IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニーの特許一覧

特開2024-96907カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品
<>
  • 特開-カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品 図1
  • 特開-カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品 図2
  • 特開-カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品 図3
  • 特開-カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品 図4
  • 特開-カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096907
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240709BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/38 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 3/40 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20240709BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEP
C08J9/04 CER
C08J9/04 CEX
C08J9/04 CEZ
C08L101/14
C11D17/06
C11D3/37
C11D3/20
C11D1/62
C11D3/22
C11D3/386
C11D1/66
C11D1/38
C11D3/395
C11D3/50
C11D3/48
C11D3/40
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/12
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024066189
(22)【出願日】2024-04-16
(62)【分割の表示】P 2022536564の分割
【原出願日】2020-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、フアン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ナ
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヨングリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶解性に優れたホームケア、ヘアケア、美容ケア、パーソナルケア製品に好適な可撓性多孔質溶解性固体シート物品を提供する。
【解決手段】水溶性ポリマーと、可塑剤と、カチオン性界面活性剤と、を含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、固体シート物品は、(i)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)100μm~2000μmの全体平均孔径、によって特徴付けられ、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比は0.9~2であり、固体シート物品は、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有し、上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられ、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率は、0.6~1.5である、可撓性多孔質溶解性固体シート物品とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーと、可塑剤と、カチオン性界面活性剤と、を含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、
前記固体シート物品は、(i)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)100μm~2000μmの全体平均孔径、によって特徴付けられ、
前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する重量比は0.9~2である、可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項2】
前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する前記重量比は、1~1.8、好ましくは1.1~1.7、より好ましくは1.2~1.6である、請求項1に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項3】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~65%、好ましくは10%~60%、より好ましくは15%~55%、更により好ましくは20%~50%、最も好ましくは22%~40%の前記可塑剤を含み、及び/又は前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~50%、好ましくは5%~45%、より好ましくは10%~40%、最も好ましくは15%~35%の前記布地柔軟剤を含む、請求項1又は2に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項4】
前記可塑剤は、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、及びジメチコンコポリオールからなる群から選択され、
好ましくは、前記可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、前記可塑剤はグリセリンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項5】
前記カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物及び/又はアミン化合物であり、
好ましくは、前記カチオン性界面活性剤は、ジエステル第四級アンモニウム(DEQA)化合物、モノ長鎖アルキル第四級アンモニウム化合物、ジ長鎖アルキル第四級アンモニウム化合物、モノ長鎖アルキルアミン化合物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
更により好ましくは、前記カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、ジアルキルジメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジエタノールアミン系(MDEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジイソプロパノールアミン系(MDIPA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、トリエタノールアミン系(TEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
最も好ましくは、前記カチオン性界面活性剤は、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド;ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド;セチルトリメチルアンモニウムクロリド;ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;水素添加タローアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムクロリド、ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウムクロリド、ジタローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジ水素添加タローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシルオキシイソプロピル)-N,N-ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項6】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~60%、好ましくは5%~50%、より好ましくは10%~45%、更により好ましくは15%~40%、最も好ましくは20%~30%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記水溶性ポリマーは、5,000~400,000ダルトン、より好ましくは10,000~300,000ダルトン、更により好ましくは15,000~200,000ダルトン、最も好ましくは20,000~150,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含み、
好ましくは、前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~60%、好ましくは5%~50%、より好ましくは10%~40%、最も好ましくは15%~40%の前記ポリビニルアルコールを含む、請求項7に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール及びデンプンを含み、
好ましくは、前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~60%、好ましくは5%~50%、より好ましくは10%~40%、最も好ましくは15%~35%の前記ポリビニルアルコールと、0.001%~5%、好ましくは0.01%~4.5%、より好ましくは0.1%~4%の前記デンプンと、を含む、請求項7に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーは、第1の重量平均分子量を有する第1のポリビニルアルコールと、第2の重量平均分子量を有する第2のポリビニルアルコールとを含み、前記第1の重量平均分子量は、好ましくは5,000~50,000ダルトン、より好ましくは10,000~40,000ダルトン、更により好ましくは15,000~35,000ダルトン、最も好ましくは20,000~30,000ダルトンであり、前記第2の重量平均分子量は、好ましくは20,000~400,000ダルトン、より好ましくは30,000~300,000ダルトン、更により好ましくは40,000~200,000ダルトン、最も好ましくは50,000~150,000ダルトンであり、
好ましくは、前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~60%、好ましくは2%~30%、より好ましくは3%~20%、最も好ましくは4%~15%の前記第1のポリビニルアルコールと、2%~60%、好ましくは4%~40%、より好ましくは6%~30%、最も好ましくは8%~25%の前記第2のポリビニルアルコールと、を含む、請求項7に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項11】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の0.01%~20%、好ましくは0.1%~12%、より好ましくは0.5%~8%、最も好ましくは1%~5%の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項12】
前記固体シート物品は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含み、コーティング組成物は、前記コーティング組成物が前記固体シート物品のいずれの外面上にも存在しないことを条件として、前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に存在し、好ましくは、前記コーティング組成物は、追加の界面活性剤、香料、シリコーン、乳化剤、溶媒、レオロジー改質剤、酵素、漂白剤、着色剤、光沢剤、移染防止剤、付着助剤、抗菌剤、非フィルム形成ポリマー、泡止め剤、消泡剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項13】
前記追加の界面活性剤は、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルアンホアセテート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記香料は、遊離香料、香料マイクロカプセル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記シリコーンは、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、ポリシリコーン、ポリメチルシルセスキオキサン、ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサンクロスポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記乳化剤は、モノグリセリド及びジグリセリド、脂肪アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、ポリヒドロキシステアリン酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記レオロジー改質剤は、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記付着助剤は、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記カチオン性ポリマーは、好ましくはカチオン性ヒドロキシエチルセルロースから選択される、請求項12に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項14】
前記コーティング組成物の前記2つ以上のシートに対する重量比は、0.01~2、好ましくは0.02~1、より好ましくは0.05~0.8、最も好ましくは0.08~0.5である、請求項12又は13に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項15】
前記固体シート物品は、
・85%~100%、好ましくは90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・前記固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~15重量%の最終水分含量、及び/又は
・0.5mm~4mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~1.5mmである各シートの厚さ、及び/又は
・50グラム/m~250グラム/m、好ましくは80グラム/m~230グラム/m、より好ましくは100グラム/m~220グラム/mの坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm~0.5グラム/cm、好ましくは0.06グラム/cm~0.4グラム/cm、より好ましくは0.07グラム/cm~0.3グラム/cm、最も好ましくは0.08グラム/cm~0.25グラム/cmの密度、及び/又は
・0.03m/g~0.25m/g、好ましくは0.04m/g~0.22m/g、より好ましくは0.05m/g~0.2m/g、最も好ましくは0.1m/g~0.18m/gの比表面積、によって特徴付けられる、請求項1~14のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項16】
水溶性ポリマーと、可塑剤と、カチオン性界面活性剤と、を含み、前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する重量比が0.9~2である、固体シート物品を作製するプロセスであって、前記プロセスは、
a)前記水溶性ポリマー、前記可塑剤、及び前記カチオン性界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製することと、
b)前記湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成することと、
c)前記通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成することと、
d)前記形成されたシートを乾燥させて前記固体シート物品を作製することと、を含む、固体シート物品を作製するプロセス。
【請求項17】
前記工程d)は、5分~300分、好ましくは10分~120分の時間にわたって、70℃~200℃、好ましくは90℃~140℃の温度で、前記形成されたシートの前記第1の面から前記第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って実施され、前記加熱方向は、前記乾燥時間の半分より長い間、好ましくは前記乾燥時間の75%より長い間、重力方向と実質的に反対になる、請求項16に記載の固体シート物品を作製するプロセス。
【請求項18】
前記湿潤プレミックスは、40℃及び1s-1で測定された1,000cp~25,000cpの粘度を有し、及び/又は前記通気された湿潤プレミックスは、0.05~0.7g/mL、好ましくは0.15g/mL~0.6g/mL、より好ましくは0.2g/mL~0.5g/mL、最も好ましくは0.25g/mL~0.45g/mLの密度を有する、請求項16に記載の固体シート物品を作製するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性界面活性剤を含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマー担体又はマトリックス中に界面活性剤及び/又は他の活性成分を含む可撓性溶解性固体シートは周知である。水溶性ポリマーは、固体シート中でフィルム形成剤、構造化剤、並びに他の成分の担体として機能することができる。このようなシートは、布地ケア製品、ホームケア製品、ヘアケア製品、美容ケア製品、パーソナルケア製品などとして使用され得る。特に、このような可撓性溶解性シートは、布地ケア活性物質(例えば、布地調整剤)、ホームケア活性物質(例えば、食器洗浄剤)、ヘアケア活性物質(例えば、ヘアコンディショナ)、美容ケア活性物質、及び/又はパーソナルケア活性物質としてカチオン性界面活性剤を含んでもよく、水に溶解すると、このような活性物質を送達するのに特に有用であり得る。同じ製品カテゴリ内の従来の液体形態の布地ケア、ホームケア、ヘアケア、美容ケア、及び/又はパーソナルケア製品と比較して、そのようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、そのようなシートは、より可撓性であり、脆性がより低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
溶解性を改善するために、国際公開第2010/077627号は、約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に水溶性ポリマー担体を含む原材料のプレミックスを形成し、これを激しく通気してプレミックス中に気泡を導入し、次いでバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。しかしながら、本発明の発明者らは、カチオン性界面活性剤を含有する多孔質固体シートの形成プロセスにおいて、通気されたプレミックスが所望よりも安定性が悪い場合があることを発見した。言い換えれば、通気されたプレミックス中に形成された気泡は、通気後に短時間で崩壊することがある。この場合、形成された多孔質シートは、予想よりも低い連続気泡含有パーセントを有することがあり、さもなければ、所望のOCF構造を確実に形成するために、通気されたプレミックスを可能な限り早く、若しくは通気直後に熱乾燥させる必要がある。これは、通気されたプレミックスを工業生産において通気直後に全く間隔を空けずに乾燥させることが現実的ではない場合があるため、特に大規模生産において、このような多孔質シートの製造プロセスを設計するのに望ましくない困難を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/077627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、更に改善された多孔性を有する多孔質シートを得るために、及び/又は工業生産を容易にするために、カチオン性界面活性剤を含有する多孔質シートの形成プロセスにおいて、通気されたプレミックスの安定性を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品を提供し、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比は約0.9~約2である。更に、本発明は、固体シート物品を調製するプロセスを提供し、プロセスは、a)水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製することであって、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比が約0.9~約2である、ことと、b)湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成することと、c)通気された湿潤プレミックスをシートに形成することと、d)形成されたシートを乾燥させることと、を含む。特に、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比は、約1~約1.8、好ましくは約1.1~約1.7、より好ましくは約1.2~約1.6であり得る。
【0007】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、プレミックス中の可塑剤とカチオン性界面活性剤との比が好ましい範囲内、例えば約0.9~約2であるとき、通気されたプレミックスの安定性が著しく向上し得ることを予期せず発見した。改善された安定性は、更に、著しく改善された細孔構造をもたらし、それによって消費者にとって望ましい著しく改善された溶解プロファイルをもたらし得る。また、改善された安定性は、固体シート物品の製造プロセスに著しく改善された柔軟性をもたらし得る。
【0008】
一態様では、本発明は、水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品に関し、固体シート物品は、(i)約80%~約100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)約100μm~約2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比は、約0.9~約2であり得る。
【0009】
固体シート物品は、好ましくは、固体シート物品の総重量の約1%~約65%、好ましくは約10%~約60%、より好ましくは約15%~約55%、更により好ましくは20%~50%、最も好ましくは22%~40%の可塑剤を含み得る。本発明の好ましいが必須ではない実施形態では、可塑剤はグリセリンであってもよい。
【0010】
固体シート物品は、好ましくは、固体シート物品の総重量の約1%~約50%、好ましくは約5%~約45%、より好ましくは約10%~約40%、最も好ましくは約15%~約35%のカチオン性界面活性剤を含み得る。本発明の好ましいが必須ではない実施形態では、カチオン性界面活性剤は、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシルオキシイソプロピル)-N,N-ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、C12~C22アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、C12~C22アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、例えば、ヤシトリメチルアンモニウムクロリド及びラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、アシル基は、動物性脂肪、不飽和脂肪酸、及び多価不飽和脂肪酸に由来する。
【0011】
固体シート物品は、好ましくは、固体シート物品の総重量の約1%~約60%、好ましくは約5%~約50%、より好ましくは約10%~約45%、最も好ましくは約15%~約40%の水溶性ポリマーを含み得る。本発明の好ましいが必須ではない実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、デンプン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0012】
更に、本発明の好ましいが必須ではない実施形態では、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の0.01%~約20%、好ましくは0.1%~約12%、より好ましくは0.5%~約8%、最も好ましくは1%~5%の非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0013】
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、
・85%~100%、好ましくは90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~15重量%の最終水分含量、及び/又は
・0.5mm~4mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~1.5mmである各シートの厚さ、及び/又は
・50グラム/m~250グラム/m、好ましくは80グラム/m~230グラム/m、より好ましくは100グラム/m~220グラム/mの坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm~0.5グラム/cm、好ましくは0.06グラム/cm~0.4グラム/cm、より好ましくは0.07グラム/cm~0.3グラム/cm、最も好ましくは0.08グラム/cm~0.25グラム/cmの密度、及び/又は
・0.03m/g~0.25m/g、好ましくは0.04m/g~0.22m/g、より好ましくは0.05m/g~0.2m/g、最も好ましくは0.1m/g~0.18m/gの比表面積、によって更に特徴付けられ得る。
【0014】
更に、本発明の固体シート物品は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含んでもよく、コーティング組成物は、コーティング組成物が固体シート物品のいずれの外面上にも存在しないことを条件として、2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に存在する。
【0015】
別の態様では、本発明は、シート物品を作製するプロセスに関し、プロセスは、a)水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含み、40℃及び1s-1で測定された約1,000cp~約25,000cpの粘度を有する、湿潤プレミックスを調製する工程であって、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比が約0.9~約2である、工程と、b)湿潤プレミックスを通気して、約0.05~約0.7g/mL、好ましくは約0.15g/mL~約0.6g/mL、より好ましくは約0.2g/mL~約0.5g/mL、最も好ましくは約0.25g/mL~約0.45g/mLの密度を有する通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、c)通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、d)形成されたシートを乾燥させてシート物品を作製する工程と、を含む。好ましくは、工程d)は、約5分~約300分、好ましくは約10分~約120分の時間にわたって実施され得る。好ましくは、工程d)における乾燥は、約70℃~約200℃、好ましくは約90℃~約140℃の温度で、形成されたシートの第1の面から第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って実施されてもよく、加熱方向は、乾燥時間の半分より長い間、好ましくは乾燥時間の75%より長い間、重力方向と実質的に反対になる。
【0016】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための対流式加熱/乾燥構成を示す。
図2】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するためのマイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。
図3】連続プロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。
図4】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性シートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。
図5】連続プロセスにおける別の可撓性多孔質溶解性シートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90°で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0019】
本明細書で使用するとき、「溶解性」という用語は、20℃で、かつ大気圧下で、全く撹拌せずに8時間以内に、十分な量の脱イオン水中に完全に又は実質的に溶解して、不溶残留物の残留が5重量%未満である、物品の能力を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、物品が制限されずかつ外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(即ち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、「シート」という用語は、三次元形状、即ち、厚さ、長さ、及び幅を有する非繊維状構造体を指すが、一方で、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比は、少なくとも約1:1である。好ましくは、この長さ対厚さのアスペクト比及びこの幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、またこの長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0022】
本明細書で使用するとき、「底面」という用語は、通気された湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直に接触する、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の表面を指し、一方、「上面」という用語は、底面とは反対側のシート物品の表面を指す。更に、このような固体シート物品は、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と底部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分割することができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、厚さが等しく、すなわち、各々が、シート物品の全厚の約1/3の厚さを有する。
【0023】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、気体、典型的には気体(空気など)を含有し、乾燥プロセス中に発泡構造が崩壊せずに、それにより物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有パーセントによって説明され得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」とは、目に見える固体を残さずに、又は目に見える分離相を形成せずに、水に完全に溶解する又は分散する、サンプル材料の能力であって、20℃で、かつ大気圧下で、十分な撹拌を伴って、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのそのような材料を1リットル(1L)の脱イオン水中に入れた場合における、能力を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「通気させる」、「通気させること」、又は「通気」という用語は、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物に気体を導入するプロセスを指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、「加熱方向」という用語は、熱源が物品に熱エネルギーを印加する方向であって、その結果、そのような物品の一方の側から他方の側へと減少する、そのような物品における温度勾配をもたらす方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が、物品に熱エネルギーを印加して、一方の側から反対側へと減少する温度勾配を発生させる場合、加熱方向は、その後、一方の側から反対側に延在するとみなされる。このような物品の両側又はこのような物品の異なる部分が、そのような物品にわたって観察可能な温度勾配を伴わずに同時に加熱され、その後、加熱は非方向的な様式で行われ、加熱方向は存在しない。
【0027】
本明細書で使用するとき、「実質的に反対側」又は「実質的にオフセットしている」という用語は、それらの間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、「実質的に整列された」又は「実質的な整列」という用語は、それらの間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「一次熱源」という用語は、物体(例えば、本発明による通気された湿潤プレミックスのシート)によって吸収される総熱エネルギーの50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「制御された表面温度」という用語は、比較的安定した、すなわち、+/-20%未満の変動、好ましくは+/-10%未満の変動、より好ましくは+/-5%未満の変動を有する表面温度を指す。
【0031】
「本質的に含まない(essentially free of)」又は「本質的に含まない(essentially free from)」)という用語は、示される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは、そのような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。示される物質がかかる組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在するような組成物又は製品が含まれ得る。
【0032】
II.本発明の固体シート物品の配合物
本発明の固体シート物品は、水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む。更に、本発明の固体シート物品は、1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明の固体シート物品は、重ね合わせた2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含み得る。この場合、コーティング組成物は、コーティング組成物が固体シート物品のいずれの外面上にも存在しないことを条件として、2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に存在してもよい。言い換えれば、コーティング組成物は、固体シート物品のシート間に添加され得る。
【0034】
1.水溶性ポリマー
上述したように、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む湿潤プレミックスによって形成され得る。このような水溶性ポリマーは、結果として得られる固体シート物品において、フィルム形成剤、構造剤、並びに他の活性成分(例えば、界面活性剤、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)として機能し得る。
【0035】
好ましくは、湿潤プレミックスは、プレミックスの約1重量%~約30重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約5重量%~約20重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約7重量%~約15重量%の水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0036】
乾燥後、水溶性ポリマーは、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品中に、固体シート物品の総重量の約1%~約60%、好ましくは約5%~約50%、より好ましくは約10%~約45%、更により好ましくは約15%~約40%、最も好ましくは約20%~約30%の範囲の量で存在することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品中に存在する水溶性ポリマーの総量は、そのような物品の総重量の約25%以下である。
【0037】
本発明の実施に好適な水溶性ポリマーは、約5,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約10,000~約300,000ダルトン、更により好ましくは約15,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約20,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものが選択され得る。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量を加算し、多孔質固体物内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じて計算する。本明細書で使用される水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を与える場合があり、これはひいては、通気工程中の気泡の数及びサイズ、並びに乾燥工程中の細孔膨張/開口結果に影響を与え得る。更に、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及びある界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。
【0038】
本発明の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸とメチルアクリレートとのコポリマー、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン及びカプロラクタムのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーと、カチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む合成ポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の水溶性ポリマーはまた、カラヤガム、トラガントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの、グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物、カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物、果実抽出物(ペクチン);キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0040】
改質された天然ポリマーはまた、本発明において水溶性ポリマーとして使用されてもよい。好適な改質された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の水溶性ポリマーは、デンプンを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「デンプン」という用語は、天然に存在するデンプン又は改質されたデンプンの両方を含む。デンプンの典型的な天然の供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果及び果実を挙げることができる。より具体的な天然の供給源としては、トウモロコシ、豆、ポテト、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、サトウモロコシ、及びそれらのろう質又は高級アミラーゼ種を挙げることができる。天然デンプンは、剪断されたデンプン又は熱抑制されたデンプンなどの物理的に改質されたデンプン、架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、並びにヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのコハク酸塩及び置換サクシネート誘導体などの化学的に改質されたデンプン、酸化、酵素変換、酸加水分解、熱若しくは酸デキストリン化、熱的及び/又は剪断された生成物によって調製される流動性又は薄い煮沸デンプン、本明細書で有用であり得る熱及び/又は剪断生成物、を含むデンプンに由来する変換生成物、並びに、当該技術分野において既知のアルファ化デンプン、を含んだ改質デンプンを形成するために当該技術分野において既知の任意の改質方法によって改質することができる。
【0042】
本発明の好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。本発明のより好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、デンプン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
ポリビニルアルコールは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度を特徴とし得る。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)から商品名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標) として得られるもの、並びにLubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも呼ばれる)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、このような物品の総重量の約1%~約60%、好ましくは約5%~約50%、より好ましくは約10%~約40%、更により好ましくは約15%~約40%、最も好ましくは約20%~約35%の、約80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0045】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、このような物品の総重量の約1%~約60%、好ましくは約5%~約50%、より好ましくは約10%~約40%、更により好ましくは約15%~約35%、最も好ましくは約20%~約30%の、約80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールと、それに加えてこのような物品の総重量の約0.001%~約5%、好ましくは約0.01%~約4.5%、より好ましくは約0.1%~約4%、更により好ましくは約1%~約4%、最も好ましくは約2%~約4%のデンプンとを含む。デンプンの存在は、必要な水溶性ポリマーの全体的な濃度を低下させるのに役立ち、及び/又は本明細書に記載の物理的/化学的特性の点で他の利点を提供することができる。しかしながら、いかなる理論にも束縛されるものではないが、デンプンが多すぎると、シート物品の溶解性、構造的一体性、及び/又は弾性を損なう場合があると考えられる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、固体シート物品の約5重量%以下、好ましくは約0重量%~約4.5重量%、より好ましくは約0重量%~約4重量%のデンプンを含むことが望ましい。
【0046】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、このような物品の総重量の約1%~約60%、好ましくは約2%~約30%、より好ましくは約3%~約20%、更により好ましくは約4%~約15%、最も好ましくは約4%~約10%の、約20,000~約30,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有する第1のポリビニルアルコールと、それに加えてこのような物品の総重量の約2%~約60%、好ましくは約4%~約40%、より好ましくは約6%~約30%、更により好ましくは約8%~約25%、最も好ましくは約12%~約22%の、約50,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有する第2のポリビニルアルコールとを含む。
【0047】
2.可塑剤
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、好ましくは、固体シート物品の総重量の約1%~約65%、好ましくは約10%~約60%、より好ましくは約15%~約55%、更により好ましくは約20%~約50%、最も好ましくは約22%~約40%の範囲の量で可塑剤を含む。それに対応して、このような固体シート物品を形成するために使用される湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約0.1重量%~約50重量%、好ましくは約1重量%~約40重量%、より好ましくは約5重量%~約30重量%、更により好ましくは約8重量%~約25重量%、最も好ましくは約10重量%~約20重量%の可塑剤を含み得る。
【0048】
本発明で使用されるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0049】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、及び他のモノ-及び多価アルコールなど)、モノ-、ジ-及びオリゴ-糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルビン酸塩、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
他の好適な可塑剤としては、アルキル及びアリルフタレート;ナフタレート;ラクテート(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びカリウム塩);ソルベス-30;尿素;乳酸;ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA);ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸;可溶性コラーゲン;変性タンパク質;L-グルタミン酸モノナトリウム;グリコール酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸及びサリチル酸などの、α及びβヒドロキシル酸;ポリメタクリル酸グリセリル;ポリマー可塑剤、例えば、ポリクオタニウム;タンパク質、並びに、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びリシンなどのアミノ酸;水素デンプン加水分解産物;他の低分子量エステル(例えば、C~C10アルコール及び酸のエステル);食品及びプラスチック業界の当業者に既知の任意の他の水溶性可塑剤;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。固体シート中の好ましい可塑剤、例えばグリセリンの存在は、更に抗しわ効果をもたらし得る。特に、固体シート物品が好ましい量のグリセリン(例えば、固体シートの総重量の22%~40%)を含むとき、抗しわ効果がより際立ち得る。
【0055】
3.カチオン性界面活性剤
本発明の物品の固体シート物品は、1つ以上のカチオン性界面活性剤を含む。カチオン性界面活性剤は、布地ケア活性物質、例えば、布地調整剤及び/又は布地柔軟剤、ホームケア活性物質、ヘアケア活性物質、美容ケア活性物質、及び/又はパーソナルケア活性物質として機能し得る。特に、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の約1%~約50%、好ましくは約5%~約45%、より好ましくは約10%~約40%、最も好ましくは約15%~約35%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、又はそれらの間の任意の範囲のカチオン性界面活性剤を含み得る。それに対応して、このような固体シート物品を形成するために使用される湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約0.1重量%~約40重量%、好ましくは約1重量%~約35重量%、より好ましくは約5重量%~約30重量%、更により好ましくは約8重量%~約35重量%、最も好ましくは約10重量%~約30重量%、例えば、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、又はそれらの間の任意の範囲のカチオン性界面活性剤を含み得る。
【0056】
具体的には、カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物及び/又はアミン化合物であってもよい。より具体的には、カチオン性界面活性剤は、ジエステル第四級アンモニウム(DEQA)化合物、モノ長鎖アルキル第四級アンモニウム化合物、ジ長鎖アルキル第四級アンモニウム化合物、モノ長鎖アルキルアミン化合物、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。更により具体的には、カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、ジアルキルジメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジエタノールアミン系(MDEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジイソプロパノールアミン系(MDIPA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、トリエタノールアミン系(TEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。最も具体的には、カチオン性界面活性剤は、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド;ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド;セチルトリメチルアンモニウムクロリド;ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;水素添加タローアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムクロリド、ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウムクロリド、ジタローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジ水素添加タローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシルオキシイソプロピル)-N,N-ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-ジ(アシルオキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。例示的なカチオン性界面活性剤としては、ジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリド(DEEDMAC)、ジパルメチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、ヤシトリメチルアンモニウムクロリド、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0057】
更に、一実施形態では、カチオン性界面活性剤は、脂肪酸とアミノアルコールとの反応生成物から形成されてもよく、これはモノエステル、ジエステル、及び一実施形態ではトリエステル化合物の混合物を生じる。別の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、モノアルキル第四級アンモニウム化合物、ジアルキル第四級アンモニウム化合物、ジアミド第四級化合物、ジエステル第四級アンモニウム化合物、モノエステル第四級アンモニウム化合物、又はこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、1つ以上の柔軟剤第四級アンモニウム化合物を含む。
【0058】
代表的な第四級アンモニウム化合物としては、アルキル化第四級アンモニウム化合物、環状又は環式第四級アンモニウム化合物、芳香族第四級アンモニウム化合物、ジ第四級アンモニウム化合物、アルコキシル化第四級アンモニウム化合物、アミドアミン第四級アンモニウム化合物、エステル第四級アンモニウム化合物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例は、米国特許第7,381,697号の第3欄43行~第4欄67行、米国特許第7135451号の第5欄1行~第11欄40行に記載されている。また、米国特許第4,424,134号、同第4,767,547号、同第5,545,340号、同第5,545,350号、同第5,562,849号、及び同第5,574,179号も参照されたい。
【0059】
好ましくは、カチオン性界面活性剤は、以下の式の化合物を含んでもよい。
{R4-m-N-[Z-Y-R}X
式中、各Rは、水素、短鎖C~C、一態様においてC~Cアルキル又はヒドロキシアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチルなど)、ポリ(C2~3アルコキシ)、ポリエトキシ、ベンジル、又はこれらの混合物のいずれかを含み、各Zは、独立して、(CH)n、CH2-CH(CH3)-、又はCH-(CH3)-CH2-であり、各Yは、-O-(O)C-、-C(O)-O-、-NR-C(O)-、又は-C(O)-NR-を含み得、各mは、2又は3であり、各nは、1~約4、一態様において2であり、各R中の炭素の合計(Yが-O-(O)C-又は-NR-C(O)-であるときには1を加える)は、C12~C22又はC14~C20であり得、各Rは、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基であり得、Xは、任意の相溶性アニオンを含み得る。一態様において、相溶性アニオンは、クロリド、ブロミド、メチルサルフェート、エチルサルフェート、サルフェート、及びニトレートを含み得る。別の態様において、相溶性アニオンは、クロリド又はメチルサルフェートを含み得る。本明細書で使用するとき、ジエステルが指定されている場合、それは、存在するモノエステルを含み得る。
【0060】
特に、好適なカチオン性界面活性剤は、脂肪酸とジアルキレントリアミンとの、例えば分子比約2:1の反応生成物であってもよく、この反応生成物は、次式の化合物を含有する。
-C(O)-NH-R-NH-R-NH-C(O)-R
式中、R、Rは、上記に定義したとおりであり、各Rは、C1~6アルキレン基、好ましくはエチレン基である。これらの活性成分の例は、約2:1の分子比でのタロー酸、キャノーラ酸又はオレイン酸とジエチレントリアミンとの反応生成物であり、反応生成物混合物は、それぞれ、次式のN,N’’-ジタローオイルジエチレントリアミン、N,N’’-ジキャノーラ-オイルジエチレントリアミン、又はN,N’’-ジオレオイルジエチレントリアミンを含有する。
-C(O)-NH-CHCH-NH-CHCH-NH-C(O)-R
式中、R及びRは二価エチレン基であり、Rは上記に定義したとおりであり、Rが植物若しくは動物供給源から誘導される市販のオレイン酸のオレオイル基である場合、この構造の許容可能な例としては、Henkel Corporationから入手可能なEMERSOL(登録商標)223LL又はEMERSOL(登録商標)7021が挙げられる。
【0061】
別の好適なカチオン性界面活性剤は、次式を有し得る。
[R-C(O)-NR-R-N(R)-R-NR-C(O)-R
式中、R、R、R、R及びXは、上記のように定義される。この活性成分の例は、次式を有するジ脂肪アミドアミン系柔軟剤である。
[R-C(O)-NH-CHCH-N(CH)(CHCHOH)-CHCH-NH-C(O)-RCHSO
式中、R-C(O)は、オレオイル基、ソフトタロー基、又は硬化タロー基であり、DegussaからそれぞれVARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)222、及びVARISOFT(登録商標)110の商品名で市販されている。
【0062】
別の好適なカチオン性界面活性剤は、以下の一般式を有し得る。
[RCHCH(YR)(CHYR)]X
式中、各Y、R、R、及びXは、上記と同じ意味を有する。好ましいカチオン性界面活性剤の例は、式1,2-ジ(アシルオキシ)-3-トリメチルアンモニオプロパンクロリドを有する「プロピル」エステル第四級アンモニウム化合物である。
【0063】
本明細書で有用なカチオン性界面活性剤は、1つのカチオン性界面活性剤であっても2つ以上のカチオン性界面活性剤の混合物であってもよい。好ましくは、カチオン性界面活性剤は、モノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩;モノ-長鎖アルキル四級化アンモニウム塩とジ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩との組み合わせ;モノ-長鎖アルキルアミン;モノ-長鎖アルキルアミンとジ-長鎖アルキル四級化アンモニウム塩との組み合わせ、及びモノ-長鎖アルキルアミンとモノ-長鎖アルキル四級化アンモニウム塩との組み合わせからなる群から選択することができる。
【0064】
本明細書で有用なモノ長鎖アルキルアミンは、好ましくは12~30個の炭素原子、より好ましくは16~24個の炭素原子、なおより好ましくは18~22個のアルキル基の、1つの長いアルキル鎖を有するものである。本明細書で有用なモノ-長鎖アルキルアミンとしてはまた、モノ-長鎖アルキルアミドアミンが挙げられる。一級、二級、及び三級脂肪族アミンが有用である。
【0065】
約12~約22個の炭素のアルキル基を有する三級アミドアミンが特に有用である。例示的な第三級アミドアミンとしては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジエチルアミン、アラキダミドエチルジエチルアミン、アラキダミドエチルジメチルアミン、ジエチルアミノエチルステアラミドが挙げられる。本発明で有用なアミンは、米国特許第4,275,055号(Nachtigalら)に開示されている。
【0066】
これらのアミンは、l-グルタミン酸、乳酸、塩酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、l-グルタミン酸塩酸塩、マレイン酸、及びこれらの混合物、より好ましくは、l-グルタミン酸、乳酸、クエン酸などの酸と、約1:0.3~約1:2、より好ましくは約1:0.4~約1:1のアミン対酸のモル比で組み合わせて使用され得る。
【0067】
本明細書で有用なモノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩は、12~30個の炭素原子、好ましくは16~24個の炭素原子、より好ましくはC18~22アルキル基を有する1つの長いアルキル鎖を有するものである。窒素に結合している残りの基は、1~約4個の炭素原子のアルキル基、又は最大約4個の炭素原子を有する、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、若しくはアルキルアリール基から独立して選択される。
【0068】
本明細書で有用なモノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩は、以下の式を有するものである。
【0069】
【化1】
式中、R75、R76、R77、及びR78のうちの1つは、12~30個の炭素原子のアルキル基、又は、最大約30個の炭素原子を有する芳香族基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、若しくはアルキルアリール基から選択され、R75、R76、R77、及びR78のうちの残りは、独立して、1~約4個の炭素原子のアルキル基、又は最大約4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、若しくはアルキルアリール基から選択され、Xは、塩形成アニオン、例えば、ハロゲン(例えば、クロリド、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、スルホネート、サルフェート、アルキルサルフェート、及びアルキルスルホネートラジカルから選択されるものである。アルキル基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル及び/又はエステル結合、並びにアミノ基などの他の基を含有し得る。より長鎖のアルキル基、例えば、炭素数が約12個以上のものは、飽和又は不飽和であってもよい。好ましくは、R75、R76、R77、及びR78のうち1つは、12~30個の炭素原子、より好ましくは16~24個の炭素原子、更により好ましくは18~22個の炭素原子、なおもより好ましくは22個の炭素原子のアルキル基から選択され、R75、R76、R77、及びR78の残りは、CH、C、COH、及びこれらの混合物から独立して選択され、Xは、Cl、Br、CHOSO、COSO、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0070】
かかるモノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩カチオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、及び水素添加タローアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0071】
使用されるとき、ジ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩は、好ましくは、レオロジー効果及びコンディショニング効果の安定性という観点から、1:1~1:5、より好ましくは1:1.2~1:5、更により好ましくは1:1.5~1:4の重量比で、モノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩及び/又はモノ長鎖アルキルアミン塩と組み合わされ得る。
【0072】
本明細書で有用なジ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩は、12~30個の炭素原子、より好ましくは16~24個の炭素原子、更により好ましくは18~22個の炭素原子の2つの長いアルキル鎖を有するものである。本明細書で有用なこのようなジ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩は、以下の式を有するものである。
【0073】
【化2】
式中、R71、R72、R73、及びR74のうちの2つは、12~30個の炭素原子、好ましくは16~24個の炭素原子、より好ましくは18~22個の炭素原子の脂肪族基、又は最大約30個の炭素原子を有する芳香族基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、若しくはアルキルアリール基から選択され、R71、R72、R73、及びR74の残りは、独立して、1~約8個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子の脂肪族基、又は最大約8個の炭素原子を有する芳香族基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、アルキルアミド基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、若しくはアルキルアリール基から選択され、Xは、ハライド(例えば、クロリド及びブロミド)、C1~C4アルキルサルフェート(例えば、メトサルフェート及びエトサルフェート)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される塩形成アニオンである。脂肪族基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル結合、及びアミノ基などの他の基を含有し得る。より長鎖の脂肪族基、例えば、炭素数が約16個以上のものは、飽和であっても不飽和であってもよい。好ましくは、R71、R72、R73、及びR74のうちの2つは、12~30個の炭素原子、好ましくは16~24個の炭素原子、より好ましくは18~22個の炭素原子のアルキル基から選択され、R71、R72、R73、及びR74の残りは、独立して、CH、C、COH、CH、及びこれらの混合物から選択される。
【0074】
このような好ましいジ長鎖アルキルカチオン性界面活性剤としては、例えば、ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウムクロリド、ジタローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジ水素添加タローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、及びジセチルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0075】
4.追加成分
上述の成分、例えば、水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤に加えて、固体シート物品は、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加成分を含んでもよい。特に、追加成分は、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。このような1つ以上の追加成分は、追加の界面活性剤;香料(カプセル化香料又は香料マイクロカプセルを含む)、シリコーン、乳化剤、溶媒(例えば、直鎖又は分岐鎖低級C~Cアルコール、ジオール、グリセロール、又はグリコール;C~Cアルカノールアミンなどのより低級のアミン溶媒、及びこれらの混合物;より具体的には、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミン)、担体、ヒドロトロープ、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白剤(光漂白剤を含む)及び漂白活性化剤、着色剤(色相染料を含む、顔料及び染料など)、光沢剤、移染防止剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、構造化剤、レオロジー改質剤、抑泡剤、加工助剤、抗菌剤、非フィルム形成ポリマー、泡止め剤、消泡剤などからなる群から選択され得る。
【0076】
追加の界面活性剤
固体シート物品での使用に好適な追加の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、両性界面活性剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の追加の界面活性剤は、固体シート物品の総重量の約0%~約25%、好ましくは約0%~約15%、例えば、約0.1%、約1%、約3%、約5%、約7%、約10%、又はそれらの間の任意の範囲で存在してもよい。追加の界面活性剤は、固体シート中、固体シート間のコーティング組成物中、又はその両方に存在してもよい。
【0077】
本明細書で使用されるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテル硫酸塩、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホン酸塩、一級又は二級アルカンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホ酢酸塩、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、好適なアニオン性界面活性剤としては、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS);約0.5~約5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(STS);非アルコキシル化C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート;C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS);一般式[R-SO-M]の有機硫酸反応生成物の水溶性塩(式中、Rは、約6~約20個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルからなる群から選択され、Mはカチオンである);β-アルキルオキシアルカンスルホネートが挙げられる。
【0078】
本明細書での使用に好適な非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特にアルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R(OCOH(式中、RはC~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは約1~約80である)のものである。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であり得るC~C12アルキルフェノールアルコキシレート;エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとの、C12~C18アルコール及びC~C12アルキルフェノール縮合物(例えば、BASFから販売されるPluronic(登録商標);C14~C22中鎖分岐鎖アルコール(branched alcohol、BA);C14~C22中鎖分岐鎖アルキルアルコキシレート、BAE(式中、xは1~30である);アルキル多糖類、具体的にはアルキルポリグリコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;並びにエーテル末端処理ポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、商標名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものも挙げられる。好ましい実施形態では、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体から選択される非イオン性界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)85)、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)21)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)61)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(Tween(登録商標)81)(これらは全てUniqemaから入手可能)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
本発明の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコール、例えば、AE7及びAE9が挙げられる。
【0080】
驚くべきことに、固体シート中の非イオン性界面活性剤の存在は、改善された溶解プロファイルをもたらし得る。好ましいが必須ではない実施形態では、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の約0.01%~約20%、好ましくは約0.1%~約12%、より好ましくは約0.5%~約8%、最も好ましくは約1%~約5%、例えば、約0.01%、約0.1%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約10%、約12%、約15%、又はそれらの間の任意の範囲の非イオン性界面活性剤を含み得る。更に、本発明の発明者らは、非イオン性界面活性剤の量が多すぎると(例えば、約10%、7%、又は5%超)、カチオン性界面活性剤の機能(例えば、布地柔軟剤としての機能)をある程度損なう場合があることを発見した。したがって、非イオン性界面活性剤が最も好ましい範囲の量、例えば約1%~約5%で存在するとき、改善された溶解とカチオン性界面活性剤の機能との間で完璧なバランスが達成され得る。
【0081】
本発明の固体シート物品の使用に好適な両性界面活性剤類は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く記載されるものであり、脂肪族ラジカルは、直鎖又は分枝鎖であってよく、脂肪族置換基の1つは、約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有する。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることで調製されるもののようなN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0082】
好適な双極性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものが挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有。そのような好適な双極性界面活性剤は、次式で表すことができる。
【0083】
【化3】
式中、Rは、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、Rは、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるとき、1であり、Yが窒素又はリン原子であるとき、2であり、Rは、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである。
【0084】
いくつかの実施形態では、追加の界面活性剤は、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルアンホアセテート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0085】
香料
本発明の固体シート物品は、香料を含んでもよい。好ましくは、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の約0.01%~約50%、好ましくは約0.02%~約30%、より好ましくは約0.1%~約20%、例えば、約0.01%、約0.02%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約5%、約10%、又はそれらの間の任意の範囲の香料を含み得る。
【0086】
特に、香料は、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。好ましくは、香料は、遊離香料、香料マイクロカプセル、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の香料を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%の本開示による固体物品中の香料がコーティング組成物中に存在する。それは、香料の性能の改善、例えば、寿命、香料安定性、堆積又は放出利益をもたらし得る。
【0088】
シリコーン
本発明の固体シート物品は、シリコーン、好ましくはオルガノシリコーンを含んでもよい。好ましくは、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の約0.01%~約50%、好ましくは約0.1%~約30%、より好ましくは約1%~約20%、例えば、約1%、約2%、約3%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、又はそれらの間の任意の範囲のシリコーンを含み得る。本発明の固体シート物品が布地調整製品として使用される場合、シリコーンは、共柔軟剤として機能し得る。
【0089】
特に、シリコーンは、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量の約0.01%~約100%、好ましくは約0.1%~約99.9%、より好ましくは約1%~約99%、例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又はそれらの間の任意の範囲のシリコーンを含み得る。
【0090】
好ましくは、好適なオルガノシリコーンは、Si-O部分を含んでもよく、(a)非官能化シロキサンポリマー、(b)官能化シロキサンポリマー、及びこれらの混合物から選択され得る。オルガノシリコーンの分子量は、通常、材料の粘度を参照して示される。一態様では、オルガノシリコーンは、25℃で約10~約2,000,000センチストークスの粘度を有することができる。別の態様では、好適なオルガノシリコーンは、25℃で約10~約800,000センチストークスの粘度を有してもよい。
【0091】
好適なオルガノシリコーンは、直鎖状、分岐鎖状、又は架橋状であってもよく、好適な例は、米国特許第6,815,069号、同第7,153,924号、同第7,321,019号、及び同第7,427,648号、並びに米国特許出願第61/319939号に記載されている。
【0092】
いくつかの実施形態では、シリコーンは、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、ポリシリコーン、ポリメチルシルセスキオキサン、ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサンクロスポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0093】
溶媒
固体シート物品中の他の任意の成分としては、溶媒、特に、ポリマー構造化剤の可溶化剤として及び乾燥促進剤として有用な水混和性溶媒及び共溶媒が挙げられ得る。特に、溶媒は、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。好適な溶媒の非限定的な例としては、アルコール、エステル、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルコール及びエステルがより好ましい。好ましいアルコールは一価である。最も好ましい一価アルコールは、エタノール、イソプロパノール、及びn-プロパノールである。最も好ましいエステルは、酢酸エチル及び酢酸ブチルである。好適な有機溶媒の他の非限定的な例は、ベンジルアルコール、酢酸アミル、酢酸プロピル、アセトン、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、トルエン、酢酸メチル、イソブタノール、n-アミルアルコール、n-ブチルアルコール、ヘキサン、及びメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、メチルエチルケトン、アセトン、及びこれらの組み合わせである。
【0094】
いくつかの実施形態では、溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0095】
付着助剤
一態様では、固体シート物品は、固体シート物品の総重量の約0.01%~約20%、約0.1~約15%、又は約0.2~約10%の付着助剤を含んでもよい。特に、付着助剤は、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。好適な付着助剤は、例えば、米国特許出願第12/080,358号に開示されている。
【0096】
一態様では、付着助剤は、カチオン性又は両性ポリマーであってよい。一態様では、付着助剤は、カチオン性ポリマーであってよい。カチオン性ポリマー一般、及びその製造方法は、文献において既知である。一態様では、カチオン性ポリマーは、組成物の目的の用途のpHにおいて、約0.005~約23、約0.01~約12、又は約0.1~約7ミリ当量/gのカチオン性電荷密度を有し得る。電荷密度が組成物のpHに依存するアミン含有ポリマーの場合、電荷密度は、製品の目的の用途のpHで測定される。このようなpHは、一般的に、約2~約11、より一般的には約2.5~約9.5の範囲である。電荷密度は、繰り返し単位当たりの正味電荷数を、繰り返し単位の分子量で除算することによって計算される。正電荷は、ポリマーの主鎖及び/又はポリマーの側鎖に位置してよい。特に、カチオン性ポリマーは、好ましくは200kDa~600kDa(例えば、400kDa)の重量平均分子量、0.1~0.3(例えば、0.18)の電荷密度、及び/又は0.2%~0.4%(例えば、0.28%)のアニドログルコース(anydroglucose)繰り返し単位当たりの窒素の平均重量パーセントを有する、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースであってもよい。
【0097】
好適なカチオン性ポリマーの1つの群としては、国際公開第00/56849号及び米国特許第6,642,200号に開示されているもの等の、好適な反応開始剤又は触媒を用いるエチレン性不飽和モノマーの重合により生成されるものが挙げられる。
【0098】
追加の補助成分
別の実施形態では、固体シート物品は、追加の補助成分を更に含んでもよい。特に、追加の補助成分は、固体シート及び/又はコーティング組成物中に存在してもよい。これらの追加の補助成分は、加工助剤として作用し、固体シート物品の特性、例えば、溶解度及び溶解速度、溶解安定性、保管中の湿度に対する耐吸湿性、伸縮性、感触、脆性、及び基材の質感、外観及び光沢、並びに基材の加工、成型、押出、又は乾燥の容易さ及び速度、物品の機械的取り扱い、及び物品の保管などを変更することができる。このような追加の補助成分としては、乳化剤、非フィルム形成ポリマー、粘着防止剤、泡止め剤、消泡剤、殺生物剤、防腐剤、着色剤、乳白剤、真珠光沢剤、充填剤及び増量剤、レオロジー改質剤などが挙げられる。
【0099】
レオロジー改質剤は、好ましくは、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0100】
乳化剤は、モノグリセリド及びジグリセリド、脂肪アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、ポリヒドロキシステアリン酸、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0101】
本発明の固体シート物品は、組成物での使用が既知であるか、あるいは有用であるような他の任意選択的な成分を更に含んでもよく、かかる任意選択的な材料は本明細書に記載の選択された不可欠な材料と互換性があるか、あるいは過度に製品性能を損なわないという条件で含まれる。
【0102】
III.固体シートを作製するためのプロセス
水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するためのプロセスは、a)水溶性ポリマー、可塑剤、及びカチオン性界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製する工程であって、可塑剤のカチオン性界面活性剤に対する重量比が約0.9~約2である、工程と、b)湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、c)通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、d)形成されたシートを乾燥させてシート物品を作製する工程と、を含み得る。
【0103】
特に、湿潤プレミックスの通気は、その後の乾燥時に内部にOCF構造を形成するのに十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために実施される。十分に通気された後、湿潤プレミックスは、非通気の湿潤プレミックス(不注意に閉じ込められた気泡をわずかに含んでもよい)又は不十分に通気された湿潤プレミックス(気泡をいくらか含有し得るが、非常に低い体積割合で及びかなり大きい気泡サイズのものを含んでもよい)の密度より著しく低い密度によって特徴付けられる。好ましくは、通気された湿潤プレミックスは、約0.1g/mL~約0.7g/mL、好ましくは約0.15g/mL~約0.6g/mL、より好ましくは約0.2g/mL~約0.5g/mL、最も好ましくは約0.25g/mL~約0.45g/mLの範囲の密度を有する。
【0104】
通気は、本発明における物理的又は化学的手段のいずれかによって達成することができる。一実施形態では、それは、例えば、ロータステータミキサー、プラネタリミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スバージャ、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な機械的処理手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成することができる。別の実施形態では、それは、化学的手段を通して、例えば、発泡系による二酸化炭素(COガス)の形成を含む1つ以上の成分の化学反応を介してインサイチュでガス形成を提供するために化学的発泡剤を使用して達成することができる。特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレータ又はミキサーを使用することによって、コスト効果的に達成され得ることがわかっている。
【0105】
国際公開第2010/077627号は、溶解を改善するように機能する約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(OCF)構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に原材料のプレミックスを形成し、これを激しく通気し、次いでバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。このようなOCF構造は、結果として得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、そのようなシート内には、より厚い気泡壁を有する、視覚的により高密度で、より多孔性の低い底部領域が依然として存在する。このような高密度の底部領域は、シートを通る水の流れに悪影響を及ぼし、それによってシートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼし得る。複数のこのようなシートを一緒に積層して多層構造を形成すると、複数の高密度底部領域の「バリア」効果が特に増強される。
【0106】
国際公開第2012/138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010/077627号のものと同様のプロセスを開示している。このような連続乾燥プロセスによって形成されるOCFシートは、その異なる領域にわたる、改善された細孔構造内の均一性/一貫性によって特徴付けられる。残念ながら、そのようなOCFシートには、比較的小さい細孔開口を有する上面及び比較的小さい細孔を有する上部領域(すなわち、クラスト状の上部領域)などの律速因子が依然として存在し、これは、内部を通過する水の流れに悪影響を及ぼし、その溶解を減速させる可能性がある。
【0107】
上述のプロセスにおける乾燥工程中に、OCF構造は、水蒸発、気泡崩壊、薄膜気泡表面から気泡間のプラトー境界内への介在液体排出(気泡間の開口部を生成して連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化といった同時的な機構の下で形成される。様々な処理条件が、例えば、湿潤プレミックス中の固体含有量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度などのこれらの機構、並びに制御された排液を達成して所望のOCF構造を形成するようにかかる処理条件を均衡化させる必要性に影響し得る。
【0108】
上述の処理条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に顕著な影響を及ぼし得るということが、驚くべきかつ予想外の発見であった。
【0109】
例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向性物質(すなわち、はっきりとした加熱方向がない)に適用される場合、又は乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向と実質的に整列している場合(すなわち、それらの間のオフセット角度が90°未満である場合)、得られる可撓性多孔質溶解性固体シートは、より小さい細孔開口を有しかつその厚さにわたる方向に沿った異なる領域においてより大きな孔径変動を有する上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分にわたって、加熱方向が重力方向からオフセットしているとき(すなわち、それらの間に90°以上のオフセット角度で)、得られる固体シートは、より大きい細孔開口を有しかつそのようなシートの厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動を有する上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、そこを流れる水に対して受容性が高く、したがって、前者のシートよりも溶解性が高い。
【0110】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は誤整列、及びその持続時間は、気泡間の介在液体排出にかなり影響し、これに対応して、固化プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらし得ると考えられる。このような違いは、以下の図1図4により明確に示される。
【0111】
図1は、対流式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型10(金属、セラミック、又はTeflon(登録商標)などの任意の好適な材料で作製され得る)を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面12A(すなわち、上部面)と、対向する第2の面12B(すなわち、金型10の支持面と直接接触しているので底部面)と、を有する、シート12を形成する。このような金型10を、乾燥工程中に約45~46分間130℃の対流式オーブン内に配置する。対流式オーブンは、シート12を上方から、すなわち、下向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印で示されるように)に沿って加熱し、これは、シート12内に第1の面12Aから対向する第2の面12Bへと減少する温度勾配を形成する。下向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と整列し、そのような整列位置は、乾燥時間全体にわたって維持される。乾燥中、重力は液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する一方で、下向きの加熱方向は、上部領域を最初に乾燥させ、底部領域を最後に乾燥させる。その結果、多孔質固体シートが、完全に膨張する可能性を有していなかった気泡によって形成された小さな開口部を有する多数の細孔を含む上面を有して形成される。より小さい細孔開口を有するこのような上面は、シートへの水の浸入に最適ではなく、これは、シートの溶解速度を制限し得る。一方、このようなシートの底部領域は、密度が高くかつ多孔性が低く、完全に膨張した気泡によって形成されるが数の非常に少ないより大きな細孔を有しており、そのような底部領域内の細孔間の気泡壁は、重力によってもたらされる下向きの液体排出を起因として厚い。より少ない細孔及び厚い気泡壁を有するこのような高密度の底部領域は、シートの全体的な溶解速度に対して更なる律速因子である。
【0112】
図2は、マイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型30を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面32A(上部面)と、対向する第2の面32B(底部面)と、を有するシート32を形成する。次いで、このような金型30を、Industrial Microwave System Inc.(North Carolina)によって提供される低エネルギー密度マイクロ波アプリケータ(図示せず)内に配置し、2.0kWの電力、1フィート/分のベルト速度、及び54.4℃の周囲空気温度で動作させる。金型30を、乾燥工程中、約12分間、このようなマイクロ波アプリケーション下に放置する。このようなマイクロ波アプリケータは、はっきりとした又は一貫した加熱方向を伴わずに、シート32を内部から加熱する。それに対応して、当該シート32には、温度勾配が形成されない。乾燥中、シート32全体を同時に加熱するか、又はほぼ同時に加熱するが、重力(白い矢印によって示されるように)は、依然として底部領域に向かって液体プレミックスを下向きに排出する。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、マイクロ波式の乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、シート32全体の同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。更に、マイクロ波エネルギーは、シート32内の水を加熱し、そのような水を沸騰させ、不規則な大きさの気泡を発生させ、厚い気泡壁を有する意図しない高密度領域を形成し得る。
【0113】
図3は、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型40を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面42A(上部面)と、対向する第2の面42B(底部面)と、を有するシート42を形成する。次いで、このような金型40を、国際公開第2012138820号の実施例1、表2に記載されているものと同様の条件下で、連続衝突オーブン(図示せず)内に配置する。このような連続衝突オーブンは、対向するかつオフセットする加熱方向(2つのクロスハッチングの矢印によって示されるように)で、上部及び底部の両方からシート42を加熱する。それに対応して、乾燥中にシート42内には、はっきりとした温度勾配は形成されず、シート42全体が、その上面及び底面の両方からほぼ同時に加熱される。図3に記載のマイクロ波式加熱/乾燥構成と同様に、重力(白い矢印によって示されるように)は、図4のこのような衝突オーブン式加熱/乾燥構成において、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出し続ける。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、その両方からのシート42のほぼ同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。
【0114】
上述の加熱/乾燥構成(対流式、マイクロ波式又は衝突オーブン式)に加えて、本発明は、加熱の方向が、底部領域に向かう重力によって生じる液体の排液を妨害/低減するように(これにより、底部領域における密度を低減し、細孔構造を改善する)、かつ乾燥中に上面付近の気泡が膨張するためにより多くの時間をかけることを可能にするように(これにより、結果として得られるシートの上面にかなり大きな細孔開口を形成する)、意図的に構成されている、通気された湿潤プレミックスを乾燥させるための別の加熱/乾燥構成を提供する。これらの両特徴は、シートの全体的な溶解速度を改善するために機能し、したがって望ましい。
【0115】
図4は、本発明の一実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。具体的には金型50を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面52A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面52B(すなわち、上部面)と、を有するシート52を形成する。このような金型50を、乾燥工程中、加熱された表面(図示せず)上、例えば、約125~130℃の制御された表面温度を有する予め加熱されたペルチェプレート上に、約30分間配置する。熱は、金型50の底部における加熱された表面からその金型を通って伝導し、シート52を下方から、すなわち、上向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って加熱し、これは、シート52内に第1の面52A(底部面)から対向する第2の面52B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。このような上向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と反対であり、乾燥時間全体にわたってそのように維持される(すなわち、加熱方向は、乾燥時間のほぼ100%の重力方向とは反対である)。乾燥中、重力は依然として、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する。しかしながら、上向きの加熱方向は、シートを下から上に乾燥させ、底部領域での熱により発生した水蒸気が、上向きに上昇して固化マトリックスから逃れるため、底部領域に向かう下向きの液体排出は、固化マトリックス及び上昇水蒸気によって著しく制限され、「妨害」/低減される。それに対応して、得られる乾燥シートの底部領域は密度が低く、比較的薄い気泡壁を有する多数の細孔を含む。更に、上部領域は、このプロセス中に乾燥される最後の領域であるため、上部領域内の気泡は、膨張するのに十分な時間を有して、得られるシートの上面にかなり大きな開いた細孔を形成し、これは、シートへの水の進入を促進するのに特に有効である。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0116】
図5は、本発明の別の実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。具体的には、供給トラフ60を、通気された湿潤プレミックス61で充填する。加熱された回転可能なシリンダ70(ドラム乾燥機とも称される)を、供給トラフ60の上方に配置する。加熱されたドラム乾燥機70は、約130℃の制御された表面温度によって特徴付けられる円筒状の加熱された外面を有し、これは、時計回り方向(矢印を有する細い曲線によって示されるように)に沿って回転して、供給トラフ60から通気された湿潤プレミックス61を拾い出す。通気された湿潤プレミックス61は、ドラム乾燥機70の円筒状の加熱された外面上に薄いシート62を形成し、通気された湿潤プレミックスのそのようなシート62は、約10~15分間回転されて乾燥させられる。このように形成されたシート62の一貫した厚さを確保するために、通気された湿潤プレミックス61の粘度並びにドラム乾燥機70の回転速度及び表面温度を単に調節することによって、シート62の厚さを制御することが可能であるが、レベリング刃(図示せず)をスラリー拾い出し位置付近に配置してもよい。乾燥されると、シート62は、ドラム回転の終わりに手動で又はスクレーパ72によって拾い出され得る。
【0117】
図5に示すように、通気された湿潤プレミックス61によって形成されたシート62は、加熱されたドラム乾燥機70の加熱された外面に直接接触する第1の面62A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面62B(すなわち、上部面)と、を含む。それに対応して、ドラム乾燥機70からの熱は、外向きの加熱方向に沿ってシート62に伝導し、シート62の第1の面62A(底部面)を最初に加熱し、次いで、対向する第2の面62B(上部面)を加熱する。このような外向きの加熱方向は、シート62内に第1の面62A(底部面)から対向する第2の面62B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。外向きの加熱方向は、非常にはっきりとしたかつ予想可能な経路(図4の複数の外向きに延びたクロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って、ドラム乾燥機70が回転するにつれて、ゆっくりとかつ常に変化する。外向きの加熱方向及び重力方向(白い矢印によって示されるような)の相対的な位置もまた、同様のはっきりとしたかつ予測可能な様式で減速及び常時変化する。乾燥時間の半分未満の間(すなわち、加熱方向が水平の破線の下にあるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°未満のオフセット角度となって重力方向と実質的に整列される。乾燥時間の大部分の間(すなわち、加熱方向が水平の破線と同一であるか、又はそれを超えるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°以上のオフセット角度となって重力方向と反対又は実質的に反対になる。シート62の初期の「開始」コーティング位置に応じて、加熱方向は、乾燥時間の55%超(コーティングがドラム乾燥機70のちょうど底部で始まる場合)、好ましくは乾燥時間の60%超(コーティングが図5に示されるようにドラム乾燥機70のより高い位置で開始する場合)にわたって、重力方向と反対又は実質的に反対になることができる。結果的に、乾燥工程の大部分の間、回転ドラム式加熱/乾燥構成でのこのゆっくりとした回転及び加熱方向の変化は、重力によって引き起こされるシート62内の液体排出を制限及び「妨害」/低減するように依然として機能することができ、その結果、そのように形成されたシートにおけるOCF構造の改善をもたらす。加熱されたドラム乾燥機70によって乾燥されることで得られるシートはまた、多数のより均一なサイズの細孔を有する低密度の底部領域と、比較的大きい細孔開口を有する上面と、によって特徴付けられる。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0118】
IV.本発明の固体シート物品の物理的特性
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、シート物品へのより容易な水の侵入、及び水中におけるシート物品のより速い溶解を可能にする改善された細孔構造によって特徴付けられる。
【0119】
一般に、このような固体シート物品は、(i)以下の試験3によって測定される、約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定される、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径、によって特徴付けられてもよい。全体平均孔径は、本発明のOCF構造の多孔度を定義する。連続気泡含有パーセントは、本発明のOCF構造中の細孔間の相互結合性を定義する。OCF構造の相互結合性はまた、国際公開第2010/077627号及び同第2012/138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0120】
本発明のこのような固体シート物品は、対向する上面及び底面を有し、その上面は、以下の試験1に記載のSEM法によって測定される、約300μm超、好ましくは約310μm超、好ましくは約320μm超、より好ましくは約330μm超、最も好ましくは約350μm超の表面平均孔径によって特徴付けられてもよい。
【0121】
また更に、本発明の固体シート物品は、その厚さ方向に沿った異なる領域間の均一な孔径分布によって特徴付けられてもよい。具体的には、本発明の固体シート物品は、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シート物品の上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約1~約1.2であり得る。更に、本発明の固体シート物品は、約0.5~約1.5、好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、並びに約1~約1.5、好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比によって特徴付けられてもよい。
【0122】
好ましくは、本発明の固体シート物品は、以下の試験2によって測定される、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さによって更に特徴付けられる。
【0123】
本発明の固体シート物品は、少量の水を含んでもよい。好ましくは、それは、以下の試験4によって測定される、固体シート物品の約0.5重量%~約25重量%、好ましくは約1重量%~約20重量%、より好ましくは約3重量%~約15重量%の最終水分含量によって特徴付けられる。
【0124】
本発明の固体シート物品の各シートは、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約1.5mmの範囲の厚さを有し得る。固体シート物品の厚さは、以下に記載の試験6を使用して測定することができる。
【0125】
本発明の固体シート物品は、以下に記載の試験6によって測定される、約50グラム/m~約250グラム/m、好ましくは約80グラム/m~約230グラム/m、より好ましくは約100グラム/m~約220グラム/mの坪量によって更に特徴付けられてもよい。
【0126】
また更に、本発明の固体シート物品は、以下の試験7によって測定される、約0.05グラム/cm~約0.5グラム/cm、好ましくは約0.06グラム/cm~約0.4グラム/cm、より好ましくは約0.07グラム/cm~約0.3グラム/cm、最も好ましくは約0.08グラム/cm~約0.25グラム/cmの範囲の密度を有してもよい。本発明の固体シート物品の密度は、全体的な体積膨張を招く細孔膨張にも起因して、通気された湿潤プレミックスのシートの密度よりも低くてもよい。
【0127】
更に、本発明の固体シート物品は、以下に記載の試験8によって測定される、約0.03m/g~約0.25m/g、好ましくは約0.04m/g~約0.22m/g、より好ましくは0.05m/g~0.2m/g、最も好ましくは0.1m/g~0.18m/gの比表面積によって特徴付けられ得る。本発明の固体シート物品の比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シート物品がより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0128】
V.複数のシートの多層構造への変換
本発明の可撓性溶解性多孔質固体シートが形成されると、上述したように、そのようなシートの2つ以上を更に組み合わせて及び/又は処理して、球状、立方体、長方形、楕円形、円筒形、ロッド、シート、花形、扇型、星形、ディスク形状などが挙げられるが、これらに限定されない任意の望ましい三次元形状の溶解性固体シート物品を形成することができる。シートは、その例として化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意の手段によって、組み合わされて及び/又は処理してもよい。このような組み合わせ工程及び/又は処理工程は、本明細書において集合的に「変換」プロセスと称され、すなわち、これは、本発明の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートを、所望の三次元形状を有する溶解性固体シート物品に変換するように機能する。
【0129】
従来の溶解性固体物品は、比較的高い長さ/幅対厚さ比を有し、すなわち、このような物品の水への迅速な溶解を確実にするために、比較的薄い。したがって、典型的には、このような溶解性固体物品は、典型的には、比較的大きいが薄いシート製品の形態で提供され、これは、取り扱いが困難となる場合があり(例えば、使用時に過度に柔らかく、容易に一緒にくっついて使用時に分離が困難である)、消費者にとって審美的に心地良いものではない。しかしながら、溶解要件によって付与される制約に起因して、そのような製品形態の変化又は改善のための空間はほとんど又は全く存在しない。
【0130】
本発明の固体シートの複数の層を積み重ねることによって形成される三次元多層固体物品は、同一のアスペクト比を有する単層固体物品よりも溶解性が高いことが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。これにより、このような固体物品を厚さ方向に沿ってかなり延ばして、取り扱いがより容易でかつ消費者にとってより審美的に心地良い(例えば、厚いパッド又は更には立方体の形態の製品)三次元製品形状を作成することが可能になる。
【0131】
具体的には、本発明の固体シートの複数の層を積み重ねることによって形成される多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法に対して垂直である)によって特徴付けられ、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球状の形状を有することに留意されたい。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。
【0132】
本発明の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有してもよい。
【0133】
上述の多層溶解性固体物品は、2つ以上のこのような可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。例えば、それは、約2~約50、好ましくは約3~約40、更に好ましくは約4~約30の可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。本発明に従って作製された可撓性溶解性多孔質シート内の改善されたOCF構造は、多くのシート(例えば、15~40)を一緒に積み重ねることを可能にする一方で、積層体に十分な全体的溶解速度を依然として提供する。
【0134】
更に、本発明の固体シート物品は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含んでもよく、コーティング組成物は、コーティング組成物が固体シート物品のいずれの外面上にも存在しないことを条件として、2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に存在する。言い換えれば、1つ以上の機能性成分は、上記の多層溶解性固体物品の個々のシート間に「挟まれる」ことができる。特に、コーティング組成物は、任意の適切な手段、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、又は更には蒸着によって、多層溶解性固体物品の個々のシートの間に塗布することができる。より具体的には、コーティング組成物は、積層体内の隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布することができる。
【0135】
好ましくは、上述したように、コーティング組成物は、シリコーン及び/又は他の成分、例えば、追加の界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)、香料、及びレオロジー改質剤を含み得る。コーティング組成物は、20℃及び1s-1で測定されるとき、約1cps~約25,000cps、好ましくは約2cps~約10,000cps、より好ましくは約3cps~約5,000cps、最も好ましくは約1,000cps~約5,000cpsの粘度を有し得る。粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる1.0レシプロカル秒の剪断速度で測定する。本発明の驚くべきかつ予期せぬ発見は、コーティング組成物を含有する三次元多層固体物品が、同量の活性成分を有するがコーティング組成物を含まない多層固体物品よりも著しく改善された溶解プロファイルを有することである。更に、コーティング組成物を含む固体シート物品は、コーティング組成物を含まない固体シート物品と比較して、改善された柔軟性及び/又は抗しわ効果を含む追加の利点を提供することができる。
【0136】
更に、このような機能性成分が個々のシートの周辺部付近の切断シール又は端部シールに妨害されないために、このような機能性成分は、2つの隣接するシート間の中央領域内に位置することが好ましく、この領域は、このような隣接するシートの周辺部から、最大寸法Dの少なくとも10%の距離を空けた領域として画定される。好ましくは、固体シート物品中のコーティング組成物のシートに対する重量比は、約0.01~約2、好ましくは約0.02~約1、より好ましくは約0.05~約0.8、最も好ましくは約0.08~約0.5、例えば、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.1、約0.15、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、又はそれらの間の任意の範囲である。
【0137】
試験法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定する走査型電子顕微鏡(SEM)方法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本発明の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで動作させる。最低5つの顕微鏡画像を、各サンプルにわたってランダムに選択された位置から収集し、平均孔径が推定される約43.0mmの総分析面積を得る。
【0138】
次いで、SEM顕微鏡写真を、まず、Matlab内の画像解析ツールボックスを使用して処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、Matlabの「imhist」関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを生成する。典型的には、このようなヒストグラムから、細孔内のより明るいシート表面の画素及びより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかとなる。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を、0の強度値に設定し、それよりも強度値が高い画素を1に設定し、これによって、2値の白黒画像を生成する。次いで、その2値画像を、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を使用して分析し、細孔面積比及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、画素/mmスケーリング係数を提供する。分析のために、自動閾値化機能及び分析粒子機能を使用して、各細孔を分離する。分析関数からの出力は、画像全体と細孔面積とに対する面積比及び検出された細孔ごとの細孔周長を含む。
【0139】
平均孔径は、D50として定義され、すなわち、総細孔面積の50%は、D50平均直径以下の水力直径を有する細孔から構成される。
水力直径=‘4細孔面積(m)/細孔周長(m)’
これは、全て円形ではない細孔を考慮するために計算された等価直径である。
【0140】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚さを決定するためのMicro-Computed Tomographic(μCT)方法
多孔度は、空隙空間のOCFによって占有される全空間に対する比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、空隙ボクセルの全ボクセルに対する比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、固体空間の全空間に対する比率であり、SVFは、占有されたボクセルの全ボクセルに対する比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0141】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な計測器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG、Bruttisellen,Switzerland)である。エネルギーレベル:133μAで45kVp;投影:3000;視野:15mm;積分時間:750ms;平均:5回;及びボクセルサイズ:ピクセル当たり3μm。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0142】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、サンプルの走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、エッジ/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0143】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合しかつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0144】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher ScientificのAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworksのMATLAB(R2017a)を使用して行った。
【0145】
試験3:シート物品の連続気泡含有パーセント
連続気泡含有パーセントを、ガス比重瓶法を通して測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0146】
ASTM標準試験方法D2856は、気体比重瓶(air comparison pycnometer)のより古いモデルを使用して開放気泡の割合を決定するための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc Pycnometerを使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に開放気泡パーセントを決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡比率を決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用して、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の等式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定される幾何学的体積を、Accupycによって測定される連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積100
【0147】
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0148】
試験4:シート物品の最終水分含量
本発明の固体シート物品の最終水分含量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0149】
試験5:シート物品の厚さ
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の厚さを、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメータ又は隙間ゲージを使用して得る。そのマイクロメータは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm)の印加圧力において厚さを測定する。
【0150】
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の厚さは、プラテンを上げて、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に置き、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、シート物品の厚さをミリメートル単位で数値表示装置上で測定することにより、測定する。平らでないより堅い基材の場合を除いて、厚さを可能な限り小さい表面圧力において測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全てのエッジまで十分に延ばすべきである。
【0151】
試験6:シート物品の坪量
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の坪量を、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m)として計算する。その面積は、シート物品の外側エッジに直角の平坦表面上の投影面積として計算される。本発明の固体シート物品は、10cm×10cmの正方形サンプルに切断されているため、その面積は既知である。次いで、このような正方形サンプルの各々を秤量し、次に、得られた重量を100cmの既知の面積で割って、対応する坪量を決定する。
【0152】
不規則な形状の物品に対しては、それが平らな物体である場合、その面積は、したがってそのような物体の外周内で取り囲まれている面積に基づいて計算される。したがって、球状物体に関しては、面積は、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)として計算される。したがって、円筒状物体に対しては、面積は、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして計算される。不規則な形状の三次元物体に対しては、その面積は、この側部に直角に方向付けられた平坦表面上に投影される最大外側寸法を備える側部に基づいて計算される。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影がつけられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成することができる。
【0153】
試験7:湿潤プレミックス及びシート物品の密度
湿潤プレミックスの密度は、次の等式によって決定される。計算密度=1リットル当たりの湿潤プレミックスの重量(g/mL)。
【0154】
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の密度は、次の等式によって決定される。計算密度=多孔質固体物の坪量/(多孔質固体物の厚さ×1,000)。可撓性多孔質固体物の坪量及び厚みは、本明細書に記載の方法に従って決定される。
【0155】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模の固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初の工程は、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定する。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0156】
試験9:溶解速度
最初に、固体シートを、50±2%の周囲相対湿度及び23±1℃の周囲温度で24時間保管する(すなわち、馴化工程)。上記の最初の馴化工程に続いて、25mmの中空穴パンチを使用して、最初に大きい固体シートから直径25mmのディスクを切断する。発泡体ディスクの必要数は、全ての発泡体ディスクの総質量が0.1g以上になるように設定される。
【0157】
次いで、必要数の発泡体ディスクを上から下の配向に積み重ね、内径25mm、長さ100m、及び調節可能かつ取り外し可能なエンドピースを有するOmnifit(商標) EZクロマトグラフィーカラム(006EZ-25-10-AF)の内部に配置する。発泡体ディスクの積層体は、カラムを通過する流れの方向が発泡体ディスクの上面に垂直になるようにカラムの内部に配置される。カラム内に配置後、エンドピースをカラムに挿入し、2つの内部フリット間の垂直距離が発泡体ディスクの積層体の厚さに等しくなるまで調整する。
【0158】
Masterflexシリコーンチューブ(MFLEX SILICONE #25 25’)及びMasterflex蠕動ポンプ(MFLX L/S 1CH 300R 115/230 13124)を使用して、カラムを通過する水の流れを制御する。異なるポンプRPM設定で水を流してポンプ、チューブ、及び空のカラムに通過させ、規定時間にわたって収集された水の体積を記録することによって、システム流量を較正する。全ての実験について、5リットル/時間の流量を使用した。
【0159】
入口及び出口チューブの両方を、周囲温度で500mLの脱イオン水を含む1リットルビーカー内に配置する。ビーカーを磁気撹拌機のプレート上に置き、長さ23mm及び厚さ10mmを有する磁気撹拌子をビーカー内に配置し、撹拌機の回転速度を300rpmに設定する。Mettler Toledo S230導電率計を1413μS/cmに較正し、プローブを水のビーカー内に配置する。
【0160】
システムを通過する水流を開始する。最初の水滴がカラム内で発泡体に接触するのが視覚的に見えたら、導電率計のデータ記録機能を開始する。データを少なくとも20分間記録する。
【0161】
発泡体の溶解率が90又は95%に達するのに必要な時間を推定するために、最初に、発泡体ディスクの層が1つずつ500mL脱イオン水の撹拌ビーカーに落下する較正曲線を作製する。個々の発泡体ディスクのそれぞれの質量と、5分後の導電率とを共に記録する。このプロセスを最大で合計5つのディスクについて繰り返す。データに線形関数を当てはめ、次いでこれを使用して、カラム内に配置された発泡体ディスクの総質量に基づいて各溶解試験での最大導電率を推定する。次いで、溶解率を以下のように計算する。
溶解%=実験的に測定された導電率/最大導電率100
【0162】
次いで、90又は95%の溶解率を達成するのに必要な時間を、この計算データから得る。各試験式について較正手順を繰り返す。
【0163】
試験10:固体シートの弾性
固体シートの伸張を、Material Testing System機器(MTS Tensile Tester Criterion(登録商標)Series,Model 42)を使用することによって固体シートの弾性の測定値として決定する。固体シートを予め馴化し、相対湿度10%及び23+/-1℃で24時間平衡化する。予め馴化した後、幅20mm及び長さ100mmの試験サンプル(例えば、ストリップ)を切断する。試験ストリップを機器の取り付け台に両側でしっかりと固定し(試験中の滑りを防止する程度まで)、毎分200mmの一定のヘッド速度で負荷を加えて、中点において毎分100mmの割合でストリップを延伸する。破断したときのストリップの伸びの全距離(すなわち、伸張)として、破断ひずみ(mm)を記録する。
【0164】
試験11:固体シートの柔軟性
固体シートの柔軟性を、以下のように測定する。
複数の半自動洗濯機(例えば、Haier XPB60-187BS FM)を使用する。この半自動洗濯機は、洗濯及びすすぎ用の槽と脱水用の脱水機との2つの部分を含む。各機械を以下のステップに従って操作する。(1)粉末洗剤の推奨量(以下に更に記載)を適量の水に溶解する(例えば、水13Lに粉末32gで2分間)、(2)布地を槽内の水に手動で加える、(3)布地を撹拌せずにしばらくの間(例えば、3分間)浸漬させる、(4)標準的な自動機械洗濯(例えば、20分間)、(5)2回の連続すすぎ(例えば、脱水機で1分間の脱水、及び槽で水23Lを用いて3分間の洗浄撹拌)、及び(6)試験サンプルを添加する最終すすぎ。ステップ(6)では、具体的には、槽に水13Lを添加した後、この水に試験サンプルを加え、次いで自動機械撹拌を2分間行い、確実にサンプルを完全に溶解させる。次いで、前もって脱水した布地を槽内の溶液に戻し、自動機械撹拌を1分間行う。次いで、布地を30秒間脱水し、取り出す前に脱水機内に10分間置いておく。
【0165】
使用した水は、74ppmの硬度を有し、61ppmのCaCl及び13ppmのMgClを含有し、浸漬、洗濯、すすぎの全ステップで28℃の温度である。総布地投入重量は、1.2kgである(4枚のテリー織布のハンドタオルを試験布地として含み、残りの品目は、綿布地のみとポリ綿混合物とを6:4の比で含む)。使用した洗剤は、フィリピンから入手したARIEL粉末洗剤(The Procter&Gamble Company製)である。洗剤32gを洗浄水に投入する。テリー織布の試験布地を32℃/80%相対湿度で制御した室内で36~48時間吊り干しする。
【0166】
柔軟性を定量化するために、各テリー織布の摩擦係数を測定する。動摩擦係数は、テリー織布から切断された見本をスレッドに取り付け、スレッドを固定速度で残りのテリー織布の一部分にかけてドラッグすることにより、Thwing Albert Friction/Peel Tester FP-2250を用いて測定する。測定された摩擦係数が低いと、柔軟性が改善されたことを示す。
【0167】
試験12:固体シートの抗しわ効果
固体シートの抗しわ効果を、以下のように測定する。
複数の半自動洗濯機(例えば、Haier XPB60-187BS FM)を使用する。この半自動洗濯機は、洗濯及びすすぎ用の槽と脱水用の脱水機との2つの部分を含む。各機械を以下のステップに従って操作する。(1)粉末洗剤の推奨量(以下に更に記載)を適量の水に溶解する(例えば、水13Lに粉末32gで2分間)、(2)布地を槽内の水に手動で加える、(3)布地を撹拌せずにしばらくの間(例えば、3分間)浸漬させる、(4)標準的な自動機械洗濯(例えば、20分間)、(5)2回の連続すすぎ(例えば、脱水機で1分間の脱水、及び槽で水23Lを用いて3分間の洗浄撹拌)、及び(6)試験サンプルを添加する最終すすぎ。ステップ(6)では、具体的には、槽に水13Lを添加した後、この水に試験サンプルを加え、次いで自動機械撹拌を2分間行い、確実にサンプルを完全に溶解させる。次いで、前もって脱水した布地を槽内の溶液に戻し、自動機械撹拌を1分間行う。次いで、布地を30秒間脱水し、取り出す前に脱水機内に10分間置いておく。
【0168】
使用した水は、74ppmの硬度を有し、61ppmのCaCl及び13ppmのMgClを含有し、浸漬、洗濯、すすぎの全ステップで28℃の温度である。総布地投入重量は、1.2kgである(4枚の試験用ポリエステル布地、4枚の試験用ポリ綿布地、4枚の試験用綿メリヤス布地、及び4枚の試験用綿織物布地を含み、残りの品目は、綿布地のみとポリ綿混合物とを6:4の比で含む)。使用した洗剤は、フィリピンから入手したARIEL粉末洗剤(The Procter&Gamble Company製)である。洗剤32gを洗浄水に投入する。テリー織布の試験布地を32℃/80%相対湿度で制御した室内で36~48時間吊り干しする。
【0169】
しわを評価するために、洗濯及び吊り干しした布地を、訓練されたオペレータのパネルが視覚的に評価する。各パネル試験において、パネリストは、4組の4枚の布地からなる合計16枚のポリエステル布地を提示され、各組は、その組の布地が洗濯された柔軟製品に対応しており、あるいは常に1組の対照については、フィリピンから入手したDowny Fabric Conditioner(The Procter&Gamble Company製)40mLが使用されている。洗濯及び吊り干しした試験布地を個々のパネリストがそれぞれ独立してランク付けし、各パネリストは、最も視覚的にしわがある布地の組を等級スコア4に、最もしわが少ない布地の組を等級スコア1に割り当てる。各パネルには6~8人が含まれる。各柔軟製品に割り当てられた等級スコアを平均し、標準偏差を計算して、パネリスト間のばらつきを決定する。全く同じ評価方法を他の種類の試験布地にも適用する。
【実施例0170】
実施例1:カチオン性界面活性剤に対する可塑剤の好ましい範囲の比を有する通気されたプレミックスの改善された安定性
以下の表1(湿潤プレミックス)及び表2(乾燥シート)に示す配合物(配合物A並びに比較配合物a及びb)を有する固体シートを、「III.固体シートを作製するためのプロセス」の項の回転ドラム式加熱/乾燥構成に従って調製する。
【0171】
【表1】
Sigma Aldrichから入手可能な88%の加水分解度及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
Evonik Industriesから入手可能なRewoquat DEEDMAC。
【0172】
【表2】
Sigma Aldrichから入手可能な88%の加水分解度及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
Evonik Industriesから入手可能なRewoquat DEEDMAC。
【0173】
具体的には、固体シートの成分及び追加の水を含有する湿潤プレミックス(すなわち、スラリー)を最初に調製して、約35重量%の総固形分を得る(すなわち、スラリー中の総含水量は約65重量%である)。スラリー調製方法は、以下のとおりである。
1.まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌する。
2.撹拌を継続しながら、ポリビニルアルコールを、次いで、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はポリビニルアルコールの凝集が起こらないようにする。
3.次いでビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃まで加熱する。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングリフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させる。
4.残りの成分を秤量し、別個のガラスビーカー内で一緒に添加する。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加される。
5.このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物をオーバーヘッド撹拌機を使用して500rpmで少なくとも30分間撹拌する。
6.両方のビーカーで、予め定義された混合時間に到達したら、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃に維持する。
【0174】
次いで、Aeros A20連続エアレータを使用することによってプレミックスに通気する。通気後、通気されたプレミックスを収集し、次いで回転ドラム乾燥機で乾燥させて、固体シートを作製する。通気及びドラム乾燥の設定及び条件を以下の表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
更に、異なる配合物についてプレミックスの通気安定性を比較するために、60mLの通気されたプレミックスをビーカーに入れ、ビーカーを水浴中に保持し、水温を60℃に設定し、実験室用オーバーヘッドミキサーを使用して湿潤プレミックスを50RPMで30分間連続撹拌する。通気されたプレミックスの初期密度及び30分での密度を、「試験7:湿潤プレミックス及びシート物品の密度」に従って測定し、以下の表4に示す。30分での密度に対する0分での密度の比を、通気されたプレミックスの安定性の測定値として使用する。更に、異なる配合物によって得られた固体シートの密度も決定する。表4のデータは、DEEDMACに対するグリセリンの比が高すぎるか又は低すぎる比較配合物a又はbの0分でのプレミックスの密度に対する30分でのプレミックスの密度の比(すなわち、それぞれ2.00又は3.07)が非常に高いことと比較して、配合物Aの比はわずかに1.27であることを示す。特に、比較配合物a及びbの通気後のプレミックスの急増した密度(0.800g/mL超へ上昇)と比較して、配合物Aの30分保管時の密度の増加は非常に限定されており(例えば、0.310g/mLから0.395g/mL)、密度は低いままである(例えば、0.395g/mL)。更に、また表4に示すように、配合物Aの固体シートは、比較配合物aと比較してかなり低い密度を有し(0.204g/mL対0.455g/mL)、比較配合物bに関しては、プレミックスが不安定すぎるためにシートが得られていない。したがって、可塑剤(例えば、グリセリン)のカチオン性界面活性剤(例えば、DEEDMAC)に対する比が好ましい範囲内(例えば、0.9~2)であるとき、通気されたプレミックスの安定性が著しく改善される。
【0177】
【表4】
【0178】
実施例2:固体シートの弾性に対するデンプン濃度の影響
以下の表5(湿潤プレミックス)及び表6(乾燥シート)に示す配合物(配合物A~C)を有する固体シートを、実施例1と同様に、「III.固体シートを作製するためのプロセス」の項の回転ドラム式加熱/乾燥構成に従って調製する。
【0179】
【表5】
Sigma Aldrichから入手可能な88%の加水分解度及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
Evonik Industriesから入手可能なRewoquat DEEDMAC。
【0180】
【表6】
Sigma Aldrichから入手可能な88%の加水分解度及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
Evonik Industriesから入手可能なRewoquat DEEDMAC。
【0181】
配合物A~Cを有する固体シートの伸張を、固体シートの弾性を特徴付けるための「試験10:固体シートの弾性」に従って測定し、以下の表7に示す。データは、5%のデンプンを含む配合物Cを有する固体シートの伸張の大幅な低減(すなわち、35%)と比較して、3.4%のデンプンを含む固体シート(配合物A)の伸張がはるかに少ない程度で低減していること(すなわち、21%)を示す。したがって、デンプンが多すぎると、シート物品の弾性を損なう場合がある。したがって、固体シート物品は、固体シート物品の5重量%以下のデンプンを含むことが更に好ましい。
【0182】
【表7】
【0183】
実施例3:様々な加熱/乾燥構成によって作製された固体シート内のOCF構造
以下の表8(湿潤プレミックス)及び表9(乾燥シート)に示す配合物(配合物1及び2)を有する固体シートを、「III.固体シートを作製するためのプロセス」の項の様々な加熱/乾燥構成に従って調製する。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
配合物1の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約14309.8cpである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.25g/cmである。配合物2の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約19254.6cpである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.225g/cmである。
【0187】
可撓性多孔質溶解性固体シート1及び2は、上記の実施例1に記載の設定及び条件(表3参照)を用いて、連続エアレータ(Aeros)及び回転ドラム乾燥機を使用して、表8に記載の上記の湿潤プレミックスから調製する。
【0188】
可撓性多孔質溶解性固体シート3もまた、以下の表10に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及びホットプレート(底部伝導式加熱を提供する)上に配置された金型を使用して、表8に記載の上記の湿潤プレミックスから調製する。
【0189】
【表10】
【0190】
更に、可撓性多孔質溶解性固体シート4及び5は、以下の表11に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及び衝突オーブン上に配置された金型を使用して、表8に記載の上記の湿潤プレミックスから調製する。
【0191】
【表11】
【0192】
以下の表12~15は、上記の湿潤プレミックス及び乾燥プロセスから作製されたシート1~5について測定された様々な物理的パラメータ及び細孔構造を要約する。
【0193】
【表12】
【0194】
【表13】
【0195】
【表14】
【0196】
【表15】
【0197】
上記のデータは、乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向からオフセットしているときに、得られた固体シート(例えば、シート1、2、及び3)は、加熱方向が重力方向と実質的に整列しているときに得られた固体シート物品(例えば、シート4及び5)と比較して、より大きな細孔開口を有する上面と、そのようなシート物品の厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動とを有し得ることを実証する。特に、上記の表は、シート1、2、及び3が100μmを超える上面平均孔径を有するのに対し、シート4及び5は有していないことを示す。
【0198】
実施例4:例示的な固体シート物品
以下は、固体シート物品の例である。以下の表16に示す配合物を有するシートI~Vを、実施例1と同様に調製する。更に、それぞれのシートを積み重ねることによって、それぞれ2~20の層を有する多層シート物品を形成することができる。
【0199】
【表16】
【0200】
更に、コーティング組成物(すなわち、ジュース)を含有する固体シート物品は、シートの積層時にシート(例えば、シートI~Vのうちの1つ以上)の間に以下の表17に示すジュースi~vのうちの1つ以上を適用することによって調製することができる。コーティング組成物を含有する例示的な固体シート物品は、シートIの間にジュースiを適用することによって調製され得る。
【0201】
【表17】
【0202】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0203】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0204】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーと、可塑剤と、カチオン性界面活性剤と、を含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、
前記固体シート物品は、(i)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)100μm~2000μmの全体平均孔径、によって特徴付けられ、
前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する重量比は0.9~2であり、
前記固体シート物品は、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、
前記上部領域、前記中間領域、及び前記底部領域は全て同じ厚さを有し、前記上部領域、前記中間領域、及び前記底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられ、
上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率は、0.6~1.5である、可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項2】
前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する前記重量比は、1~1.8、好ましくは1.1~1.7、より好ましくは1.2~1.6である、請求項1に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項3】
前記可塑剤の前記カチオン性界面活性剤に対する前記重量比は、1.2~1.6である、請求項1に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項4】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~65%の前記可塑剤を含み、及び/又は前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~50%の前記布地柔軟剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項5】
前記可塑剤は、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、及びジメチコンコポリオールからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項6】
記可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項7】
前記カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物及び/又はアミン化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項8】
記カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、ジアルキルジメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジエタノールアミン系(MDEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチルジイソプロパノールアミン系(MDIPA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、トリエタノールアミン系(TEA系)第四級アンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項9】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の1%~60%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項11】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含む、請求項10に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール及びデンプンを含む、請求項10に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーは、第1の重量平均分子量を有する第1のポリビニルアルコールと、第2の重量平均分子量を有する第2のポリビニルアルコールとを含み、前記第1の重量平均分子量は、5,000~50,000ダルトンであり、前記第2の重量平均分子量は、20,000~400,000ダルトンである、請求項10に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項14】
前記固体シート物品は、前記固体シート物品の総重量の0.01%~20%の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項15】
前記固体シート物品は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含み、コーティング組成物は、前記コーティング組成物が前記固体シート物品のいずれの外面上にも存在しないことを条件として、前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に存在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項16】
記コーティング組成物は、追加の界面活性剤、香料、シリコーン、乳化剤、溶媒、レオロジー改質剤、酵素、漂白剤、着色剤、光沢剤、移染防止剤、付着助剤、抗菌剤、非フィルム形成ポリマー、泡止め剤、消泡剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項15に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項17】
前記追加の界面活性剤は、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C~C20直鎖若しくは分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルアンホアセテート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記香料は、遊離香料、香料マイクロカプセル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記シリコーンは、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、ポリシリコーン、ポリメチルシルセスキオキサン、ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサンクロスポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記乳化剤は、モノグリセリド及びジグリセリド、脂肪アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、ポリヒドロキシステアリン酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記レオロジー改質剤は、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は
前記付着助剤は、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項18】
前記コーティング組成物の前記2つ以上のシートに対する重量比は、0.01~2である、請求項15~17のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項19】
前記固体シート物品は、
・85%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・前記固体シート物品の0.5重量%~25重量%の最終水分含量、及び/又は
・0.5mm~4mmである各シートの厚さ、及び/又は
・50グラム/m~250グラム/m 坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm~0.5グラム/cm 密度、及び/又は
・0.03m/g~0.25mgの比表面積、によって特徴付けられる、請求項1~18のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の固体シート物品を作製するプロセスであって、前記プロセスは、
a)前記水溶性ポリマー、前記可塑剤、及び前記カチオン性界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製することと、
b)前記湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成することと、
c)前記通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成することと、
d)前記形成されたシートを乾燥させて前記固体シート物品を作製することと、を含む、固体シート物品を作製するプロセス。
【外国語明細書】