(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096868
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】可溶性補体受容体1型変異体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/02 20060101AFI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240709BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240709BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240709BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240709BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
A61K38/02 ZNA
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P13/12
A61P21/02
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P7/06
A61K47/64
A61P3/06
A61K47/60
A61K47/61
A61P9/00
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064677
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2020564231の分割
【原出願日】2019-05-15
(31)【優先権主張番号】2018901703
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500021413
【氏名又は名称】シーエスエル、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ハーディー
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】ジーフイ(ヘレン)・カオ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーナ・バズ・モレリ
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ・ヴィマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被験体において補体活性を阻害する方法を提供する。
【解決手段】可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体を被験体に投与することを含み、sCR1変異体は特定のアミノ酸配列を含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において補体活性を阻害する方法であって、該方法は、可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体を被験体に投与することを含み、sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;及び
(ii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、上記方法。
【請求項2】
sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列;
(ii) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;
(iii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列;又は
(iv) 配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して増加した補体阻害活性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、古典的経路、レクチン経路及び/又は副補体経路において増加した補体阻害活性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
sCR1変異体は:
(i) LHR-A及びLHR-B;
(ii) LHR-A、LHR-B及びLHR-C;
(iii) LHR-B及びLHR-C;並びに
(iv) LHR-B、LHR-C及びLHR-D
からなる群より選択される長い相同反復(LHR)領域を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
sCR1変異体は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
半減期延長部分は、ヒト血清アルブミン又はその機能性フラグメント、単量体又は二量体免疫グロブリンFc領域又はその機能性フラグメント、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アルブミンに結合する抗体フラグメント及びポリマーから成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらなる可溶性補体阻害剤は、C1-阻害剤(C1-INH)、第I因子(fI)、H因子(fH)、補体H因子関連タンパク質(CFHR)、C4b-結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、可溶性CD46(補体調節タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、可溶性補体受容体2(sCR2)、TT30(CR2-fH)及びコブラ毒因子(CVF)からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
被験体は、補体媒介障害に罹患しているか又は補体媒介障害の危険性がある、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
補体媒介障害は、移植拒絶(臓器移植後臓器機能障害、グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶を含む)、実質臓器移植、腎症、虚血再灌流傷害、視神経脊髄炎、重症筋無力症、糸球体病変、ループス腎炎(急性及び慢性)、IgA腎症、水疱性類天疱瘡、抗リン脂質症候群、ぶどう膜炎、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞、運動ニューロン疾患、自己免疫性溶血性貧血、ANCA関連血管炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、虚血発作(再灌流を伴うもの及び伴わないもの)、外傷性脳損傷、身体外傷及び抗糸球体基底膜(GBM)腎炎からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i)
a) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;
b) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むsCR1変異体;並びに
(ii)
a) 半減期延長部分;及び
b) さらなる可溶性補体阻害剤
からなる群より選択される化合物
を含む、可溶性補体受容体1型(sCR1)結合体。
【請求項13】
sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列;
(ii) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;
(iii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列;又は
(iv) 配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列
を含む、請求項12に記載のsCR1結合体。
【請求項14】
半減期延長部分は、ヒト血清アルブミン又はその機能性フラグメント、免疫グロブリンFc領域又はその機能性フラグメント、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アルブミンに結合する抗体フラグメント及びポリマーからなる群より選択される、請求項12又は13に記載の結合体。
【請求項15】
さらなる可溶性補体阻害剤は、C1-阻害剤(C1-INH)、第I因子(fI)、H因子(fH)、補体H因子関連タンパク質(CFHR)、C4b-結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、可溶性CD46(補体調節タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、可溶性補体受容体2(sCR2)、TT30(CR2-fH)及びコブラ毒因子(CVF)からなる群より選択される、請求項12~14のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項16】
配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含む、可溶性補体受容体1型(sCR1)結合体。
【請求項17】
配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列及び単量体又は二量体免疫グロブリンFc領域を含む、可溶性補体受容体1型(sCR1)結合体。
【請求項18】
sCR1結合体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して増加した補体阻害活性を有する、請求項12~17のいずれか1項に記載のsCR1結合体。
【請求項19】
sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、古典的経路、レクチン経路及び/又は副補体経路において増加した補体阻害活性を有する、請求項12~18のいずれか1項に記載のsCR1結合体。
【請求項20】
sCR1変異体は:
(i) LHR-A及びLHR-B;
(ii) LHR-A、LHR-B及びLHR-C;
(iii) LHR-B及びLHR-C;並びに
(iv) LHR-B、LHR-C及びLHR-D
からなる群より選択される長い相同反復(LHR)領域を含む、請求項12~19のいずれか1項に記載のsCR1結合体。
【請求項21】
請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体、並びに薬学的に許容しうる担体及び/又は賦形剤を含む組成物。
【請求項22】
組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも30%は、シアル酸付加されたグリカンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
sCR1変異体を含む組成物であって、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも30%はシアル酸付加されたグリカンを含み、そしてここでsCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;及び
(ii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、上記組成物。
【請求項24】
被験体における補体活性を阻害する際の使用のための、請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、被験体における補体活性を阻害する方法
【請求項26】
被験体において補体活性を阻害するための薬剤の製造における、請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
被験体において疾患又は状態を処置又は予防する際の使用のための、請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、被験体において疾患又は状態を処置又は予防する方法。
【請求項29】
被験体における疾患又は状態の処置又は予防のための薬剤の製造における、請求項12~20のいずれか1項に記載のsCR1結合体又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項30】
疾患又は状態は補体媒介障害である、請求項27に記載の使用、請求項28に記載の方法、又は請求項29に記載の使用のための、sCR1結合体又は組成物。
【請求項31】
被験体は、補体媒介障害もしくは状態に罹患しているか又は補体媒介障害もしくは状態の危険性がある、請求項24、27もしくは30のいずれか1項に記載の使用、請求項25、28もしくは30のいずれか1項に記載の方法、又は請求項26もしくは29~30
のいずれか1項に記載の使用のためのsCR1結合体又は組成物。
【請求項32】
補体媒介障害は、移植拒絶(臓器移植後臓器機能障害、グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶を含む)、実質臓器移植、腎症、虚血再灌流傷害、視神経脊髄炎、重症筋無力症、糸球体病変、ループス腎炎(急性及び慢性)、IgA腎症、水疱性類天疱瘡、抗リン脂質症候群、ぶどう膜炎、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞、運動ニューロン疾患、自己免疫性溶血性貧血、ANCA関連血管炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、虚血発作(再灌流を伴うもの及び伴わないもの)、外傷性脳損傷、身体外傷及び抗糸球体基底膜(GBM)腎炎からなる群より選択される、請求項24、27、30もしくは31のいずれか1項に記載の使用、請求項25、28、30もしくは31のいずれか1項に記載の方法、又は請求項26もしくは29~31のいずれか1項に記載の使用のためのsCR1結合体又は組成物。
【請求項33】
被験体において補体活性を阻害する際の使用のためのキットであって:
(a) 請求項12~20のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物;
(b) 被験体において補体活性を阻害する際にキットを使用するための指示書;及び
(c) 場合により、少なくとも1つのさらなる治療活性化合物又は薬物
を含む、上記キット。
【請求項34】
被験体において補体媒介障害を処置又は予防する際の使用のためのキットであって:
(a) 請求項12~20のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsCR1結合体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物;
(b) 被験体において補体媒介障害を処置又は予防する際にキットを使用するための指示書;及び
(c) 場合により、少なくとも1つのさらなる治療活性化合物又は薬物
を含む、上記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、豪州特許出願第2018901703号 表題「可溶性補体受容体I型変異体及びそれらの使用(Soluble complement receptor type I variants and uses thereof)」(2018年5月16日出願。その内容全体が参照により本明細書に加入される)からの優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は電子形態の配列表とともに出願される。配列表の内容全体が参照により本明細書に加入される。
【0003】
分野
本開示は、可溶性補体受容体1型変異体及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
補体系は自然免疫系の一部であり、そして補体関連損傷から宿主を保護しながら、外来微生物の排除において役割を果たす多数の細胞表面の可溶性タンパク質から構成される。
【0005】
補体系は可溶性成分C1-C9を含み、そしてその主要な成分が断片化された場合に活性化し、そしてそれらフラグメントは単独で又は他のタンパク質とともに、さらなる補体タンパク質を活性化して、タンパク質分解カスケードを生じる。補体系の活性化は、増加した血管透過性、貪食細胞の化学遊走、炎症細胞の活性化、異物粒子のオプソニン化、細胞の直接殺傷、及び組織損傷をもたらす。
【0006】
補体系の3つの経路は全て、補体成分C5b、C6、C7、C8及びC9を含む膜侵襲複合体(MAC)の形成、さらにはアナフィロトキシン(anaphylotoxins)C3a及びC5aの放出を最終的にもたらす。しかし、各経路は異なるように開始される。古典的経路は、抗原-抗体複合体に応じて開始され、そして補体成分C1sによる補体成分C4の活性化を含み、これは補体成分C2、C3及びC5の連続的活性化、そしてMACの形成をもたらす。レクチン経路は、マンノース結合レクチン(MBL)の病原体の表面上のそれぞれの炭水化物への結合によるマンナン結合レクチンセリンプロテアーゼ1(MASP1)及びMASP2の活性化を含む。活性化されたMASP1/MASP2はC4を活性化し、補体成分C2、C3及びC5の連続的活性化並びにMACの形成をもたらす。古典的経路及びレクチン経路とは異なり、副経路はC4及びC2の活性化を含まないが、B因子、D因子及びプロパージンを介するC3の活性化、続いてC5の活性化及びMACの形成を引き起こす病原体表面により開始される。C3及びC5はまた、凝固カスケードのタンパク質により活性化され得る。
【0007】
補体受容体1型(CR1)は、補体の活性化の主要な制御因子である。CR1(C3b/C4b受容体としても知られる)は、赤血球、マクロファージ/単球、顆粒球、B細胞、いくつかのT細胞、脾臓濾胞樹状細胞及び糸球体ポドサイト上に存在する膜結合タンパク質である。少量の可溶性CR1(sCR1)は細胞表面CR1から切断される;この可溶性分子の組み換えバージョンは、以前に生成され、TP10として知られる。CR1はC3活性化の負の制御因子であり、したがってsCR1は古典的経路、レクチン経路及び副経路のそれぞれを阻害することができる。
【0008】
sCR1は、約70時間(3日)の比較的短い半減期を有する(非特許文献1)。1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を有するsCR1変異体及び/又は補体阻害活性を保持するsCR1切断型変異体は以前に記載されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Zimmerman et al.、2000 Crit Care Med 28:3149-3154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、当業者には明らかであるが、当該分野において、増加した補体阻害活性及び/又は増加した半減期のような改善された活性を有するsCR1変異体の継続した必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
要旨
本開示は、被験体における増加した阻害性補体活性を有する可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体の本発明者らによる同定に基づく。
【0013】
本開示の作製において、本発明者らは、1つ又はそれ以上の長い相同反復(long homologous repeat)(LHR)領域(すなわち、LHR-A、LHR-B、LHR-C及び/又はLHR-D)に対応する規定されたアミノ酸配列を含むsCR1切断型変異体を製造した。本発明者らは、各sCR1変異体の補体阻害活性についての効果を調べた。本開示のsCR1切断型変異体は、3つの補体経路の全てにおいて改善された又は増加した阻害活性を有する。本発明者らは、配列番号1の残基42~939及び/又は残基490~1392を含むsCR1変異体が、sCR1の別の形態と比較して増加した阻害活性を有するということを決定した。
【0014】
本発明者らによる発見は、被験体において補体活性を阻害する方法のための基礎を提供し、該方法は、被験体にsCR1変異体を投与することを含む。本発明者らによる発見はまた、被験体において障害、例えば補体媒介障害を処置又は予防するための方法の基礎も提供する。
【0015】
本開示は、被験体において補体活性を阻害する方法を提供し、該方法は可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体を被験体に投与することを含み、該sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;及び
(ii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
一例において、sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている);
(ii) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基940~1971を欠いている);
(iii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列(例えば
、配列番号1アミノ酸残基1~489及び1393~1971を欠いている);又は
(iv) 配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸1~489を欠いている)
を含む。
【0017】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含む。
【0018】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基940~1971を欠いている)を含む。
【0019】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1~489及び1393~1971を欠いている)を含む。
【0020】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1~489を欠いている)を含む。
【0021】
一例において、sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列;
(ii) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;
(iii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列;又は
(iv) 配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列
からなる。
【0022】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含む。本発明者らは、上記sCR1変異体が、配列番号1のアミノ酸42~1971を含むsCR1変異体と比較して改善された補体阻害活性を有することを示した。アミノ酸1393~1971におけるCR1の領域はC1q及びマンノース結合レクチン(MBL)に結合し、そしてその除去は補体阻害活性に有害であるか又は効果を有さないだろうと合理的に予測されたので、この発見は予想外であった。
【0023】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列からなる。
【0024】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列からなる。
【0025】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列からなる。
【0026】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸1~1971に対応するアミノ酸配列からなるものではなく、配列番号1のアミノ酸1~1971に対応するアミノ酸配列を含むものでもない。
【0027】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1971に対応するアミノ酸配列からなるものではなく、配列番号1のアミノ酸42~1971に対応するアミ
ノ酸配列を含むものでもない。
【0028】
一例において、本開示のsCR1変異体は、本明細書に開示されるいずれかの配列の1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入を場合により含む。本開示における使用に適したアミノ酸置換は当業者に明らかであり、そして天然に存在する置換及び操作された置換を含む。
【0029】
一例において、本開示のsCR1変異体は、本明細書に開示される配列と比較して1つ又はそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの例において、sCR1変異体は、10又はそれ以下、例えば、9又は8又は7又は6又は5又は4又は3又は2又は1つの保存的アミノ酸置換を含む。
【0030】
一例において、本開示のsCR1変異体は、1つ又はそれ以上の非保存的アミノ酸変化を含む。例えば、非保存的アミノ酸置換は、本開示のsCR1変異体の半減期を増加し、免疫原性を減少し、かつ/又は阻害活性を増加させる。一例において、sCR1変異体は、6より少ない、又は5又は4又は3又は2又は1つの非保存的アミノ酸置換を含む。
【0031】
一例において、本開示のsCR1変異体は、本明細書に開示される配列と、少なくとも約85%又は約90%又は約95%又は約97%又は約98%又は約99%同一である配列を含む。
【0032】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)と、少なくとも約85%又は約90%又は約95%又は約97%又は約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含む。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約95%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約97%同一であるアミノ酸配列を含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列と約99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0033】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と、少なくとも約85%又は約90%又は約95%又は約97%又は約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列からなる。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約95%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約97%同一であるアミノ酸配列を含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列と約99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と、少なくとも約85%又は約90%又は約95%又は約97%又は約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列からなる。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約95%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約97%同一であるアミノ酸配列を含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列と約99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0035】
一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と少なくとも約85%又は約90%又は約95%又は約97%又は約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列からなる。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約90% 同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約95%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約97%同一であるアミノ酸配列を含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列と約99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
一例において、本開示のsCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して増加した阻害活性を有する。例えば、本開示のsCR1変異体の補体阻害活性は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、少なくとも約1.5倍、又は約2倍、又は約3倍、又は約3.5倍、又は約4倍、又は約5倍、又は約6倍、又は約8倍、又は約10倍増加する。
【0037】
sCR1変異体の阻害活性を決定する方法は、当業者に明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。一例において、補体阻害活性はインビトロアッセイを使用して決定される。例えば、補体活性は、酵素イムノアッセイ(例えば、Wieslab(R)補体アッセイキットのような補体活性化を測定するイムノアッセイ)を使用して測定される。例えば、補体阻害活性は、補体活性化の間に産生された抗原又はエピトープ(例えば、C5b-9又はC5b-C9に存在するエピトープ)に特異的な標識された抗体を使用して決定される。一例において、マイクロタイタープレートのウェルを古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化因子でコーティングする。一例において、sCR1変異体を、正常ヒト血清及び適切なアッセイ希釈剤(すなわち、古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化を確実にするための適切なブロッキング成分を含む希釈剤)とともにインキュベートし、そして古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化因子でコーティングされたマイクロタイタープレートのウェルに加え、そして形成されたC5b-9複合体の量を、C5b-9に対する特異的アルカリホスファターゼ標識抗体を使用して検出する。一例において、産生された補体活性化産物(すなわち、C5b-9)の量は、補体経路の機能的活性に比例する。一例において、半値幅阻害剤濃度(すなわち、IC50)を決定する。例えば、sCR1変異体のIC50を決定し、そして配列番号2に示さ
れる配列を含むsCR1のIC50と比較する。別の例において、補体阻害活性を、溶血アッセイを使用して決定する(例えば、古典的経路(すなわち、CH50)及び副経路(ApH50)阻害アッセイ)。
【0038】
一例において、sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して古典的経路、レクチン経路及び/又は副補体経路において増加した阻害活性を有する。
【0039】
一例において、sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して古典的補体経路において増加した阻害活性を有する。例えば、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、古典的補体経路における本開示のsCR1変異体の阻害活性は、少なくとも1.25倍、又は約1.5倍、又は約1.75倍、又は約2倍、又は約2.5倍、又は約3倍、又は約3.5倍、又は約4倍、又は約5倍増加する。
【0040】
一例において、本開示のsCR1変異体は、古典的補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、配列番号2に示される配列を含むsCR1よりも小さいIC50を有する。例えば、本開示のsCR1変異体は、古典的補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約1.0nMよりも小さい、例えば約0.95nM、又は約0.90nM、又は約0.85nM、又は約0.80nM、又は約0.75nM、又は約0.70nMのIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、古典的補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.85nMと0.90nMとの間、例えば約0.88nMのIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、古典的補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.65nM、又は約0.60nM、又は約0.55nM、又は約0.50nM、又は約0.45nM、又は約0.40nM、又は約0.35nM、又は約0.30nM、又は約0.25nM、又は約0.20nM、又は約0.15nM、又は約0.10nMより小さいIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、古典的補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.35nMと0.45nMとの間、例えば約0.40nMのIC50を有する。
【0041】
一例において、sCR1変異体は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、レクチン補体経路において増加した阻害活性を有する。例えば、本開示のsCR1変異体のレクチン補体経路における阻害活性は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、少なくとも1.25倍、又は約1.5倍、又は約1.75倍、又は約2倍、又は約2.5倍、又は約3倍、又は約3.5倍、又は約4倍、又は約5倍増加する。
【0042】
一例において、本開示のsCR1変異体は、レクチン補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、配列番号2に示される配列を含むsCR1よりも小さいIC50を有する。例えば、本開示のsCR1変異体は、レクチン補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.60nM、又は約0.55nM、又は約0.50nMより小さいIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、レクチン補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.50nMと0.60nMとの間、例えば約0.547nMのIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、レクチン補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.50nM、又は約0.45nM、又は約0.40nM、又は約0.35nM、又は約0.30nMより小さいIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、レクチン補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.40nMと0.45nMとの間、例えば約0.43nMのIC50を有する。
【0043】
一例において、sCR1変異体は、副補体経路において、配列番号2に示される配列を
含むsCR1と比較して増加した阻害活性を有する。例えば、副補体経路における本開示のsCR1変異体の阻害活性は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、少なくとも1.25倍、又は約1.5倍、又は約1.75倍、又は約2倍、又は約2.5倍、又は約3倍、又は約3.5倍、又は約4倍、又は約5倍増加する。
【0044】
一例において、本開示のsCR1変異体は、副補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、配列番号2に示される配列を含むsCR1よりも小さいIC50を有する。例えば、本開示のsCR1変異体は、副補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.75nM、又は約0.70nM、又は約0.65nM、又は約0.60nM、又は約0.55nM、又は約0.50nM、又は約0.45nM、又は約0.40nM、又は約0.35nM、又は約0.30nM、又は約0.25nMより小さいIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、副補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.35nMと約0.40nMとの間、例えば約0.38nMのIC50を有する。一例において、本開示のsCR1変異体は、副補体アッセイ(例えば、Wieslab補体アッセイ)において、約0.25nMと約0.30nMとの間、例えば約0.27nMのIC50を有する。
【0045】
一例において、本開示のsCR1変異体は:
(i) LHR-A及びLHR-B;
(ii) LHR-A、LHR-B及びLHR-C;
(iii) LHR-B及びLHR-C;並びに
(iv) LHR-B、LHR-C及びLHR-D
からなる群より選択される長い相同反復(LHR)領域を含む。
【0046】
一例において、本開示のsCR1変異体は、LHR-A及びLHR-Bからなるが、LHR-C及びLHR-Dを欠いているLHR領域を含む。
【0047】
一例において、本開示のsCR1変異体は、LHR-A、LHR-B及びLHR-Cからなるが、LHR-Dを欠いているLHR領域を含む。
【0048】
一例において、本開示のsCR1変異体は、LHR-B及びLHR-Cからなるが、LHR-A及びLHR-Dを欠いているLHR領域を含む。
【0049】
一例において、本開示のsCR1変異体は、LHR-B、LHR-C及びLHR-Dからなるが、LHR-Aを欠いているLHR領域を含む。
【0050】
一例において、LHR領域LHR-Aは、配列番号1のアミノ酸42~489に対応するアミノ酸配列を含む。例えば、LHR-A領域は配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。一例において、LHR領域LHR-Aは、短いコンセンサス反復(SCR)配列1~7を含む。例えば、SCR配列1~3(すなわち、部位1)はC4bに結合することができる。
【0051】
一例において、LHR領域LHR-Bは、配列番号1のアミノ酸490~939に対応するアミノ酸配列を含む。例えば、LHR-B領域は配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。一例において、LHR領域LHR-BはSCR配列8~14を含む。例えば、SCR配列8~10(すなわち、部位2)はC3b及びC4bに結合することができる。
【0052】
一例において、LHR領域LHR-Cは、配列番号1のアミノ酸940~1392に対応するアミノ酸配列を含む。例えば、LHR-C領域は配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。一例において、LHR領域LHR-CはSCR配列15~21を含む。例え
ば、SCR配列15~17はC3b及びC4bに結合することができる。
【0053】
一例において、LHR領域LHR-Dは配列番号1のアミノ酸1393~1971に対応するアミノ酸配列を含む。例えば、LHR-D領域は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。一例において、LHR領域LHR-DはSCR配列22~28を含む。例えば、SCR配列22~28はC1q及びMBLに結合することができる。
【0054】
一例において、本開示のsCR1変異体は:
(i) SCR-1~SCR-14(例えば、SCR-15~SCR-28を欠いている);
(ii) SCR-1~SCR-21(例えば、SCR-22~SCR-2を欠いている8);
(iii) SCR-8~SCR-21(例えば、SCR-1~SCR-7及びSCR-22~SCR-28を欠いている);並びに
(iv) SCR-8~SCR-28(例えば、SCR-1~SCR-7を欠いている)からなる群より選択されるSCR配列を含む(又はこれらからなる)。
【0055】
一例において、本開示のsCR1変異体はSCR配列SCR-1~SCR-14(例えば、SCR-15~SCR-28を欠いている)を含む。
【0056】
一例において、本開示のsCR1変異体はSCR配列SCR-1~SCR-21(例えば、SCR-22~SCR-28を欠いている)を含む。
【0057】
一例において、本開示のsCR1変異体はSCR配列SCR-8~SCR-21(例えば、SCR-1~SCR-7及びSCR-22~SCR-28を欠いている)を含む。
【0058】
一例において、本開示のsCR1変異体はSCR配列SCR-8~SCR-28(例えば、SCR-1~SCR-7を欠いている)を含む。
【0059】
一例において、sCR1変異体は単量体(すなわち、sCR1変異体の1つのコピー)である。
【0060】
一例において、sCR1変異体は二量体であるか、又は二量体化されている(すなわち、sCR1変異体の2つのコピーが融合タンパク質において連結されている)。
【0061】
一例において、sCR1変異体は多量体であるか、又は多量体化されている(すなわち、sCR1変異体の多数のコピーが融合タンパク質において連結されている)。
【0062】
一例において、2つ又はそれ以上の同じsCR1変異体が融合される(すなわち、融合タンパク質として発現される)。
【0063】
一例において、2つ又はそれ以上の異なるsCR1変異体が融合される(すなわち融合タンパク質として発現される)。
【0064】
一例において、二量体化又は多量体化されたsCR1変異体は、sCR1変異体の間にリンカーを含む。
【0065】
一例において、本開示は、多量体化ドメインを含む2つ又はそれ以上のsCR1変異体を含む多量体タンパク質を提供し、ここで多量体化ドメインは相互作用して多量体タンパク質を形成する。
【0066】
一例において、多量体タンパク質における各sCR1変異体は1つのsCR1変異体を含む。別の例において、多量体タンパク質における1つ又はそれ以上のsCR1変異体は、2つ又はそれ以上のsCR1変異体を含み、例えばsCR1変異体は融合タンパク質において連結されている。
【0067】
一例において、多量体化ドメインは免疫グロブリンヒンジドメインを含む。
【0068】
一例において、多量体化ドメインはロイシンジッパードメイン、シスチンノット又は抗体Fc領域である。
【0069】
一例において、多量体化sCR1変異体は線状である。
【0070】
一例において、多量体化sCR1変異体は環状である。
【0071】
本開示は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合されたいずれかの例で本明細書において記載されるsCR1変異体(例えば、補体活性を阻害するための方法に関連したsCR1変異体の記載は、sCR1変異体自体に関連する以下の記載に適用されるとみなされるものとする)を提供する。一例において、sCR1変異体は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に化学的に結合される。別の例において、sCR1変異体は融合され、例えば、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤との融合タンパク質として発現される。一例において、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤はsCR1変異体のC末端に結合される。一例において、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤はsCR1変異体のN末端に結合される。
【0072】
一例において、本開示のsCR1変異体は半減期延長部分に結合される。例えば、半減期延長部分は、アルブミン又はその機能性フラグメントもしくは変異体、ヒト血清アルブミン又はその機能性フラグメントもしくは変異体、免疫グロブリン又はその機能性フラグメントアファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、及びポリマーからなる群より選択される。
【0073】
一例において、免疫グロブリン又はその機能性フラグメントは、アルブミンに結合する抗体フラグメントである。例えば、半減期延長部分は、抗体Fc領域(すなわち、単量体又は二量体免疫グロブリンFc領域)、例えば、ヒトIgG1 Fc領域又はヒトIgG4 Fc領域又は安定化ヒトIgG4 Fc領域である。例えば、Fc領域はヒトIgG4 Fc領域である。一例において、抗体Fc領域は、(本明細書において考察されるように)二量体化を予防するように改変される。例えば、抗体Fc領域は単量体Fc領域である。一例において、Fcフラグメント及び/又はその変異体は、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入を含む。本開示における使用に適したアミノ酸置換は、当業者に明らかであり、そして例えばWO2000042072、WO2002060919、WO2004035752及びWO2006053301に記載されるもののような天然に存在する置換及び操作された置換を含む。
【0074】
一例において、sCR1変異体はそのC末端で抗体Fc領域に融合される。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含み、そしてそのC末端で抗体Fc領域に融合される。本発明者らは、このような融合タンパク質が、Fc領域を欠いているタンパク質と比較して、予測されるよりも高い補体阻害活性を有しているということを発見した。Fc領域が二量体化すると仮定すると、およそ2倍の活性の増加が期待され
るが、しかし本発明者らは、約8倍までの改善を観察した。
【0075】
一例において、結合体化した本開示のsCR1変異体は、配列番号2に示されるsCR1を含むsCR1変異体結合体と比較して長い血清半減期を有する。増加した血清半減期及び血清半減期を決定するためのアッセイの例は本明細書に記載され、そして変更するべきところは変更して本開示のこの例に適用されるとみなされるべきである。
【0076】
一例において、半減期延長部分はアルブミン、その機能性フラグメントもしくは変異体である。一例において、アルブミン、その機能性フラグメント又は変異体は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンである。一例において、アルブミン、その機能性フラグメント又は変異体は、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入、例えば、5を超えない又は4又は3又は2又は1つの置換を含む。本開示における使用に適したアミノ酸置換は当業者に明らかであり、例えば、WO2011051489、WO2014072481、WO2011103076、WO2012112188、WO2013075066、WO2015063611、WO2014179657及びWO2019075519に記載されるもののような天然に存在する置換及び操作された置換を含む。
【0077】
一例において、sCR1変異体はそのC末端においてアルブミン、その機能性フラグメント又は変異体に融合される。例えば、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含み、そしてそのC末端でアルブミン(例えば、血清アルブミン)、その機能性フラグメント又は変異体に融合される。
【0078】
一例において、アルブミンと構造的に又は進化的に関連する他のタンパク質は半減期延長部分として使用され得、これらとしては、限定されないが、アルファ-フェトプロテイン(WO 2005024044;Beattie and Dugaiczyk、20
Gene 415-422、1982)、アファミン(Lichenstein et
al.269(27) J.Biol.Chem.18149-18154、1994)、及びビタミンD結合タンパク質(Cooke and David、76 J.Clin.Invest.2420-2424、1985)が挙げられる。
【0079】
一例において、半減期延長部分はアルファ-フェトプロテインである。
【0080】
一例において、半減期延長部分はアファミンである。
【0081】
一例において、半減期延長部分はビタミンD結合タンパク質である。
【0082】
一例において、半減期延長部分は免疫グロブリン又はその機能性フラグメントである。一例において、免疫グロブリンはFc領域を含む。例えば、IgはFcドメイン又はそのFcフラグメント及び/もしくは変異体である。一例において、Igは免疫グロブリン定常ドメインの一部である。一例において、免疫グロブリンはアルブミンに結合する抗体フラグメントである。
【0083】
一例において、半減期延長部分はポリマーである。本開示における使用に適したポリマーは、当業者に明らかであり、そしてこれらとしては、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。一例において、ポリマーはモノ-又はポリ-(例えば、2~4)ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一例において、ポリマーはPEGである。
【0084】
一例において、本開示のsCR1変異体はさらなる可溶性補体阻害剤に結合される。例
えば、さらなる可溶性補体阻害剤は、C1-阻害剤(C1-INH)、第I因子(fI)、H因子(fH)、補体H因子関連タンパク質(CFHR)、C4b結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、可溶性CD46(補体調節タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、可溶性補体受容体2(sCR2)、TT30(CR2-fH)及びコブラ毒因子(CVF)からなる群より選択される。
【0085】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤はC1阻害剤(C1-INH)である。
【0086】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は第I因子(fI)である。
【0087】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤はH因子(fH)である。一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は、補体H因子関連タンパク質(CFHR)である。例えば、補体H因子関連タンパク質は、CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4及びCFHR5からなる群より選択される。
【0088】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤はC4b結合タンパク質(C4bp)である。
【0089】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))である。
【0090】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は可溶性CD46(補体調節タンパク質(MCP))である。
【0091】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は可溶性CD59(プロテクチン)である。
【0092】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤は可溶性補体受容体2(sCR2)である。
【0093】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤はTT30(CR2-fH)である。
【0094】
一例において、さらなる可溶性補体阻害剤はコブラ毒因子(CVF)である。
【0095】
一例において、本開示のsCR1変異体はsCR1変異体グリコフォームである。例えば、sCR1変異体グリコフォームはシアル酸付加されたsCR1変異体グリコフォームである。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームはシアル酸付加されたグリカンを含む。例えば、シアル酸付加されたsCR1変異体グリコフォームは、少なくとも1つのシアル酸付加されたグリカン(例えば、モノ-、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化(sialylated)グリカン)を含む。一例において、シアル酸付加されたsCR1変異体グリコフォームは、1つのシアル酸付加されたグリカンを含むsCR1変異体グリコフォーム(すなわち、sCR1変異体はモノ-シアリル化されている)である。一例において、シアル酸付加sCR1変異体グリコフォームは、少なくとも2つのシアル酸付加されたグリカンを含む(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化)。一例において、シアル酸付加sCR1変異体グリコフォームは、2つのシアル酸付加グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームである(すなわち、sCR1変異体はジ-シアリル化されている)。一例において、sCR1変異体は、3つのシアル酸付加グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームである(すなわち、sCR1変異体はトリ-シアリル化されている)。一例において、sCR1変異体は、4つのシアル酸付加グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームである(すなわち、sCR1変異体はテトラ-シアリル化されている)。
【0096】
一例において、sCR1変異体グリコフォーム(すなわち、少なくとも2つのシアル酸付加グリカンを含む)は、配列番号2に示される配列を含むsCR1と比較して、古典的経路、レクチン経路及び/又は副補体経路において増加した阻害活性を有する。
【0097】
本開示は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合された本開示のsCR1変異体グリコフォーム(すなわち、少なくとも2つのシアル酸付加グリカンを含む)を提供する。一例において、本開示の結合体化sCR1変異体グリコフォームは、配列番号2に示されるsCR1を含むsCR1変異体結合体と比較してより長い血清半減期を有する。増加した血清半減期及び血清半減期を決定するためのアッセイの例が本明細書に記載され、そして変更するべきところは変更して本開示のこの例に適用されるとみなされるべきである。
【0098】
本開示はまた、本開示のsCR1変異体並びに医薬担体及び/又は賦形剤を含む組成物を提供する。一例において、本開示はまた、sCR1変異体グリコフォームを含む組成物を提供する。例えば、組成物はシアル酸付加sCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも30%はシアル酸付加されたグリカンを含む。例えば、シアル酸付加sCR1変異体グリコフォームの少なくとも30%は、モノ-、ジ-、トリ-及び/又はテトラ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約30%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%、又は約55%、又は約60%、又は約65%、又は約70%、又は約75%は、シアル酸付加グリカンを含む(例えば、モノ-、ジ-、トリ-及び/又はテトラ-シアリル化されている)。
【0099】
一例において、組成物は、少なくとも2つのシアル酸付加グリカン(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリカン)を含むシアル酸付加sCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約30%は、少なくとも2つのシアル酸付加グリカン(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリカン)を含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約30%は、ジ-、トリ-及び/又はテトラ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約30%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%、又は約55%、又は約60%、又は約65%、又は約70%、又は約75%は、少なくとも2つのシアリル化グリカン(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリカン)を含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約30%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%、又は約55%、又は約60%、又は約65%、又は約70%、又は約75%は、ジ-、トリ-及び/又はテトラ-シアリル化グリカンを含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含む。
【0100】
一例において、組成物は、モノ-シアリル化グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約20%はモノ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約20%、又は約25%、又は約30%、又は約35%、又は約40%又は約45%はモノ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約22.5%~25%はモノ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約35%~約40%はモノ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約40%~約45%はモノ-シアリル化グリカンを含む。
【0101】
一例において、組成物は、ジ-シアリル化グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約15%はジ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約15%、又は約17.5%、又は約20%、又は約22.5%、又は約25%はジ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約25%はジ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約25%、又は約27.5%、又は約30%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%、又は約55%、又は約60%はジ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約17.5%~約20%はジ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のCR1変異体グリコフォームの約25%~約30%はジ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約40%~約45%はジ-シアリル化グリカンを含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含む。
【0102】
一例において、組成物は、トリ-シアリル化グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約1%はトリ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約1%、又は約2%、又は約3%、又は約4%、又は約5%、又は約6%、又は約7%、又は約8%、又は約9%、又は約10%、又は約11%、又は約12%、又は約13%、又は約14%、又は約15%はトリ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約3.5%~約4%はトリ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約8%~約8.5%はトリ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約9%~約9.5%はトリ-シアリル化グリカンを含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)を含む。
【0103】
一例において、組成物は、テトラ-シアリル化グリカンを含むsCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの少なくとも約0.5%はテトラ-シアリル化グリカンを含む。例えば、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約0.5%、又は約0.75%、又は約1%、又は約1.25%、又は約1.5%、又は約1.75%、又は約2%、又は約2.25%、又は約2.5%、又は約2.75%、又は約3%、又は約4%、又は約5%、又は約6%、又は約7%、又は約8%、又は約9%、又は約10%はテトラ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約0.5%はテトラ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約1.5%~約2%はテトラ-シアリル化グリカンを含む。一例において、組成物中のsCR1変異体グリコフォームの約2%~約2.5%はテトラ-シアリル化グリカンを含む。一例において、sCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1393~1971を欠いている)。
【0104】
本開示のsCR1変異体の複雑な炭水化物構造の分析方法は当業者に明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0105】
本開示のsCR1変異体グリコフォーム組成物を製造するための方法は、当業者に明ら
かであり、そしてこれらとしては例えば、シアリルトランスフェラーゼを組み換え的に発現し、かつ/又は過剰発現する細胞においてsCR1変異体を発現させることが挙げられる。例えば、sCR1変異体は、ヒトST3GAL3(ST3 ベータ-ガラクトシド アルファ-2,3-シアリルトランスフェラーゼ3)及び/又はヒトB4GALT1(ヒトβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ)を組み換え的に発現し、かつ/又は過剰発現する細胞において発現される。別の例において、sCR1変異体は、グリコシル化のレベルを増加させるためのさらなるグリコシル化部位を含むように改変され得る。
【0106】
一例において、本開示のsCR1変異体は哺乳動物細胞株において発現される。例えば、sCR1変異体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293)、ベビーハムスター腎臓(例えば、BHK-21)細胞、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0、Sp2)及びCAP(R)細胞(例えば、CAP-Go.1、CAP-Go.2)のような羊膜細胞由来細胞からなる群より選択される哺乳動物細胞株において発現される。
【0107】
一例において、sCR1変異体はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において発現される。
【0108】
一例において、sCR1変異体はヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293)において発現される。
【0109】
さらなる例において、sCR1変異体は、ヒト羊膜細胞由来細胞、例えばCAP(R)細胞、例えば、CAP(R)-Go.1又はCAP(R)-Go.2細胞のような羊膜細胞由来細胞において発現される。本開示のいずれかの方法における使用に適したCAP(R)細胞は、例えばWissingら(2015;BMC Proc.、9(Suppl
9):P12)に記載される。
【0110】
本開示はまた、本開示のsCR1結合体並びに医薬担体及び/又は賦形剤を含む組成物を提供する。
【0111】
一例において、組成物は、配列番号2に示される配列を含むsCR1を含むsCR1結合体を含む組成物と比較して増加した血清半減期を有する。
【0112】
本開示は、被験体において補体活性を阻害する方法を提供し、該方法は本開示のsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物を投与することを含む。
【0113】
本開示はまた、被験体において疾患又は状態を処置又は予防する方法を提供し、該方法は、本開示のsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物を投与することを含む。
【0114】
一例において、本開示は、被験体において補体活性を阻害する際の使用のための、sCR1変異体、又はsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物を提供する。
【0115】
一例において、本開示は、被験体における疾患又は状態を処置又は予防する際の使用のための、sCR1変異体、又はsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物を提供する。
【0116】
一例において、本開示は、被験体において補体活性を阻害するための薬剤の製造における、本開示のsCR1変異体、又はsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物の使用を提供する。
【0117】
一例において、本開示は、被験体における疾患又は状態の処置又は予防のための薬剤の製造における、本開示のsCR1変異体、又はsCR1変異体結合体、又はsCR1変異体を含む組成物の使用を提供する。
【0118】
一例において、被験体は、本開示のsCR1変異体を用いた処置を必要とする(すなわち、それを必要とする)。
【0119】
一例において、疾患又は状態は、疾患又は状態は補体媒介障害である。例えば、被験体は補体媒介障害に罹患しているか、又は補体媒介障害の危険性がある。
【0120】
一例において、被験体は補体媒介障害に罹患している。一例において、被験体は、補体媒介障害に罹患していると診断されたことがある。一例において、被験体は、補体媒介障害のための処置を受けている。
【0121】
本明細書に記載されるいずれかの方法の例において、本開示のsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の発症の前に又は後に投与される。本明細書に記載されるいずれかの方法の例において、sCR1変異体結合体又は本開示のsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の発症の前に投与される。本明細書に記載されるいずれかの方法の例において、本開示のsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の発症の後に投与される。
【0122】
一例において、被験体は補体媒介障害を発症する危険性がある。
【0123】
一例において、sCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の症状の発現前に又は発現後に投与される。一例において、sCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の症状の発現前に投与される。一例において、sCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の症状の発現後に投与される。一例において、本開示のsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、補体媒介障害の症状の1つ又はそれ以上を軽減するか又は減少させる用量で投与される。
【0124】
補体媒介障害の症状は、当業者に明らかであり、そして状態に依存する。補体媒介障害の例となる症状としては、例えば:
・感染の再発;
・関節炎;
・筋力低下;
・発疹又は皮膚の変色;
・特に四肢(例えば、足、手、脚又は腕)又は眼における浮腫;
・腹部痛;
・呼吸困難;
・悪心;
・疲労;
・血尿;
・部分的又は完全麻痺;及び
・認知能力低下
が挙げられる。
【0125】
一例において、補体媒介障害は、補体系の原発性調節不全、自己免疫障害、急性損傷及び/又は炎症状態により引き起こされる。例えば、補体媒介障害は、遺伝性血管性浮腫、
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血小板減少性紫斑病(TTP)、血栓性微小血管症、C3糸球体症、膜性増殖性糸球体腎炎(抗Thy 1糸球体腎炎、抗conAびまん性増殖性糸球体腎炎及び/又は受動ヘイマン腎炎(passive heymann nephritis)を含む)、移植拒絶(肺移植(グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶を含む)及び/又は実質臓器移植(例えば、腎移植(抗体媒介拒絶を含む)を含む)、視神経脊髄炎、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症(自己免疫性重症筋無力症、脱髄性アレルギー性脳脊髄炎、IgG免疫複合体肺胞炎、逆受身アルサス反応を含む)、ループス腎炎(急性ループス腎炎又は慢性ループス腎炎を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE)、IgA腎症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫性溶血性貧血、天疱瘡(尋常性天疱瘡を含む)、類天疱瘡(水疱性類天疱瘡を含む)、抗リン脂質症候群、多発外傷、神経外傷、血液透析、感染後HUS、黄斑変性症、ブドウ膜炎、ANCA関連血管炎、アテローム性動脈硬化、気分障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、アナフィラキシー、敗血症、脳性マラリア、乾癬性関節症、皮膚筋炎、変形性関節症、認知症、緑内障、糖尿病性血管障害、心筋梗塞、虚血発作(再灌流を伴うもの及び伴わないもの)、出血性卒中、バイパス手術後、抗糸球体基底膜(GBM)腎炎(又はグッドパスチャー症候群)、自己免疫性てんかん、疱疹状皮膚炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA;又はチャーグ・ストラウス症候群)、外傷性脳損傷、身体的傷害、化膿性汗腺炎、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群血管炎、外傷(グリコーゲン誘発腹膜炎、熱傷、神経挫滅及び/又は閉鎖性頭部外傷を含む)、虚血再灌流傷害(IRI;心筋IRI、腸管IRI、肝臓IRI及び/又は膵臓IRIを含む)並びに急性呼吸促迫症候群(又は急性肺損傷)からなる群より選択される。
【0126】
一例において、補体媒介障害は、移植拒絶(例えば、抗体媒介拒絶)、移植の前、間、又は後の虚血再灌流傷害(肺移植及び/又は腎臓移植を含む)、臓器移植後臓器機能障害(肺移植及び/又は腎臓移植を含む)、実質臓器移植、視神経脊髄炎、重症筋無力症、糸球体病変、ループス腎炎、IgA腎症、水疱性類天疱瘡、抗リン脂質症候群、ぶどう膜炎、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞、運動ニューロン疾患、自己免疫性溶血性貧血、ANCA関連血管炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及び抗糸球体基底膜(GBM)腎炎からなる群より選択される。一例において、被験体は予防的処置を必要とする状態を有する。
【0127】
一例において、補体媒介障害は、移植拒絶(臓器移植後臓器機能障害、グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶を含む)、実質臓器移植、腎症、虚血再灌流傷害、視神経脊髄炎、重症筋無力症、糸球体病変、ループス腎炎(急性及び慢性)、IgA腎症、水疱性類天疱瘡、抗リン脂質症候群、ぶどう膜炎、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞、運動ニューロン疾患、自己免疫性溶血性貧血、ANCA関連血管炎 慢性炎症性脱髄性多発神経炎、虚血発作(再灌流を伴うか又は伴わないもの)、外傷性脳損傷、身体的傷害及び抗糸球体基底膜(GBM)腎炎からなる群より選択される。
【0128】
一例において、補体媒介障害は移植拒絶である(例えば、抗体媒介拒絶)。
【0129】
一例において、補体媒介障害は実質臓器移植である。
【0130】
一例において、補体媒介障害は、移植(肺移植及び/又は腎臓移植を含む)の前、間又は後の虚血再灌流傷害である。
【0131】
一例において、補体媒介障害は臓器移植後臓器機能障害(肺移植及び/又は腎臓移植を含む)である。
【0132】
一例において、補体媒介障害は視神経脊髄炎である。
【0133】
一例において、補体媒介障害は重症筋無力症である。例えば、重症筋無力症は、自己免疫性重症筋無力症、脱髄性アレルギー性脳脊髄炎、IgG免疫複合体肺胞炎又は逆受身アルサス反応である。
【0134】
一例において、補体媒介障害は糸球体病変である。
【0135】
一例において、補体媒介障害はループス腎炎である。例えば、ループス腎炎は急性ループス腎炎又は慢性ループス腎炎である。
【0136】
一例において、補体媒介障害は全身性エリテマトーデス(SLE)である。
【0137】
一例において、補体媒介障害IgA腎症である。
【0138】
一例において、補体媒介障害は類天疱瘡である。例えば、類天疱瘡は水疱性類天疱瘡である。
【0139】
一例において、補体媒介障害は抗リン脂質症候群である。
【0140】
一例において、補体媒介障害はぶどう膜炎である。
【0141】
一例において、補体媒介障害は神経障害である
一例において、補体媒介障害はパーキンソン病である。
【0142】
一例において、補体媒介障害はハンチントン病である。
【0143】
一例において、補体媒介障害は脳梗塞である。
【0144】
一例において、補体媒介障害は運動ニューロン疾患である。
【0145】
一例において、補体媒介障害は自己免疫性溶血性貧血である。
【0146】
一例において、補体媒介障害はANCA関連血管炎である。
【0147】
一例において、補体媒介障害は慢性炎症性脱髄性多発神経炎である。
【0148】
一例において、補体媒介障害は遺伝性血管性浮腫である。
【0149】
一例において、補体媒介障害は発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である。
【0150】
一例において、補体媒介障害は非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である。
【0151】
一例において、補体媒介障害は血小板減少性紫斑病(TTP)である。
【0152】
一例において、補体媒介障害は血栓性微小血管症である。
【0153】
一例において、補体媒介障害はC3腎症である。
【0154】
一例において、補体媒介障害は膜性増殖性糸球体腎炎である。例えば、糸球体腎炎は抗
Thy 1糸球体腎炎、抗conAびまん性増殖性糸球体腎炎及び/又は受動ヘイマン腎炎である。
【0155】
一例において、補体媒介障害は移植拒絶である。例えば、移植肺移植(グラフトサルベージ又は抗体媒介拒絶を含む)及び/又は腎臓移植(抗体媒介拒絶を含む)。
【0156】
一例において、補体媒介障害は多発性硬化症である。
【0157】
一例において、補体媒介障害はギラン・バレー症候群である。
【0158】
一例において、補体媒介障害は関節リウマチである。
【0159】
一例において、補体媒介障害は炎症性腸疾患である。例えば、炎症性腸疾患はクローン病又は潰瘍性大腸炎である。
【0160】
一例において、補体媒介障害は天疱瘡である。例えば、天疱瘡は尋常性天疱瘡である。
【0161】
一例において、補体媒介障害は多発外傷である。
【0162】
一例において、補体媒介障害は神経外傷である。
【0163】
一例において、補体媒介障害は血液透析である。
【0164】
一例において、補体媒介障害は感染後HUSである。
【0165】
一例において、補体媒介障害は黄斑変性症である。
【0166】
一例において、補体媒介障害は粥状動脈硬化である。
【0167】
一例において、補体媒介障害は気分障害である。
【0168】
一例において、補体媒介障害は喘息である。
【0169】
一例において、補体媒介障害は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。
【0170】
一例において、補体媒介障害は慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)である。
【0171】
一例において、補体媒介障害はアナフィラキシーである。
【0172】
一例において、補体媒介障害は敗血症である。
【0173】
一例において、補体媒介障害は脳性マラリアである。
【0174】
一例において、補体媒介障害は乾癬性関節症である。
【0175】
一例において、補体媒介障害は皮膚筋炎である。
【0176】
一例において、補体媒介障害は変形性関節症である。
【0177】
一例において、補体媒介障害は認知症である。
【0178】
一例において、補体媒介障害は緑内障である。
【0179】
一例において、補体媒介障害は糖尿病性血管障害である。
【0180】
一例において、補体媒介障害は心筋梗塞である。
【0181】
一例において、補体媒介障害は発作である。例えば、発作は虚血発作である(再灌流を伴うか又は伴わない)。別の例において、発作は出血性卒中である。
【0182】
一例において、補体媒介障害はバイパス手術後である。
【0183】
一例において、補体媒介障害は抗糸球体基底膜(GBM)腎炎(又はグッドパスチャー症候群)である。
【0184】
一例において、補体媒介障害は自己免疫性てんかんである。
【0185】
一例において、補体媒介障害は疱疹状皮膚炎である。
【0186】
一例において、補体媒介障害は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA;又はチャーグ・ストラウス症候群)である。
【0187】
一例において、補体媒介障害は外傷性脳損傷である。
【0188】
一例において、補体媒介障害は外傷である。例えば、外傷は身体的傷害である。一例において、外傷はグリコーゲン誘発腹膜炎である。別の例において、外傷は熱傷である。さらなる例において、外傷は神経挫滅及び/又は閉鎖性頭部外傷である。
【0189】
一例において、補体媒介障害は化膿性汗腺炎である。
【0190】
一例において、補体媒介障害はシェーグレン症候群である。例えば、シェーグレン症候群はシェーグレン症候群血管炎である。
【0191】
一例において、補体媒介障害は虚血再灌流傷害(IRI)である。例えば、IRIは心筋IRI、腸管IRI、肝臓IRI及び/又は膵臓IRIである。
【0192】
一例において、補体媒介障害は急性呼吸促迫症候群(又は急性肺傷害)である。
【0193】
一例において、本開示のsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物は、被験体における補体媒介障害の重症度を低減する量で被験体に投与される。
【0194】
本明細書に記載されるいずれかの方法の例において、被験体は哺乳動物、例えばヒトのような霊長類である。
【0195】
本明細書に記載される処置方法は、補体媒介障害の効果を低減するか、処置するか又は予防するためのさらなる化合物を投与することをさらに含み得る。
【0196】
本開示は、被験体において補体活性を阻害する際の使用のための指示書とともに包装された本開示の少なくとも1つのsCR1結合体又はsCR1変異体を含む組成物を含むキットを提供する。場合により、キットはさらなる治療活性化合物又は薬物をさらに含む。
【0197】
本開示は、被験体において補体媒介障害を処置又は予防する際の使用のための指示書とともに包装された、本開示の少なくとも1つのsCR1結合体又はsCR1変異体を含む組成物を含むキットをさらに提供する。場合により、キットはさらなる治療活性化合物又は薬物をさらに含む。
【0198】
本開示はまた、補体媒介障害を罹患しているか又は補体媒介障害に罹患している危険性がある被験体に、本開示の少なくとも1つのsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物を投与するための指示とともに包装された該結合体又は組成物を、場合によりさらなる治療活性化合物又は薬物と組み合わせて含むキット提供する。
【0199】
本開示のsCR1変異体結合体又は組成物の例となる効果は本明細書において記載されており、そして前の4つの段落において述べられた本開示の例に変更するべきところは変更して適用されると解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【
図1】
図1は、sCR1(1392)-8Hisのシアリル酸付加の血漿半減期に対する効果を示すグラフ表示である。
【
図2】
図2は、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおけるsCR1(1392)-8His処置の効果を示すグラフ表示である。
【
図3】
図3は、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおけるsCR1(1392)-8His
SIA処置の効果を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0201】
配列表の要点
配列番号1 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを有する可溶性補体受容体1(sCR1)のアミノ酸配列
配列番号2 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1971))のアミノ酸配列
配列番号3 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1392))のアミノ酸配列
配列番号4 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(939))のアミノ酸配列
配列番号5 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(490-1392))のアミノ酸配列
配列番号6 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(490-1971))のアミノ酸配列
配列番号7 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(234))のアミノ酸配列
配列番号8 N末端内在性ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(489))のアミノ酸配列
配列番号9 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(940-1971))のアミノ酸配列
配列番号10 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(490-939))のアミノ酸配列
配列番号11 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(940-1392))のアミノ酸配列
配列番号12 切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1393-1971))のアミノ酸配列
配列番号13 sCR1 LHR-Aのアミノ酸配列
配列番号14 sCR1 LHR-Bのアミノ酸配列
配列番号15 sCR1 LHR-Cのアミノ酸配列
配列番号16 sCR1 LHR-Dのアミノ酸配列
配列番号17 8xHisタグ
配列番号18 内在性シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号19 外来性シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号20 N末端内在性シグナルペプチドを欠いているHisタグ化可溶性補体受容体1(sCR1(1971)-8His)のアミノ酸配列
配列番号21 N末端内在性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(1392)-8His)のアミノ酸配列
配列番号22 N末端内在性シグナルペプチドを有する切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(939)-8His)のアミノ酸配列
配列番号23 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(490-1392)-8His)のアミノ酸配列
配列番号24 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(490-1971)-8His)のアミノ酸配列
配列番号25 N末端内在性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(234)-8His)のアミノ酸配列
配列番号26 N末端内在性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(489)-8His)のアミノ酸配列
配列番号27 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(940-1971)-8His)のアミノ酸配列
配列番号28 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(490-939)-8His)のアミノ酸配列
配列番号29 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(940-1392)-8His)のアミノ酸配列
配列番号30 N末端外来性シグナルペプチドを有するHisタグ化切断型可溶性補体受容体1(sCR1(1393-1971)-8His)のアミノ酸配列
配列番号31 GS13リンカー
配列番号32 成熟ヒト血清アルブミンのアミノ酸配列
配列番号33 IgG1 Fcのアミノ酸配列
配列番号34 IgG4 Fcのアミノ酸配列
配列番号35 GS30リンカー
配列番号36 外来性HSAシグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号37 外来性シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号38 N末端内在性シグナルペプチドを有しHSAに結合された可溶性補体受容体1(sCR1(1971)-GS13-HSA)のアミノ酸配列
配列番号39 N末端HSAシグナルペプチド及びプロ-ペプチドを有しHSAに結合された可溶性補体受容体1(HSA-GS13-sCR1(1971))のアミノ酸配列
配列番号40 N末端内在性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された可溶性補体受容体1(sCR1(1971)-IgG4 Fc)のアミノ酸配列
配列番号41 N末端外来性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された可溶性補体受容体1(IgG4 Fc-sCR1(1971))のアミノ酸配列
配列番号42 HSAプロ-ペプチドのアミノ酸配列
配列番号43 N末端内在性シグナルペプチドを有しHSAに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1392)-GS13-HSA)のアミノ酸配列
配列番号44 N末端外来性シグナルペプチドを有しHSAに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(HSA-GS13-sCR1(1392))のアミノ酸配列
配列番号45 N末端内在性シグナルペプチドを有しIgG1 Fcに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1392)-IgG1 Fc)のアミノ酸配列
配列番号46 N末端内在性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1392)-IgG4 Fc)のアミノ酸配列
配列番号47 N末端外来性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(IgG4 Fc-sCR1(1392))のアミノ酸配列
配列番号48 N末端内在性シグナルペプチドを有しHSAに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(939)-GS13-HSA)のアミノ酸配列
配列番号49 N末端内在性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(939)-IgG4 Fc))のアミノ酸配列
配列番号50 N末端外来性シグナルペプチドを有しIgG4 Fcに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(IgG4 Fc-sCR1(939))のアミノ酸配列
配列番号51 HSAに結合された切断型成熟可溶性補体受容体1(sCR1(1392)-HSA)のアミノ酸配列
【0202】
詳細な説明
一般
本明細書全体を通して、具体的に別の記述がなければ、又は状況が別の方法を必要としていなければ、単一の工程、物質の組成物、工程の群又は物質の組成物の群に対する言及は、それらの工程、物質の組成物、工程の群、又は物質の組成物の群の1つ及び複数(すなわち1つ又はそれ以上)を包含すると解釈されるべきである。
【0203】
当業者には当然のことながら、本開示は、具体的に記載されるもの以外の変形や改変を受けやすい。当然のことながら、本開示は全てのこのような変形及び改変を含む。本開示はまた、個別にまたは集合的に本明細書において言及されるかまたは示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、並びに上記工程または特徴の全ての組み合わせ又はいずれか2つもしくはそれ以上を含む。
【0204】
本開示は、説明の目的のみを意図される本明細書に記載される特定の例により範囲を限定されるべきではない。機能的に等価な製品、組成物及び方法は、明示的に本開示の範囲内である。
【0205】
本明細書における本開示のいずれの例も、具体的に別の記述がなければ、本開示のいずれかの他の例に変更するべきところは変更して適用されると解釈されるものとする。別の言い方をすれば、本開示のいずれの特定の例も、本開示のいずれかの他の特定の例と組み合わされ得る(互いに矛盾する場合を除いて)。
【0206】
特定の特徴又は特徴もしくは方法もしくは方法の工程の群を開示する本開示のいずれの例も、特定の特徴又は特徴もしくは方法もしくは方法の工程の群を排除するための明示的な支持を提供するものと解釈される。
【0207】
他に具体的に定義されていなければ、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0208】
他に指示がなければ、本開示において利用される組み換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。このような技術は、J.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press(
1989)、T.A.Brown(editor)、Essential Molecular Biology:A Practical Approach、Volumes
1 and 2、IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(編)、DNA Cloning:A Practical Approach、1~4巻、IRL Press(1995及び1996)、及びF.M.Ausubel et al.(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)、Ed Harlow and David Lane(編) Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(編) Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons(現在までの全ての更新を含む)のような原典における文献全体を通して記載されそして説明される。
【0209】
本明細書における可変領域及びその部分、免疫グロブリン、抗体及びそのフラグメントの記載及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1987及び1991、Bork et al.、J Mol.Biol.242、309-320、1994、Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901-917、1987、Chothia et al.Nature 342、877-883、1989並びに/又は又はAl-Lazikani et al.、J Mol Biol 273、927-948、1997における考察によりさらに明確にされ得る。
【0210】
用語「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれも意味すると理解されるものとし、そして両方の意味又はいずれかの意味の明示的な支持を提供すると解釈されるものとする。
【0211】
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)もしくは「含むこと(comprising)」のような変形は、記述される要素、整数もしくは工程、又は要素、整数もしくは工程の群の包含を示唆するが、他の要素、整数、もしくは工程、又は要素、整数もしくは工程の群の排除は示唆しないと理解される。
【0212】
本明細書において使用される用語「から誘導される」は、特定の整数が、その元のものから必ずしも直接ではないが特定の元のものから得られ得るということを示すと解釈されるものとする。
【0213】
選択された定義
C3b/C4b受容体又はCD35としても知られる補体受容体1型(CR1)は、補体活性の制御因子のファミリーのメンバーである。CR1は、赤血球、単球/マクロファージ、顆粒球、B細胞、いくつかのT細胞、脾臓濾胞樹状細胞、及び糸球体ポドサイトの膜上に存在し、そして補体を活性化した粒子及び免疫複合体への細胞結合を媒介する。コードされたタンパク質は、41アミノ酸シグナルペプチド、1930残基の細胞外ドメイン、25残基膜貫通ドメイン及び43アミノ酸C末端細胞質領域を有する。限定ではなく命名の目的のみのために、ヒトCR1の例となる配列はGenBank受入番号NP_000564に示される。
【0214】
可溶性補体受容体1型(sCR1)は、細胞表面CR1の切断により天然で産生され、
そして炎症部位における補体活性化の制御において役割を果たす。「sCR1」への言及が、膜貫通及び細胞質ドメインを欠く切断型CR1を指すということが理解されるべきである。限定ではなく命名の目的のみのために、ヒトsCR1の例となる配列は配列番号1に示される。アミノ酸の位置は、1971のアミノ酸からなるsCR1タンパク質(例えば、配列番号1に示される)を参照することにより本明細書で言及される。全長sCR1は、4つの長い相同反復(LHR)領域、すなわち、LHR-A、B、C及びDを含む。LHR領域はヒトsCR1(配列番号1に示される)を参照して定義され得る。例えば、LHR-Aは配列番号1のアミノ酸42~489を含み、LHR-Bは配列番号1のアミノ酸490~939を含み、LHR-Cは配列番号1のアミノ酸940~1392を含み、そしてLHR-Dは配列番号1のアミノ酸1393~1971を含む。各LHRは、それぞれ60~70アミノ酸を有する合計30のSCR配列を有する短いコンセンサス反復(SCR)配列を含む。例えば、LHR-AはSCR1~7(配列番号1のアミノ酸42~489に対応する)を含み、LHR-BはSCR8~14(配列番号1のアミノ酸491~939に対応する)を含み、LHR-CはSCR15~21(配列番号1のアミノ酸941~1389に対応する)を含み、そしてLHR-DはSCR22~28(配列番号1のアミノ酸1394~1842に対応する)、及びSCR29~30(配列番号1のアミノ酸1846~1967に対応する)を含む。成熟ヒトsCR1の配列は、配列番号1のアミノ酸1~41に対応するN末端シグナルペプチドを欠いている。例えば、成熟ヒトsCR1の配列(すなわちN末端シグナルペプチドを欠いている)は配列番号2に示される。
【0215】
他の種由来のsCR1の配列は、本明細書において提供され、かつ/もしくは公開されて利用可能なデータベースにおける配列を使用して決定され得、かつ/又は標準的な技術(例えば、Ausubel et al.、(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)又はSambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載される)を使用して決定され得る。
【0216】
配列番号1におけるアミノ酸の一部を参照して本明細書で使用される句「に対応する」は、sCR1配列内のアミノ酸残基又は位置への参照と理解されるべきであるが、必ずしも配列番号1を含む配列である必要はない。例えば、41アミノ酸N末端切断を含むsCR1配列(すなわち、成熟sCR1)における「配列番号1のアミノ酸42~939に対応する位置」への言及は、必然的に位置1~898におけるアミノ酸を指す。一例において、sCR1は配列番号1に示される配列を含む。
【0217】
本明細書で使用される用語「変異体」は、周知の技術を使用して1つ又はそれ以上のアミノ酸の欠失又は切断を受けたsCR1を指す。
【0218】
補体活性の文脈において本明細書で使用される用語「阻害する」又は「阻害すること」は、本開示のsCR1変異体が補体活性のレベルを低減するか又は減少させることを意味すると理解されるものとする。前述のことから当然のことながら、本開示のsCR1変異体は補体活性を完全に阻害する必要はなく、むしろ統計的に有意な量、例えば少なくとも約10%、又は約20%、又は約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%だけ活性低減する必要がある。補体活性の阻害を決定する方法は当該分野で公知であるか、かつ/又は本明細書に記載される。
【0219】
本明細書で使用される用語「補体阻害剤」は、補体活性のレベルを直接的又は間接的に低減するか又は減少させる化合物を指すと理解されるものとし、例えば、補体化合物の阻害、ブロッキング、分解、及び消費によるものが含まれる。本明細書に記載されるいずれかの方法の一例において、補体阻害剤は補体活性のレベルを直接減少させる。前述から明らかなように、本開示の補体阻害剤は、補体活性を完全に阻害する必要はなく、むしろ統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%、又は約20%、又は約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%だけ活性を減少する必要がある。補体活性の阻害を決定するための方法は当該分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0220】
本明細書において使用される用語「半減期延長部分」は、被験体において本開示のsCR1変異体のインビボでの半減期を増加し得るポリペプチド融合パートナーを指すと理解されるものとする。例となる半減期延長部分としては、アルブミン、抗体Fc領域及びポリマーが挙げられる。
【0221】
本開示の文脈において本明細書で使用される用語「血清半減期」又は「血漿半減期」は、例えば分解及び/もしくはクリアランス又は天然の機構によるゼクエストレーションにより、血清中のsCR1の濃度又は量を50%減少する(すなわち2分の1)ために必要とされる時間を指す。当業者は、被験体におけるsCR1の血清半減期が様々な生理条件(例えば、健康状態、身体サイズ/体重)に依存するということを認識するだろう。健常ヒト被験体において、sCR1の血清半減期は約70時間(3日)である。sCR1の血清半減期を決定する方法は当該分野で公知であり、そしてこれらとしては、例えば薬物動態分析が挙げられる。本開示の目的のために、「増加」又は「増強された」血清半減期は、sCR1変異体の血清濃度が、配列番号2に示されるsCR1と比較して50%減少するためにかかった時間の上昇又は増加を指す。
【0222】
用語「組み換え体」は、人工的遺伝子組み換えの産物を意味すると理解されるものとする。組み換えタンパク質はまた、例えば、それが発現される細胞、組織又は被験体内にある場合に人工的組み換え手段により発現されるタンパク質を包含する。
【0223】
用語「タンパク質」は、単一ポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合により連結された一連の連続したアミノ酸又は互いに共有結合もしくは非共有結合で連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと解釈されるものとする。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適切な化学結合又はジスルフィド結合を使用して共有結合で連結され得る。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0224】
用語「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」は、前述の段落から、ペプチド結合により連結された一連の連続したアミノ酸を意味すると理解されるだろう。
【0225】
句「保存的アミノ酸置換」は、類似した側鎖及び/又は疎水性親水性指標(hydropathicity)及び/又は親水性を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基を置き換え又は置換することを指す。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野で定義されており、これらとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。疎水性親水性指標は、例えばKyte and Doo
little J.Mol.Biol.、157:105-132、1982に記載され、そして水性指標は例えば、US4554101に記載される。
【0226】
本明細書で使用される用語「状態」は、正常機能の破壊又は正常機能との干渉を指し、そしていずれの特定の状態にも限定されるべきではなく、疾患又は障害を含む。
【0227】
本明細書で使用される疾患もしくは状態もしくはその再発を発症するか又は再発する「危険性がある」被験体は、検出可能な疾患又は疾患の症状を有していても有していなくてもよく、そして検出可能な疾患又は疾患の症状を本開示に従う処置の前に示していても示していなくてもよい。「危険性がある」は、被験体が1つ又はそれ以上の危険因子を有することを示し、これは当該分野で公知であるか、かつ/又は本明細書に記載される疾患又は状態の発症と相関する測定可能なパラメーターである。
【0228】
本明細書で使用される用語「処置すること」、「処置する」又は「処置」は、本明細書に記載される血清アルブミン変異体結合体を投与して、それにより特定の疾患もしくは状態の少なくとも1つの症状を低減するかもしくは除去し、又は疾患もしくは状態の進行を遅延させることを含む。
【0229】
本明細書で使用される用語「予防すること」、「予防する」又は「予防」は、個体における特定の疾患又は状態の発生又は再発に関して予防を提供することを含む。個体は疾患の発症又は疾患再発の素因を有するか又は危険性があり得るが、疾患又は再発とはまだ診断されていない。
【0230】
本明細書で使用される用語「被験体」は、ヒトを含むいずれかの動物、例えば哺乳動物を意味すると解釈されるものとする。例となる被験体としては、限定されないが、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられる。例えば、被験体はヒトである。
【0231】
補体活性の阻害
本開示は、例えば、被験体に本開示の可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体を投与することを含む、被験体において補体活性を阻害する方法を提供する。
【0232】
本開示はまた、被験体において疾患又は状態を処置又は予防する方法を提供し、該方法は、本開示のsCR1変異体、又はsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物を被験体に投与することを含む。一例において、本開示は、それを必要とする被験体において疾患又は状態を処置する方法を提供する。
【0233】
本開示はまた、被験体において疾患又は状態を処置又は予防するための本開示のsCR1変異体、又はsCR1変異体結合体又はsCR1変異体を含む組成物の使用を提供する。一例において、本開示は、それを必要とする被験体において疾患又は状態を処置するための、本開示の血清アルブミン結合体の使用を提供する
一例において、方法は、古典的経路、レクチン経路及び/又は副補体経路において活性を阻害することを含む。例えば、該方法は、古典的補体経路の活性化を阻害するために本開示のsCR1変異体を投与することを含む。別の例において、該方法は、レクチン経路の活性化を阻害するために本開示のsCR1変異体を投与することを含む。さらなる例において、該方法は副補体経路の活性化を阻害するために本開示のsCR1変異体を投与することを含む。
【0234】
一例において、方法は外因性補体経路において活性を阻害することを含む。例えば、該方法は外因性補体経路の活性化を阻害するために本開示のsCR1変異体を投与することを含む。
【0235】
一例において、疾患又は状態は補体媒介障害である。
【0236】
一例において、被験体は補体媒介障害に罹患している。補体媒介障害は遺伝性でも後天性でもよい。
【0237】
一例において、補体媒介障害は、移植拒絶(臓器移植後臓器機能障害、グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶を含む)、実質臓器移植、腎症、虚血再灌流傷害、視神経脊髄炎、重症筋無力症、糸球体病変、ループス腎炎(急性及び慢性)、IgA腎症、水疱性類天疱瘡、抗リン脂質症候群、ぶどう膜炎、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞、運動ニューロン疾患、自己免疫性溶血性貧血、ANCA関連血管炎 慢性炎症性脱髄性多発神経炎、虚血発作(再灌流を伴うか又は伴わないもの)、外傷性脳損傷、身体的傷害及び抗糸球体基底膜(GBM)腎炎からなる群より選択される。
【0238】
一例において、補体媒介障害は、原発性調節不全、例えば遺伝性血管性浮腫、発作性夜間ヘモグロビン尿症、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、血栓性微小血管症、C3糸球体症、膜性増殖性糸球体腎炎又は移植拒絶(臓器移植後臓器機能障害、グラフトサルベージ及び抗体媒介拒絶)である。
【0239】
一例において、補体媒介障害は、自己免疫状態、例えば視神経脊髄炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ループス腎炎(急性及び慢性)、IgA腎症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫性溶血性貧血、天疱瘡、類天疱瘡(水疱性類天疱瘡を含む) 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、抗糸球体基底膜(GBM)腎炎又は抗リン脂質症候群である。
【0240】
一例において、補体媒介障害は、急性外傷、例えば多発外傷、神経外傷、血液透析、外傷性脳損傷、身体的傷害又は感染後HUSである。
【0241】
一例において、補体媒介障害は、炎症性状態、例えば黄斑変性症、ぶどう膜炎、ANCA関連血管炎、アテローム性動脈硬化、喘息、COPD、敗血症、急性呼吸促迫症候群、脳性マラリア、乾癬性関節症又は皮膚筋炎である。
【0242】
一例において、補体媒介障害は、変性状態、例えば変形性関節症、認知症、緑内障、神経障害、パーキンソン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患又は 糖尿病性血管障害である。
【0243】
一例において、補体媒介障害は、例えば、臓器移植において、又は手術後もしくは発作もしくは心筋梗塞後に発生するような虚血再灌流状態/傷害である。
【0244】
補体媒介障害の診断方法は、当業者には容易に明らかとなり、そしてこれらとしては例えば、溶血古典的補体経路(CH-50)試験、溶血副補体経路(AP-50)試験、免疫複合体疾患についてのスクリーニング、ループスについて試験するための抗核血清学、尿検査及び全血球計算(CBC)が挙げられる。
【0245】
一例において、被験体は補体媒介障害を発症する危険性がある。被験体は、彼又は彼女が対照集団よりも補体媒介障害を発症する高い危険性を有する場合危険性がある。対照集団は、補体媒介障害に罹患したことがなく、又は補体媒介障害の家族歴も有していない一般集団(例えば、年齢、性別、人種及び/又は民族性により整合される)から無作為に選択された1又はそれ以上の被験体を含み得る。被験体は、補体媒介障害に関連する「危険因子」がその被験体に付随すると分かった場合、補体媒介障害の危険性があるとみなされ
得る。危険因子としては、例えば、被験体の集団に対する統計学的又は疫学的な研究により所定の障害と関連付けられるいずれかの活性、形質、事象又は特性が挙げられ得る。従って、被験体は、たとえ内在する危険因子を同定する試験がその被験体を具体的に含んでいなくても、補体媒介障害の危険性があるとして分類され得る。
【0246】
一例において、被験体は補体媒介障害を発症する危険性があり、そしてsCR1変異体は補体媒介障害の症状の開始前又は後に投与される。一例において、sCR1変異体は、補体媒介障害の症状の開始前に投与される。一例において、sCR1は補体媒介障害の症状の開始後に投与される。一例において、本開示のsCR1変異体は、危険性がある被験体において補体媒介障害の症状の1つ又はそれ以上を軽減するか又は低減する用量で投与される。
【0247】
本開示の方法は、被験体において補体媒介障害のいずれの形態にも容易に適用され得る。
【0248】
一例において、本開示の方法は、当該分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される補体媒介障害のいずれかの症状を低減する。
【0249】
当業者には当然のことながら、被験体における補体媒介障害の症状の「低減」は、同様に補体媒介障害に罹患しているが本明細書に記載される方法を用いた処置を受けたことがない別の被験体に対して相対的なものである。これは必ずしも2つの被験体の対照比較を必要としない。むしろ集団データを信頼することができる。例えば、補体媒介障害に罹患しており本明細書に記載される方法を用いた処置を受けたことがない被験体の集団(場合により、処置される被験体と類似した被験体の集団、例えば、年齢、体重、人種)が評価され、そして平均値が本明細書に記載される方法を用いて処置された被験体又は被験体の集団の結果と比較される。
【0250】
臓器移植に起因するか又は臓器移植に付随する虚血再灌流傷害である補体媒介状態の場合において、本開示のsCR1変異体又はsCR1変異体を含む組成物は、移植の前、間又は後に投与され得る。いくつかの例において、sCR1変異体又は組成物は臓器移植ドナーに投与される。他の例において、sCR1変異体又は組成物は被験体に投与され、ここで被験体は臓器移植レシピエントである。一例において、sCR1変異体又は組成物は、摘出された臓器にエクスビボで臓器移植の前に投与される。例えば、摘出された臓器は、移植前にsCR1変異体又は組成物を含む溶液で灌流され得るかその溶液を注入され得る。
【0251】
一例において、臓器移植は実質臓器移植である。例えば、実質臓器移植は肺移植である。
【0252】
前述のことから当業者には当然のことながら、本開示は、臓器移植の方法又は臓器移植の結果を改善するかもしくは移植された臓器の機能を改善するため又は臓器移植後臓器機能障害を予防するための方法を提供し、該方法は、sCR1変異体又は組成物を臓器移植ドナーに臓器の採取前に投与すること;臓器を採取し、そしてその臓器を臓器移植レシピエントに移植することを含む。
【0253】
本開示はまた、臓器移植レシピエントにおける臓器機能を改善するために臓器ドナーからの移植臓器を準備するための方法を提供し、該方法は、臓器ドナーにsCR1変異体又は組成物を臓器の採取前に投与することを含む。
【0254】
本開示は、臓器移植拒絶を予防するための方法をさらに提供し、該方法は、臓器ドナー
にsCR1変異体又は組成物を臓器の採取前に投与すること、臓器を採取すること、及び該臓器を臓器移植レシピエントに移植することを含む。
【0255】
いくつかの例において、該方法は、sCR1変異体又は組成物を臓器移植レシピエントに投与することを更に含む。例えば、sCR1変異体又は組成物は、移植前に又は臓器を移植する時点で(すなわち、移植の間に)臓器移植レシピエントに投与される。
【0256】
本開示はまた、臓器移植の方法又は臓器移植の結果を改善するか、もしくは移植された臓器の機能を改善するための方法、又は臓器移植後臓器機能障害を予防するための方法を提供し、該方法は、sCR1変異体又は組成物を臓器移植レシピエントに移植前に投与すること、ついで臓器を臓器移植レシピエント内に移植することを含む。
【0257】
一例において、臓器移植ドナーは脳死状態である。例えば、臓器ドナーは生命維持のおかげで生存しているが脳死状態である。
【0258】
開示の一例において、sCR1変異体又は組成物は、例えば臓器移植の場合に再灌流の前に投与され、sCR1変異体又は組成物は、移植された臓器の再灌流の前に臓器移植レシピエントに投与される(例えば、sCR1変異体又は組成物は移植の前又は移植の間であるが再灌流の前に投与される)。
【0259】
脳死状態ドナーへの投与の場合、sCR1変異体又は組成物は、脳死と臓器採取の間のいずれかの時点に投与されてもよい。いくつかの例において、sCR1変異体又は組成物は、摘出された臓器にエクスビボで、臓器移植前に投与される。例えば、摘出された臓器は、sCR1変異体又は組成物を含む溶液を移植前に灌流又は注入され得る。
【0260】
可溶性補体受容体1型変異体
本開示は、本明細書に記載されるいずれかの方法における使用のためのsCR1変異体を提供する。
【0261】
一例において、本開示は、配列番号2に示される配列と比較して改善されたか又は増加した補体阻害活性を有するsCR1変異体を提供する。本発明者らは、配列番号1の残基42~939及び/又は残基490~1392を含むsCR1変異体が改善されかつ/又は増加した補体阻害活性を有すると特定した。
【0262】
本開示は、被験体において補体活性を阻害する方法を提供し、該方法は可溶性補体受容体1型(sCR1)変異体を被験体に投与することを含み、該sCR1変異体は:
(i) 配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列;及び
(ii) 配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0263】
例えば、本発明者らは、機能を喪失することなく欠失されることができるか又は改善された機能を生じる、配列番号1に示される配列中のアミノ酸残基を同定した。一例において、sCR1変異体は、配列番号1に示される配列と比較して489と1073との間のアミノ酸の欠失を含む。例えば、sCR1変異は、配列番号1に示される配列と比較して489又は620又は1068又は1073アミノ酸の欠失を含む。
【0264】
一例において、本開示は、配列番号1に示される配列と比較して898と1482との間のアミノ酸を含む切断型sCR1を提供する。例えば、切断型sCR1は、配列番号1に示される配列と比較して898又は903又は1351又は1482アミノ酸を含む。
【0265】
一例において、本開示のsCR1変異体は、配列番号1に示される配列の変異体を含み、ここで変異体配列は、配列番号1のアミノ酸42~1392に対応するアミノ酸配列を含む。
【0266】
一例において、本開示のsCR1変異体は配列番号1に示される配列の変異体を含み、ここで変異体配列は配列番号1のアミノ酸42~939に対応するアミノ酸配列を含む。
【0267】
一例において、本開示のsCR1変異体は配列番号1に示される配列の変異体を含み、ここで変異体配列は、配列番号1のアミノ酸490~1392に対応するアミノ酸配列を含む。
【0268】
一例において、本開示のsCR1変異体は、配列番号1に示される配列の変異体を含み、ここで変異体配列は配列番号1のアミノ酸490~1971に対応するアミノ酸配列を含む。
【0269】
一例において、本開示のsCR1変異体は、配列番号1及び/又は配列番号2に示される配列を含まず、これらからなるものでもない。
【0270】
一例において、本開示のsCR1変異体は、配列番号1のアミノ酸1~41に対応するアミノ酸配列を含まない。
【0271】
一例において、本開示のsCR1変異体は配列番号1のアミノ酸940~1971に対応するアミノ酸配列を含まない。
【0272】
一例において、本開示のsCR1変異体は配列番号1のアミノ酸1393~1971に対応するアミノ酸配列を含まない。
【0273】
一例において、本開示のsCR1変異体は配列番号1アミノ酸1~489に対応するアミノ酸配列を含まない。
【0274】
一例において、sCR1変異体は単量体である(すなわち、sCR1変異体の1つのコピー)。
【0275】
一例において、sCR1変異体は二量体であるか、又は二量体化している(すなわち、sCR1変異体の2つのコピーが融合タンパク質において連結されている)。
【0276】
一例において、sCR1変異体は多量体であるか、又は多量体化している(すなわち、sCR1変異体の多数のコピーが融合タンパク質において連結されている)。
【0277】
sCR1変異体の二量体化又は多量体化を達成するための方法は、当該分野で公知でありかつ/又は本明細書に記載され、これらとしては、例えば、2つもしくはそれ以上のsCR1変異体間の直接結合体化又は間接的結合(例えば、2つ又はそれ以上のsCR1変異体間のリンカーによる)が挙げられる。一例において、二量体化又は多量体化は、化学結合(例えば、ジスルフィド結合又はシスチンノットによる)又は遺伝子融合により形成される。
【0278】
一例において、2つ又はそれ以上の同じsCR1変異体が融合される(すなわち、融合タンパク質として発現される)。
【0279】
一例において、2つ又はそれ以上の異なるsCR1変異体が融合される(すなわち、融
合タンパク質として発現される)。
【0280】
一例において、二量体化又は多量体化したsCR1変異体はsCR1変異体の間にリンカーを含む。
【0281】
一例において、開示は、多量体化ドメインを含む2つ又はそれ以上のsCR1変異体を含む多量体タンパク質を提供し、ここで多量体化ドメインは相互作用して多量体タンパク質を形成する。
【0282】
一例において、多量体タンパク質中の各sCR1変異体は1つのsCR1変異体を含む。別の例において、多量体タンパク質中の1つ又はそれ以上のsCR1変異体は、2つ又はそれ以上のsCR1変異体を含み、例えば、変異体は融合タンパク質において連結されている。
【0283】
一例において、多量体化ドメインは免疫グロブリンヒンジドメインを含む。
【0284】
一例において、多量体化ドメインはロイシンジッパードメイン、シスチンノット又は抗体Fc領域である。例えば、多量体化ドメインはロイシンジッパードメインである。適切なロイシンジッパーポリペプチドは、当該分野で公知であり、そしてこれらとしてはc-Jun及びc-Fosロイシンジッパードメインが挙げられる。ロイシンジッパー融合物は、Riley et al.、Protein Eng.(1996)(これは参照により本明細書に加入される)に記載される。別の例において、多量体化ドメインはシスチンノットである。例えば、シスチンノットは3つ又はそれ以上の折り合わされたジスルフィド結合のコアドメインを含めて60アミノ酸長までを含む。さらなる例において、多量体化ドメインは抗体Fc領域である(例えば、本明細書に記載される)。
【0285】
一例において、多量体化sCR1変異体は線状である。
【0286】
一例において、多量体化sCR1変異体は環状である。例えば、多量体化sCR1変異体は、Popp、M.W.et al.PNAS(2011)(参照により本明細書に加入される)に記載されるようなソルターゼ酵素切断部位を含み得る。
【0287】
一例において、本開示における使用のためのsCR1変異体は、少なくとも2つのシアリル化グリカン(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリカン)を含む。例えば、本明細書に記載されるいずれかの方法における使用のための組成物は、シアリル化sCR1変異体グリコフォームを含む。一例において、本明細書に記載されるいずれかの方法における使用のためのシアリル化sCR1変異体グリコフォームは、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリコフォームを含む。少なくとも2つのシアリル化グリカン(例えば、ジ-、トリ-又はテトラ-シアリル化グリカン)を含む変異体sCR1グリコフォームを製造するための方法は、当業者に明らかであるか、かつ/又は本明細書に記載される。
【0288】
本開示のsCR1変異体の生物学的活性を決定するための例となる方法は、当業者に明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。例えば、古典的経路、レクチン経路及び/又は副経路の阻害活性を決定する方法が本明細書に記載される。
【0289】
結合体
本開示は、本明細書に記載されるいずれかの方法における使用のためのsCR1変異体結合体を提供する。sCR1変異体の結合体化のための方法は、当業者に明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。結合体化の全ての形態及び方法(すなわち、結合)は
本開示により企図され、これらとしては、例えば、sCR1変異体と本明細書に記載されるような別の化合物/部分との間の直接結合体化、又は間接的結合(例えば、sCR1変異体と他の化合物/部分との間のリンカーによる)が挙げられる。一例において、結合体は化学的結合により(例えば、アミン結合又はジスルフィド結合により)又は遺伝子融合により形成される。
【0290】
一例において、本開示のsCR1変異体は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合される。
【0291】
一例において、本開示のsCR1変異体は、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合され、これはsCR1変異体に直接的又は間接的に結合される。半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤は、sCR1変異体に直接的又は間接的に結合され得る(例えば、間接的結合の場合にはリンカーを含み得る)。
【0292】
一例において、sCR1変異体は、アミン結合により半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合される。
【0293】
一例において、開示は、sCR1変異体及び半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤を含む融合タンパク質を提供する。例えば、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤は、sCR1変異体のN末端、sCR1変異体のC末端又はそれらのいずれかの組み合わせに位置付けられる。
【0294】
一例において、sCR1変異体は、リンカーを介して半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合される。例えば、リンカーはペプチドリンカーである。
【0295】
一例において、リンカーは可動性リンカーである。「可動性」リンカーは、溶液中で固定された構造(二次又は三次構造)を有していないアミノ酸配列である。従ってこのような可動性リンカーは、様々なコンホメーションに自由に適合する。本開示における使用に適した可動性リンカーは当該分野で公知である。本発明における使用のための可動性リンカーの例は、リンカー配列SGGGGS/GGGGS/GGGGS又は(Gly4Ser)3である。可動性リンカーはWO1999045132にも開示されている。
【0296】
リンカーは、結合領域のその標的との相互作用を実質的に妨げないいずれのアミノ酸配列を含んでいてもよい。可動性リンカー配列に好ましいアミノ酸残基としては、限定されないが、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン プロリン、リジン、アルギニン、グルタミン及びグルタミン酸が挙げられる。
【0297】
結合領域間のリンカー配列は、好ましくは5つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含む。本開示に従う可動性リンカー配列は、5つ又はそれ以上の残基、好ましくは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20又は25又は30又はそれ以上の残基からなる。本発明の非常に好ましい実施態様において、可動性リンカー配列は5、7、10、13又は16又は30残基からなる。
【0298】
一例において、可動性リンカーは、配列番号31に従うアミノ酸配列、すなわち、GSGGSGGSGGSGS(GS13)を有する。
【0299】
一例において、可動性リンカーは、配列番号35に従うアミノ酸配列、すなわち、SGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGS(GS30)を有する。
【0300】
本開示のsCR1変異体に結合され得る例となる化合物及びこのような結合体化の方法
は、当該分野で公知でありかつ本明細書に記載される。
【0301】
半減期延長部分
一例において、sCR1変異体は半減期延長部分に結合される。本開示における使用に適した半減期延長部分は、当業者に明らかであり、そしてこれらとしては、限定されないが、本明細書に記載されるものが挙げられる。例えば、半減期延長部分は、ヒト血清アルブミン又はその機能性フラグメント、免疫グロブリンFc領域又はその機能性フラグメント、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アルブミンに結合する抗体フラグメント、及びポリマーからなる群より選択される。
【0302】
一例において、半減期延長部分はヒト血清アルブミン又はその機能性フラグメントである。
【0303】
一例において、半減期延長部分は免疫グロブリンFc領域又はその機能性フラグメントである。
【0304】
一例において、半減期延長部分はアファミンである。
【0305】
一例において、半減期延長部分はアルファ-フェトプロテインである。
【0306】
一例において、半減期延長部分はビタミンD結合タンパク質である。
【0307】
一例において、半減期延長部分はアルブミンに結合する抗体フラグメントである。
【0308】
一例において、半減期延長部分はポリマーである。
【0309】
アルブミンタンパク質及びその変異体
一例において、半減期延長部分はアルブミン、又はその機能性フラグメントもしくは変異体である。
【0310】
血清アルブミン、又は血中アルブミンは、最も豊富な血中タンパク質であり、そして血中のステロイド、脂肪酸及び甲状腺ホルモンの担体タンパク質として機能し、さらには細胞外液量の安定化において主要な役割を果たす。
【0311】
一例において、アルブミン、その機能性フラグメント又は変異体は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンである。限定ではなく命名のみの目的のために、成熟ヒト血清アルブミンの例となる配列はNCBI GenBank受入ID:AEE60908及び配列番号32に示される。
【0312】
一例において、アルブミン、その機能性フラグメント又は変異体は、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入を含む。本開示における使用に適したアミノ酸置換は、当業者に明らかであり、これらとしては、天然に存在する置換並びに例えば、WO2011051489、WO2014072481、WO2011103076、WO2012112188、WO2013075066、WO2015063611、WO2014179657及びWO2019075519に記載されるような操作された置換が挙げられる。
【0313】
一例において、本開示は、アルブミンファミリータンパク質、例えば、構造的又は進化的にアルブミンに関連するタンパク質に結合されたsCR1変異体を提供する。例えば、sCR1変異体は、アファミン、アルファ-フェトプロテイン又はビタミンD結合タンパ
ク質に結合される。
【0314】
別の例において、sCR1変異体は、アルブミンファミリータンパク質、例えば構造的又は進化的にアルブミンと関連するタンパク質に融合される、例えば、融合タンパク質として発現される。例えば、sCR1変異体は、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、又はビタミンD結合タンパク質に、例えば融合タンパク質として融合される。
【0315】
免疫グロブリンFc領域及びそのフラグメント
一例において、半減期延長部分は免疫グロブリン又はその機能性フラグメントである。例えば、免疫グロブリンはFc領域、例えばFcドメイン又はFcフラグメント及び/又はその変異体を含む。一例において、Igは免疫グロブリン定常ドメインの一部である。限定ではなく命名の目的のみのために、ヒトIgG1 Fcの例となる配列を配列番号33に示す。限定ではなく命名の目的のみのために、ヒトIgG4 Fcの例となる配列を
配列番号34に示す。
【0316】
一例において、Fcフラグメント及び/又はその変異体は、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は挿入を含む。本開示における使用に適したアミノ酸置換は、当業者に明らかであり、そしてこれらとしては、例えば、WO2000042072、WO2002060919、WO2004035752及びWO2006053301に記載されるような天然に存在する置換及び操作された置換が挙げられる。
【0317】
一例において、本開示における使用のための免疫グロブリン又はそのフラグメントは、IgG4定常領域又は安定化IgG4定常領域を含む。例えば、安定化IgG4定常領域は、Kabatのシステム(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services、1987及び/又は1991)に従ってヒンジ領域の位置241にプロリン、又はEUナンバリングシステム(Edelman、G.M.et al.、Proc.Natl.Acad.USA、63、78-85(1969))に従ってヒンジ領域の位置228にプロリンを含む。
【0318】
一例において、Fcドメインは、それが二量体化することができるのを防ぐように改変される。例えば、Fc領域は単量体Fc領域である。
【0319】
半抗体を生成するための方法は当該分野で公知であり、そして例となる方法は本明細書に記載される。
【0320】
一例において、半抗体は、発現のために目的のFcドメインを含むタンパク質の遺伝子を細胞に導入することにより分泌され得る。一例において、定常領域(例えば、IgG4
Fcドメイン)は、ヘテロ二量体形成を防止するために「鍵又は穴(key or hole)」(又は「ノブ又は穴」)変異を含む。一例において、定常領域(例えば、IgG4 Fcドメイン)はT366W変異(又はノブ)を含む。別の例において、定常領域(例えば、IgG4 Fcドメイン)は、T366S、L368A及びY407V変異(又は穴)を含む。別の例において、Fcドメインは、T350V、T366L、K392L及びT394W変異(ノブ)を含む。別の例において、定常領域はT350V、L351Y、F405A及びY407V変異(ホール)を含む。例となる定常領域アミノ酸置換は、EUナンバリングシステムに従って番号付けられる。
【0321】
例えば、Fcドメインは、以下の置換を有する配列番号34に示される配列を含むIgG4 Fcドメインである:
・ 位置228におけるプロリンと置き換えられたアルギニン;
・ 位置351におけるロイシンと置き換えられたフェニルアラニン;
・ 位置366におけるスレオニンと置き換えられたアルギニン;
・ 位置395におけるプロリンと置き換えられたリジン;
・ 位置405におけるフェニルアラニンと置き換えられたアルギニン;及び
・ 位置407におけるチロシンと置き換えられたグルタミン酸。
【0322】
一例において、本開示は、免疫グロブリン又はその機能性フラグメント、例えば、Fc領域、例えばFcドメイン又はFcフラグメント及び/もしくはその変異体に結合されたsCR1変異体を提供する。例えば、sCR1変異体はヒトIgG4 Fcに結合される。
【0323】
別の例において、sCR1変異体は、免疫グロブリン又はその機能性フラグメント、例えば、Fc領域、例えばFcドメイン又はFcフラグメント及び/もしくはその変異体に融合され、例えば融合タンパク質として発現される。例えば、sCR1変異体は、例えば融合タンパク質として、ヒトIgG4 Fcに融合される。
【0324】
抗体及びそのフラグメント
一例において、免疫グロブリンは、アルブミンに結合する抗体又は抗原結合フラグメントである。例となる抗体又は抗体結合フラグメントは当該分野で公知であり、例えば、Kang et al、Immunol Lett.;169:33-40、2016;Protein Eng Des Sel.21(5):283-8、2008;及びHolt et al.、MAbs.8(7):1336-1346、2016に記載される。
【0325】
本開示における使用のためのさらなる例となる抗体又はその抗原結合フラグメントは本明細書に記載されるか又は当該分野で公知であり、そしてこれらとしては以下が挙げられる:
・ ヒト化抗体又はそのフラグメント、例えば、ヒト様可変領域を含むタンパク質、これはヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)上にグラフトされるか又は挿入された非ヒト種(例えば、マウス又はラット又は非ヒト霊長類)由来の抗体からのCDRを含む(例えば、US5225539、US6054297、US7566771又はUS5585089に記載される方法により製造される)
・ ヒト抗体又はそのフラグメント、例えば、可変領域、及び場合により、ヒト、例えばヒト生殖系列もしくは体細胞において、又はこのような領域を使用して製造されたライブラリーから発見される定常抗体領域を有する抗体。「ヒト」抗体は、ヒト配列によりコードされていないアミノ酸残基、例えばランダム又は部位特異的変異によりインビトロで導入された変異(例えば、US5565332に記載される方法により製造される)及びこのような抗体の親和性成熟形態を含み得る。
【0326】
・ シンヒューマナイズド(synhumanized)抗体又はそのフラグメント、例えば、新世界霊長類抗体可変領域からのFR及び非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRを含む可変領域を含む抗体(例えば、WO2007019620に記載される方法により製造される)。
【0327】
・ 霊長類化(primatized)抗体又はそのフラグメント、例えば、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル(cynomolgus macaque))の免疫後に生成された抗体からの可変領域を含む抗体(例えば、US6113898に記載される方法により製造される)
・ キメラ抗体又はキメラ抗原結合フラグメント、例えば、可変ドメインの1つ又はそ
れ以上が特定の種(例えば、マウス又はラットのようなネズミ科動物)由来であるか又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するが、抗体又はフラグメントの残りは別の種(例えばヒト又は非ヒト霊長類)由来であるか又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体又はフラグメント(例えば、US6331415;US5807715;US4816567及びUS4816397に記載される方法により製造される)
・ 脱免疫化(deimmunized)抗体又はその抗原結合フラグメント、例えば、1つ又はそれ以上のエピトープ、例えば、B細胞エピトープ又はT細胞エピトープが除去されて(すなわち、変異した)、それにより被験体が抗体又はタンパク質対する免疫応答を惹起する可能性を低減した抗体及びフラグメント(例えば、WO2000034317及びWO2004108158に記載される)。
【0328】
・ 二重特異的抗体又はそのフラグメント、例えば、異なる抗原又はエピトープに対する特異性を有する2つの型の抗体又は抗体フラグメントを含む抗体(例えば、1つの半抗体)(例えば、US5731168に記載される)。
本開示における使用のためのさらなる例となる抗体フラグメントは、本明細書に記載されるか又は当該分野で公知であり、そしてこれらとしては以下が挙げられる:
・ 単一ドメイン抗体(ドメイン抗体又はdAb)、例えば、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部を含む単一ポリペプチド鎖
・ 二特異性抗体(diabody)、三特異性抗体(triabody)、四特異性抗体(tetrabody)又はより高次のタンパク質複合体(例えば、WO98/044001及び/又はWO94/007921に記載される)
・ 単鎖Fv(scFv)フラグメント、例えば、単一ポリペプチド鎖中にVH及びVL領域並びに抗原結合に望ましい構造をscFvが形成することを可能にするVHとVLとの間のポリペプチドリンカーを含むフラグメント(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに結合してFvを形成する)
・ 半抗体又は半分子、例えば、単一重鎖及び単一軽鎖を含むタンパク質。
【0329】
本開示はまた:
(i) 例えばUS5837821に記載されるようなミニボディ(minibodies);
(ii) 例えば、US4676980に記載されるようなヘテロ結合体(heteroconjugate)タンパク質;
(iii) 例えば、US4676980に記載されるような、化学的架橋剤を使用して製造されたヘテロ結合体タンパク質;及び
(iv) Fab3(例えば、EP19930302894に記載される)
のような他の抗体及び抗体フラグメントを企図する。
【0330】
ポリマー
一例において、本開示はポリマーに結合されたsCR1変異体を提供する。本開示における使用に適したポリマーは、当業者に明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0331】
一例において、sCR1変異体はポリエチレングリコール(PEG)に結合される。例えば、ポリマーはモノ-又はポリ-(例えば、2~4)ポリエチレングリコール(PEG)部分を含む。例えば、モノ- ポリ-(例えば、2~4)ポリエチレングリコール(PEG)部分は、sCR1変異体のインビボ半減期を延長する。
【0332】
ペグ化(Pegylation)は利用可能なペグ化反応のいずれかにより行われ得る。ペグ化タンパク質生成物を製造するための例となる方法は、一般的に、(a)タンパク質が1つ又はそれ以上のPEG基に結合されるようになる条件下でポリエチレングリコー
ル(例えば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体)とポリペプチドを反応させること;及び(b)反応生成物を得ることを含む。
【0333】
当業者は様々なPEG結合法を知っており、これらとしては、限定されないが、例えば、EP 0 401 384;Malik et al.、Exp.Hematol.、20:1028-1035(1992);Francis、Focus on Growth Factors、3(2):4-10(1992);EP 0 154 316;EP 0 401 384;WO 92/16221;WO 95/34326;米国特許第5,252,714号に記載されるものが挙げられる。
【0334】
可溶性補体阻害剤
本開示は、さらなる可溶性補体阻害剤に結合されたsCR1変異体を提供する。
【0335】
一例において、sCR1変異体は可溶性補体阻害剤、又はその改変された(すなわち、変異体)形態に結合される。
【0336】
本開示における使用のために適した補体阻害剤は、当業者に明らかであり、そしてこれらとしては、例えば第I因子(fI)、H因子(fH)、補体H因子関連タンパク質(CFHR)、C4b結合タンパク質(C4bp)、可溶性CD55(崩壊促進因子(DAF))、可溶性CD46(補体調節タンパク質(MCP))、可溶性CD59(プロテクチン)、可溶性補体受容体2(sCR2)、TT30(CR2-fH)、コブラ毒因子(CVF)及びそれらの機能性フラグメント又は変異体が挙げられる。
【0337】
sCR1変異体の活性の試験
本開示のsCR1変異体は、例えば以下に記載されるように、生物学的活性について容易にスクリーニングされる。
【0338】
補体活性の測定
一例において、補体活性は、酵素免疫測定法(例えば、Wieslab(R)補体アッセイキット)を使用して測定される。例えば、補体阻害活性は、補体活性化の間に産生される抗原又はエピトープ(例えば、C5b-9又はC5b-9に存在するエピトープ)に特異的な標識された抗体を使用して測定される。一例において、マイクロタイタープレートのウェルを、古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化因子でコーティングする。別の例において、sCR1変異体を正常ヒト血清及び適切なアッセイ希釈剤(すなわち、古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化を確実にするために適切な成分を含む希釈剤)とともにインキュベートし、そして古典的経路、レクチン経路又は副経路の特異的活性化因子でコーティングされたマイクロタイタープレートウェルに加え、そして形成されたC5b-9複合体の量を、C5b-9に対して特異的なアルカリホスファターゼ標識抗体を使用して検出する。一例において、生成された補体活性化生成物(すなわち、C5b-9)の量は、補体経路の機能的活性に比例する。一例において、最大半量阻害剤濃度(すなわち、IC50)を決定する。例えば、sCR1変異体のIC50を決定し、そして配列番号2に示される配列を含むsCR1のIC50と比較する。
【0339】
別の例において、補体阻害活性は溶血アッセイ(例えば、古典的経路(すなわちCH50)及び副経路(ApH50)阻害アッセイ)を使用して決定される。CH50アッセイは、血清中の総古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は溶解アッセイであり、古典的補体経路の活性化因子として抗体感作赤血球及び補体源としてヒト血清を使用する。例えば分光光度計を使用して溶血パーセントを決定することができる。TCC自体は測定される溶血の直接の原因であるので、CH50アッセイは終末補体複合体(TCC)形成の間接的評価基準を提供する。このアッセイは周知である。手短には、古典的補
体経路の阻害を評価するために、予め希釈したヒト血清を、段階希釈したsCR1変異体とともにマイクロアッセイウェルにおいてプレインキュベートする。次に、抗体感作赤血球(例えば、ウサギ抗ヒツジ抗体で感作されたヒツジ赤血球)を加える。遠心分離後に、遊離ヘモグロビンを分光光度計を使用して上清において測定する。遊離ヘモグロビンの減少は、TCC媒介赤血球溶解の阻害を反映する。ついでsCR1媒介阻害を、ヒト血清のみとインキュベートされた赤血球(100%溶解サンプル)と比較して計算する。
【0340】
補体阻害はまた、当該分野で公知のいずれかの歩法に基づいて評価することができ、これらとしては、例えば、インビトロザイモサンアッセイ、赤血球の溶解についてのアッセイ、抗体又は免疫複合体活性化アッセイ、副経路活性化アッセイ、及びレクチン経路活性化アッセイが挙げられる。
【0341】
医薬組成物及び処置方法
適切には、本開示のsCR1変異体の被験体への投与のための組成物又は方法において、本開示のsCR1変異体結合体(すなわち、半減期延長部分又はさらなる可溶性補体阻害剤に結合されたsCR1変異体)は、当該分野で理解されるような薬学的に許容しうる担体と組み合わされる。従って、本開示の一例は、薬学的に許容しうる担体と組み合わされた本開示のsCR1変異体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。本開示のさらなる例は、薬学的に許容しうる担体と組み合わされた本開示のsCR1変異体結合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0342】
一般的な用語において、「担体」は、いずれかの被験体、例えばヒトに安全に投与され得る固体もしくは液体のフィラー、結合剤、希釈剤、封入物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁化剤、コーティング又は滑沢剤を意味する。特定の投与経路に依存して、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.N.J.USA、1991)に記載されるような当該分野で公知の様々な許容しうる担体が使用され得る。
【0343】
本開示のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体は、非経口、外用、経口、又は局所投与、エアロゾル投与、髄腔内投与又は経皮投与、予防的又は治療的処置に有用である。一例において、sCR1変異体又はsCR1変異体結合体は、皮下又は静脈内のような非経口投与される。例えば、sCR1変異体又はsCR1変異体結合体は静脈内投与される。
【0344】
投与しようとするsCR1変異体からsCR1変異体結合体の処方は、選択される投与経路及び処方(例えば、液剤、乳剤、カプセル剤によって変わる。投与しようとする適切な医薬組成物は、生理学的に許容しうる担体中で製造され得る。液剤又は乳剤については、適切な担体としては、例えば、食塩水及び緩衝化媒体を含む水溶液又はアルコール性/水溶液、エマルション又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油が挙げられ得る。様々な適切な水性担体が当業者に公知であり、これらとしては、水、緩衝化水、緩衝化食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液並びに例えば、グリシン、プロリン、リジン、ヒスチジン、メチオニン、アルギニン、アラニン、バリン、セリン、アスパラギン、フェニルアラニン、チロシン、システイン、スレオニン、ロイシン、トリプトファン、グルタミン、イソロイシン、グルタメート及びそれらの組み合わせを含むアミノ酸が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、様々な添加剤、保存料、又は流体、栄養剤又は電解質補液(一般に、Remington’s Pharmaceutical Science、16th Edition、Mack、Ed.1980を参照のこと)が挙げられ得る。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤及び毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウ
ム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムのような生理的条件に近づけるために必要な薬学的に許容しうる補助物質を場合により含有し得る。組成物は液体段階で貯蔵することができ、又は当該分野で公知の凍結乾燥及び再構成技術に従って貯蔵のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体中で再構成され得る。
【0345】
本開示の方法はまた、補体活性を阻害するため又は補体媒介障害の予防もしくは処置のための別の治療上有効な薬剤の投与と一緒の、本開示に従うsCR1変異体又はsCR1変異体結合体の同時投与も含み得る。
【0346】
一例において、本開示のsCR1変異体又はその結合体は、補体活性を阻害するため又は補体媒介障害を予防もしくは処置するために現在使用されているか又は開発中である少なくとも1つのさらなる公知の化合物又は治療用タンパク質と組み合わせて使用される。補体媒介障害の処置において現在使用される化合物は当該分野で公知であり、そしてこれらとしては、C5及びその活性化形態(C5a)に対する抗体、例えば、エクリズマブ、ベリナートヒトC1エステラーゼ阻害剤、ヒトC1エステラーゼ阻害剤、ルコネスト組み換えC1エステラーゼ阻害剤、シンライズヒトC1エステラーゼ阻害剤、抗ヒトMASP-2モノクローナル抗体、APL-2 C3阻害ペプチド、ランパリズマブ(Lampalizumab)、TNT009抗-C1s抗体が挙げられる。さらなる化合物はReis et al.、Clin Immunol.Dec;161(2):225-240
、2015に記載される。
【0347】
前述から明らかなように、本開示は、有効量の第一の薬剤及び第二の薬剤をそれを必要とする被験体に投与することを含む被験体の併用治療処置の方法を提供し、ここで第一の薬剤は本開示のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体であり、そして第二の薬剤もまた補体活性阻害するため又は補体媒介障害の予防もしくは処置のためのものである。
【0348】
句「併用治療処置」におけるような本明細書で使用される用語「併用」は、第二の薬剤の存在化で第一の薬剤を投与することを含む。併用治療処置方法は、第一、第二、第三又はさらなる薬剤が同時投与される方法を含む。併用治療処置方法はまた、第一又はさらなる薬剤が第二又はさらなる薬剤の存在化で投与される方法も含み、ここで第二又はさらなる薬剤は、例えば、事前に投与されていてもよい。併用治療処置は、段階的に異なる者により実行されてもよい。例えば、一人の実行者が被験体に第一の薬剤を投与し、そして第二の実行者が被験体に第二の薬剤を投与してもよく、そして投与工程は、第一の薬剤(及び/又はさらなる薬剤)が第二の薬剤(及び/又はさらなる薬剤)の存在下での投与後である限り、同時に、又はほとんど同時に、又は離れた時点で実行されてもよい。実行者及び被験体は同じ実体(例えば、ヒト)でもよい。
【0349】
選択された媒体中の活性成分の最適な濃度は、経験的に、当業者に公知の手順に従って決定され得、そして所望される最終的な医薬製剤に依存する。
【0350】
本開示のsCR1変異体の投与のための投薬量範囲は、所望の効果を生じるために十分大きなものである。例えば、組成物は有効量のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体を含む。一例において、組成物は治療有効量のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体を含む。別の例において、組成物は予防有効量のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体を含む。
【0351】
投薬量は、有害な副作用を引き起こすほど大きくないものであるべきである。一般に、投薬量は、患者における年齢、状態、性別及び疾患の程度によって変化し、そして当業者により決定され得る。投薬量は、いずれかの合併症の事象において個々の医師により調整され得る。
【0352】
投薬量は、1日に1回又はそれ以上の投与において、1又は数日間、約0.1mg/kgから約300mg/kgまで、例えば、約0.2mg/kgから約200mg/kgまで、例えば約0.5mg/kgから約20mg/kgまで変化し得る。
【0353】
いくつかの例において、sCR1変異体又はsCR1変異体結合体は、その後(維持量)よりも高い初期(又は負荷)用量で投与される。例えば、sCR1変異体又はsCR1変異体結合体は、約10mg/kg~約30mg/kgの間の初期用量で投与される。次いでsCR1変異体又はsCR1変異体結合体は、約0.0001mg/kg~約30mg/kgの間の維持量で投与される。維持量は、2~30日ごとに、例えば2又は3又は6又は9又は12又は15又は18又は21又は24又は27又は30日ごとに投与され得る。
【0354】
いくつかの例において、用量増大体制が使用され、ここではsCR1変異体又はsCR1変異体結合体は最初に、その後の用量で使用されるよりもより低い用量で最初に投与される。この投薬量体制は、被験体が初期に有害事象を患う場合に有用である。
【0355】
処置に適切に応答しない被験体の場合、週に複数回の用量が投与され得る。あるいは、又はさらに、増加する用量が投与され得る。
【0356】
被験体は、1より多くの曝露又は用量セット、例えば少なくとも約2曝露、例えば、約2~60曝露、そして詳細には約2~40曝露、最も詳細には約2~20曝露を与えられることによりsCR1変異体又はsCR1変異体結合体で再処置され得る。
【0357】
一例において、いずれかの再処置は、疾患の徴候又は症状が再発した場合、例えば、細菌感染の場合に与えられ得る。
【0358】
別の例において、再処置は規定された間隔で与えられ得る。例えば、その後の曝露が例えば、約24~28週又は48~56週もしくはそれ以上のような様々な間隔で投与され得る。例えば、このような曝露はそれぞれ約24~26週又は約38~42週、又は約50~54週の間隔で投与される。
【0359】
処置に適切に応答しない被験体の場合、週に複数回の用量が投与され得る。あるいは、又はさらに、増加する用量が投与され得る。
【0360】
別の例において、有害反応を経験した被験体については、初期(又は負荷)用量は1週に数日又は連続した多数の日にわたって分割され得る。
【0361】
本開示の方法に従うsCR1変異体又はsCR1変異体結合体の投与は、例えば、投与の目的が治療的でも予防的でも、レシピエントの生理学的条件に依存して、及び当業者に公知の他の因子に依存して連続的でも間欠的でもよい。投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的でも、一連の間隔を開けた投薬、例えば状態の間又は発症後のいずれかでもよい。
【0362】
キット及び他の組成物
本開示の別の例は、補体活性を阻害するため又は上記のような補体媒介障害の処置もしくは予防のために有用な本開示のsCR1変異体又はsCR1変異体結合体を含有するキットを提供する。
【0363】
一例において、キットは、(a)場合により薬学的に許容しうる担体又は希釈剤中にs
CR1変異体又はsCR1変異体結合体を含む容器;及び(b)被験体において補体活性を阻害するため又は補体媒介障害を処置もしくは予防するための指示含む添付文書を含む。
【0364】
一例において、キットは、(a)場合により薬学的に許容しうる担体又は希釈剤中の少なくとも1つのsCR1変異体又はsCR1変異体結合体;(b)被験体において補体活性を阻害する際に又は補体媒介障害を処置もしくは予防するためにキットを使用するための指示書;及び(c)場合により少なくとも1つのさらなる治療活性化合物又は薬物を含む。
【0365】
本開示のこの例に従って、添付文書は容器上にあるか容器に付随している。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ等が挙げられる、容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成され得る。容器は、補体活性を阻害するため又は補体媒介障害を処置又は予防するために有効な組成物を保持するか又は収容し、そして滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は静脈内液剤バッグ又は皮下組織注射針により穿孔可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤はsCR1変異体である。ラベル又は添付文書は、処置に適格な被験体、例えば、補体媒介障害を発症したか又は発症する素因を有する被験体を処置するために組成物が使用されることを示し、sCR1変異体及び任意の他の薬剤の投薬量及び間隔に関する具体的な指導が提供される。キットは、静菌水、注射用水(BWFI)、リン酸緩衝化食塩水、リンゲル液、及び/又はデキストロース溶液のような薬学的に許容しうる希釈剤緩衝液を含むさらなる容器を更に含み得る。キットは、商業的かつ使用者の立場から望ましい他の材料を更に含み得、これらとしては、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジが挙げられる。
【0366】
キットは、第二の薬剤を含む容器を場合により更に含み、ここでsCR1変異体又はsCR1変異体結合体は第一の薬剤であり、そしてこの物品は有効量で第二の薬剤を用いて被験体を処置するための指示書を添付文書にさらに含む。第二の薬剤は上で示された治療用タンパク質であってもよい。
【0367】
本開示は以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例0368】
実施例1:sCR1変異体の生成
ヒト補体受容体1型(CR1)cDNA(GenBank受入番号NP_000564)をヒト発現用にコドン最適化し、そしてGeneart(R)(InvitrogenTM、Thermo Fisher Scientific)により合成した。全長及び切断型可溶性CR1(sCR1)変異体を、標準的なPCRベースの変異誘発技術を使用して生成した。開始メチオニン(+1)のすぐ上流でKozakコンセンサス配列(GCCACC)を用いてcDNAを生成し、その後これをNheI及びXhoIで消化し、そしてpcDNA3.1(InvitrogenTM、Thermo Fisher Scientific)に連結した。sCR1変異体cDNAをC末端8xヒスチジンタグとインフレームでクローニングした。sCR1-8His変異体のリストについては表1を参照のこと。
【0369】
プラスミドDNAの大規模製造を、QIAGEN Plasmid Gigaキットを使用して製造者の指示に従って行った。全てのプレスミド構築物のヌクレオチド配列を、BigDyeTM Terminatorバージョン3.1 Ready Reaction Cycle Sequencing(InvitrogenTM、Thermo Fisher Scientific)及びApplied Biosystems 3
130xl Genetic Analyzerを使用して両方の鎖を配列決定することにより確認した。
【0370】
Expi293FTM細胞のsCR1発現プレスミドでの一過性トランスフェクションを、Expi293TM発現系を使用して製造者の推奨に従って行った(InvitrogenTM、Thermo Fisher Scientific)。全ての細胞培養培地に抗生物質-抗真菌剤(GIBCO(R)、Thermo Fisher Scientific)を補充し、そして細胞をインキュベーターにおいて8% CO2、37℃に維持した。
【0371】
sCR1-8Hisポリペプチドを精製した。手短には、ヘキサヒスチジンタグ化sCR1タンパク質の精製のために、20mM NaH2PO4、500mM NaCl、10mMイミダゾール、pH 7.4で予め平衡化したnickel sepharose
excelアフィニティ樹脂(GE Healthcare)上に培養上清を直接ロードした。ローディング後に、樹脂を20mM NaH2PO4、500mM NaCl、25mMイミダゾール、pH 7.4で洗浄した。樹脂結合sCR1を20mM NaH2PO4、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH 7.4でブロック溶出し、280nmでの吸光度に基づいて溶出されたタンパク質を集めた。混入したタンパク質を除去し、そして所望の緩衝液に緩衝液交換するために、mt-PBS(137mM
NaCl、27mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.15mM KH2PO4、pH 7.4)で予め平衡化されたHiLoad 26/60 superdex200分取等級カラム(GE Healthcare)に集めたタンパク質をロードした。精製されたタンパク質を、50kDa MWCOを有するアミコンウルトラ遠心分離フィルターを使用して濃縮して所望の濃度とし、滅菌濾過し、そして-80℃で貯蔵した。細胞内プロセシングにより、成熟sCR1-8His変異体はN末端41アミノ酸ヒトCR1シグナルペプチドを欠いている。
【0372】
【0373】
実施例2:sCR1-8His変異体はインビトロで補体阻害活性を有する
補体阻害活性を評価するために、sCR1-8His変異体をWieslab(R)補体アッセイ(Euro Diagnostica)において製造者の指示に従って試験した。手短には、sCR1-8His変異体タンパク質をPBS中で96ウェルプレートにて段階希釈した。各希釈したsCR1-8His変異体サンプル又はPBS単独50μl
を、各補体経路について(製造者の指示により)適切なアッセイ希釈剤中で予め希釈されたヒト血清(古典的/レクチンについて1:101)202.5μl又は希釈された血清(副について1:18)220μlに加え、そして30分間室温(RT)でインキュベートした。予め希釈した血清に加えたら、各タンパク質の最終開始濃度は40nMであった。各サンプル100μlをアッセイプレートに二連で移し、そして1時間37℃(CO2無し)でインキュベートした。ウェルを空にして1x洗浄緩衝液(製造者の指示どおり)300μl/ウェルで3回洗浄した。C5b-9の終末複合体を、100μl/ウェルアルカリホスファターゼ結合抗C5b-9特異的モノクローナル抗体を使用して検出し、これを30分間室温(RT)でインキュベートした。未結合の抗体を廃棄し、そしてウェルを3回1x洗浄緩衝液300μl/ウェルで洗浄した。結合した抗体を、アルカリホスファターゼ基質溶液100μl/ウェルを使用して検出し、そして30分間RTでインキュベートした。405nmでの吸光度をEnvisionプレートリーダーを使用して読み取った。
【0374】
生の値を、血清及びPBSのみの対照(すなわち100% C5b-9形成)によりC5b-9形成のパーセンテージとして表した。結果をGraph Pad PrismにおいてIC50値についてlog(阻害剤)対反応 -- 可変傾斜(4パラメーター)フィットを使用して解析した。最低及び最高をそれぞれ値0及び100に制限した。
【0375】
sCR1(490-939)-8His、sCR1(940-1392)-8His及びsCR1(1393-1971)-8Hisを除いて全てのsCR1-8His変異体が、古典的経路、レクチン経路及び副経路において機能的活性を有していた。sCR1(490-939)-8Hisは副経路のみで機能的活性を有していたが、sCR1(940-1392)-8Hisはレクチン経路及び副経路において機能的活性を有していた。sCR1(1939-1971)-8Hisは古典的、レクチン又は副経路のいずれにおいても検出可能な活性を有していなかった。
【0376】
以下の表2に示されるように、sCR1(1392)-8Hisは、Wieslabアッセイにおいて全長sCR1(1971)-8His及び他のsCR1フラグメントと比較して、3つの補体経路全て(すなわち、古典的、レクチン及び副)において増加した阻害活性を有していた。
【0377】
sCR1-8His変異体を、溶血アッセイ(例えば、古典的経路(すなわち、CH50)及び副経路(ApH50)阻害アッセイ)を使用して機能的活性についても試験した。
【0378】
補体系(すなわち、CH50)の古典的経路のsCR1変異体による阻害を評価するために、ヒツジ赤血球(Siemens)をウサギ抗ヒツジ抗体(Ambozeptor 6000;Siemens)を用いて感作し、そして4x108細胞/mL GVB++(GVB、0.15 mM CaCl2、0.5 mM MgCl2)に希釈した。sCR1変異体を1/40希釈NHS中でプレインキュベートし(RTで30分)、その後赤血球に1/1(体積/体積)比で加え、そして1時間の間37℃でマイクロタイタープレート振盪装置においてインキュベートした。氷冷GVBE(GVB、10mM EDTA)を加えて遠心分離(1250x g、4℃で5分)した後、溶血を上清において放出されたヘモグロビンを412nmの吸光度を測定することにより決定した。NHS及び緩衝液のみとインキュベートされた細胞は100%溶解対照として役立った。sCR1変異体による溶解の阻害を対照と比べて計算した。
【0379】
補体系の副経路(すなわち、ApH50)のsCR1変異体による阻害を評価するために、ウサギ赤血球(Jackson Laboratories)を洗浄しそして2x1
08細胞/mL GVB/MgEGTA(GVB、5mM MgEGTA)に希釈した。sCR1変異体を1/6希釈NHS(RTで30分)中でプレインキュベートし、そしてその後赤血球に2/1(体積/体積)比で加え、そして1時間37℃でマイクロタイタープレート振盪装置においてインキュベートした。氷冷GVBEを加えて遠心分離(1250x g 10分)した後、溶血を上清において412nmにおける放出されたヘモグロビンの吸光度を測定することにより決定した。NHS及び緩衝液のみとインキュベートした細胞は100%溶解対照として役立った。sCR1変異体による溶解の阻害を対照と比べて計算した。
【0380】
sCR1(1393-1971)-8Hisを除く全ての変異体は、CH50及びApH50アッセイの両方において機能的活性を示した。表3に示されるように、sCR1(1392)-8Hisは両方のアッセイにおいてsCR1(1971)-8Hisと比較して増加した活性を有していた。
【0381】
【0382】
【0383】
実施例3:sCR1(1392)-8His変異体はsCR1(1971)-8Hisと比較して増加した安定性を示す
様々な緩衝液条件下でのsCR1(1392)-8Hisの安定性を評価するために、示差走査蛍光定量法(DSF)アッセイを行い、全長sCR1(1971)-8Hisタンパク質と比較したsCR1(1392)-8Hisタンパク質の熱安定性を測定した。タンパク質の安定性を一定範囲の塩(NaCl 0mM、50mM、150mM及び500mM)及びpH条件下で以下の緩衝液について評価した:クエン酸塩、HEPES、酢酸ナトリウム、リン酸塩、グリシン、ヒスチジン、TRIS及びプロリン。
【0384】
手短には、4x緩衝液濃縮物5μlを二連で384ウェルプレートに分けた。sCR1(1392)-8His及びsCR1(1971)-8Hisタンパク質を0.13mg/mlにMT-PBS中で希釈し、次いで水中で構成された1/20色素ストック(Sypro(R)橙色;Sigma)を添加して各アッセイ反応において1/400最終希釈とした。次いでタンパク質/色素混合物15μlを、緩衝液濃縮物を含有する384ウェルプレートの各ウェルに分配した。このプレートを粘着型光学カバーで密封し、そしてQuantStudioTMリアルタイムPCR機器(Applied Biosystems)で実行する前に1分間3220gで遠心分離した。冷却し、そして1分間20.0℃の温度に保持した後に、20.0℃から99.0℃に0.05℃/秒の速度で上昇させることにより溶融曲線を作成した。Protein Thermal Shiftソフトウェア(Applied Biosystems)を使用し、一次導関数を使用して各溶融曲線から転移中点(Tm)値を計算した。NaCl濃度(x軸)及びpH(y軸)に関連してTm値がどのように変化するかをグラフで示すためにJMP13を使用して等高線図を作成した。
【0385】
sCR1(1392)-8Hisは以下を含むいくつかの緩衝液条件下で安定であった:リン酸塩(pH6.0~8.0;NaCl 0~500mM);リン酸塩-クエン酸塩(pH6.0~8.0;NaCl 0~500mM);Tris(pH7.0~9.0;NaCl 0~500mM);グリシン(pH9.0~10.0;NaCl 0~500
mM);HEPES(pH6.5~8.5;NaCl 0~500mM)及びヒスチジン(pH6.0~7.0;NaCl 0~500mM)。測定された最大Tm値は、sCR1(1392)-8Hisについて61.4℃及びsCR1(1971)-8Hisについて61.7℃であった。
【0386】
緩衝液スクリーニングに基づいて、sCR1(1392)-8HisはsCR1(1971)-8Hisよりも安定であった。
【0387】
実施例4:シアリル化sCR1(1392)-8Hisは改善されたインビボ半減期を有していた
sCR1(1392)-8Hisのインビボ半減期を延長することができたか否かを評価するために、sCR1(1392)-8Hisのシアリル化バージョンを製造した(sCR1(1392)-8HisSIA)。手短には、Expi293F細胞を、sCR1(1392)-8HisをコードするcDNAを、ヒトST3GAL3をコードするcDNA(ST3ベータ-ガラクトシド アルファ-2,3-シアリルトランスフェラーゼ3、GenBank受入番号NP_006270)及びヒトB4GALT1をコードするcDNA(ヒトβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、GenBank受入番号NP_001488.2)と一緒に94:3:3の比で同時トランスフェクトすることによりシアリル化材料を生成した。
【0388】
表4に示されるように、ST3GAL3/B4GALT1-トランスフェクト細胞において産生されたsCR1(1392)-8HisSIA材料は、かなりより高い比率のシアリル化グリカンを有していた。特に、シアリル化sCR1(1392)-8HisSIA材料は、より高い比率のジ-、トリ-及びテトラ-シアリル化グリカンを有していた。
【0389】
【0390】
sCR1(1392)-8His及びそのシアリル化バージョン(sCR1(1392)-8HisSIA)のインビボ半減期を、ヒトFcRnトランスジェニックマウス(B6.Cg-Fcgrttm1Dcr Tg(FCGRT)32Dcr/DcrJ;The
Jackson Laboratoryストック番号014565)において調べた。マウスに、sCR1(1392)-8His又はsCR1(1392)-8HisSIA
30mg/kgを静脈内注射し(尾静脈内への単回ボーラス注射)、そして血漿を様々な時点で集めた(グループA:5分及び4時間、n=3;グループB:0.5時間及び8時間、n=3;グループC:1時間及び16時間、n=3;グループD:2時間及び48時間、n=3)。血液をクエン酸緩衝液と血液8部クエン酸緩衝液2部の比で混合した。ヒトsCR1の血漿レベルを抗ヒトCD35 ELISA(RayBiotech、カタログ番号ELH CD35)において製造者の指示に従い、以下の変更点を用いて測定した:標準曲線(3~250ng/mLの範囲に及ぶ)を各試験品を使用して生成し、使用
したアッセイ緩衝液は1% BSA熱ショック画分、プロテアーゼ非含有(Sigmaカタログ番号A3059)であり、そして洗浄緩衝液はPBS+0.05%体積/体積Tween-20であった。平均滞留時間(MRT)及び曲線下面積(AUC)を標準的統計式を使用して計算した。
【0391】
図1に示されるように、sCR1(1392)-8His
SIAは、sCR1(1392)-8Hisと比較してインビボ保持を改善し、MRTは25倍増加し(14.7時間対35分)そしてAUCにおいて8倍増加した(AUC=516.5対65.74)。
【0392】
実施例5:sCR1(1392)-8Hisは抗GBM糸球体腎炎を低減する
sCR1(1392)-8His処置の効果を、抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて評価した。手短には、抗GBM糸球体腎炎を、ポリクローナルウサギ抗GBM抗血清(IgGフラクション)1mgを0日目に静脈内注射することによりC57BL/6マウスにおいて誘導し、続いてマウスモノクローナル抗ウサギIgG(ハイブリドーマCRL-1753(ATCC)から製造されたMsαRb IgG) 2mgを6日目に腹腔内注射した。マウスに、PBS又はsCR1(1392)-8His、sCR1(1971)-8His、もしくは抗マウスC5 mAb(muBB5.1-mIgG1κ;Rother R、et al.Nat Biotechnol.2007;Wang Y et al.、Proc Natl Acad Sci 1995)60mg/kgを5及び6日目に腹腔内注射した。マウスのさらなるグループを60mg/kg sCR1(1392)-8Hisを用いて6日目のみに処置し、5日目には処置しなかった(sCR1(1392)-8His x1)。6日目に、薬物(すなわち、sCR1変異体又はBB5.1)又はPBS対照を、MsαRb IgG mAbの注射の約1時間前に投与した。MsαRbの注射後に、マウスを個別に代謝ゲージに入れて24時間の期間にわたって尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)を用いて測定し、そしてマウスあたりのアルブミン尿をμg/24時間としてプロットした。
【0393】
本実験において使用されたsCR1(1392)-8His及びsCR1(1971)-8His材料は、比較的非シアリル化(unsialylated)されており、そしてST3GAL3及びB4GALT1 cDNAと同時トランスフェクトされていないExpi293F細胞において製造された。
【0394】
図2に示されるように、尿アルブミンレベルはsCR1(1392)-8His処置マウスにおいて有意に減少した(PBS対sCR1(1392)-8His x2:p=0.0147;PBS対sCR1(1392)-8His x1:p=0.1526;PBS対BB5.1:p=0.0078)。
【0395】
実施例6:シアリル化sCR1(1392)-8Hisは抗GBM糸球体腎炎を低減する
sCR1(1392)-8HisSIA処置の効果を、実施例4で以前に記載したように抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて評価した。マウスにPBS又はsCR1(1392)-8HisSIA 10mg/kg、30mg/kgもしくは60mg/kgのいずれかを6日目に腹腔内注射した。
【0396】
6日目に、sCR1(1392)-8HisSIA又はPBS対照を、MsαRb IgG mAbの注射の約1時間前に投与した。MsαRbの注射後に、マウスを個別の代謝ゲージに入れて24時間の期間にわたって尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)を用いて測定し、そしてマウスあたりのアルブミン尿をμg/24時間としてプロットした。
【0397】
図3に示されるように、尿中アルブミンレベルは、対照(すなわち、PBS)処置マウスと比較してsCR1(1392)-8His
SIA処置マウスにおいて10mg/kg、30mg/kg及び60mg/kgで処置されたマウスにおいて減少した。
【0398】
実施例7:シアリル化sCR1(1392)-8Hisは腎臓虚血再灌流傷害に対して保護する
sCR1(1392)-8HisSIA処置の効果を腎臓温虚血再灌流(IR)傷害のインビボモデルにおいて評価した。雄性10~20週齢C57BL/6マウスを麻酔し、そして右腎摘出び22分の左腎虚血、又は右腎摘出のみ(シャム)を37℃で行った。手短には、正中線腹部切開を行い、そして腎茎部を鈍的切開した。右腎摘出後、動物を37℃に維持しながら、微小血管クランプを左腎茎部に22分間置いた。虚血後にクランプを取り外し、そして再灌流の完了を確認するために腎臓を観察した。虚血の1時間前に60mg/kg sCR1(1392)-8HisSIA(n=14)、又はビヒクル対照(n=8)の腹腔内(i.p.)投与を用いてマウスを処置した。マウスを再灌流の24時間後に屠殺し、そして腎機能(クレアチニン、尿素)及び補体活性(C3b、C5a ELISA)を評価するために血清及び血漿を集めた。腎臓を補体C9沈着及び免疫細胞浸潤を免疫蛍光法/共焦点顕微鏡により分析するために摘出した。
【0399】
以下の表5に示されるように、シャムと比較して、重篤な腎損傷が、有意に増加した血清クレアチニン及び尿素、血漿C3b及びC5a、並びに組織C9沈着並びに好中球及びマクロファージ浸潤により示されるように、ビヒクル処置マウスにおいてIR後に誘導された。
【0400】
sCR1(1392)-8HisSIAを用いた処置は、IR誘導損傷を有意に保護し、腎機能障害(すなわち、血清クレアチニン、尿素)、補体活性化及び沈着(すなわち、血漿C3b、C5a、及び組織C9沈着)、並びに細胞浸潤(すなわち、好中球及びマクロファージ浸潤)(表5を参照のこと)を有意に低下することにより表された。
【0401】
これらの結果は、sCR1(1392)-8HisSIAがこのモデルにおいてIR媒介腎損傷に対して保護し、そして血清クレアチニン及び尿素により示される腎機能の顕著に減少した喪失、さらには低下した血漿補体活性化産物、並びに補体の組織沈着及び自然免疫細胞による浸潤を伴っていたということを示した。
【0402】
【0403】
実施例8:腎虚血再灌流傷害に対するシアリル化sCR1(1392)-8Hisの変更された投薬の効果
腎温虚血再灌流(IR)傷害のインビボモデルにおけるsCR1(1392)-8HisSIA用量応答関係を評価するために、マウスを10mg/kg、30mg/kgもしくは60mg/kg sCR1(1392)-8HisSIA、又はビヒクル対照のいずれかの腹腔内(i.p.)投与で虚血1時間前に処置した。上記のようにIRを誘導し、そしてIR媒介腎損傷を以前に記載されたように評価した。
【0404】
sCR1(1392)-8HisSIAの上昇したレベルを維持する効果を、60mg/kg sCR1(1392)-8HisSIA、又はビヒクル対照を虚血1時間前に、並びに60mg/kg sCR1(1392)-8HisSIA、又はビヒクル対照を虚血1時間後及び/又は2時間後に投与することにより評価した。IRを上記のように誘導し、そしてIR媒介腎損傷を以前に記載されたように評価した。
【0405】
実施例9:sCR1変異体融合物の生成
組み換えsCR1融合物を、sCR1変異体をヒト血清アルブミン(HSA)(GenBank受入番号NP_000468)、ヒトIgG1 Fc(Genbank受入番号P01857)又はヒトIgG4Fc(aa99-327;GenBank受入番号P01861)に、sCR1配列のN末端又はC末端のいずれかに融合することにより生成した(表6)。組み換え融合物を、標準的なクローニング技術を使用して作製した。HSA融合物の場合、GS13リンカー(GSGGSGGSGGSGS)を使用してsCR1配列とHSA配列とを連結した。IgG4 Fc及びIgG1 Fc融合物の場合、リンカーを使用しなかった。いくつかの構築物については、セルロプラスミンシグナルペプチドを使用した(GenBank受入番号NP_000087)。全ての融合タンパク質をExpi293FTM細胞で発現させ、そしてsCR1タンパク質を上記のように精製した。
【0406】
ヒト血清アルブミン(HSA)タグ化sCR1融合物の精製については、培養上清を、20mM Tris、pH 7.4で予め平衡化したCapture Select Human Albumin Affinity Matrixアフィニティ樹脂(GE Healthcare)上に直接ロードした。全ての上清をロードした後、樹脂を20mM Tris、pH 7.4で洗浄した。樹脂に結合したsCR1を20mM Tris、2M MgCl2、pH 7.4でブロック溶出し、溶出されたタンパク質を280nmでの吸光度に基づいて集めた。溶出されたタンパク質を、mt-PBS(137mM NaCl、27mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.15mM KH2PO4、pH 7.4)で予め平衡化したHiLoad 26/60 superdex200分取等級カラム(GE Healthcare)にロードして、混入タンパク質を除去し、そして緩衝液を望ましい緩衝液に交換した。精製されたタンパク質を50kDa MWCOを有するアミコン超遠心フィルターを使用して所望の濃度まで濃縮し、滅菌濾過し、そして-80℃で貯蔵した。
【0407】
Fc融合sCR1変異体の精製のために、培養上清を、mt-PBS(137mM NaCl、27mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.15mM KH2PO4、pH7.4)で予め平衡化したMabSelect SuReアフィニティ樹脂(GE
Healthcare)上に直接ロードした。全ての上清をロードした後、樹脂をmt-PBS、pH7.4で洗浄した。弱く結合した非標的タンパク質を0.1Mクエン酸ナトリウム、pH 5.0でブロック溶出した。樹脂結合sCR1を0.1Mクエン酸ナトリウム、pH 3.0でブロック溶出し、280nmでの吸光度に基づいて溶出されたタンパク質を集めた。溶出されたタンパク質を、mt-PBSで予め平衡化したHiLoad 26/60 superdex200分取等級カラム(GE Healthcare)上にロードして、混入したタンパク質を除去し、そして緩衝液を所望の緩衝液に交換した。精製されたタンパク質を50kDa MWCOを有するアミコン超遠心フィルターを使用して所望の濃度まで濃縮し、滅菌濾過し、そして-80℃で貯蔵した。
【0408】
【0409】
HSA、IgG1 Fc又はIgG4 FcにN末端又はC末端結合体化した全てのsCR1変異体は、以前に記載されたようにWieslabアッセイを使用して測定して、古典的経路、レクチン経路及び副経路において補体阻害活性を有していた。
【0410】
以下の表7及び8に示されるように、sCR1(1392)-GS13-HSA及びsCR1(1392)-IgG4 Fcは、Wieslabアッセイ、さらには溶血(すなわち、CH50及びApH50)阻害アッセイにおいて測定して、全ての3つの補体経路(すなわち、古典的、レクチン及び副)においてsCR1(1392)-8Hisと比較して増加した補体阻害活性を有していた。sCR1(1392)-IgG4 Fc融合物は、sCR1(1392)-8Hisと比較して、古典的経路(平均2.31±0.16)及びレクチン経路(平均2.37±0.44)において補体阻害活性の約2倍の増加、並びに副経路(平均7.61±2.52)において補体阻害活性の7~8倍の増加を有していた。HSA及びIgG4 FcとのC末端融合物は、sCR1(1392)の補体阻害活性に不利な影響を及ぼさなかった。
【0411】
【0412】
【0413】
組み換えsCR1-HSA融合物(sCR1(1392)-HSA;配列番号51)を、上記のように生成し、CHO Xceed(R)細胞において発現させ、そして上記のように精製した。古典的及びレクチン経路における補体活性をWieslabアッセイを使用して測定し、CHO Xceed(R)由来材料がExpi293FTM由来材料と比較して同様の活性を有するこを確認した。
【0414】
実施例10:二量体Fc sCR1変異体融合物は、単量体Fc sCR1変異体融合物と比較して増加した阻害活性を有していた
二量体IgG1 Fc、二量体IgG4 Fc又は単量体IgG4 FcにC末端で結合した組み換えsCR1融合物を以前に記載されたように生成した。
【0415】
以下の表9及び10に示されるように、sCR1(1392)-IgG1 Fc及びsCR1(1392)-IgG4 Fcは、Wieslabアッセイにおいて、さらには溶血(すなわち、CH50及びApH50)阻害アッセイにおいて、全3つの補体経路(すなわち、古典的、レクチン及び副)において測定して、sCR1(1392)-8Hisと比較して増加した補体阻害活性を有していた。特に、sCR1(1392)-二量体IgG1 Fc融合物及びsCR1(1392)-二量体IgG4 Fc融合物は、sCR1(1392)-8His及びsCR1(1392)-単量体IgG4 Fc融合物と比較して、古典的経路及びレクチン経路において補体阻害活性の約2倍の増加、並びに副経路において補体阻害活性の4倍の増加を有していた。これらの結果はまた、N末端融合物が副経路においてsCR1(1392)の補体阻害活性に不利な影響を及ぼすということも示す。
【0416】
【0417】