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特開2024-96872離型層、離型層を備える成形体および離型剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096872
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】離型層、離型層を備える成形体および離型剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240709BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240709BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240709BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B27/00 L
C08J7/04 Z
B32B27/30 A
B32B7/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064841
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2022153022の分割
【原出願日】2015-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2014256245
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014256246
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 明子
(72)【発明者】
【氏名】本郷 有記
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被離型体との濡れ性が良好で、軽い剥離性を有する離型層を備える成形体を提供する。
【解決手段】基材と、離型層とを備える成形体であって、前記離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下である離型層であり、離型層は、X成分と、Y成分とを含むポリマーが架橋してなり(ただし、ポリエステル樹脂を含まない)、前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下の範囲で含み、前記ポリマーの水酸基価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である離型層を備える、成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に配置された離型層とを備える成形体であって、
前記離型層は、
表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下である離型層であって、
前記離型層は、下記式(1)で示されるX成分と、下記式(2)で示されるY成分とを含むポリマーが架橋してなり(ただし、ポリエステル樹脂を含まない)、
前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下の範囲で含み、
下記式(3)で示されるZ成分を含まず、かつ、イソボルルアクリレートを含まず、
X成分を示す式(1)のR中の炭素数nが7以下である成分を含まず、
前記ポリマーは、以下に記載のY成分量に関する規定、またはポリマー水酸基価の規定のうち少なくとも1つの条件を満たし、
前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を10モル以上25モル以下で含む、または、
前記ポリマーの水酸基価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である、
更に、前記離型層は、半導体パッケージのモールド用離型シートの離型層、又は、
電子材料用テープ、セラミックシート、樹脂シート、電極シートおよび回路基板からなる群から選択される少なくとも1種(ただし、粘着剤、粘着シートを除く)の製造用キャリアーシートの離型層に適用できる、
成形体

【化1】

(式(1)中、Rは(C2n+1)(n=8以上16以下の整数、ただし、n=16を除く)、RはHを示す)
【化2】

(式(2)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RHを示す)
【化3】

(式(3)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=2以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す)。
【請求項2】
前記ポリマーは、重量平均分子量が5,000以上150,000以下である、
請求項1に記載の成形体
【請求項3】
前記離型層の常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下である、請求項1に記載の成形体
【請求項4】
前記式(1)中、Rは直鎖状である、
請求項1に記載の成形体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型層、離型層を備える成形体および離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板の製造工程において、成形型と被成形体との分離を容易にし、製品の均一性や安定性、作業の容易性を確保するために、離型剤やフィルムなどの基材に離型剤を塗布した離型フィルムが用いられている。一般的な離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤や長鎖アルキル系離型剤が挙げられる。
【0003】
しかし、シリコーン系離型剤は、優れた離型性を有するが、シリコーン成分が被離型体へ転写しやすいため、電子部品への使用は困難である。フッ素系離型剤は、優れた離型性と耐熱性を有するが、高価であり、濡れ性が悪いという問題がある。長鎖アルキル系離型剤は、濡れ性がシリコーン系離型剤やフッ素系離型剤より優れるが、加熱後に剥離力が増加する傾向にある。また、長鎖アルキル系離型剤は、必ずしも十分な離型性を有するものでない。さらに、回路基板の製造工程においては、離型フィルムに熱や圧力が加わる場合がある。長鎖アルキル系離型剤は、加熱後に剥離力が増加する傾向にあることに関連し、離型剤としての性能を十分に発揮できないという問題がある。
【0004】
特許文献1(特開2010-144046号公報)には、接着樹脂を離型剤に塗布するときのハジキを防止し、さらに接着樹脂フィルムからの剥離性能を良好に維持することのできる離型剤として、(A)アルキル基またはアリール基末端モノ又はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単位と、(B)アルキル基の炭素数が1~30のアルキル(メタ)アクリレート単位とを含有するポリ(メタ)アクリレートを主剤として含む離型剤が開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2007-002092号公報)には、シリコーン樹脂製離型剤よりも軽い剥離性を有し、移行性がない離型剤として、少なくともアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとが共重合したプレポリマーを、イソシアネート基含有化合物で架橋させた有効成分が含まれている離型剤が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2014-151481号公報)には、加工時の熱による離型性の悪化が少ない離型ポリエステルフィルムとして、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、離型剤および活性メチレンブロックイソシアネート化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-144046号公報
【特許文献2】特開2007-002092号公報
【特許文献3】特開2014-151481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、剥離力が583mN/20mmより大きく、剥離力がより軽い離型剤が求められている。
【0009】
また、特許文献2の技術では、離型剤の濡れ性が不十分であるという問題がある。
【0010】
更に、特許文献3の技術では、加熱後剥離力が1080mN/cm以上であり、加熱後の剥離性が重い。さらに、加熱後剥離力が常態剥離力よりも710mN/cm以上大きく、加熱による剥離力の増加の抑制が不十分であるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の第1の発明は、被離型体との濡れ性が良好で、軽い剥離性を有する離型層、該離型層を備える成形体、および離型剤を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の第2の発明は、加熱前後のいずれにおいても、軽い剥離性を有する離型層、該離型層を備える成形体、および離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の第1の発明に係る離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下であり、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下である。
【0014】
(2)第1の発明に係る離型層において好ましくは、前記離型層は、下記式(1)で示されるX成分と、下記式(2)で示されるY成分とを含むポリマーが架橋してなる。
【0015】
【化1】
【0016】
式(1)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0017】
【化2】
【0018】
式(2)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0019】
(3)第1の発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下の範囲で含む。
【0020】
(4)第1の発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーは、さらに下記式(3)で表されるZ成分を含む重合体である。
【0021】
【化3】
【0022】
式(3)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=2以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
【0023】
(5)本発明の第2の発明は、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下であり、加熱後剥離力が前記常態剥離力の2倍以下である離型層である。
【0024】
(6)第2の発明の離型層において好ましくは、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下である。
【0025】
(7)第2の発明の離型層において好ましくは、前記離型層は、下記式(4)で示されるX成分と、下記式(5)で示されるY成分と、下記式(6)で示されるZ成分とを含むポリマーが架橋してなる。
【0026】
【化4】
【0027】
式(4)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0028】
【化5】
【0029】
式(5)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0030】
【化6】
【0031】
式(6)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=5以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
【0032】
(8)本発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーは、重量平均分子量が5,000以上150,000以下である。
【0033】
(9)本発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーの水酸基価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
【0034】
(10)本発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーは、架橋剤によって架橋される。
【0035】
(11)本発明に係る離型層において好ましくは、前記式(1)中、Rは直鎖状である。
【0036】
(12)本発明に係る離型層において好ましくは、前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を5モル以上30モル以下およびZ成分を1モル以上30モル以下の範囲で含む。
【0037】
(13)本発明に係る成形体は、基材と、前記基材の表面に配置された上記の離型層とを備える。
【0038】
(14)本発明の第1の発明に係る離型剤は、下記式(1)で示されるX成分と、下記式(2)で示されるY成分とを含むポリマーと、架橋剤とを含む。
【0039】
【化7】
【0040】
式(1)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0041】
【化8】
【0042】
式(2)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0043】
(15)本発明の第2の発明にかかる離型剤は、下記式(4)で示されるX成分と、下記式(5)で示されるY成分と、下記式(6)で示されるZ成分とを含むポリマーと、架橋剤とを含む離型剤である。
【0044】
【化9】
【0045】
式(4)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたは(CH)を示す。
【0046】
【化10】
【0047】
式(5)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたは(CH)を示す。
【0048】
【化11】
【0049】
式(6)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=5以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
【発明の効果】
【0050】
本発明の第1の発明によれば、被離型体との濡れ性が良好で、軽い剥離性を有する離型層、該離型層を備える成形体、および離型剤を提供することが可能となる。
【0051】
また、本発明の第2の発明によれば、加熱前後のいずれにおいても、軽い剥離性を有する離型層、該離型層を備える成形体、および離型剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
<実施の形態1>
本発明の第1の発明における一実施の形態に係る離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下であり、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下である。
【0053】
前記離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下であるため、被離型体との濡れ性が良好である。本明細書中、表面自由エネルギーとは、接触角計(協和界面科学社製の「FACE接触角計CA-X」)を用いて、20℃、65%RHの条件下で、離型層表面に接する水とヨウ化メチレン(CH)の接触角θとθを測定し、これらの測定値から、Journal of Applied Polymer Science, vol.13, p1741-1747(1969)に記載された方法に従って、γsh(水素結合力成分項)とγsd(水素分散力成分項)を算出し、各成分の和を表面自由エネルギーγとして算出した値である。具体的には、表面エネルギーにおける水素結合力成分項γshと、ポリエステルフィルムの表面エネルギーにおける水素分散力成分項γsdは、離型層表面に対する水の接触角θ、およびヨウ化メチレン(CH)の接触角θから、
1+cosθ=[2×(γsd1/2×{(γwd1/2/γ}]+[2×(γsh1/2×{(γwh1/2/γ}]・・・式(A)
1+cosθ=[2×(γsd1/2×{(γyd1/2/γ}]+[2×(γsh1/2×{(γyh1/2/γ}]・・・式(B)
の2元連立方程式を解くことにより求められる。なお、上式のγ、γはそれぞれ水、及びヨウ化メチレン(CH)の表面張力であり、γwd、γydはそれぞれの表面張力における分散力成分項、γwh、γyhはそれぞれの表面張力における水素結合力成分項である。なお、γ=γwd+γwh、γ=γyd+γyhである。具体的には、
水の表面張力より、γ=72.8mJ/m、γwd=21.8mJ/m、γwh=51.0mJ/m、ヨウ化メチレンの表面張力より、γ=50.8mJ/m、γyd=48.5mJ/m、γyh=2.3mJ/mを代入してγsd、γshを求める。
【0054】
表面自由エネルギーは、40mJ/m以上60mJ/m以下が好ましく、50mJ/m以上60mJ/m以下がさらに好ましい。
【0055】
前記離型層は、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下であるため、軽い剥離性を有する。常態剥離力は、50mN/50mm以上300mN/50mm以下が好ましく、50mN/50mm以上250mN/50mm以下がさらに好ましい。本明細書中、常態剥離力とは、以下の工程で測定したT字剥離強度の値である。離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)社製の「31B」)を貼り合わせ、線圧5kgf/mmの圧着ローラで圧着後、温度22℃、湿度60%の条件下で20時間放置する。粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に細断する。粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を担持し、離型フィルム側を300mm/minの速度で引っ張って剥離し、T字剥離強度を測定する。T字剥離強度の測定には、引っ張り試験機((株)島津製作所製の「AUTOGRAPHAG-X」)を用いた。
【0056】
本発明の一実施の形態に係る離型層において好ましくは、前記離型層は、下記式(1)で示されるX成分と、下記式(2)で示されるY成分とを含むポリマーが架橋してなる。
【0057】
【化12】
【0058】
式(1)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0059】
【化13】
【0060】
式(2)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0061】
X成分を示す式(1)中、Rは炭素数nが8以上20以下のアルキル基である。炭素数nが7以下であると、X成分が離型性を失い、粘着性を示すようになる。一方、炭素数nが21以上であると、X成分の柔軟性が損なわれ、離型層の被膜表面の濡れ性が不十分となる。炭素数nは10以上18以下が好ましく、12以上16以下がさらに好ましい。また、Rは直鎖状および分岐状のいずれでもよい。なお、Rが直鎖状であると、離型層の剥離性が軽くなる傾向があるため好ましい。
【0062】
X成分を示す式(1)中、RはHまたはCHであり、いずれも好適である。
X成分の原料としては、下記式(7)で示されるモノマーを用いることができる。
【0063】
【化14】
【0064】
式(7)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
X成分の原料として、具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0065】
Y成分を示す式(2)のR中、炭素数mは1以上10以下である。炭素数mが11以上であると、架橋密度が疎となり、離型層自体の凝集力が弱まり、剥離力が重くなる。炭素数mは2以上8以下が好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。
【0066】
Y成分を示す式(2)中、Rは、HまたはCHであり、いずれも好適である。
Y成分の原料としては、下記式(8)で示されるモノマーを用いることができる。
【0067】
【化15】
【0068】
式(8)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
Y成分の原料として、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0069】
前記ポリマーは、重量平均分子量が5,000以上150,000以下であることが好ましい。本明細書中、重量平均分子量とは、GPCを用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した値である。ポリマーの重量平均分子量が5,000未満であると、ポリマー鎖同士の絡み合いが弱く、離型層を成型したときの膜の強度が弱くなるために、摩擦等による離型層の脱落が後加工の工程で問題となる場合がある。一方、ポリマーの重量平均分子量が150,000を超えると、ポリマーの粘度が高くなり、離型層を成型しにくくなる。ポリマーの重量平均分子量は、20,000以上120,000以下がさらに好ましい。
【0070】
前記ポリマーの水酸基価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリマーの水酸基価が1mgKOH/g未満であると、架橋剤による架橋可能な官能基が少なく、離型層が硬化しないという問題が起こる。ポリマーの水酸基価が50mgKOH/gを超えると、水酸基の水素結合により、離型層の離型性が損なわれる。ポリマーの水酸基価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0071】
前記ポリマーは、架橋剤によって架橋されることが好ましい。架橋剤としては、ポリイソシアネート、メラミン、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、紫外線硬化型樹脂、またはこれらの2種類以上の混合物を用いることができる。中でも、ポリイソシアネートを用いることが温和な条件で反応させることができるため好ましい。アルミニウムキレート、チタンキレートでの架橋は、用途によっては金属成分の含有を嫌う場合がある。ポリマー原料の総量に対する架橋剤の添加量は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
【0072】
前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましい。これによると、ポリマーは濡れ性が良好で、かつ剥離性が軽くなる。ポリマー中のX成分とY成分の配合量は、X成分100モルに対して、Y成分を10モル以上25モル以下とすることがさらに好ましい。
【0073】
<実施の形態2>
本発明の第1の発明における一実施の形態に係る離型層は、実施の形態1に記載のX成分およびY成分に加えて、下記式(3)で表されるZ成分を含むポリマーからなる。
【0074】
【化16】
【0075】
式(3)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=2以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
ポリマーがZ成分を含むことにより、離型層の濡れ性がさらに良好となる。
【0076】
Z成分を示す式(3)のR中、qは2以上30以下が好ましい。qが1以下であると、表面自由エネルギーが低くなり、離型層の濡れ性が悪くなる。一方、qが31以上であると、離型性を示すX成分の長鎖アルキル基が空気界面に露出しにくくなり、離型層が重剥離化するおそれがある。qの値は、2以上25以下がさらに好ましい。
【0077】
Z成分を示す式(3)のR中、aは1以上4以下の整数であることが好ましい。aが5以上であると、疎水性が高くなり、濡れ性が悪化する恐れがある。aの値は、2以上4以下がさらに好ましい。
【0078】
Z成分を示す式(3)のR中、bは1以上20以下の整数であることが好ましい。bが21以上であると、Z成分の親水部分が表面に露出しにくくなり、濡れ性が不十分になる場合がある。bの値は、1以上10以下がさらに好ましい。
【0079】
前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下およびZ成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましい。これによると、ポリマーは濡れ性が良好で、かつ剥離性が軽くなる。ポリマー中のX成分、Y成分およびZ成分の配合量は、X成分100モルに対して、Y成分を10モル以上25モル以下、Z成分を5モル以上25モル以下とすることがさらに好ましい。
【0080】
Z成分の原料としては、下記式(9)で示されるモノマーを用いることができる。
【0081】
【化17】
【0082】
式(9)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=2以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
Z成分の原料として、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステルなどを用いることができる。
【0083】
<実施の形態3>
本発明の第2の発明における一実施の形態に係る離型層は、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下であり、加熱後剥離力が前記常態剥離力の2倍以下である。
【0084】
本明細書中、常態剥離力とは、以下の工程で測定したT字剥離強度の値である。離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)社製の「31B」)を貼り合わせ、線圧5kgf/mmの圧着ローラで圧着後、温度22℃、湿度60%の条件下で20時間放置する。粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に細断する。粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を担持し、離型フィルム側を300mm/minの速度で引っ張って剥離し、T字剥離強度を測定する。T字剥離強度の測定には、引っ張り試験機((株)島津製作所製の「AUTOGRAPHAG-X」)を用いる。
【0085】
本明細書中、加熱後剥離力とは、以下の工程で測定したT字剥離強度の値である。離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「31B」)を貼り合わせ、線圧5kgf/mmの圧着ローラーで圧着後、粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に裁断し、温度70℃のオーブンで20時間加熱する。その後、粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を把持し、離型フィルム側を300mm/minの速度で引っ張って剥離し、T字剥離強度を測定する。T字剥離強度の測定には、引っ張り試験機((株)島津製作所製の「AUTOGRAPHAG-X」)を用いる。
【0086】
前記離型剤は、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下であるため、軽い剥離性を有する。常態剥離力は、50mN/50mm以上300mN/50mm以下が好ましく、50mN/50mm以上250mN/50mm以下がさらに好ましい。
【0087】
前記離型層は、加熱後剥離力が常態剥離力の2倍以下であるため、加熱後も軽い剥離性を有する。加熱後剥離力は800mN/50mm以下が好ましい。また、加熱後剥離力は通常50mN/50mm以上であることが好ましい。加熱後剥離力は常態剥離力の1.7倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましく、1.3倍以下が更に好ましい。加熱後剥離力と常態剥離力の比は1倍に近いデータであることが特に好ましいが、1倍未満のデータとなることもある。下限は現在まで得られているところでは0.8倍程度である。
【0088】
前記離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下であることが好ましい。これによると、離型層は被離型体との濡れ性が良好である。表面自由エネルギーは、40mJ/m以上60mJ/m以下が好ましく、50mJ/m以上60mJ/m以下がさらに好ましい。
【0089】
本明細書中、表面自由エネルギーとは、接触角計(協和界面科学社製の「FACE接触角計CA-X」)を用いて、20℃、65%RHの条件下で、離型層表面に接する水とヨウ化メチレン(CH)の接触角θwとθyを測定し、これらの測定値から、Journal of Applied Polymer Science, vol.13, p1741-1747(1969)に記載された方法に従って、γsh(水素結合力成分項)とγsd(水素分散力成分項)を算出し、各成分の和を表面自由エネルギーγとして算出した値である。具体的には、表面エネルギーにおける水素結合力成分項γshと、ポリエステルフィルムの表面エネルギーにおける水素分散力成分項γsdは、離型層表面に対する水の接触角θw、およびヨウ化メチレン(CH)の接触角θから、
1+cosθ=[2×(γsd1/2×{(γwd1/2/γ}]+[2×(γsh1/2×{(γwh1/2/γ}]・・・式(A)
1+cosθ=[2×(γsd1/2×{(γyd1/2/γ}]+[2×(γsh1/2×{(γyh1/2/γ}]・・・式(B)
の2元連立方程式を解くことにより求められる。なお、上式のγ、γはそれぞれ水、及びヨウ化メチレン(CH)の表面張力であり、γwd、γydはそれぞれの表面張力における分散力成分項、γwh、γyhはそれぞれの表面張力における水素結合力成分項である。なお、γ=γwd+γwh、γ=γyd+γyhである。具体的には、水の表面張力より、γ=72.8mJ/m、γwd=21.8mJ/m、γwh=51.0mJ/m、ヨウ化メチレンの表面張力より、γ=50.8mJ/m、γyd=48.5mJ/m、γyh=2.3mJ/mを代入してγsd、γshを求める。
【0090】
本発明の一実施の形態に係る離型層において好ましくは、前記離型層は、下記式(4)で示されるX成分と、下記式(5)で示されるY成分と、下記式(6)で示されるZ成分とを含むポリマーが架橋してなる。
【0091】
【化18】
【0092】
式(4)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0093】
【化19】
【0094】
式(5)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0095】
【化20】
【0096】
式(6)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=5以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
X成分を示す式(4)中、Rは炭素数nが8以上20以下のアルキル基である。炭素数nが7以下であると、X成分が離型性を失い、粘着性を示すようになる。一方、炭素数nが21以上であると、X成分の柔軟性が損なわれ、離型層の被膜表面の濡れ性が不十分となる。炭素数nは10以上18以下が好ましく、12以上16以下がさらに好ましい。また、Rは直鎖状および分岐状のいずれでもよい。なお、Rが直鎖状であると、離型層の剥離性が軽くなる傾向があるため好ましい。
【0097】
X成分を示す式(4)中、RはHまたはCHであり、いずれも好適である。
X成分の原料としては、下記式(10)で示されるモノマーを用いることができる。
【0098】
【化21】
【0099】
式(10)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
X成分の原料として、具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0100】
Y成分を示す式(5)のR中、炭素数mは1以上10以下である。炭素数が11以上であると、架橋密度が疎となり、離型層自体の凝集力が弱まり、剥離力が重くなる。炭素数mは2以上8以下が好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。
【0101】
Y成分を示す式(5)中、Rは、HまたはCHであり、いずれも好適である。
Y成分の原料としては、下記式(11)で示されるモノマーを用いることができる。
【0102】
【化22】
【0103】
式(11)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す)を示す。
【0104】
Y成分の原料として、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0105】
Z成分を示す式(6)のR中、qは5以上30以下が好ましい。qが4以下であると、加熱後剥離力が重くなる。一方、qが31以上であると、離型性を示すX成分の長鎖アルキル基が空気界面に露出しにくくなり、重剥離化するおそれがある。qの値は、6以上25以下がさらに好ましい。
【0106】
Z成分を示す式(6)のR中、aは1以上4以下の整数であることが好ましい。aが5以上であると、疎水性が高くなり、濡れ性が悪化する恐れがある。aの値は、2以上4以下がさらに好ましい。
【0107】
Z成分を示す式(6)のR中、bは1以上20以下の整数であることが好ましい。bが21以上であると、Z成分の親水部分が表面に露出しにくくなり、濡れ性が不十分になる場合がある。bの値は、1以上10以下がさらに好ましい。
【0108】
Z成分の原料としては、下記式(12)で示されるモノマーを用いることができる。
【0109】
【化23】
【0110】
式(12)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=5以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
Z成分の原料として、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリブチレングリコールエステルなどを用いることができる。
【0111】
前記ポリマーは、重量平均分子量が5,000以上150,000以下であることが好ましい。本明細書中、重量平均分子量とは、GPCを用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した値である。ポリマーの重量平均分子量が5,000未満であると、ポリマー鎖同士の絡み合いが弱く、離型層を成型したときの膜の強度が弱くなるために、摩擦等による離型層の脱落が後加工の工程で問題となる場合がある。一方、ポリマーの重量平均分子量が150,000を超えると、ポリマーの粘度が高くなり、離型層を成型しにくくなる。ポリマーの重量平均分子量は、20,000以上120,000以下がさらに好ましい。
【0112】
前記ポリマーの水酸基価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリマーの水酸基価が1mgKOH/g未満であると、架橋剤による架橋可能な官能基が少なく、離型層が硬化しないという問題が起こる。ポリマーの水酸基価が50mgKOH/gを超えると、水酸基の水素結合により、離型性が損なわれる。ポリマーの水酸基価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0113】
前記ポリマーは、架橋剤によって架橋されることが好ましい。架橋剤としては、ポリイソシアネート、メラミン、エポキシ、アルミニウムキレート、チタンキレート、紫外線硬化型樹脂、またはこれらの2種類以上の混合物を用いることができる。中でも、ポリイソシアネートを用いることが、温和な条件で反応させることができるため好ましい。アルミニウムキレート、チタンキレートでの架橋は、用途によっては金属成分の含有を嫌う場合がある。ポリマー原料の総量に対する架橋剤の添加量は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
【0114】
前記ポリマーは、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下およびZ成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましい。これによると、ポリマーは濡れ性が良好で、かつ剥離性が軽くなる。ポリマー中のX成分、Y成分およびZ成分の配合量は、X成分100モルに対して、Y成分を10モル以上25モル以下、Z成分を5モル以上25モル以下とすることがさらに好ましい。
【0115】
<実施の形態4>
本発明の第1及び第2の発明における一態様に係る成形体は、基材と、前記基材の表面に配置された離型層とを備える。離型層としては、実施の形態1、実施の形態2、または実施の態様3に記載されたものを用いることができる。前記成形体の離型層上に被離型体を配置すると、被離型体を基材の形状に成形することができる。また、離型層と被離型体とは容易に剥離するため、被離型体の形状を所望の形状に維持することができる。離型層は、基材の表面の一面に配置されていてもよいし、両面に配置されていてもよい。
【0116】
基材としては、公知の基材を用いることができる。たとえば、基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリイミドなどによって形成された樹脂フィルムを用いることができる。
【0117】
基材の厚みは、10μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上50μm以下がさらに好ましい。基材の厚みが10μm未満の場合、基材生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形しやすいので好ましくない。一方、基材の厚みが100μmを超えると、使用後に廃棄する基材の量が増加し、環境負荷が増大するため、好ましくない。
【0118】
離型層の厚みは、0.01μm以上10μm以下が好ましく、0.05μm以上1μm以下がさらに好ましい。離型層の厚みが0.01μm未満の場合、離型層を均一に成形することが困難であり、剥離力が不安定となるおそれがある。一方、離型層の厚みが10μmを超えると、再生原料の使用比率が低くなり、経済的でないため好ましくない。
【0119】
基材と離型層の間には、接着性を向上させるための易接着コートが配置されていてもよい。また、基材の離型層を配置する面と反対の面には、易滑性や耐熱性を付与するためのコートが配置されていてもよい。
【0120】
基材の表面への離型層の形成方法は特に限定されない。たとえば、離型層の原料を含む離型剤を、たとえばトルエンなどの溶媒に溶解あるいは分散させて塗布液を得る。該塗布液を基材の表面に塗布する。続いて、塗布した塗布液から溶媒を乾燥除去した後、加熱及び紫外線照射し、原料を硬化反応させる方法等が好適である。原料の熱硬化および溶媒の乾燥除去の条件は、原料の種類、離型層の厚み、基材のサイズに応じて、速やかに反応するように、適時選択すればよい。
【0121】
成形体は、たとえば、半導体パッケージのモールド用離型シート、電子材料用テープや、セラミックシート、樹脂シート及び電極シート、回路基板等の製造用キャリアーシート等に用いることができる。
【0122】
<実施の形態5>
本発明の第1の発明における一実施の形態に係る離型剤は、下記式(1)で示されるX成分と、下記式(2)で示されるY成分とを含むポリマーと、架橋剤とを含む。
【0123】
【化24】
【0124】
式(1)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0125】
【化25】
【0126】
式(2)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0127】
X成分およびY成分は、実施の形態1に記載のX成分およびY成分と同様である。前記離型剤は、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましく、5モル以上25モル以下の範囲で含むことがさらに好ましい。離型剤は、X成分およびY成分に加えて、さらに実施の形態2に記載のZ成分を含んでいてもよい。この場合、前記離型剤は、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下およびZ成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましい。
【0128】
架橋剤は、実施の形態1に記載の架橋剤と同様である。前記架橋剤は、ポリマー原料の総量に対して、0.1質量%以上10質量%以下の範囲で含むことが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0129】
前記離型剤から離型層を形成するには、たとえば以下の工程を行う。離型剤を、トルエンなどの溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を、基材の表面に塗布する。離型剤の固形成分の量は、溶媒の0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。続いて、塗布した塗布液から溶媒を乾燥除去した後。加熱及び/または紫外線照射し、原料樹脂を架橋反応させることにより、基材上に離型層を形成することができる。
【0130】
<実施の形態6>
本発明の一実施の形態に係る離型剤は、下記式(4)で示されるX成分と、下記式(5)で示されるY成分と、下記式(6)で示されるZ成分を含むポリマーと、架橋剤とを含む。
【0131】
【化26】
【0132】
式(4)中、Rは(C2n+1)(n=8以上20以下の整数)、RはHまたはCHを示す。
【0133】
【化27】
【0134】
式(5)中、Rは(C2mOH)(m=1以上10以下の整数)またはH、RはHまたはCHを示す。
【0135】
【化28】
【0136】
式(6)中、Rは(C2aO)(a=1以上4以下の整数、q=5以上30以下の整数)、RはHまたはCH、Rは(C2b+1)(b=1以上20以下の整数)を示す。
【0137】
X成分、Y成分およびZ成分は、実施の形態3に記載のX成分、Y成分、Z成分と同様である。前記離型剤は、X成分100モルに対して、Y成分を1モル以上30モル以下およびZ成分を1モル以上30モル以下の範囲で含むことが好ましい。
【0138】
架橋剤は、実施の形態3に記載の架橋剤と同様である。前記離型剤は、ポリマー原料の総量に対して、0.5質量%以上10質量%以下の範囲で含むことが好ましく、1質量%以上3質量%以下の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0139】
前記離型剤から離型層を形成するには、たとえば以下の工程を行う。離型剤を、トルエンなどの溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を、基材の表面に塗布する。離型剤の固形成分の量は、溶媒の0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。続いて、塗布した塗布液から溶媒を乾燥除去した後。加熱及び/または紫外線照射し、原料樹脂を硬化反応させることにより、基材上に離型層を形成することができる。
【実施例0140】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0141】
<第1の発明:試料1~試料21、第2の発明:試料22~試料26>
(離型剤用ポリマーおよび離型層塗工液の準備)
表1(第1の発明)及び表2(第2の発明)の記載の配合比にしたがって、X成分原料(上記式(7)及び式(10)におけるRが直鎖状のものを使用)、Y成分原料、Z成分原料を混合し、固形分濃度が40重量%になるようにトルエンを加え、窒素気流下、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.5モル%加えて共重合させ、離型剤用ポリマーを得た。
【0142】
離型剤用ポリマーに溶剤(トルエン/MEK=50/50:質量比)を加え、固形分濃度を1.0質量%とした。そこに離型剤の固形分100重量部に対して表1及び表2に記載の配合量で、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製、コロネートL、濃度75重量%)を加え、さらに触媒として有機スズ(日東化成(株)社製、ネオスタン(登録商標)U-860)0.1重量部を添加して離型層塗工液を得た。
【0143】
(離型層の形成)
得られた離型層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、E5100)のコロナ処理面に、グラビアコーターを用いて塗布した後、140℃、1分間の条件にて乾燥を行い、厚さ0.1μmの離型層を形成した。
【0144】
<測定>
(重量平均分子量)
得られた離型剤用ポリマーの重量平均分子量を、GPCを用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。結果を表1または表2に示す。
【0145】
(水酸基価)
得られた離型剤用ポリマーの水酸基価を、JIS K0070-1992に準じて測定した。結果を表1または表2に示す。
【0146】
<評価>
(表面自由エネルギー)
接触角計(協和界面科学社製の「FACE接触角計CA-X」)を用いて、22℃、60%RHの条件下で、離型面に接する水とヨウ化メチレンの接触角θとθを測定し、これらの測定値から、Journal of Applied Polymer Science,vol.13,p1741-1747(1969)に記載された方法に従って、γsh(水素結合力成分項)とγsd(水素分散力成分項)を算出し、各成分の和を表面自由エネルギーγとして算出した。表面自由エネルギーが大きいほど、濡れ性が良好である。結果を表1または表2に示す。
【0147】
(常態剥離力)
離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)社製の「31B」)を貼り合わせ、線圧5kgf/mmの圧着ローラで圧着後、温度22℃、湿度60%の条件下で20時間放置した。粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に裁断した。粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を担持し、離型フィルム側を300mm/minの速度で引っ張り、T字剥離強度を測定した。測定には、引っ張り試験機((株)島津製作所製の「AUTOGRAPHAG-X」)を用いた。結果を表1または表2に示す。
【0148】
(加熱後剥離力)
離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「31B」)を貼り合わせ、線圧5kgf/mmの圧着ローラーで圧着後、粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に裁断し、温度70℃のオーブンで20時間加熱した。その後、粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を把持し、離型フィルム側を300mm/minの速度で引っ張って剥離し、T字剥離強度を測定した。T字剥離強度の測定には、引っ張り試験機((株)島津製作所製の「AUTOGRAPHAG-X」)を用いた。結果を表1または表2に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
<評価結果>
試料1~試料17の離型層は、表面自由エネルギーが30mJ/m以上60mJ/m以下であり、常態剥離力が50mN/50mm以上400mN/50mm以下の範囲であった。中でも、試料5~試料9は、ポリマーがZ成分を含み、濡れ性が良好であった。
【0151】
試料18~試料21の離型層は、常態剥離力が425mN/50mm以上であり、剥離力が過大であった。試料19の離型層は、表面自由エネルギーが21.8mJ/mであり、濡れ性が不十分であった。
【0152】
【表2】
【0153】
<評価結果>
試料22~試料25の離型層は、常態剥離力が156.0mN/50mm以上202.3mN/50mm以下、常態剥離力と加熱後剥離力との差が40.8mN/50mm以下であり、加熱前後の剥離力が軽かった。また、表面自由エネルギーが49.0mJ/m以上57.1mJ/m以下の範囲であり、濡れ性が良好であった。
【0154】
試料26の離型層は、常態剥離力が177.4mN/50mmであり、常態剥離力と加熱後剥離力との差が343.7mN/50mmであり、加熱後の剥離力が重かった。
【0155】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の離型層は、シリコーン離型剤を用いることが困難な電子部品製造工程等の用途で好適に用いることができる。