上皮表面を横切
って輸送することができる。毛様体は膜で囲まれた管状構造であり、上皮表面から、環境
と接触している呼吸器系の空間内に延びている。細胞内では、繊毛の軸糸は固定構造を介
して基底小体に固定されている。軸糸は微小管の中心束で、9本の外側のダブレット微小
管が中心の一対のシングレット微小管(すなわち呼吸繊毛)を取り囲んでいる。外側のダ
ブレット微小管と中心の微小管対は放射状のスポークでつながっている。9本の外側のダ
ブレット微小管はそれぞれA管およびB管からなり、そのダブレットはネキシン-ダイニ
ン調節複合体によって円周状に結合している。内ダイニン腕と外ダイニン腕はそれぞれの
A管につながっている。これらのダイニンアームは微小管に沿って歩くことができるモー
タンパク質を含み、これは、曲がり、したがって繊毛の拍動をもたらす(例えば、Lod
ish et al, 2000, Molecular Cell Biology,
4th edition, New York: W. H. Freeman, S
ection 19.4を参照)。モデルTrypanosoma bruceiを用い
た毛様体構造の研究は、これらの構造部品のいくつかが急速な代謝回転を示すのに対して
、放射状スポーク、中央対および外側ダイニンアームの骨格成分は発生の間に毛様体構造
の遠位端に主に組み込まれることを示した(Vincensini et al., B
iol Cell, 2018, 110:1-15)。
【0004】
繊毛細胞の同期叩解は、上皮表面を横切る体液の輸送に不可欠であるため、繊毛構造の
乱れは重篤な障害を引き起こす可能性がある。拍動および/または非同期性の減少した振
幅および/または周波数を含む運動性欠損は例えば、ダイニンアームの減少または喪失、
ミスローカライゼーションを含む微小管配置の解体、および軸索あたりの微小管の総数の
変化、ならびにそれらの組合せの結果として生じ得る。既知の限り、これらの機能的軸糸
元素の変化は、根底にある遺伝的欠損によって引き起こされる。これらは主に、上記のも
のを含む軸糸成分をコードする遺伝子の配列の変化によるものである。遺伝子はmRNA
のようなポリリボヌクレオチドに転写され、次にタンパク質に翻訳され得るので、遺伝子
のDNA配列は量および機能性の観点から、それぞれのタンパク質の合成に影響を及ぼす
。繊毛障害、すなわち、塩基配列の変化によって引き起こされる繊毛障害は遺伝するため
、胚または新生児を含むすべての発生段階における繊毛の運動障害と関連していることか
ら、繊毛障害は生体にとって重大な結果をもたらす可能性がある。
【0005】
繊毛障害の周知な例は、肺機能の低下としばしば関連する進行性疾患である原発性繊毛
ジスキネジア(PCD)である。このように、周波数の増加に伴い粘液クリアランスを高
めるため、また重症例では肺移植でも、例えば胸部打診や体位ドレナージを含む長期治療
が必要である。さらに、PCD患者はしばしば、低妊孕性、水頭症および身体の左右差、
すなわち、左右軸、欠損、ならびに網膜および/または神経学的問題からも、肺および/
または耳における再発性感染症に罹患している。しかし、ほとんどの繊毛病の深刻さにも
かかわらず、PCDのような繊毛病を扱うための標準化された効果的な戦略は、これまで
のところ存在していない。現在の治療法は例えば、嚢胞性線維症から外挿され、ほとんど
の場合、例えばPCDのような、治療すべき特定の繊毛症について検証されていない。し
たがって、PCDのような繊毛病を患っている対象を効率的に治療することができるため
の解決策を手元に有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、特許請求の範囲に記載の実施形態を提供することによって、PCD等の繊毛
病に罹患している対象における繊毛機能を回復させる必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に、本発明は、繊毛病に罹患している対象において繊毛病の治療に使用するためのポ
リリボヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記ポリリボヌクレオチドは、欠損が前
記繊毛病に関連するタンパク質の機能的バージョンをコードし、かつ、前記医薬組成物の
前記対象の呼吸器系への投与は、前記対象が前記呼吸器系の炎症を示す場合に行われる(
effected)、医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1:CCDC40 mRNAの翻訳効率。2/1.4/0.3/0.2/0.05x10^6 HEK293細胞を6ウェルプレートに播種した。Lipofectamine2000を用いて、種苗細胞を、異なるCCDC40構築物(ETH031T06-T10、2.5μg/9.5cm
2)で24時間トランスフェクトした。トランスフェクションの6、24、48、72および144時間後に細胞溶解を行った。50μgの総タンパク質溶解物をSDS-PAGEおよびウェスタンブロットで分析した。CCDC40はAtlas Antibodies由来の抗CCDC40抗体(HPA022974)(1:2000)を用いて検出され、GAPDHはローディング対照としての役割を担った。GFPは、トランスフェクションコントロールとしての役割を担った。
【
図2】
図2:BEAS-2B、RPMI2650、およびHEK293細胞におけるCCDC40 mRNA構築物の翻訳効率:2x10^6 HEK293、7.5x10^5 BEAS-2B、および5x10^5 RPMI 2650細胞を6ウェルプレートに播種した。播種の24時間後、細胞を、Lipofectamine2000を使用して、異なるCCDC40構築物(2.5μg/9.5cm
2)でトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後に細胞溶解を行った。タンパク質溶解物をSDS-PAGEおよびウェスタンブロット(HEK293:50μg、RPMI 2650:20μg、BEAS-2B:総溶解物30μg)で分析し、Atlas Antibodies(1:2000)からの抗CCDC40抗体(HPA022974)を用いてCCDC40を検出した。
【
図3】
図3:LF92/CCDC40トランスフェクション後の高速ビデオ顕微鏡(HSVM)結果。患者由来のALI培養物を、3μgのLF92/CCDC40で1日おきにトランスフェクトした。トランスフェクションの前およびトランスフェクションの24時間後ごとに、ビデオ(インサートあたり20)を採取し、SAVA(Sisson-Ammonsビデオ分析)ソフトウェアを用いてCFB(毛様拍動頻度)を計算した。16個全部のトランスフェクション(1ヶ月)を行った。測定は、40倍のマグニフィケーションを用いて37℃で行った。毛様体拍動周波数測定値の平均値を計算する(全磁場解析、WFA)。
【
図4】
図4:粘膜繊毛クリアランス(MCC)は、Z-投影およびポーラーグラフとして示される。CCDC40患者ALI培養物を、3μg/インサートの濃度のCCDC40 mRNA/LF92で、エアリフトで18日間トランスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。粘膜繊毛クリアランス(MCC)を、0.5μm蛍光ビーズを用いて20倍の倍率で測定した。異なる領域の30のビデオを撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分析した。1つの例示的な写真が示されている。
【
図5】
図5:健常(右下)制御のtdTomatoおよびポーラーグラフについて、Z投影(左上)およびポーラーグラフ(右上)として示される粘膜繊毛クリアランス(MCC)。上段:ALI培養においてCCDC40変異を有する患者からの細胞を、エアリフトの18日後に、3μg/インサートの濃度でtdTomato mRNA/LF111でトランスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。粘膜繊毛クリアランス(MCC)を、0.5μm蛍光ビーズを用いて30倍の倍率で測定した。異なる領域の20のビデオを撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分析した。1つの例示的なビデオが示された。右下:健康なWT ALI培養物の粒子追跡。MCCは、0.5μmの蛍光ビーズを用いて20倍の倍率で測定した。異なる領域の20のビデオを撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分析した。1つの例示的な画像および2つの分析されたROIが示されている。
【
図6】
図6:ALI培養におけるCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、空気リフト時に18dの3μg/挿入物の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCCDC40 mRNA/LF92のいずれかでトランスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。対照として、健康な鼻ブラシからのWT ALIを使用した。CCDC40 mRNAおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで切断し、抗GAS8(赤色)、抗アセチル化チューブリン(緑色)およびDAPI(青色)で染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示されている。スケールバーは10μmを表す。
【
図7】
図7:ALI培養物中のCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、3μg/挿入物の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCCDC40 mRNA/LF92のいずれかでトランスフェクトし、空気リフト時に18dトランスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。対照として、健常対照からのALIを使用した。CCDC40 mRNAおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで切断し、防DNALI1(赤色)、防アセチル化チューブリン(緑色)およびDAPI(青色)で染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示されている。スケールバーは10μmを表す。
【
図8】
図8:ALI培養におけるCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、空気リフト時に18dの3μg/挿入物の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCCDC40 mRNA/LF92のいずれかでトランスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。対照として、健常対照からのALIを使用した。CCDC40 mRNAおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで切断し、抗CCDC39(1:200、赤)、抗アセチル化チューブリン(1:10.000、緑)およびDAPI(青)で染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示されている。拡大率40倍。
【
図9】
図9:HEK-293およびBEAS-2BにおけるCCDC39タンパク質(110kDa)発現、トランスフェクション後6時間および24時間。1.4x10^5 HEK-293細胞および3.5x10^5 BEAS-2B細胞を6つのウェルプレートでシードし、CCDC39-RNA(ETH047T02、ミニマル5’UTR、Lipofectamine MessengerMax;比1:1.5)でトランスフェクトした。6時間および24時間後、細胞をM-PERおよびTriton(登録商標) X-100緩衝液で溶解した。50 μgのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。対照として、非トランスフェクト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞の溶解物を使用した。高用量=0.5μg/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。
【
図10】
図10:未処理ALI培養物におけるCCDC39タンパク質(110kDa)式。2つの挿入を、軸索抽出プロトコールを使用して抽出した。30、10および5μLのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。Active Area: Insert 39.9 = 71.25%、Insert 41.2 = 59.88%
【
図11】
図11:プロテアソーム阻害剤処理後の16HBE14におけるCCDC39タンパク質(110kDa)式。6.0x10^5×16HBE14ocellを6ウェルプレートに播種し、CCDC39-RNA(Lipofectamine MessengerMax;比 1:1.5)をトランスフェクトした。6時間後、細胞をM-PER緩衝液で溶解した。20 μgのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。対照として、非トランスフェクト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞の溶解物を使用した。高用量=0.5μg/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。RNA:ETH047T02:ミニマル5’UTR、ETH047T03:TISU、ETH047T04:CYBA、ETH047T05:SP30。
【
図12】
図12:プロテアソーム阻害剤での16HBE14oafter処理におけるCCDC39タンパク質(110kDa)式。6.0x10^5 16HBE14ocellを6ウェルプレートにシードし、CCDC39-RNA(ETH047T03、TISU 5’UTR、Lipofectamine Messenger Max;比1:1.5)でトランスフェクトした。24時間後、細胞をM-PER緩衝液で溶解した。20μgのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。対照として、非トランスフェクト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞の溶解物を使用した。高用量=0.5μg/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は細胞(繊毛のタンパク質複合体の特定のタンパク質に欠損を示し、その欠損が
適正繊毛機能の喪失をもたらす)を、前記タンパク質の機能的バージョンをコードするポ
リリボヌクレオチドでトランスフェクトすることによって、適正繊毛機能を実際に回復さ
せることが可能であるという知見に基づく。しかし、この効果を得るためには、繊毛細胞
を分化の初期段階でトランスフェクトしなければならないこともわかった。このことは、
繊毛を担う上皮細胞の前駆細胞、すなわち基底細胞は上皮内のより深く下方に位置し、表
面に露出していないため、気道系を介したトランスフェクションのためにアクセスできな
いため、実用上の問題につながる。本発明によれば、ポリリボヌクレオチドの投与による
上皮細胞のトランスフェクションは、繊毛病を患う対象が呼吸器系の炎症を示す場合に行
われる。呼吸器系の炎症の間、気道上皮は繊毛細胞の前駆細胞、すなわち繊毛形成をまだ
開始していない基底細胞を接近できるようにする病変および傷を示す。それぞれのタンパ
ク質の機能的バージョンを発現する上記のようなポリリボヌクレオチドでこれらの細胞を
トランスフェクトすることは、これらの細胞を、それぞれの症状の実質的な軽減を導き得
る機能的繊毛または少なくとも部分的に機能的繊毛を形成する細胞にすることを可能にす
る。
【0010】
本発明の文脈において、用語「繊毛病」は、繊毛細胞の欠損に関連するおよび/または
それによって特徴付けられる疾患をいう。このように、毛様症は、毛様固定構造、毛様構
造が細胞内に固定されている基底小体、および/または毛様機能を含む、毛様構造の障害
を含む。繊毛病の例には、PCD、Bardet-Biedl症候群、Simpson-
Golabi-Behmel症候群(2型)、leber先天性黒内障、ネフロン癆、頭
蓋外胚葉形成異常症(Sensenbrenner)が含まれる(例えば、Mitchi
son et al., 2017, Ultrastructural Pathol
ogy,41(6):415-427を参照)。
【0011】
本明細書中で使用される用語「繊毛病」は、対象のDNAにおける遺伝的欠損、例えば
、染色体またはミトコンドリアDNAによって引き起こされる繊毛病を指す。このような
遺伝的欠損は、変異によって引き起こされ得、配列部分の喪失、付加または交換を含み得
る。例は、コピー数変異、有無変異、欠損(全部または部分的)、挿入、ミスセンス変異
、ナンセンス変異、スプライス部位変異、またはそれらの組合せである。DNAにおける
このような変化は、コードされたタンパク質の利用可能性の変化(例えば、タンパク質の
損失または量の低下)、または改変された機能を有するタンパク質をもたらし得る。
【0012】
好ましい実施形態では「繊毛病」という用語が運動性繊毛運動障害(PCD)に関連す
る疾患を意味する。PCDが運動性繊毛の機能不全によって引き起こされるまれな疾患で
ある。PCDが遺伝的、機能的および超微細構造レベルでは不均一である。PCDに罹患
している対象は再発性の鼻閉、副鼻腔感染、耳感染、全逆位および異所性等の不妊症、な
らびに/または水頭症を示す。分子レベルではPCDがほとんどの場合、呼吸器系の繊毛
の構造、機能、および生合成の異常と関連している。そのような異常の例はダイニンアー
ムの欠如または短縮、複合体、放射状スポークまたはネキシンリンクである。このような
異常、したがって、PCDに関連する毛様体運動性の欠損はそれぞれの構成要素をコード
する遺伝子の変異によって、特に、グループ「A」および「A」に列挙される遺伝子の変
異によって引き起こされる「B」は、それぞれPCD症例の少なくとも1%および1%未
満を占めると推定される病原性変異を有する遺伝子を指す(Zariwala et a
l., GeneReviews(登録商標) , 2007, updated 20
15, Primary Ciliary Dyskinesia, editors
Adam et al., Seattle (WA): University of
Washington, Seattle; 1993-2018を参照)。
【0013】
したがって、本発明による医薬組成物に含まれるポリリボヌクレオチドは、好ましくは
表1に列挙されるタンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るポリリボヌクレオチドで
ある。
【0014】
より好ましくは、本発明の医薬組成物に含まれるポリリボヌクレオチドは、DNAH5
、DNAH11、CCDC39、DNAI1、CCDC40、CCDC103、SPAG
1、ZMYND10、ARMC4、CCDC151、DNAI2、RSPH1、CCDC
114、RSPH4A、DNAAF1(LRC50)、DNAAF2(KTU)、および
LRRC6からなる群より選択されるタンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmR
NAである。
【0015】
【0016】
本開示の前記のまたは他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
ポリリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドは、配列番号1または5~11の
1つ以上(例えば、配列番号1または5~11に記載の配列)と少なくとも85%、少な
くとも90%、少なくとも92%または少なくとも95%同一(例えば、少なくとも95
、96、97、98、99または100%同一)である一次配列を含む。いくつかの実施
形態では、ポリリボヌクレオチドは、本明細書に記載の任意のそのようなレベルおよび/
またはタイプから選択される修飾のレベルおよび/またはタイプを有する修飾ポリリボヌ
クレオチドである。特定の実施形態において、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一性
は、配列番号1または5~11のCCDC40コード配列部分に関してのみ測定される(
例えば、パーセント同一性を計算する場合、UTR、他の非コード配列およびGFPまた
はエピトープタグは考慮されない)。前記のいずれかの特定の実施形態において、このよ
うなポリリボヌクレオチド(または修飾ポリリボヌクレオチド)は、機能的CCDC40
タンパク質をコードする。
【0017】
本開示の前記のまたは他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
ポリリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドが配列番号2または12~14の
1つ以上(例えば、配列番号2または12~14に記載の配列)と少なくとも85%、少
なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%同一(例えば、少なくとも
95、96、97、98、99または100%同一)である一次配列を含む。いくつかの
実施形態では、ポリリボヌクレオチドが本明細書に記載の任意のそのようなレベルおよび
/またはタイプから選択される修飾のレベルおよび/またはタイプを有する修飾ポリリボ
ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一
性は配列番号2または12~14のCCDC39コード配列部分に関してのみ測定される
(例えば、パーセント同一性を計算する場合、UTR、他の非コード配列およびGFPタ
グまたはエピトープタグは考慮されない)。前記のいずれかの特定の実施形態において、
このようなポリリボヌクレオチド(または修飾ポリリボヌクレオチド)は、機能的CCD
C39タンパク質をコードする。
【0018】
本開示の上記または他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ポ
リリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドが配列番号4(例えば、配列番号4
に示される配列に対して)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、
または少なくとも95%同一(例えば、少なくとも95、96、97、98、99または
100%同一)である一次配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリリボヌクレオチド
が本明細書に記載の任意のそのようなレベルおよび/またはタイプから選択される修飾の
レベルおよび/またはタイプを有する修飾ポリリボヌクレオチドである。特定の実施形態
において、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一性は配列番号4のMCIDASコード
配列部分に関してのみ測定される(例えば、パーセント同一性を計算する場合、UTR、
他の非コード配列およびGFPまたはエピトープタグは考慮されない)。前記のいずれか
の特定の実施形態では、そのようなポリリボヌクレオチド(または修飾ポリリボヌクレオ
チド)が機能性MCIDASタンパク質をコードする。
【0019】
特定の実施形態では、本開示が前記のポリリボヌクレオチドのいずれかを含む医薬組成
物を提供する。さらに、任意のこのようなポリリボヌクレオチド(または医薬組成物)は
、本明細書中に記載される任意の方法において使用され得る。
【0020】
繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の一実施形態で
は、前記繊毛病は、コイルドコイルドメイン含有40(CCDC40;ヒトmRNAおよ
びタンパク質CCDC40配列についてはそれぞれ、例えば、NCBI参照配列NM_0
17950.4およびNP_060420.2を参照)タンパク質の欠損、またはコイル
ドコイルドメイン含有39(CCDC39;ヒトmRNAおよびタンパク質CCDC39
配列についてはそれぞれ、NCBI参照配列NM_181426.2およびNP_852
091.1を参照)タンパク質の欠損に関連する。
【0021】
CCDC40およびCCDC39は、放射状スポークとA管との間に位置する錯体を構
築する。CCDC40またはCCDC39タンパク質の欠損版は、CCDC40遺伝子、
または挿入、欠損、ナンセンスおよびスプライス部位変異等のCCDC39遺伝子の変異
によって引き起こされ得る。特に、CCDC40タンパク質をコードするDNA配列中の
位置248の欠損および位置2824から2825の間のTGT挿入は、かなり高頻度で
あると思われる。CCDC40またはCCDC39の欠損版は軸索の構造における欠損(
例えば、中央対の欠如または偏心、異常な放射状スポークおよびネキシン連結、ダイニン
調節複合体の異常なアセンブリ、および/または内側ダイニンアームの低下)を生じる。
したがって、本発明による医薬組成物に含まれるポリリボヌクレオチドは、好ましくはC
CDC40および/またはCCDC39の機能的バージョンに翻訳され得るmRNAであ
る。毛様体形成に関連するタンパク質、ならびに繊毛病に関連する遺伝子および分子経路
に関するさらなる情報は、例えば、Reiter and Lerouxの総説論文(R
eiter and Leroux, 2017, Nat Rev Mol Cell
Biol,18(9):533-547)に見出すことができる。
【0022】
本発明の医薬組成物は、繊毛病に罹患している対象に投与される。本明細書中、繊毛病
を患う対象は、患者と呼ばれることもある。患者は、気道における粘液およびバクテリア
の貯留をもたらす異常な毛様構造および/または機能、および/または生合成の欠損を示
すことがある。所与の対象についての繊毛病の診断は、例えば、Goutaki et
al. (Goutaki et al., 2016, Eur Respir J,
48(4):1081-1095)でも概説されているように、例えば、前記対象の生
検の臨床所見、分子分析および/または毛様超構造分析に基づいてもよい。
【0023】
本発明の文脈において、「ポリリボヌクレオチド」という用語はアデノシン、グアノシ
ン、シチジン、および/またはウリジン残基(修飾または非修飾形成、以下参照)から構
築された一本鎖配列を指す。本明細書において、「タンパク質をコードするポリリボヌク
レオチド」という用語はタンパク質をコードするコード領域を含むポリリボヌクレオチド
、すなわち、アミノ酸配列に翻訳することができるポリリボヌクレオチドを指す。したが
って、本発明の文脈において、「タンパク質をコードするポリリボヌクレオチド」という
用語は好ましくはmRNAを指し、mRNAは細胞に入った場合、タンパク質の発現に適
しているか、またはタンパク質に翻訳可能である任意のポリリボヌクレオチド分子を意味
すると理解されるべきである。
【0024】
本明細書において、「タンパク質」という用語は、任意の種類のアミノ酸配列、すなわ
ち、それぞれペプチド結合を介して連結された2つ以上のアミノ酸の鎖を包含する。この
文脈において使用される「タンパク質」という用語は対象となる任意のアミノ酸配列を指
す。好ましくはコードされるアミノ酸配列が少なくとも5アミノ酸長、より好ましくは少
なくとも10アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも50、100、200または5
00アミノ酸である。したがって、「タンパク質」という用語は短いペプチドおよびポリ
ペプチドを包含する。コードされるタンパク質の機能に関して、タンパク質の欠損変形例
が繊毛病に関連することを除いて、限定はない。本明細書において、「関連する」という
用語は「原因となる」、「関連する」および/または「増強する」という用語を包含する
ことを意図する。
【0025】
本明細書において、用語「その欠損を有するタンパク質」は、「欠損タンパク質」また
は「タンパク質の欠損バージョン」を指し、したがって、前記タンパク質の機能版と比較
して機能が変化したタンパク質の版を指す。しかし、この用語はまた、合成の完全なまた
は部分的な欠如、したがって、細胞における利用可能性を有する、該タンパク質のバージ
ョンを包含し得る。いずれの場合も、タンパク質バージョンの欠損は、タンパク質の天然
の機能を満たすことができない前記タンパク質のバージョンをもたらす。
【0026】
その天然の機能を満たすタンパク質のバージョンは、本明細書において「機能的タンパ
ク質」または「タンパク質の機能的バージョン」と呼ばれ、それぞれの欠損タンパク質と
同じDNA配列によってコードされるが、欠損がDNA配列の変化を引き起こすことなく
、したがってDNA配列の変異がない。
【0027】
したがって、本発明の文脈において、「機能性タンパク質」は、好ましくはA-チュー
ブルス、B-チューブルス、またはネキシン-ダイニン調節複合体、または放射状スポー
ク、内側ダイニンアーム、および/または外側ダイニンアームの構成単位である。
【0028】
したがって、用語「ポリリボヌクレオチドはその欠損が前記繊毛病に関連するタンパク
質の機能的バージョンをコードする」とは好ましくは繊毛軸索、軸索係留構造または基底
体の構造的構成に関連し、その本来の機能を果たす機能的タンパク質をコードするmRN
Aを指す。したがって、本発明によるポリリボヌクレオチドは好ましくは機能性タンパク
質をコードするmRNAを指し、その存在は、繊毛病に罹患している対象の細胞において
、細胞のDNA配列によってコードされる前記タンパク質の欠損に関連する前記繊毛病の
発現を中和または予防するか、または関連する症状を軽減するために必要であるか、また
は有益である。
【0029】
さらに、本発明にしたがって使用されるポリリボヌクレオチドはまた、さらなる機能的
領域および/または3’もしくは5’ノンコーディング領域を含み得る。3’および/ま
たは5’ノンコーディング領域は、コードされたタンパク質に天然に隣接する配列、また
は前記ポリリボヌクレオチドの安定化および/または調節に寄与する人工配列であり得る
。適切な配列は、日常的な実験によって同定および調査され得る。さらに、前記ポリリボ
ヌクレオチドはさらなる機能領域を有することもでき、例えば、タンパク質をコードする
配列を含む所望のポリリボヌクレオチドの活性を、例えば、特定の細胞または細胞型およ
び/または発生段階または特定の時間枠に関して、空間的および時間的に制御するために
、マイクロRNAの調節エレメントおよび標的配列と組み合わせることができる。
【0030】
本発明にしたがって使用されるポリリボヌクレオチドは、使用される天然配列に由来す
る部分的または完全なコドン最適化配列を含み得る。コドン最適化はいくつかの場合にお
いて、所定のアミノ酸についていくつかの種によって優先的に使用されるコドンが存在す
るように、それぞれのポリリボヌクレオチドの翻訳効率を増加させることによって、タン
パク質発現を最大化するために適用される技術をいう。さらに、前記ポリリボヌクレオチ
ドは、作用の持続時間を調節および/または延長するためのさらなる修飾を含んでもよい
。前記ポリリボヌクレオチドはまた、m7GpppGキャップ、内部リボソーム侵入部位
(IRES)、および/または3’末端のポリAテール、および/または翻訳を促進する
ためのさらなる配列を含み得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に従って使用されるポリリボヌクレオチ
ドは、未修飾および修飾ヌクレオチドを含有し得る。本明細書で使用される用語「非修飾
ヌクレオチド」はA、C、GおよびUヌクレオチドを指す。本明細書で使用される用語「
修飾ヌクレオチド」はA、C、GおよびUヌクレオチドの任意の天然に存在するまたは天
然に存在しない異性体、ならびに任意の天然に存在するまたは天然に存在するアナログ、
例えば化学修飾または置換残基を有するその代替または修飾ヌクレオチドまたは異性体を
指す。修飾ヌクレオチドは、塩基修飾および/または糖修飾を有することができる。修飾
ヌクレオチドはまた、例えば、mRNA分子の5プライムキャップに関して、リン酸基修
飾を有することができる。修飾ヌクレオチドには、ヌクレオチドの共有結合修飾によって
転写後に合成されるヌクレオチドも含まれる。さらに、修飾されていないヌクレオチドと
修飾されたヌクレオチドとの任意の適切な混合物が可能である。修飾ヌクレオチドの無限
数の例は、文献(例えば、Cantara et al., Nucleic Acid
s Res, 2011, 39(Issue suppl_1):D195-D201
; Helm and Alfonzo, Chem Biol, 2014, 21(
2):174-185; Carell et al., Angew Chem In
t Ed Engl, 2012, 51(29):7110-31)に見出すことがで
き、いくつかの好ましい修飾ヌクレオチドが、それらのそれぞれのヌクレオシド残基に基
づいて例示的に言及されている:
1-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデ
ノシン、2-メチルアデノシン、2’-O-リボシルホスフェートアデノシン、N6-メ
チル-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6-アセチルアデノシン、N6-グ
リシニルカルバモイルアデノシン、
N6-イソペンテニルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-スレオニルカルバモ
イルアデノシン、
N6,N6-ジメチルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシ
ン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、1,2’-O-ジメチルアデ
ノシン、N6,2’-O-ジメチルアデノシン、2’-O-メチルアデノシン、N6,N
6,2’-O-トリメチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソ
ペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、
2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニル
カルバモイルアデノシン、N6-2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノ
シン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、7-メ
チルアデノシン、2-メチルチオ-アデノシン、2-メトキシ-アデノシン、2’-アミ
ノ-2’-デオキシアデノシン、2’-アジド-2’-デオキシアデノシン、2’-フル
オロ-2’-デオキシアデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デ
アザ-アデノシン、7-デアザ-8-アザ-アデノシン、7-デアザ-2-アミノプリン
、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7
-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン;2-チオシチジン、3-メチルシチジン
、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、
5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ヒドロキシシチジン、リシジ
ン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、5-ホルミル-2’-O-メチルシチ
ジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、2-O-メチルシチジン、N4,2’-O-ジ
メチルシチジン、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン、イソシチジン、
シュードシチジン、シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2’-メチル-2’-
デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’-フルオロ-2’-デ
オキシシチジン、5-ヨードシチジン、5-ブロモシチジン、
2’-アジド-2’-デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’
-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-アザ-シチジン、3-メチル-シチジン、1
-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、
2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-l-メ
チル-シュードイソシチジン、4-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジ
ン、1-メチル-l-デアザ-シュードイソシチジン、2-メトキシ-シチジン、2-メ
トキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン、4-メトキシ-
l-メチル-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-
ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン;1-メチルグア
ノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、2’-O-リボシル
ホスフェートグアノシン、7-メチルグアノシン、ヒドロキシウィブトシン、7-アミノ
メチル-7-デアザグアノシン、7-シアノ-7-デアザグアノシン、N2,N2-ジメ
チルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,2’-O-ジメチ
ルグアノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、2’-O-メチルグアノシン、N2
,N2,2’-O-トリメチルグアノシン、
N2,N2J-トリメチルグアノシン、イソグアノシン、4-デメチルワイオシン、エポ
キシクエウオシン、
未修飾(undermodified)ヒドロキシウィブトシン、メチル化未修飾ヒドロ
キシウィブトシン、
イソウィオシン、ペルオキシウィブトシン、ガラクトシル-クエウオシン、マンノシル-
クエウオシン、
クエウオシン、アルケオシン、ウィブトシン、メチルウィオシン、ウィオシン、7-アミ
ノカルボキシプロピルデメチルウィオシン、7-アミノカルボキシプロピルウィオシン、
7-アミノカルボキシプロピルウィオシンメチルエステル、7-デアザ-グアノシン、7
-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グア
ノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-
チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-
メチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1
-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、N2,N2-
ジメチル-6-チオ-グアノシン、N1-メチルグアノシン、2’-アミノ-3’-デオ
キシグアノシン、2’-アジド-2’-デオキシグアノシン、2’-フルオロ-2’-デ
オキシグアノシン、2-チオウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウ
リジン、3-メチルウリジン、4-チオウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、5-
メチルアミノメチルウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-カルボキシメチルア
ミノメチルウリジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-タウリノメチ
ルウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウ
リジンメチルエステル、ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-メチルア
ミノメチル-2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-(
カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、5-(イソ
ペンテニルアミノメチル)ウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウ
リジン、3,2’-O-ジメチルウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-
O-メチルウリジン、5-カルバモイルヒドロキシメチルウリジン、5-カルバモイルメ
チル-2’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2-チオウリジン、5-メ
トキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-(イソペンテニルアミノムエ
チル)-2’-O-メチルウリジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、2’-O-メチ
ルウリジン、2’-O-メチル-2-チオールジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジ
ン、ウリジン5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、
ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メトキシウリジン、5-アミノメチル-2
-チオウリジン、
5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-
セレノウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-タウリノメチ
ル-2-チオウリジン、シュードウリジン、
1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン、1-メチ
ルシュードウリジン、3-メチルシュードウリジン、2’-O-メチルシュードウリジン
、5-ホルミルウリジン、5-アミノメチル-2-ゲラニルウリジン、5-タウリノメチ
ルウリジン、5-ヨードウリジン、5-ブロモウリジン、2’-メチル-2’-デオキシ
ウリジン、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン、2’-アジド-2’-デオキシウリ
ジン、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン、イノシン、1-メチルイノシン、1,
2’-O-ジメチルイノシン、2’-O-メチルイノシン、5-アザ-ウリジン、2-チ
オ-5-アザ-ウリジン、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、
5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロ
ピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュード
ウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-
ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-l-メチ
ル-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、1-メチル-l-デ
アザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒ
ドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリ
ジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュ
ードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、1,2’-O-ジメチルア
デノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、2,
8-ジメチルアデノシン、2-メチルチオメチレンチオ-N6-イソペンテニル-アデノ
シン、2-ゲラニルチオウリジン、2-リシジン、2-メチルチオ環状N6-スレオニル
カルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)
アデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2
-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、
2-セレノウリジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルアデノシ
ン、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルイノシ
ン、2’-O-メチルシュードウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチル
ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル、2’-O-リボシルアデノシンリン酸、2’-
O-リボシルグアノシンリン酸、3,2’-O-ジメチルウリジン、
3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-5,6-ジヒドロウリジン、3-(3-
アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン、5,2’-O-ジメチルシチジン
、5,2’-O-ジメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-
メチルウリジンメチルエステル、55-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メ
チルウリジン、5-アミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-アミノメチル-2-
セレノウリジン、5-アミノメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチ
ルウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシメチル-2-チ
オウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-カル
ボキシメチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-
2’-O-メチルウリジン、5-シアノメチルウリジン、5-ホルミル-2’-O-メチ
ルシチジン、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-メチルア
ミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、7-アミノカルボキシプロピル-デメチルウィ
オシン、7-メチルグアノシン、8-メチルアデノシン、N2,2’-O-ジメチルグア
ノシン、N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、
N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,N2,7-トリメチルグアノシン
、N2,N2,7-トリメチルグアノシン、N4,2’-O-ジメチルシチジン、N4,
N4,2’-O-トリメチルシチジン、N4,N4-ジメチルシチジン、N4-アセチル
-2’-O-メチルシチジン、N6,2’-O-ジメチルアデノシン、
N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン、N6-ホルミルアデノシン、N6-ヒド
ロキシメチルアデノシン、
アグマチジン、2-メチルチオ環状N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、グルタミ
ル-クエオシン、
任意のヌクレオチドに付加されたグアノシン、グアニル化5’末端、ヒドロキシ-N6-
スレオニルカルバモイルアデノシン;最も好ましくは、シュードウリジン、N1-メチル
-シュードウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-ヨードシチジン、
5-メチルシチジン、2-チオウリジン、5-ヨードウリジンおよび/または5-メチル
-ウリジン。
【0032】
さらに、用語「修飾ヌクレオチド」は重水素のような同位体を含有するヌクレオチドを
含む。用語「同位体」が同じ数の陽子を有するが、異なる数の中性子を有し、異なる質量
数をもたらす元素を指す。したがって、例えば水素の同位体は、重水素に限定されず、ト
リチウムも含む。さらに、ポリリボヌクレオチドはまた、例えば、炭素、酸素、窒素およ
び蛍光体を含む他の元素の同位体を含有することができる。修飾ヌクレオチドが重水素化
されているか、または水素もしくは酸素、炭素、窒素もしくは蛍光体の別の同位体を含有
することも可能である。
【0033】
ポリリボヌクレオチド中の修飾ヌクレオチド型の総数は、0、1、2、3、または4で
あり得る。したがって、いくつかの実施形態では1つのヌクレオチド型の少なくとも1つ
のヌクレオチド、例えば、少なくとも1つのUヌクレオチドは修飾ヌクレオチドであり得
る。いくつかの実施形態では合計2つのヌクレオチド型のうちの少なくとも1つのヌクレ
オチド、例えば、少なくとも1つのUヌクレオチドおよび少なくとも1つのCヌクレオチ
ドは修飾ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では合計3つのヌクレオチド型の
うちの少なくとも1つのヌクレオチド、例えば、少なくとも1つのGヌクレオチド、少な
くとも1つのUヌクレオチドおよび少なくとも1つのCヌクレオチドは修飾ヌクレオチド
であり得る。いくつかの実施形態では、4つ全てのヌクレオチド型のうちの少なくとも1
つのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり得る。これらのすべての実施形態において、
ヌクレオチド型あたり1つ以上のヌクレオチドが修正され得、ヌクレオチド型あたりの前
記修正されたヌクレオチドの割合は、0%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%
、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%
、70%、75%、80%、85%、90%または100%である。
【0034】
いくつかの実施形態において、精製されるmRNA分子中に含まれる修飾ヌクレオチド
の総割合は、0%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、30
%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80
%、85%、90%または100%である。
【0035】
したがって、ポリリボヌクレオチドは例えば、0.5~50%、好ましくは5~50%
のUヌクレオチドおよび5~50%のCヌクレオチドが修飾されていることを特徴とする
ことができる。該修飾Uヌクレオチドは好ましくは5-ヨードウリジンであり、該修飾C
ヌクレオチドは、好ましくは5-ヨードシチジンである。
【0036】
いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは15~25%のUヌクレオチド
および3~15%、好ましくは5~15%のCヌクレオチドが修飾されていることを特徴
とすることができ、ここで、前記修飾されたUヌクレオチドは好ましくは5-メチルウリ
ジンであり、前記修飾されたCヌクレオチドは好ましくは5-ヨードシチジンである。
【0037】
いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは30~50%のUヌクレオチド
および10~20%のCヌクレオチドが修飾されていることを特徴とすることができ、こ
こで、前記修飾されたUヌクレオチドは好ましくは5-ヨードウリジンであり、前記修飾
されたCヌクレオチドは、好ましくは5-ヨードシチジンである。
【0038】
いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは30~50%のUヌクレオチド
および5~15%のCヌクレオチドが修飾されていることを特徴とすることができ、ここ
で、前記修飾されたUヌクレオチドは好ましくは5-ヨードウリジンであり、前記修飾さ
れたCヌクレオチドは、好ましくは5-ヨードシチジンである。
【0039】
いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは0.5~5%のUヌクレオチド
および25~35%のCヌクレオチドが修飾されていることを特徴とすることができ、こ
こで、前記修飾されたUヌクレオチドは好ましくは2-チオウリジンであり、前記修飾さ
れたCヌクレオチドは好ましくは5-メチルシチジンである。
【0040】
ポリリボヌクレオチドは例えば、50~100%、好ましくは100%のUヌクレオチ
ドが修飾されていることを特徴とすることもできる。前記修飾Uヌクレオチドは、好まし
くはN1-メチル-シュードウリジンである。
【0041】
上記のように、本発明によれば、繊毛病を患う患者への医薬組成物の投与は、対象が呼
吸器系の炎症を示す場合に行われる。本発明の文脈において、「炎症」という用語は感染
、外傷、および過敏症を含む傷害に対する細胞応答を指し、「呼吸器系の炎症」は呼吸器
系、特に、限定するものではないが、鼻、咽頭、喉頭、気管、気管支および/または肺に
おける炎症反応を指す。呼吸器系における炎症反応は例えば、病原体、毒素、汚染物質、
および/またはアレルゲンのような刺激剤によって引き起こされ得る。炎症の間に、例え
ばサイトカインおよびメディエーターを放出して他の細胞の活性を修飾することができる
特定の細胞型が活性化される。これらのプロセスは以下の通りである。例えば、Iwas
aki et al. (Iwasaki et al., 2017, Nat Re
v Immunol, 17(1):7-20)に記載されている。
【0042】
したがって、1つの実施形態において、ポリリボヌクレオチドが投与される繊毛病に罹
患している対象は対象が呼吸器系の炎症を患っているかどうかを決定するために、処理の
前にアッセイに供されており、ここで、対象は、呼吸器系の炎症を有すると積極的に決定
されている。
【0043】
好ましくは、呼吸器系の炎症は急性炎症である。急性炎症は数秒、数分間、数時間、お
よび数日にわたって生じ得るが、より長い期間にわたって生じ得ない。したがって、急性
炎症は、4週間までの時間範囲、好ましくは3週間未満の時間枠で起こる炎症である。局
所的な血流量の増加、毛細血管の局所的な透過性亢進、および/または好中球、マクロフ
ァージおよび/またはリンパ球の数の増加に基づいて、ルーチンの臨床検査法によって判
定することができる。一次毛様体ジスキネジアにおける気道炎症のマーカーについてのさ
らなる情報は例えば、Zihlif et al. (Zihlif et al.,
2006, Pediatr Pulmonol, 41(6):509-14)におい
て見出され得る。
【0044】
一般に、炎症は急性または慢性のいずれかに分類できる。急性炎症は有害な刺激に対す
る身体の反応であり、例えば、罹患組織への顆粒球の移動の増加によって特徴付けられる
。炎症の古典的符号は、熱、疼痛、発赤、腫脹、および機能喪失である。PCD等の繊毛
障害は遺伝性疾患であり、未治療の場合、機能喪失によって永続的で生涯にわたる刺激を
受け、永続的で慢性的な炎症等を引き起こすが、典型的には上記の症状を示さない(機能
喪失の他に)。慢性炎症に関連する疾患のさらなる例は例えば、花粉症、歯周病、アテロ
ーム性動脈硬化症、および変形性関節症である。それにもかかわらず、このような疾患に
罹患した患者はさらに、例えば、追加の有害な刺激を受け、その結果として、炎症の古典
的な符号のような古典的な症状の1つまたは複数が、熱、疼痛、発赤、腫脹、およびさら
なる機能喪失であることによって、急性炎症を起こし得る。
【0045】
したがって、1つの実施形態において、ポリリボヌクレオチドが投与される繊毛病に罹
患している対象は対象が呼吸器系の急性炎症に罹患しているかどうかを決定するために、
そして対象が呼吸器系の急性炎症を有すると積極的に決定されている場合に、アッセイの
処置の前に供されている。
【0046】
あるいはまたはさらに、呼吸器系の炎症は炎症の増悪、好ましくは炎症の急性増悪を指
す。増悪とは、病気が悪化したり、その症状が増悪したりすることをいう。増悪は患者の
生活の質の低下をもたらし、肺機能の低下を加速し、疾患関連費用に実質的に寄与するた
め、慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関連で最もよく検討される。
【0047】
臨床試験の場合、「呼吸器系増悪は、臨床試験において、細菌培養の結果にかかわらず
、全身性抗生物質処理の開始につながる気道症状、または抗生物質の処方の有無にかかわ
らず、スクリーニング時および無作為化時に予測されるFEV1%の平均と比較して10
パーセントポイント以上で予測される1秒間努力呼気肺活量(FEV1)%の低下のいず
れかと定義することができる。増悪の発生は、患者の問診、身体診察および肺活量測定に
よって評価できる。各治験訪問時、および増悪に起因する治験実施施設との特別な接触時
には、治験実施施設との最後の接触以降の症状および併用薬について参加者に聞き取り調
査を行うことができる。面接は、症状と抗生物質に関する週1回の患者日記によって補う
ことができる。参加者の全身状態、バイタルサイン、耳、心臓および肺をレビューする身
体診察は、すべての訪問時に行うことができる」と述べている (例えば、Kobber
nagel et al., 2016, BMC Pulmonary Medici
ne, 16:104参照)。
【0048】
したがって、好ましい実施形態によれば、医薬組成物は繊毛病に罹患している対象にお
いて繊毛病を治療する際に使用するためのmRNAを含み、mRNAはその欠損が前記繊
毛病に関連する毛様構造タンパク質の機能的バージョンをコードし、前記繊毛病に罹患し
ている対象の呼吸器系への前記医薬組成物の投与は、繊毛病に罹患している対象が呼吸器
系の急性炎症、好ましくは急性増悪を示す場合に行われる。
【0049】
したがって、一実施形態において、ポリリボヌクレオチドが投与される繊毛病に罹患し
ている対象は対象が呼吸器系の急性炎症、好ましくは急性増悪を患っているかどうかを決
定するために、処理の前にアッセイに供されており、ここで、対象は陽性である 呼吸器
系の慢性炎症、好ましくは急性増悪を有すると判定された。
【0050】
繊毛病に罹患している対象の呼吸器系の炎症の有無は常法によって、例えば、血液サン
プルを分析することによって、または患者が鼻を走らせること等を患っているかどうかを
決定することによって、決定され得る。
【0051】
呼吸器系では、炎症は一般に感染症、特にウイルスまたはバクテリア感染によって引き
起こされる。したがって、繊毛病患者における炎症の有無は、好ましくは感染、好ましく
は急性感染の有無を決定することによって評価することができる。好ましくは、感染はウ
イルスおよび/または細菌感染である。
【0052】
急性感染症は、聴診所見、化膿性咳嗽、浸潤影、喀血、発熱、血液炎症パラメータの上
昇(c反応性タンパク質(CRP)>200mg/ml、血沈<100mm/時)を特徴
とする。慢性感染はさらに、移行性の浸潤、抗生物質耐性、持続性の全身症状および中等
度の血液炎症マーカー(CRP 50-100mg/ml、血沈<50mm/h)によっ
て特徴づけられる(Klinische Pneumonologie, 1. Auf
l. 2014 Georg Thieme Verlag KG, ISBN 978
-3-13-129751-8; Jaroszewski et al., 2012
, Thorac Surg Clin, 22(3):301-24)。
【0053】
本発明の文脈において、「呼吸器系」という用語は鼻、咽頭、喉頭、気管、気管支およ
び肺のような呼吸に関連する器官を含む。特に、呼吸器系はヒトを含むいくつかの哺乳動
物の場合、呼吸器系とも呼ばれ、本明細書では対象とも呼ばれる。本明細書では「呼吸器
系」および「呼吸器系」という用語が互換的に使用される。気道は上気道と下気道に分け
ることができる。上気道には、鼻腔、鼻甲介、鼻前庭および鼻腔を含む鼻;副鼻腔;咽頭
、およびコード(コード)の上の喉頭の部分が含まれる。下気道には、声帯ヒダの下にあ
る喉頭の部分、気管、気管支および細気管支が含まれる。ここで、肺は下気道に含まれ、
呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞を含む。
【0054】
本発明の文脈において、用語「医薬組成物」は繊毛病を治療するために、対象に投与す
るための、少なくとも本発明に従うポリリボヌクレオチドを含む組成物を指す。ポリリボ
ヌクレオチドは好ましくは有効量、すなわち、医薬組成物が投与される対象において検出
可能な治療反応を誘導するのに十分な量で含まれる。本発明の医薬組成物は、滅菌水性ま
たは非水性溶液、懸濁液またはエマルジョンまたはエアロゾルの形成であり得る。好まし
くは、医薬組成物が例えば、吸入、噴霧、スプレーまたは液滴(例えば、鼻スプレーまた
は鼻液滴)を介して、呼吸器系への投与を可能にする形態である。
【0055】
これは、スプレー、液滴、ネブライザー、または吸入を使用する投与が患者によって容
易に行われ得、輸送が快適であり、したがって、作用の自由を制限することなく患者に容
易に利用可能であるので、患者にとって有利である。
【0056】
好ましい実施形態において、医薬組成物はDNAH5、DNAH11、CCDC39、
DNAI1、CCDC40、CCDC103、SPAG1、ZMYND10、ARMC4
、CCDC151、DNAI2、RSPH1、CCDC114、RSPH4A、DNAA
F1(LRRC50)、DNAAF2(KTU)、およびLRRC6からなる群より選択
されるタンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmRNAを含み、スプレー、液滴、
ネブライザーを使用することによって、および/または吸入によって、前記タンパク質の
欠損によって引き起こされるPCDを患う対象に投与される。より好ましくは、タンパク
質はCCDC40および/またはCCDC39である。
【0057】
医薬組成物は薬学的に許容可能な担体、すなわち、健全な医学的判断の範囲内で、過剰
な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび
動物の組織と接触して使用するのに適した、妥当な利益/リスク比に見合った、化学化合
物、材料、成分、および/または組成物を含むことができる。したがって、薬学的に許容
可能な担体は投薬量、吸着、溶解性または薬物動態学的考察を考慮して、その取り扱いを
容易にするために、薬学的に活性な物質と一緒に処方される不活性な物質である。適切な
薬学的に許容される担体の実施例は当技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液
、緩衝液、水、エマルジョン、実施例えば油/水エマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、
および滅菌溶液を含む。特に、水性担体には、水、アルコール性/水溶液、エマルジョン
または懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれる。非水性溶媒の例は、プロ
ピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油といった植物油、およびオレイ
ン酸エチルといった有機エステルである。薬学的に許容可能な担体のさらなる例としては
、生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液、クエン酸塩、リン酸塩、および他
の有機酸;塩形成対イオン、例、ナトリウムおよびカリウム;低分子量(>10アミノ酸
残基)ポリペプチド;タンパク質、例、血清アルブミン、またはゼラチン;親水性高分子
、例、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例、ヒスチジン、グルタミン、リジン、アスパ
ラギン、アルギニン、またはグリシン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを
含めた炭水化物;単糖;二糖;他の糖、例、スクロース、マンニトール、トレハロースま
たはソルビトール;キレート剤、例、EDTA;非イオン性界面活性剤、例、Tween
(登録商標)の商標で市販されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、プ
ロピレングリコール、プルロニックまたはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコ
ルビン酸およびトコフェロールを含めた酸化防止剤;および/または防腐剤、例、塩化オ
クタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウ
ム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラ
ベン、例、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサ
ノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール)が挙げられるがこれらに限定されな
い。適切な薬学的に許容可能な担体およびそれらの製剤化は、Remington’s
Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985,
Mack Publishing Co.により詳細に記載されている。さらに、防腐
剤、安定剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、老化防止剤、キレート剤、および不活性
ガス、ナノシステムまたはリポソーム等も存在し得る。
【0058】
本発明の医薬組成物は、スプレー、液滴、吸入器、ネブライザー等の使用等、呼吸器系
への投与に適していることが当業者に知られている広範囲のクラスの投与形態を介して患
者に投与することができる。作用の用量および持続時間は前記ポリリボヌクレオチドが満
たすべき機能に依存し、それぞれの場合において意図的に調整されなければならない。作
用の持続時間は例えば、前記ポリリボヌクレオチドがここでの場合のように、欠損遺伝子
、すなわち変化したDNA配列に起因する疾患の慢性治療のために使用される場合、可能
な限り長くなる。持続時間はまた、所定時間ウィンドウに調整されてもよい。
【0059】
一実施形態では、医薬組成物が週に少なくとも1回投与される。これは、前記PCDの
治療の効率的かつ持続的な効果を保証するために有利である。好ましくは、医薬組成物が
少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも3週間、さらにより好ましくは少なくとも
4週間、毎週投与される。あるいは、医薬組成物が少なくとも1週間、好ましくは少なく
とも2週間、より好ましくは少なくとも3週間、さらにより好ましくは少なくとも4週間
、週2回投与することができる。一実施形態では、上記のように4週間の初期治療後にさ
らなる治療の必要がある場合、治療は週1回実施される。週1回の投与の代わりに、投与
はより長い期間、例えば、少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好
ましくは少なくとも4ヶ月間、さらにより好ましくは少なくとも5ヶ月間、最も好ましく
は少なくとも6ヶ月間、1ヶ月に1回の投与に切り替えることができる。
【0060】
1つの好ましい実施形態において、医薬組成物は対象が適宜溶液、好ましくは高張生理
食塩水またはN-アセチルシステイン(NAC)の溶液のような粘液溶解剤を吸入した後
、または粘液および潜在的に脱落した気道上皮細胞を除去するために、適宜溶液、好まし
くは高張生理食塩水またはN-アセチルシステイン(NAC)のような粘液溶解剤で、そ
れらの鼻腔および/または副鼻腔を適宜溶液、好ましくは粘液溶解剤で洗浄した後に、対
象の呼吸器系に投与される。したがって、医薬組成物は被験者が適切な溶液、好ましくは
高張食塩水またはN-アセチルシステイン(NAC)の溶液等の粘液溶解剤を吸入し、上
皮細胞上に位置する咳をした後に、被験者の呼吸器系に投与されることが好ましい。これ
は、医薬組成物を投与する前に上皮細胞を暴露するために、したがってポリリボヌクレオ
チドのトランスフェクション有効性を増強するために特に有利である。
【0061】
したがって、一実施形態では、ポリリボヌクレオチドが投与される繊毛病に罹患してい
る対象が治療前に、適宜溶液、好ましくは高張生理食塩水またはN-アセチルシステイン
(NAC)の溶液等の粘液溶解剤を吸入することによって、またはそれらの鼻腔および/
または洞を適宜溶液、好ましくは高張生理食塩水またはN-アセチルシステイン(NAC
)等の粘液溶解剤で洗浄することによってさらされた対象である。
【0062】
このような工程はポリリボヌクレオチドの投与前に、対象の呼吸器系から粘液を物理的
に除去することを目的とする。
【0063】
さらに、このような対象は好ましくは対象が呼吸器系の炎症、好ましくは急性炎症また
は炎症の悪化を患っているかどうかを決定するために、処理の前にアッセイに供された対
象であり、ここで、対象は、呼吸器系の炎症、好ましくは急性炎症または炎症の悪化を有
すると積極的に決定されている。
【0064】
好ましい実施形態では、前記溶液中のNACの濃度が3%~20%、好ましくは5%~
15%、より好ましくは8%~12%、最も好ましくは10%である。割合は重量/重量
に基づく。好ましくは、NACを含有するソリューションはまた、エデト酸ナトリウム(
エデト酸塩はエチレンジアミンテトラアセテートを指す)および/または水酸化ナトリウ
ムを薬学的に許容される濃度で含有する。好ましくは、溶液は水溶液である。
【0065】
繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物のいくつかの実
施形態において、医薬組成物は、N-アセチルシステイン(NAC)等の粘液溶解剤およ
び/または塩化ナトリウムを含む高張溶液をさらに含む。痰として作用するNACおよび
塩化ナトリウムを含む高張溶液の両方は、PCDに罹患している対象における粘稠な粘液
の保持を減少させるために有利である。これにより、呼吸器系の感染症のリスク、ひいて
は患者にとってのさらなるストレスを減らすことができる。
【0066】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、上記のような濃度のNACをさらに含む。
【0067】
好ましい実施形態では、医薬組成物が2%~8%、好ましくは3%~7%、より好まし
くは4%~7%の濃度の塩化ナトリウムを含む高張溶液をさらに含む。
【0068】
好ましい実施形態では、医薬組成物がNACを3%~20%、好ましくは5%~15%
、より好ましくは8%~12%、最も好ましくは10%、および/または塩化ナトリウム
を2%~8%、好ましくは3%~7%、より好ましくは4%~7%の濃度で含む高張溶液
をさらに含む。
【0069】
上記のように、本発明による医薬組成物の好ましい実施形態において、前記医薬組成物
は、DNAH5、DNAH11、CCDC39、DNAI1、CCDC40、CCDC1
03、SPAG1、ZMYND10、ARMC4、CCDC151、DNAI2、RSP
H1、CCDC114、RSPH4A、DNAAF1(LRRC50)、DNAAF2(
KTU)、およびLRRC6、好ましくはCCDC40および/またはCCDC39から
なる群より選択されるタンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmRNAを含む。こ
のような医薬組成物は、以下において「第1の医薬組成物」とも呼ばれる。
【0070】
複数繊毛虫分化およびDNA合成関連細胞周期(MCIDAS)タンパク質は複数繊毛
虫細胞分化に特異的に必要とされる転写調節タンパク質であり、複数繊毛虫細胞分化には
複数動繊毛虫の繊毛虫形成が含まれる(例えば、ヒトmRNAおよびタンパク質MCID
AS配列についてはそれぞれ、NCBI参照配列NM_001190787.1およびN
P_001177716.1;または配列番号4に示す最適化ポリリボヌクレオチド配列
を参照されたい)。
【0071】
したがって、繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物がmulticiliate differe
ntiation and DNA synthesis associated ce
ll cycle(MCIDAS)タンパク質の機能的バージョンをコードするポリリボ
ヌクレオチドをさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、MCIDASタンパク質をコードするポ
リリボヌクレオチドを含む第2の医薬組成物と一緒に投与される、上記の第1の医薬組成
物である。
【0073】
両方の医薬組成物、すなわち、MCIDASタンパク質をコードするポリリボヌクレオ
チドをさらに含む上記の第1の医薬組成物、またはMCIDASタンパク質をコードする
ポリリボヌクレオチドを含む第2の医薬組成物と一緒に投与される第1の医薬組成物は、
本発明による医薬組成物の投与が毛様体形成の前および/またはその間に細胞に投与され
る場合、繊毛細胞構造および機能を回復させるのに特に有効であるので有利である。さら
に、両者は、好ましくは鼻スプレーおよび/またはネブライザーを使用することによって
、および/または吸入によって、好ましくは週に少なくとも1回および/または少なくと
も4週間、患者に投与される。
【0074】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、2つ以上のタンパク質の機能的バージョ
ンに翻訳され得るポリリボヌクレオチドを含む。これは、例えば、2つ以上の異なるタン
パク質をコードする単一のポリリボヌクレオチドである多シストロン性ポリリボヌクレオ
チドを用いて行うことができる。例えば2Aペプチドを用いてこのような多シストロン性
ポリリボヌクレオチドを設計することは、文献に十分に記載されている。例として、Li
uらは多シストロニックmRNAを生成するための2Aペプチドの使用を実証した(Li
u et al., 2017, Scientific Reports, 7:21
93)。これらの2Aペプチドはさらに、例えば、リボソームスキッピング(2Aペプチ
ドの機能的特徴)の結果として配列中の第1のタンパク質に付加される追加のアミノ酸(
2Aペプチドの一部)を除去するために、フリン切断部位と組み合わせることができる。
一例として、2Aペプチドによるフリン切断の使用は例えば、Chng et al.
(Chng et al., 2015 MAbs, 7(2):403-412)によ
って記載されている。したがって、2つ以上、好ましくは2つの治療タンパク質(例えば
、CCDC40およびMCIDAS)をコードする単一のポリリボヌクレオチドが設計さ
れ得、ここで、2つの治療タンパク質のコーディング領域は、(上記引用に記載されるよ
うに)2Aペプチドによって分離される。
【0075】
したがって、いくつかの実施形態では、医薬組成物が2つ以上、好ましくは2つのタン
パク質の機能的バージョンに翻訳され得るポリリボヌクレオチドを含むことを除いて、上
記の実施形態について記載されるのと同じことが適用される。したがって、いくつかの実
施形態では、上記の実施形態に記載の医薬組成物がDNAH5、DNAH11、CCDC
39、DNAI1、CCDC40、CCDC103、SPAG1、ZMYND10、AR
MC4、CCDC151、DNAI2、RSPH1、CCDC114、RSPH4A、D
NAAF1(LRRC50)、DNAAF2(KTU)、およびLRRC6、好ましくは
CCDC40および/またはCCDC39からなる群より選択されるタンパク質の機能的
バージョンに翻訳され得る配列、ならびにMCIDASタンパク質の機能的バージョンに
翻訳され得る配列を含む、多シストロン性ポリリボヌクレオチドを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、医薬組成物がMCIDASタンパク質の機能版に翻訳するこ
とができ、配列番号4に示す最適化ポリリボヌクレオチド配列を含むポリリボヌクレオチ
ド、およびCCDC40および/またはCCDC39タンパク質の機能版に翻訳すること
ができ、配列番号1(または配列番号5~11)および/または配列番号2(または配列
番号12~14)に示す最適化ポリリボヌクレオチド配列を含むポリリボヌクレオチドを
含む。好ましくは、それは鼻スプレーおよび/またはネブライザーを使用することによっ
て、および/または吸入によって、好ましくは少なくとも1週間に1回および/または少
なくとも4週間、患者に投与される。
【0077】
MCIDASの代わりに、またはそれに加えて、例えば、GemC1、FoxJ1、お
よび/またはE2f4VP16を使用することができる。GemC1は繊毛上皮に特異的
に発現し、繊毛形成の中心的調整剤である。GemC1の異所性発現は多毛様体形成の2
つの重要な転写調節因子であるMCIDASおよびFoxJ1をアップレギュレートする
ことによって、ex vivoで気道上皮細胞における多毛様体形成の初期段階を誘導す
るのに十分であることが報告されている(Arbi M et al., 2016,
EMBO reports, 17(3):400-413)。さらに、同じ研究におい
て、GemC1がMCIDASおよびFoxJ1上流調節配列を直接トランス活性化でき
ることが報告された。E2f4VP16とは、HSV1 VP16からの一般的な活性化
ドメインを含み、多毛形成に関連する重要な遺伝子の発現の活性化に好影響を及ぼすこと
ができるE2f4の一形態をいう(Kim S et al., Scientific
Reports, 2018, 8:12369)。
【0078】
したがって、繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が上記の第1の医薬組成物であり、MCIDA
Sタンパク質の機能版をコードするポリリボヌクレオチド、GemC1タンパク質の機能
版をコードするポリリボヌクレオチド、FoxJ1タンパク質の機能版をコードするポリ
リボヌクレオチド、および/またはE2f4VP16タンパク質の機能版をコードするポ
リリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0079】
医薬組成物のいくつかの実施形態では、上記の第1の医薬組成物が以下の機能版をコー
ドするポリリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つを含む第2の医薬組成物と一緒に投
与することができる:MCIDASタンパク質の機能版をコードするポリリボヌクレオチ
ド、GemC1タンパク質の機能版をコードするポリリボヌクレオチド、FoxJ1タン
パク質の機能版をコードするポリリボヌクレオチド、および/またはE2f4VP16タ
ンパク質。
【0080】
両方の医薬組成物、すなわち、MCIDAS、GemC1、FoxJ1、および/また
はE2f4VP16タンパク質をコードするポリリボヌクレオチドをさらに含む上記の第
1の医薬組成物、またはMCIDAS、GemC1、FoxJ1、および/またはE2f
4VP16タンパク質をコードするポリリボヌクレオチドを含む第2の医薬組成物と一緒
に投与される第1の医薬組成物は細胞が毛様体形成を開始する前に、または毛様体形成中
に細胞に投与される場合、本発明による医薬組成物の投与が繊毛細胞構造および機能を回
復するのに特に有効であるため、有利である。さらに、両者は、好ましくは鼻スプレーお
よび/またはネブライザーを使用することによって、および/または吸入によって、好ま
しくは週に少なくとも1回および/または少なくとも4週間、患者に投与される。
【0081】
上記のように、いくつかの実施形態において、医薬組成物が、2つ以上、好ましくは2
つのタンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るポリリボヌクレオチドを含むことを除
いて、上記の実施形態について記載されるのと同じことが適用される。したがって、いく
つかの実施形態において、上記の実施形態に記載される医薬組成物は、マルチシストロニ
ックポリリボヌクレオチドを含む。
【0082】
医薬組成物は、ポリリボヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションを容易にする
化合物を含んでもよい。このような化合物の例は、国際公開第2014/20723号に
開示されているものである。
【0083】
医薬組成物は、RNAを標的細胞または標的組織に送達および/または導入するための
1つ以上の薬剤または1つ以上の試薬をさらに含むことができる。特に、この/これらの
薬剤または試薬は、細胞または組織へのRNAの送達および/または導入を支持すること
が想定される。この/これらの薬剤または試薬は、RNAと一緒に投与され得る。送達/
導入されるRNAはまた、この/これらの薬剤(または試薬)とカップリング(例、共有
結合または複合体化)されてもよく、またはカップリングされなくてもよい(例えば、単
にこの/これらの薬剤(または試薬)と混合されてもよい)。それぞれの薬剤または、試
薬は当該分野で公知であり(例えば、Tavernier、J Control Rel
ease 150(3)(2011),238-47)、そして例えば、とりわけ、脂質
およびリポソーム、ミセル、重合体およびデンドリマーからなる群より選択される。
それぞれの薬剤または試薬の特定の例は、GL67、EDMPC、DOTAP(l,2-
ジオレイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2-ジオレイル
-3-ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(l,2-ジ-0-オクタデセニル
-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、XTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチ
ルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)およびMC3(((6Z,9Z,28Z,
31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジ
メチルアミノ)ブタノエート)、ALNY-100((3aR,5s,6aS)-N、N
-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラ
ヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン))、NC9
8-5(4,7,13-トリス(3-オキソ-3-(ウンデシルアミノ)プロピル)-N
l,N16-ジウンデシル-4,7,10,13-テトラアザヘキサデカン-l,16-
ジアミド)、C12-200、DLin-KC2-DMA、DODAP、l,2-ジステ
アリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DSDMA」、l,2-
ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DODMA」、l,
2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「DLinDM
A」、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンまたは「D
LenDMA」、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドまたは「DO
DAC」、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミドまたは「DD
AB」、N-(l,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N
-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミドまたは「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-
2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-l-(cis,
cis-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパンまたは「CLinDMA」、2-[
5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-
ジメチルl-l-(cis,cis-9’,1-2’-オクタデカジエノキシ)プロパン
または「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルア
ミンまたは「DMOBA」、l,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルア
ミノプロパンまたは「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-
ジメチルプロピルアミンまたは「DLinDAP」、l,2-N,N’-ジリノレイルカ
ルバミル-3-ジメチルアミノプロパンまたは「DLincarbDAP」、l,2-ジ
リノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパンまたは「DLinCDAP」、2
,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソランまたは「D
Lin-K-DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]
-ジオキソランまたは「DLin-K-XTC2-DMA」、またはそれらの混合物であ
る(Heyes, J Controlled Release 107 (2005)
, 276-287; Morrissey, Nat. Biotechnol. 2
3(8) (2005), 1003-1007;国際公開第2005/121348号
)。さらなる例は、DC-Chol(N、N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレ
ステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジンである(
Gao, Biochem. Biophys. Res. Comm. 179 (1
991), 280; Wolf, et al BioTechniques 23
(1997), 139; 米国特許第5,744,335号)。さらなる例は、LIP
OFECTIN(DOTMA:DOPE)(Invitrogen, Carlsbad
, Calif)、LIPOFECTAMINE(DOSPA:DOPE)(Invit
rogen)、LIPOFECTAMINE2000.(Invitrogen)、FU
GENE、TRANSFECTAM(DOGS)、およびEFFECTENEである。さ
らなる例は、改変および非改変ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート、ポリ
ラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラ
ン、アルブミン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン
、ポリリジン(polylysin)、ポリアルギニン、オリゴ/ポリアミンおよびポリ
エチレンイミンである。
【0084】
薬剤または試薬は、オリゴマー、重合体またはリピドイドであり得る。それらは、例え
ば、PCT/EP2014/063756に記載されているような特性オリゴ(アルキレ
ンアミン)部分のようなオリゴ(アルキレンアミン)部分を含み得る。特に、薬剤または
試薬は、PCT/EP2014/063756に記載されているようなオリゴマー、重合
体またはリピドイドであってもよい。これらの特定の薬剤または試薬の1つの主な特徴は
、それらが以下の式(I)の共通の構造実体を含有することである:
【化1】
【0085】
このような薬剤または試薬は、(成分)から選択されるオリゴ(アルキレンアミン)で
あってもよい:
a)側鎖および/または末端基として式(II)の複数の基を含むオリゴマーまたはポリ
マー:
【化2】
式中、変数a、b、p、m、nおよびR
2~R
6は、複数のそのような基の中の式(II
)の各基について、独立して以下のように定義される。
aは1でありかつbは2~4の整数であり;または、aは2~4の整数でありかつbは1
であり、
pは1または2であり、
mは1または2であり;nは0または1でありかつm+nは≧2であり;かつ
R
2~R
5は、互いに独立して、水素;基-CH
2-CH(OH)-R
7、-CH(R
7
)-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-(C=O)-O-R
7、-CH
2-CH
2-(C
=O)-NH-R
7または-CH
2-R
7から選択され、式中、R
7は、1つのC-C二
重結合を有するC3-C18アルキルまたはC3-C18アルケニル;アミノ基の保護基
;およびポリ(エチレングリコール)鎖から選択され;
R
6は、水素、基-CH
2-CH(OH)-R
7、-CH(R
7)-CH
2-OH、-C
H
2-CH
2-(C=O)-O-R
7、-CH
2-CH
2-(C=O)-NH-R
7また
は-CH
2-R
7から選択され、式中、R
7は、1つのC-C二重結合を有するC3-C
18アルキルまたはC3-C18アルケニル;アミノ基の保護基;-C(NH)-NH
2
;ポリ(エチレングリコール)鎖、および受容体リガンドから選択され、
かつ、式中、式(II)で示される窒素原子の1つ以上は、プロトン化されて式(II)
のカチオン基を提供してもよい;
b)繰り返し単位として式(III)の複数のグループを含むオリゴマーまたはポリマー
:
【化3】
式中、変数a、b、p、m、nおよびR
2~R
5は、複数のそのような基の中の式(II
I)の各基について、独立して以下のように定義される:
aは1でありかつbは2~4の整数であり;または、aは2~4の整数でありかつbは1
であり、
pは1または2であり、
mは1または2であり;nは0または1でありかつm+nは≧2であり;かつ
R
2~R
5は、互いに独立して、水素;基-CH
2-CH(OH)-R
7、-CH(R
7
)-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-(C=O)-O-R
7または-CH
2-CH
2-
(C=O)-NH-R
7または-CH
2-R
7から選択され、式中、R
7は、1つのC-
C二重結合を有するC3-C18アルキルまたはC3-C18アルケニル;アミノ基の保
護基;-C(NH)-NH
2;およびポリ(エチレングリコール)鎖から選択され;
かつ、式中、式(III)で示される窒素原子の1つ以上がプロトン化されて、式(II
I)のカチオン性基を提供してもよい;および
c)式(IV)の構造を有するリピドイド:
【化4】
式中、変数a、b、p、m、nおよびR
1~R
6は、以下のように定義される:
aは1でありかつbは2~4の整数であり;または、aは2~4の整数でありかつbは1
であり、
pは1または2であり、
mは1または2であり;nは0または1でありかつm+nは≧2であり;かつ
R
1~R
6は、互いに独立して、水素;基-CH
2-CH(OH)-R
7、-CH(R
7
)-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-(C=O)-O-R
7、-CH
2-CH
2-(C
=O)-NH-R
7または-CH
2-R
7から選択され、式中、R
7は、1つのC-C二
重結合を有するC3-C18アルキルまたはC3-C18アルケニル;アミノ基の保護基
;-C(NH)-NH
2;ポリエチレングリコール鎖;および受容体リガンド;ただし、
R
1~R
6のうち少なくとも2つの残基が、基-CH
2-CH(OH)-R
7、-CH(
R
7)-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-(C=O)-O-R
7、-CH
2-CH
2-
(C=O)-NH-R
7または-CH
2-R
7であり、式中、R
7は、1つのC-C二重
結合を有するC3-C18アルキルまたはC3-C18アルケニルから選択され;
かつ、式中、式(IV)で示される窒素原子の1つ以上がプロトン化されて、式(IV)
のカチオン性リピドイドを提供してもよい。
【0086】
好ましくは、このような薬剤または試薬が、a)およびb)から選択されるオリゴ(ア
ルキレンアミン)(を含む成分)であり得、
a)側鎖および/または末端基として式(IIa)の複数の基を含むオリゴマーまたはポ
リマーである:
-NR2{CH2-(CH2)a-NR3-CH2-(CH2)b-NR4}m-[
CH2-(CH2)a-NR5]n-R6 (IIa)、
式中、a、b、m、n、およびR2~R6は上記のように定義され、式(IIa)に示さ
れる窒素原子の1つ以上はプロトン化されて、カチオン性オリゴマーまたはポリマー構造
を提供し得る、および
b)式(IIIa)の複数のグループを繰り返し単位として含むオリゴマーまたはポリマ
ーである:
-NR2{CH2-(CH2)a-NR3-CH2-(CH2)b-NR4}m-[
CH2-(CH2)a-NR5]n- (IIIa)、
式中、a、b、m、n、およびR2~R5は上記のように定義され、式(IIIa)に示
される窒素原子の1つ以上はプロトン化されて、カチオン性オリゴマーまたはポリマー構
造を提供し得る。
【0087】
さらに、このような薬剤または試薬は、(式(IVa)の構造を有するリピドイドから
選択されるオリゴ(アルキレンアミン)を含む成分であってもよい:
R1-NR2{CH2-(CH2)a-NR3-CH2-(CH2)b-NR4}m
-[CH2-(CH2)a-NR5]n-R6 (IVa)、
式中、a、b、m、n、およびR6へのR1は上記のように定義され、式(IVa)に示
される窒素原子の1つ以上はプロトン化されて、カチオン性リピドイドを提供し得る。
【0088】
このような薬剤または試薬に関して、式(II)、(IIa)、(III)、(III
a)、(IV)または(IVa)において、nは1であってもよく;またはmは1であっ
てもよく、nは1であってもよい。
【0089】
さらに、このような薬剤または試薬については、式(II)、(IIa)、(III)
、(IIIa)、(IV)または(IVa)において、aは1であり、bは2であっても
よく;またはaは2であり、bは1であってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、オリゴマー、ポリマー、またはリピドイドはカチオン性(例
、プロトン化)オリゴマー、ポリマー、またはリピドイドであってもよい。
【0091】
使用されるこのようなオリゴマー、重合体またはリピドイドの非限定的な一例は、10
0mgのN,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(0.623
mmol)を575.07mgの1,2-エポキシドデカン(3.12mmol)(N-
1)当量(ここで、Nは2×量の第1級アミンと1×量の第2級アミン/オリゴ(アルキ
レンアミン))と混合し、80℃で一定の振盪下で96時間混合することによって調製さ
れたカチオン性脂質である。このようなオリゴマー、重合体またはリピドイドは、リピド
イド「C12-(2-3-2)」とも呼ばれる。
【0092】
使用される薬剤または試薬、特にポリマーは、コポリマー、特に統計的コポリマーであ
ってもよい。このようなコポリマーは(例えば、非交互長さのアルキレンアミン繰り返し
単位の類似の配置を含有するあまり好ましくないポリマーとは対照的に)交互長さのアル
キレンアミン繰り返し単位の統計的/ランダム配置を含有するコポリマーであってもよい
。コポリマーはカチオン性(例えば、プロトン化)コポリマーであってもよい。使用され
るコポリマーは当該技術分野で公知であり、例えば、EP 14 19 9439.2、
国際公開第01/00708号、EP-A1 1 198 489およびCA-A1 2
,377,207に記載されている。
【0093】
特に、コポリマーは、以下の式(a1)および(a2)の繰り返し単位から独立して選
択される複数の繰り返し単位(a)を含む統計的コポリマーであってもよい:
【化5】
、および
下記式(b1)~(b4)の繰り返し単位から独立して選択される複数の繰り返し単位(
b):
【化6】
式中、繰り返し単位(a)の合計と繰り返し単位(b)の合計とのモル比は、0.7/
1.0~1.0/0.7の範囲内であり、かつ
式中、コポリマーに含まれる繰り返し単位(a)および/または(b)の窒素原子の1
つ以上は、プロトン化されてカチオン性コポリマーを提供してもよい。
【0094】
コポリマーは、任意の繰り返し単位(a)および任意の繰り返し単位(b)がコポリマ
ー高分子中に統計的に分布している統計的コポリマーであってもよい。それは、典型的に
は重合反応の間に、繰り返し単位(a)をモノマーと生じ、重合反応の間に、繰り返し単
位(b)を生じるモノマーの混合物の共重合から得られる。好ましくは、コポリマーが任
意の繰り返し単位(a)および任意の繰り返し単位(b)がポリマー高分子中にランダム
に分布しているランダムコポリマーである。
【0095】
このようなコポリマーは、線状、分岐または樹枝状コポリマーであり得る。当業者には
理解されるように、式(a1)、(b1)または(b3)の繰り返し単位は2つの原子価
(すなわち、隣接する単位への開放結合)を有し、線形様式でコポリマー構造の伝搬をも
たらす。したがって、線状コポリマーは式(a1)の繰り返し単位、ならびに式(b1)
および(b3)の繰り返し単位の1つ以上の型を含み得るが、式(a2)、(b2)また
は(b4)の繰り返し単位を含まない。さらに理解されるように、3つの原子価を有する
式(a2)、(b2)または(b4)の繰り返し単位の存在は、コポリマー構造中に分岐
点を提供する。したがって、分岐コポリマーは式(a2)、(b2)および(b4)の繰
り返し単位の1つまたは複数のタイプを含み、式(a1)、(b1)および(b3)の繰
り返し単位の1つまたは複数のタイプをさらに含むことができる。
【0096】
このようなコポリマーは、上記で定義された式(a1)および(a2)の繰り返し単位
から独立して選択される複数の繰り返し単位(a)と、上記で定義された式(b1)~(
b4)の繰り返し単位から独立して選択される複数の繰り返し単位(b)とを含むことが
できる。好ましいのは、上記で定義された式(a1)および(a2)の繰り返し単位から
独立して選択される複数の繰り返し単位(a)と、上記で定義された式(b1)および(
b2)の繰り返し単位から独立して選択される複数の繰り返し単位(b)とを含むコポリ
マーである。
【0097】
好ましくは、このようなコポリマーが繰り返し単位(a2)、(b2)および(b4)
から選択される1つ以上のタイプの繰り返し単位を含み、任意選択で式(a1)、(b1
)および(b3)の繰り返し単位の1つ以上のタイプをさらに含み、特に式(a2)の繰
り返し単位および式(b2)および(b4)の繰り返し単位の1つ以上のタイプを含み、
任意選択で式(a1)、(b1)および(b3)の繰り返し単位の1つ以上のタイプをさ
らに含むコポリマーである。したがって、上記に沿って、より好ましいコポリマーは式(
a2)の繰り返し単位および式(b2)の繰り返し単位を含み、任意選択で式(a1)お
よび(b1)の繰り返し単位の1つまたは複数のタイプをさらに含む分岐コポリマーであ
る。
【0098】
コポリマーにおいて、繰り返し単位(a)および繰り返し単位(b)の総数は、典型的
には20以上、好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。典型的には、繰
り返し単位(a)および繰り返し単位(b)の総数が10,000以下、好ましくは5,
000以下、より好ましくは1,000以下である。
【0099】
さらに、繰り返し単位(a)および(b)が、コポリマー中の全ての繰り返し単位の8
0モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めることが、コポリマーにとって好ま
しい。さらに好ましいのは、(a1)および(a2)から選択される繰り返し単位(a)
ならびに(b1)および(b2)から選択される繰り返し単位(b)がコポリマー中のす
べての繰り返し単位の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上をアカウントコポ
リマーである。コポリマー中の繰り返し単位の全てが繰り返し単位(a)または(b)で
あることが最も好ましく、特にコポリマー中の繰り返し単位の全てが(a1)および(a
2)から選択される繰り返し単位(a)または(b1)および(b2)から選択される繰
り返し単位(b)であることが最も好ましい。
【0100】
コポリマーの重量平均分子量は例えば、線状ポリ(エチレンオキシド)標準に対するサ
イズ排除クロマトグラフィーによって測定される場合、一般に、1,000~500,0
00Da、好ましくは2,500~250,000Da、より好ましくは5,000~5
0,000Da未満の範囲である。
【0101】
このようなコポリマーの末端基は典型的には下記の式(c1)~(c3)の群から、好
ましくは下記の式(c1)および(c2)の群から独立して選択される1つ以上のタイプ
の基(c)を含む:
【化7】
。
【0102】
好ましくは、コポリマー中の末端基が以下の式(c1)~(c3)の群から、好ましく
は式(c1)および(c2)の群から独立して選択される1つ以上のタイプの基(c)か
らなる。当業者には理解されるように、末端基の数はコポリマーの構造に依存する。線状
コポリマーは2つの末端のみを有するが、より多数の末端基が分岐、特に樹枝状コポリマ
ーに含まれる。さらに理解されるように、コポリマーに含まれる末端基(c)の窒素原子
の1つ以上もプロトン化されて、カチオン性コポリマーを提供することができる。
【0103】
コポリマーにおいて、繰り返し単位(a)の合計と繰り返し単位(b)の合計とのモル
比は0.7/1.0~1.0/0.7の範囲内にあり、好ましくは0.8/1.0~1.
0/0.8の範囲内にある。このモル比は、例えばNMRによって決定することができる
。したがって、この比は通常、コポリマーの複数の高分子について決定され、典型的には
複数の高分子中の繰り返し単位(a)の合計と繰り返し単位(b)の合計との全体的な比
を示すことが理解されるのであろう。
【0104】
上に示したように、コポリマーの窒素原子の1つ以上をプロトン化して、カチオン性形
態、典型的にはオリゴカチオン性形態またはポリカチオン性形態のコポリマーをもたらす
ことができる。繰り返し単位(a)もしくは(b)または末端基(c)中の第一級、第二
級、または第三級アミノ基は、特に水および水溶液(生理学的流体を含む)中でプロトン
受容体として作用し得ることが理解される。したがって、このようなコポリマーは、典型
的にはpH7.5未満の水溶液中で全体的に正の電荷を有する。本明細書で言及される水
溶液は、溶媒が50%(vol./vol.)以上、好ましくは80または90%以上、
最も好ましくは100%の水を含む溶液である。また、組成物が例えば血液および肺液を
含む、7.5未満のpHを有する生理学的流体と接触している場合、それらは、典型的に
は窒素原子がプロトン化されている繰り返し単位(a)および(b)を含有する。組成物
中で使用されるコポリマーのpKa値は、自動pKa滴定器を使用する酸-塩基滴定によ
って決定することができる。次いで、所与のpH値における正味電荷を、例えば、Hen
derson-Hasselbachの式から計算することができる。任意の充電は、い
くつかの基本センターにわたって共有されてもよく、必ずしも単一のポイントに帰するこ
とができない。典型的には生理学的pHの溶液において、組成物において使用されるコポ
リマーはプロトン化された状態のアミノ基を有する繰り返し単位およびプロトン化されて
いない状態のアミノ基を有する繰り返し単位を含む。
【0105】
しかしながら、当業者によって理解されるように、コポリマーならびに組成物はまた、
カチオン性形態でコポリマーを含有する乾燥塩形態として提供されてもよい。
【0106】
さらに理解されるように、コポリマーおよび核酸、特にRNA、好ましくはmRNA等
の一本鎖RNAを含む組成物中のプロトン化されたアミノ基の正電荷に対する対イオン(
アニオン)は、典型的には核酸中に含有されるアニオン部分によって提供される。正に荷
電した基が、核酸中のアニオン性部分と比較して過度に存在する場合、正電荷は他のアニ
オン、特に、Cl-またはHCO3 -のような生理学的流体中で典型的に遭遇するアニ
オンによってバランスされ得る。
【0107】
上記にしたがって、好ましいコポリマーは、ランダムコポリマーである
全ての繰り返し単位の80モル%以上、より好ましくは全ての繰り返し単位は、によって
形成される
下記式(a1)および(a2)の繰り返し単位から独立して選択される複数の繰り返し単
位(a):
【化8】
、および
下記式(b1)および(b2)の繰り返し単位から独立して選択される複数の繰り返し単
位(b):
【化9】
、
式中、繰り返し単位(a)の合計と繰り返し単位(b)の合計とのモル比は0.7/1.
0~1.0/0.7の範囲内にあり、より好ましくは0.8/1.0~1.0/0.8の
範囲内にある;
式中、コポリマーの末端基は、によって形成される
式(c1)および(c2)の群から独立して選択される群(c):
【化10】
;および
式中、コポリマーに含まれる繰り返し単位(a)および/または(b)および/または末
端基(c)の窒素原子の1つ以上は、プロトン化されてカチオン性コポリマーを提供して
もよい。コポリマーは、単位(a2)および(b2)を、場合により単位(a1)および
/または(b1)と一緒に含む分岐コポリマーであることがさらに好ましい。
【0108】
コポリマーは、分岐または直鎖ポリエチレンイミン(PEI)のような、ポリアルキレ
ンイミンの調製について公知のものと類似の手順で都合よく調製することができる。コポ
リマーの製造に使用されるモノマーは、それに応じて調整されなければならないことが理
解されるのであろう。ここで、重合に供する単量体混合物において、単量体比を適宜調整
することにより、コポリマー中の単位(a)および(b)の割合を調整できるように、単
量体を定量的に簡便に反応させることができることを見出した。ポリエチレンイミンは例
えばアジリジンの開環重合によって調製することができるが、コポリマーはアジリジン、
アゼチジン、および適用可能な場合にはピロリジン、または好ましい実施形態ではアジリ
ジンおよびアゼチジンを含むかまたはそれらからなるモノマー混合物の開環重合によって
調製することができる。「適用可能な場合」という表現は、ピロリジンによって形成され
る繰り返し単位(b3)および(b4)または末端基(c3)の有無を指すことが理解さ
れるのであろう。非置換環状アミンの開環重合は、通常、分岐コポリマーをもたらす。線
状コポリマーは例えば、Katrien F. Weyts, Eric J. Goe
thals, New synthesis of linear polyethyl
eneimine, Polymer Bulletin, 1988, 19(1):
13-19に公開された手順に類似して、例えば、適切なN-置換アジリジン、N-置換
アジリジンおよびN-置換ピロリジン、またはN-置換アジリジンおよびN-置換アジリ
ジンの重合を介して調製することができ、これに続いて、例えば、得られたポリアルキレ
ンイミン鎖に結合したN-置換基の加水分解開裂を行うことができる。デンドリマーは例
えば、Yemul et al, Colloid and Polymer Scie
nce, 2008, 286(6-7):747-752, Synthesis a
nd characterization of poly(ethylenimine
) denrimersに記載されている方法にしたがって合成することができる。
【0109】
デンドリマー(または樹枝状コポリマー)の調製のために、ポリエチレンイミンまたは
ポリプロピレンアミンデンドリマーの製造について知られている合成戦略を同様に適用す
ることができる。ポリプロピレニミンデンドリマーは第一級アミンへのマイケル付加の反
復配列を用いて、アクリロニトリル構成単位から合成することができ、次いで、不均一触
媒水素化を用いて合成することができる(Newkome and Shreiner
Poly(amidoamine), polypropylenimine, and
related dendrimers and dendrons possess
ing different 1→2 branching motifs: An o
verview of the divergent procedures. Pol
ymer 49 (2008) 1-173; De Brabander-Van D
en Berg et al. Large-scale production of
polypropylenimine dendrimers, Macromole
cular Symposia (1994) 77 (1) 51-62)。ポリエチ
レンイミンデンドリマーは臭化ビニルビルビルディングブロックを第一級アミンにマイケ
ル付加し、続いてガブリエルアミン合成方法を用いてアルキルブロミドをアミンに変換す
るというマイケル付加の反復配列を用いて製造することができる(Yemul & Im
ae, Synthesis and characterization of po
ly(ethyleneimine) dendrimers, Colloid Po
lym Sci (2008) 286:747-752)。したがって、当業者は、例
えばプロピレンイミンとエチレンイミンとの厳密に交互の層を有するデンドリマーを製造
することができるだけでなく、製造することができる。同様に、式(a2)、(b2)お
よび(b4)の繰り返し単位、および好ましくは繰り返し単位(a2)および(b2)の
ランダム組成物を含むか、またはそれらからなる層を有するデンドリマー世代を生成する
ことができる。
【0110】
アジリジンおよびアゼチジン、またはアジリジン、アゼチジンおよびピロリジンの開環
重合は、溶液中、例えば水中で行うことができる。全モノマー濃度は特に限定されず、典
型的な濃度は、10% wt/wt~80% wt/wt、好ましくは30% wt/w
t~60% wt/wtの範囲である。典型的には、重合はプロトンによって開始される
ので、ブレンステッド酸、特に硫酸のような鉱酸を反応系に添加することが好ましい。モ
ノマーの全濃度に基づいて、0.001~0.01当量等の少量の酸が一般に十分である
。反応は、好都合な速度、例えば50~150℃、特に90~140℃の温度域で進行す
る。これらの範囲において、より高分子量のコポリマーは通常、より高い温度であり、よ
り低い温度ではより低い分子量のコポリマーである。
【0111】
原則として、リピドイドは、特にオリゴマーと比較して、およびより具体的にはポリマ
ーに対して使用される好ましい薬剤または試薬である。
【0112】
RNAを標的細胞または標的組織に送達および/または導入するための1つ以上の薬剤
または1つ以上の試薬のさらなる例は、本明細書の他の箇所に記載されるようなリポソー
ムトランスフェクション試薬(LTR’s)および磁性粒子(MP)である。
【0113】
RNAをターゲット細胞またはターゲット組織に送達および/または導入するための1
つの特定の様式は、トランスフェクションである。したがって、使用されるRNAは、(
標的)細胞または組織に)トランスフェクトされること、トランスフェクションを介して
送達/投与されること、および/またはトランスフェクションのために調製されることが
想定され得る。RNAをトランスフェクトするための手段および方法は当該分野で周知で
あり、そして例えば、Tavernier(前出)、Yamamoto(Eur J P
harm Biopharm.71(3)(2009)、484-9)およびKorma
nn(Nat Biotechnol.29(2)(2011)、154-7)に記載さ
れる。トランスフェクションの特定の様式は、リポフェクション、マグネトフェクション
またはマグネトポリポフェクションである。
【0114】
したがって、使用されるRNAは、リポフェクションのために調製され得、リポフェク
ションによってトランスフェクトされるように調製され得、リポフェクションによって送
達/導入され得、および/またはリポフェクションによって投与され得る。
【0115】
したがって、医薬組成物は、(さらに)少なくとも1つの脂質またはリポソームトラン
スフェクション試薬またはエンハンサー(LTR;リポソームトランスフェクション試薬
)を含んでもよい。使用されるRNAは、LTRに含まれ、LTRと複合体化され、およ
び/またはLTRによって送達されてもよい。特に、使用されるRNAは、RNAおよび
LTRを含む(それぞれの)リポフェクション錯体に含まれ、および/またはそれによっ
て送達され得る。医薬組成物は、(さらに)リポフェクション錯体を含み得る。
【0116】
LTRは当技術分野で公知であり、例えば、OzBiosciences、Marse
ille、Franceによって販売されている。使用されるLTRは、RNAを標的細
胞または標的組織に送達および/または導入するための上記の薬剤または試薬からなる群
から選択され得る。例えば、このようなLTRはPCT/EP2014/063756(
例えば、C12-(2-3-2))に開示されるようなリピドイド、EP2285772
(例えば、Dogtor)に開示されるような脂質、およびEP1003711(例えば
、DreamFect(商標)およびDreamFect Gold(商標))に開示さ
れるようなリポポリアミンのような、脂質またはリピドイド、好ましくはカチオン性脂質
またはカチオン性脂質であり得る。特定のLTRはからなる群から選択されてもよい
(i) C12-(2-3-2);
(ii) DreamFect(商標)、好ましくはドリームフェクトGold(商標
)(DF(商標)/DF-Gold(商標);OzBiosciences、Marse
ille、France);
(iii) Dogtor (OzBiosciences、Marseille、Fr
ance);および
(iv) 例えば、リポフェクトアミン 2000(Invitrogene、CA、
USA)のようなリポフェクトアミン。
【0117】
原則として、ドガーが好ましい、DreamFect(商標)がより好ましい、そして
DF-Gold(商標)とC12-(2-3-2)はさらに好ましいLTRである。
【0118】
DogtorのようなLTRは例えば、EP2285772に記載されている。たとえ
ば、DF(商標)やDF-Gold(商標)等のLTRはEP1003711 で説明さ
れている。原則として、PCT/EP2014/063756に開示されているようなオ
リゴマー、重合体または脂質、EP2285772に開示されているような特定のカチオ
ン性脂質、およびEP1003711に開示されているような特定のリポポリアミンが好
ましいLTRである。C12-(2-3-2) やDF-Gold(商標)等のLTRが
最も優先される。
【0119】
リポフェクション錯体の非限定的な例は、DF-Gold(商標)/RNAリポプレッ
クスおよびC12-(2-3-2)/RNAリポプレックスである。
【0120】
C12-(2-3-2)は式(V)に示される構造を有する特に好ましいLTRである
(Jarzebinskaら、Angew Chem Int Ed Engl.,20
16; 55(33):9591-5を参照):
【化11】
【0121】
C12-(2-3-2)は好ましくは例えば、国際公開第2016/075154号パ
ンフレット、EP 3013964、およびJarzebinskaら(Angew C
hem Int Ed Engl.,2016;55(33):9591-5)に記載さ
れるように調製される。カチオン性脂質はN1-(2-アミノエチル)-N3-(2-(
(3,4-ジメトキシベンジル)アミノ)エチル)プロパン-1,3-ジアミン(8.9
g、1当量、28.67mmol)を1,2-エポキシドデカン(42.27、8当量、
229.4mmol)と混合し、一定の振盪下で80℃で24時間混合し、続いて精製し
、3,4-ジメトキシベンジル保護基を除去することによって調製することができる。
【0122】
ラセミ体、S-異性体、および/またはR-異性体等のC12-(2-3-2)の異な
る異性体を使用することができる。好ましくは、C12-(2-3-2)は純粋なR-異
性体として使用され、式(VI)に示される構造を有する。C12-(2-3-2)の純
粋なR-異性体を得るために、合成のために1,2-エプキソイドデカンのR-異性体を
用いて、C12-(2-3-2)について上記のように調製することができる。
【化12】
【0123】
したがって、好ましい実施形態において、医薬組成物は、繊毛病の治療に使用するため
のポリリボヌクレオチドを含み、式(V)に示される、好ましくは式(VI)に示される
ような、構造を有するリピドイドをさらに含む。
【0124】
さらに特に好ましいLTRは式(VII)を有するカチオン性リピドイドであり、本明
細書では「dL_P」とも呼ばれ、これは、触媒としてホウ酸を使用して、N,N’-ビ
ス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンとN-ドデシルアクリルアミドとの
反応によって合成することができる。反応のために、混合物は、マイクロ波照射下で10
0℃で撹拌することができる。
【0125】
したがって、さらなる好ましい実施形態では、医薬組成物が繊毛病の治療に使用するた
めのポリリボヌクレオチドを含み、さらにリピドイドを含む式(VII)で示される構造
を有する。
【化13】
【0126】
さらに、医薬組成物は、以下に記載する製剤に含まれる式(V)、(VI)および/ま
たは(VII)、好ましくはdL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)、より好ま
しくはdL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)のR-異性体を有するカチオン性
脂質を含む。特に、本明細書に記載のRNAを標的細胞または標的組織に送達および/ま
たは導入するための薬剤および試薬、ならびに本明細書に記載のLTRは1つ以上(例え
ば、2つ、3つ、または4つ)のさらなる脂質(例えば、コレステロール、DPPC、D
OPEおよび/またはPEG脂質(例えば、DMPE-PEG、DMG-PEG2000
))と組み合わせることができる。これらのさらなる脂質は薬剤/試薬およびLTRの所
望の機能を支持し得(それぞれ、細胞または組織へのRNAの送達および/または導入を
支持および/または増加させ、そしてトランスフェクション効率を改善し得る)、そして
それぞれの「ヘルパー脂質」として機能し得る;このような「ヘルパー脂質」の特定の例
はコレステロール、DPPC、DOPEおよび/またはPEG脂質(例えば、DMPE-
PEG、DMG-PEG(例えば、DMG-PEG2000))である。さらなる脂質(
例えば、「ヘルパー脂質」)はまた、本明細書中に開示される錯体/粒子の一部であり得
る。当業者は、本発明にしたがって錯体/粒子を調製する立場に容易にある。さらなる脂
質(例えば、「ヘルパー脂質」)の例もまた、当該分野で公知である。当業者は適切なさ
らなる脂質(例えば、「ヘルパー脂質」)および薬剤/試薬/LTRおよびさらなる脂質
(例えば、「ヘルパー脂質」)の比を選択する立場に容易にある。そのようなモル比1-
4 : 1-5、3-4 : 4-6、約4:約5、約4:約5:薬剤/試薬/ LTR
の約5.3:さらに脂質(s)である(より狭い範囲が望ましい)。例えば、薬剤/試薬
/LTRはそれぞれ8 : 5.3 : 4.4 : 0.9、またはより具体的にはそ
れぞれ8 : 5.29 : 4.41 : 0.88のモル比で、DPPC、コレステ
ロール、およびDMG-PEG2000等の3つのさらなる脂質と組み合わせることがで
きる。
【0127】
好ましくは、dL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)、より好ましくはdL_
Pおよび/またはC12-(2-3-2)のR-異性体は上記のように生成され、リポイ
ド粒子を処方するために、ヘルパー脂質DPPCおよびコレステロールならびにPEG-
脂質DMG-PEG2000と共に8:5.29:4.41:0.88のモル比で使用さ
れる。
【0128】
C12-(2-3-2)のR-異性体(式VI)が脂質DPPCおよびコレステロール
およびPEG-脂質DMG-PEG2000と8:5.29:4.41:0.88のモル
比で処方される組成物は本明細書では「LF92」とも呼ばれる。dL_P(式VII)
が脂質DPPCおよびコレステロールおよびPEG-脂質DMG-PEG2000と8:
5.29:4.41:0.88のモル比で処方される組成物は本明細書では「LF111
」とも呼ばれる。
【0129】
また、例えば、国際公開第2016/075154 A1号、EP 3013964、
およびZhang et al. (TERMIS, 2019, Tissue En
gineering: Part A, Vol. 25, Numbers 1 an
d 2)に例示的に記載されるように、dL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)
は、mRNA分子のリピドイドおよびネガティブリン酸基の正アミノ基間の静電相互作用
に基づいて、mRNA分子との安定なリポプレックスを作製するための非ウイルスベクタ
ーとして使用され得る(Anderson, Human Gene Therapy
14, 2003, 191-202)。リポプレックス構造を安定化し、漏れを低減す
るために、dL_Pおよび/またはC12-(2~3~2)、より好ましくは、dL_P
および/またはC12-(2~3~2)のR-異性体に、1、2-ジパルミトイル-sn
-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)およびコレステロール(Anderson,
Drug Delivery 11, 2004, 33-39; Liang, J
ournal of Colliod and Interface Science
278, 2004, 53-62)と題する2つのヘルパー脂質を供給することができ
る。最後に、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリ
コール(DMG-PEG)2kD(DMG-PEG2000)を脂質混合物に添加して、
PEG化リポソームを提供する。PEG化は水溶性を増加させ、酵素分解から保護し、免
疫原性および抗原性反応を制限することによって、リポソーム製剤の物理化学的特性を改
善することが既によく知られている(Milla、Current Drug Meta
bolism 13、2012、105-119)。全体エタノール性脂質混合物の最終
N/P比は、mRNA分子の1つのリン酸基に対するdL_Pおよび/またはC12-(
2-3-2)/ DPPC /コレステロール/DMG-PEG2000のアミノ基のモ
ル比をそれぞれ表す8 : 5.29 : 4.41 : 0.88である。
【0130】
したがって、好ましい実施形態では、医薬組成物が繊毛病の治療に使用するためのポリ
リボヌクレオチドを含み、DPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2000と
処方されたdL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)、好ましくはdL_Pおよび
/またはC12-(2-3-2)のR-異性体をさらに含む。
【0131】
さらに、特に好ましい態様において、薬学的組成物は繊毛脂質の治療に使用するための
ポリリボヌクレオチドをさらに含み、好ましくはdL_Pおよび/またはC12-(2-
3-2)、好ましくはdL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)のR-異性体を含
み、DPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2000とともに処方され、mR
NA分子の1つのリン酸基に対するdL_Pおよび/またはC12-(2-3-2)/
DPPC /コレステロール/ DMG-PEG2000のアミノ基のモル比に対してそ
れぞれ8 : 5.29 : 4.41 : 0.88の最終N/P比を有する。
【0132】
上記のようにDPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2000と配合された
C12-(2-3-2)のR-異性体は、LF92配合物とも呼ばれる。
【0133】
したがって、繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の
特に好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、LF92配合をさらに含む。
【0134】
上記のようにDPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2000と共に製剤化
されたdL_Pは、LF111製剤とも呼ばれる。
【0135】
したがって、繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の
特に好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、LF111配合をさらに含む。
【0136】
繊毛病の治療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物の好ましい実施
形態において、前記医薬組成物は、LF92および/またはLF111配合をさらに含む
。LF92および/またはLF111は、細胞トランスフェクションに使用される担体製
剤を指す。これは、LF92および/またはLF111の使用が高いトランスフェクショ
ン効率に関連し、したがって、繊毛病に関連する欠損を有するタンパク質の機能的バージ
ョンをコードするポリリボヌクレオチドが細胞、好ましくは未分化毛様細胞または基底細
胞に効率的に入り、したがって、PCDに罹患している対象において毛様細胞機能を回復
することができることを確実にするので、有利である。
【0137】
特に好ましい実施形態において、医薬組成物は、LF92および/またはLF111配
合、以下のうちの少なくとも1つを含む:MCIDASタンパク質の機能的バージョンに
翻訳され得るmRNA、GemC1タンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmRN
A、FoxJ1タンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmRNA、E2f4VP1
6タンパク質の機能的バージョンに翻訳され得るmRNA;ならびにCCDC40および
/またはCCDC39の機能的バージョンに翻訳され得るmRNA。好ましくは、このよ
うな組成物がスプレー、液滴および/またはネブライザーを使用することによって、およ
び/または吸入によって、好ましくは1週間に少なくとも1回および/または少なくとも
4週間、患者に投与される。
【0138】
したがって、いくつかの実施形態では、医薬組成物が2つ以上、好ましくは2つのタン
パク質の機能的バージョンに翻訳され得るポリリボヌクレオチドを含むことを除いて、上
記の実施形態について記載されるのと同じことが適用される。したがって、いくつかの実
施形態において、上記の実施形態に記載される医薬組成物は、マルチシストロニックポリ
リボヌクレオチドを含む。
【0139】
本発明はまた、繊毛病に罹患している対象における繊毛病を治療する方法に関し、ポリ
リボヌクレオチドを含む医薬組成物の投与を含み、ポリリボヌクレオチドはその欠損が前
記繊毛病に関連するタンパク質の機能的バージョンをコードし、前記医薬組成物は、前記
対象の呼吸器系に投与され、対象が呼吸器系の炎症を示す場合に実施される。医薬組成物
の可能な実施形態および好ましい実施形態、ならびにその投与方法および投与時間に関し
て、本発明による医薬組成物に関連して本明細書中上記に記載されたのと同じことが適用
される。
【0140】
本発明はまた、欠損が繊毛病に関連するタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド
、およびN-アセチルシステイン(NAC)、塩化ナトリウムを含む高張溶液、ならびに
/あるいはLF92および/もしくはLF111配合を含む、医薬組成物に関する。
【0141】
医薬組成物およびその成分に関しては、繊毛病に罹患している対象における繊毛病の治
療に使用するためのポリリボヌクレオチドを含む医薬組成物に関連して上述したのと同じ
ことが当てはまる。さらに、そのような医薬組成物の他の特徴は、上記の通りであり得る
。
【0142】
したがって、好ましい実施形態では、医薬組成物がMCIDASの機能的バージョンに
翻訳することができるmRNAをさらに含むことができる。
【0143】
本開示はまた、配列番号1または5~11のいずれかに示されるヒトCCDC40をコ
ードするポリリボヌクレオチドに関する。
【0144】
本開示の前記のまたは他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
ポリリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドがヒトCCDC40(例えば、機
能的ヒトCCDC40)をコードし、配列番号1または5~11の1つ以上(例えば、配
列番号1または5~11に記載の配列)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なく
とも92%、または少なくとも95%同一(例えば、少なくとも95、96、97、98
、99または100%同一)である一次配列を含む。
【0145】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、CYBA 5’UTR
、ヒトCCDC40タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続く
Kozakエレメント、CYBA 3’UTR、およびポリ(A)テール(例えば、配列
番号1を参照)を含む。
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモータ
ーの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、ヒトCCDC40タンパ
ク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続くKozakエレメント、お
よびポリ(A)テール(例えば、配列番号5を参照)を含む。
【0146】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、さらなるUヌクレオチ
ド、ヒトCCDC40タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続
くTISUエレメント、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号6を参照)を含む。
【0147】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、hAg 5’UTR、
ヒトCCDC40タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続くK
ozakエレメント、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号7を参照)を含む。
【0148】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、ヒトCMV IE9
5’UTR、ヒトCCDC40タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化
配列、ヒト成長ホルモン3’UTR、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号8を参
照)を含む。
【0149】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、Kozakエレメント
、EGFPコード配列、G4Sスペーサー、続いてヒトCCDC40タンパク質の機能的
バージョンをコードするコドン最適化配列、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号
9を参照)を含む。
【0150】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、ヒトCCDC40タン
パク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列、G4Sスペーサー、EGFP
コード配列、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号10を参照)を含む。
【0151】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’非翻訳領域(UTR)、CYBA 5’UTR
、Kozakエレメント、続いてHAタグ、G4Sスペーサー、ヒトCCDC40タンパ
ク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列、T2Aペプチド、tdToma
toをコードする配列、CYBA 3’UTR、およびポリ(A)テール(例えば、配列
番号11を参照)を含む。
いくつかの実施形態では、ポリリボヌクレオチドが本明細書に記載の任意のそのようなレ
ベルおよび/またはタイプから選択される修飾のレベルおよび/またはタイプを有する修
飾ポリリボヌクレオチドである。
【0152】
特定の実施形態において、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一性は配列番号1また
は5~11のCCDC40コード配列部分に関してのみ測定される(例えば、パーセント
同一性を計算する場合、UTR、他の非コード配列およびGFPまたはエピトープタグは
考慮されず、ポリリボヌクレオチドは、このような領域を含んでも含まなくてもよい)。
【0153】
前記のいずれかの特定の実施形態において、このようなポリリボヌクレオチド(または
修飾ポリリボヌクレオチド)は、機能的CCDC40タンパク質をコードする。
【0154】
本開示はまた、配列番号2または12~14のいずれかに示されるヒトCCDC39を
コードするポリリボヌクレオチドに関する。
【0155】
本開示の前記のまたは他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
ポリリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドがヒトCCDC39をコードし、
配列番号2または12~14の1つ以上(例えば、配列番号2または12~14に記載の
配列)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%または少なくとも95
%同一(例えば、少なくとも95、96、97、98、99または100%同一)である
一次配列を含む。
【0156】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’UTR、CYBA 5’UTR、ヒトCCDC
39タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続くKozakエレ
メント、CYBA 3’UTR、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号2を参照)
を含む。
【0157】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’UTR、ヒトCCDC39タンパク質の機能的
バージョンをコードするコドン最適化配列が続くKozakエレメント、およびポリ(A
)テール(例えば、配列番号12を参照)を含む。
【0158】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’UTR、さらなるUヌクレオチド、ヒトCCD
C39タンパク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列が続くTISUエレ
メント、およびポリ(A)テール(例えば、配列番号13を参照)を含む。
【0159】
特定の実施形態において、前記ポリリボヌクレオチドはその5’末端に、T7プロモー
ターの一部、Ethris’ミニマル5’UTR、5’UTRとしてのSP30(すなわ
ち、30ヌクレオチドのランダム配列)、Kozak元素、続いてヒトCCDC39タン
パク質の機能的バージョンをコードするコドン最適化配列、およびポリ(A)テール(例
えば、配列番号14を参照)を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、ポリリボヌクレオチドが本明細書に記載の任意のそのような
レベルおよび/またはタイプから選択される修飾のレベルおよび/またはタイプを有する
修飾ポリリボヌクレオチドである。
【0161】
特定の実施形態では、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一性が配列番号2または1
2~14のCCDC39コード配列部分に関してのみ測定される(例えば、パーセント同
一性を計算する場合、UTR、他の非コード配列およびGFPまたはエピトープタグは考
慮されず、ポリリボヌクレオチドはそのような領域を含んでも含まなくてもよい)。
【0162】
前記のいずれかの特定の実施形態において、このようなポリリボヌクレオチド(または
修飾ポリリボヌクレオチド)は、機能的CCDC39タンパク質をコードする。
【0163】
本開示はまた、配列番号4に示されるヒトMCIDASをコードするポリリボヌクレオ
チドに関する。本開示の上記または他の態様および実施形態のいずれかのいくつかの実施
形態では、ポリリボヌクレオチドまたは修飾ポリリボヌクレオチドがヒトMCIDASを
コードし、配列番号4(例えば、配列番号4に示される配列に対して)と少なくとも85
%、少なくとも90%、少なくとも92%または少なくとも95%同一(例えば、少なく
とも95、96、97、98、99または100%同一)である一次配列を含む。特定の
実施形態では、前記ポリリボヌクレオチドがその5’末端に、T7プロモーターの一部、
Ethris’ミニマル5’UTR、ヒトMCIDASタンパク質の機能的バージョンを
コードするコドン最適化配列、PCRベースの鋳型製造のためのリバースプライマー結合
部位としても機能する任意の3’UTR、ならびにポリ(A)尾部を含む。いくつかの実
施形態では、ポリリボヌクレオチドが本明細書に記載の任意のそのようなレベルおよび/
またはタイプから選択される修飾のレベルおよび/またはタイプを有する修飾ポリリボヌ
クレオチドである。特定の実施形態において、ポリリボヌクレオチドのパーセント同一性
は配列番号4のMCIDASコード配列部分に関してのみ測定される(例えば、パーセン
ト同一性を計算する場合、UTR、他の非コード配列およびGFPまたはエピトープタグ
は考慮されず、ポリリボヌクレオチドは、このような領域を含んでも含まなくてもよい)
。前記のいずれかの特定の実施形態では、そのようなポリリボヌクレオチド(または修飾
ポリリボヌクレオチド)が機能性MCIDASタンパク質をコードする。
【0164】
第2の配列に対する第1の配列の同一性パーセンテージを決定する目的のために、アナ
ログ(例えば、メチルシチジン)は、シチジン等と一致する。特定の実施形態では、用語
「一次配列」がCUCUCUAと同一の一次配列が列挙されたヌクレオチドのいずれかま
たはすべてが修飾されているかどうかにかかわらず、その配列を含むように(例えば、C
、UおよびAのいずれか以上のアナログが存在し得、そして同じ一次配列とみなされ得る
)、修飾の有無または量にかかわらず、ポリヌクレオチド配列をいうために使用され得る
。
【0165】
特定の実施形態では、同一性パーセントが例えば、CCDC40またはCCDC39の
コード配列に対応する所与の列挙された配列の部分を参照することによってのみ決定され
る。他の実施形態では、同一性パーセントがコード配列および1つ以上の非コード配列の
両方を参照することによって決定される。特定の実施形態では、同一性パーセントが列挙
された配列の全長にわたって決定される(例えば、本明細書の配列表に列挙された配列の
全長を参照することによって)。
【0166】
本発明はさらに、ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を分析する方法であ
って、前記ポリリボヌクレオチドは、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされる
タンパク質をコードし、該方法は、以下の工程を含む、方法に関する:
(a) 繊毛病を有する対象の鼻ブラシを取得する工程であって、該鼻ブラシは、未分
化基底細胞および分化した繊毛細胞を含む、工程、
(b) 未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を得るために、工程(a)から得られた
細胞を、水中細胞培養物として培養する工程、
(c) 工程(b)から得られた未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を、気液界面細
胞培養物として培養し、エアリフトを実施する工程、
(d) 工程(c)から得られた細胞を、毛様体形成に関連および/または必要なタン
パク質をコードするポリリボヌクレオチドでトランスフェクトする工程、
(e) 分化した繊毛細胞を得るために、工程(d)から得られたトランスフェクトさ
れた細胞を培養する工程、および
(f) 前記ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を、乳酸デヒドロゲナー
ゼ測定、NucGreenアッセイ、高速ビデオ顕微鏡法、毛様ビート周波数測定、粘膜
毛様クリアランスアッセイ、および/または免疫蛍光染色を用いて決定する工程。
【0167】
患者の気道上皮の細胞を得るために、鼻ブラシは取り扱いが容易であり、患者にとって
迅速かつ無痛であるため有利である。鼻刷子から得られた細胞は、未分化基底細胞および
サブマーゼ細胞培養物として培養され得る分化繊毛細胞を含む。水中細胞培養により、上
皮細胞の脱分化が誘導され、未分化な基底細胞と脱分化した繊毛細胞が得られる。このよ
うにして得られた脱分化繊毛細胞ならびに鼻刷子の未分化基底細胞を、次いで、空気液体
界面(ALI)細胞培養物として培養する。
【0168】
工程(c)の空気液体界面細胞培養物は細胞の基底表面が液体培養培地と接触し、一方
、先端表面が空気に曝されることを特徴とする細胞培養物を指す。細胞は例えば、細胞培
養インサートの隔膜上に播種することができ、細胞培養インサートは最初に、頂端区画お
よび基底区画の両方に培養培地が供給される。これは「空気細胞培養」とも呼ばれ、合流
部に達すると、細胞は「エアリフト」工程にかけられ、そこで培地は基底チャンバーにの
み供給される。これは、例えば呼吸器系に見られる条件を模倣し、未分化な毛様体細胞に
おいて毛様体形成を含む細胞分化を誘導する。したがって、例えば、基底細胞および繊毛
細胞を含む、呼吸器系の上皮を模倣する細胞を、インビトロでのさらなる研究のために得
ることができる。
【0169】
次いで、得られた上皮模倣細胞を得ることができる ポリリボヌクレオチドは生産に
関連し、また/または、生産に必要とされるたんぱく質をコードするポリリボヌクレオチ
ドでトランスフェクトされた。したがって、前記ポリリボヌクレオチドは、ウイルス感染
またはウイルス感染以外の手段によって人工的に行うことができる細胞に導入されて、細
胞内に外因性ポリリボヌクレオチドを発現させる。次に、トランスフェクトされた細胞を
培養して、基底および未分化の繊毛細胞から分化した繊毛細胞を得る。したがって、毛様
体形成に対するmRNAのようなポリリボヌクレオチドの効果は例えば、対象において見
出され得るように、気道系の上皮を模倣する細胞の環境を保存しながら、インビトロで決
定され得る。
【0170】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの影響は、当業者に公知の種々の方法によっ
て決定され得る。これらの方法は例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ測定、NucGreen
アッセイ、高速ビデオ顕微鏡検査、毛様体拍動周波数測定、粘膜毛様体クリアランスアッ
セイ、および/または免疫蛍光染色を含む。したがって、乳酸デヒドロゲナーゼ測定(L
DH)を実施して、細胞を取り囲む環境中で放出されるLDHの量を決定することができ
る。それぞれのアッセイは比色アッセイであることができ、ここで、放出されたLDHの
量は、例えばヨードニトロテトラゾリウムまたはテトラゾリウム塩を赤色ホルマザンに変
換する酵素反応で測定される。したがって、アッセイは、分光法によって容易に読み取る
ことができる。
【0171】
あるいは、またはさらに、NucGreenアッセイを行うことができる。NucGr
eenは核酸に結合すると永久的な緑色蛍光核酸染色であり、例えば、トランスフェクシ
ョンの毒性関連効果を調べるために使用することができる。あるいは、またはさらに、ト
ランスフェクトされたポリリボヌクレオチドによってコードされるタンパク質の免疫蛍光
染色を行って、その量および他のタンパク質との共局在化を含む細胞局在化を決定するこ
とができる。発現されたタンパク質の量を決定するために、ウェスタンブロット技術を使
用することも可能である。
さらに、毛様構造の欠損または毛様体の欠如は例えば、特殊な顕微鏡法を用いて検出する
ことができる。スクリーニング試験は、鼻の一酸化窒素産生速度、鼻細胞の高速ビデオ顕
微鏡による毛様体運動性の測定、または例えばサッカリン試験を含むインビボ試験を含む
。より特異的な診断には、例えば、免疫蛍光法および透過型電子顕微鏡による繊毛の検査
が必要である。
【0172】
代替的に又は追加的に、毛様体拍動周波数測定を適用して、高速ビデオ顕微鏡を用いて
拍動周波数、拍動繊毛および繊毛細胞の数、および拍動同期性を調査することができる。
同じことは、繊毛機能によって影響を受ける粘液クリアランス速度を測定するために実施
できる粘液繊毛クリアランスアッセイにも当てはまる。
【0173】
記載された方法で使用されるポリリボヌクレオチドに関しては、繊毛病を治療するのに
使用するための本発明の医薬組成物に関連して上述されたものと同様である。さらに、こ
のようなポリリボヌクレオチドの他の特徴もまた、上記の通りであり得る。
【0174】
さらに、ポリリボヌクレオチドは、マーカーをコードする配列を含み得る。例としては
、添付の実施例に記載されるtdTomato(例えば、配列番号3に含まれる)、緑色
蛍光タンパク質(GFP)、および増強GFP(eGFP)、ならびにそれぞれの検出方
法が挙げられる。これは、ポリリボヌクレオチドによる細胞の成功したトランスフェクシ
ョンを確認するために特に有利である。
【0175】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの影響を分析する方法のいくつかの実施形態
において、細胞は、工程(c)においてエアリフトが行われた後、0~12日以内、好ま
しくは0~11日以内、より好ましくは0~6日以内、さらにより好ましくは0~4日以
内、最も好ましくは0~48時間以内にトランスフェクトされる。これは、エアリフト工
程が基底および未分化毛様体細胞の毛様体形成を誘導するので有利である。
【0176】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの効果を分析する方法のいくつかの実施形態
において、細胞は、式(V)、(VI)、および/または(VII)に示される構造を有
するリピドイドを使用して、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされるタンパク
質をコードするポリリボヌクレオチド、好ましくはmRNAでトランスフェクトされる。
【0177】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの効果を分析する方法のいくつかの実施形態
において、細胞は、培地Gを用いて工程(b)~(e)において培養される。培地Gの組
成が典型的には表2に示されるとおりである。)。
【0178】
【0179】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの効果を分析する方法のいくつかの実施形態
において、細胞は、表3に示される培地の1つを使用して、工程(b)~(e)において
培養される。表3に示す培地は、ALI培養物を増殖させるために使用することができる
市販の培地である。
【0180】
【0181】
毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの効果を分析する方法のいくつかの実施形態
において、鼻刷子は線維芽細胞をさらに含み、前記線維芽細胞の成長は、工程(b)~(
e)において阻害される。これは、線維芽細胞が基底および未分化毛様体細胞と比較して
より速く増殖し、したがって、上記のような毛様体形成に対するポリリボヌクレオチドの
効果の研究を妨げ得るため、有利である。
【0182】
細胞を固定相のフラスコに移す前に、1~2時間の短いインキュベーション時間のため
に、線維芽細胞を残りの細胞から分離することができる。その間に、線維芽細胞は沈降し
、細胞フラスコに付着することができる。全ての他の細胞は懸濁細胞として培地中に残り
、その後、「固定相フラスコ」に容易に移すことができる。
【0183】
本発明による方法は好ましくは毛様体形成に対して好影響を有し、機能において繊毛細
胞構造を回復させるために、したがって第2の態様による医薬組成物において使用するこ
とができるポリリボヌクレオチドの同定、および本発明の第1の態様による繊毛病を患う
対象における繊毛病の治療におけるその使用をもたらす。したがって、ポリリボヌクレオ
チドの特徴に関しては、繊毛病の治療における使用のための本発明の医薬組成物に関連し
て上記したのと同じことが当てはまる。さらに、このようなポリリボヌクレオチドの他の
特徴もまた、上記の通りであり得る。
【0184】
図1:CCDC40 mRNAの翻訳効率。2/1.4/0.3/0.2/0.05x
10^6 HEK293細胞を6ウェルプレートに播種した。Lipofectamin
e2000を用いて、種苗細胞を、異なるCCDC40構築物(ETH031T06-T
10、2.5μg/9.5cm
2)で24時間トランスフェクトした。トランスフェクシ
ョンの6、24、48、72および144時間後に細胞溶解を行った。50μgの総タン
パク質溶解物をSDS-PAGEおよびウェスタンブロットで分析した。CCDC40は
Atlas Antibodies由来の抗CCDC40抗体(HPA022974)(
1:2000)を用いて検出され、GAPDHはローディング対照としての役割を担った
。GFPは、トランスフェクションコントロールとしての役割を担った。
【0185】
図2:BEAS-2B、RPMI2650、およびHEK293細胞におけるCCDC
40 mRNA構築物の翻訳効率:2x10^6 HEK293、7.5x10^5 B
EAS-2B、および5x10^5 RPMI 2650細胞を6ウェルプレートに播種
した。播種の24時間後、細胞を、Lipofectamine2000を使用して、異
なるCCDC40構築物(2.5μg/9.5cm
2)でトランスフェクトした。トラン
スフェクションの6時間後に細胞溶解を行った。タンパク質溶解物をSDS-PAGEお
よびウェスタンブロット(HEK293:50μg、RPMI 2650:20μg、B
EAS-2B:総溶解物30μg)で分析し、Atlas Antibodies(1:
2000)からの抗CCDC40抗体(HPA022974)を用いてCCDC40を検
出した。
【0186】
図3:LF92/CCDC40トランスフェクション後の高速ビデオ顕微鏡(HSVM
)結果。患者由来のALI培養物を、3μgのLF92/CCDC40で1日おきにトラ
ンスフェクトした。トランスフェクションの前およびトランスフェクションの24時間後
ごとに、ビデオ(インサートあたり20)を採取し、SAVA(Sisson-Ammo
nsビデオ分析)ソフトウェアを用いてCFB(毛様拍動頻度)を計算した。16個全部
のトランスフェクション(1ヶ月)を行った。測定は、40倍のマグニフィケーションを
用いて37℃で行った。毛様体拍動周波数測定値の平均値を計算する(全磁場解析、WF
A)。
【0187】
図4:粘膜繊毛クリアランス(MCC)は、Z-投影およびポーラーグラフとして示さ
れる。CCDC40患者ALI培養物を、3μg/インサートの濃度のCCDC40 m
RNA/LF92で、エアリフトで18日間トランスフェクトした。ALI培養物を、実
験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した
(=4xTF)。粘膜繊毛クリアランス(MCC)を、0.5μm蛍光ビーズを用いて2
0倍の倍率で測定した。異なる領域の30のビデオを撮影し、最後のTFの1週間後にニ
コンからのポーラーグラフソフトウェアで分析した。1つの例示的な写真が示されている
。
【0188】
図5:健常(右下)制御のtdTomatoおよびポーラーグラフについて、Z投影(
左上)およびポーラーグラフ(右上)として示される粘膜繊毛クリアランス(MCC)。
上段:ALI培養においてCCDC40変異を有する患者からの細胞を、エアリフトの1
8日後に、3μg/インサートの濃度でtdTomato mRNA/LF111でトラ
ンスフェクトした。ALI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクシ
ョン(TF)を週1回、4週間実施した(=4xTF)。粘膜繊毛クリアランス(MCC
)を、0.5μm蛍光ビーズを用いて30倍の倍率で測定した。異なる領域の20のビデ
オを撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分析し
た。1つの例示的なビデオが示された。右下:健康なWT ALI培養物の粒子追跡。M
CCは、0.5μmの蛍光ビーズを用いて20倍の倍率で測定した。異なる領域の20の
ビデオを撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分
析した。1つの例示的な画像および2つの分析されたROIが示されている。
【0189】
図6:ALI培養におけるCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、空気リフト時
に18dの3μg/挿入物の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCC
DC40 mRNA/LF92のいずれかでトランスフェクトした。ALI培養物を、実
験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した
(=4xTF)。対照として、健康な鼻ブラシからのWT ALIを使用した。CCDC
40 mRNAおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで切断
し、抗GAS8(赤色)、抗アセチル化チューブリン(緑色)およびDAPI(青色)で
染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示されている。スケール
バーは10μmを表す。
【0190】
図7:ALI培養物中のCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、3μg/挿入物
の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCCDC40 mRNA/LF
92のいずれかでトランスフェクトし、空気リフト時に18dトランスフェクトした。A
LI培養物を、実験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回
、4週間実施した(=4xTF)。対照として、健常対照からのALIを使用した。CC
DC40 mRNAおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで
切断し、防DNALI1(赤色)、防アセチル化チューブリン(緑色)およびDAPI(
青色)で染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示されている。
スケールバーは10μmを表す。
【0191】
図8:ALI培養におけるCCDC40変異を有する患者由来の細胞を、空気リフト時
に18dの3μg/挿入物の用量でtdTomato mRNA/LF111またはCC
DC40 mRNA/LF92のいずれかでトランスフェクトした。ALI培養物を、実
験の間、培地G中で維持した。トランスフェクション(TF)を週1回、4週間実施した
(=4xTF)。対照として、健常対照からのALIを使用した。CCDC40 mRN
AおよびtdTomato mRNAで処理したALI膜を20μmで切断し、抗CCD
C39(1:200、赤)、抗アセチル化チューブリン(1:10.000、緑)および
DAPI(青)で染色した。共焦点顕微鏡で写真を撮った。1つの例示的な画像が示され
ている。拡大率40倍。
【0192】
図9:HEK-293およびBEAS-2BにおけるCCDC39タンパク質(110
kDa)発現、トランスフェクション後6時間および24時間。1.4x10^5 HE
K-293細胞および3.5x10^5 BEAS-2B細胞を6つのウェルプレートで
シードし、CCDC39-RNA(ETH047T02、ミニマル5’UTR、Lipo
fectamine MessengerMax;比1:1.5)でトランスフェクトし
た。6時間および24時間後、細胞をM-PERおよびTriton(登録商標) X-
100緩衝液で溶解した。50 μgのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使
用した。対照として、非トランスフェクト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞
の溶解物を使用した。高用量=0.5μg/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。
【0193】
図10:
未処理ALI培養物におけるCCDC39タンパク質(110kDa)式。2つの挿入
を、軸索抽出プロトコールを使用して抽出した。30、10および5μLのタンパク質溶
解物をウェスタンブロット分析に使用した。Active Area: Insert
39.9 = 71.25%、Insert 41.2 = 59.88%
【0194】
図11:
プロテアソーム阻害剤処理後の16HBE14におけるCCDC39タンパク質(11
0kDa)式。6.0x10^5×16HBE14ocellを6ウェルプレートに播種
し、CCDC39-RNA(Lipofectamine MessengerMax;
比 1:1.5)をトランスフェクトした。6時間後、細胞をM-PER緩衝液で溶解し
た。20 μgのタンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。対照として、
非トランスフェクト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞の溶解物を使用した。
高用量=0.5μg/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。RNA:ETH047T
02:ミニマル5’UTR、ETH047T03:TISU、ETH047T04:CY
BA、ETH047T05:SP30。
【0195】
図12:プロテアソーム阻害剤での16HBE14oafter処理におけるCCDC
39タンパク質(110kDa)式。6.0x10^5 16HBE14ocellを6
ウェルプレートにシードし、CCDC39-RNA(ETH047T03、TISU 5
’UTR、Lipofectamine Messenger Max;比1:1.5)
でトランスフェクトした。24時間後、細胞をM-PER緩衝液で溶解した。20μgの
タンパク質溶解物をウェスタンブロット分析に使用した。対照として、非トランスフェク
ト(UT)およびEGFPトランスフェクト細胞の溶解物を使用した。高用量=0.5μ
g/cm
2、低用量=0.25μg/cm
2。
【0196】
本発明の他の態様および利点は以下の実施例において記載され、これらは説明の目的の
ために与えられ、そして限定のためではない。本出願において引用される各刊行物、特許
、特許出願、または他の文書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0197】
本開示において使用するための方法および材料が本明細書に記載されている;当技術分
野で公知の他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施
例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0198】
(I.材料および方法)
使用する材料、装置、ソフトウェア、試験系
材料を表4に列挙する。
【0199】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0200】
デバイスを表5に列挙する。
【0201】
【0202】
ソフトウェアを表6に示す。
【0203】
【0204】
試験系を表7に列挙する。
【0205】
【0206】
(I. 水中細胞培養物)
1.培養
細胞株を、37℃および5% CO2含量の加湿大気下で、細胞インキュベーター中で
培養した。全ての試薬および溶液を、利用前に水浴中で37℃に加熱した。
【0207】
コンフルエント細胞(約90%)を最初に20mLのDPBS(w/o Mg2+/C
a2+)で洗浄して、死滅細胞を除去した。細胞を分離するために、2mLのトリプシン
/EDTA溶液(0.05%)をフラスコ当たり添加した。次いで、細胞の剥離が生じる
まで、細胞を37℃でインキュベートした。それぞれの培地8mLを用いてトリプシンを
停止させた。LHC-9培地はほとんど無血清であったので、トリプシン処理を不活性化
するために、少なくとも等容量のトリプシン阻害剤を分離したBEAS-2B細胞に添加
した。その後、トリプシン阻害剤を再び除去するために、細胞溶液を毎分1100回転(
rpm)で5分間遠心分離しなければならなかった。次いで、ペレットを培地中で分解し
た。継代のために、細胞を次の使用にしたがって異なる比率に分割した。
【0208】
HEK 293(DSMZ番号: ACC305)
この樹立細胞株は、アデノウイルス5型(AD 5)により形質転換したヒト初代胎児
腎臓由来であった。これをダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-10%熱不活化(
h.i.)ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S
)を含むグルタMAX(商標)サプリメント中で培養した。この細胞株を週に2回分割し
た。
【0209】
RPMI 2650(DSMZ番号: ACC207)
この細胞系は、鼻中隔の未分化扁平上皮癌の52歳男性の胸水から起源を持っていた。
類上皮繊毛形態と細気管支上皮との類似性から選択した。また、Dulbecco’s
Modified Eagle Medium(DMEM)-10%熱不活化(h.i.
)ウシ胎仔血清(FBS)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)+1x非必
須アミノ酸溶液(NEAA)を含むGlutaMAX(商標)サプリメント中で培養した
。この細胞株を週に1~2回分割した。
【0210】
BEAS-2B(ATCC番号:CRL9609)
BEAS-2B 細胞は非がん性個々の剖検から得られた正常気管支上皮に由来した。
次いで、細胞を複製欠損SV40/アデノウイルス12ハイブリッドで感染させ、クロー
ニングした。使用した培養培地は、w/o添加剤を修飾したLHC-9であった。それら
はまた、合流部に依存して、週に1~2回分割された。
【0211】
BEAS-2B細胞に使用したフラスコを、LHC-9に溶解した0.01mg/mL
フィブロネクチン、0.03mg/mLコラーゲンおよび0.01mg/mLウシ血清ア
ルブミンの混合物でコーティングした。この混合物を2表面積当たり0.2mLの割合で
添加した。その後、37℃で少なくとも6時間のインキュベーションが必要であった。細
胞を加える前に、フラスコを、Mg2+/Ca2+を含まないダルベッコリン酸緩衝生理
食塩水で3回洗浄した。
【0212】
2. In vitro転写
インビトロ転写のための鋳型を作製するために、環状プラスミドをBstBIによる制
限消化によって線状化し、クロロホルムエタノール沈殿によってさらに精製した。
【0213】
mRNAは、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ、およびRNase
阻害剤を含有する標準的なin vitro転写混合(示された修飾トリホスフェートヌ
クレオチドを含む)を用いて産生した。共転写キャッピングは、ARCAキャップ類似体
の添加によって達成された。化学修飾RNAのin vitro転写のために、7.5%
のシチジン-5’-トリホスフェートを5-ヨードシチジン-5’-トリホスフェートで
置換し、30%のウリジン-5’-トリホスフェートを5-ヨードウリジン-5’-トリ
ホスフェート(Jena Biosciences)で置換した(例えば配列番号1参照
)。別の化学修飾RNA製造セットアップでは、3%のシチジン-5’-トリホスフェー
トを5-ヨードシチジン-5’-トリホスフェートで置き換え、15%のウリジン-5’
-トリホスフェートを5-メチル-ウリジン-5’-トリホスフェート(Jena Bi
osciences)で置き換えた(例えば、配列番号2参照)。続いて、mRNAを酢
酸アンモニウム沈殿によって精製し、続いて70%エタノールを用いて洗浄工程を行った
。
【0214】
残留するキャップされていないmRNAの脱リン酸化はクイック脱リン酸化キットを使
用して実施し、続いて酢酸アンモニウム沈殿による精製、続いて70%エタノールを使用
する洗浄工程、および100 MWCOカットのフィルターを使用する限外濾過を行った
。
【0215】
ポリ(A)ポリメラーゼを用いてmRNAをさらにポリアデニル化した。再び、mRN
Aを、酢酸アンモニウム沈殿、続いて70%エタノールを使用する洗浄工程、および10
0 MWCOカットのフィルターを使用する限外濾過によって精製した。ポリ(A)長さ
は、キャピラリーゲル電気泳動によって100~250ヌクレオチドであると決定された
。
【0216】
特に、この実験で調査されたCCDC40 mRNA構築物は5’ARCAキャップお
よびPPAを含み、以下のものであった:Ethris’ミニマルUTR(ETH031
06;T06;配列番号5)、TISU 5’UTRを伴うが3’UTRを伴わない(E
TH03107;T07;配列番号6)、hAg 5’UTRを伴うが3’UTRを伴わ
ない(ETH03108;T08;配列番号7)、CYBA 5’および3’UTRを伴
う(ETH0310T0;T09;配列番号1)、ならびにヒトCMV IE9由来の5
’UTRおよびヒト成長ホルモン由来の3’UTRを伴う(ETH031T0;T10;
配列番号8)。
【0217】
3. トランスフェクション
少なくとも90%のコンフルエンシーを提供するために、細胞をトランスフェクション
の24時間前に6ウェルプレートに播種した。細胞数は、読み出しの時点および細胞型に
よって異なっていた(表8を比較されたい)。
【0218】
【0219】
トランスフェクションはトランスフェクションコントロールとして、増強された緑色蛍
光タンパク質(eGFP)をコードするmRNAと同様に、異なるCCDC40 mRN
A構築物を用いて行った。トランスフェクション前にLipofectamine(登録
商標) 2000を用いてトランスフェクションを実施し、培養培地を交換して、細胞に
最適条件を提供した。リポプレックスは、mRNA/WFI混合物ならびにLipofe
ctamine(登録商標) 2000/培地混合物を必要とした。それぞれの混合物の
125μLを、mRNAが1μg/μlのストック濃度を示したので、mRNA対Lip
ofectamine(登録商標) 2000の容積比1:2で使用した。異なるmRN
A濃度を使用し、それに応じて混合物を調整した(例示的なピペッティングスキームにつ
いては表9を参照されたい)。
【0220】
【0221】
両方の混合物を調製した後、mRNA/WFI混合物をLipofectamine(
登録商標) 2000/培地混合物に添加し、該溶液を≧5分間インキュベートした後、
それを播種した細胞に滴下して添加した。細胞のより良好な生存率を得るために、トラン
スフェクションの4時間後に追加の培地交換を行った。
【0222】
4. CCDC40ウェスタンブロット
a. ウェスタンブロットのためのサンプリング
細胞溶解のために、トランスフェクションからの培養培地を除去し、細胞をDPBS(
Mg2+/Ca2+なし)で洗浄し、次いでCorning(登録商標) Cell S
crapersを用いて掻き取った。細胞を100μLの溶解緩衝液[10x Trit
on(登録商標)X-100溶解緩衝液(250mM Tris-HCl、1% Tri
ton(登録商標)X-100、pH: 7.8)をWFI中で1xに調整し、プロテア
ーゼインヒビターcOmpleteで補完した後、試料を-20℃で凍結した]で溶解し
た。
【0223】
総タンパク質濃度は、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット(BCA
アッセイ)を用いて決定した。アッセイは、製造業者のプロトコールにしたがって行った
。簡単に述べると、1:50のBCA作業試薬(WR)希釈液を調製した。5 各サンプ
ルのμLを96ウェルプレート(平底、透明)に移し、200μLのWRをウェル当たり
添加した。最後の工程は、37℃で30分間のインキュベーションであった。結果は、M
agellan(商標)データ解析ソフト使用して、Tecan Infinite(登
録商標) 200 PROプレートリーダーで測定した。
【0224】
b. NET-ゼラチンの調製
【0225】
【0226】
c. SDS-PAGEおよびウェスタンブロット
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を実
施するために、溶解物を5μLのボルトLDS試料緩衝液(4x)および2μLのボルト
試料還元剤(10x)と混合し、次いで、Thermomixer(登録商標) C中で
10分間および350回転で70℃に加熱した。7 μLのマーカー(Precisio
n Plus protein(商標)Dual Color Standards)を
各ゲルの第1のポケットに充填し、その後、正確なタンパク質サイズ推定を可能にした。
次いで、ゲルタンクを、1Aで30分間、電力供給(Power PAC 300)に接
続した。続いて、カセットをへらで開き、ゲルをブロッティングステーションに移動させ
た。
【0227】
転写システム(Transfer System)(Transfer -Blot(
登録商標) Turbo(商標)Transfer System、30分、25 V、
1A)および好適な膜(Transfer-Blot Turbo Transfer
Pack Mini 0.2μm PVDF)を、製造業者の指示にしたがってブロッテ
ィングに使用した。「サンドイッチ」上でローラーをスクロールさせることによって、タ
ンパク質移動を妨害し得る任意の気泡が排除された。遊離結合部位をブロックするために
、膜をNET-ゼラチンに入れ、プレートシェーカー上で60分間振盪した。ゲルを75
kDバンドで切断して、CCDC40およびグリセリンアルデヒド-3-ホスファ-デ
ヒドロゲナーゼ(GAPDH)を同時に検出した。抗体をNET-ゼラチン(6mL中の
抗CCDC40 1:2000、10mLのNET-ゼラチン中のGAPDH 1:10
000)で希釈し、膜をプレートシェーカー上で4℃で一晩インキュベートした。GAP
DHは負荷制御として機能する。使用した抗体のリストを表11に示した。翌日、膜をN
ET-ゼラチンで10分間3回洗浄して、非特異的に結合または残留した抗体を除去した
。二次抗体ヤギ抗ウサギIgG-HRPをNET-ゼラチンで1:10,000に希釈し
た。室温(RT)でプレートシェーカー上で60分間インキュベートした後、膜を時間N
ET-ゼラチンで10分間3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼHRP結合二次抗
体は、分子撮像部(ChemiDoc(商標)XRSシステム)を介して検出することが
できた。したがって、5mLのLuminata Crescendo Western
HRP Substrateをゲル上に添加し、5分間インキュベートした。次に、未
だ露光過多ではなかった最後の写真と比色写真をマージし、Image Lab(商標)
ソフトウェアで図示した。さらに、その後、Image Lab(商標)を用いてバンド
強度を測定した。
【0228】
【0229】
(II. ALI培養)
1. ヒト呼吸器上皮細胞(hREC)のサンプリング
a. 鼻ブラッシング
RPMI培地を室温に加熱し、ブラシを滅菌等張食塩水で湿らせた。保護チップを有す
るCelletta(商標)ブラシセルコレクターを適用した。患者に鼻をきれいにする
ように頼んだ後、彼は頭部を壁に当てて椅子に座って頭部を保持しなければならなかった
。回転運動と直線運動を用いて、下鼻道の内側と上側にブラシを数回迅速に擦過した。ブ
ラシを取り出したら、直ちに、5mlの予め温めたRPMI培地を含む収集チューブ(1
5mLコルニクル)に入れた。ブラシをチューブ内で少なくとも40回激しく振盪して、
ブラシから細胞を分離した。
【0230】
b. 静止培養
チューブを900rpmで5分間室温で回転させた。上清を捨てた後、ペレットをUG
培地[DMEM/Ham’s F-12 1:1、5mLの滅菌100x anibio
tics/mycoticsおよび10mLの滅菌Ultroser G]に溶解した。
5mLの培地をT25に使用し、25mLをT75フラスコに使用した。
【0231】
細胞を細胞培養フラスコに移した後、細胞を、5% CO2を含む加湿インキュベータ
ー中、37℃で一晩インキュベートした。細胞は20~24時間後に付着することはずで
ある。UG培地を週に3回交換した(月曜日、水曜日および金曜日)。
【0232】
2. ALI培養物の生成およびトランスフェクション
a. トランスウェルインサートのコーティング(0.33cm2)
以下のプレートをALI培養に使用した:透明なポリエステル膜(0.4μm孔、6.
5mm直径のインサート、24ウェルプレート)を有するCorning Transw
ell。ラット尾コラーゲンを酢酸中で1:5に希釈し、250μLを各インサートの先
端側に負荷した。プレートを室温で一晩インキュベートした後、残りの液体を低温ピペッ
トで吸引し、次いでプレートを少なくとも5分間開放蓋で乾燥させた(滅菌)。最後に、
インサートをDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で2回洗浄し、次いで室温で一晩
乾燥させた(滅菌)。インサートを4℃で1ヶ月まで保存した。
【0233】
b. 浸漬培養(静止培養)としてのhRECの細胞増殖
細胞に、2~3日毎(月曜日、水曜日および金曜日)に、15mLの予め温めたUG培
地を与えた。コラーゲン層の損傷および細胞の剥離を防止するために、新しい培地をコラ
ーゲン層上に直接添加しないように注意しなければならなかった。細胞が80%コンフル
エントであったか、またはコラーゲン層が剥離し始めた直後に、細胞をALIフィルター
に移した(およそ3週間後、水中培養)。
【0234】
c. 培地Gの調製
異なるALI培地を試験したが、自己作製培地Gが好ましい。
【0235】
この培地を1週間調製したが、4℃で保存する必要があった。バッチを、来るべき実験
サイズに基づいてアリコートで凍結した。表2は、培地Gの組成を示す。
【0236】
d. hREC (ALI培養)の播種とエアリフト
1. UG培地を吸引し、洗浄培地[DMEM/Ham’s F-12 1:1(1×
無菌抗生物質/抗真菌剤)]又はDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で1回洗浄す
る
2. 自作ラット尾コラーゲンをコーティングしたフラスコの場合:
a. コラゲナーゼ9mL(1×)を加えてコラーゲン層を溶解し、37℃で45~
60分間インキュベートする
b. 細胞を15mLコルニクチューブに移し、1000rpm、室温で5分間遠心
分離する
c. 洗浄バッファー(1000rpm、室温、5分間)で細胞を洗浄する
d. 2mLのトリプシンEDTA(1x)を添加し、細胞を分離するために穏やか
に上下にピペットで移し、細胞を37℃でインキュベートし、細胞クラスターが崩壊する
まで角質を振盪する(約5分)
gibcoから購入したコラーゲンでコーティングしたフラスコの場合:
a. 3mlのトリプシンEDTA(1x)を、細胞が分離するまで(約5分)細胞
培養フラスコに添加する
3. 0.5mLのFBSおよび5mLの洗浄培地を添加することによって、トリプシ
ンを停止させる
4. 細胞を15mlのファルコンに移し、細胞を洗浄培地(1000rpm、室温、
5分間)で2回洗浄する
5. ペレットを適量のALI培地(1~2mL、ペレットサイズに依存する)に再懸
濁し、細胞カウンターを用いて細胞をカウントする
6. 250μLの細胞懸濁液(400,000細胞/mL)を、基底外側に500μ
LのALI培地でコートした各コラーゲントランスウェルに添加する
7. 細胞を37℃、加湿した5% CO2インキュベーター中で一晩インキュベート
する
3~5日目: ALI-増殖
8. 顕微鏡下でインサートを一貫して確認する
9. 80~100%合流部(3~4日)まで毎日ALI培地を細胞に供給する
ALI分化
10. 80~100%コンフルエンシーに達したときのエアリフト細胞
a. 頂端側と側底側の両方からALI培地を吸引する
b. 500μLの新鮮なALI培地を基底外側区画に添加する
c. 細胞を37℃、加湿した5% CO2インキュベーター中でインキュベートす
る
11. 1週間に1回、予熱した洗浄培地(先端)で細胞を洗浄し、ALI培地で細胞
を2~3日毎(または月曜日~水曜日~金曜日)に供給する
【0237】
e. hRECのトランスフェクション
製剤(LF111-mRNA)を、3μg/インサート(=9μg/cm2)の最終濃
度まで2%スクロース中に希釈した。粘液を除去するために、インサートを先端側で20
0μLのDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で洗浄し、先端側で37℃(上皮AL
I)または200μLのDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で20分間インキュベ
ートし、トランスフェクション前に室温で5分間インキュベートした。その後、頂端面か
らのDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)を、上皮を損傷することなく穏やかな吸引
によって除去した。粘液洗浄の直後に、細胞を再度WFI(100μL)で洗浄して、微
量のDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)を除去した。25 μLの配合を、細胞取
り込みを可能にするためにインサートの先端側に添加した。6時間インキュベートした後
、担体の除去を行い、細胞を200μLのDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で1
回洗浄し、培養物を、頂端側に液なしでALIとして維持した。
【0238】
3. 読み出しアッセイ
種々の読み出しアッセイが使用される。LDH測定およびNucGreenアッセイを
用いて、トランスフェクションの毒性関連効果を調べた。毛様体叩解周波数測定(CBF
)は、叩解周波数および繊毛面積の割合に関して毛様体叩解の様式を調べるために必要で
あった。繊毛の拍動が方向性のある流れを導く場合は、粘液繊毛クリアランス(MCC)
アッセイを用いて研究することができる。CCDC40、そのヘテロダイマーパートナー
CCDC39および繊毛マーカーアセチル化α-チューブリンについての免疫蛍光(IF
)染色を利用して、処理後に、CCDC40タンパク質またはそのパートナーCCDC3
9が繊毛中で検出され得るかどうかを検出した。さらに、GAS8およびDNALI1の
ようなダイニンレギュレーター錯体(DRC)のタンパク質を染色した。DRCは、CC
DC40/CCDC39によって固定され、CCDC40/CCDC39が繊毛軸索に正
しく組み込まれている場合にのみ存在する。
【0239】
a. LDH測定
LDH濃度を、Pierce(商標)Lactate Dehydrogenase
Cytotoxicity Assay Kitを用いて測定する。この手順は、製造者
のプロトコールに記載されているように行われる。ALI培養は、37°Cおよび5%
CO2で30分間、100μLのDPBS(Mg2+/Ca2+付き)を用いて頂面にイ
ンキュベートした。50 LDH反応混合物のμLおよび50μLのインキュベーション
培地を96ウェルフォーマットを利用して混合し、50μLの停止溶液を添加して、室温
で30分間、光から保護してインキュベートした。ホルマザンの吸光度を、マイクロプレ
ートリーダー(TriStar2 Multimode Reader LB 942)
を用いて490nmおよび680nmで測定した。680nmの値を、バックグラウンド
正規化のために490nmから差し引いた。各インサートについて二重測定を行った。
【0240】
b. 毛様体拍動周波数(CBF)測定
hRECの毛様体拍動周波数(CBF)分析を高速ビデオ顕微鏡およびSisson-
Ammonsビデオ分析によって行った。Minitube SC300加熱装置により
36℃に温度を維持することにより、生理学的条件下でELWD 40x S Plan
Fluor目的を装着した倒立位相差顕微鏡に取り付けたMegaplusカメラモデ
ルES 310ターボを用いてビデオ(125 fps、640×480画素解像度)を
記録した。
【0241】
c. 粘液繊毛クリアランスアッセイ(MCC、蛍光ビーズ)
ALI培地およびDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)を室温に予熱し、顕微鏡の
板を37℃に加熱した。ALI挿入を新しい平板に移し、予め温めたALI培地(代替D
PBS w/o Ca2+ /Mg2+)で先端を2回洗浄した。100μLのALI培
地を先端区画に添加した後、挿入あたり20枚のビデオ(倍率40倍、Ph2)を記録し
て、挿入の総合的な印象を得た(SAVAソフトウェア)。粒径0.5μmの赤色蛍光粒
子をDPBS(w/o Ca2+/Mg2+)で1:1000に希釈し、少なくとも1分
間ボルテックスし、10μLの粒子希釈物を100μLのALI培地に添加し、ボルテッ
クスし、110μLを先端区画に添加した。ビードを取り扱う間、凝集を防ぐために各ス
テップの前にボルテックスすることが重要であった。さらに、漂白を避けるために、薄暗
い光での作業が必要であった。
【0242】
蛍光粒子の流れを、NIS-Elements Basic Researchソフト
ウェアで記録した。488nmレーザーで粒子を励起しながら、20xマグニファイカチ
オン(Ph1)を用いて20~30sにわたって移動を記録した。露光時間は、毎秒記録
フレーム数(fps)に調整されなければならなかった。7.5 fpsの場合、露光時
間は100msに設定され、15 fpsから50msに設定された。正確な観察領域を
SAVA(20倍拡大、Ph1)で分析し、細胞層の繊毛運動と3D構造を可視化した。
【0243】
評価およびデータ解析のために、Nikon NIS Elemets AR Sof
tware、NIS PLUG-IN <ADVANCED 2D TRACKING>
<AR>(上記NIS Elements AR Tracking Modulを参照
)を使用する。
【0244】
d. ALI培養のIF
ALI培養の埋め込み
膜調製の前に、ALI挿入物をDPBS(w/o Mg2+/Ca2+、200μL、
1分間、室温)で2回洗浄して粘液を除去した。以下の膜調製は、以下のプロトコル(以
下を参照)にしたがって実施される。
【0245】
外科用メスまたはシリンジを用いてトランスウェルフィルター膜を切り出した後、膜を
3mlのDPBS(Ca2+/Mg2+)を含むペトリ皿に移した。膜を等片(4~6)
に切断し、Shandon Cryomatrix(商標)凍結包埋培地(中間サイズ)
を用いてクリオモールドを調製した。クライオマトリックスが硬化するまでクライオモー
ルドをドライアイス上でインキュベートする前に、膜片をクライオマトリックスに入れ、
互いに平行に配置した。クライオスタットで切断する前に、クライオモールドを-80℃
で少なくとも2時間保存した。
【0246】
ALI膜の切断
Shandon Cryomatrix(商標)に包埋されたALI膜を、クライオス
タットMicrom HM560を使用して切断した。したがって、クライオスタットを
-20℃(-21℃のテーブルおよび-25℃のチャンバー)に予備冷却した(切断の2
~3時間前)。クライオモルズを含むALI膜を-80℃から-20℃に少なくとも1時
間移した。膜の切断は、膜の取り扱い条件に応じて、20μmで行った。膜スライスをS
uperfrost Ultra Plusスライドに移し、室温で少なくとも1時間乾
燥させ、-80℃で一晩または-80℃で使用するまで保存した。
【0247】
染色手順
適用された抗体については、表12を参照のこと。
1日目:
1. 1xDPBS(Ca2+/Mg2+)で室温で5分間洗浄
2. 固定: 室温で4%PFA/1xDPBS(Ca2+/Mg2+)15分間
3. 洗浄3x DPBS(Ca2+/Mg2+)(2x 高速、1x5分)
4. 透過性:
a. 0.5% Triton(登録商標) X-100 fur 5分または
b. 0.2% Triton(登録商標) X-100 fur 10分(使用す
る抗体によって異なる)
5. 室温で3x DPBS(Ca2+/Mg2+)(2xクイック、1x5分)を洗
浄する
6. ブロッキング:5%正常ヤギ血清+DPBS(Ca2+/Mg2+)で2%BS
A、またはDPBS(Ca2+/Mg2+)で5%スキムミルク→室温で2h
7. 1次抗体200μlを4℃で一晩
2日目:
8. DPBS(Ca2+/Mg2+)で45分間洗浄(3x15分)
9. 2次抗体:室温で1時間200μL
10. 暗所の室温で10分間DPBS(Ca2+/Mg2+)のHoechst33
342 1:1000
11. DPBS(Ca2+/Mg2+)で6x5分洗浄
12. Dakoアンチフェード付きマウントカバースリップ
【0248】
【0249】
e. ALI培養物のエアブラシ
エアブラシモデルを用いて、分化ALI培養物を作製した。プロトコールは、Cresp
in et al。2011(Approaches to Study Differ
entiation and Repair of Human Airway Epi
thelial Cells)の後に確立された。
【0250】
細胞を、前もって温めたDPBS(Mg2+/Ca2+)で先端側で短時間洗浄した。
エアブラシに接続されたコンプレッサはエアブラシを回転させ、小型車輪を回転させるこ
とにより、1kg/cm2に設定した。エアブラシは一定の値にとどまるために、ある時
間にわたって動作する必要があるかもしれない。次に、エアブラシの上にある小さなリザ
ーバをDPBS(Mg2+/Ca2+)で満たし、挿入部を基礎培地なしの新しいプレー
トに入れた。エアブラシは最初の圧力ポイントまで押して開始し、圧縮機の圧力が一定に
保たれるまで待機した。それから、エアブラシを挿入物の頂部に垂直に置き、エアブラシ
のてこを第1の圧点を越えて非常にわずかに押圧した(DPBS(Mg2+/Ca2+)
をリザーバから2秒間分散させる)。その後、インサートの先端側を、予め温めたDPB
S(Mg2+/Ca2+)で短時間洗浄し、インサートを、ALI分化に適用可能な新し
い培地に入れた。創傷を顕微鏡観察によりチェックした。それが小さすぎる(挿入面積の
1/3未満)か、または創傷内の細胞がほんのわずかに分離した場合、この手順を繰り返
した。培養物を37℃、5%CO2の加湿大気中でインキュベートし、ALIとして培養
した。
【0251】
(III. 標識CCDC40 mRNA)
検討中のmRNAを表13に示す。
【0252】
【0253】
a. 細胞培養
HEK-293細胞を、MEM GlutaMAX(商標)、10%FBS、100U
/ml P/S(=培養培地)中、37℃、5%CO2で培養する。
【0254】
播種前に、細胞をDPBSで洗浄し、トリプシンを用いて分離する。トリプシン処理後
、FBSを含有する培養培地を用いてトリプシンを不活性化する。したがって、同量以上
の培養培地が使用される。1100×gで5分間遠心分離し、正常な増殖培地に再懸濁し
た後、細胞を、Countess Cell Counting Deviceを用いて
カウントする。
【0255】
b. In vitro転写
インビトロ転写のための鋳型を作製するために、環状プラスミドをBstBIによる制
限消化によって線状化し、クロロホルムエタノール沈殿によってさらに精製した。
mRNAは、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ、およびRNase阻
害剤を含有する標準的なin vitro転写混合を用いて産生した。共転写キャッピン
グは、ARCAキャップ類似体の添加によって達成された。化学修飾RNAのin vi
tro転写のために、7.5%のシチジン-5’-トリホスフェートを5-ヨードシチジ
ン-5’-トリホスフェートに、30%のウリジン-5’-トリホスフェートを5-ヨー
ドウリジン-5’-トリホスフェートにそれぞれ置換した。別のSNIM(登録商標)の
RNA産生設定では、3%のシチジン-5’-トリホスフェートが5-ヨードシチジン-
5’-トリホスフェートに、15%のウリジン-5’-トリホスフェートが5-メチル-
ウリジン-5’-トリホスフェートにそれぞれ置換された。残留鋳型DNAをDNase
Iを用いて消化した。続いて、mRNAを酢酸アンモニウム沈殿によって精製し、続いて
70%エタノールを用いて洗浄工程を行った。
【0256】
残留するキャップされていないmRNAの脱リン酸化はクイック脱リン酸化キットを使
用して実施し、続いて酢酸アンモニウム沈殿による精製、続いて70%エタノールを使用
する洗浄工程、および100 MWCOカットのフィルターを使用する限外濾過を行った
。
【0257】
ポリ(A)ポリメラーゼを用いてmRNAをさらにポリアデニル化した。再び、mRN
Aを、酢酸アンモニウム沈殿、続いて70%エタノールを使用する洗浄工程、および10
0 MWCOカットのフィルターを使用する限外濾過によって精製した。ポリ(A)長さ
は、キャピラリーゲル電気泳動によって100~250ヌクレオチドであると決定された
。
【0258】
c. 播種、トランスフェクションおよび読み出し
細胞を、処理の24時間前に96ウェルブラックマイクロプレート(ウェルあたり25
,000細胞)に播種した。播種の24時間後、新鮮な培地を各ウェルに添加した(10
0μL)。mRNAを、1:1.5(w/v)のRNA対リポフェクトアミン比率でLi
pofectamine(登録商標) MessengerMAX(商標)を用いてトラ
ンスフェクトした。250ng/96ウェル(758ng/cm2)eGFP-CCDC
40(ETH031T28またはETH031T30)またはHA-CCDC40-T2
A-tdTomato(ETH031T26)mRNAを用いた。全てのRNAは、1m
g/mLのストック濃度を有していた。リポプレックス形成のために、mRNAを水中で
最も希釈した。Lipofectamine(登録商標) MessengerMAX(
商標)をSFM(無血清培地)で希釈し、ピペッティングによって混合した。RTで10
分間インキュベートした後、RNA溶液をLipofectamine(登録商標)Me
ssengerMAX(商標)溶液に添加し、混合し、RTでさらに5分間インキュベー
トした。その後、混合物をSFMで2倍希釈した後、Lipoplex溶液をウェルに添
加した。表14において、1つのRNAについての例を計算した。
【0259】
【0260】
トランスフェクションの6時間後および24時間後に、トランスフェクション効率を蛍
光顕微鏡によって調べ、10倍の倍率で写真を撮った。
【0261】
(IV. CCDC39)
検討中のmRNA(ETH047T02;配列番号12)はhCCDC39をコードし
、EthrisミニマルUTRを含んでいた。全体では、ウリジン-5’-トリホスフェ
ートの15%が5-メチル-ウリジン-5’-トリホスフェートに、シチジン-5’-ト
リホスフェートの計3%が5-ヨード-シチジン-5’-トリホスフェートに置き換わっ
ていた。使用した抗体を表15に示す。
【0262】
【0263】
1. CCDC39トランスフェクションおよび水中細胞培養におけるウェスタンブロッ
ト
a. 細胞培養
BEAS-2B 細胞を、コーティングされたフラスコ中のLHC-9培地中で培養し
た。詳細については、上記I1を参照されたい。実験は、コーティングされていない板で
行った。
【0264】
HEK-293 細胞を、熱不活性化FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(
P/S)を補充したMEM GlutaMax培地中で培養した。
【0265】
播種前に、細胞をDPBSで洗浄し、トリプシンを用いて分離した。トリプシン処理後
、トリプシンを、BEAS-2Bに対するトリプシン阻害剤またはHEK-293に対す
るFBSを含有する培養培地のいずれかを用いて不活性化した。したがって、等しい体積
またはそれ以上の体積のトリプシンインヒビター/培養培地を使用した。1100×gで
5分間遠心分離し、正常な増殖培地に再懸濁した後、細胞を、Countess Cel
l Counting Deviceを用いてカウントした。播種量2mlおよび6ウェ
ルプレートフォーマットを考慮して、5.0x105播種BEAS-2B細胞および1.
4x106播種HEK-293細胞を得た。
【0266】
b. トランスフェクション
細胞を、処理の24時間前にそれぞれの密度で播種した。播種の24時間後、2mLの
新鮮な培地を各ウェルに添加した。mRNAを、1:1.5(w/v)のRNA対リポフ
ェクトアミン比率でLipofectamine(登録商標) MessengerMA
X(商標)を用いてトランスフェクトした。全てのRNAは、1mg/mLのストック濃
度を有していた。リポプレックス形成のために、mRNAをaqua bidestで希
釈した。Lipofectamine(登録商標) MessengerMAX(商標)
をSFMで希釈し、ピペッティングによって混合した。室温で10分間インキュベートし
た後、RNA溶液をLipofectamine(登録商標) MessengerMA
X(商標)溶液に添加し、混合し、室温でさらに5分間インキュベートした。その後、リ
ポプレックス溶液をウェルに添加した。表16において、トランスフェクションのための
実施例は、1つの6ウェルプレートについて計算される。
【0267】
【0268】
c. 細胞溶解
最適な細胞溶解を得るために、2つの異なる溶解緩衝液(Triton(登録商標)
X-100緩衝液および市販の溶解緩衝液M-PER(商標))を比較し、これらの両方
は、プロテアーゼインヒビターcOmplete、完成不含、および40μL/mL D
Nase I溶液(23:1:1の混合物中)で補完された。したがって、細胞を6ウェ
ルプレートに播種し、6時間および24時間処理した。処理後、細胞を回収した。したが
って、1mLのDPBSを用いてプレートを1回洗浄した。板から細胞を除去するために
、さらに1mLのDPBSを添加し、細胞を板からき取り、エッペンドルフチューブに移
した。DPBSを除去するために、細胞を6250×gで2分間、4℃で遠心分離した。
細胞溶解は、200μLのそれぞれの緩衝液を添加することによって行った。完全な溶解
を確実にするために、細胞を氷上で30分間インキュベートした。溶解後、BCAアッセ
イを行って、BCAタンパク質アッセイキットを使用して、製造業者の指示にしたがって
、以下の変更を加えて、総タンパク質濃度を決定した:
● 5μLの細胞溶解物に200μLの作業試薬を添加した
● 試料および標準物質を3回測定した
● 試料を37℃で30分間インキュベートする前に、プレートを450rpmで30
秒間振盪した
【0269】
d. 試料調製
試料を5μLのBolt(登録商標) LDS試料緩衝液および2μLのBolt(登
録商標)試料還元剤と混合し、次いで70℃で10分間加熱した後、SDS-PAGEを
行った。30 総タンパク質μgをSDS-PAGEに使用し、ボルト(商標)4~12
%SDS-PAGEゲル、10ウェルを使用した。
【0270】
e. SDS Page and Blotting方法
Trans -Blot(登録商標) Turbo(商標)システムトランスファーを
使用した。SDS-PAGEを、200 Vを40分間印加して行った。移送は、Tra
nsBlot(登録商標)ターボTM移送システムを用いて30分間行った。
【0271】
f. 抗体およびブロッキング方法
転写後、膜を室温で1時間ブロックした。NET-ゼラチンをブロッキング試薬として
使用した。アトラス抗体由来の抗体HPA035364をCCDC39の検出に使用し、
abcam由来の抗体ab8227をアクチンの検出に使用した。抗体を添加する前に、
膜を約60kDaで切断した。膜を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。室温
でブロッキング溶液で3回(各10分)洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ共役二
次抗体を室温で1時間(1:20 000に希釈)加えた。膜を、室温で10分毎にブロ
ッキング溶液で再び3回洗浄した。
【0272】
g. 化学発光信号現像
シグナルは、化学発光基質キット(シグナルの強度に応じて、Luminata Cr
escendo、ClassicoまたはForte Western HRP基質)お
よびChemiDocTM MP Systemを用いて可視化した。
【0273】
2. 分化ALI培養における内因性CCDC39のウェスタンブロット
a. 細胞溶解
250μLのALI溶解緩衝液(組成物の詳細については表17を参照)を挿入当たり
添加し、氷上で15分間インキュベートした。インキュベーションの前、間(5分毎)お
よび端部に、ALI溶解緩衝液を前後にピペットで移した。エッペンドルフチューブに移
し、各インサートを150μLのALI溶解緩衝液でリンスした後、試料を完全にボルテ
ックスした。この工程において、試料は任意に、さらなる処理まで-20℃で保存され得
る。
【0274】
【0275】
b. 全細胞溶解物からの軸糸溶解物の分離
試料をLysing Matrix Aチューブに添加した(チューブを洗浄した後、
70% EthOHで洗浄し、ガーネットを除去した)。チューブを固定し、チューブを
動かしながら20秒間液体窒素中で凍結させた。チューブをMP FastPrep-2
4(HOM-1)に迅速に挿入し、設定:6.5m/s、3×1分。続いて、チューブを
氷上で15分間凝縮させた後、液体を新鮮なエッペンドルフチューブに移し、1100r
pm、4℃で20分間回転させた。上清を新しいEppendorfチューブに移し、ペ
レットおよび上清をさらに処理するまで-20℃で保存した。
【0276】
c. 軸糸抽出物溶解物の調製:繊毛軸糸タンパク質の高塩抽出
各ペレットを50μlのMMRB + 0.1% Triton(登録商標) X-1
00(MMRB + 0.1% Triton(登録商標) X-100の組成物の詳細
については表18を参照)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした(時折穏やか
にボルテックスしながら)。4℃で10分間14,000rpmで回転させた後、上清を
新しいエッペンドルフチューブに移し、さらなる処理まで-20℃で保存した。
【0277】
【0278】
【0279】
d. ウェスタンブロットのための溶解物の調製
試料を氷上で解凍し、30μlの試料を新しいエッペンドルフチューブに移した。12
試料を70℃、350rpmで10分間加熱する前に、LDS試料緩衝液μLおよび1
0×還元剤5μlを添加した。ウェルあたり5、10および30μlを、Bolt(商標
)4~12%SDS-PAGEゲル、10ウェルに適用した。
【0280】
e. SDS Pageおよびブロッティング方法:IV 1e参照
【0281】
f. 抗体とブロッキング方法:IV 1 f参照
【0282】
g. 化学発光シグナル発生:IV 1g参照
【0283】
(II. 結果)
CCDC40発現を、トランスフェクションの6時間、24時間、48時間、72時間
および144時間後にHEK293細胞において決定した。特に、2/1.4/0.3/
0.2/0.05x106細胞を6ウェルプレートでシーディングし、Lipofect
amine(登録商標) 2000を用いて種々のCCDC40構築物(2.5μg/9
.5cm2)でシーディング後24hに細胞をトランスフェクトした。この実験で使用し
たCCDC40 mRNA構築物は、T06~T10(配列番号1、および配列番号5~
配列番号8)であった。トランスフェクションの6、24、48、72および144時間
後に細胞溶解を行い、総タンパク質溶解物50μgをSDS-PAGEおよびウェスタン
ブロットで分析した。
【0284】
図1に見られるように、ピーク翻訳効率は、HEK細胞におけるCCDC40 mRN
Aのトランスフェクションの6時間後に検出可能であった。
【0285】
このケースでは、2x10 6 HEK293、7.5x10 5 BEAS-2B
および5x10 5 RPMI 2650 細胞を6 ウェルプレートにシードし、SD
S-PAGE およびウェスタンブロット(HEK293: 50μg、RPMI 26
50: 20μg、BEAS-2B: 30μg の全解析)を用いてタンパク質解析を
行ったところ、アトラスアンチボディ(1:2000)のAnti-CCDC40 An
tibody(HPA022974)を用いてCCDC40を検出した。
【0286】
ここで、T09(CYBA;配列番号1)およびT10(ヒト成長ホルモン配列番号8
からのヒトCMV IE9および3’UTR)UTRが、BEAS-2B、RPMI26
50およびHEK293細胞におけるトランスフェクションの6時間後に最高の翻訳効率
をもたらしたことが観察され得る(
図2)。
【0287】
次いで、患者由来ALI培養物における繊毛運動性の回復を調べるために、2つの実験
を行った。特に、第1の実験では非分化ALI培養物(データは示されていない)を用い
た(繊毛細胞はエクソン1および2の欠損があり、結果として非常にショートポジション
運動性の低い繊毛を生じた)一方、第2の実験では分化ALI培養物を用いた。いずれの
場合も、ALI培養には3μg LF92/CCDC40(ETH031T09;配列番
号1)を隔日に1ヶ月ごとに、計16回のトランフェクトを施した。読み出しとして、高
速ビデオ顕微鏡(HSVM)を24時間毎に、免疫蛍光免疫細胞化学(IF-ICC)で
行った。トランスフェクションの前およびトランスフェクションの24時間後ごとに、ビ
デオ(インサートあたり20)を採取し、CFB(毛様体拍動頻度)をSAVAソフトウ
ェアを用いて計算した。16個全部のトランスフェクション(1ヶ月)を行った。測定は
、40倍の倍率を用いて37℃で行った。繊毛拍動頻度(CBF)の平均値を計算する。
【0288】
LF92/CCDC40の反復トランスフェクションは、患者由来の完全に分化したA
LI培養物において忍容性が高かった。CCDC40タンパク質はIF-ICCによる2
2日後の気道上皮細胞の自然発生細胞下領域、すなわち繊毛で検出でき、繊毛運動性はL
F92/CCDC40トランスフェクション後に、分化ALI培養による実験のための図
3で見るように、正常な繊毛拍動頻度の18日目から約50%まで増加した。
【0289】
材料および方法の節に記載されるように、未分化ALI培養物を、培地Gを使用して得
、そしてトランスフェクション(TF)を、エアリフトの18日後に開始した。CCDC
40 mRNA/LF92によるCCDC40患者ALI培養のトランスフェクション(
TF)を週1回、4週間実施した(=4x TF)。粘膜繊毛クリアランス(MCC)を
、0.5μm蛍光ビーズを用いて20倍の倍率で測定した。異なる領域の30枚のビデオ
を撮影し、最後のTFの1週間後にニコンからのポーラーグラフソフトウェアで分析する
。
【0290】
重要なことに、4週間のCCDC40 mRNA/LF92トランスフェクション後の
CCDC40患者ALIにおける繊毛拍動の回復が検出できた。さらに、繊毛の拍動を同
期させ、
図4に見られるように指向性粒子輸送を可能にした。比較のために、制御、すな
わちtdTomato mRNA/LF111トランスフェクションの4倍、および健常
制御の場合の粒子輸送を
図5に示す。
【0291】
このように、毛様体細胞の分化期に、tdTomato制御との比較によって示される
ように、LF92による患者ALI培養のCCDC40 mRNA/LF92TFの成功
は、成功裏の繊毛成長、成功裏の繊毛拍動、成功裏の指向性粒子輸送、および成功裏のタ
ンパク質検出(DRC錯体の一部としてのCCDC40 + GAS8/DNALI1の
結合パートナーとしてのCCDC39)をもたらした。さらに、tdTomato制御挿
入は、上記の効果のいずれも示さなかった。
【0292】
図6は制御(tdTomato mRNA)処理患者ALIに存在しない健常制御と同
様に、CCDC40 mRNAによる反復患者ALI処理後の軸糸内へのGAS8タンパ
ク質の取り込みの成功を示す。
図7は対照(tdTomato mRNA)処理患者AL
Iに存在しない健常対照と同様に、CCDC40 mRNAによる反復患者ALI処理後
の軸糸内へのDNALI-1タンパク質の取り込みの成功を示す。
図8は制御(tdTo
mato mRNA)処理患者ALIに存在しない健常制御と同様に、CCDC40 m
RNAによる反復患者ALI処理後の軸糸内へのCCDC39タンパク質の取り込みが成
功したことを示している。
【0293】
要約すると、繊毛運動性は分化ALI培養を用いると有意なレベルに回復できなかった
が、分化ALI培養を用いると部分的に回復した。
【0294】
CCDC39実験に関して、CCDC39タンパク質は
図9に見られるように、HEK
-293およびBEAS-2B細胞におけるトランスフェクションの6時間後および24
時間後にウェスタンブロット分析によって検出することができた。
図11に示すように、
CCDC39(ETH047T03;配列番号13)式は、16HBE14o使用プロテ
アソーム阻害剤において6時間後に検出することができた。ETH047T02(配列番
号12)、ETH047T04(配列番号2)、およびETH047T05(配列番号1
4)についても同様の実験を行い、同等の結果を得た。
図12に示されるように、CCD
C39(ETH047T03;配列番号13)式はまた、16HBE14o使用プロテア
ソーム阻害剤において24時間後に検出され得た。
【0295】
本出願に記載される例示的な配列を以下に提供する。本開示はいくつかの実施形態にお
いて、例えば、配列番号1または2に示されるUTR配列、またはそのような配列に少な
くとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一の配列、または前記のいず
れかに対応するかまたはそれによってコードされるmRNA等のポリリボヌクレオチド配
列を含むポリリボヌクレオチドを提供する。前記のいずれかの特定の実施形態では、ポリ
ヌクレオチドまたはポリリボヌクレオチドは修飾される(例えば、本明細書に記載のヌク
レオチド類似体を含む)。
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
【0309】
ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を分析する方法であって、前記ポリリボヌクレオチドは、毛様体形成に関連するおよび/または必要とされるタンパク質をコードし、該方法は、以下の工程を含む、方法:
(a) 繊毛病を有する対象の鼻ブラシを得る工程であって、該鼻ブラシは、未分化基底細胞および分化した繊毛細胞を含む、工程、
(b) 未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を得るために、工程(a)から得られた細胞を、水中細胞培養物として培養する工程、
(c) 工程(b)から得られた未分化基底細胞および脱分化繊毛細胞を、気液界面細胞培養物として培養し、エアリフトを実施する工程、
(d) 工程(c)から得られた細胞を、毛様体形成に関連および/または必要なタンパク質をコードするポリリボヌクレオチドでトランスフェクトする工程、
(e) 分化した繊毛細胞を得るために、工程(d)から得られたトランスフェクトされた細胞を培養する工程、および
(f) 前記ポリリボヌクレオチドの毛様体形成に対する効果を、乳酸デヒドロゲナーゼ測定、NucGreenアッセイ、高速ビデオ顕微鏡法、毛様ビート周波数測定、粘膜毛様クリアランスアッセイ、および/または免疫蛍光染色を用いて決定する工程。