IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アステリアス バイオセラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-96794脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞
<>
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図1
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図2
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図3
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図4A
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図4B
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図5
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図6A
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図6B
  • 特開-脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096794
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】脊髄損傷の治療のための多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20240709BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K35/30
A61P25/02
A61P25/00
A61L27/38 100
A61P37/06
A61K45/00
A61K35/545
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061113
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2022096318の分割
【原出願日】2017-09-14
(31)【優先権主張番号】62/394,226
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/449,580
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/518,591
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514000015
【氏名又は名称】アステリアス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】6300 Dumbarton Circle, Fremont, California 94555 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト,エドワード,ディー.,サード
(72)【発明者】
【氏名】レブコフスキー,ジェーン エス.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外傷性脊髄損傷を有するヒトを治療する医薬の製造のための、多能性幹細胞由来分化細胞の使用を提供する。
【解決手段】外傷性脊髄損傷を有するヒト対象に投与することにより上肢運動機能を改善する医薬の製造のための、多能性幹細胞に由来する同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の有効量の使用であって、ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞がNG2およびPDGF-Rαを発現し、ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、約10×10から50×10個の細胞を含み、かつ、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから15~60日後の間に脊髄損傷部位のおよそ2~10mm尾側に注入され、対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約1~12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善し、運動レベルは2011年に改訂された脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準(ISNCSCI)に従って0~5のスケールの範囲である、使用である。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷性脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善する方法であって、前記対象に、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む治療有効量の組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
組成物を投与することが、組成物を脊髄損傷部位に注入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物が、脊髄損傷中心のおよそ2~10mm尾側に注入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が、脊髄損傷中心のおよそ5mm尾側に注入される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、脊髄損傷部位に生着することができる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
組成物が、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから15~60日後の間に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組成物が、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから20~40日後の間に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象に低用量免疫抑制剤レジメンを施すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、約2×10から50×10個のAST-OPC1細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、約10×10個のAST-OPC1細胞を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
組成物が、約20×10個のAST-OPC1細胞を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象が、頸髄損傷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約1~12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
対象の運動レベルの改善が両側性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象の運動レベルの改善が一側性である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約3カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
外傷性脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善するのに使用するための医薬組成物であって、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む医薬組成物。
【請求項21】
生物学的に許容され得る担体をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ヒト対象における外傷性脊髄損傷の治療に使用するための医薬組成物であって、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む医薬組成物。
【請求項25】
生物学的に許容され得る担体をさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項26に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月14日に出願された米国仮出願第62/394,226号;2017年1月23日に出願された米国仮出願第62/449,580号;および2017年6月12日に出願された米国仮出願第62/518,591号に対する優先権を主張し、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、幹細胞生物学およびオリゴデンドロサイト前駆細胞の分野に関する。より具体的には、本開示は、オリゴデンドロサイト前駆細胞組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
毎年12,000人を超える米国人が脊髄損傷(SCI)を負っており、米国ではおよそ130万人が脊髄損傷を患っていると推定されている。外傷性SCIは、最も一般的には20代から30代の個体に強い影響を与え、若く、以前は健康だった個体に高レベルの恒久的な障害をもたらす。SCIを有する個体は、障害された肢機能を有するだけでなく、障害された腸機能および膀胱機能、感覚鈍麻、痙縮、自律神経異常反射、血栓症、性機能障害、感染症の増加、褥瘡性潰瘍および慢性疼痛にも苦しんでおり、これらはそれぞれ、生活の質に著しく強い影響を与えることがあり、場合によっては、命を脅かすことさえあり得る。20歳で頸髄損傷を負った個体の平均余命は、SCIを持たない同様の年齢の個体よりも20~25歳低い(NSCISC Spinal Cord Injury Facts and Figures 2013)。
【0004】
脊髄損傷の臨床効果は、損傷の部位と程度によって異なる。損傷のレベルより低く恒久的に破壊される可能性のある神経系は、四肢筋の制御の喪失ならびに体温および痛感の保護的役割の喪失を含むだけでなく、心血管系、呼吸、発汗、排便制御、膀胱制御、および性機能にも強い影響を与える(Anderson KD、Friden J、Lieber RL.Acceptable benefits and risks associated with surgically improving arm function in individuals living with cervical spinal cord injury.Spinal Cord.2009 Apr;47(4):334~8.)。これらの喪失は、近代医療までは急速に致命的であった褥瘡および尿路感染症などの一連の二次的問題を引き起こす。脊髄損傷はしばしば、脊髄の神経回路における適切なレベルの興奮性を維持する、それらの無意識的な制御メカニズムを取り除く。その結果、脊髄運動ニューロンは自発的に活動亢進となり得、衰弱性の硬直、ならびに制御不能な筋肉の痙攣または痙縮を引き起こす。この活動亢進はまた、感覚系に慢性的な神経因性疼痛および感覚異常、しびれ、刺痛、痛み、および灼熱感を含む不快な感覚を生じさせることがある。脊髄損傷患者の最近の質問調査では、歩行機能の回復は、これらの患者が回復することを望む最高ランクの機能ではなく、多くのケースにおいて、自発的活動亢進後遺症からの軽減が最も重要であった(Anderson KD、Friden J、Lieber RL.Acceptable benefits and risks associated with surgically improving arm function in individuals living with cervical spinal cord injury.Spinal Cord.2009 Apr;47(4):334~38)。
【0005】
損傷自体、ならびに浮腫、出血および炎症によるその後の二次的効果により、損傷を受けた脊髄において観察される複数の病状がある(Kakulas BA.The applied neuropathology of human spinal cord injury.Spinal Cord.1999 Feb;37(2):79~88)。これらの病状は、軸索の切断、脱髄、実質の空洞化、ならびに線維性瘢痕組織、グリオーシス、および異栄養性石灰化などの異所性組織の生成を含む(Anderson DK、Hall ED.Pathophysiology of spinal cord trauma.Ann Emerg Med.1993 Jun;22(6):987~92; Norenberg MD、Smith J、Marcillo A.The pathology of human spinal cord injury:defining the problems.J.Neurotrauma.2004 Apr;21(4):429~40)。神経栄養因子と軸索の髄鞘形成の支持の両方を提供するオリゴデンドロサイトは、SCI後の細胞死の影響を受けやすく、したがって重要な治療標的となる(Almad A、Sahinkaya FR、Mctigue DM.Oligodendrocyte fate after spinal cord injury.Neurotherapics 2011 8(2):262~73)。オリゴデンドロサイト集団の置換は、残存している軸索および損傷した軸索の両方を支持し得、また、軸索を再ミエリン化して電気伝導を促進し得る(Cao Q、He Q、Wang Yetら.Transplantation of ciliary neurotrophic factor-expressing adult oligodendrocyte precursor cells promotes remyelination and functional recovery after spinal cord injury.J.Neurosci.2010 30(8):2989~3001)。
【0006】
AST-OPC1は、特定の分化プロトコールを使用してヒト胚性幹細胞(hESC)から産生されるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団である(Nistor GI、Totoiu MO、Haque N、Carpenter MK、Keirstead HS.Human embryonic stem cells differentiate into oligodendrocytes in high purity and myelinate after spinal cord transplantation.Glia.2005 Feb;49(3):385~96)。AST-OPC1は、ネスチンおよびNG2を含むオリゴデンドロサイト前駆体に関連する数種の分子の発現によって特徴付けられる。この細胞はさらに、ニューロン、アストロサイト、内胚葉、中胚葉、およびhESCなどの他の細胞型に存在することが知られているマーカーのそれらの最小限の発現または欠如によってさらに特徴付けられる(Keirstead HS、Nistor G、Bernal G、Totoiu M、Cloutier F、Sharp K、Steward O.Human embryonic stem cell-derived oligodendrocyte progenitor cell transplants remyelinate and restore locomotion after spinal cord injury.Neurosci.2005 May 11;25(19):4694~705;Zhang YW、Denham J、Thies RS.Oligodendrocyte progenitor cells derived from human embryonic stem cells express neurotrophic factors.Stem Cells Dev.2006 Dec;15(6):943~52)。インビトロにおいて、AST-OPC1はまた、感覚ニューロンからの神経突起伸長を支持する拡散性因子も産生する(Zhang YW、Denham J、Thies RS.Oligodendrocyte progenitor cells derived from human embryonic stem cells express neurotrophic factors.Stem Cells Dev.2006 Dec;15(6):943~52)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多能性幹細胞由来の神経細胞は、動物モデルにおいてCNS損傷および障害を治療するために研究者らによって使用されてきた。しかしながら、ヒトにおける臨床適用のためのそのような治療法の開発には障害が残っている。今日まで、脊髄損傷の治療またはCNS修復および/または再ミエリン化を必要とする他の神経学的状態の治療のためにヒト多能性幹細胞由来の分化細胞集団を利用する、上市された治療法はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本明細書に記載の様々な実施形態において、本開示は、とりわけ、多能性幹細胞に由来するオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団、および脊髄損傷の治療におけるその使用方法を提供する。
【0009】
1つの実施形態において、本開示は、脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善する方法であって、前記対象に、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、同種異系ヒトOPCは、脊髄損傷部位に生着することができる。特定の実施形態において、組成物を投与することは、組成物を脊髄損傷部位に注入することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、脊髄損傷中心のおよそ2~10mm尾側に注入される。さらなる実施形態において、組成物は、脊髄損傷中心のおよそ5mm尾側に注入される。いくつかの実施形態において、対象は頸髄損傷を有する。他の実施形態において、対象は胸髄損傷を有する。
【0010】
特定の実施形態において、組成物は、対象が外傷性脊髄損傷を受けた後に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、脊髄損傷から14~60日後、例えば、損傷から14~30日後の間、損傷から20~40日後の間、損傷から40~60日後の間に投与される。特定の実施形態において、組成物は、損傷の約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40日後に投与される。
【0011】
特定の実施形態では、対象の上肢運動機能の改善は、同種異系ヒトOPCを含む組成物の投与後の対象の上肢運動スコア(UEMS)におけるベースラインに対する増加または変化として測定され得る。いくつかの実施形態において、対象のUEMSは、組成物の投与から30~400日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態では、対象のUEMSにおける増加は、同種異系ヒトOPCの集団を投与されなかった対照対象におけるUEMSの任意の潜在的増加よりも検出可能かつ有意である。いくつかの実施形態において、対象のUEMSは、組成物の投与から30日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態において、対象のUEMSは、組成物の投与から60日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態において、対象のUEMSは、組成物の投与から90日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態において、対象のUEMSは、組成物の投与から180日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態において、対象のUEMSスコアは、組成物の投与から270日以内に検出可能に増加する。いくつかの実施形態において、対象のUEMSスコアは、組成物の投与から360日以内に検出可能に増加する。
【0012】
特定の実施形態において、対象のUEMSスコアは、同種異系ヒトOPCを含む組成物の投与から約1~24カ月後の期間の間、初期のUEMSベースライン測定値から改善し続ける。いくつかの実施形態では、ベースラインUEMS≦3カ月でのUEMS≦6カ月でのUEMS≦9カ月でのUEMS≦12カ月でのUEMSとなるように、同種異系ヒトOPC組成物の投与後に対象のUEMSスコアが経時的に改善する。特定の実施形態では、対象のUEMSスコアは、同種異系ヒトOPC組成物の投与18カ月後まで、またはそれ以降も改善し続ける。特定の実施形態では、対象のUEMSスコアは、同種異系ヒトOPC組成物の投与から24カ月後まで、またはそれ以降も改善し続ける。
【0013】
特定の実施形態では、同種異系ヒトOPCの投与から1~24カ月後の経過にわたる対象のUEMS改善は、約1から約30ポイントの範囲、例えば約2ポイント、例えば約4ポイント、例えば約6ポイント、例えば約8ポイント、例えば約10ポイント、例えば約12ポイント、例えば約14ポイント、例えば約16ポイント、例えば約18ポイント、例えば約20ポイント、例えば約22ポイント、例えば約24ポイント、例えば約26ポイント、例えば約28ポイント、例えば約30ポイントであり得る。いくつかの実施形態では、同種異系ヒトOPCの投与から1~18カ月後の経過にわたる対象のUEMSスコアの改善は、20ポイントを超え得る。
【0014】
特定の実施形態では、対象の上肢運動機能の改善は、改善された運動レベル回復(脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準(ISNCSCI:Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury)に基づき定義される運動レベル)として測定され得る。いくつかの実施形態では、対象の運動レベルの改善は、同種異系ヒトOPCの集団を投与されなかった対照対象における任意の潜在的な運動レベルの改善よりも有意である。いくつかの実施形態では、対象の運動レベルの改善は、同種異系ヒトOPC組成物の投与から約1~12カ月後の時点で約1段階のレベルであり得る。いくつかの実施形態では、対象の運動レベルの改善は、同種異系ヒトOPC組成物の投与から約1~12カ月後の時点で約2段階のレベルであり得る。いくつかの実施形態において、対象の運動レベルの改善は、同種異系ヒトOPC組成物の投与から約1~12カ月後の時点で2段階を上回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、対象の測定される運動レベルは、同種異系ヒトOPC組成物の投与後約1~24カ月の期間の間に、例えば、約1カ月間、約2カ月間、約3カ月間、約4カ月間、約5カ月間、約6カ月間、約7カ月間、約8カ月間、約9カ月間、約10カ月間、約11カ月間、約12カ月間、約13カ月間、約14カ月間、約15カ月間、約16カ月間、約17カ月間、約18カ月間、約19カ月間、約20カ月間、約21カ月間、約22カ月間、約23カ月間または約24カ月間に、初期のベースライン測定値から改善し続ける。いくつかの実施形態において、対象の測定される運動レベルは、同種異系ヒトOPC組成物の投与後約12カ月の期間の間に、初期のベースライン測定値から改善し続ける。いくつかの実施形態では、運動レベルの改善は一側性であり得る。他の実施形態では、運動レベルの改善は両側性であり得る。
【0015】
特定の実施形態では、対象の上肢運動機能の改善は、GRASSP(Graded Redefined Assessment of Strength, Sensibility and Prehension:強度、感覚および把握の段階的な再定義された評価)などの様々な神経学的検査および臨床的障害測定を含むが、これらに限定されない、UEMSまたは運動レベル回復以外の手段を使用して測定または評価されてもよい。特定の実施形態では、対象の上肢運動機能の改善は、例えばMRIを使用することによって、または例えばSCIM(spinal cord independence measure:脊髄障害自立度評価法)を使用して対象の機能的自立度を評価することなどによって、間接的に測定され得る。運動機能改善を検出または評価するための当技術分野において公知の任意の手段が使用され得る。
【0016】
特定の実施形態では、方法は、対象に低用量免疫抑制剤レジメンを施すことをさらに含む。特定の実施形態において、免疫抑制剤レジメンは、組成物の投与後約46日目まで約3~7ng/mLのトラフ血中濃度を維持するように調整された約0.03mg/kg/日のタクロリムスの経口投与を含み、続いて漸減させ、同種異系由来OPCの集団を含む組成物の投与後約60日目に免疫抑制剤を中断する。
【0017】
特定の実施形態において、方法は、同種異系オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団を含む組成物を投与することを含み、ここで、組成物の用量は約2×10個から約50×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約50×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約40×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約30×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約20×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約10×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約5×10個のAST-OPC1を含む。いくつかの実施形態において、組成物の用量は約2×10個のAST-OPC1を含む。
【0018】
特定の実施形態では、OPCは、脊髄損傷部位への組成物の投与後、約90日以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。特定の実施形態では、OPCは、脊髄損傷部位への組成物の投与後、約1年以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、OPCは、脊髄損傷部位への組成物の投与後、約2年以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、OPCは、脊髄損傷部位への組成物の投与後、約3年以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、OPCは、約4年以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、OPCは、約5年以上の期間にわたって、前記対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。
【0019】
追加の実施形態では、本開示は、脊髄損傷を有するヒト対象において、前記対象に投与された場合に、上肢運動機能を改善することができる同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団を含む組成物を含む容器を提供する。本開示のOPCは、任意の種類のヒト多能性幹細胞に由来し得る。特定の実施形態では、OPCの集団は、ヒト胚性幹細胞(hESC)のインビトロで分化した子孫である。他の実施形態では、OPCは、誘導多能性幹細胞(iPSC)などの、ヒト胚性幹細胞以外の多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である。特定の実施形態では、対象は頸髄損傷を有する。他の実施形態において、対象は胸髄損傷を有する。
【0020】
本発明の性質および利点をより完全に理解するために、添付の図面とあわせて以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、外傷性脊髄損傷を有する対象におけるAST-OPC1のフェーズ1/2a用量増加試験の試験デザインおよびスケジュールを示している。
図2図2は、対象コホートおよびAST-OPC1投与量に関する試験デザインを示している。2M=コホート対象は2×10個のAST-OPC1の注入を受ける;10M=コホート対象は10×10個のAST-OPC1の注入を受ける;20M=コホート対象は20×10個のAST-OPC1の注入を受ける。AIS A=アメリカ脊髄損傷協会(ASIA)障害スケール(AIS)グレードA脊髄損傷、完全な感覚運動障害。AIS B=アメリカ脊髄損傷協会(ASIA)障害スケール(AIS)グレードB脊髄損傷、完全な運動障害、完全でない感覚障害。例えば、アメリカ脊髄損傷協会:脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準、2000年改訂;ジョージア州アトランタ、2008年リプリントを参照。
図3図3は、AST-OPC1注入手順を示している。注入は、テーブルに取り付けられたシリンジ位置決め装置(SPD)を用いて行われた。コホート1および2の対象は、50μlの注入量で脊髄損傷部位への単回実質内注入を受けた。
図4A図4Aは、2016年9月において利用可能なコホート1の上肢運動機能回復データを示している。図4A:コホート1(2×10個のAST-OPC1)およびコホート2(10×10個のAST-OPC1)の全対象が、ベースラインと比較して改善された上肢運動スコア(UEMS)を示した。AST-OPC1注入後90日目における平均UEMS改善は、コホート1(N=3)では5.0ポイント、コホート2(N=4)では9.5ポイントに等しかった。
図4B図4Bは、2016年9月において利用可能なコホート2の上肢運動機能回復データを示している。図4B:注入後90日目において、コホート2の対象の50%(4例中2例)で運動レベルが1段階改善し、対象の50%(4例中2例)は少なくとも一方の側で運動レベルが2段階改善した。運動レベルは、脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準(ISNCSCI;Kirshblum,SCら、脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準(2011年改訂)、The Journal of Spinal Cord Medicine,2011 34(6)、535~546を参照)に基づき定義された。UEMSおよび初期の運動レベル/運動レベル改善の評価については、Steeves JDら、外傷性頸髄損傷後の自発的運動回復の程度、Spinal Cord 2011 49:257~265;およびSteeves JDら、Outcome Measures for Acute/Subacute Cervical Sensorimotor Complete (AIS-A) Spinal Cord Injury During a Phase 2 Clinical Trial,Top Spinal Cord Inj Rehabil 2012;18(1):1014を参照。
図5図5は、密接に一致させた歴史的対照をEMSCIデータベースから生成するために使用されたマッチング基準を示している。
図6A図6Aは、密接に一致させた歴史的対照と比較した、コホート2の対象におけるベースラインからのUEMSの経時的な変化(+/-SEM)によって測定された運動機能回復を示している。データは12カ月の追跡調査を通して示されている。SEM=平均値の標準誤差。
図6B図6Bは、コホート1の対象および密接に一致させた歴史的対照と比較した、コホート2の対象におけるベースラインからのUEMSの経時的な変化(+/-SEM)によって測定された運動機能回復を示している。データは12カ月の追跡調査を通して示されている。SEM=平均値の標準誤差。
図7図7は、12カ月の追跡調査来診を通して、コホート2の対象において運動レベルが2段階以上改善した対象のパーセントとして測定された運動機能回復を示している。コホート2の対象が、EMSCIデータベースからの密接に一致させた歴史的対照と比較された。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本組成物および方法を記載する前に、記載されている特定のプロセス、組成物、または方法論は変化し得るため、本開示はこれらに限定されないことが理解されるべきである。また、説明において使用されている用語は、特定のバージョンまたは実施形態を説明することのみを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。例えば、1つの実施形態に関して例示された特徴は、他の実施形態に組み込まれることができ、また、特定の実施形態に関して例示された特徴は、その実施形態から削除されることができる。よって、本開示は、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の特徴または特徴の組合せが、排除または省略され得ることを意図している。加えて、本明細書において示唆される様々な実施形態に対する多数の変形および追加は、本開示に照らして当業者には明らかであり、本開示から逸脱するものではない。他の例において、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知の構造、インターフェース、およびプロセスは、詳細には示されていない。本明細書のいかなる部分も、本発明の全範囲のいかなる部分の否定をも、もたらすと解釈されることを意図していない。したがって、以下の説明は、本開示のいくつかの特定の態様を例示することを意図しており、それらの入れ替え、組合せ、および変形を全て網羅的に特定することを意図してはいない。
【0023】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的な用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本開示の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。
【0024】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0025】
文脈がそうでないことを示さない限り、本明細書において記載される開示の様々な特徴は、任意の組合せで使用され得ることが特に意図される。さらに、本開示は、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の特徴または特徴の組合せが、排除または省略され得ることも意図している。
【0026】
本明細書に開示の方法は、記載の方法を達成するための1つまたは複数の工程または動作を含むことができる。方法の工程および/または動作は、本発明の範囲から逸脱することなく互いに交換され得る。別の言い方をすれば、実施形態の適切な作動のために工程または動作の特定の順序が要求されない限り、特定の工程および/または動作の順序および/または使用は、本発明の範囲から逸脱することなく修正され得る。
【0027】
本開示の説明および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる可能な組合せを指し、かつ包含し、そして代替(「または」)において解釈される場合、組合せの欠如を指し、かつ包含する。
【0029】
百分率、密度、体積などの測定可能な値を指す場合に本明細書において使用される用語「約(about)」および「およそ(approximately)」は、特定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、または±0.1%の変動さえも包含することを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「XからYの間」および「約XからYの間」などの句は、XおよびYを含むと解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「約XからYの間」などの句は、「約Xから約Yの間」を意味し、「約XからYまで」などの句は「約Xから約Yまで」を意味する。
【0031】
用語「AST-OPC1」は、本明細書において開示される特定の分化プロトコールに従って未分化のヒト胚性幹細胞(uhESC)から得られる、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)および他の特徴付けられた細胞型の混合物を含む、特定の、特徴付けられた、インビトロで分化した細胞集団を指す。
【0032】
免疫細胞化学(ICC)、フローサイトメトリー、および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるAST-OPC1の組成分析は、細胞集団が主としてオリゴデンドロサイト表現型の神経系統細胞を含んでなることを実証している。他の神経系統細胞、すなわちアストロサイトおよびニューロンは、低い頻度で存在する。集団中に検出される唯一の非神経細胞は、上皮細胞である。中胚葉、内胚葉系統細胞およびuhESCは通常、アッセイの定量または検出を下回っている。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴデンドロサイト前駆細胞」(OPC)は、成熟オリゴデンドロサイトを含む子孫を形成するようにコミットされた神経外胚葉/グリア系統の細胞を指す。これらの細胞は典型的には、特徴的なマーカーであるNG2およびPDGF-Rαを発現する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、所望の結果をもたらすのに十分な投薬、投薬レジメン、または量を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」、「治療された(treated)」、または「治療すること(treating)」は、治療的処置または予防的または予防的措置の両方を指すことができ、ここで、その目的は、望ましくない生理学的状態、症状、障害または疾患を予防または減速(軽減)すること、あるいは有益または所望の臨床結果を得ることである。いくつかの実施形態では、この用語は治療および予防の両方を指し得る。本開示の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果は、以下のうちの1つまたは複数を含み得るが、これらに限定されない:症状の軽減;状態、障害または疾患の程度の減少;状態、障害または疾患の状況の安定化(すなわち、悪化していない);状態、障害または疾患の発症の遅延または進行の遅延;状態、障害または疾患の状況の回復;および検出可能または検出不可能にかかわらず、状態、障害または疾患の寛解(部分的または全体的にかかわらない)、または増強もしくは改善。治療は、臨床的に有意な反応を引き出すことを含む。治療はまた、治療を受けていない場合の予想生存期間と比較して生存期間を延長することを含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「対象」はヒトまたは動物を指す。いくつかの実施形態では、用語「対象」は男性を指す。いくつかの実施形態では、用語「対象」は女性を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「移植(implantation)」または「移植(transplantation)」は、適切な送達技術を使用した(例えば、注入装置を使用した)標的組織への細胞集団の投与を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「生着(engraftment)」および「生着すること(engrafting)」とは、移植された組織または細胞(すなわち、「移植片組織」または「移植片細胞」)の対象の身体への組込みを指す。移植後180日以降の移植部位またはその付近における移植片組織または移植片細胞の存在は、生着を示す。特定の実施形態では、移植片組織の存在を検出するために、(例えば、MRIイメージングなどの)イメージング技術が使用され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「同種異系」および「同種異系由来」とは、対象以外の供給源に由来する、したがって対象と遺伝的に同一ではない、細胞集団を指す。特定の実施形態では、同種異系細胞集団は、培養した多能性幹細胞に由来する。特定の実施形態では、同種異系細胞集団は、hESCに由来する。他の実施形態では、同種異系細胞集団は、誘導多能性幹(iPS)細胞に由来する。さらに他の実施形態では、同種異系細胞集団は、霊長類多能性(pPS)細胞に由来する。
【0040】
本明細書において互換的に使用される用語「中枢神経系」および「CNS」は、脊椎動物の脳および脊髄を含むが、これらに限定されない、身体の1つまたは複数の活動を制御する神経組織の複合体を指す。
【0041】
未分化多能性幹細胞の増殖および培養
未分化多能性幹細胞の増殖および培養の方法は、以前に記載されている。多能性幹細胞の組織および細胞培養に関して、読者は、当技術分野で利用可能な多数の刊行物、例えば、Teratocarcinomas and Embryonic Stem cells:A Practical Approach(E.J.Robertson編、IRL Press Ltd.1987);Guide to Techniques in Mouse Development(P.M.Wassermanら編、Academic Press 1993);Embryonic Stem Cell Differentiation in Vitro(M.V.Wiles、Meth.Enzymol.225:900,1993);Properties and Uses of Embryonic Stem Cells: Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy(P.D.Rathjenら、Reprod.Fertil.Dev.10:31,1998;およびR.I.Freshney、Culture of Animal Cells,Wiley-Liss,New York,2000)のいずれかを参照されたい。
【0042】
特定の実施形態では、方法は、多能性幹細胞株で実施され得る。他の実施形態では、方法は、胚性幹細胞株で実施され得る。1つの実施形態では、方法は、H1、H7、H9、H13、またはH14細胞株に由来する複数の未分化幹細胞で実施され得る。別の実施形態では、未分化幹細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS)株に由来し得る。別の実施形態では、方法は、霊長類多能性幹(pPS)細胞株で実施され得る。さらに別の実施形態では、未分化幹細胞は、受精することなくhESCを生成するように刺激された胚である、単為生殖細胞に由来し得る。
【0043】
1つの実施形態では、未分化多能性幹細胞は、追加のフィーダー細胞なしに未分化状態に維持され得る(例えば、(2004)Roslerら、Dev.Dynam.229:259を参照)。無フィーダー培養は典型的には、分化することなく細胞の増殖を促進する因子を含有する栄養培地によって支持される(例えば、米国特許第6,800,480号を参照)。1つの実施形態では、そのような因子を含有する馴化培地が使用され得る。馴化培地は、そのような因子を分泌する細胞と共に培地を培養することによって取得され得る。適切な細胞は、これらに限定されるものではないが、照射された(~4,000Rad)初代マウス胚性線維芽細胞、テロメア化マウス線維芽細胞、またはpPS細胞由来の線維芽細胞様細胞(米国特許第6,642,048号)を含む。培地は、20%の血清代替物および4ng/mLのbFGFを補充したノックアウトDMEMのような無血清培地中にフィーダーをプレーティングすることによって馴化され得る。1~2日間馴化させた培地は、さらにbFGFを補充し、そして1~2日間pPS細胞の培養を支持するために使用され得る(例えば、WO01/51616;Xuら、(2001)Nat.Biotechnol.19:971を参照)。
【0044】
あるいは、未分化形態での細胞の増殖を促進する追加の因子(例えば、線維芽細胞増殖因子またはフォルスコリンなど)が補充された、新鮮なまたは非馴化培地が使用され得る。非限定的な例は、40~80ng/mLのbFGFを補充し、そして、SCF(15ng/mL)、またはFlt3リガンド(75ng/mL)を場合により含む、X-VIVO(商標)10(Lonza、メリーランド州ウォーカーズビル)またはQBSF(商標)-60(Quality Biological Inc.、メリーランド州ゲーサーズバーグ)のような基本培地を含む(例えば、Xuら、(2005)Stem Cells 23(3):315を参照)。これらの培地調合物は、他の系におけるものの2~3倍の速度で細胞増殖を支持するという利点を有する(例えば、WO03/020920を参照)。1つの実施形態では、hESCなどの未分化多能性細胞が、bFGFおよびTGFβを含む培地中で培養され得る。bFGFの非限定的な例示的濃度は、約80ng/mlを含む。TGFβの非限定的な例示的濃度は、約0.5ng/mlを含む。
【0045】
1つの実施形態において、未分化多能性細胞は、フィーダー細胞、典型的には胚性または胎児組織由来の線維芽細胞の層上で培養され得る(Thomsonら(1998)Science 282:1145)。フィーダー細胞は、とりわけ、ヒトまたはマウスの供給源に由来し得る。ヒトフィーダー細胞は、様々なヒト組織から単離されることができ、またはヒト胚性幹細胞の線維芽細胞への分化を介して誘導されることができる(例えば、WO01/51616を参照)。1つの実施形態において、使用され得るヒトフィーダー細胞は、胎盤線維芽細胞(例えば、Genbacevら(2005)Fertil.Steril.83(5):1517を参照)、卵管上皮細胞(例えば、Richardsら(2002)Nat.Biotechnol.,20:933を参照)、包皮線維芽細胞(例えば、Amitら(2003)Biol.Reprod.68:2150を参照)、および子宮内膜細胞(例えば、Leeら(2005)Biol.Reprod.72(1):42を参照)を含むが、これらに限定されない。
【0046】
様々な固体表面が、未分化多能性細胞の培養において使用され得る。これらの固体表面は、6ウェル、24ウェル、96ウェル、または144ウェルプレートなどの標準的な市販の細胞培養プレートを含むが、これらに限定されない。他の固体表面は、マイクロキャリアおよびディスクを含むが、これらに限定されない。未分化多能性細胞を増殖させるのに適した固体表面は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、メリネックス、サーマノックス、またはそれらの組合せなどのガラスまたはプラスチックを含むが、これらに限定されない様々な物質から作製され得る。1つの実施形態では、適切な表面は、例えば1つまたは複数のアクリレートなどの1つまたは複数のポリマーを含み得る。1つの実施形態では、固体表面は三次元の形状であり得る。三次元固体表面の非限定的な例は、例えば、米国特許出願公開第2005/0031598号に記載されている。
【0047】
1つの実施形態では、未分化幹細胞は、増殖基質上において無フィーダー条件下で増殖され得る。1つの実施形態において、増殖基質は、Matrigel(登録商標)(例えば、Matrigel(登録商標)またはMatrigel(登録商標)GFR)、組換えラミニン、またはビトロネクチンであり得る。別の実施形態では、未分化幹細胞は、コラゲナーゼを使用するなど、または手作業でのスクレーピングなどの様々な方法を使用して、継代培養され得る。別の実施形態において、未分化幹細胞は、PBS中の0.5mM EDTAなどの非酵素的手段を用いて、またはReLeSR(商標)を用いるなどして、継代培養され得る。1つの実施形態では、複数の未分化幹細胞が、細胞が約3から約10日でコンフルエントに達することを可能にする播種密度で、播種または継代培養される。1つの実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約6.0×10個/cmから細胞約5.0×10個/cmの範囲、例えば細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約5.0×10個/cm、例えば細胞約1.0×10個/cm、または例えば細胞約3.0×10個/cmであり得る。別の実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約6.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約6.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、または例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約8.0×10個/cmの範囲であり得る。さらに別の実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約1.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約2.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、例えば細胞約3.0×10個/cmから約8.0×10個/cm、例えば細胞約4.0×10個/cmから細胞約7.0×10個/cm、または細胞約5.0×10個から細胞約6.0×10個/cmの範囲であり得る。1つの実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約1.0×10個/cmから細胞約5.0×10個/cm、例えば細胞約1.0×10個/cmから細胞約4.5×10個/cm、例えば細胞約1.5×10個/cmから細胞約4.0×10個/cm、例えば細胞約2.0×10個/cmから細胞約3.5×10個/cm、または細胞約2.5×10個/cmから細胞約3.0×10個/cmの範囲であり得る。
【0048】
任意の様々な適切な細胞培養および継代培養技術が、本開示に従って細胞を培養するために使用され得る。例えば、1つの実施形態では、培養培地は適切な時間間隔で交換され得る。1つの実施形態では、培養培地は、細胞の継代培養の約2日後から毎日完全に交換され得る。別の実施形態では、培養が約90%のコロニー被覆度に達した場合、定量化のための単一細胞懸濁液を達成するために、例えば、コラゲナーゼIVおよび0.05%のトリプシン-EDTAなどの1つまたは複数の適切な試薬を連続して用いて、代理のフラスコが捧げられ、数え上げられ得る。1つの実施形態では、複数の未分化幹細胞は、それから、適切な期間、例えば、約3から10日で、細胞がコンフルエントに達することを可能にする播種密度で、適切な増殖基質(例えば、Matrigel(登録商標)GFR)上に細胞を播種する前に、継代培養され得る。1つの実施形態において、未分化幹細胞は、コラゲナーゼIVを用いて継代培養され、組換えラミニンマトリックス上で増殖され得る。1つの実施形態において、未分化幹細胞は、コラゲナーゼIVを用いて継代培養され、Matrigel(登録商標)マトリックス上で増殖され得る。1つの実施形態では、未分化幹細胞は、ReLeSR(商標)を用いて継代培養され、ビトロネクチンマトリックス上で増殖され得る。
【0049】
1つの実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約6.0×10細胞/cmから細胞約5.0×10細胞/cmの範囲、例えば細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約5.0×10個/cm、例えば細胞約1.0×10個/cm、または例えば細胞約3.0×10個/cmであり得る。別の実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約6.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約6.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、または例えば細胞約7.0×10個/cmから細胞約8.0×10個/cmの範囲であり得る。さらに別の実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約1.0×10個/cmから細胞約1.0×10個/cm、例えば細胞約2.0×10個/cmから細胞約9.0×10個/cm、例えば細胞約3.0×10個/cmから細胞約8.0×10個/cm、例えば細胞約4.0×10個/cmから細胞約7.0×10個/cm、または細胞約5.0×10個から細胞約6.0×10個/cmの範囲であり得る。1つの実施形態では、播種密度は、増殖表面1cmあたりで、細胞約1.0×10個/cmから細胞約5.0×10個/cm、例えば細胞約1.0×10個/cmから細胞約4.5×10個/cm、例えば細胞約1.5×10個/cmから細胞約4.0×10個/cm、例えば細胞約2.0×10個/cmから細胞約3.5×10個/cm、または細胞約2.5×10個/cmから細胞約3.0×10個/cmの範囲であり得る。
【0050】
オリゴデンドロサイト前駆細胞組成物
多能性幹細胞から多数の高純度な、特徴付けられたオリゴデンドロサイト前駆細胞を生成する方法は、例えば米国特許出願第15/156,316号および仮特許出願第62/315,454号において以前に記載されている。多能性幹細胞からのオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の誘導は、急性脊髄損傷の治療を含む、多数の重要な治療、研究、開発、および商業目的のための再生可能かつスケーラブルなOPCの供給源を提供する。
【0051】
特定の実施形態では、多能性幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞の高純度な集団を生成する方法は、例えば、2016年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/315,454号、および2017年3月30日に出願された国際特許出願第PCT/US2017/024986号に記載されているように、細胞が幹細胞分化の1つまたは複数のモジュレーターと共にインキュベートされる前処理工程を含み得る。
【0052】
1つの実施形態では、細胞集団は、共通の遺伝的背景を有し得る。1つの実施形態では、細胞集団は、1つの宿主に由来し得る。1つの実施形態では、細胞集団は、多能性幹細胞株に由来し得る。別の実施形態では、細胞集団は、胚性幹細胞株に由来し得る。1つの実施形態では、細胞集団はhESC株に由来し得る。1つの実施形態では、hESC株は、H1、H7、H9、H13、またはH14細胞株であり得る。別の実施形態では、細胞集団は、誘導多能性幹細胞(iPS)株に由来し得る。1つの実施形態では、細胞集団は、それを必要とする対象に由来し得る(例えば、細胞集団は、治療を必要とする対象に由来し得る)。さらに別の実施形態では、hESC株は、受精することなくhESCを生成するように刺激された胚である、単為生殖細胞に由来し得る。
【0053】
特定の実施形態では、本開示のOPCは、ネスチン、NG2、Olig1およびPDGF-Rαから選択される1つまたは複数のマーカーを発現する。特定の実施形態において、本開示のOPCは、ネスチン、NG2、Olig1およびPDGF-Rαの全てのマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、少なくとも70%のAST-OPC1が、ネスチン発現について陽性である。いくつかの実施形態では、少なくとも30%のAST-OPC1がNG2発現について陽性である。いくつかの実施形態では、少なくとも70%のAST-OPC1が、Olig1発現について陽性である。いくつかの実施形態では、少なくとも70%のAST-OPC1が、PDGF-Rα発現について陽性である。本開示の細胞集団によって発現される特異的なマーカーおよび様々なマーカーの組合せは、例えば、フローサイトメトリーによって、決定および定量化され得る。
【0054】
医薬組成物
OPCは、それ自体で治療を必要とする対象に投与され得る。あるいは、本開示の細胞は、適切な担体と混合された医薬組成物中で、および/または送達システムを使用して、治療を必要とする対象に投与され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、生理学的に適切な担体および賦形剤などの他の成分と組み合わせた治療剤を含む調製物を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「治療剤」は、対象における生物学的効果を説明する本開示の細胞を指し得る。本開示の実施形態に応じて、「治療剤」は本開示のオリゴデンドロサイト前駆細胞を指し得る。あるいは、「治療剤」は、本開示のオリゴデンドロサイト前駆細胞によって分泌される1つまたは複数の因子を指し得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「担体」、「薬学的に許容され得る担体」および「生物学的に許容され得る担体」は、互換的に使用されることができ、対象において有意な有害作用または刺激を引き起こさず、治療剤の生物学的活性または効果を抑制しない希釈剤または担体物質を指し得る。特定の実施形態では、薬学的に許容され得る担体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含み得る。他の実施形態では、薬学的に許容され得る担体は、ジメチルスルホキシドを含まない。用語「賦形剤」は、治療剤の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0058】
本開示の治療剤は、2014年5月12日に出願された米国特許出願第14/275,795号、ならびに米国特許第8,324,184号および第7,928,069号に記載されているものなどのヒドロゲルの成分として投与され得る。
【0059】
本開示に従う組成物は、注入、例えば、ボーラス注入または持続注入による非経口投与用に調合され得る。注入用の調合物は、防腐剤の添加された単位投薬形態、例えば、アンプルもしくは複数回投与容器中に呈示され得る。組成物は、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの調合用剤を含有し得る。特定の実施形態では、組成物は、凍結保存に適合するように調合され得る。
【0060】
本開示に従う組成物は、対象の脊髄への直接注入を介して投与するために調合され得る。特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、対象への脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、鼻腔内投与、または大槽内投与用に調合され得る。特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、対象の脳内の梗塞腔の中に直接、またはその直近への注入を介して投与するために調合され得る。特定の実施形態において、本開示に従う組成物は、移植による投与のために調合され得る。特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、溶液として調合され得る。
【0061】
特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞約1×10個から約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約4×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約6×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約7×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約8×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約9×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約4×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約6×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約7×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約8×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約9×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約4×10個、または例えば1ミリリットルあたり細胞約5×10個を含み得る。特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞約1×10から約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約1×10から約4×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10から約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約1×10から約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10から約4×10個、または例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10から約5×10個を含み得る。さらに別の実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞約1×10から約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10から約9×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10から約8×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約4×10から約7×10個、または例えば1ミリリットルあたり細胞約5×10から約6×10個を含み得る。1つの実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞約1×10から約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約2×10から約9×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約3×10から約8×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞約4×10から約7×10個、または例えば1ミリリットルあたり細胞約5×10から約6×10個を含み得る。さらに別の実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞少なくとも約1×10個、例えば、1ミリリットルあたり細胞少なくとも約2×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約4×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約5×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約6×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約7×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約8×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約9×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約1×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約2×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約3×10個、例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約4×10個、または例えば1ミリリットルあたり細胞少なくとも約5×10個を含み得る。1つの実施形態では、本開示に従う組成物は、細胞最大約1×10個もしくはそれ以上、例えば1ミリリットルあたり細胞最大約2×10個もしくはそれ以上、例えば1ミリリットルあたり細胞最大約3×10個もしくはそれ以上、例えば1ミリリットルあたり細胞最大約4×10個もしくはそれ以上、例えば1ミリリットルあたり細胞最大約5×10個もしくはそれ以上、または例えば1ミリリットルあたり細胞最大約6×10個を含み得る。
【0062】
1つの実施形態では、本開示に従う組成物は、1ミリリットルあたり細胞約4×10から約2×10個を含み得る。
【0063】
さらに別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約10マイクロリットルから約5ミリリットルの範囲、例えば約20マイクロリットル、例えば約30マイクロリットル、例えば約40マイクロリットル、例えば約50マイクロリットル、例えば約60マイクロリットル、例えば約70マイクロリットル、例えば約80マイクロリットル、例えば約90マイクロリットル、例えば約100マイクロリットル、例えば約200マイクロリットル、例えば約300マイクロリットル、例えば約400マイクロリットル、例えば約500マイクロリットル、例えば約600マイクロリットル、例えば約700マイクロリットル、例えば約800マイクロリットル、例えば約900マイクロリットル、例えば約1ミリリットル、例えば約1.5ミリリットル、例えば約2ミリリットル、例えば約2.5ミリリットル、例えば約3ミリリットル、例えば約3.5ミリリットル、例えば約4ミリリットル、または例えば約4.5ミリリットルの体積を有し得る。1つの実施形態では、本開示に従う組成物は、約10マイクロリットルから約100マイクロリットル、例えば約20マイクロリットルから約90マイクロリットル、例えば約30マイクロリットルから約80マイクロリットル、例えば約40マイクロリットルから約70マイクロリットル、または例えば約50マイクロリットルから約60マイクロリットルの範囲の体積を有し得る。別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約100マイクロリットルから約1ミリリットル、例えば約200マイクロリットルから約900マイクロリットル、例えば約300マイクロリットルから約800マイクロリットル、例えば約400マイクロリットルから約700マイクロリットル、または例えば約500マイクロリットルから約600マイクロリットルの範囲の体積を有し得る。さらに別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約1ミリリットルから約5ミリリットル、例えば約2ミリリットルから約5ミリリットル、例えば約1ミリリットルから約4ミリリットル、例えば約1ミリリットルから約3ミリリットル、例えば約2ミリリットルから約4ミリリットル、または例えば約3ミリリットルから約5ミリリットルの範囲の体積を有し得る。1つの実施形態では、本開示に従う組成物は、約20マイクロリットルから約500マイクロリットルの体積を有し得る。別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約50マイクロリットルから約100マイクロリットルの体積を有し得る。さらに別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約50マイクロリットルから約200マイクロリットルの体積を有し得る。別の実施形態では、本開示に従う組成物は、約20マイクロリットルから約400マイクロリットルの体積を有し得る。
【0064】
特定の実施形態において、本開示は、本開示の1つまたは複数の方法に従って誘導されたOPCの集団を含む組成物を含む容器を提供する。特定の実施形態では、容器は、凍結保存用に形成され得る。特定の実施形態では、容器は、それを必要とする対象への投与用に形成され得る。特定の実施形態では、容器は、プレフィルドシリンジであり得る。
【0065】
医薬調合における一般原則について、読者は、Allogeneic Stem Cell Transplantation、LazarusおよびLaughlin編.Springer Science+ Business Media LLC 2010;ならびにHematopoietic Stem Cell Therapy,E.D.Ball、J.ListerおよびP.Law、Churchill Livingstone,2000を参照されたい。細胞賦形剤および組成物の任意の付随的要素の選択は、投与に使用される経路およびデバイスに従って適合されるであろう。特定の実施形態では、組成物はまた、濃縮された標的細胞の生着または機能的可動化を容易にする1つまたは複数の他の成分を含むか、または伴うことができる。適切な成分は、標的の細胞型の接着を支持もしくは促進するか、または移植された組織の血管新生を促進する、マトリックスタンパク質を含み得る。
【0066】
本開示の細胞の使用
本明細書に記載の様々な実施形態において、本開示は、治療を必要とする対象における1つまたは複数の神経学的機能を改善するために、多能性幹細胞由来OPCを含む細胞集団を使用する方法を提供する。特定の実施形態では、外傷性脊髄損傷の治療において多能性幹細胞由来OPCを使用する方法が提供される。他の実施形態では、他の外傷性CNS損傷の治療において多能性幹細胞由来OPCを使用する方法が提供される。他の実施形態では、非外傷性CNS障害または状態の治療において多能性幹細胞由来OPCを使用する方法が提供される。特定の実施形態では、本開示に従う細胞集団は、それを必要とする対象に注入または移植され得る。
【0067】
特定の実施形態では、ミエリンの修復または再ミエリン化を必要とする状態の治療において多能性幹細胞由来OPCを使用する方法が提供される。以下は、ミエリンの修復または再ミエリン化を必要とする状態、疾患および病状の非限定的な例である:多発性硬化症、白質ジストロフィー、ギランバレー症候群、シャルコーマリートゥースニューロパチー、タイーサックス病、ニーマンーピック病、ゴーシェ病、およびハーラー症候群。脱髄をもたらす他の状態は、炎症、卒中、免疫障害、代謝障害および栄養欠乏症(ビタミンB12の欠乏など)を含むが、これらに限定されない。本開示のOPCはまた、急性脊髄損傷などの髄鞘形成の喪失をもたらす外傷性損傷におけるミエリンの修復または再ミエリン化のためにも使用され得る。
【0068】
OPCは、それらが目的の組織部位に生着または移動し、そして機能的に欠損した領域を再構成または再生することを可能にする様式で投与される。細胞の投与は、当分野で公知の任意の方法によって達成され得る。例えば、細胞は、細胞移植を必要とする器官または組織に直接、外科的に投与され得る。あるいは、細胞を対象に投与するために、非侵襲的な手順が用いられ得る。非侵襲的な送達方法の非限定的な例は、細胞療法を必要とする器官または組織に細胞を送達するためのシリンジおよび/またはカテーテルの使用を含む。
【0069】
本開示のOPCを受ける対象は、移植細胞の免疫拒絶反応を減らすように治療され得る。考えられる方法は、例えば、タクロリムス、シクロスポリンA(Dunnら、Drugs 61:1957,2001)のような従来的な免疫抑制剤の投与、または、多能性幹細胞由来細胞の一致させた集団を用いて免疫寛容を誘導することを含む(WO02/44343;米国特許第6,280,718号;WO03/050251)。あるいは、抗炎症剤(プレドニゾンなど)および免疫抑制剤の組合せも使用され得る。本発明のOPCは、ヒトへの投与のために十分に無菌の条件下で調製された等張性賦形剤を含む、医薬組成物の形態で供給され得る。
【0070】
CNS外傷性損傷の治療における使用。特定の実施形態では、本開示に従う細胞集団は、細胞集団を含む組成物を脊髄損傷部位に移植した後、脊髄損傷部位に生着することが可能であり得る。
【0071】
特定の実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約90日以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。他の実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約1年以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約2年以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約3年以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約4年以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。さらなる実施形態では、本開示に従う細胞集団は、ある用量の組成物を脊髄損傷部位に移植した後、約5年以上の期間にわたって、対象の脊髄損傷部位内に留まることができる。
【0072】
特定の実施形態では、本開示に従う細胞組成物は、脊髄損傷を有するヒト対象に投与された場合に、前記対象における上肢運動機能を改善することができる。特定の実施形態では、対象は頸髄損傷を有する。他の実施形態において、対象は胸髄損傷を有する。
【0073】
1つの実施形態において、本開示は、脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善する方法であって、前記対象に、脊髄損傷部位に生着することができる同種異系ヒトオリゴデンドロサイト細胞の集団を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、組成物を投与することは、組成物を脊髄損傷部位に注入することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、脊髄損傷中心のおよそ2~10mm尾側に注入される。さらなる実施形態において、組成物は、脊髄損傷中心のおよそ5mm尾側に注入される。いくつかの実施形態において、対象は頸髄損傷を有する。他の実施形態において、対象は胸髄損傷を有する。
【0074】
特定の実施形態において、本開示の方法に従って同種異系ヒトオリゴデンドロサイト細胞の集団を含む組成物が投与された対象は、(脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準[ISNCSCI]に基づき定義される)少なくとも1段階の運動レベルに等しい上肢運動機能の改善を得る。機能の改善は、一側性または両側性であり得る。他の実施形態では、本開示の方法に従って同種異系ヒトオリゴデンドロサイト細胞の集団を含む組成物が投与された対象は、片側または両側のいずれかで少なくとも2段階の運動レベルに等しい上肢運動機能の改善を得る。特定の実施形態では、対象は、一方の側で少なくとも1段階の運動レベルに等しく、他方の側で少なくとも2段階の運動レベルに等しい上肢運動機能の改善を得る。特定の実施形態では、対象は、本開示の方法に従った同種異系ヒトオリゴデンドロサイト細胞の集団の投与前における対象のベースラインスコアと比較して改善された上肢運動スコア(UEMS)を示す。
【0075】
付加的な実施形態
【0076】
本開示のさらなる実施形態は、以下を含む:
【0077】
1.外傷性脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善する方法であって、前記対象に、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【0078】
2.組成物を投与することが、組成物を脊髄損傷部位に注入することを含む、1に記載の方法。
【0079】
3.組成物が、脊髄損傷中心のおよそ2~10mm尾側に注入される、2に記載の方法。
【0080】
4.組成物が、脊髄損傷中心のおよそ5mm尾側に注入される、2に記載の方法。
【0081】
5.ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、脊髄損傷部位に生着することができる、1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
6.組成物が、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから15~60日後の間に投与される、1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
7.組成物が、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから20~40日後の間に投与される、6に記載の方法。
【0084】
8.対象に低用量免疫抑制剤レジメンを施すことをさらに含む、1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
9.組成物が、約2×10から50×10個のAST-OPC1細胞を含む、1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
10.組成物が、約10×10個のAST-OPC1細胞を含む、9に記載の方法。
【0087】
11.組成物が、約20×10個のAST-OPC1細胞を含む、9に記載の方法。
【0088】
12.対象が、頸髄損傷を有する、1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
13.対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約1~12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
14.対象の運動レベルの改善が両側性である、13に記載の方法。
【0091】
15.対象の運動レベルの改善が一側性である、13に記載の方法。
【0092】
16.対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約3カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、13に記載の方法。
【0093】
17.対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、13に記載の方法。
【0094】
18.同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
19.多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、18に記載の方法。
【0096】
20.外傷性脊髄損傷を有するヒト対象において上肢運動機能を改善するのに使用するための医薬組成物であって、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む医薬組成物。
【0097】
21.生物学的に許容され得る担体をさらに含む、20に記載の医薬組成物。
【0098】
22.同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、20~21に記載の医薬組成物。
【0099】
23.多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、22に記載の医薬組成物。
【0100】
24.ヒト対象における外傷性脊髄損傷の治療に使用するための医薬組成物であって、同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団を含む医薬組成物。
【0101】
25.生物学的に許容され得る担体をさらに含む、24に記載の医薬組成物。
【0102】
26.同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、多能性幹細胞のインビトロで分化した子孫である、24~25に記載の医薬組成物。
【0103】
27.多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、26に記載の医薬組成物。
【0104】
実施例
以下の実施例は、本発明者らが自らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図したものではなく、また、以下の実験が実施された全てまたは唯一の実験であることを表すことを意図したものでもない。
【実施例0105】
実施例1:完全運動障害C4~C7頸髄損傷を有する患者におけるAST-OPC1のフェーズ1/2a増量投与試験
AST-OPC1細胞は、米国特許出願第15/136,316号に記載されているように、マスターセルバンク(MCB)からのWA01(H1)hESCの分化によって生成された。
【0106】
AST-OPC1の初期の臨床的安全性は、神経学的に完全なT3~T11胸髄損傷(SCI)を有する患者を登録したフェーズ1臨床試験において以前に評価された。フェーズ1試験からの有望な5年間の安全性データに基づき、感覚運動完全C5~C7頸髄損傷を有する患者における漸増用量のAST-OPC1の安全性および活性を評価するためのフェーズ1/2a試験が開始された。
【0107】
フェーズ1試験では、5例の対象が、損傷の7から14日後に2×10個のAST-OPC1の投与を受けた。フェーズ1/2a試験は、SCIから14から40日後の間に2×10個、10×10個または20×10個のAST-OPC1を受ける連続投与コホートに対象を登録しており、そして登録を続ける予定である。フェーズ1/2a試験の試験デザインが図1に示されている;コホートのデザインは図2に示されている。対象は、主要試験プロトコールの下で1年間追跡され、そして、長期追跡プロトコールの下でさらに14年間追跡される予定である。
【0108】
フェーズ1試験およびフェーズ1/2a試験の両方において、AST-OPC1は強力な安全性プロファイルを示した。
【0109】
2016年9月において利用可能なコホート1(2×10個のAST-OPC1)およびコホート2(10×10個のAST-OPC1)についての初期の上肢運動機能回復の結果が図4A(UEMS)および図4B(運動レベルの回復)に示されている。12カ月の追跡調査を通したコホート1および2の運動機能回復の結果が、図6Aおよび図6B(UEMS)ならびに図7(運動レベルの回復)に示されている。
【実施例0110】
実施例2:一致させた歴史的対照と比較したコホート1および2の患者における上肢運動機能の改善の比較
AST-OPC1の投与後のコホート1および2の対象における運動機能改善が、3300例を超えるEMSCI(European Multicenter Study about Spinal Cord Injury:脊髄損傷に関するヨーロッパ多施設共同試験)データベースから得られた外傷性SCI患者の密接に一致させた歴史的群と比較された。密接に一致させた歴史的対照データを生成するために使用されたマッチング基準が、図5に示されている。
【0111】
12カ月の追跡調査を通した比較データが、図6A図6Bおよび図7に示されている。
【0112】
図6A:経時的なUEMSの変化によって測定されたコホート2の対象(10×10個のAST-OPC1)における運動機能回復は、密接に一致させた歴史的対照と比較して有利であり、3カ月までに有意に改善し、12カ月を通して継続的に増加していた。図6B:予想通り、コホート1の対象(2×10個のAST-OPC1、フェーズ1安全性試験で使用されたものと同じ用量)における運動機能回復(UEMS)は、一致させた歴史的対照と同様であり、AST-OPC1の安全性をさらに支持した。EMSCI歴史的対照群と比較した、コホート1および2の間の運動スコアの改善の比較は、運動スコアの回復に対するAST-OPC1の用量依存的効果を支持している。図7:コホート2の対象における運動機能回復は、12カ月の追跡調査を通して、ベースライン測定値に対する経時的な運動レベルの改善として測定された。これらの改善は、EMSCIデータベースからの密接に一致させた歴史的対照のものと比較された。AST-OPC1の投与から6カ月後までに、コホート2の対象の33%(2/6)が、少なくとも一方の側で2段階以上の運動レベルのレベル改善を達成した。12カ月までに、コホート2の対象の67%(4/6)が、少なくとも一方の側で2段階以上の運動レベルのレベル改善を達成した。比較すると、密接に一致させた歴史的対照の29%が、SCIから12カ月後までに、少なくとも一方の側で2段階以上の運動レベルのレベル改善に達していた。運動機能において2段階以上のレベル改善を達成したコホート2の対象の百分率は、密接に一致させた歴史的対照における運動レベル回復(29%)および文献に報告された回復率(26%,Steeves JDら、Outcome Measures for Acute/Subacute Cervical Sensorimotor Complete (AIS-A) Spinal Cord Injury During a Phase 2 Clinical Trial,Top Spinal Cord Inj Rehabil 2012;18(1):1014)のどちらをも有意に上回っていた。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷性脊髄損傷を有するヒト対象に投与することにより上肢運動機能を改善する医薬の製造のための、多能性幹細胞に由来する同種異系ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の有効量の使用であって、
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞がNG2およびPDGF-Rαを発現し、
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、約10×10から50×10個の細胞を含み、かつ、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから15~60日後の間に脊髄損傷部位のおよそ2~10mm尾側に注入され、
対象の上肢運動機能が、組成物を投与してから約1~12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善し、運動レベルは2011年に改訂された脊髄損傷の神経学的分類のための国際基準(ISNCSCI)に従って0~5のスケールの範囲である、
使用。
【請求項2】
医薬が、脊髄損傷中心のおよそ5mm尾側に注入される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、脊髄損傷部位に生着することができる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
医薬が、対象が外傷性脊髄損傷を受けてから20~40日後の間に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
対象に低用量免疫抑制剤レジメンを施すことをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
医薬が、約10×10個の細胞を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
医薬が、約20×10個の細胞を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
対象が、頸髄損傷を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
対象の運動レベルの改善が両側性である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
対象の運動レベルの改善が一側性である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
対象の上肢運動機能が、医薬を投与してから約3カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
対象の上肢運動機能が、医薬を投与してから約12カ月後までに少なくとも2段階の運動レベルは改善する、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、ヒト胚性幹(hES)細胞に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、誘導多能性幹(iPS)細胞に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、30マイクロリットルから200マイクロリットルの体積で注入される、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、50マイクロリットルから100マイクロリットルの体積で注入される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、NG2発現について少なくとも30%陽性である、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
ヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞が、PDGF-Rα発現について少なくとも70%陽性である、請求項1に記載の使用。
【外国語明細書】