(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096790
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】二次電池及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240709BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240709BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240709BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240709BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240709BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240709BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240709BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240709BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M50/119
H01M4/13
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/58
H01M50/107
H01M50/103
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024060938
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202310361113.3
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王衛東
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケイ素混合負極におけるケイ素系材料の膨張によるサイクルの減衰、膜の脱落などを改善するとともに、負極のリチウム吸蔵・放出の能力を向上させた二次電池、及び電子装置を提供する。
【解決手段】二次電池は、金属ケース、及びその内部に設けられた電極アセンブリを含み、電極アセンブリは、負極を含み、負極は、負極材料層を含み、負極材料層は、バインダーを含み、バインダーは、第一バインダー、及び第二バインダーを含み、第一バインダーは、スチレンブタジエンゴム系ポリマーから選択され、第二バインダーは、ポリアクリル酸系ポリマーから選択され、第一バインダーの重量平均分子量は、4万~30万であり、第二バインダーの重量平均分子量は、40万~200万であり、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、10%~90%である。本発明の二次電池は、高いエネルギー密度、及び高レートのサイクル特性を兼ね備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケース、及び前記金属ケースの内部に設けられた電極アセンブリを含み、
前記電極アセンブリは、負極を含み、前記負極は、負極材料層を含み、前記負極材料層は、バインダーを含み、前記バインダーは、第一バインダー、及び第二バインダーを含み、
前記第一バインダーは、スチレンブタジエンゴム系ポリマーから選択され、前記第二バインダーは、ポリアクリル酸系ポリマーから選択され、
前記第一バインダーの重量平均分子量は、4万~30万であり、前記第二バインダーの重量平均分子量は、40万~200万であり、
バインダーの質量に対して、前記第一バインダーの質量含有量は、10%~90%である
ことを特徴とする、二次電池。
【請求項2】
バインダーの質量に対して、前記第一バインダーの質量含有量は、20%~80%である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
バインダーの質量に対して、前記第一バインダーの質量含有量は、40%~60%である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第一バインダーの重量平均分子量は、8万~10万である、及び/又は、
前記第二バインダーの重量平均分子量は、80万~100万である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第一バインダーは、構造単位B、及び構造単位Cを含み、前記第二バインダーは、構造単位Aを含み、
【化1】
ここで、R
1~R
10は、独立して、水素、及びC1-C4アルキル基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第一バインダーは、スチレンブタジエンゴムから選択され、前記第二バインダーは、ポリアクリル酸から選択される、及び/又は、
前記負極材料層の質量に対して、前記バインダーの質量含有量は、1%~10%である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極材料層の質量に対して、前記バインダーの質量含有量は、3%~7%である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極材料層は、負極活物質を更に含み、
前記負極活物質は、ケイ素系材料、及び炭素系材料を含み、
前記ケイ素系材料は、ケイ素酸素化合物、及びケイ素炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記炭素系材料は、黒鉛から選択される
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活物質の質量に対して、前記ケイ素系材料の質量含有量は、3%~70%であることを特徴とする、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極活物質の質量に対して、前記ケイ素系材料の質量含有量は、10%~50%である
ことを特徴とする、請求項8に記載の二次電池。
【請求項11】
前記金属ケースは、アルミニウムケース、及び金属合金ケースから選択される、及び/又は、
前記金属ケースは、円柱状ケース、及び角形ケースから選択される
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項12】
前記金属ケースは、鋼ケースから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の二次電池を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関するものである。具体的には、本発明は、二次電池及び電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、パソコン、電動工具、電気自動車などの電力使用設備の電力が高まることに伴い、リチウムイオン電池のエネルギー密度に対する要求も高まってきている。ここで、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高めるためには、負極の容量を高めることが最も直接的かつ効果的な方法である。現在、高容量のケイ素系負極を導入することで負極の容量を高めることが多いが、サイクルの過程中のケイ素系材料の膨張は、サイクルの減衰、膜の脱落などの一連の問題を引き起こす。当該問題を解決するために、被覆型バインダー、例えば、ポリアクリル酸(PAA)系バインダーを導入することでケイ素系材料の膨張による問題を改善する必要がある。しかし、混合負極における黒鉛粒子への被覆型バインダーの過度な被覆は、黒鉛粒子のリチウムイオン輸送能力を低下させ、これにより、負極のリチウム吸蔵・放出の速度を低下させ、リチウムイオン電池を高レート放電の装置に応用できないことになる。
【発明の概要】
【0003】
先行技術の問題に鑑みて、本発明は、二次電池、及び当該二次電池を含む電子装置を提供する。本発明は、二次電池の金属ケースの構造がケイ素系材料の膨張にある程度の束縛を有することに基づき、負極におけるバインダーの種類と配合比を調整することで、ケイ素混合負極におけるケイ素系材料の膨張による問題を改善するとともに、負極のリチウム吸蔵・放出の能力を向上させ、これにより、高いエネルギー密度、及び高レートのサイクル特性を兼ね備えた二次電池とする。
【0004】
本発明の第一態様は、二次電池であって、金属ケース、及び金属ケースの内部に設けられた電極アセンブリを含み、電極アセンブリは、負極を含み、負極は、負極材料層を含み、負極材料層は、バインダーを含み、バインダーは、第一バインダー、及び第二バインダーを含み、第一バインダーは、スチレンブタジエンゴム系ポリマーから選択され、第二バインダーは、ポリアクリル酸系ポリマーから選択され、第一バインダーの重量平均分子量は、4万~30万であり、第二バインダーの重量平均分子量は、40万~200万であり、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、10%~90%である、二次電池を提供する。本発明の発明者は、検討により、金属ケースによる束縛を有する二次電池、例えば、円柱状電池において、金属ケースは、サイクルの過程中でケイ素の膨張に対して自然な抑制効果があり、これに基づき、ケイ素系材料の含有量に応じて、一部の被覆型バインダーに代わって一部のスチレンブタジエンゴム系点接触型バインダーを採用することができることを見出した。これにより、黒鉛粒子への被覆型バインダーの被覆を減少させ、リチウムイオン輸送へのバインダーの阻害を低減させ、負極のリチウム吸蔵・放出の速度を向上させ、二次電池のエネルギー密度を維持した上で、その高レートのサイクル特性を効果的に向上させることを見出した。
【0005】
いくつかの実施形態において、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、20%~80%である。第一バインダーの含有量が低すぎると、黒鉛粒子へのバインダーの被覆を効果的に改善することができず、負極のリチウム吸蔵・放出の速度が低すぎ、二次電池は、高レートでのサイクル特性が低くなる。第一バインダーの含有量が高すぎると、サイクルの過程中のケイ素系材料の膨張は増大し、同様に二次電池のサイクル特性に影響を与える。いくつかの実施形態において、第一バインダーの質量含有量は、20%~80%である。いくつかの実施形態において、第一バインダーの質量含有量は、40%~60%である。
【0006】
いくつかの実施形態において、第一バインダーの重量平均分子量は、8万~10万である。
【0007】
いくつかの実施形態において、第二バインダーの重量平均分子量は、80万~100万である。
【0008】
いくつかの実施形態において、第一バインダーは、構造単位B、及び構造単位Cを含む。
【0009】
【0010】
ここで、R4~R10は、独立して、水素、及びC1-C4アルキル基から選択される。いくつかの実施形態において、第一バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、第二バインダーは、構造単位Aを含む。
【0012】
【0013】
ここで、R1~R3は、独立して、水素、及びC1-C4アルキル基から選択される。いくつかの実施形態において、第二バインダーは、ポリアクリル酸から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、負極材料層の質量に対して、バインダーの質量含有量は、1%~10%である。いくつかの実施形態において、負極材料層の質量に対して、バインダーの質量含有量は、3%~7%である。
【0015】
いくつかの実施形態において、負極材料層は、負極活物質を更に含み、負極活物質は、ケイ素系材料、及び炭素系材料を含む。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料は、ケイ素酸素化合物(silicon-oxygen compound)、及びケイ素炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。いくつかの実施形態において、炭素系材料は、黒鉛から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、負極活物質の質量に対して、ケイ素系材料の質量含有量は、3%~70%である。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料の質量含有量は、10%~50%である。
【0017】
いくつかの実施形態において、金属ケースは、鋼ケース、アルミニウムケース、及び金属合金ケースから選択される。いくつかの実施形態において、金属ケースは、円柱状ケース、及び角形ケースから選択される。
【0018】
本発明の第二態様は、第一態様の二次電池を含む電子装置を提供する。
【0019】
本発明の二次電池は、金属ケースの存在により、サイクルの過程中でケイ素系材料の膨張に対して自然な抑制効果があり、ケイ素系材料の膨張による導電ネットワークの破壊に起因するサイクルの急速な減衰、及び膜脱落の現象をある程度で緩和することができる。これに基づき、ケイ素混合負極におけるバインダーの種類と配合比を更に調整し、ケイ素混合負極におけるケイ素系材料の膨張による問題を改善するとともに、負極のリチウム吸蔵・放出の能力を向上させ、これにより、高いエネルギー密度、及び高レートのサイクル特性を兼ね備えた二次電池とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明における実施例1、及び比較例1の二次電池のサイクル曲線を示す。
【
図2】
図2は、本発明における実施例2、及び比較例1の二次電池のサイクル曲線を示す。
【
図3】
図3は、本発明における実施例3、及び比較例2の二次電池のサイクル曲線を示す。
【
図4】
図4は、本発明における実施例4、及び比較例2の二次電池のサイクル曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面において、1は、実施例1であり、2は、実施例2であり、3は、実施例3であり、4は、実施例4であり、5は、比較例1であり、6は、比較例2である。
【0022】
以下、本発明の実施例に対して詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0023】
なお、本発明において、量、比率、及びその他の数値を範囲形式で表現する場合がある。このような範囲形式は、便宜上及び簡潔にするために使用されており、範囲の上下限として明示的に列挙される数値を含むように柔軟に理解されるだけでなく、前記範囲に含まれる各々の数値又はサブ範囲のすべてを、各々の数値又はサブ範囲が明示的に列挙されているように含むようにも理解されるべきである。
【0024】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「のうちの少なくとも一つ」、「のうちの少なくとも1個」、「のうちの少なくとも1種」、又は他の類似な用語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味することができる。例えば、項Aと項Bがリストされている場合、「AとBのうちの少なくとも一つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、又はAとBを意味する。他の実例において、項A、項B、及び項Cがリストされている場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも一つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、又はAとBとCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。
【0025】
一、二次電池
本発明が提供する二次電池は、金属ケース、及び金属ケースの内部に設けられた電極アセンブリを含み、電極アセンブリは、負極を含み、負極は、負極材料層を含み、負極材料層は、バインダーを含み、バインダーは、第一バインダー、及び第二バインダーを含み、第一バインダーは、スチレンブタジエンゴム系ポリマーから選択され、第二バインダーは、ポリアクリル酸系ポリマーから選択され、第一バインダーの重量平均分子量は、4万~30万であり、第二バインダーの重量平均分子量は、40万~200万であり、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、10%~90%である。
【0026】
先行技術において、ケイ素混合負極は、二次電池のエネルギー密度を向上させるために、不可避的に負極の膨張を増大させ、サイクルの過程中のケイ素系材料の膨張を緩和するために、大部分の被覆型バインダーであるポリアクリル酸系(PAA系)を導入する必要がある場合が多い。しかし、混合負極における黒鉛粒子への過量の被覆型バインダーの過度な被覆は、黒鉛粒子のリチウムイオン輸送能力を低下させ、これにより、二次電池の高レートでのサイクル特性に影響を与える。本発明の発明者は、検討により、金属ケースによる束縛を有する二次電池、例えば、円柱状電池において、金属ケースは、サイクルの過程中でケイ素の膨張に対して自然な抑制効果があり、これに基づいて、ケイ素系材料の含有量に応じて、一部の被覆型バインダーに代わって一部のスチレンブタジエンゴム系点接触型バインダーを採用することができることを見出した。これにより、黒鉛粒子への被覆型バインダーの被覆を減少させ、リチウムイオン輸送へのバインダーの阻害を低減させ、負極のリチウム吸蔵・放出の速度を向上させ、二次電池のエネルギー密度を維持した上で、その高レートのサイクル特性を効果的に向上させることを見出した。
【0027】
いくつかの実施形態において、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、15%、20%、25%、30%、33%、35%、37%、40%、45%、47%、50%、53%、55%、57%、60%、63%、65%、67%、70%、75%、80%、85%、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。第一バインダーの含有量が低すぎると、黒鉛粒子へのバインダーの被覆を効果的に改善することができず、負極のリチウム吸蔵・放出の速度が低すぎ、二次電池は、高レートでのサイクル特性が低い。第一バインダーの含有量が高すぎると、サイクルの過程中のケイ素系材料の膨張は増大し、同様に二次電池のサイクル特性に影響を与える。いくつかの実施形態において、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、20%~83%である。いくつかの実施形態において、第一バインダーの質量含有量は、20%~80%である。いくつかの実施形態において、第一バインダーの質量含有量は、40%~60%である。
【0028】
いくつかの実施形態において、負極材料層は、負極活物質を更に含み、負極活物質は、ケイ素系材料、及び炭素系材料を含む。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料は、ケイ素酸素化合物、及びケイ素炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料は、ケイ素化合物、単体ケイ素、及びそれらの混合物のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料は、ケイ素酸化物SiOxを含み、xは、0.6~1.5である。
【0029】
いくつかの実施形態において、負極活物質の質量に対して、ケイ素系材料の質量含有量は、3%~70%である。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料の質量含有量は、5%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、ケイ素系材料の質量含有量は、10%~50%である。
【0030】
いくつかの実施形態において、負極活物質の質量に対して、ケイ素系材料の質量含有量は、3%~25%、例えば、10%~25%であり、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、40%~60%、例えば、45%、50%、又は55%である。
【0031】
いくつかの実施形態において、負極活物質の質量に対して、ケイ素系材料の質量含有量は、30%~70%、例えば、30%~50%であり、バインダーの質量に対して、第一バインダーの質量含有量は、20%~40%、例えば、25%、30%、又は35%である。
【0032】
いくつかの実施形態において、炭素系材料は、黒鉛から選択される。いくつかの実施形態において、黒鉛は、人造黒鉛、及び天然黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0033】
いくつかの実施形態において、第一バインダーの重量平均分子量は、6万、8万、8.5万、9万、9.5万、10万、12万、14万、16万、18万、20万、22万、24万、26万、28万、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、第一バインダーの重量平均分子量は、8万~10万である。
【0034】
いくつかの実施形態において、第二バインダーの重量平均分子量は、60万、80万、85万、90万、95万、100万、120万、140万、160万、180万、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、第二バインダーの重量平均分子量は、80万~100万である。
【0035】
いくつかの実施形態において、第一バインダーは、構造単位B、及び構造単位Cを含む。
【0036】
【0037】
ここで、R4~R10は、それぞれ独立して、水素、及びC1-C4アルキル基から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、R4~R7は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される。いくつかの実施形態において、R8~R10は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される。いくつかの実施形態において、第一バインダーは、スチレンブタジエンゴムから選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、第二バインダーは、構造単位Aを含む。
【0040】
【0041】
ここで、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、及びC1-C4アルキル基から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基から選択される。いくつかの実施形態において、第二バインダーは、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、負極材料層の質量に対して、バインダーの質量含有量は、1%~10%である。いくつかの実施形態において、バインダーの質量含有量は、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、負極材料層の質量に対して、バインダーの質量含有量は、3%~7%である。
【0044】
いくつかの実施形態において、金属ケースは、アルミニウムケース、及び金属合金ケースから選択される。いくつかの実施形態において、金属ケースは、鋼ケースから選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、金属ケースは、円柱状ケース、及び角形ケースから選択される。いくつかの実施形態において、二次電池は、円柱状電池である。
【0046】
いくつかの実施形態において、負極は、負極集電体を更に含み、負極集電体は、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、導電性金属で被覆されたポリマー基板、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、負極材料層は、導電剤を更に含む。いくつかの実施形態において、導電剤は、炭素による材料、金属による材料、導電性ポリマー、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素による材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例において、金属による材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、及び銀から選択される。いくつかの実施例において、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0048】
本発明の電極アセンブリは、正極を更に含み、正極は、正極集電体、及び正極材料層を含み、正極材料層は、正極活物質、バインダー、及び導電剤を含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極集電体は、金属箔、又は複合集電体を採用してもよい。例えば、正極集電体は、アルミニウム箔を使用してもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、及び銀合金など)を高分子基材上に形成させることによって形成される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガンアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、ケイ酸鉄リチウム、ケイ酸バナジウムリチウム、ケイ酸コバルトリチウム、ケイ酸マンガンリチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、スピネル型ニッケルマンガン酸リチウム、及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、バインダーは、バインダーポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン系、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、変性ポリフッ化ビニリデン、変性SBRゴム、及びポリウレタンのうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、ポリオレフィン系バインダーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアルケニルエステル、ポリアルケニルアルコール、及びポリアクリル酸のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、導電剤は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又は炭素繊維などの炭素系材料、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維などの金属系材料、例えば、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、又はそれらの混合物を含む。
【0051】
本発明の電極アセンブリは、セパレータを更に含み、本発明の二次電池に使用されるセパレータの材料及び形状は、特に制限はなく、先行技術で開示されている任意の技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなるポリマー、又は無機物などを含む。
【0052】
例えば、セパレータは、基材層、及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する、不織布、膜、又は複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一つである。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。
【0053】
基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層、又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物とを混合してなる層であってもよい。無機物層は、無機粒子と、バインダーとを含み、無機粒子は、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも一つである。ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコキシド、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0054】
本発明の二次電池は、電解液を更に含む。本発明に用いられ得る電解液は、先行技術における既知の電解液であってもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電解液は、有機溶媒、リチウム塩、及び任意の添加剤を含む。本発明の電解液に含まれる有機溶媒は、先行技術における既知の任意の、電解液の溶媒として使用され得る有機溶媒であってもよい。本発明の電解液に使用される電解質は、特に制限はなく、先行技術における既知の任意の電解質であってもよい。本発明の電解液に含まれる添加剤は、先行技術における既知の任意の、電解液の添加剤として使用され得る添加剤であってもよい。いくつかの実施例において、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート、又はプロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、有機溶媒は、エーテル系溶媒を含み、例えば、1,3-ジオキソラン(DOL)、及びエチレングリコールジメチルエーテル(DME)のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、リチウム塩は、有機リチウム塩、及び無機リチウム塩のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムビス(オキサレート)ホウ酸LiB(C2O4)2(LiBOB)、又はリチウムジフルオロ(オキサレート)ホウ酸LiBF2(C2O4)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、及びアジポニトリルのうちの少なくとも一つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明の二次電池は、リチウムイオン電池、又はナトリウムイオン電池を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、二次電池は、リチウムイオン電池を含む。
【0057】
二、電子装置
本発明は、本発明の第一態様の二次電池を含む電子装置を更に提供する。
【0058】
本発明の電子機器又は装置は、特に限定されない。いくつかの実施例において、本発明の電子機器は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0059】
下記の実施例及び比較例において、使用した試薬、材料及び機器は、特に断りのない限り、市販で入手することができる。
【0060】
実施例及び比較例
実施例1
<負極極片の調製>
負極活物質(15wt%のケイ素材料SiO、及び85wt%の黒鉛)、バインダー(50wt%のPAA、及び50wt%のSBR)、及びその他の組成(導電材、及び分散剤)を94.1wt%:5wt%:0.9wt%の質量比で混合して負極スラリー組成物を得、脱イオン水を加え、真空ブレンダー(ここで、PAAは、高速分散の前に添加され、SBRは、高速分散の後で添加される)により負極スラリーを得、ここで、負極スラリーの固形分は、38%であった。厚さ8μmの負極集電体である銅箔の一方の表面上に負極スラリーを均一に塗布し、銅箔を85℃で乾燥させ、コート層の厚さ30μmの、片面に負極材料層が塗布された負極極片を得、当該負極集電体のもう一方の表面上に前記手順を繰り返し、両面に負極材料層が塗布された負極極片を得、コールドプレスした。
【0061】
<正極極片の調製>
正極活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウム、導電性カーボンブラック、及びバインダーであるポリフッ化ビニリデンを96.7:1.7:1.6の質量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を加え、真空ブレンダーにより正極スラリーを得、ここで、正極スラリーの固形分は、76wt%である。厚さ10μmの正極集電体であるアルミニウム箔の一方の表面上に正極スラリーを均一に塗布し、アルミニウム箔を120℃で乾燥させ、コート層の厚さ45μmの、片面に正極材料層が塗布された正極極片を得た。アルミニウム箔のもう一方の表面上に前記手順を繰り返し、即ち、両面に正極材料層が塗布された正極極片を得、コールドプレスした。
【0062】
<電解液の調製>
乾燥されたアルゴン雰囲気のグローブボックスにおいて、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びジエチルカーボネートを1:1:1の質量比で混合して有機溶媒を得た後、有機溶媒にリチウム塩であるLiPF6を加え、溶解させて均一に混合し、電解液を得た。ここで、電解液中のLiPF6の濃度は、1mol/Lであった。
【0063】
<セパレータの調製>
厚さ7μmの多孔質ポリエチレンフィルム(セルガード社提供)を採用し、目開きは、0.1μmであり、ここで、セパレータの表面には、ポリアクリル酸エステルバインダー層があり、バインダー層の塗布質量は、10±2mg/5000mm2であり、厚さは、3±1μmであった。
【0064】
<リチウムイオン円柱状電池の調製>
セパレータを正極極片と負極極片との間に介在して隔離の役割を果たすように前記調製により得られた正極極片、セパレータ、及び負極極片を順に積層させ、捲回して電極アセンブリを得た。電極アセンブリを円柱状鋼ケースに入れ、乾燥させた後電解液を注入し、静置、フォーメーション(formation)、容量グレーディング(capacity grading)、K値の測定などの工程を経てリチウムイオン円柱状電池を得た。
【0065】
実施例2~実施例11、比較例1~比較例2
表1に示すように関連パラメータを調整した以外は、実施例1と同様であった。
【0066】
測定方法
1、バインダーの組成、及び含有量の測定
バインダーの組成は、赤外分光法(FTIR)、及び核磁気共鳴(NMR)を採用して検出することができる。
【0067】
バインダーの含有量は、同時熱重量-質量分析(TG-MS)を採用して検出することができる。
【0068】
2、リチウムイオン電池のサイクル特性の測定
測定温度は、25℃であり、2Cで4.25Vまで定電流充電し、0.025Cまで定電圧充電し、5分静置した後7Cで2.5Vまで放電した。当該ステップで得られた容量を初期容量とし、2Cでの充電/7Cでの放電によりサイクル測定を行い、初期容量に対する各ステップの容量の比の値を求め、容量減衰曲線を得た。ここで、nサイクル後の容量維持率=(n回目のサイクルの放電容量/1回目のサイクルの放電容量)×100%である。
【0069】
3、リチウムイオン電池のエネルギー密度
室温(25℃±2℃)の環境下で、リチウムイオン電池を30分以上静置し、出荷基準の充電方式で出荷基準のカットオフ条件まで(充電時間は、8h以下である)充電し、30分以上静置し、放電エネルギーE(Wh)を計測し、マイクロメーターやノギスでリチウムイオン電池の直径、及び高さ方向の最大値を測定し、体積V(L)を計測し、電池放電の体積エネルギー密度VED(Wh/L)=E/Vである。
【0070】
【0071】
表1における比較例1及び実施例1のデータ、並びに
図1より、比較例1に採用されたバインダーは、100%の被覆型バインダー(PAA)であることがわかる。これは、25℃での高レート充放電(2C、及び7C)のサイクルにおいて、黒鉛材料粒子へのPAAの過度な被覆により、黒鉛材料の表面のリチウムイオン輸送能力が低下し、これにより、負極のリチウム吸蔵・放出の速度に影響を与えるため、高レートのサイクルの容量減衰が速すぎることの原因となることが分かる。実施例1において、一部のPAAに代わって50%の点接触型バインダーSBRを導入することにより、黒鉛材料粒子の表面のバインダーの被覆面積を減少させ、負極のリチウム吸蔵・放出の速度を向上させ、これにより、高レートのサイクル特性を改善する。実施例2において、PAAとSBRとの割合を調整し、実施例2と比較例1のリチウムイオン電池の性能比較は、
図2に示され、高レートのサイクル特性も、明らかに改善される。
【0072】
実施例4及び実施例5において、ケイ素系材料の混合割合を変更した。ここで、実施例4及び実施例5と、比較例2とのサイクル特性の比較は、
図3及び
図4に示される。同様に、比較例2と比較して、被覆型バインダー(PAA)及び点接触型バインダー(SBR)を異なる割合で採用することにより、黒鉛粒子への被覆型バインダーの被覆を減少させ、負極のリチウム吸蔵・放出の能力を向上させることで、高レートのサイクル特性が明らかに改善される。
【0073】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明、及び記載したが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。むしろ、当業者は、添付の請求の範囲に記載された本発明の主旨、及び範囲から逸脱しない場合、記載された実施形態に対して様々な修飾、及び変更を行うことができることを認識するであろう。
【外国語明細書】