(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096788
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファのアゴニストおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 217/76 20060101AFI20240709BHJP
C07C 229/54 20060101ALI20240709BHJP
C07D 257/04 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20240709BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07C217/76 CSP
C07C229/54
C07D257/04 E
A61K31/196
A61K31/69
A61K31/166
A61K31/18
A61K31/41
A61P27/02
A61P9/00
A61P3/06
A61P3/10
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060855
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2020549044の分割
【原出願日】2019-03-15
(31)【優先権主張番号】62/643,998
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512213332
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ オクラホマ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145791
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 志麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】デュアフェルト,アダム
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジアン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,シアオジャン
(72)【発明者】
【氏名】ナス,ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ユン-ファ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症および糖尿病性黄斑浮腫などの眼の疾患および/または状態を処置するための化合物、組成物ならびにキットを提供する。
【解決手段】下式で表されるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)アゴニスト活性を有するベンジル誘導体化合物、それを含む組成物とする。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造II:
【化1】
(式中、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子であり、
mは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
nは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
R
2は、水素(H)、CH
3、O-パラ-アルコキシベンジル、塩素(Cl)、フッ素
(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ニトロ(NO
2)、CH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シク
ロアルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジルおよびO-パラ-ハロベ
ンジルの群から選択され、R
2を含むベンゼン環は、前記R
2置換基の任意の組合せで置
換され、オルト、メタ、モノ、ジ、トリおよびテトラ置換を含む任意のパターンで前記環
に配置される前記R
2置換基のうちの1、2、3または4つを含み、
R
3は、OCH
3、F、Cl、Br、I、NO
2、H、CH
3、CH
2CH
3、3~1
0個の炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルキルオキシ
ベンジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
3を含むベンゼン環は、前
記R
3置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリ、テトラ
およびペンタ置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
3置換基のうちの1
、2、3、4または5つを含み、
R
4は、H、アルキルおよびアシルの群から選択され、
R
5は、H、Cl、F、Br、I、NO
2、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルキルオキシ
ベンジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
5を含むベンゼン環は、前
記R
5置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリおよびテ
トラ置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
5置換基のうちの1、2、3
または4つを含み、
R
1は、COOH、カルボン酸、カルボン酸の同配体、ヒドロキサム酸、ヒドロキサム
酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、
アシルスルホンアミド、スルホニル尿素、アシル尿素、テトラゾール、チアゾリジンジオ
ン、オキサゾリジンジオン、オキサジアゾール-5(4H)-オン、チアジアゾール-5
(4H)-オン、オキサチアジアゾール-2-オキシド、オキサジアゾール-5(4H)
-チオン、イソオキサゾール、テトラミン酸、シクロペンタン1,3-ジオン、シクロペ
ンタン1,2-ジオン、スクアリン酸、置換フェノール、ヘテロアレーン、アミジン、ヒ
ドロキシアミド、アルキルヒドロキシアミジン、ならびに
【化2】
ならびにこれらの塩からなる群から選択され、
R
8およびR
9は、H、F、Cl、Br、I、アルキル、アルコキシおよびR
8がR
9
に連結したシクロアルキルからなる群から独立して選択され、
R
10およびR
11は、H、アルキルおよびR
10がR
11に連結したシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
Xは、O、NH、SまたはCH
2である)
を含む化合物であって、
前記化合物がPPARαアゴニスト活性を有し、ただし、R
1=COOHのときR
2~R
5のうちの少なくとも1つはHではなく、R
1=COOHおよびR
3=CH
3であるとき
R
2、R
4およびR
5のうちの少なくとも1つはHではない、化合物。
【請求項2】
薬学的に許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤中に配合された請求項1に記載の1つ
または複数の化合物を含む組成物。
【請求項3】
前記1つまたは複数の化合物の遅延放出、制御放出、徐放放出および/または持続放出
をもたらすように製剤化された、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物および対象の障害または状態の処置におけるその使用のための
説明書を含むキット。
【請求項5】
前記障害または状態が、網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、未熟児網膜症(RO
P)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(AMD)、黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮
腫(DME)、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、ヘルペス性炎症、ブドウ膜炎
、血管炎、動脈炎、眼窩の炎症、視神経炎、交感性眼炎、網膜炎、緑内障、増殖性硝子体
網膜症、角膜浮腫、ブドウ膜浮腫および網膜浮腫からなる群から選択される眼の障害また
は状態である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
網膜細胞のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)活性を増大させる
方法であって、前記網膜細胞に、PPARα活性を増強する量の、化学構造II:
【化3】
(式中、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子であり、
mは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
nは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
R
2は、水素(H)、CH
3、O-パラ-アルコキシベンジル、塩素(Cl)、フッ素
(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ニトロ(NO
2)、CH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シク
ロアルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジルおよびO-パラ-ハロベ
ンジルの群から選択され、R
2を含むベンゼン環は、前記R
2置換基の任意の組合せで置
換され、オルト、メタ、モノ、ジ、トリおよびテトラ置換を含む任意のパターンで前記環
に配置される前記R
2置換基のうちの1、2、3または4つを含み、
R
3は、OCH
3、F、Cl、Br、I、NO
2、H、CH
3、CH
2CH
3、3~1
0個の炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルコキシベン
ジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
3を含むベンゼン環は、前記R
3置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリ、テトラおよ
びペンタ置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
3置換基のうちの1、2
、3、4または5つを含み、
R
4は、H、アルキルおよびアシルの群から選択され、
R
5は、H、Cl、F、Br、I、NO
2、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルコキシベン
ジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
5を含むベンゼン環は、前記R
5置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリおよびテトラ
置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
5置換基のうちの1、2、3また
は4つを含み、
R
1は、COOH、カルボン酸、カルボン酸の同配体、ヒドロキサム酸、ヒドロキサム
酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、
アシルスルホンアミド、スルホニル尿素、アシル尿素、テトラゾール、チアゾリジンジオ
ン、オキサゾリジンジオン、オキサジアゾール-5(4H)-オン、チアジアゾール-5
(4H)-オン、オキサチアジアゾール-2-オキシド、オキサジアゾール-5(4H)
-チオン、イソオキサゾール、テトラミン酸、シクロペンタン1,3-ジオン、シクロペ
ンタン1,2-ジオン、スクアリン酸、置換フェノール、ヘテロアレーン、アミジン、ヒ
ドロキシアミド、アルキルヒドロキシアミジン、ならびに
【化4】
ならびにこれらの塩からなる群から選択され、
R
8およびR
9は、H、F、Cl、Br、I、アルキル、アルコキシおよびR
8がR
9
に連結したシクロアルキルからなる群から独立して選択され、
R
10およびR
11は、H、アルキルおよびR
10がR
11に連結したシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
Xは、O、NH、SまたはCH
2である)
を含む化合物を投与することを含み、
前記化合物がPPARαアゴニスト活性を有する、方法。
【請求項7】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)活性を増大させることによっ
て対象の障害または状態を処置する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、
治療量の、化学構造II:
【化5】
(式中、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子であり、
mは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
nは、1、2、3、4、5または0個の炭素原子であり、
R
2は、水素(H)、CH
3、O-パラ-アルコキシベンジル、塩素(Cl)、フッ素
(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ニトロ(NO
2)、CH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の
炭素原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シク
ロアルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジルおよびO-パラ-ハロベ
ンジルの群から選択され、R
2を含むベンゼン環は、前記R
2置換基の任意の組合せで置
換され、オルト、メタ、モノ、ジ、トリおよびテトラ置換を含む任意のパターンで前記環
に配置される前記R
2置換基のうちの1、2、3または4つを含み、
R
3は、OCH
3、F、Cl、Br、I、NO
2、H、CH
3、CH
2CH
3、3~1
0個の炭素原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルコキシベン
ジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
3を含むベンゼン環は、前記R
3置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリ、テトラおよ
びペンタ置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
3置換基のうちの1、2
、3、4または5つを含み、
R
4は、H、アルキルおよびアシルの群から選択され、
R
5は、H、Cl、F、Br、I、NO
2、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルコキシベン
ジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
5を含むベンゼン環は、前記R
5置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリおよびテトラ
置換を含む任意のパターンで前記環に配置される前記R
5置換基のうちの1、2、3また
は4つを含み、
R
1は、COOH、カルボン酸、カルボン酸の同配体、ヒドロキサム酸、ヒドロキサム
酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、
アシルスルホンアミド、スルホニル尿素、アシル尿素、テトラゾール、チアゾリジンジオ
ン、オキサゾリジンジオン、オキサジアゾール-5(4H)-オン、チアジアゾール-5
(4H)-オン、オキサチアジアゾール-2-オキシド、オキサジアゾール-5(4H)
-チオン、イソオキサゾール、テトラミン酸、シクロペンタン1,3-ジオン、シクロペ
ンタン1,2-ジオン、スクアリン酸、置換フェノール、ヘテロアレーン、アミジン、ヒ
ドロキシアミド、アルキルヒドロキシアミジン、ならびに
【化6】
ならびにこれらの塩からなる群から選択され、
R
8およびR
9は、H、F、Cl、Br、I、アルキル、アルコキシおよびR
8がR
9
に連結したシクロアルキルからなる群から独立して選択され、
R
10およびR
11は、H、アルキルおよびR
10がR
11に連結したシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
Xは、O、NH、SまたはCH
2である)
を含む化合物を投与することを含み、
前記化合物がPPARαアゴニスト活性を有する、方法。
【請求項8】
前記障害または状態が、網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、未熟児網膜症(RO
P)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(AMD)および糖尿病性黄斑浮腫(D
ME)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記障害または状態が炎症および/または血管形成を特徴とする、請求項7に記載の方
法。
【請求項10】
前記障害が、炎症性腸疾患、1型糖尿病、2型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症、
変形性関節症、関節リウマチ、血管炎、皮膚炎、糸球体腎炎、肝炎、歯周炎、アテローム
性動脈硬化症、心不全、肥満、アルツハイマー病およびメタボリックシンドロームから選
択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記障害または状態が、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、ヘルペス性炎症、
ブドウ膜炎、血管炎、動脈炎、眼窩の炎症、視神経炎、交感性眼炎、網膜炎、黄斑浮腫、
緑内障、増殖性硝子体網膜症、角膜浮腫、ブドウ膜浮腫および網膜浮腫から選択される眼
の障害または状態である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記障害または状態が、網膜動脈または静脈閉塞、角膜移植拒絶反応、角膜血管新生、
血管新生緑内障、鎌状赤血球網膜症、がん、皮膚疾患、糖尿病性潰瘍、糖尿病性腎症、心
血管疾患および発作から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、前記化合物の遅延放出、制御放出、徐放放出および/または持続放出を
もたらすように製剤化された組成物で提供される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2018年3月16日出願の米国特許出願第62/643,998号に
よって識別される仮特許出願の全体を参照により組み込み、35U.S.C.119(e
)に基づきその優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)により認可された認証番号R21EY028
279の下で政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
網膜炎症およびその結果生じる血管新生(NV)は、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病
性網膜症(DR)および加齢黄斑変性症(AMD)などの、いくつかの眼の障害における
失明の主な原因である。糖尿病性黄斑浮腫(DME)は網膜血管漏出によって引き起こさ
れ、糖尿病による目の疾患における失明の主要な原因である。累積エビデンスによって、
DRは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、細胞間接着分子1(ICAM-1)およ
び血管内皮増殖因子(VEGF)などの複数の炎症性因子が、糖尿病網膜において過剰発
現するような慢性炎症性障害であることが示唆されている。炎症は、網膜血管内皮機能の
傷害、血管漏出およびその後の網膜NVの原因となる役割を果たす。主要な処置選択肢と
して抗VEGFが出現したが、頻繁な眼内注射、高コストおよび特殊施設の必要性といっ
た要件の問題がある。さらに、ほとんどの患者に有効であるものの、約40~50%の患
者は抗VEGFおよびコルチコステロイドの硝子体内注射に不応性である。これは、現行
の介入では依然として取り組まれていない補助的経路および因子が、疾患の原因および進
行に関与していることを暗示する。
【0004】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核内ホルモン活性化受容体の
ファミリーであり、転写因子である。PPARファミリーには、PPARアルファ(PP
ARα)、PPARガンマ(PPARγ)およびPPARデルタ(PPARδ)の3種の
メンバーが含まれ、PPARδは当技術分野でPPARベータ(PPARβ)と称される
こともある。これらの3種のPPARメンバーは有意な配列相同性を共有するが、異なる
組織分布、多様な機能を有し、選択的に標的化され得る。PPARγは主に脂肪組織で発
現する一方、PPARαは、肝臓、血管内皮細胞(EC)、平滑筋細胞、腎臓および心臓
を含む、ミトコンドリア活性が高い細胞で発現する。PPARαは網膜で豊富に発現する
ことが以前の研究で示されている。しかし、糖尿病網膜における炎症、アポトーシスおよ
び血管新生(NV)を調節するPPARαの役割は近年になってようやく明らかにされ、
眼血管疾患の治療薬としてのPPARαアゴニストの新規な方策が確立されている。内因
性または外因性合成アゴニストによって活性化されると、PPARαはレチノイドx受容
体(RXR)とヘテロ二量体を形成し、その標的遺伝子のプロモーターのPPAR応答エ
レメント(PPRE)に結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。さらに、PPARαは
、それらの転写調節に干渉することによって他の遺伝子を間接的に調節する。PPARα
は、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)、ICAM-1および
インターロイキン6(IL-6)などの、脂質代謝および血管炎症に関与する多数の遺伝
子を調節することが示されている。さらに、PPARαは、酸化および血管形成を調節す
ることが示されている。しかし、網膜におけるPPARαの機能は十分に理解されていな
い。FIELDおよびACCORD臨床試験の知見によって、PPARαアゴニストであ
るフェノフィブリン酸(フェノフィブラート(fenofibrate)の代謝産物)がDRに対し
てロバストな予想外の治療効果を有し、2型糖尿病患者でレーザー処置の必要性を32~
40%低減させることが実証されるまで、PPARαのDRにおける役割は認識されてい
なかった。PPARαレベルは、1型と2型の両方の糖尿病動物モデルの網膜で減少する
ことが以前の研究で実証されている。さらに、フェノフィブラートによるPPARαの活
性化は、糖尿病モデルの網膜白血球停滞および血管漏出を有効に低減させ、虚血誘導性網
膜NVを改善する。
【発明の概要】
【0005】
フェノフィブラートは当初、コレステロールおよびトリグリセリドレベルを低下させる
その能力が認識され、したがって30年より長くにわたり脂質異常症の処置に幅広く臨床
使用されてきた。フェノフィブラートは、DR患者のNVおよびDMEに対する有効性が
臨床的に証明された最初の低コストで安全なDR用経口薬であり、そのため、臨床医、基
礎科学者および新規のDR治療薬の開発に関心を持つ製薬会社にとって非常に興味深いも
のである。網膜NVおよびDMEに対するフェノフィブラートの防止効果は、その脂質低
下活性と相関するのではなく、その代謝産物であるフェノフィブリン酸とPPARαの相
互作用によって生じることが報告されている。したがって、フェノフィブラートは、DR
およびAMDの処置に有意な治療潜在性を有するが、PPARαに対する結合親和性が比
較的低く、さらにオフターゲット腎毒性効果および他の潜在的な副作用を有する。非侵襲
的かつ現行の手法に相補的な新規の処置選択肢を開発する重要な必要性が存在する。DR
ならびに目および身体の別の場所の他の炎症性および血管形成障害の処置をさらに向上さ
せるためにPPARαの高親和性アゴニストを開発することが望ましく、本研究が向かう
目的である。
【0006】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラーで作成された図面を含む。カラー
の図面を含む本特許または特許出願公報の写しは、請求に応じて、必要な費用の支払いが
あった場合に、米国特許商標庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】細胞に基づくルシフェラーゼアッセイにおける、化合物9~14および21~24のhPPARαアゴニズムについての初期評価結果を示す図である。結果は、誘導倍率対DMSO対照±S.E.(n=3)として1つの実験から提示される。化合物GW590735は5μMおよび10μMで評価した。
【
図2A】10μM、50μMおよび100μMの化合物10で24時間処理した後の661Wマウス細胞のウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図2B】
図2Aのウェスタンブロット分析からのPPARα産生のデンシトメトリーによる定量化の結果を示す図である。
【
図2C】化合物10で24時間(n=6)処置した後の661Wマウス細胞のリアルタイムPCR分析を示す図である。
【
図2D】化合物10についての10時間と24時間の両方のインキュベーション時点でのHRCEC創傷治癒アッセイの結果を示す図である。別段記載されない限り、
図2A~Dの実験は三連で3回実施した。示される値はすべて平均±S.D.として表示される。群間の差をスチューデントのt検定を使用して統計的有意性について試験した。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図3】(A)GW590735・hPPARαの共結晶構造、(B)10 hPPARαの予測結合様式および(C)化合物28のhPPARαに対する予測結合様式を示す図である。結合ポケットの空洞を表面表現によって示す。PDB:2P54。
【
図4】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A91によるPPARαの用量依存的アゴニズムを示す図である。GW59=GW590735を陽性対照として用いる。(A91=ASD91=10)。
【
図5】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A91によるPPARγの用量依存的アゴニズムを示す図である。ロシグリタゾンを陽性対照として用いる。(A91=ASD91=10)。
【
図6】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A91によるPPARδの用量依存的アゴニズムを示す図である。GW07=GW0742を陽性対照として用いる。(A91=ASD91=10)。
【
図7】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A190によるPPARαの用量依存的アゴニズムを示す図である。GW59=GW590735を陽性対照として用いる。(A190=190=ASD190)。
【
図8】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A190によるPPARγの用量依存的アゴニズムを示す図である。ロシグリタゾンを陽性対照として用いる。(A190=190=ASD190)。
【
図9】細胞に基づくルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてルシフェラーゼ定量化(発光)によって実証される、A190によるPPARδの用量依存的アゴニズムを示す図である。GW07=GW0742を陽性対照として用いる。(A190=190=ASD190)。
【
図10A】フェノフィブリン酸(FenoFA)と比べた化合物ASD91(10)の網膜の透過性に対するin vivoでの有効性の結果を示す図である。7~8週齢の雄のBrown Norwayラットにストレプトゾトシン(STZ、55mg/kg)を注射した。STZ注射から2週間後、ASD091またはFenoFAによる毎日の処置(i.p.注射)を開始し、26~28日間続けた。≠P<0.05(対FenoFA)、
*P<0.05(対STZ-DMSO)。
【
図10B】フェノフィブリン酸(FenoFA)と比べた化合物ASD91(10)の肝臓の表現型に対するin vivoでの有効性の結果を示す図である。7~8週齢の雄のBrown Norwayラットにストレプトゾトシン(STZ、55mg/kg)を注射した。STZ注射から2週間後、ASD091またはFenoFAによる毎日の処置(i.p.注射)を開始し、26~28日間続けた。≠P<0.05(対FenoFA)、
*P<0.05(対STZ-DMSO)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述のように、網膜炎症および血管新生は、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症(DR)お
よび加齢黄斑変性症(AMD)などの、いくつかの眼の障害における失明の主な原因であ
る。2つの大規模な前向き臨床試験によって、PPARαのアゴニストであるフェノフィ
ブラートが、DRにロバストな治療効果を有することが報告されている。PPARαアゴ
ニスト活性のために、網膜内皮機能障害、血管形成および炎症に対する効果を有し、例え
ば、DRおよびAMD(例えば、滲出型AMD)への治療効果が示唆される、新規なクラ
スの化合物が本明細書に開示される。本開示の組成物は、これらに限定されないが、DR
、AMD(例えば、滲出型AMD)、網膜炎症、網膜血管新生(NV)、網膜血管漏出、
未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)などの眼の障害または状態の
処置に使用されてもよい。本開示の化合物を使用して処置され得る、炎症および/または
血管形成に関連する他の疾患および/または状態を以下に記載する。
【0009】
本開示の化合物、組成物および方法の種々の実施形態を、例示的な記載、例および結果
を用いてより詳細にさらに記載する前に、本開示の化合物、組成物および方法の適用は、
以下の記載に示される特定の実施形態および例の詳細に限定されないことが理解されるべ
きである。本明細書に示される記載は例示のみを目的とするものであり、限定的な意味で
解釈されるものではない。したがって、本明細書で使用される言語は、可能な最も広い範
囲および意味が与えられることが意図され、実施形態および例は包括的ではなく例示的で
あることを意図する。また、本明細書で用いられる表現および用語は説明を目的とし、そ
うであることが別段示されない限り、限定的であるとみなされるべきではないことが理解
される。さらに、以下の詳細な説明では、本開示のより完全な理解を促すために多数の具
体的な詳細が示される。しかし、本開示はこれらの具体的な詳細なしで実施されてもよい
ことが当業者には明らかであろう。他の場合では、説明を不必要に複雑にすることを避け
るため、当業者に周知の特色は詳述されない。当業者に明白なすべての代替形態、置換形
態、修正形態および均等物が本開示の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で開
示される化合物、組成物および製造方法ならびにそれらの適用および使用のすべてを、本
開示に照らして作製および実行することができる。したがって、本開示の化合物、組成物
および方法は、特定の実施形態に関して記載されているものの、本明細書に記載される概
念、精神および本発明の概念の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される化合物
、組成物および/または方法ならびに方法のステップまたはステップの順序に、変形が適
用されてもよいことが当業者には明らかであろう。
【0010】
本明細書で言及される、または本出願の任意の箇所で参照されるすべての特許、刊行さ
れた特許出願および非特許刊行物は、各個々の特許または刊行物が参照により組み込まれ
ることが具体的かつ個々に示されているのと同じ程度に、それらの全体が参照により明示
的に本明細書に組み込まれる。
【0011】
本明細書で別段定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用
語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈が別段要
求しない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0012】
本開示の方法および組成物に従って利用される場合、別段示されない限り、以下の用語
は以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0013】
特許請求の範囲および/または本明細書で用語「含む(comprising)」とともに使用さ
れる場合、語「a」または「an」の使用は「1つ」を意味する場合があるが、「1つま
たは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多く」の意味とも一致する
。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すように明示的に示
されない限り、または代替物が相互排他的である場合、「および/または」を意味するよ
うに使用されるが、本開示は、代替物のみならびに「および/または」を指すという定義
を支持する。用語「少なくとも1つ」の使用は、1つだけではなく、これらに限定されな
いが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100
またはその間に含まれる任意の整数を含む、1つより多くの任意の量を含むと理解される
。用語「少なくとも1つ」は、それが付随する用語に応じて100または1000以上ま
で拡張してもよい。さらに、100/1000という量は、より大きな制限が良好な結果
を生み出すこともあるため、限定的であるとみなされるべきではない。加えて、用語「X
、YおよびZのうちの少なくとも1つ」の使用は、Xのみ、YのみおよびZのみだけでな
く、X、YおよびZの任意の組合せを含むことが理解される。
【0014】
本明細書で使用する場合、すべての数値または範囲は、文脈が別段明確に示さない限り
、値の分数およびそのような範囲内の整数およびそのような範囲内の整数の分数を含む。
したがって、例示すると、1~10などの数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10だけでなく1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを含む。し
たがって、1~50の範囲への言及は、50までの、かつ50を含む1、2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、2
0などだけでなく、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2
.3、2.4、2.5などを含む。一連の範囲への言及は、その連なり内の異なる範囲の
境界値を組み合わせた範囲を含む。したがって、例示すると、例えば、1~10、10~
20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、
100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、
400~500、500~750、750~1,000の一連の範囲への言及は、例えば
、1~20、10~50、50~100、100~500および500~1,000の範
囲を含む。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、語「含む(comprising)」(ならびに
「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の
形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」
などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(inc
ludes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)または「
含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(cont
ain)」などの含有する(containing)の任意の形態)は、包括的または非限定的であり
、追加的な列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0016】
本明細書で使用される用語「またはこれらの組合せ」は、用語の前に列挙された項目の
すべての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはこれらの組合せ」は、A
、B、C、AB、AC、BCまたはABC、さらに、特定の文脈において順序が重要であ
る場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABのうちの少
なくとも1つを含むことを意図する。この例に引き続き、BB、AAA、AAB、BBC
、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの、1つまたは複数の項目または
用語の繰り返しを含有する組合せが明示的に含まれる。当業者であれば、別の形で文脈か
ら明らかでない限り、任意の組合せの項目または用語の数には典型的に制限がないことを
理解するであろう。
【0017】
本出願を通して、用語「約」および「およそ」は、値が、組成物、組成物を投与するた
めに使用される方法に固有の誤差の変動、または試験対象間に存在する変動を含むことを
示すために使用される。本明細書で使用する場合、修飾語句「約」または「およそ」は、
正確な値、量、程度、方向または他の修飾された特徴もしくは値を含むことを意図するだ
けでなく、例えば、測定誤差、製作公差、種々の部品または構成要素にかかる応力、観察
者誤差、摩損ならびにこれらの組合せによるある程度のわずかな変動を含むことを意図す
る。用語「約」または「およそ」は、量、時間長などの測定可能な値を指すときに本明細
書で使用される場合、そのような変動は開示された方法を実施するのに適切であるため、
当業者によって理解されるように、例えば、特定の値から±20%、または±15%、ま
たは±10%、または±5%、または±1%、または±0.1%の変動を包含することを
意図する。本明細書で使用する場合、用語「実質的に」は、続いて記載される事象または
状況が絶対的に生じること、または続いて記載される事象または状況がかなりの範囲また
は程度まで生じることを意味する。例えば、用語「実質的に」は、続いて記載される事象
または状況が、少なくとも75%の確率、または少なくとも80%の確率、または少なく
とも90%の確率、または少なくとも95%の確率、または少なくとも98%の確率で生
じることを意味する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「一実施形態」または「実施形態」への任意の言及は、実施
形態に関連して記載される特定の要素、特色、構造または特徴が少なくとも1つの実施形
態に含まれ、他の実施形態に含まれてもよいことを意味する。本明細書の種々の場所での
語句「一実施形態では」の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけでは
なく、必ずしも単一または特定の実施形態に限定されない。
【0019】
用語「薬学的に許容される」は、毒性、刺激および/またはアレルギー応答などの過度
の有害な副作用を伴わずにヒトおよび/または動物に投与するのに適した、妥当なベネフ
ィット/リスク比に見合う化合物および組成物を指す。本開示の化合物は、化合物または
その複合体の溶解性、送達性、分散、安定性および/または立体配座の完全性を向上させ
得る、担体、ビヒクル、希釈剤およびアジュバントを含む1つまたは複数の薬学的に許容
される賦形剤と組み合わされてもよい。
【0020】
本明細書で使用する場合、「純粋」または「実質的に純粋」は、目的の種が存在する優
勢な種であり(すなわち、モルベースで、その組成物中の任意の他の目的の種よりも豊富
である)、特に、実質的に精製された画分が、目的の種が存在するすべての高分子種の少
なくとも約50パーセント(モルベースで)を構成する組成物であることを意味する。一
般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在するすべての高分子種の約80%より多
く、より詳細には約85%より多く、約90%より多く、約95%より多く、または約9
9%より多くを含む。用語「純粋」または「実質的に純粋」はまた、目的の種が少なくと
も60%(w/w)純粋、または少なくとも70%(w/w)純粋、または少なくとも7
5%(w/w)純粋、または少なくとも80%(w/w)純粋、または少なくとも85%
(w/w)純粋、または少なくとも90%(w/w)純粋、または少なくとも92%(w
/w)純粋、または少なくとも95%(w/w)純粋、または少なくとも96%(w/w
)純粋、または少なくとも97%(w/w)純粋、または少なくとも98%(w/w)純
粋、または少なくとも99%(w/w)純粋、または100%(w/w)純粋である調製
物を指す。
【0021】
この用語の範囲および意味内の動物または哺乳動物の非限定的な例は、イヌ、ネコ、ラ
ット、マウス、ウサギ、モルモット、チンチラ、ウマ、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、動物
園の動物、旧世界サルおよび新世界サル、非ヒト霊長類およびヒトを含む。
【0022】
少なくともある特定の実施形態では、本開示の化合物で処置され得る疾患および/また
は状態は、炎症および/または血管形成を特徴とする。本開示の化合物で処置され得る、
炎症性の基盤を有するそのような疾患および/または状態としては、これらに限定されな
いが、炎症性腸疾患、1型または2型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症、種々の型の
関節炎、血管炎、皮膚炎、糸球体腎炎、肝炎、歯周炎(periodonititis)、アテローム性
動脈硬化症、心不全、肥満、アルツハイマー病およびメタボリックシンドローム、ならび
に本明細書に開示される他の障害および状態が挙げられる。
【0023】
本開示の化合物で処置され得る、炎症性の基盤を有する眼の疾患の例としては、これら
に限定されないが、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、ヘルペス性炎症、ブドウ
膜炎、血管炎、動脈炎、眼窩の炎症、視神経炎、交感性眼炎、網膜炎および他の自己免疫
疾患、加齢黄斑変性症、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、緑内障、増殖性硝子体網膜症、角膜
浮腫、ブドウ膜浮腫および網膜浮腫が挙げられる。
【0024】
本開示の化合物で処置され得る、炎症性の基盤を有する疾患および/または状態として
は、これらに限定されないが、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、未熟児網膜症、網膜動
脈または静脈閉塞、角膜移植拒絶反応、角膜血管新生、血管新生緑内障および鎌状赤血球
網膜症などの眼の疾患および/または状態、ならびに、これらに限定されないが、がん、
皮膚疾患、糖尿病性潰瘍、糖尿病性腎症、心血管疾患および発作を含む、非眼疾患および
/または状態が挙げられる。
【0025】
「処置」は治療的処置を指す。「防止」は、予防的もしくは防止的処置手段または状態
もしくは疾患の発症の低減を指す。用語「処置すること」は、組成物を治療目的および/
または防止のために対象に投与することを指す。投与様式の非限定的な例としては、局所
的適用と全身適用の両方を含む、経口、局所、球後、結膜下、経皮、非経口、皮下、経鼻
、筋肉内、腹腔内、硝子体内および静脈内経路が挙げられる。さらに、本開示の組成物は
、例えば、活性物質を分解性ポリマーに組み込む製剤技術を使用して、遅延、制御、徐放
および/または持続放出をもたらす担体化合物とともに製剤化されてもよい。
【0026】
用語「局所」は、これらに限定されないが、外部から目に適用することによって投与さ
れる物質などの、上皮表面を通した投与様式を定義するように本明細書で使用される。局
所投与の非限定的な例は、点眼薬の使用による投与、または活性物質を含有する粒子の適
用による投与である。
【0027】
用語「治療組成物」および「医薬組成物」は、当技術分野で公知の、またはそうでなけ
れば本明細書で企図される任意の方法によって対象に投与されてもよい、本開示の化合物
(本明細書で活性物質とも称される)を含む組成物を指し、組成物の投与は、本明細書の
他の場所で記載される治療効果をもたらす。記載されたように、本開示の組成物は、適切
な製剤化技術を使用して、遅延、制御、徐放および/または持続放出をもたらすように設
計されてもよい。
【0028】
用語「有効量」は、過剰な有害な副作用(例えば、実質的な毒性、刺激およびアレルギ
ー応答)を伴わずに、対象において検出可能な治療または処置効果を示すのに十分であり
、本開示の方法で使用された場合に妥当なベネフィット/リスク比に見合う活性物質の量
を指す。対象に対する有効量は、対象の種類、サイズおよび健康状態、処置される状態の
性質および重症度、投与方法、処置期間、併用療法(もしあれば)の性質、用いられる特
定の製剤などに依存する。したがって、正確な有効量を事前に特定することは不可能であ
る。しかし、所与の状況に対する有効量は、本明細書に提供される情報に基づき、日常的
な実験を使用して当業者によって決定され得る。用語「活性増強量」は、細胞または対象
においてPPARα活性を増大させるのに十分な活性物質の量を指す。
【0029】
用語「改善する」は、対象の状態またはその症状の検出可能または測定可能な向上を意
味する。検出可能または測定可能な向上には、状態の発生、頻度、重症度、進行または期
間の主観的もしくは客観的な減少、低減、阻害、抑制、制限もしくは制御、または状態の
症状もしくは根底にある原因もしくは帰結の向上、または状態の逆転が含まれる。奏功し
た処置の結果は、対象の状態の発生、頻度、重症度、進行もしくは期間、または状態の帰
結を改善すること、減少させること、低減すること、阻害すること、抑制すること、制限
すること、制御すること、または防止することの「治療効果」または「利益」をもたらし
得る。
【0030】
状態の安定化などの、悪化の減少または低減もまた奏功した処置の結果である。したが
って、治療利益は、状態、または状態に関連するいずれか1つの、ほとんどの、もしくは
すべての有害な症状、合併症、帰結もしくは根底にある原因の完全な除去または逆転であ
る必要はない。したがって、良好なエンドポイントは、短期間または長期間(例えば、秒
、分、時間)にわたる状態の発生、頻度、重症度、進行または期間の部分的な減少、低減
、阻害、抑制、制限、制御、もしくは防止、または阻害もしくは逆転(例えば、安定化)
などの漸増的な向上がある場合に達成され得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語アルキル、ハロアルキル、アルコキシル、ハロアルコキ
シル、アルケニルおよびアルキニルは、別段指定されない限り、概して、1、2、3、4
、5、6、7、8、9または10個の炭素を含む分岐または非分岐構造を指すことを意図
する。ハロアルキルは、例えば、1~3個のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個の炭素のハロアルキルを指してもよい。ハロアルコキシルは
、例えば、1~3個のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9または
10個の炭素のハロアルキルを指してもよい。ハロゲンは、塩素(Cl)、フッ素(F)
、臭素(Br)および/またはヨウ素(I)を指してもよい。ハロゲンは、本明細書で「
ハロ」と省略されることがある。
【0032】
少なくともある特定の実施形態では、本開示は、眼の障害および状態、特に網膜の状態
および障害であって、ある特定の非限定的な実施形態では、網膜炎症、網膜血管新生、網
膜血管漏出、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(例え
ば、滲出型AMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)(または本明細書の他の場所に記
載される他の障害または状態)を含む眼の障害および状態を、化学構造I:
【0033】
【化1】
(式中、環Aは、ベンゼン、または2、4、5もしくは6位に窒素(N)を含むピリジン
であり、
式中、環Bは、ベンゼン、または2、3、5もしくは6位にNを含むピリジンであり、
式中、環Cは、ベンゼン、または2、3、4、5もしくは6位にNを含むピリジンであり
、
式中、Xは、酸素(O)、NH、硫黄(S)およびCH
2からなる群から選択され、
式中、Yは、O、NH、SおよびCH
2からなる群から選択され、
式中、kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子であり、
式中、少なくともある特定の実施形態では、化学構造Iの「A」環のR
1置換基は、以下
の表1に示される化学構造i~xから選択される)
を有する化合物を使用して処置するための活性物質組成物および方法を含む。
【0034】
【0035】
非限定的な実施形態では、表1の構造ixのR8およびR9は、水素(H)、ハロゲン
(F、Cl、Br、I)、アルキル(例えば、分岐または非分岐、C1~C10)、アル
コキシ(例えば、分岐または非分岐、C1~C10)、およびシクロ(R8がR9に連結
)の群から選択することができる。表1の構造ixでは、XはO、NH、SまたはCH2
であってもよい。非限定的な実施形態では、表1の構造xのR10およびR11は、H、
アルキル(例えば、分岐または非分岐、C1~C10)およびシクロ(R10がR11に
連結)の群から選択することができる。
【0036】
他の非限定的な例では、R1は、カルボン酸、およびヒドロキサム酸、ヒドロキサム酸
エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、ア
シルスルホンアミド、スルホニル尿素、アシル尿素、テトラゾール、チアゾリジンジオン
、オキサゾリジンジオン、オキサジアゾール-5(4H)-オン、チアジアゾール-5(
4H)-オン、オキサチアジアゾール-2-オキシド、オキサジアゾール-5(4H)-
チオン、イソオキサゾール、テトラミン酸、シクロペンタン1,3-ジオン、シクロペン
タン1,2-ジオン、スクアリン酸、置換フェノール、ヘテロアレーン、アミジン、ヒド
ロキシアミド、アルキルヒドロキシアミジンを含むカルボン酸の同配体の群から選択され
てもよく、群には表2に示される例示的な構造が含まれ、上記のいずれかの塩がさらに含
まれる。
【0037】
【0038】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、化学構造IのR2置換基は、H、F、
Cl、Br、I、ニトロ(NO2)、アルキル(例えば、CH3、CH2CH3、または
3~10個の炭素原子を有する任意の分岐または非分岐アルキル鎖)、アルコキシ(例え
ば、OCH3、OCH2CH3、または3~10個の炭素原子を有する任意の分岐または
非分岐アルコキシ(alkyoxy)鎖)、ハロアルキル(例えば、CH2Cl、CHBr2、
CF3)、ハロアルコキシル(例えば、OCH2Cl、OCHBr2、OCF3)、例え
ば、1~3個のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個
の炭素のハロアルキル、例えば、1~3個のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個の炭素のハロアルコキシル、シクロアルキル、ハロシクロア
ルキル、O-パラ-アルキルベンジル(例えば、アルキルはメチル、エチルまたはプロピ
ルである)、O-パラ-アルキルオキシベンジル(例えば、アルキルはメチル、エチルま
たはプロピルである)およびO-パラ-ハロベンジル(ハロ=Cl、F、BrまたはI)
の群から選択される。
【0039】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、化学構造Iの環「C」のR3置換基は
、H、F、Cl、Br、I、NO2、アルキル(例えば、CH3、CH2CH3、または
3~10個の炭素原子を有する任意の分岐または非分岐アルキル鎖)、アルコキシ(例え
ば、OCH3、OCH2CH3、または3~10個の炭素原子を有する任意の分岐または
非分岐アルコキシ鎖)、ハロアルキル(例えば、CH2Cl、CHBr2、CF3)、ハ
ロアルコキシル(例えば、OCH2Cl、OCHBr2、OCF3)、例えば、1~3個
のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素のハロ
アルキル、例えば、1~3個のハロゲン原子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、
9または10個の炭素のハロアルコキシル、シクロアルキルおよびハロシクロアルキルの
群から選択され、「C」環は、前記R3置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ
、パラ、モノ、ジ、トリ、テトラおよびペンタ置換を含む任意のパターンで「C」環に配
置される前記R3置換基のうちの1、2、3、4または5つを含む。
【0040】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、化学構造Iの各R4およびR5置換基
は、H、F、Cl、Br、I、NO2、アルキル(例えば、分岐または非分岐、C1~C
10)およびハロアルキル(例えば、CH2Cl、CHBr2、CF3)の群から選択す
ることができる。R4およびR5は、一緒になって二重結合したOからなってもよい。
【0041】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、R4およびR5は一緒になって、2~
10個の炭素原子を含むシクロアルキル、または2~10個の炭素原子を含み、1つまた
は複数のハロゲン(Cl、F、Br、I)原子で置換されたハロシクロアルキルを形成す
る。
【0042】
少なくともある特定の実施形態では、R4およびR5のうちの1つが(本明細書で定義
される)アルキルまたはシクロアルキルであるとき、R4およびR5の他方はHである。
【0043】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、化学構造Iの各R6およびR7置換基
は、H、F、Cl、Br、I、アルキル(例えば、分岐または非分岐、C1~C10)お
よびハロアルキル(例えば、CH2Cl、CHBr2、CF3)の群から選択することが
できる。R6およびR7は、一緒になって二重結合したOからなってもよい。
【0044】
少なくともある特定の非限定的な実施形態では、R6およびR7は一緒になって、2~
10個の炭素原子を含むシクロアルキル、または2~10個の炭素原子を含み、1つまた
は複数のハロゲン(Cl、F、Br、I)原子で置換されたハロシクロアルキルを形成す
る。
【0045】
少なくともある特定の実施形態では、R6およびR7のうちの1つが(本明細書で定義
される)アルキルまたはシクロアルキルであるとき、R6およびR7の他方はHである。
【0046】
記載されたように、ある特定の実施形態では、化学構造Iの環Aおよび/またはBおよ
び/またはCはピリジンであってもよい。以下のスキーム1~3は、ピリジンとして環A
および/またはBを含む、本開示の構造を形成するのに使用することができる、例示的な
非限定的な合成経路を示す:
【0047】
スキーム1:
【0048】
【0049】
スキーム2および3:
【0050】
【0051】
少なくともある特定の代替実施形態では、本開示は、眼の障害および状態、特に網膜の
状態および障害であって、ある特定の非限定的な実施形態では、網膜炎症、網膜血管新生
、網膜血管漏出、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(
例えば、滲出型AMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)(または本明細書の他の場所
に記載される他の障害または状態)を含む障害および状態を、化学構造II:
【0052】
【化4】
(式中、
kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子であり、
mは、0、1、2、3、4または5個の炭素原子であり、
nは、0、1、2、3、4または5個の炭素原子であり、
R
2は、水素(H)、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ニ
トロ(NO
2)、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素原子を含む分岐または非分岐
アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素原子を含む分岐または非分岐
アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル
、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルキルオキシベンジルおよびO-パラ-ハ
ロベンジルの群から選択され、R
2を含むベンゼン環は、前記R
2置換基の任意の組合せ
で置換され、オルト、メタ、モノ、ジ、トリおよびテトラ置換を含む任意のパターンで環
に配置される前記R
2置換基のうちの1、2、3または4つを含み、
R
3は、H、Cl、F、Br、I、NO
2、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルキルオキシ
ベンジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
3を含むベンゼン環は、前
記R
3置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリ、テトラ
およびペンタ置換を含む任意のパターンで環に配置される前記R
3置換基のうちの1、2
、3、4または5つを含み、
R
4は、H、アルキルおよびアシルから選択され、
R
5は、H、Cl、F、Br、I、NO
2、CH
3、CH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルキル鎖、OCH
3、OCH
2CH
3、3~10個の炭素
原子を含む分岐または非分岐アルコキシ鎖、ハロアルキル、ハロアルコキシル、シクロア
ルキル、ハロシクロアルキル、O-パラ-アルキルベンジル、O-パラ-アルキルオキシ
ベンジルおよびO-パラ-ハロベンジルの群から選択され、R
5を含むベンゼン環は、前
記R
5置換基の任意の組合せで置換され、オルト、メタ、パラ、モノ、ジ、トリおよびテ
トラ置換を含む任意のパターンで環に配置される前記R
5置換基のうちの1、2、3また
は4つを含み、
R
1は、カルボン酸、カルボン酸の同配体、ヒドロキサム酸、ヒドロキサム酸エステル
、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、アシルスル
ホンアミド、スルホニル尿素、アシル尿素、テトラゾール、チアゾリジンジオン、オキサ
ゾリジンジオン、オキサジアゾール-5(4H)-オン、チアジアゾール-5(4H)-
オン、オキサチアジアゾール-2-オキシド、オキサジアゾール-5(4H)-チオン、
イソオキサゾール、テトラミン酸、シクロペンタン1,3-ジオン、シクロペンタン1,
2-ジオン、スクアリン酸、置換フェノール、ヘテロアレーン、アミジン、ヒドロキシア
ミド、アルキルヒドロキシアミジン、ならびに
【0053】
【化5】
ならびにこれらの塩からなる群から選択され、
R
8およびR
9は、H、F、Cl、Br、I、アルキル、アルコキシおよびR
8がR
9
に連結したシクロアルキルからなる群から独立して選択され、
R
10およびR
11は、H、アルキルおよびR
10がR
11に連結したシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
Xは、O、NH、SまたはCH
2である)
を有する化合物を使用して処置するための活性物質組成物および方法を含む。
【0054】
より詳細には、本開示のある特定の非限定的な実施形態では、化学構造IIを有する化
合物(化合物9~14、21~24、26および28)の例は以下に示される:
【0055】
【0056】
化合物9~14、21~24、26および28は、本明細書で(例えば、表4および5
で)、それぞれ117、91、120、122、118、119、116、114、12
3、121、92および115とも番号付けされる。化合物ASD152、ASD160
、ASD178、ASD179、ASD181、ASD200、ASD203およびAS
D207は、本明細書でそれぞれ152、160、178、179、181、200、2
03および207とも称される。
【0057】
ある特定の実施形態では、化合物(ただし、本開示の方法は除く)は、構造:
【0058】
【化7】
などの、化学構造II(式中、(1)R
1=COOH、R
2~R
5=Hであり、(2)R
1=COOH、R
3=CH
3、R
2、R
4およびR
5=Hである)を有する化合物を除外
する場合がある。
【0059】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体
を、PPARαのアゴニストであり、目、特に網膜および黄斑において抗炎症および抗血
管形成活性を有する、本明細書に記載される1つまたは複数の化合物と組み合わせて含む
医薬組成物を含む。本開示に従って製剤化される医薬(治療)組成物の特定の非限定的な
例は、(a):PPARαアゴニストを、ポリマーなどの少なくとも1つの薬学的に許容
される担体と組み合わせて含む医薬組成物、ならびに(b)少なくとも1つの他の治療活
性物質、およびポリマーなどの少なくとも1つの薬学的に許容される担体と組み合わせた
PPARαアゴニストを含む。
【0060】
上述のように、本開示の活性物質は、例えば、DRおよびAMD(例えば、滲出型AM
D)、網膜炎症、網膜血管新生(NV)、網膜血管漏出、未熟児網膜症(ROP)、およ
び糖尿病性黄斑浮腫(DME)などの、網膜内皮機能障害、血管形成および炎症に関連す
る疾患および状態を処置するために使用することができる。
【0061】
本開示の活性物質は、医薬組成物が本開示に従って機能できる任意の濃度で医薬組成物
に存在してもよい。例えば、限定するものではないが、化合物は、0.0001%、0.
005%、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.2%
、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%
、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%
、1.9%および2.0%から選択される下限レベル;ならびに3%、3.5%、4%、
4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、
9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%
、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%
、65%、70%、75%、80%、85%、90%および95%から選択される上限レ
ベルを有する範囲で存在してもよい。特定の範囲の非限定的な例は、約0.0001%~
約95%の範囲、約0.001%~約75%の範囲;約0.005%~約50%の範囲;
約0.01%~約40%の範囲;約0.05%~約35%の範囲;約0.1%~約30%
の範囲;約0.1%~約25%の範囲;約0.1%~約20%の範囲;約1%~約15%
の範囲;約2%~約12%の範囲;約5%~約10%の範囲などを含む。上記に列挙され
た下限レベルの濃度から選択される下限レベルおよび上記に列挙された上限レベルの濃度
から選択される上限レベルを含む任意の他の範囲も、本開示の範囲内にある。
【0062】
製剤に含まれてもよい好適な担体、ビヒクル、賦形剤、希釈剤および他の成分は、例え
ば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed. and 22ndEdに記載さ
れる。用語「薬学的に許容される」は、担体が、活性物質の生物活性の有効性に干渉しな
い非毒性材料であることを意味する。担体の特徴は、これに限定されないが、投与経路を
含む種々の要因に依存する。
【0063】
例えば、限定するものではないが、活性物質は、生理学的に許容される医薬担体、ビヒ
クル、賦形剤または希釈剤に溶解されてもよく、溶液または懸濁液のいずれかとして投与
されてもよい。好適な薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、水、生理食塩水
、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノールまたは動物、植物もしくは合成起
源の油、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一般的に生理学的条件を近似するこ
とが認識される、および/または政府の規制によって要求される材料を含有してもよい滅
菌希釈剤を、薬学的に許容される担体として用いることができる。これに関して、滅菌希
釈剤は、生理学的に許容されるpHを得るために、塩化ナトリウム、生理食塩水、リン酸
緩衝生理食塩水および/または生理学的に許容され、および/または使用に安全である他
の物質などの(しかしこれらに限定されない)緩衝剤を含有してもよい。
【0064】
医薬組成物はまた、活性物質および薬学的に許容される担体(ならびに、存在する場合
、他の追加的な治療活性物質)に加え、1つまたは複数の追加成分を含有してもよい。存
在してもよい追加成分の例としては、これらに限定されないが、希釈剤、充填剤、塩、緩
衝液、保存剤、安定剤、溶解剤および当技術分野で周知の他の材料が挙げられる。医薬組
成物に存在してもよい追加成分の別の特定の非限定的な例は、以下で本明細書においてさ
らに詳細に考察される送達剤である。
【0065】
本開示の医薬組成物の他の実施形態は、活性物質を、活性物質の標的化送達、制御放出
および/または半減期の増大をもたらすように機能する種々の種類の薬物送達システムに
組み込むまたは封入することを含んでもよい。例えば、限定するものではないが、活性物
質を、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されるマイクロカ
プセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセ
ルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に封入することができる。また
、活性物質を、マクロエマルションまたはコロイド薬物送達システム(例えば、これらに
限定されないが、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナ
ノ粒子、ナノカプセルなど)に封入することができる。そのような技術は当業者に周知で
あり、したがってそのさらなる説明は必要がないと考えられる。
【0066】
1つの特定の非限定的な例では、医薬組成物は、その中に活性物質が配合されたリポソ
ームを含んでもよい。他の薬学的に許容される担体に加え、リポソームは、水溶液中にミ
セル、不溶性単層、液晶またはラメラ層として凝集した形態で存在する脂質などの、両親
媒性物質を含有してもよい。リポソーム製剤に好適な脂質としては、これらに限定されな
いが、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニ
ン、胆汁酸、これらの組合せなどが挙げられる。そのようなリポソーム製剤の調製は、例
えば、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,235,
871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号および米
国特許第4,737,323号に開示されるように、十分に当業者レベルの範囲内にある
。
【0067】
他の非限定的な例では、本開示の活性物質は、1つまたは複数のポリマー材料の粒子に
組み込まれてもよく、これはこのタイプの組込みが、調製物からの制御放出を可能とする
ことによって活性物質の作用期間を制御し、したがってその半減期を増大させるのに有用
な場合があるためである。この方法で利用されてもよいポリマー材料の非限定的な例とし
ては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸-グリコール
酸)、ポリ(乳酸)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、例えば、PEGとポリ(l-アス
パルトアミド)のコポリマーのミセルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0068】
ある特定の非限定的な実施形態では、活性物質を含有する医薬組成物は、対象の目に局
所適用される眼科用組成物の形態であってもよい。本明細書で使用される用語「眼科用組
成物」は、患者の目に直接局所的投与されるように特別に製剤化された任意の組成物を指
すと理解される。前記組成物は、目に局所投与されるように、または目に注射されるよう
に(すなわち、硝子体内または眼内注射)製剤化されてもよい。眼科用組成物は、目に局
所的投与することができ、活性物質が本開示に従って機能することができる任意の製剤で
提供されてもよい。例えば、限定するものではないが、眼科用組成物は、溶液、点滴薬、
ミスト/スプレー、硬膏剤および感圧接着剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、凍結
乾燥/噴霧乾燥形態などの形態で提供されてもよい。1つの特定の非限定的な実施形態で
は、眼科用組成物は、これに限定されないが、点眼製剤などの局所適用のための形態で提
供される。本開示の眼科用組成物は、使用される特定の活性物質、所望の薬物放出プロフ
ァイル、処置される状態および/または患者の病歴によって異なってもよい。さらに、本
開示の眼科用組成物は、当技術分野で周知の製剤化技術を使用して、本明細書の他の場所
で説明されるように、遅延、制御、徐放および/または持続放出をもたらすように設計さ
れてもよい。
【0069】
本明細書に記載される、または別の形で企図される医薬組成物は、活性物質を所望の送
達部位に送達するのを補助する少なくとも1つの送達剤をさらに含んでもよく、例えば、
限定するものではないが、少なくとも1つの送達剤は、目の表面への浸透を補助するため
に眼科用組成物に含まれてもよい。ある特定の実施形態では、送達剤は、目の網膜への送
達を補助することができる。例えば、局所適用を有効にするために、組成物は、所望の組
織に移動できるように、目の表面に浸透することができる必要がある場合がある。これに
は、結膜および/または角膜への浸透が含まれてもよい。
【0070】
活性物質を含有する眼科用組成物が注射によって投与されるために製剤化される場合、
組成物は、発熱物質不含水溶液または懸濁液の形態であってもよい。pH、等張性、安定
性などを十分に考慮したそのような溶液の調製は、十分に当業者の技能の範囲内である。
好適な担体としては、これに限定されないが、特に等張性である、生体適合性の薬学的に
許容されるリン酸緩衝生理食塩溶液が挙げられる。例えば、限定するものではないが、特
定の眼科用組成物は、治療化合物に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デ
キストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射
液または当技術分野で公知の他のビヒクルなどの等張性ビヒクルを含有することができる
。一般的に、ヒトへの静脈内注射のための材料は、当業者に入手可能な米国食品医薬品局
によって確立された規則に従うべきである。
【0071】
上記で本明細書において詳細に考察された眼科用組成物に加え、本開示の治療組成物は
、投与経路が、化合物が本開示に従って、すなわちPPARαアゴニストとして機能でき
るように活性物質の送達を可能とする限り、当技術分野で公知または別の形で企図される
任意の他の方法で投与されるために製剤化されてもよい。他の投与経路の例としては、こ
れらに限定されないが、局所的適用経路と全身適用経路の両方を含む、経口、局所、球後
、結膜下、経皮、非経口、皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内、硝子体内および静脈内経路が挙
げられる。
【0072】
本開示の別の非限定的な実施形態は、本明細書に記載される、または別の形で企図され
る医薬組成物のいずれかのうちの1つまたは複数を含有するキットに関する。キットは、
医薬組成物と併用して使用される、上記で本明細書に記載された第二の作用物質をさらに
含有してもよい。キットに存在する組成物が送達されるべき形態で提供されない場合、キ
ットは、薬学的に(眼科的に)許容される担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、または医薬
組成物の調製のために活性物質と混合される他の作用物質をさらに含有してもよい。組成
物および/または他の試薬を含むキットはまた、キットに含有される組成物の投与および
/または投薬のために包装される説明書とともに包装されてもよい。説明書は、印刷紙な
どの任意の有形的表現媒体、またはコンピュータ可読磁気もしくは光媒体、またはインタ
ーネットでアクセス可能なワールドワイドウェブページなどの遠隔コンピュータデータソ
ースを参照する説明書として準備されてもよい。
【0073】
キットは、単一または複数用量の医薬組成物を含有してもよい。複数用量が存在する場
合、用量は、単一の容器にバルクで配合されてもよく、複数用量は、キットに個別に配合
されてもよい。つまり、医薬組成物は、正確な投薬を促すために、単位剤形でキットに存
在してもよい。本明細書で使用される用語「単位剤形」は、ヒト対象および他の哺乳動物
のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬賦形
剤と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された、所定の量の活性材料を含有す
る。典型的な液体組成物の単位剤形としては、予め充填された、予め測定されたアンプル
またはシリンジが挙げられ、固形組成物では、典型的な単位剤形としては丸剤、錠剤、カ
プセルなどが挙げられる。そのような組成物では、活性物質は微量な成分であり(約0.
1~約50重量%、例えば、これらに限定されないが、約1~約40重量%)、残部は種
々のビヒクルまたは担体および所望の投薬形態を形成するのに役立つ加工補助剤であるこ
とがある。
【0074】
上記から明らかなように、本開示の活性物質は、変性網膜障害を処置、阻害、緩和およ
び/または防止するためのPPARαアゴニストとして機能する。したがって、本開示の
ある特定の非限定的な実施形態は、網膜炎症および血管新生に起因する網膜変性を処置、
阻害および/またはその発生を低減する方法を含む。1つの特定の、しかし非限定的な実
施形態は、対象のPPARα活性の低減と関連する1種または複数の眼の病態を処置する
、阻害するおよび/またはその発生を低減する方法を含む。方法では、本明細書に記載さ
れる、または別の形で企図される活性物質または医薬組成物のいずれかのうちの1種また
は複数は、網膜もしくは黄斑変性を経験している、または網膜もしくは黄斑変性、または
他の眼の状態もしくは障害を発症しやすい対象(例えば、これに限定されないが、哺乳動
物)に投与される。活性物質または医薬組成物は、対象の少なくとも一方の目の網膜にお
いてPPARαアゴニスト活性を有するのに有効な量で対象に投与される。
【0075】
眼の病態は、本明細書に記載される状態のいずれかであってもよく、眼の病態は、網膜
および/または黄斑変性を特徴とし得る。一実施形態では、医薬組成物は、対象の目に局
所投与されてもよい(例えば、これに限定されないが、点眼薬として)。代替実施形態で
は、医薬組成物は、眼への注射によって、または全身に投与されてもよい。
【0076】
本明細書に記載される処置に有効な活性物質の量は、従来技術を使用して、同様の状況
で得られた結果を観察することにより、当業者として診断医によって決定されてもよい。
例えば、処置の1つの非限定的な実施形態では、治療有効用量を決定する上で、これらに
限定されないが、対象の種、サイズ、年齢および一般健康状態、関与する特定の疾患およ
び/または状態、疾患および/または状態の程度、病変および/または重症度、個々の対
象の応答、投与される特定の活性物質または他の治療化合物、投与様式、投与される調製
物のバイオアベイラビリティ特性、選択される用量レジメン、併用薬の使用、および他の
関連する状況を含む多数の要因が診断医によって考慮されてもよい。本開示の医薬組成物
の治療有効量はまた、疾患および/または状態を制御および/または低減もしくは改善す
るのに有効な活性物質の量を指す。
【0077】
例えば、限定するものではないが、治療有効量の本開示で使用される活性物質は、一般
的に、約0.01μg/kg~約10mg/kg(活性成分の重量/患者の体重)の範囲
で送達するのに十分な活性成分を含有する。例えば、限定するものではないが、組成物は
、約0.1μg/kg~約5mg/kg、より詳細には約1μg/kg~約1mg/kg
を送達する。
【0078】
本開示の方法の実施は、治療有効量の医薬組成物(活性物質を含有する)を、任意の好
適な全身および/または局所的製剤で、上記に列挙された投薬量を送達するのに有効な量
で対象に投与することを含んでもよい。投薬量は、例えば、限定するものではないが、1
回で投与されてもよく、複数回で投与されてもよい(例えば、限定するものではないが、
1日に1~5回または1週間に1回もしくは2回)。医薬組成物は単独で投与されてもよ
く、本明細書に開示される本発明の概念に従い、他の治療薬と組み合わせて投与されても
よい。
【0079】
これまで概して記載した本開示のある特定の新規な実施形態は、本開示のある特定の態
様および実施形態の単なる例示を目的として含まれ、限定的であることを意図しない以下
の実施例を参照することによってより容易に理解される。以下の詳細な実施例は、上述の
ようにほんの例示として解釈されるべきであり、本開示を何ら限定するものと解釈される
べきではない。当業者であれば、種々の組成物、構造、成分、手順および方法から適切な
変形を直ちに認識するであろう。
【実施例0080】
本明細書に開示されるある特定の活性物質の抗炎症および抗血管形成活性を調査した。
すぐ下に示される7-クロロ-8-メチル-2-フェニルキノリン-4-カルボン酸(本
明細書でY-0452と示される)、フェノフィブラート、GW409544およびGW
590735を除き、本明細書に記載される化合物はいずれも、本研究以前はPPARα
アゴニスト活性を有すると報告されていない。
【0081】
【0082】
Y-0452といくつかの構造類似性を持つ一連の誘導体を、PPARαアゴニズムに
ついて評価した。化合物9~14および21~24を、PPARαの疎水性結合ポケット
をより効率的に満たす目的で設計した。
【0083】
誘導体9~14をスキーム4に示されるように合成した。市販の4-ヒドロキシベンズ
アルデヒドを種々の臭化ベンジル3~8とカップリングさせ、ベンズアルデヒド3a~8
aを得た。3a~8aを3-アミノ安息香酸で処理してそれぞれのイミンをin sit
uで製造し、次にこれをトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの添加によって還元して
、9~14を最適化されていない40~82%の収率で得た。
【0084】
【0085】
効力を向上させ、他のアイソフォームと比べたPPARαへの選択性を確立する目的で
、安息香酸誘導体9~14に加えてフェノフィブラートの古典的な「頭部」を組み込む必
要があった。これらの類似体の調製をスキーム5に示す。市販の3-ニトロフェノールを
α-ブロモイソ酪酸エチルとカップリングし15を得て、これを触媒水素化条件(H2お
よびエタノール中Pd/C)下で対応するアニリン(16)に還元した。16を3a、4
a、6aまたは8aで処理し、続いてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムで還元する
ことによって、それぞれ17~20を得た。ペンダントエステルを加水分解し、最適化さ
れていない46~88%の収率で所望の生成物21~24を得た。
【0086】
【0087】
類似体の集中したサブセットが手に入ったところで、これらの誘導体をPPARαアゴ
ニズムについて評価する試みに移った。予備評価では、市販のPPARαルシフェラーゼ
細胞レポーターアッセイ(Indigo Biosciences)を利用した。用いる
細胞株を、高レベルのhPPARαを構成的に発現するように操作した。アゴニストと相
互作用すると、hPPARαは核へ移行し、PPREに結合して、挿入されたルシフェラ
ーゼ遺伝子を含む遺伝子転写を上方調節する。ルシフェラーゼ活性を、オキシルシフェリ
ンの産生を定量化することによって間接的に検出する。まず、9~14および21~24
を5μMおよび50μMで評価し、2つの10倍の増分においてアゴニズムレベルを把握
する。
図1に示されるように、評価された濃度の一方または両方で、多数の化合物が、陽
性対照であるGW590735(5μMおよび10μM)と同等またはそれを超えるレベ
ルのhPPARαアゴニズムを示した。9/21、10/22、12/23、14/24
の直接比較は、フェノフィブラートの「頭部」を組み込むと、50μMでのPPARαア
ゴニズムのレベルが増強されることを示す。しかし、このデータはまた、21~24が5
μMで認識できる活性を誘発しない一方で、安息香酸類似体9~14はいずれもこの低濃
度で有意なPPARαアゴニズムを示すことから、フェノフィブラートの「頭部」を組み
込むと効力が減少することを示す。化合物10および22をさらに詳細な評価のために選
択し、より広範な10点用量反応評価を行ってEC
50値を得た(表3):10(5.6
μM)および22(25.3μM)。
【0088】
この4-ベンジルオキシ-ベンジルアミノ化学種がPPARαアゴニストとして作用す
ることをさらに確認するために、化合物10を種々の生化学アッセイで評価した。PPA
Rαアゴニストに予期される通り、C57BL/6Nマウス光受容体(661W)に由来
する細胞株を使用するウェスタンブロット分析によって実証されるように、10は用量依
存的にPPARαの発現を誘導した(
図2Aおよび2B)。同様に、同じ細胞株に対する
RT-PCR試験により、10での処理によって、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(Ac
adm)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(Cpt1a)、脂肪酸結合
タンパク質3(Fabp3)および溶質輸送体ファミリー25メンバー20(Slc25
a20)を含む種々のPPARαの標的遺伝子の発現が誘導されることから、PPARα
アゴニズムが確認される(
図2C)。また、化合物10を、ヒト網膜毛細血管内皮細胞(
HRCEC)を利用するin vitro創傷治癒アッセイで評価した。PPARαアゴ
ニズムは細胞遊走を低減させるが
12、10は実際に用量依存的に創傷の閉鎖を阻害する
(
図2D)。
【0089】
4-ベンジルオキシ-ベンジルアミノ誘導体が複数の生化学設定で特徴的なPPARα
アゴニスト活性を示したというエビデンスを受け、10のPPARδおよびPPARγと
比べたPPARαアゴニズムへの選択性を評価した。必須のルシフェラーゼレポーター遺
伝子の発現が各アイソフォームの外因性活性化に依存するルシフェラーゼアッセイを、P
PARδまたはPPARγのいずれかを過剰発現するように操作した同系細胞株に対して
行った。表3に示されるように、化合物10は、hPPARδおよびhPPARγと比べ
てhPPARαに≧20倍の選択性を示す一方、22はパンアゴニズムを示す。フィブラ
ート(fibrate)の「頭部」はPPARαの選択性の重要な特色であると説明されていた
が、この4-ベンジルオキシ-ベンジルアミノ化学種では有害であるように思われるため
、これは興味深い。
【0090】
【0091】
hPPARαの結合ポケットの4-ベンジルオキシ-ベンジルアミノ誘導体をより良好
に可視化するために、GW590735・hPPARα共結晶構造であるPDB2P54
を利用してドッキングを評価した。GW590735は、PPARγおよびPPARδと
比べてPPARαに≧500倍の選択性を示す選択的PPARαアゴニストである。理論
に束縛されることを望むことなく、
図3Aおよび3Bに示されるように、化合物10はG
W590735と同様の配向で結合することが予測される。しかし、興味深いことに、1
0は、いずれも以前はGW590735の選択性および効力の主なエンハンサーの重要な
決定因子と仮定されていたgem-ジメチル「頭部」およびアミドリンカードメインを欠
く。しかし、10の酸は、Ser280、Tyr314、His440およびTyr46
4と4つの水素結合を形成すると予測され、これは、Y-0452のキノリンコアの分解
(deconstruction)およびカルボン酸の転位はPPARαアゴニズムの有意な向上をもた
らすという概念と一致する。本研究者らは、この4-ベンジルオキシ-ベンジルアミノ化
学種を、GW590735(
図3A)の下に位置し、Met330、Tyr334、Gl
u282、Thr279、Met320、Val324、Leu321、Ile317お
よびMet220からなる見かけの両親媒性ポケットを利用するように拡張することがで
きるか関心を持った。本研究者らは、10のB環のエーテル結合に対してメタ位を官能化
する(スキーム5および6)と、この両親媒性ポケットに接近するための最適な経路が得
られると仮定した。本研究者らの知る限り、このポケットを利用するPPARαアゴニス
トは少数であり、アゴニズムおよび/またはアイソフォーム選択性のレベルでこのドメイ
ンを占有する効果について存在するSARはわずかである。
【0092】
両親媒性ポケットを占有することの潜在的な影響を調査するために、2つのさらなる誘
導体26および28を合成した(スキーム6)。簡潔には、市販の2,4-ジヒドロキシ
ベンズアルデヒドをアセトン中炭酸カリウムの存在下で4-メトキシベンズアルデヒドで
処理し、ジ-p-メトキシベンジル(PMB)官能化レゾルシノール25を製造した。こ
の中間体を3-アミノ安息香酸または16のいずれかにカップリングし、生成したイミン
を還元して、それぞれ類似体26およびメチルエステル27を得た。27を鹸化すると、
所望の誘導体28が75%の収率で得られた。4-メトキシベンジルモチーフを「第3の
アーム」として組み込むことは、この時点で幾分恣意的であり、4-メトキシベンジルモ
チーフが、1)予測される結合環境と適合性があり、2)既に本研究者らの化学物質イン
ベントリーにあるアルデヒドのジアルキル化によって容易に合成できるという考えに基づ
き選択した。
【0093】
【化11】
誘導体26および28を、ルシフェラーゼ細胞株におけるhPPARαアゴニスト活性
および選択性について評価した。データの分析により、安息香酸誘導体(10と26を比
較)について、追加の4-メトキシベンジル置換基は少なくとも評価した用量の範囲では
効力に影響を及ぼさず、選択性を維持することが示唆される。しかし、フィブラートの「
頭部」を含有する誘導体(22と28を比較)では、第3の置換基をB環に付加すると効
力が10倍向上した一方、パンアゴニズトプロファイルは維持された。26と28はいず
れも本研究者らが予め生成したモデルを使用してドッキングしたものであり、
図3Cに見
られるように、追加の4-メトキシベンジル基は実際に両親媒性ポケットに入り込むこと
が予測される。
【0094】
本開示の化合物の種々の非限定的な実施形態およびそれらの細胞ルシフェラーゼ活性を
表4~7に示す。化学構造IIa(表4および5)は化学構造IIのバージョンであり、
k=0である。化学構造IIb(表6および7)は化学構造IIaのバージョンであり、
R1基は環Aのパラ位にある。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
表4~7のデータは、この化学種が全細胞設定で活性であり、所望の標的であるPPA
Rαに会合することを実証する。さらに、結果は、明確な構造活性相関、調整可能なレベ
ルのアゴニズム、およびこの化学種の他のアイソフォームと比べたPPARαへの選択性
プロファイルを実証する。
図4~6に示される結果は、化合物91(10)が、細胞に基
づく活性で用量依存的活性を示し、他のアイソフォームと比べて>20倍の選択性を示す
ことを実証する。
図7~9に示される結果は、化合物190が、細胞に基づく活性で用量
依存的活性を示し、他のアイソフォームと比べて>2000倍の選択性を示すことを実証
する。これにより、この化学種の効力が向上すると同時に選択性が増強または維持され得
ることが実証される。
【0102】
図10Aおよび10Bのデータは、FIELDおよびACCORD試験で報告された通
り、ヒトにおけるPPARαの薬理学的活性化は、糖尿病性網膜症の有病率の低減に対す
る臨床的利益を有することを示す。
図10Aおよび10Bで、本研究者らは、化合物91
は十分に確立された糖尿病性網膜症(DR)のSTZ-ラットモデルでin vivoで
の有効性を示すことを実証する。
図10Aおよび
図10Bに示されるように、化合物91
は、糖尿病のラットにおいて、糖尿病性黄斑浮腫およびその結果生じる失明の主な原因で
ある網膜血管漏出を低減させる。興味深いことに、化合物91は、用量制限毒性を与える
場合があるフェノフィブラートの一般的な副作用である肝腫大の兆候を欠くように思われ
る。これらの初期結果により、化合物91は、(1)全身投与後に関連するDRモデルで
in vivoでの有効性を実証し、(2)血液眼関門を通過して網膜に到達し、(3)
バイオアベイラブルであり、(4)有効性を維持するのに十分に、代謝の初回通過および
クリアランス機序に耐え、(5)1ヶ月間の毎日の注射後に比較的安全なプロファイル(
観察可能な毒性がない)を実証するという概念実証がもたらされる。
【0103】
これらの試験は、これらに限定されないが、網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、
未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症および糖尿病性黄斑浮腫ならびに本明細
書に記載される他の眼および非眼疾患および/または状態などの眼の障害および状態を処
置するためのこの新規のクラスの化合物を含む眼科用組成物の治療的使用を実証する。
【0104】
本開示を、その態様がより詳細に理解および認識され得るようにある特定の実施形態と
ともに本明細書に記載したが、本開示はこれらの特定の実施形態に限定されるものではな
い。それに対し、すべての代替形態、修正形態および均等物は、本明細書に定義される本
開示の範囲内に含まれることが意図される。したがって、特定の実施形態を含む上述の例
は、本開示の本発明の概念の実施を例示するよう働き、示される詳細は例としてであり、
特定の実施形態の例示的考察のみを目的とし、さらに、手順ならびに本開示の原理および
概念的態様の最も有用で容易に理解される記述と思われるものを提供するために提示され
ることが理解される。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載さ
れる種々の組成物の製剤化、本明細書に記載される方法または本明細書に記載される方法
のステップもしくはステップの順序に変更がなされてもよい。さらに、本開示の種々の実
施形態が以下の特許請求の範囲に記載されるが、本開示はこれらの特定の特許請求の範囲
に限定されるものではない。
前記障害または状態が、網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(AMD)および糖尿病性黄斑浮腫(DME)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
前記障害が、炎症性腸疾患、1型糖尿病、2型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症、変形性関節症、関節リウマチ、血管炎、皮膚炎、糸球体腎炎、肝炎、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、心不全、肥満、アルツハイマー病およびメタボリックシンドロームから選択される、請求項7に記載の組成物。
前記障害または状態が、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、ヘルペス性炎症、ブドウ膜炎、血管炎、動脈炎、眼窩の炎症、視神経炎、交感性眼炎、網膜炎、黄斑浮腫、緑内障、増殖性硝子体網膜症、角膜浮腫、ブドウ膜浮腫および網膜浮腫から選択される眼の障害または状態である、請求項7に記載の組成物。
前記障害または状態が、網膜動脈または静脈閉塞、角膜移植拒絶反応、角膜血管新生、血管新生緑内障、鎌状赤血球網膜症、がん、皮膚疾患、糖尿病性潰瘍、糖尿病性腎症、心血管疾患および発作から選択される、請求項7に記載の組成物。
前記障害または状態が、網膜炎症、網膜血管新生、網膜血管漏出、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性症(AMD)、黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、ヘルペス性炎症、ブドウ膜炎、血管炎、動脈炎、眼窩の炎症、視神経炎、交感性眼炎、網膜炎、緑内障、増殖性硝子体網膜症、角膜浮腫、ブドウ膜浮腫および網膜浮腫からなる群から選択される眼の障害または状態である、請求項13に記載のキット。