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特開2024-96862防災監視設備の物件データ管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096862
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】防災監視設備の物件データ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/00 20060101AFI20240709BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240709BHJP
   H04M 11/04 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
G08B29/00 Z
G08B17/00 L
H04M11/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064396
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2019181093の分割
【原出願日】2019-10-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】安彦 浩二
(72)【発明者】
【氏名】松下 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇
(72)【発明者】
【氏名】小野 武宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳大
(72)【発明者】
【氏名】城井 正広
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英史
(72)【発明者】
【氏名】高木 幸司
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠良
(72)【発明者】
【氏名】片岡 才
(72)【発明者】
【氏名】青山 晃久
(57)【要約】
【課題】受信機に記憶している物件データの更新を、ネットワークを介して接続可能な外部の端末装置からオンラインにより行うことで手間と時間を低減可能とする。
【解決手段】防災監視設備の物件データ管理システムにおいて、受信機10は、アナログ感知器14からの火災検出信号を受信した場合に、火災警報を出力すると共に記憶している物件データに基づき火災発生場所の表示や所定機器の制御を含む火災対処制御を行う。端末装置50は、受信機10が現在記憶している物件データを取得して旧物件データとして保存し、その後、物件データの一部を変更した新物件データを受信機10に送信して更新を指示する。受信機10は、端末装置50から受信した新物件データを、現在記憶している物件データに上書きして更新し、端末装置50は、新物件データによる受信機10の動作確認結果が正常であった場合は、当該新物件データを保存する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物件データを予め記憶した受信機が、当該受信機に接続された検出器からの異常検出信号を受信した場合に、異常警報を出力すると共に前記物件データに基づき異常発生場所の表示や所定機器の制御を含む異常対処制御を行う防災監視設備の物件データ管理システムであって、
前記受信機に通信接続して前記物件データの更新を指示する端末装置を備え、
前記端末装置は、
前記物件データの更新に先立ち、前記受信機が現在記憶している物件データを取得して旧物件データとして記憶部に保存し、
その後、物件データの一部が変更された新物件データを前記受信機に送信して更新を指示し、
前記受信機は、前記端末装置から受信した前記新物件データを、前記現在記憶している物件データに上書きして更新し、
前記端末装置は、前記新物件データによる前記受信機の動作確認結果が正常であった場合は、当該新物件データを前記記憶部に保存することを特徴とする防災監視設備の物件データ管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災監視設備の物件データ管理システムであって、
前記端末装置は、前記受信機から前記物件データの更新後の前記受信機の動作確認結果としてエラー通知を受信した場合は、前記記憶部から前記旧物件データを読出して前記受信機に送信し、前記現在記憶している物件データから前記旧物件データへの書き戻しを指示する制御を行い、
前記受信機は、前記端末装置から前記旧物件データと書き戻し指示を受信した場合に、受信した前記旧物件データを前記現在記憶している物件データに上書きして元に戻す制御が可能であることを特徴とする防災監視設備の物件データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災やガス漏れ等の異常検出信号を受信機で受信した場合に、異常警報を出力すると共に物件データに基づき異常発生場所の表示や機器の連動制御を行う防災監視設備の物件データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災やガス漏れを監視する防災監視設備の受信機は建物内の防災センターや管理室などに設置されており、例えば火災感知器や発信機からの火災信号を受信することで、火災代表表示を行うと共に主音響や地区音響装置を鳴動させ、防火戸や防火シャッター等の連動制御を行う。
【0003】
このような防災監視設備の受信機にあっては、受信機に接続される火災感知器や中継器のアドレス、地区名、部署名、種別、マスク状況、回線番号、感度、蓄積時間、防排煙機器との連動関係等の所謂物件データを準備し、受信機に設けたEEPROM等の不揮発メモリに記憶して火災受信制御に利用している。
【0004】
このため受信機で火災発報した火災感知器からの火災信号を受信した場合、火災発報した火災感知器のアドレスによりメモリに記憶した物件データを参照して例えば地区名を取得して受信機に設けた液晶ディスプレイの火災画面に火災が発生した地区名を表示している。
【0005】
ところで、防災監視設備の運用中にあっては、防災監視設備を設置している建物のテナント変更、間仕切り変更、火災感知器の増設等に合わせて物件データを変更する必要がある。
【0006】
このような場合の物件データの変更は、防災監視設備の設計施工を行った事業者の事務所において、設備図面等を元にパーソナルコンピュータ等の情報端末装置を使用して、現在使用している物件データの必要な箇所を変更する編集作業を行って新たな物件データを作成し、これをCFカード(コンパクト・フラッシュ・カード)等の記憶媒体に保存して作業者が防災監視設備の設置現場に出向き、受信機にCFカードをセットし、そのとき受信機に記憶している物件データをCFカードの物件データにより上書きすることで物件データを更新している。
【0007】
受信機の物件データを更新した場合には、更新後に動作確認を行い、その結果、誤りが見つかった場合には、事務所に戻って物件データを修正し、再び現場に戻って同じ作業を繰り返すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-189055号公報
【特許文献2】特開2009-087111号公報
【特許文献3】実用新案登録第3136363号公報
【特許文献4】特開2004-126880号公報
【特許文献5】特開2010-224938号公報
【特許文献6】特開2015-170080号公報
【特許文献7】特開2004-118303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような防災監視設備における物件データの更新にあっては、設備の設計施工側の事務所で物件データを作成し、これをCFカード等に保存して現場に持ち込んで受信機の物件データを更新する作業を必要としており、更新後の動作確認により誤りがあった場合には、設計施工側の事務所と設備現場を行き来して物件データの更新を行う必要があり、手間と時間、更に費用がかかる問題がある。
【0010】
また、受信機における物件データの更新は、受信機に記憶している物件データを、CFカードで持ち込んだ新たな物件データで上書きして更新しているため、その時点で、それまでの物件データは失われ、更新後の動作確認により誤りが発見された場合は、それまで使用していた過去の物件データに戻したい場合があるが、これができないという不具合もある。
【0011】
本発明は、受信機に記憶している物件データの更新を、ネットワークを介して接続可能な外部の端末装置からオンラインにより行うことで、物件データの更新に要する手間と時間を低減可能とする防災監視設備の物件データ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(防災監視設備の物件データ管理システム1)
本発明は、所定の物件データを予め記憶した受信機が、当該受信機に接続された検出器からの異常検出信号を受信した場合に、異常警報を出力すると共に物件データに基づき異常発生場所の表示や所定機器の制御を含む異常対処制御を行う防災監視設備の物件データ管理システムであって、
受信機に通信接続して物件データの更新を指示する端末装置を備え、
端末装置は、
物件データの更新に先立ち、受信機が現在記憶している物件データを取得して旧物件データとして記憶部に保存し、
その後、物件データの一部が変更された新物件データを受信機に送信して更新を指示すし、
受信機は、端末装置から受信した新物件データを、現在記憶している物件データに上書きして更新し、
端末装置は、新物件データによる受信機の動作確認結果が正常であった場合は、当該新物件データを記憶部に保存することを特徴とする。
【0013】
(物件データ更新後の動作確認で誤りを検出した場合の対処)
端末装置は、受信機から物件データの更新後の受信機の動作確認結果としてエラー通知を受信した場合は、記憶部から旧物件データを読出して受信機に送信し、現在記憶している物件データから旧物件データへの書き戻しを指示する制御を行い、
受信機は、端末装置から旧物件データと書き戻し指示を受信した場合に、受信した旧物件データを現在記憶している物件データに上書きして元に戻す制御が可能である。
【発明の効果】
【0014】
(防災監視設備の物件データ管理システム1の効果)
本発明は、受信機に所定の物件データを予め記憶し、受信機から警戒区域に引き出された信号線に接続した検出器からの異常検出信号を受信した場合に、異常警報を出力すると共に物件データに基づき異常発生場所の表示や所定機器の制御を含む異常対処制御を行う防災監視設備の物件データ管理システムに於いて、受信機にネットワークを介して接続可能な端末装置に設けられ、物件データの一部を変更した新物件データを受信機に送信して更新を指示する物件データ端末管理部と、受信機に設けられ、物件データ端末管理部から送信された新物件データにより現在記憶している物件データを上書きして更新する物件データ受信機管理部とを設けるようにしたため、受信機の物件データを更新するために、物件データを作成する例えば設計施工側の事務所と設備現場との間を、物件データを保存した記憶媒体を持って担当者が往復する必要がなくなり、物件データを更新するための手間と時間を大幅に短縮し、設備の運用コストを低減可能とする。
【0015】
(防災監視設備の物件データ管理システム2の効果)
本発明の別の形態にあっては、受信機に所定の物件データを予め記憶し、受信機から警戒区域に引き出された信号線に接続した検出器からの異常検出信号を受信した場合に、異常警報を出力すると共に物件データに基づき異常発生場所の表示や所定機器の制御を含む異常対処制御を行う防災監視設備の物件データ管理システムに於いて、受信機に設けられ、外部装置との間で近距離無線により通信接続して信号を送受信する通信アダプタと、通信アダプタと近距離無線通信により通信接続して信号を送受信すると共に携帯電話網を含むネットワークを経由して他の機器と通信接続して信号を送受信する携帯電話端末と、ネットワークを経由して携帯電話端末に通信接続可能な端末装置に設けられ、物件データの一部を変更した新物件データを受信機に送信して更新を指示する物件データ端末管理部と、携帯電話端末に設けられ、物件データ端末管理部から送信された新物件データにより受信機に現在記憶している物件データを上書きして更新する物件データ受信機管理部とを設けるようにしたため、受信機の物件データを更新するために、物件データを作成する例えば設計施工側の事務所と設備現場との間を、物件データを保存した記憶媒体を持って担当者が往復する必要がなくなり、物件データを更新するための手間と時間を大幅に短縮し、設備の運用コストを低減可能とする。
【0016】
また、受信機と近距離通信が可能で且つ端末装置と携帯電話網およびインターネットを介して通信可能な携帯電話端末に物件データ受信機管理部としての機能を設け、新物件データを端末装置から携帯電話端末に送り、携帯電話端末から受信機に書込むようにすることで、受信機をインターネットに固定的に接続するLAN回線やゲートウェイ装置を必要とすることなく、物件データの更新が必要となった場合に、物件データ受信機管理部の機能を備えた携帯電話端末を設備現場に持ち込むことで、簡単に端末装置により受信機の物件データを更新することができる。
【0017】
(旧物件データの保存による効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、新物件データの更新に先立ち、受信機に記憶している現在の物件データを取得して記憶部に保存するようにしたため、受信機に記憶している現在の物件データを新物件データにより上書きして更新しても、更新前の物件データが失われることがなく端末装置側で保存され、過去の物件データの有効活用を可能とする。
【0018】
(更新済み物件データの保存による効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、受信機で更新した新物件データによる動作確認結果が正常であった場合、新物件データを記憶部に保存するようにしたため、動作確認で誤りがなかった更新済みの物件データが端末装置側で保存され、受信機に現在記憶している物件データの有効利用を可能とする。
【0019】
(物件データの変更履歴による効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、記憶部に時系列的に記憶した物件データの差分からデータの変更履歴を生成して出力するようにしたため、この変更履歴を見ることで、その防災監視設備で使用している物件データがどのように変わっていったかが容易に把握でき、将来の物件データを更新する際の編集作業の資料としての活用等が可能となる。
【0020】
(受信機の動作モード変更を必要とする物件データの更新詳細の効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、物件データの更新要求操作を検出した場合に、受信機に物件データ更新要求を通知し、受信機から現在記憶している物件データを受信した場合に、当該物件データを旧物件データとして記憶部に保存し、新物件データの送信操作を検出した場合に、新物件データを受信機に送信して更新を指示し、受信機から更新済みの新物件データによる動作確認結果を受信して表示し、動作確認が正常な状態で新物件データの保存操作を検出した場合に、新物件データを記憶部に保存する制御を行い、一方、受信機の物件データ受信機管理部は、端末装置から物件データ更新要求の通知を受信した場合に、物件データの更新に必要な所定の動作モードの設定を案内表示し、受信機を動作モードに設定した状態で、現在の物件データの送信操作を検出した場合に、現在の物件データを読出して端末装置に送信し、端末装置から新物件データとその更新指示を受信した状態で、所定の更新操作を検出した場合に、現在記憶している物件データに新物件データを上書きして更新し、新物件データに更新した後に動作確認を行った場合、動作確認の結果を端末装置に通知する制御を行うようにしたため、受信機の物件データの更新は、端末装置側及び受信機側にそれぞれ作業者が付き、端末装置と受信機の各々で所定の手順に従って会話的に操作を順次行うことで物件データの更新作業を進めることとなり、物件データの更新を人為的な操作が入ることで、確実に誤りなく進めることができる。
【0021】
また、受信機における物件データの更新は、火災監視モードではなく、保守施工モードで可能としていることから、物件データの更新を可能とする動作モードである保守施工モードの設定は人為的な操作を必要とするが、このような動作モードの変更が入っても、問題なく、端末装置からのオンライン操作による受信機での物件データの更新を可能とする。
【0022】
また、更新前の物件データや更新後の物件データの保存については、人為操作を必要とすることで、必要に応じて保存の有無が選択可能となる。
【0023】
(受信機の動作モード変更を必要としない物件データの更新詳細の効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、物件データの更新要求操作を検出した場合に、受信機に物件データ更新要求を通知し、受信機から現在記憶している物件データを受信した場合に、当該物件データを旧物件データとして記憶部に保存し、新物件データの送信操作を検出した場合に、新物件データを受信機に送信して更新を指示し、受信機から更新済みの新物件データの動作確認結果を受信して表示し、動作確認が正常な状態で新物件データの保存操作を検出した場合に、新物件データを記憶部に保存する制御を行い、一方、受信機の物件データ受信機管理部は、端末装置から物件データ更新要求の通知を受信して表示し、現在の物件データの送信操作を検出した場合に、現在の物件データを読出して端末装置に送信し、端末装置から新物件データと更新指示を受信した状態で、所定の更新操作を検出した場合に、現在記憶している物件データに新物件データを上書きして更新し、新物件データに更新した後に動作確認を行った場合、動作確認の結果を端末装置に通知する制御を行うようにしたため、受信機の物件データを更新するために動作モードの変更を必要としない場合にも、受信機の物件データの更新は、端末装置側及び受信機側にそれぞれ作業者が付き、端末装置と受信機の各々で所定の手順に従って会話的に操作を順次行うことで物件データの更新作業を進めることとなり、物件データの更新を人為的な操作が入ることで、確実に誤りなく進めることができる。
【0024】
(物件データ更新後の動作確認で誤りを検出した場合の対処による効果)
また、端末装置の物件データ端末管理部は、受信機から物件データの更新後の動作確認結果としてエラー通知を受信した場合、記憶部から旧物件データを読出して受信機に送信し、旧物件データへの書き戻しを指示する制御を行い、一方、受信機の物件データ受信機管理部は、端末装置から旧物件データと書き戻し指示を受信した状態で、所定の書き戻し操作を検出した場合に、現在記憶している物件データを旧物件データにより上書きして元に戻す制御を行うようにしたため、更新後の動作確認で物件データの誤りを発見して修正を必要とする場合には、更新済みの受信機の物件データを、端末装置に保存している更新前の旧物件データに戻すことで、誤りのある物件データが受信機に残って問題となる状況を無くすことができ、誤りのある物件データの修正と再更新を、十分な余裕をもって確実に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】受信機の物件データ更新を、ネットワークを介して外部から可能とする防災監視設備の物件データ管理システムにおける第1実施形態を示したブロック図
図2】端末装置と受信機との間で行う物件データ更新の動作手順を示したタイムチャート
図3】物件データの更新に使用する端末装置の操作画面を示した説明図
図4】物件データの更新に使用する受信機の操作画面を示した説明図
図5】受信機の物件データをネットワークを介して外部から更新可能とする防災監視設備の物件データ管理システムにおける第2実施形態を示したブロック図
図6】携帯電話端末の機能構成の概略を示したブロック図
図7】携帯電話端末を経由して端末装置と受信機との間で行う物件データ更新の動作手順を示したタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
[物件データ管理システムの第1実施形態]
図1は受信機の物件データ更新を、ネットワークを介して外部から可能とする防災監視設備の物件データ管理システムにおける第1実施形態を示したブロック図である。
【0027】
(防災監視設備の概要)
図1に示すように、防災監視設備は、例えばR型(Record-type)の防災監視設備であり、受信機10からは建物の警戒エリアに向けて伝送路12が引き出され、伝送路12にアナログ感知器14を接続している。また伝送路12には中継器16を接続し、中継器16から引き出された火報回線18にオンオフ感知器20及び発信機22を接続している。また別の中継器16にはガス漏れ検出器24を接続している。
【0028】
更に、受信機10に設けた別の伝送部からは制御用の伝送路が引き出され、そこに地区音響装置や防排煙機器等の制御機器を伝送路に接続して制御するようにしているが、図示を省略している。
【0029】
アナログ感知器14及び中継器16は、受信機10との間で情報を双方向伝送する伝送
機能を備えており、受信機10を含めて固有のアドレスが予め割り当てられている。1つの伝送路12に接続できるアナログ感知器14及び中継器16の数は、例えば最大アドレス数が256アドレスの場合、受信機アドレスを除くことから、255台以下のアナログ感知器14及び中継器16を接続することができる。
【0030】
受信機10には、受信機制御部26,伝送部28、表示部30、操作部32、警報部34、移報部36、プリンタ38及びLAN通信部40を設けている。
【0031】
受信機制御部26は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の受信機制御を行う。また、受信機制御部26はメモリとして揮発性メモリと不揮発性メモリを設けており、不揮発性メモリに物件データを記憶している。
【0032】
受信機10からアナログ感知器14及び中継器16に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、伝送路12の電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0033】
これに対しアナログ感知器14及び中継器16からの上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、伝送路12に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機10に送信される。
【0034】
受信機10の受信機制御部26による受信制御は次のようになる。受信機10は、通常の監視時にあっては、端末アドレスを順次指定した正常監視用のポーリングコマンドを送信しており、アナログ感知器14及び中継器16は自己の設定アドレスに一致するポーリングコマンドを受信すると正常監視応答を行う。このため受信機10にあっては、ポーリングコマンドに対し応答がなかったアナログ感知器14または中継器16を障害として故障を検出することができる。
【0035】
また受信機10は、すべての端末アドレスに対するポーリングコマンドの送信周期ごとに一括AD変換コマンドを繰り返し送信している。アナログ感知器14は受信機10からの一括AD変換コマンドを受信すると、検出している煙濃度や温度などのアナログ検出データをサンプリングし、予め定めた火災レベルと比較している。
【0036】
アナログ感知器14でサンプリングしたアナログ検出データが火災レベルを超えた場合には、受信機10に対しポーリングコマンドに対する応答タイミングで割込信号を送信する。この割込信号は、応答ビット列をオール1とするような通常は使用されない信号を送信する。
【0037】
中継器16も、受信機10からの一括AD変換コマンドに基づき、火報回線18に接続しているオンオフ感知器20あるいはガス漏れ検知器22の受信状態をサンプリングし、火災発報あるいはガス漏れを検出した場合には、受信機10に対し割込信号を送信する。
【0038】
受信機10は、アナログ感知器14または中継器16からの割込信号を受信すると、グループ検索コマンドを発行し、火災を検出したアナログ感知器14または中継器16を含むグループからの割込応答を受信してグループを判別する。
【0039】
続いて、判別したグループに含まれる個々のアナログ感知器14や中継器16に対し、順次アドレスを指定したポーリングを行い、アナログデータや火災発報データなどの火災応答を受けることで、火災を検出したアナログ感知器14または中継器16の感知器アドレスを認識し、火災警報動作を行うことになる。
【0040】
表示部30には火災代表灯、ガス漏れ代表灯、障害代表灯等を設け、更に、タッチパネル付きの液晶ディスプレイを設けている。操作部32には、火災警報が出力された場合に操作する音響停止スイッチ、火災断定スイッチ、地区音響一時停止スイッチ、復旧スイッチ等の各種の操作スイッチを設けている。警報部34には音響警報を出力するスピーカを設けている。
【0041】
LAN通信部40はイーサネット(登録商標)等の所定のLAN通信プロトコルに基づきLAN回線42に接続したゲートウェイ44にアクセスして情報の送受信を行う。ゲートウェイ44はインターネット46との間でLAN通信プロトコルとインターネット通信プロトコルの変換を行い、インターネット46に接続している設計施工側の事務所等に設置した端末装置50と受信機10との間で、ピア・ツー・ピアとなる相互に相手を特定した1対1通信により信号を送受信する。端末装置50と受信機10との間のピア・ツー・ピアの関係は、両者がサーバ及びクライアントとして動作する。
【0042】
受信機10の受信機制御部26は、その不揮発性メモリに物件データを予め記憶しており、例えば、アナログ感知器14の火災発報を検出すると、表示部30の火災代表等を点灯すると共に警報部34から主音響警報を出力させ、また、表示部30の液晶ディスプレイの画面に、物件データに基づき、火災が発生した地区名を表示させる制御を行う。
【0043】
また、受信機制御部26には、物件データ受信機管理部48の機能が設けられる。物件データ受信機管理部48は、端末装置50からインターネット46を介して送信されてくる新物件データにより、現在記憶している物件データを上書きして更新する制御を行う。また、物件データ受信機管理部48は、物件データの更新に先立ち、更新前の物件データを受信機10から読出して端末装置50に送信する制御を行う。
【0044】
更に、物件データ受信機管理部48は、表示部30の液晶ディスプレイに物件データ更新用の操作画面を表示し、この操作画面を使用した操作入力を検出して、物件データの更新に伴う所定の制御を行う。
【0045】
(端末装置の概要)
設計施工側の事務所等に設置された端末装置50は、市販のパーソナルコンピュータであり、端末制御部52,通信部54、表示部56、操作部58及び記憶部60を設けている。端末制御部52は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の端末制御を行う。
【0046】
通信部54はインターネット通信プロトコルによりインタ-ネット50を介して受信機10との間でピア・ツー・ピアとなる相互に相手を特定した1対1通信により信号を送受信する。表示部56は液晶ディスプレイである。操作部58はキーボード、マウスを含む。
【0047】
端末制御部52には物件データ端末管理部62としての機能が設けられる。物件データ端末管理部62は、物件データの一部を変更した新物件データを受信機10に送信して更新を指示する制御を行う。また、物件データ管理部62は、受信機10の物件データの更新に先立ち、受信機10に記憶している現在の物件データを取得して旧物件データとして記憶部60に更新時刻情報と共に保存する制御を行う。
【0048】
また、物件データ端末管理部62は、受信機10で更新した新物件データによる動作確認結果が正常であった場合、更新の済んだ新物件データを記憶部60に更新時刻情報と共に保存する制御を行う。
【0049】
また、物件データ端末管理部62は、操作部58の操作指示に基づき、記憶部60に時系列的に記憶した物件データの差分からデータの変更履歴を生成し、表示部56に出力して液晶ディスプレイに表示する制御を行う。物件データ端末管理部62による物件データの変更履歴は、例えば、更新時刻情報に対応して変更前のデータと変更後のデータを一覧形式で生成する。
【0050】
更に、物件データ端末管理部62は、表示部56の液晶ディスプレイに物件データ更新用の操作画面を表示し、この操作画面を使用した操作入力を検出して、物件データの更新に伴う所定の制御を行う。
【0051】
[物件データの更新動作の概要]
図2は端末装置と受信機との間で行う物件データ更新の動作手順を示したタイムチャートである。なお、二重縦線のブロックは人為的操作を示す。
【0052】
まず受信機10は、通常監視状態では、ステップS1に示すように、火災監視モードの設定により火災監視制御を行っている。防災監視設備の運用中に物件データの変更が生じた場合には、端末装置50を使用してステップS2で物件データの内容を一部修正する編集作業を行って更新する新物件データを作成する。
【0053】
ステップS2で新物件データが作成できたならば、所定の日時を決めて防災監視設備の受信機10に別の作業者が付き、この状態で端末装置50の作業者が操作部58により所定の物件データの更新要求操作を行うと、物件データ端末管理部62がこの操作を検出し、ステップS3でLAN通信部40に指示して物件データ更新要求を受信機10に通知する制御を行う。
【0054】
受信機10の物件データ受信機管理部48は、ステップS4で端末装置50から物件データ更新要求の通知を受信したことを表示し、続いてステップS5で物件データの更新を可能とする保守施工モードの設定をガイダンス表示する。このため受信機10側の作業者は、ステップS6で受信機10に対し所定の保守施工モードを設定して立ち上げる操作を行い、これにより受信機10は物件データを更新可能な保守施工モードの制御に入る。
【0055】
続いて、受信機10の物件データ更新部48はステップS7で、不揮発メモリに現在記憶している物件データを読出し、LAN通信部40に指示して端末装置50に送信させる制御を行う。受信機10からの物件データを受信した端末装置50の物件データ端末管理部62は、ステップS8で受信した物件データを旧物件データとして記憶部60に保存する。
【0056】
続いて端末装置50の物件データ端末管理部62は、ステップS9において、操作部58による新物件データの送信操作を検出した場合に、通信部54に指示して、ステップS2で作成した新物件データを受信機10に送信して更新を指示する制御を行う。
【0057】
受信機10の物件データ更新部62は、ステップS10で端末装置50から新物件データの受信を表示し、ステップS11で操作部58による所定の更新操作を検出した場合に、現在記憶している物件データに受信した新物件データを上書きして更新する。
【0058】
物件データの更新が済むと、受信機10の作業者は、ステップS12で受信機10の動作モードを火災監視モードに設定する所定の操作を行った後に、動作確認を行う。この動作確認は、例えば特定の感知器アドレスに対応した地区名の変更であった場合は、この感知器アドレスのアナログ感知器14を試験発報又は疑似発報させ、表示部30の液晶ディスプレイの火災画面に、変更した地区記名が正しく表示されるか否かの確認等を行う。
【0059】
続いて、ステップS13で受信機10の物件データ更新部62は、所定の操作に基づき、動作確認の結果を端末装置50に送信する。
【0060】
端末装置50の物件データ更新部62は、受信機10から動作確認結果を受信して表示し、ステップS14で動作確認結果が正常であることを判別した場合は、ステップS15に進み、更新済みの物件データ(新物件データ)を記憶部60に保存する。
【0061】
一方、ステップS14で動作確認結果がエラーであることを判別した場合は、ステップS16に進み、記憶部60にステップS8で保存した旧物件データを読出し、受信機10に送信してエラーとなった新物件データを上書きして元に戻し、再度、物件データを編集して更新する処理を行うことになる。
【0062】
[操作画面による物件データ更新操作]
(端末装置の操作画面)
図3は物件データの更新に使用する端末装置の操作画面を示した説明図である。図3に示すように、端末装置50における物件データの更新に用いる操作画面64は、左端の上から下に、現在の操作状態を示す複数のマーカ65を表示し、マーカ65に対応して複数の操作項目66~80を上から下に向けて配置している。
【0063】
先頭の操作項目66は、物件データの更新を行う防災監視設備となる更新対象設備を指定する項目であり、タッチパネル、マウス、キーボードを使用して直接入力するか、下向きの矢印で示すダイヤログを開いて予め登録している設備の中から更新対象設備を選択する。ここで、更新対象設備につき、インターネット上のアドレス(URL)が予め登録されており、更新対象設備の指定により対応するアドレス(URL)が選択される。また、操作画面24は最初の画面状態を示しており、最上段のマーカ65を所定色に点灯表示することで、現在時点で操作を必要とする操作項目を示している。
【0064】
2番目の操作項目68は、「更新要求を送信してください。」とのガイダンスに続いて送信釦84を配置しており、送信釦84をマウスクリックすることで、操作項目66で指定した更新対象設備の受信機10に対し、インターネット46を介して物件データの更新要求信号が送信される。
【0065】
3番目の操作項目70は、「現在の物件データを保存しますか。」とのガイダンスに続いてYES釦86とNO釦88を配置しており、受信機10から受信した現在の物件データを旧物件データとして保存したい場合には、YES釦86をマウスクリックすると、記憶部60に旧物件データとして保存される。保存を必要としない場合は、NO釦88をマウスクリックすればよい。なお、現在の物件データの保存は、選択操作によらず、自動的に旧物件データとして保存するようにしても良い。
【0066】
4番目の操作項目72は、受信機10の更新に使用する物件データの選択であり、既に端末装置50の編集作業による作成されて記憶部60に保存されていることから、作成した物件データのファイル名を直接入力するか、下向きの矢印で示すダイヤログを開いて予め登録しているファイル名の中から該当する物件データのファイルを選択する。
【0067】
5番目の操作項目74は、「物件データを送信してください。」とのガイダンスに続いて送信釦92を配置しており、送信釦92をマウスクリックすると、操作項目72で選択した物件データのファイルが受信機10に送信される。
【0068】
6番目の操作項目76は、「物件データの更新が完了しました。」とするガイダンスであり、受信機10に対する物件データの送信終了で、左側の対応するマーカ65の点灯表示が行われる。
【0069】
7番目の操作項目78は、受信機10で更新した物件データによる動作確認結果を表示する項目であり、「動作確認結果」の項目名に続いて、「正常」と「エラー」の表示枠を配置しており、受信した動作確認結果に応じて「正常」または「エラー」の表示枠が所定色に点灯表示される。
【0070】
8番目の操作項目80は、更新を行った新物件データの保存操作であり、「更新済み物件データを保存しますか。」とのガイダンスに続いて、YES釦94とNO釦96を配置しており、新物件データとして保存したい場合には、YES釦94をマウスクリックすると、記憶部60に保存される。保存を必要としない場合は、NO釦96をマウスクリックすればよい。なお、新物件データの保存は、選択操作によらず、自動的に保存するようにしても良い。
【0071】
更に、操作画面64の右側には、中断釦98、再開釦100及び終了釦102を設けている。中断釦98は、物件データを更新する操作を途中で一時中断したい場合に操作する。中断釦98を操作すると、操作時点の状態が保存される。再開釦100は中断釦98の操作で中断した操作を再開する場合に操作する。終了釦102は全ての操作項目の操作を終了して操作画面64を閉じる場合に操作する。
【0072】
(受信機の操作画面)
図4は物件データの更新に使用する受信機の操作画面を示した説明図である。図4に示すように、受信機10における物件データの更新に用いる操作画面104は、左端の上から下に、現在の操作状態を示す複数のマーカ105を表示し、マーカ105に対応して複数の操作項目106~116を上から下に向けて配置している。
【0073】
先頭の操作項目106は、端末装置50から物件データ更新要求信号を受信した場合のガイダンスであり、「物件データの更新要求を受信しました。保守施工モードを設定してください。」との表示であり、これを見ることで、受信機10側の作業者は、火災監視モードの制御となっている受信機10に、保守施工モードを設定する所定の操作を行い、これにより受信機10に記憶している物件データの読出しと書込みを可能とする。
【0074】
2番目の操作項目108は、受信機10に記憶している現在の物件データを読出して端末装置に送信させる操作であり、「現在の物件データを送信します。」とのガイダンスに続いて送信釦118を配置しており、送信釦118をマウスクリックすると、受信機10に記憶している物件データを読出して端末装置50に送信する。
【0075】
3番目の操作項目110は、端末装置50から送信された新物件データの受信を示す操作項目であり、「新しい物件データを受信しました。」とするガイダンスを表示している。
【0076】
4番目の操作項目112は、「物件データを更新してください。」とのガイダンスに続いて更新釦120を配置しており、更新釦120をマウスクリックすると、端末装置50から受信して揮発性メモリのバッファ領域に一時保存されている新物件データを読出し、不揮発性メモリに記憶されている現在の物件データに上書きする更新が行われる。
【0077】
5番目の操作項目114は、「火災監視モードを設定し、動作を確認してください。」とのガイダンスを表示しており、これに対応した左側のマーカ105が点灯表示された場合に、受信機10についている作業者は所定の操作により受信機10を火災監視モードに設定し、続いて、予め示された物件データの変更情報に基づき、物件データの中の変更部分に対応した試験動作等を行い、更新した物件データによる動作を確認する。
【0078】
6番目の操作項目116は、「動作確認結果を通知してください。」とするガイダンスに続いて正常通知釦122とエラー通知釦124を配置しており、動作確認結果に応じて何れか一方をマウスクリックすることで、端末装置50に動作確認結果が送信される。
【0079】
更に、操作画面104の右側には、中断釦126、再開釦128及び終了釦130を設けており、図3の操作画面64と同様に、中断釦126は、物件データを更新する操作を途中で一時中断したい場合に操作し、中断釦126を操作すると、操作時点の状態が保存される。再開釦128は中断釦126の操作で中断した操作を再開する場合に操作する。終了釦130は全ての操作項目の操作を終了して操作画面104を閉じる場合に操作する。
【0080】
(端末装置と受信機の画面操作による物件データ更新のメリット)
このように図3に示した端末装置50の操作画面64と、図4に示した受信機10の操作画面104を、それぞれについた作業者が会話的に操作することで、受信機10の更新前の物件データの端末装置50による旧データとしての保存、端末装置50で作成した新物件データによる受信機10の物件データの更新、更新した物件データによる受信機10の動作確認、更新済みの物件データ(新物件データ)の保存といった一連の物件データの更新に伴う処理動作をオンラインで行うことが可能となり、端末装置50側と受信機10側との間を、物件データを保存した記憶媒体を持って作業者が往復する必要がなくなり、物件データを更新するための手間と時間を大幅に短縮可能とする。
【0081】
[物件データ管理システムの第2実施形態]
(物件データ管理システムの概要)
図5は受信機の物件データを、ネットワークを介して外部から更新可能とする防災監視設備の物件データ管理システムにおける第2実施形態を示したブロック図である。
【0082】
図5に示すように、本実施形態の物件データ管理システムは、端末装置50によりネットワークを介して受信機10の物件データを更新するための通信経路として、携帯電話端末140を利用したことを特徴とする。携帯電話端末140は、基地局138を経由して携帯電話網136に通信接続し、更にインターネット46を経由して端末装置50に通信接続する。
【0083】
携帯電話端末140との通信接続を可能とするため、受信機10の受信制御部26を構成する基板に実装したCPUからはUSBとして知られた汎用シリアルバス(Universal Serial Bus)が引き出され、この汎用シリアルバスにUSBコネクタによるUSBポート36を1又は複数設けており、その内の1つに無線LAN通信アダプタ134を接続している。
【0084】
無線LAN通信アダプタ134は、インタフェース変換アダプタとして機能し、USB通信プロトコルに従った信号と無線LAN通信プロトコルに従った信号との間の変換を行う。例えば無線LAN通信アダプタ134は、USB2.0又はUSB3.0の標準規格に従った信号とイーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した無線LAN通信による信号との間の変換を行う。この無線LAN通信において、無線LAN通信アダプタ134は無線LANのステーションとして機能し、アクセスポイントとして機能する携帯電話端末140との間の通信接続を確立してパケット信号を通信する。
【0085】
無線LAN通信アダプタ134としては、USBポート132に差し込んで使用するWi-Fi(登録商標)ドングルとして知られた小型のインタフェース変換デバイスを使用することができる。
【0086】
このように受信制御部26のUSBポート132に無線LAN通信アダプタ134を接続することで、物件データ更新の際に受信機10側につく作業者が携帯する無線LAN通信機能を備えた携帯電話端末140との通信接続を可能とする。
【0087】
なお、図5の受信機10に無線LAN通信アダプタ134を設けた以外の点、及び端末装置50は、図1の第1実施形態と同じになることから、同一符号を付けて、その説明を省略する。
【0088】
(携帯電話端末)
図6は携帯電話端末の機能構成の概略を示したブロック図であり、個人用の携帯コンピュータの機能を併せもつ携帯電話端末として知られたスマートフォンを例にとっている。
【0089】
図6において、携帯電話端末140は、携帯電話制御部142、携帯電話通信部144、無線LAN通信部146、高速移動通信部148、GPS通信部(全地球測位システム通信部)150、カメラ部152、SIMカード154、ディスプレイ156、タッチパネル158、音声入出力部160、USB端子部162、操作部164及びメモリカード166等を備える。
【0090】
携帯電話制御部142は、プロセッサを構成するCPU、メモリ、各種入出力インタフェースを備えたLSIで実現され、インストールされたプログラムを実行する。携帯電話通信部144は、第3世代移動通信システム(3G)として知られたW-CDMAまたは第4世代移動通信システム(4G)として知られたIMT-Advanced規格により携帯電話通信を行う。
【0091】
無線LAN通信部146は、イーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した無線通信を行い、図5の受信機10に設けた無線LAN通信アダプタ134との間に無線LAN回線を確立してデータ伝送を行う。このため無線LAN通信部146は、無線LANのアクセスポイントとして機能する無線LAN通信機能、例えばデザリング機能を備えている。
【0092】
高速移動通信部148は、IEEE802.16eに準拠したモバイルWiMAX(登録商標)によるモバイル高速移動通信を行う。GPS通信部150は、周回衛星を使用した全地球測位システム(Global Positioning System)を利用して、現在位置の経度と緯度を取得するための通信を行う。
【0093】
カメラ部152は、CMOS撮像素子を使用して画像の撮像を行い、静止画及び動画を取得する。SIMカード154は、携帯電話番号を識別するための番号であるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)番号を格納したカードであり、SIMカード72の差し替えにより、複数の携帯電話端末で同じ携帯電話番号を利用可能とする。
【0094】
ディスプレイ156は、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスを使用し、パネル表面にはタッチパネル158を配置している。音声入出力部160は、マイク、スピーカ、及びオーディオコーデック(Audio CODEC)を備えて音声入出力を行う。
【0095】
USB端子部162は、適宜の周辺機器を接続するデジタル・インタフェースのコネクタを接続する。操作部164は、キーパッドや操作釦による利用者の操作を受け付けて制御部142に通知する。メモリカード166は、着脱自在な外部メモリであり、カメラ部70で撮像した画像等の各種データの外部記憶に使用する。
【0096】
携帯電話制御部142は、通話接続、メール接続、インターネット接続、無線LAN接続などの通信接続及び関連する各種の制御を行う。
【0097】
また、携帯電話制御部142には、物件データ受信機管理部170としての機能が設けられる。実際には、携帯電話制御部142に、物件データ受信機管理のアプリケーションプログラムをインストールしている。
【0098】
物件データ受信機管理部170は、図1の受信機制御部26に設けた物件データ受信機管理部48に相当し、端末装置50からインターネット46及び携帯電話網136を介して送信されてくる新物件データにより、受信機10の不揮発メモリに現在記憶している物件データを、無線LAN通信アダプタ134を経由して上書きすることにより更新する制御を行う。
【0099】
また、物件データ受信機管理部170は、物件データの更新に先立ち、無線LAN通信アダプタ134を経由して更新前の物件データを受信機10から読出して端末装置50に送信する制御を行う。
【0100】
更に、物件データ受信機管理部170は、ディスプレイ156に例えば図4と同様な物件データ更新用の操作画面を表示し、この操作画面に対するタッチパネル158を使用した操作入力を検出して、物件データの更新に伴う所定の制御を行う。
【0101】
(物件データの更新動作)
図7は携帯電話端末を経由して端末装置と受信機との間で行う物件データ更新の動作手順を示したタイムチャートである。なお、二重線のブロックは人為的操作を示す。
【0102】
まず受信機10は、通常監視状態では、ステップS21に示すように、火災監視モードの設定により火災監視制御を行っている。防災監視設備の運用中に物件データの変更が生じた場合には、端末装置50を使用してステップS22で物件データの内容を一部修正する編集作業を行って更新する新物件データを作成する。
【0103】
ステップS22で新物件データが作成できたならば、所定の日時を決めて防災監視設備の受信機10に物件データ受信機管理部170の機能を備えた携帯端末140を携帯した別の作業者が付き、この状態で端末装置50の作業者が操作部58により所定の物件データの更新要求操作を行うと、物件データ端末管理部62がこの操作を検出し、ステップS23で無線LAN通信アダプタ134に指示して物件データ更新要求を携帯電話端末140に通知する制御を行う。
【0104】
携帯電話端末140の物件データ受信機管理部170は、ステップS24で端末装置50から物件データ更新要求の通知を受信したことを表示し、続いてステップS25で物件データの更新を可能とする保守施工モードの設定をガイダンス表示する。このため受信機10側の作業者は、ステップS26で受信機10に対し保守施工モードを設定して立ち上げる所定の操作を行い、これにより受信機10は物件データを更新可能な保守施工モードの制御に入る。
【0105】
続いて、携帯電話端末140の物件データ更新部170はステップS27で受信機10に物件データの読出コマンドを送信し、これを無線LAN通信部134を介して受信した受信機10は、ステップS28でメモリの不揮発領域に現在記憶している物件データを読出し、無線LAN通信アダプタ134に指示して携帯電話端末140に送信し、携帯電話端末140は受信機10から転送された物件データを端末装置50に送信させる。
【0106】
携帯電話端末140からの物件データを受信した端末装置50の物件データ端末管理部62は、ステップS29で受信した物件データを旧物件データとして記憶部60に保存する。続いて端末装置50の物件データ端末管理部62は、ステップS30において、操作部58による新物件データの送信操作を検出した場合に、通信部54に指示して、作成した新物件データを携帯電話端末140に送信して更新を指示する制御を行う。
【0107】
携帯電話端末140の物件データ更新部170は、ステップS31で端末装置50から新物件データの受信を表示し、ステップS32で操作画面による所定の更新操作を検出した場合に、書込コマンドと新物件データを受信機10に送信し、これを受信機10はステップS33で受信し、不揮発性メモリに記憶している現在の物件データを受信した新物件データで上書きして更新する。
【0108】
物件データの更新が済むと、受信機10の作業者は、ステップS34で受信機10の動作モードを火災監視モードに設定する所定の操作を行った後に、動作確認を行い、ステップS35で作業者が入力した動作確認結果を携帯電話端末140に送信する。携帯電話端末140はステップS36で受信機10から受信した動作確認結果を端末装置50に中継送信する。
【0109】
端末装置50の物件データ端末管理部62は、受信機10からの動作確認結果を受信して表示し、ステップS37で動作確認結果が正常であることを判別した場合は、ステップS38に進み、更新済みの物件データ(新物件データ)を記憶部60に保存する。
【0110】
一方、ステップS37で動作確認結果がエラーであることを判別した場合は、ステップS39に進み、記憶部60にステップS29で保存した旧物件データを読出し、携帯電話端末140に送信し、携帯電話端末140から書込コマンドと旧物件データを受信機10に送信し、エラーとなった新物件データを旧物件データにより上書きして元に戻し、再度、物件データを編集して更新する処理を行うことになる。
【0111】
このように受信機10の物件データを更新するための端末装置50の操作は図3に示した操作画面を使用して行い、また、携帯電話端末140には、図4に示した受信機10で表示する操作画面104と同じ操作画面を表示して必要な操作を行う。
【0112】
(第2実施形態のメリット)
本実施形態にあっては、受信機10でインターネット通信を行わず、携帯電話端末140との無線LAN通信を行い、携帯電話端末140のインターネット通信機能を利用して端末装置50と通信することで、受信機10にインターネット通信に使用するゲートウェイ装置等の専用機器を設けたり、インターネットプロバイダーと契約する必要がなく、端末装置50からオンラインにより受信機10の物件データを更新する場合の設備構成を簡単にし、低コストで実現可能とする。
【0113】
特に、受信機10の物件データを変更する頻度はそれほど高いものではなく、そのためにインターネット通信用の機器を固定的に設けておくことは設備としての無駄が大きい。これに対し本実施形態では、受信機10のUSBポート132に無線LAN通信アダプタ134を接続しておくだけでよく、物件データの更新が必要になった場合には、受信機10側に付く作業者が物件データ受信機管理部170の機能を備えた携帯電話端末140を持ち込むだけで、簡単に、端末装置50からオンラインにより受信機10の物件データを更新することが可能となる。
【0114】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、R型(Record-type)の防災監視設備の受信機に対する物件データの更新を例にとっているが、オンオフ感知器を接続した火報回線単位に火災を検出して警報するP型(Proprietary-type)の防災監視設備の受信機に対する物件データの更新にも、そのまま適用できる。
【0115】
また、上記の実施形態に示した操作画面は一例であり、必要に応じて適宜の操作画面を用いることができる。
【0116】
また、上記の実施形態は、図3及び図5の操作画面に示したように、物件データの更新制御を進めるために、作業者の人為的な操作必要としているが、人為的なに入力操作を行うことなく、物件データ更新の起動操作を行った後は、自動的に操作制御しても良い。
【0117】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0118】
10:受信機
12:伝送路
14:アナログ感知器
16:中継器
18:火報回線
20:オンオフ感知器
22:発信機
24:ガス漏れ検出器
26:受信機制御部
28:伝送部
40:LAN通信部
44:ゲートウェイ
46:インターネット
48,170:物件データ受信機管理部
50:端末装置
52:端末制御部
54:通信部
62:物件データ端末管理部
64,104:操作画面
132:USBポート
134:無線LAN通信アダプタ
136:携帯電話網
138:基地局
140:携帯電話端末
142:携帯電話制御部
144:携帯電話通信部
146:無線LAN通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7