IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リサーチ ファウンデイション フォー ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨークの特許一覧

特開2024-96796ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用
<>
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図1
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図2
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図3
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図4
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図5
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図6
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図7
  • 特開-ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096796
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ケイ素-炭素ナノ材料、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20240709BHJP
   C01B 33/029 20060101ALI20240709BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240709BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240709BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240709BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
C01B33/029
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/134
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061168
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020543643の分割
【原出願日】2019-02-15
(31)【優先権主張番号】62/631,039
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519411043
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデイション フォー ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロハニ,パルハム
(72)【発明者】
【氏名】スワイハート,マーク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法を提供する。また、前記方法を使用して製造されるケイ素-炭素ナノ複合材料、ならびに前記複合材料を含む電極材料及びイオン伝導性バッテリーを提供する。
【解決手段】ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法であって、5~500nmの酸化ケイ素厚みを有する、酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子(酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子)を準備すること;酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成すること;炭素材料で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターであって、0.3~20nmの炭素材料厚みを有するものを形成すること;及び酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターから、酸化ケイ素をすべて又は実質的にすべて除去して、ケイ素-炭素ナノ複合材料を形成することを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法であって、
5~500nmの酸化ケイ素厚みを有する、酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子(酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子)を準備すること;
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成すること;
炭素材料で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターであって、0.3~20nmの炭素材料厚みを有するものを形成すること;及び
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターから、酸化ケイ素をすべて又は実質的にすべて除去して、ケイ素-炭素ナノ複合材料を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を乾燥することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ケイ素-炭素ナノ複合材料をリチウム化することをさらに含み、前記リチウム化が電極作製の前又は後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する間に焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を焼結することをさらに含み、焼結プロセスが、任意で水素を含む雰囲気中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ケイ素-炭素ナノ複合材料のケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~150nmの最長寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
形成工程が、ダイセット及び液圧プレスを使用して、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけて、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを形成すること、及び、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
導電性炭素材料が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する前に、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけた後であって、圧縮された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を粉砕する前に、圧縮された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法であって、
酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子(酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子)を準備すること;
炭素材料で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を形成すること、ここで、炭素材料厚みは0.3~20nmである;
炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成すること;及び
すべてあるいは実質的にすべての酸化ケイ素を、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターから除去して、ケイ素-炭素ナノ複合材料を形成すること
を含む方法。
【請求項16】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を単離することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を洗浄することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を乾燥することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ケイ素-炭素ナノ複合材料をリチウム化することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する間に焼結される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
導電性炭素材料が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する前に、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ケイ素-炭素ナノ複合材料のケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~150nmの最長寸法を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
形成工程が、ダイセット及び液圧プレスを使用して、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけて、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを形成すること、及び、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけた後であって、圧縮された炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を粉砕する前に、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着を使用して実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法であって、
炭素材料で被覆されたケイ素ナノ粒子を形成すること;及び
少なくとも一部のケイ素を、前記炭素材料で被覆されたケイ素ナノ粒子から除去して、ケイ素-炭素ナノ複合材料を形成すること
を含む方法。
【請求項29】
ケイ素-炭素ナノ複合材料のケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~250nmの最長寸法を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着を使用して実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
ケイ素ナノ粒子;
連続的な炭素シェル;及び
炭素シェル内の間隙スペース
を含み、ケイ素ナノ粒子が、連続的な炭素シェルに被包されている、ケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項35】
ケイ素-炭素ナノ複合材料が、複数の粒子を含み、各粒子が、
ケイ素ナノ粒子;
連続的な炭素シェル;及び
炭素シェル内の間隙スペースを含み、ケイ素ナノ粒子が、連続的な炭素シェルに被包されている、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項36】
ケイ素-炭素ナノ複合材料が、ケイ素-炭素ナノ複合材料の総重量に基づいて、少なくとも75重量%のケイ素を有する、請求項35に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項37】
ケイ素-炭素ナノ複合材料のケイ素ナノ粒子が、5~150nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む)の最長寸法を有する、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項38】
ケイ素ナノ粒子が、5~150nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む)の最長寸法を有する、請求項35に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項39】
連続的な炭素シェルが、0.3~20nmの厚みを有する、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項40】
連続的な炭素シェルが、100%非晶質ではない、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項41】
連続的な炭素シェルが、欠陥の無いグラフェンではない、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項42】
連続的な炭素シェルが、0.7~2のD(sp3炭素)/G(sp2炭素)比のラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、請求項34に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項43】
連続的な炭素シェルが、観察可能なG’ピークも示すラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、請求項42に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項44】
連続的な炭素シェルが、0.1~0.7のG’/G比も示すラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、請求項43に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項45】
間隙スペースとケイ素ナノ粒子体積の体積比([間隙体積+ケイ素ナノ粒子体積]/ケイ素体積)が、3~5である、請求項34に記載のケイ素-炭素材料。
【請求項46】
請求項34に記載のケイ素ナノ複合材料を含む、イオン伝導性バッテリー用のアノード。
【請求項47】
さらに、1又は複数のバインダーを含む、請求項46に記載のアノード。
【請求項48】
さらに、1又は複数のカーボン添加剤を含む、請求項46に記載のアノード。
【請求項49】
アノードが、3,500mA/gの電流で、少なくとも1,000サイクルの間、少なくとも1,000mAh/gのアノード容量、又は、400mA/gの電流で、少なくとも50サイクルあるいは少なくとも250サイクルの間、少なくとも2,000mAh/gのアノード容量を示す、請求項46に記載のアノード。
【請求項50】
請求項34に記載のケイ素ナノ複合材料を含む、イオン伝導性バッテリー。
【請求項51】
バッテリーが、さらに、1又は複数の電解質、及び/又は、1又は複数の集電体、及び/又は、1又は複数のさらなる構成成分を含む、請求項50に記載のイオン伝導性バッテリー。
【請求項52】
複数のセルを含み、各セルが、請求項46に記載のアノードを1つ又は複数、及び任意で、1又は複数のカソード、1又は複数の電解質、及び1又は複数の集電体を含んでいる、イオン伝導性バッテリー。
【請求項53】
バッテリーが、1~500のセル(その間のすべての値のセル及び範囲を含む)を含む、請求項52に記載のイオン伝導性バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2018年2月15日に出願された、米国仮出願第62/631,039号に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書中に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、ケイ素-炭素ナノ材料(シリコン-カーボンナノ材料)に関する。より具体的には、本開示は、エレクトロニクス技術で使用するためのケイ素-炭素ナノ材料に関する。
【背景技術】
【0003】
過去20年にわたって、軍隊及び一般市民用の通信装置、電動車両(電気自動車)、携帯用電子機器、及びグリッドスケール並びにミクロ-グリッドスケールエネルギー貯蔵などの用途をサポートするために、高エネルギー密度を有する再充電可能なエネルギー貯蔵技術を開発し、改良するための多くの研究が行われてきた。可能性のあるエネルギー貯蔵技術の中で、リチウムイオン電池(LIB:lithium-ion battery)は、それらが比較的高い重量及び体積エネルギー密度、向上した安全性、低い製造コストを達成したため、支配的な地位を得てきた。LIBのエネルギー密度のさらなる増加には、大容量の電極材料の採用が必要となる。
【0004】
ケイ素は、環境に優しい元素であり、その高い理論容量(4200mAh/g)、高い存在量(地殻の28質量%)、及び成熟した製造技術のため、潜在的なアノード材料として広く研究されてきた。ケイ素と比べて、従来のグラファイトアノードは、著しく低い理論容量(~375mAh/g)を有する。しかしながら、LIBへのケイ素の組み込みは、容易ではなかった。ケイ素は、サイクリングの際に非常に大きな体積変化(最大で400%)を受け、これは、機械的ストレス、亀裂、及び電解質との副反応を伴い、粉砕と不安定な固体電解質界面(SEI=solid electrolyte interface)層の連続形成につながる。この巨大な体積変化により、SEIは、各充放電サイクルの間に破壊され、再形成され、連続的に肥厚したSEIフィルムを生じ(これは、電解質を消費し、リチウムイオンを使い果たす)、容量を低下させ、最終的には電池の故障につながる。アノードにおけるケイ素の巨大な体積変化から生じる課題を克服するため、研究者たちは、ミクロ構造及びナノ構造のケイ素ベースのアノード材料を開発した。LIBのためのアノード材料としてのケイ素ナノワイヤの研究は、ケイ素が実際にLIB用途において有望な将来を有することを示した。ケイ素ナノワイヤのプレ-リチオ化(pre-lithiation)、中空グラファイト状チューブ内のケイ素ナノワイヤ(~70%のケイ素含量)、及び二層ケイ素ナノチューブ(~60%のケイ素含量)におけるSEI層制御に重点を置いたさらなる研究は、バッテリー性能の改善を実証した。別の研究では、グラフェンシートが、それらの間にケイ素ナノ粒子(SiNP)を分散させるために使用され(~73%のケイ素含量)、容量の向上をもたらした。そのような改変は、ケイ素ベースのアノードの性能を向上させ、比容量(specific capacity)を増加させるものの、それらは、SEI形成のための高表面積、低いタップ密度、及び高い粒子間電気抵抗などの新しい課題(低いクーロン効率とサイクル安定性、又は乏しいレート性能につながる)をもたらした。さらに、これらの研究で探索された合成プロセスのほとんどが、規模拡大に適していない。
【0005】
高エネルギー密度のバッテリーに対する需要は、非常に大きく且つ増え続けている。LIBの市場は、2024年に770億ドルを超えると予測される。それゆえ、市場は、バッテリー性能を増加させるための新しい材料を模索している。LIBのアノード材料として、ケイ素の使用を試みることは新規なことではない。しかしながら、向上した性能と大規模製造の実現可能性との商業的に採算の取れる組み合わせは、見つからないままである。企業及び研究所は、10年にわたって、ケイ素ベースのLIBを研究してきたが、大きな市場活用(例えば、携帯電話及び電動車両など)にはどこも成功していない。このように、高キャパシティを達成する高いケイ素含量を有するだけでなく、主流用途にとってコスト効率が良い、所望の性能を発揮できるケイ素系アノード材料に対する、現在も満たされていない要望が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ケイ素-炭素ナノ複合材料(シリコン-カーボン・ナノコンポジット材料)を製造する方法を提供する。本開示は、本開示の方法によって製造できるケイ素-炭素ナノ複合材料、及び本開示のケイ素-炭素ナノ複合材料を含む電極材料及びイオン伝導性バッテリーも提供する。
【0007】
本開示のケイ素-炭素ナノ材料及び方法は、従来技術のケイ素材料に関する問題に関連する。本開示のケイ素-炭素ナノ材料及び方法は、高ケイ素含量のアノード材料の性能と、容量保持及び大規模製造の実現可能性とを両立することができる。
【0008】
一側面では、本開示は、ケイ素-炭素ナノ材料を製造する方法を提供する。様々な例において、本開示の方法が本明細書に記載される。例示的な例として、炭素-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を、ケイ素@酸化物@炭素と称する。前記方法は、「ワンポット(one pot)」法であってもよい。
【0009】
一側面では、本開示は、ケイ素-炭素ナノ材料を提供する。様々な例において、ケイ素-炭素ナノ材料は、本開示の方法によって製造される。様々な例において、本開示のケイ素-炭素ナノ材料が、本明細書中に記載される。
【0010】
一側面では、本開示はアノード材料を提供する。前記アノード材料は、1又は複数の本開示のケイ素-炭素ナノ材料を含む。様々な例において、本開示のアノード材料が、本明細書中に記載される。
【0011】
活性なケイ素-炭素ナノ材料は、例えば、前記活物質を、本明細書に記載の添加剤(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又はグラフェンシート)及び本明細書に記載のバインダー(例えば、PVDF、PAA、CMC、アルギン酸塩、及びそれらの組み合わせ)と、例えば、65:20:15の質量比で混合することによって、アノード電極を製造するために使用できる。前記質量比は変更可能である。アノードの製作は、任意の粉末アノード材料を使用する標準的なプロセスによって進行する。一例では、アノード電極は、ケイ素-炭素ナノ材料を含み、バインダー(例えば、水性バインダー)を含まない。様々な例において、酸性エッチング(例えば、HF水溶液又はガス状HFを使用する)は、電極形成の前又は後に実施される。
【0012】
一側面では、本開示は、イオン伝導性バッテリーを提供する。前記イオン伝導性バッテリーは、1又は2以上又はより多くの本開示のケイ素-炭素ナノ材料、及び/又は、1又は複数の本開示のアノード材料を含む。前記バッテリーは、再充電可能なバッテリーであってもよい。前記バッテリーは、リチウムイオン電池であってもよい。様々な例において、本開示のアノード材料が、本明細書中に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の性質及び目的をより完全に理解するために、以下の詳細な説明が、添付の図面と併せて参照されるべきである。
【0014】
図1図1は、(A)必要な間隙スペースを有するケイ素-炭素構造体の合成メカニズム、(B)前記ケイ素-炭素構造体に対するリチウム化(リチオ化)及び脱リチウム化工程の効果、(C)ゆるいケイ素-炭素凝集体のクラスター化による、タップ密度の増加と、電解質にアクセス可能な表面(SEI形成)の減少を示す。
【0015】
図2図2は、(A)~(C)異なる拡大率による、ケイ素-炭素アノード材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像、(D)~(E)クラスター形成の無い、ケイ素-炭素構造体の透過型電子顕微鏡(TEM)画像、(F)炭素シェルのTEM画像、(G)炭素シェルの完全性を試験するために、950MPaで加圧した後のケイ素-炭素粒子のTEM画像を示す。
【0016】
図3図3は、透過型電子顕微鏡画像を示す。(A)高倍率のケイ素ナノ粒子。(B)低倍率のケイ素ナノ粒子。(C)小さな間隙スペースを有するケイ素-炭素ナノ複合材料。(D)大きな間隙スペースを有するケイ素-炭素ナノ複合材料。(E)~(F)100nmのケイ素粒子を使用したケイ素-炭素複合材料。
【0017】
図4図4は、ケイ素-炭素ナノ複合材料の特性評価を示す。(A)X線回析。(B)ラマンスペクトル。(C)キャリアガスとして空気を使用した熱重量分析。
【0018】
図5図5は、ケイ素-炭素ナノ複合材料の定電流サイクリングの結果を示す。(A)間隙スペースなし。(B)間隙スペースあり。すべての試料は、第一サイクルについてはC/50、第二サイクルについてはC/20、以降のサイクルについてはC/10でサイクルされた(1C=4200mAh/g)。黒丸:35nmの粒子。白丸:100nmの粒子。
【0019】
図6図6は、間隙スペースを有する35nmのケイ素-炭素ナノ複合材料の定電流サイクリングの結果を示す。第一サイクルではC/10で、第二サイクルではC/3で、以降のサイクルではC/1.2(0.62mA/cm2)で、半電池をサイクルした(1C=4200mAh/g)。
【0020】
図7図7は、ケイ素-炭素アノード材料と、導電性カーボン添加剤としてのCNTを含む作用電極のSEM画像を示す。(A)~(C)速乾プロセスで製造された電極の低及び高倍率画像であって、クラックとそれをつなぐCNTを示す。(D)ゆっくり乾燥されたフィルムの低倍率画像であって、クラックの形成が無いことを示す。
【0021】
図8
図8は、異なる電流密度による、ケイ素-炭素アノード材料の定電流サイクリングの結果を示す。セクションA~Fの電流密度はそれぞれ、0.023、0.056、0.113、0.226、及び0.564mA/cm2である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の主題が、特定の実施形態及び実施例を参照して記載されるが、他の実施形態及び実施例(本明細書に述べる利益及び特徴のすべてを提供しない実施形態及び実施例を含む)も、本開示の範囲内である。様々な構造的変化、論理的変化及びプロセス工程の変化は、本開示の範囲から逸脱することなく起こり得る。
【0023】
値の範囲が、本明細書に開示される。範囲は、下限値及び上限値を設定する。特に断らない限り、範囲は、最小値(下限値又は上限値のいずれか)の大きさまでのすべての値、及び記載された範囲の値間の範囲を含む。
【0024】
本開示は、ケイ素-炭素ナノ複合材料を製造する方法を提供する。本開示は、本開示の方法によって製造できるケイ素-炭素ナノ複合材料、及び本開示のケイ素-炭素ナノ複合材料を含む電極材料及びイオン伝導性バッテリーも提供する。
【0025】
本開示のケイ素-炭素ナノ材料及び方法は、従来技術のケイ素材料に関する問題に関連する。本開示のケイ素-炭素ナノ材料及び方法は、高ケイ素含量のアノード材料の性能と、容量保持及び大規模製造の実現可能性とを両立し得る。
【0026】
例えば、本開示は、80%より高いケイ素含量と高い重量キャパシティ及び容積キャパシティを有するコスト効率の良いケイ素系アノード材料について記載する。本開示は、様々な例において、グラフェン様炭素で被覆されたケイ素ナノ粒子を含むケイ素-炭素のミクロンサイズのクラスターについて記載する。
【0027】
一側面では、本開示は、ケイ素-炭素ナノ材料を製造する方法を提供する。様々な例において、本開示の方法が本明細書に記載される。例示的な例として、炭素-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を、ケイ素@酸化物@炭素と称する。前記方法は、「ワンポット」法であってもよい。
【0028】
一例において、前記方法は、以下の工程を含む:
a)炉(例えば、空気中、5℃/分の速度で700℃まで加熱され、700℃にて6時間保持された炉)内で、ケイ素ナノ粒子(例えば、100~250nmの特徴的寸法を有するケイ素ナノ粒子)を酸化することによって、酸化ケイ素(シリコン酸化物、例えば、シリカ)で被覆されたケイ素ナノ粒子を形成する。前記物質は、酸化の間、能動的に混合されてもよい;
b)炉(例えば、気体(例えば、アセチレンガス)を使用する、900℃まで加熱した炉)内で、前記シリカ被覆ケイ素ナノ粒子を炭素コーティングする(例えば、化学蒸着による炭素コーティング)。前記物質は、このプロセスの間、能動的に混合されてもよい;
c)前記炭素及びシリカ被覆ケイ素を機械的に加圧する(例えば、最大で100MPaの圧力で加圧する);
d)加圧されたペレットを、無酸素炉で焼結する(例えば、無酸素炉で500℃にて少なくとも2時間);
e)焼結されたペレットを粉砕(ミリング)して、平均サイズ10μmのミクロンサイズのクラスターを製造する;
f)任意で、工程b)を繰り返すことによって、前記クラスターに2度目の炭素コーティングを行う;
g)前記クラスターをエッチングして(例えば、HF溶液中でエッチング)、シリカ層を溶解して、最終生成物を形成する。
前記最終生成物は、例えば、ミクロンサイズのケイ素-炭素複合活物質であり、アノード電極を作製するために使用できる。
【0029】
一例では、方法は、液相プロセスを含まない。別の例では、方法は、液相沈着プロセスを含まない。
【0030】
様々な例において、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が使用される。酸化ケイ素層は、犠牲層と称されてもよい。酸化ケイ素は、化学量論的酸化物であっても、亜酸化物であってもよい。例えば、酸化ケイ素はSiOxであり、ここでxは1~2である(その間のすべての0.1の値及び範囲を含む)。
【0031】
一例では、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子は、市場で入手可能なケイ素ナノ粒子(例えば、~100nmのケイ素ナノ粒子)上への沈着によってシリカ(酸化ケイ素)シェルを成長させることによって形成される。別の例では、ケイ素ナノ粒子は、熱的に酸化されて、より小さなコアと犠牲的酸化物シェルを残す。実施例1において図1で示すように、これは、~35nmの小さい粒子から出発して得られるものと非常に似た物質を製造できるが、低コストの出発物質及び低コストの加工工程を使用する。
【0032】
一例では、前記合成プロセスは、ケイ素粒子の熱酸化;炭素コーティング;加圧及び粉砕によるクラスター形成;炭素コーティング;及び酸エッチングである。一例では、第一の炭素コーティングは任意である。別の例では、第二の炭素コーティングは任意である。
【0033】
熱酸化は、多孔性酸化ケイ素コーティングを有するケイ素ナノ粒子を提供し得る。これらの孔は、ナノ粒子外側からケイ素コアへの経路を提供し得る。
【0034】
酸化ケイ素で被覆されたナノ粒子は、単一のケイ素ナノ粒子、複数のナノ粒子のクラスター、複数の部分的に凝集したナノ粒子、又はそれらの組み合わせから形成されてもよい。これらのナノ粒子のすべてが、酸化ケイ素被覆ナノ粒子と称される。ケイ素ナノ粒子は、球形であっても、非球形であってもよい。
【0035】
一例では、市場で入手可能なケイ素粒子(例えば、>100nm)は、所望の厚みまで熱的に酸化されてシリカ被覆ケイ素粒子を形成する。このアプローチにより、表面にシリカ層を成長させるだけでなく、最終ケイ素粒子のサイズをナノスケール(例えば、<75nm)に低減させる(制御可能)。これは、より小さい粒子のほうが、より大きな粒子と比べて、それらの間のより短いリチウムイオン拡散距離、及び体積変化が誘発する分解へのより大きい耐性に起因して、より良い性能を示すため有利である。ケイ素の熱酸化は、空気中の炉内で、水又は酸素の添加有り又は無しで、任意のスケールにて、能動的な混合有り又は無しで実施できる周知のプロセスである。シリカコーティング厚みは、例えば、酸化時間及び温度を変化させることによって、調整可能である。この調整は、間隙スペース及びケイ素コアの大きさを最適化するための手段を提供する。その後、生成物は、例えば、ダイ(die)セット及び液圧プレスを用いて、あるいは連続的なロールプレスによって加圧され、個々の酸化されたケイ素粒子が圧縮される(密になる)。その後、加圧された粒子を、例えば、酸化で使用した同じ炉内で焼結してもよく、これにより、加圧された粒子が粉砕プロセス中に個々の(フリーの)ナノ粒子に壊れるのを妨ぐことができる。その後、焼結された生成物を、例えば、遊星ボールミル及びジルコニア/スチールボールを用いて粉砕し、酸化されたケイ素粒子のクラスターを形成する。クラスターの大きさは、例えば、粉砕の種類、粉砕時間、粉砕速度、及びボールのサイズを単に変更することによって調整できる。その後、同じ炉を、炭素化学蒸着(CVD)プロセスのために使用してもよい。この場合は、空気ではなく、アセチレンガス又は同様の炭化水素を、窒素、水素、及び/又はアルゴン希釈有り又は無しで、数秒~数分、減圧(大気圧より低い)で使用する。炭素厚みは、例えば、プロセス時間及びガス流速を変えることによって調整できる。炭素の種類は、温度に依存する。炭素コーティングは、様々な形態の炭素を提供し得る。例えば、炭素コーティングは、非晶質、多結晶、又は単結晶の炭素コーティングであり、及び/又は、炭素コーティングは、グラファイト状炭素(黒鉛状炭素)を含む。一例では、炭素コーティングは、95%、98%、99%、又は100%非晶質ではなく、及び/又は、95%、98%、99%、又は100%グラフェン及び/又はグラファイト状炭素ではない。炭素コーティングは、マルチドメイン炭素(例えば、複数の炭素ドメイン、ここで個々の炭素ドメインは非晶質、多結晶、又は単結晶である)を製造し得る。
【0036】
一例では、炭素コーティングは、1100℃又はそれ未満(例えば、800℃又はそれ未満)の温度で実施される。いかなる理論に拘束されることも意図しないが、800℃又はそれ未満の温度で実施されるCVDプロセスによって得られる炭素コーティングは、所望のレベルの適合性を示すと考えられる。
【0037】
炭素コーティングは、1種のみ又は複数種の炭素前駆体とともにCVDプロセスを使用して実施されてもよい。一例では、炭素コーティングは、ガス(例えば、窒素ガス、水素ガス、又は同様のもの、あるいはそれらの組み合わせ)を含むCVDプロセスを用いて実施され、これは炭素コーティングのドーピング(例えば、窒素による)をもたらす。いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、これらのプロセスの1つによって形成されたケイ素-炭素ナノ材料は、水性バインダーを用いてアノードを形成するために使用できると考えられる。
【0038】
100%非晶質(アモルファス)炭素又は100%グラファイト状炭素の形成は避けることが望ましい。非晶質炭素は、高度に多孔質であり、リチウムイオンを不可逆的に捕捉する。他方、炭素シェル中のいくらかの孔の存在は、炭素層を通るリチウムイオンの輸送のために望ましい。それゆえ、グラフェン様又はグラファイト状物質を製造するのに十分に高いが、高品質(欠陥の無い)グラフェン又はグラファイトを形成するほど高くない温度を使用することが望ましい。グラフェン/グラファイト状炭素の含有量の増加は、電気伝導性を増加させ、少ないリチウムイオンを捕捉することによってクーロン効率を向上させる。アセチレンガス又は他の炭化水素は、管状炉の中で分解し、孔を通過して、個々の酸化されたケイ素粒子を被覆する。酸化物は、黒鉛化を促進する触媒部位を生じるので、酸化されたケイ素上でのグラフェン形成は、非晶質炭素沈着よりもよく見られる。様々な例において、炭素コーティングプロセスは、クラスター形成プロセスの前又は後のどちらか、あるいは前と後の両方で行われることができる。
【0039】
酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子は、多様なサイズ(例えば、サイズはナノ粒子の最長寸法である)を有するケイ素ナノ粒子から形成することができる(例えば、本明細書に記載されているように)。様々な例において、出発物質であるケイ素ナノ粒子は、100nm未満、125nm未満、150nm未満、175nm未満、200nm未満、250nm又はそれ未満のサイズである。様々な例において、出発物質であるケイ素ナノ粒子は、100nm未満、125nm未満、150nm未満、175nm未満、200nm未満、250nm又はそれ未満のサイズであり、シリカ被覆ケイ素ナノ粒子のケイ素コア(シリコンコア)は、50nm未満、100nm未満、150nm未満、200nm未満のサイズを有する。一例では、酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子は、Stober合成を使用して形成されない。一例では、酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子は、分離(例えば、単離)工程無しで形成される。一例では、酸化ケイ素で被覆されたケイ素ナノ粒子は、液体分離(例えば、単離)工程無しで形成される。
【0040】
炭素コーティングは、様々な時間で実施可能である。炭素コーティングは、クラスター形成の前に実施されてもよい。例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が、炭素コーティングされる。炭素コーティングは、クラスター形成の後に実施されてもよい。例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターが、炭素コーティングされる。炭素コーティングは、クラスター形成の前とクラスター形成の後に実施されてもよい。例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が炭素コーティングされ、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターが炭素コーティングされる。炭素コーティングは、ケイ素コアを含むナノ粒子と、ケイ素コアの少なくとも一部又はすべての上に配置された酸化ケイ素-炭素シェルコンポジットを提供し得る。
【0041】
いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、クラスター形成前の炭素コーティングは、カーボン添加剤の量を減らし、電極の所定の電気伝導度を達成するのに必須である(使用される場合)と考えられる。例えば、ケイ素-炭素ナノ複合材料は、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスター形成前に炭素コーティングされ、ケイ素-炭素ナノ複合材料は、電極作製の間に導電性カーボン添加剤(単数又は複数)を添加されない。
【0042】
炭素コーティングの後、例えば、酸化物層を除去するため、又はケイ素の体積膨張のために必要である間隙スペースを提供するために、酸性エッチングが使用される。酸性エッチングは、ガス状のフッ化水素又はフッ化水素溶液を使用して実施されてもよい。例えば、ろ過、洗浄及び乾燥後、ケイ素-炭素クラスターはすぐに使用できる状態になる。酸性エッチングプロセスは、容易に規模を拡大縮小することが可能である。様々な例において、エッチングのためのフッ化水素酸濃度は、5%程度と低く、プロセス時間は30分程度と短い。
【0043】
本明細書に記載の方法は、規模の拡大縮小が可能と考えられる。例えば、10gの規模では、熱酸化及び炭素コーティングプロセスにおける均一性は、問題とはならない。しかしながら、より大きな規模では、回転炉などの能動的な混合装置の使用は、均一な酸化物層及び炭素層の形成の助けとなり得る。研究所の回転炉は、連続的に且つトン数規模で稼働可能なロータリーキルン(rotary kiln)と機能的に同等である。加圧及び粉砕装置は、同様の規模で規定通りに稼働する。
【0044】
一例では、ケイ素-炭素ナノ複合材料は、最長寸法(例えば直径)が50nm又はそれ未満、100nm又はそれ未満、150nm又はそれ未満、200nm又はそれ未満のケイ素ナノ粒子(例えば、ケイ素コア)を含み、ここで、ケイ素ナノ粒子は、間隙スペース及び炭素コーティング(例えば、炭素シェル)で囲まれている。ケイ素ナノ粒子(例えば、ケイ素コア)は、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
最終生成物におけるケイ素の結晶化度は、例えば、X線回析(XRD)によって試験できる。例えば、キャリアガスとして空気を使用する最終生成物の熱重量分析(TGA)は、炭素含量を測定するために使用できる。基本的に、空気中の酸素は、炭素を酸化し、二酸化炭素を形成し、サンプルから離れる。このシステムによって測定される重量の減少は、炭素含量を示す。さらに、サンプル中の炭素の種類を分析するために、ラマン分光解析が使用できる。この技術を使用すると、容易に非晶質炭素とグラフェンとを区別することができる。XRDは、炭素を特性解析するために使用される別の技術である。しかしながら、(111)ケイ素ピークは、グラフェンの特性ピークと非常に近いので、XRDにより我々のサンプル中の炭素を特性解析することは、簡易とは言えない。そうするために、サンプル中のケイ素ナノ粒子を、水酸化ナトリウムエッチングにより除去する。洗浄および乾燥後、生成物は100%炭素であり、XRDによって特性解析できる。BET表面積測定は、最終生成物の表面積及び多孔性を決定する。このデータは、クラスターのサイズを最適化するために、粉砕プロセスを最適化するのに使用できる。
【0046】
様々な例において、本開示の方法は、以下の工程を含む:
・SiNP(例えば、直径約100nmのもの)を準備又は形成する
・熱酸化(例えば、空気中で管状炉を使用)により、酸化ケイ素層を成長させ、SiNPコアのサイズを小さくする(例えば、直径<75nmへ)
・加圧(例えば、液圧プレスを使用)によりクラスターを形成する
・焼結によりクラスターを安定化する
・粉砕(例えば、ボールミリング)によりクラスターのサイズを小さくする(例えば、~1-15ミクロンへ)
・CVD炭素コーティング(例えば、管状炉内で、例えばアセチレン使用)
・酸性エッチング(例えば、大きなプラスチック容器内で)により犠牲的酸化ケイ素層を除去する
【0047】
一例において、本開示の方法は、以下の工程を含む:
・SiNP(例えば、直径約100nmのもの)を準備又は形成する
・CVD炭素コーティング(例えば、アセチレン使用)
・加圧(例えば、液圧プレスを使用)によりクラスターを形成
・焼結する
・粉砕(例えば、ボールミリング)によりクラスターのサイズを小さくする(例えば、~1-15ミクロンへ)
・酸性エッチング(例えば、大きなプラスチック容器内で)により犠牲的酸化ケイ素層を除去する
【0048】
一例において、本開示の方法は、以下の工程を含む:
・SiNPの新規合成(例えば、(シラン又はジクロロシランの)レーザー熱分解により、SiNPを製造する)
・別のケイ素源からの(例えば、TEOSを使用)犠牲的酸化ケイ素層の成長
・ろ過/遠心分離→洗浄・乾燥
・加圧(例えば、液圧プレスを使用)によりクラスターを形成
・焼結
・粉砕(例えば、ボールミル)によりクラスターのサイズを小さくする(例えば、~1-15ミクロンへ)
・CVD炭素コーティング(例えば、同じ管状炉内で、例えばアセチレン使用)
・酸性エッチング(例えば、大きなプラスチック容器内で)による犠牲的酸化ケイ素層の除去
【0049】
一例では、ケイ素ナノ粒子合成は、冶金グレードのシリコン(又はソーラー/半導体産業からのシリコン・ウエハー廃棄物)のウェット/ドライミリングにより行われ、残りの工程が後に続く。ケイ素ナノ粒子のサイズは、50~300nmの範囲である(その間の各0.1nmの値及び範囲を含む)。
【0050】
一例では、粉砕プロセスの間のコールドウェルディング(cold-welding)現象のため、ケイ素ナノ粒子は凝集して、ミクロンサイズの凝集体を形成する。そのような例では、クラスター形成工程が省略される。
【0051】
一例では、酸化剤(例えば、硝酸など)がミリングジャーに添加され、粒子が酸化されて犠牲層が形成される。
【0052】
別の例では、犠牲的酸化物層は、粉砕プロセスにおいて、又はその後の別の工程において、酸化剤(例えば、硝酸など)によって生成されてもよい。
【0053】
別の例において、犠牲層を作製するための他の可能性のある方法は、硫黄でケイ素ナノ粒子を被覆することである。硫黄層は、中程度の温度で蒸発でき、間隙スペースを作り出す。
【0054】
酸化ケイ素層は、例えば、水性HF(例えば、~45重量%の水溶液)又はガス状HFを使用する酸性エッチングによって除去できる。例えば、粒子はエタノール中に分散される。その後、HFが添加され、水の量は低く保たれる。
【0055】
本開示のナノサイズの粒子を製造できる、本開示の方法の3つの例を以下に示す。
1)ケイ素ナノ粒子を、シランを前駆体として使用して、レーザー熱分解リアクタで合成する。ナノ粒子は、25~35nmのサイズである。しかしながら、同様の任意のナノスケールのケイ素を使用することができる。合成ナノ粒子を水素不動態化し、ナノ材料の急速酸化を妨げる。粒子を1時間(あるいは使用する温度に応じた他の適切な時間)、アルゴン(あるいは真空もしくは他の不活性環境)下で、700℃(あるいは400℃~1100℃の範囲内(例えば、400℃~1000℃)(それらの間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)の他の温度も有効である)で熱処理して、表面の水素結合を水酸化結合に置き換える。これは、表面に均一なシリカ層を成長させる助けとなる。塩基性水溶液中で、TEOSを使用して、撹拌時間24時間にて、シリカ犠牲層をケイ素表面に成長させる。シリカ層の大きさは、TEOS濃度、pH、及び攪拌時間を変更することによって調節可能である。その後、シリカ被覆ケイ素粒子を、ろ過又は遠心分離によって溶液から分離し、水で洗浄する。粒子を一晩乾燥する。その後、液圧プレスを使用して粒子を加圧し、粒子を充填してタップ密度を低下させる。ペレットをアルゴン(あるいは真空もしくは他の不活性環境)下で2時間600℃にて焼結する。焼結時間及び温度は、焼結の程度を最適化するために変更可能である。その後、ペレットをボールミリングすることによって、ミクロンサイズのクラスターを形成する。クラスターのサイズは、粉砕時間、速度、ボールの数及び他のパラメーターを変更することによって調節可能である。その後、200sccmのガス流速、1分間、1100℃で、アセチレンを使用する化学蒸着(CVD)によって、粒子を炭素で被覆する。炭素の厚みは、ガス流速及び時間を変更することによって調節可能である。700℃~1500℃(例えば、800℃~1500℃)の範囲の他の温度(その間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)も、適切なコーティング時間及びガス流速と組み合わせることにより有効である。その後、シリカ犠牲層をフッ化水素酸(HF)エッチングによって除去する。必要とされる最大HF濃度は10%w/wであり、最大エッチング時間は1時間でもよい。当然のことながら、HF濃度がより低ければ、より長いエッチング時間が必要となる。その後、粒子を溶液から分離し、エタノールで洗浄し、一晩乾燥する。
2)市場で入手可能なケイ素粒子(例えば、~100nmのケイ素粒子)の表面を、空気中で4時間、700℃(昇温速度:5℃/分)で熱酸化して、犠牲的酸化ケイ素層を形成する。500℃~1000℃(例えば、600℃~1000℃)の他の温度(それらの間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)、及び他の昇温速度も、加熱時間の適切な調節と併せて使用可能である。例えば、周囲の空気とは異なる、水蒸気、亜酸化窒素、又は酸素濃度を有する他の酸化用混合物も使用可能である。酸化ケイ素層の厚みは、炉の温度、昇温速度、等温反応時間、及びガス組成(酸素及び水分含量)を変更することによって調節可能である。その後、液圧プレスを使用して粒子を加圧し、粒子を充填してタップ密度を低下させる。ペレットをアルゴン(あるいは真空もしくは他の不活性雰囲気)下で2時間600℃にて焼結する。500℃~800℃の他の温度(その間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)も、焼結時間の適切な調節と併せて、使用可能である。その後、ペレットをボールミリングすることによって、ミクロンサイズのクラスターを形成する。クラスターのサイズは、粉砕時間、速度、及びボールの数を変更することによって調節可能である。その後、200sccmのガス流速、1分間、1100℃で、アセチレンの化学蒸着(CVD)によって、粒子を炭素で被覆する(例えば、この例の具体的な規模にて)。炭素の厚みは、ガス流速及び時間を変更することによって調節可能である。700℃~1500℃(例えば、800℃~1500℃)の範囲の他の温度(その間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)も、適切なコーティング時間及びガス流速と組み合わせることにより有効である。その後、シリカ犠牲層をHFエッチングによって除去する。必要とされる最大HF濃度は10%w/wであり、最大エッチング時間は1時間でもよい。当然のことながら、HF濃度がより低ければ、より長いエッチング時間が必要となる。その後、粒子を溶液から分離し、エタノールで洗浄し、一晩乾燥する。
3)市場で入手可能なケイ素粒子(例えば、~100nmのケイ素粒子)を、200sccmのガス流速、1分間、1100℃で、アセチレンの化学蒸着(CVD)によって、炭素で被覆する(例えば、この例の具体的な規模にて)。炭素の厚みは、ガス流速及び時間を変更することによって調節可能である。700℃~1500℃(例えば、800℃~1500℃)の範囲の他の温度(その間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)も、適切なコーティング時間及びガス流速と組み合わせることにより有効である。その後、液圧プレスを使用して粒子を加圧し、粒子を充填してタップ密度を低下させる。ペレットをアルゴン(あるいは真空もしくは他の不活性雰囲気)下で2時間600℃にて焼結する。500℃~800℃の他の温度(その間のすべての0.1℃の値及び範囲を含む)も、焼結時間の適切な調節と併せて、使用可能である。その後、ペレットをボールミリングすることによって、ミクロンサイズのクラスターを形成する。クラスターのサイズは、粉砕時間、速度、及びボールの数を変更することによって調節可能である。その後、1モルの水酸化リチウム溶液を使用して、常に撹拌しながら、70℃にて1時間、炭素シェルの内側のケイ素をエッチングし、必要な間隙スペースを形成する。他の水酸化リチウム溶液濃度も、エッチング時間を適切に変更することにより、採用可能である。間隙スペースは、濃度、温度、攪拌時間を変更することによって調節可能である。ケイ素エッチングプロセスは、水酸化リチウムの代わりに、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム溶液を使用して同様に行うことができ、あるいはこれらの混合物又は同様の剤を使用してもよい。この方法により均一な間隙スペースを合成することは、エッチング溶液が、クラスター内に浸透して、すべてのケイ素粒子に到達しなければならず、且つ、このエッチングが異方性であるため(いくつかの結晶学的方向において、他の方向より早く進行する)、酸化による方法よりも困難である。
これらのアプローチそれぞれのバリエーションも可能であり、複合アノード材料の電気伝導性を向上させるために、加圧、焼結、及び粉砕工程の前及び後に、複数の炭素堆積工程を含んでもよい。しかしながら、炭素含量が増加すると、全体的なリチウム貯蔵容量が減少し(ケイ素含量が減少することにより)、且つ、炭素はリチウムイオンを不可逆的に捕捉し得る。それゆえ、炭素コーティング工程を最適化することが望ましい。
【0056】
本開示の方法は、1つ以上の以下の特徴を示し得る:
・Si含量の増加(例えば、90%まで)
・ナノ材料は、クラッキングなしで大きな圧力に耐えうる
・25~35nmの、酸化物フリーの、水素-不動態化ケイ素ナノ粒子コア
・シェルの破壊又はクラッキングを起こすことなく、膨張と縮小を可能にする間隙スペース(調節可能)
・犠牲的シリカ層の酸性エッチング後に形成される
・炭素シェルが、電解質から活物質を保護し、電子及びイオンの伝導を可能にする。
・CVD時間を変更することによって調節可能
・短い電子及びイオン輸送距離が、レート性能(rate capability)を向上させる
・クラスターを形成し、電解質への暴露を減少させることができる(より少ない表面積)一方、炭素含量も減少させる
・SiNPのより広い表面積は、より多くのSEI層形成を引き起こし、より多いLiイオンを消費する
・酸性エッチング前のクラスター形成は、SEI形成を各クラスターの外側に(それぞれに被包されたSiナノ粒子ではなく)限定することによって、SEI形成のための表面積を低下させる
・調節可能なクラスターサイズ(例えば、ボールミリング時間によって)
【0057】
一側面では、本開示は、ケイ素-炭素ナノ材料を提供する。様々な例において、ケイ素-炭素ナノ材料は、本開示の方法によって製造される。様々な例において、本開示のケイ素-炭素ナノ材料が、本明細書中に記載される。
【0058】
様々な例において、本開示のケイ素-炭素材料は、炭素シェルに被包されたケイ素ナノ粒子を有する。各ケイ素ナノ粒子のグラフェン様又はグラファイト状炭素カプセル化は、非晶質炭素と比べてこのような炭素がより高い伝導性及びより低い多孔性を有するため、有利である。それゆえ、炭素内に捕捉されるリチウムイオンはより少なく、より高いクーロン効率をもたらす。
【0059】
ナノサイズの粒子は、クラッキング無しで大きなストレスに適応することができる一方、レート性能を向上させる短い電子及びイオン輸送距離を提供する。空きスペースを伴うカプセル化(被包)は、アノードの微細構造を崩壊させることなく、又は炭素シェルを破壊することなく、ケイ素が膨張及び縮小する空間的な余裕を与える。炭素層は、電極材料が、電解質に連続的にさらされるのを防ぐ。炭素シェルはまた、電子的及びイオン的に伝導性であり、所望のリチウム化/脱リチウム化キネティクスを可能にする。
【0060】
本開示のナノサイズの粒子は、クラッキング無しで大きなストレスに適応することができる一方、充放電速度性能を向上させる短い電子及びイオン輸送距離を提供する。間隙スペースは、アノードの微細構造を崩壊させることなく、又は炭素シェルを破壊することなく、ケイ素が膨張及び縮小する空間的な余裕を与える。
【0061】
いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、様々な例において、本開示のケイ素-炭素材料は、間隙スペースとともに炭素シェル内に封入されたケイ素ナノ粒子を含み、リチウムイオン電池のアノードとして使用されるケイ素材料に関連する問題の1つ以上(例えば、リチウム組み込みの際のケイ素のサイズ膨張及びSEI層形成)に対処すると考えられる。また、クラスター形成は、電解質にアクセス可能な表面積を減らし、これはより高い初回サイクルクーロン効率(より少ないSEI形成)及びより長いサイクル寿命をもたらす一方、合計炭素含量を減少させると考えられる。また、クラスター形成による表面積の減少は、全体的なSEI層形成を減らし、最終的に、不可逆的反応によるリチウムイオン消費を減らすと考えられる。
【0062】
一側面では、本開示はアノード材料を提供する。前記アノード材料は、1又は複数の本開示のケイ素-炭素ナノ材料を含む。様々な例において、本開示のアノード材料が、本明細書中に記載される。
【0063】
活性なケイ素-炭素ナノ材料は、例えば、前記活物質を、本明細書に記載の添加剤(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又はグラフェンシート)及び本明細書に記載のバインダー(例えば、PVDF、PAA、CMC、アルギン酸塩、及びそれらの組み合わせ)と、例えば、65:20:15の質量比で混合することによって、アノード電極を製造するために使用できる。前記質量比は変更可能である。アノードの製作は、任意の粉末アノード材料を使用する標準的なプロセスによって進行する。一例では、アノード電極は、ケイ素-炭素ナノ材料を含み、バインダー(例えば、水性バインダー)を含まない。様々な例において、酸性エッチング(例えば、HF水溶液又はガス状HFを使用する)は、電極形成の前又は後に実施される。
【0064】
電極は様々な厚みを有し得る。一例では、電極は約100nmの厚みを有する。
【0065】
電極は、様々なプロセスを使用して形成できる。一例では、電極はロール法を用いて形成される。
【0066】
電極は、本開示のケイ素-炭素ナノ材料を1種以上含んでもよい。電極はまた、バインダー、カーボン添加剤、金属集電体(例えば、銅)、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。一例では、電極はポリマーコーティングを含まない。
【0067】
一例では、活物質が十分な炭素を有する場合、導電性カーボン添加剤は、添加されない。例えば、質量比は、85:0:15になる。いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、第一炭素コーティング工程は、各ケイ素粒子のための炭素シェルを形成すると考えられる。第二炭素コーティング工程(クラスターの)は、クラスター内のすべての孔を充填するだけでなく、クラスターの周りに炭素シェルを形成し得る。また、伝導率は高まるであろう。それゆえ、導電性添加剤は必須ではないと考えられる。
【0068】
一例では、電極は薄い銅箔(集電体)上に、スラリー法を使用して作製される。スラリーは、活物質(ケイ素-炭素クラスター)、導電性カーボン材、及びバインダーを、例えば、65:20:15の比で混合することによって、調製される。この比は変更可能である。集電体は、フラットというよりむしろ、メッシュ状の形態を有し得る。集電体上にアノード材料を塗布した後、アノード材料を乾燥する(例えば、100~120℃で一晩)。炉を冷ました後、フィルムをロールプレスして、厚みを減らし、材料を密にする。その後、プレ-リチウム化プロセスを行ってもよい。プレ-リチウム化プロセスは、例えば、電極とリチウム金属箔を接続することによって(可変抵抗器を隔てて)、実施することができる。抵抗器は、電圧と電流のモニタリングを可能にし、プレ-リチウム化プロセスの速度をコントロールする。望ましいプレ-リチウム化は、最終電位が、固体電解質界面(SEI)層が形成される電位より低いが(これにより初回サイクル中の電解質分解を回避する)、主要な合金化反応の電位より上である時点で、終了する。プレ-リチウム化開回路電圧(数時間の緩和の後)は、~0.34V(これは、Li-Si合金形成に対応する(Li0→1.71Si))よりわずかに低くすべきである。
【0069】
別の例では、電極は物理蒸着によって調製可能である。
【0070】
乾燥プロセスの間に、スラリーが表面クラックを形成し得るので、カーボンナノチューブ(CNT)を使用することが望ましい場合がある。カーボンナノチューブは、これらのクラックを橋渡して、クラックを超える良好な電気接点を維持し、電気的に絶縁された物質に起因する容量損失を防ぐ(図7A~C)。クラック形成は、電極をよりゆっくりと乾燥することによって回避できる(図7D)。
【0071】
一例では、直径15mmの電極をパンチ(punch)し、各電極における活物質の量を測定するために重さを量る。アルゴンを満たしたグローブボックス中で、作用電極とリチウム金属箔カウンター/参照電極を使用して、コインセルを作製する。グローブボックス中の酸素及び水分濃度は、1ppm未満に維持する。
【0072】
クラスター(例えば、個々の酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子及び個々の炭素物質-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスター)は、アノード又はアノード材料の作製の間に形成できる。高圧(例えば、本明細書に記載のクラスターを形成するために使用される圧力及びアノードを作製するために使用される圧力)は、炭素シェルを破壊しない。従って、本明細書に記載の任意の方法において、クラスター形成は、方法から省くことができ、個々の粒子(例えば、個々の酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子及び個々の炭素物質-被覆ケイ素ナノ粒子)のクラスターは、アノード作製の間に形成することができる(例えば、クラスター形成を行うために使用するのと同じ圧力で電極を加圧する)。
【0073】
一側面では、本開示は、イオン伝導性バッテリーを提供する。前記イオン伝導性バッテリーは、1又は2以上又はより多くの本開示のケイ素-炭素ナノ材料、及び/又は、1又は複数の本開示のアノード材料を含む。前記バッテリーは、再充電可能なバッテリーであってもよい。前記バッテリーは、リチウムイオン電池であってもよい。様々な例において、本開示のアノード材料が、本明細書中に記載される。
【0074】
前記イオン伝導性バッテリーは、1又は複数のカソードを含んでもよい。様々なカソード/カソード物質は、当該分野で既知である。
【0075】
イオン伝導性バッテリーは、1又は複数の電解質を含んでもよい。様々な電解質材料は、当該分野において既知である。
【0076】
イオン伝導性バッテリーは、集電体(単数又は複数)を含んでもよい。例えば、集電体は、それぞれ独立して、金属(例えば、アルミニウム、銅、又はチタン)又は金属合金(アルミニウム合金、銅合金、又はチタン合金)から作製できる。
【0077】
イオン伝導性バッテリーは、種々の追加的な構成成分(例えば、バイポーラ板、外装材、及び電気接点/リード(ワイヤを接続するための))を含んでもよい。一例では、バッテリーは、さらにバイポーラ板を含む。一例では、バッテリーは、さらに、バイポーラ板、外装材、及び電気接点/リード(ワイヤを接続するための)を含む。
【0078】
カソード(単数又は複数)、アノード(単数又は複数)(存在する場合)、電解質(単数又は複数)(存在する場合)、及び集電体(単数又は複数)(存在する場合)が、セルを形成してもよい。この場合、イオン導電性バッテリーは、1又は複数のバイポーラ板で分離された複数のセルを含む。バッテリー内のセルの数は、バッテリーの性能要件(例えば、電圧出力)によって決まり、及び、製造上の制約によってのみ制限される。例えば、バッテリーは、1~500のセルを含み、この数には、その間のすべての整数値のセル及びその間の範囲が含まれる。
【0079】
一例では、イオン伝導性バッテリー又はイオン伝導性バッテリーセルは、1つの平面状カソード及び/又はアノード-電解質界面、又は非平面状カソード及び/又はアノード-電解質界面を有する。
【0080】
イオン伝導性バッテリーは、1又は複数の電気化学セル(一般的に、カソード、アノード、及び電解質を含むセルなど)を含んでもよい。本開示の1又は複数のアノードを含むことを条件に、様々な例において、バッテリーは、任意の適切な構成部品(例えば、アノード、電解質、セパレータなど)を含む。そのような構成要素を即座に選択することは、当業者の裁量の範囲内である。
【0081】
バッテリーには、様々な用途が考えられる。例えば、バッテリーは、消費者用途、及び自動車用途及び他の大規模用途において使用される。
【0082】
本明細書に開示された様々な実施形態及び実施例に記載の方法の工程は、本開示の方法を実施するのに十分である。それゆえ、一例では、方法は、本質的に、本明細書に開示された方法の工程の組み合わせからなる。別の例では、方法はそのような工程のみからなる。
【0083】
以下の陳述は、本開示のケイ素-炭素ナノ材料、及び、本開示のケイ素-炭素ナノ材料の製造方法及び使用方法の例を記載する。
陳述1.
ケイ素-炭素ナノ複合材料(例えば、複数のケイ素@間隙@炭素クラスターを含むケイ素-炭素ナノ複合材料)を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)-被覆ナノ粒子(例えば、酸化ケイ素で連続的にコーティングされたケイ素ナノ粒子)を提供すること(例えば、酸化雰囲気(例えば、空気、水、酸化性ガス、例えば、オゾン、亜酸化窒素など)中でケイ素ナノ粒子を加熱する(例えば、熱的に酸化する)ことによって、ゾルゲル法、例えば、Stober法などによって、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)-被覆ナノ粒子を形成する)、前記粒子は、例えば、5~500nmの酸化ケイ素厚みを有し、前記数値範囲には、その間のすべてのnmの範囲及び値が含まれる(例えば、1~300nm、250nm未満、又は150nm未満);
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する(例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけることによって(例えば、ダイセット及び液圧プレス、タブレットプレス、スタンププレス、又はローラープレスなどを使用して)、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮された(例えば、凝集した)クラスターを形成し、この酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して(例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、ジェットミリング、ローラーミリングなどを使用して)、所望のサイズの(例えば、1~50ミクロン、その間のすべてのミクロン値及び範囲を含む)酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する);
炭素材料(例えば、グラフェン、グラフェン様物質、グラファイト状炭素物質、非晶質炭素、又はそれらの組み合わせなどの炭素材料)で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する(例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを、気相の炭素前駆体、例えば、アセチレン、エチレン、メタン、エタノール、アセトン、又はそれらの組み合わせなどと、及び任意で、還元ガス、例えば、水素、窒素、及びアンモニアなどと接触させることによって)、前記クラスターは、例えば、0.3~20nm(その間のすべての0.1nm値及び範囲(例えば、0.3~5nm、及び5~10nm)を含む)の炭素材料厚みを有する;及び
ケイ素-炭素ナノ複合材料が形成されるように、すべてあるいは実質的にすべて(例えば、80%以上、85%以上、90%以上、及び95%以上)の酸化ケイ素を、前記炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターから除去する(例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素被覆クラスターを、酸、例えばフッ化水素酸水溶液など、塩基、例えば、第I族金属水酸化物、又は溶融水酸化物(fused hydroxide)などと接触させることによって)。
陳述2.
ケイ素粒子の熱酸化;炭素コーティング;加圧及び粉砕によるクラスター形成;第二炭素コーティング;及び酸性エッチングを含む、ケイ素-炭素ナノ複合材料(例えば、複数のケイ素@間隙@炭素クラスターを含むケイ素-炭素ナノ複合材料)の製造方法。
陳述3.
少なくとも2つの炭素コーティング工程があり、前記炭素コーティング工程が、クラスター形成プロセスの前又は後に、あるいは前と後の両方に行われる、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述4.
ケイ素-炭素ナノ複合材料を単離すること(例えば、ろ過プロセス又は遠心分離プロセスを使用して)をさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述5.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料を洗浄することをさらに含む(例えば、ケイ素-炭素ナノ複合材料を、溶媒、例えば、エタノールなどで洗浄する。これは、ケイ素ナノ粒子上に酸化物層の形成を防ぐために(及びそれらを、ろ過材からより容易に分離するために)好ましい。前記洗浄工程は繰り返されてもよい)、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述6.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料を乾燥する(例えば、前記クラスターを真空オーブン中で乾燥する)ことをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述7.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料をリチウム化することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。前記リチウム化は、電極作製の前又は後に実施されてもよい。
陳述8.
前記酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスター形成中に焼結される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述9.
炭素材料で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を焼結することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。任意で、前記焼結プロセスは、水素を含む雰囲気中で実施され、これは炭素含有層のグラフェン含量を増加させ得る。
陳述10.
前記ケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~250nm(例えば、5~150nm)(それらの間のすべてのnm範囲及び値を含む(例えば、20~75nm、それらの間のすべての0.1nm値及び範囲を含む)の最長寸法(例えば、直径)を有する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述11.
前記ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。他の形状であってもよい。
陳述12.
前記形成工程が、ダイセット及び液圧プレスを使用して、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけて(例えば、30~1000MPa(その間のすべてのMPa値及び範囲を含む)の圧力)、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを形成すること、及び、前記酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して(例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、ジェットミリング、ローラーミリングなど)、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成することを含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述13.
導電性炭素材料(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はグラフェン、例えばグラフェンシートなど)が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する前に、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に添加される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述14.
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけた後であって、圧縮された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を粉砕する前に、圧縮された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される(例えば、不活性雰囲気中で600℃にて)、陳述12又は13のいずれか1つに記載の方法。酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のさらなる酸化をさけるために、焼結環境は高温では不活性であることが望ましい。しかしながら、低温では焼結環境は空気であってもよい。例えば、焼結時間は30分~2時間である(その間のすべての0.1分値及び範囲を含む)。
陳述15.
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着(例えば、炭素前駆体としてアセチレンを使用する、及び任意で水素を使用する)を使用して実施される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。一例では、炭素前駆体ガス流を停止した後、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターを、析出温度であるいはその付近の温度で維持して、さらに炭素材料をパック(pack)し(例えば、炭素材料をよりグラファイト状にする)、及び任意で、このプロセスの間に水素を添加する。
陳述16.
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程(例えば、本明細書に記載されているような)をさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述17.
ケイ素-炭素ナノ複合材料(例えば、複数のケイ素@間隙@炭素クラスターを含むケイ素-炭素ナノ複合材料)を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)-被覆ナノ粒子(例えば、酸化ケイ素の連続的なコーティングを有するケイ素ナノ粒子)を提供すること(例えば、酸化雰囲気(例えば、空気、水、酸化性ガス、例えば、オゾン、亜酸化窒素など)中でケイ素ナノ粒子を加熱する(例えば、熱的に酸化する)ことによって、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)-被覆ナノ粒子を形成する)、前記粒子は、例えば、5~500nmの酸化ケイ素厚みを有し、前記数値範囲には、その間のすべてのnmの範囲及び値が含まれる(例えば、1~300nm、250nm未満、又は150nm未満);
炭素材料(例えば、グラフェン、グラフェン様物質、グラファイト状炭素物質、又はそれらの組み合わせなどの炭素材料)で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を形成する(例えば、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を、気相の炭素前駆体、例えば、アセチレンなどと接触させることによって)、前記粒子は、例えば、0.3~20nm(その間のすべての0.1nm値及び範囲(例えば、0.3~5nm、及び5~10nm)を含む)の炭素材料厚みを有する;及び
炭素材料で被覆された、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する(例えば、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけることによって(例えば、ダイセット及び液圧プレス、タブレットプレス、スタンププレス、又はローラープレスなどを使用して)、炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮された(例えば、凝集した)クラスターを形成し、この炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して(例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、ジェットミリング、ローラーミリングなど)、炭素-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する);
ケイ素-炭素ナノ複合材料が形成されるように、すべてあるいは実質的にすべて(例えば、80%以上、85%以上、90%以上、及び95%以上)の酸化ケイ素を、前記炭素材料で被覆された酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターから除去する(例えば、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を、酸、例えばフッ化水素酸水溶液など、又は塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物水溶液などと接触させることによって)。
陳述18.
ケイ素-炭素ナノ複合材料を単離すること(例えば、ろ過プロセス又は遠心分離プロセスを使用して)をさらに含む、陳述17に記載の方法。
陳述19.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料を洗浄することをさらに含む(例えば、ケイ素-炭素ナノ複合材料を、溶媒、例えば、エタノールなどで洗浄する。これは、ケイ素ナノ粒子上に酸化物層の形成を防ぐために、及び/又は、それらをろ過材からより容易に分離するために、好ましい。前記洗浄工程は繰り返されてもよい)、陳述17又は18に記載の方法。
陳述20.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料を乾燥する(例えば、前記クラスターを真空オーブン中で乾燥する)ことをさらに含む、陳述17~19のいずれか1つに記載の方法。
陳述21.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料をリチウム化することをさらに含む、陳述17~20のいずれか1つに記載の方法。前記リチウム化は、アノード材料及び/又はアノードの形成の後に実施されてもよい。
陳述22.
前記炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスター形成中に焼結される、陳述17~21のいずれか1つに記載の方法。
陳述23.
導電性炭素材料(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はグラフェン、例えばグラフェンシートなど)が、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成する前に、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に添加される、陳述17~22のいずれか1つに記載の方法。
陳述24.
前記ケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~250nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む(例えば、5~150nm又は20~75nm)の最長寸法(例えば、直径)を有する、陳述17~23のいずれか1つに記載の方法。
陳述25.
前記ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、陳述17~24のいずれか1つに記載の方法。他の形状であってもよい。
陳述26.
前記形成工程が、ダイセット及び液圧プレスを使用して、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけて(例えば、30~1000MPa(その間のすべてのMPa値及び範囲を含む)の圧力)、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを形成すること、及び、前記炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の圧縮クラスターを粉砕して(例えば、ボールミリング、ハンマーミリング、ジェットミリング、ローラーミリングなど)、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子のクラスターを形成することを含む、陳述14~19のいずれか1つに記載の方法。
陳述27.
炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子に圧力をかけた後であって、圧縮された炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子を粉砕する前に、炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される(例えば、不活性雰囲気中で600℃にて)、陳述26に記載の方法。酸化による炭素の除去をさけるために、焼結環境は不活性とすべきである。例えば、焼結時間は30分~2時間である(その間のすべての0.1分値及び範囲を含む)。
陳述28.
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着(例えば、炭素前駆体としてアセチレンを使用する、及び任意で水素を使用する)を使用して実施される、陳述17~27のいずれか1つに記載の方法。一例では、炭素前駆体ガス流を停止した後、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターを、析出温度であるいはその付近の温度で維持して、さらに炭素材料をパックし(例えば、炭素材料をよりグラファイト状にする)、及び任意で、このプロセスの間に水素を添加する。
陳述29.
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程(例えば、本明細書に記載されているような)をさらに含む、陳述17~28のいずれか1つに記載の方法。
陳述30.
ケイ素-炭素ナノ複合材料(例えば、複数のケイ素@間隙@炭素クラスターを含むケイ素-炭素ナノ複合材料)を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
炭素材料(例えば、グラフェン、グラフェン様物質、グラファイト状炭素物質、又はそれらの組み合わせなどの炭素材料)で被覆された、ケイ素ナノ粒子を形成する(例えば、ケイ素ナノ粒子を、気相の炭素前駆体、例えば、アセチレンなどと接触させることによって)、前記粒子は、例えば、0.3~20nm(その間のすべての0.1nm値及び範囲(例えば、0.3~5nm、及び5~10nm)を含む)の炭素材料厚みを有する;及び
ケイ素-炭素ナノ複合材料が形成されるように、少なくとも一部のケイ素を、前記炭素材料で被覆されたケイ素ナノ粒子から除去する(例えば、炭素材料被覆-ケイ素ナノ粒子を、例えば、第I族金属水酸化物など(例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウムなど)のような剤と接触させることによって、炭素材料を除去することなくあるいは実質的に除去することなく、ケイ素ナノ粒子のケイ素を溶解する)。
陳述31.
前記ケイ素ナノ粒子が、結晶質、多結晶、非晶質、又はそれらの組み合わせである、及び/又は、5~250nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む(例えば、5~150nm又は20~50nm)の最長寸法(例えば、直径)を有する、陳述30に記載の方法。
陳述32.
前記ケイ素ナノ粒子が、球状、疑似球状、不規則形状、又はそれらの組み合わせである、陳述30又は31に記載の方法。他の形状であってもよい。
陳述33.
酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターの形成が、化学蒸着(例えば、炭素前駆体としてアセチレンを使用する、及び任意で水素を使用する)を使用して実施される、陳述30~32のいずれか1つに記載の方法。一例では、炭素前駆体ガス流を停止した後、酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子の炭素材料被覆クラスターを、析出温度であるいはその付近の温度で維持して、さらに炭素材料をパックし(例えば、炭素材料をよりグラファイト状にする)、及び任意で、このプロセスの間に水素を添加する。
陳述34.
前記炭素材料-被覆酸化ケイ素-被覆ケイ素ナノ粒子が焼結される、陳述30~33のいずれか1つに記載の方法。
陳述35.
1又は複数の追加的な炭素コーティング工程(例えば、本明細書に記載されているような)をさらに含む、陳述30~34のいずれか1つに記載の方法。
陳述36.
ケイ素ナノ粒子;連続的な炭素シェル;及び炭素シェル内の間隙スペース;を含むケイ素-炭素ナノ複合材料。ここで、前記ケイ素ナノ粒子は、前記連続的な炭素シェルに被包されている。
陳述37.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料が、複数の粒子を含み(例えば、前記複数の粒子は、1つの粒子クラスターあるいは複数の粒子クラスターを形成する)、各粒子が、ケイ素ナノ粒子;連続的な炭素シェル;及び炭素シェル内の間隙スペースを含み、ここで、前記ケイ素ナノ粒子は、前記連続的な炭素シェルに被包されている、陳述36に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述38.
前記ケイ素-炭素ナノ複合材料が、ケイ素-炭素ナノ複合材料の総重量に基づいて、少なくとも75重量%のケイ素を有する、陳述37に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述39.
前記ケイ素ナノ粒子が、5~250nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む(例えば、5~150nm又は20~50nm))の最長寸法(例えば、直径)を有する、陳述36に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述40.
前記ケイ素ナノ粒子が、5~250nm(それらの間のすべてのnm値及び範囲を含む(例えば、5~150nm又は20~75nm))の最長寸法(例えば、直径)を有する、陳述37又は38に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述41.
前記連続的な炭素シェルが、0.3~20nm(それらの間のすべての0.1nm値及び範囲を含む)(例えば、0.3~5nm及び5~10nm)の厚みを有する、陳述36~40のいずれか1つに記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述42.
前記連続的な炭素シェルが、100%非晶質ではない、陳述36~41のいずれか1つに記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述43.
前記連続的な炭素シェルが、欠陥の無いグラフェンではない、陳述36~42のいずれか1つに記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述44.
前記連続的な炭素シェルが、0.7~2のD(sp3炭素)/G(sp2炭素)比のラマンスペクトル(その間のすべての0.1比の値及び範囲を含む)を示す炭素材料を含む、陳述36~43のいずれか1つに記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述45.
前記連続的な炭素シェルが、観察可能なG’ピーク(例えば、ラマンスペクトル中の観察可能なG’ピーク)も示すラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、陳述44に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述46.
前記連続的な炭素シェルが、0.1~0.7のG’/G比も示すラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、陳述45に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
陳述47.
間隙スペースとケイ素ナノ粒子体積の体積比([間隙体積+ケイ素ナノ粒子体積]/ケイ素体積)が、3~5である(その間のすべての範囲及び値を含む(例えば、3.8~4.2))、陳述36~46のいずれか1つに記載のケイ素-炭素材料。
陳述48.
前記ケイ素-炭素材料が、陳述1~35のいずれか1つに記載の方法によって製造される、陳述36~47のいずれか1つに記載のケイ素-炭素材料。
陳述49.
陳述36~47のいずれか1つに記載のケイ素ナノ複合材料、又は陳述1~35のいずれか1つに記載の方法によって製造されたケイ素ナノ複合材料を含む、イオン伝導性バッテリー用のアノード。
陳述50.
1又は複数のバインダー(例えば、ポリマー(例えば、導電性ポリマー)、例えば、PVDF、PAA、CMC、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアニリン(PANI)、ポリ(9,9-ジオクチル-フルオレン-co-フルオレノン)(PFFO)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-フルオレノン-co-メチル安息香酸)(PFFOMB)、ポリアミド-イミド(PAI)、リチウムポリ(アクリル酸)(PAALi)、及びポリ(アクリル酸)ナトリウム(PAANa)、および同様のものなど、並びにそれらの組み合わせ)をさらに含む、陳述49に記載のアノード。
陳述51.
1又は複数のカーボン添加剤(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(例えばグラフェンシート)及びそれらの組み合わせ)をさらに含む、陳述49又は50に記載のアノード。
陳述52.
アノードが、3,500mA/gの電流で、少なくとも1,000サイクルの間、少なくとも1,000mAh/gのアノード容量、又は、400mA/gの電流で、少なくとも50サイクルあるいは少なくとも250サイクルの間、少なくとも2,000mAh/gのアノード容量を示す、陳述49~51のいずれか1つに記載のアノード。
陳述53.
陳述36~47のいずれか1つに記載のケイ素ナノ複合材料、又は陳述1~35のいずれか1つに記載の方法によって製造されたケイ素ナノ複合材料を含む(例えば、陳述46~49のいずれか1つに記載のアノード、又は陳述1~35のいずれか1つに記載の方法によって製造されたケイ素ナノ複合材料を含む)、イオン伝導性バッテリー(例えば、リチウムイオン電池)。
陳述54.
バッテリーが、1又は複数の電解質及び/又は1又は複数の集電体及び/又は1又は複数のさらなる構成成分(例えば、バイポーラ板、外装材、及び電気接点/リード(ワイヤを接続するための)など)をさらに含む、陳述53に記載のイオン伝導性バッテリー。
陳述55.
複数のセルを含み、各セルが、陳述49~52のいずれか1つに記載のアノードを1つ又は複数、及び任意で、1又は複数のカソード、電解質、及び集電体を含んでいる、イオン伝導性バッテリー。
陳述56.
バッテリーが、1~500のセル(その間のすべての値のセル及び範囲を含む)を含む、陳述55に記載のイオン伝導性バッテリー。
【0084】
以下の実施例は、本開示を説明するために存在する。それらはいかなる方法による限定も意図していない。
【0085】
[実施例1]
本実施例は、本開示のケイ素-炭素ナノ材料を製造すること、特性評価すること、及び使用することに関する記述を提供する。
【0086】
我々は、Sigma Aldrichから購入した~100nmケイ素ナノ粒子を使用して、ケイ素-炭素クラスターを合成した。図1Aに示すように、ナノ粒子を空気中で熱酸化して、ケイ素ナノ粒子を小さくするだけでなく、最終的に間隙スペースとなってケイ素の体積膨張を受け入れる犠牲層も提供した(図1B)。その後、酸化ナノ粒子を液圧プレスで加圧して、それらをボールミルして、5~15μmのクラスターを形成した(図2A~B)。各クラスターは、個々に酸化されたケイ素ナノ粒子を含む(図2C)。その後、酸化ナノ粒子を、管状炉内で、アセチレンガスに1000℃を超える温度でさらすことによって、炭素コーティングして、グラフェン様炭素を形成した。クラスターが多孔性であるため、炭素はクラスター内に浸透し、個々のナノ粒子を被覆した。このケイ素@酸化物@炭素クラスターをエッチングして、酸化物層を除去し、85%を超えるケイ素含量を有するケイ素@間隙@炭素クラスターを形成した。個々のナノ粒子の形態を調べるために、クラスター形成無しでプロセスを実施した。それらの構造の画像を図2D~Eに示す。各ケイ素ナノ粒子は、体積膨張のための間隙スペースを有し、これはすべてのナノ粒子について比較的均一である。炭素層は、導電層を提供する一方、電解質からケイ素ナノ粒子を保護する。図2Fは、炭素層の厚みが5nm程度と薄いことを示す。図2Gに示されるように、炭素シェルは、圧力950MPaの圧縮に耐え、破損しなかった。この結果は、製造の間の電極のロールプレスが、アノード材料の構造に影響を与えないことを実証する。
【0087】
これらのプロセスは非常に容易に調節可能である。酸化時間及び温度を変更することによって、酸化物層の厚みを調節することができる。コーティング時間及びアセチレンの流速を変更することによって、炭素含量を調節することができる。炉の温度を変更することによって、炭素の種類(黒鉛化の程度)を変更することができる。粉砕エネルギー及び時間を変更することによって、クラスターサイズを調節することができる。さらに、他者によって公表された、酸化ケイ素(例えば、SiO2)の液相プロセス、及び炭素層成長又はナノワイヤ成長プロセスとは異なり、これらのプロセスは、拡張性が高く、化学産業において非常によく知られている。我々のプロセスを実施するコストは、金触媒を必要とするナノワイヤ成長、又は別の炭化工程がその後に続く有機シェルの多段階液相成長などの他の方法よりはるかに低いと予想される。図8は、異なる電流密度における、ケイ素-炭素アノード材料の定電流サイクリングを示す。
【0088】
[実施例2]
本実施例は、本開示のケイ素-炭素ナノ材料を製造すること、特性評価すること、及び使用することに関する記述を提供する。
【0089】
リチウムイオン電池用途のためのケイ素-炭素ナノ複合材料に関する結果
【0090】
前駆体としてシランガスを使用して、レーザー熱分解リアクタ内でケイ素ナノ粒子を調製した。リアクタの独自の設計は、急速加熱と急速冷却を提供し、25~35nmの、酸化物フリーで、水素不動態化されたケイ素ナノ粒子の形成をもたらす(図3A~B)。ケイ素膨張のための間隙スペースを提供するために、水溶液プロセスにおける修正Stober法により、ナノ粒子の表面上に犠牲的シリカ層を成長させた。酸化物層の厚みを変更することによって、間隙スペースを調節した。その後、炭素源としてアセチレンガスを使用して、CVD法により炭素層を成長させた。CVD時間を変更することによって、炭素層の厚み(最終物質中の炭素含量)を調節した。この時点で、ケイ素ナノ粒子はシリカで被覆され、コンフォーマル炭素層で覆われた。酸性エッチングプロセスを使用して、シリカ犠牲層を除去した。ケイ素ナノ粒子が製造プロセスにおいて凝集するため、最終的なケイ素-炭素材料は、複合型物質を形成する(図3C~D)。定電流の充放電実験において、サイズが異なる同様の構造物の性能を比較するため、市場で入手可能な~100nmのケイ素粒子を使用して、同じプロセスによって、同じ構造物を調製した(図3E~F)。
【0091】
図4は、得られたケイ素-炭素ナノ複合材料の特性評価を示す。図4AのX線回析は、それぞれ~28°,47°及び56°のケイ素(111)、(220)、及び(311)ピークの存在を実証する。炭化ケイ素に関連するピークの不存在は、炭素コーティングプロセス中に、炭素原子がケイ素又はシリカと化学的に反応しないことを示しており、炭化ケイ素はリチウム貯蔵能力を有さないため、このことは非常に重要である。図4Bのラマンスペクトルは、炭素構造が、非晶質炭素よりむしろグラフェンに類似していることを実証する。~2700cm-1のG’バンドの存在は、炭素層が非晶質ではないことを実証する。しかしながら、ID/IG比は1より大きく、これはグラファイト状炭素構造が著しく歪められ、欠陥があることを実証している。これは、炭素含量を20%未満に維持するために、炭素コーティングプロセスを急速に(<1分)行ったためである。それゆえ、グラフェン層は融合及び積層せず、100%グラファイト状炭素を作り出さない。もし、炭素コーティング時間を長くすれば、より多くのグラフェン層が形成、融合及び積層され、歪みが低減され、ID/IG比は1未満となる。Son氏らは、グラフェン成長時間が黒鉛化の程度に与える影響を実験的に証明した。彼らは、炭素コーティングプロセスが数分のオーダーである場合、ID/IG比が1未満になることを観測した。図4Cは、キャリアガスとして空気を使用した場合の、ケイ素-炭素ナノ複合材料の熱重量分析(TGA)を示す。システムにより測定された13%の重量損失は、炭素含量を示す。その後、ケイ素ナノ粒子は酸化され、重量の増加が生じる。
【0092】
スラリー法を使用して、薄い銅箔上に電極を作製した。スラリーは、活物質、CNT、及びPVDFを65:20:15の比で混合することによって調製した。Cレート(充放電レート)は、ケイ素の理論容量(1C=4200mAh/g)及び活物質の質量に関して算出される。Cレートは、その最大容量に対してバッテリーが充電又は放電される速度の評価基準である。例えば、C/10のCレートは、必要な電流をバッテリーに流す又はバッテリーから排出して、10時間でそれを完全に(その理論容量まで)充電又は放電することを意味する。電解質は、1:1(w/w)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート中の1.0Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)からなる。10vol%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び1vol%のビニレンカーボネート(VC)を、SEI安定化を促進するために添加した。
【0093】
準備したナノ複合材料構造体を試験する前に、間隙スペース無しの、炭素被覆35及び100nmのナノ粒子の遅い定電流サイクリングを行った。図5Aの結果は、連続的なSEI成長と電解質の消費に起因して、容量が急速に低下することを示す。他方、ケイ素ナノ粒子に間隙スペースを提供することは、アノード材料の性能を著しく向上させた。図5Bに表されるように、35nmのケイ素ナノ粒子で合成されたナノ複合材料は、C/10で50サイクル後、~2300mAh/gで安定した。しかしながら、100nmのケイ素ナノ粒子で合成されたナノ複合材料は、C/10で50サイクル後、~900mAh/gで安定した。それゆえ、定電流データは、35nm粒子が、それらのより短いイオン距離及び輸送距離のため、より高い性能を提供することを示す。
【0094】
間隙スペースを有する35nmのケイ素-炭素ナノ複合材料の速い定電流サイクリングも実施した。図6に表されるように、C/1.2、又は0.62mA/cm2電流密度で1500サイクル後、容量は1000mAh/gに達した。我々は、容量の変動が、SEI層の安定性と関連していると考える。電解質中のFEC添加剤は、SEIのクラッキングを制限するが、多数のサイクルにわたる高電流は、それにもかかわらずSEIにひびを入れ、容量損失をもたらすかもしれない。この結果は、ケイ素に関連する有害な影響を削減する我々の試みが成功したこと、及び、我々が開発したケイ素ベースのアノード材料の高いポテンシャルを実証する。
【0095】
本開示は、1以上の特定の実施形態及び/又は実施例に関して記載されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び/又は実施例も可能であることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素ナノ粒子;
連続的な炭素シェル;及び
炭素シェル内の間隙スペース
を含み、
前記ケイ素ナノ粒子が、前記連続的な炭素シェルに被包されており、及び
前記連続的な炭素シェルが、100%のアモルファスではない、ケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項2】
ケイ素-炭素ナノ複合材料が、複数の粒子を含み、各粒子が、
ケイ素ナノ粒子;
連続的な炭素シェル;及び
炭素シェル内の間隙スペース
を含み、
前記ケイ素ナノ粒子が、前記連続的な炭素シェルに被包されている、請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項3】
ケイ素-炭素ナノ複合材料が、ケイ素-炭素ナノ複合材料の総重量に基づいて、少なくとも75重量%のケイ素を有する、及び/又は、ケイ素-炭素ナノ複合材料のケイ素ナノ粒子が、5~150nmの最長寸法を有する、請求項2に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項4】
連続的な炭素シェルが、0.3~20nmの厚みを有する、請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項5】
連続的な炭素シェルが、欠陥の無いグラフェンではない、請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項6】
連続的な炭素シェルが、0.7~2のD(sp3炭素)/G(sp2炭素)比のラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項7】
連続的な炭素シェルが、観察可能なG’ピーク及び/又は0.1~0.7のG’/G比も示すラマンスペクトルを示す炭素材料を含む、請求項6に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項8】
間隙スペースとケイ素ナノ粒子体積の体積比([間隙体積+ケイ素ナノ粒子体積]/ケイ素体積)が、3~5である、請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料。
【請求項9】
請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料を含む、イオン伝導性バッテリー用のアノード。
【請求項10】
さらに、1又は複数のバインダー、及び/又は、1又は複数のカーボン添加剤を含む、請求項9に記載のアノード。
【請求項11】
アノードが、3,500mA/gの電流で、少なくとも1,000サイクルの間、少なくとも1,000mAh/gのアノード容量、又は、400mA/gの電流で、少なくとも50サイクルあるいは少なくとも250サイクルの間、少なくとも2,000mAh/gのアノード容量を示す、請求項9に記載のアノード。
【請求項12】
請求項1に記載のケイ素-炭素ナノ複合材料、及び任意で、1又は複数の電解質、及び/又は、1又は複数の集電体、及び/又は、1又は複数のさらなる構成成分を含む、イオン伝導性バッテリー。
【請求項13】
1~500のセルを含み、各セルが、請求項9に記載のアノードを1つ又は複数、及び任意で、1又は複数のカソード、1又は複数の電解質、及び1又は複数の集電体を含んでいる、イオン伝導性バッテリー。
【外国語明細書】