(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096902
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ジアミノピメリン酸を含む細菌の定量方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C12Q1/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066065
(22)【出願日】2024-04-16
(62)【分割の表示】P 2021507215の分割
【原出願日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019051664
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】笠島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】井田 正幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することができる新規な方法を提供する。
【解決手段】被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する方法であって、上記被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程を含む、細菌の定量方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する方法であって、
前記被検試料中の前記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、前記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程を含む、細菌の定量方法。
【請求項2】
前記被検試料は、ジアミノピメリン酸を含まない細菌を含む請求項1に記載の細菌の定量方法。
【請求項3】
前記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、死菌である請求項1又は2に記載の定量方法。
【請求項4】
前記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus fabifermentans、Lactobacillus vaccinostercus、Lactobacillus hokkaidonensis、Lactobacillus oligofermentans、Lactobacilus suebicus、Lactobacillus mali及びLactobacillus divergensからなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌である請求項1~3のいずれか一項に記載の定量方法。
【請求項5】
前記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、Lactobacillus pentosusである請求項1~4のいずれか一項に記載の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まり等から、乳酸菌等の食品への添加が行われている。このような菌は、生きた菌(生菌)として添加される場合もあれば、死んだ菌(死菌)が添加される場合もある。例えば機能性表示食品等において、機能性関与成分として乳酸菌等の細菌を配合する場合には、製品に含まれる生菌数、死菌数の特定が重要である。
【0003】
試料に含まれる生菌を定量する方法として、寒天培地を用いて培養を行った後、コロニーを計測する方法(培養法)等が用いられている。例えば特許文献1には、検体中に含まれる微生物の生菌数測定方法として、検体を、懸濁用希釈液を用いて懸濁液とする工程と、前記懸濁液中に含まれる微生物の生菌数を測定する工程とを有する生菌数測定方法が記載されており、懸濁液中に含まれる微生物の生菌数の測定を、寒天培地にて培養を行う培養法で実施できることが記載されている。
【0004】
一方、死菌の粉末や、それを添加した製品の場合は、添加された菌が死菌であることから、培養法では菌数を測定することができない。培養法では測定ができない試料の菌数を測定する際には、総菌数の測定が行われている。総菌数の測定は顕微鏡を用いた方法が主流であり、DAPI(蛍光)染色法等が代表的な方法として知られている。この方法では、サンプルを希釈水に懸濁した試料液について、顕微鏡下で細胞の形態を観察及び計測し、菌数を求める。DAPI染色法の場合、死菌と生菌との識別はできないため、測定結果としては総菌数(全菌数)として扱われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳酸菌の中には、細胞壁にジアミノピメリン酸(以下、DAPともいう)を含むものがある。このジアミノピメリン酸を含む乳酸菌の食品等への添加も行われている。しかしながら、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する方法は検討されていない。
【0007】
また、被検試料がDAPを含む細菌に加えてDAPを含まない細菌を含む場合、DAPを含む細菌の定量は、例えばDAPを含む細菌が生菌であり、DAPを含まない細菌が死菌であれば、上記のように培養法により行うことができる。DAPを含む細菌と、DAPを含まない細菌とを含む被検試料において、DAPを含む細菌及びDAPを含まない細菌がいずれも生菌である場合には、DAPを含む細菌だけを選択的に培養可能であれば、そのような条件で試料を培養し、形成されたコロニーを計測することでDAPを含む細菌を定量することができると考えられる。
【0008】
一方、DAPを含む細菌が生菌でもDAPを含まない細菌に対して選択的に培養が出来ない場合や、DAPを含む細菌が死菌である場合には、DAPを含む細菌と、DAPを含まない細菌とを含む被検試料中のDAPを含む細菌の数を培養法で測定することはできない。例えば、DAPを含む細菌が死菌であり、DAPを含まない細菌が生菌である場合は、被検試料中の総菌数から、生菌数を引いてDAPを含む死菌の数を求めることが考えられるが、生菌数と、総菌数とは測定方法が異なるという問題がある。DAPを含む細菌と、DAPを含まない細菌とを含む被検試料中に含まれるDAPを含む細菌が死菌、生菌のいずれであっても、該細菌を選択的に定量することができる方法も、検討されていない。
【0009】
本発明の目的は、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することができる新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、ジアミノピメリン酸を含む乳酸菌に由来するジアミノピメリン酸量が、該乳酸菌の菌数と高い相関があることを見出し、ジアミノピメリン酸を含む細菌の定量において、ジアミノピメリン酸を指標として使用できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の分析方法に関する。
〔1〕被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する方法であって、上記被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程を含む、細菌の定量方法。
〔2〕上記被検試料は、ジアミノピメリン酸を含まない細菌を含む上記〔1〕に記載の細菌の定量方法。
〔3〕上記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、死菌である上記〔1〕又は〔2〕に記載の定量方法。
〔4〕上記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus fabifermentans、Lactobacillus vaccinostercus、Lactobacillus hokkaidonensis、Lactobacillus oligofermentans、Lactobacilus suebicus、Lactobacillus mali及びLactobacillus divergensからなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の定量方法。
〔5〕上記ジアミノピメリン酸を含む細菌は、Lactobacillus pentosusである上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の定量方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することができる新規な方法を提供することができる。本発明の定量方法を用いると、例えば、被検試料がジアミノピメリン酸を含む細菌に加えてジアミノピメリン酸を含まない細菌を含む場合にも、該試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌を選択的に定量することが可能である。本発明の定量方法は、食品、医薬品等に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌の定量、該細菌を含む製品の品質管理等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、培養時間による乳酸菌S-PT84の菌数の経時変化を示すグラフである。
図1Bは、培養時間によるジアミノピメリン酸量の経時変化を示すグラフである。
【
図2】
図2は、
図1Aの縦軸の乳酸菌S-PT84菌数(個/g)と、
図1Bの縦軸のジアミノピメリン酸量(mg/100g)の相関を示すグラフである。
【
図3】
図3は、乳酸菌S-PT84原料重量と、該原料に含まれるジアミノピメリン酸量の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の細菌の定量方法は、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する方法であって、上記被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程を含む。
本発明における被検試料は、通常、ジアミノピメリン酸を含む細菌を含むものである。
本明細書中、ジアミノピメリン酸(DAP)は、2,6-ジアミノピメリン酸を指す。
【0015】
ジアミノピメリン酸を含む細菌として、細胞壁の構成成分にジアミノピメリン酸を含む乳酸菌、例えば、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス・ペントーサス)、Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス・プランタラム)、Lactobacillus paraplantarum(ラクトバチルス・パラプランタラム)、Lactobacillus fabifermentans(ラクトバチルス・ファビフェルメンタンス)、Lactobacillus vaccinostercus(ラクトバチルス・ワクチノステルカス)、Lactobacillus hokkaidonensis(ラクトバチルス・ホッカイドネンシス)、Lactobacillus oligofermentans(ラクトバチルス・オリゴフェルメンタンス)、Lactobacilus suebicus(ラクトバチルス・スエビカス)、Lactobacillus mali(ラクトバチルス・マリ)、Lactobacillus divergens(ラクトバチルス・ディバージェンス)等の乳酸菌が挙げられる。
ジアミノピメリン酸を含む細菌は、1種であってもよく、2種以上であってもよいが、好ましくは1種である。本発明の一態様において、ジアミノピメリン酸を含む細菌は、Lactobacillus pentosusであることが好ましい。
【0016】
ジアミノピメリン酸を含む細菌は、生菌であってもよく、死菌であってもよい。被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量は、該細菌数と相関することから、該ジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌の菌数を測定(細菌数を定量)することができ、該細菌を定量することができる。本発明の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む細菌の細菌数の測定に有用である。本発明の細菌の定量方法は、被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標としてジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することから、該細菌が生菌又は死菌のいずれであっても、該細菌を定量することが可能である。
【0017】
上記被検試料は、ジアミノピメリン酸を含まない細菌を含んでいてもよい。本発明の方法は、ジアミノピメリン酸を含む細菌と、ジアミノピメリン酸を含まない細菌とを含む被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌の定量に有用である。
ジアミノピメリン酸を含まない細菌は特に限定されない。ジアミノピメリン酸を含まない細菌として、例えば、Lactobacillus delbrueckii(ラクトバチルス・デルブルエッキィ)、Lactobacillus acidophilus(ラクトバチルス・アシドフィルス)、Lactobacillus crispatus(ラクトバチルス・クリスパタス)、Lactobacillus gasseri(ラクトバチルス・ガセリ)、Lactobacillus helveticus(ラクトバチルス・ヘルベティカス)、Lactobacillus johnsonii(ラクトバチルス・ジョンソニ)、Lactobacillus kefiranofaciens(ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス)、Lactobacillus casei(ラクトバチルス・カゼイ)、Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス・パラカゼイ)、Lactobacillus coryniformis(ラクトバチルス・コリニフォルミス)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス・サケイ)、Lactobacillus brevis(ラクトバチルス・ブレビス)、Lactobacillus buchneri(ラクトバチルス・ブチネリ)等の乳酸菌;Bifidobacterium animalis(ビフィドバクテリウム・アニマリス)、Bifidobacterium bifidum(ビフィドバクテリウム・ビフィダム)、Bifidobacterium breve(ビフィドバクテリウム・ブレーベ)、Bifidobacterium infantis(ビフィドバクテリウム・インファンティス)、Bifidobacterium longum(ビフィドバクテリウム・ロンガム)、Bifidobacterium adolescentis(ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス)等のビフィズス菌等の細菌が挙げられる。ジアミノピメリン酸を含まない細菌は、1種であってもよく、2種以上であってもよいが、好ましくは1種である。一態様において、ジアミノピメリン酸を含まない細菌として、ジアミノピメリン酸を含まない乳酸菌、ビフィズス菌等が好ましく、ビフィズス菌がより好ましい。一態様において、被検試料は、ジアミノピメリン酸を含む細菌と、ジアミノピメリン酸を含まないビフィズス菌及び/又は乳酸菌(好ましくはビフィズス菌又は乳酸菌)とを含むものであってよい。ジアミノピメリン酸を含まない細菌は生菌であってもよく、死菌であってもよい。ジアミノピメリン酸を含む細菌と、ジアミノピメリン酸を含まない細菌とを含む被検試料中の細菌の定量に本発明の方法を用いると、ジアミノピメリン酸を含まない細菌が生菌又は死菌のいずれであっても、被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、ジアミノピメリン酸を含む細菌を選択的に定量することができる。
【0018】
一態様において、ジアミノピメリン酸を含む細菌は、好ましくは死菌である。
本発明の細菌の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む死菌と、ジアミノピメリン酸を含まない細菌とを含む被検試料中のジアミノピメリン酸を含む死菌を定量する方法として使用することができる。本発明の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む死菌と、ジアミノピメリン酸を含まない細菌とを含む被検試料中のジアミノピメリン酸を含む死菌数の測定に有用である。また、本発明の細菌の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む死菌と、ジアミノピメリン酸を含まない生菌とを含む被検試料中のジアミノピメリン酸を含む死菌を定量する方法として有用である。ジアミノピメリン酸を含む細菌が死菌の場合は、上記のように培養法で定量することができない。また、DAPI(蛍光)染色法では、ジアミノピメリン酸を含む細菌と、ジアミノピメリン酸を含まない細菌とを含む被検試料中の総菌数が求められるが、ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することは困難である。本発明の細菌の定量方法は、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌が死菌であり、かつ、該試料がジアミノピメリン酸を含まない細菌を含む場合にも、該試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を選択的に定量することが可能である。
【0019】
本発明の定量方法では、被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する。
本発明の定量方法は、被検試料中のジアミノピメリン酸量を定量する工程を含んでもよい。本発明の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む細菌を含む被検試料中のジアミノピメリン酸量を定量する工程、及び、上記被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程を含む、細菌の定量方法であってよい。被検試料中のジアミノピメリン酸量を定量する方法は特に限定されない。被検試料中のジアミノピメリン酸量の測定は、例えば、被検試料を酸加水分解に供して、分解液に含まれるジアミノピメリン酸量を定量することにより行うことができる。本発明の定量方法は、被検試料を酸加水分解に供して、分解液に含まれるジアミノピメリン酸量を定量する工程を含んでもよい。分解液に含まれるジアミノピメリン酸量からジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を求めることができる。得られたジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を指標として、上記ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量することができる。
酸加水分解の条件は、ジアミノピメリン酸を含む細菌の細胞壁を分解できる条件を採用すればよい。酸加水分解は、酸の水溶液中で行うことができる。酸加水分解には、例えば、塩酸等の酸を用いることができる。取扱いが簡便である点から塩酸が好ましい。酸の水溶液中の酸濃度は、好ましくは0.5~12N、より好ましくは3~9N、さらに好ましくは5~7Nである。一態様において、酸加水分解の温度は、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃、さらに好ましくは100~120℃である。酸加水分解の時間は、例えば、0.5時間以上とすることができ、1時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、8時間以上がさらに好ましく、また、40時間以下とすることができる。一態様において、酸加水分解の時間は、例えば、0.5~40時間とすることができ、1~40時間が好ましく、6~40時間がより好ましく、8~40時間がさらに好ましい。ジアミノピメリン酸量の定量方法は特に限定されず、アミノ酸分析機を用いるアミノ酸分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる方法、LC-MSを用いる方法等により行うことができる。一態様においては、アミノ酸分析でジアミノピメリン酸を定量することが好ましい。
【0020】
被検試料は、ジアミノピメリン酸を含む細菌以外の成分中に、ジアミノピメリン酸を含まないものであることが好ましい。被検試料が、ジアミノピメリン酸を含む細菌以外にジアミノピメリン酸を含む成分を含まない場合は、上記分解液に含まれるジアミノピメリン酸は、全てジアミノピメリン酸を含む細菌由来である。上記の場合は、被検試料中のジアミノピメリン酸量を、ジアミノピメリン酸を含む細菌由来のジアミノピメリン酸量として使用することができる。
ジアミノピメリン酸を含む細菌以外の成分にジアミノピメリン酸が含まれる場合は、別途被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌以外の成分についてジアミノピメリン酸量を測定し、被検試料中のジアミノピメリン酸量から、ジアミノピメリン酸を含む細菌以外の成分由来のジアミノピメリン酸量を引くことで、ジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を求めることができる。本発明の定量方法は、被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌以外の成分のジアミノピメリン酸量を定量する工程を含んでもよい。
【0021】
得られたジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量から、ジアミノピメリン酸を含む細菌の菌数を求めることができる。上記ジアミノピメリン酸量からジアミノピメリン酸を含む細菌の菌数を求める方法は特に限定されず、例えば、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌について、予め菌数が既知の試料を用いて作成した検量線を用いて行う方法が好適である。具体的には、検量線は、試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌の菌数が既知の試料を用いて、当該試料を上記のように酸加水分解に供して、分解液に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌に由来するジアミノピメリン酸量を定量して得られる測定値から作成される。検量線は、通常、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌と同じ種類の細菌を含み、その菌数が既知の試料を使用して作成する。本発明の定量方法では、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌の総菌数(生菌と死菌の総菌数)を測定することができる。本発明の定量方法では、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌が全て生菌である場合にはその生菌数を、該細菌が全て死菌である場合にはその死菌数を測定することができる。
【0022】
本発明の定量方法は、被検試料中のジアミノピメリン酸を含む細菌及びジアミノピメリン酸を含まない細菌を定量する方法であってよい。本発明の定量方法は、被検試料に含まれるジアミノピメリン酸を含まない細菌を定量する工程を含んでいてもよい。例えば上記ジアミノピメリン酸を含まない細菌が生菌である場合に、本発明の定量方法は、上記被検試料中の上記ジアミノピメリン酸を含まない生菌を定量する工程を含んでいてもよい。この場合、ジアミノピメリン酸を含む細菌を定量する工程と、ジアミノピメリン酸を含まない生菌を定量する工程とを行う順番は特に限定されない。
生菌を定量する方法は特に限定されない。例えば、生菌数の測定には培養法等を用いることができる。例えば、ジアミノピメリン酸を含まない生菌を定量する工程では、上記被検試料を培養して、上記ジアミノピメリン酸を含まない生菌のコロニーを計測することにより上記生菌を定量すればよい。培養は、寒天培地にて培養を行う培養方法(固体培養法)にて行えばよい。
【0023】
培養及び生菌のコロニー計測は、細菌の種類に応じて、公知の方法により行うことができる。例えば、被検試料の希釈液を調製して、該希釈液を寒天培地で培養し、形成されたコロニー数を計測すればよい。このときに形成されたコロニー数が、当該寒天培地で培養した希釈液中に含まれる細菌の生菌数である。このため、コロニー数と、希釈倍率とから、被検試料に含まれる細菌の生菌数が求められる。
【0024】
培養の条件は、ジアミノピメリン酸を含む細菌が死菌の場合は、ジアミノピメリン酸を含まない生菌が生育する条件であればよい。被検試料が2種以上の生菌を含む場合は、選択培地等を用いて培養を行い、各細菌の生菌数を測定してもよい。例えば、ジアミノピメリン酸を含む細菌が生菌の場合は、該細菌が生育せず、ジアミノピメリン酸を含まない生菌が生育する条件、選択培地等を使用することにより、ジアミノピメリン酸を含まない生菌を選択的に定量することが可能である。
【0025】
本発明で使用される被検試料としては特に限定されず、例えば、食品(健康食品を含む)、医薬品、化粧品、これらの原料等が挙げられる。被検試料の形態は特に限定されず、固形状、粉末状、ペースト状、ゼリー状、ゲル状、タブレット状、液状のいずれの形態でもよい。必要に応じて被検試料を粉砕等して、ジアミノピメリン酸の定量、生菌の定量に供することができる。
本発明の定量方法によれば、ジアミノピメリン酸を含む細菌を含む食品、医薬品、化粧品等や、これらの原料に含まれるジアミノピメリン酸を含む細菌を簡便に定量することができる。本発明の定量方法は、ジアミノピメリン酸を含む細菌が死菌、生菌のいずれであっても、上記試料中の該細菌を定量することができる。本発明の定量方法は、例えば、このような食品、医薬品、化粧品、その原料等の品質管理等においても有用である。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<ジアミノピメリン酸の定量方法>
試料を酸加水分解に供し、分解液をアミノ酸自動分析法で分析してジアミノピメリン酸を定量した。
(1)分析機器等
・全自動アミノ酸分析機(JLC-500/V2、日本電子株式会社製)
・分析カラム[LCR-6(5μm,4.0mm i.d.×120mm、日本電子株式会社製)]
【0028】
(2)試薬
・2,6-ジアミノピメリン酸(DAP)(東京化成工業株式会社)
・20%塩酸(精密分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)(6mol/L塩酸)
・2-メルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社)
・塩酸(アミノ酸自動分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)
・クエン酸三ナトリウム二水和物(アミノ酸自動分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)
・オクタン酸[n-カプリル酸](アミノ酸自動分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)
・チオジエチレングリコール(アミノ酸自動分析用、富士フイルム和光純薬株式会社)
・クエン酸ナトリウム緩衝液(H-01~H-04)(日本電子株式会社)
・日本電子用ニンヒドリン発色溶液キット-II(富士フイルム和光純薬株式会社)
【0029】
(3)試液の調製
・20%塩酸(0.04% 2-メルカプトエタノール含有)
20%塩酸500mLに2-メルカプトエタノール0.2mLを加えて混合した。
・クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)
クエン酸三ナトリウム二水和物980gを量りとり、イオン交換水約3500mLを加えて溶解した。36%塩酸約700mL及びオクタン酸5mLを加えて攪拌し、20%塩酸でpH2.2に調整した後、イオン交換水で5000mLとした(原液)。原液500mL、チオジエチレングリコール100mL及びイオン交換水4000mLを加えて攪拌し、20%塩酸でpH2.2に調整した後、イオン交換水で5000mLとした。
・0.01mol/L塩酸
イオン交換水400mLに20%塩酸80mLを加えて攪拌した(1mol/L塩酸)。1mol/L塩酸を水で100倍に希釈した。
【0030】
(4)分析用試料の調製
1)分析に供する試料を加水分解用試験管に取り、20%塩酸(0.04% 2-メルカプトエタノール含有)20mLを加え、減圧下で封管した。
2)封管した試験管を110℃で24時間加水分解した。
3)冷却後、開管し、加水分解液をイオン交換水にて100mLに定容した。
4)この溶液10mLを分取し、エバポレーターで減圧濃縮、乾固させた。
5)残留物をクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)5mLで溶解し、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過したものを試験溶液とした。
6)DAP 0.0475gを精密に量り、0.01mol/L塩酸に溶解後、100mLに定容し、標準原液とした(濃度:2.5μmol/mL)。
7)標準原液をクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)で25倍に希釈し、標準溶液とした(濃度:0.1μmol/mL)。
8)試験溶液及び標準溶液を以下に示すアミノ酸自動分析計の条件に供し、ピークの高さからDAPを定量した。
【0031】
(5)アミノ酸自動分析計による分析
上記の方法で調製した試料を以下に示す分析条件で分析し、DAPの定量を行った。
(分析条件)
カラム:LCR-6(5μm,4.0mm i.d.×120mm、日本電子株式会社製)
流速:移動相0.42mL/min、反応液0.22mL/min
移動相:クエン酸ナトリウム緩衝液(H-01~04)(日本電子株式会社)
反応液:日本電子用ニンヒドリン発色溶液キット-II(富士フイルム和光純薬株式会社)
注入量:30μL
【0032】
移動相中のクエン酸ナトリウム緩衝液H-01~H-04の割合(vol%)及びカラム温度を、表1に示す。
(アミノ酸自動分析計タイムプログラム)
【0033】
【0034】
(6)計算方法
次式からDAP含量(mg/100g)を算出した。
【0035】
【0036】
A:試験溶液のピーク高さ
B:標準溶液のピーク高さ
50:上記(4)の1)~5)操作時の試験溶液の希釈倍率
W:試料採取量(g)
0.1:標準溶液の濃度(μmol/mL)
190.20:DAPの分子量
上記式のA及びBにおけるピークは、DAPのピークである。
【0037】
(7)定性確認
試験溶液と標準溶液を(5)記載の方法で分析を行い、DAP標準溶液の溶出保持時間と一致するピークをDAPとした。
【0038】
<試験例1>
Lactobacillus pentosus SAM2336(以下、乳酸菌S-PT84という)の菌数と、ジアミノピメリン酸(DAP)量の相関を調べた。乳酸菌S-PT84は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託されており(受託番号:FERM BP-10028)、Lactobacillus pentosus SAM 2336として識別されている乳酸菌である。
【0039】
乳酸菌S-PT84を培養して、各培養時間の乳酸菌S-PT84菌数とDAP量を測定した。
評価に際しては、0時間から24時間まで3時間おきにサンプリングを行った。DAP量の測定は、決められた時間にサンプリングした培養液150gを殺菌し、遠心分離後、上清を除き、沈殿物に水を加水し1.5gに調製したもの(100倍濃縮液)をDAP量測定試料とし、上記のジアミノピメリン酸の定量方法で、DAP量を測定した。また、乳酸菌S-PT84菌数の測定は、DAP量の測定に供した培養液から乳酸菌S-PT84を集菌し、DAPI染色した後、顕微鏡下にて菌数を測定した。なお、菌数測定の試料に関しては、100倍濃縮液を用いた場合、菌が凝集し、正確な測定ができなかったため、培養液での測定結果に100を乗じた値を菌数とした。これらの結果をもとに、DAP量と乳酸菌S-PT84菌数との相関性を検討した。
【0040】
図1A及び
図1Bは、培養時間による乳酸菌S-PT84の菌数の経時変化(
図1A)及びジアミノピメリン酸量の経時変化(
図1B)を示すグラフである。
図1Aの縦軸の乳酸菌の菌数は、培養液1gあたりの乳酸菌S-PT84菌数に100を乗じて100倍濃縮液あたりの乳酸菌S-PT84菌数に換算した値である。
図1Bの縦軸のDAP量(mg)は、100倍濃縮液100gあたりの値である。
図2は、
図1Aの縦軸の乳酸菌S-PT84菌数(個/g)と、
図1Bの縦軸のDAP量(mg/100g)の相関を示すグラフである。
図1Aに示すように乳酸菌S-PT84菌数は3時間より増え始め、21時間以降に菌数の変化は見られなかった。また、DAP量も同様の傾向を示した(
図1B)。さらに、乳酸菌S-PT84菌数とDAP量の結果をプロットし、近似直線にてその相関を確認したところ、R
2値は0.984と高い相関性があることを確認した(
図2)。
【0041】
<試験例2>
乳酸菌S-PT84原料重量とDAP量の相関性を確認するために、乳酸菌S-PT84原料重量当たりのDAPの定量を上記のジアミノピメリン酸の定量方法で実施した。本試験は繰返し1回を3日間実施した。
乳酸菌S-PT84原料として、乳酸菌S-PT84の死菌末(大洋香料(株)製、死菌1.8×1011個/g含有品)を使用した。この死菌数は、原料メーカーによる測定値である。
【0042】
表2は、乳酸菌S-PT84原料重量あたりのDAP実測値及び分析結果である。表2に示す結果をプロットしたグラフを
図3に示す(横軸:検体量(乳酸菌原料)(g)、縦軸:分析結果平均(DAP量)(mg))。
図3に示すグラフは、乳酸菌S-PT84原料重量と、該原料に含まれるDAP量の相関を示す。
乳酸菌S-PT84原料重量とDAP量の直線性を確認したところ、R
2値は0.999と高い直線性があることを確認した(表2及び
図3)。
図3に示すデータから求めた回帰式は、y=3.0331x+0.0099であった。
【0043】
【0044】
試験例1において各培養時間の乳酸菌S-PT84菌数とDAP量の相関性について評価したところ、乳酸菌S-PT84菌数とDAP量との近似直線において、R2値は0.984と高い相関性が認められた。DAPは、乳酸菌S-PT84の細胞壁に含まれていることから、乳酸菌S-PT84の増殖に伴いDAP量も増えたと考えられる。試験例2において乳酸菌S-PT84原料重量とDAP量の相関を検討したところ、R2値は0.999と高い直線性があること明らかになった。このことから、DAP量を測定することでDAPを含有する細菌の菌数や該細菌原料の配合量を算出することが可能であることが分かった。
【0045】
また、上記のジアミノピメリン酸の定量方法の(4)分析用試料の調製の2)において、加水分解の時間を8、16、32又は40時間とした以外は、上記と同じ方法で乳酸菌S-PT84菌数とDAP量の相関性を評価した。加水分解の時間を8、16、32又は40時間としても、加水分解を24時間行った場合と同様の結果が得られ、乳酸菌S-PT84原料が充分に加水分解されていることが確認できた。
【0046】
<実施例1>
乳酸菌S-PT84原料には、試験例2と同じ乳酸菌S-PT84の死菌末(大洋香料(株)製、死菌1.8×1011個/g含有品)を使用した。
DAPを含まない細菌として、ビフィズス菌を使用した。上記の乳酸菌S-PT84原料及びビフィズス菌原料を混合して、100gあたり、乳酸菌S-PT84(死菌)を4.1×1012個含む試料を調製した。
試料中のDAP量を上記のジアミノピメリン酸の定量方法で定量した。また、下記の方法で検量線を作成し、試料中のDAP量から乳酸菌S-PT84菌数を求めた。
【0047】
(検量線の作成)
試料調製に用いた乳酸菌S-PT84原料を0.1、0.3、0.5、0.8、1.0g採取し、上記ジアミノピメリン酸の定量方法の(4)~(7)に記載の手順に従いDAPを定量し、DAP量と乳酸菌S-PT84原料の重量との回帰直線を作成した。この回帰直線を検量線として使用した。なお、上記ジアミノピメリン酸の定量方法の(4)の5)を以下の5’)の通りに変更した。
5’)残留物にクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)20mLで溶解し、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過したものを試験溶液とした。
【0048】
(乳酸菌S-PT84の菌数換算)
上記で作成した検量線(回帰直線)の傾き及び切片を用い、次式より、試料100g当たりの乳酸菌S-PT84原料の重量を算出した。
(試料100g当たりの乳酸菌S-PT84原料の重量)(g/100g)=(E-切片)/傾き
E:DAP含量(mg/100g)
【0049】
次式より、試料100g当たりの乳酸菌S-PT84原料の重量を、試料100g当たりの乳酸菌S-PT84菌数に換算した。
試料100g当たりの乳酸菌S-PT84菌数(個/100g)=M×T
M:試料100g当たりの乳酸菌S-PT84原料の重量(g/100g)
T:乳酸菌S-PT84原料の重量あたりの菌数(個/g)
[菌数(個/g)は、乳酸菌S-PT84の菌数(死菌)(個/g)であり、原料メーカー測定値]
【0050】
上記方法で試料100g当たりの乳酸菌S-PT84の菌数を求めたところ、4.2×1012個/100gであった。
【0051】
実施例1で調製した試料には、乳酸菌S-PT84以外にビフィズス菌原料が含まれる。ビフィズス菌原料についてDAP量の確認を行った。その結果、ビフィズス菌原料からはDAPは検出されなかった。
【0052】
乳酸菌S-PT84原料は菌体を培地(酵母エキス及びグルコースを含有)にて培養後、固液分離しその沈殿部を凍結乾燥、粉砕を経て原料化されている。本原料には培地の混入も考えられるため、乳酸菌S-PT84の培地原料について、DAP量の確認を行った。その結果、いずれの検体からもDAPは検出されなかった。以上の結果から、実施例1において試料から検出されるDAPはすべて乳酸菌S-PT84に由来すると考えられた。
【0053】
以上の結果より、DAPを含む細菌の菌数はDAP量を指標とした測定が可能であることが分かった。
【0054】
<実施例2>
DAPを含まない細菌として、ビフィズス菌のBifidobacterium bifidum(B.bifidum) NBRC100015株(以下、ビフィズス菌NBRC100015)を使用した。ビフィズス菌NBRC100015は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターから入手することができる(NBRC No.NBRC 100015)。乳酸菌S-PT84原料と混合するために、ビフィズス菌NBRC100015の培養液に脱脂粉乳を添加して粉末化したビフィズス菌NBRC100015原料(生菌3.4×1010個/g含有品)を調製した。なお、ビフィズス菌NBRC100015原料の生菌数は、一般財団法人日本食品分析センターによる測定値である。乳酸菌S-PT84原料には、試験例2と同じ乳酸菌S-PT84の死菌末(大洋香料(株)製、死菌1.8×1011個/g含有品)を使用した。
【0055】
乳酸菌S-PT84原料及びビフィズス菌NBRC100015原料を混合して、100gあたり、乳酸菌S-PT84(死菌)を4.1×1012個、ビフィズス菌NBRC100015(生菌)を2.6×1012個含む試料を調製した。
試料中のDAP量を上記のジアミノピメリン酸の定量方法で定量した。実施例1と同じ方法で、DAP量と乳酸菌S-PT84原料の重量とから検量線を作成し、試料中のDAP量から乳酸菌S-PT84菌数を求めた。
【0056】
DAP量から乳酸菌S-PT84菌数を求めたところ、試料中の乳酸菌S-PT84の菌数は4.5×1012個/100gであった。使用したビフィズス菌NBRC100015原料についてDAP量の確認を行ったところ、当該原料からはDAPは検出されなかった。
【0057】
試料中のビフィズス菌NBRC100015の生菌数を、当該試料を寒天培地を用いて培養を行った後、コロニーを計測する方法(培養法)で求めた。試料中のビフィズス菌NBRC100015の生菌数は、2.0×1012個/100gであった。
【0058】
<実施例3>
DAPを含まない細菌として、乳酸菌のLactobacillus acidophilus(L.acidophilus) NBRC13951株(以下、乳酸菌NBRC13951)を使用した。乳酸菌NBRC13951は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターから入手することができる(NBRC No.NBRC 13951)。乳酸菌S-PT84原料と混合するために、乳酸菌NBRC13951の培養液に脱脂粉乳を添加して粉末化した乳酸菌NBRC13951原料(生菌1.0×108個/g含有品)を調製した。なお、乳酸菌NBRC13951原料の生菌数は、一般財団法人日本食品分析センターによる測定値である。
乳酸菌S-PT84原料には、試験例2と同じ乳酸菌S-PT84の死菌末(大洋香料(株)製、死菌1.8×1011個/g含有品)を使用した。
【0059】
乳酸菌S-PT84原料及び乳酸菌NBRC13951原料を混合して、100gあたり、乳酸菌S-PT84(死菌)を4.1×1012個、乳酸菌NBRC13951(生菌)を7.7×109個含む試料を調製した。
試料中のDAP量を上記のジアミノピメリン酸の定量方法で定量した。実施例1と同じ方法で、DAP量と乳酸菌S-PT84原料の重量とから検量線を作成し、試料中のDAP量から乳酸菌S-PT84菌数を求めた。
【0060】
DAP量から乳酸菌S-PT84菌数を求めたところ、試料中の乳酸菌S-PT84の菌数は4.7×1012個/100gであった。使用した乳酸菌NBRC13951原料についてDAP量の確認を行ったところ、当該原料からはDAPは検出されなかった。
【0061】
試料中の乳酸菌NBRC13951の生菌数について、当該試料を寒天培地を用いて培養を行った後、コロニーを計測する方法(培養法)で求めた。試料中の乳酸菌NBRC13951の生菌数は、7.4×109個/100gであった。
【0062】
「食品衛生検査施設等における検査等の業務の管理の実施について」(平成九年四月一日)(衛食第一一七号)の「精度管理の一般ガイドライン」の「III 微生物学的検査における精度管理」には、添加した既知の微生物の回収率を少なくとも七〇%から一二〇%を目安として確保する旨が記載されている(「2 精度管理に必要な目標値の設定」の「(1)回収率等の確認」)。実施例1~3の乳酸菌S-PT84及び実施例2、3のビフィズス菌NBRC100015と乳酸菌NBRC13951において、各原料の定量値から算出した試料中の菌数(計算値)に対する試料の菌数の測定値は上記の範囲内であり、本発明の定量方法は細菌の定量に充分な精度を有するといえる。