(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000968
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】非ヒト動物用血圧チェッカー、及び、その使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20231226BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/02 310B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084786
(22)【出願日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022099753
(32)【優先日】2022-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311004773
【氏名又は名称】物産アニマルヘルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】森 秀一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】永原 俊治
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD05
4C017EE01
4C017FF08
(57)【要約】
【課題】光学式の非ヒト動物用血圧チェッカーによって、体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【解決手段】非ヒト動物用血圧チェッカー1は、非ヒト動物の体表面Bに光を発光する発光部11と、非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部12と、を備えた光学式の脈波センサ10と、該脈波センサ10によって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部21と、血圧算出部21の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部15と、血圧算出部21と表示部15が設けられた本体部4と、柱状に延びて非ヒト動物の体毛A間に挿入される挿入部5と、を有し、挿入部5は、非ヒト動物の被計測部B1に押し付けられ、脈波センサ10を外部に臨ませる先端面5bと、先端面5bを体表面Bに押し付けるために非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部5dと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーであって、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、
該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、
前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、
前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、
柱状に延びて前記非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部と、を有し、
前記挿入部は、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられ、前記脈波センサを外部に臨ませる先端面と、前記先端面を前記体表面に押し付けるために前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部と、を備えることを特徴とする非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項2】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーであって、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、
該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、
前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、
前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、
柱状に延びて前記非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部と、を有し、
前記挿入部には、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられる先端面が設けられ、
前記先端面は、前記脈波センサの前記発光部と前記受光部が配置される測定領域を外部に臨ませる開口部を備え、
前記測定領域の面積は、前記被計測部の面積よりも小さく設定されている非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項3】
前記挿入部は、前記本体部と別体に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項4】
前記挿入部は、前記本体部の端面から延びて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項5】
前記測定領域の面積に対する前記先端面の面積の割合は、2倍以上40倍以下に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項6】
前記かき分け部は、前記挿入部を前記本体部側から前記先端面に向かって先細り形状にすることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項7】
前記かき分け部は、前記先端面が、前記挿入部の軸方向に対して傾斜して配置されることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項8】
前記かき分け部は、前記先端面と、前記挿入部の側面部の少なくとも一部に設けられて前記先端面に交差する平面と、によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項9】
前記先端面と前記平面とのなす角は、90度以下であることを特徴とする請求項8に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項10】
前記先端面は、前記挿入部の軸方向に垂直に配置され、
前記平面は、前記先端面に直交することを特徴とする請求項8に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項11】
前記かき分け部は、前記挿入部の先端部における側面部の一部から外側に突出するフランジ部であることを特徴とする請求項1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項12】
前記フランジ部は、櫛歯状に形成されることを特徴とする請求項11に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項13】
前記測定領域の面積は、7mm2以上16mm2以下に設定されている請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項14】
前記発光部の光度は、40mcd以上120mcd以下に設定されている請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項15】
前記表示部は、前記血圧算出部によって算出された血圧値と、該血圧値が所定の範囲内にあるかどうかの判定結果と、のうちの少なくとも一方が表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【請求項16】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、
前記非ヒト動物の被計測部の体毛をかき分けて、前記被計測部の体表面を露出させ、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記被計測部に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、
前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする前記非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【請求項17】
前記非ヒト動物用血圧チェッカーは、前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部を備え、
前記被計測部の体毛をかき分ける際に、前記非ヒト動物用血圧チェッカーを前記非ヒト動物の体毛の毛並みに相対するように挿入することを特徴とする請求項16に記載の非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【請求項18】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記非ヒト動物の体毛のない被計測部の体表面に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、
前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする前記非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ヒト動物用血圧チェッカー、及び、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非ヒト動物(以下、「動物」という)の前足の上部位置にカフ帯を巻き付けて、カフ加減圧によって血圧値を測定する、いわゆるカフ式の血圧測定装置が開示されている。カフ式の血圧測定装置は、一般には動物の身体を物理的に拘束するか薬剤等による鎮静下でカフを装着し、かつ、圧力をかけて圧迫するため、動物にストレスを与えることになり、精度のよい血圧を得ることが難しい。
【0003】
特許文献2には、人体の体表面に光を発光する発光部と、体表面内から反射した光を受光する受光部とによって、体表面下の血管の脈動による血管の容積変化に伴って得られる脈波を測定する光学式の脈波センサが開示されている。
【0004】
特許文献3には、光学式の脈波センサによって得られる脈波に基づいて、血圧を推定する技術が開示されている。これにより、光学式の脈波センサを体表面に押し付ける(近接させる)だけで、血圧を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-551163号公報
【特許文献2】特開2016-083030号公報
【特許文献3】特開2015-231512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学式の脈波センサを用いた血圧チェッカーは、人体を対象としたものであるため、一般に、体表面が密度の高い体毛で覆われている動物においては、光学式の脈波センサを体表面に接近させることができず、体表面下の血管から脈波を得ることが難しい。また、体毛で覆われていない部分、例えば肉球等で計測する場合には、脈波センサに対して肉球等の面積が小さく、脈波を正確に計測することが難しい場合がある。
【0007】
本発明は、光学式の非ヒト動物用血圧チェッカーによって、体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーであって、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、柱状に延びて前記非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部と、を有し、前記挿入部は、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられ、前記脈波センサを外部に臨ませる先端面と、前記先端面を前記体表面に押し付けるために前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部と、を備える非ヒト動物用血圧チェッカーを提供する。
【0009】
この構成により、かき分け部によって、非ヒト動物の体毛をかき分けるとともに、先端面を体表面に押し付けることができる。これにより、脈波センサを体表面に近接させることができ、体表面に体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定できるので、測定された脈波に基づいて、非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【0010】
本発明の一態様は、体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーであって、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられる先端面と、を有し、前記先端面は、前記脈波センサの前記発光部と前記受光部が配置される測定領域を外部に臨ませる開口部を備え、前記測定領域の面積は、前記被計測部の面積よりも小さく設定されている非ヒト動物用血圧チェッカーを提供する。
【0011】
この構成により、測定領域を適切な面積に設定でき、脈波を良好に計測できる。具体的には、測定領域の面積が、被計測部の面積よりも大きい場合、発光部から照射される光が被計測部の外側に位置して被計測部に照射されない場合や、受光部が被計測部の外側に位置して被計測部からの反射光を受光できない場合が生じ、脈波を正確に計測できない。
【0012】
一般に、脈波センサにおける発光部と受光部は、同じ平面に設置され、並行した光で発光及び受光がなされる。したがって、被計測部は、非ヒト動物の体表面(被計測部)において光が照射される部分と、光を反射する部分が概ね同一平面上に配置されることが望ましい。ここで、被計測部とは、例えば、被計測部が非ヒト動物の肉球である場合、肉球のうち、センサの同一平面上にある発光部と受光部が密着可能な領域である。言い換えると、曲率を有する肉球に脈波センサを密着させると、肉球が弾性変形することで、肉球の脈波センサに対向する表面には、発光部と受光部を同一平面上に位置させることが可能な被計測部が形成される。
【0013】
前記挿入部は、前記本体部と別体に構成されていてもよい。
【0014】
本構成によれば、挿入部が本体部と別体に構成されているので、挿入部を小型化しやすく、非ヒト動物の姿勢によらずに被計測部に先端面を押し付けやすい。また、挿入部が本体部と別体に構成されているので、挿入部を小型化しやすく、非ヒト動物に不安を感じさないため安静の姿勢を保て、測定しやすい他、適切な状態で測定しやすい。
【0015】
前記挿入部は、前記本体部の端面から延びて一体的に形成されていてもよい。
【0016】
本構成によれば、計測の際に、例えば、本体部と挿入部とが別体で構成される場合(別体型)のように、本体部を一方の手で保持しつつ挿入部を操作する必要がなく、また、例えば、挿入部と本体部とがケーブル等で接続されている場合のようにケーブル等が非ヒト動物に絡まる等計測を妨げることがなく、片手で操作しやすい。また、本体部と挿入部とを接続するケーブル等が必要ないので、例えば、本体部と挿入部とをケーブル等で接続するように構成された別体型に比べて、構造を簡素化でき、製造コストを下げることができる。
【0017】
前記測定領域の面積に対する前記先端面の面積の割合は、2倍以上40倍以下に設定されていてもよい。
【0018】
本構成によれば、測定領域の面積に対する先端面の面積の割合が適切に設定されているので、脈波を良好に計測できる。具体的には、先端面の面積の割合が2倍未満の場合、先端が鋭利な形状になって非ヒト動物を傷つけやすい。先端面の面積の割合が40倍を超過すると、測定領域を正確に被計測領域に押し当てにくい。
【0019】
前記かき分け部は、前記挿入部を前記本体部側から前記先端面に向かって先細り形状にすることによって構成されてもよい。
【0020】
この構成により、先端面が細いので、先細り形状でない場合に比して、比較的少ない体毛のかき分け量で先端面を体毛の根元に近接させることができる。かき分けられた体毛は、挿入部の斜面に沿って体表面側から離間する方向に持ち上げられるので、先端面を体表面に近接させやすい。
【0021】
前記かき分け部は、前記先端面が、前記挿入部の軸方向に対して傾斜して配置されることによって構成されてもよい。
【0022】
この構成により、先端面を毛並みに平行になるように配置させて、先端面における挿入部の先端面と側面とがなす角が鋭角となる側を、毛並みの上流側に位置させることで、挿入部の側面が毛並みに沿って、挿入部を体毛間に挿入しやすい。これにより、挿入部によって体毛がかき分けやすく、先端面を非ヒト動物の体表面に近接させやすい。
【0023】
前記かき分け部は、前記先端面と、前記挿入部の側面部の少なくとも一部に設けられて前記先端面に交差する平面と、によって構成されてもよい。
【0024】
この構成により、先端面と平面との間には直線状の角部が形成される。これにより、体毛間に挿入部を挿入する際に、この直線状の角部の幅で、該角部の幅の領域に存在する体毛がかき分けられる。したがって、挿入部が体毛間に挿入されやすく、先端面を非ヒト動物の体表面に近接させやすい。
【0025】
さらに、挿入部を体表面に近接させた後に、体表面における被計測部周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分ける際に、先端の直線状の角部によって直線状の境界を形成しやすい。この境界が直線状で幅を持っているので、脈波センサが配置される領域の体毛をかき分けられて体表面が露出した状態を維持しやすい。
【0026】
前記先端面と前記平面とのなす角は、90度以下であってもよい。
【0027】
この構成により、先端面を毛並みに平行になるように、かつ、先端面と平面とがなす角が90度以下となる側が、毛並みの上流側に位置するように配置することで、挿入部の平面が毛並みに沿って、挿入部を体毛間に挿入しやすい。
【0028】
さらに、上述の先端面と平面とによって形成される直線状の角部による効果と同様に、この直線状の角部によって、幅を持った領域の体毛がかき分けられる。したがって、挿入部が体毛間に挿入されやすく、先端面を非ヒト動物の体表面に近接させやすい。
【0029】
また、挿入部を体表面に近接させた後に、先端の直線状の角部によって、体表面における被計測部周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分ける直線状の境界を形成しやすい。この境界が直線状で幅を持っているので、脈波センサが配置される領域の体毛がかき分けられて体表面が露出した状態を維持しやすい。
【0030】
前記先端面は、前記挿入部の軸方向に垂直に配置され、前記平面は、前記先端面に直交してもよい。
【0031】
上述の先端面と平面とによって形成される直線状の角部による効果と同様に、この直線状の角部によって、幅を持った領域の体毛がかき分けられる。したがって、挿入部が体毛間に挿入されやすく、先端面を非ヒト動物の体表面に近接させやすい。
【0032】
また、挿入部を体表面に近接させた後に、先端の直線状の角部によって、体表面における被計測部周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分ける直線状の境界を形成しやすい。この境界が直線状で幅を持っているので、脈波センサが配置される領域の体毛がかき分けられて体表面が露出した状態を維持しやすい。
【0033】
さらに、体表面に先端面(脈波センサ)を押し付けて脈波を測定する際に、先端面を体表面に対して直交させて押し付ければいいので、先端面において分力が働くことが抑制される。これにより、測定時に必要な面圧が確保されやすく、測定中に先端面と体表面との関係が変化する等の不具合を回避しやすい。
【0034】
前記かき分け部は、前記挿入部の先端部における側面部の一部から外側に突出するフランジ部であってもよい。
【0035】
この構成により、フランジ部によって、非ヒト動物の体毛をかき分けて(ひっかけて)、挿入部を非ヒト動物の体毛間に挿入することができるので、先端面を非ヒト動物の体表面に近接させやすい。
【0036】
前記フランジ部は、櫛歯状に形成されてもよい。
【0037】
この構成により、櫛歯状のフランジ部の歯底に体毛が保持された状態となるので、被計測部周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分けた状態が維持しやすい。これにより、脈波センサを体表面により近接させやすい。また、櫛歯状のフランジ部の歯底に体毛が保持されることで、毛並みと挿入部の軸方向とに直交する方向に対する先端面のずれを抑制できる。
【0038】
前記測定領域の面積は、7mm2以上16m2以下に設定されていてもよい。
【0039】
この構成により、脈波センサを外部に臨ませる開口部を適切な面積に設定でき、脈波を良好に計測できる。具体的には、測定領域の面積が7mm2未満の場合、開口部に付着する汚れ等によって発光及び受光がしにくく、脈波を正確に計測できない。測定領域の面積が16mm2を超過すると、被計測部の面積よりも脈波センサの面積が大きく、発光部から照射される光が被計測部の外側に位置して被計測部に照射されない場合や、受光部が被計測部の外側に位置して被計測部からの反射光を受光できない場合が生じ、脈波を正確に計測できない。
【0040】
前記発光部の光度は、40mcd以上120mcd以下に設定されている請求項1~8のいずれか1項に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0041】
この構成により、脈波センサの光度が適切に設定され、脈波を良好に計測できる。具体的には、脈波センサの光度が40mcd未満の場合、光度が弱く反射光を受光しにくい。脈波センサの光度が120mcdを超過すると、光度が高く反射光によって受光部が測定可能な限界以上の光を検出する、いわゆるハレーションが生じやすい。
【0042】
前記表示部は、前記血圧算出部によって算出された血圧値と、該血圧値が所定の範囲内にあるかどうかの判定結果と、のうちの少なくとも一方が表示されてもよい。
【0043】
この構成により、非ヒト動物の血圧の状態を容易にチェックできる。
【0044】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、前記非ヒト動物の被計測部の体毛をかき分けて、前記被計測部の体表面を露出させ、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記被計測部に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする前記非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法を提供する。
【0045】
この方法により、非ヒト動物の被計測部の体毛をかき分けて、被計測部の体表面を露出させて脈波センサを被計測部に押し付けることができるので、光学式の脈波センサを備えた非ヒト動物用血圧チェッカーによって体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【0046】
前記非ヒト動物用血圧チェッカーは、前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部を備え、前記被計測部の体毛をかき分ける際に、前記非ヒト動物用血圧チェッカーを前記非ヒト動物の体毛の毛並みに相対するように挿入してもよい。
【0047】
この方法により、非ヒト動物用血圧チェッカーを非ヒト動物の体毛の毛並みに相対するように挿入することで、非ヒト動物の体毛をかき分けやすく、体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【0048】
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記非ヒト動物の体毛のない被計測部の体表面に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、
前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする前記非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【0049】
この方法により、非ヒト動物用血圧チェッカーを体毛のない被計測部、例えば、肉球に押し付けることで、体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、光学式の非ヒト動物用血圧チェッカーによって、体毛を備えた非ヒト動物の血圧の状態をチェックできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る動物用血圧チェッカーの斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る動物用血圧チェッカーを使用する際の説明図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る動物用血圧チェッカーの斜視図及び底面図。
【
図5】第2実施形態に係る動物用血圧チェッカーを使用する際の説明図。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る動物用血圧チェッカーの挿入部の側面図及び部分拡大図。
【
図7】第3実施形態に係る動物用血圧チェッカーを使用する際の説明図。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る動物用血圧チェッカーの斜視図及び底面図。
【
図9】第4実施形態に係る動物用血圧チェッカーを使用する際の説明図。
【
図10】(a)第4実施形態のフランジ部の変形例の部分拡大斜視図、及び、(b)第4実施形態の変形例のフランジ部を備えた動物用血圧チェッカーを使用する際の説明図。
【
図12】動物用血圧チェッカーを非ヒト動物の体毛のない被計測部で使用する際の説明図。
【
図13】第5実施形態係る動物用血圧チェッカーのシステム図および側面図。
【
図14】
図13の動物用血圧チェッカーの正面図および部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、非ヒト動物(以下、「動物」ともいう)用血圧チェッカーに関するものである。非ヒト動物用血圧チェッカー1は、光学式の脈波センサによって測定された脈波に基づいて、血圧を算出する、いわゆる、カフレス血圧チェッカーである。本発明の動物用血圧チェッカー1の説明に先立ち、光学式の脈波センサについて説明する。
【0053】
光学式の脈波センサは、動物の体表面に光を発光する発光部と、動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備える。脈波センサは、動物の体表面に光を発光する発光部と、体内から反射した光を受光する受光部とによって、体表面下の血管の脈動による血管の容積変化に伴って得られる脈波を測定する。
【0054】
上述のように、脈波センサは、体表面に発光された光が体内から反射され、反射光を受光部で受光するため、動物の体表面に近接させる必要がある。本願発明の実施形態においては、体表面が密度の高い体毛で覆われている非ヒト動物の体毛をかき分けることで、脈波センサに対して体表面を露出させ、脈波センサを体表面に近接させるための構成、及び、体毛のない肉球等の体表面で脈波を正確に計測するための構成を有している。
【0055】
以下、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る体毛を備えた非ヒト動物用血圧チェッカー1について説明する。
【0056】
本実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー1は、脈波センサ10と、脈波センサ10を制御するための制御装置20と、算出された血圧の状態を表示するための表示部15と、電源としてのバッテリ16と、これらを収納するケーシング3とを備える。
【0057】
脈波センサ10は、体表面に光を発行する発光部11と、体内から反射した光を受光する受光部12と、受光した光を脈波信号に変換する変換回路(図示せず)と、を有する。制御装置20は、発光部11に体表面に光を発光させるように信号を発信するとともに、上述のように、発光部11から発光する光と、受光部12から得られる体内から反射した光の検出値(脈波)に基づいて血圧を算出する血圧算出部21を備える。血圧算出部21によって算出された血圧値は、表示部15に表示される。
【0058】
本実施形態において、脈波センサ10には、発光部11がLED(発光ダイオード)、受光部12がフォトダイオードで構成された光学式脈波センサ(ローム株式会社製_型番BH1792GLC)が採用されている。脈波センサ10は、LED光を非ヒト動物の被計測部に向けて照射した時の反射光の光度を測定する。LEDの光度は、LEDの駆動電流にて調整可能となっている。発光部11の光度は、40mcd以上120mcd以下に設定されている。脈波センサの光度が40mcd未満の場合、光度が低く反射光を受光しにくい。脈波センサの光度が120mcdを超過すると、光度が高く反射光によって受光部12が測定可能な限界以上の光を検出する、いわゆるハレーションが生じやすい。
【0059】
表示部15には、血圧算出部21の算出結果に基づいて、該血圧値が所定の範囲(例えば、健康が維持される正常血圧値の範囲)内かどうかを判定するとともに、判定結果に基づいて「低血圧」、「基準内」、「高血圧」をそれぞれ示す「黄色」、「緑色」、「赤色」等で血圧の状態が表示されてもよい。
【0060】
ケーシング3は、計測者によって保持される四角柱状の本体部4と、該本体部4の先端面部41c,42cから先細りの柱状に延びて動物の体毛間に挿入される挿入部5とを備えている。本実施形態においては、ケーシング3は、樹脂で形成され、本体部4と、挿入部5とが一体的に形成されている。
【0061】
図2に示すように、本体部4は、正面側と背面側に分割して構成されている。本体部4は、正面側に位置する上蓋部41と、背面側に位置する下蓋部42とを備える。
【0062】
上蓋部41は、軸方向に延びるとともに、背面側に開放する断面コ字状に形成されている。上蓋部41は、軸方向に延びる上面部41aと、上面部41aの軸方向の両端部から背面側に向かって延びる後端面部41bと、先端面部41cと、上面部41aの幅方向の両端部から背面側に向かって延びる左右一対の側面部41d,41eとを備える。
【0063】
下蓋部42は、軸方向に延びるとともに、正面側に開放する断面コ字状に形成されている。下蓋部42は、軸方向に延びる下面部42aと、下面部42aの軸方向の両端部から正面側に向かって延びる後端面部42bと、先端面部42cと、下面部42aの幅方向の両端部から正面側に向かって延びる左右一対の側面部42dとを備える。
【0064】
図2に示すように、上蓋部41と下蓋部42とは、上蓋部41に設けられた上側係合部41f…41fと、下蓋部42に設けられた下側係合部42f…42fとを介して結合されている。具体的には、上側係合部41f…41fは、上蓋部41の上面部41aの背面側の面に設けられている。各上側係合部41fは、例えば、背面側に延びる柱状に形成されている。各上側係合部41fの内部には、ねじ穴41g…41gが設けられている。下側係合部42f…42fは、下蓋部42の下面部42aの正面側の面に設けられている。各下側係合部42fは、例えば、上面側に延びる中空の柱状に形成され、その上端部には、貫通孔42gが設けられている。上蓋部41と下蓋部42とは、各下側係合部42fの貫通孔42gを貫通するとともに、各上側係合部41fのねじ穴41gに螺合されるねじ41hによって結合される。
【0065】
上蓋部41と、下蓋部42とが、互いにはめ合わされることによって、脈波センサ10、表示部15、制御装置20、及び、バッテリ16等を収納するための収納空間Sが形成されている。
【0066】
下蓋部42の下面部42aには、バッテリ16を配置するためのバッテリケース43が配置されている。バッテリケース43の中央部には、軸方向に直交する方向に貫通する複数の孔が設けられている。下蓋部42の下面部42aの中央部には、ねじ穴42h…42hを備えたバッテリケース43を取り付けるための取付部42i…42iが軸方向に並べて設けられている。バッテリケース43の複数の孔に挿通され、取付部42i…42iのねじ穴42h…42hに螺合される複数のねじ43b…43bによって、バッテリケース43が、下蓋部42に固定されている。
【0067】
上面部41aの背面側の面には、制御装置20と、表示部15と、動物用血圧チェッカー1を作動させるためのスイッチ17とを配置した基盤22が、例えば、ねじ等を介して固定されている。
【0068】
上面部41aには、該上面部41aを軸方向に直交する方向に貫通する開口部41iを備える。開口部41iは、上面部41aの中央部で、ケーシング3内に収納された表示部15が臨むように設けられている。
【0069】
上面部41aの開口部41iよりも後端面部41b側の部位には、スイッチ17を貫通させるためのスイッチ用開口部41jが設けられている。
【0070】
本体部4の先端面部41c,42cには、挿入部5が連続して設けられている。挿入部5は、軸方向に延びて、本体部4側から先端側に向けて先細りの側面部としての周面部51a,52aと、該周面部51a,52aの細くなった先端部5aに形成された先端面5bとを備えている。
【0071】
周面部51a,52aは、円錐状に形成されている。換言すると、周面部51a,52aは、軸方向断面において先端側から本体部4に向かって径方向寸法が増加するかき分け部としての傾斜面で形成されている(
図2参照)。先端部の径D1は、基端部(本体部4側)の径D2の10%以上90%以下で形成されている。10%未満の場合、脈波センサ―を収納するスペースが確保されない場合や、先端部が本体部に対して鋭利な形状となって動物を傷つける危険性が高まり、90%より大きい場合、体毛間への挿入のしやすさが失われる。
【0072】
挿入部5の軸方向の長さLは、20mm以上80mm以下の範囲で形成されていればよい。20mm以下の場合、挿入部が短すぎるために、体毛間に沿うように先端部が体表面に近接され難く、80mmより長い場合、計測者によって把持される本体部から被計測部までの距離が遠く、血圧計測時において、非ヒト動物用血圧チェッカーを安定させて計測し難い。
【0073】
軸方向断面において、周面部51a,52aと、軸方向とのなす角θは、2.5度以上40度以下で形成されている。2.5度未満の場合、周面部51a,52aが、先端面に対して直交となる傾向であるため、挿入しやすさが向上され難く、40度より大きい場合、周面部51a,52aが、先端面に対して平行となる傾向であるため、挿入しやすさが向上され難い。
【0074】
先端面5bは、挿入部5の軸方向に垂直な面で形成されている。先端面5bの中心部には、ケーシング3の内側と外側とを貫通する開口部5cが形成されている。先端面5bと円錐状の周面部51a,52aとの間には、角部5dが形成されている。
【0075】
先端面5bは、上側部51及び下側部52の先端から径方向内側に延びる一対の半円状の縦面部51b,52bによって形成されている。開口部5cは、上側部51の縦面部51bを下側に解放するように切り欠いて設けられた上側切欠き部51cと、下側部52の縦面部52bを上側に解放するとともに、上側切欠き部51cと対応するように切り欠いて設けられた下側切欠き部52cとによって構成されている。
【0076】
挿入部5の先端側の内部には、脈波センサ10の発光部11と、受光部12とが配置された基盤13が収納されている。上側部51の先端側の内面には、内側に突出して周方向に延びる上側周方向凸部51dが設けられている。上側周方向凸部51dには、周方向に延びる上側周溝51eが備えられている。下側部52の先端側の内面には、内側に突出して周方向に延びて上側周方向凸部51dに対応して設けられた下側周方向凸部52dが設けられている。下側周方向凸部52dには、周方向に延びるとともに上側周溝51eに対応して設けられた下側周溝52eが備えられている。基盤13が、上側周溝51eと、下側周溝52eとの間に挟持されることで、脈波センサ10の発光部11及び受光部12が、挿入部5内に固定される。
【0077】
図11に示すように、発光部11と受光部12とは、先端面5bに平行に配置されている。先端面5bに設けられた開口部5cは、発光部11及び受光部12(脈波センサ10)を外部に臨ませるように設けられている。開口部5cの面積S1は、発光部11及び受光部12が配置される測定領域Rの面積S2よりも大きく設定されている。
【0078】
図12(a)に示すように、測定領域Rの面積S2は、非ヒト動物の体表面の被計測部B51の面積S3よりも小さく設定されている。より詳しくは、測定領域Rの面積S2は、7mm
2以上16mm
2以下に設定されていればよい。測定領域Rの面積S2が7mm
2未満の場合、開口部5cに付着する汚れ等によって発光及び受光がしにくく、脈波を正確に計測できない。測定領域Rの面積S2が16mm
2を超過すると、
図12(b)に示すように、被計測部B51の面積S3よりも測定領域Rの面積S21が大きく、発光部11から照射される光が被計測部B51の外側に位置して被計測部B51に照射されない場合や、受光部12が被計測部B51の外側に位置して被計測部B51からの反射光を受光できない場合が生じ、脈波を正確に計測できない。本実施形態においては、測定領域Rの面積S2は、例えば、10mm
2に設定されている。非ヒト動物の被計測部B51は、例えば、猫の肉球、腹部、背中等であってもよく、例えば、10mm
2以上であればよい。
【0079】
測定領域Rの面積S2に対する先端面5bの面積S4の割合は、2倍以上40倍以下に設定されている。割合が2倍未満の場合、先端が鋭利な形状になって非ヒト動物を傷つけやすい。割合が40倍を超過すると、測定領域Rを正確に被計測領域B51に押し当てにくい。先端面5bの面積S4は、例えば、20mm2以上400mm2以下に設定されている。
【0080】
本実施形態において、脈波センサ10における発光部11と受光部12は、同じ平面に設置され、並行した光で発光及び受光がなされる。したがって、被計測部B51は、非ヒト動物の体表面(被計測部)において光が照射される部分と、光を反射する部分が概ね同一平面上に配置されることが望ましい。本実施形態において、被計測部B51とは、肉球のうち、センサの同一平面上にある発光部と受光部が密着可能な領域である。言い換えると、曲率を有する肉球に脈波センサ10を密着させると、肉球が弾性変形することで、肉球の脈波センサ10に対向する表面には、発光部11と受光部12を同一平面上に位置させることが可能な被計測部B51が形成される。
【0081】
以上の構成を備えた第1実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー1の使用例について、
図3を参照しながら説明する。なお、非ヒト動物用血圧チェッカー1の使用方法は、本発明の非ヒト動物用血圧チェッカー1の使用方法に関する請求項の実施形態を構成する。
【0082】
図3は、非ヒト動物用血圧チェッカー1で動物の血圧を計測する際における非ヒト動物用血圧チェッカー1と動物の体毛A及び体表面Bとの関係を側面視(上図)及び底面視(下図)で示したものである。なお、動物の体毛の毛並み、体毛の長さ、体毛の密度等は、対象とする動物によって異なるものであり、
図3の動物の体毛A及び非ヒト動物用血圧チェッカー1は、説明の便宜上、模式的に示したものである。
【0083】
図3の(a)~(d)に示すように、非ヒト動物の血圧チェッカー1は、動物の体毛A間に挿入される際に、動物の体毛Aのうち、被計測部B1よりも毛並みの上流側に位置する体毛A1と、下流側に位置する体毛A2とが存在する。また、体毛Aの先端側においては、上流側に位置する体毛A1の先端は、
図3(a)の体毛A間に挿入される前の非ヒト動物用血圧チェッカー1の角部5dに対して毛並みの上流側に位置し、下流側に位置する体毛A2の先端は、
図3(a)の体毛間に挿入前の非ヒト動物用血圧チェッカー1の角部5dに対して、毛並みの下流側に位置する。なお、本実施形態において、毛並みの上流側とは、体毛が体表面から延びる方向における体表面側を意味し、毛並みの下流側とは、体毛が体表面から延びる方向における反体表面側(体毛の先端側)を意味する。
【0084】
ここでは、非ヒト動物用血圧チェッカー1よりも毛並みの上流側に位置する体毛A1と、下流側に位置する体毛A2とに着目して作用を説明する。
【0085】
図3(a)には、非ヒト動物用血圧チェッカー1を体毛A間(上流側の体毛A1と下流側の体毛A2との間)に挿入される状態が示されている。この状態では、非ヒト動物用血圧チェッカー1は、挿入部5の先端面5bが、動物の毛並みに平行になるように配置される。拡大図に示すように、非ヒト動物用血圧チェッカー1の先端面5bと正面側の周面部51aとの間に形成される角部5dが、非ヒト動物用血圧チェッカー1を基準として、上流側の体毛A1と、下流側の体毛A2との間に配置される。下流側の体毛A2は、先端面5bよりも体表面B側で、先端面5bと体表面Bとの間に押し付けられる位置となる。
【0086】
図3(b)には、挿入部5が体毛Aをかき分けて体毛A間に挿入されて、体表面Bの被計測部B1に向かう状態が示されている。この状態では、挿入部5は、
図3(a)の状態から毛並みに相対するように、体毛A間に挿入される。このとき、角部5dによって、上流側の体毛A1が持ち上げられ、先端面5bによって、下流側の体毛A2が下方(体表面B側)に押しつけられる。角部5dによって持ち上げられた上流側の体毛A1は、非ヒト動物用血圧チェッカー1の円錐状の周面部51a,52aに沿ってかき分けられる。言い換えると、上流側の体毛A1は、挿入部5の正面側の周面部51aよりも上方に位置し、下流側の体毛A2は、先端面5bよりも下方に位置する。本実施形態においては、挿入部5は、先端部5aが基端部に比して細い先細りの形状を有しているので、かき分けられる体毛の量が少なく、挿入部5を体毛A間に挿入しやすい。なお、挿入部5は、該挿入部5の軸を傾斜させた状態で、体毛A間に挿入されてもよい。
【0087】
図3(c)には、挿入部5によって体毛Aがかき分けられて、先端面5bが被計測部B1周辺に押し付けられる状態が示されている。この状態では、挿入部5は、動物の毛並みに相対する方向で、
図3(b)の状態よりもさらに体表面B側に挿入され、先端面5bを体表面Bに平行となるように(挿入部5を体表面に直交させて)押し付けられる。このとき、上流側の体毛A1は、先端面5bよりも上流側に位置し、正面側の周面部51aの斜面に沿って体表面Bから立ち上げられる。一方、下流側の体毛A2は、先端面5bの下方(体表面B側)に位置して、体表面B側に押し付けられる。下流側の体毛A2は、先端面5bと体表面Bとの間に挟み込まれる。
【0088】
図3(d)には、挿入部5によって、上流側の体毛A1と下流側の体毛A2とが、根元側においてかき分けられることで、露出した体表面Bに先端面5bが押し付けられる状態が示されている。この状態では、先端面5bを体表面Bに押し付けながら、体表面Bに沿って毛並みの上流側にスライドさせる。このとき、
図3(c)の状態で立ち上がっていた上流側の体毛A1は、角部5dによって、根元から上流側に折り返される。一方、下流側の体毛A2は、体表面Bに押し付けられたままの状態を維持する。これにより、体毛が体表面B側(根元)において、上流側と下流側とにかき分けられて、先端面5bに設けられた脈波センサ10に対して被計測部B1が露出する。この状態で非ヒト動物用血圧チェッカー1のスイッチ17を押下すると、動物の血圧の状態が表示部15に表示されて、血圧の状態をチェックできる。
【0089】
なお、ここでいう「脈波センサ10に対して被計測部B1が露出する」とは、被計測部B1における体表面が、脈波センサ10によって脈波を測定できる(より詳しくは、発光部の光が体表面に到達し、受光部が前記光の反射光を捉えることができる)所定の面積が体毛に覆われていない状態をいう。換言すると、脈波センサ10に対して前記所定の面積が露出した状態であれば、先端面5bと、被計測部B1との間に体毛が押し付けられた状態であってもよい。
【0090】
所定の面積は、脈波センサ10のサイズ及び精度等にもよるが、例えば、開口部5cから臨むことができる脈波センサが配置されている基盤の面積(本実施形態においては、開口部5cの面積S1とする)の50%以上であればよい。
【0091】
また、前述のように、先端面5bが、軸方向に直交するように設けられているので、体表面Bに先端面5b(脈波センサ10)を押し付けて血圧をチェックする際に、先端面5bを体表面Bに対して直交させて押し付ければいい。これにより、先端面5bにおいて分力が働くことが抑制されて、計測時時に必要な面圧が確保されやすい。その結果、計測中に先端面5bと体表面Bとの関係が変化する等の不具合を回避しやすい。
【0092】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー101を示す斜視図(上図)及び非ヒト動物用血圧チェッカー101を軸方向の先端側から見た底面図(下図)である。非ヒト動物用血圧チェッカー101の説明において、第1実施形態で説明したものと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0093】
第2実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー101のケーシング103は、第1実施形態同様に、計測者によって保持される本体部104と、動物の体毛間に挿入される挿入部105とを備えている。第2実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー101は、挿入部105の構成が、第1実施形態の挿入部5とは異なる。
【0094】
具体的には、第2実施形態の非ヒト動物用血圧チェッカー101は、挿入部105の正面側の周面部151aの一部に、先端面105bと交差する平面151cが設けられている。より詳しくは、平面151cは、挿入部105の軸方向と平行となるように形成されている。平面151cと、挿入部105の軸方向に垂直となるように形成された先端面105bとは、直交する。
【0095】
平面151cと、先端面105bとの間には、幅を持った直線状のかき分け部としての角部105dが形成される。角部105dの幅W1は、開口部105cの幅W2よりも広くなるように形成されている。例えば、角部105dの幅W1は、発光部11及び受光部12が臨む幅(例えば、基盤に発光部11と受光部12とが配置される幅よりも大きい幅)であればよい。すなわち、角部105dの幅W1は、脈波を測定する際に、脈波センサ10が配置される被計測部における体毛をかき分けられる程度の幅を有していることが好ましい。
【0096】
以上の構成を備えた第2実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー101の使用例について、
図5を参照しながら説明する。
【0097】
図5は、第1実施形態と同様に、非ヒト動物用血圧チェッカー101で動物の血圧の状態をチェックする際における非ヒト動物用血圧チェッカー101と動物の体毛A10及び体表面B10との関係を側面視(上図)及び底面視(下図)で示したものである。なお、動物の体毛の毛並み、体毛の長さ、体毛の密度等は、対象とする動物によって異なるものであり、
図5の動物の体毛A及び非ヒト動物用血圧チェッカー101は、説明の便宜上、模式的に示したものである。
【0098】
第2実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー101の使用方法は、第1実施形態と同様に、先端面105bを毛並みに平行となるように配置した状態で、挿入部105が体毛間に挿入され、挿入部105を先端面105bが被計測部B11に押し付けられる。なお、第2実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー101は、平面151c側(正面側)を毛並みの上流側に向かうように位置させた状態で挿入される。
【0099】
第2実施形態の挿入部105に設けられた直線状の角部105dによる作用効果が、第1実施形態と異なり、その他の部分は同様である。ここでは、
図5を用いて、第2実施形態の直線状の角部105dによる作用効果について説明する。
【0100】
図5(a)には、
図3の(a)に対応する、非ヒト動物用血圧チェッカー101を体毛A10間(上流側の体毛A11と下流側の体毛A12との間)に挿入する状態が示されている。この状態では、前述のように、直線状の角部105dによって、該角部105dの幅W1の領域に存在する体毛A10がかき分けられる。したがって、挿入部105が体毛A10間に挿入されやすく、先端面105bを体表面B10に近接させやすい。
【0101】
図5(b)には、
図3の(d)に対応する、挿入部5によって、上流側の体毛A11と下流側の体毛A12とが、根元側においてかき分けられることで、露出した体表面Bに先端面5bが押し付けられる状態が示されている。この状態では、直線状の角部105dによって、体表面B10における被計測部B11周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分ける直線状の境界B12が形成される。この境界B12が幅W1を持って形成されるので、脈波センサ10が配置される被計測部B11の幅(開口部105cの幅)W2における体毛がかき分けられて体表面B10が露出した状態が維持しやすい。
【0102】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー201を示す側面図の部分断面図(上図)及び部分断面拡大図(下図)である。非ヒト動物用血圧チェッカー201の説明において、第2実施形態で説明したものと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0103】
第3実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー201のケーシング103は、第2実施形態と同様に、計測者によって保持される本体部204と、動物の体毛間に挿入される挿入部205とを備える。第3実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー201の挿入部205が、第2実施形態の挿入部105とは異なる。
【0104】
具体的には、第3実施形態の非ヒト動物用血圧チェッカー201は、挿入部205の先端面205bが、挿入部205の軸方向に対して傾斜して配置されている。先端面205bと、正面側の周面部251aの一部に設けられた平面251cと、先端面205bとの間の角部205dの角度θ1が、90度以下となるように形成されている。角部205dの角度θ1は、体毛間に挿入しやすい角度を備えていることが好ましく、例えば、30度以上度90以下であればよい。30度以下では、先端部が鋭利になって挿入する際に動物を傷つける可能性が高まったり、計測者によって把持される本体部から被計測部までの距離が遠く、血圧計測時において、非ヒト動物用血圧チェッカーを安定させて計測しにくい。90度以上では、体毛間に対する挿入しやすさが向上しない。なお、第3実施形態においては、開口部205c及び脈波センサ210は、先端面205bに平行になるように配置されればよい。
【0105】
以上の構成を備えた第3実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー201の使用例について、
図7を参照しながら説明する。
【0106】
図7は、第1実施形態と同様に、非ヒト動物用血圧チェッカー201で動物の血圧の状態をチェックする際における非ヒト動物用血圧チェッカー201と動物の体毛A20及び体表面B20との関係を側面視(上図)及び平面視(下図)で示したものである。なお、動物の体毛の毛並み、体毛の長さ、体毛の密度等は、対象とする動物によって異なるものであり、
図7の動物の体毛A及び非ヒト動物用血圧チェッカー201は、説明の便宜上、模式的に示したものである。
【0107】
第3実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー201の使用方法は、第1実施形態と同様に、先端面205bを毛並みに平行となるように配置した状態で、挿入部205が体毛A20間に挿入され、挿入部205を先端面205bが被計測部B21に押し付けられる。なお、第3実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー201は、角部205d側(正面側)を毛並みの上流側に向かうように位置させた状態で挿入される。
【0108】
第3実施形態の非ヒト動物用血圧チェッカー201の先端面205bが、挿入部205の軸方向に対して傾斜している(より詳しくは、挿入部205の平面251cと、先端面205bとによって形成される角部205dの角度θ1が90度以下である)ことによる作用効果が、第2実施形態と異なり、その他の部分は同様である。ここでは、
図7を用いて、第3実施形態の先端面205bが軸方向に対して傾斜していることによる作用効果について説明する。
【0109】
図7は、
図3の(a)に対応する、非ヒト動物用血圧チェッカー201を体毛A20間(上流側の体毛A21と下流側の体毛A22との間)に挿入する状態が示されている。第3実施形態においては、先端面205bが、挿入部205の軸方向に対して傾斜しているので、先端面205bを毛並みに平行に配置すると、挿入部205の周面部が毛並みに沿った方向に傾斜した状態になる。
【0110】
挿入部205の平面251cと、先端面205bとによって形成される角部205dの角度θ1が90度以下であるので、角度θ1が鈍角で形成される場合に比して、角部205dを体毛A20間に挿入しやすく、体毛をかき分けやすい。これにより、先端面205bを体表面B20に近接できる。
【0111】
[第4実施形態]
図8(a)は、本発明の第4実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー301を示す外観斜視図及び部分拡大図で、
図8(b)は、底面図である。非ヒト動物用血圧チェッカー301の説明において、第2実施形態で説明したものと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0112】
第4実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー301のケーシング303は、第2実施形態同様に、計測者によって保持される本体部304と、動物の体毛間に挿入される挿入部305とを備える。第4実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー301は、挿入部305の構成が第2実施形態の挿入部205と異なる。
【0113】
具体的には、第4実施形態の非ヒト動物用血圧チェッカー301は、挿入部305の先端部305aにおける側面部としての周面部351aの一部から外側に突出するかき分け部としてのフランジ部353が設けられている。
【0114】
フランジ部353は、先端面305bに沿って径方向外側に延びる底面部353aと、該底面部353aの径方向外側の端部から軸方向の後端側(本体部304側)に向けて軸心側に向かって傾斜する斜面部353bとを備える。底面部353aと、斜面部353bとの間には、直線状の角部353cが形成される。角部353cの幅W31は、先端面305bに設けられた開口部305cの幅W32以上で形成されていることが好ましい。角部353cの幅W31は、第2実施形態の角部105dの幅W1と同様に、脈波を測定する際に、脈波センサ10が配置される被計測部における体毛をかき分けられる程度の幅が望ましい。
【0115】
以上の構成を備えた第4実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー301の使用例について、
図9を参照しながら説明する。
【0116】
図9は、第1実施形態と同様に、非ヒト動物用血圧チェッカー301で動物の血圧の状態をチェックする際における非ヒト動物用血圧チェッカー301と動物の体毛A30及び体表面B30との関係を側面視(上図)及び平面視(下図)で示したものである。なお、動物の体毛の毛並み、体毛の長さ、体毛の密度等は、対象とする動物によって異なるものであり、
図9の動物の体毛A30及び非ヒト動物用血圧チェッカー301は、説明の便宜上、模式的に示したものである。
【0117】
第4実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー301の使用方法は、第1実施形態と同様に、先端面305bを毛並みに平行となるように配置した状態で、挿入部305が体毛間に挿入され、挿入部305の先端面305bが被計測部B31に押し付けられる。なお、第4実施形態に係る非ヒト動物用血圧チェッカー301は、フランジ部353の角部353c側(正面側)を毛並みの上流側に向かうように位置させた状態で挿入される。
【0118】
第4実施形態の挿入部305に設けられたフランジ部353による作用効果が、第2実施形態と異なり、その他の部分は同様である。ここでは、
図9を用いて、第4実施形態のフランジ部353による作用効果について説明する。なお、フランジ部353の直線状の角部353cは、第2実施形態の直線状の角部105dと同様の作用効果を奏する。
【0119】
図9(a)には、
図3の(a)に対応した非ヒト動物用血圧チェッカー301を体毛A30間(上流側の体毛A31と下流側の体毛A32との間)に挿入する状態が示されている。この状態では、前述のように、フランジ部353によって、上流側の体毛A31をかき分けて(ひっかけて)、挿入部305を体毛A30間に挿入することができる。より詳しくは、角部353cを上流側の体毛A31と下流側の体毛A32との間に挿入し、上流側の体毛A31をフランジ部353の斜面部353bに沿って持ち上げることで、挿入部305が体毛A30間に挿入されやすくなる。
【0120】
図9(b)には、
図3の(d)に対応した挿入部305によって、上流側の体毛A31と下流側の体毛A32とが、根元側においてかき分けられることで、露出した体表面B30に先端面305bが押し付けられる状態が示されている。この状態では、フランジ部353が挿入部305の径方向の外側に延びていることによって、被計測部B31よりも上流側に存在する体毛A33を、毛並みに逆らわせてかき分けることができる。これにより、被計測部B31の上流側、かつ、近傍の体毛A31を毛並みに逆らわせてかき分けやすくなって、体表面B10が露出した状態を維持しやすい。
【0121】
[第5実施形態]
図13は、本発明の第5実施形態における非ヒト動物用血圧チェッカー501を示すシステム図および側面図である。非ヒト動物用血圧チェッカー501の説明において、第3実施形態で説明したものと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0122】
図13に示すように、非ヒト動物用血圧チェッカー501は、血圧算出部521と表示部515が設けられた本体部504と、柱状に延びて非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部505とが、別体で構成されている。本体部504と挿入部505とは、ケーブル等によって有線で接続されている。本体部504と挿入部505とは、無線、例えば、Bluetooth(登録商標)等によって接続されていてもよい。本体部504は、スマートフォン等で代用されていてもよい。
【0123】
本実施形態において、挿入部505は、角柱状であって、先端面505bが挿入部505の軸方向に対して傾斜して配置されている。本実施形態では、挿入部505は、長辺側の軸方向の長さL1が38mmに設定され、短辺側の軸方向の長さL2が29mmに設定されている。挿入部505の軸方向の長さL1,L2は、20mm以上50mm以下であることが好ましい。軸方向の長さL1,L2が20mm未満の場合、センサを非ヒト動物の体毛間に挿入しづらく、軸方向の長さL1,L2が50mmを超過すると、非ヒト動物に不安を与えると共に、先端部を正しく測定領域に当てづらくなりやすい。
【0124】
図14に示すように、本実施形態において、先端面505bは、縦方向の長さL4が20mm、横方向の長さL5が18mmに設定されているので、面積S504は360mm
2となる。測定領域Rは、縦方向の長さL6が5mm、横方向の長さL7が2mmに設定されているので、面積S502は10mm
2となる。開口部505cは、縦方向の長さL8が6mm、横方向の長さL9が3.5mmに設定されているので、面積S501は21mm
2となる。言い換えると、測定領域Rの面積S502に対する先端面505bの面積S504の割合は、2倍以上40倍以下に設定されている。
【0125】
図13および
図14を参照すると、挿入部505の後端には、計測者によって把持される円柱状の把持部506が一体的に設けられている。把持部506の直径D3は、30mmに設定されている。直径D3は、10mm以上40mm以下に設定されていればよい。直径D3が10mm未満の場合、例えば、脈波センサ10を駆動させるための制御基板等を配置させにくく、直径D3が40mmを超過すると計測者の指先等で把持部を把持しにくい。
【0126】
把持部506の軸方向長さL10は、60mmに設定されている。軸方向長さL10は、20mm以上60mm以下に設定されていればよい。軸方向長さL10が20mm未満の場合、例えば、脈波センサ10を駆動させるための制御基板等を配置させにくく、軸方向長さL10が60mmを超過すると計測者の指先等で把持部を把持しにくい。このように、本体部504を別体とすることで、挿入部505および把持部506をコンパクトにすることができる。具体的には、非ヒト動物の腹部等に挿入部505を挿入させやすいサイズになっているので、非ヒト動物の姿勢に寄らず先端面505bないし測定領域Rを被計測部に押し付けやすい。
【0127】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0128】
例えば、第4実施形態の非ヒト動物用血圧チェッカー301のフランジ部353は、
図10(a)に示すように、櫛歯状に形成されてもよい。より詳しくは、フランジ部453には、径方向外側に延びる複数の溝部453dが備えられ、これにより、フランジ部453が櫛歯状に形成されている。各溝部453dの溝底(歯底)453eは、開口部405cの長辺部に平行に設けられている。
【0129】
この構成により、
図10(b)に示すように、挿入部405の先端面405bが体表面B40に押し付けられる状態(
図3(d)に対応)において、櫛歯状のフランジ部453の溝底453eに体毛が保持された状態となる。これにより、被計測部B41周辺の体毛を毛並みに逆らわせてかき分けた状態を維持しやすい。また、溝底453e側に体毛A41が保持されることで、毛並み、及び、挿入部405の軸方向の両方に直交する方向に対する先端面405bのずれを抑制することができる。
【0130】
例えば、上述の第2~第4実施形態において、各挿入部が円錐台である例について説明したが、各挿入部は円錐台でなくてもよく、柱状に延びる一定の径を有する円柱であってもよい。
【0131】
例えば、上述の実施形態において、表示部15には、血圧値、或いは、血圧値に基づいて血圧値の状態を色で表示する例について説明したが、「低血圧」、「基準血圧」、「高血圧」等のように、種々の表示方法で血圧の状態が示されてもよい。
【0132】
例えば、制御装置20は、測定領域Rが被計測部B51に適切に押し当られた状態が保持されているかどうかを知らせるためのシグナル部を備えてもよい。制御装置20は、例えば、血圧算出部21によって算出される血圧が所定の閾値を超えているかどうか、あるいは、血圧算出部21によって血圧を算出可能な程度に脈波を取得できているかどうかによって、血圧測定の可否を判定する。制御装置20が、血圧測定可能と判定した場合、シグナル部は、例えば、電子音を発するようになっていてもよい。
【0133】
例えば、非ヒト動物用血圧チェッカーは、ケーシングの形状によって体毛をかき分けるかき分け部を備えることを例に説明したが、かき分け部は、駆動部を備え、該駆動部を駆動させることによって、体毛をかき分ける機能を備えていてもよい。
【0134】
図12(a)及び(c)に示すように、非ヒト動物用血圧チェッカー1は、先端面5bをヒト動物の体毛のない被計測部B51の体表面B50、例えば、肉球等に押し付けて非ヒト動物の脈波を測定してもよい。この場合、非ヒト動物用血圧チェッカー1は、挿入部及びかき分け部を備えていなくてもよく、挿入部5に代えてケーシング3の本体部4に先端面及び開口部が設けられていてもよい。
【0135】
[付記]本開示は以下の態様を包含する。
【0136】
[態様1]
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーは、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、柱状に延びて前記非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部とを有し、前記挿入部は、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられ、前記脈波センサを外部に臨ませる先端面と、前記先端面を前記体表面に押し付けるために前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部と、を備えることを特徴とする非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0137】
[態様2]
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧を計測する非ヒト動物用血圧チェッカーであって、
前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサと、
該脈波センサによって測定された脈波信号から血圧を算出する血圧算出部と、
前記血圧算出部の算出結果に基づいて、血圧の状態を表示する表示部と、
前記血圧算出部と前記表示部が設けられた本体部と、
柱状に延びて前記非ヒト動物の体毛間に挿入される挿入部と、を有し、
前記挿入部には、前記非ヒト動物の被計測部に押し付けられる先端面が設けられ、
前記先端面は、前記脈波センサの前記発光部と前記受光部が配置される測定領域を外部に臨ませる開口部を備え、
前記測定領域の面積は、前記被計測部の面積よりも小さく設定されている非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0138】
[態様3]
前記挿入部は、前記本体部と別体に構成されていることを特徴とする態様1または態様2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0139】
[態様4]
前記挿入部は、前記本体部の端面から延びて一体的に形成されていることを特徴とする態様1または態様2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0140】
[態様5]
前記測定領域の面積に対する前記先端面の面積の割合は、2倍以上40倍以下に設定されていることを特徴とする態様1から態様4のいずれか1態様に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0141】
[態様6]
非ヒト動物用血圧チェッカーにおいて、前記かき分け部は、前記挿入部を前記本体部側から前記先端面に向かって先細り形状にすることによって構成されることを特徴とする態様1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0142】
[態様7]
前記かき分け部は、前記先端面が、前記挿入部の軸方向に対して傾斜して配置されることによって構成されることを特徴とする態様1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0143】
[態様8]
前記かき分け部は、前記先端面と、前記挿入部の側面部の少なくとも一部に設けられて前記先端面に交差する平面と、によって構成されていることを特徴とする態様1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0144】
[態様9]
前記先端面と前記平面とのなす角は、90度以下であることを特徴とする態様8に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0145】
[態様10]
前記先端面は、前記挿入部の軸方向に垂直に配置され、前記平面は、前記先端面に直交することを特徴とする態様1から態様9のいずれか1態様に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0146】
[態様11]
前記かき分け部は、前記挿入部の先端部における側面部の一部から外側に突出するフランジ部であることを特徴とする態様1に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0147】
[態様12]
前記フランジ部は、櫛歯状に形成されることを特徴とする態様11に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0148】
[態様13]
前記測定領域の面積は、7mm2以上16mm2以下に設定されている態様2に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0149】
[態様14]
前記発光部の光度は、40mcd以上120mcd以下に設定されている態様1から態様13のいずれか1態様に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0150】
[態様15]
前記表示部は、前記血圧算出部によって算出された血圧値と、該血圧値が所定の範囲内にあるかどうかの判定結果と、のうちの少なくとも一方が表示されることを特徴とする態様1から態様14のいずれか1態様に記載の非ヒト動物用血圧チェッカー。
【0151】
[態様16]
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、前記非ヒト動物の被計測部の体毛をかき分けて、前記被計測部の体表面を露出させ、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記被計測部に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする。
【0152】
[態様17]
前記非ヒト動物用血圧チェッカーは、前記非ヒト動物の体毛をかき分けるかき分け部を備え、前記被計測部の体毛をかき分ける際に、前記非ヒト動物用血圧チェッカーを前記非ヒト動物の体毛の毛並みに相対するように挿入することを特徴とする態様16に記載の非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【0153】
[態様18]
体毛を備えた非ヒト動物の脈波を測定して前記非ヒト動物の血圧の状態をチェックする非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法であって、前記非ヒト動物の体表面に光を発光する発光部と、前記非ヒト動物の体内から反射した光を受光する受光部と、を備えた光学式の脈波センサを備えた前記非ヒト動物用血圧チェッカーを、前記非ヒト動物の体毛のない被計測部の体表面に押し付けることによって前記非ヒト動物の脈波を測定し、前記脈波に基づいて血圧を算出することを特徴とする前記非ヒト動物用血圧チェッカーの使用方法。
【実施例0154】
比較例1,2及び実施例1,2,3で、測定領域Rの面積S2の異なる脈波センサ10について、脈波センサ10による非ヒト動物の脈波の計測可否について評価試験を行った。比較例1の脈波センサは、のるLAB社製 型番M5 Stick C用脈波センサ(Serial)-PULSE 08を使用した。比較例2の脈波センサは、云▲電▼高科社製 型番MKB0805 yunkearを使用した。実施例1の脈波センサは、ローム株式会社製_型番BH1792GLCを使用した。実施例2の脈波センサは、ローム株式会社製_型番BH1792GLCを加工した加工品を使用した。実施例3の脈波センサは、云▲電▼高科社製 型番MKB0706 yunkearを使用した。なお、実施例2は、実施例1に搭載される2つの緑色LEDのうち1つのみを搭載した加工品である。
【0155】
比較例1及び比較例2は、それぞれ測定領域Rの面積S2が50mm2及び24mm2に設定され、測定領域Rの面積S2が発明の上限である被計測部B51の面積S3を超過する脈波センサ10である。実施例1,2,3は、測定領域Rの面積S2が16mm2,10mm2,7mm2である。評価に使用される被計測部は、猫の肉球である。
【0156】
計測可否の評価は、脈波センサから得られるシグナルを時間軸に対してプロットした場合に、一定の周期の脈波が得られるか否かで判定した。
【0157】
【0158】
表1から明らかなように、測定領域の面積S2が7mm2以上16mm2以下である実施例1~3に係る脈波センサは、比較例1,2に比べて良好に測定が可能である。非ヒト動物から光学的に脈波を得るには、発光部と受光部が同じ平面に設置され、並行した光で発光・受光する脈波センサの場合、動物の体表面で光を照射される部分と、光を反射する部分は同一平面上であることが望ましい。したがって、肉球は一般に丸みを帯びているため、適切に脈波を測定するには、肉球上で光を照射される部分と、光を反射する部分がほぼ平面上にある、限られた狭い範囲である必要があり、比較例1,2は、その範囲を超過するため、発光部の光を被計測部に照射しにくく、受光部では被計測部からの反射光を受光しにくい。その結果、精度よく脈波を計測することができない。
【0159】
実施例1,2,3では、測定領域Rの面積S2が16mm2、10mm2、7mm2であり適度であるため、発光部の光が被計測部B51に照射されやすく、被計測部B51からの反射光を受光しやすい。
【0160】
実施例1~4で、光度(mcd)の異なる脈波センサ10で、ヒト及び非ヒト動物の脈波の計測可否について評価試験を行った。実施例1~4で使用した脈波センサは、BH1792GLC ROHMである。実施例1~4は、光度が40mcd,70mcd,100mcd,120mcdである。評価に使用される被計測部は、ヒトの手のひら及び猫の肉球である。
【0161】
計測可否の評価は、脈波センサから得られるシグナルを時間軸に対してプロットした場合に、一定の周期の脈波が得られるか否かで判定した。
【0162】
【0163】
実施例1~4では、光度が40mcd,70mcd,100mcd,120mcdであり、非ヒト動物に適度であるため、被計測部からの反射光によるハレーションを生じることがなく、脈波を測定できる。実施例2は、特に良好な測定結果が得られた。120mcdを超過すると、ハレーションが生じやすくなる。