(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096772
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ベータ-ラクトグロブリン単離物を製造するためのプロセス、並びに関連する方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A23C 1/04 20060101AFI20240709BHJP
A23C 9/142 20060101ALI20240709BHJP
A23C 21/00 20060101ALI20240709BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20240709BHJP
A23J 1/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A23C1/04
A23C9/142
A23C21/00
A23L33/19
A23J1/20
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060493
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020573261の分割
【原出願日】2019-06-26
(31)【優先権主張番号】18180224.0
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18180212.5
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067299
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067316
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067280
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520507335
【氏名又は名称】アーラ フーズ エイエムビーエイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラウリドセン、カスペル ベーゲルンド
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、セレン バング
(72)【発明者】
【氏名】センデルガールド、コーレ
(72)【発明者】
【氏名】デ モーラ マシエル、ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルセン、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】パルジコラエイ、ベーナズ ラジ
(72)【発明者】
【氏名】イエーガー、ターニャ クリスティーネ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規のベータ-ラクトグロブリン(BLG)単離物、かかる単離物を製造する方法、及び例えば、飲料用途での粉末の使用を提供する。
【解決手段】BLG単離粉末であって、噴霧乾燥によって調製され、6.1~8.5の範囲のpHを有し、少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)、及び最大10%重量/重量の量の水を含み、前記BLG単離粉末は、少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)最大10%のタンパク質変性度、pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び最大15000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する、BLG単離粉末である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BLG単離粉末であって、噴霧乾燥によって調製され、6.1~8.5の範囲のpHを有し、以下を含むもの:
少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質、
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)
最大10%重量/重量の量の水、
前記BLG単離粉末は、
少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
最大10%のタンパク質変性度、
pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
最大15000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する。
【請求項2】
少なくとも40%重量/重量の総タンパク質を含む、請求項1に記載のBLG単離粉末。
【請求項3】
総タンパク質に対して少なくとも88%重量/重量の量のBLGを含む、請求項1又は2に記載のBLG単離粉末。
【請求項4】
最大10%重量/重量の量の脂質を含む、請求項1~3のいずれかに記載のBLG単離粉末。
【請求項5】
少なくとも0.20g/cm3のかさ密度を有する、請求項1~4のいずれかに記載のBLG単離粉末。
【請求項6】
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する、請求項1~5のいずれかに記載のBLG単離粉末。
【請求項7】
最大10%のタンパク質変性度を有する、請求項1~6のいずれかに記載のBLG単離粉末。
【請求項8】
液体BLG単離物であって、6.1~8.5の範囲のpHを有する、以下を含むもの:
少なくとも10%重量/重量の量の総タンパク質、
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)、
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
最大10%のタンパク質変性度、
pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
最大15000コロニー形成単位/gの1つ又は2つ以上を有する。
【請求項9】
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、請求項1に記載の乾燥BLG単離粉末を製造する方法であって、以下の工程を含むもの:
a)以下を有する液体BLG単離物を提供すること
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
前記液体BLG単離物は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、
b)任意に、前記液体BLG単離物を物理的微生物減少に供すること、
c)噴霧乾燥により前記液体BLG単離物を乾燥させること。
【請求項10】
液体BLG単離物が、5~50%重量/重量の範囲の量の全固形分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液体BLG単離物のタンパク質画分が、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
液体BLG単離物のタンパク質が最大10%重量/重量のタンパク質変性度を有する、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
液体BLG単離物の提供が、ホエイタンパク質フィードからBLGを単離すること、及び任意に、得られたBLG濃縮組成物を、
脱塩、
ミネラルの添加、
希釈、
物理的微生物減少、
濃縮、及び
pH調整、
の群から選択される1つ又は2つ以上の工程に供することを含む、請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
液体BLG単離物が物理的微生物減少に供される、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれかに記載のBLG単離粉末又は請求項8に記載の液体BLG単離物の、食物製品、例えば、飲料又はインスタント飲料粉末であって、2~4.7の範囲のpHを有し、さらに以下を有する、熱処理飲料の製造のための原料としての使用:
乾いた口当たりのレベルの低下、
透明性の向上、及び/又は
タンパク質含有量の増加。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のベータ-ラクトグロブリン(BLG)単離物と並んで、かかる単離物を製造する方法、及び例えば、飲料用途での粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
BLGは、ホエイタンパク質のゲル形成成分として知られており、低温殺菌温度でも望ましくない凝集及びゲル形成を起こしやすい傾向がある。BLG単離物は、BLGに加えてより耐熱性の高いタンパク質であるアルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)を含む従来のホエイタンパク質単離物よりも熱感受性が高いと認識されている。BLG単離物の高価格及び凍結乾燥BLG単離物の取り扱いの課題により、BLG単離物の工業的な食品用の使用は以前は制限されていた。
【0003】
乳清又はホエイからのベータ-ラクトグロブリン(BLG)の単離は、多くの出版物の主題であり、典型的には、精製されたベータ-ラクトグロブリン製品に到達するために、複数の分離工程及び多くの場合クロマトグラフィー技術を伴う。
【0004】
例えば、de Jongh et al(Mild Isolation Procedure Discloses New Protein Structural Properties of β-Lactoglobulin,J Dairy Sci.,vol.84(3),2001,pages 562-571)は、カゼインの温度酸凝固による、及び得られた酸性ホエイをアフィニティークロマトグラフィー(DEAEセファロース)とゲル浸透クロマトグラフィーとの組み合わせに供することによる、搾乳したての牛乳からのBLGの精製について記載している。得られたBLG組成物は、1gのタンパク質あたり0.985gのベータ-ラクトグロブリンを含むと述べられた。BLG組成物は凍結乾燥により乾燥されたた。
【0005】
Vyas et al(Scale-Up of Native β-Lactoglobulin Affinity Separation Process,J.Dairy Sci.85:1639-1645,2002)は、アフィニティークロマトグラフィーに基づいてネイティブBLGを生成するためのスケールアップされた方法を開示した。BLG組成物は凍結乾燥により乾燥されたた。
【0006】
米国特許第2790790号公報A1は、pH3.6~4.0でNaClを添加してホエイからBLGを単離するプロセスについて記載したが、単離したBLGを乾燥させたとは記載していない。
【0007】
Palmer(Crystalline Globulin from Cow’s Milk,J.Biol.Chem.,Vol.104,1934,pages 359-372)は、幾つか連続する不要なタンパク質の塩析、タンパク質、pH調整、及び他の不要なタンパク質を除去するための透析を使用して、酸性ホエイに基づいてタンパク質結晶を製造するための面倒で時間のかかるプロセスを報告した。最終的に、高度に精製されたBLG溶液が得られた場合に、BLGが結晶化された。このプロセスは12日以上続き、トルエンの添加が必要であった。したがって、Palmerに開示されている手順は、安全な食品生産と両立できず、明らかに食べられない製品を提供する。Palmerは、BLG結晶をアルコール及びエーテルによって乾燥できると報告した。
【0008】
欧州特許0 604 684号A1は、ホエイタンパク質製品からアルファ-ラクトアルブミン及び/又はベータ-ラクトグロブリンに富むホエイタンパク質濃縮物を回収するためのプロセスを開示した。該プロセスは、a)当該ホエイタンパク質生成物を含む溶液をその酸形態でカルシウム結合イオン交換樹脂と共にインキュベートして、アルファ-ラクトアルブミンの不安定化を開始すること、b)当該樹脂の分離後、処理されたタンパク質生成物溶液のpHを4.3~4.8の値に調整すること、c)アルファ-ラクトアルブミンの凝結を促進するため10~50℃の温度で当該タンパク質産物溶液をインキュベートすること、d)pH4.3~4.8の当該タンパク質産物溶液中のタンパク質を分画して、アルファ-ラクトアルブミンに富む画分及びベータ-ラクトグロブリンに富む画分を提供すること、e)アルファ-ラクトアルブミンに富む画分のpHを十分に上げてアルファ-ラクトアルブミン画分を可溶化すること、並びにf)任意に、ベータ-ラクトグロブリンに富む画分のpHを上げてベータ-ラクトグロブリン画分を十分に中和すること、を含んでいた。
【0009】
国際公開第2010/037736号公報A1は、ホエイタンパク質の単離、並びにホエイ生成物及びホエイ単離物の調製、特に動物から得られたホエイからのベータ-ラクトグロブリン生成物の単離及びアルファ-ラクトアルブミンに富むホエイタンパク質単離物の単離を開示した。本発明によって提供されるアルファ-ラクトアルブミンに富むホエイタンパク質単離物は、ベータ-ラクトグロブリンが低いことの他に、アルファ-ラクトアルブミン及び免疫グロブリンGも高い。
【0010】
国際公開第2011/112695号公報(A1)は、ホエイタンパク質ミセル及びロイシンを含む栄養組成物を開示した。栄養組成物は、低粘度の流体マトリックス及び許容可能な感覚受容特性を維持しながら、ヒトにおけるタンパク質合成を改善するのに十分な量のロイシンを提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、高機能性BLG単離粉末が、i)2~4.9、又はii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有する高BLG、液体BLG単離物を乾燥し、好ましくは噴霧乾燥することによって得られることを発見した。
【0012】
そのため、本発明の態様は、BLG単離粉末であって、好ましくは噴霧乾燥によって調製され、i)2.5~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大10%重量/重量の量の水と、を含み、
当該BLG単離粉末が、
-少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する、BLG単離粉末に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、液体BLG単離物であって、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも10%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
-最大1000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する、液体BLG単離物に関する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、乾燥BLG単離粉末を製造する方法に関し、
a)以下を有する液体BLG単離物、
i)2~4.9の範囲のpH、
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
iii)5.0~6.0の範囲のpH、を有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む工程、
b)任意に、当該液体BLG分離株を物理的微生物減少に供する工程、
c)噴霧乾燥により当該液体BLG単離物を乾燥させる工程、を含む、方法に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、食物製品、例えば、飲料又はインスタント飲料粉末であって、2~4.7の範囲のpHを有し、さらに、
-乾いた口当たりのレベルの低下、
-透明性の向上、及び/又は
-タンパク質含有量の増加、の1つ又は2つ以上を有し、好ましくは少なくとも3~45%重量/重量、より好ましくは11~40%重量/重量、さらにより好ましくは15~38%重量/重量、最も好ましくは20~36%重量/重量の量のタンパク質含有量を含む熱処理飲料の製造のための原料としての、本明細書に定義されるBLG単離粉末又は液体BLG単離物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、BLG単離粉末を製造するための本発明の方法の概略図を提供する。
【
図2】
図2は、ホエイタンパク質フィードから開始してBLG単離粉末を製造するための本発明の方法の概略図を提供し、特許の説明で使用される用語を示している。
【
図4】
図4は、BLG結晶全体とフラグメント化されたものの両方の顕微鏡写真を示している。
【
図5】
図5は、噴霧乾燥されたBLG単離物が、同じ条件で乾燥された同等のWPIよりも高いかさ密度を持っていることを示している。
【
図6】
図6は、高タンパク質液体BLG単離物の粘度が同等のWPI溶液よりも低いことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本発明の文脈では、「ベータ-ラクトグロブリン」又は「BLG」という用語は、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むベータ-ラクトグロブリンに関する。該用語はさらに、凝集性BLG、沈殿したBLG及び結晶性BLGを含む。BLGの量に言及する場合、凝集性BLGを含むBLGの合計量が言及される。BLGの総量は、例1.31に従って決定される。「凝集性BLG」という用語は、少なくとも部分的に折りたたまれておらず、さらに、典型的には疎水性相互作用及び/又は共有結合によって、他の変性BLG分子及び/又は他の変性ホエイタンパク質と凝集しているBLGに関する。
【0018】
BLGは、ウシホエイ及び乳清で最も優勢なタンパク質であり、幾つかの遺伝的変異体に存在し、牛乳の主なものはA及びBと標識されている。BLGはリポカリンタンパク質であり、多くの疎水性分子に結合することができ、それらの輸送における役割を示唆している。BLGは、シデロホアを介して鉄に結合できることも示されており、病原体と戦う役割を果たしている可能性がある。BLGのホモログはヒトの母乳に欠けている。
【0019】
ウシBLGは、およそ162アミノ酸残基の比較的小さなタンパク質で、分子量はおよそ18.3~18.4kDaである。生理学的条件下では、ウシBLGは主に二量体であるが、核磁気共鳴分光法を使用して決定されるように、そのネイティブ状態を保持しながら、約pH3未満の単量体に解離する。逆に、BLGはまた、様々な自然条件下で、四量体、八量体、及びその他の多量体の凝集形態でも発生する。
【0020】
本発明の文脈では、「非凝集性ベータ-ラクトグロブリン」又は「非凝集性BLG」という用語は、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むベータ-ラクトグロブリンに関する。しかしながら、該用語には、凝集性BLG、沈殿したBLG、又は結晶化BLGは含まれない。非凝集性BLGの量又は濃度は、例1.6に従って決定される。
【0021】
総BLGに対する非凝集性BLGのパーセンテージは、計算(m総BLG-m非凝集性BLG)/m総BLG*100%によって決定される。m総BLGは、例1.31に従って決定されるBLGの濃度又は量であり、m非凝集性BLGは、例1.6に従って決定される非凝集性BLGの濃度又は量である。
【0022】
本発明の文脈では、「結晶」という用語は、その構成要素(原子、分子、又はイオン等)が高度に秩序化された微視的構造に配置され、全ての方向に延びる結晶格子を形成する固体材料に関する。
【0023】
本発明の文脈では、「BLG結晶」という用語は、高度に秩序化された微視的構造に配置され、全ての方向に延びる結晶格子を形成する、主に非凝集性の好ましくはネイティブのBLGを含むタンパク質結晶に関する。BLG結晶は、例えば、モノリシック又は多結晶であり、例えば無傷の結晶、結晶のフラグメント、又はそれらの組み合わせである。結晶のフラグメントは、例えば、無傷の結晶が加工中に機械的剪断に供される場合に形成される。結晶のフラグメントはまた、結晶の高度に秩序化された微視的構造を有するが、無傷の結晶の均一な表面及び/又は均一な端若しくは角を欠いている場合がある。例えば、多くの無傷のBLG結晶の例については
図3、BLG結晶のフラグメントの例については
図4を参照されたい。いずれの場合も、BLG結晶又は結晶フラグメントは、光学顕微鏡を使用して、明確に定義されたコンパクトでコヒーレントな構造として視覚的に識別できる。BLG結晶又は結晶フラグメントは、多くの場合、少なくとも部分的に透明である。タンパク質結晶はさらに複屈折性であることが知られており、この光学特性を使用して、結晶構造を有する未知の粒子を識別することができる。一方、非結晶性BLG凝集物は、定義が不十分で不透明であり、不規則なサイズの開口した又は多孔性の塊として現れることがよくある。
【0024】
本発明の文脈では、「結晶化」という用語は、タンパク質結晶の形成に関する。結晶化は、例えば、自発的に発生するか、結晶化シードの添加によって開始される。
【0025】
「母液」
本発明の文脈では、「母液」という用語は、BLGが結晶化され、BLG結晶が少なくとも部分的に除去された後に残るホエイタンパク質溶液に関する。母液にはまだ幾つかのBLG結晶が含まれている可能性があるが、通常は分離を免れた小さなBLG結晶のみが含まれている。
【0026】
本発明の文脈では、「食用組成物」という用語はヒトの消費及び食品原料としての使用に安全であり、トルエン又は他の望ましくない有機溶媒等の問題のある量の有毒な成分を含まない組成物に関する。
【0027】
本発明の文脈では、「ALA」又は「アルファ-ラクトアルブミン」は、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブ及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むアルファ-ラクトアルブミンに関する。該用語はさらに、凝集性ALA及び沈殿したBLGを含む。ALAの量に言及する場合、例えば、凝集性ALAを含むALAの合計量が言及される。ALAの総量は、例1.31に従って決定される。「凝集性ALA」という用語は、典型的には少なくとも部分的に折りたたまれておらず、さらに、典型的には疎水性相互作用及び/又は共有結合によって、他の変性ALA分子及び/又は他の変性ホエイタンパク質と凝集しているALAに関する。
【0028】
アルファ-ラクトアルブミン(ALA)は、ほとんど全ての哺乳動物種の乳に含まれるタンパク質である。ALAはラクトースシンターゼ(LS)ヘテロダイマーの調節サブユニットを形成し、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(ベータ4Gal-T1)は触媒成分を形成する。一緒に、これらのタンパク質は、LSがガラクトース部分をグルコースに転移することによってラクトースを生成することを可能にする。ベータ-ラクトグロブリンとの主な構造上の違いの1つは、ALAには共有結合性凝集反応の開始点として機能できる遊離チオール基がないことである。
【0029】
本発明の文脈では、「非凝集性ALA」もまた、哺乳動物種に由来し、例えば、ネイティブの、折りたたまれていない及び/又はグリコシル化された形態であり、天然に存在する遺伝的変異体を含むALAに関する。しかしながら、該用語には、凝集性ALA又は沈殿したALAは含まれない。非凝集性BLGの量又は濃度は、例1.6に従って決定される。
【0030】
総ALAに対する非凝集性ALAのパーセンテージは、計算(m総ALA-m非凝集性ALA)/m総ALA*100%によって決定される。m総ALAは、例1.31に従って決定されるALAの濃度又は量であり、m非凝集性ALAは、例1.6に従って決定される非凝集性ALAの濃度又は量である。
【0031】
本発明の文脈では、「カゼイノマクロペプチド」又は「CMP」という用語は、例えば、ネイティブ及び/又はグリコシル化された形態であり、アスパラギン酸プロテイナーゼによる天然に存在する遺伝的変異体、例えばキモシを含む、哺乳動物種からの「κ-CN」又は「カッパーカゼイン」の加水分解に由来する親水性ペプチド、残基106~169に関する。
【0032】
本発明の文脈では、「BLG単離物」という用語は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量でBLGを含む組成物を意味する。BLG単離物は、好ましくは、全固形分に対して少なくとも30%重量/重量、好ましくは少なくとも80%重量/重量の総タンパク質含有量を有する。
【0033】
本発明の文脈では、「BLG単離粉末」という用語は、粉末形態のBLG単離物、好ましくは自由流動性粉末に関する。
【0034】
本発明の文脈では、「BLG分離液」という用語は、液体形態、好ましくは水性液体のBLG単離物に関する。
【0035】
「ホエイ」という用語は、乳のカゼインが沈殿して除去された後に残る液相に関する。カゼインの沈殿は、例えば乳の酸性化及び/又はレンネット酵素の使用によって達成され得る。カゼインのレンネットベースの沈殿によって生成されるホエイ製品である「スイートホエイ」と、カゼインの酸ベースの沈殿によって生成されるホエイ製品である「酸ホエイ」又は「サワーホエイ」等、幾つかのタイプのホエイが存在する。カゼインの酸ベースの沈殿は、例えば、食用酸の添加又は細菌培養によって達成され得る。
【0036】
「乳清」という用語は、例えば、精密濾過又は大孔径限外濾過によってカゼイン及び乳脂肪球が乳から除去されたときに残る液体に関する。乳清は、「理想的なホエイ」と称されることもある。
【0037】
「乳清タンパク質」又は「血清タンパク質」という用語は、乳清中に存在するタンパク質に関する。
【0038】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質」という用語は、ホエイ又は乳清中に見られるタンパク質に関する。ホエイタンパク質は、ホエイ又は乳清に見られるタンパク質種のサブセットである場合、またさらには単一のホエイタンパク質種の場合もあり、又はホエイ又は/及び乳清に見られるタンパク質種の完全なセットである場合がある。
【0039】
本発明の文脈では、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物の主要な非BLGタンパク質は、ALA、CMP、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、オステオポンチン、ラクトフェリン、及びラクトペルオキシダーゼである。本発明の文脈では、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物の主要な非BLGホエイタンパク質の重量パーセントは、以下のとおりである:
総タンパク質に対して18%重量/重量の量のALA、
総タンパク質に対して18%重量/重量の量のCMP、
総タンパク質に対して4%重量/重量の量のBSA、
総タンパク質に対して5%重量/重量の量のカゼイン種、
総タンパク質に対して6%重量/重量の量の免疫グロブリン、
総タンパク質に対して0.5%重量/重量の量のオステオポンチン、
総タンパク質に対して0.1%重量/重量の量のラクトフェリン、及び
総タンパク質に対して0.1%重量/重量の量のラクトペルオキシダーゼ。
【0040】
カゼインという用語は、乳に含まれるカゼインタンパク質に関し、個々のカゼイン種である生乳に見られるネイティブミセルカゼインとカゼインの両方を含む。
【0041】
本発明の文脈では、「過飽和」又は「BLGに関して過飽和」である液体は、所与の物理的及び化学的条件で液体中の非凝集性BLGの飽和点を超える溶解した非凝集性BLGの濃度を含む。「過飽和」という用語は、結晶化の分野でよく知られており(例えば、Gerard Coquerela,”Crystallization of molecular systems from solution:phase diagrams,supersaturation and other basic concepts”,Chemical Society Reviews,p.2286-2300,Issue 7,2014を参照されたい)、過飽和は、様々な測定手法(例えば、分光法又は粒子径分析)によって決定され得る。本発明の文脈では、BLGに関する過飽和を、以下の手順によって決定する。
【0042】
特定の条件設定の液体がBLGに関して過飽和であるかどうかを試験する手順:
a)試験する液体のサンプル50mlを、高さ115mm、内径25mm、容量50mLの遠心管(VWRカタログ番号525-0402)に移す。工程a)~h)の間、サンプル及び後続する画分を液体の元の物理的及び化学的条件に保つように注意する必要がある:
b)サンプルを直ちに3000gで3.0分間、最大30秒の加速及び最大30秒の減速で遠心分離する。
c)遠心分離の直後に、上清をできるだけ多く(ペレットが形成された場合にペレットを乱さずに)第2の遠心管(工程aと同じタイプ)に移す。
d)上清の0.05mLサブサンプルを採取する(サブサンプルA)
e)粒子径が最大200ミクロンのBLG結晶10mg(全固形分に対して少なくとも98%純粋、非凝集性BLG)を第2の遠心管に加え、混合物を攪拌する。
f)第2の遠心管を元の温度で60分間放置する。
g)工程f)の直後に、第2の遠心管を500gで10分間遠心分離し、上清の別の0.05mlサブサンプル(サブサンプルB)を採取する。
h)工程g)の遠心分離ペレットを回収し、存在する場合は、milliQ水に再懸濁し、顕微鏡で見える結晶の存在について懸濁液を直ちに検査する。
i)例1.6に概説されている方法を使用して、サブサンプルA及びBの非凝集性BLGの濃度を決定する。結果を、サブサンプルの総重量に対する%BLG重量/重量として表す。サブサンプルAの非凝集性BLGの濃度はCBLG,Aと称され、サブサンプルBの非凝集性BLGの濃度はCBLG,Bと称される。
j)工程a)のサンプルを採取した液体は、CBLG,BがCBLG,Aよりも低く、且つ工程i)で結晶が観察された場合、(特定の条件で)過飽和であった。
【0043】
本発明の文脈では、「液体」及び「溶液」という用語は、例えば、タンパク質結晶又は他のタンパク質粒子等の粒子状物質を含まない組成物と、液体及び固体及び/又は半固体粒子の組み合わせを含む組成物の両方を包含する。したがって、「液体」又は「溶液」は、懸濁液さらにはスラリーであってもよい。しかしながら、「液体」及び「溶液」は、好ましくはポンプ輸送可能である。
【0044】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質濃縮物」(WPC)及び「血清タンパク質濃縮物」(SPC)という用語は、全固形分に対してタンパク質の総量が20~89%重量/重量である乾燥又は水性組成物に関係する。
【0045】
WPC又はSPCには、以下が含まれていることが望ましい:
全固形分に対して20~89%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して8~50%重量/重量のALA、及び
タンパク質に対して0~40%重量/重量のCMP。
【0046】
或いは、しかしまた好ましいことに、WPC又はSPCは以下を含み得る:
全固形分に対して20~89%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して15~90%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して4~50%重量/重量のALA、及び
タンパク質に対して0~40%重量/重量のCMP。
【0047】
好ましくは、WPC又はSPCは以下を含む:
全固形分に対して20~89%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して15~80%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して4~50%重量/重量のALA、及び
タンパク質に対して0~40%重量/重量のCMP。
【0048】
より好ましくは、WPC又はSPCは以下を含む:
全固形分に対して70~89%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して4~35%重量/重量のALA、及び
タンパク質と比較して0~25%重量/重量のCMP。
【0049】
SPCには典型的には、CMPが含まれていないか、微量のCMPのみが含まれている。
【0050】
「ホエイタンパク質単離物」(WPI)及び「血清タンパク質単離物」(SPI)という用語は、全固形分に対して90~100%重量/重量のタンパク質の総量を含む乾燥又は水性組成物に関係する。
【0051】
WPI又はSPIには、以下が含まれていることが望ましい:
全固形分に対して90~100%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して8~50%重量/重量のALA、及び
総タンパク質に対して0~40%重量/重量のCMP。
【0052】
或いは、しかしまた好ましいことに、WPI又はSPIは以下を含み得る:
全固形分に対して90~100%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して30~95%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して4~35%重量/重量のALA、及び
総タンパク質に対して0~25%重量/重量のCMP。
【0053】
より好ましくは、WPI又はSPIは以下を含み得る:
全固形分に対して90~100%重量/重量のタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%重量/重量のBLG、
総タンパク質に対して4~35%重量/重量のALA、及び
総タンパク質に対して0~25%重量/重量のCMP。
【0054】
SPIには典型的には、CMPが含まれていないか、微量のCMPのみが含まれている。
【0055】
本発明の文脈では、「追加のタンパク質」という用語は、BLGではないタンパク質を意味する。ホエイタンパク質溶液に存在する追加のタンパク質は、典型的には、乳清又はホエイに見られる非BLGタンパク質の1つ又は2つ以上を含む。かかるタンパク質の非限定的な例は、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、カゼイノマクロペプチド(CMP)、オステオポンチン、ラクトフェリン、及び乳脂肪球膜タンパク質である。
【0056】
「本質的にからなる」及び「本質的にからなっている」という用語は、問題の請求項又は特徴が、特定の材料又は工程、及び特許請求の範囲に記載された発明の基本的及び新規の特性(複数の場合がある)に実質的に影響を与えないものを包含することを意味する。
【0057】
本発明の文脈では、「Y及び/又はX」という句は、「Y」又は「X」又は「Y及びX」を意味する。同じ論理に沿って、「n1、n2、…、ni-1、及び/又はni」という句は、「n1」又は「n2」又は…又は「ni-1」若しくは「ni」、又は成分の任意の組み合わせ:n1、n2、…ni-1、及びniを意味する。
【0058】
本発明の文脈では、「乾燥する」又は「乾燥した」という用語は、問題の組成物又は生成物が、最大10%重量/重量の水、好ましくは最大6%重量/重量、より好ましくはさらに少ない水を含むことを意味する。
【0059】
本発明の文脈では、「物理的微生物減少」という用語は、組成物の生存可能な微生物の総量の減少をもたらす組成物との物理的相互作用に関する。該用語は、微生物を死滅させる結果となる化学物質の添加を含まない。該用語はさらに、噴霧乾燥中に噴霧された液滴がさらされる熱曝露を含まないが、噴霧乾燥前の可能な予熱を含む。
【0060】
本発明の文脈では、粉末のpHは、90gの脱塩水に混合した10gの粉末のpHを指し、例1.16に従って測定される。
【0061】
本発明の文脈では、特定の組成物の成分、製品、又は材料の重量パーセント(%重量/重量)は、別の基準が具体的に言及されていない限り(例えば、全固形分又は総タンパク質)、特定の組成物、製品、又は材料の重量に対するその成分の重量パーセントを意味する。
【0062】
本発明の文脈では、プロセスの工程である「濃縮」及び動詞「濃縮する」は、タンパク質の濃度に関するものであり、全固形分ベースのタンパク質の濃度及び総重量ベースのタンパク質の濃度の両方を包含する。これは、例えばその濃度は、タンパク質の含有量が全固形分に対して増加する限り、組成物のタンパク質の絶対濃度重量/重量が増加することを必ずしも必要としない。
【0063】
本発明の文脈では、成分Xと成分Yとの間の「重量比」という用語は、計算mX/mYによって得られる値を意味し、式中、mXは、成分Xの量(重量)であり、mYは、成分Yの量(重量)である。
【0064】
本発明の文脈では、「少なくとも低温殺菌」という用語は、70℃で10秒間の熱処理以上の微生物死滅効果を有する熱処理に関する。殺菌効果を決定するための基準は、大腸菌(E.coli)O157:H7である。
【0065】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質フィード」という用語は、液体BLG単離物が由来するホエイタンパク質源に関する。ホエイタンパク質フィードは、液体BLG単離物よりも総タンパク質に比べてBLGの含有量が少なく、典型的にはWPC、WPI、SPC、又はSPIである。
【0066】
本発明の文脈では、「BLG濃縮組成物」という用語は、ホエイタンパク質フィードからBLGを単離することから生じるBLG濃縮組成物に関する。BLG濃縮組成物は、典型的には、ホエイタンパク質フィードと同じホエイタンパク質を含むが、BLGは、ホエイタンパク質フィードよりも総タンパク質に対して有意に高い濃度で存在する。BLG濃縮組成物は、例えば、クロマトグラフィー、タンパク質結晶化及び/又は膜ベースのタンパク質分画によってホエイタンパク質フィードから調製される。BLG濃縮組成物は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量の量のBLGを含む。場合によっては、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物として直接使用することができる。ただし、BLGが豊富な組成物を液体BLG単離物に変換するには、多くの場合、追加の処理が必要である。
【0067】
本発明の文脈では、「ホエイタンパク質溶液」という用語は、塩溶様式でBLGに関して過飽和であり、BLG結晶を調製するのに有用である特殊な水性ホエイタンパク質組成物を説明するために使用される。
【0068】
本発明の文脈では、「滅菌」という用語は、問題の滅菌組成物、又は製品が生存可能な微生物を含まず、したがって、室温での貯蔵中に微生物の増殖がないことを意味する。滅菌された組成物は無菌である。
【0069】
飲料調製物等の液体を滅菌し、滅菌容器に無菌的に包装する場合、典型的には、室温で少なくとも6ヵ月の貯蔵寿命がある。滅菌処理は、液体の腐敗を引き起こす可能性のある胞子及び微生物を死滅させる。
【0070】
本発明の文脈では、「タンパク質画分」という用語は、問題の組成物のタンパク質、例えば、タンパク質の粉末又は飲料製剤のタンパク質に関する。
【0071】
本発明の文脈では、「乾いた口当たり」という用語は、口の中の感触に関し、口及び歯の乾燥しているように感じ、唾液生成が最小限に抑えられる。
【0072】
したがって、乾いた口当たりは、それ自体が味ではなく、口の中での物理的な口当たり及び時間依存性の感覚である。
【0073】
本発明の文脈では、本明細書で使用される「ミネラル」という用語は、別段の指定がない限り、主要なミネラル、微量又は少数のミネラル、他のミネラル、及びそれらの組み合わせのいずれか1つを指す。主なミネラルとしては、カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、塩素、マグネシウムが挙げられる。微量又は少数のミネラルとしては、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ヨウ素、セレン、マンガンが挙げられ、その他のミネラルとしては、クロム、フッ素、ホウ素、リチウム、及びストロンチウムが挙げられる。
【0074】
本発明の文脈では、本明細書で使用される「脂質」、「脂肪」、及び「油」という用語は、別段の指定がない限り、植物若しくは動物に由来するか、又はそれらから加工される脂質材料を指すために同じ意味で使用される。これらの用語には、合成脂質材料がヒトの消費に適している限り、そのような合成脂質材料も含まれる。
【0075】
本発明の文脈では、「透明」という用語は、視覚的に透明な外観を有し、光を通し、それを通して明瞭な画像が現れる飲料調製物を包含する。透明な飲料の濁度は最大200NTUである。
【0076】
本発明の文脈では、「不透明」という用語は、目に見えて不明瞭な外観を有する飲料調製物を包含し、それは200NTUを超える濁度を有する。
【0077】
本発明の一態様は、好ましくは噴霧乾燥によって調製され、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLG、及び
-最大10%重量/重量の量の水、を含む、ベータ-ラクトグロブリン(BLG)単離粉末に関する。
【0078】
BLG単離粉末は、好ましくは、以下の1つ又は2つ以上を有する:
-少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
-最大1000コロニー形成単位/g。
【0079】
BLG単離粉末は、好ましくは食用組成物である。
【0080】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有する。かかる粉末は、酸性食物製品、特に酸性飲料に特に有用である。
【0081】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有する。
【0082】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも40%重量/重量、好ましくは少なくとも50%重量/重量、少なくとも60%重量/重量、より好ましくは少なくとも70%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも80%重量/重量の量の総タンパク質を含む。
【0083】
さらに高いタンパク質含有量が必要とされる場合があり、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、少なくとも92%重量/重量、より好ましくは少なくとも94%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも95%重量/重量の量の総タンパク質を含む。
【0084】
総タンパク質は、例1.5に従って測定される。
【0085】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、総タンパク質に対して、少なくとも96%重量/重量、好ましくは少なくとも96.5%重量/重量、より好ましくは少なくとも97%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも98%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.5%重量/重量の量のBLGを含む。
【0086】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、総タンパク質に対して、少なくとも97.5%重量/重量、好ましくは少なくとも98.0%重量/重量、より好ましくは少なくとも98.5%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも99.0%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.7%重量/重量、例えば総タンパク質に対しておよそ100.0%等の量のBLGを含む。
【0087】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、粉末の非BLGタンパク質の少なくとも40%重量/重量、好ましくは、粉末の非BLGタンパク質の少なくとも60%重量/重量、より好ましくは少なくとも70%重量/重量、最も好ましくは少なくとも90%重量/重量を構成する。
【0088】
本発明の他の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0089】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージで最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0090】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、BLG単離粉末の非BLGタンパク質の最大80%重量/重量、好ましくはBLG単離粉末の非BLGタンパク質の最大60%重量/重量、さらにより好ましくは最大40%重量/重量、及び最も好ましくは最大30%重量/重量を構成する。
【0091】
さらに低いALA含有量が好ましい場合があり、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、BLG単離粉末の非BLGタンパク質の最大20%重量/重量、好ましくはBLG単離粉末の非BLGタンパク質の最大15%重量/重量、さらにより好ましくは最大10%重量/重量、及び最も好ましくは最大5%重量/重量を構成する。
【0092】
本発明者らは、ラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼの還元が、無彩色の(colour-neutral)ホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見てきた。
【0093】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0094】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0095】
ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼは、例1.29に従って定量化される。
【0096】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%重量/重量、好ましくは最大7%重量/重量、より好ましくは最大6%重量/重量、さらにより好ましくは最大4%重量/重量の量の含水量を有し、最も好ましいのは最大2%重量/重量である。
【0097】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大60%重量/重量、好ましくは最大50%重量/重量、より好ましくは最大20%重量/重量、さらにより好ましくは最大10%重量/重量、さらにより好ましくは最大1%重量/重量、最も好ましくは最大0.1%の量の炭水化物を含む。例えば、BLG単離粉末は、例えば、ラクトース、オリゴ糖、及び/又はラクトースの加水分解生成物(すなわち、グルコース及びガラクトース)、スクロース、及び/又はマルトデキストリン等の炭水化物を含み得る。
【0098】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%重量/重量、好ましくは最大5%重量/重量、より好ましくは最大2%重量/重量、さらにより好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質を含む。
【0099】
脂質の量は、ISO 1211:2010(脂肪含有量の決定-Rose-Gottlieb重量分析法)に従って決定される。
【0100】
本発明者らは、BLG単離粉末の一部の所望の特性に達するようにミネラル含量を制御することが有利となり得ることを見出した。
【0101】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大10mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大2mmol/gタンパク質である。
【0102】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大1mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大0.6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.2mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質である。
【0103】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大5mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大3mmol/gタンパク質、より好ましくは最大1.0mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.5mmol/gタンパク質である。
【0104】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大0.3mmol/gタンパク質である。好ましくは、BLG単離粉末のMg及びCaの量の合計は、最大0.2mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.03mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.01mmol/gタンパク質である。
【0105】
本発明者らは、腎臓病の患者に特に有用な低リン/低カリウム変異体のBLG単離粉末を作製することが可能であることを見出した。かかる製品を製造するには、BLG単離粉末のリン及びカリウムの含有量が等しく低くなければならない。
【0106】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大100mgのリンの総リン含有量を有する。好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大80mgのリンの総含有量を有する。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大50mgのリンの総含有量を有する。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大20mgのリンの総リン含有量を有する。BLG単離粉末のリンの総含有量は、タンパク質100gあたり最大5mgである。
【0107】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大600mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大500mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大400mgのカリウムを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大300mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大200mgのカリウムで粉末を単離する。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、タンパク質100gあたり最大100mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、100gタンパク質あたり最大50mgのカリウムを含み、さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、100gタンパク質あたり最大10mgのカリウムを含む。
【0108】
リンの含有量は、問題の組成物の元素リンの総量に関し、例1.19に従って決定される。同様に、カリウムの含有量は、問題の組成物の元素カリウムの総量に関し、例1.19に従って決定される。
【0109】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大リン100mg/タンパク質100g及び最大カリウム700mg/タンパク質100g、好ましくは最大リン80mg/タンパク質100g及び最大カリウム600mg/タンパク質100g、より好ましくは最大リン60mg/タンパク質100g及び最大カリウム500mg/タンパク質100g、より好ましくは最大リン50mg/タンパク質100g及び最大400mgカリウム/タンパク質100g、又はより好ましくは最大リン20mg/タンパク質100g及び最大カリウム200mg/タンパク質100g、又はさらにより好ましくは最大リン10mg/タンパク質100g及び最大カリウム50mg/100gのタンパク質を含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大リン(phosphor)100mg/タンパク質100g、及び最大カリウム340mg/タンパク質100gを含む。
【0110】
本発明による低リン及び/又は低カリウム組成物は、腎機能が低下している患者群用の食物製品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0111】
本発明者らは、幾つかの用途について、例えば、酸性食物製品、特に酸性飲料の場合、pHが最大4.9、さらにより好ましくは最大4.3の酸性BLG単離粉末を有することが特に有利であることを見出した。これは、高タンパクで透明な酸性飲料に特に当てはまる。
【0112】
本発明の文脈では、透明な液体は、例1.7に従って測定された最大200NTUの濁度を有する。
【0113】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有する。好ましくは、BLG単離粉末は、2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0、最も好ましくは3.4~3.9の範囲のpHを有する。或いは、しかしまた好ましいことに、BLG単離粉末は、3.6~4.3の範囲のpHを有し得る。
【0114】
本発明者らは、幾つかの用途について、例えば、pH中性の食物製品、特にpH中性の飲料では、pH中性のBLG単離粉末を使用することが特に有利であることを見出した。これは、高タンパク質で、透明又は不透明のpH中性飲料に特に当てはまる。
【0115】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有する。好ましくは、粉末は、6.1~8.5、より好ましくは6.2~8.0、さらにより好ましくは6.3~7.7、最も好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する。
【0116】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、5.0~6.0の範囲のpHを有する。好ましくは、粉末は、5.1~5.9、より好ましくは5.2~5.8、さらにより好ましくは5.3~5.7、及び最も好ましくは5.4~5.6の範囲のpHを有する。
【0117】
有利には、本発明のBLG単離粉末は、少なくとも0.20g/cm3、好ましくは少なくとも0.30g/cm3、より好ましくは少なくとも0.40g/cm3、さらにより好ましくは少なくとも0.45g/cm3、より好ましくは少なくとも0.50g/cm3、最も好ましくは少なくとも0.6g/cm3のかさ密度を有し得る。
【0118】
凍結乾燥したBLG単離物等の低密度粉末はふわふわしており、使用中に製造現場の空気中に容易に引き込まれる。これは、凍結乾燥粉末が他の食料製品に対する相互汚染のリスクを高め、ほこりの多い環境が衛生上の問題の原因であることが知られていることから、問題がある。極端な場合、ほこりの多い環境では粉塵爆発のリスクも高まる。
【0119】
本発明の高密度変形物は、取り扱いがより容易であり、周囲の空気に流れ込みにくい。
【0120】
本発明の高密度変異体の追加の利点は、それらが輸送中に占めるスペースが少なく、それにより、1つの体積単位で輸送することができるBLG単離粉末の重量を増加させることである。
【0121】
しかしながら、本発明の高密度変異体の利点は、それらが他の粉末食物製品の原料、例えば、粉砂糖(かさ密度およそ0.56g/cm3)、グラニュー糖(かさ密度およそ0.71g/cm3)、クエン酸粉末(かさ密度およそ0.77g/cm3)等との粉末混合物で使用される場合、それらが分離しにくいことである。
【0122】
本発明のBLG単離粉末は、例えば、かさ密度が0.2~1.0g/cm3の範囲、好ましくは0.30~0.9g/cm3の範囲、より好ましくは0.40~0.8g/cm3の範囲、さらにより好ましくは0.45~0.75g/cm3、さらにより好ましくは0.50~0.75g/cm3の範囲、最も好ましくは0.6~0.75g/cm3の範囲の範囲を有し得る。
【0123】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、0.45~1.2g/cm3の範囲、好ましくは0.46~1.0g/cm3の範囲、より好ましくは0.47~0.8g/cm3の範囲、さらにより好ましくは、0.48~0.75g/cm3の範囲であり、さらにより好ましくは、0.48~0.6g/cm3の範囲、最も好ましくは、0.50~0.6g/cm3の範囲のかさ密度を有する。
【0124】
粉末のかさ密度は、例1.17に従って測定される。
【0125】
本発明者らは、BLGのネイティブの立体構造を維持することが有利であることを見出し、BLGが酸性飲料に使用される場合、BLGのアンフォールディングの増加が乾いた口当たりのレベルの増加をもたらすという徴候を見てきた。
【0126】
固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)は、BLGのアンフォールディングの程度の尺度であり、本発明者らは、BLGのアンフォールディングが低いか全くないことと相関する高い固有トリプトファン蛍光発光比では、乾いた口当たりが少ないと観察されたことを見出した。固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)は、例1.1に従って測定される。
【0127】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0128】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、及び最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0129】
BLG単離粉末にかなりの量の非タンパク質物質が含まれている場合は、固有トリプトファン蛍光発光比を測定する前にタンパク質画分を単離することが好ましい。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比を有する。
【0130】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末のタンパク質画分は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、及び最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0131】
例えば、BLG単離粉末を脱塩水に溶解し、タンパク質を保持するフィルターを使用して溶液を透析又は限外濾過ベースの透析に供することにより、BLG単離粉末からタンパク質画分を分離する。BLG単離粉末が干渉レベルの脂質を含む場合、かかる脂質は、例えば、精密濾過によって除去される。精密濾過と限外濾過/ダイアフィルトレーションの工程を組み合わせて、タンパク質画分から脂質と小分子の両方を除去することができる。
【0132】
BLG単離粉末のかなりの量のBLGが非凝集性BLGであることがしばしば好ましい。好ましくはBLGの少なくとも50%は、非凝集性BLGである。より好ましくは、BLGの少なくとも少なくとも80%は、非凝集性BLGである。BLGの少なくとも90%が非凝集性BLGであることがさらに好ましい。BLGの少なくとも95%が非凝集性BLGであことが最も好ましい。BLG単離粉末のBLGのおよそ100%が非凝集性BLGであることがさらにより好ましい。
【0133】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大10%、好ましくは最大8%、より好ましくは最大6%、さらにより好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大1%、及び最も好ましくは最大0.2%のタンパク質変性度を有する。
【0134】
しかしながら、例えば、不透明な飲料が必要な場合のように、BLG単離粉末が有意なレベルのタンパク質変性を有することもまた好ましい場合がある。したがって、本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも11%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%のタンパク質変性度を有する。
【0135】
BLG単離粉末がかなりのレベルのタンパク質変性を有する場合、低レベルの不溶性タンパク質物質、すなわち、貯蔵中に飲料に沈殿する沈殿タンパク質物質を維持することがしばしば好ましい。不溶性物質のレベルは、例1.10に従って測定される。
【0136】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大20%重量/重量の不溶性タンパク質物質、好ましくは最大10%重量/重量の不溶性タンパク質物質、より好ましくは最大5%重量/重量の不溶性タンパク質物質を含み、さらに好ましいのは最大3%重量/重量の不溶性タンパク質物質、最も好ましいのは最大1%重量/重量の不溶性タンパク質物質を含むことである。BLG単離粉末が不溶性タンパク質物質を全く含まないことがさらに好ましい場合がある。
【0137】
本発明者らは、BLG単離粉末のpH3.9での熱安定性が、透明な高タンパク質飲料に対するその有用性の良好な指標であることを見出した。pH3.9での熱安定性は、例1.2に従って測定される。
【0138】
BLG単離粉末が、pH3.9で最大200NTU、好ましくは最大100NTU、より好ましくは最大60NTU、さらにより好ましい最大40NTUの熱安定性を有し、最も好ましいのは最大20NTUである。さらにより良好な熱安定性が可能であり、BLG単離粉末は、好ましくは、pH3.9で最大10NTU、好ましくは最大8NTU、より好ましくは最大4NTUの熱安定性を有し、さらにより好ましいのは最大2NTUである。
【0139】
BLG単離粉末の微生物の含有量は、好ましくは最小限に保たれる。しかしながら、微生物減少プロセスはタンパク質のアンフォールディング及び変性につながる傾向があるため、高度なタンパク質のネイティブ性及び低含有量の微生物の両方を得ることは困難である。本発明は、非常に低い微生物の含有量を得ると同時に、高レベルのBLGのネイティブ性を維持することを可能にする。
【0140】
本発明の幾つかの実施形態では、液体BLG単離物は、最大500.000CFU/g、好ましくは最大100.000CFU/g、より好ましくは最大50.000CFU/g、さらにより好ましくは最大25.000CFU/gを含む。
【0141】
微生物のさらに低い含有量が好ましい場合があり、そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、最大15000コロニー形成単位(CFU)/gを含む。好ましくは、BLG単離粉末は、最大10000CFU/gを含む。より好ましくは、BLG単離粉末は、最大5000CFU/gを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、最大1000CFU/gを含む。さらにより好ましくは、BLG単離粉末は、最大300CFU/gを含む。最も好ましくは、BLG単離粉末は、最大100CFU/g、例えば最大10CFU/g等を含む。特に好ましい実施形態では、粉末は無菌である。無菌のBLG単離粉末は、例えば、酸性pHでの精密濾過及び熱処理等のBLG単離粉末の製造中に幾つかの物理的微生物減少プロセスを組み合わせることによって調製され得る。乾燥は、好ましくは、例えば、無菌噴霧乾燥機等の無菌乾燥システムで実施される。
【0142】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量、好ましくは少なくとも80%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも90%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、を有する。
【0143】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、又はii)6.1~8.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量、好ましくは少なくとも80%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも90%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、より好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%、好ましくは最大5%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大70NTU、好ましくは最大50NTU、さらにより好ましくは最大40NTUの熱安定性、を有する。
【0144】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)2~4.9、又はii)6.1~8.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大200NTUの熱安定性、を有する。
【0145】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、2~4.9の範囲のpHを有し、
-少なくとも80%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0146】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、3.0~4.3の範囲、好ましくは3.6~4.1の範囲のpHを有し、
-少なくとも80%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、及びより好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.11、好ましくは少なくとも1.13の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0147】
本発明のさらに好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも80%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、及びより好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0148】
本発明のさらに好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.1~8.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも80%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0149】
本発明のさらに好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも80%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大2%重量/重量、好ましくは最大0.5%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも0.2g/cm3、好ましくは少なくとも0.3g/cm3、より好ましくは少なくとも0.4g/cm3のかさ密度、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、及び
-好ましくは、10%未満のBLG結晶化度を有する。
【0150】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-最大5%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、より好ましくは最大100コロニー形成単位/gを有し、最も好ましくは当該BLG単離粉末は無菌である。
【0151】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-最大5%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、より好ましくは最大100コロニー形成単位/gを有し、最も好ましくは当該BLG単離粉末は無菌である。
【0152】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、より好ましくは最大100コロニー形成単位/gを有し、最も好ましくは当該BLG単離粉末は無菌である。
【0153】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%のタンパク質変性度、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、より好ましくは最大100コロニー形成単位/gを有し、最も好ましくは当該BLG単離粉末は無菌である。
【0154】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、を有する。
【0155】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、ii)6.5~7.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも92%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、及び
-最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、より好ましくは最大100コロニー形成単位/gを有し、最も好ましくは当該BLG単離粉末は無菌である。
【0156】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3又はii)6.3~7.5の範囲のpHを有し、以下:
-少なくとも30%重量/重量、好ましくは少なくとも50%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも80%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量、より好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%、好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大40NTU、好ましくは最大20NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0157】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、i)3.0~4.3、又はii)6.3~7.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と
-最大6%重量/重量の量の水と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、を有する。
【0158】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、3.0~4.3の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量、好ましくは少なくとも96%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み
当該BLG単離粉末は、
-0.45~0.8g/cm3、好ましくは0.50~0.6g/cm3のかさ密度、
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%、好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0159】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、6.3~7.5の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも96%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-かさ密度0.45~0.8g/cm3、好ましくは0.50~0.6g/cm3、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、及び
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、を有する。
【0160】
本発明のさらに好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、5.0~6.0の範囲のpHを有し、
-少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも94%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、
-最大6%重量/重量の量の水と、
-最大0.5%重量/重量、好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質と、を含み、
当該BLG単離粉末は、
-かさ密度0.45~0.8g/cm3、好ましくは0.50~0.6g/cm3、
-最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大50NTU、好ましくは最大30NTU、さらにより好ましくは最大10NTUの熱安定性、及び
-好ましくは10%未満、より好ましくは多くても1%のBLG結晶化度、を有する。
【0161】
本発明のさらなる態様は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、乾燥BLG単離粉末を製造する方法に関し、
a)以下を有する液体BLG単離物、
i)2~4.9の範囲のpH、
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
iii)5.0~6.0の範囲のpH、を有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85重量/重量の量のBLGを含む工程、
b)任意に、液体BLG分離株を物理的微生物減少に供する工程、
c)噴霧乾燥により液体BLG単離物を乾燥する工程、を含む、方法に関する。
【0162】
液体BLG単離物は、好ましくは食用組成物である。
【0163】
液体BLG単離物は、好ましくは哺乳動物の乳から、好ましくは反芻動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカの乳から調製される。ウシの乳由来のタンパク質が特に好ましい。したがって、BLGは好ましくはウシBLGである。
【0164】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、総タンパク質に対して、少なくとも92%重量/重量、好ましくは少なくとも95%重量/重量、より好ましくは少なくとも97%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも98%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.5%重量/重量の量のBLGを含む。
【0165】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、総タンパク質に対して、少なくとも97.5%重量/重量、好ましくは少なくとも98.0%重量/重量、より好ましくは少なくとも98.5%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも99.0%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも99.7%重量/重量、例えば総タンパク質に対しておよそ100.0%等の量のBLGを含む。
【0166】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、少なくとも5%重量/重量、好ましくは少なくとも10%重量/重量、より好ましくは少なくとも15%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも20%の量の総タンパク質、最も好ましくは少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質を含む。
【0167】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、5~40%重量/重量の範囲、好ましくは10~35%重量/重量の範囲、より好ましくは15~30%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは20~25%重量/重量の範囲の総タンパク質を含む。
【0168】
本発明者らは、液体BLG単離物中のBLG濃度の増加が、より高いかさ密度を有する噴霧乾燥粉末を生じさせ、したがって、液体BLG単離物中に比較的高濃度のBLGを有することが好ましいことを観察した。
【0169】
そのため、本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、10~40%重量/重量の範囲、好ましくは20~38%重量/重量の範囲、より好ましくは24~36%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは28~34%重量/重量の範囲の量の総タンパク質を含む。
【0170】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、液体BLG単離物の非BLGタンパク質の少なくとも40%重量/重量、好ましくは、液体BLG単離物の非BLGタンパク質の少なくとも60%重量/重量、より好ましくは少なくとも70%重量/重量、最も好ましくは少なくとも90%重量/重量を構成する。
【0171】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、液体BLG単離物の非BLGタンパク質の最大80%重量/重量、好ましくは液体BLG単離物の非BLGタンパク質の最大60%重量/重量、さらにより好ましくは最大40%重量/重量、及び最も好ましくは最大30%重量/重量を構成する。
【0172】
さらに低いALA含有量が好ましい場合があり、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ALAは、液体BLG単離物の非BLGタンパク質の最大20%重量/重量、好ましくは液体BLG単離物粉の非BLGタンパク質の最大15%重量/重量、さらにより好ましくは最大10%重量/重量、及び最も好ましくは最大5%重量/重量を構成する。
【0173】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物の各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0174】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、液体BLG単離物の各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0175】
本発明者らは、低レベルのラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼが、無彩色のホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見てきた。
【0176】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで液体BLG単離物中に存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0177】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで液体BLG単離物中に存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0178】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、5~50%重量/重量の範囲、好ましくは10~40%重量/重量の範囲、より好ましくは15~35%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは20~30%重量/重量の範囲の全固形分を構成する。
【0179】
全固形分に寄与しない液体BLG単離物の画分は、好ましくは本質的に水からなるか、さらには水からなる。
【0180】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、50~95%重量/重量の範囲、好ましくは60~90%重量/重量の範囲、より好ましくは65~85%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは70~80%重量/重量の範囲の含水量を含む。
【0181】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大60%重量/重量、好ましくは最大50%重量/重量、より好ましくは最大20%重量/重量、さらにより好ましくは最大10%重量/重量、さらにより好ましくは最大1%重量/重量、最も好ましくは最大0.1%の量の炭水化物を含む。例えば、液体BLG単離物は、例えば、ラクトース、オリゴ糖、及び/又はラクトースの加水分解生成物(すなわち、グルコース及びガラクトース)、スクロース、及び/又はマルトデキストリン等の炭水化物を含み得る。
【0182】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大10%重量/重量、好ましくは最大5%重量/重量、より好ましくは最大2%重量/重量、さらにより好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質を含む。
【0183】
本発明者らは、液体BLG単離物の一部の所望の特性に達するようにミネラル含量を制御することが有利となり得ることを見出した。
【0184】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大10mmol/gタンパク質である。好ましくは、液体BLG単離物のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大2mmol/gタンパク質である。
【0185】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大1.0mmol/gタンパク質である。好ましくは、液体BLG単離物のNa、K、Mg、及びCaの量の合計は、最大0.6mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.4mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.2mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質である。
【0186】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物のMg及びCaの量の合計は、最大5mmol/gタンパク質である。好ましくは、液体BLG単離物のMg、及びCaの量の合計は、最大3mmol/gタンパク質、より好ましくは最大1.0mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.5mmol/gタンパク質である。
【0187】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物のMg、及びCaの量の合計は、最大0.3mmol/gタンパク質である。好ましくは、液体BLG単離物のMg及びCaの量の合計は、最大0.2mmol/gタンパク質、より好ましくは最大0.1mmol/gタンパク質、さらにより好ましくは最大0.03mmol/gタンパク質、最も好ましくは最大0.01mmol/gタンパク質である。
【0188】
本発明者らは、腎臓病の患者に特に有用な低リン/低カリウム変異体のBLG単離粉末を作製することが可能であることを見出した。かかる製品を製造するには、液体BLG単離物のリン及びカリウムの含有量が等しく低くなければならない。
【0189】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり、リン最大100mgの総リン含有量を有する。好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり、リン最大80mgの総リン含有量を有する。好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり、リン最大50mgの総リン含有量を有する。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり、リン最大20mgの総リン含有量を有する。液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり、リン最大5mgの総リン含有量を有する。
【0190】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大600mgのカリウムを含む。より好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大500mgのカリウムを含む。より好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大400mgのカリウムを含む。より好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大300mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大200mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、タンパク質100gあたり最大100mgのカリウムを含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、100gタンパク質あたり最大50mgのカリウムを含み、さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、100gタンパク質あたり最大10mgのカリウムを含む。
【0191】
リンの含有量は、問題の組成物の元素リンの総量に関し、例1.19に従って決定される。同様に、カリウムの含有量は、問題の組成物の元素カリウムの総量に関し、例1.19に従って決定される。
【0192】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大リン100mg/タンパク質100g及び最大カリウム700mg/タンパク質100g、好ましくは最大リン80mg/タンパク質100g及び最大カリウム600mg/タンパク質100g、より好ましくは最大リン60mg/タンパク質100g及び最大カリウム500mg/タンパク質100g、より好ましくは最大リン50mg/タンパク質100g及び最大400mgカリウム/タンパク質100g、又はより好ましくは最大リン20mg/タンパク質100g及び最大カリウム200mg/タンパク質100g、又はさらにより好ましくは最大リン10mg/タンパク質100g及び最大カリウム50mg/タンパク質100gを含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大リン(phosphor)100mg/タンパク質100g、及び最大カリウム340mg/タンパク質100gを含む。
【0193】
本発明による低リン及び/又は低カリウム組成物は、腎機能が低下している患者群用の食物製品を製造するための食品原料として使用することができる。
【0194】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.4、さらにより好ましくは3.0~4.0、最も好ましくは3.4~3.9の範囲のpHを有する。
【0195】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、6.1~8.5、好ましくは6.2~8.0、より好ましくは6.3~7.7、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する。
【0196】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、5.0~6.0、好ましくは5.1~5.9、より好ましくは5.2~5.8、さらにより好ましくは5.3~5.7の範囲のpHを有する。液体BLG単離物が5.0~6.0のpH範囲にある場合、液体BLG単離物はBLG結晶を含まないことがしばしば好ましい。これは、例えば、温度を上げることによって、及び/又は塩を加えることによって、液体BLG単離物がBLGの飽和点を下回っていることを確認することで達成できる。或いは、準安定ゾーンに保持され、結晶化促進剤が液体BLG単離物と接触しない限り、液体BLG単離物がBLGに対して過飽和であっても、結晶を含まない状態に保つことが可能である。
【0197】
液体BLG単離物は、好ましくは微生物の含有量が低く、これは、BLG濃縮組成物が既に微生物が少ない場合に特に可能である。
【0198】
本発明の幾つかの実施形態では、液体BLG単離物は、最大500.000CFU/g、好ましくは最大100.000CFU/g、より好ましくは最大50.000CFU/g、さらにより好ましくは最大10.000CFU/gを含む。
【0199】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大1000コロニー形成単位(CFU)/gを含む。好ましくは、液体BLG単離物は、最大600CFU/gを含む。より好ましくは、液体BLG単離物は最大300CFU/gを含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、最大100CFU/gを含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、最大50CFU/gを含む。最も好ましくは、液体BLG単離物は、最大20CFU/gm、例えば、最大10CFU/g等を含む。特に好ましい実施形態では、粉末は無菌である。無菌の液体BLG単離物は、例えば、低いpH(例えば、最大pH4.0)での精密濾過及び熱処理等のBLG単離粉末の製造中に幾つかの物理的微生物減少プロセスを組み合わせることによって調製され得る。
【0200】
BLGのアンフォールディングは不可逆的なプロセスであるように見えるため、タンパク質のアンフォールディングの程度が低いBLG単離粉末の調製には、液体BLG単離物のタンパク質のアンフォールディングの程度が既に低いことが必要である。
【0201】
BLGアンフォールディングの程度が低いBLG単離粉末又は液体BLG単離物が必要とされる場合、液体BLG単離物は、好ましくは、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0202】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、少なくとも1.12、好ましくは少なくとも1.13、より好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、及び最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0203】
液体BLG単離物にかなりの量の非タンパク質物質が含まれている場合は、固有トリプトファン蛍光発光比を測定する前にタンパク質画分を単離することが好ましい。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物のタンパク質画分は、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する。
【0204】
好ましくは、液体BLG単離物のタンパク質画分は、少なくとも1.12、より好ましくは少なくとも1.13、さらにより好ましくは少なくとも1.15、さらにより好ましくは少なくとも1.17、及び最も好ましくは少なくとも1.19の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)をし得る。
【0205】
例えば、タンパク質を保持するフィルターを使用して溶液を透析又は限外濾過ベースの透析にかけることにより、BLG単離粉末からタンパク質画分を分離する。
【0206】
BLGのタンパク質変性は不可逆的なプロセスであると思われるため、タンパク質のアンフォールディングの程度が低いBLG単離粉末の調製には、液体BLG単離物のタンパク質変性度が既に低いことが必要である。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大10%重量/重量、好ましくは最大6%重量/重量、より好ましくは最大4%重量/重量、さらにより好ましくは最大2、及び最も好ましくは最大1%重量/重量のタンパク質変性度を有する。
【0207】
液体BLG単離物の実質量のBLGが非凝集性BLGであることがしばしば好ましい。好ましくは、BLGの少なくとも50%が非凝集性BLGである。より好ましくは、BLGの少なくとも少なくとも80%が非凝集性BLGである。さらに好ましいのは、BLGの少なくとも90%が非凝集性BLGである。最も好ましいのは、BLGの少なくとも95%が非凝集性BLGである。さらにより好ましいのは、液体BLG単離物のBLGのおよそ100%が非凝集性BLGである。
【0208】
しかしながら、例えば、不透明な飲料が必要な場合といった、液体BLG単離物末が有意なレベルのタンパク質変性を有することもまた好ましい場合がある。したがって、本発明の他の好ましい実施形態では、BLG単離粉末は、少なくとも11%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%のタンパク質変性度を有する。
【0209】
液体BLG単離物がかなりのレベルのタンパク質変性を有する場合、低レベルの不溶性タンパク質物質、すなわち、貯蔵中に飲料に沈殿する沈殿タンパク質物質を維持することがしばしば好ましい。不溶性物質のレベルは、例1.10に従って測定される。
【0210】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大20%重量/重量の不溶性タンパク質物質、好ましくは最大10%重量/重量の不溶性タンパク質物質、より好ましくは最大5%重量/重量の不溶性タンパク質物質を含み、さらにより好ましいのは最大3%重量/重量の不溶性タンパク質物質であり、最も好ましいのは最大1%重量/重量の不溶性タンパク質である。液体BLG単離物が不溶性タンパク質物質を全く含まないことがさらに好ましい場合がある。
【0211】
上記のように、本発明者らは、液体BLG単離物のpH3.9での熱安定性が、透明な高タンパク質飲料に対するその有用性の良好な指標であることを見出した。pH3.9での熱安定性は、例1.2に従って測定される。
【0212】
液体BLG単離物が、pH3.9で最大200NTU、好ましくは最大100NTU、より好ましくは最大60NTUの熱安定性を有し、さらにより好ましいのは最大40NTU、最も好ましいのは最大20NTUである。さらにより良好な熱安定性が可能であり、液体BLG単離物は、好ましくは、pH3.9で最大10NTU、好ましくは最大8NTUの熱安定性を有し、より好ましいのは最大4NTU、さらにより好ましいのは最大2NTUである。
【0213】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大200NTU、好ましくは最大100NTU、より好ましくは最大50NTU、さらにより好ましくは最大20NTU、さらにより好ましくは最大10NTU、最も好ましくは最大2NTUの濁度を有する。
【0214】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、200NTU超、好ましくは少なくとも400NTU、より好ましくは少なくとも800NTU、さらにより好ましくは少なくとも1000NTU、さらにより好ましくは少なくとも2000NTU、最も好ましくは少なくとも5000NTUの濁度を有する。かかる液体BLG単離物は、不透明な飲料の製造に特に好ましい。
【0215】
本発明者らは、本発明の液体BLG単離物が、驚くべきことに、同等の液体WPIよりも低い粘度を有することを観察した。本発明者らは、これにより、不快な高粘度を経験することなく高タンパク質含有量を得ることが可能になるため、液体BLG単離物が高タンパク質飲料として特に適していることを見出した。
【0216】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、粘度(p)±50%、より好ましくは粘度(p)±40%、さらにより好ましくは粘度(p)±30%、最も好ましくは粘度(p)±25%の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断速度を有する。
【0217】
粘度(p)は次のように定義される。
粘度(p)=p≦23%の場合:0.3556e0.1262*p;p>23%の場合:0.0254*e0.24*p
【0218】
pは、%重量/重量で表される液体BLG単離物の総タンパク質含有量でることから、タンパク質含有量が31%重量/重量であれば、pは31である。
【0219】
これは、液体BLG単離物(タンパク質含有量pを有する)が、例えば、粘度(p)±25%の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断測度を有する場合、液体BLG単離物の粘度は少なくとも粘度(p)-25%であり、最大粘度(p)+25%であることを意味する。液体BLG単離物のタンパク質含有量pが、例えば31%重量/重量である場合、この例の最小粘度と最大粘度は以下のとおりである:
最小粘度(cP):0.0254*e0.24*31-25%=43cP-25%=32cP
最大粘度(cP):0.0254*e0.24*31+25%=43cP-25%=54cP
【0220】
本発明の他の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、粘度(p)±20%、より好ましくは粘度(p)±15%、さらにより好ましくは粘度(p)±10%、最も好ましくは粘度(p)±5%の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断速度を有する。
【0221】
液体BLG単離物の粘度は、例1.8に従って測定されるが、摂氏15度の温度及び300s-1の剪断速度を使用する。
【0222】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、以下の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断速度を有する:
-少なくとも粘度(p)-20%、及び
-最大粘度最大(p)-20%。
【0223】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、以下の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断速度を有する:
-少なくとも粘度(p)-10%、及び
-最大粘度最大(p)-40%。
【0224】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、以下の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断速度を有する:
-少なくとも粘度(p)-10%、及び
-最大粘度最大(p)-50%。
【0225】
粘度最大(p)は次のように定義される:粘度最大(p)≦0.611*e(0.1494*p)cP。
【0226】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、最大粘度最大(p)-10%、より好ましくは最大粘度最大(p)-20%の摂氏15度での粘度及び300s-1の剪断測度を有し、粘度最大(p)-30%がさらにより好ましく、粘度最大(p)-50%が最も好ましい。
【0227】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、2.8~4.3、好ましくは3.0~4.0範囲のpHを有し、以下:
-20~34%重量/重量、より好ましくは24~32%重量/重量、さらにより好ましくは28~32%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量、より好ましくは少なくとも94%重量/重量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、を含み、
当該BLG単離粉末は、好ましくは以下:
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大2%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大20NTUの熱安定性、
-無菌である、及び
-粘度(p)±25%の摂氏15度での粘度であって、ここで、pは単位%重量/重量のタンパク質含有量であり、粘度(p)=p≦23%の場合、0.3556e0.1262*p;p>23%の場合、0.0254*e0.24*p、の1つ又は2つ以上を有する。
【0228】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、6.3~8.0、好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有し、以下:
-20~34%重量/重量、より好ましくは24~32%重量/重量、さらにより好ましくは28~30%重量/重量の量の総タンパク質と、
-総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量、より好ましくは少なくとも94%重量/重量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)と、を含み、
当該BLG単離粉末は、好ましくは以下:
-少なくとも1.15の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
-最大5%のタンパク質変性度、
-pH3.9で最大40NTUの熱安定性、
-無菌である、及び
-粘度(p)±25%の摂氏15度での粘度であって、ここで、pは単位%重量/重量のタンパク質含有量であり、粘度(p)=p≦23%の場合、0.3556e0.1262*p;p>23%の場合、0.0254*e0.24*p、の1つ又は2つ以上を有する。
【0229】
かかる酸性の高タンパク質液体BLG単離物は、高品質のBLG単離粉末の製造に特に有用であり、同等のWPIと比較して驚くほど粘度が低いため、精密濾過等の処理のエネルギー消費を少なくする。酸性で高タンパクの液体BLG単離物はさらに、同じタンパク質含有量を有する従来のWPIで達成できるよりもはるかに高いかさ密度を有する酸性ホエイタンパク質粉末を製造することを可能にする(例えば、例7を参照)。
【0230】
液体BLG単離物は、幾つかの異なる方法で提供され得る。
【0231】
典型的には、液体BLG単離物の提供は、以下の方法のうちの1つ又は2つ以上によってBLG濃縮組成物を提供するために、ホエイタンパク質フィードからBLGを分離することを含むか、さらにはそれからなる:
-塩溶によるBLGの結晶化又は沈殿、
-塩析によるBLGのBLGの結晶化又は沈殿、
-イオン交換クロマトグラフィー、及び
-限外濾過によるホエイタンパク質の分画。
【0232】
BLG濃縮組成物を提供するための特に好ましい方法は、BLGの結晶化によるものであり、好ましくは塩溶によるか、或いは塩析によるものである。
【0233】
ホエイタンパク質フィードは、好ましくは、WPC、WPI、SPC、SPI、又はそれらの組み合わせである。
【0234】
「ホエイタンパク質フィード」という用語は、BLG濃縮組成物及びその後の液体BLG単離物が由来する組成物に関する。ホエイタンパク質溶液の文脈で記載される化学的特徴及び実施形態は、ホエイタンパク質フィードが典型的にはBLGに関して過飽和ではなく、フィードのpHが5~6の範囲に限定されないことを除いて、ホエイタンパク質フィードにも適用される。
【0235】
本発明の幾つかの実施形態では、BLG濃縮組成物の調製は、米国特許第2,790,790号公報A1によるpH範囲3.6~4.0での高塩BLG結晶化を含むか、さらにはそれからなる。
【0236】
本発明の他の実施形態では、BLG濃縮組成物の調製は、de Jongh et al(Mild Isolation Procedure Discloses New Protein Structural Properties of β-Lactoglobulin,J Dairy Sci.,vol.84(3),2001,pages 562-571)、又はVyas et al(Scale-Up of Native β-Lactoglobulin Affinity Separation Process,J.Dairy Sci.85:1639-1645,2002)によって記載される方法を含むか、さらにはそれからなる。
【0237】
しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、PCT出願PCT/EP2017/084553号明細書に記載されている塩溶条件下でpH5~6での結晶化によって調製され、これは、全ての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0238】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、総タンパク質に対して少なくとも90%のBLGを含み、好ましくはBLG結晶を含む、PCT/EP2017/084553による食用BLG組成物である。
【0239】
好ましくは、BLG濃縮組成物は、以下:
1)非凝集性BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有する工程、
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中で非凝集性BLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は5)から得られたBLG結晶を洗浄する工程、並びに
5)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は4)で得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含むプロセスによって調製される。
【0240】
BLG濃縮組成物を調製するためのこのプロセスは、必須の工程1)、2)、及び3)をその順序で含み、任意の順序及び反復回数で工程4)及び/又は5)を任意に含むことができる。しかしながら、工程4)及び5)は、多くの場合、工程3)の後に続く。或いは、又はさらに、分離の前に、洗浄水を結晶含有ホエイタンパク質溶液に加えることができる。
【0241】
このプロセスはさらに、BLG濃縮組成物を乾燥させる工程を含み得る。しかしながら、現在、乾燥中にタンパク質を損傷するリスクを回避するため、乾燥させずにBLG濃縮組成物を使用することが好ましい。
【0242】
前述のように、結晶化プロセスの工程1)は、非凝集性BLG及び少なくとも追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供することを含む。
【0243】
ホエイタンパク質溶液は、好ましくは、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、カゼイノマクロペプチド(CMP)、オステオポンチン、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、乳脂肪球膜タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の非凝集性ホエイタンパク質を含む。
【0244】
本発明の幾つかの実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大10%重量/重量、好ましくは最大5%重量/重量、より好ましくは最大1%重量/重量のカゼイン、さらにより好ましくはタンパク質の総量に対して最大0.5%のカゼインを含む。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、検出可能な量のカゼインを全く含まない。
【0245】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。
【0246】
さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも20%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0247】
本発明の他の好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも1%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも2%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも3%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも4%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0248】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも35%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも40%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して少なくとも45%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも50%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0249】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~90%重量/重量の範囲の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~80%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して、20~70%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して30~70%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含む。
【0250】
前述のように、本発明者らは、有機溶媒を使用せずに非凝集性BLGを結晶化することが可能であることを見出した。この精製アプローチは、ホエイタンパク質を含む調製物の精製にも使用でき、この調製物は既にBLG精製に供されており、非凝集性BLGの純度をさらに高める単純なプロセスを提供する。そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して1~20%重量/重量の範囲の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して2~15%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して、3~10%重量/重量の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0251】
本発明の幾つかの実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5%重量/重量の非凝集性ALAを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%重量/重量の非凝集性ALAを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%重量/重量の非凝集性ALAを含む。或いは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも20%重量/重量の非凝集性ALAを含み得る。
【0252】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも25%重量/重量の非凝集性ALAを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%重量/重量の非凝集性ALAを含む。工程1)のホエイタンパク質溶液は、好ましくは、タンパク質の総量に対して少なくとも35%重量/重量の非凝集性ALAを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも40%重量/重量の非凝集性ALAを含み得る。
【0253】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~95%重量/重量の範囲の非凝集性ALAを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~70%重量/重量の範囲の非凝集性ALAを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~60%重量/重量の範囲の非凝集性ALAを含み得る。工程1)のホエイタンパク質溶液は、好ましくは、タンパク質の総量に対して12~50%重量/重量の範囲の非凝集性ALAを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して20~45%重量/重量の範囲の非凝集性ALAを含み得る。
【0254】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比が少なくとも0.01である。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比が少なくとも0.5である。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比が少なくとも1、例えば少なくとも2等である。例えば、工程1)のホエイタンパク質溶液は、非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比が少なくとも3であり得る。
【0255】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、0.01~20の範囲の非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比を有する。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、0.2~10の範囲の非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比を有する。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、0.5~4の範囲の非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比を有する。例えば、工程1)のホエイタンパク質溶液は、1~3の範囲の非凝集性BLGと非凝集性ALAとの間の重量比を有し得る。
【0256】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも1%重量/重量の非凝集性BLGを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも2%重量/重量の非凝集性BLGを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5%重量/重量の非凝集性BLGを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。
【0257】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも12%重量/重量の非凝集性BLGを含む。例えば、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して、少なくとも20%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。或いは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。
【0258】
本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大95%重量/重量の非凝集性BLGを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大90%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して最大85%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して、最大80%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大78%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大75%重量/重量の非凝集性BLGを含み得る。
【0259】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して1~95%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~90%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含み得る。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~85%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~80%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して20~70%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含み得る。
【0260】
本発明の他の好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~95%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して12~90%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含み得る。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して15~85%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して15~80%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して30~70%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含み得る。
【0261】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質溶液の重量に対して少なくとも0.4%重量/重量の非凝集性BLGを含む。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、少なくとも1.0%重量/重量の非凝集性BLGを含む。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、少なくとも2.0%重量/重量の非凝集性BLGを含む。ホエイタンパク質溶液が少なくとも4%重量/重量の非凝集性BLGを含むことがさらにより好ましい。
【0262】
より高濃度の非凝集性BLGがさらに好ましく、好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、少なくとも6%重量/重量の非凝集性BLGを含む。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、少なくとも10%重量/重量の非凝集性BLGを含む。ホエイタンパク質溶液が少なくとも15%重量/重量の非凝集性BLGを含むことがさらにより好ましい。
【0263】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質溶液の重量に対して、0.4~45%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、1~35%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、4~30%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。ホエイタンパク質溶液が10~25%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含むことがさらにより好ましい。
【0264】
BLGのより高い含有量が特に好ましく、そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質溶液の重量に対して、10~45%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、15~40%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、20~39%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含む。ホエイタンパク質溶液が25~38%重量/重量の範囲の非凝集性BLGを含むことがさらにより好ましい。
【0265】
ホエイタンパク質溶液の実質量のBLGが非凝集性BLGであることがしばしば好ましい。好ましくは、BLGの少なくとも50%が非凝集性BLGである。より好ましくは、BLGの少なくとも少なくとも80%が非凝集性BLGである。さらに好ましいのは、BLGの少なくとも90%が非凝集性BLGである。最も好ましいのは、BLGの少なくとも95%が非凝集性BLGである。さらにより好ましいのは、ホエイタンパク質溶液のBLGのおよそ100%が非凝集性BLGである。
【0266】
任意の適切なホエイタンパク質源を使用して、ホエイタンパク質溶液を調製することができる。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、乳清タンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、ホエイタンパク質単離物、又はそれらの組み合わせを含むか、さらにはそれらからからなる。
【0267】
ホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質溶液であることが好ましい。
【0268】
この文脈において、脱塩という用語は、ホエイタンパク質溶液の導電率が最大15mS/cm、好ましくは最大10mS/cm、さらにより好ましくは最大8mS/cmであることを意味する。脱塩ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、好ましくは最大7mS/cm、より好ましくは最大4mS/cm、さらにより好ましくは最大1mS/cmである。
【0269】
ホエイタンパク質溶液は、脱塩乳清タンパク質濃縮物、脱塩乳清タンパク質単離物、脱塩ホエイタンパク質濃縮物、又は脱塩ホエイタンパク質単離物であることが特に好ましい。
【0270】
本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、脱塩及びpH調整された乳清タンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、乳清タンパク質単離物、又はそれらの組み合わせを含むか、さらにはそれらからなる。
【0271】
ホエイタンパク質溶液は、例えば、脱塩乳清タンパク質濃縮物を含み得るか、さらにはそれからなり得る。或いは、ホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質濃縮物を含み得るか、さらにはそれからなり得る。或いは、ホエイタンパク質溶液は、脱塩乳清タンパク質単離物を含み得るか、さらにはそれからなり得る。或いは、ホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質単離物を含み得るか、さらにはそれからなり得る。
【0272】
BLG濃縮組成物は、好ましくは哺乳動物の乳から、好ましくは反芻動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカの乳から調製される。ウシの乳由来のタンパク質が特に好ましい。
【0273】
ホエイタンパク質溶液のタンパク質は、好ましくはそのネイティブ状態に可能な限り近く、好ましくは、もしあったとしても、穏やかな熱処理のみに供されたものである。
【0274】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、最大80mg/100gタンパク質のフロシン値を有する。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大40mg/100gタンパク質のフロシン値を有する。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大20mg/100gタンパク質のフロシン値を有する。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大10mg/100gタンパク質のフロシン値を有する。最も好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大5mg/100gタンパク質のフロシン値、例えば、好ましくは0mg/100gタンパク質のフロシン値等を有する。
【0275】
ホエイタンパク質溶液には、典型的には、タンパク質に加えて他の成分が含まれている。ホエイタンパク質溶液は、例えば、ミネラル、炭水化物、及び/又は脂質等のホエイ又は乳清に通常見られる他の成分を含む場合がある。代替的又は追加的に、ホエイタンパク質溶液は、ホエイ又は乳清に固有ではない成分を含み得る。ただし、かかる非ネイティブ成分は、好ましくは食物製品生産での使用に対して、及び好ましくはヒトの消費にとっても安全でなければならない。
【0276】
本プロセスは、BLG以外の固形物を含む粗ホエイタンパク質溶液からBLGを分離するために特に有利である。
【0277】
ホエイタンパク質溶液は、例えば、ラクトース、オリゴ糖、及び/又はラクトースの加水分解生成物(すなわち、グルコース及びガラクトース)等の炭水化物を含み得る。ホエイタンパク質溶液は、例えば、1~30%重量/重量の範囲、又は2~20%重量/重量の範囲等、0~40%重量/重量の範囲の炭水化物を含む。
【0278】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、最大20%重量/重量の炭水化物、好ましくは最大10%重量/重量の炭水化物、より好ましくは最大5%重量/重量の炭水化物、さらにより好ましくは最大2%重量/重量炭水化物を含む。
【0279】
ホエイタンパク質溶液はまた、例えば、トリグリセリド及び/又はリン脂質等の他の脂質タイプの形の脂質を含み得る。
【0280】
本発明の幾つかの実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、全固形分に対して最大15%重量/重量の脂質の総量を含む。好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、全固形分に対して最大10%重量/重量の脂質の総量を含む。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、全固形分に対して最大6%重量/重量の脂質の総量を含む。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、全固形分に対して最大1.0%重量/重量の脂質の総量を含む。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、全固形分に対して最大0.5%重量/重量の脂質の総量を含む。
【0281】
ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、典型的には、ホエイタンパク質溶液の重量に対して少なくとも1%重量/重量である。好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも5%重量/重量である。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも10%重量/重量である。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも15%重量/重量である。
【0282】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、1~50%重量/重量の範囲である。好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、5~40%重量/重量の範囲である。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、10~30%重量/重量の範囲である。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、15~25%重量/重量の範囲である。
【0283】
ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、例1.5に従って決定される。
【0284】
ホエイタンパク質溶液は、典型的には、ホエイタンパク質フィードを1つ又は2つ以上の調整に供することによって調製され、BLGに関して過飽和であるホエイタンパク質溶液を形成する。
【0285】
ホエイタンパク質フィードは、好ましくは、WPC、WPI、SPC、SPI、又はそれらの組み合わせである。
【0286】
「ホエイタンパク質フィード」という用語は、BLG濃縮組成物及びその後の液体BLG単離物が由来する組成物に関する。ホエイタンパク質フィードは、例えば、BLGに関して過飽和のホエイタンパク質溶液に変換される。ホエイタンパク質フィードは、典型的には、BLGと少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含む水性液体であるが、典型的には、BLGに関して過飽和ではない。
【0287】
ホエイタンパク質溶液の化学組成に関する実施形態は、ホエイタンパク質フィードにも同様に適用される。しかしながら、典型的には、ホエイタンパク質フィードの少なくとも1つのパラメーターは、過飽和又は少なくとも自発的な結晶化を回避するように設定される。
【0288】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、過飽和ホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質フィードを以下の調整の1つ又は2つ以上に供することによって調製される:
-pHを調整する
-導電率を下げる
-温度を下げる
-タンパク質濃度を増加させる
-水分活性を低下させる薬剤を添加する
-イオン組成の変更。
【0289】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードのpHを5~6の範囲のpHに調整することを含む。
【0290】
全てのpH値は、pHガラス電極を使用して測定され、25℃に正規化される。25℃への正規化は、典型的には、pHメーターによって行われる。或いは、サンプルの温度を25℃に調整する。
【0291】
ホエイタンパク質溶液は、例えば、4.9~6.1の範囲のpHを有し得る。ホエイタンパク質溶液のpHは、例えば、5.0~6.1の範囲であり得る。或いは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.1~6.1の範囲であり得る。好ましくは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.1~6.0の範囲である。
【0292】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液のpHは、5.0~6.0の範囲である。好ましくは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.1~6.0の範囲である。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.1~5.9の範囲である。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.2~5.9の範囲であり得る。最も好ましくは、ホエイタンパク質溶液のpHは5.2~5.8の範囲である。
【0293】
pHは、食物製品に許容可能な酸及び/又は塩基を使用して調整することが好ましい。例えば、カルボン酸等の食物製品に許容可能な酸が特に好ましい。かかる酸の有用な例は、例えば、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、酪酸、クエン酸、葉酸、フマル酸、グルコン酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、及び/又はそれらの混合物である。
【0294】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、pHは、例えば、ゆっくりと加水分解すると同時に、それを含む水性液体のpHを低下させる、D-グルコノ-デルタ-ラクトン等のラクトンを使用して調整される。ラクトンの加水分解終了後の目標pHを正確に計算することができる。
【0295】
例えば、食物製品に許容される塩基の有用な例は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物源、例えばクエン酸三ナトリウム等の食用酸の塩、及び/又はそれらの組み合わせである。
【0296】
本発明の他の好ましい実施形態では、pHは、そのH+型に対して陽イオン交換材料を添加することによって調整される。ビーズタイプ/大粒子タイプの陽イオン交換材料は、結晶化前又は結晶化後でもホエイタンパク質溶液から簡単に除去することができる。そのH+型に対して陽イオン交換材料を添加することによるpHの調整は、ホエイタンパク質フィードの導電率に著しく影響する負の対イオンを添加することなくpHを低下させるので、本発明において特に有利である。
【0297】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードの導電率を低下させることを含む。
【0298】
本明細書に記載されている導電率の値は、別段の指定がない限り、25℃に正規化されている。
【0299】
ホエイタンパク質溶液の導電率を下げると、BLG結晶の収率が高くなることがわかっている。ホエイタンパク質溶液の得られる最小導電率は、タンパク質画分及び脂質画分(もしあれば)の組成に依存する。幾つかのタンパク質種、例えばカゼイノマクロペプチド(CMP)等は、他のタンパク質種よりも導電性に寄与する。したがって、ホエイタンパク質フィードの導電率を、タンパク質及びタンパク質の対イオンが導電率の主な要因であるレベルに近づけることが好ましい。導電率の低下には、液相に存在し、タンパク質にしっかりと結合していない小さな遊離イオンの少なくとも一部の除去が含まれることがしばしばある。
【0300】
ホエイタンパク質溶液は、最大10mS/cmの導電率を有することがしばしば好ましい。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、最大5mS/cmの導電率を有する。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大4mS/cmの導電率を有する。
【0301】
より低い導電率がさらにより好ましく、より高い収率のBLG結晶を生じさせる。したがって、ホエイタンパク質溶液は、好ましくは最大3mS/cmの導電率を有する。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、最大1mS/cmの導電率を有する。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大0.5mS/cmの導電率を有する。
【0302】
ホエイタンパク質フィードの導電率は、好ましくは、透析又はダイアフィルトレーションによって低下する。限外濾過によるダイアフィルトレーションは、タンパク質を保持しながら塩及び小さな荷電分子を洗い流すことができるため、特に好ましい。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、同じUFユニットを、UF/ダイアフィルトレーション及びその後のホエイタンパク質フィードの濃縮に使用する。
【0303】
ホエイタンパク質溶液中の導電率(mS/cmで表される)とタンパク質の総量(ホエイタンパク質溶液の総重量に対する総タンパク質の重量%で表される)との間の比率を、有利には、BLGの結晶化を促進するための特定の閾値未満に保つことができる。
【0304】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.3である。好ましくは、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.25である。好ましくは、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.20である。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.18である。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.12である。最も好ましくは、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.10である。
【0305】
例えば、ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、およそ0.07であるか、さらにはそれよりも低いことが好ましい。
【0306】
本発明者らはさらに、ホエイタンパク質フィードを有利に調整して、最大10mS/cmのUF透過導電率を有するホエイタンパク質溶液を提供できることを見出した。UF透過導電率は、液体の小分子画分の導電率の尺度である。「導電率」という用語が本明細書でそのように使用される場合、それは問題の液体の導電率を指す。「UF透過導電率」という用語が使用される場合、それは液体の小分子画分の伝導率を指し、例1.23に従って測定される。
【0307】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大7mS/cmである。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大5mS/cmであり得る。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大3mS/cmであり得る。
【0308】
さらに低いUF透過導電率を使用することもでき、高収率のBLGを得る必要がある場合は特に好ましい。そのため、好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大1.0mS/cmである。より好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大0.4mS/cmであり得る。さらにより好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大0.1mS/cmであり得る。最も好ましくは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は、最大0.04mS/cmであり得る。
【0309】
例えば、ダイアフィルトレーション中にMilliQ水を希釈剤として使用する場合(MilliQ水はおよそ0.06μS/cmの導電率を持つ)、さらに低いUF透過導電率に達する可能性がある。そのため、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は最大0.01mS/cmになる可能性がある。或いは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は最大0.001mS/cmであり得る。或いは、ホエイタンパク質溶液のUF透過導電率は最大0.0001mS/cmであり得る。
【0310】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードの温度を下げることを含む。
【0311】
例えば、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードの温度を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、さらにより好ましくは少なくとも15℃に下げることを含み得る。例えば、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質フィードの温度を少なくとも20℃に下げることを含み得る。
【0312】
ホエイタンパク質フィードの温度を、例えば、最大30℃、好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大10℃に低下させてもよい。本発明者らは、さらに低い温度がより高い程度の過飽和を提供することを見出し、そのためホエイタンパク質の温度を例えば、最大5℃、好ましくは最大2℃、さらにより好ましくは最大0℃に低下させてもよい。温度は0℃よりも低くてもよい。しかしながら、好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、例えば氷のスラリーの形態で、ポンプ輸送可能であり続けなければならない。
【0313】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、BLG結晶化の開始前の氷スラリーである。或いは又はさらに、結晶化ホエイタンパク質溶液は、工程2)のBLG結晶化中に氷スラリーに変換されるか、又は氷スラリーとして維持され得る。
【0314】
本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードの総タンパク質濃度を増加させることを含む。ホエイタンパク質フィードは、例えば、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透、及び/又は蒸発等の1つ又は2つ以上のタンパク質濃縮工程に供され、それによって濃縮されて、ホエイタンパク質溶液が得られる。
【0315】
限外濾過は、塩及び炭水化物の濃度がほとんど影響を受けずに、タンパク質の選択的濃縮を可能にするため、特に好ましい。上述のように、限外濾過は、好ましくは、ホエイタンパク質フィードのダイアフィルトレーション及び濃縮の両方に使用される。
【0316】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液中のBLGの濃度は、BLGの自発的な結晶化が起こるレベルよりも低い。したがって、ホエイタンパク質溶液が準安定領域にあるとき、すなわち、シーディングが使用される際にBLG結晶は成長できるが、結晶化が自発的に開始しない過飽和領域にあるとき、ホエイタンパク質フィードの修飾を停止することがしばしば好ましい。
【0317】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、1つ又は2つ以上の水分活性低下剤(複数の場合がある)をホエイタンパク質フィードに添加することを含む。
【0318】
かかる水分活性低下剤の有用であるが非限定的な例は、多糖及び/又はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0319】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、例えば、イオン交換、新たなイオン種の追加、透析、又はダイアフィルトレーションによる、ホエイタンパク質フィードのイオン組成を変更することを含む。
【0320】
典型的には、ホエイタンパク質溶液は、過飽和を生成するための上記のプロセス工程の2つ以上を組み合わせることによって調製される。
【0321】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードを少なくとも:
-例えば、10℃を超える温度での限外濾過、ナノ濾過又は逆浸透を使用する、濃縮、及び
-その後、10℃未満の温度に冷却すること、を含む。
【0322】
本発明の他の好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードを少なくとも
-6.0を超えるpHでの濃縮、及び
-その後、酸(GDL又はH+型の陽イオン交換物質等)を添加することによってpHを低下させることに供することを含む。
【0323】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードを少なくとも
-例えば、少なくとも非凝集性BLGを保持する膜を使用したダイアフィルトレーションによって導電率を低下させることに供することを含む。
【0324】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の調製は、ホエイタンパク質フィードを少なくとも
-pHを5~6に調整すること、
-少なくとも非凝集性BLGを保持する膜を使用したダイアフィルトレーションによって導電率を低下させること、
-例えば、10℃を超える温度で限外濾過、ナノ濾過又は逆浸透を使用する、タンパク質の濃縮、
-最後に、10℃未満の温度に冷却すること、の組み合わせに供することを含む。
【0325】
本発明者らはさらに、ナトリウム+カリウムの合計対カルシウムとマグネシウムの合計の間のモル比を制御することによって、本プロセスのBLG収率が改善され得ることを見出した。カルシウム及びマグネシウムの相対量が多いと、驚くべきことに、非凝集性BLGの収量が増加し、したがって、本発明のプロセスのBLG回収の効率が向上するようである。
【0326】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程1)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大4である。より好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大2である。さらにより好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大1.5、さらにより好ましくは最大1.0である。最も好ましくは、工程1)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大0.5、例えば、最大0.2等である。
【0327】
Na+KとCa+mgのモル比は(mNa+mK)/(mCa+mMg)として計算され、式中、mNaは元素Naのモル単位の含有量、mKは元素Kのモル単位の含有量、mCaは元素Caのモル単位の含有量、及びmMgは元素Mgのモル単位の含有量である。
【0328】
ホエイタンパク質溶液は、塩溶によってBLGに関して過飽和であり、したがって、塩溶によってホエイタンパク質溶液からそのBLGを結晶化できることが特に好ましい。
【0329】
本発明の幾つかの実施形態では、特に本発明の食用BLG生成物がある程度のタンパク質変性も有するはずであれば、ホエイタンパク質溶液は低い変性タンパク質の含有量を有する。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最大2%、好ましくは最大1.5%、より好ましくは最大1.0%、最も好ましくは最大0.8%のタンパク質変性度を有する。
【0330】
プロセスの工程2)は、過飽和ホエイタンパク質溶液のBLGの少なくとも一部を結晶化することを含む。
【0331】
工程2)の結晶化は、塩溶によって、すなわち、イオン強度及び導電率が低い液体中で行われることが特に好ましい。これは、結晶化を引き起こすためにかなりの量の塩が溶液に加えられる塩析様式とは対照的である。
【0332】
工程2)のBLGの結晶化は、例えば、次の1つ又は2つ以上が含まれる:
-結晶化が起こるのを待つこと、
-結晶化シードの添加、
-BLGの過飽和度をさらに上げること、及び/又は
-機械的刺激。
【0333】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程2)は、結晶化シードをホエイタンパク質溶液に加えることを含む。本発明者らは、結晶化シードの添加により、BLG結晶化がいつどこで行われるかを制御して、プロセス機器の突然の目詰まり及び製造中の意図しない停止を回避できることを見出した。例えば、ホエイタンパク質フィードを濃縮している間、結晶化の開始を回避することがしばしば望ましい。
【0334】
セラミック膜又はDCF等の高剪断システムが使用されない限り、ホエイタンパク質溶液は、工程2)の操作中にUF膜又はMF膜に接触しないことが特に好ましい。
【0335】
原則として、BLGの結晶化を開始する任意のシード材料を使用することができる。しかしながら、ホエイタンパク質溶液に不純物が添加されるのを避けるために、水和BLG結晶又は乾燥BLG結晶をシーディングに使用することが好ましい。
【0336】
結晶化シードは、乾燥形態であっても、ホエイタンパク質溶液に添加されたときに懸濁液の一部を形成していてもよい。結晶化シード、例えば、BLG結晶を含む懸濁液を添加することは、結晶化のより速い開始を提供するようであるため、目下のところ好ましい。このような懸濁液は、pHが5~6の範囲であり、導電率が最大10mS/cmである結晶化シードを含むことが好ましい。
【0337】
本発明者らは、導電率の単位「mS/cm」は1cmあたりのミリジーメンスを意味し、1.00mSは1000マイクロSに対応することを認識している。
【0338】
結晶化シードは、BLG結晶化後に乾燥されていないBLG結晶の懸濁液を介して添加されることが特に好ましい。かかる懸濁液は、例えば、前のバッチの工程2)から得られたBLG結晶及び母液の一部、又は前のバッチの工程3)、4)又は5)から得られた湿ったBLG結晶の一部であり得る。
【0339】
本発明者らは、結晶化シードに湿潤BLG結晶を使用すると、乾燥した又は不十分に水和されたBLG結晶が使用される場合よりもはるかに大きなBLG結晶が工程2)中に提供され、これもまた母液からのBLGの分離をより効率的にすることを観察した。ホエイタンパク質フィード、結晶化条件、シード材料の質量及び粒子径、冷却プロファイル、並びに分離方法が同じである実験で、発明者らは、未乾燥のBLG結晶を用いてシーディングすると、再水和され、乾燥されたBLG結晶をシーディングすることによって得られたBLG結晶(得られた粒子径:40~60ミクロン)と比較して、得られた結晶の粒子径(得られた粒子径:100~130ミクロン)が100%増加することを見出した。
【0340】
或いは、結晶化シードが乾燥BLG結晶に基づいている場合、結晶を水性液体、例えば水に再懸濁して、得られたBLG結晶懸濁液を結晶化の開始に使用する前に、乾燥BLG結晶を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1.0時間、さらにより好ましくは少なくとも1.5時間再水和させることが好ましい。
【0341】
本発明の幾つかの実施形態では、結晶化シードの少なくとも幾つかは、ホエイタンパク質溶液と接触させられる固相上に位置する。
【0342】
結晶化シードは、好ましくは、BLG結晶の所望のサイズよりも小さい粒子径を有する。結晶化シードのサイズを、ふるい分け又は他のサイズ分別プロセスによって最も大きなシードを除去することによって修正することができる。例えば、粉砕による、粒子径の縮小を、粒子径分別の前に使用することもできる。
【0343】
本発明の幾つかの実施形態では、結晶化シードの少なくとも90%重量/重量は、0.1~600ミクロンの範囲の粒子径(ふるい分け分析によって測定される)を有する。例えば、結晶化シードの少なくとも90%重量/重量は、1~400ミクロンの範囲の粒子径を有し得る。好ましくは、結晶化シードの少なくとも90%重量/重量は、5~200ミクロンの範囲の粒子径を有し得る。より好ましくは、結晶化シードの少なくとも90%重量/重量は、5~100ミクロンの範囲の粒子径を有し得る。
【0344】
結晶化シードの粒子径及び投与量は、BLGの最適な結晶化を提供するように調整することができる。
【0345】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、結晶化シードは、BLGに関して過飽和を得る前にホエイタンパク質フィードに添加されるが、好ましくは、過飽和に達したときに少なくとも幾つかの結晶化シードが依然として存在する方法である。これは、ホエイタンパク質フィードが過飽和に近いとき、例えば、冷却、濃縮、及び/又はpH調整中に結晶化シードを追加して、結晶化シードが完全に溶解する前に過飽和にすることによって達成され得る。
【0346】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程2)は、BLGの過飽和の程度をさらに、好ましくはBLGの結晶化が直ちに、すなわち最大20分間、好ましくは最大5分間で開始する程度まで増加させることを含む。これはまた、結晶子が自発的に形成され、結晶化プロセスを開始する核形成ゾーンとも称される。
【0347】
過飽和の程度を、例えば、
-ホエイタンパク質溶液のタンパク質濃度をさらに上げること、
-ホエイタンパク質溶液をさらに冷却すること、
-ホエイタンパク質溶液をBLG結晶化に最適なpHに近づけること、
-導電率をさらに下げること、の1つ又は2つ以上によって増加することができる。
【0348】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程2)は、BLG結晶が形成されるのを待つことを含む。これには数時間かかる場合があり、典型的には、BLGに対してわずかに過飽和であり、結晶化シードが添加されていないホエイタンパク質溶液の場合である。
【0349】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液の提供(工程1)及びBLGの結晶化(工程2)は、2つの別個の工程として行われる。
【0350】
しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、工程2)は、BLGの過飽和度を上げるか、又は少なくとも過飽和を維持するために、結晶化ホエイタンパク質溶液の追加の調整を含む。追加の調整により、BLG結晶の収率が向上する。
【0351】
かかる追加の調整には、以下:
-結晶化ホエイタンパク質溶液のタンパク質濃度をさらに上げること、
-結晶化ホエイタンパク質溶液をさらに低い温度に冷却すること、
-結晶化ホエイタンパク質溶液をBLG結晶化に最適なpHにさらに近づけること、
-結晶化ホエイタンパク質溶液の導電率をさらに低下させること、の1つ又は2つ以上を含み得る。
【0352】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、結晶化ホエイタンパク質溶液は、新たな結晶子の自発的形成を回避するために、工程2)の間、準安定ゾーンに維持される。
【0353】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程2)の間に得られたBLG結晶の少なくとも幾つかは、斜方晶系空間群P 21 21 21を有する。
【0354】
好ましくは、得られたBLG結晶の少なくとも幾つかは、斜方晶系空間群P 21 21 21を有し、単位格子寸法a=68.68(±5%)Å、b=68.68(±5%)Å、及びc=156.65(±5%)Å;並びに単位格子の積分角度α=90°、β=90°、及びγ=90°。
【0355】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、得られたBLG結晶の少なくとも幾つかは、斜方晶系空間群P 21 21 21を有し、単位格子寸法a=68.68(±2%)Å、b=68.68(±2%)Å、及びc=156.65(±2%)Å;並びに単位格子の積分角度α=90°、β=90°、及びγ=90°。
【0356】
得られたBLG結晶の少なくとも幾つかは、斜方晶系空間群P 21 21 21を有し、単位格子寸法a=68.68(±1%)Å、b=68.68(±1%)Å、及びc=156.65(±1%)Å;並びに単位格子の積分角度α=90°、β=90°、及びγ=90°がさらにより好ましい。
【0357】
最も好ましくは、得られたBLG結晶の少なくとも幾つかは、斜方晶系空間群P 21 21 21を有し、単位格子寸法a=68.68Å、b=68.68Å、及びc=156.65Å;並びに単位格子の積分角度α=90°、β=90°、及びγ=90°。
【0358】
本発明の幾つかの特に好ましい実施形態では、プロセスは、残りのホエイタンパク質溶液から少なくとも幾つかのBLG結晶を分離する工程3)を含む。これは、BLGの精製が望まれる場合に特に好ましい。
【0359】
工程3)は、例えば、BLG結晶を少なくとも30%重量/重量の固形分に分離することを含み得る。好ましくは、工程3)は、BLG結晶を少なくとも40%重量/重量の固形分に分離することを含む。さらにより好ましくは、工程3)は、BLG結晶を少なくとも50%重量/重量の固形分に分離することを含む。
【0360】
本発明者らは、分離されたBLG結晶に付着する水性部分は、典型的には、避けるべき不純物を含むため、高い固形分がBLGの精製に有利であることを見出した。さらに、高い固形分は、分離されたBLG結晶を、例えば、粉末等の乾燥生成物に変換するためのエネルギー消費を削減し、所与の容量の乾燥ユニットから得られるBLG収量を増加させる。
【0361】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程3)は、BLG結晶を少なくとも60%の固形分に分離することを含む。好ましくは、工程3)は、BLG結晶を少なくとも70%の固形分に分離することを含む。さらにより好ましくは、工程3)は、BLG結晶を少なくとも80%の固形分に分離することを含む。
【0362】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程3)の分離は、以下の操作の1つ又は2つ以上を含む:
-遠心分離、
-デカンテーション、
-濾過、
-沈降、
-上記の組み合わせ。
【0363】
これらの単位操作は当業者によく知られており、容易に実施される。濾過による分離は、例えば、真空濾過、ダイナミッククロスフロー濾過(DCF)、濾液プレス又はフィルター遠心分離機の使用を含み得る。
【0364】
濾過には、所望の結果に基づいて異なる細孔サイズを使用することができる。好ましくは、フィルターは、ネイティブのホエイタンパク質及び小さな凝集物を通過させるが、BLG結晶を保持する。フィルターは、好ましくは、少なくとも0.1ミクロンの公称孔径を有する。フィルターは、例えば、少なくとも0.5ミクロンの公称孔径を有し得る。さらにより好ましくは、フィルターは、少なくとも2ミクロンの公称孔径を有し得る。
【0365】
より大きな孔径を有するフィルターも使用することができ、実際、主に大きな結晶をBLG結晶を含む液体から分離する必要がある場合に好ましい。本発明の幾つかの実施形態では、フィルターは、少なくとも5ミクロンの公称孔径を有する。好ましくは、フィルターは、少なくとも20ミクロンの公称孔径を有する。さらにより好ましくは、フィルターは、少なくとも40ミクロンの孔径を有し得る。
【0366】
フィルターは、例えば、孔径が0.03~5000ミクロン、例えば、0.1~5000ミクロン等の範囲である。好ましくは、フィルターは、0.5~1000ミクロンの範囲の孔径を有し得る。さらにより好ましくは、フィルターは、例えば、5~800ミクロンの範囲、10~500ミクロンの範囲、又は50~500ミクロンの範囲の孔径を有し得る。
【0367】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、フィルターは、0.03~100ミクロンの範囲の孔径を有する。好ましくは、フィルターは、0.1~50ミクロンの範囲の孔径を有し得る。より好ましくは、フィルターは、4~40ミクロンの範囲の孔径を有し得る。さらにより好ましくは、フィルターは、10~20ミクロンの範囲等、5~30ミクロンの範囲の孔径を有し得る。
【0368】
1ミクロンより大きい孔径を有するフィルターを使用することの利点は、細菌及び他の微生物もまた、分離中に、及び任意に洗浄及び/又は再結晶中にも少なくとも部分的に除去されることである。したがって、本プロセスは、非常に低い細菌負荷でありながらタンパク質の熱損傷を回避する高純度のBLGを生成することを可能にする。
【0369】
孔径が1ミクロンを超えるフィルターを使用するもう1つの利点は、水の除去及びその後の乾燥が容易になり、エネルギー消費が少なくなることである。
【0370】
BLG結晶から分離された残りのホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質溶液の調製中にホエイタンパク質フィードにリサイクルすることができる。
【0371】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程3)は、フィルター遠心分離機を利用する。本発明の他の好ましい実施形態では、工程3)は、デカンター遠心分離機を利用する。初期の結果は、母液からBLG結晶を分離するためにフィルター遠心分離機及び/又はデカンター遠心分離機を使用すると、例えば、真空濾過よりも堅牢なプロセスの操作が提供されることを示している。
【0372】
多くの場合、形成されたフィルターケーキを乾燥ガスで乾燥させて、フィルターケーキの含水量を減らし、好ましくはフィルターケーキをフィルターから剥がすことができるようにすることが好ましい。乾燥ガスの使用は、フィルターケーキが直接乾燥食用BLG組成物に変換される場合、分離工程の一部、或いは最終乾燥工程を形成する場合がある。
【0373】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程3)は、動的クロスフロー濾過(DCF)ユニットを利用する。
【0374】
初期試験は、膜孔径が0.03~5ミクロンの範囲、好ましくは0.3~1.0ミクロンの範囲のDCFユニットを使用すると、BLG結晶の効率的な分離を提供することを示し、本発明者らは、DCFユニットは、BLG結晶を含むホエイタンパク質溶液の大きなバッチからでも結晶を分離するのに十分な時間実行することができることを観察した。
【0375】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程3)は、BLG結晶を保持することができる膜を備えたDCFユニットを使用して実施され、DCF透過物は、ホエイタンパク質溶液又はホエイタンパク質フィードの一部を形成するためにリサイクルされ、DCF保持液は、回収され得るか、又は結晶化タンクに戻され得る。好ましくは、DCF透過液は、ホエイタンパク質溶液又はホエイタンパク質フィードと混合する前に、BLGに対して過飽和にするために、例えば限外濾過/ダイアフィルトレーションによって処理される。
【0376】
有利なことに、これらの実施形態は、液体流の温度が15℃を超えて上昇することを必要とせず、したがって、より高い温度を必要とするプロセスの変形よりも微生物汚染を受けにくい。これらの実施形態の別の産業上の利点は、過飽和のレベルが容易に制御され、望ましくない自発的な結晶化が起こらないレベルに維持できることである。したがって、プロセスのこれらの実施形態の間の液体流の温度は、好ましくは最大15℃、より好ましくは最大12℃、さらにより好ましくは最大10℃、最も好ましくは最大5℃である。
【0377】
これらの実施形態は、例10に例示され、PCT出願PCT/EP2017/084553号の
図26に示されている。これらの実施形態を、バッチプロセス又は連続プロセスとして実施することができる。
【0378】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、プロセスは、BLG結晶、例えば、3)の分離されたBLG結晶を洗浄する工程4)を含む。洗浄は、単一の洗浄又は複数の洗浄工程からなり得る。
【0379】
工程4)の洗浄は、好ましくは、BLG結晶を完全に溶解することなくBLG結晶を洗浄液と接触させ、続いて残りのBLG結晶を洗浄液から分離することを含む。
【0380】
洗浄液は、好ましくは、BLG結晶の完全な溶解を回避するように選択され、例えば、冷たい脱塩水、冷たい水道水、又は冷たい逆浸透透過水を含み得るか、さらには本質的にそれらからなり得る。
【0381】
洗浄液は、例えば、冷たい脱塩水、冷たい水道水、若しくは冷たい逆浸透透過水を含み得るか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0382】
洗浄液は、5~6の範囲、好ましくは5.0~6.0の範囲、さらにより好ましくは5.1~6.0の範囲、例えば、5.1~5.9等の範囲のpHを有し得る。
【0383】
或いは、洗浄液は、6.1~8の範囲、好ましくは6.4~7.6の範囲、さらにより好ましくは6.6~7.4の範囲、例えば、6.8~7.2等の範囲のpHを有し得る。これは典型的には、脱塩水、水道水、又は逆浸透透過水の場合の洗浄液のpHである。一般に、洗浄液はミネラルが少なく、緩衝能力が低いことが好ましい。
【0384】
洗浄液は、最大0.1mS/cm、好ましくは最大0.02mS/cm、さらにより好ましくは最大0.005mS/cmの導電率を有し得る。
【0385】
さらに低い導電率を有する洗浄液を使用することができる。例えば、洗浄液は、最大1マイクロS/cmの導電率を有し得る。或いは、洗浄液は、最大0.1マイクロS/cm、例えばおよそ0.05マイクロS/cm等の導電率を有し得る。
【0386】
結晶化BLGの溶解を制限するために、洗浄工程を低温で実施することが好ましい。洗浄液の温度は、好ましくは最大30℃、より好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大10℃である。
【0387】
洗浄工程は、例えば、最大5℃で、より好ましくは最大2℃、例えば、およそ0℃で行われ得る。例えば、1つ又は2つ以上の凝固点抑制剤が存在することにより、洗浄液がその温度で凍結しない限り、0℃より低い温度を使用することができる。
【0388】
本発明の幾つかの実施形態では、洗浄液は、例えば、少なくとも1%重量/重量の量の、好ましくは少なくとも3%重量/重量の量の、例えば、4%重量/重量等の量のBLGを含む。
【0389】
工程4)の洗浄は、典型的には、BLG結晶の初期量の最大80%重量/重量、好ましくは最大50%重量/重量、さらにより好ましくはBLG結晶の初期量の最大20%重量/重量を溶解する。好ましくは、工程4)の洗浄は、BLG結晶の初期量の最大15%重量/重量、より好ましくは最大10%重量/重量、さらにより好ましくはBLG結晶の初期量の最大5%重量/重量を溶解する。
【0390】
洗浄液の総量と分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、しばしば少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも5である。例えば、洗浄液の量と分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、少なくとも10であり得る。或いは、洗浄液の総量と分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、少なくとも20、例えば、少なくとも50、又は少なくとも100等であり得る。
【0391】
「洗浄液の総量」という用語は、プロセス全体で使用される洗浄液の総量に関する。
【0392】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、1つ又は2つ以上の洗浄シーケンスは、BLG結晶分離と同じフィルター配置又は同様のフィルター配置で行われる。主にBLG結晶を含むフィルターケーキは、BLG結晶の残りの部分がフィルターケーキに残っている間にフィルターを通して除去される洗浄液の1つ又は2つ以上のシーケンスが追加される。
【0393】
本発明の特に好ましい実施形態では、工程3)の分離は、BLG結晶を保持するフィルターを使用して行われる。続いて、フィルターケーキを、フィルターケーキ及びフィルターを通って移動する1つ又は2つ以上の量の洗浄液と接触させる。洗浄液の各量は、フィルターケーキの体積の最大10倍、好ましくはフィルターケーキの体積の最大5倍、より好ましくはフィルターケーキの体積の最大1倍、さらにより好ましくはフィルターケーキの体積の最大0.5倍、例えばフィルターケーキの体積の最大0.2倍等がしばしば好ましい。フィルターケーキの体積には、フィルターケーキの固体及び流体(液体及び気体)の両方が含まれる。フィルターケーキは、好ましくは、この方法で少なくとも2回、好ましくは少なくとも4回、さらにより好ましくは少なくとも6回洗浄される。
【0394】
工程4)からの使用済み洗浄液は、例えば、ホエイタンパク質フィード又はホエイタンパク質溶液にリサイクルし、洗い流したBLGを再度分離することができる。
【0395】
プロセスはさらに、以下を含む再結晶化工程を伴う工程5)を含み得る:
-分離したBLG結晶を再結晶液に溶解すること、
-BLGに関して過飽和になるように再結晶液を調整すること、
-過飽和で調整された再結晶液中でBLGを結晶化すること、及び
-残りの調整済み再結晶液からBLG結晶を分離すること。
【0396】
工程5)は、単一の再結晶化シーケンス又は複数の再結晶化シーケンスのいずれかを含み得る。
【0397】
本発明の幾つかの実施形態では、工程又は3)又は4)のBLG結晶は、少なくとも2回再結晶化される。例えば、BLG結晶は、少なくとも3回、例えば、少なくとも4回、再結晶化され得る。例。
【0398】
洗浄及び再結晶化の工程は、任意の順序で組み合わせることができ、必要に応じて複数回行うことができる。
【0399】
工程3)の分離されたBLG結晶は、例えば、以下のプロセスシーケンスに従う:
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)、それに続く、
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)。
【0400】
或いは、工程3)の分離されたBLG結晶は、プロセスシーケンスに供され得る:
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)、それに続く、
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)。
【0401】
洗浄と再結晶化の複数の工程を、例えば、以下の順序で組み合わせることができる:
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)、
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)、
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)、及び
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)。
【0402】
又は例えば、以下の順序:
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)、
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)、
-1つ又は2つ以上の再結晶化の工程(工程5)
-1つ又は2つ以上の洗浄工程(工程4)。
【0403】
本発明者らは、ホエイタンパク質溶液の調製を含む結晶化プロセスが微生物増殖を起こしやすいことに気づき、この問題に対処するためにプロセスを修正することが有利であることを見出した。
【0404】
ホエイタンパク質フィードの供給から工程c)でBLG分子が分離されるまでに、BLG分子が12℃を超える温度にある時間の合計は、最大24時間、好ましくは20時間、最大12時間がより好ましく、さらにより好ましくは最大6時間、最も好ましくは最大3時間であることが特に好ましい。
【0405】
上記期間をさらに減少させることができ、またしばしばそうすることが好ましく、そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質フィードの提供から工程c)でBLG分子が分離されるまでに、BLG分子が12℃を超える温度にある時間の合計は、最大2時間、好ましくは1時間、より好ましくは最大0.5時間、さらにより好ましくは最大0.3時間、最も好ましくは最大0.1時間である。
【0406】
本発明の幾つかの実施形態では、プロセスはさらに、分離されたBLGを、例えば、クロマトグラフィー又は選択的濾過に基づく追加のBLG濃縮工程に供することを含む。しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、プロセスは、工程2)の後に追加のBLG濃縮工程を含まない。「追加のBLG濃縮工程」という用語は、タンパク質の総量に対してBLGを濃縮するプロセス工程を意味し、この工程は、BLGの結晶化又はBLG結晶の取り扱いとは関係がない。かかる追加のBLG濃縮工程の例は、イオン交換クロマトグラフィーである。BLG結晶の洗浄及び/又はBLGの再結晶は、「追加のBLG濃縮工程」とは見なされない。
【0407】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、プロセスは、工程3)、4)、又は5)に由来するBLG濃縮組成物が乾燥組成物に変換される乾燥工程を含む。
【0408】
本発明の特に好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物を調製するプロセスは、以下:
1)BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有し、当該ホエイタンパク質溶液が、以下:
-全固形分に対して70~100%重量/重量タンパク質と、
-総タンパク質に対して30~90%重量/重量、好ましくは30~70%の非凝集性BLGと、
-総タンパク質に対して4~50%重量/重量、好ましくは8~35%の非凝集性ALAと、
-総タンパク質に対して0~25%重量/重量のCMPと、
-ホエイタンパク質溶液の総重量に対して少なくとも10%重量/重量のタンパク質と、を含む、工程、
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中で、好ましくは結晶化シードを添加することにより、BLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、工程3)で得られた分離したBLG結晶を洗浄する工程、
5)任意に、工程3)又は4)から得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含む。
【0409】
ホエイタンパク質溶液は、好ましくは脱塩ホエイタンパク質溶液であり、好ましくは、導電率とタンパク質の総量との間の比が最大0.3及び/又はUF透過導電率が最大7mS/cmである。
【0410】
これらの実施形態は、低ミネラル及び低リンのBLG単離物を作製するために特に有用である。
【0411】
幾つかの好ましい実施形態では、プロセスはバッチプロセスとして実施される。或いは、時には好ましくは、プロセスはセミバッチプロセスとして実施され得る。他の好ましい実施形態では、プロセスは、連続プロセスとして実施される。
【0412】
本プロセスの利点は、先行技術のBLG結晶化のための同等のプロセスよりもはるかに速いことである。ホエイタンパク質フィードの最初の調整から工程3)の分離の完了までの期間は、最大10時間、好ましくは最大4時間、より好ましくは最大2時間、さらにより好ましくは最大1時間であり得る。
【0413】
一般に、非凝集性BLG又はホエイタンパク質フィードの他のホエイタンパク質のどちらの栄養価も損なわない穏やかな温度を使用して、BLG濃縮組成物を調製することが好ましい。
【0414】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、非凝集性BLGは、プロセス中に90℃を超える温度にさらされない。好ましくは、BLGは、プロセス中に80℃を超える温度にさらされない。さらにより好ましくは、非凝集性BLGは、プロセス中に75℃を超える温度にさらされない。噴霧乾燥はしばしば150℃を超える温度を使用するが、短い曝露時間及び同時の水の蒸発は、噴霧乾燥されたタンパク質が50~70℃を超える温度を経験しないことを意味することに留意されたい。
【0415】
BLG濃縮組成物を調製するためにどのプロセスが使用されたとしても、それは、BLG濃縮組成物を乾燥させる工程を含み得る。しかしながら、現在、乾燥中にタンパク質を損傷するリスクを回避するために、BLG濃縮組成物を乾燥させずに使用することが好ましい。
【0416】
液体BLG単離物として使用するために必要な特性をまだ持っていない場合、ホエイタンパク質フィードから分離されたBLG濃縮組成物を、液体BLG単離物を提供する一環として、以下の群から選択される1つ又は2つ以上の工程に供することができる:
-脱塩、
-ミネラルの添加、
-希釈、
-集中力、
-物理的微生物減少、及び
-pH調整。
【0417】
脱塩の非限定的な例としては、例えば、透析、ゲル濾過、UF/ダイアフィルトレーション、NF/ダイアフィルトレーション、及びイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
【0418】
ミネラル添加の非限定的な例としては、例えば、例えば、Na、K、Ca、及び/又はMgの塩等の可溶性の食物製品に許容可能な塩の添加が含まれる。かかる塩は、例えば、リン酸塩、塩化物塩、又は例えば、クエン酸塩若しくは乳酸塩等の食用酸の塩であり得る。ミネラルを、固体、懸濁、又は溶解した形態で添加することができる。
【0419】
希釈の非限定的な例としては、例えば、水、脱塩水、又はミネラル、酸、塩基の水溶液等の液体希釈剤の添加が挙げられる。
【0420】
濃度の非限定的な例としては、例えば、蒸発、逆浸透、ナノ濾過、限外濾過及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0421】
濃度が全固形分に対してタンパク質の濃度を増加させる必要がある場合は、限外濾過又は代わりに透析等の濃縮工程を使用することが好ましい。濃度が全固形分に対してタンパク質の濃度を増加させる必要がない場合、例えば、蒸発、ナノ濾過及び/又は逆浸透が有用である可能性がある。
【0422】
物理的微生物減少の非限定的な例としては、例えば、熱処理、細菌濾過、UV照射、高圧処理、パルス電界処理、及び超音波が挙げられる。これらの方法は、当業者によく知られている。
【0423】
細菌濾過は典型的には、精密濾過又は大孔径限外濾過を含み、微生物を保持できるが、タンパク質及びその他の目的の成分を通過させることができる孔径を必要とする。有用な口径は、典型的には最大1.5ミクロン、好ましくは最大1.0ミクロン、より好ましくは最大0.8ミクロン、さらにより好ましくは最大0.5ミクロン、最も好ましくは最大0.2ミクロンである。細菌濾過の孔径は通常少なくとも0.1ミクロンである。
【0424】
細菌濾過は、例えば、0.02~1ミクロン、好ましくは0.03~0.8ミクロン、より好ましくは0.04~0.6ミクロン、さらにより好ましくは0.05~0.4ミクロン、最も好ましくは0.1~0.2ミクロンの孔径を有する膜を含み得る。
【0425】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、細菌濾過に供され、続いて、最大80℃、好ましくは最大75℃の温度を使用する熱処理に供される。この熱処理の温度と持続時間との組み合わせは、好ましくは、滅菌飲料調製物を提供するように選択される。
【0426】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、細菌濾過に供され、続いて、少なくとも150℃の温度を使用して、最大0.2秒、好ましくは最大0.1秒の期間にわたって熱処理に供される。この熱処理の温度と持続時間との組み合わせは、好ましくは、滅菌飲料調製物を提供するように選択される。
【0427】
pH調整の非限定的な例としては、例えば、塩基及び/又は酸、好ましくは食物製品に許容可能な塩基及び/又は酸の添加が挙げられる。二価金属カチオンをキレート化することができる酸及び/又は塩基を使用することが特に好ましい。かかる酸及び/又は塩基の例は、クエン酸、クエン酸塩、EDTA、乳酸、乳酸塩、リン酸、リン酸塩、及びそれらの組み合わせである。
【0428】
以下において、BLG濃縮組成物からの工程a)の液体BLG単離物の提供の幾つかの好ましい実施形態。この文脈で言及されたプロセスの工程は、BLG濃縮組成物に続くBLG含有生成物流に適用される。
【0429】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、例えば、BLG濃縮組成物が上記の塩溶プロセスに由来するBLG結晶を含む場合、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-例えば、BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するため、i)2~4.9又はii)6.1~8.5へとpH調整すること、
-任意に、脱塩又はミネラルの追加、及び
-下記のいずれか、
-目的のタンパク質含有量への濃縮とそれに続く物理的微生物減少、又は
-物理的微生物減少とそれに続く目的のタンパク質含有量への濃縮。
【0430】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、例えば、BLG濃縮組成物が上記の塩溶プロセスに由来するBLG結晶を含む場合、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-例えば、BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するため、i)2~4.9又はii)6.1~8.5へとpH調整すること、
-任意に、ミネラルの脱塩又は追加、
-物理的微生物減少とそれに続く目的のタンパク質含有量への濃縮。
【0431】
本発明の他の好ましい実施形態では、例えば、BLG濃縮組成物が上記の塩溶プロセスに由来するBLG結晶を含む場合、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-好ましくはpHが5.0~6.0の間のBLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するためのミネラル及び好ましくは可溶性の塩の添加、及び
-下記のいずれか、
-目的のタンパク質含有量への濃縮とそれに続く物理的微生物減少、又は
-物理的微生物減少とそれに続く目的のタンパク質含有量への濃縮。
【0432】
酸性の溶解したBLG濃縮組成物を取り扱う場合、単独で、又は本明細書に記載の物理的微生物減少のための他のプロセスの1つ又は2つ以上と組み合わせて、物理的微生物減少として熱処理を使用することが特に有利である。本発明者らは、酸性条件下での穏やかな熱処理の使用は、BLGがそのネイティブの折りたたまれた状態にとどまることができるが、それでも処理された流れの微生物負荷の低減に寄与するので、特に有益であることを見出した。
【0433】
酸性の溶解したBLG濃縮組成物を、最大27%重量/重量、好ましくは最大22%重量/重量、さらにより好ましくは最大17%重量/重量の総タンパク質の濃度する間に、細菌濾過工程に供し、続いて、細菌濾過されたBLG濃縮組成物又は液体BLG単離物を熱処理工程に供することが特に好ましい。
【0434】
酸性の溶解したBLG濃縮組成物を、5~27%重量/重量、好ましくは10~22%重量/重量、さらにより好ましくは12~17%重量/重量の総タンパク質の濃度を有する間に、細菌濾過工程に供し、続いて、細菌濾過されたBLG濃縮組成物又は液体BLG単離物を熱処理工程に供することがさらにより好ましい。
【0435】
熱処理工程は、好ましくは液体BLG単離物に対して、好ましくは噴霧乾燥前の最終工程として実施される。
【0436】
液体BLG単離物の供給中のBLGのアンフォールディングを回避するか、又は少なくとも制限することがしばしば好ましい。熱処理が2~4.9のpH範囲で使用される場合、BLGのアンフォールディングを限定するか、さらには回避するため、温度を最大82℃、好ましくは最大80℃、より好ましくは最大78℃に維持することが好ましい。
【0437】
熱処理は、好ましくは少なくとも低温殺菌である。
【0438】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、熱処理の温度は、70~80℃の範囲、好ましくは70~79℃の範囲、より好ましくは71~78℃の範囲、さらにより好ましくは、72~77℃の範囲、最も好ましくは73~76℃の範囲、例えばおよそ75℃等である。
【0439】
好ましくは、熱処理の持続時間は、70~80の温度範囲で実施される場合、1秒~30分である。最長の曝露時間は、温度範囲の最低温度に最適であり、その逆も同様である。
【0440】
本発明の特に好ましい実施形態では、熱処理は、70~78℃で1秒~30分、より好ましくは71~77℃で1分~25分、さらにより好ましくは72~76℃で2分~20分を提供する。
【0441】
幾つかの実施形態では、特にアンフォールディングする場合、より高い温度も好ましい場合があり、任意に、乾燥前にBLGの凝集も必要とされる。例えば、熱処理の温度は、少なくとも81℃、好ましくは少なくとも91℃、より好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃、最も好ましくは少なくとも140℃であり得る。
【0442】
熱処理は、例えば、UHTタイプの処理であってもよく、これは、典型的には、135~144℃の範囲の温度及び2~10秒の範囲の持続時間を含む。
【0443】
或いは、しかしまた好ましいことに、熱処理は、145~180℃の範囲の温度及び0.01~1秒の範囲の持続時間を含んでもよく、より好ましくは、150~180℃の範囲の温度及び0.01~0.2秒の範囲の持続時間を含み得る。
【0444】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程a)の液体BLG単離物の提供は、pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0の範囲にある間に熱処理による微生物減少を行うことを含む。
【0445】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物からの工程a)の液体BLG単離物の提供は、pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0の範囲にある間の熱処理による物理的微生物減少を含む。
【0446】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物からの工程a)の液体BLG単離物の提供は、pHが6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0、より好ましくは、6.5~7.5の範囲の範囲にある間の脱塩を含む。本発明者らは、かかる脱塩が、この方法によって調製されたBLG単離粉末の熱安定性を改善するのに有利であることを見出した。
【0447】
本発明の特に好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物からの工程a)の液体BLG単離物の提供は、以下を含む:
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0の範囲にある間の熱処理による物理的微生物減少、及び
-pHが6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、より好ましくは6.5~7.5の範囲にある間の脱塩。
【0448】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、例えば、BLG濃縮組成物が上記の塩溶プロセスに由来するBLG結晶を含む場合、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するための2~4.9へのpHの調整、
-任意に、pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.0、より好ましくは3.0~3.9にある間の所望のタンパク質含有量への濃縮、及び
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の熱処理による物理的微生物減少。
【0449】
BLG濃縮組成物が既に2~4.9の範囲のpHを有する場合、工程a)の液体BLG単離物の提供は、好ましくは、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の脱塩、
-任意に、pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の所望のタンパク質含有量への濃縮、及び
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の熱処理による物理的微生物減少。
【0450】
5.0~8.5の範囲、好ましくは6.1~8.5の範囲、より好ましくは6.5~8.0の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供するのに特に適している本発明の他の好ましい実施形態では、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-例えば、BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するための2~4.9へのpHの調整、
-任意に、所望のタンパク質含有量への濃縮、
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の熱処理による物理的微生物減少、
-5.0~8.5の範囲、好ましくは6.1~8.5の範囲、より好ましくは6.5~8.0の範囲のpHへのpHの調整。
【0451】
6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、より好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供するのに特に適している本発明の他の好ましい実施形態では、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-例えば、BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するための2~4.9へのpHの調整、
-任意に、pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の所望のタンパク質含有量への濃縮、
-pHが2~4.9、好ましくは2.5~4.7、より好ましくは2.8~4.3、さらにより好ましくは3.2~4.0にある間の熱処理による物理的微生物減少、
-6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、より好ましくは6.5~7.5の範囲のpHへのpHの調整、及び
-6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、より好ましくは6.5~7.5の範囲のpHでの脱塩。
【0452】
6.1~8.5の範囲、好ましくは6.1~8.5の範囲、より好ましくは6.5~8.0の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供するのに特に適している本発明のさらに好ましい実施形態では、工程a)の液体BLG単離物の提供は、BLG濃縮組成物を以下の順序で以下の工程に供することを含む:
-例えば、BLG濃縮組成物のBLG結晶を溶解するための少なくともpH6.1へのpHの調整、
-pHが6.1~8.5の範囲、好ましくは6.5~8.0の範囲、より好ましくは6.5~7.5の範囲にある間の脱塩
-任意に、pHが6.1~8.5、好ましくは6.5~8.0、より好ましくは6.5~7.5にある間の所望のタンパク質に対する濃縮、
-任意に、pHが6.1~8.5、好ましくは6.5~8.0、より好ましくは6.5~7.5の範囲にある間の熱処理による物理的微生物減少。
【0453】
BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換する間の温度は、典型的には0~82℃の範囲であり、熱処理のためにさらに高い温度を伴う場合がある。処理中のBLG流のpHが4.9を超える場合、温度は、微生物の増殖を減らすため、0~65℃の範囲、より好ましくは、0~15℃の範囲又は50~65℃の範囲であることが好ましい。
【0454】
液体BLG単離物のpHが最大4.9、さらにより好ましくは最大4.1である場合、温度は0~82℃の範囲であり、有利には0~15℃の範囲であるか、又は微生物の成長を減らすため50~80℃の範囲であることが好ましい。本発明者らは、高温が濃縮工程の効率を高め、同時に微生物の減少に寄与するため、50~80℃の範囲の温度で、より好ましくは60~80℃の範囲、さらにより好ましくは65~78℃の範囲の温度で、プロセス又は必要に応じて、少なくとも濃縮工程を実施することが特に有利であることを見出した。この実施形態は、BLGのネイティブ性を維持しながら、高含有量のBLG及び非常に低い微生物含有量を有する液体BLG単離物を生成することを可能にする。得られた噴霧乾燥粉末は、高いかさ密度及び高レベルのネイティブ性、並びに非常に好ましい微生物プロファイルを有する。
【0455】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換するプロセスは、0~15℃の範囲、好ましくは1~10℃の範囲の温度で行われる。
【0456】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換するプロセスの少なくとも一部、好ましくはプロセス全体が、50~82℃の範囲、好ましくは55~80℃の範囲、より好ましくは60~78℃の範囲の温度で行われる。これは、処理中のタンパク質ストリームのpHが最大4.9、好ましくは最大4.3、より好ましくは最大3.7、好ましくは3.0~4.3の範囲である場合、特に好ましい。
【0457】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換する少なくとも幾つかのプロセス、好ましくはプロセス全体が、pHが3.0~3.7の範囲にある間に78~82℃の範囲の温度で行われる。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換する少なくとも幾つかのプロセス、好ましくはプロセス全体が、pHが3.7~4.3の範囲にある間に60~78℃の範囲の温度で行われる。
【0458】
BLG濃縮組成物は、好ましくは、液体BLG単離物と実質的に同じタンパク質組成物を有し、通常、BLG濃縮組成物を液体BLG単離物に変換する間に追加のタンパク質分画を適用する必要はない。
【0459】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、総タンパク質に対して、少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも88%重量/重量、より好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも92%の量のBLG、最も好ましくは総タンパク質に対して少なくとも95%重量/重量の量のBLGを含む。BLG濃縮組成物が、総タンパク質に対して少なくとも97%重量/重量、より好ましくは少なくとも99%重量/重量、例えば、好ましくは総タンパク質に対しておよそ100%重量/重量の量のBLGを含むことが特に好ましい場合がある。
【0460】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、総タンパク質に対して、少なくとも5%重量/重量、好ましくは少なくとも10%重量/重量、より好ましくは少なくとも15%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも20%の量の総タンパク質、最も好ましくは少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質を含む。
【0461】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、5~45%重量/重量の範囲、好ましくは10~40%重量/重量の範囲、より好ましくは15~38%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは20~35%重量/重量の範囲の総タンパク質を含む。
【0462】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の合計は、BLG濃縮組成物の非BLGタンパク質の少なくとも40%重量/重量、好ましくは、BLG濃縮組成物の非BLGタンパク質の少なくとも60%重量/重量、より好ましくは少なくとも70%重量/重量、最も好ましくは少なくとも90%重量/重量を構成する。
【0463】
本発明の他の好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物の各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。
【0464】
さらに低い濃度の主要な非BLGホエイタンパク質が望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物の各主要な非BLGホエイタンパク質は、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0465】
本発明者らは、低レベルのラクトフェリン及び/又はラクトペルオキシダーゼが、無彩色のホエイタンパク質生成物を得るのに特に有利であるという徴候を見てきた。
【0466】
そのため、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージでBLG濃縮組成物中に存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトフェリンが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0467】
同様に、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージでBLG濃縮組成物中に存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大25%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大6%である。さらに低濃度のラクトペルオキシダーゼが望ましい場合がある。そのため、本発明の追加の好ましい実施形態では、ラクトペルオキシダーゼは、総タンパク質に対する重量パーセンテージで存在し、これは、スイートホエイに由来する標準的なホエイタンパク質濃縮物中の総タンパク質に対するその重量パーセンテージの最大4%、好ましくは最大3%、より好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1%である。
【0468】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、5~50%重量/重量の範囲、好ましくは10~45%重量/重量の範囲、より好ましくは15~40%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは20~35%重量/重量の範囲の全固形分を含む。
【0469】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、50~95%重量/重量の範囲、好ましくは55~90%重量/重量の範囲、より好ましくは60~85%重量/重量の範囲、さらにより好ましくは65~80%重量/重量の範囲の含水量を含む。
【0470】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、最大60%重量/重量、好ましくは最大50%重量/重量、より好ましくは最大20%重量/重量、さらにより好ましくは最大10%重量/重量、さらにより好ましくは最大1%重量/重量、最も好ましくは最大0.1%の量の炭水化物を含む。
【0471】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、最大10%重量/重量、好ましくは最大5%重量/重量、より好ましくは最大2%重量/重量、さらにより好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質を含む。
【0472】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG濃縮組成物は、例えば、既に望ましいpHと化学組成を持っている場合には、液体BLG単離物として直接使用される。
【0473】
本発明の幾つかの実施形態は、工程b)の物理的微生物減少を必要とせず、したがって、工程a)及びc)のみを必要とするが、他の好ましい実施形態は物理的微生物減少を必要とするため、工程a)、b)及びc)の3つ全てを含む。
【0474】
したがって、本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、物理的微生物減少に供される。
【0475】
物理的微生物減少の有用な例は、加熱、細菌濾過、UV照射、高圧処理、パルス電界処理、及び超音波の1つ又は2つ以上を含む。
【0476】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、物理的微生物減少は、熱処理を含むか、さらには熱処理からなる。
【0477】
好ましくは、熱処理は少なくとも低温殺菌を含む。
【0478】
特定の実施形態では、熱処理は、液体BLG単離物を70~82℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0479】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、熱処理の温度は、70~80℃の範囲、好ましくは70~79℃の範囲、より好ましくは71~78℃の範囲、さらにより好ましくは、72~77℃の範囲、最も好ましくは73~76℃の範囲、例えばおよそ75℃等である。
【0480】
好ましくは、熱処理の持続時間は、70~80の温度範囲で実施される場合、1秒~30分である。最長の曝露時間は、温度範囲の最低温度に最適であり、その逆も同様である。
【0481】
本発明の特に好ましい実施形態では、熱処理は、70~78℃で1秒~30分、より好ましくは71~77℃で1分~25分、さらにより好ましくは72~76℃で2分~20分を提供する。
【0482】
幾つかの実施形態では、特にアンフォールディングする場合、より高い温度も好ましい場合があり、任意に、乾燥前にBLGに対する凝集も必要とされる。例えば、熱処理の温度は、少なくとも81℃、好ましくは少なくとも91℃、より好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃であり得て、少なくとも140℃が最も好ましい。
【0483】
熱処理は、例えば、90~130℃の範囲の温度及び5秒~30分の範囲の持続時間を含み得る。熱処理は、例えば、90~95℃の範囲の温度に1~30分間、例えば、およそ120℃でおよそ20秒加熱することを含む。或いは、熱処理は、115~125℃の範囲の温度に5~30分間、例えば、およそ120℃でおよそ20秒加熱することを含む。
【0484】
或いは、熱処理は、例えば、UHTタイプの処理であってもよく、これは、典型的には、135~144℃の範囲の温度及び2~10秒の範囲の持続時間を含む。
【0485】
或いは、しかしまた好ましいことに、熱処理は、145~180℃の範囲の温度及び0.01~2秒の範囲の持続時間を含んでもよく、より好ましくは、150~180℃の範囲の温度及び0.01~0.3秒の範囲の持続時間を含み得る。
【0486】
熱処理の実施は、プレート若しくは管状熱交換器、かきとり式熱交換器、又はレトルトシステム等の従来の装置の使用を含み得る。或いは、特に好ましくは、95℃を超える熱処理の場合、例えば、直接蒸気注入、直接蒸気インフュージョン、又はスプレークッキング(spray-cooking)を使用する、直接蒸気ベースの加熱を使用することができる。さらに、かかる直接蒸気ベースの加熱は、好ましくは、フラッシュ冷却と組み合わせて使用される。スプレークッキングの実施の適切な例は、国際公開第2009113858号公報A1に見られ、これらはあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。直接蒸気注入及び直接蒸気インフュージョンの実施の適切な例は、国際公開第2009113858号公報A1及び国際公開第2010/085957公報A3に見られ、これらはあらゆる目的で本明細書に組み込まれる。高温処理の一般的な態様は、例えば、「Thermal technologies in food processing」ISBN 185573558 Xに記載されており、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0487】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、工程b)の物理的微生物減少は、滅菌液体BLG単離物をもたらす滅菌である。かかる滅菌は、例えば、細菌濾過と低温殺菌とを組み合わせることによって得ることができる。
【0488】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、好ましくは2~4.9の範囲のpHを有する液体BLG単離物は、細菌濾過に供され、続いて、最大80℃、好ましくは最大75℃の温度を使用する熱処理に供される。この熱処理の温度と持続時間との組み合わせは、好ましくは、液体BLG単離物を提供するように選択される。
【0489】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、細菌濾過に供され、続いて、少なくとも150℃の温度を使用して、最大0.2秒、好ましくは最大0.1秒の期間にわたって熱処理に供される。この熱処理の温度と持続時間との組み合わせは、好ましくは、液体BLG単離物を提供するように選択される。
【0490】
この方法の工程c)は、好ましくは、噴霧乾燥又は凍結乾燥を含む。噴霧乾燥が特に好ましい。
【0491】
本発明者らは、液体BLG単離物を、かなりの量のBLGをアンフォールディング又は変性させる熱処理レジームに曝露するのを回避することが特に有利であることを見出した。そのため、噴霧前に液体BLG単離物の予熱を使用する場合は、熱負荷を注意深く制御することが好ましい。
【0492】
本発明の幾つかの実施形態では、液体BLG単離物は、噴霧装置(例えば、ノズル又はアトマイザー)の出口に到達するとき、最大70℃、好ましくは最大60℃、より好ましくは最大50℃の温度を有する。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、スプレー装置の出口に到達するとき、最大40℃、好ましくは最大30℃、より好ましくは最大20℃、好ましくは最大10℃、最も好ましくは最大5℃の温度を有する。
【0493】
噴霧乾燥機の噴霧装置は、乾燥される溶液又は懸濁液を、噴霧乾燥機の乾燥チャンバーに入る液滴に変換する装置、例えば、ノズル又はアトマイザーである。
【0494】
本発明の幾つかの実施形態では、液体BLG単離物は、噴霧装置の出口に到達するとき、0~60℃の範囲、好ましくは2~40℃の範囲、より好ましくは、スプレー装置の出口に到達するとき4~35℃の範囲、最も好ましくは5~10℃の範囲の温度を有することが特に好ましい。
【0495】
噴霧乾燥機の気体の入口温度は、好ましくは140~220℃の範囲、より好ましくは160~200℃の範囲、さらにより好ましくは170~190℃の範囲であり、例えば、好ましくはおよそ180℃等である。噴霧乾燥機からの気体の出口温度は、好ましくは50~95℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲、さらにより好ましくは80~88℃の範囲であり、例えば、好ましくはおよそ85℃等である。経験則として、噴霧乾燥に供される固体は、気体出口温度よりも10~15℃低い温度に加熱されると言われている。
【0496】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、噴霧乾燥機の出口温度は、好ましくは50~85℃の範囲、より好ましくは60~80℃の範囲、さらにより好ましくは65~75℃の範囲であり、例えば、好ましくはおよそ70℃である。
【0497】
本方法の利点は、乾燥される液体BLG単離物が、乾燥工程の前に非常に高い固形分を有し得るため、水を除去する必要が少なく、乾燥操作で消費されるエネルギーがより小さいことである。
【0498】
本発明者らは、BLGのアンフォールディングの程度が低いほど、噴霧乾燥の前に処理できるBLGの濃度が高くなることを見出した。
【0499】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、少なくとも10%重量/重量の固形分を有する。好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも20%重量/重量の固形分を有する。より好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも25%重量/重量の固形分を有する。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも30%重量/重量の固形分を有する。最も好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも35%重量/重量の固形分を有する。
【0500】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、10~60%重量/重量の範囲の固形分を有する。好ましくは、液体BLG単離物は、15~50%重量/重量の範囲の固形分を有する。より好ましくは、液体BLG単離物は、20~45%重量/重量の範囲の固形分を有する。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、25~40%重量/重量の範囲、例えばおよそ35%重量/重量等の固形分を有する。
【0501】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、少なくとも10%重量/重量の総量のタンパク質を含む。好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも20%重量/重量の総量のタンパク質を含む。より好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも25%重量/重量の総量のタンパク質を含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも30%重量/重量の総量のタンパク質を含む。最も好ましくは、液体BLG単離物は、少なくとも35%重量/重量の総量のタンパク質を含む。
【0502】
本発明の他の好ましい実施形態では、液体BLG単離物は、10~50%重量/重量の範囲のタンパク質の総量を含む。好ましくは、液体BLG単離物は、15~45%重量/重量の範囲の総量のタンパク質を含む。より好ましくは、液体BLG単離物は、20~40%重量/重量の範囲の総量のタンパク質を含む。さらにより好ましくは、液体BLG単離物は、25~38%重量/重量の範囲、例えばおよそ35%重量/重量等のタンパク質の総量を含む。
【0503】
本発明者らは、タンパク質含有量が、液体BLG単離物を粉末に変換するためのエネルギー消費を低減し、それが、所与の容量を有する乾燥ユニットから得られるBLG収量を増加させることを見出した。
【0504】
本発明の方法は、好ましくは、非凝集性BLG又はホエイタンパク質溶液の他のホエイタンパク質のどちらの栄養価も損なわない穏やかな温度を使用して操作される。
【0505】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、非凝集性BLGは、上記方法中に90℃を超える温度にさらされない。好ましくは、非凝集性BLGは、上記方法中に80℃を超える温度にさらされない。さらにより好ましくは、非凝集性BLGは、上記方法中に75℃を超える温度にさらされない。噴霧乾燥はしばしば150℃を超える温度を使用するが、短い曝露時間及び同時の水の蒸発は、噴霧乾燥されたタンパク質が40~70℃を超える温度を経験しないことを意味することに留意されたい。
【0506】
本発明者らは、乾燥工程中の長時間の加熱が、未変性の形態であるBLGの量を減少させるという徴候を見てきた。本発明の幾つかの好ましい実施形態では、乾燥工程中の熱曝露は、最大5%、好ましくは最大4%、より好ましくは最大2%、さらに好ましくは最大0.5%、さらにより好ましくは最大0.1%のBLGの変性度を提供するために十分に低く保たれる。最も好ましくは、乾燥工程は、BLGの検出可能な変性を全くもたらさない。
【0507】
乾燥工程はさらに、例えば、噴霧乾燥装置に統合されているか、噴霧乾燥後に実行される別個のユニット操作として、流動床乾燥を含み得る。
【0508】
噴霧乾燥と流体床乾燥との組み合わせにより、乾燥する液滴が噴霧乾燥チャンバーを移動する間に除去される水の量を減らすことができ、代わりに流体床乾燥によって湿った粉末から残留水を除去する。この溶液は、噴霧乾燥のみによる乾燥よりも乾燥に必要なエネルギーが少なく、さらに、例えば、インスタント化及び/又は凝集によって、粉末を修飾することを可能にする。インスタント化は、好ましくは、レシチン又は別の有用な湿潤剤を粉末の表面に適用することによって行われる。インスタント化が適用される場合、インスタント化剤、例えば、食用油に溶解したレシチンは、典型的には、最終粉末の総重量に対して0.5~2%重量/重量の範囲、好ましくは最終粉末全体に対して1.0~1.5%重量/重量の範囲で添加される。
【0509】
この方法はさらに、好ましくは、BLG単離粉末を包装する工程を含む。本明細書に記載のBLG単離粉末を含む容器、好ましくは密封された容器を含む、包装されたBLG単離粉末製品。
【0510】
本発明の幾つかの実施形態では、BLG単離粉末は、容器内に密閉され、任意に不活性ガスと共に包装される。
【0511】
BLG単離粉末を保管するために、様々な容器を使用できる。好ましい容器は、例えば、バッグ、バレル、ポーチ、ボックス、缶、及び小袋である。
【0512】
本発明の特に好ましい実施形態は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む乾燥BLG単離粉末を生成する方法に関し、該方法は、以下:
a)i)2~4.9の範囲のpH
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
iii)5.0~6.0の範囲のpH、
を有する液体BLG単離物を提供する工程であって、当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む、工程、
b)任意に、液体BLG単離物を物理的微生物減少に供する工程、
c)液体BLG単離物を、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる工程、を含み、
工程a)の液体BLG単離物の提供が、以下:
-次の工程、
1)非凝集性BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有する、工程
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は5)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄する工程、並びに
5)任意に、BLG結晶、例えば工程3)又は4)で得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含むプロセスによってBLG濃縮組成物を調製すること、並びに
-BLG濃縮組成物を、少なくともBLG結晶を溶解するように処理し、それによって液体BLG単離物を得ること、を含む。
【0513】
上記の実施形態では、BLG濃縮組成物は、工程3)から分離されたBLG結晶を含み、これらは、その後、適切なpH調整によって、或いは導電率を増加させ、及び/又は温度を上昇させることによって溶解される。
【0514】
本発明の特に好ましい実施形態は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む乾燥BLG単離粉末を生成する方法に関し、該方法は、以下:
a)2.5~4.9、好ましくは2.5~4.0、さらに好ましくは3.0~3.9の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む、工程、
b)任意に、液体BLG単離物を物理的微生物減少に供する工程、
c)液体BLG単離物を、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる工程、を含み、
工程a)の液体BLG単離物の提供が、以下:
-次の工程、
1)非凝集性BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有する、工程
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は5)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄する工程、並びに
5)任意に、BLG結晶、例えば工程3)又は4)で得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含むプロセスによってBLG濃縮組成物を調製すること、並びに
-少なくとも、BLG濃縮組成物のpHを2.5~4.9、好ましくは2.5~4.0、さらにより好ましくは3.0~3.9の範囲のpHに調製すること、を含む。
【0515】
本発明の別の特に好ましい実施形態は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む乾燥BLG単離粉末を生成する方法に関し、該方法は、以下:
a)6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む、工程、
b)任意に、液体BLG単離物を物理的微生物減少に供する工程、
c)液体BLG単離物を、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる工程、を含み、
工程a)の液体BLG単離物の提供が、以下:
-次の工程、
1)非凝集性BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有する、工程
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は5)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄する工程、並びに
5)任意に、BLG結晶、例えば工程3)又は4)で得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含むプロセスによってBLG濃縮組成物を調製すること、並びに
-少なくとも、BLG濃縮組成物のpHを6.1~8.5の範囲、好ましくは6.3~8.0の範囲、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲のpHに調製すること、を含む。
【0516】
本発明の代替であるが、これもまた好ましい実施形態は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む乾燥BLG単離粉末を生成する方法に関し、該方法は、以下:
a)5.0~8.5の範囲、好ましくは6.1~8.5、より好ましくは6.3~8.0の範囲、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを有する液体BLG単離物を提供する工程であって、
当該液体BLG単離物が、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量、好ましくは少なくとも90%重量/重量、さらにより好ましくは総タンパク質に対して少なくとも94%重量/重量の量のBLGを含む、工程、
b)任意に、液体BLG単離物を物理的微生物減少に供する工程、
c)液体BLG単離物を、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる工程、を含み、
工程a)の液体BLG単離物の提供が、以下の順序で、
-次の工程、
1)非凝集性BLG及び少なくとも1つの追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供する工程であって、当該ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、5~6の範囲のpHを有する、工程
2)過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化する工程、
3)残りのホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離する工程、
4)任意に、BLG結晶、例えば、工程3)又は5)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄する工程、並びに
5)任意に、BLG結晶、例えば工程3)又は4)で得られたBLG結晶を再結晶化する工程、を含むプロセスによってBLG濃縮組成物を調製すること、並びに
-BLG濃縮組成物のpHを、2.5~4.9、好ましくは2.5~4.0、さらにより好ましくは3.0~3.9の範囲のpHに調整する工程、
-少なくとも、好ましくは70~82℃の範囲の温度、さらにより好ましくは70~80℃の範囲の温度を使用する低温殺菌を含み、その間、pHが2.5~4.9の範囲、好ましくは2.5~4.0、さらにより好ましくは3.0~3.9の範囲である、物理的微生物減少、
-5.0~8.5の範囲、好ましくは6.1~8.5、より好ましくは6.3~8.0の範囲、さらにより好ましくは6.5~7.5の範囲のpHへのpH調整、
-任意に脱塩、を含む。
【0517】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法は、バッチプロセスとして実施される。或いは、時には好ましくは、この方法は、セミバッチプロセスとして実施され得る。他の好ましい実施形態では、この方法は、連続プロセスとして実施される。
【0518】
さらに本発明の一態様は、本明細書に記載の液体BLG単離物に関する。液体BLG単離物は、噴霧乾燥されたBLG単離粉末を得るために特に有用であり、さらに、液体又は非液体食物製品の製造における液体原料として使用され得る。或いは、しかしまた好ましいことに、液体BLG単離物は、それ自体が飲料として使用され得る。
【0519】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、本発明のBLG単離粉末は、本明細書に記載の方法によって得ることができる。
【0520】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、本発明の液体BLG単離物は、乾燥工程が省略されることを除いて、本明細書に記載の方法によって得ることができる。
【0521】
本発明の一態様は、食物製品の製造のための原料として本明細書で定義されるBLG単離粉末又は液体BLG単離物の使用に関する。食物製品は、例えば、飲料又はインスタント飲料粉末である。
【0522】
BLG単離粉末又は液体BLG単離物の使用は、好ましくは、以下の効果の1つ又は2つ以上を提供する:
-乾いた口当たりのレベルの低下
-BLG単離粉末又は液体BLG単離物を含む得られた液体の透明性の改善
-粘度の低下
-熱処理飲料である食物製品のタンパク質濃度を高める可能性
-色の寄与が低い(本発明者らは、本発明のBLG単離物が、対応するWPI溶液よりも、例えばタンパク質飲料に対して提供する色が少ないことを観察した)。
【0523】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、BLG単離粉末の使用は、少なくとも10~36%重量/重量、より好ましくは少なくとも15~35%重量/重量、さらに好ましくは20~34%重量/重量、最も好ましくは25~33%重量/重量のタンパク質含有量を有する飲料を調製するための原料としてであり、ここで、BLG単離粉末は、飲料の総タンパク質の少なくとも90%重量/重量、より好ましくは少なくとも95%重量/重量、最も好ましくは飲料の全タンパク質に寄与する。
【0524】
本発明のBLG粉末が従来のWPIよりも粘度に寄与しないため、本発明のBLG粉末はさらに、高タンパク質飲料、又は高タンパク質飲料を調製するためのシェイク粉末に特に適しており、したがって、より飲用可能な飲料を提供する。
【0525】
食物製品は、例えば、2~4.7の範囲のpHを有し、さらに、
-乾いた口当たりのレベルの低下、
-透明性の向上、及び/又は
-タンパク質含有量の増加、の1つ又は2つ以上を有する飲料又はインスタント飲料粉末であってもよく、好ましくは、少なくとも3~45%重量/重量、より好ましくは11~40%重量/重量、さらにより好ましくは15~38%重量/重量、及び最も好ましくは20~36%重量/重量の量のタンパク質含有量を含む熱処理飲料であってもよい。
【0526】
本発明の1つの態様の文脈で説明された実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用されることに留意されたい。
【0527】
本出願で引用された全ての特許及び非特許の参照は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0528】
次に、本発明を以下の非限定的な例でさらに詳細に説明する。
【0529】
例
例1:分析の方法
例1.1:内因性トリプトファン蛍光によるタンパク質のネイティブ性の決定
トリプトファン(Trp)蛍光分光法は、タンパク質のフォールディング及びアンフォールディングを監視するためのよく知られたツールである。ネイティブタンパク質内に埋め込まれたTrp残基は、典型的には、折りたたまれていないタンパク質等の溶媒に曝露される位置に存在する場合よりも、330nm付近で最も高い蛍光発光を示す。折りたたまれていないタンパク質では、Trp蛍光発光の波長は典型的には、より高い波長へとシフトし、350nm付近で測定されることがよくある。本発明者らは、ここで、この遷移を利用して、330nm及び350nmでの蛍光発光の比率を計算し、加熱温度の影響を調査することにより、熱的に誘発されたアンフォールディングを監視する。
【0530】
分析は以下の工程を含む:
・飲料組成物をMQ水で0.6mg/mLに希釈した。
・300μlのサンプルを、気泡を避けて白色96ウェルプレートに移すか、又は3mlを10mmの石英キュベットに移した。
・310~400nmのトリプトファン蛍光発光強度を、5nmスリットを使用して295で励起することにより上部から記録した。
・サンプルを、プレートリーダーアクセサリ(G9810A)又はシングルキュベットホルダーを備えたCary Eclipse蛍光分光光度計を使用して22℃で測定した。
・発光強度比を、330nmで測定された蛍光発光強度を350nmでの発光強度で割ること、すなわちR=I330/I350によって計算し、タンパク質のネイティブ率(nativity)の尺度として使用した。
o少なくとも1.11のRは、優勢なネイティブBLG立体構造を表し、
o1.11未満のRは、少なくとも部分的なアンフォールディング及び凝集を報告する。
【0531】
例1.2:PH3.9での熱安定性
pH3.9での熱安定性:
pH3.9での熱安定性は、pH3.9での長時間の低温殺菌時にタンパク質組成物が透明な状態を維持する能力の尺度である。
【0532】
pH3.9での熱安定性は、pH3.9の水溶液を形成し、試験する粉末又は液体のサンプルを水と混合することにより6.0%重量/重量タンパク質を含め(又は、希薄な液体の場合、代替的には、低温蒸発によって濃縮する)、最小限の0.1M NaOH又は0.1M HClでpHを3.9に調整することによって決定される。
【0533】
pHを調整した混合物を30分間静置した後、25mLの混合物を30mLの薄壁ガラス試験管に移す。75.0℃の水浴に浸漬することで300秒間、75.0℃に加熱する。加熱後直ちにガラス試験管を氷浴に移して1~5℃に冷却し、熱処理されたサンプルの濁度を、例1.7に従って測定する。
【0534】
例1.3:ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性度の決定
変性ホエイタンパク質は、pH4.6未満又はpH4.6超のpH値よりもpH4.6での溶解度が低いことが知られているため、ホエイタンパク質組成物の変性度は、溶液中のタンパク質が安定しているpHでのタンパク質の総量に対するpH4.6での可溶性タンパク質の量を測定することによって決定される。
【0535】
より具体的には、ホエイタンパク質の場合、分析されるホエイタンパク質組成物(例えば、粉末又は水溶液)は、以下に変換される:
-総タンパク質5.0%(重量/重量)を含み、pHが7.0又は3.0の第1の水溶液、及び
-総タンパク質5.0%(重量/重量)を含み、pHが4.6の第2の水溶液。
【0536】
pH調整を、3%(重量/重量)NaOH(水溶液)又は5%(重量/重量)HCl(水溶液)を使用して行う。
【0537】
第1の水溶液の総タンパク質含有量(PpH7.0又は3.0)を、例1.5に従って決定する。
【0538】
第2の水溶液を室温で2時間保管し、続いて3000gで5分間遠心分離する。上清のサンプルを回収し、例1.5に従って分析して、上清中のタンパク質濃度(SpH4.6)を得る。
【0539】
ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性度、Dを次のとおり計算する:
D=((PpH7.0又は3.0-SpH4.6)/PpH7.0又は3.0)*100%
【0540】
例1.4逆相UPLC分析を使用したタンパク質変性の決定(PH4.6酸沈殿を伴う)。
BLGサンプル(非加熱参照及び加熱BLG飲料組成物等)をMQ水で2%に希釈した。5mlのタンパク質溶液、10mlのMilli-Q、4mlの10%酢酸、及び6mlの1.0M NaOAcを混合し、20分間攪拌して、pH4.6付近で変性タンパク質を沈殿凝集させる。溶液を0.22μmフィルターで濾過し、凝集物及び非ネイティブタンパク質を除去する。
【0541】
全てのサンプルを、研磨水(polished water)を加えることによって同じ程度の希釈に供した。
【0542】
各サンプルについて、UPLCカラム(Protein BEH C4;300Å;1.7μm;150×2.1mm)を備えたUPLCシステムに同じ容量を充填し、214nmで検出した。
【0543】
サンプルを、次の条件を使用して流した:
バッファーA:Milli-Q水、0.1%重量/重量TFA
バッファーB:HPLCグレードのアセトニトリル、0.1%重量/重量TFA
流量:0.4ml/分
勾配:0~6.00分 24~45%B;6.00~6.50分 45~90%B;6.50~7.00分 90%B;7.00~7.50分 90~24%B、及び7.50~10.00分 24%B。
【0544】
タンパク質標準(Sigma L0130)に対するBLGピークの面積を使用して、サンプル中のネイティブBLGの濃度を決定した(5レベルの検量線)
【0545】
サンプルをさらに希釈し、線形範囲外の場合は再注入した。
【0546】
例1.5:総タンパク質の決定
サンプルの総タンパク質含有量(真のタンパク質)を、以下によって決定する:
1)ISO 8968-1/2|IDF 020-1/2-牛乳-窒素含有量の決定-第1/2部:ケルダール法を使用した窒素含有量の決定に準拠したサンプルの全窒素の窒素含有量の決定。
2)ISO 8968-4|IDF 020-4-乳-窒素含有量の決定-第4部:非タンパク質窒素含有量の決定に準拠したサンプルの非タンパク質窒素の決定。
3)タンパク質の総量を(m総窒素-m非タンパク質-窒素)*6.38として計算する。
【0547】
例1.6:非凝集性BLG、ALA、及びCMPの決定
非凝集性アルファ-ラクトアルブミン(ALA)、ベータ-ラクトグロブリン(BLG)、及びカゼイノマクロペプチド(CMP)の含有量を、それぞれ0.4ml/分のHPLC分析で分析した。25マイクロLの濾過サンプルを、溶離液(Milli-Q水465g、アセトニトリル417.3g及びトリフルオロ酢酸1ml)で平衡化したプレカラムPWxl(6mm×4cm、Tosohass、日本)を取り付けて、連続して接続された2つのTSKgel3000PWxl(7.8mm 30cm、Tosohass、日本)カラムに注入し、210nmのUV検出器を使用した。
【0548】
ネイティブアルファ-ラクトアルブミン(Cアルファ)、ベータ-ラクトグロブリン(Cベータ)、及びカゼイノマクロペプチド(CCMP)の含有量の定量的決定を、対応する標準タンパク質で得られたピーク面積をサンプルのピーク面積と比較することによって行った。
【0549】
追加のタンパク質(非BLGタンパク質)の総量を、総タンパク質の量(例1.5に従って決定)からBLGの量を差し引くことによって決定した。
【0550】
例1.7:濁度の測定
濁度は、空気中の煙と同様に、一般に肉眼では見えない多数の粒子によって引き起こされる流体の曇り又はもやである。
【0551】
濁度は比濁濁度単位(NTU)で測定される。
【0552】
20mlの飲料/サンプルをNTUガラスに添加し、Turbiquant(登録商標) 3000 IR濁度計に入れた。NTU値を安定化後に測定し、2回繰り返した。
【0553】
例1.8:粘度の決定
液体の粘度は、GilsonのViscoman粘度計又は同等の粘度計を使用して測定され、300s-1の剪断速度で報告される。特に明記されていない限り、サンプルは測定前に15℃に平衡化され、その温度で測定される。
【0554】
特に明記しない限り、粘度は300s-1の剪断速度における単位センチポアズ(cP)で表される。測定されたcP値が高いほど、粘度が高くなる。
【0555】
例1.9:色の決定
色彩色差計(Konica Minolta、CR-400)を用いて色を測定した。15gのサンプルを小さなペトリ皿(55×14.2mm、VWRカタログ番号391-0895)に追加して、気泡の形成を回避した。サンプルのタンパク質含有量は、6.0重量/重量%タンパク質以下に標準化した。
【0556】
クロマメーターを白色の較正プレート(No.19033177)に較正した。光源をD65に設定し、オブザーバーを2度に設定した。色(CIELAB色空間、a*値、b*値、L*値)を、ペトリ皿の様々な場所での3つの個別の読み取り値の平均として、懸濁液を覆う蓋をして測定した。
【0557】
脱塩水基準の値は次のとおりである。
L*39.97±0.3
a*0.00±0.06
b*-0.22±0.09
【0558】
測定値を、脱塩水測定値に基づいてデルタ/差の値に変換した。
デルタL*=L6.0重量/重量%タンパク質に標準化したサンプル*-L脱塩水*、室温で測定。
デルタa*=a6.0重量/重量%タンパク質に標準化したサンプル*-a脱塩水*、室温で測定。
デルタb*=b6.0重量/重量%タンパク質に標準化したサンプル*-b脱塩水*、室温で測定。
【0559】
サンプルは6.0重量/重量%タンパク質以下に標準化されている。
【0560】
L*a*b*色空間(CIELAB空間とも称される)は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって定義された均一色空間の1つであり、明度及び色相を定量的に報告するために使用された(ISO 11664-4:2008(E)/CIE S 014-4/E:2007)。
【0561】
この空間では、L*は明度(0~100の値)を示し、L*=0で最も暗い黒、L*=100で最も明るい白を示す。
【0562】
カラーチャネルa*及びb*は、a*=0及びb*=0での真のニュートラルグレー値を表す。a*軸は緑と赤の成分を表し、緑は負の方向、赤は正の方向である。b*軸は青と黄色の成分を表し、負の方向が青、正の方向が黄色である。
【0563】
例1.10飲料安定性試験/不溶性タンパク質物質
3000gで5分間遠心分離した際に、加熱されたサンプル中の総タンパク質の15%未満が沈殿した場合、ホエイタンパク質飲料の組成は安定していると見なされた:
・およそ20gのサンプルを遠心管に加え、3000gで5分間遠心分離した。
・遠心分離前のタンパク質及び遠心分離後の上清のケルダール分析を使用して、タンパク質の回収率を定量した。例1.5を参照されたい。
【0564】
【0565】
このパラメーターは、不溶性タンパク質物質のレベルと称されることもあり、液体サンプルと粉末サンプルの両方の分析に使用できる。サンプルが粉末の場合、10gの粉末を90gの脱塩水に懸濁し、22℃で1時間穏やかに攪拌しながら水和させる。遠心管に対しておよそ20gのサンプル(例えば、液体サンプル又は懸濁粉末サンプル)を3000gで5分間遠心分離する。遠心分離前のタンパク質(Ptotal)及び遠心分離後の上清(P3000×g)のケルダール分析を使用して、例1.5に従ってタンパク質の回収率を定量した。
【0566】
【0567】
例1.11:官能評価
熱処理された飲料調製物は、記述的な官能評価を受けた。飲料調製物は、プレート熱交換器を使用して加熱に供した。
1容量のサンプルを1容量の水と混合し、非加熱ホエイタンパク質単離物と比較し、乳酸及びクエン酸も最終試飲セッションの前に属性リストを作成するために使用する。
【表1】
【0568】
クラッカー、白茶、メロン、及び水を使用して、各サンプルの間に参加者の口を浄化した。
【0569】
周囲温度(20~25℃)の試験サンプル15mLを小さなカップで提供した。
【0570】
試験サンプルは、無作為化された順序で3つの異なるブロックで3回にわたって10名の個人にそれぞれ提供された。
【0571】
属性(上記の表を参照)を、0=低強度、15=高強度で15cmスケールで評価した。
【0572】
統計分析は、「Panelcheck」ソフトウェアで、複数の反復に対して3元配置ANOVA検定を使用して実施した。サンプルを固定し、パネルを無作為に設定した。
【0573】
最小の有意差値(文字に関連付けられた群のペアワイズ比較)を意味するボンフェローニ補正を使用して、サンプル間の有意差を評価した。
【0574】
例1.12:イメージングによる透明度の決定
飲料調製物の写真を、「lorem ipsum」のテキストが書かれた紙片に触れている濁度NTU測定バイアルにサンプルを入れることによって行った。スマートフォンを使用してバイアルを撮影し、本発明者らは、バイアルを通してテキストがはっきりと観察できるかどうかを評価した。
【0575】
例1.13:灰分含有量の決定
食物製品の灰分を、NMKL 173:2005「食品中の灰分重量計測式決定」に従って測定する。
【0576】
例1.14:導電率の決定
水溶液の「導電率」(「比導電率」と称されることもある)は、溶液が電気を伝導する能力の尺度である。導電率は、例えば、2つの電極間の溶液のAC抵抗を測定することによって決定され、結果は典型的には、ミリジーメンス/cm(mS/cm)の単位で示される。導電率は、例えば、EPA(米国環境保護庁)の方法番号120.1に従って測定することができる。
【0577】
本明細書に記載されている導電率の値は、別段の指定がない限り、25℃に正規化されている。
【0578】
導電率は、導電率計(テトラコン325電極を備えたWTW Cond 3210)で測定される。
【0579】
システムは、使用前にマニュアルに記載されているように較正されている。電極は、局所的な希釈を避けるために、測定が行われるのと同じタイプの媒質でよくすすいでおく。測定が行われる領域が完全に水没するように、電極を媒質に下げる。次いで、電極を攪拌して、電極に閉じ込められた空気を全て除去する。次いで、電極を、安定した値が表示から取得され、記録されるまで静止状態に保つ。
【0580】
例1.15:溶液の全固形分の決定
溶液の全固形分は、NMKL 110第2版、2005(全固形分(水)-乳及び乳製品の重量分析)に従って決定することができる。NMKLは、「ヨーロッパ標準分析法と食品分析に関する北欧委員会(Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler)」の略語である。
【0581】
溶液の含水量は、100%から全固形分の相対量(%重量/重量)を引いたものとして計算できる。
【0582】
例1.16:PHの決定
全てのpH値は、pHガラス電極を使用して測定され、25℃に正規化されている。
【0583】
pHガラス電極(温度補償付き)は、使用前に注意深くすすぎ、使用前に較正する。
【0584】
サンプルが液体の場合、pHは25℃の溶液中で直接測定される。
【0585】
サンプルが粉末の場合、10グラムの粉末を90mlの脱塩水に室温で激しく攪拌しながら溶解する。次いで、溶液のpHを25℃で測定する。
【0586】
例1.17:緩み密度及びかさ密度の決定
乾燥粉末の密度は、特定の条件下で特別なStampf体積計(メスシリンダー)を使用して分析される粉末の重量と体積の関係として定義される。密度は典型的には、g/mL又はkg/Lで表される。
【0587】
この方法では、乾燥粉末のサンプルをメスシリンダーに詰め込む。指定された回数のタッピングの後、製品の体積を読み取り、密度を計算する。
【0588】
この方法により、以下の3種類の密度を定義ですることができる:
・充填密度、これは、指定されたメスシリンダーに移された後の粉末の体積で割った質量である。
・緩み密度、この規格で指定された条件に従って、100回のタッピング後の粉末の体積で割った質量である。
・かさ密度、この規格で指定された条件に従って、625回のタッピング後の粉末の体積で割った質量である。
【0589】
この方法では、0~250mlに目盛りを付けた、250mlのメスシリンダー、重量190±15g(J.Engelsmann A.G.67059 Ludwigshafen/Rh)の特殊なメスシリンダー、及び例えば、J.エンゲルスマンA.G.のStampf体積計を使用する。
【0590】
乾燥製品の緩み密度及びかさ密度を、以下の手順で決定する。
【0591】
前処理:
測定するサンプルを室温で保管する。
【0592】
次いで、容器を繰り返し回転及び転倒させてサンプルを完全に混合する(粒子の粉砕を避ける)。容器は2/3を超えて満たされていない。
【0593】
手順:
100.0±0.1グラムの粉末を量り、メスシリンダーに移す。容量V0をmlで読み取る。
【0594】
100gの粉末がシリンダーに収まらない場合は、量を50又は25グラムに減らす必要がある。
【0595】
メスシリンダーをStampf体積計に固定し、これを100回をタップする。スパチュラで表面を平らにし、容量V100をmlで読み取る。
【0596】
タブの数を625(100タップを含む)に変更する。軽くたたいた後、表面を水平にし、容量V625をmlで読み取る。
【0597】
密度の計算:
次の式に従って、g/mLで表される緩み密度及びかさ密度を計算する:
かさ密度=M/V
式中、Mは計量されたサンプルをグラムで示し、Vは625回のタッピング後の容量をmlで示す。
【0598】
例1.18:粉末の含水量の決定
食物製品の含水量は、ISO 5537:2004(粉乳-含水量の測定(基準法))に従って測定される。NMKLは、「ヨーロッパ標準分析法と食品分析に関する北欧委員会(Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler)」の略語である。
【0599】
例1.19:カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リンの量の測定(ICP-MS法)
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びリンの総量は、サンプルを最初にマイクロ波分解を使用して分解し、次いでミネラル(複数の場合がある)の総量がICP装置を使用して決定される手順を使用して決定される。
【0600】
装置:
マイクロ波はAnton Paar製であり、ICPはPerkinElmer Inc製のOptima 2000DVである。
【0601】
材料:
1M HNO3
2%HNO3中のイットリウム
5%HNO3中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びリンの適切な標準
【0602】
前処理:
一定量の粉末を量り取り、その粉末をマイクロ波分解チューブに移す。5mlの1M HNO3を添加する。電子レンジの指示に従って、電子レンジでサンプルを分解する。分解されたチューブをドラフトチャンバーに入れ、蓋を外して揮発性のヒュームを蒸発させる。
【0603】
測定手順:
既知量のMilli-Q水を使用して、前処理したサンプルをDigiTUBEに移す。2%HNO3中のイットリウムの溶液を分解チューブに添加し(50mlの希釈サンプルあたり約0.25ml)、Milli-Q水を使用して既知の容量に希釈する。製造元が説明する手順を使用して、ICPでサンプルを分析する。
【0604】
ブラインドサンプルは、Milli-Q水を使用して、10mlの1M HNO3及び0.5mLのイットリウム2%HNO3溶液の混合物を最終容量100mLに希釈することによって調製される。
【0605】
予想されるサンプル濃度を挟む濃度を持つ少なくとも3つの標準サンプルを調製する。
【0606】
例1.20:フロシン値の決定:
フロシン値は、“Maillard Reaction Evaluation by Furosine Determination During Infant Cereal Processing”,Guerra-Hernandez et al,Journal of Cereal Science 29(1999)171-176に記載されるとおりに決定され、タンパク質の総量は例1.5に従って決定される。フロシン値は、タンパク質100gあたりmg単位のフロシンで報告される。
【0607】
例1.21:液体中のBLGの結晶化度の決定
以下の方法を使用して、pHが5~6の範囲の液体中のBLGの結晶化度を決定する。
a)問題の液体のサンプル10mLを、孔径0.45ミクロンのCAメンブレンを備えたMaxi-Spinフィルターに移す。
b)遠心分離機を2℃に保って、直ちにフィルターを1500gで5分間回転させる。
c)スピンフィルターの被保持物側に2mlの冷Milli-Q水(2℃)を加え、直ちに、遠心分離機を2℃に冷却したまま、フィルターを1500gで5分間スピンし、透過液(透過液A)を収集して、容量を測定し、例1.6に概説されている方法を使用してHPLCを介してBLG濃度を決定する。
d)フィルターの被保持物側に4mLの2M NaClを加え、すばやく攪拌し、混合物を25℃で15分間放置する。
e)直ちにフィルターを1500gで5分間回転させ、透過液を収集する(透過液B)
f)例1.6に概説されている方法を使用して、透過液A及び透過液BのBLGの総重量を決定し、その結果を重量パーセントではなくBLGの総重量に変換する。透過液A中のBLGの重量はm透過物Aと称され、透過液BのBLGの重量はm透過物Bと称される。
g)BLGに関する液体の結晶化度は、次のように決定される:
結晶化度=m透過物B/(m透過物A+m透過物B)*100%
【0608】
例1.22:乾燥粉末中のBLGの結晶化度の決定
この方法は、乾燥粉末中のBLGの結晶化度を決定するために使用される。
a)5.0グラムの粉末サンプルを20.0グラムの冷Milli-Q水(2℃)と混合し、2℃で5分間放置する。
b)問題の液体のサンプルを0.45ミクロンのCAメンブレンを備えたMaxi-Spinフィルターフィルターに移す。
c)遠心分離機を2℃に保って、直ちに、フィルターを1500gで5分間回転させる。
d)スピンフィルターの被保持物側に2mLの冷Milli-Q水(2℃)を添加し、直ちにフィルターを1500gで5分間回転させ、透過液(透過液A)を収集し、容量を測定してBLGを決定する。例1.6に概説されている方法を使用してHPLCを介して濃縮し、結果を重量パーセントではなくBLGの総重量に変換する。透過液AのBLGの重量は、m
透過液Aと称される。
f)次いで、粉末中のBLGの結晶化度を、次の式を使用して計算する:
【数3】
式中、m
BLG合計は、工程a)の粉末サンプル中のBLGの総量である。
【0609】
粉末サンプルのBLGの総量が不明な場合は、別の5gの粉末サンプル(同じ粉末供給源に由来する)を20.0グラムのMilli-Q水に懸濁し、NaOH水溶液を添加してpHを7.0に調整し、混合物を攪拌しながら25℃で1時間放置し、最後に例1.6を使用して粉末サンプルのBLGの総量を決定することにより、これを決定してもよい。
【0610】
例1.23:UF透過導電率の決定
15mLのサンプルを3kDaカットオフ(3000NMWL)のAmicon Ultra-15遠心フィルターユニットに移し、4000gで20~30分間、又は導電率を測定するのに十分な容量のUF透過液がフィルターユニットの下部に蓄積するまで遠心分離する。遠心分離直後に導電率を測定する。サンプルの取り扱い及び遠心分離は、サンプルの供給源の温度で行われる。
【0611】
例1.24:粉末中の乾燥BLG結晶の検出
粉末中の乾燥BLG結晶の存在は、次の方法でされ得る:
【0612】
分析する粉末のサンプルを再懸濁し、4℃の温度の脱塩水に2部の水及び1部の粉末の重量比で穏やかに混合し、4℃で1時間再水和させる。
【0613】
再水和されたサンプルを、結晶の存在を識別するために顕微鏡検査によって調べ、好ましくは複屈折を検出するために平面偏光を使用する。
【0614】
結晶様物質を分離し、結晶構造の存在を確認するためX線結晶構造解析に供し、また、好ましくは結晶格子(空間群及び単位格子の寸法)がBLG結晶の格子に対応していることも確認する。
【0615】
分離された結晶様物質の化学組成を分析して、その固体が主にBLGで構成されていることを確認する。
【0616】
例1.25:乳糖の総量の決定
乳糖の総量は、ISO 5765-2:2002(IDF 79-2:2002)「粉乳、乾燥アイスミックス、及びプロセスチーズ-乳糖含有量の測定-第2部:乳糖のガラクトース部分を利用した酵素法」に従って測定される。
【0617】
例1.26:炭水化物の総量の決定:
炭水化物の量は、Sigma Aldrich Total Carbohydrate Assay Kit(Cat MAK104-1KT)を使用して決定され、このキットでは、炭水化物が加水分解され、フルフラール及びヒドロキシフルフラールに変換されて、これらが490nmで分光光度的にモニターされるクロマゲンに変換される。
【0618】
例1.27:脂質の総量の決定
脂質の量は、ISO 1211:2010(脂肪含有量の決定-Rose-Gottlieb重量分析法)に従って決定される。
【0619】
例1.28:ブリックスの決定
ブリックス測定を、研磨水(逆浸透によって濾過された水で最大0.05mS/cmの導電率が得られる)に対して較正されたPAL-αデジタル手持ち屈折計(Atago)を使用して行った。
【0620】
およそ500μlのサンプルを装置のプリズム面に移し、測定を開始した。測定値を読み取り、記録した。
【0621】
ホエイタンパク質溶液のブリックスは、全固形分(TS)の含有量に比例し、TS(%重量/重量)はおよそブリックス*0.85である。
【0622】
ブリックスは、ブリックス(Brix)度又はBrixと称されることがある。
【0623】
例1.29ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼの測定
ラクトフェリンの濃度は、Soyeurt 2012で概説されているELISAイムノアッセイによって決定される(Soyeurt et al;Mid-infrared prediction of lactoferrin content in bovine milk:potential indicator of mastitis;Animal(2012),6:11,pp1830-1838)。
【0624】
ラクトペルオキシダーゼの濃度は、市販のウシラクトペルオキシダーゼキットを使用して決定される。
【0625】
例1.30:コロニー形成単位の数の決定
サンプル1グラムあたりのコロニー形成単位の数の決定は、ISO 4833-1:2013(E):食物製品及び動物の飼料原料の微生物学-微生物の列挙のための水平法-30℃でのコロニーカウント手法に従って実行される。
【0626】
例1.31:BLG、ALA、及びCMPの総量の決定
この手順は、ALA、BLG、CMP等のタンパク質、及び任意に、組成物中の他のタンパク質種を定量分析するための液体クロマトグラフィー(HPLC)法である。例1.6の方法とは反対に、本方法はまた、凝集物中に存在するタンパク質を測定し、したがって、問題の組成物中のタンパク質種の総量の測定値を提供する。
【0627】
分離モードはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)であり、この方法ではサンプル溶媒及びHPLC移動相の両方として6MグアニジンHCIバッファーを使用する。メルカプトエタノールは、タンパク質又はタンパク質凝集物のジスルフィド(S-S)を還元して、折りたたまれていない単量体構造を作成する還元剤として使用される。
【0628】
サンプル前処理は、移動相に10mg相当のタンパク質を溶解することで容易に達成される。
【0629】
2つのTSK-GEL G3000SWXL(7.7mm×30.0cm)カラム(GPCカラム)及びガードカラムを直列に配置して、原材料中の主要なタンパク質の適切な分離を達成する。
【0630】
溶出された分析対象物を、UV検出(280nm)によって検出及び定量する。
【0631】
機器/材料:
1.手動シールワッシャー付きHPLCポンプ515(Waters)
2.HPLCポンプコントローラーモジュールII(Waters)
3.オートサンプラー717(Waters)
4.デュアル吸光度検出器2487(Waters)
5.定量的レポートを生成できるコンピュータソフトウェア(Empower 3、Waters)
6.分析カラム:2つのTSK-GEL G3000SWXL(7.8×300mm、P/N:08541)。
ガードカラム:TSK-Guard Column SWxL(6.0×40mm、P/N:08543)。
7.超音波浴(Branson 5200)
0.2μm酢酸セルロースメンブレンを備えた8.25mmシリンジフィルター(514-0060、VWR)
【0632】
手順:
移動相:
A.ストック緩衝液。
1.1000mlのビーカーに56.6gのNa2HPO4、3.5gのNaH2PO4、及び2.9gのEDTAを量り入れる。
800mlの水に溶かす。
2.pHを測定し、必要に応じてHCl(pHを下げる)又はNaOH(pHを上げる)で7.5±0.1に調整する。
3.1000mlのメスフラスコに移し、水で希釈して容量を調整する。
【0633】
B.6MグアニジンHCl移動相。
1.2000mLのビーカーに1146gのグアニジンHClを量り取り、200mlのストック緩衝液(A)を加える。
2.マグネチックスターラー(50℃)で混合しながら、この溶液を水で約1600mlに希釈する。
3.NaOHでpHを7.5±0.1に調整する。4.2000mlのメスフラスコに移し、水で希釈して容量を調整する。5.0.22μmメンブレンフィルターを備えた溶媒濾過装置を使用して濾過する。
【0634】
較正標準。
定量する各タンパク質の較正標準を、以下の方法で調製する:
1.約25mgのタンパク質参照標準を10mlに正確に(0.01mgまで)計量し、
メスフラスコに入れ、10mlの水に溶かす。
これは、タンパク質のタンパク質ストック標準液(S1)である。
2.200μlのS1を20mlメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは、低希釈標準溶液WS1である。
3.500μLのS1を10mlメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準溶液WS2である。
4.500μLのS1を5mlメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準溶液WS3である。
5.750μLのS1を5mlメスフラスコにピペットで入れ、移動相で希釈して容量を調整する。
これは標準ソリューションWS4である。
6.1.0mLのS1を5mLメスフラスコにピペットで入れ、移動相で容量まで希釈する。
これは、高希釈標準溶液WS5である。
7.目盛り付き使い捨てピペットを使用して、1.5mLのWS1~5を別々のバイアルに移す。
各バイアル及びキャップに10μLの2-メルカプトエタノールを加える。溶液を10秒間ボルテックスする。
標準液を周囲温度で約1時間置く。
8.0.22μmの酢酸セルロースシリンジフィルターを使用して標準液を濾過する。
【0635】
タンパク質の純度は、ケルダール(N×6.38)を使用して測定し、HPLCを使用して標準溶液WS5からの面積%を測定する。
タンパク質(mg)=「タンパク質標準重量」(mg)×P1×P2
P1=P%(ケルダール)
P2=タンパク質面積%(HPLC)
【0636】
サンプルの調製
1.元のサンプルのタンパク質25mgに相当する量を25mLメスフラスコに量り取る。
2.およそ20mLの移動相を加え、サンプルを約30分間溶解させる。
3.移動相を容量に加え、167μLの2-メルカプトエタノールを25mlのサンプル溶液に加える。
4.約30分間超音波処理し、その後、サンプルを周囲温度で約1時間半放置する。
5.溶液を混合し、0.22μlの酢酸セルロースシリンジフィルターを使用して濾過する。
【0637】
HPLCシステム/カラム
カラムの平衡化
1.GPCガードカラムと2つのGPC分析カラムとを直列に接続する。
新しいカラムは通常、リン酸塩緩衝液中で出荷される。
2.新しいカラムに30~60分間0.1mL/分から0.5mL/分で徐々に水を流す。
約1時間フラッシュを続ける。
3.流量を0.5mL/分から0.1mL/分に徐々に下げ、
リザーバーにおいて移動相に交換する。
4.圧力ショックを回避するために、ポンプの流量を30~60分間で0.1mL/分から0.5mL/分まで徐々に増やし、0.5mL/分のままにする。
5.10種類のサンプルを注入してカラムを飽和させ、ピークが溶出するのを待つ。
これは、カラムのコンディショニングに役立つ。
この工程は、次の注入の前に各注入が完了するのを待つ必要はなく、行われる。
6.移動相で少なくとも1時間平衡化する。
【0638】
結果の計算
定量されるタンパク質、例えばアルファ-ラクトアルブミン、ベータ-ラクトグロブリン、及びカゼイノマクロペプチドの含有量の定量的決定を、対応する標準タンパク質で得られたピーク面積をサンプルのピーク面積と比較することによって行った。結果は、特定のタンパク質/100gの元のサンプル、又は元のサンプルの重量に対する特定のタンパク質の重量パーセントとして報告される。
【0639】
例2:噴霧乾燥された酸性BLG単離粉末の製造
ホエイタンパク質フィード
標準的なチーズ製造プロセスからのスイートホエイに由来するラクトース枯渇UF保持液は1.2ミクロンのフィルターで濾過されており、BLG結晶化プロセスのフィードとして使用される前にSynder FRメンブレンにより脂肪が減少されていた。フィードの化学組成を表1に示す。本発明者らは、この例で言及されているBLG、ALA等の特定のタンパク質の全ての重量パーセントが、総タンパク質に対する非凝集性タンパク質の重量パーセントに関係していることを認識している。
【0640】
コンディショニング
スイートホエイフィードを、全固形分21%(TS)±5のフィード濃度まで、46ミルのスペーサー、フィード圧力1.5~3.0バールで、Koch HFK-328タイプのメンブレン(70m2メンブレン)を使用し、またダイアフィルトレーション媒質として研磨水(逆浸透によって濾過された水で、最大0.05mS/cmの導電率が得られる)を使用して、20℃の限外濾過セットアップ上でコンディショニングした。次いで、pHがおよそ5.5になるようにHClを加えることによってpHを調整した。保持液の導電率の低下が20分間にわたって0.1mS/cmを下回るまで、ダイアフィルトレーションを続けた次に、透過液フローが1.43L/時/m2を下回るまで、保持液を濃縮した。濃縮保持液の第1のサンプルを採取し、3000gで5分間遠心分離した。第1のサンプルの上清をBLG収量の測定に使用した。
【0641】
結晶化
濃縮された保持液を300Lの結晶化タンクに移し、そこで再水和され噴霧乾燥されたBLG結晶から作られた純粋なBLG結晶材料と共にシードした。続いて、シードされたホエイタンパク質溶液を、20℃からおよそ6℃まで、およそ10時間かけて冷却し、BLG結晶を形成して成長させた。
【0642】
冷却後、結晶を含むホエイタンパク質溶液のサンプル(第2のサンプル)を採取し、3000gで5分間の遠心分離によってBLG結晶を分離した。第2のサンプルに由来する上清及び結晶ペレットを以下に説明するようにHPLC分析に供した。結晶化の収率を、以下に概説するように計算し、57%と決定した。
【表2】
【0643】
HPLCを使用したBLG収率の決定:
第1及び第2のサンプルの上清を研磨水を加えることによって同程度に希釈し、希釈した上清を0.22μmのフィルターで濾過した。濾過及び希釈した上清ごとに、同じ容量をPhenomenexJupiter(登録商標)5μm C4 300Å、LCカラム250×4.6mm、Ea.を備えたHPLCシステムに充填し、214nmで検出した。
【0644】
サンプルを、以下の条件を使用して流した:
バッファーA:MilliQ水、0.1%重量/重量TFA
バッファーB:HPLCグレードのアセトニトリル、0.085%重量/重量TFA
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
勾配:0~30分 82~55%A及び18~45%B;30~32分 55~10%A及び45~90%B;32.5~37.5分 10%A及び90%B;38~48分 10~82%A及び90~18%B。
【0645】
データ処理:
両方の上清を同じ方法で処理したため、BLGピークの面積を直接比較して、相対収量を計算することができる。結晶にはBLGのみが含まれており、サンプルは全て同じ方法で処理されているため、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)の濃度、したがってALAの面積は全てのサンプルで同じはずである。したがって、結晶化前後のALAの面積は、相対収量を計算する際の補正係数(cf)として使用される。
【数4】
【0646】
【0647】
BLC結晶の酸溶解
結晶化タンクからの残りの材料を、デカンターを使用して、350g、2750RPM、64スペーサーにより150RPM差、及び75L/時のフィードフローで分離した後、供給物を研磨水と1:2で混合した。次いで、結晶を迅速に溶解させるためリン酸を加えてpHをおよそ3.0に下げる前に、デカンターからのBLG結晶/固相を研磨水と混合してより薄いスラリーにした。
【0648】
BLG結晶を溶解した後、純粋なBLGタンパク質液を、結晶化のためのフィードを調製するために使用したのと同じUF設定で15ブリックスに濃縮し、pHをおよそ3.8の最終pHに調整した。次いで、液体BLG単離物を75度に5分間加熱し、続いて10℃に冷却した。熱処理により、熱処理前の137.000CFU/gから熱処理後の1000CFU/g未満に微生物負荷が減少することがわかった。熱処理はタンパク質の変性を引き起こさず、固有トリプトファン蛍光発光比(330nm/350nm)は1.20と決定され、BLG分子のネイティブ立体構造を示している。
【0649】
BLGを、180℃の入口温度及び75℃の出口温度を有するパイロットプラント噴霧乾燥機で乾燥した。出口でサンプリングされた得られた粉末は、およそ4%重量/重量の含水量を有していた。粉末の化学組成を表2に示す。乾燥粉末のサンプルを溶解し、タンパク質変性度を1.5%と決定し、固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を1.20と測定した。
【表3】
【0650】
噴霧乾燥粉末のかさ密度(625タップ)は0.2~0.3g/cm3と推定された。
【0651】
結論:
上記のプロセスを使用することにより、本発明者らは、処理中にタンパク質の変性又はタンパク質のアンフォールディングを実質的に発生させることなく熱処理できる高純度のBLG生成物を製造することができた。熱処理は、タンパク質生成物に損傷を与えることなく、細菌レベルを大幅に低下させた。
【0652】
本発明者らは、噴霧乾燥の前にタンパク質含有量を増加させることにより、さらに高いかさ密度を得ることができるという徴候を見てきた。また、本発明者らは、噴霧乾燥に使用される入口及び/又は出口温度が低下した場合、さらに低い程度の変性が得られることを観察した。
【0653】
例3:噴霧乾燥したPH中性BLG単離粉末の製造
例2と同じプロトコル及び実験設定を使用する場合、表3に示されるラクトース還元ホエイタンパク質単離物をコンディションし、結晶化のためのフィードに使用した。結晶化の収率を68%と計算した。
【0654】
本発明者らは、この例で言及されているBLG及びALA等の特定のタンパク質の全ての重量パーセントが、総タンパク質に対する非凝集性タンパク質の重量パーセントに関係していることを認識している。
【表4】
【0655】
結晶化タンクからの残りの材料を、デカンター上で、350g、2750RPM、64スペーサーによる150RPM差、及び75L/時の供給流量で分離した後、供給物を研磨水と1:2で混合した。次いで、結晶を迅速に溶解させるため0.1M水酸化カリウムを加えて、pHをおよそ7に調整する前に、デカンターからのBLG結晶/固相を研磨水と混合してより薄いスラリーにした。
【0656】
結晶を溶解した後、純粋なBLGタンパク質液を、結晶化のためのホエイタンパク質溶液を調製するために使用したのと同じUF設定で15ブリックスに濃縮し、pHを7.0の最終pHに調整した。BLGを、180℃の入口温度及び75℃の出口温度を有するパイロットプラント噴霧乾燥機で乾燥した。出口でサンプリングして得られた粉末は、およそ4%重量/重量の含水量を有していた。粉末の組成を表4に示す。乾燥後、粉末の一部を脱塩水に溶解し、タンパク質変性度を9.0%と決定し、固有トリプトファン蛍光発光比(330nm/350nm)は1.16であった。
【表5】
【0657】
噴霧乾燥粉末のかさ密度(625タップ)は0.2~0.3g/cm3と推定された。
【0658】
結論:
上記のプロセスを使用することにより、本発明者らは、処理中のタンパク質の変性が最小限であるか又は全くない、pH中性で高純度のBLG生成物を製造することができる。本発明者らは、噴霧乾燥の前にタンパク質含有量を増加させることにより、さらに高いかさ密度を得ることができるという徴候を見てきた。また、本発明者らは、噴霧乾燥に使用される入口及び/又は出口温度が低下した場合、さらに低い程度の変性が得られることを観察した。噴霧乾燥の前にミネラル含量を減らすことにより、変性のレベルをさらに下げることができる。
【0659】
例4:噴霧乾燥したBLG単離粉末の濡れ性
例2及び例3に従って調製された酸性又はpH中性の噴霧乾燥BLG単離粉末の濡れ性を、通常の噴霧乾燥ホエイタンパク質単離物(WPI)の濡れ性と比較した。濡れ性は、粉末サンプル全体が濡れるまでの時間として測定された。0.5グラムの粉末を計り、直径5cmの円筒形容器内の100gの脱塩水(10℃)の表面に置いた。粉末を水面に置いてから粉末が溶解するか、水面を通過するまでの時間を測定した。結果を以下に示す。
【表6】
【0660】
結論:コーティングされていないBLG単離粉末(サンプル2、3)が標準のWPI(サンプル1)よりもはるかによく濡れたことは驚くべきことであった。これは、本発明のBLG単離粉末が、迅速な濡れ性及び溶解が重要であるインスタント飲料粉末の有用な原料であることを示している。BLG単離粉末はさらに、タンパク質飲料の湿潤及び溶解がはるかに速く、したがって製造中の分散及び溶解がより容易になるため、タンパク質飲料の製造において通常のWPIと比較して改善された有用性を提供する。最終的に、これにより、高タンパク飲料の製造にかかる時間が短縮され、飲料製造プラントの1時間あたりの生産能力が向上する可能性がある。
【0661】
例5:乾いた口当たりのレベルが低下した酸性BLG単離物
例2で調製した酸性の噴霧乾燥BLG単離粉末を6.0%の総タンパク質を提供するのに十分な量で含む2つのタンパク質飲料A及びBを、pH3.7にpH調整し、A:75℃で15秒、又はB:120℃で20秒の熱処理に供した。両方の飲料を直ちに冷却し、5℃の冷蔵庫に保管した。固有の蛍光発光比(I330/I350)を測定することにより、飲料Aのタンパク質はまだネイティブ立体構造であるのに対し、飲料Bでは著しいアンフォールディング及び変性が起こったことを確認した。
【0662】
飲料A及びBの濁度を、例1.7に従って測定し、いずれの飲料も、40NTU未満の濁度を有していたが、同等の標準WPIは、200NTUを超える濁度を有していた。したがって、本発明の酸性BLG単離物は、透明で酸性の高タンパク質飲料の製造に明らかに非常に適している。
【0663】
製造後1週間未満で、両方の飲料を訓練された官能試験パネルにより官能試験に供し、熱処理された酸性ホエイタンパク質飲料に特徴的な乾いた口当たりが、飲料A(乾いた口当たりのスコア:0~12のスケールでおよそ5.0)よりも飲料B(乾いた口当たりのスコア:0~12のスケールでおよそ10.5)で100%超高いことがわかった。
【0664】
この知見は、タンパク質の変性が酸性タンパク質飲料の乾いた口当たりに寄与すること、及びタンパク質の変性を制限又は回避することによって乾いた口当たりを大幅に低減できることを示している。
【0665】
例6:超低微生物含有量の中性BLG単離物の製造
本発明者らは、本発明が、非常に低い細菌含有量及び高いタンパク質ネイティブ性を有するpH中性のBLG粉末を得ることが可能であることを見出した。これは、製品の微生物品質に挑戦するために、コンディショニングプロセスの最終工程中に10℃で6日間の保管を挿入することにより、総プロセス時間が延長された本発明の例で実証されている。
【0666】
ホエイタンパク質フィード:
標準的なチーズ製造プロセスからのスイートホエイに由来するラクトース枯渇UF保持液は1.2ミクロンのフィルターで濾過されており、BLG結晶化プロセスのフィードとして使用される前にSynder FRメンブレンにより脂肪が減少されていた。フィードの化学組成を表5に示す。本発明者らは、この例で言及されているBLG、ALA等の特定のタンパク質の全ての重量パーセントが、総タンパク質に対する非凝集性タンパク質の重量パーセントに関係していることを認識している。
【表7】
【0667】
コンディショニング:
スイートホエイフィードを、全固形分21%(TS)±5のフィード濃度まで、30ミルのスペーサー、フィード圧力1.5~3.0バールで、Alfa Laval GR82PEタイプのメンブレンを使用し、またダイアフィルトレーション媒質として研磨水(逆浸透によって濾過された水で、最大0.05mS/cmの導電率が得られる)を使用して、およそ10℃の限外濾過セットアップ上でコンディショニングした。希釈塩酸を使用してpHを約5.9に調整し、バッチ限外濾過セットアップでダイアフィルトレーションした。保持液の導電率の低下が20分間にわたって0.1mS/cmを下回るまで、ダイアフィルトレーションを続けた
【0668】
次いで、ダイアフィルトレーションされたホエイタンパク質フィードを10℃で6日間保管し、得られた製品の微生物品質に挑戦した。
【0669】
保管後、ホエイタンパク質フィードを20℃に加熱し、次にHClを添加してpHを調整し、希塩酸を使用してpHがおよそ5.5になるようにした。
【0670】
ホエイタンパク質フィードを、全固形分21%(TS)±5のフィード濃度まで、30ミルのスペーサー、フィード圧力1.5~3.0バールで、Alfa Laval GR82PEタイプのメンブレンを使用し、またダイアフィルトレーション媒質として研磨水を使用して、20℃の限外濾過セットアップ上でコンディショニングした。限外濾過は連続限外濾過セットアップとして実行され、ダイアフィルトレーションを、エンド保持液が1.9~2.2mS/cmの導電率及び22±5のTSを持つように追加した。保持液を、マンテル及び攪拌を備えた800Lのタンクに収集した。タンクが一杯になると、HPLC分析のために濃縮保持液の第1のサンプルを採取した。この例のHPLC分析は、例2に記載されているように行われた。
【0671】
結晶化:
濃縮された保持液を800Lの結晶化タンクに移し、そこで再水和され噴霧乾燥されたBLG結晶から作られた純粋なBLG結晶材料と共にシードした。結晶を1LのコンディショニングされたWPIに加え、氷上で5℃未満に急速に冷却した。続いて、シードされたホエイタンパク質溶液を、20℃からおよそ6℃まで、およそ4時間かけて冷却し、BLG結晶を形成して成長させた。
【0672】
冷却後、結晶を含むホエイタンパク質溶液のサンプル(第2のサンプル)を採取し、3000gで5分間の遠心分離によってBLG結晶を分離した。第2のサンプルに由来する上清及び結晶ペレットを以下に説明するようにHPLC分析に供した。結晶化の収率を、以下に概説するように計算し、%で決定した。
【0673】
デカンター分離:
800Lタンクで生成された結晶を、600g、64ミルのスペーサー(ミルは1/1000インチを意味する)により2750RPM差で、デカンター(LEMITECH MD80)上で母液から分離し、フィードフローは150L/時であり、1容量のタンクフィードと2容量の研磨水との比率の研磨水及びタンクからのフィードの混合物であった。
【0674】
結晶の溶解:
デカンターから収集した結晶を研磨水で約10%の全固形分濃度に希釈した後、希塩酸を使用してpHをpH3に調整した。酸性化されたBLG溶液を、およそ6℃でおよそ16~48時間、pH3に保持した。
酸性化したBLG溶液のpH調整:
【0675】
次いで、酸性化したBLG溶液を水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとの希釈混合物を使用してpH7に調整し、さらに30ミルのスペーサー、フィード圧力1.5~3.0バールのAlfa Laval GR82PEタイプの膜を使用しておよそ10℃の限外濾過セットアップでおよそ16%TSの濃度までコンディショニングした。
精密濾過:
【0676】
濃縮BLG溶液の一部を、公称孔径0.8ミクロンのMembralox EP-1940-GL-UTPメンブレンを使用する精密濾過に供した。精密濾過を、3.5のフィード圧力でおよそ10℃で操作した。MF透過液を収集し、乾燥の準備を整えた。
【0677】
MF透過液のサンプルを、その化学組成(表6の結果を参照されたい)及び微生物学(例1.30)に関して分析したところ、驚くべきことに10CFU/g未満であることがわかった(基本的には、コロニーが識別されず、試験したサンプルは無菌に近いように見えた)。無菌は、例えば、さらに堅固な精密濾過膜を使用し、膜の透過側の無菌状態を確保することで得られる。
【0678】
酸性化及び精密濾過を行わない同等のプロセスでは、1.000.000 cfu/gを超えるBLG溶液が容易に得られた。
【表8】
【0679】
結論:
重い微生物学的負荷の下であっても、本発明は、高度のタンパク質ネイティブ性を有する無菌又はほぼ無菌の、pH中性BLG生成物を提供することを可能にする。
【0680】
例7:酸性及び中性BLGの逆浸透濃縮及び粉末かさ密度を標準の中性WPIと比較する。
本発明者らは、精製されたネイティブBLGの噴霧乾燥調製物が、同じ条件下で噴霧乾燥される同等のホエイタンパク質単離物よりも高いかさ密度を有する粉末を提供することが可能であることを見出した。
【0681】
本発明者らはさらに、精製されたネイティブBLGの液体高タンパク質調製物は、同等のホエイタンパク質単離物よりも粘度が低いことを見出した。この発見により、乾燥前にBLG単離物をより高い総タンパク質濃度(及びより低い含水量)に濃縮することが可能になり、したがって、同等のWPI粉末よりも水分の除去が少なく、したがって乾燥タンパク質1kgあたりのエネルギー消費量が少なくなる。また、粘度が下がると、膜濾過に要なエネルギーが粘度の低下と共に減少するため、エネルギー消費を減らして、膜濾過、例えば精密濾過を行うこともできる。
【0682】
上述の知見は、以下の実験で実証された。
【0683】
逆浸透及び乾燥のための原材料:
中性BLG:
例6で生成されたMF保持液は、最大52バールのフィード圧力でAlfa Laval RO98pHt膜上に濃縮され、コンディショニングの間、温度は15℃未満に保たれた。濃縮は32.2のブリックスまで継続した。濃縮中、例1.8B及び1.28に記載されているように、粘度及びブリックス測定のためにサンプルを採取した。各サンプルのブリックスを、以下の式を使用してタンパク質(重量/重量%)に変換した。
【数6】
【0684】
0.85は経験的に得られた変換であり、ブリックス度と固体の合計との間に良好な関係がある。結果を
図6に示す。
【0685】
ホエイタンパク質溶液の全固形分はおよそブリックス*0.85である。
【0686】
酸性BLG:
例6のように生成された酸性BLG溶液(ただし、pH5.5での連続限外濾過の前にpH5.92での限外濾過は行われず、限外濾過がpH3で行われたことを除く)。フィードの組成を表7に示す。例6に記載されるMF工程に供された酸性BLG透過液は、次いで、最大52バールのフィード圧力でAlfa Laval RO98pHtの逆浸透(RO)膜上に濃縮され、コンディショニングの間、温度は15℃未満に保たれた。40.0のブリックスが得られるまで濃縮を続けた。濃縮中、例1.8B及び1.28に記載されているように、粘度及びブリックスの測定のためにサンプルを採取した。ブリックス値をタンパク質濃度に変換し、結果を
図6に示す。乾燥する前に、BLGを研磨水でブリックス35.5に希釈した。
【表9】
【0687】
WPI参照:
酸性BLG生成物及びpH中性BLG生成物を従来のpH中性WPI生成物と比較するため、スイートホエイに基づく標準的な液体濃縮WPIを、Arla Foods Danmark Proteinの製造から採取し、同じパイロットプラント噴霧乾燥機で酸性及びpH中性のBLGサンプルと同じ条件を使用して乾燥させた。液体濃縮WPIの組成を表8に示す。
【0688】
濃縮WPIの粘度を最初に測定し、その後、濃縮WPIを研磨水で徐々に希釈して、BLG測定値と比較するためにWPIブリックスと粘度との相関関係を示した。
【0689】
粘度曲線:
RO中に採取されたサンプル及び希釈されたWPI参照の温度を、例1.8Bで記載されているように、粘度測定(3回行われる)を行う前に15℃に温度調整した。ブリックスを、例1.28で説明したように測定した。
【0690】
液体濃縮WPIを36.0のブリックスで乾燥させた。
【表10】
【0691】
噴霧乾燥:
逆浸透(RO)による濃縮後、全てのサンプルを、予熱せずに、入口温度が180℃、出口温度が85℃のパイロットプラント噴霧乾燥機で乾燥した。全てのサンプルの温度は、噴霧乾燥するまで12℃未満に保たれた。次いで、噴霧乾燥粉末のかさ密度を、例1.17に記載されているように、ストンピング(stomping)せずに、100回のストンプ、及び625回のストンプで測定した。驚くべきことに、酸性及びpH中性のBLG粉末はいずれも、WPI参照よりもかさ密度が有意且つ一貫して高かった。平均して、pH中性BLGのかさ密度はWPI参照の粉末より18.4パーセント高く、酸性は22.2パーセント高かった。かさ密度測定の結果を表9に示し、
図5で説明する。
【表11】
【0692】
結論:
酸性及びpH中性のBLG単離物はいずれのタイプも、WPI参照と比較して粘度が低く、ROで濃縮するのが容易であった。この発見により、乾燥前にBLG単離物をより高い総タンパク質濃度(及びより低い含水量)に濃縮することが可能になり、したがって、同等のWPI粉末よりも水分の除去が少なく、したがって乾燥タンパク質1kgあたりのエネルギー消費量が少なくなる。また、粘度が下がると、膜濾過に要なエネルギーが粘度の低下と共に減少するため、エネルギー消費を減らして、膜濾過、例えば精密濾過を行うこともできる。
【0693】
本発明のBLG粉末が従来のWPIよりも粘度に寄与しないため、本発明のBLG粉末はさらに、高タンパク質飲料、又は高タンパク質飲料を調製するためのシェイク粉末に特に適しており、したがって、より飲用可能な飲料を提供する。
【0694】
驚くべきことに、噴霧乾燥されたBLG粉末はさらに、ブリックス値によって説明されるとおり、BLGがわずかに少ない量の全固形分で乾燥された場合であっても、WPI参照と比較して高いかさ密度を有していた。粉末のかさ密度が高いほど、輸送時の重量あたりの輸送量が少なくなり、粒子の密度が高いほど、取り扱い時の粉塵が少なくなる傾向がある。
【0695】
[請求項1]
BLG単離粉末であって、好ましくは噴霧乾燥によって調製され、i)2.5~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有し、以下を含むもの:
少なくとも30%重量/重量の量の総タンパク質、
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)
最大10%重量/重量の量の水、
前記BLG単離粉末は、
少なくとも0.2g/cm3のかさ密度、
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)
最大10%のタンパク質変性度、
pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
最大15000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する。
[請求項2]
2.5~4.9の範囲のpHを有する、請求項1に記載のBLG単離粉末。
[請求項3]
6.1~8.5の範囲のpHを有する、請求項1に記載のBLG単離粉末。
[請求項4]
5.0~6.0の範囲のpHを有する、請求項1に記載のBLG単離粉末。
[請求項5]
少なくとも40%重量/重量、好ましくは少なくとも50%重量/重量、少なくとも60%重量/重量、より好ましくは少なくとも70%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも80%重量/重量、さらにより好ましくは少なくとも90%重量/重量、最も好ましくは少なくとも92%重量/重量の総タンパク質を含む、請求項1~4のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項6]
総タンパク質に対して少なくとも88%重量/重量、好ましくは総タンパク質に対して少なくとも90%重量/重量の量のBLGを含む、請求項1~5のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項7]
最大10%重量/重量、好ましくは最大5%重量/重量、より好ましくは最大2%重量/重量、さらにより好ましくは最大0.1%重量/重量の量の脂質を含む、請求項1~6のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項8]
少なくとも0.20g/cm3、好ましくは少なくとも0.30g/cm3のかさ密度を有する、請求項1~7のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項9]
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する、請求項1~8のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項10]
最大10%のタンパク質変性度を有する、請求項1~9のいずれかに記載のBLG単離粉末。
[請求項11]
液体BLG単離物であって、i)2~4.9、ii)6.1~8.5、又はiii)5.0~6.0の範囲のpHを有する、以下を含むもの:
少なくとも10%重量/重量の量の総タンパク質、
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のベータ-ラクトグロブリン(BLG)、
少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)、
最大10%のタンパク質変性度、
pH3.9で最大200NTUの熱安定性、及び
最大15000コロニー形成単位/g、好ましくは最大1000コロニー形成単位/g、の1つ又は2つ以上を有する。
[請求項12]
総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、請求項1に記載の乾燥BLG単離粉末を製造する方法であって、以下の工程を含むもの:
a)以下を有する液体BLG単離物を提供すること
i)2~4.9の範囲のpH、
ii)6.1~8.5の範囲のpH、又は
iii)5.0~6.0の範囲のpH、
前記液体BLG単離物は、総タンパク質に対して少なくとも85%重量/重量の量のBLGを含む、
b)任意に、前記液体BLG単離物を物理的微生物減少に供すること、
c)噴霧乾燥により前記液体BLG単離物を乾燥させること。
[請求項13]
液体BLG単離物が、5~50%重量/重量の範囲の量の全固形分を含む、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
液体BLG単離物のタンパク質画分が、少なくとも1.11の固有トリプトファン蛍光発光比(I330/I350)を有する、請求項12又は13に記載の方法。
[請求項15]
液体BLG単離物のタンパク質が最大10%重量/重量のタンパク質変性度を有する、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
[請求項16]
液体BLG単離物の提供が、ホエイタンパク質フィードからBLGを単離すること、及び任意に、得られたBLG濃縮組成物を、
脱塩、
ミネラルの添加、
希釈、
物理的微生物減少、
濃縮、及び
pH調整、
の群から選択される1つ又は2つ以上の工程に供することを含む、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
[請求項17]
液体BLG単離物が、好ましくは熱処理を含むか、さらには熱処理からなる物理的微生物減少に供される、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
[請求項18]
請求項1~10のいずれかに記載のBLG単離粉末又は請求項11に記載の液体BLG単離物の、食物製品、例えば、飲料又はインスタント飲料粉末であって、2~4.7の範囲のpHを有し、さらに以下を有する、熱処理飲料の製造のための原料としての使用:
乾いた口当たりのレベルの低下、
透明性の向上、及び/又は
タンパク質含有量の増加、の1つ又は2つ以上を有し、好ましくは少なくとも3~45%重量/重量、より好ましくは11~40%重量/重量、さらにより好ましくは15~38%重量/重量、最も好ましくは20~36%重量/重量の量のタンパク質含有量。