(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096920
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240709BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/712
A61K9/00
A61K47/36
A61P35/00
A61K31/7068
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066494
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2021512698の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】62/728,459
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/790,953
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】メダロヴァ,ズドラフカ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ビョンヒ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学療法剤と、免疫チェックポイント分子阻害剤を組み合わせることを含む、癌を処置するためのストラテジーを提供する。
【解決手段】免疫チェックポイント分子、例えば、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)を標的化する阻害性核酸、例えば、siRNAに連結されたナノ粒子を用いる、癌、例えば、膵癌を処置するための治療的組成物および方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ナノ粒子であって、前記ナノ粒子が
10nm~30nmの間の直径を有し、ならびに
酸化鉄コア、ポリマーコーティング、および前記ナノ粒子へ共有結合性に連結されている
、免疫チェックポイント分子を標的化する阻害性核酸を含み、
好ましくは、前記チェックポイント分子がプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)
である、治療用ナノ粒子。
【請求項2】
前記核酸が、配列番号1と相補的な少なくとも10個の連続したヌクレオチドの配列を
含む、請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項3】
前記核酸が、少なくとも1個の改変ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の治療用ナノ
粒子。
【請求項4】
前記少なくとも1個の改変ヌクレオチドがロックドヌクレオチドである、請求項3に記
載の治療用ナノ粒子。
【請求項5】
前記ポリマーコーティングがデキストランを含む、請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項6】
前記核酸が低分子干渉RNA(siRNA)である、請求項1に記載の治療用ナノ粒子
。
【請求項7】
前記核酸が、ジスルフィド結合またはチオエーテル結合を含む化学的部分を通してナノ
粒子へ共有結合性に連結されている、請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項8】
前記ナノ粒子が磁性である、請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子および、任意で、化学療法剤を含
む薬学的組成物。
【請求項10】
治療的有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子および化学療法
剤を、癌を有する対象に投与することを含む、癌を有する対象を処置するための方法。
【請求項11】
対象において癌を処置することにおける使用のための、請求項1~8のいずれか一項に
記載の治療用ナノ粒子および化学療法剤。
【請求項12】
前記癌が、乳癌、結腸癌、腎癌、肺癌、皮膚癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、直腸癌、胃
癌、甲状腺癌、および子宮癌からなる群から選択される、請求項10に記載の方法または
請求項11に記載の使用。
【請求項13】
対象における癌細胞の位置もしくは数、または対象における治療用ナノ粒子の位置を決
定するために、対象の組織を画像化することをさらに含む、請求項10に記載の方法また
は請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記治療用ナノ粒子が、対象に2回以上の用量で投与される、請求項10に記載の方法
または請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記治療用ナノ粒子が対象に少なくとも週1回、投与される、請求項14に記載の方法
または使用。
【請求項16】
前記治療用ナノ粒子が、対象に静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、または腹腔内投与によ
り投与される、請求項10に記載の方法または請求項11に記載の使用。
【請求項17】
前記対象が膵癌を有する、請求項10に記載の方法または請求項11に記載の使用。
【請求項18】
前記化学療法剤がゲムシタビンである、請求項10もしくは16に記載の方法または請
求項11に記載の使用。
【請求項19】
前記化学療法剤がゲムシタビンである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
この出願は、2018年9月7日に出願された米国特許出願第62/728,459号
、および2019年1月10日に出願された米国特許出願第62/790,953号の恩
典を主張し、それらの特許出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
連邦支援による研究または開発
この発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号CA163461による政府支
援でなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
免疫チェックポイント分子、例えば、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)を
標的化する阻害性核酸、例えば、siRNAに連結されたナノ粒子を用いる、癌、例えば
、膵癌を処置するための治療的組成物および方法が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0004】
近年、免疫療法を用いる様々な悪性腫瘍の処置において目覚ましい進歩が見られる。最
も有望なアプローチの一つは、免疫チェックポイント阻害剤を含む。
【0005】
癌免疫療法についてのチェックポイント阻害の有望さにも関わらず、その応答は、一般
的に変動し、多数の患者が応答することができない。FDA認可のPD-L1阻害剤の注
目すべき例には、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)21についてのアテゾリズマブ、お
よび局所進行性または転移性尿路上皮癌腫についてのデュルバルマブ22が挙げられる。
しかしながら、膀胱癌についてのアテゾリズマブの最初の励まされる結果および迅速な認
可にも関わらず23、24、確認試験は、それの全生存の主要評価項目を達成することが
できなかった25。同様に、非小細胞肺癌の一次処置としてのトレメリムマブと併用した
デュルバルマブの第III相試験は、それの無進行生存の主要評価項目を満たすことがで
きなかった26。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ゲムシタビンなどの化学療法剤と、免疫チェックポイント分子阻害剤、例えば、MN-
siPDL1と名づけられたプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤を組み合
わせることを含む、癌を処置するためのストラテジーが本明細書に記載される。例として
、MN-siPDL1は、磁性ナノ担体(MN)にコンジュゲートされた、PD-L1に
対する低分子干渉RNA(siPDL1)を組み入れている。本明細書に示されているよ
うに、MN-siPDL1の腫瘍への送達は、非侵襲性磁気共鳴画像法(MRI)により
半定量的にモニターすることができ、MN担体は超常磁性であるからである。同系マウス
膵癌モデルにおけるゲムシタビンなどの化学療法剤およびMN-siPDL1からなる併
用療法は、腫瘍成長の有意な低下および生存率の増加を生じた。用量最適化後、腫瘍容積
の90%低下が、処置の開始から3週間後に達成された。対照動物の100%が、処置の
開始後の6週間目までに彼らの腫瘍で死んだが、5週間目まで実験群における死亡はなく
、実験動物の67%が12週間、生存した。これらの方法は、有効な処置がない難治性疾
患、およびほんの1%の5年生存率によって特徴づけられる難治性疾患における治療効果
のために用いることができる。
【0007】
したがって、治療用ナノ粒子が本明細書に提供され、前記ナノ粒子が、10nm~30
nmの間の直径を有し、かつ、好ましくは、酸化鉄コア、ポリマーコーティング、および
前記ナノ粒子へ共有結合性に連結されている、免疫チェックポイント分子、例えば、プロ
グラム細胞死1リガンド1(PD-L1)を標的化する阻害性核酸を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、配列番号1に相補的な少なくとも10個の
連続したヌクレオチドの配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、少なくとも1個の改変ヌクレオチド、例え
ば、ロックドヌクレオチドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、ポリマーコーティングは、デキストランを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、低分子干渉RNA(siRNA)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、ジスルフィド結合またはチオエーテル結合
を含む化学的部分を通して、ナノ粒子へ共有結合性に連結されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は磁性である。
【0014】
本明細書に記載された治療用ナノ粒子、および任意で、化学療法剤を含む薬学的組成物
もまた提供される。
【0015】
さらに、癌を有する対象を処置するための方法が提供される。その方法は、本明細書に
記載されているような治療用ナノ粒子の治療的有効量を、好ましくは化学療法剤と併用し
て、癌を有する対象に投与することを含む。対象において癌を処置することにおける使用
のための、好ましくは化学療法剤と併用した、本明細書に記載されているような治療用ナ
ノ粒子もまた提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、癌は、乳癌、結腸癌、腎癌、肺癌、皮膚癌、卵巣癌、膵
癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、甲状腺癌、および子宮癌からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、対象における癌細胞の位置もしくは数、または
対象における治療用ナノ粒子の位置を決定するために対象の組織を画像化することを含む
。
【0018】
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、対象に2回以上の用量で投与される
。いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、少なくとも週1回、対象に投与され
る。
【0019】
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、ま
たは腹腔内投与により対象に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、対象は膵癌を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、化学療法剤はゲムシタビンである。
【0022】
本明細書に記載された磁性粒子のいずれかを含有する薬学的組成物もまた提供される。
【0023】
癌を有する対象に治療用ナノ粒子(本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)
を投与することを含む、癌(例えば、膵癌)を有する対象において腫瘍成長を減少させる
ための方法であって、前記治療用ナノ粒子が、前記対象において腫瘍成長を減少させるた
めに十分な量で投与される、方法もまた提供される。いくつかの実施形態において、癌細
胞は、乳癌細胞、結腸癌細胞、腎癌細胞、肺癌細胞、皮膚癌細胞、卵巣癌細胞、膵癌細胞
、前立腺癌細胞、直腸癌細胞、胃癌細胞、甲状腺癌細胞、および子宮癌細胞からなる群か
ら選択される。これらの方法のいくつかの実施形態は、対象における癌細胞の位置もしく
は数、または対象における治療用ナノ粒子の位置(例えば、治療用磁性ナノ粒子または共
有結合性に連結されたフルオロフォアを含有する治療用ナノ粒子の位置)を決定するため
に対象の組織を画像化することをさらに含む。
【0024】
別の態様において、本開示は、対象において転移性癌を処置する方法を記載する。これ
らの方法は、転移性癌を有する対象に治療用ナノ粒子(本明細書に記載された治療用ナノ
粒子のいずれか)を投与するステップであって、前記治療用ナノ粒子が、対象において転
移性進行を阻害するのに十分な量で投与される、ステップを含む。いくつかの実施形態に
おいて、転移性癌は、原発性膵癌に起因する。いくつかの実施形態において、投与するス
テップは、対象における、原発性もしくは転移性腫瘍サイズの減少(例えば、有意な、検
出可能な、または観察可能な減少)もしくは安定化、または原発性もしくは転移性腫瘍成
長の速度の減少(例えば、有意な、検出可能な、または観察可能な減少)を生じる。
【0025】
本明細書に記載された方法のいずれかにおいて、治療用ナノ粒子は、対象に複数回の用
量で投与することができる。本明細書に記載された方法のいくつかの実施形態において、
治療用ナノ粒子は、対象に少なくとも週1回、投与される。本明細書に記載された方法の
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、また
は腹腔内投与により対象に投与される。本明細書に記載された方法のいくつかの実施形態
において、対象は、化学療法剤をさらに投与される。
【0026】
用語「磁性」は、磁場に応答性である組成物を記載するために用いられる。磁性組成物
(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)の非限定的例は、常磁性、
超常磁性、強磁性、または反磁性である材料を含有し得る。磁性組成物の非限定的例は、
マグネタイト、フェライト(例えば、マンガン、コバルト、およびニッケルのフェライト
)、酸化Fe(II)、およびヘマタイト、ならびにそれらの金属合金の群から選択され
る酸化金属を含有する。追加の磁性材料は、本明細書に記載され、かつ当技術分野におい
て知られている。
【0027】
用語「反磁性の」は、1以下である相対的透磁率を有し、かつ磁場によって反発される
組成物を記載するために用いられる。
【0028】
用語「常磁性の」は、外部から印加された磁場の存在下でのみ磁気モーメントを発生す
る組成物を記載するために用いられる。
【0029】
用語「強磁性の」または「強磁性の」は、磁場に対して感受性が高く、かつ外部から印
加された磁場が除去された後、磁気的性質(磁気モーメント)を保持する能力がある組成
物を記載するために用いられる。
【0030】
用語「ナノ粒子」とは、約2nm~約200nmの間(例えば、10nmから200n
mの間、2nmから100nmの間、2nmから40nmの間、2nmから30nmの間
、2nmから20nmの間、2nmから15nmの間、100nmから200nm、およ
び150nmから200nmの間)の直径を有する物体を意味する。ナノ粒子の非限定的
例には、本明細書に記載された治療用ナノ粒子が挙げられる。
【0031】
用語「磁性ナノ粒子」とは、(本明細書に定義されているように)磁性があるナノ粒子
(本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)を意味する。磁性ナノ粒子の非限定
的例は本明細書に記載されている。追加の磁性ナノ粒子は当技術分野において知られてい
る。
【0032】
用語「ポリマーコーティング」とは、3次元物体(例えば、酸化金属などの磁性材料を
含有する3次元物体)の表面に塗布された少なくとも1つのポリマー(例えば、デキスト
ラン)の少なくとも1つの(例えば、均一なまたは不均一な)分子層を意味する。ポリマ
ーコーティングを生成するために用いることができるポリマーの非限定的例は、本明細書
に記載されている。ポリマーコーティングを生成するために用いることができるポリマー
の追加の例は、当技術分野において知られている。物体(例えば、磁性材料を含有する3
次元物体)にポリマーコーティングを適用するための方法は、本明細書に記載され、当技
術分野においても知られている。
【0033】
用語「核酸」とは、任意の一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、DNAまた
はRNA、cDNA、半合成または合成起源)を意味する。核酸という用語は、少なくと
も1個の改変ヌクレオチド(例えば、塩基における改変および/または糖における改変を
含有する)、および/または2個のヌクレオチドを連結するホスホジエステル結合におけ
る改変を含有するオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、核酸は、少
なくとも1個のロックドヌクレオチド(LNA)を含有することができる。核酸の非限定
的例は本明細書に記載されている。核酸の追加の例は当技術分野に知られている。
【0034】
用語「改変ヌクレオチド」とは、それの塩基における少なくとも1つの改変、および/
またはそれの糖(リボースまたはデオキシリボース)における少なくとも1つの改変を含
有するDNAまたはRNAヌクレオチドを意味する。改変ヌクレオチドはまた、核酸配列
における2個の隣接するヌクレオチド間のホスホジエステル結合を形成する原子における
改変を含有し得る。
【0035】
用語「フルオロフォア」とは、第1の波長での光を吸収し、かつ第2の波長での光を放
射する分子であって、前記第1の波長が前記第2の波長より短い(より高いエネルギー)
、分子を意味する。いくつかの実施形態において、フルオロフォアによって吸収される第
1の波長は、近赤外範囲にあり得る。フルオロフォアの非限定的例は本明細書に記載され
ている。フルオロフォアの追加の例は当技術分野において知られている。
【0036】
用語「近赤外光」とは、約600nmから約3,000nmの間の波長を有する光を意
味する。
【0037】
用語「ターゲティングペプチド」とは、標的細胞(例えば、癌細胞)の形質膜の中また
は上に存在する分子(例えば、タンパク質、糖、もしくは脂質、またはそれらの組合せ)
により結合されるペプチドを意味する。本明細書に記載されているように、ターゲティン
グペプチドは、第2の分子または組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子
のいずれか)へ共有結合性に連結されて、その第2の分子または組成物を標的細胞(例え
ば、癌細胞)へ標的化することができる。いくつかの実施形態において、第2の分子また
は組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)へ共有結合性に連
結されているターゲティングペプチドは、標的化された細胞による第2の分子または組成
物の取り込み(例えば、エンドサイトーシスまたはピノサイトーシスによる細胞取り込み
)を生じる。ターゲティングペプチドの非限定的例は本明細書に記載されている。ターゲ
ティングペプチドの追加の例は当技術分野において知られている。
【0038】
用語「低分子干渉RNA」または「siRNA」とは、細胞においてRNA干渉を媒介
する能力がある二本鎖核酸分子を意味する。RNA干渉の過程は、Ebalshirら(
Nature 411:494-498, 2001)に記載されている。siRNAの各鎖は、19ヌクレオチド
長から23ヌクレオチド長の間であり得る。本明細書で用いられる場合、siRNA分子
は、天然または内因性RNAヌクレオチドのみを含有する分子に限定される必要はなく、
化学修飾ヌクレオチドをさらに包含することができる。siRNAの非限定的例は、本明
細書に記載されている。siRNAの追加の例は、当技術分野において知られている。
【0039】
句「腫瘍成長」とは、対象における腫瘍量の増大を意味する。腫瘍成長の非限定的例に
は、新しい腫瘍細胞の形成、既存腫瘍細胞の増殖、既存腫瘍細胞におけるアポトーシスに
対する抵抗性が挙げられる。腫瘍成長を検出および決定するための例示的な方法は、本明
細書に記載されている。腫瘍成長を検出および決定するための追加の方法は、当技術分野
において知られている。
【0040】
用語「転移」とは、対象における、原発性腫瘍に存在する癌細胞の二次の非隣接組織へ
の遊走を意味する。転移の非限定的例には、原発性腫瘍からリンパ節(例えば、局所リン
パ節)、骨組織、肺組織、肝臓組織、および/または脳組織への転移が挙げられる。転移
という用語はまた、リンパ節に見出される転移性癌細胞の二次組織(例えば、骨組織、肝
臓組織、または脳組織)へ遊走もまた含む。いくつかの非限定的実施形態において、原発
性腫瘍に存在する癌細胞は、乳癌細胞、結腸癌細胞、腎癌細胞、肺癌細胞、皮膚癌細胞、
卵巣癌細胞、膵癌細胞、前立腺癌細胞、直腸癌細胞、胃癌細胞、甲状腺癌細胞、または子
宮癌細胞である。転移の追加の態様および例は、当技術分野において知られ、または本明
細書に記載されている。
【0041】
用語「原発性腫瘍」とは、腫瘍進行が始まって、癌性塊の生成へと進む解剖学的部位に
存在する腫瘍を意味する。いくつかの実施形態において、医師は、対象における原発性腫
瘍の部位をはっきりと同定することができない場合がある。
【0042】
用語「転移性腫瘍」とは、対象において原発性腫瘍から転移した腫瘍細胞から生じた対
象における腫瘍を意味する。いくつかの実施形態において、医師は、対象における原発性
腫瘍の部位をはっきりと同定することができない場合がある。
【0043】
用語「リンパ節」とは、リンパ管によりリンパ系に接続されている、Bリンパ球、Tリ
ンパ球、およびマクロファージを含む様々な細胞を含有する免疫系の小さい球状または楕
円形の器官を意味する。様々なリンパ節が哺乳動物に存在し、そのリンパ節には、腋窩リ
ンパ節(例えば、側腺、前腺もしくは胸部腺、後腺もしくは肩甲下腺、中心腺もしくは中
間腺、または内側腺もしくは鎖骨上腺)、センチネルリンパ節、顎下リンパ節、前頚部リ
ンパ節、後頚部リンパ節、鎖骨上リンパ節、オトガイ下リンパ節、大腿リンパ節、腸間膜
リンパ節、縦隔リンパ節、鼠径リンパ節、亜区域(subsegmental)リンパ節、区域(segm
ental)リンパ節、大葉(lobar)リンパ節、葉間(interlobar)リンパ節、肺門リンパ節
、滑車上腺、三角筋胸筋腺、浅鼠径リンパ節、深鼠径リンパ節、上腕リンパ節、および膝
窩リンパ節が挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
用語「画像化」とは、生物物理学的技術(例えば、電磁エネルギー吸収および/または
放射)を用いる対象の少なくとも1つの組織の可視化を意味する。画像化の非限定的実施
形態には、磁気共鳴画像法(MRI)、X線コンピュータ断層撮影法、および光学的画像
法が挙げられる。
【0045】
句「腫瘍サイズの安定化」とは、時間が経って対象において腫瘍の総容積または近似容
積のわずかなまたは検出不可能な変化のみがある状態に腫瘍が達していることを意味する
。
【0046】
句「腫瘍成長の速度」とは、対象における、時間経過による腫瘍の総容積もしくは近似
容積の変化、または腫瘍に存在する細胞の総数もしくは近似数の変化を意味する。腫瘍成
長の速度は、本明細書に記載された例示的な方法を用いて決定することができる。腫瘍成
長の速度を決定するための追加の方法は、当技術分野において知られている。
【0047】
他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、当業者
により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。方法および材料は、本発明における
使用のために本明細書に記載されている;当技術分野において知られた他の適切な方法お
よび材料もまた用いることができる。材料、方法、および例は、例証となるのみであり、
限定することを意図されない。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許、配
列、データベースエントリー、および他の参考文献は、全体として参照により組み入れら
れている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が、支配する。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図から、ならびに特許請求の
範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1A~Bは、例示的なMN-siPDL1の構造、合成、および特徴づけを示す図である。A. MN-siPDL1は、20nmアミノ化デキストランコーティング化超常磁性酸化鉄ナノ粒子のヘテロ二官能性不安定性リンカーSPDPおよびPD-L1に対するsiRNAへの連続的コンジュゲーションにより合成された。B. MN-siPDL1特徴づけ。
【
図2】
図2A~Cは、画像ガイドのMN-siRNAの腫瘍への送達を示す図である。A. 腫瘍保有動物のT2マップ。腫瘍組織におけるMN-siPDL1の局在は、T2緩和時間の短縮を引き起こし、造影剤投与前の画像と比較して、陰性コントラストを生じた。B. 処置の最初の3週間の間の実験動物および対照動物における腫瘍関心領域(ROI)に渡るMN-siPDL1濃度測定。MN-siPDL1の蓄積は、処置の最初の3週間の間、MN-siSCRの蓄積より1.5倍速かった。C. 処置の3週間目~12週間目の間の実験動物および対照動物における腫瘍関心領域(ROI)に渡るMN-siPDL1濃度測定。MN-siSCRで処置された対照群におけるその作用物質の濃度は、MN-siPDL1で処置された実験群においてより、5.1倍速く、減少した。
【
図3-1】
図3A~Dは、ゲムシタビンおよびMN-siPDL1での併用処置を示す図である。A. 処置の過程の間における代表的な色分けされたT2強調MR画像。B. 処置中の腫瘍容積の変化。ゲムシタビンと組み合わせた、高用量活性MN-siPDL1治療用物質と不活性MN-siSCR治療用物質との間で、応答が、早くも2週間目から、有意に異なった。低用量MN-siPDL1群において、この差は、6週間目後に明らかだった。C. MN-siSCR+ゲムシタビンに対する、MN-siPDL1+ゲムシタビンで処置された動物における生存の向上を示す、カプラン・マイアー生存分析。D. 対照腫瘍における壊死および潰瘍化を示す、6週間目における腫瘍保有マウスの写真。
【
図4-1】
図4A~Bは、MN-siPDL1およびゲムシタビンで処置されたマウス由来の腫瘍の免疫蛍光を示す図である。効率的なPD-L1阻害、TIL動員および活性化、Treg減弱、ならびに腫瘍細胞増殖の阻害を示す、A:代表的な顕微鏡写真およびB:蛍光シグナル強度の定量的分析。TL:Tリンパ球;CTL:細胞傷害性Tリンパ球;Treg:制御性T細胞;Ki-67:増殖。
【
図5-1】
図5A~Dは、ゲムシタビンおよびMN-siPDL1での併用処置を示す図である。処置群のそれぞれについての処置中の腫瘍容積の変化。A:MN-siPDL1高用量レスポンダー;B:MN-siPDL1高用量ノンレスポンダー;C:MN-siPDL1低用量;D:MN-siSCR(スクランブル対照)。本研究についての試料サイズは6であった。高用量群において、応答しなかった、すなわち、腫瘍容積が退縮しなかった、2匹のマウスがあった;それらの結果は
図5Bに示されている。
【
図6】癌細胞におけるPD-L1 mRNAの阻害についての例示的なナノドラッグ(MN-siPDL1)の調製の追加の詳細に関する概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
大いに期待できるとは言え、チェックポイント阻害剤に関する臨床結果は、応答のばら
つきを示している。特に、膵癌は、最初の免疫療法アプローチに対する抵抗性が判明して
いる。
【0051】
膵癌は、米国において癌関連死の4番目に多い原因であり、全体の5年生存率はたった
8%である1。外科的切除は、依然として、切除可能な疾患を有する患者についての最適
な処置である。しかしながら、診断された患者の20%未満が治癒的切除に適しており2
、患者の30%が局所疾患を示し、50%が遠隔転移を示し3、それぞれ、11%および
2%の生存率である1。そのような予後不良の背後にある理由は、診断時点においての進
行期2および標準化学療法に対する抵抗性4を含むと仮定されている。化学抵抗性を与え
ると想像される以下の複数の因子がある:線維形成性間質の形成が薬物送達を制限するこ
と、反応性酸素種、サイトカイン、および/または成長因子による膵臓星状細胞の活性化
、ならびに活性化星状細胞の免疫抑制性シグナル伝達分子の分泌4、5。膵癌の複雑な腫
瘍生物学によって、複数の併用化学療法が登場している。そのようなものとして、FOL
FIRINOX(5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、およびオキサリ
プラチンからなる組合せ)、およびゲムシタビン/nab-パクリタキセルが、標準ゲム
シタビン単剤療法処置と比較して全生存の向上を示している6、7。しかしながら、これ
らの併用療法は、患者の全体的な健康に大きく依存し、最近の細胞傷害性併用療法につい
ての全体の延命効果は、たった約2~5カ月である。
【0052】
膵癌において、チェックポイント阻害剤に基づいた治療の進歩は、期待外れの臨床結果
を示している。第II相試験において、抗CTLA-4、イピリムマブ単剤療法は、無効
であり、その試験からレスポンダーは生じなかった27。同様に、多施設第I相試験にお
いて、抗PDL-1抗体が、様々な進行癌患者において静脈内に投与された。募集された
14人の膵癌患者のうち、客観的応答は報告されなかった28。
【0053】
この疾患により引き起こされる甚だしい苦痛およびこれまで細胞傷害性処置で達成され
たささやかな進展を踏まえると、複数の角度からその疾患を攻撃する治療への抜本的、変
革的なアプローチを探索する必要があることは明らかである。
【0054】
この10年間、癌免疫療法の分野においてとてつもない進歩が見られた。実際、免疫療
法は、1940年代の最初の化学療法の開発以来、最も有望な新しい癌処置アプローチを
表している。チェックポイント阻害剤は、黒色腫およびいくつかの肺癌などの致死性癌に
対して奏効しており(時には、劇的な成功を生じることがある)、数十の他の癌型におい
て試験されつつある8、9。しかし、膵癌は、通常の薬物で処置することは難しいことが
判明しており、最初の免疫療法アプローチに対して抵抗性を示している。一つには、これ
についての理由は、膵臓腺癌を特徴づける複雑な腫瘍微小環境である。主に、本来の免疫
抑制性と、抗体およびTリンパ球浸潤についての物理的バリアとの両方である線維形成性
腫瘍形質の存在10。それゆえに、以下を組み合わせる代替アプローチを設計することが
重要である:腫瘍細胞および腫瘍常在性マクロファージへ効率的に送達することができる
革新的チェックポイント阻害剤、ならびにTリンパ球による腫瘍の透過を増強するストラ
テジー。
【0055】
化学療法剤、例えば、ゲムシタビン(Gem)、5-フルオロウラシル、FOLFIR
INOX、およびインビボで腫瘍細胞へ高効率で送達されるナノ粒子担体を組み入れる新
規の免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-L1阻害剤(MN-siPDL1と名
づけられた)11~19を組み合わせることに頼る代替ストラテジーであって、それが、
転写後、RNA干渉機構によって腫瘍細胞上の免疫チェックポイント分子、例えば、PD
-L1、の発現を阻害する、代替ストラテジーが本明細書に提示される。そのアプローチ
は、小分子または抗体を上回って有利であり、そのsiRNA成分が、標的抗原を転写後
レベルで阻害し、タンパク質レベルではないからである。また、RNAi機構は触媒作用
であり、標的抗原の消滅のために腫瘍細胞へたったピコモル量のsiRNAの送達を必要
とするだけである。対照的に、小分子または抗体は、抗原対治療用分子の少なくとも1:
1モル比の達成を必要とし、腫瘍細胞による標的抗原の発現の代償性増加の存在下では無
効であり得る。
【0056】
現在の研究において、ゲムシタビンおよびMN-siPDL1からなる7週間の併用療
法が、同系マウス膵癌モデルにおいて投与された。このアプローチは、有意により低い死
亡率および毒性を生じ、腫瘍退縮、および生存率の劇的な向上をもたらした。特に、用量
最適化後、腫瘍容積の90%低下が、処置の開始から3週間後に達成された。対照動物の
100%が、処置の開始後6週間目までに彼らの腫瘍で死亡したが、5週間目まで実験群
において死亡はなく、実験動物の67%が12週間、生存した。
【0057】
記載された方法論は、薬物送達、送達過程の画像ガイダンス、および治療的応答の同調
的バイオマーカーのための統合ツールを表す。
【0058】
組成物
約2nm~約200nmの間(例えば、約10nm~約30nmの間、約5nm~約2
5nmの間、約10nm~約25nmの間、約15nm~約25nmの間、約20nmか
ら約25nmの間、約25nm~約50nmの間、約50nmから約200nmの間、約
70nmから約200nmの間、約80nmから約200nmの間、約100nmから約
200nmの間、約140nm~約200nm、および約150nm~約200nmの間
)の直径を有し、かつポリマーコーティングと、ヒト免疫チェックポイント分子、例えば
、PD-L1、PD-1、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質-4(Cy
totoxic T-Lymphocyte-Associated Protein-4);CD152);LAG-3(リンパ球
活性化遺伝子3(Lymphocyte Activation Gene 3);CD223);TIM-3(T細胞
免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(T-cell Immunoglobulin domain and M
ucin domain 3);HAVCR2);TIGIT(IgおよびITIMドメインを有する
T細胞免疫受容体(T-cell Immunoreceptor with Ig and ITIM domains));B7-H3
(CD276);VSIR(V-set免疫調節性受容体(V-set immunoregulatory rec
eptor)、aka VISTA、B7H5、C10orf54);BTLA(Bリンパ球
およびTリンパ球アテニュエータ(B- and T-Lymphocyte Attenuator)、CD272);
GARP(Glycoprotein A Repetitions Predominant;PVRIG(PVR related immuno
globulin domain containing);またはVTCN1(V-set domain containing T cell a
ctivation inhibitor 1、aka B7-H4)に相補的である、配列内に少なくとも1
0個(例えば、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、1
9個、20個、または21個)の連続したヌクレオチドを含有する核酸とを含有する、治
療用ナノ粒子が本明細書に提供される。
【0059】
PD-L1
PD-L1は、CD274、B7-H;B7H1;PDL1;PDCD1L1;および
PDCD1LG1としても知られている。ヒトPD-L1についての例示的な配列は、表
Aに示されたNCBI GenBankアクセッション番号において提供されている。
【0060】
【0061】
NCBI参照注釈により、バリアント1は、最も長い転写産物であり、最長アイソフォ
ーム(アイソフォームa前駆体)をコードする。バリアント2は、バリアント1と比較し
て5’コード領域において選択的インフレームエクソンを欠損し、結果として、より短い
タンパク質アイソフォームbを生じる。バリアント4は、いくつかのエクソンを欠損し、
それの3’末端エクソンは、バリアント1に用いられるスプライス部位を過ぎて伸長し、
結果として、バリアント1と比較して、新規の3’コード領域および新規の3’UTRを
生じ、アイソフォームc(アイソフォームaより短く、かつアイソフォームaと比較して
異なるC末端を有する)をコードする。
【0062】
本方法および組成物において、上記のいずれかまたは全部を標的化する(例えば、上記
の3つ全部に共通である領域を標的化する)siRNAを用いることができる。ヒトバリ
アント1 mRNAの配列は以下の通りである:
【0063】
【0064】
【0065】
本方法は、ヒト対象を例示するが、他の哺乳動物対象、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブ
タ、およびヒツジなどの獣医学的対象もまた本方法を用いて処置することができる。好ま
しい実施態様において、核酸は、処置されるべき対象と同じ種由来の配列を標的化する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される治療用ナノ粒子は、球状もしくは
楕円形であり得、または無定形であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に提
供される治療用ナノ粒子は、約2nm~約200nmの間(例えば、約10nm~約20
0nmの間、約2nm~約30nmの間、約5nm~約25nmの間、約10nm~約2
5nmの間、約15nm~約25nmの間、約20nm~約25nmの間、約50nm~
約200nmの間、約70nm~約200nmの間、約80nm~約200nmの間、約
100nm~約200nmの間、約140nm~約200nmの間、および約150nm
~約200nmの間)の直径(治療用ナノ粒子の外面上の任意の2点の間)を有し得る。
いくつかの実施形態において、約2nm~約30nmの間の直径を有する治療用ナノ粒子
は、対象においてリンパ節に局在する。いくつかの実施形態において、約40nm~約2
00nmの間の直径を有する治療用ナノ粒子は、肝臓に局在する。
【0067】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載された異なる治療用ナノ粒子
の2つ以上の混合物を含有することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、
ナノ粒子へ共有結合性に連結された、標的配列内の少なくとも10個の連続したヌクレオ
チドを含有する少なくとも1つの治療用ナノ粒子(標的細胞においてmiR-10bレベ
ルを減少させるためのナノ粒子)、および配列内に存在する少なくとも10個の他の連続
したヌクレオチドの配列と相補的である配列を含有する少なくとも1つの治療用ナノ粒子
を含有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、磁性であり得る(例えば、磁性材料
のコアを含有する)。
【0069】
ナノ粒子
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれかは、磁
性材料のコアを含有することができる(例えば、治療用磁性ナノ粒子)。いくつかの実施
形態において、磁性材料または粒子は、磁場に対して応答性である反磁性、常磁性、超常
磁性、または強磁性材料を含有することができる。治療用磁性ナノ粒子の非限定的例は、
マグネタイト、フェライト(例えば、マンガン、コバルト、およびニッケルのフェライト
)、酸化Fe(II)、およびヘマタイト、ならびにそれらの金属合金の群から選択され
る酸化金属を含有する磁性材料のコアを含有する。磁性材料のコアは、当技術分野におい
て知られた方法を用いて金属塩を酸化金属へ変換することにより形成することができる(
例えば、Kieslich et al., Inorg. Chem. 2011)。いくつかの実施形態において、ナノ粒
子は、シクロデキストリン金または量子ドットを含有する。治療用磁性ナノ粒子を作製す
るために用いることができる方法の非限定的例は、Medarova et al., Methods Mol. Biol
. 555:1-13, 2009;および Medarova et al., Nature Protocols 1:429-431, 2006に記載
されている。追加の磁性材料、および磁性材料を作製する方法は、当技術分野において知
られている。本明細書に記載された方法のいくつかの実施形態において、治療用磁性ナノ
粒子の場所または局在性は、対象において画像化することができる(例えば、1回または
複数の用量の治療用磁性ナノ粒子の投与後、対象において画像化される)。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された治療用ナノ粒子は、磁性材料を含
有しない。いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、一部では、ポリマー(例え
ば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸))を含有するコアを含有することができる。当技術
分野において知られた材料のいくつでもナノ粒子を調製するために用いることができるこ
とを熟練実践者は認識しており、その材料には、ゴム(例えば、アカシア、グアー)、キ
トサン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、およびアルブミンが挙げられるが、それらに
限定されない。本明細書に記載された治療用ナノ粒子を作製するために用いることができ
る追加のポリマーは、当技術分野において知られている。例えば、治療用ナノ粒子を作製
するために用いることができるポリマーには、セルロース誘導体、ポリ(2-ヒドロキシ
エチルメタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート
)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチ
レン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ乳
酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PL
GA)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、およびポリカプ
ロラクトンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0071】
ナノ粒子の組成物に用いられる材料、ナノ粒子を調製し、コーティングするための方法
、およびナノ粒子のサイズを調節するための方法がかなり異なり得ることを熟練実践者は
認識しているだろう。しかしながら、これらの方法は、当業者によく知られている。重要
な点には、ナノ粒子の生分解性、毒性プロファイル、および薬物動態学/薬物動力学が挙
げられる。ナノ粒子の組成物および/またはサイズは、それらの生物学的運命の重要な決
定要因である。例えば、より大きいナノ粒子は、典型的には、肝臓によって取り上げられ
、分解されるが、一方、より小さいナノ粒子(直径<30nm)は、典型的には、長時間
(時には、ヒトにおいて24時間を超える血中半減期)、循環し、リンパ節、および腫瘍
などの過透過性脈管構造を有する器官の間質に蓄積する。
【0072】
ポリマーコーティング
本明細書に記載された治療用ナノ粒子は、コアの磁性材料を覆う(例えば、磁性材料の
表面を覆う)ポリマーコーティングを含有する。ポリマー材料は、1つまたは複数の生物
学的作用物質(例えば、本明細書に記載された、核酸、フルオロフォア、またはターゲテ
ィングペプチドのいずれかなど)を付着し、または結合する(coupling)のに適し得る。
1つまたは複数の生物学的作用物質(例えば、核酸、フルオロフォア、またはターゲティ
ングペプチド)は、化学的結合(coupling)(共有結合)によりポリマーコーティングに
固定することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子は、磁性材料のコアを、水中で相対的に
安定であるポリマーでコーティングすることを含む方法により形成される。いくつかの実
施形態において、治療用ナノ粒子は、磁性材料をポリマーでコーティングすること、また
は磁性材料を、還元基を有する熱可塑性ポリマー樹脂の中へ吸収併合することを含む方法
により形成される。コーティングはまた、米国特許第5,834,121号明細書、第5
,395,688号明細書、第5,356,713号明細書、第5,318,797号明
細書、第5,283,079号明細書、第5,232,789号明細書、第5,091,
206号明細書、第4,965,007号明細書、第4,774,265号明細書、第4
,770,183号明細書、第4,654,267号明細書、第4,554,088号明
細書、第4,490,436号明細書、第4,336,173号明細書、および第4,4
21,660号明細書;ならびに国際公開第10/111066号パンフレット(それら
の各開示は、参照により本明細書に組み入れられている)に記載された方法を用いて磁性
材料に適用することができる。
【0074】
酸化鉄ナノ粒子の合成のための方法には、例えば、物理的および化学的方法が挙げられ
る。例えば、酸化鉄は、水溶液中にFe2+およびFe3+塩の共沈殿により調製するこ
とができる。生じたコアは、マグネタイ(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3
)、またはその2つの混合物からなる。水溶液中の、陰イオン塩含量(塩化物、硝酸塩、
硫酸塩など)、Fe2+とFe3+の比、pH、およびイオン強度が全て、サイズを調節
するのに役割を果たす。窒素またはアルゴンなどの不活性ガス下での無酸素環境において
その反応を行うことにより、合成されたナノ粒子の酸化を防止し、かつそれらの磁気的性
質を保護することは重要である。コーティング材料は、酸化鉄ナノ粒子のマイクロ粒子へ
の凝集を防止するために共沈殿過程中に加えることができる。当技術分野において知られ
た表面コーティング材料のいくつでも、酸化鉄ナノ粒子を安定化させるために用いること
ができることを熟練実践者は認識しており、その表面コーティング材料の中には、合成お
よび天然ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ポリビ
ニルピロリドン(PVP)、脂肪酸、ポリペプチド、キトサン、ゼラチンなどがある。
【0075】
例えば、米国特許第4,421,660号明細書は、無機材料のポリマーコーティング
化粒子が、通常、(1)無機固体を、酸、酸と塩基の組合せ、アルコール、またはポリマ
ー溶液で処理し、(2)処理された無機固体の水性分散体中に付加重合可能モノマーを分
散させ、および(3)生じた分散体をエマルション重合条件に供することにより、調製さ
れることに言及している(1段落目、21~27行目)。米国特許第4,421,660
号明細書はまた、(1)無機固体の別々の粒子の水性コロイド分散体中で疎水性のエマル
ション重合可能モノマーを乳化するステップ、および(2)生じたエマルションをエマル
ション重合条件に供して、疎水性モノマーの不水溶性ポリマーのマトリックス中に分散さ
れた無機固体粒子の安定な流体水性コロイド分散体を形成するステップを含む、無機ナノ
粒子をポリマーでコーティングするための方法を開示している(1段目、42~50行目
)。
【0076】
あるいは、サイズの出発必要条件を満たすポリマーコーティング化磁性材料が、商業的
に入手することができる。例えば、市販の超小型超常磁性酸化鉄ナノ粒子には、NC10
0150 Injection(Nycomed Amersham、Amersham
Health)およびFerumoxytol(AMAG Pharmaceutic
als、Inc.)が挙げられる。
【0077】
磁性材料のコアをコーティングするために用いることができる適切なポリマーには、非
限定的に、以下が挙げられる:ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエーテルウレタ
ン、ポリスルホン、フッ素化または塩素化ポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレ
ンおよびポリプロピレン、ポリカーボネート、ならびにポリエステル。磁性材料のコアを
コーティングするために用いることができるポリマーの追加の例には、ポリオレフィン、
例えば、ポリブタジエン、ポリジクロロブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン
、ポリビニリデンハライド、ポリビニリデンカーボネート、およびポリフッ素化エチレン
が挙げられる。スチレン/ブタジエン、α-メチルスチレン/ジメチルシロキサン、また
は他のポリシロキサンを含む、いくつかのコポリマーもまた、磁性材料のコアをコーティ
ングするために用いることができる(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルエ
チルシロキサン、およびポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン)。磁性材料のコア
をコーティングするために用いることができる追加のポリマーには、ポリアクリロニトリ
ルまたはアクリロニトリル含有ポリマー、例えば、ポリα-アクリロニトリルコポリマー
、アルキドまたはテルペノイド樹脂、およびポリアルキレンポリスルホネートが挙げられ
る。いくつかの実施形態において、ポリマーコーティングはデキストランである。
【0078】
核酸
提供される治療用ナノ粒子は、ナノ粒子へ共有結合性に連結されている、免疫チェック
ポイント分子の配列、例えば、PD-L1配列、例えば、配列番号1内の少なくとも10
個(例えば、少なくとも11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、1
8個、19個、20個、21個、または22個)の連続したヌクレオチドと相補的である
配列を含む少なくとも1つの核酸を含有する。いくつかの実施形態において、共有結合性
に連結された核酸分子は、免疫チェックポイントタンパク質(本明細書に記載された免疫
チェックポイントタンパク質のいずれか)をコードするmRNAの全部または一部と相補
的である配列を含有する。例えば、共有結合性に連結された核酸は、免疫チェックポイン
トタンパク質(本明細書に記載された免疫チェックポイントタンパク質のいずれか)をコ
ードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全部または一部と相補的であり得
る。非コード領域(「5’および3’非翻訳領域」)は、遺伝子においてコード領域に隣
接する5’および3’配列であり、アミノ酸へ翻訳されない。いくつかの実施形態におい
て、治療用ナノ粒子へ共有結合性に連結された核酸は、免疫チェックポイントタンパク質
(本明細書に記載された免疫チェックポイントタンパク質のいずれか)の翻訳開始コドン
またはアミノ酸1~5をコードする配列と相補的である。
【0079】
付着した核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの実施形態において、核酸
は、23ヌクレオチドから50ヌクレオチドの間(例えば、23~30ヌクレオチドの間
、30~40ヌクレオチドの間、および40~50ヌクレオチドの間)の全長を有する。
いくつかの実施形態において、核酸は、アンチセンスRNAまたはsiRNAであり得る
。
【0080】
アンチセンス核酸分子は、本明細書に記載された治療用ナノ粒子へ共有結合性に連結す
ることができる。
【0081】
本明細書に提供された配列(例えば、ヒト免疫チェックポイント分子、例えばPD-L
1についての配列、例えば、配列番号1、ならびに表AおよびBにおける他の配列)に基
づいて、当業者は、いくつかの適切なアンチセンス分子(例えば、免疫チェックポイント
分子、例えば、PD-L1を標的化するアンチセンス分子)のいずれかを容易に選択し、
かつ合成することができる。例えば、PD-L1を標的化するアンチセンス核酸は、配列
番号1、または当技術分野において知られたPD-L1についての配列に存在する少なく
とも10個(例えば、少なくとも15個または20個)の連続したヌクレオチドと相補的
な配列を含有することができる。
【0082】
アンチセンス核酸は、当技術分野において知られた手順を用いる、化学合成および酵素
ライゲーション反応を用いて、構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例え
ば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、またはその分
子の生物学的安定性を増加させるように、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間
で形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された改変ヌクレオチド(例
えば、本明細書に記載された改変ヌクレオチドのいずれか)を用いて、化学合成すること
ができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いる
ことができる。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向にサブクローニ
ングされている(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAが、関心対象となる標
的核酸に対してアンチセンス配向であろう)発現ベクターを用いて生物学的に産生するこ
とができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたアンチセンス核酸分子
は、通常のヌクレオチド相補性により標的核酸とハイブリダイズして、安定な二重鎖を形
成することができる。
【0083】
アンチセンス核酸分子は、α-アノマー核酸分子であり得る。α-アノマー核酸分子は
、通常のβ-ユニットに反して、鎖がお互いに平行している、相補性RNAとの特異的な
二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al., Nucleic Acids Res. 15:6625-6641,
1987)。アンチセンス核酸分子はまた、2’-O-メチルリボヌクレオチド(Inoue et a
l., Nucleic Acids Res., 15:6131-6148, 1987)またはキメラRNA-DNAアナログ(
Inoue et al., FEBS Lett. 215:327-330, 1987)を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、核酸は、低分子干渉RNA(siRNA)である。RN
Aiは、宿主細胞においてRNAが分解される過程である。RNAの発現を減少させるた
めに、標的RNA(例えば、免疫チェックポイント分子、例えば、ヒトPD-L1)の一
部分に対応する配列を含有する二本鎖RNA(dsRNA)が細胞に導入される。dsR
NAは、低分子干渉RNA(またはsiRNA)と呼ばれる21~23ヌクレオチド長の
二重鎖へ消化され、それが、ヌクレアーゼ複合体と結合して、RNA誘導サイレンシング
複合体(またはRISC)として知られているものを形成する。RISCは、内因性標的
RNAを、前記siRNAの1つと前記内因性RNAとの間での塩基対形成相互作用によ
り、標的化する。その後、それは、前記siRNAの3’末端から約12ヌクレオチドの
所で前記内因性RNAを切断する(Sharp et al., Genes Dev. 15:485-490, 2001, and H
ammond et al., Nature Rev. Gen. 2:110-119, 2001参照)。
【0085】
標準分子生物学技術を用いて、siRNAを作製することができる。低分子干渉RNA
は、化学合成され、例えばプラスミドなどの鋳型DNAからRNAを発現することにより
、組換え的に産生され、またはDharmaconなどの商業的ベンダーから入手するこ
とができる。RNAiを媒介するために用いられるRNAは、ホスホロチオエートヌクレ
オチドなどの改変ヌクレオチド(本明細書に記載された改変ヌクレオチドのいずれか)を
含むことができる。成熟ヒトmiR-10bのレベルを減少させるために用いられるsi
RNA分子は、いくつかの様式によって異なり得る。例えば、それらは、3’ヒドロキシ
ル基、および21個、22個、または23個の連続したヌクレオチドの鎖を含み得る。そ
れらは、平滑末端化され、または3’末端、5’末端、もしくは両端のいずれかにおいて
オーバーハンギング末端を含み得る。例えば、前記RNA分子の少なくとも1つの鎖は、
(例えば、ピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチドに関わらず)長さが約1ヌクレ
オチドから約6ヌクレオチドまで、例えば、1~5、1~3、2~4、または3~5ヌク
レオチドの3’オーバーハングを有し得る。両方の鎖がオーバーハングを含む場合、オー
バーハングの長さは、各鎖について同じまたは異なり得る。RNA二重鎖の安定性をさら
に増強するために、3’オーバーハングは、(例えば、アデノシンもしくはグアノシンヌ
クレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むこと、またはピリミジンヌクレオチドを改変
ヌクレオチドに置き換えること(例えば、ウリジンの2ヌクレオチド3’オーバーハング
の2’-デオキシチミジンによる置換が許容され、かつRNAiの効率に影響しない)に
より)分解に対して安定化され得る。関心対象となる標的と十分な相同性を有するという
条件で、任意のsiRNAを用いることができる。用いることができるsiRNAの長さ
の上限はない(例えば、siRNAは、約21~50個、50~100個、100~25
0個、250~500個、または500~1000個の塩基対の範囲であり得る)。
【0086】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、少なくとも1個の改変ヌクレオチド(改変
塩基または糖を含有するヌクレオチド)を含有することができる。いくつかの実施形態に
おいて、核酸分子は、リン酸(ホスホジエステル)バックボーン内に少なくとも1つの改
変を含有することができる。これらの改変の導入は、核酸分子の安定性を増加させ、また
は核酸分子のハイブリダイゼーションもしくは溶解性を向上させることができる。
【0087】
本明細書に記載された分子は、1個または複数(例えば、2個、3個、4個、または5
個)の改変ヌクレオチドを含有することができる。改変ヌクレオチドは、改変塩基または
改変糖を含有することができる。改変塩基の非限定的例には、8-オキソ-N6-メチル
アデニン、7-デアザキサンチン、7-デアザグアニン、N4、N4-エタノシトシン、
N6,N6-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-(C3~C6)-アルキニル-シト
シン、プソイドイソシトシン、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン、
イソシトシン、イソグアニン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロ
ウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、
5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-
2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β
-D-ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテ
ニルアデノシン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン
、2-メチルアデニン、2-メチルグアニ、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、
N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ
アミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカ
ルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニ
ルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プ
ソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2
-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メ
チルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-
(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2
,6-ジアミノプリンが挙げられる。
【0088】
改変塩基の追加の非限定的例には、(参照により本明細書に組み入れられた)米国特許
第5,432,272号明細書および第3,687,808号明細書、Freier et al., N
ucleic Acid Res. 25:4429-4443, 1997;Sanghvi, Antisense Research and Application
, Chapter 15, Ed. S. T. Crooke and B. Lebleu, CRC Press, 1993;Englisch, et al.,
Angewandte Chemie 30:613-722, 1991;Kroschwitz, Concise Encyclopedia of Polymer
Science and Engineering, John Wiley & Sons, pp. 858-859, 1990;ならびにCook, An
ti-Cancer Drug Design 6:585-607, 1991に記載された核酸塩基が挙げられる。改変塩基
の追加の非限定的例には、ユニバーサル塩基(例えば、3-ニトロピロールおよび5-ニ
トロイノドール)が挙げられる。他の改変塩基には、ピレンおよびピリジルオキサゾール
誘導体、ピレニル、ピレニルメチルグリセロール誘導体などが挙げられる。他の好ましい
ユニバーサル塩基には、当技術分野において知られたユニバーサル塩基を含め、ピロロー
ル、ジアゾール、またはトリアゾール誘導体が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、改変ヌクレオチドは、それの糖部分に改変を含有するこ
とができる。改変糖を含有する改変ヌクレオチドの非限定的例は、ロックドヌクレオチド
(LNA)である。LNAモノマーは、(参照により本明細書に組み入れられた)国際公
開第99/14226号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第201100766
75号明細書、第20100286044号明細書、第20100279895号明細書
、第20100267018号明細書、第20100261175号明細書、第2010
0035968号明細書、第20090286753号明細書、第2009002359
4号明細書、第20080096191号明細書、第20030092905号明細書、
第20020128381号明細書、および第20020115080号明細書に記載さ
れている。LNAの追加の非限定的例は、(参照により本明細書に組み入れられた)米国
特許第6,043,060号明細書、米国特許第6,268,490号明細書、国際公開
第01/07455号パンフレット、第01/00641号パンフレット、第98/39
352号パンフレット、第00/56746号パンフレット、第00/56748号、お
よび第00/66604号パンフレット、加えて、Morita et al., Bioorg. Med. Chem.
Lett. 12(1):73-76, 2002;Hakansson et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 11(7):935-93
8, 2001;Koshkin et al., J. Org. Chem. 66(25):8504-8512, 2001;Kvaerno et al., J
. Org. Chem. 66(16):5498-5503, 2001;Hakansson et al., J. Org. Chem. 65(17):5161
-5166, 2000;Kvaerno et al., J. Org. Chem. 65(17):5167-5176, 2000;Pfundheller e
t al., Nucleosides Nucleotides 18(9):2017-2030, 1999;およびKumar et al., Bioorg
. Med. Chem. Lett. 8(16):2219-2222, 1998に開示されている。いくつかの実施形態にお
いて、改変ヌクレオチドは、オキシLNAモノマー、例えば、国際公開第03/0207
39号に記載されたものである。
【0090】
改変ヌクレオチドはまた、アンタゴミル(2’-O-メチル-改変型、コレステロール
コンジュゲート化一本鎖RNAアナログ);ALN(□-L-LNA);ADA(2’-
N-アダマンチルメチルカルボニル-2’-アミノ-LNA);PYR(2’-N-ピレ
ニル-1-メチル-2’-アミノ-LNA);OX(オキセタン-LNA);ENA(2
’-O,4”-C-エチレン架橋核酸);AENA(2’-デオキシ-2’-N,4’-
C-エチレン-LNA);CLNA(2’,4’-炭素環式LNA);およびCENA(
2’,4’-炭素環式ENA);HM-改変DNA(4’-C-ヒドロキシメチル-DN
A);2’-置換RNA(2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-アミノエトキシメ
チル、2’-アミノプロポキシメチル、2’-アミノエチル、2’-グアニジノエチル、
2’-シアノエチル、2’-アミノプロピルを有する);ならびにリボース糖環の抜本的
な改変を有するRNA、例えば、アンロックド核酸(Unlocked Nucleic Acid)(UNA
)、アルトリトール核酸(Altritol Nucleic Acid)(ANA)、およびヘキシトール核
酸(Hexitol Nucleic Acid)(HNA)(Bramsen et al., Nucleic Acids Res. 37:2867
-81, 2009参照)を挙げることができる。
【0091】
本明細書に記載された分子はまた、ホスホジエステルバックボーン内に改変を含有する
ことができる。例えば、前記分子内の任意の2個の連続した(隣接する)ヌクレオチド間
の少なくとも1つの連結は、以下の群から選択される2~4個の基/原子を含有する部分
によって接続され得る:-CH2-、-O-、-S-、-NRH-、>C=O、>C=N
RH、>C=S、-Si(R’’)2-、-SO-、-S(O)2-、-P(O)2-、
-PO(BH3)-、-P(O,S)-、-P(S)2-、-PO(R’’)-、-PO
(OCH3)-、および-PO(NHRH)-、ただし、RHは水素およびC1~4-ア
ルキルから選択され、R’’はC1~6-アルキルおよびフェニルから選択される。その
ような連結の実例は、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH
2-CHOH-CH2-、-O-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2
-CH=(次のモノマーへの連結として用いられる場合、R5を含む)、-CH2-CH
2-O-、-NRH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-NRH-、-CH2-NR
H-CH2-、-O-CH2-CH2-NRH-、-NRH-CO-O-、-NRH-C
O-NRH-、-NRH-CS-NRH-、-NRH-C(=NRH)-NRH-、-N
RH-CO-CH2-NRH-、-O-CO-O-、-O-CO-CH2-O-、-O-
CH2-CO-O-、-CH2-CO-NRH-、-O-CO-NRH-、-NRH-C
O-CH2-、-O-CH2-CO-NRH-、-O-CH2-CH2-NRH-、-C
H=N-O-、-CH2-NRH-O-、-CH2-O-N=(次のモノマーへの連結と
して用いられる場合、R5を含む)、-CH2-O-NRH-、-CO-NRH-CH2
-、-CH2-NRH-O-、-CH2-NRH-CO-、-O-NRH-CH2-、-
O-NRH-、-O-CH2-S-、-S-CH2-O-、-CH2-CH2-S-、-
O-CH2-CH2-S-、-S-CH2-CH=(次のモノマーへの連結として用いら
れる場合、R5を含む)、-S-CH2-CH2-、-S-CH2-CH2-O-、-S
-CH2-CH2-S-、-CH2-S-CH2-、-CH2-SO-CH2-、-CH
2-SO2-CH2-、-O-SO-O-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2
-CH2-、-O-S(O)2-NRH-、-NRH-S(O)2-CH2-、-O-S
(O)2-CH2-、-O-P(O)2-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(
S)2-O-、-S-P(O)2-O-、-S-P(O,S)-O-、-S-P(S)2
-O-、-O-P(O,S)-S-、-O-P(S)2-S-、-S-P(O)2-S-
、-S-P(O,S)-S-、-S-P(S)2-S-、-O-PO(R’’)-O-、
-O-PO(OCH3)-O-、-O-PO-(OCH2CH3)-O-、-O-PO(
OCH2S-R)-O-、-O-PO(BH3)-O-、-O-PO(NHRN)-O-
、-O-P(O)2-NRH-、-NRH-P(O)2-O-、-O-P(O,NRH)
2-O-、-CH2-P(O)2-O-、-O-P(O)2-CH2-、および-O-S
i(R’’)2-O-;それらの中で、-CH2-CO-NRH-、-CH2-NRH-
O-、-S-CH2-O-、-O-P(O)2-O-、-O-P(O,S)-O-、-O
-P(S)2-O-、-NRH-P(O)2-O-、-O-P(O,NRH)-O-、-
O-PO(R’’)-O-、-O-PO(CH3)-O-、および-O-PO(NHRN
)-O-であり、ただし、RHは、水素およびC1~4-アルキルから選択され、R’’
は、C1~6-アルキルおよびフェニルから選択される。さらなる実例は、Mesmaeker et
. al., Curr. Opin. Struct. Biol. 5:343-355, 1995; and Freier et al., Nucleic Aci
ds Research 25:4429-43, 1997に示されている。ヌクレオシド間の連結の左側は、3’位
における置換基P*として5員環と結合しており、一方、右側は、次のモノマーの5’位
と結合している。
【0092】
いくつかの実施形態において、核酸のデオキシリボースリン酸バックボーンは、ペプチ
ド核酸を作製するために改変することができる(Hyrup et al., Bioorganic & Medicinal
Chem. 4(1): 5-23, 1996参照)。ペプチド核酸(PNA)は、デオキシリボースリン酸
バックボーンがプソイドペプチドバックボーンによって置き換えられ、4つの天然の核酸
塩基のみが保持されている、核酸模倣体、例えば、DNA模倣体である。PNAの中性バ
ックボーンは、低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAへの特異的なハイブリダイゼ
ーションを可能にする。PNAオリゴマーの合成は、例えば、Hyrup et al., 1996, supr
a; Perry-O’Keefe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:14670-675, 1996に記載
されているような、標準固相ペプチド合成プロトコールを用いて実施することができる。
【0093】
PNAは、例えばそれらの安定性または細胞取り込みを増強するために、親油性もしく
は他のヘルパー基をPNAに付着させることにより、PNA-DNAキメラの形成により
、またはリポソームもしくは当技術分野において知られた送達の他の技術の使用により、
改変することができる。例えば、PNAおよびDNAの有利な性質を組み合わせ得るPN
A-DNAキメラを、作製することができる。そのようなキメラは、DNA認識酵素、例
えば、RNアーゼHがDNA部分と相互作用することを可能にし、一方、PNA部分は、
高い結合親和性および特異性を与えるだろう。PNA-DNAキメラは、塩基の積み重ね
、核酸塩基間の結合の数、および配向の観点から選択された適切な長さのリンカーを用い
て連結することができる(Hyrup,1996、上記)。PNA-DNAキメラの合成は、Hyrup,
1996、上記、およびFinn et al., Nucleic Acids Res. 24:3357-63, 1996に記載されてい
るように実施することができる。例えば、DNA鎖は、標準ホスホロアミダイトカップリ
ング化学作用および改変ヌクレオシドアナログを用いて固体支持体上で合成することがで
きる。5’-(4-メトキシトリチル)アミノ-5’-デオキシ-チミジンホスホロアミ
ダイトなどの化合物を、PNAとDNAの5’末端との間の連結として用いることができ
る(Mag et al., Nucleic Acids Res., 17:5973-88, 1989)。その後、PNAモノマーは
、段階的様式でカップリングされて、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメント
を有するキメラ分子を生成する(Finn et al., Nucleic Acids Res. 24:3357-63, 1996)
。あるいは、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントを有するキメラ分子を、
合成することができる(Peterser et al., Bioorganic Med. Chem. Lett. 5:1119-11124,
1975)。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された核酸のいずれかは、当技術分野に
おいて知られた任意の型の改変により、(その核酸がどのように治療用ナノ粒子へ共有結
合性に連結されるかに依存して)3’末端かまたは5’末端のいずれかにおいて改変する
ことができる。例えば、いずれかの末端は、基質表面(ポリマーコーティング)への付着
を助けるために、保護基でキャップされ、可動性連結基に付着し、または反応基に付着し
得る。3’または5’ブロッキング基の非限定的例には以下が挙げられる:2-アミノ-
2-オキシエチル、2-アミノベンゾイル、4-アミノベンゾイル、アセチル、アセチル
オキシ、(アセチルアミノ)メチル、3-(9-アクリジニル)、トリシクロ[3.3.
1.1(3,7)]デカ-1-イルオキシ、2-アミノエチル、プロペニル、(9-アン
トラセニルメトキシ)カルボニル、(1,1-ジメチルプロポキシ)カルボニル、(1,
1-ジメチルプロポキシ)カルボニル、[1-メチル-1-[4-(フェニルアゾ)フェ
ニル]エトキシ]カルボニル、ブロモアセチル、(ベンゾイルアミノ)メチル、(2-ブ
ロモエトキシ)カルボニル、(ジフェニルメトキシ)カルボニル、1-メチル-3-オキ
ソ-3-フェニル-1-プロペニル、(3-ブロモ-2-ニトロフェニル)チオ、(1,
1-ジメチルエトキシ)カルボニル、[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]ア
ミノ]エチル、2-(フェニルメトキシ)フェノキシ、(1=[1,1’-ビフェニル]
-4-イル-1-メチルエトキシ)カルボニル、ブロモ、(4-ブロモフェニル)スルホ
ニル、1H-ベンゾトリアゾール-1-イル、[(フェニルメチル)チオ]カルボニル、
[(フェニルメチル)チオ]メチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ベ
ンゾイル、ジフェニルメチル、フェニルメチル、カルボキシアセチル、アミノカルボニル
、クロロジフルオロアセチル、トリフルオロメチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロ
ヘプチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルアセチル、クロロ、カルボキシメチル、シク
ロペンチルカルボニル、シクロペンチル、シクロプロピルメチル、エトキシカルボニル、
エチル、フルオロ、ホルミル、1-オキソヘキシル、ヨード、メチル、2-メトキシ-2
-オキソエチル、ニトロ、アジド、フェニル、2-カルボキシベンゾイル、4-ピリジニ
ルメチル、2-ピペリジニル、プロピル、1-メチルエチル、スルホ、およびエテニル。
5’および3’ブロッキング基の追加の例は当技術分野において知られている。いくつか
の実施形態において、5’または3’ブロッキング基は、その分子のヌクレアーゼ分解を
防止する。
【0095】
本明細書に記載された核酸は、核酸を合成するための、当技術分野において知られた任
意の方法を用いて、合成することができる(例えば、Usman et al., J. Am. Chem. Soc.
109:7845, 1987;Scaringe et al., Nucleic Acid Res. 18:5433, 1990;Wincott et al.
, Methods Mol. Biol. 74:59, 1997;およびMilligan, Nucleic Acid Res. 21:8783, 198
7参照)。これらは、典型的には、一般的な核酸保護基およびカップリング基を用いる。
合成は、この目的のために設計された市販の装置、例えば、394 Applied B
iosystems,Inc.シンセサイザーで、その製造会社により供給されたプロト
コールを用いて、実施することができる。本明細書に記載された分子を合成するための追
加の方法は、当技術分野において知られている。あるいは、核酸は、オリゴヌクレオチド
を合成する商業的ベンダーに特別に注文することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、核酸は、それの5’末端で治療用ナノ粒子に付着してい
る。いくつかの実施形態において、核酸は、それの3’末端で治療用ナノ粒子に付着して
いる。いくつかの実施形態において、核酸は、核酸に存在する塩基を通して治療用ナノ粒
子に付着している。
【0097】
いくつかの実施形態において、核酸(例えば、本明細書に記載された核酸のいずれか)
は、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を含有する化学的部分を通して治療用ナノ
粒子に(例えば、治療用ナノ粒子のポリマーコーティングに)付着している。いくつかの
実施形態において、核酸は、アミド結合を含有する化学的部分を通して治療用ナノ粒子に
付着している。核酸を治療用ナノ粒子へ共有結合性に連結するために用いることができる
追加の化学的部分は当技術分野において知られている。
【0098】
核酸を治療用ナノ粒子へ共有結合性に連結するために、様々な異なる方法を用いること
ができる。核酸を磁性粒子に連結するために用いることができる方法の非限定的例は、欧
州特許出願公開第0937097号明細書;米国特許第RE41005号明細書;Lund e
t al., Nucleic Acid Res. 16:10861, 1998;Todt et al., Methods Mol. Biol. 529:81-
100, 2009;Brody et al., J. Biotechnol. 74:5-13, 2000;Ghosh et al., Nucleic Aci
ds Res. 15:5353-5372, 1987;米国特許第5,900,481号明細書;米国特許第7,
569,341号明細書;米国特許第6,995,248号明細書;米国特許第6,81
8,394号明細書;米国特許第6,811,980号明細書;米国特許第5,900,
481号明細書;および米国特許第4,818,681号明細書(それらのそれぞれは、
全体として参照により組み入れられている)に記載されている。いくつかの実施形態にお
いて、核酸の治療用ナノ粒子への末端付着のためにカルボジイミドが用いられる。いくつ
かの実施形態において、核酸は、治療用ナノ粒子の表面上に存在する活性化部分とのそれ
の塩基のうちの1つの反応(例えば、治療用ナノ粒子の表面上の求核性部分との求電子性
塩基の反応、または治療用ナノ粒子の表面上の求電子性残基との求核性塩基の反応)を通
して、治療用ナノ粒子に付着している。いくつかの実施形態において、5’-NH2改変
核酸は、CNBr活性化ヒドロキシル基を含有する治療用ナノ粒子と付着している(例え
ば、Lundら、上記参照)。アミノ改変核酸を治療用ナノ粒子に付着させるための追加
の方法は下に記載されている。いくつかの実施形態において、5’-リン酸核酸は、カル
ボジイミドの存在下でヒドロキシル基を含有する治療用ナノ粒子に付着している(例えば
、Lundら、上記参照)。核酸を治療用ナノ粒子に付着させる他の方法には、治療用ナ
ノ粒子上のNH2基への5’-リン酸核酸のカルボジイミド媒介性付着、およびカルボキ
シル基を有する治療用ナノ粒子への5’-NH2核酸のカルボジイミド媒介性付着が挙げ
られる(例えば、Lundら、上記参照)。
【0099】
例示的な方法において、反応性アミンまたは反応性チオール基を含有する核酸を作製す
ることができる。核酸におけるアミンまたはチオールは、別の反応基に連結することがで
きる。この反応を実施するための2つの共通したストラテジーは、ホモ二官能性連結と呼
ばれる、核酸を、類似した反応性部分へ(アミンからアミンへ、またはチオールからチオ
ールへ)連結すること、またはヘテロ二官能性連結として知られた、核酸を逆の基へ(ア
ミンからチオールへ、またはチオールからアミンへ)連結することである。両方の技術が
、核酸を治療用ナノ粒子に付着させるために用いることができる(例えば、Misra et al.
, Bioorg. Med. Chem. Lett. 18:5217-5221, 2008;Mirsa et al., Anal. Biochem. 369:
248-255, 2007;Mirsa et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 17:3749-3753, 2007;および
Choithani et al., Methods Mol Biol. 381:133-163, 2007参照)。
【0100】
特にアミン基についての、伝統的な付着技術は、ホモ二官能性連結に頼っている。最も
一般的な技術の一つは、グルタルアルデヒドなどのビスアルデヒドの使用である。合成核
酸プローブ(SNAP)テクノロジーとしてSyngene(Frederick、MD
)により商品化されたジスクシンイミジル基質(DSS)、または試薬p-フェニレンジ
イソチオシアネートもまた、核酸と治療用ナノ粒子との間の共有結合性連結を生じさせる
ために用いることができる。N,N’-o-フェニレンジマレイミドがチオール基を架橋
するために用いることができる。ホモ二官能性架橋剤の全部に関して、核酸は、最初に活
性化され、その後、治療用ナノ粒子に付加される(例えば、Swami et al., Int. J. Phar
m. 374:125-138, 2009, Todt et al., Methods Mol. Biol. 529:81-100, 2009;およびLi
manskii, Biofizika 51:225-235, 2006参照)。
【0101】
ヘテロ二官能性リンカーもまた、核酸を治療用ナノ粒子に付着させるために用いること
ができる。例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート
(SPDP)は、最初に、一級アミンに連結して、ジチオール改変化合物を生じる。その
後、これは、チオールと反応して、ピリジルチオールをその入ってきたチオールと交換す
ることができる(例えば、Nostrum et al., J. Control Release 15;153(1):93-102, 201
1、およびBerthold et al., Bioconjug. Chem. 21:1933-1938, 2010参照)。
【0102】
チオール使用についての代替アプローチは、チオール交換反応である。チオール化核酸
がジスルフィド治療用ナノ粒子へ導入された場合には、核酸がジスルフィド結合により治
療用ナノ粒子と共有結合することをもたらす、ジスルフィド交換反応が起こり得る。多数
の潜在的架橋化学作用が、アミンとチオールのヘテロ二官能性架橋に利用できる。一般的
に、これらの手順は、チオール化ヌクレオチドと共に用いられている。典型的に利用され
ている試薬は、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、MBS(m-マレイ
ミドベンゾイル-N-スクシンイミドエステル)、およびSPDP(ピリジルジスルフィ
ド系)である。一般的に用いられるヘテロ二官能性リンカーは、アミノ化核酸に頼ってい
る。核酸を治療用ナノ粒子へ共有結合性に連結するための追加の方法は、当技術分野にお
いて知られている。
【0103】
ターゲティングペプチド
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子はさらに、例えば国際公開第2013/
016126号パンフレットに記載されているような、共有結合性に連結されたターゲテ
ィングペプチドを含有する。用語「ターゲティングペプチド」とは、標的細胞(例えば、
癌細胞)の形質膜中または形質膜上に存在する分子(例えば、タンパク質、糖、もしくは
脂質、またはそれらの組合せ)によって結合されるペプチドを意味する。本明細書に記載
されているように、ターゲティングペプチドは、第2の分子または組成物(例えば、本明
細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)へ共有結合性に連結されて、その第2の分
子または組成物を標的細胞(例えば、癌細胞)へ標的化することができる。いくつかの実
施形態において、第2の分子または組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒
子のいずれか)へ共有結合性に連結されているターゲティングペプチドは、標的化された
細胞による第2の分子または組成物の取り込み(例えば、エンドサイトーシスまたはピノ
サイトーシスによる細胞取り込み)を生じる。ターゲティングペプチドの非限定的例は本
明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、ターゲティングペプチドは、R
GDペプチド、EPPTペプチド、NYLHNHPYGTVG(配列番号2)、SNPF
SKPYGLTV(配列番号3)、GLHESTFTQRRL(配列番号4)、YPHY
SLPGSSTL(配列番号5)、SSLEPWHRTTSR(配列番号6)、LPLA
LPRHNASV(配列番号7)、またはβAla-(Arg)7-Cys(配列番号8
)を含有する。いくつかの実施形態において、ターゲティングペプチドは、ジスルフィド
結合を含有する化学的部分を通してナノ粒子へ共有結合性に連結されている。いくつかの
実施形態において、治療用ナノ粒子は、磁性である。ターゲティングペプチド、およびそ
れらをナノ粒子に付着させるための方法の追加の例は、当技術分野において知られており
、例えば、国際公開第2013/016126号パンフレットを参照されたい。
【0104】
薬学的組成物
本明細書に記載されているような治療用ナノ粒子を含有する薬学的組成物もまた本明細
書に提供される。本明細書に記載されたいずれかの型の治療用ナノ粒子の2つ以上(例え
ば、2つ、3つ、または4つ)は、任意の組合せで薬学的組成物中に存在することができ
る。薬学的組成物は、当技術分野において知られた任意の様式で製剤化することができる
。
【0105】
薬学的組成物は、それらの意図された投与経路(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮
内、皮下、または腹腔内)に適合するように製剤化される。前記組成物は、滅菌希釈剤(
例えば、滅菌水または食塩水)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピ
レングリコールもしくは他の合成溶媒、抗細菌もしくは抗真菌剤、例えば、ベンジルアル
コールもしくはメチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメ
ロサールなど、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウム、キレ
ート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、バッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、
もしくはリン酸塩、および等張剤、例えば、糖(例えば、デキストロース)、ポリアルコ
ール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、または塩(例えば、塩化ナトリウム
)、またはそれらの任意の組合せを含み得る。リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容さ
れる担体として用いることができる(例えば、米国特許第4,522,811号明細書参
照)。前記組成物の調製物は、製剤化され、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数回
用量バイアル中に封入され得る。(例えば、注射製剤においてのように)必要な場合、適
切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングまたは表面活性剤の使用により、維
持することができる。治療用ナノ粒子の吸収は、吸収を遅らせる作用物質(例えば、モノ
ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含むことにより延ばすことができる。ある
いは、徐放は、生分解性、生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無
水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸;Alza
CorporationおよびNova Pharmaceutical,Inc.)
を含むことができる植込錠およびマイクロカプセル化送達系により達成することができる
。
【0106】
本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれかの1つまたは複数を含有する組成物は
、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内)投与用に用量
単位形(すなわち、投与の簡便さおよび用量の均一性のための予め決められた量の活性化
合物を含有する、物理的に別々の単位)で製剤化することができる。
【0107】
組成物の毒性および治療効果は、細胞培養物または実験動物(例えば、サル)において
標準薬学的手順により決定することができる。例えば、LD50(集団の50%に致死性
の用量)およびED50(集団の50%において治療的有効な用量):LD50:ED5
0の比である治療係数を決定することができる。高い治療係数を示す作用物質が好ましい
。作用物質が望ましくない副作用を示す場合、潜在的損傷を最小限にする(すなわち、望
まれない副作用を低下させる)ように気をつけるべきである。毒性および治療効果は、他
の標準薬学的手順により決定することができる。
【0108】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、対象(例えば、ヒト)におけ
る使用のための任意の所定の作用物質の適切な用量を製剤化することにおいて用いること
ができる。1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)の治療用ナノ粒子
(本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)の治療的有効量は、(例えば、同じ
疾患を有するが、処置を受けていない、もしくは異なる処置を受けた対照の対象、または
処置前の同じ対象と比較して、)対象(例えば、ヒト)において、癌(例えば、乳癌)を
有する対象における癌細胞浸潤もしくは転移を減少させ、対象においてリンパ節における
転移性癌を処置し、対象においてリンパ節における転移性腫瘍サイズを減少もしくは安定
化させ、対象においてリンパ節における転移性腫瘍成長の速度を減少させ、対象(例えば
、ヒト)においてリンパ節における転移性癌の1つもしくは複数の症状の重症度、頻度、
および/もしくは持続期間を減少させ、または対象においてリンパ節における転移性癌の
症状の数を減少させる量である。
【0109】
本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれかの有効性および投薬は、当技術分野に
おいて知られた方法を用いて、加えて、対象(例えば、ヒト)においてのリンパ節におけ
る転移性癌の1つまたは複数の症状の観察により、医療専門家によって決定することがで
きる。ある特定の因子(例えば、疾患または障害の重症度、以前の処置、対象の一般的健
康および/または年齢、ならびに他の疾患の存在)が、対象を効果的に処置するのに必要
とされる用量およびタイミングに影響する場合がある。
【0110】
例示的な用量には、対象の体重の1キログラムあたりの、本明細書に記載された治療用
ナノ粒子のいずれかのミリグラムまたはマイクログラム量が挙げられる。これらの用量は
幅広い範囲を網羅するが、本明細書に記載された治療用ナノ粒子を含む治療剤が、それら
の効力によって異なることを当業者は理解しており、有効量は、当技術分野において知ら
れた方法によって決定することができる。典型的には、相対的に低い用量が最初に投与さ
れ、担当医療専門家(治療適用の場合)または研究者(まだ開発段階で研究している時)
は、続いて、かつ徐々に、適切な応答が得られるまで用量を増加させることができる。加
えて、任意の特定の対象についての特定の用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性
、対象の年齢、体重、一般的な健康、性別、および食事、投与の時点、投与の経路、排泄
速度、およびインビボでの治療用ナノ粒子の半減期を含む様々な因子に依存することは理
解されている。
【0111】
薬学的組成物は、投与についての使用説明書と共に、容器、パック、またはディスペン
サー内に含まれ得る。
【0112】
処置の方法
本明細書に記載された治療用ナノ粒子は、癌成長を減少させることが発見された。この
発見を勘案して、対象において癌を処置する方法が本明細書に提供される。これらの方法
の特定の実施形態および様々な態様が下に記載されている。
【0113】
癌を処置する方法
方法は一般的に、腫瘍、例えば、癌を有する対象を同定することを含む。本明細書で用
いられる場合、用語「癌」は、自律的成長の能力を有する細胞、すなわち、急速に増殖す
る細胞成長により特徴づけられる異常な状態または状況、を指す。過剰増殖性および腫瘍
性疾患状態は、病的、すなわち、疾患状態を特徴づけもしくは構成するものとして、分類
され得、または非病的、すなわち、正常から逸脱しているが、疾患状態に関連づけられな
いものとして分類され得る。一般的に、癌は、1つまたは複数の腫瘍、すなわち、異常な
細胞塊の存在と関連づけられる。用語「腫瘍」は、組織病理学的型や浸潤性の段階とは関
係なく、全ての型の、癌性成長もしくは発癌過程、転移性組織、または悪性形質転換した
細胞、組織、もしくは器官を含むことを意図される。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫
瘍成長により特徴づけられる疾患状態で起こる。本研究は、膵癌に、それの憂うつな予後
およびそれの転移型に対する進行の欠如を理由に、焦点をおいているが、本組成物および
本方法は、固形悪性腫瘍に幅広く適用できる。したがって、癌は、任意の型の固形腫瘍で
あり得、その固形腫瘍には、乳癌、結腸癌、腎癌、肺癌、皮膚癌、卵巣癌、膵癌、直腸癌
、胃癌、甲状腺癌、または子宮癌が挙げられるが、それらに限定されない。
【0114】
腫瘍には、様々な器官系の悪性腫瘍、例えば、肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸管、
および尿生殖路を冒す悪性腫瘍、加えて、たいていの結腸癌、腎細胞癌腫、前立腺癌およ
び/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌腫、小腸の癌、ならびに食道の癌などの悪性腫瘍を
含む腺癌が挙げられる。用語「癌腫」は、当技術分野において認められており、呼吸器系
癌腫、胃腸管系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫
、および黒色腫を含む上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態にお
いて、疾患は、腎臓癌腫または黒色腫である。例示的な癌腫には、子宮頚部、肺、前立腺
、乳房、頭頚部、結腸、および卵巣の組織から形成される癌腫が挙げられる。その用語は
また、癌肉腫も含み、それには、例えば、癌性および肉腫組織で構成される悪性腫瘍が挙
げられる。「腺癌」は、腺組織に由来した癌腫、または腫瘍細胞が、認識できる腺状構造
を形成している癌腫を指す。用語「肉腫」は、当技術分野において認められており、間葉
系誘導の悪性腫瘍を指す。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された方法により評価または処置される
癌には、上皮癌、例えば、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、乳癌、結腸直
腸癌、腎癌、頭頚部癌、前立腺癌、膵癌(例えば、膵管腺癌(PDAC))、または卵巣
癌が挙げられる。上皮悪性腫瘍は、上皮組織を冒す癌である。
【0116】
癌は、医療専門家(例えば、医師、医師の助手、看護師、検査技師)によって、当技術
分野において知られた方法を用いて対象において診断することができる。例えば、転移性
癌は、一つには、当技術分野において知られているような対象における癌の少なくとも1
つの症状の観察または検出によって、対象において診断することができる。癌はまた、様
々な画像化技術を(例えば、単独で、または対象における癌の1つもしくは複数の症状の
観察と組み合わせて)用いて対象において診断することができる。例えば、癌の存在は、
コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、ポジトロン放射型断層撮影法、およびX線法
を用いて、対象において検出することができる。癌はまた、対象由来の組織の生検を実施
することにより診断することができる。癌はまた、CA19.9、CEA、PSAなどの
血清バイオマーカーから診断することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、方法は、癌が免疫チェックポイント分子、例えば、PD
-L1を発現または過剰発現するかどうかを決定することを含み得る。癌において、例え
ば、癌由来の細胞を含む生検または他の試料において、免疫チェックポイント分子、例え
ば、PD-L1の発現を検出するための方法は、当技術分野において知られており、それ
には、例えば、市販の、または研究室で開発された免疫組織化学法(IHC)が挙げられ
、例えば、Udall et al., Diagn Pathol. 2018; 13: 12を参照されたい。そのレベルは、
閾値または参照レベルと比較することができ、閾値または参照レベルより上の免疫チェッ
クポイント分子、例えば、PD-L1の発現のレベルが見られる場合には、その対象は、
本明細書に記載されているような処置に選択され得る。いくつかの実施形態において、方
法は、例えば、Kawakami et al., Curr Treat Options Oncol. 2015 Jul;16(7):30;Zein
alian et al., Adv Biomed Res. 2018; 7: 28に記載されているように、癌が、高レベル
のマイクロサテライト不安定性(MSI)を有するかどうかを決定し、MSIが高い、ま
たは閾値もしくは参照レベルより上のMSIのレベルを有する癌を処置のために選択する
ことを含み得る。
【0118】
本明細書に記載された治療用ナノ粒子の任意の1つまたは複数は、癌を有する対象に投
与することができる。1つまたは複数の治療用ナノ粒子は、医療施設(例えば、病院また
は診療所)において、またはケア支援施設において対象に投与することができる。いくつ
かの実施形態において、対象は、以前、癌を有すると診断されている。いくつかの実施形
態において、対象はすでに、癌についての治療的処置を受けている。いくつかの実施形態
において、1つまたは複数の腫瘍は、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のうちの1つ
での処置の前に、外科的に除去されている。
【0119】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの治療用ナノ粒子の投与は、結果として
、腫瘍のサイズの減少(例えば、有意なまたは観察可能な減少)、腫瘍のサイズの安定化
(例えば、サイズの有意なまたは観察可能な変化がない)、または対象に存在する腫瘍の
成長の速度の減少(例えば、検出可能または観察可能な減少)を生じる。医療専門家は、
様々な異なる画像化技術を用いて対象における腫瘍のサイズおよび/またはサイズの変化
をモニターすることができ、その画像化技術には、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画
像法、ポジトロン放射型断層撮影法、およびX線法が挙げられるが、それらに限定されな
い。例えば、治療に応答した、対象における腫瘍のサイズの減少または安定化があるかど
うかを決定するために、対象の腫瘍のサイズは、治療前および後に決定することができる
。腫瘍の成長の速度は、処置を受けていないまたは異なる処置を受けた別の対象または対
象集団における腫瘍の成長の速度と比較することができる。腫瘍の成長の速度の減少はま
た、治療的処置(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれかでの処置)の
前と後の両方の腫瘍の成長の速度を比較することにより決定することができる。いくつか
の実施形態において、腫瘍の可視化は、腫瘍における癌細胞と特異的に結合する標識プロ
ーブまたは分子(例えば、癌細胞の表面上に存在するエピトープと選択的に結合する標識
抗体)を利用する画像化技術を用いて実施することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子を対象に投与することは、原発性癌(例
えば、原発性乳癌)を有する(例えば、有すると診断された)対象において転移性癌(例
えば、リンパ節における転移性癌)を発症するリスクを(例えば、類似した原発性癌を有
するが、処置を受けていないまたは代替処置を受けた対象において転移性癌を発症する率
と比較して)減少させる。原発性癌を有する対象において転移性腫瘍を発症するリスクの
減少はまた、治療を受けていないまたは代替型の癌治療を受けた対象集団における転移性
癌形成の率を比較することができる。
【0121】
医療専門家はまた、癌の治療的処置の有効性を、対象における癌の症状の数の減少を観
察することにより、または対象における癌の1つもしくは複数の症状の重症度、頻度、お
よび/もしくは持続期間の減少を観察することにより、評価することができる。癌の様々
な症状は、当技術分野において知られており、本明細書に記載されている。
【0122】
いくつかの実施形態において、投与は、結果として、(例えば、類似した癌を有するが
、異なる治療的処置を受け、または治療的処置を受けていない対象集団と比較して)対象
における寿命または生存の可能性の増加(例えば、有意な増加)を生じ得る。いくつかの
実施形態において、投与は、結果として、(例えば、類似した癌を有するが、異なる治療
的処置を受け、または治療的処置を受けていない対象集団と比較して)癌を有する対象に
ついての予後の改善を生じ得る。
【0123】
投薬、投与、および組成物
本明細書に記載された方法のいずれかにおいて、治療用ナノ粒子は、医療専門家(例え
ば、医師、医師の助手、看護師、または検査室もしくは診療所従業員)、対象(すなわち
、自己投与)、または対象の友人もしくは家族メンバーによって投与することができる。
投与は、臨床設定(例えば、診療所または病院)において、介護施設において、または薬
局で実施することができる。
【0124】
本明細書に記載された方法のいずれかのいくつかの実施形態において、治療用ナノ粒子
は、癌を有すると診断されている対象に投与される。いくつかの実施形態において、対象
は、乳癌または膵癌と診断されている。いくつかの非限定的実施形態において、対象は、
男性もしくは女性、成人、若者、または子どもである。対象は、癌または転移性癌(例え
ば、リンパ節における転移性癌)の1つまたは複数の症状を経験したことがあり得る。対
象はまた、重度または進行期の癌(例えば、原発性または転移性癌)を有すると診断され
得る。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1つのリンパ節に存在する転移
性腫瘍を有すると同定された可能性がある。いくつかの実施形態において、対象は、外科
的切除、例えば、部分的なまたは全体の膵切除、リンパ節切除、および/または乳腺切除
をすでに受けた可能性がある。
【0125】
本明細書に記載された方法のいずれかの実施形態において、対象は、本明細書に記載さ
れた、磁性粒子または薬学的組成物のいずれかの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、
3つ、または4つ)を含有する組成物の少なくとも1回(例えば、少なくとも2回、3回
、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、20回、25回、または30
回)の用量を投与される。本明細書に記載された方法のいずれかにおいて、少なくとも1
つの磁性粒子または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載された磁性粒子または薬学的
組成物のいずれか)は、対象へ静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内に投与する
ことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの磁性粒子または薬学的組
成物は、対象におけるリンパ節へ直接投与(注射)される。
【0126】
いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1つの治療用ナノ粒子または薬学的
組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子または薬学的組成物のいずれか)
および少なくとも1つの追加の治療剤を投与される。少なくとも1つの追加の治療剤は、
化学療法剤であり得る。用語「化学療法剤」とは、対象(例えば、ヒト)において、癌細
胞成長の速度を低下させるために、または癌細胞の死(例えば、壊死またはアポトーシス
)を誘導もしくは媒介するために用いることができる分子を意味する。非限定的例におい
て、化学療法剤は、小分子、タンパク質(例えば、抗体、抗体の抗原結合断片、またはそ
れらの誘導体もしくはコンジュゲート)、核酸、またはそれらの任意の組合せであり得る
。化学療法剤の非限定的例には、1つもしくは複数のアルキル化剤;アントラサイクリン
;細胞骨格破壊物質(タキサン);エポシロン;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;トポイ
ソメラーゼIの阻害剤;トポイソメラーゼIIの阻害剤;キナーゼ阻害剤;ヌクレオチド
アナログおよび前駆体アナログ;ペプチド抗生物質;白金製剤;レチノイド;ならびに/
もしくはビンカアルカロイドおよび誘導体;またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、ヌクレオチドアナログまたは前駆体アナロ
グ、例えば、アザシチジン;アザチオプリン;カペシタビン;シタラビン;ドキシフルリ
ジン;フルオロウラシル;ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;メルカプトプリン;メトト
レキサート;またはチオグアニンである。他の例には、シクロホスファミド、メクロレタ
ミン、クロラムブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン
、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エ
トポシド、テニポシド、タフルポシド、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン
、オキサリプラチン、オールトランスレチノール酸、ビンブラスチン、ビンクリスチン、
ビンデシン、ビノレルビン、およびベバシズマブ(またはその抗原結合断片)が挙げられ
る。化学療法剤の追加の例は当技術分野において知られている。
【0127】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、癌型に基づいて、または癌の遺伝子解析
に基づいて、選択され、例えば、膵癌について、ABRAXANE(アルブミン結合パク
リタキセル)、Gemzar(ゲムシタビン)、カペシタビン、5-FU(フルオロウラ
シル)およびONIVYDE(イリノテカンリポソーム注射)、またはそれらの組合せ、
例えば、FOLFIRINOX、3つの化学療法薬(5-FU/ロイコボリン、イリノテ
カン、およびオキサリプラチン)の組合せ、もしくは改変FOLFIRINOX(mFO
LFIRINOX)のうちの1つまたは複数を投与することができる。補完的機構により
相乗的に働き得る標的のさらなる組合せを用いることができる。例えば、組換えヒトヒア
ルロニダーゼ(PEGPH20)30,31による酵素分解、または他の代替化学療法剤
、および/またはT細胞を活性化することにおいて相乗効果を促進し得る代替チェックポ
イント阻害剤(例えば、抗PD-1および/または抗CTLA-4)により、腫瘍微小環
境を物理的に変化させる併用療法を用いることができる。
【0128】
方法および組成物はまた、鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、ジ
フルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イ
ンドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸塩(meclofenamate)、
メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブ
タゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ブプレノルフィン、ブ
トルファノール、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリ
ジン、メタドン、モルフィン、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾ
シン、プロポキシフェン、およびトラマドール)の投与を含み得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤および少なくとも1つの
治療用ナノ粒子(本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)が、同じ組成物(例
えば、同じ薬学的組成物)において投与される。いくつかの実施形態において、少なくと
も1つの追加の治療剤および少なくとも1つの治療用ナノ粒子は、異なる投与経路を用い
て対象に投与される(例えば、少なくとも1つの追加の治療剤が経口投与により送達され
、少なくとも1つの治療用ナノ粒子が静脈内投与により送達される)。
【0130】
本明細書に記載された方法のいずれかにおいて、少なくとも1つの治療用ナノ粒子また
は薬学的組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子または薬学的組成物のい
ずれか)、および任意で、少なくとも1つの追加の治療剤は、対象に少なくとも週1回(
例えば、週1回、週2回、週3回、週4回、1日1回、1日2回、または1日3回)、投
与することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なる治療用ナノ
粒子が、同じ組成物(例えば、液体組成物)において投与される。いくつかの実施形態に
おいて、少なくとも1つの治療用ナノ粒子および少なくとも1つの追加の治療剤が、同じ
組成物(例えば、液体組成物)において投与される。いくつかの実施形態において、少な
くとも1つの治療用ナノ粒子および少なくとも1つの追加の治療剤が、2つの異なる組成
物(例えば、少なくとも1つの治療用ナノ粒子を含有する液体組成物、および少なくとも
1つの追加の治療剤を含有する固体経口組成物)において投与される。いくつかの実施形
態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、丸剤、錠剤、またはカプセルとして投与
される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、徐放性経口製
剤において投与される。
【0131】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の追加の治療剤は、少なくとも1つの治
療用ナノ粒子または薬学的組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子または
薬学的組成物のいずれか)を投与する前に対象に投与することができる。いくつかの実施
形態において、1つまたは複数の追加の治療剤は、少なくとも1つの治療用ナノ粒子また
は薬学的組成物(例えば、本明細書に記載された磁性粒子または薬学的組成物のいずれか
)を投与した後に対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、1つもし
くは複数の追加の治療剤および少なくとも1つの治療用ナノ粒子または薬学的組成物(例
えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子または薬学的組成物のいずれか)は、対象に
おいて前記1つまたは複数の追加の治療剤と前記少なくとも1つの治療用ナノ粒子(例え
ば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子のいずれか)の生物活性期間の重複があるよう
に、対象に投与される。
【0132】
いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1つの治療用ナノ粒子または薬学的
組成物(例えば、本明細書に記載された治療用ナノ粒子または薬学的組成物のいずれか)
を長期間に渡って(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1カ月間、2カ月間、
3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間
、11カ月間、12カ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、または10年間
に渡って)投与され得る。熟練した医学専門家は、処置の有効性を診断または追跡するた
めの本明細書に記載された方法のいずれかを用いて(例えば、上記の方法および当技術分
野において知られた方法を用いて)、処置期間の長さを決定し得る。本明細書に記載され
ているように、熟練した医学専門家はまた、対象に投与される治療用ナノ粒子(および/
または1つまたは複数の追加の治療剤)のアイデンティティおよび数(例えば、増加また
は減少させる)を変化させることができ、(例えば、本明細書に記載された方法および当
技術分野において知られた方法のいずれかを用いた)処置の有効性の評価に基づいて、対
象への少なくとも1つの治療用ナノ粒子(および/または1つまたは複数の追加の治療剤
)の投与の用量または頻度も調整する(例えば、増加または減少させる)こともできる。
熟練した医学専門家はさらに、いつ処置を中断するべきか(例えば、対象の症状が有意に
減少した時)を決定することができる。
【0133】
治療のモニタリング
本発明者らの治療アプローチの追加の重要な利点は、それが、標的組織における薬物生
物学的利用率についての知識と治療結果とを組み合わせる、臨床的に意義のある画像ガイ
ド処置プロトコールを開発するまたとない機会を提示するという事実に由来する。この能
力は、MN-siPDL1が20nm超常磁性ナノ粒子担体と合体して、そのことが、腫
瘍細胞への高効率的な送達を保証し、かつ組織におけるその蓄積が、定量的非侵襲性MR
Iによりモニターされ得るという事実によって、可能になる。この能力は、処置の間に薬
物生物学的利用率を非侵襲性に測定する可能性を示さない全ての他の利用可能な治療アプ
ローチの状況においては、独特である。
【0134】
本研究に例証されているように、ΔR2パラメータによる組織におけるMN-siPD
L1の相対的濃度についての知識は、恒久的腫瘍退縮に関連した治療プロトコールの開発
および最適化を可能にする。同時に、解剖学的MRIは、応答の形態学的バイオマーカー
として腫瘍容積の客観的測定を可能にする。しかしながら、動力学的MR画像化プロトコ
ールの適用は、腫瘍血流および微小血管透過性に関連した生理的変数も測定するために容
易に用いることができる。
【0135】
したがって、本方法は、磁性ナノ粒子を検出する画像化モダリティの使用を含み得る。
【実施例0136】
本発明は、以下の実施例にさらに記載されており、その実施例は、特許請求の範囲に記
載された本発明の範囲を限定しない。
【0137】
方法
低分子干渉RNA(siRNA)オリゴ
pd-l1に対するsiRNAオリゴ(siPDL1;MW=13,788.9g/m
ol)の配列は、5’-ThioMC6-D/GGUCAACGCCACAGCGAAU
UU-3’(センス配列;配列番号2)および5’-PAUUCGCUGUGGCGUU
GACCUU-3’(アンチセンス配列;配列番号3)からなった。スクランブルsiR
NAオリゴ(siSCR;MW=13,728.8g/mol)の配列は、5’-Thi
oMC6-D/UGGUUUACAUGUCGACUAAUU-3’(センス配列;配列
番号4)および5’-PUUAGUCGACAUGUAAACCAUU-3’(アンチセ
ンス配列;配列番号5)であった。両方のsiRNAは、Dharmacon(Lafa
yette、CO)によって設計および合成された。5’-チオール修飾因子C6ジスル
フィド(5’-ThioMC6)を、磁性ナノ粒子にコンジュゲートするためにセンス配
列中に導入した。
【0138】
デキストランコーティング化磁性ナノ粒子(MN)の合成
MNを、以前に発表されたプロトコール20に従って合成した。簡単に述べれば、アル
ゴンガスを1時間、流しながら、30mlのDextan-T10(0.3g ml-1
、Pharmacosmos A/S、Holbaek、Denmark)を、1mlの
FeCl3・6H2O(0.65g ml-1、Sigma、Saint Louis、
MO)と混合した。1mlのFeCl2・4H2O(0.4g ml-1、Sigma)
を、その混合物へ加え、15mlの冷たいNH4OH(28%、Sigma)を、その撹
拌される混合物へ滴下した。温度を、ナノ粒子分散の形成を開始させるために85℃まで
1時間、上昇させ、その後、室温まで冷却した。磁性ナノ粒子を、Amicon超遠心ユ
ニット(MWCO 30kDa;Millipore、Darmstadt、Germa
ny)を用いて20mlへ濃縮した。生じたデキストランコーティング化磁性ナノ粒子を
、エピクロロヒドリン(14ml、8h、Sigma)により架橋し、その後のNH4O
H(28%、60ml)の添加でアミノ化した。アミノ化磁性ナノ粒子(MN)を、透析
により精製し、Amicon超遠心ユニットを用いて濃縮した。MNの性質は以下の通り
であった:濃度、Feとして10.94mg ml-1;MNあたりのアミン基の数、6
4;緩和能(R2)、82.5mM-1秒-1;MNのサイズ、20.3±0.6nm(
NanoSight LM-10システムおよびナノ粒子追跡分析ソフトウェア(Ver
.3.2)、Malvern、UK)。
【0139】
ナノドラッグ合成および特徴づけ
ナノドラッグ合成を、以前に発表されたプロトコール
20に従って行った。
図1Aおよ
び
図6も参照。簡単に述べれば、MNにヘテロ二官能性リンカー N-スクシンイミジル
3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオネート(SPDP、Thermoscienti
fic Co.、Rockford、IL)をコンジュゲートし、それを、活性化siR
NAオリゴの連結のために利用した。SPDPを無水DMSO中に溶解し、MNとインキ
ュベートし、それは、siRNAオリゴとの還元不安定性ジスルフィド連結を形成するた
めのピリジルジチオ基を有する。siRNAオリゴの5’-ThioMC6を、ヌクレア
ーゼフリーのPBS中、3%TCEP(Thermoscientific Co.、R
ockford、IL)処理により活性化して、チオールを遊離させた。そのsiRNA
オリゴを、酢酸アンモニウム/エタノール沈殿法を用いて精製した。TCEP活性化およ
び精製後、各オリゴ(siPDL1およびsiSCR)を水中に溶解し、SPDP修飾M
Nと一晩、インキュベートして、ナノドラッグ(MN-siPDL1およびMN-siS
CR)を調製した。オリゴを、2つの異なる比率でMNに加えて、電気泳動分析法
20に
より定量化した場合、MNあたり2.1±0.4(低用量)または4.8±0.7(高用
量)siRNAオリゴを組み入れるナノドラッグを得た。ナノドラッグを、毎週、新鮮に
調製した。最終MN-siPDL1/SCRのサイズは、23.2±0.9nmであった
。
【0140】
細胞株
マウス膵管腺腫PAN 02細胞株(NCI、Frederick、MD)を、10%
FBS(Thermoscientific、Waltham、MA)、1%抗生物質(
Invitrogen、Carlsbad、CA)、および2mM L-グルタミンを追
加したRPMI 1640培地(Sigma)中で、供給会社の使用説明書通り、培養し
た。培地を、週3回、交換し、週1回、継代培養のためにトリプシン処理した。
【0141】
免疫組織化学的組織染色および蛍光顕微鏡法
一次および二次抗体を、Abcam(Cambridge、MA)から購入し、それに
は以下が含まれた:一次抗体として、抗CD3(カタログ番号:AB16669)、抗C
D8(カタログ番号:AB25478)、抗FoxP3(カタログ番号:AB75763
)、Granzyme B(カタログ番号:AB4069)、抗Ki67(カタログ番号
:AB16667)、および抗PDL1(カタログ番号:AB80276)、二次抗体と
して、ヤギ抗ラットIgG H&L(DyLight 488血清吸着済み、AB984
20)およびヤギ抗ウサギIgG H&L(DyLight 488血清吸着済み、AB
96899)。
【0142】
免疫組織化学的組織染色を、各バイオマーカーについてのプロトコールに従って実施し
た。簡単に述べれば、切除された腫瘍組織を、Tissue-Tek OCTコンパウン
ド(Sakura Finetek、Torrance、CA)内に包埋し、液体窒素中
で瞬間凍結した。組織を、7μm切片へ切断し、4%ホルムアルデヒド中に10分間、固
定した。必要とされる場合、界面活性剤透過処理を、PBS中0.1% Triton
X-100を用いて実施した。PBS中0.5%ウシ血清アルブミンにおける5%ヤギ血
清でのブロッキング後、各スライドを、対応する一次抗体(希釈度1/200)と5℃で
一晩、インキュベートした。各スライドを、二次抗体(希釈度1/200)と60分間、
インキュベートし、DAPIを含むVectashield封入剤(Vector La
boratories,Inc. Burlingame、CA)でマウントした。スラ
イドを、必要なフィルターセット(MVI Inc.、Avon、MA)を備えたNik
on E400蛍光顕微鏡(Nikon、Tokyo、Japan)を用いて分析した。
画像を、近赤外感度を有する電荷結合素子カメラ(SPOT 7.4 Slider R
TKE;Diagnostic Instruments、Sterling Heig
hts、MI)を用いて取得した。画像を、SPOT 4.0 Advanceバージョ
ンソフトウェア(Diagnostic Instruments)およびImageJ
(Ver.1.51c、NIH)を用いて分析した。
【0143】
インビトロMR画像化
MR画像化を、それぞれの毎週のMN-siPDL1/SCRでの処置の前および後に
、傾斜インサートを有し、かつParaVision 5.1ソフトウェアを用いて操作
されるBruker 9.4T水平ボアマグネット(Magnex Scientifi
c)を用いて実施した。接種から2週間後、マウスは、腫瘍を形成し、腫瘍容積の定量的
測定のために、緩和促進での高速収集(rapid acquisition with relaxation enhancemen
t)(RARE)T1強調プロトコール(TE=8.5ミリ秒、TR=2500ミリ秒、
平均の数=4、RAREファクター=4、FOV=4×4cm2、マトリックスサイズ=
128×128ピクセル、スライスの数=50、スライス厚さ=0.5mm、およびスラ
イス間厚さ=0.5mm)およびT2強調プロトコール(TE=8.5ミリ秒、TR=7
500ミリ秒、平均の数=4、RAREファクター=16、FOV=4×4cm2、マト
リックスサイズ=128×128ピクセル、スライスの数=50、スライス厚さ=0.5
mm、およびスライス間厚さ=0.5mm、フリップ角=162度)を利用するMR画像
化によりモニターした。マルチスライスマルチエコー(MSME)T2強調マップを、以
下のパラメータを用いて収集した:TE=8、16、24、32、40、48、56、6
4、72、および80ミリ秒、TR=4500ミリ秒、スライスの数=5、スライス配向
=軸方向、平均の数=1、RAREファクター=1、撮影視野(field of view)=4×
4cm2、マトリックスサイズ=128×128ピクセル、スライス厚さ=0.5mm、
スライス間厚さ=0.5mm、フリップ角=128度)。腫瘍容積の測定およびT2マッ
プの再構築は、関心領域(ROI)選択の変動性の原因となる試料アイデンティティを知
らされていない2人の独立した研究者によって実施された。腫瘍におけるT2マップおよ
びT2緩和時間を、ImageJソフトウェア(Ver.1.50c、NIH)を用いて
計算した。緩和率R2を、緩和時間の逆数として得た。結果として、緩和率の変化(ΔR
2)は、MNにおける酸化鉄の濃度に比例する。ΔR2は、以下の方程式:S=S0 E
xp(TE/T2)、△R2=1/T2,1-1/T2,2=(1/TE)*ln(S1
/S2)を用いて計算され、方程式:△R2=r2・△[C]に従って、MNの濃度に相
関した。全てのΔR2値は、0週間目に対して計算された。
【0144】
動物モデル
週齢6週間の雌マウス(C57Bl/6、n=12)に、マウス膵癌細胞株、Pan0
2細胞(0.25×106細胞)を右側腹部に移植した。細胞注射から1週間後、腫瘍サ
イズを、ノギス測定によりモニターした。腫瘍容積を、以下の方程式に従って計算した:
容積=0.5×L×W2、式中、Lは長さ、Wは幅である。ノギスを用いて見積もられた
場合、腫瘍体積が50mm3に達するとすぐに、処置を開始した。その後、腫瘍容積を、
マウスを本研究に登録した時点、ならびにそれぞれの毎週の処置の前および後にMRIに
より測定した。全ての動物実験は、施設内ガイドラインに従って実施され、Massac
husetts General Hospitalにおける動物実験委員会(Institut
ional Animal Care and Use Committee)により承認された。
【0145】
治療
マウス(n=6)を、実験群(MN-siPDL1+ゲムシタビンで処置される)また
は対照群(MN-siSCR+ゲムシタビンで処置される)へランダムに割り当てた。実
験群におけるマウスを、ゲムシタビン(333.3mg/kg)を含む溶液中低用量MN
-siPDL1(鉄として10mg kg-1;520ナノモル/kg siRNA)、
またはゲムシタビン(333.3mg/kg)を含む溶液中高用量MN-siPDL1(
鉄として10mg kg-1;937ナノモル/kg siRNA)で処置した。対照群
におけるマウスは、同じ用量でMN-siSCRおよびゲムシタビンを受けた。どちらの
場合も、薬物を、ナノドラッグとゲムシタビンの混合物として尾静脈を通して(i.v.
注射)週1回の頻度で投与した。7週間目の後、ゲムシタビンの同時投与を、最大耐容量
を超えることを避けるために中断し、ナノドラッグのみを、研究の終わりまで投与した。
全てのマウスは、最初の処置後最大12週間、または動物が瀕死状態になるまで、腫瘍容
積の変化の記録をつけるために磁気共鳴画像法により毎週、モニターした。
【0146】
統計解析
データは、示されている場合、平均±s.d.またはs.e.m.として表された。統
計比較は、両側t検定(SigmaStat 3.0;Systatソフトウェア、Ri
chmond、CA)を用いて引き出された。P<0.05の値は、統計的に有意である
と見なされた。
【0147】
[実施例1]
膵癌免疫療法のためのRNAi媒介性PD-L1阻害
MN-siPDL1は、原発性腫瘍へインビボで送達することができ、その送達は、非
侵襲性MRIによりモニターすることができる。
【0148】
静脈内注射後、治療的量のsiRNAを腫瘍細胞へ成功裏に送達するために、本発明者
らは、MN-siPDL1の設計を、水力学的サイズ、コンジュゲーション方法、および
ナノ粒子あたりのsiRNAオリゴの数に関して最適化する必要があった。MN-siP
DL1の例示的な合成スキームは
図1Aに図示されている。長い循環時間(>4時間)お
よび血管内皮を通って、かつ腫瘍間質に渡る効率的な拡散を保証するために、本発明者ら
は、MN-siPDL1を、SPDPリンカーおよびそのオリゴへの連続的コンジュゲー
ション後のそれの最終サイズが23.2±0.9nmであるように、設計した。ナノ粒子
あたりのsiRNAオリゴヌクレオチドの数は、生体共役反応への立体干渉を最小限にす
ることを目的として4.8±0.7以下へ調整された。この設計は、血管透過性-貯留性
亢進(Enhanced Permeation-Retention)(EPR)効果を通して腫瘍組織によるナノド
ラッグの取り込みを亢進するように最適化される。加えて、SPDPリンカーは、それの
還元可能な性質により選択され、その性質は、癌細胞におけるナノ粒子からのオリゴの解
離、およびRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)への効率的な移行を保証する。
最後に、MN-siPDL1の磁気共鳴画像法による検出を可能にするために、最終調製
物の緩和能(R2)を、82.5mM
-1秒
-1のR2を達成するように[Fe
3+]/
[Fe
2+]の比率を変化させることにより調整した(
図1B)。
【0149】
効果的な治療プロトコールを確立するために、本発明者らは、MN-siPDL1の膵
臓腫瘍組織への送達を確認すること、およびMRIが、腫瘍におけるMN-siPDL1
生物学的利用率を半定量的に測定する能力を実証することを必要とした。本発明者らは、
本発明者らの仮説を、PAN02同系膵癌モデルを用いて試験した。これらの動物は、接
種から2週間後、腫瘍を形成し、シングルエコーおよびマルチエコーT2強調プロトコー
ルを用いるMR画像化によりモニターされた。緩和率の差(ΔR2)は、以下の方程式を
用いて計算された:S=S0 Exp(TE/T2)、△R2=1/T2,1-1/T2
,2=(1/TE)*Ln(S1/S2)、および△R2=r2・△[C]。腫瘍組織に
おけるMN-siPDL1分布の可視化のために、T2マップを、マルチエコーT2強調
画像セットから再構築した。
【0150】
図2Aに示されているように、腫瘍組織におけるMN-siPDL1の局在は、T2緩
和時間の短縮を引き起こし、造影剤投与前の画像と比較して、陰性コントラストを生じた
。MN-siPDL1のΔR2由来濃度は、最初の3週間の間、線形増加を示した。MN
-siPDL1の蓄積速度は、その期間の間、MN-siSCRの蓄積速度より1.5倍
速かった(
図2B)。腫瘍細胞におけるナノドラッグの濃度は、ほとんど、細胞分化によ
る希釈を反映し、MN-siSCRで処置された対照腫瘍のより速い成長速度が、この群
において観察された、時間経過による濃度のより遅い増加をもたらした可能性が高い。こ
の差は、腫瘍成長のより後期においてより顕著であり、この仮説をさらに裏付けている。
MN-siSCRで処置された対照群における腫瘍細胞分化による迅速なナノドラッグ希
釈を反映した、濃度減少の速度は、MN-siPDL1で処置された実験群における濃度
減少速度の5.1倍であり、対照動物における腫瘍のより迅速な成長を示している(
図2
C)。
【0151】
ゲムシタビンおよびMN-siPDL1での併用処置は、同系膵癌のモデルにおいて有
効である。
【0152】
本発明者らの治療研究は、膵癌におけるゲムシタビンとMN-siPDL1の併用処置
の潜在能力を例証した。これらの研究において、膵癌の同系モデルは、週齢6週間の雌C
57BL/6マウスの右側腹部にマウス膵癌細胞株PAN02を移植することにより作製
された。
【0153】
MN-siPDL1と組み合わせたゲムシタビンでの処置が、腫瘍成長を阻害すること
ができるかどうかを決定するために、マウスを、尾静脈を通して静脈内に(i.v.)送
達される低用量のMN-siPDL1もしくはsiSCR(両方の群において10mg/
kg Fe;520ナノモル/kg siRNA)または高用量のMN-siPDL1も
しくはsiSCR(両方の群において10mg/kg Fe、937ナノモル/kg s
iRNA)を含む溶液中のゲムシタビンで処置した。併用処置を、解剖学的MR画像化に
より測定された場合、腫瘍サイズが>50mm
3に達した時に開始し、12週間、継続し
た。治療研究の全てにおいて、腫瘍容積の変化を、それぞれの毎週の処置の投与前に解剖
学的MR画像化によりモニターした(
図3A)。
【0154】
MN-siPDL1およびゲムシタビンでの同時処置されたマウスは、非活性MN-s
iSCR対照と比べて、腫瘍成長の有意な阻害を示した(P<0.05)。この差は、腫
瘍容積が0週間目における52.8±6.7mm
3から2週間目における5.3±0.8
mm
3へ減少した時の、処置の開始から2週間目において明らかであった(p=0.01
2)。その差は、本研究の期間中、持続した(p<0.05)。低用量群における腫瘍容
積は、6週間目までMN-siSCR対照と異ならなかった(
図3A~Bおよび
図5A~
D)。
【0155】
高用量MN-siPDL1群において、マウスの67%が、腫瘍成長の阻害として定義
される処置に対する客観的応答を示した。マウスの33%が、応答することができず、6
週間後に死亡し、応答のばらつきを示している。応答によって実験動物を層別化する腫瘍
成長の時定数は表1に提示されている。
【0156】
【0157】
最後に、動物生存率を評価した時、併用処置の優位性が明らかに見られた(
図3C)。
ゲムシタビンおよびMN-siPDL1(高用量)で処置されたマウスの67%が12週
間目まで生存した。ゲムシタビンおよびMN-siPDL1(低用量)で処置されたマウ
スの67%が、8週間目まで生存した。MN-siSCRおよびゲムシタビンで処置され
た対照マウスの全部は、6週間目までに死亡した。
【0158】
興味深いことに、ゲムシタビンおよびMN-siSCRで処置された群におけるマウス
の全部が、おそらく高速の腫瘍成長のせいで、大きな壊死性腫瘍を生じた。腫瘍壊死およ
び潰瘍化は、実験動物において見られなかった(
図3D)。
【0159】
併用処置は、細胞傷害性T細胞の不活性化を防止した
抗腫瘍免疫応答への処置の効果を評価するために、本発明者らは、処置されたマウスの
腫瘍における免疫細胞の動員および活性化の組織バイオマーカーを分析した。MN-si
PDL1およびゲムシタビンでの併用処置後、PD-L1発現は有意に低下した。CD8
+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の動員、およびグランザイムBのより高いレベルにより証
明されているように、細胞媒介性細胞傷害の増加の証拠があった。免疫抑制性Foxp3
+ 制御性T(Treg)細胞による腫瘍浸潤もまた、有意に低下した。最後に、腫瘍細
胞増殖が阻害された(
図4A~B)。興味深いことに、高用量MN-siPDL1および
ゲムシタビンで処置された非応答性動物におけるこれらのバイオマーカーの発現は、対照
動物と退行する実験動物との中間であり、肉眼的応答を観察するために必要とされるPD
-L1阻害の臨界レベルがあることを示唆している(
図4A~B)。これらの結果は、観
察された治療効果が、抗腫瘍免疫応答の誘導の成功の結果であることを示唆した。
【0160】
参考文献
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、例証することを意
図され、本発明の範囲を限定することを意図されず、本発明の範囲は添付の特許請求の範
囲の範囲によって定義されることは、理解されているはずである。他の態様、利点、およ
び改変は、以下の特許請求の範囲内である。