(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096817
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】インドール化合物を用いた疼痛又は間質性膀胱炎の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20240709BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P29/00
A61P13/10
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061933
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2020169254の分割
【原出願日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】62/835,675
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2018100671
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018246392
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】植田 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】松下 睦佳
(72)【発明者】
【氏名】北川 義浩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 明
(72)【発明者】
【氏名】前川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 総太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩光
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】本堂 哲也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疼痛又は間質性膀胱炎の治療剤又は予防剤を提供する。
【解決手段】下記化学構造式で示される、N-[2-(6,6-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール-3-イル)-1H-インドール-6-イル]-N-メチル-(2S)-2-(モルホリン-4-イル)プロパンアミド又はその製薬上許容される塩を含む、疼痛又は間質性膀胱炎の治療又は予防剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の治療剤又は予防剤であって、下記化学構造式:
【化1】
で示される化合物又はその製薬上許容される塩を含む、治療剤又は予防剤。
【請求項2】
疼痛が、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛又は混合疼痛である、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項3】
疼痛が、炎症性疼痛、筋骨格痛又は癌性疼痛である、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項4】
疼痛が、変形性関節症の疼痛、腰痛又は糖尿病性末梢神経障害の疼痛である、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項5】
疼痛が、関節リウマチの疼痛である、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項6】
疼痛が、関節リウマチの疼痛でない、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項7】
疼痛が、炎症、膵炎、腎臓結石、頭痛、月経困難症、筋骨格痛、捻挫、内臓痛、卵巣嚢胞、前立腺炎、膀胱炎、炎症性腸疾患、術後痛、片頭痛、三叉神経痛、火傷、傷、外傷、ヘルペス後神経痛、筋骨格疾患、強直性脊椎炎、関節周囲病変、癌、骨転移、HIV、心筋梗塞、骨折、痛風、関節、坐骨神経痛、鎌状赤血球クライシス、子宮内膜症、線維筋痛症、切開痛、紅痛症、悪性黒色腫、シェーグレン症候群、喘息、慢性非細菌性前立腺炎、子宮筋腫、外陰部痛、幻肢痛、歯根剥離、糖尿病性神経障害性疼痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発性神経障害、中枢性疼痛、反復運動の痛み、筋筋膜痛、周術期痛、慢性痛、狭心症、原発性痛覚過敏症、続発性痛覚過敏症、原発性異痛症、続発性異痛症、骨粗鬆症、過敏性腸症候群、歯髄炎、皮膚の挫傷、腱炎、仙痛、虫垂炎、消化性潰瘍疾患、膀胱膨満、打撲傷、腱周囲炎、五十肩、脊椎圧迫骨折、脊椎狭窄、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、頸腕症候群、脊椎破裂骨折、抜歯後の痛み、急性動脈閉塞又は紅痛症を伴う、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項8】
疼痛が中程度の痛み、中程度から重度の痛み又は重度の痛みである、請求項1~7のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項9】
製薬上許容される塩が、一塩酸塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項10】
化合物又はその製薬上許容される塩を経口で投与する、請求項1~9のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項11】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与する、請求項1~10のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項12】
化合物又はその製薬上許容される塩を50mg以上の化合物に相当する用量で経口投与する、請求項1~11のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項13】
化合物又はその製薬上許容される塩を化合物の50~400mgに相当する用量で経口投与する、請求項12記載の治療剤又は予防剤。
【請求項14】
化合物又はその製薬上許容される塩を化合物の50~200mgに相当する用量で経口投与する、請求項12に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項15】
化合物又はその製薬上許容される塩を化合物の75~200mgに相当する用量で経口投与する、請求項12記載の治療剤又は予防剤。
【請求項16】
化合物又はその製薬上許容される塩を化合物の75~150mgに相当する用量で経口投与する、請求項12記載の治療剤又は予防剤。
【請求項17】
化合物又はその製薬上許容される塩を化合物の75mg、100mg、125mg又は150mgに相当する用量で経口投与する、請求項12記載の治療剤又は予防剤。
【請求項18】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与し、少なくとも12週間の間、100ng/mL~550ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす、請求項1~17のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項19】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与し、少なくとも12週間の間、100ng/mL~150ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす、請求項18記載の治療剤又は予防剤。
【請求項20】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与し、少なくとも12週間の間、150ng/mL~250ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす、請求項18記載の治療剤又は予防剤。
【請求項21】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与し、少なくとも12週間の間、250ng/mL~350ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす、請求項18記載の治療剤又は予防剤。
【請求項22】
化合物又はその製薬上許容される塩を1日1回投与し、少なくとも12週間の間、300ng/mL~550ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす、請求項18記載の治療剤又は予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年5月25日出願の日本出願番号特願2018-100671、2018年12月28日出願の日本出願番号特願2018-246392及び2019年4月18日出願の米国仮出願番号62/835,675号に対する優先権を主張する。先行出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、疼痛又は間質性膀胱炎の治療剤又は予防剤としての、N-[2-(6,6-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール-3-イル)-1H-インドール-6-イル]-N-メチル-(2S)-2-(モルホリン-4-イル)プロパンアミド又はその製薬上許容される塩の医薬用途に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
痛みのシグナルは、生理学的には、生体の警告系として重要な役割を担っているが、「病的な」痛みは生体に悪影響を及ぼし、生活の質を低下させる。疼痛の治療には、オピオイド(モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン及びデュロキセチンやプレガバリンなどの他の薬剤が用いられる。しかし、現在の鎮痛剤による痛みの管理は十分ではない。またオピオイドは、最も効果的な鎮痛剤であると考えられているが、多くの国で、濫用、依存性及び過剰摂取の蔓延の拡大に関わっている。
【0004】
間質性膀胱炎は、膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿、尿意亢進、尿意切迫感及び/又は膀胱痛などの症状を呈する疾患であり、生活の質の著しい低下をもたらす。痛みを伴う間質性膀胱炎又は間質性膀胱炎の疑いのある状態は、有痛性膀胱症候群、膀胱痛症候群、慢性骨盤痛症候群などに含まれることもある。間質性膀胱炎の一つの診断基準としては、(1)頻尿、過知覚膀胱及び/又は膀胱痛のような下部尿路症状を有すること、(2)内視鏡下でハンナ潰瘍及び/又は膀胱拡張術後の出血により膀胱の病変が確認できること及び(3)感染、悪性腫瘍又は尿路結石のような他の疾患が排除されること、の3条件が挙げられる。間質性膀胱炎は、ハンナ潰瘍を有するハンナ型と有しない非ハンナ型に大別される。
【発明の概要】
【0005】
要約
本発明は、本発明者らが、少なくとも一部において、N-[2-(6,6-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール-3-イル)-1H-インドール-6-イル]-N-メチル-(2S)-2-(モルホリン-4-イル)プロパンアミド(本願では「化合物A」と称する)が痛覚過敏性を軽減することを発見したことに基づく。この発見に基づき、化合物A又はその製薬上許容される塩は、疼痛を治療又は予防するための有効な薬剤として使用しうる。
【0006】
また本発明は、本発明者らが、少なくとも一部において、化合物Aが間質性膀胱炎の重症度を軽減することを発見したことに基づく。この発見に基づき、化合物A又はその製薬上許容される塩は、間質性膀胱炎を治療又は予防するための有効な薬剤として使用しうる。
【0007】
一態様では、本発明は、以下の化学構造式で表される化合物:
【0008】
【0009】
又はその製薬上許容される塩の治療有効量を疼痛の治療又は予防を必要とするヒト対象に投与することにより、ヒト対象の疼痛を治療又は予防する方法を特徴とする。
【0010】
また本発明としては、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、疼痛の治療又は予防用医薬組成物が挙げられる。
【0011】
また本発明としては、疼痛の治療剤又は予防剤の製造のための化合物A又はその製薬上許容される塩の使用が挙げられる。
【0012】
また本発明としては、疼痛の治療又は予防に使用されるための化合物A又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0013】
また本発明としては、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、疼痛の治療剤又は予防剤が挙げられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は侵害受容性疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は混合疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は炎症性疼痛、筋骨格痛又は癌性疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は変形性関節症の疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は腰痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は間質性膀胱炎の疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は糖尿病性末梢神経障害の疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は関節リウマチの疼痛である。
いくつかの実施形態では、疼痛は関節リウマチの疼痛ではない。
いくつかの実施形態では、疼痛は間質性膀胱炎の疼痛ではない。
いくつかの実施形態では、疼痛は関節リウマチ又は間質性膀胱炎の疼痛ではない。
いくつかの実施形態では、疼痛は、有痛性膀胱症候群、膀胱痛症候群又は慢性骨盤痛症候群である。
【0015】
いくつかの実施形態では、疼痛は、炎症、膵炎、腎臓結石、頭痛、月経困難症、筋骨格痛、捻挫、内臓痛、卵巣嚢胞、前立腺炎、膀胱炎、炎症性腸疾患、術後痛、片頭痛、三叉神経痛、火傷、傷、外傷、ヘルペス後神経痛、筋骨格疾患、強直性脊椎炎、関節周囲病変、癌、骨転移、HIV、心筋梗塞、骨折、痛風、関節、坐骨神経痛、鎌状赤血球クライシス、子宮内膜症、線維筋痛症、切開痛、紅痛症、悪性黒色腫、シェーグレン症候群、喘息、慢性非細菌性前立腺炎、子宮筋腫、外陰部痛、幻肢痛、歯根剥離、糖尿病性神経障害性疼痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発性神経障害、中枢性疼痛、反復運動の痛み、筋筋膜痛、周術期痛、慢性痛、狭心症、原発性痛覚過敏症、続発性痛覚過敏症、原発性異痛症、続発性異痛症、骨粗鬆症、過敏性腸症候群、歯髄炎、皮膚の挫傷、腱炎、仙痛、虫垂炎、消化性潰瘍疾患、膀胱膨満、打撲傷、腱周囲炎、五十肩、脊椎圧迫骨折、脊椎狭窄、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、頸腕症候群、脊椎破裂骨折、抜歯後の痛み、急性動脈閉塞又は紅痛症を伴う。
【0016】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回経口投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、疼痛は中程度の痛みである。
いくつかの実施形態では、疼痛は中程度から重度の痛みである。
いくつかの実施形態では、疼痛は重度の痛みである。
【0018】
いくつかの実施形態では、製薬上許容される塩は一塩酸塩である。
【0019】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は経口投与され、疼痛は中程度の痛みである。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は経口投与され、疼痛は中程度から重度の痛みである。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は経口投与され、疼痛は重度の痛みである。
【0020】
いくつかの実施形態では、化合物の一塩酸塩が経口投与され、疼痛は中程度の痛みである。
いくつかの実施形態では、化合物の一塩酸塩が経口投与され、疼痛は中程度から重度の痛みである。
いくつかの実施形態では、化合物の一塩酸塩が経口投与され、疼痛は重度の痛みである。
【0021】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、50mg以上の化合物に相当する用量で経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約50~400mgに相当する用量で経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約50~200mgに相当する用量で経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約75~200mgに相当する用量で経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約75~150mgに相当する用量で経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約75mg、約100mg、約125mg又は約150mgに相当する用量で経口投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与され(例えば、化合物の約50~200mgに相当する用量で)、少なくとも約12週間の間、約100ng/mLから約550ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与され(例えば、化合物約50mgに相当する用量で)、少なくとも約12週間の間、約100ng/mLから約150ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与され(例えば、化合物約100mgに相当する用量で)、少なくとも約12週間の間、約150ng/mLから約250ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与され(例えば、化合物の約150mgに相当する用量で)、少なくとも約12週間の間、約250ng/mLから350ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与され(例えば、化合物約200mgに相当する用量で)、少なくとも約12週間の間、約300ng/mLから約550ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)をもたらす。
【0023】
別の態様では、本発明は、以下の化学構造式で表される化合物:
【0024】
【0025】
又はその製薬上許容される塩の治療有効量を間質性膀胱炎の治療又は予防を必要とするヒト対象に投与することにより、ヒト対象の間質性膀胱炎を治療又は予防する方法を特徴とする。
また本発明は、以下の化学構造式で表される化合物:
【0026】
【0027】
又はその製薬上許容される塩の治療有効量を尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎の治療又は予防を必要とするヒト対象に投与することにより、ヒト対象の尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎を治療又は予防する方法を特徴とする。
【0028】
また本発明としては、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療又は予防用医薬組成物が挙げられる。
【0029】
また本発明としては、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療剤又は予防剤の製造のための化合物A又はその製薬上許容される塩の使用が挙げられる。
【0030】
また本発明としては、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療又は予防に使用されるための化合物A又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0031】
また本発明としては、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療剤又は予防剤が挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、間質性膀胱炎は、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿意亢進、過敏性膀胱、膀胱不快感、膀胱痛及び膀胱の炎症からなる群から選択される少なくとも一つの症状を特徴とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、間質性膀胱炎は、ハンナ型間質性膀胱炎又は非ハンナ型間質性膀胱炎である。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回投与される。
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、1日1回経口投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、製薬上許容される塩は一塩酸塩である。
【0036】
いくつかの実施形態では、化合物の一塩酸塩は、経口投与される。
いくつかの実施形態では、化合物の一塩酸塩は、1日1回経口投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、50mg以上の化合物に相当する用量で経口投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、化合物の約50~400mgに相当する用量で経口投与される。例えば、いくつかの実施形態では、化合物又はその製薬上許容される塩は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg又は約400mgの化合物に相当する用量で経口投与される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、ビヒクル又は化合物Aの10mg/kg又は30mg/kgに相当する量の一塩酸塩を経口投与したCIAモデルラット及びビヒクルを経口投与した通常ラットの痛覚閾値を示す。
【
図2】
図2A-2Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、治療終了時(EOT;
図2A)、2週間(
図2B)後及び12週間(
図2C)における数値的評価スケール(NRS)疼痛のベースラインからの変化量を示すグラフである。
【
図3】
図3A-3Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、EOT(
図3A)、2週間(
図3B)及び12週間(
図3C)における、少なくとも30%の疼痛改善を達成した患者の割合を示すグラフである。
【
図4】
図4A-4Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、EOT(
図4A)、2週間(
図4B)及び12週間(
図4C)における、少なくとも50%の疼痛改善を達成した患者の割合を示すグラフである。
【
図5】
図5A-5Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、EOT(
図5A)、2週間(
図5B)及び12週間(
図5C)における、少なくとも70%の疼痛改善を達成した患者の割合を示すグラフである。
【
図6】
図6A-6Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、EOT(
図6A)、2週間(
図6B)及び12週間(
図6C)における、健康評価質問票の機能障害指数(HAQ-DI)スコアのベースラインからの変化量を示すグラフである。
【
図7】
図7A-7Cは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、EOT(
図7A)、2週間(
図7B)及び12週間(
図7C)における被験者の圧痛関節数(TJC)のベースラインからの変化量を示すグラフである。
【
図8】
図8A-8Bは、プラセボ又は化合物Aの一塩酸塩による処置後の、ベースライン疼痛レベルが低い患者(
図8A)又はベースライン疼痛レベルが高い患者(
図8B)における、疼痛NRSのベースラインからの変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、1日1回50mg、100mg、150mg又は200mgの化合物Aを投与された患者から、2、4、8及び12週目に投与前に採取された血液サンプル中の測定された化合物Aのトラフ濃度(C
trough)を示すグラフである。
【
図10】
図10A-10Bは、インビトロでのTrkA阻害に対するヒト曝露の倍数(
図10A)及びラットにおけるNGF誘発痛覚過敏の阻害に対するヒト曝露の倍数(
図10B)を示すグラフである。
【
図11】
図11は、ビヒクル、化合物Aの一塩酸塩又はanti-NGF抗体を投与したCYP誘発性膀胱炎モデルマウスの下腹部Licking時間を示す。
【
図12】
図12Aは、CYP誘発性膀胱炎のラットの単回排尿量に対する化合物Aの効果を示す。
図12Bは、CYP誘発性膀胱炎のラットの排尿間隔に対する化合物Aの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
化合物A及び製薬上許容される塩
「化合物A」は、N-[2-(6,6-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール-3-イル)-1H-インドール-6-イル]-N-メチル-(2S)-2-(モルホリン-4-イル)プロパンアミドであり、下記化学構造式:
【0041】
【0042】
で表される。
【0043】
「製薬上許容される塩」とは、当技術分野で知られている過度の毒性を伴わない塩であればいかなる塩でもよい。具体的には、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などが挙げられる。様々な形態の製薬上許容される塩が当分野で周知であり、例えば以下の参考文献に記載されている:
(a) Bergeら, J. Pharm. Sci., 66, p1-19(1977)、
(b) Stahlら, 「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use
」(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)、
(c) Paulekuhnら, J. Med. Chem., 50, p6665-6672 (2007)。
【0044】
自体公知の方法に従って化合物Aと、無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基とを反応させることにより、その製薬上許容される塩を各々得ることができる。化合物Aの製薬上許容される塩は、化合物Aの半分の数、同じ数、もしくは少なくとも2倍の数の酸又は塩基と形成されていてもよい。
【0045】
無機酸との塩としては、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸又は硫酸との塩が例示される。
【0046】
有機酸との塩としては、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、4-アミノサリチル酸、アンヒドロメチレンクエン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸、カンファ-10-スルホン酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレソルシン酸、ヒドロキシ-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-エタンスルホン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、メチル硝酸、メチレンビス(サリチル酸)、ガラクタル酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-ナフトエ酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、オレイン酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、ペクチン酸、ピクリン酸、プロピオン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、チオシアン酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸との塩が例示される。
【0047】
無機塩基との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス又はアンモニウムとの塩が例示される。
【0048】
有機塩基との塩としては、アレコリン、ベタイン、コリン、クレミゾール、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、N-ベンジルフェネチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、アルギニン又はリジンとの塩が例示される。
【0049】
「製薬上許容される塩」の好ましい態様は以下の通りである。
無機酸との塩としては、塩化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸又は臭化水素酸との塩が例示される。
【0050】
有機酸との塩としては、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルクロン酸、オレイン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又は2-ヒドロキシ-1-エタンスルホン酸との塩が例示される。
【0051】
無機塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛との塩が例示される。
【0052】
有機塩基との塩としては、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N-メチルグルカミン又はリジンとの塩が例示される。
【0053】
なかでも好ましい化合物Aの製薬上許容される塩は化合物Aの一塩酸塩であり、下記化学構造式:
【0054】
【0055】
で表される。
化合物A及びその製薬上許容される塩は公知の方法、例えば国際公開第2011/065402号又は国際公開第2016/002918号に記載の方法で製造することができる。
【0056】
化合物A又はその製薬上許容される塩は溶媒和物として存在する場合がある。
「溶媒和物」とは、化合物A又はその製薬上許容される塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。溶媒和物は、製薬上許容される溶媒和物が好ましく、化合物A又はその医薬上許容される塩の水和物、エタノール溶媒和物、ジメチルスルホキシド溶媒和物などが挙げられる。
具体的には、化合物Aの半水和物、1水和物、2水和物又は1エタノール溶媒和物、或いは化合物Aのナトリウム塩の1水和物又は2塩酸塩の2/3エタノール溶媒和物などが挙げられる。公知の方法に従って、その溶媒和物を得ることができる。
化合物A又はその製薬上許容される塩は、実質的に精製された、化合物A又はその製薬上許容される塩が好ましい。さらに好ましくは、80%以上の純度に精製された、化合物A又はその製薬上許容される塩である。
【0057】
本発明の疼痛又は間質性膀胱炎の治療剤又は予防剤は、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、化合物A又はその製薬上許容される塩を、少なくとも1種以上の製薬上許容される担体等と、適宜、適量混合等することによって、製造される。該製剤中の化合物A又はその製薬上許容される塩の含量は、剤形、投与量などにより異なるが、例えば、剤全体の0.1から100重量%である。
【0058】
本発明の治療剤又は予防剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。投与形態としては、経口投与又は静脈内、筋肉内、皮下、経皮、局所、直腸投与等の非経口投与が挙げられる。経口投与に適した剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられ、非経口投与に適した剤形としては外用剤、坐剤、注射剤、点眼剤、眼軟膏、貼布剤、ゲル、挿入剤、経鼻剤、経肺剤等が挙げられる。これらは、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、調製することができる。
【0059】
「製薬上許容される担体」としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、固形製剤における賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤等、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等及び半固形製剤における基剤、乳化剤、湿潤剤、安定剤、安定化剤、分散剤、可塑剤、pH調節剤、吸収促進剤、ゲル化剤、防腐剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。更に必要に応じて、保存剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いてもよい。
【0060】
「賦形剤」としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、トウモロコシデンプン、デキストリン、微結晶セルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴムなどが挙げられる。
【0061】
「崩壊剤」としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどが挙げられる。
【0062】
「結合剤」としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、結晶セルロース、白糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、アラビアゴムなどが挙げられる。
【0063】
「流動化剤」としては、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0064】
「滑沢剤」としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。
【0065】
「溶剤」としては、精製水、エタノール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油などが挙げられる。
【0066】
「溶解補助剤」としては、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0067】
「懸濁化剤」としては、塩化ベンザルコニウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。
【0068】
「等張化剤」としては、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、D-マンニトールなどが挙げられる。
【0069】
「緩衝剤」としては、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0070】
「無痛化剤」としては、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0071】
「基剤」としては、水、動植物油(オリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ゴマ油、ヒマシ油など)、低級アルコール類(エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、フェノールなど)、高級脂肪酸及びそのエステル、ロウ類、高級アルコール、多価アルコール、炭化水素類(白色ワセリン、流動パラフィン、パラフィンなど)、親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、親水軟膏、デンプン、プルラン、アラビアガム、トラガカントガム、ゼラチン、デキストラン、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、合成高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど)、プロピレングリコール、マクロゴール(マクロゴール200~600など)及びそれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0072】
「保存剤」としては、パラオキシ安息香酸エチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸などが挙げられる。
【0073】
「抗酸化剤」としては、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0074】
「着色剤」としては、食用色素(食用赤色2号又は3号、食用黄色4号又は5号など)、β-カロテンなどが挙げられる。
【0075】
「甘味剤」としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテームなどが挙げられる。
【0076】
本発明の製剤例として、下記の製剤が挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの製
剤例によって限定されるものではない。
【0077】
製剤例1:カプセルの製造
1)化合物Aの一塩酸塩 30mg
2)微結晶セルロース 10mg
3)乳糖 19mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1mg
1)、2)、3)及び4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0078】
製剤例2:錠剤の製造
1)化合物Aの一塩酸塩 10g
2)乳糖 50g
3)トウモロコシデンプン 15g
4)カルメロースカルシウム 44g
5)ステアリン酸マグネシウム 1g
1)、2)及び3)の全量及び30gの4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの4)及び1gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり化合物Aの一塩酸塩を10mg含有する錠剤1000錠を得る。
【0079】
疼痛の治療又は予防
化合物A又はその製薬上許容される塩は、疼痛の治療剤又は予防剤の有効成分として用いることができる。
【0080】
本明細書において「治療」とは、疼痛の改善、重症化の防止又は遅延、寛解の維持、再燃の防止、さらには再発の防止も含む。
【0081】
本明細書において「予防」とは、疼痛の発症を抑制することを意味する。
【0082】
化合物A又はその製薬上許容される塩を、医薬分野で行われている一般的な方法で、1又は複数の他の薬剤(以下、「併用薬剤」ともいう)と組み合わせて使用(以下、「併用」ともいう)することができる。
【0083】
併用薬の例としては、鎮痛薬及び補助鎮痛薬が挙げられる。鎮痛薬としては、オピオイド受容体作動薬、オピオイド受容体部分作動薬、NSAID、COX-2阻害剤、イオンチャネル調節薬、中枢作用薬、神経障害性疼痛用薬剤、癌性疼痛用薬及び他の鎮痛薬が挙げられる。補助鎮痛薬には、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬、N-メチル-D-アスパラギン酸拮抗薬、中枢性筋弛緩薬、コルチコステロイド、抗不安薬、骨修飾薬、抗ヒスタミン薬、神経弛緩薬及び他の補助鎮痛薬が挙げられる。
【0084】
オピオイド受容体作動薬の例としては、モルヒネ、オキシコドン、ペチジン、メタドン、レボルファノール、オキシモルホン、フェンタニル、ペンタゾシン、トラマドール、ヒドロモルホン、フェンタニル、レミフェンタニル、タペンタドール、ヒドロコドン、スフェンタニル、ベンズヒドロコドン、オキシコデゴルコデイン及びジヒドロコデインが挙げられる。
【0085】
オピオイド受容体部分作動薬の例としては、デキストロモラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、メプタジノール、エプタゾシン及びジナルブフィンが挙げられる。
【0086】
NSAIDの例としては、アセチルサリチル酸、パラセタモール、インドメタシン、メ
フェナム酸、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、スリンダク、フルルビプロフェン、ジフルニサル、ピロキシカム、アセメタシン、メクロフェナメート、プロパセタモール、ケトロラック、アセクロフェナク、ザルトプロフェン、モフェゾラック、デクスケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム及びペルビプロフェンが挙げられる。
【0087】
COX-2阻害剤の例としては、ロフェコキシブ、セレコキシブ、パレコキシブ及びルミラコキシブが挙げられる。
【0088】
イオンチャネル調節薬の例としては、ジコノチド、ブピバカイン及びプリラルフィナミドが挙げられる。
【0089】
中枢作用薬の例としては、ネフォパム及びフルピルチンが挙げられる。
【0090】
神経障害性疼痛用薬剤の例としては、カルバマゼピン、リドカイン、クロニジン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリン、カプサイシン及びミロガバリンが挙げられる。
【0091】
癌性疼痛用薬の例としては、カルシトニン、クロドロネート、パミドロネート、ストロンチウム及びレキシドロナムが挙げられる。
【0092】
他の鎮痛薬の例としては、エプチネズマブ、ラスミディタン、ウブロゲパント、アトゲパント、オリセリジン、セブラノパドール、ファシヌマブ、ルセラスタット、ネリドロン酸、レルゴリクス、リメゲパント、タネズマブ、ゾレドロン酸及びズカプサイシンが挙げられる。
【0093】
抗うつ薬の例には、アミトリプチリン、アモキサピン、ノルトリプチリン、デュロキセチン、パロキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、デシプラミン、トラゾドン、ブプロピオン、ドキセピン及びベンラファキシンが挙げられる。
【0094】
抗てんかん薬の例としては、プレガバリン、ガバペンチン、バルプロ酸、フェニトイン、クロナゼパム及びカルバマゼピンが挙げられる。
【0095】
抗不整脈薬の例としては、メキシレチン及びリドカインが挙げられる。
【0096】
N-メチル-D-アスパラギン酸拮抗薬の例としては、ケタミンが挙げられる。
【0097】
中枢性筋弛緩薬の例としては、バクロフェン、オルフェナドリン、カリソプロドール、メトカルバモール、クロルゾキサゾン及びシクロベンザプリンが挙げられる。
【0098】
コルチコステロイドの例としては、ベタメタゾン及びデキサメタゾンが挙げられる。
【0099】
抗不安薬の例としては、ジアゼパム及びロラゼパムが挙げられる。
【0100】
骨修飾薬の例としては、ゾレドロン酸、デノスマブ、カルシトニン及びストロンチウム89が挙げられる。
【0101】
抗ヒスタミン薬の例としては、ヒロキシジン及びジフェンヒドラミンが挙げられる。
【0102】
神経弛緩薬の例としては、メトトリメプラジン及びフルフェナジンが挙げられる。
【0103】
他の補助鎮痛薬の例としては、オクトレオチド、スコポラミン、グリコピロレート、クロニジン及びカプサイシンが挙げられる。
【0104】
化合物A又はその製薬上許容される塩を含む薬剤及び併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、配合剤として投与してもよいし、両製剤を同時に又は一定の間隔をおいて投与してもよい。また、本発明の治療剤又は予防剤及び併用薬剤とからなるキットであることを特徴とする医薬として用いてもよい。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、疾患、症状、剤形、投与ルート、投与時間、組み合わせ等により適宜選択することができる。併用薬剤の投与形態は、特に限定されず、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む薬剤と併用薬剤とが組み合わされていればよい。
【0105】
本発明の一実施態様としては、化合物A又はその製薬上許容される塩の治療上有効量をヒトに投与することを含んでなる、疼痛を治療又は予防する方法が挙げられる。
【0106】
本明細書において「有効量」とは、例えば、組織、系若しくはヒトの生物学的若しくは医学的反応を惹起する、医薬又は薬剤の量を意味する。また、「治療上有効量」とは、かかる量を受容していない対応する対象と比較して、疼痛若しくは副作用の改善された、治療、治癒、予防若しくは改善をもたらす任意の量を意味する。
【0107】
本発明の治療剤又は予防剤の投与量は、投与対象、疾患、症状、剤形、投与ルート等により異なるが、例えば、成人の患者(体重約60kg)に経口投与する場合、1日あたり、有効成分である化合物Aに換算すると通常0.1mgから1g、好ましくは10mgから800mgを、1日1回から数回に分けて投与することができ、食前、食後、食間を問わない。痛みを生じた場合に頓服的に、例えば1日1回又は数回程度服用してもよい。投与期間は特に限定されない。
【0108】
化合物A又はその製薬上許容される塩の用量としては、50mg以上の化合物に相当する用量、例えば約50~400mgの化合物に相当する用量、約50~200mgの化合物に相当する用量、約75~200mgの化合物に相当する用量又は約75~150mgの化合物に相当する用量を経口投与することが挙げられる。
【0109】
化合物Aの一塩酸塩の用量範囲としては、50mg以上の化合物に相当する用量、例えば約50~400mgの化合物に相当する用量、約50~200mgの化合物に相当する用量、約75~200mgの化合物に相当する用量又は約75~150mgの化合物に相当する用量を経口投与することが挙げられる。別段の指定がない限り、化合物は化合物の遊離体を意味する。
【0110】
化合物A又はその製薬上許容される塩の用量としては、約75mg、約100mg、約125mg又は約150mgの化合物に相当する用量での経口投与が挙げられる。
【0111】
化合物A又はその製薬上許容される塩を対象に1日1回投与して、少なくとも約12週間、約100ng/mLから約600ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)を提供することができる。例えば、化合物の約50~200mgに相当する用量を1日1回ヒト対象に投与すると、少なくとも約12週間、約100ng/mLから約550ng/mLの化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)となりうる。用語「トラフ濃度」及び「Ctrough」は、化合物A又はその製薬上許容される塩の次の用量が投与される前のヒト対象の血漿中の化合物Aの最低濃度を指す。平均Ctroughは約120ng/mLから約520ng/mLでありうる。
【0112】
約50mgの化合物に相当する用量を1日1回ヒト対象に投与すると、少なくとも約12週間、化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)は、約100ng/mLから約150ng/mLとなりうる。例えば、平均Ctroughは、約120ng/mLから約140ng/mLになりうる。
【0113】
約100mgの化合物に相当する用量を1日1回ヒト対象に投与すると、少なくとも約12週間、化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)は、約150ng/mLから約250ng/mLとなりうる。例えば、平均Ctroughは約180ng/mLから約230ng/mLになりうる。
【0114】
約150mgの化合物に相当する用量を1日1回ヒト対象に投与すると、少なくとも約12週間、化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)は、約250ng/mLから約350ng/mLとなりうる。例えば、平均Ctroughは約270ng/mLから約340ng/mLになりうる。
【0115】
約200mgの化合物に相当する用量を1日1回ヒト対象に投与すると、少なくとも約12週間、化合物の平均トラフ濃度(Ctrough)は、約300ng/mLから約550ng/mLとなりうる。例えば、平均Ctroughは約350ng/mLから約550ng/mLになりうる。例えば、平均Ctroughは約350ng/mLから約450ng/mLになりうる。
【0116】
数値的評価スケール(NRS)を使用し、疼痛を定量化し、疼痛管理の進捗を測定しうる。0-10スケールを使用すると、5以下のNRSスコアは一般に軽度の痛みに相当すると考えられ、6-7のスコアは一般に中程度の痛みに相当すると考えられ、8以上のスコアは一般に重度の痛みに対応すると考えられる。実施例に記載されているように、化合物Aは、NRSスケールで8以上の痛みを有する対象者の痛みを軽減することが見出され、重度の痛みを有する対象の治療に使用できることを示している。
【0117】
視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して、疼痛を定量化し、疼痛管理の進捗を測定することもできる。VASは、「痛みなし」や「最悪の痛み」などの極端な制限を定義するエンドポイントを持つ直線で構成される。対象者は、2つのエンドポイント間のラインに自分の痛みレベルをマークするよう求められる。「痛みなし」とマークの間の距離が、対象者の痛みを定義する。
【0118】
本発明の一実施態様として、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、疼痛の治療又は予防用医薬組成物が挙げられる。
【0119】
本発明の一実施態様として、疼痛の治療剤又は予防剤の製造のための化合物A又はその製薬上許容される塩の使用が挙げられる。
【0120】
本発明の一実施態様として、疼痛の治療又は予防に使用されるための化合物A又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0121】
本発明の一実施態様として、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、疼痛の治療剤又は予防剤が挙げられる。
【0122】
間質性膀胱炎の治療又は予防
化合物A又はその製薬上許容される塩は、間質性膀胱炎の治療剤又は予防剤の有効成分として用いることができる。また化合物A又はその製薬上許容される塩は、頻尿、夜間頻
尿、尿意切迫感、尿意亢進、過敏性膀胱、膀胱不快感、膀胱痛、膀胱の炎症などの間質性膀胱炎の症状の治療又は予防に使用することができる。
【0123】
間質性膀胱炎は、ハンナ潰瘍を有するハンナ型と有しない非ハンナ型に大別される。化合物A又はその製薬上許容される塩は、いずれのタイプの間質性膀胱炎の治療剤又は予防剤の有効成分としても使用することができる。
【0124】
化合物A又はその製薬上許容される塩は、尿路感染症の過活動膀胱又は膀胱炎の治療薬又は予防薬の有効成分としても使用できる。尿路感染症における過活動膀胱及び膀胱炎は、間質性膀胱炎と共通の症状である頻尿(すなわち、頻尿症)を示す疾患である。いくつかの例では、過活動膀胱は、膀胱に顕微鏡的所見がないため、間質性膀胱炎とは異なる疾患として診断される。しかし、場合によっては、過活動膀胱対象者の集団には、そのような顕微鏡診断のない間質性膀胱炎対象者が含まれることがある。
【0125】
本明細書において「治療」とは、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の改善、重症化の防止又は遅延、寛解の維持、再燃の防止、さらには再発の防止も含む。
本明細書において「予防」とは、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の発症を抑制することを意味する。
【0126】
本発明の治療剤又は予防剤を、医薬分野で行われている一般的な方法で、1又は複数の他の薬剤(以下、「併用薬剤」ともいう)と組み合わせて使用(以下、「併用」ともいう)することができる。
【0127】
化合物A又はその製薬上許容される塩を含む薬剤及び併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、配合剤として投与してもよいし、両製剤を同時に又は一定の間隔をおいて投与してもよい。また、該薬剤及び併用薬剤からなるキットであることを特徴とする医薬として用いてもよい。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、疾患、症状、剤形、投与ルート、投与時間、組み合わせ等により適宜選択することができる。併用薬剤の投与形態は、特に限定されず、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む薬剤と併用薬剤とが組み合わされていればよい。併用薬剤としては、ヒドロキシジン、アミトリプチリン、スプラタストトシル酸塩、シメチジン、コルチコステロイド、シクロスポリン、抗生剤及びオキシブチニンが挙げられる。
【0128】
本発明の一実施態様としては、化合物A又はその製薬上許容される塩の治療上有効量をヒトに投与することを含んでなる、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)を治療又は予防する方法が挙げられる。
【0129】
本明細書において「有効量」とは、例えば、組織、系若しくはヒトの生物学的若しくは医学的反応を惹起する、医薬又は薬剤の量を意味する。また、「治療上有効量」とは、かかる量を受容していない対応する対象と比較して、間質性膀胱炎又は副作用の改善された、治療、治癒、予防若しくは改善をもたらす任意の量を意味する。
【0130】
本発明の治療剤又は予防剤の投与量は、投与対象、疾患、症状、剤形、投与ルート等により異なるが、例えば、成人の患者(体重約60kg)に経口投与する場合、1日あたり、有効成分である化合物Aに換算すると通常0.1mgから1g、好ましくは10mgから800mgを、1日1回から数回に分けて投与することができ、食前、食後、食間を問わない。痛みを生じた場合に頓服的に、例えば1日1回又は数回程度服用してもよい。投与期間は特に限定されない。
【0131】
化合物A又はその製薬上許容される塩の用量の範囲としては、50mg以上の化合物に相当する用量、例えば約50~400mgの化合物に相当する用量、約50~200mgの化合物に相当する用量、約75~200mgの化合物に相当する用量又は約75~150mgの化合物に相当する用量を経口投与することが挙げられる。
【0132】
化合物A又はその製薬上許容される塩の用量としては、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg又は約400mgの化合物に相当する用量を経口投与することが挙げられる。
【0133】
本発明の一実施態様として、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療又は予防用医薬組成物が挙げられる。
【0134】
本発明の一実施態様として、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療剤又は予防剤の製造のための化合物A又はその製薬上許容される塩の使用が挙げられる。
【0135】
本発明の一実施態様として、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療又は予防に使用されるための化合物A又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0136】
本発明の一実施態様として、化合物A又はその製薬上許容される塩を含む、間質性膀胱炎(又は尿路感染症における過活動膀胱又は膀胱炎)の治療剤又は予防剤が挙げられる。
【0137】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0138】
以下の実施例は、特許請求される本発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及されている限り、それは単に例示の目的のためであり、本発明を限定することを意図していない。当業者は、発明能力を行使することなく、また本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段又は反応物を開発することができる。
【実施例0139】
実施例1:ラットコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおける、化合物Aの一塩酸塩の経口投与による鎮痛効果
ラットCIAモデルの関節炎発症の痛覚過敏性に対する化合物Aの鎮痛効果を評価した。痛覚過敏性はランダル-セリット法を用いた機械刺激に対する疼痛閾値(Paw Withdrawal Threshold,PWT)により評価した。
【0140】
実験動物として雌性のLEW/CrlCrljラット(日本チャールス・リバー株式会社)を用いた。化合物Aの一塩酸塩を0.5%メチルセルロース(MC)に溶解し、6mg/mL及び2mg/mLの化合物A溶液を調製した。ウシ関節軟骨由来II型コラーゲン(コラーゲンリサーチセンター)を酢酸に溶解し、2mg/mLのII型コラーゲン溶液を調製した。等量の2mg/mLのII型コラーゲン溶液とフロイント不完全アジュバントを混合し、1mg/mLのII型コラーゲンエマルジョンを調製した。
【0141】
1日目にビヒクル群、化合物A10mg/kg投与群及び化合物A30mg/kg投与群にII型コラーゲンエマルジョンを皮内注射した。8日目にビヒクル群、化合物A10
mg/kg投与群及び化合物A30mg/kg投与群にII型コラーゲンエマルジョンを皮内注射した。22日目から28日目にビヒクル群には0.5%MC溶液を5mL/kgの投与容量で1日1回経口投与した。同じ期間に化合物A10mg/kg投与群及び化合物A30mg/kg投与群にはそれぞれ2mg/mL又は6mg/mLの化合物A溶液を5mL/kgの投与容量で1日1回経口投与した。28日目にランダル-セリット式鎮痛効果計測器(TK-201、UNICOM)を用いて、鎮痛効果を測定した。各群のPWT値について平均値及び標準偏差を算出した。その結果を
図1に示す。化合物AはCIAのラットにおける痛覚過敏性を軽減した。
【0142】
実施例2:ラット神経成長因子(NGF)誘発痛覚過敏に対する化合物Aの効果
化合物Aは、NGFの受容体であるTrkAに対して阻害効果がある。本研究の目的は、ラットのNGF誘発痛覚過敏に対する化合物Aの効果を調査することである。
【0143】
疼痛関連行動(逃避行動)を誘発するために、ラットの左後足の足底部にNGFを注射し、熱潜時/機械的閾値を測定した。これらの逃避行動に対する化合物Aの効果を調べた。
【0144】
NGF注射の2日前に、実験環境への馴化について熱潜時又は機械的閾値を測定した。NGF注射の前日に、体重及び熱潜時又は機械的閾値の値を得た。
【0145】
50μLのNGF溶液をラット左後足の足底内に注射した。0.5μg/部位のNGFを熱刺激の評価に選択し、1μg/部位を機械刺激の評価に選択した。化合物Aの一塩酸塩(1、3又は10mg/kg)をNGF注射と同時に経口投与した。
【0146】
熱刺激に対する反応潜時をNGF溶液の注射後3時間及び6時間で測定し、機械刺激に対する閾値はNGF溶液の注射後1時間、3時間及び6時間で測定した。評価は、各グループのブラインドテストとして実施した。
【0147】
熱潜時は、プランターテスト装置を用いて測定した。赤外線熱刺激は後足の足底部に伝達され、熱源から足を引っ込める時間が熱潜時として自動的に記録された。測定は各動物の両後足について5回実施し、各後足の最後の3つの値の平均を各動物の熱潜時とみなした。馴化のための測定は3回だけ行った。
【0148】
機械的閾値は、圧力式鎮痛効果測定装置(pressure analgesy-meter)を用いて測定し
た。一定の割合で増加した機械刺激(圧力)を後肢に加え、動物が後肢を引っ込めるか発声するまでの負荷下の圧力を機械的閾値(mmHg)として記録した。
【0149】
化合物Aは、ビヒクルと比較して、用量相関的に、NGFにより誘発される熱潜時の減少を抑制した。表1を参照。NGF注射後6時間で、3mg/kgの用量から化合物Aの有意な効果が観察された。
【0150】
【0151】
化合物Aは、ビヒクルと比較して、用量相関的に、NGFにより誘発される機械的閾値の低下を抑制した。表2を参照。NGF注射後6時間で、3mg/kgの用量から化合物Aの有意な効果が観察された。
【0152】
【0153】
実施例3:ヒト関節リウマチ臨床試験における疼痛評価
化合物Aを、活動性関節リウマチの被験者において、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験で評価した。被験者は、12週間にわたって1日1回、経口投与でプラセボ又はフリー体の化合物A50mg、100mg、150mg又は200mg
を提供するのに十分な量の化合物Aの一塩酸塩を摂取するように無作為化された。
【0154】
痛みは、被験者が数値的評価スケール(NRS)を使用して評価した。痛みNRSは、0(痛みなし)から10(最大の痛み)までの11点スケールを使用して、過去3日間の関節炎の痛みの重症度を表す。薬物投与後にベースラインNRSからNRSがどれだけ減少したかを評価した。
【0155】
EOT(治療終了)、2週間及び12週間でのデータを取得した。EOTは、臨床研究において一般的に使用される測定点である。12週間の研究では、12週間の時点でのすべての分析を指す。ただし、一部の被験者は研究を途中で中止したため、中止時のデータはこれらの被験者のEOTとして扱われる(たとえば、8週目のデータは8週目に中止した被験者のEOTとして使用される)。2週間(2週間を完全に完了した被験者)及び12週間(12週間を完全に完了した被験者)データも表示される。
【0156】
プラセボ又は化合物Aの投与量のいずれかの用量での治療後にNRSにおけるベースラインの痛みからの変化量を
図2A(EOT)、
図2B(2週間)及び
図2C(12週間)に示す。
【0157】
達成率(痛みの改善を示す被験者の割合)も臨床的改善の測定に使用された。プラセボ又は化合物Aの投与量の一つで治療した後、痛みが少なくとも30%改善した患者の割合を
図3A(EOT)、
図3B(2週間)及び
図3C(12週間)に示す。プラセボ又は化合物Aの投与量のいずれかで治療した後、痛みが少なくとも50%改善した患者の割合を
図4A(EOT)、
図4B(2週間)及び
図4C(12週間)に示す。プラセボ又は化合物Aの投与量のいずれかで治療した後、痛みが少なくとも70%改善した患者の割合を
図5A(EOT)、
図5B(2週間)及び
図5C(12週間)に示す。
【0158】
HAQ-DI(健康評価質問票の機能障害指数)質問票を使用して、治療を受けた患者の生活の質の改善を評価した。HAQ-DIは、8つのカテゴリの日常生活活動:着衣と身繕い、起立、食事、歩行、衛生、動作、握力、一般的な日常活動において、被験者が過去1週間に経験した難易度を評価することにより、対象者の機能的能力の程度を評価する。HAQ-DIスコアが高いほど、被験者の機能が悪化していることを示す。プラセボ又は化合物Aの投与量のいずれかで治療した後のHAQ-DIスコアのベースラインからの変化量を
図6A(EOT)、
図6B(2週間)及び
図6C(12週間)に示す。
【0159】
圧痛関節数(TJC;68の関節のうちの押したときに痛みを伴う関節の数)を評価して、圧痛又は痛みを伴うと考えられる関節の数を決定した。プラセボ又は化合物Aのどれかの用量での治療後のベースラインからのTJCの変化量を、
図7A(EOT)、
図7B(2週間)及び
図7C(12週間)に示す。
【0160】
痛みNRSの変化は、ベースラインの痛みレベルが高い方(平均ベースライン痛みNRS≧8.0)及びベースラインの痛みレベルが低い方(平均ベースライン痛みNRS<8.0)の2つのサブグループの患者で評価した。ベースラインの痛みレベルがより高い状態で治療を開始した被験者では、痛みNRSのより大きな減少が観察された。
図8A及び8Bを参照。痛みNRSの減少の大きさは、ベースラインの痛みNRSの低い方及び高い方のサブグループで異なったが、両方のサブグループは最終的に痛みNRSスコア約4を達成した。
【0161】
臨床研究では、化合物Aによる治療後に急速(2週間以内)及び長期持続(12週間)の鎮痛効果が観察されたことが示された。抗炎症効果のみから生じる改善は、有益な効果を示すまでにより長い時間を必要とするであろうことから、化合物Aによる治療から2週
間以内の疼痛スコアの改善は、化合物が鎮痛効果を有することを示す。
【0162】
臨床研究での重篤な有害事象(SAE)及び重度の治療で発生する有害事象(TEAE)の発生率は、臨床研究で化合物Aのいずれかの用量で治療を受けた被験者では低かった(それぞれ、3.4%及び2.9%)。化合物Aは、12週間の治療にわたり200mgまでの用量では安全で許容された。
【0163】
実施例4:薬物動態評価
実施例3に記載のヒト臨床研究では、化合物Aの血漿レベルの定量化のために、2、4、8及び12週目に投与前に被験者から血液サンプルを採取した。化合物Aのトラフ濃度(C
trough)を
図9に示す。平均トラフ濃度は、用量が50mgから200mgに増加するにつれて増加し、研究中トラフ濃度は維持された。表3を参照。
【0164】
【0165】
前臨床薬理結果に対するヒトC
trough値の倍数が決定された。倍数は、ヒト曝露(12週での平均C
trough)を前臨床IC
50又はIC
90値で除算することにより算出された。
図10Aは、インビトロでのTrkA阻害に対するヒト曝露の倍数を示す。
図10Bは、ラットにおけるNGF誘発痛覚過敏の阻害に対するヒト曝露の倍数を示す。
【0166】
実施例5:マウスシクロフォスファミド(CYP)誘発膀胱炎モデルにおける化合物Aの経口投与の効果
マウスCYP誘発膀胱炎モデルにおいて、化合物Aによる下腹部Licking時間の
抑制作用を評価した。評価は、M.Fujita et al. Eur J Pain. 20(2016)79-91を参考に実施した。実験動物は、C57BL/6Jの雄性マウス(日本チャールス・リバー株式会社)を用いた。
【0167】
1日1回4日間(Day1~4)、ビヒクル群、化合物A投与群及びanti-NGF抗体群に生理食塩液に溶解した20mg/mLのCYP(シグマ社)を10mL/kgの容量で、シャム群に生理食塩液を10mL/kgの容量で腹腔内投与した。化合物Aの一塩酸塩を0.5%メチルセルロース(MC)に溶解して、化合物Aの3mg/mL、6mg/mL及び10mg/mLの溶液を調製した。
【0168】
1日1回3日間(Day7~9)、0.5%(w/v)(MC)をシャム群、ビヒクル群及びanti-NGF抗体投与群に、0.5%(w/v)MCに溶解した3mg/mL、6mg/mL又は10mg/mLの化合物Aの一塩酸塩を化合物A投与群に、10mL/kgの容量で経口投与した。また、単回で(Day7)、シャム群、ビヒクル群及び化合物A投与群にアイソタイプコントロールBE0083(Bio X Cell社)を、anti-NGF抗体投与群にモノクローナルanti-神経成長因子-β(NGF)抗体(シグマ社)を150μg/headの容量で腹腔内投与した。
【0169】
CYP初回投与前(Pre)、Day7、Day8及びDay10に、マウスの行動を90分間ビデオカメラで撮影し、下腹部Licking時間(sec)を計測した。Day7及びDay8は、マウスの行動を撮影後にシャム群、ビヒクル群及びanti-NGF抗体投与群に0.5%(w/v)MCを、化合物A投与群に化合物Aの一塩酸塩を経口投与した。また、Day7には、マウスの行動を撮影後にシャム群、ビヒクル群及び化合物A投与群にアイソタイプコントロールBE0083を、anti-NGF抗体投与群にanti-NGF抗体を腹腔内投与した。各個体のLicking時間について群毎に平均値を算出し、その結果を
図11に示した。化合物Aは、この膀胱炎動物モデルにおいて、下腹部Licking時間を減少させた。
【0170】
実施例6:ラットCYP誘発膀胱炎モデルにおける頻尿に対する化合物Aの経口投与の効果
単回排尿量及び排尿間隔によって算出される頻尿に対する化合物Aの効果を、ラットCYP誘発膀胱炎モデルを使用して評価した。評価はGM. Herrera et al., PLoS ONE 5(8):
e12298に従って実施した。雌性のCD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会
社)を実験動物として使用した。化合物Aの一塩酸塩を0.5%MCに溶解して、化合物Aの2mg/mL及び6mg/mL溶液を調製した。
【0171】
生理食塩水に溶解した30mg/mLのCYP(シグマ社)をビヒクル群及び化合物A群に、生理食塩水をシャム群に、5mL/kgで腹腔内投与した(Day1)。
【0172】
0.5%(w/v)MCをシャム群及びビヒクル群に5mL/kgで1日1回2日間(Day1-2)経口投与し、化合物Aの2mg/mL又は6mg/mL溶液を、化合物A投与群に5mL/kgで1日に2回(Day1-2)経口投与した。
【0173】
Day3に膀胱内圧及び排尿量を膀胱内圧測定法で測定し、単回排尿量及び排尿間隔を計算した。個々の単回排尿量及び排尿間隔から各グループの平均値を計算し、結果をそれぞれ
図12A及び
図12Bに示した。化合物Aは、この膀胱炎動物モデルにおける頻尿を抑制した。
【0174】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲に
よって定義される本発明の範囲を例示するものであり限定するものではない。他の態様、利点及び修正は、添付の特許請求の範囲内にある。