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特開2024-96836ベーパーチャンバ用の本体シート、ベーパーチャンバおよび電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096836
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ用の本体シート、ベーパーチャンバおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240709BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240709BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102B
H01L21/68 A
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062943
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2023500945の分割
【原出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021024532
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021024553
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】小田 和範
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昂平
(72)【発明者】
【氏名】小井 浩司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、ベーパーチャンバの搬送性を向上させることができるベーパーチャンバ用の本体シート、ベーパーチャンバ、および電子機器を提供する。
【解決手段】ベーパーチャンバ1は、第1本体面31aと、第1本体面とは反対側に設けられた第2本体面31bと、を有する本体シートと、本体シートの第1本体面に設けられた空間部50と、本体シートの第1本体面に積層されて空間部を覆う第1シートと、平面視において、本体シートまたは第1シートの外周縁よりも空間部の側に引き込まれた引込部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に設けられた第2本体面と、を有する本体シートと、
前記本体シートの前記第1本体面に設けられた空間部と、
前記本体シートの前記第1本体面に積層されて前記空間部を覆う第1シートと、
平面視において、前記本体シートまたは前記第1シートの外周縁よりも前記空間部の側に引き込まれた引込部と、を備える、ベーパーチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベーパーチャンバ用の本体シート、ベーパーチャンバおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)や発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴うデバイスは、ヒートパイプ等の放熱用部材によって冷却される(例えば、特許文献1参照)。近年では、モバイル端末等の薄型化のために、放熱用部材の薄型化も求められており、ヒートパイプより薄型化を図ることができるベーパーチャンバの開発が進められている。ベーパーチャンバ内には、作動流体が封入されており、ベーパーチャンバは、この作動流体がデバイスの熱を吸収して拡散することにより、デバイスを冷却する。
【0003】
より具体的には、ベーパーチャンバ内の作動流体は、デバイスに近接した部分(蒸発部)でデバイスから熱を受けて蒸発して蒸気(作動蒸気)になる。その作動蒸気は、蒸気流路部内で蒸発部から離れる方向に拡散して冷却され、凝縮して液体になる。ベーパーチャンバ内には、毛細管構造(ウィック)としての液流路部が設けられており、作動流体の液体(作動液)は、蒸気流路部から液流路部に入り込み、液流路部を流れて蒸発部に向かって輸送される。そして、作動液は、再び蒸発部で熱を受けて蒸発する。このようにして、作動流体が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ内を還流することによりデバイスの熱を移動させ、放熱効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-82698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造されたベーパーチャンバは、所定の場所に載置されて保管される。その後、ベーパーチャンバは、出荷時やデバイスへの装着時に、載置場所から取り出されて搬送される。
【0006】
しかしながら、ベーパーチャンバは薄型化されているとともに、ベーパーチャンバの側面は垂直に形成されており、搬送時に掴む部分も設けられていない。このため、ベーパーチャンバを搬送することが困難な場合がある。
【0007】
本開示は、このような点を考慮し、ベーパーチャンバの搬送性を向上させることができるベーパーチャンバ用の本体シート、ベーパーチャンバ、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の形態は、
作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に設けられた第2本体面と、を有する本体シートと、
前記本体シートの前記第1本体面に設けられた空間部と、
前記本体シートの前記第1本体面に積層されて前記空間部を覆う第1シートと、
平面視において、前記本体シートまたは前記第1シートの外周縁よりも前記空間部の側に引き込まれた引込部と、を備える、ベーパーチャンバである。
【0009】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、前記第1シートに設けられた第1引込部であって、平面視において、前記本体シートの外周縁よりも前記空間部の側に引き込まれた第1引込部を含んでいてもよい。
【0010】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、前記本体シートに設けられた本体シート引込部であって、平面視において、前記第1シートの外周縁よりも前記空間部の側に引き込まれた本体シート引込部を含んでいてもよい。
【0011】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、平面視において、第1方向に延びる一対の第1側縁と、前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2側縁と、を有していてもよく、
前記引込部は、一対の前記第1側縁および一対の前記第2側縁にそれぞれ設けられていてもよい。
【0012】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、平面視において、第1方向に延びる一対の第1側縁と、前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2側縁と、を有していてもよく、
前記引込部は、一対の前記第1側縁のうちの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0013】
本開示の第6の態様は、上述した第5の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、一対の前記第1側縁の両方にそれぞれ設けられていてもよい。
【0014】
本開示の第7の態様は、上述した第5の態様および上述した第6の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、前記第1側縁の一部に設けられていてもよい。
【0015】
本開示の第8の態様は、上述した第5の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、一対の前記第1側縁のうちの一方に設けられるとともに、一対の前記第2側縁のうちの一方にも設けられていてもよい。
【0016】
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様から上述した第8の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、平面視において、前記本体シートの外周縁から10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。
【0017】
本開示の第10の態様は、上述した第1の態様から上述した第9の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、平面視において、前記空間部から30μm以上離れた位置に設けられていてもよい。
【0018】
本開示の第11の態様は、上述した第1の態様から上述した第10の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートの前記第2本体面に積層された第2シートを備え、
前記空間部は、前記第1本体面から前記第2本体面に貫通しており、
前記第2シートは、前記第2本体面において前記空間部を覆っており、
前記引込部は、前記第2シートに設けられた第2引込部であって、平面視において、前記本体シートの外周縁よりも前記空間部の側に引き込まれた第2引込部を含んでいてもよい。
【0019】
本開示の第12の態様は、
作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に設けられた第2本体面と、を有する本体シートと、
前記本体シートの前記第1本体面に設けられた空間部と、
前記本体シートの前記第1本体面に積層されて前記空間部を覆う第1シートと、
前記本体シートおよび前記第1シートを貫通した貫通穴と、
平面視において、前記本体シートまたは前記第1シートの前記貫通穴を画定する内周縁よりも前記貫通穴とは反対側に引き込まれた引込部と、を備える、ベーパーチャンバである。
【0020】
本開示の第13の態様は、上述した第12の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、前記第1シートに設けられた第1引込部であって、平面視において、前記本体シートの前記貫通穴を画定する内周縁よりも前記貫通穴とは反対側に引き込まれた第1引込部を含んでいてもよい。
【0021】
本開示の第14の態様は、上述した第12の態様および上述した第13の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートの前記第2本体面に積層された第2シートを備え、
前記空間部は、前記第1本体面から前記第2本体面に貫通しており、
前記第2シートは、前記第2本体面において前記空間部を覆っており、
前記貫通穴は、前記本体シート、前記第1シートおよび前記第2シートを貫通しており、
前記引込部は、前記第2シートに設けられた第2引込部であって、平面視において、前記本体シートの前記貫通穴を画定する内周縁よりも前記貫通穴とは反対側に引き込まれた第2引込部を含んでいてもよい。
【0022】
本開示の第15の態様は、上述した第12の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記引込部は、前記本体シートに設けられた本体シート引込部であって、平面視において、前記第1シートの前記貫通穴を画定する内周縁よりも前記貫通穴とは反対側に引き込まれた本体シート引込部を含んでいてもよい。
【0023】
本開示の第16の態様は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスと熱的に接触した、上述した第1の態様から上述した第15の態様のいずれかによるベーパーチャンバと、を備える、電子機器である。
【0024】
本開示の第17の態様は、
作動流体が封入されるベーパーチャンバ用の本体シートであって、
第1本体面と、
前記第1本体面とは反対側に設けられた第2本体面と、
前記第1本体面に設けられた空間部と、
平面視における外周縁と、
厚さ方向に沿った断面視において、前記外周縁から前記空間部の側に引き込まれた引込部と、を備える、ベーパーチャンバ用の本体シートである。
【0025】
本開示の第18の態様は、上述した第17の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記断面視において、前記引込部は、前記外周縁から延びる引込縁を有していてもよく、
前記外周縁は、前記第2本体面の側に位置していてもよく、
前記引込縁は、前記外周縁から前記第1本体面に延びていてもよく、
前記引込縁は、前記空間部の側に向かって凹状に湾曲していてもよい。
【0026】
本開示の第19の態様は、上述した第17の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記断面視において、前記引込部は、前記外周縁から延びる引込縁を有していてもよく、
前記外周縁は、前記第2本体面の側に位置していてもよく、
前記引込縁は、前記外周縁から前記第1本体面に延びていてもよく、
前記引込縁は、前記厚さ方向に対して傾斜していてもよい。
【0027】
本開示の第20の態様は、上述した第17の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記断面視において、前記引込部は、前記外周縁から延びる引込縁を有していてもよく、
前記外周縁は、前記第2本体面の側に位置していてもよく、
前記引込縁は、前記外周縁から前記第1本体面に延びていてもよく、
前記引込縁は、前記空間部とは反対側に向かって凸状に湾曲していてもよい。
【0028】
本開示の第21の態様は、上述した第18の態様から上述した第20の態様のそれぞれによるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記引込縁は、前記第1本体面に近づくにつれて前記空間部に近づくように形成されていてもよい。
【0029】
本開示の第22の態様は、上述した第17の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記断面視において、前記引込部は、前記外周縁から延びる引込縁を有していてもよく、
前記外周縁は、前記第2本体面の側に位置していてもよく、
前記引込縁は、前記第1本体面から前記第2本体面の側に向かって延びる第1引込縁と、前記第2本体面から前記第1本体面の側に向かって延びる第2引込縁と、前記第1引込縁と前記第2引込縁とを接続する段差接続縁と、を含んでいてもよい。
【0030】
本開示の第23の態様は、上述した第18の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記引込縁は、前記外周縁から中継点を通って前記第1本体面に延びていてもよく、
前記引込縁は、前記外周縁から前記中継点に近づくにつれて前記空間部に近づくように形成されるとともに、前記中継点から前記第1本体面に近づくにつれて前記空間部から遠ざかるように形成されていてもよい。
【0031】
本開示の第24の態様は、上述した第17の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記引込部は、前記第1本体面の側に設けられた第1本体面側引込部と、前記第2本体面の側に設けられた第2本体面側引込部と、を含んでいてもよく、
前記外周縁は、前記第1本体面と前記第2本体面との間に位置していてもよい。
【0032】
本開示の第25の態様は、上述した第24の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記断面視において、前記第1本体面側引込部は、前記外周縁から前記第1本体面に延びる第1本体面側引込縁を有していてもよく、
前記第1本体面側引込縁は、前記第1本体面に近づくにつれて前記空間部に近づくように前記空間部の側に向かって凹状に湾曲していてもよく、
前記断面視において、前記第2本体面側引込部は、前記外周縁から前記第2本体面に延びる第2本体面側引込縁を有していてもよく、
前記第2本体面側引込縁は、前記第2本体面に近づくにつれて前記空間部に近づくように前記空間部の側に向かって凹状に湾曲していてもよい。
【0033】
本開示の第26の態様は、上述した第17の態様から上述した第25の態様のそれぞれによるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記平面視において、前記外周縁は、第1方向に延びる一対の第1側縁と、前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2側縁と、を有していてもよく、
前記引込部は、一対の前記第1側縁および一対の前記第2側縁からそれぞれ引き込まれていてもよい。
【0034】
本開示の第27の態様は、上述した第17の態様から上述した第25の態様のそれぞれによるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記平面視において、前記外周縁は、第1方向に延びる一対の第1側縁と、前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2側縁と、を有していてもよく、
前記引込部は、一対の前記第1側縁のうちの少なくとも一方から引き込まれていてもよい。
【0035】
本開示の第28の態様は、上述した第27の態様によるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記引込部は、一対の前記第1側縁のうちの一方から引き込まれるとともに、一対の前記第2側縁のうちの一方からも引き込まれていてもよい。
【0036】
本開示の第29の態様は、上述した第26の態様から上述した第28の態様のそれぞれによるベーパーチャンバ用の本体シートにおいて、
前記引込部は、前記第1側縁の一部から引き込まれていてもよい。
【0037】
本開示の第30の態様は、
上述した第17の態様から上述した第29の態様のいずれかによるベーパーチャンバ用の本体シートと、
前記第1本体面に積層されて前記空間部を覆う第1シートと、を備える、ベーパーチャンバである。
【0038】
本開示の第31の態様は、上述した第30の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第2本体面に積層された第2シートを備えていてもよく、
前記空間部は、前記第1本体面から前記第2本体面に貫通していてもよく、
前記第2シートは、前記第2本体面において前記空間部を覆っていてもよい。
【0039】
本開示の第32の態様は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスと熱的に接触した、上述した第29の態様または上述した第30の態様によるベーパーチャンバと、を備える、電子機器である。
【発明の効果】
【0040】
本開示によれば、ベーパーチャンバの搬送性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、第1の実施の形態による電子機器を説明する模式斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図3の下側シートの上面図である。
図5図5は、図3の上側シートの下面図である。
図6図6は、図3のウィックシートの上面図である。
図7図7は、図3の部分拡大断面図である。
図8図8は、図7に示す液流路部の部分拡大下面図である。
図9図9は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、材料シート準備工程を説明するための図である。
図10図10は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、エッチング工程を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、接合工程を説明するための図である。
図12図12は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法により製造されたベーパーチャンバが互いに積み重ねられて載置された状態を示す図である。
図13図13は、図12のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図であって、吊下げ装置の爪部を下側シート引込部に入り込ませた状態を示す図である。
図14図14は、図12のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図であって、ベーパーチャンバが吊下げ装置により吊り下げられた状態を示す図である。
図15図15は、一般的なベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図である。
図16図16は、図2の一変形例(第1変形例)である。
図17図17は、図16のB-B線断面図である。
図18図18は、図2の一変形例(第2変形例)である。
図19図19は、図2の一変形例(第3変形例)である。
図20図20は、図2の一変形例(第4変形例)である。
図21図21は、図3の一変形例(第5変形例)である。
図22図22は、図3の一変形例(第6変形例)である。
図23図23は、図3の一変形例(第7変形例)である。
図24図24は、図2の一変形例(第8変形例)である。
図25図25は、図24のC-C線断面図である。
図26図26は、図25のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図である。
図27図27は、図3の一変形例(第9変形例)である。
図28図28は、第2の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
図29図29は、図28のA’-A’線断面図である。
図30図30は、図29のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図である。
図31図31は、図29の一変形例(第5変形例)である。
図32図32は、図28の一変形例(第8変形例)である。
図33図33は、図32のC’-C’線断面図である。
図34図34は、図33のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図である。
図35図35は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
図36図36は、図35のAA-AA線断面図である。
図37図37は、図36の下側シートの上面図である。
図38図38は、図36の上側シートの下面図である。
図39図39は、図36のウィックシートの上面図である。
図40図40は、図36の部分拡大断面図である。
図41図41は、図40に示す液流路部の部分拡大下面図である。
図42図42は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、材料シート準備工程を説明するための図である。
図43図43は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、エッチング工程を説明するための図である。
図44図44は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法において、接合工程を説明するための図である。
図45図45は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバの製造方法により製造されたベーパーチャンバが互いに積み重ねられて載置された状態を示す図である。
図46図46は、図45のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図であって、吊下げ装置の爪部を引込部に係合させた状態を示す図である。
図47図47は、図45のベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図であって、ベーパーチャンバが吊下げ装置により吊り下げられた状態を示す図である。
図48図48は、一般的なベーパーチャンバの搬送方法を説明するための図である。
図49図49は、図36の一変形例(第1変形例)である。
図50図50は、図36の一変形例(第2変形例)である。
図51図51は、図36の一変形例(第3変形例)である。
図52図52は、図36の一変形例(第4変形例)である。
図53図53は、図36の一変形例(第5変形例)である。
図54図54は、図35の一変形例(第6変形例)である。
図55図55は、図54のBB-BB線断面図である。
図56図56は、図35の一変形例(第7変形例)である。
図57図57は、図35の一変形例(第8変形例)である。
図58図58は、図36の一変形例(第10変形例)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0043】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。更に、図面においては、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待することができる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに縛られることはなく、所望の接合性能を期待することができる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。そして、部材同士が接合することにより、境界線が喪失される場合もあり得る。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1図8を用いて、第1の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された発熱体としてのデバイスD(被冷却装置)を冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。電子機器Eの例としては、携帯端末やタブレット端末等のモバイル端末等が挙げられる。デバイスDの例としては、中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴う電子デバイスが挙げられる。
【0045】
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体2a、2bを介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
【0046】
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが封入された密封空間3を有している。密封空間3内の作動流体2a、2bが相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDが冷却される。作動流体2a、2bの例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等、およびそれらの混合液が挙げられる。
【0047】
図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側シート10(第1シート)と、上側シート20(第2シート)と、下側シート10と上側シート20との間に介在されたベーパーチャンバ用のウィックシート30(本体シート)と、を備えている。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1は、1つのウィックシート30を備えている。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20が、この順番で積層されて接合されている。
【0048】
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形状であってもよい。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよく、ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。本実施の形態では、一例として、ベーパーチャンバ1の平面形状が、X方向を長手方向とする矩形状である例について説明する。なお、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状など、任意の形状とすることができる。
【0049】
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが蒸発する蒸発領域SRと、作動流体2a、2bが凝縮する凝縮領域CRと、を有している。
【0050】
蒸発領域SRは、平面視でデバイスDと重なる領域であり、デバイスDが取り付けられる領域である。蒸発領域SRは、ベーパーチャンバ1の任意の場所に配置することができる。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1のX方向における一側(図2における左側)に、蒸発領域SRが形成されている。蒸発領域SRにデバイスDからの熱が伝わり、この熱によって作動流体の液体(適宜、作動液2bと記す)が蒸発領域SRにおいて蒸発する。デバイスDからの熱は、平面視でデバイスDに重なる領域だけではなく、当該領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SRは、平面視で、デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含む。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(下側シート10の後述する第1下側シート面10a)および受けた熱を放出する面(上側シート20の後述する第2上側シート面20b)に直交する方向から見た状態であって、例えば、図2に示すように、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態、または下方から見た状態に相当している。
【0051】
凝縮領域CRは、平面視でデバイスDと重ならない領域であって、主として作動流体の蒸気(適宜、作動蒸気2aと記す)が熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、蒸発領域SRの周囲の領域と言うこともできる。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1のX方向における他側(図2における右側)に、凝縮領域CRが形成されている。凝縮領域CRにおいて作動蒸気2aからの熱が上側シート20に放出され、作動蒸気2aが凝縮領域CRにおいて冷却されて凝縮する。
【0052】
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受けるシートを上述の下側シート10と称し、受けた熱を放出するシートを上述の上側シート20と称する。このため、下側シート10が下側に配置され、上側シート20が上側に配置された状態で、以下説明する。
【0053】
まず、下側シート10について説明する。
【0054】
図3に示すように、下側シート10は、ウィックシート30とは反対側に設けられた第1下側シート面10aと、第1下側シート面10aとは反対側(すなわちウィックシート30の側)に設けられた第2下側シート面10bと、を有している。下側シート10は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第1下側シート面10aに、上述のデバイスDが取り付けられる。
【0055】
図4に示すように、下側シート10の平面形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、下側シート10は、平面視において、X方向(第1方向)に延びる一対の長手方向側縁11a、11b(第1側縁)と、X方向に直交するY方向(第2方向)に延びる一対の短手方向側縁11c、11d(第2側縁)と、を有していてもよい。一対の長手方向側縁11a、11bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁11aは、Y方向における一側(図4における下側)に設けられ、長手方向側縁11bは、Y方向における他側(図4における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁11c、11dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁11cは、X方向における一側(図4における左側)に設けられ、短手方向側縁11dは、X方向における他側(図4における右側)に設けられている。後述するように、下側シート10は、平面視において、全体的にウィックシート30よりも小さく形成されている。このため、下側シート10の外周縁11o、すなわち一対の長手方向側縁11a、11bおよび一対の短手方向側縁11c、11dには、それぞれ後述する下側シート引込部15a、15b、15c、15d(第1引込部)が設けられている。
【0056】
図4に示すように、下側シート10は、矩形状の下側シート本体11と、下側シート本体11から外側に突出した下側シート注入突出部13と、を有していてもよい。図4に示す例においては、下側シート注入突出部13は、短手方向側縁11cに設けられており、短手方向側縁11cからX方向における一側(図4における左側)に突出している。
【0057】
また、図4に示すように、下側シート10の下側シート本体11の四隅に、アライメント孔12が設けられていてもよい。図4に示す例においては、アライメント孔12の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔12は、下側シート本体11を貫通していてもよい。
【0058】
次に、上側シート20について説明する。
【0059】
図3に示すように、上側シート20は、ウィックシート30の側に設けられた第1上側シート面20aと、第1上側シート面20aとは反対側に設けられた第2上側シート面20bと、を有している。上側シート20は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第2上側シート面20bに、モバイル端末等のハウジングHの一部を構成するハウジング部材Haが取り付けられる。第2上側シート面20bの全体が、ハウジング部材Haで覆われてもよい。
【0060】
図5に示すように、上側シート20の平面形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、上側シート20は、平面視において、X方向に延びる一対の長手方向側縁21a、21bと、Y方向に延びる一対の短手方向側縁21c、21dと、を有していてもよい。一対の長手方向側縁21a、21bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁21aは、Y方向における一側(図5における下側)に設けられ、長手方向側縁21bは、Y方向における他側(図5における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁21c、21dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁21cは、X方向における一側(図5における左側)に設けられ、短手方向側縁21dは、X方向における他側(図5における右側)に設けられている。後述するように、上側シート20は、平面視において、全体的にウィックシート30よりも小さく形成されている。このため、上側シート20の外周縁21o、すなわち一対の長手方向側縁21a、21bおよび一対の短手方向側縁21c、21dには、それぞれ後述する上側シート引込部25a、25b、25c、25d(第2引込部)が設けられている。
【0061】
図5に示すように、上側シート20は、矩形状の上側シート本体21と、上側シート本体21から外側に突出した上側シート注入突出部23と、を有していてもよい。図5に示す例においては、上側シート注入突出部23は、短手方向側縁21cに設けられており、短手方向側縁21cからX方向における一側(図5における左側)に突出している。
【0062】
また、図5に示すように、上側シート20の上側シート本体21の四隅に、アライメント孔22が設けられていてもよい。図5に示す例においては、アライメント孔22の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔12は、上側シート本体21を貫通していてもよい。
【0063】
次に、ウィックシート30について説明する。
【0064】
図3に示すように、ウィックシート30は、シート本体31と、シート本体31に設けられた蒸気流路部50(空間部)と、を備えている。シート本体31は、第1本体面31aと、第1本体面31aとは反対側に設けられた第2本体面31bと、を有している。第1本体面31aは、下側シート10の側に配置されており、第2本体面31bは、上側シート20の側に配置されている。
【0065】
下側シート10の第2下側シート面10bとシート本体31の第1本体面31aとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。同様に、上側シート20の第1上側シート面20aとシート本体31の第2本体面31bとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。熱圧着による接合の例としては、例えば、拡散接合を挙げることができる。しかしながら、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30は、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側シート10とウィックシート30との接合を維持できるとともに、上側シート20とウィックシート30との接合を維持できる程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
【0066】
図6に示すように、平面視において、ウィックシート30の外形形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、ウィックシート30は、平面視において、X方向に延びる一対の長手方向側縁32a、32bと、Y方向に延びる一対の短手方向側縁32c、32dと、を有していてもよい。一対の長手方向側縁32a、32bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁32aは、Y方向における一側(図6における下側)に設けられ、長手方向側縁32bは、Y方向における他側(図6における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁32c、32dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁32cは、X方向における一側(図6における左側)に設けられ、短手方向側縁32dは、X方向における他側(図6における右側)に設けられている。
【0067】
図6に示すように、ウィックシート30は、枠体部32から外側に突出したウィックシート注入突出部36を有していてもよい。図6に示す例においては、ウィックシート注入突出部36は、短手方向側縁32cに設けられており、短手方向側縁32cからX方向における一側(図6における左側)に突出している。
【0068】
また、図6に示すように、ウィックシート30のシート本体31の四隅に、アライメント孔35が設けられていてもよい。図6に示す例においては、アライメント孔35の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔35は、シート本体31を貫通していてもよい。
【0069】
本実施の形態によるウィックシート30のシート本体31は、図3および図6に示すように、平面視で矩形枠状に形成された枠体部32と、枠体部32内に設けられた複数のランド部33と、を有している。枠体部32およびランド部33は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。
【0070】
本実施の形態では、枠体部32は、平面視で、矩形枠状に形成されている。この枠体部32の内側に、蒸気流路部50(空間部)が設けられている。各ランド部33は、蒸気流路部50に設けられており、各ランド部33の周囲を作動蒸気2aが流れるようになっている。すなわち、蒸気流路部50は、上述した複数のランド部33と、各ランド部33の周囲に設けられた、作動蒸気2aが流れる通路である後述する蒸気通路51、52と、を含んでいる。
【0071】
本実施の形態では、ランド部33は、平面視で、X方向(図6における左右方向)を長手方向として細長状に延びていてもよく、ランド部33の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。また、各ランド部33は、X方向に直交するY方向(図6における上下方向)において等間隔に離間して、互いに平行に配置されていてもよい。ランド部33の幅w1(図7参照)は、例えば、100μm~1500μmであってもよい。ここで、ランド部33の幅w1は、Y方向におけるランド部33の寸法であって、Z方向において後述する貫通部34が存在する位置における寸法を意味している。ここで、Z方向は、図3および図7における上下方向に相当しており、ウィックシート30の厚さ方向に相当している。
【0072】
枠体部32および各ランド部33は、下側シート10に熱圧着により接合されるとともに、上側シート20に熱圧着により接合されている。後述する下側蒸気流路凹部53の壁面53aおよび上側蒸気流路凹部54の壁面54aは、ランド部33の側壁を構成している。シート本体31の第1本体面31aおよび第2本体面31bは、枠体部32および各ランド部33にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
【0073】
蒸気流路部50は、主として、作動蒸気2aが通る流路である。蒸気流路部50には、作動液2bも通ってもよい。図3および図7に示すように、蒸気流路部50は、第1本体面31aから第2本体面31bに貫通していてもよい。すなわち、ウィックシート30のシート本体31を貫通していてもよい。蒸気流路部50は、第1本体面31aにおいて下側シート10で覆われていてもよく、第2本体面31bにおいて上側シート20で覆われていてもよい。
【0074】
図6に示すように、本実施の形態における蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とを有している。第1蒸気通路51は、枠体部32とランド部33との間に形成されている。この第1蒸気通路51は、枠体部32の内側であってランド部33の外側に連続状に形成されている。第1蒸気通路51の平面形状は、矩形枠状になっている。第2蒸気通路52は、互いに隣り合うランド部33の間に形成されている。第2蒸気通路52の平面形状は、細長の矩形形状になっている。複数のランド部33によって、蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とに区画されている。
【0075】
図3に示すように、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、シート本体31の第1本体面31aから第2本体面31bに貫通している。すなわち、Z方向においてウィックシート30を貫通している。第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、第1本体面31aに設けられた下側蒸気流路凹部53と、第2本体面31bに設けられた上側蒸気流路凹部54とによってそれぞれ構成されている。下側蒸気流路凹部53と上側蒸気流路凹部54とが連通して、蒸気流路部50の第1蒸気通路51および第2蒸気通路52が、第1本体面31aから第2本体面31bにわたって延びるように形成されている。
【0076】
下側蒸気流路凹部53は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1本体面31aからエッチングされることによって、第1本体面31aに凹状に形成されている。このことにより、下側蒸気流路凹部53は、図7に示すように、湾曲状に形成された壁面53aを有している。この壁面53aは、下側蒸気流路凹部53を画定し、図7に示す断面において、第2本体面31bに向かって進むにつれて、対向する壁面53aに近づくように湾曲している。このような下側蒸気流路凹部53は、第1蒸気通路51の一部(下半分)および第2蒸気通路52の一部(下半分)を構成している。
【0077】
上側蒸気流路凹部54は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第2本体面31bからエッチングされることによって、第2本体面31bに凹状に形成されている。このことにより、上側蒸気流路凹部54は、図7に示すように、湾曲状に形成された壁面54aを有している。この壁面54aは、上側蒸気流路凹部54を画定し、図7に示す断面において、第1本体面31aに向かって進むにつれて、対向する壁面54aに近づくように湾曲している。このような上側蒸気流路凹部54は、第1蒸気通路51の一部(上半分)および第2蒸気通路52の一部(上半分)を構成している。
【0078】
図7に示すように、下側蒸気流路凹部53の壁面53aと、上側蒸気流路凹部54の壁面54aとが連接して貫通部34が形成されている。壁面53aと壁面54aはそれぞれ貫通部34に向かって湾曲している。このことにより、下側蒸気流路凹部53と上側蒸気流路凹部54とが互いに連通している。本実施の形態では、第1蒸気通路51における貫通部34の平面形状は、第1蒸気通路51と同様に矩形枠状になっており、第2蒸気通路52における貫通部34の平面形状は、第2蒸気通路52と同様に細長の矩形形状になっている。貫通部34は、下側蒸気流路凹部53の壁面53aと上側蒸気流路凹部54の壁面54aとが合流し、内側に張り出すように形成された稜線によって画定されていてもよい。この貫通部34において蒸気流路部50の平面面積が最小になっている。このような貫通部34の幅w2,w2’(図7参照)は、例えば、400μm~1600μmであってもよい。ここで、貫通部34の幅w2は、Y方向において互いに隣り合うランド部33の間のギャップに相当する。また、貫通部34の幅w2’は、Y方向(またはX方向)における枠体部32とランド部33との間のギャップに相当する。
【0079】
Z方向における貫通部34の位置は、第1本体面31aと第2本体面31bとの中間位置でもよく、中間位置から下側または上側にずれた位置でもよい。下側蒸気流路凹部53と上側蒸気流路凹部54とが連通すれば、貫通部34の位置は任意である。
【0080】
また、本実施の形態では、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52の断面形状が、内側に張り出すように形成された稜線によって画定された貫通部34を含むように形成されているが、これに限られることはない。例えば、第1蒸気通路51の断面形状および第2蒸気通路52の断面形状は、台形形状や矩形形状であってもよく、あるいは樽形の形状になっていてもよい。
【0081】
このように構成された第1蒸気通路51および第2蒸気通路52を含む蒸気流路部50は、上述した密封空間3の一部を構成している。各蒸気通路51、52は、作動蒸気2aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
【0082】
ここで、図3は、図面を明瞭にするために、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52などを拡大して示しており、これらの蒸気通路51、52などの個数や配置は、図2および図6とは異なっている。
【0083】
ところで、図示しないが、蒸気流路部50内に、ランド部33を枠体部32に支持する支持部が複数設けられていてもよい。また、互いに隣り合うランド部33同士を支持する支持部が設けられていてもよい。これらの支持部は、X方向においてランド部33の両側に設けられていてもよく、Y方向におけるランド部33の両側に設けられていてもよい。支持部は、蒸気流路部50を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていてもよい。例えば、ウィックシート30のシート本体31の第1本体面31aおよび第2本体面31bのうちの一方の側に配置されて、他方の側には、蒸気流路凹部をなす空間が形成されるようにしてもよい。このことにより、支持部の厚さをシート本体31の厚さよりも薄くすることができ、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52が、X方向およびY方向において分断されることを防止できる。
【0084】
図3図6および図7に示すように、ウィックシート30のシート本体31の第1本体面31aに、主として作動液2bが通る液流路部60(溝部)が設けられている。より具体的には、液流路部60は、ウィックシート30の各ランド部33の第1本体面31aに設けられている。液流路部60には、作動蒸気2aも通ってもよい。この液流路部60は、上述した密封空間3の一部を構成しており、蒸気流路部50に連通している。液流路部60は、作動液2bを蒸発領域SRに輸送するための毛細管構造(ウィック)として構成されている。液流路部60は、各ランド部33の第1本体面31aの全体にわたって形成されていてもよい。各ランド部33の第2本体面31bには、液流路部60は設けられていなくてもよい。
【0085】
図8に示すように、液流路部60は、第1本体面31aに設けられた複数の溝で構成されている。より具体的には、液流路部60は、作動液2bが通る複数の液流路主流溝61と、液流路主流溝61に連通する複数の液流路連絡溝65と、を有している。
【0086】
各液流路主流溝61は、図8に示すように、X方向に延びるように形成されている。液流路主流溝61は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部50の第1蒸気通路51または第2蒸気通路52よりも小さな流路断面積を有している。このことにより、液流路主流溝61は、作動蒸気2aから凝縮した作動液2bを蒸発領域SRに輸送するように構成されている。各液流路主流溝61は、Y方向において等間隔に離間して配置されていてもよい。
【0087】
液流路主流溝61は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30のシート本体31の第1本体面31aからエッチングされることによって形成されている。このことにより、液流路主流溝61は、図7に示すように、湾曲状に形成された壁面62を有している。この壁面62は、液流路主流溝61を画定し、第2本体面31bに向かって凹状に湾曲している。
【0088】
図7および図8に示す液流路主流溝61の幅w3(Y方向における寸法)は、例えば、5μm~150μmであってもよい。なお、液流路主流溝61の幅w3は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。また、図7に示す液流路主流溝61の深さh1(Z方向における寸法)は、例えば、3μm~150μmであってもよい。
【0089】
図8に示すように、各液流路連絡溝65は、X方向とは異なる方向に延びている。本実施の形態においては、各液流路連絡溝65は、Y方向に延びるように形成されており、液流路主流溝61に垂直に形成されている。いくつかの液流路連絡溝65は、互いに隣り合う液流路主流溝61同士を連通するように配置されている。他の液流路連絡溝65は、蒸気流路部50(第1蒸気通路51または第2蒸気通路52)と液流路主流溝61とを連通するように配置されている。すなわち、当該液流路連絡溝65は、Y方向におけるランド部33の端縁から当該端縁に隣り合う液流路主流溝61に延びている。このようにして、蒸気流路部50の第1蒸気通路51または第2蒸気通路52と液流路主流溝61とが連通している。
【0090】
液流路連絡溝65は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部50の第1蒸気通路51または第2蒸気通路52よりも小さな流路断面積を有している。各液流路連絡溝65は、X方向において等間隔に離間して配置されていてもよい。
【0091】
液流路連絡溝65も、液流路主流溝61と同様に、エッチングによって形成され、液流路主流溝61と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有している。図8に示す液流路連絡溝65の幅w4(X方向における寸法)は、液流路主流溝61の幅w3と等しくてもよいが、幅w3よりも大きくてもよく、あるいは小さくてもよい。液流路連絡溝65の深さは、液流路主流溝61の深さh1と等しくてもよいが、深さh1よりも深くてもよく、あるいは浅くてもよい。
【0092】
図8に示すように、液流路部60は、シート本体31の第1本体面31aに設けられた液流路凸部列63を有している。液流路凸部列63は、互いに隣り合う液流路主流溝61の間に設けられている。各液流路凸部列63は、X方向に配列された複数の液流路凸部64を含んでいる。液流路凸部64は、液流路部60内に設けられており、下側シート10の第2下側シート面10bに当接している。各液流路凸部64は、平面視で、X方向が長手方向となるように矩形状に形成されている。Y方向において互いに隣り合う液流路凸部64の間に、液流路主流溝61が介在され、X方向において互いに隣り合う液流路凸部64の間には、液流路連絡溝65が介在されている。液流路連絡溝65は、Y方向に延びるように形成され、Y方向において互いに隣り合う液流路主流溝61同士を連通している。このことにより、これらの液流路主流溝61の間で作動液2bが往来可能になっている。
【0093】
液流路凸部64は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。本実施の形態では、図8に示すように、液流路凸部64の平面形状(ウィックシート30のシート本体31の第1本体面31aの位置における形状)が、矩形状になっている。
【0094】
本実施の形態においては、液流路凸部64は、千鳥状に配置されている。より具体的には、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列63の液流路凸部64が、X方向において互いにずれて配置されている。このずれ量は、X方向における液流路凸部64の配列ピッチの半分であってもよい。図8に示す液流路凸部64の幅w5(Y方向における寸法)は、例えば、5μm~500μmであってもよい。なお、液流路凸部64の幅w5は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。なお、液流路凸部64の配置は、千鳥状であることに限られることはなく、並列配列されていてもよい。この場合、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列63の液流路凸部64が、X方向においても整列される。
【0095】
液流路主流溝61は、液流路連絡溝65と連通する液流路交差部66を含んでいる。液流路交差部66において、液流路主流溝61と液流路連絡溝65とがT字状に連通している。このことにより、一の液流路主流溝61と、一方の側(例えば、図8における上側)の液流路連絡溝65とが連通している液流路交差部66において、他方の側(例えば、図8における下側)の液流路連絡溝65が当該液流路主流溝61に連通することを回避できる。このことにより、当該液流路交差部66において、液流路主流溝61の壁面62が両側(図8における上側および下側)で切り欠かれることを防止し、壁面62の一方の側を残存させることができる。このため、液流路交差部66においても、液流路主流溝61内の作動液に毛細管作用を付与させることができ、蒸発領域SRに向かう作動液2bの推進力が液流路交差部66で低下することを抑制できる。
【0096】
また、図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、X方向における一側(図2における左側)の側縁に、密封空間3に作動液2bを注入する注入部4を更に備えていてもよい。図2に示す例においては、注入部4は、蒸発領域SRの側に配置されており、蒸発領域SRの側の側縁から外側に突出している。
【0097】
注入部4は、下側シート10の下側シート注入突出部13(図4参照)と、上側シート20の上側シート注入突出部23(図5参照)と、ウィックシート30のウィックシート注入突出部36(図6参照)と、が互いに重なり合って構成されている。図示された例においては、ウィックシート注入突出部36の下面(第1本体面31a)と下側シート注入突出部13の上面(第2下側シート面10b)とが重なり合っているとともに、ウィックシート注入突出部36の上面(第2本体面31b)と上側シート注入突出部23の下面(第1上側シート面20a)とが重なり合っている。このうちウィックシート注入突出部36に注入流路37が形成されていてもよい。この注入流路37は、シート本体31の第1本体面31aから第2本体面31bに貫通していてもよい。すなわち、Z方向においてシート本体31(ウィックシート注入突出部36)を貫通していてもよい。注入流路37は、第1蒸気通路51に連通しており、作動液2bは、注入流路37を通って第1蒸気通路51に注入されてもよい。なお、液流路部60の配置によっては、注入流路37は液流路部60に連通させるようにしてもよい。ウィックシート注入突出部36の上面および下面は、平坦状に形成されていてもよく、下側シート注入突出部13の上面および上側シート注入突出部23の下面も、平坦状に形成されていてもよい。各注入突出部13、23、36の平面形状は等しくてもよい。
【0098】
なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1のX方向における一対の側縁のうちの一側の側縁に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、任意の位置に設けることができる。また、ウィックシート注入突出部36に設けられた注入流路37は、作動液2bを注入できれば、シート本体31を貫通していなくてもよい。この場合、シート本体31の第1本体面31aおよび第2本体面31bのうちの一方からのみのエッチングで、蒸気流路部50に連通する注入流路37を形成することができる。また、注入部4は、ベーパーチャンバ1の製造時において、作動液2bの注入後、切断されて除去されてもよい。
【0099】
ところで、本実施の形態では、上述したように、下側シート10は、平面視において、全体的にウィックシート30よりも小さく形成されている。このため、図2図3および図7に示すように、下側シート10の外周縁11oが、ウィックシート30の外周縁32oよりも内側、すなわち蒸気流路部50の側に位置づけられている。これにより、下側シート10に、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれた下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられている。
【0100】
より具体的には、下側シート10の長手方向側縁11aがウィックシート30の長手方向側縁32aよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、下側シート10の長手方向側縁11aに下側シート引込部15aが形成されている。また、下側シート10の長手方向側縁11bがウィックシート30の長手方向側縁32bよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、下側シート10の長手方向側縁11bに下側シート引込部15bが形成されている。また、下側シート10の短手方向側縁11cがウィックシート30の短手方向側縁32cよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、下側シート10の短手方向側縁11cに下側シート引込部15cが形成されている。また、下側シート10の短手方向側縁11dがウィックシート30の短手方向側縁32dよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、下側シート10の短手方向側縁11dに下側シート引込部15dが形成されている。このように、下側シート引込部15a、15b、15c、15dが、下側シート10の外周縁11oのうち下側シート注入突出部13が設けられている部分を除いて全周に渡って形成されている。
【0101】
なお、上述したように、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状などの任意の形状であってもよい。この場合、下側シート引込部15a、15b、15c、15dは、下側シート10の外周縁11oの全周に渡って形成されていてもよいし、下側シート10の外周縁11oのうちの任意の位置に形成されていてもよい。
【0102】
図7に示すY方向における下側シート10の長手方向側縁11aとウィックシート30の長手方向側縁32aとの間の寸法w6は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。Y方向における下側シート10の長手方向側縁11bとウィックシート30の長手方向側縁32bとの間の寸法、X方向における下側シート10の短手方向側縁11cとウィックシート30の短手方向側縁32cとの間の寸法、およびX方向における下側シート10の短手方向側縁11dとウィックシート30の短手方向側縁32dとの間の寸法についても同様である。すなわち、各下側シート引込部15a、15b、15c、15dが、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。
【0103】
また、図7に示すY方向における下側シート10の長手方向側縁11aと蒸気流路部50(第1蒸気通路51)との間の寸法w7は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w7は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。Y方向における下側シート10の長手方向側縁11bと蒸気流路部50との間の寸法、X方向における下側シート10の短手方向側縁11cと蒸気流路部50との間の寸法、およびX方向における下側シート10の短手方向側縁11dと蒸気流路部50との間の寸法についても同様である。すなわち、各下側シート引込部15a、15b、15c、15dが、蒸気流路部50(第1蒸気通路51)から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、上述したように、上側シート20は、平面視において、全体的にウィックシート30よりも小さく形成されている。このため、図2図3および図7に示すように、上側シート20の外周縁21oが、ウィックシート30の外周縁32oよりも内側、すなわち蒸気流路部50の側に位置づけられている。これにより、上側シート20に、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれた上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている。なお、上側シート20は、平面視において、下側シート10と同じ大きさであってもよいが、下側シート10よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0105】
より具体的には、上側シート20の長手方向側縁21aがウィックシート30の長手方向側縁32aよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、上側シート20の長手方向側縁21aに上側シート引込部25aが形成されている。また、上側シート20の長手方向側縁21bがウィックシート30の長手方向側縁32bよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、上側シート20の長手方向側縁21bに上側シート引込部25bが形成されている。また、上側シート20の短手方向側縁21cがウィックシート30の短手方向側縁32cよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、上側シート20の短手方向側縁21cに上側シート引込部25cが形成されている。また、上側シート20の短手方向側縁21dがウィックシート30の短手方向側縁32dよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、上側シート20の短手方向側縁21dに上側シート引込部25dが形成されている。このように、上側シート引込部25a、25b、25c、25dが、上側シート20の外周縁21oのうち上側シート注入突出部23が設けられている部分を除いて全周に渡って形成されている。
【0106】
なお、上述したように、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状などの任意の形状であってもよい。この場合、上側シート引込部25a、25b、25c、25dは、上側シート20の外周縁21oの全周に渡って形成されていてもよいし、上側シート20の外周縁21oのうちの任意の位置に形成されていてもよい。
【0107】
図7に示すY方向における上側シート20の長手方向側縁21aとウィックシート30の長手方向側縁32aとの間の寸法w6’は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。Y方向における上側シート20の長手方向側縁21bとウィックシート30の長手方向側縁32bとの間の寸法、X方向における上側シート20の短手方向側縁21cとウィックシート30の短手方向側縁32cとの間の寸法、およびX方向における上側シート20の短手方向側縁21dとウィックシート30の短手方向側縁32dとの間の寸法についても同様である。すなわち、各上側シート引込部25a、25b、25c、25dが、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。なお、寸法w6’は、上述した寸法w6と等しくてもよいが、上述した寸法w6よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0108】
また、図7に示すY方向における上側シート20の長手方向側縁21aと蒸気流路部50(第1蒸気通路51)との間の寸法w7’は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w7’は、第2本体面31bにおける寸法を意味している。Y方向における上側シート20の長手方向側縁21bと蒸気流路部50との間の寸法、X方向における上側シート20の短手方向側縁21cと蒸気流路部50との間の寸法、およびX方向における上側シート20の短手方向側縁21dと蒸気流路部50との間の寸法についても同様である。すなわち、各上側シート引込部25a、25b、25c、25dが、蒸気流路部50(第1蒸気通路51)から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。なお、寸法w7’は、上述した寸法w7と等しくてもよいが、上述した寸法w7よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0109】
ところで、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30を構成する材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30は、例えば、銅または銅合金を含んでいてもよい。この場合、各シート10、20、30の熱伝導率を高めることができ、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。
【0110】
とりわけ、ウィックシート30は、下側シート10を構成する材料および上側シート20を構成する材料よりも強度が低い材料で構成されていてもよい。換言すると、下側シート10および上側シート20は、ウィックシート30を構成する材料よりも強度が高い材料で構成されていてもよい。ウィックシート30は、例えば、純銅(または無酸素銅、C1020等)や銅合金(例えば、リン青銅)で構成されていてもよい。下側シート10および上側シート20は、ウィックシート30が純銅で構成されている場合には、例えば、銅合金で構成されていてもよい。下側シート10と上側シート20とは同じ材料で構成されていてもよいが、異なる材料で構成されていてもよい。
【0111】
また、図3に示すベーパーチャンバ1の厚さt1は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。ベーパーチャンバ1の厚さt1を100μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ1として適切に機能させることができる。一方、ベーパーチャンバ1の厚さt1を1000μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制することができる。
【0112】
図3に示す下側シート10の厚さt2は、例えば、6μm~100μmであってもよい。下側シート10の厚さt2を6μm以上にすることにより、下側シート10の機械的強度を確保することができる。一方、下側シート10の厚さt2を100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制することができる。同様に、図3に示す上側シート20の厚さt3は、下側シート10の厚さt2と同様に設定されていてもよい。上側シート20の厚さt3と、下側シート10の厚さt2は、異なっていてもよい。
【0113】
図3に示すウィックシート30の厚さt4は、例えば、50μm~400μmであってもよい。ウィックシート30の厚さt4を50μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ1として適切に動作することができる。一方、ウィックシート30の厚さt4を400μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制することができる。
【0114】
次に、このような構成からなるベーパーチャンバ1の製造方法について、図9図12を用いて説明する。
【0115】
ここでは、初めに、各シート10、20、30を準備するシート準備工程について説明する。このシート準備工程は、下側シート10を準備する下側シート準備工程と、上側シート20を準備する上側シート準備工程と、ウィックシート30を準備するウィックシート準備工程と、を含んでいる。
【0116】
下側シート準備工程においては、まず、所望の厚さを有する下側シート母材を準備する。下側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、下側シート母材を、エッチングすることにより、所望の平面形状を有する下側シート10を形成する。あるいは、下側シート母材を、プレス加工することにより、所望の平面形状を有する下側シート10を形成するようにしてもよい。このようにして、図4に示すような外形輪郭形状を有する下側シート10を準備することができる。すなわち、上述した外周縁11oを有する下側シート10を得ることができる。
【0117】
上側シート準備工程においても、下側シート準備工程と同様に、まず、所望の厚さを有する上側シート母材を準備する。上側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、上側シート母材を、エッチングすることにより、所望の平面形状を有する上側シート20を形成する。あるいは、上側シート母材を、プレス加工することにより、所望の平面形状を有する上側シート20を形成するようにしてもよい。このようにして、図5に示すような外形輪郭形状を有する上側シート20を準備することができる。すなわち、上述した外周縁21oを有する上側シート20を得ることができる。
【0118】
ウィックシート準備工程は、金属材料シートMを準備する材料シート準備工程と、金属材料シートMをエッチングするエッチング工程と、を含んでいる。
【0119】
まず、材料シート準備工程において、図9に示すように、第1材料面Maと第2材料面Mbとを含む、平板状の金属材料シートMを準備する。金属材料シートMは、所望の厚さを有する圧延材で形成されていてもよい。
【0120】
次に、エッチング工程において、図10に示すように、金属材料シートMを、第1材料面Maおよび第2材料面Mbからエッチングして、蒸気流路部50および液流路部60を形成する。
【0121】
より具体的には、金属材料シートMの第1材料面Maおよび第2材料面Mbに、フォトリグラソフィー技術によって、パターン状のレジスト膜(図示せず)が形成される。続いて、パターン状のレジスト膜の開口を介して、金属材料シートMの第1材料面Maおよび第2材料面Mbがエッチングされる。このことにより、金属材料シートMの第1材料面Maおよび第2材料面Mbがパターン状にエッチングされて、図10に示すような蒸気流路部50および液流路部60が形成される。なお、エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
【0122】
エッチングは、金属材料シートMの第1材料面Maおよび第2材料面Mbを同時にエッチングしてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1材料面Maと第2材料面Mbのエッチングは別々の工程として行われてもよい。また、蒸気流路部50および液流路部60が同時にエッチングで形成されてもよく、別々の工程で形成されてもよい。
【0123】
また、エッチング工程においては、金属材料シートMの第1材料面Maおよび第2材料面Mbをエッチングすることにより、図6に示すような所定の外形輪郭形状を得ることができる。すなわち、上述した外周縁32oを有するウィックシート30を得ることができる。
【0124】
このようにして、本実施の形態による下側シート10、上側シート20およびウィックシート30が得られる。
【0125】
準備工程の後、接合工程として、図11に示すように、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30を接合する。
【0126】
より具体的には、まず、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20をこの順番で積層する。この場合、下側シート10の第2下側シート面10bにウィックシート30の第1本体面31aが重ね合わされ、ウィックシート30の第2本体面31bに、上側シート20の第1上側シート面20aが重ね合わされる。この際、下側シート10のアライメント孔12と、ウィックシート30のアライメント孔35と、上側シート20のアライメント孔22とを利用して、各シート10、20、30が位置合わせされてもよい。
【0127】
続いて、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20を仮止めする。例えば、スポット的に抵抗溶接を行って、これらのシート10、20、30が仮止めされてもよく、あるいはレーザ溶接でこれらのシート10、20、30が仮止めされてもよい。
【0128】
次に、下側シート10と、ウィックシート30と、上側シート20とを、熱圧着によって恒久的に接合する。例えば、拡散接合によって、これらのシート10、20、30が恒久的に接合されてもよい。拡散接合とは、接合する下側シート10とウィックシート30を密着させるとともにウィックシート30と上側シート20を密着させて、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、積層方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、各シート10、20、30の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各シート10、20、30が溶融して変形することを回避できる。これにより、ウィックシート30の枠体部32および各ランド部33における第1本体面31aが、下側シート10の第2下側シート面10bに拡散接合される。また、ウィックシート30の枠体部32および各ランド部33における第2本体面31bが、上側シート20の第1上側シート面20aに拡散接合される。このようにして、各シート10、20、30が拡散接合されて、下側シート10と上側シート20との間に、蒸気流路部50と液流路部60とを有する密封空間3が形成される。この段階では、密封空間3は、上述した注入流路37が封止されておらず、注入流路37を介して外部に連通している。
【0129】
接合工程の後、注入工程として、注入部4の注入流路37から密封空間3に作動液2bを注入する。
【0130】
注入工程の後、封止工程として、注入流路37を封止する。例えば、注入部4を部分的に溶融させて注入流路37を封止するようにしてもよい。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、密封空間3が密封される。このため、作動液2bが封入された密封空間3が得られ、密封空間3内の作動液2bが外部に漏洩することが防止される。注入流路37を封止した後、注入部4は、除去されてもよい。注入部4の全体が除去されてもよい。あるいは、注入部4の一部が除去されて、残りの一部が残存していてもよい。
【0131】
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
【0132】
このようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1を順次製造することができる。製造されたベーパーチャンバ1は、図12に示すように、所定の場所に設けられた載置面70上に積み重ねられるように載置されて保管することができる。その後、ベーパーチャンバ1は、出荷時やデバイスDへの装着時に、この載置場所から取り出されて搬送される。
【0133】
次に、このようにして製造されたベーパーチャンバ1の搬送方法について、図13および図14を用いて説明する。ここでは、図12に示すような、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置された状態からベーパーチャンバ1を取り出して搬送する方法について説明する。
【0134】
まず、図13に示すように、吊下げ装置80の第1アーム部81aおよび第2アーム部81bの爪部82a、82bを、下側シート10の下側シート引込部15a、15bにそれぞれ入り込ませる。
【0135】
より具体的には、まず、第1アーム部81aを垂直方向に移動させて、第1アーム部81aの先端に設けられた第1爪部82aを、最上部に載置されたベーパーチャンバ1の下側シート引込部15aのZ方向における位置と同じ位置に位置づける。また、第2アーム部81bを垂直方向に移動させて、第2アーム部81bの先端に設けられた第2爪部82bを、当該ベーパーチャンバ1の下側シート引込部15bのZ方向における位置と同じ位置に位置づける。続いて、第1アーム部81aを水平方向に移動させて、第1爪部82aを下側シート引込部15aに入り込こませる。同様に、第2アーム部81bを水平方向に移動させて、第2爪部82bを下側シート引込部15bに入り込こませる。これにより、第1爪部82aおよび第2爪部82bを、ウィックシート30の第1本体面31aにそれぞれ当接させることができる。
【0136】
次に、図14に示すように、吊下げ装置80によりベーパーチャンバ1を吊り下げる。
【0137】
より具体的には、第1爪部82aおよび第2爪部82bをウィックシート30の第1本体面31aに当接させた状態で、第1アーム部81aおよび第2アーム部81bをそれぞれ上方に移動させる。これにより、ウィックシート30の第1本体面31aが第1爪部82aおよび第2爪部82bに支持されて、ベーパーチャンバ1が吊下げ装置80により吊り下げられる。
【0138】
そして、吊下げ装置80によりベーパーチャンバ1を吊り下げた状態で、第1アーム部81aおよび第2アーム部81bを水平方向に移動させて、ベーパーチャンバ1を所望の目標位置まで搬送する。
【0139】
このようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1を吊下げ装置80により搬送することができる。
【0140】
なお、ここでは、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置された状態からベーパーチャンバ1を取り出して搬送する方法について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ベーパーチャンバ1が載置面70上に直接載置されている場合であっても、吊下げ装置80を用いてベーパーチャンバ1を搬送することができる。
【0141】
ここで、一般的なベーパーチャンバ1’の搬送方法について説明する。図15に示すように、一般的なベーパーチャンバ1’の側面は、垂直に形成されており、本実施の形態によるベーパーチャンバ1のように、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが形成されていない。このため、吊下げ装置80の爪部82a、82bを、下側シート引込部15a、15bに入り込ませることができず、一般的なベーパーチャンバ1’を、上述した吊下げ装置80で搬送することは困難である。
【0142】
一般的なベーパーチャンバ1’は、図15に示すように、吸着装置85により取り出されて搬送することができる。より具体的には、吸着装置85は、内部を負圧にして吸着力を生じさせる吸着パッド86を有しており、この吸着パッド86をベーパーチャンバ1’の上面に押し付けて、ベーパーチャンバ1’に吸着させる。その後、吸着パッド86によりベーパーチャンバ1’が吸着された状態で、吸着装置85を上方に移動させて、ベーパーチャンバ1’を吊り下げる。そして、吸着装置85を水平方向に移動させて、ベーパーチャンバ1’を所望の目標位置まで搬送する。
【0143】
このとき、ベーパーチャンバ1’が薄型化されていた場合、ベーパーチャンバ1’の上面に吸着パッド86による吸着力が働くことにより、ベーパーチャンバ1’が変形してしまうおそれがある。このため、ベーパーチャンバ1’の変形を抑制するために、ベーパーチャンバ1’の薄型化が抑制される場合がある。
【0144】
これに対して、本実施の形態では、ベーパーチャンバ1の下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ1の下側シート引込部15a、15b、15c、15dに、吊下げ装置80の爪部82a、82bを入り込ませることができる。このため、吊下げ装置80によりベーパーチャンバ1を吊り下げて搬送することができ、上述した吸着装置85を用いることを不要にすることができる。このため、ベーパーチャンバ1’の変形を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ1’の更なる薄型化を実現することができる。
【0145】
なお、上述した吊下げ装置80によるベーパーチャンバ1の搬送は一例であり、その他の任意の装置等を用いてベーパーチャンバ1を搬送することができる。例えば、尖った先端を有する工具を用いてベーパーチャンバ1を搬送してもよい。より具体的には、工具の先端を下側シート引込部15aに入り込ませ、その後、工具を上方に移動させて、ベーパーチャンバ1を持ち上げるようにしてもよい。そして、持ち上げたベーパーチャンバ1を手で掴んで搬送するようにしてもよい。また、例えば、そのような装置や工具を用いることなく、下側シート引込部15aに指を入り込ませてベーパーチャンバ1を持ち上げ、その後、ベーパーチャンバ1を手で掴んで搬送するようにしてもよい。このような場合であっても、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられていることにより、ベーパーチャンバ1を取り出して搬送することが容易となる。
【0146】
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
【0147】
上述のようにして搬送されたベーパーチャンバ1は、搬送先において、モバイル端末等のハウジングH内に設置され、ハウジング部材Haと上側シート20の第2上側シート面20bとが接する。また、下側シート10の第1下側シート面10aに、被冷却装置であるCPU等のデバイスDが取り付けられ(あるいは、デバイスDにベーパーチャンバ1が取り付けられ)、下側シート10の第1下側シート面10aとデバイスDとが接する。密封空間3内の作動液2bは、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部53の壁面53a、上側蒸気流路凹部54の壁面54a、液流路部60の液流路主流溝61の壁面62および液流路連絡溝65の壁面に付着する。また、作動液2bは、下側シート10の第2下側シート面10bのうち下側蒸気流路凹部53、液流路主流溝61および液流路連絡溝65に露出した部分にも付着し得る。更に、作動液2bは、上側シート20の第1上側シート面20aのうち上側蒸気流路凹部54に露出した部分にも付着し得る。
【0148】
この状態でデバイスDが発熱すると、蒸発領域SR(図6参照)に存在する作動液2bが、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2bが蒸発(気化)し、作動蒸気2aが生成される。生成された作動蒸気2aの多くは、密封空間3を構成する下側蒸気流路凹部53および上側蒸気流路凹部54内で拡散する(図6の実線矢印参照)。各蒸気流路凹部53、54内の作動蒸気2aは、蒸発領域SRから離れ、作動蒸気2aの多くは、比較的温度の低い凝縮領域CR(図6における右側の部分)に輸送される。凝縮領域CRにおいて、作動蒸気2aは、主として上側シート20に放熱して冷却される。上側シート20が作動蒸気2aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外気に伝達される。
【0149】
作動蒸気2aは、凝縮領域CRにおいて上側シート20に放熱することにより、蒸発領域SRにおいて吸収した潜熱を失って凝縮し、作動液2bが生成される。生成された作動液2bは、各蒸気流路凹部53、54の壁面53a、54aおよび下側シート10の第2下側シート面10bおよび上側シート20の第1上側シート面20aに付着する。ここで、蒸発領域SRでは作動液2bが蒸発し続けているため、液流路部60のうち蒸発領域SR以外の領域(すなわち、凝縮領域CR)における作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かって輸送される(図6の破線矢印参照)。このことにより、各壁面53a、54a、第2下側シート面10bおよび第1上側シート面20aに付着した作動液2bは、液流路部60に移動し、液流路連絡溝65を通過して液流路主流溝61に入り込む。このようにして、各液流路主流溝61および各液流路連絡溝65に、作動液2bが充填される。このため、充填された作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かう推進力を得て、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
【0150】
液流路部60においては、各液流路主流溝61が、対応する液流路連絡溝65を介して、隣り合う他の液流路主流溝61と連通している。このことにより、互いに隣り合う液流路主流溝61同士で、作動液2bが往来し、液流路主流溝61でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各液流路主流溝61内の作動液2bに毛細管作用が付与されて、作動液2bは、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
【0151】
蒸発領域SRに達した作動液2bは、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液2bから蒸発した作動蒸気2aは、蒸発領域SR内の液流路連絡溝65を通って、流路断面積が大きい下側蒸気流路凹部53および上側蒸気流路凹部54に移動し、各蒸気流路凹部53、54内で拡散する。このようにして、作動流体2a、2bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間3内を還流してデバイスDの熱を輸送して放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
【0152】
このように本実施の形態によれば、下側シート10に、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれた下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ1の下側シート引込部15a、15b、15c、15dに、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませることができる。このため、ベーパーチャンバ1を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1の搬送に吸着装置85を用いることを不要にすることができる。このため、ベーパーチャンバ1の変形を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の更なる薄型化を実現することができる。
【0154】
また、本実施の形態によれば、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられていることにより、ベーパーチャンバ1の製造時や使用時等に、下側シート10の端部が他の部品等に接触して当該部品を損傷させることを回避することができる。また、下側シート10の端部が他の部品等に接触することによって下側シート10がウィックシート30から剥離し、密封空間3内の作動液2bが漏洩することも回避することができる。このため、ベーパーチャンバ1の安全性を向上させることができる。
【0155】
また、本実施の形態によれば、下側シート引込部15a、15b、15c、15dは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bおよび一対の短手方向側縁11c、11dにそれぞれ設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ1の平面視における任意の方向から、下側シート引込部15a、15b、15c、15dのいずれかに吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませて、ベーパーチャンバ1を持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。
【0156】
また、本実施の形態によれば、下側シート引込部15a、15b、15c、15dは、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれている。このように下側シート引込部15a、15b、15c、15dが10μm以上引き込まれていることにより、吊下げ装置80の爪部82a、82b等でウィックシート30の第1本体面31aをしっかりと支持することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、下側シート引込部15a、15b、15c、15dが1000μm以下引き込まれていることにより、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0157】
また、本実施の形態によれば、下側シート引込部15a、15b、15c、15dは、平面視において、蒸気流路部50から30μm以上離れた位置に設けられている。このように蒸気流路部50と下側シート引込部15a、15b、15c、15dとの間の距離が30μm以上であることにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、第1本体面31aと第2下側シート面10bとをしっかりと接合することができる。このため、ベーパーチャンバ1の強度の低下を抑制することができる。
【0158】
また、本実施の形態によれば、蒸気流路部50が第1本体面31aから第2本体面31bに貫通しており、上側シート20が第2本体面31bにおいて蒸気流路部50を覆っている。このように、ベーパーチャンバ1を下側シート10と上側シート20とウィックシート30とで構成することにより、下側シート10がデバイスDから受けた熱を、上側シート20から放出することができる。これにより、デバイスDを効果的に冷却することができる。このため、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0159】
また、本実施の形態によれば、上側シート20に、平面視において、ウィックシート30の外周縁32oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれた上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている。このことにより、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置されている場合において、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート引込部15a、15bに入り込ませることを容易化することができる。すなわち、図13に示すように、各ベーパーチャンバ1に上側シート引込部25a、25bが設けられている場合、最上部に配置されたベーパーチャンバ1の下側シート引込部15a、15bとその下方に配置されたベーパーチャンバ1の上側シート引込部25a、25bとを合わせて、吊下げ装置80の爪部82a、82b等が入り込むためのより広いスペースを確保することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができ、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、これにより、例えば、下側シート10の厚さt2を、吊下げ装置80の爪部82a、82bの厚さ(Z方向における寸法)よりも薄くすることもできる。このため、ベーパーチャンバ1の更なる薄型化を実現することができる。
【0160】
また、本実施の形態によれば、上側シート20に上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられていることにより、ベーパーチャンバ1の製造時や使用時等に、上側シート20の端部が他の部品等に接触して当該部品を損傷させることを回避することができる。また、上側シート20の端部が他の部品等に接触することによって上側シート20がウィックシート30から剥離し、密封空間3内の作動液2bが漏洩することも回避することができる。このため、ベーパーチャンバ1の安全性を向上させることができる。
【0161】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート30は、下側シート10を構成する材料および上側シート20を構成する材料よりも強度が低い材料で構成されている。上述したように、本実施の形態においては、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられ、上側シート20に上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている。このことにより、ベーパーチャンバ1をモバイル端末等のハウジングH内に設置する際、不意にベーパーチャンバ1がハウジングHに接触したとしても、ハウジングHに比較的強度が高い下側シート10および上側シート20が接触することを回避することができる。すなわち、ハウジングHには、比較的強度が低いウィックシート30が接触するようになる。このため、ハウジングHの損傷を抑制することができるとともに、ハウジングHの損傷により異物がハウジングH内に脱落することを抑制することができる。また、ベーパーチャンバ1の損傷も抑制することができ、ベーパーチャンバ1の損傷により異物がハウジングH内に脱落することも抑制することができる。
【0162】
(第1の実施の形態の第1変形例)
上述した第1の実施の形態においては、下側シート引込部15a、15b、15c、15dが、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bおよび一対の短手方向側縁11c、11dにそれぞれ設けられている例について説明した(図2参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、下側シート引込部15a、15bは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bのうちの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0163】
図16および図17に示す例においては、下側シート10の長手方向側縁11a(図16における下側)に、下側シート引込部15aが設けられている。上側シート20も同様に、上側シート20の長手方向側縁21a(図16における下側)に、上側シート引込部25aが設けられている。
【0164】
このような場合であっても、下側シート引込部15aに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。また、下側シート引込部15aを設ける領域を制限することで、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0165】
(第1の実施の形態の第2変形例)
また、下側シート引込部15a、15b、15c、15dは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bのうちの一方に設けられるとともに、下側シート10の一対の短手方向側縁11c、11dのうちの一方にも設けられていてもよい。
【0166】
図18に示す例においては、下側シート10の長手方向側縁11a(図18における下側)に下側シート引込部15aが設けられるとともに、下側シート10の短手方向側縁11c(図18における左側)に下側シート引込部15cが設けられている。上側シート20も同様に、上側シート20の長手方向側縁21a(図18における下側)に上側シート引込部25aが設けられるとともに、上側シート20の短手方向側縁21c(図18における左側)に上側シート引込部25cが設けられている。
【0167】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15cに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。また、下側シート引込部15a、15cを設ける領域を制限することで、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0168】
更に、図18に示す例においては、ベーパーチャンバ1の下側シート引込部15a、15cが設けられた長手方向側縁11aおよび短手方向側縁11cの側を持ち上げて搬送し、ベーパーチャンバ1の下側シート引込部15a、15cが設けられていない長手方向側縁11bおよび短手方向側縁11dの側を所定の壁面に突き当てることができる。このことにより、ベーパーチャンバ1を壁面に対して位置決めすることが容易になる。このため、例えば、ベーパーチャンバ1の所定の位置にレーザ光を照射して製造情報等を印字する場合に、正確な位置に印字することが可能になる。また、ベーパーチャンバ1を壁面に突き当てた後も、ベーパーチャンバ1の長手方向側縁11aおよび短手方向側縁11cの側を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0169】
(第1の実施の形態の第3変形例)
また、下側シート引込部15a、15bは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bの両方にそれぞれ設けられていてもよい。更に、下側シート引込部15a、15bは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bの一部に設けられていてもよい。
【0170】
図19に示す例においては、下側シート引込部15a、15bは、下側シート10の一対の長手方向側縁11a、11bの両方にそれぞれ設けられるとともに、各下側シート引込部15a、15bは、長手方向側縁11a、11bの一部に設けられている。上側シート20も同様に、上側シート引込部25a、25bは、上側シート20の一対の長手方向側縁21a、21bの両方にそれぞれ設けられるとともに、各上側シート引込部25a、25bは、長手方向側縁21a、21bの一部に設けられている。各下側シート引込部15a、15bは、長手方向側縁11a、11bの中央部に設けられていてもよい。また、各上側シート引込部25a、25bも、長手方向側縁11a、11bの中央部に設けられていてもよい。
【0171】
この場合において、下側シート引込部15aおよび下側シート引込部15bは、平面視において、ベーパーチャンバ1の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置されていてもよい。また、上側シート引込部25aは、平面視において、下側シート引込部15aと重なる位置に配置され、上側シート引込部25bは、平面視において、下側シート引込部15bと重なる位置に配置されていてもよい。
【0172】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15bに吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。また、下側シート引込部15a、15bを設ける領域を更に制限することで、ベーパーチャンバ1の領域を更に有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能をより一層向上させることができる。
【0173】
また、下側シート引込部15aおよび下側シート引込部15bが、平面視において、ベーパーチャンバ1の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置されることで、吊下げ装置80等による吊り下げ時にベーパーチャンバ1の姿勢を安定化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。また、上側シート引込部25a、25bが、平面視において、下側シート引込部15a、15bと重なる位置に配置されることで、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置されている場合において、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート引込部15a、15bに入り込ませることを容易化することができる。
【0174】
(第1の実施の形態の第4変形例)
また、下側シート引込部15a、15bは、下側シート10の隅部に設けられていてもよい。
【0175】
図20に示す例においては、下側シート10の長手方向側縁11aおよび短手方向側縁11dの側の隅部(図20における右下側)に、下側シート引込部15aが設けられている。また、下側シート10の長手方向側縁11bおよび短手方向側縁11cの側の隅部(図20における左上側)に、下側シート引込部15bが設けられている。上側シート20も同様に、上側シート20の長手方向側縁21aおよび短手方向側縁21dの側の隅部(図20における右下側)に、上側シート引込部25aが設けられている。また、上側シート20の長手方向側縁21bおよび短手方向側縁21cの側の隅部(図20における左上側)に、上側シート引込部25bが設けられている。
【0176】
この場合において、下側シート引込部15aおよび下側シート引込部15bは、平面視において、ベーパーチャンバ1の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置されていてもよい。また、上側シート引込部25aは、平面視において、下側シート引込部15aと重なる位置に配置され、上側シート引込部25bは、平面視において、下側シート引込部15bと重なる位置に配置されていてもよい。
【0177】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15bに吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。また、下側シート引込部15a、15bを設ける領域を更に制限することで、ベーパーチャンバ1の領域を更に有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能をより一層向上させることができる。
【0178】
また、下側シート引込部15aおよび下側シート引込部15bが、平面視において、ベーパーチャンバ1の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置されることで、吊下げ装置80等による吊り下げ時にベーパーチャンバ1の姿勢を安定化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。また、上側シート引込部25a、25bが、平面視において、下側シート引込部15a、15bと重なる位置に配置されることで、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置されている場合において、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート引込部15a、15bに入り込ませることを容易化することができる。
【0179】
(第1の実施の形態の第5変形例)
また、上述した第1の実施の形態においては、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられているとともに、上側シート20に上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている例について説明した(図3参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられていなくてもよい。あるいは、上側シート20に上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられていなくてもよい。
【0180】
図21に示す例においては、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられている一方、上側シート20には上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられていない。
【0181】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15b、15c、15dに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0182】
また、上側シート20に上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている一方、下側シート10に下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられていなくてもよい。
【0183】
この場合、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された状態、すなわち、上側シート20の第2上側シート面20bが載置面70を向くように載置された状態で、上側シート引込部25a、25b、25c、25dに所定の装置や工具、指などを入り込ませることにより、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0184】
(第1の実施の形態の第6変形例)
また、上述した第1の実施の形態においては、下側シート引込部15a、15b、15c、15dと蒸気流路部50との間に、液流路部60が設けられていない例について説明した(図3参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、下側シート引込部15a、15b、15c、15dと蒸気流路部50との間に、液流路部60が設けられていてもよい。
【0185】
図22に示す例においては、下側シート引込部15a、15bと蒸気流路部50との間に液流路部60が設けられている。すなわち、下側シート10の長手方向側縁11aと第1蒸気通路51との間に液流路部60が設けられ、下側シート10の長手方向側縁11bと第1蒸気通路51との間に液流路部60が設けられている。
【0186】
この場合において、図22に示すY方向における下側シート10の長手方向側縁11aと液流路部60との間の寸法w8は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w8は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。Y方向における下側シート10の長手方向側縁11bと液流路部60との間の寸法についても同様である。すなわち、下側シート引込部15a、15bが、液流路部60から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。
【0187】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15b、15c、15dに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0188】
また、液流路部60と下側シート引込部15a、15b、15c、15dとの間の距離が30μm以上であることにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、第1本体面31aと第2下側シート面10bとをしっかりと接合することができる。このため、ベーパーチャンバ1の強度の低下を抑制することができる。
【0189】
(第1の実施の形態の第7変形例)
また、上述した第1の実施の形態においては、ベーパーチャンバ1が、1つのウィックシート30を備えている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ベーパーチャンバ1は、複数のウィックシート30を備えていてもよい。
【0190】
図23に示す例においては、ベーパーチャンバ1は、3つのウィックシート30を備えている。各ウィックシート30は、下側シート10と上側シート20との間に設けられている。各ウィックシート30は、平面視において、全体的に下側シート10および上側シート20よりも大きく形成されている。換言すると、下側シート10および上側シート20は、平面視において、全体的に各ウィックシート30よりも小さく形成されている。このため、下側シート10に、下側シート引込部15a、15b、15c、15dが設けられている。また、上側シート20に、上側シート引込部25a、25b、25c、25dが設けられている。
【0191】
このような場合であっても、下側シート引込部15aに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0192】
なお、図23に示す例においては、各ウィックシート30は、互いに同じ形状および寸法を有しているが、このことに限られることはなく、各ウィックシート30は、互いに異なる形状および寸法を有していてもよい。例えば、図示しないが、一のウィックシート30が、平面視において、全体的に他のウィックシート30よりも小さく形成されていてもよい。また、当該一のウィックシート30は、平面視において、全体的に下側シート10および上側シート20よりも小さく形成されていてもよい。
【0193】
また、図23に示す例においては、ベーパーチャンバ1は、3つのウィックシート30を備えているが、このことに限られることはなく、ウィックシート30の個数は任意である。ベーパーチャンバ1は、2つのウィックシート30を備えていてもよいし、4つ以上のウィックシート30を備えていてもよい。
【0194】
(第1の実施の形態の第8変形例)
また、ベーパーチャンバ1は、貫通穴90を有していてもよい。
【0195】
図24および図25に示す例においては、ベーパーチャンバ1は、下側シート10、ウィックシート30、および上側シート20を貫通した貫通穴90を有している。
【0196】
貫通穴90は、第1下側シート面10aから第2下側シート面10bに貫通した下側シート貫通部91と、第1本体面31aから第2本体面31bに貫通したウィックシート貫通部92と、第1上側シート面20aから第2上側シート面20bに貫通した上側シート貫通部93と、を有している。すなわち、下側シート貫通部91は、下側シート10を貫通し、ウィックシート貫通部92は、ウィックシート30を貫通し、上側シート貫通部93は、上側シート20を貫通している。ウィックシート貫通部92の周囲には壁部94が形成されており、蒸気流路部50および液流路部60は、貫通穴90と連通しないようになっている。なお、図24に示す例においては、ベーパーチャンバ1のX方向における中央部に蒸発領域SRが設けられ、ベーパーチャンバ1のX方向における一側および他側(図24における左側および右側)に凝縮領域CRが設けられている。
【0197】
下側シート貫通部91は、上述した下側シート準備工程において、下側シート母材をエッチングすることにより形成してもよい。あるいは、下側シート母材をプレス加工することにより形成してもよい。上側シート貫通部93は、上述した上側シート準備工程において、上側シート母材をエッチングすることにより形成してもよい。あるいは、上側シート母材をプレス加工することにより形成してもよい。ウィックシート貫通部92は、上述したウィックシート準備工程のエッチング工程において、金属材料シートMをエッチングすることにより形成してもよい。なお、図25では、ウィックシート貫通部92の断面形状が矩形形状になっているが、上述した第1蒸気通路51および第2蒸気通路52のように、第1本体面31aに凹状に形成された下側凹部と第2本体面31bに凹状に形成された上側凹部とが連通して形成された形状を有していてもよい。下側シート貫通部91および上側シート貫通部93についても同様である。
【0198】
図24および図25に示す例においては、平面視において、下側シート10の下側シート貫通部91を画定する内周縁10iは、ウィックシート30のウィックシート貫通部92を画定する内周縁31iよりも外側、すなわち貫通穴90とは反対側に位置づけられている。これにより、下側シート10に、平面視において、ウィックシート30の貫通穴90を画定する内周縁31iよりも貫通穴90とは反対側に引き込まれた下側シート引込部15iが設けられている。
【0199】
図25に示すY方向における下側シート10の内周縁10iとウィックシート30の内周縁31iとの間の寸法w9は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。すなわち、下側シート引込部15iが、平面視において、ウィックシート30の内周縁31iから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。
【0200】
また、図25に示すY方向における下側シート10の内周縁10iと液流路部60との間の寸法w10は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w10は、第1本体面31aにおける寸法を意味している。すなわち、下側シート引込部15iが、液流路部60から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。なお、下側シート10の内周縁10iと液流路部60との間に蒸気流路部50が設けられている場合は、Y方向における下側シート10の内周縁10iと蒸気流路部50との間の寸法が、30μm~3000μmであってもよい。
【0201】
また、図24および図25に示す例においては、平面視において、上側シート20の上側シート貫通部93を画定する内周縁20iは、ウィックシート30のウィックシート貫通部92を画定する内周縁31iよりも外側、すなわち貫通穴90とは反対側に位置づけられている。これにより、上側シート20に、平面視において、ウィックシート30の貫通穴90を画定する内周縁31iよりも貫通穴90とは反対側に引き込まれた上側シート引込部25iが設けられている。
【0202】
図25に示すY方向における上側シート20の内周縁20iとウィックシート30の内周縁31iとの間の寸法w9’は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。すなわち、上側シート引込部25iが、平面視において、ウィックシート30の内周縁31iから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。なお、寸法w9’は、上述した寸法w9と等しくてもよいが、上述した寸法w9よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0203】
このような場合であっても、図26に示すように、吊下げ装置80の第1アーム部81aおよび第2アーム部81b等を下側シート10の下側シート引込部15iに入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0204】
また、下側シート引込部15iが10μm以上引き込まれていることにより、吊下げ装置80の爪部82a、82b等でウィックシート30の第1本体面31aをしっかりと支持することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、下側シート引込部15iが1000μm以下引き込まれていることにより、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0205】
また、蒸気流路部50と下側シート引込部15iとの間の距離が30μm以上であることにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、第1本体面31aと第2下側シート面10bとをしっかりと接合することができる。このため、ベーパーチャンバ1の強度の低下を抑制することができる。
【0206】
また、ベーパーチャンバ1を下側シート10と上側シート20とウィックシート30とで構成することにより、下側シート10がデバイスDから受けた熱を、上側シート20から放出することができる。これにより、デバイスDを効果的に冷却することができる。このため、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0207】
また、上側シート20に、平面視において、ウィックシート30の内周縁31iよりも貫通穴90とは反対側に引き込まれた上側シート引込部25iが設けられている。このことにより、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置されている場合において、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート引込部15iに入り込ませることを容易化することができる。すなわち、図26に示すように、各ベーパーチャンバ1に上側シート引込部25iが設けられている場合、最上部に配置されたベーパーチャンバ1の下側シート引込部15iとその下方に配置されたベーパーチャンバ1の上側シート引込部25iとを合わせて、吊下げ装置80の爪部82a、82b等が入り込むためのより広いスペースを確保することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができ、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、これにより、例えば、下側シート10の厚さt2を、吊下げ装置80の爪部82a、82bの厚さ(Z方向における寸法)よりも薄くすることもできる。このため、ベーパーチャンバ1の更なる薄型化を実現することができる。
【0208】
(第1の実施の形態の第9変形例)
また、上述した第1の実施の形態においては、ベーパーチャンバ1が、下側シート10と、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることになく、ベーパーチャンバ1が、下側シート10(第1シート)と、ウィックシート30(本体シート)とで構成されていてもよい。
【0209】
図27に示す例においては、ベーパーチャンバ1は、下側シート10と、ウィックシート30と、を備えているが、上側シート20を備えていない。ハウジング部材Haは、ウィックシート30の第2本体面31bに取り付けられてもよい。作動蒸気2aの熱は、ウィックシート30からハウジング部材Haに伝わる。
【0210】
図27に示す例においては、蒸気流路部50は、第1本体面31aに設けられているが、第2本体面31bまで延びておらず、ウィックシート30を貫通していない。すなわち、蒸気流路部50の第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、下側蒸気流路凹部53で構成されており、ウィックシート30に上側蒸気流路凹部54は設けられていない。
【0211】
図27に示すベーパーチャンバ1の厚さt5は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。図27に示す下側シート10の厚さt6は、例えば、6μm~200μmであってもよい。図27に示すウィックシート30の厚さt7は、例えば、50μm~800μmであってもよい。
【0212】
なお、図27に示す例に限られることはなく、下側シート10の第2下側シート面10bに、蒸気流路部50が設けられていてもよい。この場合、下側シート10の蒸気流路部50は、ウィックシート30の蒸気流路部50と対向する位置に設けられていてもよい。また、下側シート10の第2下側シート面10bに、液流路部60が設けられていてもよい。
【0213】
このように、ベーパーチャンバ1が、下側シート10と、ウィックシート30とで構成されていてもよい。
【0214】
このような場合であっても、下側シート引込部15a、15bに吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0215】
(第2の実施の形態)
次に、図28図30を用いて、第2の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0216】
図28図30に示す第2の実施の形態においては、本体シートに、平面視において、第1シートの外周縁よりも空間部の側に引き込まれた本体シート引込部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1図14に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図28図30において、図1図14に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0217】
本実施の形態においては、図28および図29に示すように、ウィックシート30(本体シート)は、平面視において、全体的に下側シート10(第2シート)および上側シート20(第1シート)よりも小さく形成されている。このため、ウィックシート30の外周縁32oが、下側シート10の外周縁11oおよび上側シート20の外周縁21oよりも内側、すなわち蒸気流路部50の側に位置づけられている。これにより、ウィックシート30に、平面視において、下側シート10の外周縁11oおよび上側シート20の外周縁21oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれたウィックシート引込部38a、38b、38c、38d(本体シート引込部)が設けられている。
【0218】
より具体的には、ウィックシート30の長手方向側縁32aが下側シート10の長手方向側縁11aおよび上側シート20の長手方向側縁21aよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、ウィックシート30の長手方向側縁32aにウィックシート引込部38aが形成されている。また、ウィックシート30の長手方向側縁32bが下側シート10の長手方向側縁11bおよび上側シート20の長手方向側縁21bよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、ウィックシート30の長手方向側縁32bにウィックシート引込部38bが形成されている。また、ウィックシート30の短手方向側縁32cが下側シート10の短手方向側縁11cおよび上側シート20の短手方向側縁21cよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、ウィックシート30の短手方向側縁32cにウィックシート引込部38cが形成されている。また、ウィックシート30の短手方向側縁32dが下側シート10の短手方向側縁11dおよび上側シート20の短手方向側縁21dよりも蒸気流路部50の側に位置づけられて、ウィックシート30の短手方向側縁32dにウィックシート引込部38dが形成されている。このように、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、ウィックシート30の外周縁32oのうちウィックシート注入突出部36が設けられている部分を除いて全周に渡って形成されている。
【0219】
図29に示すY方向における下側シート10の長手方向側縁11aとウィックシート30の長手方向側縁32aとの間の寸法w11は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。Y方向における下側シート10の長手方向側縁11bとウィックシート30の長手方向側縁32bとの間の寸法、X方向における下側シート10の短手方向側縁11cとウィックシート30の短手方向側縁32cとの間の寸法、およびX方向における下側シート10の短手方向側縁11dとウィックシート30の短手方向側縁32dとの間の寸法についても同様である。すなわち、各ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、平面視において、下側シート10の外周縁11oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。
【0220】
図29に示すY方向における上側シート20の長手方向側縁21aとウィックシート30の長手方向側縁32aとの間の寸法w11’は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。Y方向における上側シート20の長手方向側縁21bとウィックシート30の長手方向側縁32bとの間の寸法、X方向における上側シート20の短手方向側縁21cとウィックシート30の短手方向側縁32cとの間の寸法、およびX方向における上側シート20の短手方向側縁21dとウィックシート30の短手方向側縁32dとの間の寸法についても同様である。すなわち、各ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、平面視において、上側シート20の外周縁21oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。なお、寸法w11’は、上述した寸法w11と等しくてもよいが、上述した寸法w11よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0221】
また、図29に示すY方向におけるウィックシート30の長手方向側縁32aと蒸気流路部50(第1蒸気通路51)との間の寸法w12は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w12は、第1本体面31aあるいは第2本体面31bにおける寸法を意味している。Y方向におけるウィックシート30の長手方向側縁32bと蒸気流路部50との間の寸法、X方向におけるウィックシート30の短手方向側縁32cと蒸気流路部50との間の寸法、およびX方向におけるウィックシート30の短手方向側縁32dと蒸気流路部50との間の寸法についても同様である。すなわち、各ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、蒸気流路部50(第1蒸気通路51)から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。
【0222】
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1の搬送方法について、図30を用いて説明する。ここでは、ベーパーチャンバ1が互いに積み重ねられて載置された状態からベーパーチャンバ1を取り出して搬送する方法について説明する。
【0223】
まず、図30に示すように、吊下げ装置80の第1アーム部81aおよび第2アーム部81bの爪部82a、82bを、ウィックシート30のウィックシート引込部38a、38bにそれぞれ入り込ませて、第1爪部82aおよび第2爪部82bを、上側シート20の第1上側シート面20aにそれぞれ当接させる。
【0224】
次に、第1爪部82aおよび第2爪部82bを上側シート20の第1上側シート面20aに当接させた状態で、第1アーム部81aおよび第2アーム部81bをそれぞれ上方に移動させる。これにより、上側シート20の第1上側シート面20aが第1爪部82aおよび第2爪部82bに支持されて、ベーパーチャンバ1が吊下げ装置80により吊り下げられる。
【0225】
そして、吊下げ装置80によりベーパーチャンバ1を吊り下げた状態で、第1アーム部81aおよび第2アーム部81bを水平方向に移動させて、ベーパーチャンバ1を所望の目標位置まで搬送する。
【0226】
このようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1を吊下げ装置80により搬送することができる。
【0227】
なお、第1の実施の形態と同様に、上述した吊下げ装置80によるベーパーチャンバ1の搬送は一例であり、その他の任意の装置等を用いてベーパーチャンバ1を搬送することができる。
【0228】
このように本実施の形態によれば、ウィックシート30に、平面視において、上側シート20の外周縁21oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれたウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ1のウィックシート引込部38a、38b、38c、38dに、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませることができる。このため、ベーパーチャンバ1を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0229】
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1の搬送に吸着装置85を用いることを不要にすることができる。このため、ベーパーチャンバ1の変形を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の更なる薄型化を実現することができる。
【0230】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート30が、平面視において、全体的に下側シート10および上側シート20よりも小さく形成されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20の厳密な位置合わせを不要にすることができる。すなわち、下側シート10および上側シート20が、ウィックシート30に対してずれて配置された場合であっても、下側シート10および上側シート20により、ウィックシート30に設けられた蒸気流路部50を覆うことができる。このため、ベーパーチャンバ1の製造を容易化することができる。
【0231】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bおよび一対の短手方向側縁32c、32dにそれぞれ設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ1の平面視における任意の方向から、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dのいずれかに吊下げ装置80の爪部82a、82b等を入り込ませて、ベーパーチャンバ1を持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。
【0232】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、平面視において、上側シート20の外周縁21oから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれている。このようにウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが10μm以上引き込まれていることにより、吊下げ装置80の爪部82a、82b等で上側シート20の第1上側シート面20aをしっかりと支持することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが1000μm以下引き込まれていることにより、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0233】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、平面視において、蒸気流路部50から30μm以上離れた位置に設けられている。このように蒸気流路部50とウィックシート引込部38a、38b、38c、38dとの間の距離が30μm以上であることにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、第2本体面31bと第1上側シート面20aとをしっかりと接合することができる。このため、ベーパーチャンバ1の強度の低下を抑制することができる。
【0234】
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1を下側シート10と上側シート20とウィックシート30とで構成することにより、下側シート10がデバイスDから受けた熱を、上側シート20から放出することができる。これにより、デバイスDを効果的に冷却することができる。このため、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0235】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、平面視において、下側シート10の外周縁11oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれている。このことにより、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された場合であっても、すなわち、上側シート20の第2上側シート面20bが載置面70を向くように載置された場合であっても、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート10の第2下側シート面10bに当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ1を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された場合であっても、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。
【0236】
また、本実施の形態によれば、下側シート10および上側シート20は、ウィックシート30を構成する材料よりも強度が高い材料で構成されている。このことにより、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を上側シート20の第1上側シート面20aや下側シート10の第2下側シート面10bに当接させてベーパーチャンバ1を吊り下げた際に、下側シート10および上側シート20が変形することを抑制することができる。
【0237】
(第2の実施の形態の第1変形例)
上述した第2の実施の形態においては、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bおよび一対の短手方向側縁32c、32dにそれぞれ設けられている例について説明した(図28参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、上述した第1の実施の形態の第1変形例と同様に、ウィックシート引込部38a、38bは、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bのうちの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0238】
(第2の実施の形態の第2変形例)
また、上述した第1の実施の形態の第2変形例と同様に、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bのうちの一方に設けられるとともに、ウィックシート30の一対の短手方向側縁32c、32dのうちの一方にも設けられていてもよい。
【0239】
(第2の実施の形態の第3変形例)
また、上述した第1の実施の形態の第3変形例と同様に、ウィックシート引込部38a、38bは、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bの両方にそれぞれ設けられていてもよい。更に、ウィックシート引込部38a、38bは、ウィックシート30の一対の長手方向側縁32a、32bの一部に設けられていてもよい。
【0240】
(第2の実施の形態の第4変形例)
また、上述した第1の実施の形態の第4変形例と同様に、ウィックシート引込部38a、38bは、ウィックシート30の隅部に設けられていてもよい。
【0241】
(第2の実施の形態の第5変形例)
また、上述した第2の実施の形態においては、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが、平面視において、下側シート10の外周縁11oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれるとともに、上側シート20の外周縁21oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれている例について説明した(図29参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、平面視において、下側シート10の外周縁11oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれていなくてもよい。あるいは、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dは、平面視において、上側シート20の外周縁21oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれていなくてもよい。
【0242】
図31に示す例においては、ウィックシート30が、平面視において、全体的に上側シート20よりも小さく形成されている一方、下側シート10と同じ大きさに形成されている。すなわち、ウィックシート30および下側シート10が、平面視において、全体的に上側シート20よりも小さく形成されている。これにより、ウィックシート30に、平面視において、上側シート20の外周縁21oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれたウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが設けられている。
【0243】
このような場合であっても、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dに所定の装置や工具、指などを入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0244】
また、ウィックシート30が、平面視において、全体的に下側シート10よりも小さく形成されている一方、上側シート20と同じ大きさに形成されていてもよい。すなわち、ウィックシート30および上側シート20が、平面視において、全体的に下側シート10よりも小さく形成されていてもよい。これにより、ウィックシート30に、平面視において、下側シート10の外周縁11oよりも蒸気流路部50の側に引き込まれたウィックシート引込部38a、38b、38c、38dが設けられていてもよい。
【0245】
この場合、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された状態、すなわち、上側シート20の第2上側シート面20bが載置面70を向くように載置された状態で、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dに所定の装置や工具、指などを入り込ませることにより、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0246】
(第2の実施の形態の第6変形例)
また、上述した第2の実施の形態においては、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dと蒸気流路部50との間に、液流路部60が設けられていない例について説明した(図29参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、上述した第1の実施の形態の第6変形例と同様に、ウィックシート引込部38a、38b、38c、38dと蒸気流路部50との間に、液流路部60が設けられていてもよい。
【0247】
(第2の実施の形態の第7変形例)
また、上述した第2の実施の形態においては、ベーパーチャンバ1が、1つのウィックシート30を備えている例について説明した(図29参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、上述した第1の実施の形態の第7変形例と同様に、ベーパーチャンバ1は、複数のウィックシート30を備えていてもよい。
【0248】
(第2の実施の形態の第8変形例)
また、上述した第1の実施の形態の第8変形例と同様に、ベーパーチャンバ1は、貫通穴90を有していてもよい。
【0249】
図32および図33に示す例においては、平面視において、ウィックシート30のウィックシート貫通部92を画定する内周縁31iは、下側シート10の下側シート貫通部91を画定する内周縁10iおよび上側シート20の上側シート貫通部93を画定する内周縁20iよりも外側、すなわち貫通穴90とは反対側に位置づけられている。これにより、ウィックシート30に、平面視において、下側シート10の貫通穴90を画定する内周縁10iおよび上側シート20の貫通穴90を画定する内周縁20iよりも貫通穴90とは反対側に引き込まれたウィックシート引込部38iが設けられている。
【0250】
図33に示すY方向における下側シート10の内周縁10iとウィックシート30の内周縁31iとの間の寸法w13は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。すなわち、ウィックシート引込部38iが、平面視において、下側シート10の内周縁10iから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。
【0251】
図33に示すY方向における上側シート20の内周縁20iとウィックシート30の内周縁31iとの間の寸法w13’は、例えば、10μm~1000μmであってもよい。すなわち、ウィックシート引込部38iが、平面視において、上側シート20の内周縁20iから10μm以上1000μm以下離れた位置まで引き込まれていてもよい。なお、寸法w13’は、上述した寸法w13と等しくてもよいが、上述した寸法w13よりも大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい。
【0252】
また、図33に示すY方向におけるウィックシート30の内周縁31iと液流路部60との間の寸法w14は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法w14は、第1本体面31aあるいは第2本体面31bにおける寸法を意味している。すなわち、ウィックシート引込部38iが、液流路部60から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。なお、ウィックシート30の内周縁31iと液流路部60との間に蒸気流路部50が設けられている場合は、Y方向におけるウィックシート30の内周縁31iと蒸気流路部50との間の寸法が、30μm~3000μmであってもよい。
【0253】
このような場合であっても、図34に示すように、吊下げ装置80の第1アーム部81aおよび第2アーム部81b等をウィックシート引込部38iに入り込ませることができ、ベーパーチャンバ1の持ち上げを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ1の搬送性を向上させることができる。
【0254】
また、ウィックシート引込部38iが10μm以上引き込まれていることにより、吊下げ装置80の爪部82a、82b等で上側シート20の第1上側シート面20aをしっかりと支持することができる。このため、ベーパーチャンバ1の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。また、ウィックシート引込部38iが1000μm以下引き込まれていることにより、ベーパーチャンバ1の領域を有効に活用することができる。すなわち、ベーパーチャンバ1のより広範な領域に蒸気流路部50および液流路部60を設けることができ、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0255】
また、蒸気流路部50とウィックシート引込部38iとの間の距離が30μm以上であることにより、ベーパーチャンバ1の製造時の接合工程において、第1本体面31aと第1上側シート面20aとをしっかりと接合することができる。このため、ベーパーチャンバ1の強度の低下を抑制することができる。
【0256】
また、ベーパーチャンバ1を下側シート10と上側シート20とウィックシート30とで構成することにより、下側シート10がデバイスDから受けた熱を、上側シート20から放出することができる。これにより、デバイスDを効果的に冷却することができる。このため、ベーパーチャンバ1の性能を向上させることができる。
【0257】
また、ウィックシート引込部38iは、平面視において、下側シート10の内周縁10iよりも蒸気流路部50の側に引き込まれている。このことにより、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された場合であっても、すなわち、上側シート20の第2上側シート面20bが載置面70を向くように載置された場合であっても、吊下げ装置80の爪部82a、82b等を下側シート10の第2下側シート面10bに当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ1を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ1が反対向きに載置された場合であっても、ベーパーチャンバ1の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の搬送性をより一層向上させることができる。
【0258】
(第2の実施の形態の第9変形例)
また、上述した第1の実施の形態においては、ベーパーチャンバ1が、下側シート10と、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることになく、上述した第1の実施の形態の第9変形例と同様に、ベーパーチャンバ1が、下側シート10(第1シート)と、ウィックシート30(本体シート)とで構成されていてもよい。
【0259】
(第3の実施の形態)
次に、図35図41を用いて、第3の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0260】
図35および図36に示すように、本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、作動流体2a、2bが封入された密封空間103を有している。密封空間103内の作動流体2a、2bが相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDが冷却される。
【0261】
図35および図36に示すように、ベーパーチャンバ101は、下側シート110(第1シート)と、上側シート120(第2シート)と、下側シート110と上側シート120との間に介在されたベーパーチャンバ用のウィックシート130(本体シート)と、を備えている。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ101は、1つのウィックシート130を備えている。本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、下側シート110、ウィックシート130および上側シート120が、この順番で積層されて接合されている。
【0262】
ベーパーチャンバ101は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ101の平面形状は任意であるが、図35に示すような矩形状であってもよい。ベーパーチャンバ101の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよく、ベーパーチャンバ101の平面寸法は任意である。本実施の形態では、一例として、ベーパーチャンバ101の平面形状が、X方向を長手方向とする矩形状である例について説明する。なお、ベーパーチャンバ101の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状など、任意の形状とすることができる。
【0263】
図35に示すように、ベーパーチャンバ101は、作動流体2a、2bが蒸発する蒸発領域SSRと、作動流体2a、2bが凝縮する凝縮領域CCRと、を有している。
【0264】
蒸発領域SSRは、平面視でデバイスDと重なる領域であり、デバイスDが取り付けられる領域である。蒸発領域SSRは、ベーパーチャンバ101の任意の場所に配置することができる。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ101のX方向における一側(図35における左側)に、蒸発領域SSRが形成されている。蒸発領域SSRにデバイスDからの熱が伝わり、この熱によって作動流体の液体(作動液2b)が蒸発領域SSRにおいて蒸発する。デバイスDからの熱は、平面視でデバイスDに重なる領域だけではなく、当該領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SSRは、平面視で、デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含む。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ101がデバイスDから熱を受ける面(下側シート110の後述する第1下側シート面110a)および受けた熱を放出する面(上側シート120の後述する第2上側シート面120b)に直交する方向から見た状態であって、例えば、図35に示すように、ベーパーチャンバ101を上方から見た状態、または下方から見た状態に相当している。
【0265】
凝縮領域CCRは、平面視でデバイスDと重ならない領域であって、主として作動流体の蒸気(作動蒸気2a)が熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CCRは、蒸発領域SSRの周囲の領域と言うこともできる。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ101のX方向における他側(図35における右側)に、凝縮領域CCRが形成されている。凝縮領域CCRにおいて作動蒸気2aからの熱が上側シート120に放出され、作動蒸気2aが凝縮領域CCRにおいて冷却されて凝縮する。
【0266】
なお、ベーパーチャンバ101がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受けるシートを上述の下側シート110と称し、受けた熱を放出するシートを上述の上側シート120と称する。このため、下側シート110が下側に配置され、上側シート120が上側に配置された状態で、以下説明する。
【0267】
まず、下側シート110について説明する。
【0268】
図36に示すように、下側シート110は、ウィックシート130とは反対側に設けられた第1下側シート面110aと、第1下側シート面110aとは反対側(すなわちウィックシート130の側)に設けられた第2下側シート面110bと、を有している。下側シート110は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第1下側シート面110aに、上述のデバイスDが取り付けられる。
【0269】
図37に示すように、下側シート110の平面形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、下側シート110は、平面視において、X方向(第1方向)に延びる一対の長手方向側縁111a、111b(第1側縁)と、X方向に直交するY方向(第2方向)に延びる一対の短手方向側縁111c、111d(第2側縁)と、を有していてもよい。一対の長手方向側縁111a、111bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁111aは、Y方向における一側(図37における下側)に設けられ、長手方向側縁111bは、Y方向における他側(図37における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁111c、111dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁111cは、X方向における一側(図37における左側)に設けられ、短手方向側縁111dは、X方向における他側(図37における右側)に設けられている。これらの一対の長手方向側縁111a、111bおよび一対の短手方向側縁111c、111dが、平面視での下側シート110の外周縁111oを構成している。
【0270】
図35および図36に示すように、下側シート110は、平面視において、全体的に後述する上側シート120よりも小さく形成されている。このため、平面視において、下側シート110の外周縁111oは、上側シート120の外周縁121oよりも内側(後述する蒸気流路部150の側)に位置づけられている。すなわち、下側シート110の長手方向側縁111a、111bおよび短手方向側縁111c、111dはそれぞれ、後述する上側シート120の長手方向側縁121a、121bおよび短手方向側縁121c、121dよりも内側に位置づけられている。
【0271】
図37に示すように、下側シート110は、矩形状の下側シート本体111と、下側シート本体111から外側に突出した下側シート注入突出部113と、を有していてもよい。図37に示す例においては、下側シート注入突出部113は、短手方向側縁111cに設けられており、短手方向側縁111cからX方向における一側(図37における左側)に突出している。
【0272】
また、図37に示すように、下側シート110の下側シート本体111の四隅に、アライメント孔112が設けられていてもよい。図37に示す例においては、アライメント孔112の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔112は、下側シート本体111を貫通していてもよい。
【0273】
次に、上側シート120について説明する。
【0274】
図36に示すように、上側シート120は、ウィックシート130の側に設けられた第1上側シート面120aと、第1上側シート面120aとは反対側に設けられた第2上側シート面120bと、を有している。上側シート120は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚さを有していてもよい。この第2上側シート面120bに、モバイル端末等のハウジングHの一部を構成するハウジング部材Haが取り付けられる。第2上側シート面120bの全体が、ハウジング部材Haで覆われてもよい。
【0275】
図38に示すように、上側シート120の平面形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、上側シート120は、平面視において、X方向に延びる一対の長手方向側縁121a、121bと、Y方向に延びる一対の短手方向側縁121c、121dと、を有していてもよい。一対の長手方向側縁121a、121bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁121aは、Y方向における一側(図38における下側)に設けられ、長手方向側縁121bは、Y方向における他側(図38における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁121c、121dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁121cは、X方向における一側(図38における左側)に設けられ、短手方向側縁121dは、X方向における他側(図38における右側)に設けられている。これらの一対の長手方向側縁121a、121bおよび一対の短手方向側縁121c、121dが、平面視での上側シート120の外周縁121oを構成している。
【0276】
図35および図36に示すように、上側シート120は、平面視において、全体的に上述した下側シート110よりも大きく形成されている。このため、平面視において、上側シート120の外周縁121oは、下側シート110の外周縁111oよりも外側(後述する蒸気流路部150とは反対側)に位置づけられている。すなわち、上側シート120の長手方向側縁121a、121bおよび短手方向側縁121c、121dはそれぞれ、上述した下側シート110の長手方向側縁111a、111bおよび短手方向側縁111c、111dよりも外側に位置づけられている。
【0277】
図38に示すように、上側シート120は、矩形状の上側シート本体121と、上側シート本体121から外側に突出した上側シート注入突出部123と、を有していてもよい。図38に示す例においては、上側シート注入突出部123は、短手方向側縁121cに設けられており、短手方向側縁121cからX方向における一側(図38における左側)に突出している。
【0278】
また、図38に示すように、上側シート120の上側シート本体121の四隅に、アライメント孔122が設けられていてもよい。図38に示す例においては、アライメント孔122の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔112は、上側シート本体121を貫通していてもよい。
【0279】
次に、ウィックシート130について説明する。
【0280】
図36に示すように、ウィックシート130は、シート本体131と、シート本体131に設けられた蒸気流路部150(空間部)と、を備えている。シート本体131は、第1本体面131aと、第1本体面131aとは反対側に設けられた第2本体面131bと、を有している。第1本体面131aは、下側シート110の側に配置されており、第2本体面131bは、上側シート120の側に配置されている。
【0281】
下側シート110の第2下側シート面110bとシート本体131の第1本体面131aとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。同様に、上側シート120の第1上側シート面120aとシート本体131の第2本体面131bとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。熱圧着による接合の例としては、例えば、拡散接合を挙げることができる。しかしながら、下側シート110、上側シート120およびウィックシート130は、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ101の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側シート110とウィックシート130との接合を維持できるとともに、上側シート120とウィックシート130との接合を維持できる程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
【0282】
図39に示すように、平面視において、ウィックシート130の外形形状は、全体的に矩形状を有していてもよい。より具体的には、ウィックシート130は、平面視において、X方向に延びる一対の長手方向側縁132a、132bと、Y方向に延びる一対の短手方向側縁132c、132dと、を有していてもよい。一対の長手方向側縁132a、132bは、Y方向における両側に設けられている。長手方向側縁132aは、Y方向における一側(図39における下側)に設けられ、長手方向側縁132bは、Y方向における他側(図39における上側)に設けられている。一対の短手方向側縁132c、132dは、X方向における両側に設けられている。短手方向側縁132cは、X方向における一側(図39における左側)に設けられ、短手方向側縁132dは、X方向における他側(図39における右側)に設けられている。これらの一対の長手方向側縁132a、132bおよび一対の短手方向側縁132c、132dが、平面視でのウィックシート130の外周縁132oを構成している。
【0283】
図35および図36に示すように、平面視において、ウィックシート130の外周縁132oは、上側シート120の外周縁121oに重なっている。すなわち、ウィックシート130の長手方向側縁132a、132bおよび短手方向側縁132c、132dはそれぞれ、上側シート120の長手方向側縁121a、121bおよび短手方向側縁121c、121dに重なっている。また、ウィックシート130は、外周縁132oから内側(後述する蒸気流路部150の側)に引き込まれた引込部170を備えている。引込部170の詳細については後述する。
【0284】
図39に示すように、ウィックシート130は、後述する枠体部132から外側に突出したウィックシート注入突出部136を有していてもよい。図39に示す例においては、ウィックシート注入突出部136は、短手方向側縁132cに設けられており、短手方向側縁132cからX方向における一側(図39における左側)に突出している。
【0285】
また、図39に示すように、ウィックシート130のシート本体131の四隅に、アライメント孔135が設けられていてもよい。図39に示す例においては、アライメント孔135の平面形状は円形であるが、これに限られることはない。アライメント孔135は、シート本体131を貫通していてもよい。
【0286】
また、本実施の形態によるウィックシート130のシート本体131は、図36および図39に示すように、平面視で矩形枠状に形成された枠体部132と、枠体部132内に設けられた複数のランド部133と、を有している。枠体部132およびランド部133は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート130の材料が残る部分である。
【0287】
本実施の形態では、枠体部132は、平面視で、矩形枠状に形成されている。この枠体部132の内側に、蒸気流路部150(空間部)が設けられている。各ランド部133は、蒸気流路部150内に設けられており、各ランド部133の周囲を作動蒸気2aが流れるようになっている。すなわち、蒸気流路部150は、上述した複数のランド部133と、各ランド部133の周囲に設けられた、作動蒸気2aが流れる通路である後述する蒸気通路151、152と、を含んでいる。
【0288】
本実施の形態では、ランド部133は、平面視で、X方向(図39における左右方向)を長手方向として細長状に延びていてもよく、ランド部133の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。また、各ランド部133は、X方向に直交するY方向(図39における上下方向)において等間隔に離間して、互いに平行に配置されていてもよい。ランド部133の幅ww1(図40参照)は、例えば、100μm~1500μmであってもよい。ここで、ランド部133の幅ww1は、Y方向におけるランド部133の寸法であって、Z方向において後述する貫通部134が存在する位置における寸法を意味している。ここで、Z方向は、図36および図40における上下方向に相当しており、ウィックシート130の厚さ方向に相当している。
【0289】
枠体部132および各ランド部133は、下側シート110に熱圧着により接合されるとともに、上側シート120に熱圧着により接合されている。後述する下側蒸気流路凹部153の壁面153aおよび上側蒸気流路凹部154の壁面154aは、ランド部133の側壁を構成している。シート本体131の第1本体面131aおよび第2本体面131bは、枠体部132および各ランド部133にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
【0290】
蒸気流路部150は、主として、作動蒸気2aが通る流路である。蒸気流路部150には、作動液2bも通ってもよい。図36および図40に示すように、蒸気流路部150は、第1本体面131aから第2本体面131bに貫通していてもよい。すなわち、ウィックシート130のシート本体131を貫通していてもよい。蒸気流路部150は、第1本体面131aにおいて下側シート110で覆われていてもよく、第2本体面131bにおいて上側シート120で覆われていてもよい。
【0291】
図39に示すように、本実施の形態における蒸気流路部150は、第1蒸気通路151と複数の第2蒸気通路152とを有している。第1蒸気通路151は、枠体部132とランド部133との間に形成されている。この第1蒸気通路151は、枠体部132の内側であってランド部133の外側に連続状に形成されている。第1蒸気通路151の平面形状は、矩形枠状になっている。第2蒸気通路152は、互いに隣り合うランド部133の間に形成されている。第2蒸気通路152の平面形状は、細長の矩形形状になっている。複数のランド部133によって、蒸気流路部150は、第1蒸気通路151と複数の第2蒸気通路152とに区画されている。
【0292】
図36に示すように、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、シート本体131の第1本体面131aから第2本体面131bに貫通している。すなわち、Z方向においてウィックシート130を貫通している。第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、第1本体面131aに設けられた下側蒸気流路凹部153と、第2本体面131bに設けられた上側蒸気流路凹部154とによってそれぞれ構成されている。下側蒸気流路凹部153と上側蒸気流路凹部154とが連通して、蒸気流路部150の第1蒸気通路151および第2蒸気通路152が、第1本体面131aから第2本体面131bにわたって延びるように形成されている。
【0293】
下側蒸気流路凹部153は、後述するエッチング工程において、ウィックシート130の第1本体面131aからエッチングされることによって、第1本体面131aに凹状に形成されている。このことにより、下側蒸気流路凹部153は、図40に示すように、湾曲状に形成された壁面153aを有している。この壁面153aは、下側蒸気流路凹部153を画定し、図40に示す断面において、第2本体面131bに向かって進むにつれて、対向する壁面153aに近づくように湾曲している。このような下側蒸気流路凹部153は、第1蒸気通路151の一部(下半分)および第2蒸気通路152の一部(下半分)を構成している。
【0294】
上側蒸気流路凹部154は、後述するエッチング工程において、ウィックシート130の第2本体面131bからエッチングされることによって、第2本体面131bに凹状に形成されている。このことにより、上側蒸気流路凹部154は、図40に示すように、湾曲状に形成された壁面154aを有している。この壁面154aは、上側蒸気流路凹部154を画定し、図40に示す断面において、第1本体面131aに向かって進むにつれて、対向する壁面154aに近づくように湾曲している。このような上側蒸気流路凹部154は、第1蒸気通路151の一部(上半分)および第2蒸気通路152の一部(上半分)を構成している。
【0295】
図40に示すように、下側蒸気流路凹部153の壁面153aと、上側蒸気流路凹部154の壁面154aとが連接して貫通部134が形成されている。壁面153aと壁面154aはそれぞれ貫通部134に向かって湾曲している。このことにより、下側蒸気流路凹部153と上側蒸気流路凹部154とが互いに連通している。本実施の形態では、第1蒸気通路151における貫通部134の平面形状は、第1蒸気通路151と同様に矩形枠状になっており、第2蒸気通路152における貫通部134の平面形状は、第2蒸気通路152と同様に細長の矩形形状になっている。貫通部134は、下側蒸気流路凹部153の壁面153aと上側蒸気流路凹部154の壁面154aとが合流し、内側に張り出すように形成された稜線によって画定されていてもよい。この貫通部134において蒸気流路部150の平面面積が最小になっている。このような貫通部134の幅ww2,ww2’(図40参照)は、例えば、400μm~1600μmであってもよい。ここで、貫通部134の幅ww2は、Y方向において互いに隣り合うランド部133の間のギャップに相当する。また、貫通部134の幅ww2’は、Y方向(またはX方向)における枠体部132とランド部133との間のギャップに相当する。
【0296】
Z方向における貫通部134の位置は、第1本体面131aと第2本体面131bとの中間位置でもよく、中間位置から下側または上側にずれた位置でもよい。下側蒸気流路凹部153と上側蒸気流路凹部154とが連通すれば、貫通部134の位置は任意である。
【0297】
また、本実施の形態では、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の断面形状が、内側に張り出すように形成された稜線によって画定された貫通部134を含むように形成されているが、これに限られることはない。例えば、第1蒸気通路151の断面形状および第2蒸気通路152の断面形状は、台形形状や矩形形状であってもよく、あるいは樽形の形状になっていてもよい。
【0298】
このように構成された第1蒸気通路151および第2蒸気通路152を含む蒸気流路部150は、上述した密封空間103の一部を構成している。各蒸気通路151、152は、作動蒸気2aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
【0299】
ここで、図36は、図面を明瞭にするために、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152などを拡大して示しており、これらの蒸気通路151、152などの個数や配置は、図35および図39とは異なっている。
【0300】
ところで、図示しないが、蒸気流路部150内に、ランド部133を枠体部132に支持する支持部が複数設けられていてもよい。また、互いに隣り合うランド部133同士を支持する支持部が設けられていてもよい。これらの支持部は、X方向においてランド部133の両側に設けられていてもよく、Y方向におけるランド部133の両側に設けられていてもよい。支持部は、蒸気流路部150を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていてもよい。例えば、ウィックシート130のシート本体131の第1本体面131aおよび第2本体面131bのうちの一方の側に配置されて、他方の側には、蒸気流路凹部をなす空間が形成されるようにしてもよい。このことにより、支持部の厚さをシート本体131の厚さよりも薄くすることができ、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152が、X方向およびY方向において分断されることを防止できる。
【0301】
図36図39および図40に示すように、ウィックシート130のシート本体131の第1本体面131aに、主として作動液2bが通る液流路部160(溝部)が設けられている。より具体的には、液流路部160は、ウィックシート130の各ランド部133の第1本体面131aに設けられている。液流路部160には、作動蒸気2aも通ってもよい。この液流路部160は、上述した密封空間103の一部を構成しており、蒸気流路部150に連通している。液流路部160は、作動液2bを蒸発領域SSRに輸送するための毛細管構造(ウィック)として構成されている。液流路部160は、各ランド部133の第1本体面131aの全体にわたって形成されていてもよい。各ランド部133の第2本体面131bには、液流路部160は設けられていなくてもよい。
【0302】
図41に示すように、液流路部160は、第1本体面131aに設けられた複数の溝で構成されている。より具体的には、液流路部160は、作動液2bが通る複数の液流路主流溝161と、液流路主流溝161に連通する複数の液流路連絡溝165と、を有している。
【0303】
各液流路主流溝161は、図41に示すように、X方向に延びるように形成されている。液流路主流溝161は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部150の第1蒸気通路151または第2蒸気通路152よりも小さな流路断面積を有している。このことにより、液流路主流溝161は、作動蒸気2aから凝縮した作動液2bを蒸発領域SSRに輸送するように構成されている。各液流路主流溝161は、Y方向において等間隔に離間して配置されていてもよい。
【0304】
液流路主流溝161は、後述するエッチング工程において、ウィックシート130のシート本体131の第1本体面131aからエッチングされることによって形成されている。このことにより、液流路主流溝161は、図40に示すように、湾曲状に形成された壁面162を有している。この壁面162は、液流路主流溝161を画定し、第2本体面131bに向かって凹状に湾曲している。
【0305】
図40および図41に示す液流路主流溝161の幅ww3(Y方向における寸法)は、例えば、5μm~150μmであってもよい。なお、液流路主流溝61の幅ww3は、第1本体面131aにおける寸法を意味している。また、図40に示す液流路主流溝161の深さhh1(Z方向における寸法)は、例えば、3μm~150μmであってもよい。
【0306】
図41に示すように、各液流路連絡溝165は、X方向とは異なる方向に延びている。本実施の形態においては、各液流路連絡溝165は、Y方向に延びるように形成されており、液流路主流溝161に垂直に形成されている。いくつかの液流路連絡溝165は、互いに隣り合う液流路主流溝161同士を連通するように配置されている。他の液流路連絡溝165は、蒸気流路部150(第1蒸気通路151または第2蒸気通路152)と液流路主流溝161とを連通するように配置されている。すなわち、当該液流路連絡溝165は、Y方向におけるランド部133の端縁から当該端縁に隣り合う液流路主流溝161に延びている。このようにして、蒸気流路部150の第1蒸気通路151または第2蒸気通路152と液流路主流溝161とが連通している。
【0307】
液流路連絡溝165は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、蒸気流路部150の第1蒸気通路151または第2蒸気通路152よりも小さな流路断面積を有している。各液流路連絡溝165は、X方向において等間隔に離間して配置されていてもよい。
【0308】
液流路連絡溝165も、液流路主流溝161と同様に、エッチングによって形成され、液流路主流溝161と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有している。図41に示す液流路連絡溝165の幅ww4(X方向における寸法)は、液流路主流溝161の幅ww3と等しくてもよいが、幅ww3よりも大きくてもよく、あるいは小さくてもよい。液流路連絡溝165の深さは、液流路主流溝161の深さhh1と等しくてもよいが、深さhh1よりも深くてもよく、あるいは浅くてもよい。
【0309】
図41に示すように、液流路部160は、シート本体131の第1本体面131aに設けられた液流路凸部列163を有している。液流路凸部列163は、互いに隣り合う液流路主流溝161の間に設けられている。各液流路凸部列163は、X方向に配列された複数の液流路凸部164を含んでいる。液流路凸部164は、液流路部160内に設けられており、下側シート110の第2下側シート面110bに当接している。各液流路凸部164は、平面視で、X方向が長手方向となるように矩形状に形成されている。Y方向において互いに隣り合う液流路凸部164の間に、液流路主流溝161が介在され、X方向において互いに隣り合う液流路凸部164の間には、液流路連絡溝165が介在されている。液流路連絡溝165は、Y方向に延びるように形成され、Y方向において互いに隣り合う液流路主流溝161同士を連通している。このことにより、これらの液流路主流溝161の間で作動液2bが往来可能になっている。
【0310】
液流路凸部164は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート130の材料が残る部分である。本実施の形態では、図41に示すように、液流路凸部164の平面形状(ウィックシート130のシート本体131の第1本体面131aの位置における形状)が、矩形状になっている。
【0311】
本実施の形態においては、液流路凸部164は、千鳥状に配置されている。より具体的には、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列163の液流路凸部164が、X方向において互いにずれて配置されている。このずれ量は、X方向における液流路凸部164の配列ピッチの半分であってもよい。図41に示す液流路凸部164の幅ww5(Y方向における寸法)は、例えば、5μm~500μmであってもよい。なお、液流路凸部164の幅ww5は、第1本体面131aにおける寸法を意味している。なお、液流路凸部164の配置は、千鳥状であることに限られることはなく、並列配列されていてもよい。この場合、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列163の液流路凸部164が、X方向においても整列される。
【0312】
液流路主流溝161は、液流路連絡溝165と連通する液流路交差部166を含んでいる。液流路交差部166において、液流路主流溝161と液流路連絡溝165とがT字状に連通している。このことにより、一の液流路主流溝161と、一方の側(例えば、図41における上側)の液流路連絡溝165とが連通している液流路交差部166において、他方の側(例えば、図41における下側)の液流路連絡溝165が当該液流路主流溝161に連通することを回避できる。このことにより、当該液流路交差部166において、液流路主流溝161の壁面162が両側(図41における上側および下側)で切り欠かれることを防止し、壁面162の一方の側を残存させることができる。このため、液流路交差部166においても、液流路主流溝161内の作動液に毛細管作用を付与させることができ、蒸発領域SSRに向かう作動液2bの推進力が液流路交差部166で低下することを抑制できる。
【0313】
また、図35に示すように、ベーパーチャンバ101は、X方向における一側(図35における左側)の側縁に、密封空間103に作動液2bを注入する注入部104を更に備えていてもよい。図35に示す例においては、注入部104は、蒸発領域SSRの側に配置されており、蒸発領域SSRの側の側縁から外側に突出している。
【0314】
注入部104は、下側シート110の下側シート注入突出部113(図37参照)と、上側シート120の上側シート注入突出部123(図38参照)と、ウィックシート130のウィックシート注入突出部136(図39参照)と、が互いに重なり合って構成されている。図示された例においては、ウィックシート注入突出部136の下面(第1本体面131a)と下側シート注入突出部113の上面(第2下側シート面110b)とが重なり合っているとともに、ウィックシート注入突出部136の上面(第2本体面131b)と上側シート注入突出部123の下面(第1上側シート面120a)とが重なり合っている。このうちウィックシート注入突出部136に注入流路137が形成されていてもよい。この注入流路137は、シート本体131の第1本体面131aから第2本体面131bに貫通していてもよい。すなわち、Z方向においてシート本体131(ウィックシート注入突出部136)を貫通していてもよい。注入流路137は、第1蒸気通路151に連通しており、作動液2bは、注入流路137を通って第1蒸気通路151に注入されてもよい。なお、液流路部160の配置によっては、注入流路137は液流路部160に連通させるようにしてもよい。ウィックシート注入突出部136の上面および下面は、平坦状に形成されていてもよく、下側シート注入突出部113の上面および上側シート注入突出部123の下面も、平坦状に形成されていてもよい。各注入突出部113、123、136の平面形状は等しくてもよい。
【0315】
なお、本実施の形態では、注入部104は、ベーパーチャンバ101のX方向における一対の側縁のうちの一側の側縁に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、任意の位置に設けることができる。また、ウィックシート注入突出部136に設けられた注入流路137は、作動液2bを注入できれば、シート本体131を貫通していなくてもよい。この場合、シート本体131の第1本体面131aおよび第2本体面131bのうちの一方からのみのエッチングで、蒸気流路部150に連通する注入流路137を形成することができる。また、注入部104は、ベーパーチャンバ101の製造時において、作動液2bの注入後、切断されて除去されてもよい。
【0316】
ところで、上述したように、本実施の形態によるウィックシート130は、外周縁132oから蒸気流路部150の側に引き込まれた引込部170を備えている。本実施の形態においては、引込部170は、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bおよび一対の短手方向側縁132c、132dからそれぞれ引き込まれている。すなわち、一対の長手方向側縁132a、132bおよび一対の短手方向側縁132c、132dのそれぞれの側に、引込部170が設けられている。引込部170は、ウィックシート130の外周縁132oのうちウィックシート注入突出部136が設けられている部分を除いた全周から引き込まれていてもよい。
【0317】
なお、上述したように、ベーパーチャンバ101の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状などの任意の形状であってもよい。この場合、引込部170は、ウィックシートの外周縁132oの全周に渡って形成されていてもよいし、ウィックシートの外周縁132oのうちの任意の位置に形成されていてもよい。
【0318】
図36および図40に示すように、ウィックシート130の厚さ方向(Z方向)に沿った断面視において、引込部170は、ウィックシートの外周縁132o(長手方向側縁132a、132bおよび短手方向側縁132c、132d)から延びる引込縁171を有している。ここで、外周縁132oは、図39に示すような平面視におけるウィックシート130の外周縁であり、上側シート120の側に位置している。引込縁171は、外周縁132oから第1本体面131aに延びており、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している。引込縁171は、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されていてもよい。図示された例においては、引込縁171は、上側シート120の外周縁121oから下側シート110の外周縁111oに向かって延びている。
【0319】
図40に示すY方向における上側シート120の外周縁121oと下側シート110の外周縁111oとの間の寸法ww6は、例えば、50μm~1000μmであってもよい。すなわち、引込部170は、外周縁132oから50μm以上1000μm以下引き込まれていてもよい。
【0320】
また、図40に示すY方向における下側シート110の長手方向側縁111aと蒸気流路部150(第1蒸気通路151)との間の寸法ww7は、例えば、30μm~3000μmであってもよい。ここで、この寸法ww7は、第1本体面131aにおける寸法を意味している。すなわち、引込部170は、第1本体面131aにおいて、蒸気流路部150(第1蒸気通路151)から30μm以上3000μm以下離れた位置に設けられていてもよい。
【0321】
このような引込部170は、後述するエッチング工程において、ウィックシート130のシート本体131の第1本体面131aからエッチングされることによって形成されてもよい。
【0322】
ところで、下側シート110、上側シート120およびウィックシート130を構成する材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、下側シート110、上側シート120およびウィックシート130は、例えば、銅または銅合金を含んでいてもよい。この場合、各シート110、120、130の熱伝導率を高めることができ、ベーパーチャンバ101の放熱効率を高めることができる。
【0323】
図36に示すベーパーチャンバ101の厚さtt1は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。ベーパーチャンバ101の厚さtt1を100μm以上にすることにより、蒸気流路部150を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ101として適切に機能させることができる。一方、ベーパーチャンバ101の厚さtt1を1000μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さtt1が厚くなることを抑制することができる。
【0324】
図36に示す下側シート110の厚さtt2は、例えば、6μm~100μmであってもよい。下側シート110の厚さtt2を6μm以上にすることにより、下側シート110の機械的強度を確保することができる。一方、下側シート110の厚さtt2を100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さtt1が厚くなることを抑制することができる。同様に、図36に示す上側シート120の厚さtt3は、下側シート110の厚さtt2と同様に設定されていてもよい。上側シート120の厚さtt3と、下側シート110の厚さtt2は、異なっていてもよい。
【0325】
図36に示すウィックシート130の厚さtt4は、例えば、50μm~400μmであってもよい。ウィックシート130の厚さtt4を50μm以上にすることにより、蒸気流路部150を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ101として適切に動作することができる。一方、ウィックシート130の厚さtt4を400μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さtt1が厚くなることを抑制することができる。
【0326】
次に、このような構成からなるベーパーチャンバ101の製造方法について、図42図45を用いて説明する。
【0327】
ここでは、初めに、各シート110、120、130を準備するシート準備工程について説明する。このシート準備工程は、下側シート110を準備する下側シート準備工程と、上側シート120を準備する上側シート準備工程と、ウィックシート130を準備するウィックシート準備工程と、を含んでいる。
【0328】
下側シート準備工程においては、まず、所望の厚さを有する下側シート母材を準備する。下側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、下側シート母材を、エッチングすることにより、所望の平面形状を有する下側シート110を形成する。あるいは、下側シート母材を、プレス加工することにより、所望の平面形状を有する下側シート110を形成するようにしてもよい。上述したように、この下側シート110は、平面視において、全体的に上側シート120よりも小さくなるように形成される。このようにして、図37に示すような外形輪郭形状を有する下側シート110を準備することができる。
【0329】
上側シート準備工程においても、下側シート準備工程と同様に、まず、所望の厚さを有する上側シート母材を準備する。上側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、上側シート母材を、エッチングすることにより、所望の平面形状を有する上側シート120を形成する。あるいは、上側シート母材を、プレス加工することにより、所望の平面形状を有する上側シート120を形成するようにしてもよい。上述したように、この上側シート120は、平面視において、全体的に下側シート110よりも大きくなるように形成される。このようにして、図38に示すような外形輪郭形状を有する上側シート120を準備することができる。
【0330】
ウィックシート準備工程は、金属材料シートMMを準備する材料シート準備工程と、金属材料シートMMをエッチングするエッチング工程と、を含んでいる。
【0331】
まず、材料シート準備工程において、図42に示すように、第1材料面MMaと第2材料面MMbとを含む、平板状の金属材料シートMMを準備する。金属材料シートMMは、所望の厚さを有する圧延材で形成されていてもよい。
【0332】
次に、エッチング工程において、図43に示すように、金属材料シートMMを、第1材料面MMaおよび第2材料面MMbからエッチングして、蒸気流路部150、液流路部160および引込部170を形成する。
【0333】
より具体的には、金属材料シートMMの第1材料面MMaおよび第2材料面MMbに、フォトリグラソフィー技術によって、パターン状のレジスト膜(図示せず)が形成される。このレジスト膜のパターンは、上述した蒸気流路部150や液流路部160および引込部170のパターンを含んでいる。続いて、パターン状のレジスト膜の開口を介して、金属材料シートMMの第1材料面MMaおよび第2材料面MMbがエッチングされる。このことにより、金属材料シートMMの第1材料面MMaおよび第2材料面MMbがパターン状にエッチングされて、図43に示すような蒸気流路部150および液流路部160が形成される。また、このエッチング(第1材料面MMaからのエッチング)により、引込部170も形成される。なお、エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
【0334】
エッチングは、金属材料シートMMの第1材料面MMaおよび第2材料面MMbを同時にエッチングしてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1材料面MMaと第2材料面MMbのエッチングは別々の工程として行われてもよい。また、蒸気流路部150、液流路部160および引込部170が同時にエッチングで形成されてもよく、別々の工程で形成されてもよい。
【0335】
また、エッチング工程においては、金属材料シートMMの第1材料面MMaおよび第2材料面MMbをエッチングすることにより、図39に示すような所定の外形輪郭形状を得ることができる。すなわち、上述した外周縁132oを有するウィックシート130を得ることができる。
【0336】
なお、引込部170は、エッチングにより形成されることに限られず、例えば、エッチング工程の後に、金属材料シートMMの端縁を切削加工等することにより形成されてもよい。
【0337】
このようにして、本実施の形態によるウィックシート130を準備することができる。
【0338】
準備工程の後、接合工程として、図44に示すように、下側シート110、上側シート120およびウィックシート130を接合する。
【0339】
より具体的には、まず、下側シート110、ウィックシート130および上側シート120をこの順番で積層する。この場合、下側シート110の第2下側シート面110bにウィックシート130の第1本体面131aが重ね合わされ、ウィックシート130の第2本体面131bに、上側シート120の第1上側シート面120aが重ね合わされる。この際、下側シート110のアライメント孔112と、ウィックシート130のアライメント孔135と、上側シート120のアライメント孔122とを利用して、各シート110、120、130が位置合わせされてもよい。
【0340】
続いて、下側シート110、ウィックシート130および上側シート120を仮止めする。例えば、スポット的に抵抗溶接を行って、これらのシート110、120、130が仮止めされてもよく、あるいはレーザ溶接でこれらのシート110、120、130が仮止めされてもよい。
【0341】
次に、下側シート110と、ウィックシート130と、上側シート120とを、熱圧着によって恒久的に接合する。例えば、拡散接合によって、これらのシート110、120、130が恒久的に接合されてもよい。拡散接合とは、接合する下側シート110とウィックシート130を密着させるとともにウィックシート130と上側シート120を密着させて、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、積層方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、各シート110、120、130の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各シート110、120、130が溶融して変形することを回避できる。これにより、ウィックシート130の枠体部132および各ランド部133における第1本体面131aが、下側シート110の第2下側シート面110bに拡散接合される。また、ウィックシート130の枠体部132および各ランド部133における第2本体面131bが、上側シート120の第1上側シート面120aに拡散接合される。このようにして、各シート110、120、130が拡散接合されて、下側シート110と上側シート120との間に、蒸気流路部150と液流路部160とを有する密封空間103が形成される。この段階では、密封空間103は、上述した注入流路137が封止されておらず、注入流路137を介して外部に連通している。
【0342】
接合工程の後、注入工程として、注入部104の注入流路137から密封空間103に作動液2bを注入する。
【0343】
注入工程の後、封止工程として、注入流路137を封止する。注入部104を部分的に溶融させて注入流路137を封止するようにしてもよい。このことにより、密封空間103と外部との連通が遮断され、密封空間103が密封される。このため、作動液2bが封入された密封空間103が得られ、密封空間103内の作動液2bが外部に漏洩することが防止される。注入流路137を封止した後、注入部104は、除去されてもよい。注入部104の全体が除去されてもよい。あるいは、注入部104の一部が除去されて、残りの一部が残存していてもよい。
【0344】
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ101が得られる。
【0345】
このようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ101を順次製造することができる。製造されたベーパーチャンバ101は、図45に示すように、所定の場所に設けられた載置面179上に積み重ねられるように載置されて保管することができる。その後、ベーパーチャンバ101は、出荷時やデバイスDへの装着時に、この載置場所から取り出されて搬送される。
【0346】
次に、このようにして製造されたベーパーチャンバ101の搬送方法について、図46および図47を用いて説明する。ここでは、図45に示すような、ベーパーチャンバ101が互いに積み重ねられて載置された状態からベーパーチャンバ101を取り出して搬送する方法について説明する。
【0347】
まず、図46に示すように、吊下げ装置180の第1アーム部181aおよび第2アーム部181bの爪部182a、182bを、ウィックシート130の引込部170にそれぞれ係合させる。
【0348】
より具体的には、まず、第1アーム部181aを垂直方向に移動させて、第1アーム部181aの先端に設けられた第1爪部182aを、最上部に載置されたベーパーチャンバ101のZ方向における引込部170が設けられた位置に位置づける。また、第2アーム部181bを垂直方向に移動させて、第2アーム部181bの先端に設けられた第2爪部182bを、当該ベーパーチャンバ101のZ方向における引込部170が設けられた位置に位置づける。続いて、第1アーム部181aを水平方向に移動させて、第1爪部182aを、Y方向における一側(図46における左側)に設けられた引込部170の引込縁171に当接させる。同様に、第2アーム部181bを水平方向に移動させて、第2爪部182bを、Y方向における他側(図46における右側)に設けられた引込部170の引込縁171に当接させる。
【0349】
次に、図47に示すように、吊下げ装置180によりベーパーチャンバ101を吊り下げる。
【0350】
より具体的には、第1爪部182aおよび第2爪部182bを引込部170の引込縁171にそれぞれ当接させた状態で、第1アーム部181aおよび第2アーム部181bを上方に移動させる。これにより、ウィックシート130が、第1爪部182aおよび第2爪部182bにより支持されて、ベーパーチャンバ101が、吊下げ装置180により吊り下げられる。
【0351】
そして、吊下げ装置180によりベーパーチャンバ101を吊り下げた状態で、第1アーム部181aおよび第2アーム部181bを水平方向に移動させて、ベーパーチャンバ101を所望の目標位置まで搬送する。
【0352】
このようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ101を吊下げ装置180により搬送することができる。
【0353】
なお、ここでは、ベーパーチャンバ101が互いに積み重ねられて載置された状態からベーパーチャンバ101を取り出して搬送する方法について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ベーパーチャンバ101が載置面179上に直接載置されている場合であっても、吊下げ装置180を用いてベーパーチャンバ101を搬送することができる。
【0354】
ここで、一般的なベーパーチャンバ101’の搬送方法について説明する。図48に示すように、一般的なベーパーチャンバ101’の側面は、垂直に形成されており、本実施の形態によるベーパーチャンバ101のように、ウィックシート30に引込部170が形成されていない。このため、吊下げ装置180の爪部182a、182bを、引込部170に係合させることができず、一般的なベーパーチャンバ101’を、上述した吊下げ装置180で搬送することは困難である。
【0355】
一般的なベーパーチャンバ101’は、図48に示すように、吸着装置185により取り出して搬送することができる。より具体的には、吸着装置185は、内部を負圧にして吸着力を生じさせる吸着パッド186を有しており、この吸着パッド186をベーパーチャンバ101’の上面に押し付けて、ベーパーチャンバ101’に吸着させる。その後、吸着パッド186によりベーパーチャンバ101’が吸着された状態で、吸着装置185を上方に移動させて、ベーパーチャンバ101’を吊り下げる。そして、吸着装置185を水平方向に移動させて、ベーパーチャンバ101’を所望の目標位置まで搬送する。
【0356】
このとき、ベーパーチャンバ101’が薄型化されていた場合、ベーパーチャンバ101’の上面に吸着パッド186による吸着力が働くことにより、ベーパーチャンバ101’が変形してしまうおそれがある。このため、ベーパーチャンバ101’の変形を抑制するために、ベーパーチャンバ101’の薄型化が抑制される場合がある。
【0357】
これに対して、本実施の形態では、ベーパーチャンバ101のウィックシート130に引込部170が設けられている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ101のウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182bを係合させることができる。このため、吊下げ装置180によりベーパーチャンバ101を吊り下げて搬送することができ、上述した吸着装置185を用いることを不要にすることができる。このため、ベーパーチャンバ101の変形を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の更なる薄型化を実現することができる。
【0358】
なお、上述した吊下げ装置180によるベーパーチャンバ101の搬送は一例であり、その他の任意の装置等を用いてベーパーチャンバ101を搬送することができる。例えば、尖った先端を有する工具を用いてベーパーチャンバ101を搬送してもよい。より具体的には、工具の先端を引込部170の引込縁171に当接させて、その後、工具を上方に移動させて、ベーパーチャンバ101を持ち上げるようにしてもよい。そして、持ち上げたベーパーチャンバ101を手で掴んで搬送するようにしてもよい。また、例えば、そのような装置や工具を用いることなく、引込部170の引込縁171に指を当接させてベーパーチャンバ101を持ち上げ、その後、ベーパーチャンバ101を掴んで搬送するようにしてもよい。このような場合であっても、ウィックシート130が引込部170を有していることにより、ベーパーチャンバ101を取り出して搬送することが容易となる。
【0359】
次に、ベーパーチャンバ101の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
【0360】
上述のようにして搬送されたベーパーチャンバ101は、搬送先において、モバイル端末等のハウジングH内に設置され、ハウジング部材Haと上側シート120の第2上側シート面120bとが接する。また、下側シート110の第1下側シート面110aに、被冷却装置であるCPU等のデバイスDが取り付けられ(あるいは、デバイスDにベーパーチャンバ101が取り付けられ)、下側シート110の第1下側シート面110aとデバイスDとが接する。密封空間103内の作動液2bは、その表面張力によって、密封空間103の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部153の壁面153a、上側蒸気流路凹部154の壁面154a、液流路部160の液流路主流溝161の壁面162および液流路連絡溝165の壁面に付着する。また、作動液2bは、下側シート110の第2下側シート面110bのうち下側蒸気流路凹部153、液流路主流溝161および液流路連絡溝165に露出した部分にも付着し得る。更に、作動液2bは、上側シート120の第1上側シート面120aのうち上側蒸気流路凹部154に露出した部分にも付着し得る。
【0361】
この状態でデバイスDが発熱すると、蒸発領域SSR(図39参照)に存在する作動液2bが、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2bが蒸発(気化)し、作動蒸気2aが生成される。生成された作動蒸気2aの多くは、密封空間103を構成する下側蒸気流路凹部153および上側蒸気流路凹部154内で拡散する(図39の実線矢印参照)。各蒸気流路凹部153、154内の作動蒸気2aは、蒸発領域SSRから離れ、作動蒸気2aの多くは、比較的温度の低い凝縮領域CCR(図39における右側の部分)に輸送される。凝縮領域CCRにおいて、作動蒸気2aは、主として上側シート120に放熱して冷却される。上側シート120が作動蒸気2aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(図36参照)を介して外気に伝達される。
【0362】
作動蒸気2aは、凝縮領域CCRにおいて上側シート120に放熱することにより、蒸発領域SSRにおいて吸収した潜熱を失って凝縮し、作動液2bが生成される。生成された作動液2bは、各蒸気流路凹部153、154の壁面153a、154aおよび下側シート110の第2下側シート面110bおよび上側シート120の第1上側シート面120aに付着する。ここで、蒸発領域SSRでは作動液2bが蒸発し続けているため、液流路部160のうち蒸発領域SSR以外の領域(すなわち、凝縮領域CCR)における作動液2bは、各液流路主流溝161の毛細管作用により、蒸発領域SSRに向かって輸送される(図39の破線矢印参照)。このことにより、各壁面153a、154a、第2下側シート面110bおよび第1上側シート面120aに付着した作動液2bは、液流路部160に移動し、液流路連絡溝165を通過して液流路主流溝161に入り込む。このようにして、各液流路主流溝161および各液流路連絡溝165に、作動液2bが充填される。このため、充填された作動液2bは、各液流路主流溝161の毛細管作用により、蒸発領域SSRに向かう推進力を得て、蒸発領域SSRに向かってスムースに輸送される。
【0363】
液流路部160においては、各液流路主流溝161が、対応する液流路連絡溝165を介して、隣り合う他の液流路主流溝161と連通している。このことにより、互いに隣り合う液流路主流溝161同士で、作動液2bが往来し、液流路主流溝161でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各液流路主流溝161内の作動液2bに毛細管作用が付与されて、作動液2bは、蒸発領域SSRに向かってスムースに輸送される。
【0364】
蒸発領域SSRに達した作動液2bは、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液2bから蒸発した作動蒸気2aは、蒸発領域SSR内の液流路連絡溝165を通って、流路断面積が大きい下側蒸気流路凹部153および上側蒸気流路凹部154に移動し、各蒸気流路凹部153、154内で拡散する。このようにして、作動流体2a、2bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間103内を還流してデバイスDの熱を輸送して放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
【0365】
このように本実施の形態によれば、ウィックシート130は、外周縁132oから蒸気流路部150の側に引き込まれた引込部170を有している。このことにより、載置されたベーパーチャンバ101のウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0366】
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ101の搬送に吸着装置185を用いることを不要にすることができる。このため、ベーパーチャンバ101の変形を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の更なる薄型化を実現することができる。
【0367】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート130の側面に引込部170が形成されていることにより、複数のベーパーチャンバ101が互いに積み重ねられて載置されている場合に、側面から見て個々のベーパーチャンバ101を容易に判別することができる。このことにより、ベーパーチャンバ101を個別に取り出して搬送することを容易化することができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0368】
また、本実施の形態によれば、ウィックシート130に引込部170が形成されていることにより、ベーパーチャンバ101を軽量化および省スペース化することができる。
【0369】
また、本実施の形態によれば、引込部170の引込縁171は、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している。このことにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等によりベーパーチャンバ101をしっかりと支持して持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0370】
また、本実施の形態によれば、引込部170の引込縁171は、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されている。このことにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等によりベーパーチャンバ101をより一層しっかりと支持して持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0371】
また、本実施の形態によれば、引込部170は、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bおよび一対の短手方向側縁132c、132dからそれぞれ引き込まれている。このことにより、載置されたベーパーチャンバ101の平面視における任意の方向から、ウィックシート130の引込部170に吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させて、ベーパーチャンバ101を持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の持ち上げをより一層容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0372】
また、本実施の形態によれば、蒸気流路部150は、第1本体面131aから第2本体面131bに貫通しており、上側シート120は、第2本体面131bにおいて蒸気流路部150を覆っている。このように、ベーパーチャンバ101を下側シート110と上側シート120とウィックシート130とで構成することにより、下側シート110がデバイスDから受けた熱を、上側シート120から放出することができる。これにより、デバイスDを効果的に冷却することができる。このため、ベーパーチャンバ101の性能を向上させることができる。
【0373】
なお、ベーパーチャンバ101は、Z方向において、上述した形態と対称的な形態を有していてもよい。すなわち、下側シート110が、平面視において、全体的に上側シート120よりも大きく形成され、引込部170の引込縁171が、下側シート110の外周縁111oから上側シート120の外周縁121oに向かって延びていてもよい。このような場合であっても、ベーパーチャンバ101が反対向きに載置された状態、すなわち、上側シート120の第2上側シート面120bが載置面179を向くように載置された状態で、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を引込部170の引込縁171に当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0374】
(第3の実施の形態の第1変形例)
上述した第3の実施の形態においては、引込部170の引込縁171が、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、図49に示すように、引込部170の引込縁171が、Z方向に対して傾斜していてもよい。
【0375】
図49に示す例においては、引込縁171は、外周縁132oから第1本体面131aに延びており、Z方向に対して傾斜している。引込縁171は、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されている。引込縁171は、上側シート120の外周縁121oから下側シート110の外周縁111oに向かって直線状に延びている。このため、Z方向に沿った断面視において、ウィックシート130の外形形状は、図49に示すように、逆台形形状になっている。
【0376】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0377】
また、引込縁171がZ方向に対して傾斜していることにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を引込部170の引込縁171に当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0378】
(第3の実施の形態の第2変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、引込部170の引込縁171が、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、図50に示すように、引込部170の引込縁171が、蒸気流路部150とは反対側に向かって凸状に湾曲していてもよい。
【0379】
図50に示す例においては、引込縁171は、外周縁132oから第1本体面131aに延びており、蒸気流路部150とは反対側に向かって凸状に湾曲している。引込縁171は、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されている。引込縁171は、上側シート120の外周縁121oから下側シート110の外周縁111oに向かって延びている。
【0380】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0381】
(第3の実施の形態の第3変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、引込部170の引込縁171が、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、図51に示すように、引込部170の引込縁171が、第1本体面131aから第2本体面131bの側に向かって延びる第1引込縁171aと、第2本体面131bから第1本体面131aの側に向かって延びる第2引込縁171bと、第1引込縁171aと第2引込縁171bとを接続する段差接続縁171cと、を含んでいてもよい。
【0382】
図51に示す例においては、引込縁171は、第1引込縁171aと、第2引込縁171bと、第1引込縁171aと第2引込縁171bとを接続する段差接続縁171cと、を含んでいる。第1引込縁171aは、第1本体面131aの側に設けられている。第2引込縁171bは、第2本体面131bの側に設けられている。第1引込縁171aは、第2引込縁171bよりも蒸気流路部150の側に位置している。第1引込縁171aは、第1本体面131aから第2本体面131bの側に向かってZ方向に直線状に延びている。第1引込縁171aは、例えば、第1本体面131aと第2本体面131bとの中間位置まで延びていてもよい。第2引込縁171bは、第2本体面131bから第1本体面131aの側に向かってZ方向に直線状に延びている。第2引込縁171bは、例えば、第1本体面131aと第2本体面131bとの中間位置まで延びていてもよい。段差接続縁171cは、第1引込縁171aと第2引込縁171bとを接続するように、第1引込縁171aから第2引込縁171bに向かって直線状に延びている。このように、Z方向に沿った断面視において、引込部170の引込縁171は、段差状に形成されている。
【0383】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0384】
また、第1引込縁171aと第2引込縁171bとを接続する段差接続縁171cが設けられていることにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等によりベーパーチャンバ101をしっかりと支持して持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0385】
(第3の実施の形態の第4変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、引込部170の引込縁171が、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されている例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、図52に示すように、引込部170の引込縁171が、外周縁132oから中継点172に近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されるとともに、中継点172から第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150から遠ざかるように形成されていてもよい。
【0386】
図52に示す例においては、上述した実施の形態とは異なり、下側シート110および上側シート120は、平面視において、同じ大きさで形成されている。そして、平面視において、下側シート110の外周縁111oと上側シート120の外周縁121oとが重なっている。すなわち、平面視において、下側シート110の長手方向側縁111a、111bおよび短手方向側縁111c、111dがそれぞれ、上側シート120の長手方向側縁121a、121bおよび短手方向側縁121c、121dに重なっている。
【0387】
また、図52に示す例においては、平面視におけるウィックシート130の外周縁132oは、第2本体面131bの側に位置している。この場合において、引込部170の引込縁171は、外周縁132oから中継点172を通って第1本体面131aに延びている。中継点172は、Z方向において、第1本体面131aと第2本体面131bとの中間位置に位置していてもよい。引込縁171は、蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している。引込縁171は、外周縁132oから中継点172に近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように形成されるとともに、中継点172から第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150から遠ざかるように形成されている。このような引込縁171によって、引込部170は、ウィックシート130の中央部において蒸気流路部150の側に窪んだような形状になっている。
【0388】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0389】
また、引込部170の引込縁171が蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲していることにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等によりベーパーチャンバ101をしっかりと支持して持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0390】
また、ベーパーチャンバ101が反対向きに載置された場合であっても、すなわち、上側シート120の第2上側シート面120bが載置面179を向くように載置された場合であっても、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を引込部170の引込縁171に当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101が反対向きに載置された場合であっても、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0391】
(第3の実施の形態の第5変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、Z方向に沿った断面視において、引込部170の引込縁171が、外周縁132oから延びる引込縁171を有している例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、図53に示すように、引込部170が、第1本体面側引込部174と、第2本体面側引込部175と、を含み、Z方向に沿った断面視において、第1本体面側引込部174が、第1本体面側引込縁176を有し、第2本体面側引込部175が、第2本体面側引込縁177を有していてもよい。
【0392】
図53に示す例においては、上述した実施の形態とは異なり、下側シート110および上側シート120は、平面視において、同じ大きさで形成されている。そして、平面視において、下側シート110の外周縁111oと上側シート120の外周縁121oとが重なっている。すなわち、平面視において、下側シート110の長手方向側縁111a、111bおよび短手方向側縁111c、111dがそれぞれ、上側シート120の長手方向側縁121a、121bおよび短手方向側縁121c、121dに重なっている。
【0393】
また、図53に示す例においては、引込部170が、第1本体面131aの側に設けられた第1本体面側引込部174と、第2本体面131bの側に設けられた第2本体面側引込部175と、を含んでいる。平面視におけるウィックシート130の外周縁132oは、第1本体面131aと第2本体面131bとの間に位置している。外周縁132oは、第1本体面131aと第2本体面131bとの中間位置に位置していてもよい。ウィックシート130の外周縁132oは、下側シート110の外周縁111oおよび上側シート120の外周縁121oよりも外側に突出するように形成されている。第1本体面側引込部174は、この外周縁132oよりも第1本体面131aの側に形成されており、第2本体面側引込部175は、この外周縁132oよりも第2本体面131bの側に形成されている。
【0394】
Z方向に沿った断面視において、第1本体面側引込部174は、外周縁132oから第1本体面131aに延びる第1本体面側引込縁176を有している。第1本体面側引込縁176は、第1本体面131aに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している。これにより、第1本体面側引込部174は、第1本体面131aの側において蒸気流路部150の側に窪んだような形状になっている。
【0395】
また、Z方向に沿った断面視において、第2本体面側引込部175は、外周縁132oから第2本体面131bに延びる第2本体面側引込縁177を有している。第2本体面側引込縁177は、第2本体面131bに近づくにつれて蒸気流路部150に近づくように蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲している。これにより、第2本体面側引込部175は、第2本体面131bの側において蒸気流路部150の側に窪んだような形状になっている。
【0396】
このような場合であっても、第1本体面側引込部174に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0397】
また、第1本体面側引込部174の第1本体面側引込縁176が蒸気流路部150の側に向かって凹状に湾曲していることにより、吊下げ装置180の爪部182a、182b等によりベーパーチャンバ101をしっかりと支持して持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0398】
また、ベーパーチャンバ101が反対向きに載置された場合であっても、すなわち、上側シート120の第2上側シート面120bが載置面179を向くように載置された場合であっても、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を第2本体面側引込部175の第2本体面側引込縁177に当接させて上方に移動させることで、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101が反対向きに載置された場合であっても、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性をより一層向上させることができる。
【0399】
(第3の実施の形態の第6変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、引込部170が、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bおよび一対の短手方向側縁132c、132dからそれぞれ引き込まれている例について説明した(図35参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、引込部170が、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bのうちの少なくとも一方から引き込まれていてもよい。
【0400】
図54および図55に示す例においては、引込部170が、ウィックシート130の長手方向側縁132a(図54における下側)から引き込まれている。すなわち、ウィックシート130の長手方向側縁132aの側に、引込部170が設けられている。一方、引込部170は、ウィックシート130の長手方向側縁132b(図54における上側)および短手方向側縁132c、132dからは引き込まれていない。
【0401】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0402】
また、引込部170を設ける領域を制限することで、ベーパーチャンバ101の領域を有効に活用することができる。すなわち、ウィックシート130のより広範な領域に蒸気流路部150および液流路部160を設けることができ、ベーパーチャンバ101の性能を向上させることができる。
【0403】
(第3の実施の形態の第7変形例)
また、引込部170が、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bのうちの一方から引き込まれるとともに、ウィックシート130の一対の短手方向側縁132c、132dのうちの一方からも引き込まれていてもよい。
【0404】
図56に示す例においては、引込部170が、ウィックシート130の長手方向側縁132a(図56における下側)から引き込まれるとともに、ウィックシート130の短手方向側縁132c(図56における左側)からも引き込まれている。すなわち、ウィックシート130の長手方向側縁132aの側に引込部170が設けられるとともに、ウィックシート130の短手方向側縁132cの側にも引込部170が設けられている。一方、引込部170は、ウィックシート130の長手方向側縁132b(図56における上側)および短手方向側縁132d(図56における左側)からは引き込まれていない。
【0405】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0406】
また、引込部170を設ける領域を制限することで、ベーパーチャンバ101の領域を有効に活用することができる。すなわち、ウィックシート130のより広範な領域に蒸気流路部150および液流路部160を設けることができ、ベーパーチャンバ101の性能を向上させることができる。
【0407】
更に、図56に示す例においては、ベーパーチャンバ101の引込部170が設けられた側(長手方向側縁132aおよび短手方向側縁132cの側)を持ち上げて搬送し、ベーパーチャンバ101の引込部170が設けられていない側(長手方向側縁132bおよび短手方向側縁132dの側)を所定の壁面に突き当てることができる。このことにより、ベーパーチャンバ101を壁面に対して位置決めすることが容易になる。このため、例えば、ベーパーチャンバ101の所定の位置にレーザ光を照射して製造情報等を印字する場合に、正確な位置に印字することが可能になる。また、ベーパーチャンバ101を壁面に突き当てた後も、ベーパーチャンバ101を、引込部170が設けられた側から容易に持ち上げることができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0408】
(第3の実施の形態の第8変形例)
また、引込部170が、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bの一部から引き込まれていてもよい。
【0409】
図57に示す例においては、引込部170は、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bの両方からそれぞれ引き込まれている。すなわち、ウィックシート130の一対の長手方向側縁132a、132bのそれぞれの側に、引込部170が設けられている。また、各引込部170は、長手方向側縁132a、132bの一部から引き込まれている。
【0410】
各引込部170は、長手方向側縁132a、132bの中央部から引き込まれていてもよい。また、各引込部170は、平面視において、ベーパーチャンバ101の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置されていてもよい。
【0411】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0412】
また、引込部170を設ける領域を更に制限することで、ベーパーチャンバ101の領域を更に有効に活用することができる。すなわち、ウィックシート130のより広範な領域に蒸気流路部150および液流路部160を設けることができ、ベーパーチャンバ101の性能をより一層向上させることができる。
【0413】
また、各引込部170を、平面視において、ベーパーチャンバ101の重心位置に対して互いに対称となるような位置に配置することで、吊下げ装置180等による吊り下げ時にベーパーチャンバ101の姿勢を安定化することができる。このため、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。
【0414】
(第3の実施の形態の第9変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、ベーパーチャンバ101が、1つのウィックシート130を備えている例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、ベーパーチャンバ101は、複数のウィックシート130を備えていてもよい。
【0415】
ウィックシート130の個数は任意でよい。各ウィックシート130は、互いに同じ形状および寸法を有していてもよいし、互いに異なる形状および寸法を有していてもよい。例えば、各ウィックシート130が、平面視において、同じ大きさで形成されていてもよい。また例えば、一のウィックシート130が、平面視において、全体的に他のウィックシート130よりも小さく形成されていてもよい。
【0416】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0417】
(第3の実施の形態の第10変形例)
また、上述した第3の実施の形態においては、ベーパーチャンバ101が、下側シート110と、上側シート120と、ウィックシート130とで構成されている例について説明した(図36参照)。しかしながら、このことに限られることになく、ベーパーチャンバ101が、下側シート110と、ウィックシート130とで構成されていてもよい。
【0418】
図58に示す例においては、ベーパーチャンバ101は、下側シート110と、ウィックシート130と、を備えているが、上側シート120を備えていない。ハウジング部材Haは、ウィックシート130の第2本体面131bに取り付けられてもよい。作動蒸気2aの熱は、ウィックシート130からハウジング部材Haに伝わる。
【0419】
図58に示す例においては、蒸気流路部150は、第1本体面131aに設けられているが、第2本体面131bまで延びておらず、ウィックシート130を貫通していない。すなわち、蒸気流路部150の第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、下側蒸気流路凹部153で構成されており、ウィックシート130に上側蒸気流路凹部154は設けられていない。
【0420】
図58に示すベーパーチャンバ101の厚さtt5は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。図58に示す下側シート110の厚さtt6は、例えば、6μm~200μmであってもよい。図58に示すウィックシート130の厚さtt7は、例えば、50μm~800μmであってもよい。
【0421】
なお、図58に示す例に限られることはなく、下側シート110の第2下側シート面110bに、蒸気流路部150が設けられていてもよい。この場合、下側シート110の蒸気流路部150は、ウィックシート130の蒸気流路部150と対向する位置に設けられていてもよい。また、下側シート110の第2下側シート面110bに、液流路部160が設けられていてもよい。
【0422】
このように、ベーパーチャンバ101が、下側シート110と、ウィックシート130とで構成されていてもよい。
【0423】
このような場合であっても、ウィックシート130の引込部170に、吊下げ装置180の爪部182a、182b等を係合させることができる。このため、ベーパーチャンバ101を容易に持ち上げることができ、ベーパーチャンバ101の搬送を容易化することができる。この結果、ベーパーチャンバ101の搬送性を向上させることができる。
【0424】
以上述べた実施の形態によれば、ベーパーチャンバの搬送性を向上させることができる。
【0425】
本発明は上記実施の形態および各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。上記実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
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