(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096901
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク、導電膜付き基板、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240709BHJP
G03F 1/26 20120101ALI20240709BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20240709BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240709BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/26
G03F1/58
G03F7/20 521
C23C14/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066024
(22)【出願日】2024-04-16
(62)【分割の表示】P 2020022459の分割
【原出願日】2020-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中川 真徳
(57)【要約】
【課題】薄い金属膜の膜質が経時的に変化することを抑制することのできる反射型マスクブランク、反射型マスク、導電膜付き基板、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 反射型マスクブランク100は、基板10と、基板10上の多層反射膜12と、多層反射膜12上の積層膜16とを備える。積層膜16は、最上層20と、それ以外の下層18とを含む。最上層20の膜厚は、0.5nm以上5nm未満である。最上層20は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含む。最上層の金属元素の合計含有量は、95原子%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上の多層反射膜と、該多層反射膜上の積層膜とを備える反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、最上層と、それ以外の下層とを含み、
前記最上層の膜厚は、0.5nm以上5nm未満であり、
前記最上層は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含み、
前記最上層の金属元素の合計含有量は、95原子%以上であることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記最上層に含まれる金属元素は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及び金(Au)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記最上層は、アモルファス構造及び微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記積層膜は、前記基板側から第1の層と第2の層とを含む吸収体膜からなり、
前記第2の層は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属元素を含み、
前記最上層は、前記第2の層の表層を形成する層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記最上層に接して設けられたエッチングマスク膜を備え、
前記エッチングマスク膜は、ケイ素(Si)を含む材料からなり、
前記最上層の金属元素は、ルテニウム(Ru)であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記最上層に接して設けられたエッチングマスク膜を備え、
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料からなり、
前記最上層の金属元素は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及びパラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)から選ばれる少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
請求項4乃至7の何れか1項に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項9】
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項8に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板と、該基板上の裏面導電膜とを備える導電膜付き基板であって、
前記裏面導電膜は、最上層と、それ以外の下層とを含み、
前記最上層の膜厚は、0.5nm以上5nm未満であり、
前記最上層は、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)及び亜鉛(Zn)から選ばれる少なくとも1つの金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含み、
前記最上層の金属元素の合計含有量は、95原子%以上であることを特徴とする導電膜付き基板。
【請求項11】
前記最上層に含まれる金属元素は、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)及びロジウム(Rh)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項10に記載の導電膜付き基板。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の導電膜付き基板における前記裏面導電膜が形成された主表面に対向する主表面上に多層反射膜及び吸収体膜を有することを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項13】
請求項12に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項14】
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項13に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランク、反射型マスク及び導電膜付き基板に関する。また、本発明は、反射型マスクを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写用パターンの構成から、代表的なものとして、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンからなるバイナリー型反射マスクと、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180°の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターンからなる位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。この位相シフト型反射マスクは、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから、精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【0003】
このようなEUVリソグラフィ用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1~3に開示されている。
【0004】
特許文献1には、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に少なくとも形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが記載されている。具体的には、特許文献1の反射型マスクブランクは、前記吸収体層が、タンタル(Ta)、窒素(N)及び水素(H)を含有し、前記吸収体層における、Ta及びNの合計含有率が50~99.9at%であり、Hの含有率が0.1~50at%であることが記載されている。特許文献1には、特許文献1の反射型マスクブランクは、吸収体層の膜の結晶状態がアモルファスになり、かつ応力及び表面粗さも低減されることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが記載されている。具体的には、特許文献2の反射型マスクブランクは、前記吸収体層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、窒素(N)及び水素(H)を少なくとも含有し、前記吸収体層において、Bの含有率が1at%以上5at%未満であり、Hの含有率が0.1~5at%であり、Ta及びNの合計含有率が90~98.9at%であり、TaとNとの組成比(Ta:N)が8:1~1:1であることが記載されている。その結果、特許文献2の反射型マスクブランクでは、吸収体層の膜の結晶状態がアモルファスになり、かつ応力及び表面粗さも低減されることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、マスク加工時に部分的にエッチングされるパターン膜と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが記載されている。具体的には、特許文献3には、前記パターン膜が、EUV光を吸収する吸収体膜と、前記吸収体膜上に形成される表面反射増強膜とで構成されており、波長13.53nmにおける、前記吸収体膜の屈折率をnABS、吸収係数をkABSとし、前記表面反射増強膜の屈折率をn、吸収係数をkとしたとき、((n-1)2+k2)1/2 > ((nABS-1)2+kABS
2)1/2 +0.03で示される条件を満たすことを特徴とする反射型マスクブランクが記載されている。特許文献3の反射型マスクブランクによれば、吸収体膜上に形成される表面反射増強膜により、パターン膜表面で反射されるEUV光の振幅が大きくなり、多層反射膜で反射されるEUV光との干渉効果が大きくなる。この干渉効果を利用することにより、反射率が2%以下になるようなパターン膜厚を従来よりも薄くできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/116348号
【特許文献2】国際公開第2010/050518号
【特許文献3】特開2018-180544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の反射型マスクブランクは、吸収体膜(パターン膜)の最上層に表面反射増強膜を備えている。表面反射増強膜の構成材料としては、Ag、Pt、Pd、Au、Ru、Niを用いることが記載されている。このように、吸収体膜の最上層が薄い金属膜の場合、成膜条件によっては、金属膜の膜質が経時的に変化しやすいことがわかった。特に、酸化還元電位の観点からは比較的安定であると思われていた金属の膜であっても、膜厚が薄い場合には、金属膜の膜質が経時的に変化しやすいことがわかった。金属膜の膜質が経時的に変化すると、特に膜厚が薄い場合には、反射率等の光学特性の設計値からのずれが大きくなるという問題を生じる。
【0009】
また、吸収体膜の最上層の上にエッチングマスク膜を積層した場合に、最上層とエッチングマスク膜との材料の組み合わせによっては、その界面に拡散層が形成されることがあり、上記同様に光学特性の設計値からのずれが大きくなるという問題を生じる。
【0010】
そこで、本発明は、薄い金属膜の膜質が経時的に変化することを抑制することのできる反射型マスクブランク、反射型マスク、導電膜付き基板、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板と、該基板上の多層反射膜と、該多層反射膜上の積層膜とを備える反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、最上層と、それ以外の下層とを含み、
前記最上層の膜厚は、0.5nm以上5nm未満であり、
前記最上層は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含み、
前記最上層の金属元素の合計含有量は、95原子%以上であることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0012】
(構成2)
前記最上層に含まれる金属元素は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及び金(Au)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0013】
(構成3)
前記最上層は、アモルファス構造及び微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【0014】
(構成4)
前記積層膜は、前記基板側から第1の層と第2の層とを含む吸収体膜からなり、
前記第2の層は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属元素を含み、
前記最上層は、前記第2の層の表層を形成する層であることを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【0015】
(構成5)
前記最上層に接して設けられたエッチングマスク膜を備え、
前記エッチングマスク膜は、ケイ素(Si)を含む材料からなり、
前記最上層の金属元素は、ルテニウム(Ru)であることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【0016】
(構成6)
前記最上層に接して設けられたエッチングマスク膜を備え、
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料からなり、
前記最上層の金属元素は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及びパラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【0017】
(構成7)
前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)から選ばれる少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする構成4乃至6の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【0018】
(構成8)
構成4乃至7の何れかに記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【0019】
(構成9)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成8に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0020】
(構成10)
基板と、該基板上の裏面導電膜とを備える導電膜付き基板であって、
前記裏面導電膜は、最上層と、それ以外の下層とを含み、
前記最上層の膜厚は、0.5nm以上5nm未満であり、
前記最上層は、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)及び亜鉛(Zn)から選ばれる少なくとも1つの金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含み、
前記最上層の金属元素の合計含有量は、95原子%以上であることを特徴とする導電膜付き基板。
【0021】
(構成11)
前記最上層に含まれる金属元素は、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)及びロジウム(Rh)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする構成10に記載の導電膜付き基板。
【0022】
(構成12)
構成10又は11に記載の導電膜付き基板における前記裏面導電膜が形成された主表面に対向する主表面上に多層反射膜及び吸収体膜を有することを特徴とする反射型マスクブランク。
【0023】
(構成13)
構成12に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【0024】
(構成14)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成13に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、薄い金属膜の膜質が経時的に変化することを抑制することのできる反射型マスクブランク、反射型マスク、導電膜付き基板、及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】別の実施形態の反射型マスクブランクの断面模式図である。
【
図3】別の実施形態の反射型マスクブランクの断面模式図である。
【
図5】反射型マスクの製造方法を示す模式図である。
【
図7】下層及び最上層を、各々TaBN膜及びRu膜、TaBN膜及びPt膜、CrN膜及びPt膜とし、最上層の膜厚を3nmに固定した場合の、吸収体膜の膜厚に対するEUV光反射率のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0028】
図1は、本実施形態の反射型マスクブランク100の要部の断面模式図である。
図1に示すように、反射型マスクブランク100は、基板10と、基板10の上に形成された多層反射膜12と、多層反射膜12の上に形成された積層膜16とを含む。積層膜16は、下層18と、下層18の上に接するように形成された最上層20とを含む。多層反射膜12と積層膜16との間には、保護膜14を含んでもよい。
【0029】
なお、本明細書において、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上面に接触する場合だけでなく、その基板や膜の上面に接触しない場合も含む。すなわち、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上方に新たな膜が形成される場合や、その基板や膜との間に他の膜が介在している場合等を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するものではない。「上に」とは、基板や膜などの相対的な位置関係を示しているに過ぎない。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの上に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
【0030】
<基板>
基板10は、EUV光による露光時の熱による転写パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0031】
基板10の転写パターン(後述の吸収体膜パターン)が形成される側の主表面は、平坦度を高めるために加工されることが好ましい。基板10の主表面の平坦度を高めることによって、パターンの位置精度や転写精度を高めることができる。例えば、EUV露光の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面(裏面)は、露光装置に静電チャックによって固定される面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0032】
EUV露光の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.1nm以下であることが好ましい。なお表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0033】
基板10は、その上に形成される膜(多層反射膜12など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0034】
<多層反射膜>
多層反射膜12は、屈折率の異なる元素を主成分とする複数の層が周期的に積層された構成を有している。一般的に、多層反射膜12は、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40~60周期程度積層された多層膜からなる。
多層反射膜12を形成するために、基板10側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、1つの(高屈折率層/低屈折率層)の積層構造が、1周期となる。
【0035】
なお、多層反射膜12の最上層、すなわち多層反射膜12の基板10と反対側の表面層は、高屈折率層であることが好ましい。基板10側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が低屈折率層となる。しかし、低屈折率層が多層反射膜12の表面である場合、低屈折率層が容易に酸化されることで多層反射膜の表面の反射率が減少してしまうので、その低屈折率層の上に高屈折率層を形成することが好ましい。一方、基板10側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。その場合は、最上層の高屈折率層が、多層反射膜12の表面となる。
【0036】
本実施形態において、高屈折率層は、Siを含む層であってもよい。高屈折率層は、Si単体を含んでもよく、Si化合物を含んでもよい。Si化合物は、Siと、B、C、N、O及びHからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れた多層反射膜が得られる。
【0037】
本実施形態において、低屈折率層は、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む層、あるいは、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金を含む層であってもよい。
【0038】
例えば、波長13~14nmのEUV光のための多層反射膜12としては、好ましくは、Mo膜とSi膜を交互に40~60周期程度積層したMo/Si多層膜を用いることができる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、例えば、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などを用いることができる。露光波長を考慮して、多層反射膜の材料を選択することができる。
【0039】
このような多層反射膜12の単独での反射率は、例えば65%以上である。多層反射膜12の反射率の上限は、例えば73%である。なお、多層反射膜12に含まれる層の厚み及び周期は、ブラッグの法則を満たすように選択することができる。
【0040】
多層反射膜12は、公知の方法によって形成できる。多層反射膜12は、例えば、イオンビームスパッタ法により形成できる。
【0041】
例えば、多層反射膜12がMo/Si多層膜である場合、イオンビームスパッタ法により、Moターゲットを用いて、厚さ3nm程度のMo膜を基板10の上に形成する。次に、Siターゲットを用いて、厚さ4nm程度のSi膜を形成する。このような操作を繰り返すことによって、Mo/Si膜が40~60周期積層した多層反射膜12を形成することができる。このとき、多層反射膜12の基板10と反対側の表面層は、Siを含む層(Si膜)である。1周期のMo/Si膜の厚みは、7nmとなる。
【0042】
<保護膜>
後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜12を保護するために、多層反射膜12の上に、又は多層反射膜12の表面に接するように保護膜14を形成することができる。また、保護膜14は、電子線(EB)を用いた転写パターンの黒欠陥修正の際に、多層反射膜12を保護する機能も有している。ここで、
図1では、保護膜14が1層の場合を示しているが、保護膜14が2層以上の積層構造を有してもよい。保護膜14は、下層18をパターニングする際に使用するエッチャントや洗浄液に対して耐性を有する材料で形成されることが好ましい。多層反射膜12の上に保護膜14が形成されることにより、反射型マスク200を製造する際の多層反射膜12の表面へのダメージを抑制することができる。その結果、多層反射膜12のEUV光に対する反射率特性が良好となる。
【0043】
本実施形態の反射型マスクブランク100では、保護膜14の材料として、保護膜14の上に形成される下層18をパターニングするためのドライエッチングに用いられるエッチングガスに対して、耐性のある材料を使用することができる。下層18が複数の層で形成される場合には、下層18に接する保護膜14(保護膜14が複数層含む場合には、保護膜14の最上層)の材料として、下層18を形成する層のうち、下層18の最下層(保護膜14に接する層)をパターニングするためのドライエッチングに用いられるエッチングガスに対して、耐性のある材料を使用することができる。保護膜14の材料は、保護膜14に対する下層18の最下層のエッチング選択比(下層18の最下層のエッチング速度/保護膜14のエッチング速度)が1.5以上、好ましくは3以上となる材料であることが好ましい。
【0044】
例えば、保護膜14の表面に接する下層18の最下層が、タンタル(Ta)を含む材料からなる薄膜である場合には、酸素ガスを含まないハロゲン系ガスを用いたドライエッチングにより、下層18の最下層をエッチングすることができる。このエッチングガスに対して耐性を有する保護膜14の材料として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を使用することができる。
【0045】
また、保護膜14の表面に接する下層18の最下層が、クロム(Cr)を含む材料からなる薄膜である場合には、酸素ガスと塩素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、下層18の最下層をエッチングすることができる。このエッチングガスに対して耐性を有する保護膜14の材料として、ルテニウム(Ru)を主成分とし、酸素ガスに対するエッチング耐性を有する元素(Zr、Y、Rh等)を添加した材料を使用することができる。
【0046】
下層18の最下層が、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)から選ばれる少なくとも1つを含む材料の場合に用いることのできる保護膜14の材料は、上述のように、ルテニウムを主成分として含む材料である。ルテニウムを主成分として含む材料の例として、具体的には、Ru金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、レニウム(Re)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも1種の金属を含有するRu合金、及び、これらの金属または合金に窒素を含有する材料を挙げることができる。
【0047】
また、下層18の最下層が、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)から選ばれる少なくとも1つを含む材料で形成される場合、保護膜14の最下層と最上層は、上記のルテニウムを主成分として含む材料で形成することができる。最下層と最上層との間の層は、Ru以外の金属若しくはそれを含む合金で形成することができる。
【0048】
Ru合金のRu含有比率は、50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合は、多層反射膜12を構成する元素(ケイ素)の、保護膜14への拡散を抑制することができる。また、EUV光の反射率を十分確保しつつ、マスクの洗浄耐性を向上させることができる。さらに、保護膜14は、下層18をエッチング加工する時に、エッチングストッパとして機能することができる。また、保護膜14は、多層反射膜12の経時変化を防止することができる。
【0049】
保護膜14の厚みは、保護膜14が多層反射膜12を保護する機能を果たすことができる限り、特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜14の厚みは、好ましくは、1.0nm~8.0nm、より好ましくは、1.5nm~6.0nmである。
【0050】
保護膜14の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。保護膜14の形成方法の例として、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0051】
反射型マスクブランク100は、さらに、基板10の多層反射膜12が形成されている側とは反対側の主表面上に、裏面導電膜22を有してもよい。裏面導電膜22は、静電チャックによって反射型マスクブランク100を吸着する際に使用される。
【0052】
反射型マスクブランク100は、基板10と多層反射膜12との間に形成された下地膜を備えてもよい。下地膜は、例えば、基板10の表面の平滑性向上の目的で形成される。下地膜は、例えば、欠陥低減、多層反射膜の反射率向上、多層反射膜の応力補正等の目的で形成される。
【0053】
<積層膜>
本実施形態の反射型マスクブランク100は、多層反射膜12(あるいは保護膜14付きの多層反射膜12)の上に形成された積層膜16を有している。積層膜16は、最上層20と、それ以外の層である下層18とを備えている。下層18は、多層反射膜12(あるいは保護膜14付きの多層反射膜12)の上に接するように形成されている。最上層20は、下層18の上に接するように形成されている。
【0054】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、積層膜16は、EUV光を吸収するための吸収体膜17からなる。この場合、吸収体膜17は、下層18としての吸収層と、最上層20とを含む。吸収層(下層18)は、EUV光を吸収するための層である。最上層20は、吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくするための層である。吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくすることによって、多層反射膜12で反射されるEUV光との干渉効果が大きくなる。この干渉効果を利用することにより、反射率が所定値以下(例えば2.5%以下)になるような吸収体膜17の膜厚を、従来よりも薄くすることができる。
【0055】
下層18が吸収層である場合、下層18の材料としては、例えば、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つを含む材料を用いることができる。
【0056】
タンタル(Ta)を含む材料の例として、タンタル(Ta)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、タンタル(Ta)に、窒素(N)を含有する材料が好ましい。このような材料の具体例としては、窒化タンタル(TaN)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化窒化タンタル(TaBN)、及びホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)等が挙げられる。
【0057】
クロム(Cr)を含む材料の例として、クロム(Cr)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、クロム(Cr)に、窒素(N)及び/又は炭素(C)を含有する材料が好ましい。このような材料の具体例としては、窒化クロム(CrN)、酸化窒化クロム(CrON)、炭化クロム(CrC)、酸化炭化クロム(CrOC)、炭化窒化クロム(CrCN)、及び酸化炭化窒化クロム(CrOCN)等が挙げられる。
【0058】
上述の材料からなる下層18(吸収層)は、DCスパッタリング法及びRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法で形成することができる。例えば、下層18(吸収層)は、タンタル及びホウ素を含むターゲットを用い、窒素ガスを添加したアルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス及び/又はキセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いた反応性スパッタリング法により、成膜することができる。
【0059】
また、下層18の材料としては、EUV光を吸収する機能を有し、最上層20に対してエッチング選択性を有し、かつ保護膜14に対してエッチング選択性を有する材料である限り、特に限定されない。そのような材料として、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、銅(Cu)、テルル(Te)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)及びロジウム(Rh)から選ばれる少なくとも1つの金属、又はこれらの化合物を好ましく用いることができる。
【0060】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、最上層20の膜厚は、0.5nm以上5nm未満であり、好ましくは0.5nm以上4nm以下である。
【0061】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、最上層20は、金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含む。
【0062】
最上層20に含まれる金属元素は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つである。
【0063】
最上層20の金属元素の合計含有量は、95原子%以上であり、97原子%以上が好ましく、100原子%未満である。なお、最上層20に含まれる金属元素が1つの場合には、上記合計含有量は金属単体の含有量である。また、最上層20に含まれる金属元素が複数の場合には、上記合計含有量は、複数の金属元素の合計含有量である。
【0064】
最上層20の上記添加元素の合計含有量は、0.1原子%以上であり、0.3原子%以上が好ましい。添加元素の合計含有量は、5原子%以下であり、3原子%以下がより好ましい。
【0065】
下層18(吸収層)の屈折率をn1、最上層20の屈折率をn2としたとき、下層18(吸収層)及び最上層20は、n1>n2の関係を満たす材料からなることが好ましい。n1>n2の関係を満たすことによって、吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくすることができる。その結果、反射率が例えば2.5%以下になるような吸収体膜17の膜厚を、従来よりも薄くすることができる。吸収体膜17の膜厚は、55nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましい。
【0066】
下層18及び最上層20を、各々TaBN膜及びRu膜、TaBN膜及びPt膜、CrN膜及びPt膜とし、最上層20の膜厚を3nmに固定した場合の、吸収体膜17の膜厚に対するEUV光反射率のシミュレーション結果を
図7に示す。また、参考として、吸収体膜17をTaBN膜単層とした場合のシミュレーション結果も示す。
図7からわかるように、下層18の上に最上層20を設けた場合には、最上層20を設けない場合と比較して、吸収体膜17の膜厚を薄くすることが可能である。
【0067】
下層18(吸収層)の屈折率n1は、0.92以上1.0以下であることが好ましい。最上層20の屈折率n2は、0.87以上0.95以下であることが好ましい。
【0068】
上述したように、最上層20は、膜厚が0.5nm以上5nm未満であり、薄い金属膜となっている。このように、吸収体膜17の最上層20が薄い金属膜の場合、成膜条件によっては、金属膜の膜質が経時的に変化しやすいことがわかった。金属膜の膜質が経時的に変化すると、特に膜厚が薄い場合には、反射率等の光学特性の設計値からのずれが大きくなるという問題を生じる。
【0069】
このような問題を解決するため、本実施形態の反射型マスクブランク100では、最上層20が、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素を含んでいる。最上層20が上記添加元素を含むことによって、最上層20の膜質が経時的に変化することを抑制することが可能となる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、最上層20を構成する薄い金属膜が上記添加元素によって微結晶構造又はアモルファス構造を有し、結晶粒界への酸素等の侵入が抑制されるからではないかと考えられる。水素(H)と同じ添加量で結晶性を低減することが可能なため、最上層20に含まれる上記添加元素は、重水素(D)であることがより好ましい。
【0070】
また、最上層20に含まれる上記添加元素の含有量(原子%)は、下層18(吸収層)に含まれる上記添加元素の含有量(原子%)よりも高いことが好ましい。最上層20に含まれる上記添加元素の含有量が下層18よりも高いことによって、最上層20の膜質が経時的に変化することをより効果的に抑制することが可能となる。
【0071】
最上層20に含まれる金属元素は、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及び金(Au)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの金属元素は、酸化還元電位(標準電極電位)が+0.4V以上であり、比較的安定であると考えられていた。また、最上層20に含まれる金属元素は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及び金(Au)から選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。これらの金属元素は、酸化還元電位(標準電極電位)が+0.9V以上であり、より安定であると考えられていた。しかし、これらの金属元素を含む金属膜であっても、金属膜の膜厚が薄い(膜厚が0.5nm以上5nm)場合には、金属膜の膜質が経時的に変化しやすいことが明らかとなった。つまり、比較的安定であると考えられてきたこれらの金属からなる膜であっても、金属膜の膜厚が薄い場合には、金属膜の膜質が経時的に変化することを抑制する必要性が高いことが明らかとなった。このような理由から、最上層20にこれらの金属元素が含まれる場合、上記添加元素によって膜質が変化することを抑制する効果がより顕著に発揮される。
【0072】
最上層20は、DCスパッタリング法及びRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法で形成することができる。最上層20に含まれる金属元素を材料とする金属ターゲットを用い、希ガス(Arガス、Krガス及び/又はXeガス)と、水素ガス及び/又は重水素ガスとを用いた反応性スパッタリング法により、最上層20に上記添加元素を添加することができる。
【0073】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、積層膜16(吸収体膜17)の上に、レジスト膜26が形成されてもよい。
図1にはこの態様が示されている。レジスト膜26に電子線描画装置によってパターンを描画及び露光した後、現像工程を経ることによって、レジストパターンを形成することができる。このレジストパターンをマスクとして積層膜16(吸収体膜17)にドライエッチングを行うことによって、積層膜16にパターン(吸収体パターン)を形成することができる。レジスト膜26の材料としては、例えば、化学増幅型レジスト(CAR:chemically-amplified resist)を用いることができる。
【0074】
別の実施形態の反射型マスクブランク100として、積層膜16は、EUV光を吸収するための吸収体膜17からなる。この場合、
図2に示すように、吸収体膜17は、基板10側から第1の層62と第2の層64とを含む。最上層20は、第1の層62とは反対側の第2の層64の表層を形成する層であり、膜厚は0.5nm以上5nm未満である。第1の層62は、EUV光を吸収するための層である。最上層20を含む第2の層64は、EUV光を吸収すると共に、吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくするための層である。吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくすることによって、多層反射膜12で反射されるEUV光との干渉効果が大きくなる。この干渉効果を利用することにより、反射率が所定値以下(例えば2.5%以下)になるような吸収体膜17の膜厚を、上述の実施形態と同様に薄くすることができる。
【0075】
第1の層62の材料としては、上述した吸収層(下層18)の材料と同じ材料を用いることができる。
【0076】
第2の層64及び最上層20の材料としては、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの金属、又はこれら金属に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及びホウ素(B)から選ばれる少なくとも1つを含む化合物を用いることができる。
【0077】
第2の層64及び最上層20に含まれる金属元素の合計含有量は、95原子%以上であり、97原子%以上が好ましく、100原子%未満である。なお、第2の層64及び最上層20に含まれる金属元素が1つの場合には、上記合計含有量は金属単体の含有量である。また、第2の層64に含まれる金属元素が複数の場合には、上記合計含有量は、複数の金属元素の合計含有量である。
【0078】
最上層20の添加元素及び膜厚は、上述の実施形態と同様である。第2の層64の膜厚方向全体に水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素を含んでもよい。また、第2の層64の添加元素の含有量は、最上層20から第1の層62の方向に向かって少なくなってもよい。
【0079】
第1の層62の膜厚は、20nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、また、60nm以下が好ましく、55nm以下がより好ましい。第2の層64の膜厚は、1nm以上が好ましく、また、1.5nm以上がより好ましく、25nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
【0080】
第1の層62の屈折率をn1、第2の層64の屈折率をn2としたとき、第1の層62及び第2の層64は、n1>n2の関係を満たす材料からなることが好ましい。n1>n2の関係を満たすことによって、吸収体膜17の表面で反射されるEUV光の振幅を大きくすることができる。その結果、反射率が例えば2.5%以下になるような吸収体膜17の膜厚を、上述の実施形態と同様に薄くすることができる。
【0081】
第1の層62の屈折率n1は、0.92以上1.0以下であることが好ましい。第2の層64の屈折率n2は、0.87以上0.95以下であることが好ましい。
【0082】
さらに別の実施形態の反射型マスクブランク100として、吸収体膜に位相シフト機能を持たせた位相シフト膜としてもよい。
位相シフト膜(位相シフトパターン)が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。一方、開口部(位相シフト膜がない部分)では、EUV光が、保護膜14を介して多層反射膜12から反射する。位相シフト膜が形成されている部分からの反射光は、開口部からの反射光と所望の位相差を形成する。位相シフト膜は、位相シフト膜からの反射光と、多層反射膜12からの反射光との位相差が、160°から200°となるように形成される。180°近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、及び焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターンや露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を得るための位相シフト膜の反射率の目安は、相対反射率で2%以上である。十分な位相シフト効果を得るためには、位相シフト膜の反射率は、相対反射率で6%以上が好ましい。ここで、位相シフト膜(位相シフトパターン)の相対反射率とは、位相シフトパターンのない部分での多層反射膜12(保護膜14付きの多層反射膜12を含む)から反射されるEUV光を反射率100%としたときの、位相シフトパターンから反射されるEUV光の反射率である。なお、本明細書では、相対反射率のことを、単に「反射率」という場合がある。
【0083】
解像性の更なる向上及び半導体装置を製造する際のスループットを向上させるために、位相シフトパターンの相対反射率は、6%~35%、より好ましくは15%~35%であることが求められている。
【0084】
第1の層62の材料としては、上述した吸収層(下層18)の材料と同じ材料を用いることができる。
【0085】
第2の層64及び最上層20の材料としては、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)から選ばれる少なくとも1つの金属、又はこれら金属に窒素(N)、酸素(O)及び炭素(C)から選ばれる少なくとも1つと、を含むRu系化合物を用いることができる。
【0086】
また、第2の層64及び最上層20の材料としては、ルテニウム(Ru)と、窒素(N)、酸素(O)及び炭素(C)から選ばれる少なくとも1つとを含むRu系化合物を用いることができる。
【0087】
第2の層64及び最上層20に含まれる金属元素の合計含有量は、上記と同様である。また、最上層20の添加元素及び膜厚は、上記と同様である。
【0088】
第1の層62の屈折率をn3、第2の層64の屈折率をn4としたとき、第1の層62及び第2の層64は、n3>n4の関係を満たす材料からなることが好ましい。また、第1の層62の消衰係数をk3、第2の層64の消衰係数をk4としたとき、第1の層62及び第2の層64は、k3>k4の関係を満たす材料からなることが好ましい。
第1の層62の屈折率n3は、0.93~0.96であり、消衰係数k3は、0.02~0.04であることが好ましい。第2の層64の屈折率n4は、0.86~0.95であり、消衰係数k4は、0.008~0.035であることが好ましい。
【0089】
第2の層64における最上層20が上記添加元素を含むことによって、最上層20の膜質が経時的に変化することを抑制することが可能となる。これにより、吸収体膜又は位相シフト膜の反射率及び位相差等の光学特性の設計値からのずれを抑制することができる。
【0090】
<エッチングマスク膜>
積層膜16は、吸収体膜17(位相シフト膜)の上に形成されたエッチングマスク膜を更に含むことができる。エッチングマスク膜の上には、更に、レジスト膜が形成されてもよい。この場合、最上層20は、エッチングマスク膜であるか、又はエッチングマスク膜の表層を形成する層である。積層膜16にエッチングマスク膜が含まれる場合、その最上層20は、例えば欠陥検査装置を用いた検査においてコントラストが向上するように、0.5~5nm未満の膜厚の金属膜とすることができる。この場合、積層膜16の最上層20は、上述した吸収体膜17の最上層20と同様に、上述の金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含むことができる。積層膜16の最上層20が上記添加元素を含む薄い金属膜で形成されることによって、最上層20が微結晶構造又はアモルファス構造を有することとなる。これにより、欠陥検査装置によってエッチングマスク膜の表面を検査した際に、エッチングマスク膜の表面の欠陥をより高い精度で検出することが可能となる。
【0091】
図3に、別の実施形態の反射型マスクブランク100を示す。
図3に示すように、積層膜16(吸収体膜17)の最上層20に接してエッチングマスク膜24を形成してもよい。エッチングマスク膜24の上には、更に、レジスト膜26が形成されてもよい。
【0092】
吸収体膜17(特に最上層20)をフッ素系ガスでエッチングする場合には、エッチングマスク膜24の材料として、クロム(Cr)を含む材料を使用することができる。エッチングマスク膜24がクロム(Cr)を含む材料で形成されることによって、エッチングマスク膜24に対する最上層20のエッチング選択比を高くすることができる。クロムを含む材料の例として、クロム(Cr)と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及びホウ素(B)から選ばれる少なくとも一つを含む材料が挙げられる。このような材料の例として、CrN、CrC、CrO、CrON、CrOC、CrCN、CrCON、CrBN、CrBC、CrBO、CrBC、CrBON、CrBCN及びCrBOCNが挙げられる。エッチングマスク膜24がクロムを含む材料で形成される場合、クロム(Cr)の含有量は、50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。
【0093】
吸収体膜17(特に最上層20)を酸素を含む塩素系ガスでエッチングする場合には、エッチングマスク膜24の材料として、ケイ素(Si)を含む材料を使用することができる。エッチングマスク膜24がケイ素(Si)を含む材料で形成されることによって、エッチングマスク膜24に対する最上層20のエッチング選択比を高くすることができる。ケイ素(Si)を含む材料の例として、ケイ素(Si)と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及び水素(H)から選ばれる少なくとも一つを含む材料が挙げられる。また、ケイ素(Si)を含む材料の例として、ケイ素(Si)と金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)、又は、金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などが挙げられる。金属ケイ素化合物の例としては、金属及びSiと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つを含む材料が挙げられる。
【0094】
エッチングマスク膜24を形成した場合には、レジスト膜26の膜厚を薄くすることが可能となるため、吸収体膜17(特に最上層20)により微細なパターンを形成することが可能となる。エッチングマスク膜24の膜厚は、3nm以上であることが好ましい。エッチングマスク膜24の膜厚が3nm以上であることにより、微細なパターンを精度よく最上層20に形成することが可能となる。また、エッチングマスク膜24の膜厚は、レジスト膜26の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
【0095】
エッチングマスク膜24を形成した場合には、エッチングマスク膜24と最上層20の界面に拡散層が形成されることがある。この拡散層は、一方の層に含まれる元素が、他方の層に拡散することで形成される層である。このような拡散層が形成された場合、エッチングマスク膜24を除去して吸収体パターンを形成したときに、吸収体パターンの光学特性(反射率等)の設計値からのずれが大きくなるという問題を生ずる。そのため、拡散層の形成はできるだけ抑制することが好ましい。
【0096】
本実施形態の反射型マスクブランク100によれば、最上層20には、金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素が含まれる。これにより、最上層20を構成する薄い金属膜が上記添加元素によって微結晶構造又はアモルファス構造を有し、最上層20に含まれる元素が、エッチングマスク膜24に拡散することを防止することが可能となる。あるいは、エッチングマスク膜24に含まれる元素が、最上層20に拡散することを防止することが可能となる。その結果、エッチングマスク膜24と最上層20の界面に拡散層が形成されることを防止することが可能となる。
【0097】
最上層20に含まれる金属元素がルテニウム(Ru)である場合には、最上層20を酸素を含む塩素系ガスでエッチングすることが可能である。したがって、この場合には、エッチングマスク膜24の材料として、上述したケイ素(Si)を含む材料を使用することができる。この場合、RuSiを含む拡散層が形成されるのを防止することができる。
【0098】
最上層20に含まれる金属元素が白金(Pt)、ルテニウム(Ru)及びパラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つである場合には、最上層20をフッ素系ガスでエッチングすることが可能である。したがって、この場合には、エッチングマスク膜24の材料として、上述したクロム(Cr)を含む材料を使用することができる。この場合、PtCr、RuCr又はPdCrを含む拡散層が形成されるのを防止することができる。
【0099】
フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。また、これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
【0100】
<裏面導電膜>
上述したように、基板10の多層反射膜12が形成されている側とは反対側の主表面上には、裏面導電膜22が形成されている。裏面導電膜22は、静電チャックによって反射型マスクブランク100を吸着する際に使用される。
【0101】
静電チャック用の裏面導電膜22に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□(Ω/Square)以下である。裏面導電膜22は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により形成することができる。
【0102】
裏面導電膜22は、例えば、532nm又は470nmの波長の光に対する透過率が20%以上である材料を用いて形成することができる。これにより、反射型マスクの位置ずれを、レーザビーム等により裏面から補正することが可能となる。
【0103】
透過率の高い裏面導電膜22(透明導電膜)の材料は、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)及び亜鉛(Zn)から選ばれる1つ以上の金属元素を含むことが好ましい。また、所望の透過率及び電気的特性を満たす範囲内で、該金属元素にホウ素、窒素、酸素及び炭素から選ばれる少なくとも一つを含有した金属化合物を用いることができる。これらの金属元素を含む金属膜は、電気伝導率が高いため、裏面導電膜22としてこれらの金属膜を用いた場合、裏面導電膜22の薄膜化が可能となる。金属膜の膜厚は、透過率の観点からは50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。また、膜厚が薄すぎるとシート抵抗が急激に増加する傾向にあること、及び成膜の際の安定性の観点から、金属膜の膜厚は2nm以上が好ましい。
【0104】
裏面導電膜22の表面から0.5nm以上5nm未満の表層(最上層)は、上記金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含むことができる。
裏面導電膜22は、複数の層からなる積層膜であってもよい。
図1~
図3には、裏面導電膜22が積層膜である場合を例示している。
【0105】
裏面導電膜22が積層膜である場合、裏面導電膜22は、最上層30と、それ以外の下層28を含むことができる。下層28は、基板10の主表面(裏面)上に接して形成される層である。最上層30は、下層28の上に接して形成される層である。なお、
図1~
図3では、最上層30は、最も下側に位置している。
【0106】
裏面導電膜22の最上層30は、上記添加元素を含む薄い金属膜で形成されてもよい。すなわち、裏面導電膜22(積層膜)の最上層30は、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)及び亜鉛(Zn)から選ばれる1つ以上の金属元素と、水素(H)及び重水素(D)から選ばれる少なくとも1つの添加元素とを含むことができる。
裏面導電膜22の最上層30(又は表層としての最上層)が上記添加元素を含む薄い金属膜で形成されることによって、裏面導電膜22の最上層30が微結晶構造又はアモルファス構造を有することとなる。これにより、裏面導電膜22の膜質が変化してその導電率等が変化することを抑制することができる。その結果、反射型マスクブランク100をより安定的に静電チャックによって保持することが可能となる。
【0107】
最上層30(又は表層としての最上層)に含まれる金属元素は、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)から選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。これらの金属元素は、酸化還元電位(標準電極電位)が+0.5V以上であり、より安定であると考えられていた。また、最上層30に含まれる金属元素は、白金(Pt)及び金(Au)から選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。これらの金属元素は、酸化還元電位(標準電極電位)が+1.0V以上であり、より安定であると考えられていた。上述の最上層20の場合と同様に、最上層30にこれらの金属元素が含まれる場合、上記添加元素によって膜質が変化することを抑制する効果がより顕著に発揮される。
【0108】
また、裏面導電膜22の下層28は、多層反射膜12が形成される基板10の第1主面側と、裏面導電膜22が形成される基板10の第2主表面側との応力を調整するための応力調整機能を有する膜とすることができる。この場合の下層28の材料の例として、Si3N4及びSiO2を挙げることができる。Si3N4は、波長532nm又は470nmに対する透過率が高いため、他の材料と比べて膜厚の制限が少ない。例えば、Si3N4の下層28の場合には、膜厚1~100nmの範囲で応力調整を行うことが可能である。下層28の材料をSi3N4及びSiO2とした場合には、導電性の確保及び透過率の観点から、金属膜からなる最上層30の膜厚は2nm以上5nm未満とすることが好ましい。また、下層28と最上層30との積層膜の膜厚は、6nm以上110nm以下が好ましく、15nm以上70nm以下がより好ましい。
【0109】
また、裏面導電膜22の下層28の材料として、消衰係数の小さいTa系酸化膜やCr系酸化膜を用いることができる。下層28の材料は、波長532nm又は470nmにおける消衰係数が1.3以下であることが好ましい。Ta系酸化膜の例として、TaO、TaON、TaCON、TaBO、TaBON及びTaBCON等を挙げることができる。下層28がTa系酸化膜の場合、酸素(O)含有量は、20~70原子%であることが好ましい。Cr系酸化膜の例として、CrO、CrON、CrCON、CrBO、CrBON及びCrBOCN等を挙げることができる。下層28がCr系酸化膜の場合、酸素(O)含有量は、25~75原子%であることが好ましい。さらに、下層28の材料は、最上層30の金属膜の酸化膜、すなわち、PtO、AuO、AlO、CuO、NiO、CrO、AgO、TiO、WO、InO、MoO、RhO又はZnOとしてもよい。
【0110】
下層28の材料をTa系酸化膜やCr系酸化膜等の金属酸化膜とした場合には、導電性の確保及び透過率の観点から、金属膜からなる最上層30の膜厚は2nm以上5nm未満とすることが好ましい。また、Ta系酸化膜を含む下層28と最上層30との積層膜の膜厚は、3nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上60nm以下がより好ましい。Cr系酸化膜を含む下層28と最上層30との積層膜の膜厚は、3nm以上250nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下が好ましい。
【0111】
また、下層28は、基板10と裏面導電膜22との密着性を向上させたり、基板10からの裏面導電膜22への水素の侵入を抑制したりする機能を持たせることができる。また、下層28は、露光源としてEUV光を用いた場合のアウトオブバンド光と呼ばれる真空紫外光及び紫外光(波長:130~400nm)が基板10を透過して裏面導電膜22によって反射されるのを抑制する機能を持たせることができる。下層28の材料としては、例えば、Si、SiO2、SiON、SiCO、SiCON、SiBO、SiBON、Cr、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCON、Mo、MoSi、MoSiN、MoSiO、MoSiCO、MoSiON、MoSiCON、TaO及びTaON等を挙げることができる。下層28の膜厚は、1nm以上であることが好ましく、5nm以上、更には10nm以上であるとより好ましい。なお、下層28の材料及び膜厚は、下層28と最上層30とを積層した積層膜の透過率が20%以上を満たすように選択する。
【0112】
<導電膜付き基板>
図4は、本実施形態に係る導電膜付き基板110の断面模式図である。
図4に示すように、導電膜付き基板110は、基板10と、基板10の上に形成された裏面導電膜22を備えている。裏面導電膜22は、最上層30と、それ以外の下層28とを含む。導電膜付き基板110の基板10、裏面導電膜22、最上層30及び下層28は、上述した反射型マスクブランク100の基板10、裏面導電膜22、最上層30及び下層28と同様である。
【0113】
<反射型マスク及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、本実施形態の反射型マスクを製造することができる。以下、反射型マスクの製造方法の例について説明する。
【0114】
図5は、反射型マスク200の製造方法を示す模式図である。
図5に示すように、まず、基板10と、基板10の上に形成された多層反射膜12と、多層反射膜12の上に形成された保護膜14と、保護膜14の上に形成された積層膜16(下層18及び最上層20)とを有する反射型マスクブランク100を準備する(
図5(a))。つぎに、積層膜16の上に、レジスト膜26を形成する(
図5(b))。レジスト膜26に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、レジストパターン26aを形成する(
図5(c))。
【0115】
レジストパターン26aをマスクとして、積層膜16(下層18及び最上層20)をドライエッチングする。下層18と最上層20とは、互いの間でエッチング選択性を有するエッチングガスを用いて2段階のエッチングを行う。これにより、積層膜16のレジストパターン26aによって被覆されていない部分がエッチングされ、積層膜パターン40(吸収体パターン)が形成される(
図5(d))。
【0116】
下層18及び最上層20のエッチングガスは、下層18及び最上層20の材料に応じて、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスを用いることができる。フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
なお、下層18をドライエッチングするためのエッチングガスとしては、保護膜14との間でエッチング選択性のあるエッチングガスを用いればよい。
【0117】
積層膜パターン40が形成された後、レジスト剥離液によりレジストパターン26aを除去する。レジストパターン26aを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄工程を経ることによって、本実施形態の反射型マスク200が得られる(
図5(e))。
【0118】
なお、最上層20の上にエッチングマスク膜24が形成された反射型マスクブランク100を用いた場合には、レジストパターン26aをマスクとして用いてエッチングマスク膜24にパターン(エッチングマスクパターン)を形成した後、エッチングマスクパターンをマスクとして用いて積層膜16にパターンを形成する工程が追加される。
【0119】
このようにして得られた反射型マスク200は、基板10の上に、多層反射膜12、保護膜14、及び積層膜パターン40(吸収体パターン)が積層された構成を有している。
【0120】
多層反射膜12(保護膜14を含む)が露出している領域44は、EUV光を反射する機能を有している。多層反射膜12(保護膜14を含む)が積層膜パターン40(吸収体パターン)によって覆われている領域46は、EUV光を吸収する機能を有している。本実施形態の反射型マスク200によれば、反射率が例えば2.5%以下になるような吸収体パターンの厚みを従来よりも薄くすることができるため、より微細なパターンを被転写体に転写することができる。
【0121】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の反射型マスク200を使用したリソグラフィにより、半導体基板上に転写パターンを形成することができる。この転写パターンは、反射型マスク200のパターンが転写された形状を有している。半導体基板上に反射型マスク200によって転写パターンを形成することによって、半導体装置を製造することができる。
【0122】
図6を用いて、レジスト付き半導体基板56にEUV光によってパターンを転写する方法について説明する。
【0123】
図6は、パターン転写装置50を示している。パターン転写装置50は、レーザープラズマX線源52、反射型マスク200、及び、縮小光学系54等を備えている。縮小光学系54としては、X線反射ミラーが用いられている。
【0124】
反射型マスク200で反射されたパターンは、縮小光学系54により、通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13~14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような条件で、レーザープラズマX線源52で発生したEUV光を、反射型マスク200に入射させる。反射型マスク200によって反射された光を、縮小光学系54を介して、レジスト付き半導体基板56上に転写する。
【0125】
反射型マスク200によって反射された光は、縮小光学系54に入射する。縮小光学系54に入射した光は、レジスト付き半導体基板56上のレジスト層に転写パターンを形成する。露光されたレジスト層を現像することによって、レジスト付き半導体基板56上にレジストパターンを形成することができる。レジストパターンをマスクとして半導体基板56をエッチングすることにより、半導体基板上に例えば所定の配線パターンを形成することができる。このような工程及びその他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例0126】
吸収体膜の最上層20に、水素(H)又は重水素(D)を添加しない場合の反射率の経時的な変化を確認するために、以下の実験を行った。
実験のための試料1~6の反射型マスクブランクは、以下の通りに作製した。
第1主表面及び第2主表面の両表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO2-TiO2系ガラス基板を準備した。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0127】
ガラス基板の主表面上に、Mo膜/Si膜を周期的に積層することで多層反射膜を形成した。
【0128】
具体的には、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Krを使用)により、基板上に、Mo膜及びSi膜を交互に積層した。Mo膜の厚みは、2.8nmである。Si膜の厚みは、4.2nmである。1周期のMo/Si膜の厚みは、7.0nmである。このようなMo/Si膜を、40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜を形成した。
【0129】
多層反射膜の上に、Ru化合物を含む保護膜を形成した。具体的には、RuNbターゲット(Ru:80原子%、Nb:20原子%)を使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜の上に、RuNb膜からなる保護膜を形成した。保護膜の厚みは、3.5nmであった。
【0130】
次に、保護膜の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜からなる吸収層(下層)又は第1の層を形成した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、Xeガス及びN2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで成膜した。TaBN膜の組成比(Ta:B:N)は、X線光電子分光法(XPS)により測定したところ、75:12:13であった。また、TaBN膜の波長13.5nmにおける屈折率は0.949であった。試料1~6における吸収層(下層)又は第1の層の膜厚は、以下の表1に示す通りである。
【0131】
次に、吸収層(下層)又は第1の層の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、金属膜からなる最上層又は最上層を含む第2の層を形成した。最上層に含まれるPt、Ru又はNiを材料とする金属ターゲットを用い、Krガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングにより、最上層又は最上層を含む第2の層を成膜した。例えば、試料1は、PtターゲットとKrガスとを用いたスパッタリングにより、Pt膜を成膜した。最上層の膜厚は、
図7に示すように、吸収体膜の表面で反射されるEUV光の振幅が大きくなる膜厚とした。
【0132】
最上層に含まれる金属元素、及び、最上層又は第2の層の膜厚は、以下の表1に示す通りである。成膜した膜中の金属元素の含有量は、X線光電子分光法(XPS)及び二次イオン質量分析法(SIMS)により何れも95原子%以上であることを確認した。なお、第2の層に形成された最上層の金属元素の含有量は、表面から2nmの深さを測定した。
【0133】
以上より、基板の上に、多層反射膜、保護膜、吸収層(下層)又は第1の層、及び最上層又は最上層を含む第2の層が積層された試料1~6の反射型マスクブランクが得られた。得られた試料1~6の波長13.5nmにおける反射率(1回目)を測定した。
【0134】
次に、試料1~6を温度22℃、相対湿度50%の雰囲気中に4日間放置した後、試料1~6の波長13.5nmにおける反射率(2回目)を測定した。
【0135】
以下の式により、試料1~6の反射型マスクブランクの1回目と2回目の反射率の変動量を算出した。結果を表1に示す。
変動量=2回目の反射率-1回目の反射率[%]
【0136】
表1に示す結果から分かる通り、試料1~6の反射型マスクブランクは、反射率の変動量が0.2%を超えていた。これは、金属膜からなる最上層全体の膜質が経時的に変化して、反射率の変動量が大きくなったと考えられる。
また、試料1~6をX線回折装置(XRD)及び電子回折法(ED)によって結晶構造を測定したところ、結晶性を有していた。
【0137】
次に、最上層20に水素(H)又は重水素(D)を添加した場合の反射率の経時的な変化を確認するために、試料7~13の反射型マスクブランクを作製して、以下の実験を行った。
【0138】
試料1と同様の基板を準備し、試料1と同様に、基板の上に、多層反射膜、保護膜、吸収層(下層)又は第1の層を形成した。試料7~13における吸収層(下層)又は第1の層の膜厚は、以下の表2に示す通りである。
【0139】
次に、吸収層(下層)又は第1の層の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、金属膜からなる最上層又は最上層を含む第2の層を形成した。最上層に含まれるPt、Ru又はNiを材料とする金属ターゲットを用い、Krガスと水素ガス又は重水素ガスとを用いた反応性スパッタリング法により、最上層を成膜した。例えば、試料7の作製では、PtターゲットとKrガス及び水素ガスとを用いた反応性スパッタリングにより、Hを添加したPt膜を成膜した。
【0140】
最上層に含まれる金属元素とその含有量、成膜ガス流量比、及び、最上層又は最上層を含む第2の層の膜厚は、以下の表2に示す通りである。成膜した膜中の金属元素の含有量は、X線光電子分光法(XPS)及び二次イオン質量分析装置(SIMS)により測定した。また、最上層又は第2の層の表面から2nmの深さにおいて、ダイナミック二次イオン質量分析(SIMS)によってH又はDが含まれていることを確認した。
【0141】
以上より、基板の上に、多層反射膜、保護膜、吸収層(下層)又は第1の層、及び、最上層又は最上層を含む第2の層が積層された試料7~13の反射型マスクブランクが得られた。得られた試料7~13を、試料1と同様にして反射率を測定し、反射率の変動量を算出した。
【0142】
表2に示す結果から分かる通り、試料7~13の反射型マスクブランクは、金属膜からなる最上層の膜質の変化が抑制されており、反射率の変動量が0.2%以内であった。
また、試料7~13をX線回折装置(XRD)及び電子回折法(ED)によって結晶構造を測定したところ、微結晶構造又はアモルファス構造を有していた。
【0143】
(実施例1)
実施例1の反射型マスクブランク及び反射型マスクについて説明する。
実施例1の反射型マスクブランクは、上記試料8の作製条件と同様にして作製した。作製された反射型マスクブランクの最上層の上にCrN膜からなるエッチングマスク膜を形成して、エッチングマスク膜を有する反射型マスクブランクを作製した。
【0144】
エッチングマスク膜は、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)中で、Crターゲットを使用したマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により、表3に示す膜厚で成膜した。
【0145】
上記のガラス基板の裏面に、CrNからなる裏面導電膜をマグネトロンスパッタリング法により形成した。裏面導電膜は、Crターゲットを用いて、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)で、マグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により、膜厚20nmで形成した。
【0146】
以上のようにして、実施例1の反射型マスクブランクを製造した。
【0147】
次に、上記実施例1の反射型マスクブランクを用いて、実施例1の反射型マスクを製造した。エッチングマスク膜と最上層との間に拡散層は形成されていなかった。
【0148】
反射型マスクは、上述の反射型マスクの製造方法により、表3のエッチングガスを用いて、エッチングマスクパターン及び積層膜パターン(第2の層パターン及び第1の層パターン)を形成し、エッチングマスクパターンをCl2ガス及O2ガスの混合ガスにより除去することによって、製造した。
【0149】
実施例1の反射型マスクについて、試料8と同様にして波長13.5nmにおける反射率を測定し、反射率の変動量を算出したところ、0.1%以内であり、設計値からのずれが少ないことを確認できた。
【0150】
(実施例2)
実施例2の反射型マスクブランク及び反射型マスクについて説明する。
実施例2の反射型マスクブランクは、上記試料10の作製条件と同様にして作製した。作製された反射型マスクブランクの最上層の上にSiO2膜からなるエッチングマスク膜を形成して、エッチングマスク膜を有する反射型マスクブランクを作製した。
【0151】
エッチングマスク膜は、Arガス雰囲気中で、SiO2ターゲットを使用したRFスパッタリング法により、表4に示す膜厚で成膜した。
【0152】
実施例1と同様に裏面導電膜を形成し、実施例2の反射型マスクブランクを製造した。エッチングマスク膜と最上層との間に拡散層は形成されていなかった。
【0153】
次に、上記実施例2の反射型マスクブランクを用いて、実施例2の反射型マスクを製造した。
【0154】
反射型マスクは、上述の反射型マスクの製造方法により、表4のエッチングガスを用いて、エッチングマスクパターン及び積層膜パターン(最上層パターン及び下層パターン)を形成し、エッチングマスクパターンをCF4ガスにより除去することによって、製造した。
【0155】
実施例2の反射型マスクについて、試料10と同様にして波長13.5nmにおける反射率を測定し、反射率の変動量を算出したところ、0.2%以内であり、設計値からのずれが少ないことを確認できた。
【0156】
(実施例3)
実施例3の導電膜付き基板について説明する。
実施例3の導電膜付き基板は、試料1と同様のガラス基板を準備し、ガラス基板の多層反射膜が形成される主表面とは反対側の主表面上に、裏面導電膜を形成することにより得た。
【0157】
具体的には、表5に示す成膜ガス雰囲気中でPtターゲットを使用したDCマグネトロンスパッタリング法によりHを含むPt膜からなる裏面導電膜(最上層を含む)を成膜した。裏面導電膜に含まれる金属元素とその含有量、成膜ガス流量比、及び、裏面導電膜の膜厚は、以下の表5に示す通りである。成膜した膜中の金属元素の含有量は、X線光電子分光法(XPS)及び二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した。
【0158】
以上より、基板の上に、最上層を含む裏面導電膜が積層された導電膜付き基板が得られた。得られた導電膜付き基板を温度22℃、相対湿度50%の雰囲気中に4日間放置した後、シート抵抗及び透過率を測定したところ、表5に示す通りであり、設計値からのずれはほとんどなかった。透過率は、導電膜付き基板の裏面から波長470nmの光を照射して測定した。また、シート抵抗は、4端子測定法により測定した。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】