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特開2024-96816材料加工用フェイズドアレイビームステアリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096816
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】材料加工用フェイズドアレイビームステアリング
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/295 20060101AFI20240709BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G02F1/295
G02F1/37
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061856
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2021547368の分割
【原出願日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】62/823,454
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/808,742
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】クライネルト,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】レッド,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ブルックハイザー,ジェームス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い位置決め帯域幅で高い繰り返し率のレーザパルスを照射できるビームステアリングシステムを提供する。
【解決手段】システムは、入力光信号を複数の分割光信号に分割するように配置及び構成されるマルチチャネルビームスプリッタと、複数の位相変調器であって、それぞれの位相変調器が、制御信号に応答して複数の分割光信号のうち対応する分割光信号の位相を修正可能な複数の位相変調器と、複数の位相変調器の光出力部に配置される導波路であって、複数の位相変調器から出力される分割光信号をパターンに空間的に並べ替えることにより光信号パターンを生成するように構成される導波路と、導波路の光出力部に配置される光増幅器であって、導波路により生成された光信号パターンを増幅するように構成される光増幅器とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力光信号を複数の第1の分割光信号に分割するように配置及び構成されるマルチチャネルビームスプリッタと、
複数の位相変調器であって、それぞれの位相変調器が、制御信号に応答して前記複数の第1の分割光信号のうち対応する第1の分割光信号の位相を修正可能な複数の位相変調器と、
前記複数の位相変調器の光出力部に配置される導波路であって、前記複数の位相変調器から出力される前記第1の分割光信号をパターンに空間的に並べ替えることにより第1の光信号パターンを生成するように構成される導波路と、
前記導波路の光出力部に配置される光増幅器であって、前記導波路により生成された前記第1の光信号パターンを増幅するように構成される光増幅器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記光増幅器の光出力部に配置されるビームスプリッタであって、前記光増幅器により出力される第1の結合光信号の第1の部分を透過し、前記光増幅器により出力される前記第1の結合光信号の第2の部分を反射するように構成されるビームスプリッタと、
前記第1の結合光信号の前記第2の部分を受光し、対応する第1の検出信号を出力するように配置される第1の光検出器と
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の光検出器の出力部と前記複数の位相変調器のそれぞれの入力部とに通信可能に連結される制御回路であって、前記制御信号を生成及び出力するように構成される制御回路をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記マルチチャネルビームスプリッタ及び前記複数の位相変調器は、共通のフォトニック集積回路内に位置している、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の位相変調器及び前記導波路は、共通のフォトニック集積回路内に位置している、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の光信号を生成するように配置及び構成されるシードレーザをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の光信号は、1000nmから1150mmの範囲の第1の波長を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の波長は、1000nmから1060nmの範囲にある、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の波長は1030nmである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の位相変調器における位相変調器の数は100個よりも多い、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の位相変調器における位相変調器の数は200個よりも多い、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の位相変調器における位相変調器の数は500個よりも多い、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の位相変調器における位相変調器の数は1000個よりも多い、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
制御信号に応答して前記第1の入力光信号の振幅を変調可能な振幅変調器をさらに備え、前記マルチチャネルビームスプリッタは、前記振幅変調器の光出力部に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記振幅変調器及び前記マルチチャネルビームスプリッタは、共通のフォトニック集積回路内に位置している、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御回路は、前記複数の位相変調器のそれぞれに制御信号を出力して、前記導波路の前記光出力部で、前記導波路の前記パターンの構成と組み合わせてフェイズドアレイビームステアリングを行うように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御回路は、複数の位相変調器により少なくとも部分的に行われた前記フェイズドアレイビームステアリングの程度に基づいて前記振幅変調器に制御信号を出力するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御回路は、前記第1の検出信号に少なくとも部分的に基づいて前記複数の位相変調器に制御信号を出力して、前記光増幅器から出力される前記第1の分割光信号の位相を安定させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
第2の光信号を生成するように構成される基準レーザをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の光信号は、前記第1の光信号の波長とは異なる第2の波長を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2の波長は、1070nmから1150mmの範囲にある、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2の波長は1100nmである、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記マルチチャネルビームスプリッタは、前記第2の光信号を複数の第2の分割光信号に分割するように配置及び構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数の位相変調器のそれぞれの位相変調器は、前記制御信号に応答して前記複数の第2の分割光信号のうち対応する第2の分割光信号の位相を修正可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記導波路は、前記第2の分割光信号が可干渉的に第2の結合光信号に結合できるように前記複数の位相変調器から出力される前記第2の分割光信号を前記パターンに空間的に並べ替えるように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
ビームスプリッタと前記光増幅器の光出力部との間に配置されるダイクロイックミラーであって、前記第2の結合光信号を反射し、前記第1の結合光信号を透過させるように構成されるダイクロイックミラーをさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
前記ダイクロイックミラーで反射した前記第2の結合光信号を受光し、対応する第2の検出信号を出力するように配置される第2の光検出器をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記制御回路は、前記第2の検出信号に少なくとも部分的に基づいて前記複数の位相変調器に前記制御信号を出力して、前記複数の位相変調器から出力される前記第2の分割光信号の位相を安定させるように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1の結合光信号の前記第1の部分を受光するように配置される調波変換モジュールであって、前記第1の結合光信号の前記第1の部分の波長を修正するように構成される調波変換モジュールをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1の結合光信号の前記第1の部分を受光するように配置され、前記第1の結合光信号の前記第1の部分を偏向するように構成されるビーム位置決めシステムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記ビーム位置決めシステムは、音響光学偏向器、電気光学偏向器、ガルバノメータミラースキャナ、及び回転多面鏡スキャナからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
第1の波長を有するレーザビームを偏向可能なビーム位置決めシステムと、
前記ビーム位置決めシステムによる偏向の後に前記レーザビームが伝搬可能なビーム経路内に配置されるレンズと、
前記レンズを透過した後に前記レーザビームが伝搬可能なビーム経路内に配置される調波変換モジュールと
を備え、
前記調波変換モジュールは、前記レーザビームの前記第1の波長を第2の波長に変換可能である、
システム。
【請求項33】
前記ビーム位置決めシステムはフェイズドアレイビーム位置決めシステムを含む、請求項32のシステム。
【請求項34】
前記ビーム位置決めシステムは音響光学偏向器を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記音響光学偏向器は、剪断波TeO2音響光学偏向器である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記音響光学偏向器は、水晶音響光学偏向器である、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記ビーム位置決めシステムは電気光学偏向器を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1の波長は、電磁スペクトルの赤外域にある、請求項32に記載のシステム。
【請求項39】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの可視光域にある、請求項32に記載のシステム。
【請求項40】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの可視緑色光域にある、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの紫外域にある、請求項32に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年2月21日に提出された米国仮特許出願第62/808,742号及び2019年3月25日に提出された米国仮特許出願第62/823,454号の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願は参照によりその全体が組み込まれる。
【背景】
【0002】
I.技術分野
本明細書で述べられる実施形態は、概して、レーザエネルギーのフェイズドアレイビームステアリングのためのシステム及び方法に関するものである。
【0003】
II.技術的背景
レーザ微細加工分野における多くのプロセスにおいては、(ワークピースにおいて)隣接するパルスから空間的に完全に分離したパルスが必要となる。これらのパルスが空間的に重なっている場合には、局所蓄熱のような様々な弊害が生じ得る。この局所蓄熱は、超高速レーザ又はパルス-プルーム相互作用による「無熱アブレーション」という利点を打ち消すものである。今日の最新レーザは、高い繰り返し率で(すなわち、1MHz~100MHz及びそれよりも高い繰り返し率で)高パワーのパルスを提供している。このようなレーザを効率的に利用するために、好適に高い位置決め帯域幅を有するビームステアリングシステムを用いることが望ましい場合がある。例えば、音響光学偏向器(AOD)は、ガルボよりも3桁を超えるほど高い位置決め帯域幅を提供する(ガルボが2.5kHz以下であるのに対してAODは1MHz以下)。多面鏡により可能となる高速ビームステアリングは、完全なスポット分離を行いつつ1MHzよりずっと高いレーザ繰り返し率へのスケーリングを可能にする1つの解決策として多くの注目を浴びているが、その採用は「高い充填率」の問題の集合に限定される。より微細でより高い精度を必要とするフィーチャの形成を可能にするためにレーザを利用した材料加工の開発が続けられるにつれて、AOD及び多面鏡により実現可能な位置決め帯域幅よりも高い位置決め帯域幅で高い繰り返し率のレーザパルスを照射できるビームステアリングシステムが最終的に必要とされる。
【概要】
【0004】
本発明の一実施形態は、第1の入力光信号を複数の第1の分割光信号に分割するように配置及び構成されるマルチチャネルビームスプリッタと、複数の位相変調器であって、それぞれの位相変調器が、制御信号に応答して上記複数の第1の分割光信号のうち対応する第1の分割光信号の位相を修正可能な複数の位相変調器と、上記複数の位相変調器の光出力部に配置される導波路であって、上記複数の位相変調器から出力される上記第1の分割光信号をパターンに空間的に並べ替えることにより第1の光信号パターンを生成するように構成される導波路と、上記導波路の光出力部に配置される光増幅器であって、上記導波路により生成された上記第1の光信号パターンを増幅するように構成される光増幅器とを備えるシステムとして広く特徴付けることができる。
【0005】
本発明の他の実施形態は、第1の波長を有するレーザビームを偏向可能なビーム位置決めシステムと、上記ビーム位置決めシステムによる偏向の後に上記レーザビームが伝搬可能なビーム経路内に配置されるレンズと、上記レンズを透過した後に上記レーザビームが伝搬可能なビーム経路内に配置される調波変換モジュールとを備え、上記調波変換モジュールは、上記レーザビームの上記第1の波長を第2の波長に変換可能であるシステムとして広く特徴付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の一実施形態によるフェイズドアレイビームステアリングシステムを模式的に示すものである。
図2図2は、本発明の一実施形態における図1に示されるフェイズドアレイビームステアリングシステム中のフォトニック集積回路を模式的に示すものである。
図3図3は、本発明の他の実施形態によるフェイズドアレイビームステアリングシステムを模式的に示すものである。
図4図4は、本発明の一実施形態における図3に示されるフェイズドアレイビームステアリングシステム中のフォトニック集積回路を模式的に示すものである。
図5-6】図5及び図6は、レーザエネルギーのステアリング後波長変換を実現するための異なる実施形態を模式的に示すものである。
【詳細な説明】
【0007】
以下、添付図面を参照しつつ実施形態の例を説明する。明示的に述べている場合を除き、図面においては、構成要素、特徴、要素などのサイズや位置などやそれらの間の距離は、必ずしも縮尺通りではなく、また理解しやすいように誇張されている。図面を通して同様の数字は同様の要素を意味している。このため、同一又は類似の数字は、対応する図面で言及又は説明されていない場合であっても、他の図面を参照して述べられることがある。また、参照番号の付されていない要素であっても、他の図面を参照して述べられることがある。
【0008】
明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。特に定義されている場合を除き、本明細書において使用される(技術的用語及び科学的用語を含む)すべての用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことを理解すべきである。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。特に示している場合を除き、「第1」や「第2」などの用語は、要素を互いに区別するために使用されているだけである。例えば、あるノードを「第1のノード」と呼ぶことができ、同様に別のノードを「第2のノード」と呼ぶことができ、あるいはこれと逆にすることもできる。
【0009】
特に示されている場合を除き、「約」や「その前後」などは、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の数量及び特性が、正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、あるいは許容誤差、換算係数、端数計算、測定誤差など、及び当業者に知られている他のファクタを反映して、概数であってもよく、さらに/あるいは大きくても小さくてもよいことを意味している。本明細書において、「下方」、「下」、「下側」、「上方」、及び「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるような、ある要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を述べる際に説明を容易にするために使用され得るものである。空間的に相対的な用語は、図において示されている方位に加えて異なる方位を含むことを意図するものであることは理解すべきである。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」にあるとして説明される要素は、図中の対象物が反転した場合には、他の要素又は特徴の「上方」を向くことになる。このように、「下方」という例示的な用語は、上方及び下方の方位の双方を含み得るものである。対象物が他の方位を向く場合(例えば90度回転される場合や他の方位にある場合)には、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子はこれに応じて解釈され得る。
【0010】
本明細書において使用されるセクション見出しは、特に言及している場合を除いて、整理のためだけのものであり、述べられた主題を限定するものと解釈すべきではない。本開示の精神及び教示を逸脱することなく、多くの異なる形態、実施形態及び組み合わせが考えられ、本開示を本明細書で述べた実施形態の例に限定して解釈すべきではないことは理解できるであろう。むしろ、これらの例及び実施形態は、本開示が完全かつすべてを含むものであって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。
【0011】
概してPICフェイズドアレイビームステアリングに関する実施形態
図1を参照すると、フェイズドアレイビームステアリングシステム100は、フォトニック集積回路(PIC)102と、光増幅器104と、フィードバックシステム106と、制御電子回路108とを含んでいる。
【0012】
図示された実施形態においては、PIC102は、シードレーザ110の出力と光学的に結合され得る。他の実施形態においては、シードレーザ110は、PIC102の一部として一体化され得る。一実施形態においては、シードレーザ110は、0.9μm(例えば、1μm又はその前後、1.03μm又はその前後、1.06μm又はその前後、1.1μm又はその前後、あるいは1.1μmよりも長い任意の波長)よりも長い波長の周波数安定化レーザダイオードである。近赤外域の他の波長がシードレーザ110により出力され得ることは理解できよう。
【0013】
シードレーザ110は、5kHzから50GHzの範囲のパルス繰り返し率でレーザパルスを出力することができる。しかしながら、パルス繰り返し率は5kHzより低くてもよく、あるいは50GHzよりも高くてもよいことは理解できよう。このように、シードレーザ110によってレーザパルスは、5kHz、50kHz、100kHz、175kHz、225kHz、250kHz、275kHz、500kHz、800kHz、900kHz、1MHz、1.5MHz、1.8MHz、1.9MHz、2MHz、2.5MHz、3MHz、4MHz、5MHz、10MHz、20MHz、50MHz、60MHz、100MHz、150MHz、200MHz、250MHz、300MHz、350MHz、500MHz、550MHz、600MHz、900MHz、2GHz、10GHz、20GHz、50GHz、75GHzなど、あるいはこれらの値のいずれかの間の値より低い、あるいはこれよりも高い、あるいはこれと等しいパルス繰り返し率で出力され得る。シードレーザ110は、20fsから900msの範囲にあるパルス幅又はパルス持続時間(時間に対する光パワーの半値全幅(FWHM)に基づくもの)を有するレーザパルスを出力することができる。しかしながら、パルス持続時間を20fsよりも短くしてもよく、あるいは900msよりも長くしてもよいことは理解できよう。このように、シードレーザ110によって出力される少なくとも1つのレーザパルスは、10fs、15fs、30fs、50fs、100fs、150fs、200fs、300fs、500fs、600fs、750fs、800fs、850fs、900fs、950fs、1ps、2ps、3ps、4ps、5ps、7ps、10ps、15ps、25ps、50ps、75ps、100ps、200ps、500ps、1ns、1.5ns、2ns、5ns、10ns、20ns、50ns、100ns、200ns、400ns、800ns、1000ns、2μs、5μs、10μs、15μs、20μs、25μs、30μs、40μs、50μs、100μs、300μs、500μs、900μs、1ms、2ms、5ms、10ms、20ms、50ms、100ms、300ms、500ms、900ms、1sなど、あるいはこれらの値のいずれかの間の値よりも短い、あるいはこれよりも長い、あるいはこれと等しいパルス持続時間を有し得る。あるいは、シードレーザ110は、連続波(CW)又は準CW(QCW)レーザエネルギービームを出力し得る。
【0014】
図2を参照すると、PIC102は、振幅変調器200と、マルチチャネルビームスプリッタ202と、位相変調器アレイ204と、3次元導波路206とを含んでいる。すなわち、振幅変調器200、マルチチャネルビームスプリッタ202、位相変調器アレイ204、及び3次元導波路206は、共通のフォトニック集積回路102に組み込まれている。しかしながら、他の実施形態においては、これらの構成要素のうち2つだけ又は3つだけが共通のフォトニック集積回路102に組み込まれ、残りの構成要素が別に形成されてフォトニック集積回路102の光入力部又は光出力部のいずれかに光学的に連結される。例えば、位相変調器アレイ204と、マルチチャネルビームスプリッタ202及び3次元導波路206の一方又は両方とだけが共通のフォトニック集積回路102に組み込まれていてもよい。
【0015】
図2に示される実施形態を参照すると、シードレーザ110の出力(本明細書では「シード信号」ともいう)は、制御電子回路108により出力される1以上の制御信号に応答して、振幅変調器200(例えば、マッハ-ツェンダ変調器である)を通じて振幅変調される。振幅変調は、光増幅器の後の方向付け/位置に依存する出力振幅を平坦にするために必要に応じて行ってもよく(例えば、米国特許第9,776,277号の図9を参照。当該米国特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、プロセス又はシステムにより必要される振幅変調を提供する。その後、シード信号はマルチチャネルビームスプリッタ202を通過する。マルチチャネルビームスプリッタ202は、シード信号を複数のチャネルに分割することにより複数の「分割シード信号」を生成するように構成される。一実施形態においては、マルチチャネルビームスプリッタ202は、所望のチャネル数に到達するのに十分な数の1×2光ビームスプリッタを備えている(例えば、矩形の16×16アレイ用の256チャネルシステムであれば、合計で255個の1×2スプリッタ構成要素を含む8個の分割カスケードが必要となる)。他の実施形態においては、マルチチャネルビームスプリッタ202は、1つのスター型スプリッタ又はカスケーディングした複数のスター型スプリッタであり得る。一実施形態においては、所望のチャネル数は、32、50、64、90、100、128、150、200、256、300、350、512、800、1024、1500、2000、2500など、あるいはこれらの値のいずれかの間の値であり得る。
【0016】
その後、分割シード信号は、位相変調器アレイ204に導入される。この場合において、位相変調器アレイ204は複数の位相変調器を含んでおり、それぞれの位相変調器は、マルチチャネルビームスプリッタ202により生成された分割シード信号のうち1つを受光するように配置されている(すなわち、1つの分割シード信号に対して1つの位相変調器)。さらに、それぞれの位相変調器は、制御電子回路108により出力される1以上の制御信号に基づいてそれぞれの分割シード信号の位相を維持又は修正可能である。位相変調器アレイ204内の位相変調器は、任意の好適な方法又は所望の方法で設けられていてもよい。例えば、それぞれの位相変調器は、マッハ-ツェンダ変調器(MZM)であってもよい。それぞれの位相変調器が好適に(例えばMZMとして)提供される場合には、それぞれの位相変調器は、位相変調器に入力されるそれぞれの分割シード信号の振幅を(例えば、制御電子回路108により出力される1以上の制御信号に基づいて)維持又は修正するように動作され得る。
【0017】
次に、位相変調された信号は、3次元導波路206を介して高密度パターン(例えば、六角形、矩形など)に並べ替えられる。このため、位相変調器アレイ204内のそれぞれの位相変調器の出力は、3次元導波路206の光入力部に光学的に結合され、光出力部は、複数の個々の光エミッタの「タイル状に並べられた」配置を提供するものとして特徴付けることができる。3次元導波路206は、図示されるようにPICの一部であってもよく、あるいは、PICとは別個の構成要素であってもよい。Poulton、Christopher V.等、「Large-scale visible and infrared optical phased arrays in silicon nitride」、Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEO)、IEEE、2017年において、これらの特性の一部を有するPIC102が明示及び報告されており、これは、10分割カスケード1024深溝チャネルチップに後続のアンテナアレイを一体化させることに成功したことを示すものとして理解される。しかしながら、この論文において用いられているビームステアリング機構は、位相変調器ではなく、波長掃引に基づくものである。
【0018】
500個以上の位相変調器からなる一体化アレイを有する高信頼PIC102が自動車LIDAR用途のために現在開発されている。しかしながら、これらのアレイの典型的な波長は、目に安全な1.5μm帯域である。それにもかかわらず、そのようなPICは、PICの構成要素を形成している材料を好適に変更することにより、0.9μm(又はその前後)から1.1μm(又はその前後)の範囲の波長で動作するように適合され得る。例えば、米国特許第8,213,751号及び米国特許第9,612,398号、米国特許出願公開第20180180811号、Munoz、Pascual等、「Silicon Nitride Photonic Integration Platforms for Visible, Near-Infrared and Mid-Infrared Applications」、Sensors、17、2088(2017年)、及びRahim、Abdul等、「Expanding the Silicon Photonics Portfolio with Silicon Nitride Photonic Integrated Circuits」、Journal of Lightwave Technology、第35巻、第4号、2017年2月15日を参照。これらの文献のすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態においては、PIC102内に一体化された位相変調器は、1MHzよりも高い(例えば1GHzよりも高いなど)高帯域幅を有している。
【0019】
一実施形態においては、光増幅器104は、1つのマルチモードファイバ利得モジュール(例えば、より高い平均パワーとピークパワーとを実現するために直列に接続された複数のマルチモードファイバ利得モジュール)、1以上のマルチコアファイバ増幅器など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含んでいる。光増幅器104がマルチモードファイバ利得モジュールを含んでいる場合には、ファイバ利得モジュールのサポートされる伝搬モードの数が、3次元導波路206の光出力部で生成されるパターン内のチャネル数にほぼ一致するようにマルチモードファイバ利得モジュールが選択される。これを通じてマルチモードファイバ利得モジュールの出力モードを効果的に制御することができる。光増幅器104がマルチコアファイバ増幅器を含んでいる場合には、マルチコアファイバ増幅器におけるコアの数及び配置が、3次元導波路206の光出力部で生成されるパターン内のチャネルの数と配置にほぼ一致するようにマルチコアファイバ増幅器が選択される。PIC102からの光は、光増幅器104に直接結合されるか、あるいは光増幅器104に結像される。Florentin、Raphael等、「Shaping the light amplified in a マルチモードファイバ」、Light: Science & Applications 6.2(2017年): e16208において示されているように、パッシブファイバにおいてだけではなく、マルチモード利得ファイバにおいてもモード制御が可能である。一実施形態においては、Florentin等の論文とは異なり、マルチモードファイバの出力モードは、マルチモードファイバコアの多くを満たすスーパーモードであり、コリメートレンズ(すなわち、図1に示されるレンズ112)の後のフーリエ平面におけるステアリング/整形のためにその空間的位相を変調することができる。光増幅器出力はレンズ112によりコリメートされ、そのごく一部分が(例えば、ビームスプリッタ114及びそれに続くレンズ116を介して)光検出器118(例えば高速フォトダイオード)に向けられる。光増幅器104からの増幅出力の主要なパワー(すなわち、光検出器118に向けられなかったビームの部分)は、本明細書では上述した「プロセスビーム」という。
【0020】
(レンズ116を透過した光を検出することに応答して)光検出器118により出力される信号は、最終的に位相変調器アレイ204に送られる制御信号を得るために(例えば制御電子回路108によって)LOCSET法により(別の方法も実施可能であるが)分析され得る。一般的に、制御信号が位相変調器アレイ204に作用する際には、制御信号は、(例えば、所望の位相ドリフトに関連付けられた1以上の予め決められた必要条件、加工システム形状、及び位置決め必要条件に基づいて)光増幅器104の出力部で所望のモード形状、方向付け、及び位置を得るために光増幅器104から出力された光信号の位相を安定化するように適合される。一実施形態においては、LOCSET法により制御可能なチャネル数は、1000又はその前後(例えば、1000よりもわずかに少ない、あるいはわずかに多い)までであると考えられる。
【0021】
光増幅器104の主要なパワー出力(すなわち、上述した「プロセスビーム」)は、必要に応じて、当該技術分野において知られている任意の方法によりビーム位置決めシステム(図示せず)にリレーされていてもよい。必要に応じて、プロセスビームを調波変換モジュール120に向けてもよく、その後、調波変換モジュール120の光出力を当該技術分野において知られている任意の方法によりビーム位置決めシステム(図示せず)にリレーしてもよい。プロセスビームは、典型的には、当該技術分野において知られている任意の方法によりワークピース(図示せず)を加工する(例えば、クラックを生じさせる、ダメージを与える、溶融する、気化させる、アブレートする、発泡させる、マークを施すなど)ためにビーム位置決めシステムからワークピースに照射される。
【0022】
一実施形態においては、制御電子回路108は、任意の好適な方法又は所望の方法により、フェイズドアレイビームステアリングシステム100により最終的に出力されるプロセスビームのビームステアリングを(例えば、1以上の軸に沿って、任意の所望の方向に)行うように、あるいはプロセスビームのビーム整形を行うように、あるいはこれらを任意に組み合わせて行うように、位相変調器アレイ204における位相変調器に制御信号を出力できるようになっている。本明細書で使用される場合には、「ビーム整形」は、フェイズドアレイビームステアリングシステム100により生成されるプロセスビームのサイズ又は形状を変化させることを意味する。プロセスビームの形状は、プロセスビームのビーム軸に直交する平面内で測定されるプロセスビームの光強度の空間的分布又は空間的プロファイルを意味する。このように、プロセスビームは、単一の「ビーム」又は複数の空間的に分離した「ビームレット」を含み得る。本明細書で使用される場合には、「ビーム」又は「ビームレット」のサイズは、ビーム軸から光強度がビーム又はビームレットの伝搬軸における光強度の少なくとも1/e2に下がる位置までの半径方向又は横方向距離として測定されるビーム又はビームレットの最大幅又は平均幅を意味する。3次元導波路により実現可能なパターンの解像度内において、フェイズドアレイビームステアリングシステムは、任意の形状(例えば、フラットトップ形、ガウス形、エルミート-ガウス形、ラゲール-ガウス形、ベッセル形、準ベッセル形、円-環形、方形-環形など、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの)を有するビーム(又はビームレット)の生成を可能にするものである。理解できるように、プロセスビームをステアリングしているときに任意の形状又はサイズを有するようにプロセスビームを形成することができ、プロセスビームをステアリングしているときにプロセスビームの形状及び/又はサイズを変化又は維持するようにフェイズドアレイビームステアリングシステム100を動作させることができる。
【0023】
調波変換モジュール120は、当該技術分野において知られているように、第2高調波(SHG)媒質、第3高調波(THG)媒質など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含み得る。調波変換モジュール120により出力される光の波長は、調波変換モジュールを形成している媒質(例えば、SHG媒質、THG媒質など)及び(例えば、マルチモードファイバ利得モジュールにより出力され)調波変換モジュールに入力される光の波長に依存することは理解できよう。このため、調波変換モジュール120に入力される光の波長が(上述したような)近IR域にある場合には、調波変換モジュール120から出力される光の波長は、一般的に、電磁スペクトルの可視緑色光域又は電磁スペクトルの紫外域にあるものとして特徴付けられ得る。
【0024】
一般的に、ビーム位置決めシステムは、AOD、電気光学偏向器(EOD)、ガルバノメータミラースキャナ、回転多面鏡スキャナなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたもののような高帯域幅ビーム位置決めシステム(すなわち1kHzを越える帯域幅を有する)である。
【0025】
さらなる実施形態
上述したように、GHzの帯域幅までの帯域幅でプロセスビームをステアリング又は整形できるように光増幅器の出力を(可干渉的に、あるいは別の方法で)結合するように本発明の実施形態を適合させることができる。このため、従来のコヒーレントビーム結合(すなわち、樹木状の薄膜偏光器、回折光学系などを介してビームが空間的に重なっている)とは異なり、個々のエミッタの出力を「タイル状に並べる」が、依然として個々の光信号の中で安定した制御可能な位相関係を確立するように本明細書で述べられている実施形態を適合させることができる。
【0026】
ある実施形態においては、上記で図1に関して述べた光増幅器104は、パルスモードで非常に広い範囲のパルス幅及び繰り返し率で動作可能である。したがって、シードレーザ110は、広い範囲のパルス幅(例えば数十ナノ秒から数ピコ秒まで)及び繰り返し率(例えば100kHzから50GHzまで)を有する複数の光パルスを含むシード信号を生成するように動作可能である。上述したように、位相変調器アレイ204から出力される信号の位相は、LOCSET法により制御されるが、このLOCSET法は、「タイル状に並べられた」出力配置においてさえも数多くのチャネルの可干渉性の組み合わせに非常に適している。
【0027】
しかしながら、運の悪いことに、このLOCSET法は、入力としての光パルスと簡単に適合するものではない。したがって、一実施形態においては、図1に示される実施形態とは異なり、プロセスビームが一連のパルスとして表される場合には、プロセスビームは位相ロックのために使用されない。むしろ、シードレーザ110により生成されるシード信号(本明細書では「主ビーム」ともいう)に加えて、第2のレーザビーム(本明細書では「基準ビーム」又は「プローブビーム」ともいう)を処理するようにフェイズドアレイビームステアリングシステム100を修正することができる。基準ビームは、光増幅器104によってわずかにだけ増幅された、あるいは全く増幅されていない波長を有する。このため、基準ビーム自体がはっきり分かる程は振幅変調されておらず、したがって、分析するためにLOCSET回路に安定して信号を供給しているときに、光パルス間及び光パルス中の両方においてそれぞれのチャネルの位相ドリフトを追跡するために基準ビームを使用することができる。修正した好適なフェイズドアレイビームステアリングシステムの一例が図3に関して述べられており、概して参照符号300で示されている。
【0028】
図3を参照すると、(例えば、所望のパルス幅を有する所望のパルス繰り返し率の一連のレーザパルスとして表される主ビームを生成する)シードレーザ110と(例えば、上述した基準ビームを生成する)基準レーザ302の両方が共通のフォトニック集積回路(PIC)304に結合されている。一般的に、フォトニック集積回路(PIC)304は、図1及び図2に関して上記で述べたように設けられていてもよいが、図4に関してより詳細に述べるように修正されていてもよい。
【0029】
PIC304の光出力は、その後、光増幅器104によって増幅される。光増幅器104によって出力される光ビームは、主ビームと基準ビームとを含んでいる。しかしながら、基準ビームは、(例えば、簡単なダイクロイックミラー306により)主ビームから分離され、LOCSETシステムの上述した光検出器118上に照射される。光増幅器104により増幅された主ビームは、ミラー306を透過するため、光検出器118に到達することはなく、光検出器118を乱すことがない(例えば、飽和させることがない)。
【0030】
図4を参照すると、PIC304は、基準ビームの波長(これは主ビームの波長とは異なる)だけではなく、主ビームの波長(本明細書では「主波長」ともいう)(例えば、1030nm+/-5nm)も処理するように構成される。一般的に、基準ビームは、比較的狭い線幅、長いコヒーレンス長を有するものとして特徴付けることができる。ある実施形態においては、基準ビームの波長(本明細書では「基準波長」ともいう)は、1070nm(又はその前後)から1150nm(又はその前後)の範囲にある(例えば1100nm)。PIC304内のビームスプリッタは、デュアル波長ビームスプリッタであり、主波長で主ビームを均等に分割するだけではなく、基準波長で基準ビームも同時に分割するように設計されている必要がある。これに対応して、位相変調器アレイ204及び後続のビーム導波及び整形光学部品(例えば3次元導波路206)のような後続のすべての構成要素も、主ビームと基準ビームの双方の波長に適合している必要がある。
【0031】
主波長及び基準波長におけるレーザエネルギービームに適応させるための上述の修正は、伝搬されるモードが安定しておりシングルモードに近い、かなり狭い波長域のみを有する(1100nmはその範囲から十分に外側にある)大モードフォトニック結晶ファイバの使用を妨げる。しかしながら、(別個のコアにおける、あるいはマルチモードファイバにおける(又は固体増幅器における))多くのモードのコーヒレント付加により、より小さなモードフィールド径の利用は問題ではない。
【0032】
上述した修正から生じる他の問題は、基準波長で異なるチャネル間の位相差をゼロにすることは、異なるチャネル間の位相差を主波長に対しても同時にゼロにすることを全く示唆するものでないことである。このため、付加的な位相較正が必要である。これは図3に示されており、付加的なビームピックオフ308が、増幅された主ビームのサンプルを集め、これがその後に(例えばレンズ310を介して)その背後に光検出器314(例えばフォトダイオード)が存在するアパーチャ312上に集束される。伝統的な(遅い)SPGDアルゴリズムを使用して較正中に主波長での位相関係を一回処理することができる。ここで、LOCSET電子回路は、基準波長での対応する位相関係を検出し、較正工程中に位相ドリフトを安定化することができる。この結果、非常に多くのチャネルでさえ最適化することができる。続いて、それぞれの「位相ラップ」(すなわち、基準波長に対応する2πよりも大きな位相ドリフト)を数え、個々のチャネルの差分経路長ドリフトが多くのマイクロメートルまで蓄積した場合であっても、主波長での全体の位相関係を制御できるように追跡することができる。例えば、20μmの差分ドリフトは、1100nmで18個の「ラップ」及び0.36π位相ドリフト(18×2π+0.36π=36.36π=2π*20μm/1100nm)として測定されるが、1030nmで19個の「ラップ」及び0.83π位相ドリフトに簡単に転換することができる。このため、制御電子回路108は、1030nmでの0.83π位相シフトを対応する位相変調器で補償して2つのチャネルを公称位相関係に戻すことができる。
【0033】
図3及び図4に関して述べた実施形態の利点は、位相ロック電子回路が主ビームの繰り返し率及びパルス幅から切り離されることにある。主ビームの繰り返し率及びパルス幅は、使用されるシードレーザ又はシードレーザを動作させる様々な方法に応じて変化し得る。図1及び図2に関して上記で述べた実施形態と同様に、図3に示されるビームピックオフ308を透過したプロセスビームは、必要に応じて、当該技術分野において知られている方法など、あるいはこれを任意に組み合わせた方法で調波変換モジュール120に向けられ、ビーム位置決めシステム(図示せず)にリレーされ得る。
【0034】
調波変換に関する付加的な実施形態
上述したように、図1及び図3に示される実施形態に関連して述べられた上述したコリメートレンズ112は、プロセスビームがコリメートされた(又は少なくとも実質的にコリメートされた)光ビームであることを確実にするように構成されている。このため、プロセスビーム中のすべての光線は、効率的な高調波発生のための必要境界条件に一致するように、(上述したフェイズドアレイステアリング手法により)プロセスビームが案内される角度とは関係なく、高調波発生モジュール120に平行(又は少なくとも実質的に平行)であり得る。
【0035】
図1及び図3は、(フェイズドアレイビームステアリングシステムにより出力された)プロセスビームが伝搬可能なビーム経路にレンズが配置されていないシステムを図示しているが、最終的に調波変換モジュールに伝搬していくプロセスビームのサイズ(例えば幅や直径)を小さくするために1以上のレンズ、ミラーなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが設けられていてもよいことは理解できよう。
【0036】
場合によっては、AODやEODのようなビーム位置決めシステムは、ある波長域内(例えば、電磁スペクトルの赤外域内)の光に対して好適に動作し得るが、他の波長域内(例えば、電磁スペクトルの可視光域又は紫外域内)の光に対しては必ずしも好適に動作しないことがある。このため、必要に応じて、(例えば、プロセスビームの波長を他の波長に変換するために)フェイズドアレイビームステアリングシステム100又は300とビーム位置決めシステムとの間に高調波発生モジュール120を配置してもよい。図5に示される実施形態においては、レンズ112により生じたプロセス変換の横方向変位を低減するために、レンズ(例えばリレーレンズ500)が、必要に応じて、調波変換モジュールとビーム位置決めシステム502(例えば、AOD、電気光学偏向器(EOD)、ガルバノメータミラースキャナ、回転多面鏡スキャナなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの)との間に配置される。
【0037】
フェイズドアレイビームステアリングシステム100及び300の様々な実施形態に関連して調波変換モジュール120の利用を述べてきたが、ビーム位置決めシステム502(例えば、AOD、EOD、ガルバノメータミラースキャナ、回転多面鏡スキャナなど)により出力されたプロセスビームの波長を変換するために調波変換モジュール120を使用してもよいことは理解できよう。この場合において、図6に例示的に示されるように、ビーム位置決めシステム502と調波変換モジュール120との間のビーム経路にレンズ(例えば600)を配置することができる。図6に示される実施形態においては、ビーム位置決めシステム502の光出力部が、調波変換モジュール120の光入力部と同様に、レンズ600の焦点又はその近傍に位置している。
【0038】
調波変換モジュール120をフェイズドアレイビームステアリングシステム100又は300、あるいは他のビーム位置決めシステム(例えば、AOD、EOD、ガルバノメータミラースキャナ、回転多面鏡スキャナなど)の「光学的に下流側」に配置することにより、多くの波長に対してそのようなビーム位置決めシステムの利用に関連する利点を実現することができる。
【0039】
例えば、剪断波TeO2 AODは、数多くの(典型的には100個よりも多い)分解可能スポットを有し得るが、これらの分解可能スポットにより剪断波TeO2 AODが非常に魅力的なビームステアリング装置となっている。しかしながら、剪断波TeO2 AODは、電磁スペクトルのUV域の波長を有する比較的高パワーの(すなわち10W又はその前後を越える)プロセスビームを偏向するためには使用することができない。レンズ600及び調波変換モジュール120を剪断波TeO2 AODの「光学的に下流側」に設けることにより、剪断波TeO2 AODにより出力されたプロセスビームの波長を電磁スペクトルのUV域の波長に変換することができる。
【0040】
他の例では、典型的にEOD用に使用される材料は、電磁スペクトルのIR域及び(ある程度は)可視光域で動作するが、電磁スペクトルのUV域では全く動作しない。レンズ600及び調波変換モジュール120をEODの「光学的に下流側」に設けることにより、EODにより出力されるプロセスビームの波長を電磁スペクトルのUV域の波長に変換することができる。
【0041】
他の例では、水晶AODは、電磁スペクトルのUV域及びIR域で動作することができ、水晶AODにより生成することができる分解可能スポットの数は、同じ帯域幅及び同じ音響的アパーチャを用いた場合にはいずれの波長に対しても同じである。しかしながら、典型的には、電磁スペクトルのIR域のプロセスビームのパワーをスケーリングする方が、電磁スペクトルのUV域のプロセスビームのパワーをスケーリングするよりも簡単であり、このため、水晶AODは、典型的には、電磁スペクトルのUV域において比較的高い回折効率を有するが、水晶AODの回折効率が限られていることにより電磁スペクトルのIR域でパワーを失うことは、電磁スペクトルのUV域の波長を有するプロセスビームにおけるパワー損失よりも簡単に補償され得る。したがって、レンズ600及び調波変換モジュール120を水晶AODの「光学的に下流側」に設けることにより、水晶AODに入力される比較的高パワーのIR波長のプロセスビームを(例えば、偏向されるように、あるいはそうではないように)水晶AODにより回折することができ、その後、回折されたプロセスビームを電磁スペクトルのUV域の波長に変換することができる。
【0042】
結論
上記は、本発明の実施形態及び例を説明したものであって、これに限定するものとして解釈されるものではない。いくつかの特定の実施形態及び例が図面を参照して述べられたが、当業者は、本発明の新規な教示や利点から大きく逸脱することなく、開示された実施形態及び例と他の実施形態に対して多くの改良が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、そのような改良はすべて、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれることを意図している。例えば、当業者は、そのような組み合わせが互いに排他的になる場合を除いて、いずれかの文や段落、例又は実施形態の主題を他の文や段落、例又は実施形態の一部又は全部の主題と組み合わせることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲とこれに含まれるべき請求項の均等物とによって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長を有するレーザビームを偏向可能な第1のビーム位置決めシステムと、
前記第1のビーム位置決めシステムによる偏向の後に前記レーザビームが伝搬可能なビーム経路内に配置される第2のビーム位置決めシステムと、
前記第1のビーム位置決めシステムと前記第2のビーム位置決めシステムとの間の前記ビーム経路内に配置される調波変換モジュールと
を備え、
前記調波変換モジュールは、前記レーザビームの前記第1の波長を第2の波長に変換可能である、
システム。
【請求項2】
前記ビーム位置決めシステムはフェイズドアレイビーム位置決めシステムを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記ビーム位置決めシステムは音響光学偏向器を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記音響光学偏向器は、剪断波TeO2音響光学偏向器である、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記音響光学偏向器は、水晶音響光学偏向器である、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ビーム位置決めシステムは電気光学偏向器を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の波長は、電磁スペクトルの赤外域にある、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの可視光域にある、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの可視緑色光域にある、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の波長は、電磁スペクトルの紫外域にある、請求項に記載のシステム。
【外国語明細書】