IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

<>
  • 特開-渦電流反発モータ 図1
  • 特開-渦電流反発モータ 図2
  • 特開-渦電流反発モータ 図3
  • 特開-渦電流反発モータ 図4
  • 特開-渦電流反発モータ 図5
  • 特開-渦電流反発モータ 図6
  • 特開-渦電流反発モータ 図7
  • 特開-渦電流反発モータ 図8
  • 特開-渦電流反発モータ 図9
  • 特開-渦電流反発モータ 図10
  • 特開-渦電流反発モータ 図11
  • 特開-渦電流反発モータ 図12
  • 特開-渦電流反発モータ 図13
  • 特開-渦電流反発モータ 図14
  • 特開-渦電流反発モータ 図15
  • 特開-渦電流反発モータ 図16
  • 特開-渦電流反発モータ 図17
  • 特開-渦電流反発モータ 図18
  • 特開-渦電流反発モータ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096839
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】渦電流反発モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/02 20060101AFI20240709BHJP
   B63G 8/08 20060101ALN20240709BHJP
   B64D 27/30 20240101ALN20240709BHJP
【FI】
H02K17/02 Z
B63G8/08 A
B64D27/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063125
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2022126826の分割
【原出願日】2016-10-31
(31)【優先権主張番号】14/933,333
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ ティロットソン
(72)【発明者】
【氏名】ペン ゼン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より小さなサイズでより大きなトルクを発生させる軽量の電気モータを提供する。
【解決手段】電気モータ(108)の複数の固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)を、電気モータ(108)における回転子(116)の位置に基づいて制御して、固定子コイル(118)のうちの少なくとも1つの固定子コイル(136)に交流電流(130)が流れると、回転子と少なくとも1つの固定子コイルと(136)との間に斥力(140)が発生するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含む回転子であって、軸周りに回転可能な回転子と、
複数の固定子コイルと、
前記回転子の位置に基づいて前記固定子コイルに流れる交流電流を制御する電流制御システムと、を含み、
前記固定子コイルは、前記固定子コイルに交流電流が流れると前記回転子に渦電流が生成されるように、前記回転子に隣接して配置されており、
前記固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間の斥力が前記回転子を前記軸周りに回転させるように、前記少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイルが交流磁場を形成し、前記回転子に渦電流を生じさせる、装置。
【請求項2】
前記回転子の位置が、前記回転子の端部が前記少なくとも1つの固定子コイルに隣接する状態になると、前記電流制御システムは、前記少なくとも1つの固定子コイルに前記交流電流を送る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導電性材料が、導電性の強磁性材料又は導電性の非強磁性材料から選択された少なくとも1つであるか、
前記固定子コイルの各々が、前記固定子コイルのうちの他の固定子コイルとは異なる共振周波数を有しており、
前記固定子コイルに対する無線電磁結合によって前記固定子コイルに電力を送信するように構成された電源をさらに含み、送信された前記電力が前記固定子コイルに流れる交流電流となるか、の少なくとも1つの構成を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記導電性の強磁性材料が、鉄、酸化鉄、ニッケル、又は、サマリウムコバルトから選択された少なくとも1つであるか、
前記導電性の非強磁性材料が、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、銀、錫、チタン、又は、亜鉛から選択された少なくとも1つであるか、の少なくとも1つの構成を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電流制御システムは、
前記固定子コイルに接続された複数のスイッチであって、前記スイッチのうちの少なくとも1つのスイッチが閉位置にある時に、前記少なくとも1つのスイッチが前記少なくとも1つの固定子コイルに前記交流電流を送る複数のスイッチと、
前記回転子の前記位置に基づいて前記固定子コイルを流れる前記交流電流を制御する際に、前記スイッチを制御する制御部と、を含み、
前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間の前記斥力が前記回転子を前記軸周りに回転させるように、前記固定子コイルのうちの前記少なくとも1つの固定子コイルに前記交流電流が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイルが交流磁場を形成し、前記回転子に渦電流を生じさせる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記固定子コイルのうち、前記回転子の前記位置において、前記回転子の端部が位置合わせ状態となっている少なくとも1つの固定子コイルに流れる交流電流を切り替えるように構成されているか、
前記制御部は、ソリッドステート回路、シリコン制御整流器、又は、トライアック(TRIAC)のうちの少なくとも1つを含んで構成されているか、の少なくとも1つの構成を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記回転子の前記位置を示すロータリーエンコーダをさらに含むか、
前記回転子の前記位置に基づく前記回転子における前記渦電流に反応する一群の位置感知コイルをさらに含んでおり、前記制御部が、前記一群の位置感知コイルを用いて、前記回転子の前記位置を特定するか、の少なくとも1つの構成を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記固定子コイルの第1端部は、交流電流供給源に接続されており、前記電流制御システムは、前記固定子コイルの第2端部に接続された電気ブラシと、前記軸の周りに配置された電気的接点と、を含み、前記電気的接点は、電源に接続されるとともに、所与のパターンに配置されることにより、電気的接点が軸周りに回転すると、電気ブラシが回転子の様々な位置の電気的接点と接触して、前記固定子コイルに流れる交流電流を制御するか、
前記斥力が、前記回転子の任意の静止位置から前記回転子を回転させるのに十分なものとなるように、前記固定子コイルが前記回転子に隣接して配置されているか、
前記渦電流が、前記交流磁場と相互作用すると前記斥力を生じさせ、前記斥力のうちの接線方向の力が、前記回転子を前記軸周りに回転させるトルクを生じさせるか、の少なくとも1つの構成を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記回転子は、
強磁性材料を含むコアと、
前記コアに設けられた層と、を含み、前記層は導電性の非強磁性材料を含んでおり、
前記電流制御システムは、前記固定子コイルに流れる直流電流及び前記交流電流を制御することにより、前記回転子の引き付けおよび反発を選択的に行う、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記固定子コイル及び直流電流供給源に並列に接続されたコンデンサをさらに含み、前記コンデンサは、前記コンデンサに蓄積された電荷から前記交流電流を生成する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記交流電流の第1周波数は、前記回転子の回転の第2周波数から独立している、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記交流電流の前記第1周波数は、約10kHz以上である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
電気モータの複数の固定子コイルに流れる交流電流を制御することを含み、
前記交流電流の前記制御は、前記固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、前記電気モータにおける回転子と前記少なくとも1つの固定子コイルとの間に斥力が発生するように、前記回転子の位置に基づいて行う、電気モータの制御方法。
【請求項14】
前記回転子の前記位置を特定することを更に含み、
前記回転子の前記位置の前記特定は、ロータリーエンコーダ、前記回転子に関連付けられた接点、又は、位置感知コイルのうちの少なくとも1つを用いて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記回転子は、強磁性材料から形成されたコア、及び、前記コアを包み込む層を含んでおり、前記層は、導電性の非強磁性材料を含んでおり、
前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間の引力が前記回転子を軸周りに回転させるように、前記少なくとも1つの固定子コイルに流れる直流電流を制御することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して電気モータに関し、特に、交流電流を用いる電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、電力を機械的動力に変換する装置である。電気モータは、様々な用途に用いられる。例えば、限定するものではないが、電気モータは、ファン、ポンプ、工具、ディスクドライブ、ドリル、及び、他のタイプの装置を駆動するために用いられる。電気モータは、様々な環境で使用される。例えば、電気モータは、航空機や他のビークルなどの固定プラットフォーム及び可動プラットフォームでの用途に用いることができる。
【0003】
電気モータを、航空機に用いることにより、様々な機能を実行することができる。例えば、限定するものではないが、航空機の電気モータを用いて、フライト制御面の作動、ランディングギアの昇降、バルブの開閉、及び、航空機におけるその他の機能を実行することができる。
【0004】
航空機に電気モータを用いる場合、重量やスペースなどの要素が、重要な考慮事項となる。現在使用されている電気モータは、強磁性材料を含む回転子を採用している。強磁性材料は、高密度である。従って、回転子の重量によって、電気モータの重量が過度に大きくなる。また、回転子の重量は、電気モータの応答性、速度、及び、出力密度にも影響しうる。
【0005】
例えば、電気モータは、始動及び停止に時間がかかりすぎる場合がある。回転子内の鉄によって、より軽量な他の材料に比べて、慣性モーメントが大きくなる。慣性モーメントが大きいと、応答性が低下する。また、電気モータは、遠心応力、整流電圧の限度、又はこれらの組み合わせによって、最大速度が制限されることがある。
【0006】
また、電気モータは、高価である。例えば、材料及び部品によって、電気モータのコストが高くなっている。
【0007】
また、組み立てコストも高くつく。例えば、電気モータの製造には、コイルの巻回、絶縁層を用いた積層鉄シートの積み重ね、及び、電気モータを組み立てるために行われる工程が含まれる。様々な部品を組み付ける工程によって、電気モータのコストが増す。
【0008】
電気モータに必要とされる製造精度によっても、コストが増す。例えば、電気モータは、回転子と固定子コイルとの間の空隙距離について非常に敏感である場合がある。このように、部品数や、部品を組み付けて電気モータを作るための様々な作業によって、コストが高くなりすぎる場合がある。
【0009】
ブラシレス直流電流(DC)モータは、永久磁石を用いるタイプの電気モータである。これらの永久磁石は、通常、サマリウムコバルト又はネオジム鉄ホウ素を含んで構成されている。これらのタイプの磁石は、製造費が高く、機械加工及び組み付けが、より困難である。
【0010】
ブラシレス直流電流モータは、軸受の重量を含んでいる。軸受は、巻線によって生成される熱に起因する摩耗及び裂けを防止するために選択されるものである。このタイプのモータの慣性モーメントは、多くの場合、非常に大きく、応答性を低下させている。巻線の重量及び熱も、ブラシレス直流電流モータの速度を制限する場合がある。
【0011】
リラクタンスモータは、強磁性の回転子に設けられた非永久磁石の磁極を含む電気モータである。磁気抵抗を利用して、トルクが生成される。リラクタンスモータは永久磁石を使用しないため、このタイプのモータは、ブラシレス直流電流モータより安価である。
【0012】
しかしながら、リラクタンスモータも、通常、回転子と固定子の両方に積層ラミネートを用いている。回転子及び磁束帰還経路に積層体及び強磁性材料を用いることにより、重量が大きくなりすぎることがある。
【0013】
また、固定子と回転子との間には、引力しか生成されないため、このタイプのモータの応答性には限界がある。さらに、このタイプのモータでの速い整流は、停止や方向反転に高い電圧を必要とする。リラクタンスモータは、特定の供給電圧に対して一定の速度を有しており、速度は回転子内の遠心応力によっても制限される。
【0014】
誘導モータは、交流電流(AC)電気モータであり、トルクを生成するための回転子内の電流が、固定子内の巻線によって生成される磁場による電磁誘導によって得られる。誘導モータは、他の永久磁石を用いる電気モータに比べて、低コストである。また、誘導モータは、他のタイプの電気モータよりも制御しやすく、従って、制御回路が比較的単純である。
【0015】
しかしながら、誘導モータは、かご型の回転子設計のために、比較的重量が大きい。このタイプの回転子の設計では、積層ラミネート、巻線、又は、大型の導電性材料を用いる。この回転子の重量が原因で、誘導モータは、応答性が所望レベルより低くなる場合があり、これは特に方向を反転させる際に起こりうる。
【0016】
従って、上述した問題の少なくともいくつかと、他の起こりうる問題とを考慮した方法及び装置を提供することが望ましいであろう。例えば、電気モータの重量に関する技術的問題を克服する方法及び装置を提供することが望ましいであろう。別の例として、電気モータのコストに関する技術的問題を克服する方法及び装置を提供することが望ましいであろう。電気モータの応答性及び速度に関する技術的問題を克服する方法及び装置を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0017】
本開示の一実施例は、装置を提供する。当該装置は、回転子、複数の固定子コイル、及び、電流制御システムを含む。回転子は、導電性材料を含み、軸周りに回転可能である。固定子コイルは、固定子コイルに交流電流が流れると回転子に渦電流が生成されるように、回転子に隣接して配置されている。電流制御システムは、回転子の位置に基づいて、固定子コイルに流れる交流電流を制御する。固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルと回転子との間の斥力が、回転子を軸周りに回転させるように、前記少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイルが交流磁場を形成し、回転子に渦電流を生じさせる。
【0018】
本開示のさらなる例示的な実施例は、デュアル周波数電気モータを提供する。デュアル周波数電気モータは、回転子、固定子コイル、及び、電流制御システムを含んで構成されている。回転子は、軸周りに回転可能であり、強磁性材料から形成されたコア及びコアを包み込む層を含み、層は、非強磁性の導電性材料を含んで構成されている。固定子コイルは、交流電流供給源及び直流電流供給源に接続されている。電流制御システムは、回転子の位置に基づいて、前記固定子コイルに流れる交流電流及び直流電流を制御する。固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルは、前記少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、交流磁場を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回
転子との間に斥力を生じさせるとともに、前記少なくとも1つの固定子コイルに直流電流が流れると、一方向の磁場を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間に引力を生じさせて、前記回転子を前記軸周りに回転させる。
【0019】
本開示のさらなる例示的な実施例は、電気モータの制御方法を提供する。当該方法は、電気モータの複数の固定子コイルに流れる交流電流を制御することを含む。交流電流の制御は、固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、電気モータにおける回転子と前記少なくとも1つの固定子コイルとの間に斥力が発生するように、回転子の位置に基づいて行う。
【0020】
本開示のさらなる例示的な実施例は、電気モータの制御方法を提供する。電気モータの回転子が固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに対する第1位置にある時に、電気モータの前記少なくとも1つの固定子コイルに直流電流を送り、前記少なくとも1つの固定子コイルと回転子との間の引力が、回転子を軸周りに回転させる。回転子が前記少なくとも1つの固定子コイルに対する第2位置にある時に、電気モータの前記少なくとも1つの固定子コイルに交流電流を送り、前記少なくとも1つの固定子コイルと回転子との間の斥力が、回転子を軸周りに回転させる。
【0021】
特徴及び機能は、本開示の様々な実施例において独立して達成することができ、あるいは他の実施形態との組み合わせてもよく、さらなる詳細は、以下の説明及び図面を参照すれば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
例示的な実施例に特有のものと考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施例、ならびに、好ましい使用形態、更にその目的及び利点は、以下に示す添付の図面と共に本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【0023】
図1】例示的な実施例による電気モータ環境のブロック図である。
図2】例示的な実施例による電流制御システムのブロック図である。
図3】例示的な実施例による、回転子を有する電気モータの図である。
図4】例示的な実施例による、電気モータの動作を示す図である。
図5】例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作を示す図である。
図6】例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作を示す図である。
図7】例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作を示す図である。
図8】例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作を示す図である。
図9】例示的な実施例によるデュアル周波数電気モータの図である。
図10】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータの動作を示す図である。
図11】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータの動作を示す図である。
図12】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータの電源のブロック図である。
図13】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータの電源のブロック図である。
図14】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータの電源のブロック図である。
図15】例示的な実施例による、電気モータの回転子の図である。
図16】例示的な実施例による、電気モータを制御するプロセスのフローチャートである。
図17】例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータを制御するプロセスのフローチャートである。
図18】例示的な実施例による、航空機の製造及び保守方法のブロック図である。
図19】例示的な実施例が実施される航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な実施例においては、1つ又は複数の問題点が認識及び考慮されている。例えば、回転子における強磁性材料の使用、及び、回転子ならびに電気モータの他の部分における部品の数に起因して、所望の応答性が得られず、コストが高くなりすぎる場合があるということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。また、回転子に発生しうる遠心応力によって速度が制限されることのない電気モータを提供することが望ましいということも、例示的な実施例において認識及び考慮されている。
【0025】
現在利用可能な電気モータと比べて、より小さなサイズでより大きなトルクを発生させる軽量の電気モータを提供することが望ましいということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。例えば、無人航空機などの航空機の主翼に配置されうる電気フライト制御アクチュエータにおいて、高加速度及び高出力密度を実現することが望ましい。
【0026】
また、医療用途や研究用の電気モータの小型化及び高速化が望まれていることが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。現在利用可能な電気モータに比べて小型の、所望のトルクを有する電気モータが、人口装具や移植用装置などの医療機器に有用であろう。研究に関しては、所望のレベルの回転速度を実現する電気モータが、遠心機などの医療機器に望まれている。
【0027】
重量、スペース、及び、速度が、車に用いられる電気モータにとっての要素であるということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。電気自動車やハイブリッド電気自動車、特に、これらのタイプの自動車の高性能バージョンでは、電気モータのサイズ、重量及び速度が、車を設計する際の考慮事項である。
【0028】
従って、強磁性材料の量又は部品数のうちの少なくとも1つを低減させた電気モータを提供することが望ましいということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。本明細書において、「少なくとも1つの」という語句がアイテムのリストと共に用いられる場合は、リストアップされたアイテムの1つ又は複数の様々な組み合わせを用いてもよいということであり、リストの各アイテムの1つだけを必要とする場合もあることを意味する。すなわち、「少なくとも1つの」は、あらゆる組み合わせのあらゆる数のアイテムをリストから使用してもよいが、リスト上の全てのアイテムを必要とするわけではないということを意味する。アイテムは、ある特定の対象、物、又はカテゴリーであってもよい。
【0029】
例えば、限定するものではないが、「アイテムA、アイテムB、又はアイテムC」は、アイテムA、アイテムAとアイテムB、又は、アイテムB、を含みうる。この例は、アイテムAとアイテムBとアイテムC、又は、アイテムBとアイテムC、をさらに含みうる。もちろん、これらのアイテムのあらゆる組み合わせが存在しうる。いくつかの例示的な実施例において、「少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個のアイテムAと、1個のアイテムBと、10個のアイテムC;4個のアイテムBと7個のアイテムC;又は、他の適当な組み合わせであってもよい。
【0030】
強磁性材料の量又は部品数の低減が実現される一態様は、ロータの重量の低減を伴うということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。これによって、応答性、速度、及び、出力密度における制限が、軽減される。例示的な一実施例において、導電性
材料内に発生をもたらす周波数の磁場が、電気モータにおける回転子の重量を低減する態様で用いられる。
【0031】
誘導電流は、誘導電流を発生させた変化とは反対の方向に流れるということが、例示的な実施例において認識及び考慮されている。また、互いに反対方向に流れる電流は、磁気的に互いに反発しあう傾向にある。すなわち、これらの電流は、互いに反発し合う磁場を形成する。従って、「渦電流」として知られる誘導電流は、通常、「渦電流」を生じさせている電流によって、はね返される。
【0032】
例示的な一実施例において、装置は、回転子、固定子コイル、及び、電流制御システムを含む。回転子は、導電性材料を含み、軸周りに回転可能である。固定子コイルは、回転子に隣接して配置され、固定子コイルに交流電流が流れると、回転子に渦電流が発生するようになっている。電流制御システムは、回転子の位置に基づいて、固定子コイルに流れる交流電流を制御する。固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルと回転子との間の斥力が回転子を軸周りに回転させるように、当該少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、当該少なくとも1つの固定子コイルが交流磁場を形成し、回転子に渦電流を生じさせる。
【0033】
次に、図面を参照し、特に図1を参照すると、同図には、例示的な一実施例による、電気モータ環境のブロック図が示されている。電気モータ環境100は、例示的な実施例が実施される環境の一例である。
【0034】
電気モータ環境100は、電気モータシステム102がプラットフォーム106に対して機械的な動力104を供給する任意の環境であってよい。例えば、電気モータ環境100は、限定するものではないが、製造環境、研究環境、医療環境、軍事環境、輸送環境、又は、プラットフォーム106に機械的動力104が必要とされるあるいは所望される、その他の任意の適当な環境を含みうる。
【0035】
例えば、プラットフォーム106は、可動プラットフォーム、固定プラットフォーム、陸上ベースの構造体、水上ベースの構造体、及び、宇宙ベースの構造体によって構成される群から選択されうる。より具体的には、プラットフォームは、水上艦、タンク、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家屋、製造施設、建物、及びその他の適当なプラットフォームによって構成される群から選択されうる。例示的な一実施例において、プラットフォーム106は、人体でありうる。
【0036】
電気モータシステム102は、電気モータ環境100において、任意の適当な用途に機械的動力104を提供するよう構成することができる。例えば、限定するものではないが、この用途には、ファン、ポンプ、工具、ディスクドライブ、ドリル、任意の他の適当なタイプの装置、又は装置の様々な組み合わせを駆動することが含まれうる。例えば、限定するものではないが、プラットフォーム106が航空機の形態である場合、電気モータシステム102の用途は、フライト制御面の作動、ランディングギアの昇降、及び、航空機におけるその他の機能や機能の様々な組み合わせを実行することを含みうる。
【0037】
この例示的な実施例において、電気モータシステム102は、所定数の様々なコンポーネントを含む。図示のように、電気モータシステム102は、電気モータ108、センサーシステム110、電流制御システム112、及び、電源114を含む。
【0038】
電気モータ108は、この例示的な実施例において、機械的動力104を生成する。電気モータ108は、回転子116及び固定子コイル118を含む。
【0039】
図示のように、回転子116は、導電性材料120を含んで構成されている。また、回転子116は、軸122周りに回転可能である。例示的な実施例において、導電性材料120は、導電性の強磁性材料124又は導電性の非強磁性材料126から選択された少なくとも1つである。
【0040】
導電性の強磁性材料124は、鉄、酸化鉄、ニッケル、サマリウムコバルト、又はいくつかの他の適当な材料から選択された少なくとも1つである。この実施例において、導電性の非強磁性材料126は、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、ニッケル、銀、錫、チタン、亜鉛、又は他の適当な材料から選択された少なくとも1つである。
【0041】
固定子コイル118は、回転子116に隣接して配置されている。例示的な実施例において、固定子コイル118は、回転子116に隣接して配置されていることにより、回転子116の任意の静止位置から回転子116を回転させるのに十分なレベルの斥力140を生成することができようになっている。
【0042】
当該位置は、交流電流130が固定子コイル118に流れると渦電流128が回転子116に生成される位置である。この例示的な実施例において、交流電流130は、固定子コイル118内の巻線132に流れる。巻線132は、固定子コイル118内にコイル状に重ねられた導電性ワイヤである。
【0043】
例示的な実施例において、交流電流130の第1周波数は、回転子116の回転の第2周波数から独立している。すなわち、第1周波数は、第2周波数に関連していない。例えば、第1周波数は、第1周波数及び第2周波数の整数倍又は有理数積である。例示的な一実施例において、交流電流130の周波数は、約10kHz以上である。
【0044】
ここで、周波数は、渦電流128の所望位置に基づいて、選択することができる。例えば、回転子116の表面付近あるいは内側深くの位置のどちらに渦電流128を発生させることが望ましいかに基づいて、周波数を選択してもよい。例示的な実施例においては、渦電流128の発生位置が軸122から遠いほど、トルクが大きくなる。
【0045】
センサーシステム110は、回転子116の位置134を特定する。図示のように、位置134は、センサーシステム110によって、電流制御システム112に送信される。
【0046】
例示的な一実施例において、センサーシステム110は、回転子116の位置134を示すロータリーエンコーダである。ロータリーエンコーダは、回転子116、あるいは回転子116が搭載されたシャフトのうちの少なくとも1つに取り付けられうる。例示的な一実施例において、ロータリーエンコーダは、機械エンコーダ、光学エンコーダ、磁気エンコーダ、容量エンコーダ、又は他の適当なエンコーディングシステムから選択された1つであってもよい。
【0047】
別の例示的な実施例において、センサーシステム110は、回転子116の位置134に基づく回転子116における渦電流128に反応する(あるいは、回転子116の位置134に基づいて回転子116における渦電流128に反応する)、一群の位置感知コイルである。回転子116の位置134は、一群の位置感知コイルによって、特定される。
【0048】
位置感知コイルがある場合、位置感知コイルの各々に、交流電流が継続的に送られる。回転子116が回転すると、位置感知コイルによって、回転子116に渦電流128が誘起される。渦電流128は、回転子116が位置感知コイルに近づくにつれて、強くなる。この結果、この位置感知固定子コイルに流れる交流電流が、減少する。このようにして
、回転子116の位置を、渦電流128によって起こる、位置感知コイルを流れる交流電流の変化によって特定することができる。
【0049】
位置感知コイルに送られる交流電流は、交流電流130に比べて弱い。この交流電流は、斥力140が生成されないか、あるいは、回転子116の回転に望ましくない影響を与えることがない程度に斥力140が十分に小さくなるように設定される。
【0050】
センサーシステム110のこのタイプの実施は、ロータリーエンコーダに生じうる汚れやその他のデブリによってブロックされるような光学コンポーネントを必要としない。このように、回転子116の位置134は、渦電流128の影響による、位置感知コイルを流れる電流の変化に基づいて、特定することができる。
【0051】
この例示的な実施例において、電流制御システム112は、回転子116の位置134に基づいて、固定子コイル118における交流電流の流れを制御する。電流制御システム112は、整流子の形態であってもよい。後述のように、電流制御システム112は、回転子116の位置134が固定子コイル118に対する選択された位置となった際に、適当な固定子コイル118を電源114に接続することができる。
【0052】
固定子コイル118のうちの固定子コイル136に交流電流130が流れると、当該固定子コイル136が交流磁場138を形成し、回転子116に渦電流128を生じさせ、固定子コイル136と回転子116との間の斥力140が回転子116を軸122周りに回転させる。
【0053】
より詳しくは、渦電流128が、交流磁場144を形成する。固定子コイル136からの交流磁場138と、回転子116の端部142からの交流磁場144とが相互作用して、斥力140が生成される。
【0054】
図示の実施例において、回転子116の位置134が、回転子116の端部142が固定子コイル136に隣接する状態になると、電流制御システム112が、固定子コイル136に交流電流130を送る。
【0055】
図2を参照すると、同図には、例示的な一実施例による、電流制御システムのブロック図が示されている。例示的な実施例において、2つ以上の図面で同じ参照数字が使用される場合がある。このように、異なる図面で同じ参照数字を使用している場合、図面が異なっても同じ要素であることを表している。
【0056】
後述のように、渦電流128は、様々な方法で実施することができる。例示的な一実施例において、電流制御システム112は、制御部200及び複数のスイッチ202を含む。
【0057】
スイッチ202は、図1に示した固定子コイル118及び電源114に接続されている。なお、固定子コイル118は、スイッチ202を介して間接的に電源114に接続されている。ここで、スイッチ202の各々は、固定子コイル118のうちの対応する固定子コイルに接続されている。
【0058】
例えば、スイッチ202のうちの少なくとも1つのスイッチ204が閉位置にある時、当該スイッチ204が、固定子コイル136に交流電流130を送る。スイッチ204が開位置208にある時、固定子コイル136に交流電流130は流れない。
【0059】
制御部200は、回転子116の位置134に基づいてスイッチ202を制御すること
によって、固定子コイル118における交流電流130の流れを制御する。すなわち、制御部200は、回転子116の位置134に基づいて、スイッチ202をオンオフする。回転子116の位置134は、図1に示したセンサーシステム110によって特定される。
【0060】
この例示的な一実施例において、固定子コイル118のうちの固定子コイル136に交流電流130が流れると、当該固定子コイル136が交流磁場138を形成する。交流磁場138は、回転子116に渦電流128を生じさせ、固定子コイル136と回転子116との間の斥力140が回転子116を軸122周りに回転させる。より詳しくは、渦電流128が、交流磁場144を形成する。固定子コイル136からの交流磁場138と、回転子116の端部142からの交流磁場144とが相互作用して、斥力140が生成される。
【0061】
制御部200は、固定子コイル118のうち、回転子116の端部142が位置合わせ状態となっている固定子コイル136に流れる交流電流130を切り替えるように構成されている。図示の実施例においては、この位置合わせ状態として、回転子116の端部142が固定子コイル136の中心を通り過ぎた状態が選択されている。
【0062】
位置に加えて、制御部200は、交流電流130が交流電流(AC)サイクルにおけるゼロ又はゼロに近い場合に、固定子コイル136への交流電流130の流れをオフにしてもよい。このようにして、整流電圧を低減することができる。この低減によって、高電流を使用が可能となり、高トルクにつながる。高電流の使用は、高価又は重量の大きい高電圧コンポーネントを用いずに実現することができる。また、交流電流130をオンオフするパターンは、磁気による引力を利用する電気モータとは異なる、回転子に対する位相角を用いて、実現してもよい。
【0063】
例示的な実施例において、制御部200は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、実施することができる。ソフトウェアを用いる場合、制御部200によって行われる動作は、プロセッサユニットなどのハードウェアで実行されるように構成されたプログラムコードによって実施されうる。ファームウェアを用いる場合、制御部200によって行われる動作は、プログラムコード及びデータによって実施され、永続性メモリに格納されて、プロセッサユニットで実行される。ハードウェアを用いる場合、当該ハードウェアは、制御部200における動作を実行するように動作する回路を含む。
【0064】
例示的な実施例において、ハードウェアは、回路システム、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス、又は、所定数の処理を行うように構成された他の適当なタイプのハードウェアの形態であってもよい。例えば、制御部200は、ソリッドステート回路、シリコン制御整流器(SCR)、トライアック(TRIAC:triode for alternating current circuit)、又は他の適当なタイプの回路のうちの少なくとも1つを含んで構成することができる。
【0065】
プログラマブルロジックデバイスの場合、当該デバイスは、所定数の操作を行うように構成してもよい。当該デバイスは、後に構成を変更してもよいし、所定数の操作を行う恒久的な構成としてもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、プログラマブルロジックアレイ、プログラマブルアレイロジック、フィールドプログラマブルロジックアレイ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び、他の適当なハードウェアデバイスを含む。また、プロセスは、無機要素が組み込まれた有機要素によって実施してもよいし、人間を除く有機要素によって全体を構成してもよい。例えば、プロセスは、有機半導体の回路として実現してもよい。
【0066】
別の例示的な実施例において、電流制御システム112は、電気ブラシ210及び電気的接点212を含んで構成されうる。この例示的な実施例において、固定子コイル118は、電源114に接続された第1端部を有する。電気ブラシ210は、固定子コイル118の第2端部に接続されている。
【0067】
電気的接点212は、図1に示した軸122の周りに配置されている。電気的接点212は、電源114に接続されている。電気ブラシ210は、回転子116の位置によって、電気的接点212に接触しうる。
【0068】
電気的接点212は、回転子116が回転すると、回転する。また、電気的接点212が、所与のパターン214に配置されることにより、電気的接点212が軸122周りに回転すると、電気ブラシ210が、回転子116の様々な位置の電気的接点212に接触する。これにより、固定子コイル118における交流電流130の流れが制御される。
【0069】
電気的接点212は、回転子116に関連付けられている。この関連付けは、例えば、直接的な関連付けであり、電気的接点212が回転子116に設けられている。別の例において、この関連付けは、間接的なものであり、電気的接点212は、回転子116に連結されたシャフトに設けられている。
【0070】
電気ブラシ210及び電気的接点212の使用は、低コストであり、電気モータシステム102における電気回路の使用を減らすことができる。この結果、このタイプの構成では、コストが低減されうる。
【0071】
従って、例示的な実施例は、電気モータの重量についての技術的問題を克服する1つ又は複数の技術的解決策を提供する。例えば、電気モータ108では、現在用いられている電気モータで使用されている材料に代えて、より軽量の材料を用いることができる。
【0072】
別の例として、例示的な実施例は、電気モータのコストに関する技術的問題を克服する技術的解決策を提供する。例えば、より少ない数のコンポーネントを用いて、電気モータ108を製造することができ、これは、コンポーネントやアセンブリのコストの削減につながる。例えば、電気モータ108の回転子116は、積層体や、重い材料を用いる必要がない。
【0073】
また、例示的な実施例は、電気モータの応答性及び速度についての技術的問題を克服する1つ又は複数の技術的解決策を提供しうる。慣性が大きいことよって応答性及び速度が制限されるのを、緩和することができる。また、例示的な実施例によれば、回転子にかかる応力によってスポット及び速度が制限されることも、緩和されうる。例えば、回転子116を、現在用いられている回転子に比べてよりシンプルな設計として、所望のレベルの性能を実現することができる。
【0074】
図1及び図2における電気モータ環境100及び様々なコンポーネントの図示は、例示的な実施形態を実施する態様に対して、物理的又は構造的な限定を加えるものではない。図示されたコンポーネントに加えて、又はこれらのコンポーネントに代えて、他のコンポーネントを用いることもできる。いくつかのコンポーネントを必要としない場合もある。また、図中のブロックは、機能的なコンポーネントを示す。例示的な一実施例において実施する際には、これらのブロックの1つ又は複数を、組み合わせたり、分割したり、あるいは組み合わせて異なるブロックに分割したりしてもよい。
【0075】
例えば、センサーシステム110は、回転子116の位置134に加えて、又はこれに
代えて、他の情報を特定してもよい。例えば、センサーシステム110は、電気モータ108に関する温度、速度、トルク、磁場レベル、又は、他の何らかの所望の情報から選択された少なくとも1つの情報を特定してもよい。
【0076】
本実施例において、電源114は、固定子コイル118に交流電流130を供給する。交流電流130の供給は、電流制御システム112の制御下で行われる。交流電流130は、直接的又は間接的に供給することができる。例えば、交流電流130は、ワイヤによって直接供給してもよいし、固定子コイル118に対する無線電磁結合によって間接的に供給してもよい。
【0077】
別の例として、各固定子コイル118の共振周波数が、他の固定子コイルとは異なるものであってもよい。共振周波数とは、ある大きさの交流電流で、固定子コイルの応答が最大となる周波数である。例示的な実施例において、共振周波数は、固定子コイルに並列に接続されたコンデンサを用いて設定してもよい。
【0078】
本実施例において、制御部200は、固定子コイル118に対する無線電磁結合によって、固定子コイル118に電力を送るように構成された電力トランスミッタを含む。送られた電力が、固定子コイル118を流れる交流電流130となる。
【0079】
別の例示的な実施例において、電流制御システム112がアナログ電流制御システムである場合、センサーシステム110を省いてもよい。電気ブラシ及び電気的接点が設けられている場合、センサーシステム110が無くても、回転子116の位置134を特定することができる。
【0080】
図3図8を参照して、例示的な実施例による電気モータの動作を説明する。これらの図面は、斥力を利用して電気モータの回転子を回転させる方法を示している。
【0081】
まず図3を参照すると、同図には、例示的な実施例による、回転子を有する電気モータが示されている。この例示的な実施例において、電気モータ300は、回転子302及び固定子コイル304を含む。
【0082】
図示のように、回転子302は、軸312から延びるアーム301及びアーム303を有する。この例示的な実施例において、回転子302は、磁性材料を含まない。回転子302は、導電性の非強磁性材料という形態の導電性材料を含んで構成されている。この例においては、回転子302は、アルミニムを含んで構成されている。
【0083】
この例示的な実施例において、固定子コイル304は、固定子コイル306、固定子コイル308、及び、固定子コイル310を含む。3つ以上の任意の数の固定子コイル304を、電気モータ300に用いることができる。
【0084】
図示のように、回転子302は、静止位置にある。この例示的な実施例において、当該静止位置は、開始位置である。この例において、回転子302の所望の回転方向は、軸312周りの矢印314の方向である。
【0085】
この例示的な実施例において、回転子302のアーム301の端部316は、固定子コイル306に対する開始位置にあるものとして示されている。一連の動作によって、固定子コイル304が作動したり停止したりすることにより、回転子302が回転する。
【0086】
この回転子302の開始位置において、回転子302のアーム301の端部316と固定子コイル306との位置合わせ状態は、端部316の中心線320が、固定子コイル3
06の中心線318からオフセットしている状態である。すなわち、端部316は、固定子コイル306の中心を通り過ぎた状態にある。この例示的な実施例において、オフセットは度数で測定される。オフセットは、例えば、1°又は2°である。
【0087】
中心線は、回転子302や固定子コイル306などのオブジェクトを半分に分ける線である。図示のように、固定子コイル308は中心線322を有しており、固定子コイル310は中心線324を有している。これらの図示の例における中心線は仮想線であり、構造体上に実際に見えるものではない。
【0088】
この例に示したオフセットの結果、電気モータの動作が開始すると、回転子302は、矢印314の方向に回転する。中心線318と中心線320とのオフセット量は、固定子コイル306に交流電流を流したときに生成されることが望まれる斥力の大きさによって、変えることができる。
【0089】
図4を参照すると、同図には、例示的な実施例による電気モータの動作が示されている。図示のように、固定子コイル306に交流400が流れると、固定子コイル306がオンになる。
【0090】
交流電流400が流れることによって、交流磁場404が形成される。交流磁場404が形成されたことにより、回転子302の端部316に渦電流402が生成される。渦電流402は、交流磁場406を生成する。
【0091】
この例示的な実施例において、交流電流400は、現在利用可能な他の交流電流モータと比べて、比較的高い周波数を有しうる。例えば、周波数は、10kHz以上である。
【0092】
これらの2つの電流による磁場によって、斥力408が生成される。すると、同図に示すように、斥力408によって、回転子302が矢印314の方向に回転する。
【0093】
図示のように、斥力408は、2つの成分を有する。これらの成分は、接線方向の力410と径方向の力412である。これらの成分は、回転子302の回転に関連している。接線方向の力410はトルクを生成し、これが回転子302を回転させる。
【0094】
図5を参照すると、同図には、例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作が示されている。この例において、回転子302は、回転子302の中心線320が固定子コイル310の中心線324と揃う状態まで回転している。
【0095】
この位置において、固定子コイル306は、オフにされる。すなわち、図4に示した交流電流400は、もはや固定子コイル306には流れない。従って、図4に示した交流磁場404も、もはや存在しない。
【0096】
図6には、例示的な実施例による、斥力を利用した電気モータの動作が示されている。図示のように、回転子302は、回転子302の慣性モーメントによって、図5に示した位置から図6に示した位置まで回転している。
【0097】
同図において、回転子302は、回転子302の端部317の中心線320が、固定子コイル310の中心線324を通り過ぎた状態まで回転している。すなわち、回転子302の端部317と固定子コイル310との位置合わせ状態は、固定子コイル310の中心線324と端部317の中心線320との間にオフセットが生じた状態となっている。
【0098】
端部317と固定子コイル310とがこのような位置合わせ状態になると、固定子コイ
ル310に交流電流600が送られ、固定子コイル310がオンになる。すなわち、回転子302の端部317が固定子コイル310の中心線324を過ぎた位置まで回転すると、固定子コイル310に交流電流600が送られる。固定子コイル310に交流電流600が流れると、交流磁場602が形成される。
【0099】
交流磁場602によって、回転子302の端部317に渦電流402が流れる。すると今度は、渦電流402によって、回転子302の端部317に交流磁場604が形成される。
【0100】
固定子コイル310における交流電流600及び渦電流402の結果、交流磁場602と交流磁場604の相互作用による斥力408が生じる。この結果、回転子302にトルクが付与され、回転子302が矢印314の方向に回転する。
【0101】
次に、図7を参照すると、同図には、例示的な実施例による、斥力を用いた電気モータの動作が示されている。回転子302は、端部316の中心線320が固定子コイル308の中心線322と揃う状態まで回転している。この位置では、固定子コイル310は、オフにされる。
【0102】
図8を参照すると、同図には、例示的な実施例による、斥力を用いた電気モータの動作が示されている。図示のように、回転子302は、回転子302における慣性モーメントによって、図7に示した位置から図8に示した位置まで、回転している。
【0103】
同図において、回転子302の中心線320は、固定子コイル308の中心線322に対して、所定の位置合わせ状態とされている。この位置合わせ状態は、中心線320が中心線322からオフセットしている状態である。
【0104】
この位置合わせ状態では、交流電流800が固定子コイル308に流れて固定子コイル308がオンにされ、固定子コイル308によって交流磁場802が形成される。この結果、回転子302の端部316に渦電流402が流れる。渦電流402によって、交流磁場804が形成される。
【0105】
このようにして、交流電流800及び渦電流402によって、斥力408が生成される。斥力408によって、回転子302が矢印314の方向に回転する。回転子302のこの回転によって、回転子302は、図3に示した位置に戻る。
【0106】
図示の例においては、トルクが矢印314の方向に常に存在するように、固定子コイル304の所定のパターンのオンオフが行われる。上述のように、電気モータ300の作動中における端部316と固定子コイル304との位置合わせは、回転子302の端部316の中心線320と、固定子コイル304の中心線との間にオフセットが生じるように、行われる。例示的な実施例において、オフセットは、度数で測定される。度数は、実施形態によって、変化しうる。
【0107】
図3図8に示した電気モータ300は、図1にブロック図で示した電気モータ108の一実施形態を示す目的で図示したものである。電気モータ300のこの図示は、電気モータ108が他の例示的な実施例で実施される態様を限定することを意図するものではない。
【0108】
固定子コイル304は、電気モータ300に示すように、3つの固定子コイルを含んでいるものの、他の例示的な実施例において、これ以外の数の固定子コイル304を用いてもよい。例えば、他の例示的な実施例において、2個、5個、7個、又はその他の数の固
定子コイル304を電気モータ300に用いてもよい。
【0109】
この例示的な実施例において、固定子コイルの数は、回転子302の構成に依存しうる。図示のように、回転子302は、アーム301及びアーム303という形態の、軸312から延びる2つの長状部材を有している。他の例示的な実施例において、アームの数が異なる場合もありうる。
【0110】
固定子コイル304及び回転子302のアームの数を選択するにあたって、固定子コイル304の数は、様々な方法で選択することができる。例えば、固定子コイル304の数は、2より大きく、且つ、回転子302のアームの数に0.5、1、又は2を乗じたものとは異なる値として、選択されうる。0.5、1、又は2という割合を採用すると、固定子コイル304の斥力が対称となる位置に回転子302がくる可能性が生じる。斥力が対称となる位置が存在すると、これらの位置では回転子302に与えられるトルクが実質的にゼロとなるため、これらの割合は回転子302にとって望ましくない。
【0111】
これらの位置のうちの1つで回転子302が停止すると、回転子302は再び動き始めることができない。例えば、固定子コイル304が4個で、回転子302のアームが2個である構成は、あまり望ましくない。
【0112】
好ましい構成の一例において、固定子コイル304の数と、回転子302のアームの数は、1だけ異なる、すなわち、連続する数である。例えば、回転子302が9個のアームを有する場合、10個の固定子コイルを、固定子コイル304として用いればよい。
【0113】
好ましい構成の別の例において、固定子コイル304の数は、3の倍数である。例えば、回転子302に4個のアームがある場合に、6個の固定子コイルを、固定子コイル304として用いる。3の倍数の固定子コイル304を用いると、モータを、3つの整流子位相で動作させることができる。
【0114】
図3の例示的な実施例においては、電気モータ300の回転子302は、その中心線320が固定子コイル306の中心線318をわずかに過ぎた位置にあり、これが、電気モータ300が完全停止位置から動作を始める際の開始位置となっている。電気モータ300の動作を制御する際には、回転子302の開始位置にかかわらず、矢印314の方向又は所望の場合には反対方向に、完全停止位置から回転子302が回転するよう、固定子コイル304に電流が送られる。例えば、端部316の中心線320が、固定子コイル306の中心線318と揃っている場合、固定子コイル306と固定子コイル308にわずかにオーバーラップさせて交流電流を送ることにより、回転子302を矢印314の方向に回転させることができる。
【0115】
図示の実施例において、固定子コイル304に交流電流をわずかにオーバーラップさせて送ることは、固定子コイル304における2つ以上の固定子コイルがオンになるように行われうる。例えば、回転子302の端部316の中心線320が、固定子コイル306の中心線318と揃っている場合、固定子コイル310は、オンのままとされる。
【0116】
従って、中心線同士が揃った状態で回転子302が始動する場合に、回転子302が、その位置に留まったり望ましくない方向に回転したりすることはない。回転子302の端部316の中心線320が固定子コイル306の中心線318を数度過ぎた位置まで回転すると、固定子コイル310がオフにされる。
【0117】
回転子302の端部316の中心線320が、固定子コイル308の中心線322と一致する際も、同じパターンの動作が適用される。この位置では、固定子コイル306がオ
ンの状態のまま、数度回転する。回転子302の端部316が固定子コイル310を通り過ぎると、同様のシーケンスが行われる。
【0118】
別のパターンの固定子コイル304のオン動作によって、回転子302を矢印314とは反対の方向に回転させてもよい。すなわち、回転子302は、時計回り又は反時計回りのいずれかの方向に回転させることができる。また、電流の量、及び、1つ又は複数の固定子コイル304に送られる電流の持続時間のうちの少なくとも1つを利用して、回転子302の速度、トルク、又は回転方向のうちの少なくとも1つを変更することができる。
【0119】
また、センサーを用いて回転速度を測定してもよい。この測定値を用いて、電気モータ300の回転子302が閾値速度を超えて回転する際に、オーバーラップ部分を除外してもよい。このようにして、回転子302が回転し始めた後は、上述したように固定子コイル304のうちの2つに電流を送る際に必要な電力のスパイク量が、低減又は排除される。
【0120】
図9を参照すると、同図には、例示的な実施例によるデュアル周波数電気モータが示されている。デュアル周波数電気モータ900の上部断面図が図示されている。この例示的な実施例において、デュアル周波数電気モータ900は、回転子902及び固定子コイル904を含む。デュアル周波数電気モータ900は、斥力と引力の両方を用いて回転子902を回転させる。斥力と引力の両方を用いることにより、各固定子コイルについて100パーセントのデューティーサイクルを実現することができ、且つ、デュアル周波数電気モータ900によって生成されるトルクを増大させることができる。
【0121】
この例示的な実施例において、回転子902は、軸908から延びるアーム905及びアーム906を有している。この断面図に見られるように、回転子902は、コア910及び層912を含む。層912は、コア910上に形成された被膜である。
【0122】
この例示的な実施例において、コア910は、導電性の強磁性材料を含んで構成されている。この実施例において、導電強の磁性材料は、鉄、酸化鉄、ニッケル、又はサマリウムコバルトから選択された少なくとも1つである。
【0123】
層912は、導電性の非強磁性材料を含んで構成されている。この実施例において、導電性の非強磁性材料は、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、銀、錫、チタン、又は亜鉛から選択された少なくとも1つである。
【0124】
この例示的な実施例において、固定子コイル904は、3つの固定子コイルを含む。より詳しくは、固定子コイル904は、固定子コイル914、固定子コイル916、及び、固定子コイル918を含む。
【0125】
後述するように、2つの周波数を用いて、デュアル周波数電気モータ900を動作させる。この例示的な実施例においては、デュアル周波数電気モータ900において、第1周波数を用いて引力を生成し、第2周波数を用いて斥力を生成する。引力又は斥力のうちの少なくとも1つを用いて回転子902を回転させる、このタイプのモータも、デュアル周波数電気モータと称される。
【0126】
層912の厚みの選択において、層912は、電気的表皮深さ(δ)を有し、これは、材料の導電率及び透過率、ならびに、印加される磁場の周波数に依存する。この例示的な実施例において、表皮深さは、外表面と、電流が流れる限界面との間の距離である。表皮深さは、以下の式によって、深さ(d)における電流密度(J)を決定する。
【数1】
ここで、(Js)は、表面における電流密度である。表皮深さ(δ)は、以下のようにして求めることができる。
【数2】

【0127】
層912の被覆厚みは、低周波数における1つの表皮深さよりも小さく且つ高周波数における1つの表皮深さよりも大きくなるように、選択される。低周波数は、約30~100Hzの整流周波数であってよい。低周波数は、直流電流と同じくらい低くてもよい。高周波数は、渦電流モータが作動する交流電流(AC)周波数であってもよい。周波数は、約10kHzであってもよい。この例示的な実施例において、アルミニウム被覆である層912の厚みは、約1.5ミリメートルである。
【0128】
次に、図10を参照すると、同図には、例示的な実施例によるデュアル周波数電気モータの動作が示されている。同図に示すように、回転子902は、矢印1000の方向に軸908周りに回転する。
【0129】
回転子902のアーム905の端部1004が固定子コイル914に近づくと、固定子コイル914に直流電流1006が送られる。直流電流1006は、固定子コイル914に流れて、固定子コイル914に、一方向の磁場1008を形成させる。この例示的な実施例において、一方向の磁場1008は、約30Hzの周波数を有する。この変動周波数は、一方向の磁場1008の強度内である。
【0130】
この周波数において、一方向の磁場1008の表皮深さは、約14ミリメートルである。周波数が0Hzの場合、表皮深さは、無限である。従って、一方向の磁場1008の磁束のほとんどすべてが、約1.5ミリメートルの層912を通過する。
【0131】
一方向の磁場1008は、コア910に引力1010を生成する。引力1010は、回転子902のアーム905の端部1004を固定子コイル914に引き寄せる。コア910におけるこの引力は、回転子902を、軸908周りに矢印1000の方向に回転させる。
【0132】
次に、図11を参照すると、同図には、例示的な実施例によるデュアル周波数電気モータの動作が示されている。同図には、回転子902のアーム905の端部1004が、回転して固定子コイル914を通り過ぎつつある状態が示されている。回転子902のこの位置において、図10の直流電流1006はオフにされ、固定子コイル914に交流電流1100が流れる。
【0133】
固定子コイル914に流れる交流電流1100が、交流磁場1102を生じさせる。この例示的な実施例において、交流磁場1102は、約10kHzの周波数を有する。この周波数において、層912におけるアルミニウムの表皮深さは、約0.8ミリメートルで
ある。交流磁場1102の大部分は、層912内に流れる渦電流1104によってブロックされる。
【0134】
渦電流1104は、交流磁場1106を生成させる。これらの磁場の相互作用によって、固定子コイル914と回転子902のアーム905の端部1004との間に斥力1108が発生し、回転子902が、軸908周りに矢印1000の方向に回転する。固定子コイル914におけるこのパターンの直流電流1006及び交流電流1100は、回転子902の端部1004が固定子コイル916及び固定子コイル918に対して同様の位置にある際に、固定子コイル916及び固定子コイル918に印加することができる。
【0135】
図9図11に示したデュアル周波数電気モータ900は、図1にブロック図で示した電気モータ108の一実施形態を示す目的で図示したものである。上述のように、デュアル周波数電気モータ900は、斥力1108に加えて、引力1010も用いて、回転子902を回転させる。
【0136】
図12を参照すると、同図には、例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータのための電源のブロック図が示されている。同図は、図9に示したデュアル周波数電気モータ900などのデュアル周波数電気モータに電力供給する一態様を示している。
【0137】
この例示的な実施例において、電源1200は、直流電流供給源1202及び交流電流供給源1204を含む。電源1200は、図1にブロック図で示した電源114の実施形態の一例である。電源1200は、デュアル周波数電気モータ1208内の固定子コイル1206に、直流電流1210と交流電流1212の両方を供給する。各供給源は、異なる周波数を有する。
【0138】
この例示的な実施例において、電流制御システム1214は、図1にブロック図で示した電流制御システム112の実施形態の一例である。図示のように、電流制御システム1214は、制御部1216、セレクタスイッチ1218、及び、セレクタスイッチ1220を含む。電流制御システム1214は、図1にブロック図で示した電流制御システム112の一実施形態の一例である。
【0139】
制御部1216は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせによって、実施することができる。制御部1216は、整流用電子機器の形態をとりうる。制御部1216は、セレクタスイッチ1220を制御して、直流電流供給源1202又は交流電流供給源1204のうちの一方を選択することにより、周波数を選択する。この例示的な実施例において、交流電流供給源1204の周波数は、約10kHzである。
【0140】
選択された供給源からの電流が、セレクタスイッチ1218に送られる。制御部1216は、セレクタスイッチ1218を制御することにより、選択された電流を、固定子コイル1206のうちの特定のコイルに送る。例示的な実施例において、固定子コイル1206のうちの2つ以上の固定子コイルに電流が送られることが、実施形態によってはありうる。
【0141】
この例示的な実施例において、固定子コイル1206の各固定子コイルから、実質的に100パーセントのトルクのデューティーサイクルが得られる。この構成では、リラクタンスモータにおける各固定子コイルからの50パーセントのデューティーサイクルに比べて、所与のサイズの電気モータで得られる平均トルクが大きくなる。
【0142】
次に図13を参照すると、同図には、例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータのための電源のブロック図が示されている。この例示的な実施例において、電源130
0は、直流電流供給源1302である。電流制御システム1304は、制御部1306、セレクタスイッチ1308、及び、セレクタスイッチ1310を含む。
【0143】
図示のように、コンデンサ1312が、電気モータ1316の固定子コイル1314及びセレクタスイッチ1310に並列に接続されている。電流制御システム1304は、図1にブロック図で示した電流制御システム112の実施形態の一例である。
【0144】
動作中は、制御部1306が、セレクタスイッチ1310を制御して、直流電流供給源1302からの電流をセレクタスイッチ1308に送る。さらに、制御部1306は、セレクタスイッチ1308を制御して、固定子コイル1314のうち、直流電流供給源1302に接続される固定子コイルを選択する。直流電流供給源1302によって、選択されたコイルに最も近接する位置に回転子の端部が来るまで、電流が供給される。直流電流供給源1302が接続されている間、直流電流供給源1302は、コンデンサ1312の充電も行う。
【0145】
回転子の端部が、最も近接する位置にくると、制御部1306は、直流電流供給源1302を遮断し、セレクタスイッチ1308を用いて、コンデンサ1312を固定子コイルに接続する。この結果、固定子コイル1314のうちの選択された固定子コイルと、コンデンサ1312との間に、回路が形成される。電流は、コンデンサ1312に流れる。
【0146】
固定子コイルとコンデンサ1312によって、LC(inductor capacitor)タンク回路が形成され、当該回路が振動してコイルに交流電流を送る。この交流電流が回転子に渦電流を発生させ、斥力が生成されて、これによって回転子が回転する。
【0147】
コンデンサ1312の値の選択においては、回転子の導電性被覆において表皮効果が十分に得られる周波数(ω0)及びコイル(L)のインダクタンスを用いて、以下の式によ
ってコンデンサ1312のキャパシタンス(C)の値を決定する。
【数3】
【0148】
この例において、回転子の導電性被覆において表皮効果が十分に得られる周波数(ω0
)としては、表皮深さが、回転子のコアを被覆する層の厚みの半分未満となる周波数を選択してもよい。
【0149】
例示的な実施例において、固定子コイル1314のうちの各固定子コイルが、コンデンサ1312に接続される。別の例示的な実施例において、図13に示したように単一のコンデンサ、すなわちコンデンサ1312をすべての固定子コイル1314に用いることに代えて、各固定子コイルがコンデンサを有していてもよい。
【0150】
次に、図14を参照すると、同図には、例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータのための電源のブロック図が示されている。同図において、固定子コイル1400は、一組のコンデンサ1402に接続されている。
【0151】
ここで用いるように、「一組の」という用語をアイテムについて用いる場合、1つ又は複数のアイテムを意味する。例えば、一組のコンデンサ1402とは、1つ又は複数のコンデンサである。例えば、複数のコンデンサを、直列、並列、又はこれらの組み合わせで接続して、所望のレベルのキャパシタンスを得るようにしてもよい。
【0152】
図示のように、一組のコンデンサ1402は、固定子コイル1400の第1端部1406及び固定子コイル1400の第2端部1408に接続されている。さらに、第1端部1406は、スイッチ1412を介して、直流電流供給源1410に接続されている。第2端部1408は、直流電流供給源1410に接続されている。
【0153】
この構成において、一組のコンデンサ1402は、固定子コイル1400及び直流電流供給源1410に並列に接続されている。この例示的な実施例において、固定子コイル1400と一組のコンデンサ1402は、共振LC(inductor capacitor)タンク回路を形成している。
【0154】
スイッチ1412が閉位置にある際は、直流電流供給源1410が、固定子コイル1400と一組のコンデンサ1402の両方に直流電圧を印加する。スイッチ1412が閉位置の状態では、電流は、矢印1414の方向に流れて、固定子コイル1400に流れる。この間、一組のコンデンサ1402が充電される。また、図8における、固定子コイル1400によって形成された一方向の磁場1008によって引力が生成され、直流電流供給源1410からの直流電流が固定子コイル1400に流れる。
【0155】
スイッチ1412が開位置になると、固定子コイル1400が直流電流供給源1410から遮断される。電流は、矢印1414の方向に流れ続け、一組のコンデンサ1402から電荷を排出し、次に、反対の極性で、直流電流供給源1410より高い電圧で、一組のコンデンサ1402を充電する。
【0156】
次に、固定子コイル1400と一組のコンデンサ1402によって形成された共振LCタンク回路が振動し、電流が矢印1416の方向に流れる。電流の振動は、時間の経過とともに減衰する。この電流の振動は、回転子に渦電流を生じさせ、この結果、斥力が生成されて、これが回転子を回転させる。
【0157】
各固定子コイルが一組のコンデンサを有するこの構成は、複数の固定子コイルに1つのコンデンサを用いる図13に示した構成よりも、多くのコンデンサを使用する。一組のコンデンサを固定子コイルの各々に関連付けることによって、用いるスイッチの数が少なくなる。
【0158】
図13及び図14に示した電源の構成はいずれも、50パーセントよりは大きく100パーセントより小さいトルクのデューティーサイクルを、各固定子コイルから得ることができる。このタイプの性能は、リラクタンスモータよりは高いが、図12に示した、直流電流供給源1202及び交流電流供給源1204を有する電源1202を用いるデュアル周波数電気モータ1208より低い。
【0159】
図9図14のデュアル周波数電気モータシステムは、デュアル周波数電気モータを、図1にブロック図で示した電気モータ108として実施する一態様を示す目的で図示されたものである。この例示は、他のデュアル周波数電気モータを実施する態様を限定することを意図するものではない。
【0160】
例えば、デュアル周波数電気モータ900の回転子902に示した2つのアーム以外の数のアームを用いてもよい。例えば、回転子902は、3個のアーム、4個のアーム、又はこれら以外の数のアームを用いて実施することもできる。また、固定子コイル904の数も、回転子902の構成に基づいて変更してもよい。
【0161】
次に、図15を参照すると、同図には、例示的な実施例による電気モータの回転子が図示されている。図示の回転子1500は、図1にブロック図で示した回転子116の実施
形態の一例である。
【0162】
回転子1500は、軸1502を中心として回転可能である。回転子1500は、3つのアーム、すなわち、アーム1504、アーム1506、及び、アーム1508を有する。図からわかるように、これらのアームは、軸1502から離れる方向に延びるにつれて幅が次第に細くなっている。
【0163】
また、回転子1500は、2つ以上の材料を含んで構成してもよい。この例において、回転子1500は、コア1510を含む。コア1510は、密度に対する引張強度の比が高い材料を含んで構成してもよい。これによって、回転子1500は、現在用いられている回転子に比べて、アームの先端をより速い速度で回転させることができる。
【0164】
例えば、密度に対する引張強度の比は、少なくともベリリウムと同じ密度対強度比が得られるように選択されうる。ベリリウムの密度対強度比は、約200,000パスカル/(Kg/m3)である。
【0165】
回転子において応力は主として径方向に作用するので、コア1510は、異方性の引張強度を有する材料を含んで構成してもよい。このタイプの材料によれば、密度に対する、より高い径方向の引張強度比を回転子1510にもたらすことができる。例えば、約60%の繊維体積を有する標準的な一方向性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)によれば、少なくとも約937,500パスカル/(Kg/m3)の密度に対する径方向強度比
が得られる。
【0166】
コア1510の材料は、導電性を有していてもよい。コア1510の材料は、さらに、現在回転子に用いられている材料に比べて、望ましいレベルの熱伝導率を有していてもよい。熱伝導率が高いと、回転子1500の先端付近の渦電流によって生成される熱を、回転子1500の他の部分に移動させやすくなる。これによって、回転子1500の材料を、所望のレベルの強度をもたらす温度に維持することができる。例えば、ベリリウム及びアルミニウムは、鉄または鋼よりも実質的に高い熱伝導率を有する。ベリリウムの熱伝導率は、175W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率は、220W/(m・K)である。これに対して、鉄及び鋼は、16~60W/(m・K)の熱伝導率を有し、これは、これらの材料及び合金の典型的な値である。
【0167】
また、回転子1500は、コア1510の一部又は全部を覆う層1512をさらに有している。層1512は、導電性を有しており、導電性の非強磁性材料を用いて形成されうる。例えば、コア1510が非導電性の場合、層1512の厚みは、交流電流の周波数及び層1512に使用されている材料における表皮深さの約2倍となるように選択されうる。
【0168】
このような設計及び材料選択によれば、回転子1500は、先細りではなく幅及び厚みが均一の中実の鉄製アームを有する現在用いられている回転子よりも、速く回転しうる。このようにして、より高速且つ軽量の電気モータを製造することができる。
【0169】
図15における回転子1500の図示は、図1にブロック図で示した電気モータ108に他の回転子を用いる態様を制限することを意図するものではない。例えば、他の回転子は、2個のアーム、6個のアーム、7個のアーム、又はこれら以外の数のアームを有しうる。さらに他の例示的な実施例において、コア上の層は、コア全体を被覆していなくてもよい。例えば、コアのうち、回転軸に近接する部分は露出されている一方で、アームの端部に近接する部分は層で被覆されていてもよい。
【0170】
また、回転子1500は、斥力を利用して回転させてもよいし、斥力と引力の両方を利用して回転させてもよい。コア1510及び層1512の材料は、回転子1500を回転させるのに斥力を利用するか、あるいは、斥力と引力の両方を利用するかに基づいて、選択してもよい。
【0171】
次に、図16を参照すると、同図には、例示的な実施例による、電気モータを制御するプロセスのフローチャートが示されている。図16に示したプロセスは、図1に示した電気モータ環境100において実施することができる。具体的には、様々な工程は、図1に示した電気モータシステム102を用いて実施することができる。
【0172】
当該プロセスは、電気モータにおける回転子の位置を特定すること(工程1600)によって開始する。この例示的な実施例においては、回転子のアームの端部の位置を特定する。
【0173】
当該プロセスでは、電気モータにおける回転子の位置に基づいて、電気モータの固定子コイルに流れる交流電流を制御し(工程1602)、工程1600に戻る。工程1602においては、固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、回転子と前記少なくとも1つの固定子コイルとの間に斥力が生じるように、交流電流の流れが制御される。
【0174】
電気モータが作動している間、このプロセスが繰り返される。さらに、交流電流の流れの制御は、速度、トルク量、回転方向、又は他のいくつかの適当なパラメータのうちの少なくとも1つを変更するように行われうる。
【0175】
図17を参照すると、同図には、例示的な実施例による、デュアル周波数電気モータを制御するプロセスのフローチャートが示されている。図17に示したプロセスは、図9に示したデュアル周波数電気モータ900を用いて実施することができる。
【0176】
当該プロセスは、電気モータにおける回転子の位置を特定すること(工程1700)によって開始する。これらの位置は、電気モータの固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに対する第1位置及び第2位置を含む。
【0177】
当該プロセスでは、電気モータの回転子が、前記少なくとも1つの固定子コイルに対する第1位置にある時に、電気モータの固定子コイルに直流電流を送る(工程1702)。工程1702において、当該固定子コイルと回転子との間の引力によって、回転子が軸周りに回転する。
【0178】
当該プロセスでは、回転子が、電気モータの前記少なくとも1つの固定子コイルに対する第2位置にある時に、当該固定子コイルに交流電流を送り(工程1704)、工程1700に戻る。工程1704において、固定子コイルと回転子との間の斥力によって、回転子が軸周りに回転する。
【0179】
このように、引力と斥力の両方を利用して電気モータを動作させる。両方のタイプの力を利用することによって、現在用いられている電気モータに比べて、速度、トルク、デューティーサイクル、又は他のパラメータのうちの少なくとも1つを改善することができる。
【0180】
上述した種々の実施例におけるフローチャート及びブロック図は、例示的な一実施例における装置及び方法のいくつかの可能な実施態様の構造、機能、及び動作を示すものである。この点において、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、モジュール
、セグメント、機能、または動作もしくは工程の一部のうちの少なくとも1つを表わしうる。例えば、ブロックのうちの1つ又は複数は、プログラムコード、ハードウェア、あるいは、プログラムコードとハードウェアの組み合わせとして実施してもよい。ハードウェアで実施する場合、当該ハードウェアは、例えば、フローチャート又はブロック図における1つ又は複数の工程を行うように製造または構成された集積回路の形態をとりうる。プログラムコードとハードウェアの組み合わせとして実施する場合、ファームウェアの形態で実施されうる。
【0181】
例示的な実施例のいくつかの代替の態様において、ブロックに示した機能を、図に示した順序とは異なる順序で実行してもよい。例えば、場合によっては、関連する機能に応じて、連続して示されている2つのブロックを実質的に同時に実行してもよいし、逆の順序で実行しもよい。また、フローチャート又はブロック図に示したブロックに、他のブロックを追加してもよい。
【0182】
本開示の例示的な実施例を、図18においては航空機の製造及び保守方法1800に関連させ、図19においては航空機1900に関連させて説明する。まず、図18を参照すると、例示的な実施例による、航空機の製造及び保守方法のブロック図が示されている。生産開始前において、航空機の製造及び保守方法1800は、図19に示した航空機1900の仕様決定及び設計1802と、材料調達1804とを含む。
【0183】
生産中には、図19に示す航空機1900の部品及び小組立品の製造1806ならびにシステムインテグレーション1808が行われる。その後、航空機1900は、認可及び納品1810を経て、使用1812に入る。顧客による使用1812の間は、航空機1900は、定例の整備及び保守1814のスケジュールに組み込まれる。これは、改良、再構成、改修、及び他の整備又は保守を含みうる。
【0184】
航空機の製造及び保守方法1800の各工程は、システムインテグレーター、第三者、オペレーター、又はこれらの何らかの組み合わせによって実行又は実施することができる。これらの例において、オペレーターは顧客であってもよい。説明のために言及すると、システムインテグレーターは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0185】
次に図19を参照すると、例示的な実施例を実施可能な航空機のブロック図が示されている。この例において、航空機1900は、図18に示した航空機の製造及び保守方法1800によって生産され、複数のシステム1904及び内装1906を備えた機体1902を含みうる。システム1904の例としては、駆動系1908、電気系1910、油圧系1912、環境系1914のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、任意の数の他のシステムを含んでいてもよい。また、航空宇宙産業に用いた場合を例として示しているが、種々の例示的な実施例を、例えば自動車産業等の他の産業に適用してもよい。
【0186】
本明細書において具現化される装置及び方法は、図18に示した航空機の製造及び保守方法1800おける少なくとも1つの段階において、採用することができる。例示的な一実施例において、例示的な実施例における電気モータシステムの部品又は小組立品は、図18における部品及び小組立品の製造1806において、図18に示す航空機1900の使用1812中に製造される部品及び小組立品と同様に製造してもよい。別の例示的な実施例において、例示的な実施例における電気モータシステムは、航空機1900の部品又は小組立品の製造に用いられる設備に用いてもよい。
【0187】
1つ又は複数の装置の実施例、方法の実施例、又はこれらの組み合わせは、航空機1900の使用1812中に用いることができる。例えば、例示的な実施例による電気モータシステムは、航空機1900の使用1812中に航空機1900内で動作しうる。例えば、電気モータシステムは、フラップ、エルロン、及び制御面のような制御面を動かす飛行制御アクチュエータに使用することができる。また、電気モータのサイズは、航空機の主翼、垂直安定板、水平安定板、又は他の適当な箇所などの空間内での電気モータの使用が可能となるような、所望のレベルのトルクを提供しうる。
【0188】
また、例示的な実施例における電気モータシステムは、航空機1900内の流体システムのバルブを制御しうる。いくつかの様々な例示的な実施例を用いることによって、実質的に、航空機1900の組み立て速度を速めるか、もしくは航空機1900の費用を削減することができ、あるいは、航空機1900の組み立ての高速化と航空機1900の費用の削減の両方を実現することができる。
【0189】
1つ又は複数の例示的な実施例は、現在用いられている電気モータに比べて、より高いレベルの加速のトルクを有する電気モータを提供する。トルク量の増加は、航空機の主翼内の空間などの空間に、より小さいサイズのモータが必要とされるものの、現在用いられているモータよりも高いレベルのトルクが望ましいような航空機において、特に有用である。また、様々な例示的な実施例の電気モータによって実現されるトルク量の増加は、ロボットの製造、ならびに、電気モータを選択する際にトルクが所望の要素である他の用途において有用である。
【0190】
例示的な実施例に図示及び説明した電気モータは、所望のレベルのトルク又は広範囲の速度にわたる回転出力のうちの少なくとも1つを提供しうる。また、例示的な実施例で説明した電気モータは、始動、停止、及び、速度又は方向の変更に関して、所望のレベルの応答性を実現しうる。電気モータは、これらの特徴を、現在用いられている電気モータよりも、小型、軽量、又は安価のうちの少なくとも1つである構成によって、実現する。
【0191】
また、例示的な実施例における電気モータは、リラクタンスモータに比べて、軽量で部品数が少ない。また、例示的な実施例の回転子は、リラクタンスモータの回転子に比べて、より高速で使用することができる。このような高速化は、整流電圧がモータの速度に応じて上昇しないので、現在リラクタンスモータに用いられている回転子に比べてより高い重量比を有するように、回転子が構成されている結果である。
【0192】
また、現在の電気モータに比べて、加速度が増大している。これは、例示的な実施例において選択された回転子の材料によって、リラクタンスモータに比べて慣性モーメントが低くなっているためである。また、例示的な実施例の制御部は、コストが低い。これは、使用されている回路が、直流電流ではなく交流電流を切り替えるからである。
【0193】
例示的な実施例の電気モータは、現在用いられている誘導モータよりも効率的である。例示的な実施例において、電気モータの回転の周波数は、交流電流の周波数とは分離している。例えば、回転の周波数は、数十ヘルツである一方、交流電流の周波数は、数十キロヘルツである。
【0194】
例示的な実施例の電気モータは、ブラシレス直流電流モータに対して利点を有する。例えば、永久磁石は不要である。例示的な実施例の電気モータは、永久磁石を用いなくとも、同等又はより良い出力密度を実現することができる。従って、例示的な実施例の電気モータは、より単純であり、結果として、ブラシレス直流電流モータに比べて、組み立てコストならびに材料コストが低くなる。
【0195】
また、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0196】
付記1. 導電性材料(120)を含む回転子(116)であって、軸(122)周りに回転可能な回転子(116)と、
複数の固定子コイル(118)と、
前記回転子(116)の位置(134)に基づいて前記固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)を制御する電流制御システム(112)と、を含んでおり、
前記固定子コイル(118)は、前記固定子コイル(118)に交流電流(130)が流れると前記回転子(116)に渦電流(128)が生成されるように、前記回転子(116)に隣接して配置されており、
前記固定子コイル(118)のうちの少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間の斥力(140)が前記回転子(116)を前記軸(122)周りに回転させるように、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に交流電流(130)が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)が交流磁場(138)を形成し、前記回転子(116)に渦電流(128)を生じさせる、装置。
【0197】
付記2. 前記回転子(116)の位置(134)が、前記回転子(116)の端部(142)が前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に隣接する状態になると、前記電流制御システム(112)は、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に前記交流電流(130)を送る、付記1に記載の装置。
【0198】
付記3. 前記導電性材料(120)は、導電性の強磁性材料(124)又は導電性の非強磁性材料(126)から選択された少なくとも1つである、付記1に記載の装置。
【0199】
付記4. 前記導電性の強磁性材料(124)は、鉄、酸化鉄、ニッケル、又は、サマリウムコバルトから選択された少なくとも1つである、付記3に記載の装置。
【0200】
付記5. 前記導電性の非強磁性材料(126)は、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、銀、錫、チタン、又は、亜鉛から選択された少なくとも1つである、付記3に記載の装置。
【0201】
付記6. 前記固定子コイル(118)の各々は、前記固定子コイル(118)のうちの他の固定子コイルとは異なる共振周波数を有しており、前記固定子コイル(118)に対する無線電磁結合によって前記固定子コイル(118)に電力を送信するように構成された電源(114)をさらに含み、送信された前記電力が前記固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)となる、付記1に記載の装置。
【0202】
付記7. 前記電流制御システム(112)は、前記固定子コイル(118)に接続された複数のスイッチ(202)であって、前記スイッチ(202)のうちの少なくとも1つのスイッチ(204)が閉位置にある時に、前記少なくとも1つのスイッチ(204)が前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に前記交流電流(130)を送る複数のスイッチと、前記回転子(116)の前記位置(134)に基づいて前記固定子コイル(118)を流れる前記交流電流(130)を制御する際に、前記スイッチ(202)を制御する制御部(200)と、を含み、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間の前記斥力(140)が前記回転子(116)を前記軸(122)周りに回転させるように、前記固定子コイル(118)のうちの前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に前記交流電流(130)が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)が交流磁場(138)を形成し、前記回転子(116)に渦電流(128)を生じさせる、付記1に記載の装置。
【0203】
付記8. 前記制御部(200)は、前記固定子コイル(118)のうち、前記回転子(116)の前記位置(134)において、前記回転子(116)の端部(142)が位置合わせ状態となっている少なくとも1つの固定子コイル(136)に流れる交流電流(130)を切り替えるように構成されている、付記7に記載の装置。
【0204】
付記9. 前記回転子(116)の前記位置(134)を示すロータリーエンコーダをさらに含む、付記7に記載の装置。
【0205】
付記10. 前記制御部(200)は、ソリッドステート回路、シリコン制御整流器、又は、トライアック(TRIAC)のうちの少なくとも1つを含んで構成されている、付記7に記載の装置。
【0206】
付記11. 前記回転子(116)の前記位置(134)に基づく前記回転子(116)における前記渦電流(128)に反応する一群の位置感知コイルをさらに含み、前記制御部(200)は、前記一群の位置感知コイルを用いて、前記回転子(116)の前記位置(134)を特定する、付記7に記載の装置。
【0207】
付記12. 前記固定子コイル(118)の第1端部は、交流電流供給源に接続されており、前記電流制御システム(112)は、前記固定子コイル(118)の第2端部に接続された電気ブラシ(210)と、前記軸(122)の周りに配置された電気的接点(212)と、を含み、前記電気的接点(212)は、電源(114)に接続されるとともに、所与のパターン(214)に配置されることにより、電気的接点(212)が軸(122)周りに回転すると、電気ブラシ(210)が回転子(116)の様々な位置の電気的接点(212)と接触して、前記固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)を制御する、付記1に記載の装置。
【0208】
付記13. 前記回転子(116)は、強磁性材料を含むコア(910)と、前記コア(910)に設けられた層(912)とを含み、前記層(912)は導電性の非強磁性材料(126)を含んでおり、前記電流制御システム(112)は、前記固定子コイル(118)に流れる直流電流(1210)及び前記交流電流(1212)を制御することにより、前記回転子(116)の引き付けおよび反発を選択的に行う、付記1に記載の装置。
【0209】
付記14. 前記固定子コイル(118)及び直流電流供給源(1302)に並列に接続されたコンデンサ(1312)をさらに含み、前記コンデンサ(1312)は、前記コンデンサ(1312)に蓄積された電荷から前記交流電流(130)を生成する、付記13に記載の装置。
【0210】
付記15. 前記斥力(140)が、前記回転子(116)の任意の静止位置から前記回転子(116)を回転させるのに十分なものとなるように、前記固定子コイル(118)が前記回転子(116)に隣接して配置されている、付記1に記載の装置。
【0211】
付記16. 前記交流電流(130)の第1周波数は、前記回転子(116)の回転の第2周波数から独立している、付記1に記載の装置。
【0212】
付記17. 前記交流電流(130)の前記第1周波数は、約10kHz以上である、付記16に記載の装置。
【0213】
付記18. 前記渦電流(128)は、前記交流磁場(138)と相互作用すると前記斥力(140)を生じさせ、前記斥力(140)のうちの接線方向の力が、前記回転子(116)を前記軸(122)周りに回転させるトルクを生じさせる、付記1に記載の装置
【0214】
付記19. 軸(122)周りに回転可能な回転子(116)であって、強磁性材料から形成されたコア(910)及び前記コアを包み込む層(912)を含み、前記層(912)は導電性の非強磁性材料(126)を含んで構成されている回転子(116)と、
交流電流供給源(1204)及び直流電流供給源(1202)に接続された固定子コイル(118)と、前記回転子(116)の位置(134)に基づいて前記固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)及び直流電流を制御する電流制御システム(112)と、を含んでなり、前記固定子コイル(118)のうちの少なくとも1つの固定子コイル(136)は、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に交流電流(130)が流れると、交流磁場(138)を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間に斥力(140)を生じさせるとともに、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に直流電流(1210)が流れると、一方向の磁場(1008)を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間に引力(1010)を生じさせて、前記回転子(116)を前記軸(122)周りに回転させる、デュアル周波数電気モータ(900)。
【0215】
付記20. 前記固定子コイル(118)及び前記直流電流供給源(1410)に並列に接続されたコンデンサをさらに含み、前記コンデンサ(1402)は、前記直流電流供給源(1410)が前記固定子コイル(118)から遮断された際の前記交流電流供給源(1204)であり、前記固定子コイル(118)のうちの各固定子コイル(136)は、並列又は直列に接続された一組のコンデンサ(1402)を有する、付記19に記載のデュアル周波数電気モータ(900)。
【0216】
付記21. 前記導電性の強磁性材料(124)は、鉄、酸化鉄、ニッケル、又は、サマリウムコバルトから選択された少なくとも1つである、付記19に記載のデュアル周波数電気モータ(900)。
【0217】
付記22. 前記導電性の非強磁性材料(126)は、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、ニッケル、銀、錫、チタン、又は、亜鉛から選択された少なくとも1つである、付記19に記載のデュアル周波数電気モータ(900)。
【0218】
付記23. 電気モータの複数の固定子コイル(118)に流れる交流電流(130)を制御することを含み、
前記交流電流の前記制御は、前記固定子コイル(118)のうちの少なくとも1つの固定子コイル(136)に交流電流(130)が流れると、前記電気モータにおける回転子(116)と前記少なくとも1つの固定子コイル(136)との間に斥力(140)が発生するように、前記回転子(116)の位置(134)に基づいて行う、電気モータ(108)の制御方法。
【0219】
付記24. 前記回転子(116)の前記位置(134)を特定することを更に含む、付記23に記載の方法。
【0220】
付記25. 前記回転子(116)の前記位置(134)の前記特定は、ロータリーエンコーダ、前記回転子(116)に関連付けられた接点、又は、位置感知コイルのうちの少なくとも1つを用いて行われる、付記24に記載の方法。
【0221】
付記26. 前記回転子(116)は、強磁性材料から形成されたコア(910)、及び、前記コア(910)を包み込む層(912)を含んでおり、前記層(912)は、導電性の非強磁性材料(126)を含んでおり、
前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間の引力(1010)が前記回転子(116)を軸(122)周りに回転させるように、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に流れる直流電流(1210)を制御することを更に含む、付記23に記載の方法。
【0222】
付記27. 電気モータ(108)の回転子(116)が固定子コイル(118)のうちの少なくとも1つの固定子コイル(136)に対する第1位置にある時に、前記電気モータ(108)の前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に直流電流(1210)を送ることであって、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間の引力(1010)が前記回転子(116)を軸(122)周りに回転させることと、
前記回転子(116)が前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に対する第2位置にある時に、前記電気モータ(108)の前記少なくとも1つの固定子コイル(136)に交流電流(130)を送ることであって、前記少なくとも1つの固定子コイル(136)と前記回転子(116)との間の斥力(140)が、前記回転子(116)を前記軸(122)周りに回転させることと、を含む、電気モータ(108)の制御方法。
【0223】
付記28. 前記第1位置及び前記第2位置を含む前記回転子(116)の位置を特定することを更に含む、付記27に記載の方法。
【0224】
様々な例示的な実施例の説明は、例示及び説明のために提示したものであり、全てを網羅することや、開示した形態での実施に限定することを意図するものではない。様々な例示的な実施例は、動作や工程を行うコンポーネントを説明している。例示的な実施例において、コンポーネントは、説明した動作や工程を行うように構成することができる。例えば、コンポーネントは、例示的な実施例においてコンポーネントによって行われるものとして説明した動作や工程を、当該コンポーネントが行うことを可能にする構造体用の構成又は設計を有しうる。
【0225】
また、多くの改変又は変形が当業者には明らかであろう。さらに、様々な例示的な実施例は、他の好ましい実施例とは異なる特徴をもたらす場合がある。選択した実施例は、実施例の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の変形を加えた様々な実施例のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の強磁性材料からなるコアと、前記コアを包囲する導電性の非強磁性材料からなる層と、を含む回転子であって、軸周りに回転可能な回転子と、
交流電流供給源及び直流電流供給源に接続された複数の固定子コイルと、
前記回転子の位置に基づいて前記固定子コイルに流れる交流電流及び直流電流を制御する電流制御システムと、を含み
記固定子コイルのうちの少なくとも1つの固定子コイルに交流電流が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイルが交流磁場を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間に斥力が発生し、前記少なくとも1つの固定子コイルに直流電流が流れると、前記少なくとも1つの固定子コイルが一方向の磁場を形成して、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間に引力が発生するように構成された、デュアル周波数電気モータ
【請求項2】
前記複数の固定子コイル及び前記直流電流供給源に並列に接続されたコンデンサをさらに含んでおり、前記直流電流供給源が前記複数の固定子コイルから切り離されたときに、前記コンデンサが前記交流電流供給源として機能する、請求項1に記載のデュアル周波数電気モータ
【請求項3】
前記導電性の強磁性材料が、鉄、酸化鉄、ニッケル、又は、サマリウムコバルトから選択された少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のデュアル周波数電気モータ。
【請求項4】
記導電性の非強磁性材料が、アルミニウム、銅、金、インターカレートされたグラフェン、鉛、銀、錫、チタン、又は、亜鉛から選択された少なくとも1つである、請求項1~3のいずれかに記載のデュアル周波数電気モータ
【請求項5】
回転子と複数の固定子コイルとを備える電気モータにおける少なくとも1つの固定子コイルに直流電流を供給することと、
前記少なくとも1つの固定子コイルに交流電流を供給することと、を含む電気モータの制御方法であって、
前記少なくとも1つの固定子コイルへの直流電流の供給は、前記回転子が前記少なくとも1つの固定子コイルに対して第1位置にあるときに行って、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間に引力を発生させて、前記回転子を軸周りに回転させ、
前記少なくとも1つの固定子コイルへの交流電流の供給は、前記回転子が前記少なくとも1つの固定子コイルに対して第2位置にあるときに行って、前記少なくとも1つの固定子コイルと前記回転子との間に斥力を発生させて、前記回転子を前記軸周りに回転させるようにした、電気モータの制御方法
【請求項6】
前記第1位置及び前記第2位置を含む前記回転子の位置を特定することを更に含む、請求項5に記載の方法
【外国語明細書】