(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096770
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】移動式充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240709BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240709BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/644 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/248 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/648 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J7/00 301D
H02J13/00 311A
H02J7/00 302D
G05D1/43
G05D1/644
G05D1/248
G05D1/648
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060377
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020057883の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 崇
(72)【発明者】
【氏名】木全 隆一
(72)【発明者】
【氏名】豊後 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】津野 康一
(57)【要約】
【課題】自律式作業機の充電による作業効率の低下を抑制する。
【解決手段】充電システムの移動式充電装置は、作業機へ充電するためのバッテリと、自律的に移動するモータ及び車輪と、モータ及び車輪により所定位置へと移動し、作業機を待機するよう制御する制御部とを有する。作業機は所定位置で待機している移動式充電装置により充電を受けて作業を継続する。所定位置は、作業機に対して固定式充電装置よりも近い位置であり、移動式充電装置は作業機による作業終了に応じて固定式充電装置へと移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電システムであって、
作業機と、
前記作業機へ充電するための蓄電手段、自律的に移動する移動手段、及び前記移動手段により所定位置へと移動し、前記作業機を待機するよう制御する制御手段、を有する移動式充電装置と、
前記蓄電手段を充電する固定式充電装置と、
を備え、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置であり、
前記制御手段は、前記作業機による作業終了に応じて前記固定式充電装置へと移動するよう前記移動手段を制御する
ことを特徴とする充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記作業機は他の蓄電手段を有し、
前記作業機は、 前記他の蓄電手段の残量が所定のしきい値を下回ったときに、前記移動式充電装置の位置に移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の充電システムであって、
前記作業機は、前記移動式充電装置により充電を受けると、前記位置への移動を開始した位置に戻るよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項4】
請求項2に記載の充電システムであって、
前記作業機は、前記位置に移動して前記移動式充電装置により充電を受けた後に、前記移動式充電装置の付近の未作業エリアの作業を再開するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の充電システムであって、
前記作業機は、作業済みエリアを記録するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の充電システムであって、
前記作業機は他の蓄電手段を有し、
前記作業機は、不使用時には前記移動式充電装置による充電位置で待機するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の充電システムであって、
前記移動式充電装置は、不使用時に、前記固定式充電装置による他の充電位置で待機するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の充電システムであって、
前記作業機及び前記移動式充電装置は、作業開始時に前記固定式充電装置を発進して前記所定位置へ移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の充電システムであって、
前記作業機は、前記所定位置から作業を開始するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の充電システムであって、
前記移動式充電装置は、前記蓄電手段の他の残量が既定値以下であるかを判定するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の充電システムであって、
前記移動式充電装置は、前記蓄電手段の前記他の残量が前記既定値以下であるときに、前記固定式充電装置へ移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項12】
請求項11に記載の充電システムであって、
前記移動式充電装置は、前記固定式充電装置により充電が完了すると、移動前の位置へと戻るよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の充電システムであって、
前記所定位置は、前記作業機による作業エリアの中である
ことを特徴とする充電システム。
【請求項14】
請求項13に記載の充電システムであって、
前記所定位置は、前記作業機が前記作業エリアの作業を終了する位置またはその所定範囲内である
ことを特徴とする充電システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の充電システムであって、
前記移動式充電装置は、前記作業機が前記移動式充電装置による充電位置に来たかを判定するよう構成される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の充電システムであって、
前記固定式充電装置には商用電源が接続される
ことを特徴とする充電システム。
【請求項17】
作業機と、
前記作業機へ充電するための蓄電手段、及び自律的に移動する移動手段を有する移動式充電装置と、
前記蓄電手段を充電する固定式充電装置と、を備える充電システムにおける充電方法であって、
前記移動式充電装置を前記移動手段により所定位置へと移動させて、前記作業機を待機させるステップと、
前記作業機による作業終了に応じて、前記移動式充電装置を前記移動手段により前記固定式充電装置へと移動させるステップとを含み、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置である
ことを特徴とする充電方法。
【請求項18】
作業機へ充電するための蓄電手段と自律的に移動する移動手段とを有する移動式充電装置に、
所定位置へと移動し、前記作業機を待機するよう前記移動手段を制御するステップと、
前記作業機による作業終了に応じて、前記蓄電手段を充電する固定式充電装置へと移動するよう前記移動手段を制御するステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置である
ことを特徴とするプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式の充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人走行作業機(例えば芝刈機)が記載されている。特許文献1によれば、作業機は、作業エリア内で作業(例えば芝刈り)を自動で行う。具体的には、作業エリアは、電磁波を発生するワイヤ(エリアワイヤ)で区画されており、作業機は、エリアワイヤからの電磁波を検出することで作業エリア内を走行し、作業エリア外に出てしまった場合には作業エリア内に戻るように走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、作業機にはバッテリが内蔵されており、バッテリの残量が基準値より低くなった場合、作業機は、エリアワイヤの電磁波に基づいてステーション(充電器)まで帰還する。作業機がステーションに接続されることで、バッテリの充電が開始される。ここで、作業機は充電のたびに固定されたステーションへ戻るため、作業対象の面積が広いとステーションへと戻り、充電後に作業を再開するまでの移動時間が長くなって作業効率の低下を招き、また単なる移動はバッテリの空費となる。
【0005】
本発明は上記従来例に鑑みて成されたもので、作業機が充電のための移動により費やされる時間と電力とを節約し、より作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、充電システムであって、
作業機と、
前記作業機へ充電するための蓄電手段、自律的に移動する移動手段、及び前記移動手段により所定位置へと移動し、前記作業機を待機するよう制御する制御手段、を有する移動式充電装置と、
前記蓄電手段を充電する固定式充電装置と、
を備え、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置であり、
前記制御手段は、前記作業機による作業終了に応じて前記固定式充電装置へと移動するよう前記移動手段を制御する
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業機が充電のための移動により費やされる時間と電力とを節約し、より作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自律式作業機と移動式充電器の側面図。
【
図2】
図1の自律式作業機の制御部を示すブロック図。
【
図3】
図1の移動式充電器の制御部を示すブロック図。
【
図4】自律式作業機および移動式充電器の使用環境の一例を示す模式図。
【
図5】自律式作業機および移動式充電器の使用環境の一例を示す模式図。
【
図6】自律式作業機の制御手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】移動式充電器の制御手順の一例を示すフローチャート。
【
図8】自律式作業機および移動式充電器の使用環境の他の例を示す図。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る自律式作業機と移動式充電器の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
●自律式作業機
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る自律式作業機1の側面図である。本実施形態の作業機1は、作業地(芝地)を移動しながら芝刈り作業を行う芝刈り機である。しかし、本発明は、除雪機、耕運機、道路舗装機等、他の種類の作業機にも適用可能である。
【0011】
作業機1は、左右の前輪103と、左右の後輪104とが車体102に支持された四輪車である。左右の後輪104は駆動輪であり、作業機1を作業地上で移動させる。各後輪104には、モータ104aを駆動源とした駆動機構が設けられ、左右の後輪104は独立して回転制御が行われる。左右の後輪4を独立して回転制御することにより、作業機1の進行方向を制御することができる。また信地旋回や超信地旋回を行うこともできる。左右の前輪103は自由回転自在に設けられている。
【0012】
作業機1は作業部105を備える。作業部105は作業地の芝刈り作業を行う機構である。作業部105は、回転カッタ105aと、モータ105cを駆動源として回転カッタ105aを略鉛直方向の軸105b回りに回転させる駆動機構とを含む。回転カッタ105aは、作業機1の前後方向で中央部(前輪103と後輪104との間)において車体102の下方に配置されている。本実施形態の回転カッタ105aは、回転方向が正回転、逆回転いずれの場合も芝を切断できるようにブレード(刃)が設けられている。作業部105は回転カッタ105cの上下方向の位置を変化させる昇降機構を備えていてもよい。以上の構成により、前輪103及び後輪104で作業機1を移動させつつ、作業部105により芝刈り作業を行うことができる。
【0013】
車体102の頂部には、ユーザの操作入力を受け付ける操作パネル108が設けられている。操作パネル108には表示部を設けてもよく、操作パネル108としてタッチパネル式ディスプレイを採用してもよい。ユーザは操作パネル8から作業機1の各種の情報の入力を行うことが可能である。また位置を特定するためにGPS受信部101を備えている。特に位置精度の高い方式、たとえばリアルタイムキネマティックGPS(RTK-GPS)などを用いることが望ましい。
【0014】
作業機1は、その電源としてバッテリ106を備える。バッテリ106はモータ104a及び105c等、作業機1が備える電気負荷(アクチュエータとも呼ぶ)に電力を供給する。バッテリ106は後述する移動式充電ステーション2(移動式充電装置または移動ステーションとも呼ぶ)または固定式充電ステーション3(固定式充電装置または固定ステーションとも呼ぶ)においてその充電が可能である。
【0015】
充電は、本実施形態では非接触方式で行われる。本実施形態では特に電磁誘導方式を用いるものとして説明する。作業機1は電磁誘導方式のために、誘導起電力を生じさせるための受電コイル109と、生じた交流電流を直流化する整流ユニット107とを有する。なお、充電方式としては電極を介した接触方式を用いてもよいし、非接触方式であっても磁気共鳴方式など他の方式を用いてもよい。
【0016】
●移動ステーション(移動式充電装置)
図1(B)は、本発明の一実施形態に係る移動ステーション2の側面図である。本実施形態の移動ステーション2は、芝刈り機などの作業機に充電するための移動式充電装置である。もちろん芝刈り機以外の作業機であっても、充電方式や規格への互換性があれば充電可能である。
【0017】
移動ステーション2は、左右の前輪203と、左右の後輪204とが車体に支持された四輪車である。左右の後輪204は駆動輪であり、移動ステーション2を作業地上で移動させる。各後輪204には、モータ204aを駆動源とした駆動機構が設けられ、左右の後輪204は独立して回転制御が行われる。左右の後輪4を独立して回転制御することにより、移動ステーション2の進行方向を制御することができる。また信地旋回や超信地旋回を行うこともできる。左右の前輪203は自由回転自在に設けられている。
【0018】
移動ステーション2には、その移動や充放電を制御する制御部210と、位置を特定するためのGPS受信部201とを備えている。GPS受信部としては特に位置精度の高い方式、たとえばリアルタイムキネマティックGPS(RTK-GPS)などを用いることが望ましい。
【0019】
移動ステーション2は、その電源としてバッテリ206を備える。バッテリ206はモータ204aや制御部210、作業機1への充電のためなどの電力を供給する。充電は、本実施形態では電磁誘導方式で行われる。移動ステーション2は電磁誘導方式のために、誘導起電力を生じさせるための送電コイル202と、直流を交流化するためのインバータ208とを有する。なお、充電方式としては電極を介した接触方式を用いてもよいし、非接触方式であっても磁気共鳴方式など他の方式を用いてもよい。
【0020】
移動ステーション2はまた、バッテリ206に充電するために、固定ステーション3からの電力供給を受けるための受電コイル209と整流ユニット207とを有する。望ましくは、受電コイル209と整流ユニット207は、作業機1の受電コイル109と整流ユニット107と互換であり、またその位置(特に高さ)も同程度となるよう設けられる。もちろん固定ステーション3は受電側に合わせた構造を有する。これにより、固定ステーション3は移動ステーション2のみならず作業機1に対しても充電可能である。なおバッテリ206としては、たとえば電気自動車や電動二輪車などの電源として利用されたバッテリを再生して利用することができる。このようにすることで移動ステーションのコストを下げ、移動ステーションを利用しやすくできる。
【0021】
また送電コイル202の筐体上部には、ごみ除去のためのパッド212と電磁石211とが設けられている。パッド212はたとえば起毛した丈夫な布地やブラシのようなものであってよく、主に非金属のごみを除去する。電磁石211はたとえば充電開始前などに通電され、金属片などの金属ごみを除去する。電磁石211は送電コイル202とずらして設けられるのが望ましい。これにより、充電時には作業機1の底部に付着したごみを取り除くこともできる。
【0022】
●作業機の構成
さて作業機1は、その動作を制御する制御部110を備える。
図2は作業機1の制御部110及び周辺の構成を示したブロック図である。
【0023】
制御部110は、処理部11と、RAM、ROM等の記憶部12と、外部デバイスと処理部11との信号の送受信を中継するインタフェース部(I/F部)13とを含む。処理部11は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行し、方位検知部14で検知した方向や、GPS受信部101で取得した位置情報など、および記憶部12に記憶した地図情報に基づいてモータ104a、105cなどのアクチュエータを制御する。処理部11は駆動回路16を介してアクチュエータの駆動制御を行う。
【0024】
GPS受信部101は位置センサの一例であり、作業機1の現在の位置を特定するためのセンサである。このほかにも例えば、左右の後輪104の回転量を検知する例えばロータリエンコーダなどのセンサで後輪104の駆動軸の回転量を直接検知したり、モータ104aの出力軸の回転量を検知することで位置を検知してもよい。その場合には基準となる位置、たとえば固定ステーションの位置からの走行距離と方向とを積算することで基準位置に対する現在位置を取得できる。また作業機1の現在の位置は、作業地内に配置したマーカをカメラ等のセンサで検知し、その検知結果から特定してもよいし、或いは、作業地内に配置したビーコンから無線通信により取得した情報から特定してもよい。
【0025】
制御部110は、また、バッテリ106を充電する充電回路15を含む。充電回路15は受電コイル109および整流ユニット107を介して移動ステーション2または固定ステーション3(
図4参照)から供給される電力により、バッテリ106を充電可能である。
【0026】
制御部110は、また、通信部17を含む。通信部17は、通信ネットワーク20を介して、あるいは直接的に移動ステーション2と通信可能である。また通信部17は、通信ネットワーク20を介して、管理サーバ21と無線通信が可能である。管理サーバ21は作業機1の状態を管理するサーバであり、例えば、複数の作業機1の情報を管理可能である。管理サーバ21は、通信ネットワーク20を介してスマートフォン等の携帯端末22と無線通信が可能である。携帯端末22は、例えば、作業機1の管理者の端末であり、作業機1の情報を管理サーバ21から受信することができる。これにより、管理者は、作業機1から離れた場所でも作業機1を監視することができる。これによりユーザはたとえば作業機1による作業対象エリアの地図(例えばエリアの境界)を管理サーバ21経由で作業機1に設定することなどができる。エリアの境界はたとえば、作業対象エリアの輪郭を形成する多角形の頂点の座標を指定することで行える。そのうちの1点を基準点として指定しておけば、基準点に基づいて作業対象領域の境界線を特定することができる。
【0027】
●移動ステーションの構成
一方、移動ステーション2は、その動作を制御する制御部210を備える。
図2は作業機1の制御部210及び周辺の構成を示したブロック図である。
【0028】
制御部210は、処理部311と、RAM、ROM等の記憶部312と、外部デバイスと処理部311との信号の送受信を中継するインタフェース部(I/F部)313とを含む。処理部311は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部312に記憶されたプログラムを実行し、方位検知部314で検知した方向や、GPS受信部201で取得した位置情報など、および記憶部312に記憶した地図情報に基づいてモータ204a、205cなどのアクチュエータを制御する。処理部311は駆動回路316を介してアクチュエータの駆動制御を行う。
【0029】
GPS受信部201は位置センサの一例であり、移動ステーション2の現在の位置を特定するためのセンサである。このほかにも例えば、左右の後輪204の回転量を検知する例えばロータリエンコーダなどのセンサで位置を特定できることは作業機1と同様である。
【0030】
制御部210は、また、バッテリ206を充電する充電回路315を含む。充電回路315は受電コイル209および整流ユニット207を介して固定ステーション3(
図4参照)から供給される電力により、バッテリ206を充電可能である。また充電回路315は充電のみならず、バッテリ206からインバータ208および送電コイル202を介して作業機1への充電が可能である。
【0031】
制御部210は、また、通信部317を含む。通信部317は、通信ネットワーク20を介して、あるいは直接的に作業機1と通信可能である。また通信部317は、通信ネットワーク20を介して、管理サーバ21と無線通信が可能である。通信ネットワーク20に係る構成は
図2で説明したとおりであるのでここでは省略する。
【0032】
●作業機及び充電ステーションの使用例
図4は作業機1および移動ステーション2、固定ステーション3の使用例を示す模式図である。移動ステーション2は不使用時には固定ステーション3による充電位置で待機している。さらに作業機1は移動ステーション2による充電位置で待機している。作業機1は、家屋に隣接した作業地(芝地)WAの芝刈り作業を行う。本実施形態の作業機1は、刈り取った芝を回収する機能を有しておらず、刈り取った芝は作業地WA上に放置されて肥料とされる。なお、作業機1は刈り取った芝を回収する機能を有していてもよく、例えば、回収袋に刈り取った芝を送り出す機構を有していてもよい。
【0033】
固定ステーション3には家屋から供給される商用電源が接続され、不図示ではあるが、移動ステーション2と同様に、インバータ及び送電コイルを介して、移動ステーション2又は作業機1に対する充電機能を持つ。固定ステーション3はその名の通り固定されており、移動することはない。作業機1は移動ステーション2(または固定ステーション3でもよい)から発進して作業地WAの芝刈り作業を行い、また、充電ステーション100に戻る。作業地WAの境界は、本実施形態では予め作業機1に登録されているものとするが、境界を示すマーカやトランスポンダ、ビーコン、磁界を生じるエリアワイヤなどにより作業機1が境界を認識してもよい。さらに認識した境界に基づいて作業地WAの形状やその中における固定ステーション3の位置などを学習するよう構成してもよい。
【0034】
図5に作業機1および移動ステーション2による作業例を示す。
図5(A)に示すように、作業機1及び移動ステーション2は固定ステーションを発進して作業地(作業エリア)WAの概ね中央へと移動する。ここで移動ステーション2はその位置で停止し、作業機1への充電のために待機する。一方作業機1はその位置から作業を開始する。
【0035】
図5(B)に示すように、作業機1は経路RTに沿って予め設定された地図と現在位置とに従って作業を行う。作業機1による作業が進行すれば、それに伴ってバッテリが消費される。バッテリ残量が所定のしきい値を下回ったなら、移動ステーション2に移動し、そこで充電を行う。移動ステーション2は、作業機1に対して、固定ステーション3よりも近い位置に移動しており、作業機1は短時間で充電位置まで移動できる。そして移動ステーション2により充電を受けると、作業を中断した位置に戻ってそこから作業を再開する。なお移動ステーション2の付近に未作業のエリアがあればそこから作業を再開してもよい。その場合には、作業機1は、未作業のエリアを特定できるよう作業の進行に応じて作業地WAのうち作業済みのエリアを記録しておく。本例では作業機1による作業済みのエリアは一定幅の帯状のエリアとなるので、帯状エリアの輪郭ベクトルにより作業済みエリアを記録しておいてよい。こうすることで例えば作業地WAから、輪郭ベクトルにより示された作業済みエリアを除外した領域が未作業エリアと特定できる。
【0036】
●作業機1の制御手順
図6に上述したような制御を行うための、作業機1の制御手順の一例を示す。
図6の手順はたとえば処理部11により記憶部12に記憶したプログラムを実行することで実現される。
【0037】
図6の手順は、作業機1が移動ステーション2による充電位置で待機している状態から、たとえば作業開始の指示に応じて開始される。この指示は例えば操作パネル108や携帯端末22から与えられてよいし、また予め定めた日時や時刻に達したことであってもよい。このとき移動ステーション2は固定ステーション3による充電位置に待機している。まず、満充電であるか判定する(S601)。満充電でなければ移動ステーション2からの充電を継続する(S603)。なおS601では、満充電でなくとも、充電レベルが一定のしきい値以上であるか判定し、しきい値に達していなければS603に分岐してもよい。
【0038】
次に作業範囲すなわち芝刈り範囲を決定し、それを移動ステーション2へと通知する(S605)。このとき経路を決定してもよい。なお作業範囲が予め設定されている場合には、S605はスキップしてよい。次に決定した作業範囲の概ね中央へと移動する(S607)。この移動中には作業をしてもよいししなくてもよい。
【0039】
作業範囲の概ね中央へ移動したなら、そこから作業を開始する(S609)。そして作業地WA全体について作業が終了したか判定し(S611)、終了したと判定した場合には、作業終了を移動ステーション2に通知する(S621)。そして固定ステーション3の位置(すなわち基準位置)へと移動する(S623)。移動後は、固定ステーション3へと戻った移動ステーション2による充電位置へと移動し、充電を行う。
【0040】
一方S611で作業終了と判定されなかった場合には、バッテリ残量が既定値以下であるか判定する(S613)。バッテリ残量が既定値以下でなければS609に戻って作業を継続する。バッテリ残量が既定値以下と判定した場合には、移動ステーション2に対してその位置情報を要求し、取得する(S614)。そして取得した移動ステーション2の位置を目的地として移動し、充電位置で充電を行う(S615)。なお、充電のためには位置のみならず方向を示す情報も必要であるので、取得する位置情報には移動ステーション2の方向を示す情報も含まれる。なお、移動ステーション2がたとえば充電位置へと案内するビーコンを出力するなどし、それに沿って作業機1が充電位置へと移動してもよい。また移動の前に作業を中断した位置および方向を記憶しておく。
【0041】
充電を開始すると例えば一定間隔で充電が完了したか判定する(S617)。この判定は例えばS601と同様であってよい。充電が完了すると、作業を中断した位置を目的地として移動し、その位置から作業の続きを再開する(S619)。
【0042】
以上の手順により、作業機1は作業を行って、バッテリ残量が少なくなれば、作業機1の近くで待機している移動ステーション2により充電できる。このため、充電のための移動距離が短く、バッテリ消費も抑制できる。
【0043】
●移動ステーション2の制御手順
図7に上述したような制御を行うための、移動ステーション2の制御手順の一例を示す。
図7の手順はたとえば処理部311により記憶部312に記憶したプログラムを実行することで実現される。
【0044】
図7の手順は、移動ステーション2が固定ステーション3による充電位置で待機している状態から、たとえば作業機1からの作業開始の通知に応じて開始される。
図7ではS605に芝刈り範囲の受信を示しているが、この受信をきっかけとして
図7の手順を開始してもよい。まず、満充電であるか判定する(S701)。満充電でなければ固定ステーション3からの充電を継続する(S703)。なおS701では、満充電でなくとも、充電レベルが一定のしきい値以上であるか判定し、しきい値に達していなければS703に分岐してもよい。
【0045】
次に作業機1から作業範囲すなわち芝刈り範囲を示す通知を受信する(S705)。なお作業範囲が予め設定されており、作業機1と共有されている場合には、S705はスキップしてよい。次に決定した作業範囲の概ね中央へと移動する(S707)。この移動中には作業をしてもよいししなくてもよい。中央位置の特定のアルゴリズムは作業機1と同じであることが望ましい。ただしそのままでは移動ステーション2は作業機1と全く同じ位置を目的として移動することになるので、作業範囲の中央から一定距離ずらした位置を目的位置として移動してもよい。目的位置への移動後にはその場で待機する。
【0046】
移動ステーション2は待機しながら作業機1からの作業終了の通知を待つ(S709)。作業終了の通知を受信したなら固定ステーション3へと移動し、充電を受ける(S725)。一方作業終了の通知がなければ。作業機1が充電位置に来たか判定する(S711)。この判定は、たとえば別途設けた位置センサにより判定してもよいし、送電コイル202に所定時間おきに通電し、誘導起電力の変化などに基づいて判定してもよい。
【0047】
作業機1が充電位置にあると判定した場合には、充電制御を開始する(S713)。例えば急速充電などの制御を行ってもよい。充電しつつ充電の終了を判定する(S715)。充電の終了は、たとえば充電量が所定値に達したこと(例えば満充電)をもって判定してよい。充電が終了したなら、移動ステーション2のバッテリ残量が既定値以下であるか判定する(S717)。既定値は、たとえば作業機への十分な充電ができない水準であり、たとえば予め定めておいてよい。既定値以下でなければS709に分岐する。
【0048】
バッテリ残量が既定値以下であれば、固定ステーション3の位置へ移動して充電を行う(S719)。そして充電が完了したか判定し(S721)、完了したならS719による移動前の位置へと戻って待機する(S723)。なお、このとき作業機1から作業終了の通知を受けたなら、そのまま固定ステーション3の位置で作業機1を待っていてよい。
【0049】
以上の手順により、移動ステーション2は作業機1の近くに移動して待機し、作業機1に充電を行うことができる。このため、作業機1の充電のための移動距離が短く、バッテリ消費も抑制できる。
【0050】
[変形例1]
上記実施形態では、作業地WA全体について、作業機1と移動ステーション2とがその概ね中央へと移動してから作業を開始するものとしていた。しかしながら、作業機1による満充電時の作業可能面積はそのバッテリ容量からあらかじめ知ることができるので、その作業可能面積を単位として作業領域を分割してもよい。
図8にその一例を示す。
図6および
図7では、作業地WAの概ね中央部へまず移動していた。これに対して本実施形態では、作業地WAを、作業可能面積を単位として分割しておく。
図8では領域WA1、領域WA2、領域WA3に3分割されている。この分割は予め携帯端末などから設定されていてもよいし、作業地WAの地図に基づいて作業機1や移動ステーション2などが分割してもよい。
【0051】
図8に示したように、そのうちの一つ(
図8ではWA3)に作業機1及び移動ステーション2は移動する。そしてその中で、
図6、
図7で説明したような制御が行われる。この制御はたとえば
図6では、S605においてWA3を作業範囲とすることを決定し、S607で領域WA3の境界の座標等を移動ステーション2へと通知する。もちろんこの領域分割を移動ステーション2があらかじめ知っているなら、そのうちのどこを作業対象とするかを作業機1は通知すればよい。それらの通史に応じて作業機1及び移動ステーション2は領域WA3の中央部付近へと移動し、
図6、
図7の手順に即して作業を行う。
【0052】
また作業機1は一つのエリアの作業を終了するごとに、作業終了の通知と合わせて次の作業の対象とするエリアを移動ステーション2へ通知する。これにより移動ステーション2は、次の作業エリアへと移動できる。なお、ここでは作業機1が主導的であるように説明したが、移動ステーション2が作業エリアを決定するなど、主導してもよいし、管理サーバ21が作業対象のエリアの決定などを来ない、移動ステーション2も作業機1も管理サーバ21に従って動作するよう構成してもよい。
【0053】
このように構成することで、移動ステーション2は作業機1のより近くに移動することができる。このため作業地が大面積であっても、作業機のバッテリ容量に応じて移動ステーションを移動させ、効率的に作業を遂行することができる。
【0054】
[変形例2]
図1には、送電コイルと受電コイルとが上下に重なる構成を示した。しかし、両方のコイルを立てた状態で重なるように配置してもよい。すなわち磁束が地面と平行になるようコイルを配置し、作業機1がその受電コイルを移動ステーション2の送電コイルに押し当てるようにして停止し、充電を行ってもよい。このように構成することで移動ステーションの車高を高くすることができ、作業が完了していないエリアの移動も容易になる。
【0055】
図9にそのような構造を有する作業機および移動ステーションの側面図を示す。図示のように、送電コイル202および受電コイル109は水平に対して立った状態に配置されている。なお、送電コイル202と受電コイル109とは、本体に直に固定されていると、作業機と移動ステーションの向きの違いにより隙間ができがちである。そこで、それを防止するために、各コイルを、水平方向および垂直方向に振ることができるユニバーサルジョイントや軟質樹脂などの弾性体のジョイントを介して、本体に対して揺動可能に固定してよい。
【0056】
このように構成することで、本体の向きのずれがあっても受電コイル109と送電コイル202とは隙間なく接することができ、充電効率を高めることができる。なお揺動可能に固定するのは、送電コイル202か受電コイル109かいずれか一方であってもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、移動ステーションは作業域の概ね中央へと移動するとしたが、作業機1が一回の充電で作業可能な領域において、作業機1がその領域の作業を終了する位置に移動してもよい。たとえば作業機1の経路があらかじめわかっているか、あるいはそれを作業機1から移動ステーション2に通知することで、その経路の末端の位置を移動ステーション2は知ることができる。そこで移動ステーション2はその位置またはその所定範囲内へと移動して待機する。こうすることで作業機1の充電のための移動距離を一層短縮できる。
【0058】
<実施形態のまとめ>
以上説明した本実施形態をまとめると以下のとおりである。
【0059】
(1)充電システムであって、
作業機と、
前記作業機へ充電するための蓄電手段、自律的に移動する移動手段、及び前記移動手段により所定位置へと移動し、前記作業機を待機するよう制御する制御手段、を有する移動式充電装置と、
前記蓄電手段を充電する固定式充電装置と、
を備え、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置であり、
前記制御手段は、前記作業機による作業終了に応じて前記固定式充電装置へと移動するよう前記移動手段を制御する
ことを特徴とする充電システムが提供される。
この構成により、所定位置で作業機を待機することで、作業機の充電のための移動距離を短縮できる。
【0060】
(2)上記実施形態では、前記作業機は他の蓄電手段を有し、
前記作業機は、 前記他の蓄電手段の残量が所定のしきい値を下回ったときに、前記移動式充電装置の位置に移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0061】
(3)上記実施形態では、前記作業機は、前記作業機は、前記移動式充電装置により充電を受けると、前記位置への移動を開始した位置に戻るよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0062】
(4)上記実施形態では、前記作業機は、前記位置に移動して前記移動式充電装置により充電を受けた後に、前記移動式充電装置の付近の未作業エリアの作業を再開するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0063】
(5)上記実施形態では、前記作業機は、作業済みエリアを記録するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0064】
(6)上記実施形態では、前記作業機は他の蓄電手段を有し、
前記作業機は、不使用時には前記移動式充電装置による充電位置で待機するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0065】
(7)上記実施形態では、前記移動式充電装置は、不使用時に、前記固定式充電装置による他の充電位置で待機するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0066】
(8)上記実施形態では、前記作業機及び前記移動式充電装置は、作業開始時に前記固定式充電装置を発進して前記所定位置へ移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0067】
(9)上記実施形態では、前記作業機は、前記所定位置から作業を開始するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0068】
(10)上記実施形態では、前記移動式充電装置は、前記蓄電手段の他の残量が既定値以下であるかを判定するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0069】
(11)上記実施形態では、前記移動式充電装置は、前記蓄電手段の前記他の残量が前記既定値以下であるときに、前記固定式充電装置へ移動するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0070】
(12)上記実施形態では、前記移動式充電装置は、前記固定式充電装置により充電が完了すると、移動前の位置へと戻るよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0071】
(13)上記実施形態では、前記所定位置は、前記作業機による作業エリアの中である
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0072】
(14)上記実施形態では、前記所定位置は、前記作業機が前記作業エリアの作業を終了する位置またはその所定範囲内である
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0073】
(15)上記実施形態では、前記移動式充電装置は、前記作業機が前記移動式充電装置による充電位置に来たかを判定するよう構成される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0074】
(16)上記実施形態では、前記固定式充電装置には商用電源が接続される
ことを特徴とする充電システムが提供される。
【0075】
(17)さらに、作業機と、
前記作業機へ充電するための蓄電手段、及び自律的に移動する移動手段を有する移動式充電装置と、
前記蓄電手段を充電する固定式充電装置と、を備える充電システムにおける充電方法であって、
前記移動式充電装置を前記移動手段により所定位置へと移動させて、前記作業機を待機させるステップと、
前記作業機による作業終了に応じて、前記移動式充電装置を前記移動手段により前記固定式充電装置へと移動させるステップとを含み、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置である
ことを特徴とする充電方法が提供される。
【0076】
(18)さらに、作業機へ充電するための蓄電手段と自律的に移動する移動手段とを有する移動式充電装置に、
所定位置へと移動し、前記作業機を待機するよう前記移動手段を制御するステップと、
前記作業機による作業終了に応じて、前記蓄電手段を充電する固定式充電装置へと移動するよう前記移動手段を制御するステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記所定位置は、前記作業機に対して前記固定式充電装置よりも近い位置である
ことを特徴とするプログラムが提供される。
【0077】
(19)さらに、上記プログラムを記憶した記憶媒体が提供される。
【0078】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 作業機、2 移動式充電ステーション、3 固定式充電ステーション