(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096939
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】骨髄増殖性障害を患う患者の処置のための方法及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/21 20060101AFI20240709BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 33/36 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/7135 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K38/21
A61P7/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K33/36
A61K31/7135
A61K47/60
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024066925
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2022110350の分割
【原出願日】2018-01-17
(31)【優先権主張番号】17305053.5
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】599029545
【氏名又は名称】アンスティテュ・グスターブ・ルシ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】517218664
【氏名又は名称】コレージュ・ドゥ・フランス
【氏名又は名称原語表記】COLLEGE DE FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・テ,ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】カッシーナ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン-ブライテンバッハ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】プロ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヴァル,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】キラジアン,ジャン-ジャック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害の処置のための方法を提供する。
【解決手段】インターフェロンポリペプチドとヒ素化合物との治療上有効な組み合わせを患者に投与する工程を含む、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害を処置する方法とする。前記骨髄増殖性障害が、骨髄増殖性新生物(MPN)、例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)等である。前記インターフェロンポリペプチドが、インターフェロン-アルファ(IFN-α)であることが好ましく、さらにペグ化されていてもよい。前記ヒ素化合物が、ヒ素、三酸化ヒ素(As2O3)、メラルソプロール等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンポリペプチドとヒ素化合物との治療上有効な組み合わせを患者に投与することを含む、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害を処置する方法。
【請求項2】
患者が、骨髄増殖性新生物(MPN)例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)又は原発性骨髄線維症(PMF)を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が、骨髄異形成症候群を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
患者が、JAK2、MPL又はCALRに少なくとも1つの突然変異を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
JAK2突然変異が、JAK2V617F突然変異である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
JAK2突然変異が、N542-E543del、K537L、E543-D544del及びF537-K39delinsL及びR541-E543delinsKからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
MPL突然変異が、MPLS505N;MPLW515L、MPLW515K、MPLW515A、PMLW515R及びMPLW515Sからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項8】
MPL突然変異が、V501A、S505C、A506T、V507I、G509C、L510P、R514K及びR519Tからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項9】
CALR突然変異が、CALRdel52/I型;c.1092_1143del;L367 fs*46及びc1154_1155insTTGTC;K385 fs*47からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項10】
インターフェロンポリペプチドが、インターフェロン-アルファ(IFN-a)ポリペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
インターフェロン-アルファが、ペグ化されている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ヒ素化合物が、ヒ素、三酸化ヒ素(As2O3)、メラルソプロールおよびヒ素硫黄誘導体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害の処置のための方法及び医薬組成物に関する。
【0002】
発明の背景
骨髄増殖性障害(MPD)は、中でも、真性赤血球増加症(PV)、原発性骨髄線維症(PMF)、血小板血症、本態性血小板血症(ET)、特発性骨髄線維症(IMF)、慢性骨髄性白血病(CML)、全身性肥満細胞症(SM)、慢性好中球性白血病(CNL)、骨髄異形成症候群(MDS)及び全身性肥満細胞疾患(SMCD)を含む。JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションは、古典的なMPD、すなわち、PV、ET及びPMFの発生及び進行に関与している。JAK2/STAT経路の活性化は、特に、JAK2、MPL又はCALR遺伝子における機能獲得遺伝子突然変異により起こり、同突然変異は、MPD表現型の起源におけるドライバー突然変異を表わす。MPDにおけるJAK2の中心的な役割から、低分子JAK2阻害剤の開発につながった。同阻害剤は、臨床的に使用されており、MPDを有するほとんど全ての患者において活性であり、脾腫、炎症及び生活の質に関連する全身症状に主要な作用を誘引する一方で、生存及び突然変異を有する幹細胞の根絶に失敗するMPDクローンに対する軽微な作用を誘引する。他の治療法の中でも、インターフェロンアルファ(IFNα、現在、寿命が延長されたペグ化形態として使用されている)は、現在、JAK2V617Fクローンをターゲッティングし、完全な分子応答(CMR)をもたらす最も効率的な治療法である。臨床試験では、PV/ET及びPMFの初期段階において、血液学的応答及び分子応答の割合が高いことが示されている。しかしながら、依然として相当な改善の余地がある。実際に、MPN患者の約3分の1は、IFNαに応答せず、完全な分子応答(CMR)が観察されるのは、約20%の患者においてのみである。更に、CMRを得るには、長期処置(2~5年)が必要であり、長期毒性の可能性のために成功が危うくなる。CMRの失敗、薬剤抵抗性及び長い遅延の理由は、主に、悪性クローンを根絶するためにIFNαにより使用されるメカニズムがわかりにくいため、相乗的又は相加的な治療分子との組み合わせによるこの治療の任意の改善が制限されるという事実のために、不明瞭なままである。
【0003】
発明の概要
本発明は、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害の処置のための方法及び医薬組成物に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【0004】
発明の詳細な説明
本発明の第1の目的は、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションを呈する患者における骨髄増殖性障害を処置する方法であって、インターフェロンポリペプチドとヒ素化合物との治療上有効な組み合わせを患者に投与することを含む、方法に関する。
【0005】
本明細書で使用する場合、「処置」又は「処置する」という用語は、予防的(prophylactic)又は予防的(preventive)処置並びに治癒的処置又は疾患修飾処置の両方を指し、疾患を患うリスクがある又は疾患を患っていると疑われる対象及び病気になっている又は疾患もしくは医学的状態を患っていると診断された対象の処置を含み、臨床再発の抑制を含む。処置は、障害もしくは再発性障害の1つ以上の症状を予防し、治癒し、同症状の発症を遅延させ、同症状の重症度の軽減しもしくは改善するために又はこのような処置の非存在下で予想されるものを超えて対象の生存を延長するために、医学的障害を有する対象又は最終的に障害を獲得する場合がある対象に適用することができる。「治療計画」は、疾患の処置パターン、例えば、治療中に使用される投与パターンを意味する。治療計画は、導入計画及び維持計画を含むことができる。「誘導計画」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置に使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。導入計画の一般的な目標は、治療計画の初期期間中に対象に高レベルの薬剤を提供することである。導入計画は(部分的又は全体的に)「ローディング計画」を利用することができ、ローディング計画は、医師が維持計画の間に利用するであろうより多い用量の薬剤を投与すること、医師が維持計画の間に薬剤を投与するであろうより頻繁に薬剤を投与すること又はその両方を含むことができる。「維持計画」又は「維持期間」という語句は、疾患の処置中に対象を維持する、例えば、対象を長期間(数か月又は数年)寛解状態に維持するのに使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。維持計画は、連続療法(例えば、定期的な間隔、例えば、毎週、毎月、毎年等で薬剤を投与すること)又は間欠療法(例えば、中断処置、間欠処置、再発時の処置又は特定の所定の基準[例えば、疾患症状等]の達成に基づく処置)を利用することができる。
【0006】
一部の実施態様では、患者は、骨髄増殖性新生物(MPN)を患う。MPNは、典型的には、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)及び原発性骨髄線維症(PMF)を含み、成長因子非依存性/過敏性、骨髄細胞過形成、髄外造血、脾臓及び肝腫大並びに血栓性及び/又は出血性素因を伴う、骨髄起源からの1つ以上の細胞種の相対的過剰産生を含む、一連の生物学的、病理学的及び臨床的特徴を共有する多能性造血幹細胞の多様であるが、相互に関連する群のクローン性障害である。骨髄増殖性新生物の研究及び処置のための国際ワーキンググループ(IWG-MRT)が、これらの症状を描写し、定義するのに確立されており(例えば、Vannucchi et al, CA Cancer J. Clin., 2009, 59:171-191を参照のこと)、これらの疾患定義は、本明細書の目的で適用されるべきである。
【0007】
一部の実施態様では、患者は、骨髄異形成症候群(MDS)を患う。MDSは、血球減少症及び細胞過多骨髄をもたらす無効な造血を特徴とする疾患群を説明するのに使用される用語である。MDSは、伝統的に、「前白血病」と同義語であると考えられてきた。急性骨髄性白血病(AML)への転換のリスクが増大するためである。
【0008】
一部の実施態様では、患者は、JAK2、MPL又はCALRに少なくとも1つの突然変異を有する。
【0009】
本明細書で使用する場合、「JAK2」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、Janus Kinase2タンパク質を指す。ヒトJAK2のアミノ酸配列は、当技術分野において周知である。ヒトJAK2配列は、例えば、NCBIデータベース(www.ncbi.orgwww.ncbi.nlm.nih.gov/)において、例えば、アクセッション番号NP_004963で表わされる。典型的なMPD関連突然変異は、エクソン14における点突然変異(Tについては1849G)を指すJAK2V617F突然変異であり、この突然変異は、JAK相同性JH2ドメインにおけるコドン617でのバリンについてのフェニルアラニンの置換を引き起こす。JAK2突然変異の他の例は、置換、欠失、挿入及び重複であることができるエクソン12突然変異を含み、全てが、タンパク質レベルにおいて、アミノ酸533-547を包含するJAK2遺伝子の44個のヌクレオチド領域内に存在する。最も一般的に報告されている突然変異は、3~12個のヌクレオチドの小さなインフレーム欠失であり、6個のヌクレオチド欠失が、最も頻繁である。複雑な突然変異が、症例の3分の1に存在し、一部の突然変異が、このホットスポット領域の外側で起こる。N542-E543delは、最も一般的な突然変異(23~30%)であり、K537L、E543-D544del及びF537-K39delinsLは、これらの突然変異の10~14%を表わし、R541-E543delinsKは、これらの突然変異の10%未満を構成する。JAK2エクソン12突然変異は、このドメインとJAK2のSrc相同性2ドメインとの間のリンカーとして作用する擬キナーゼドメインに近い領域に位置する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「MPL」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、MPLプロトオンコジーンであるトロンボポエチンレセプターを指す。ヒトMPLのアミノ酸配列は、当技術分野において周知である。ヒトMPL配列は、例えば、NCBIデータベース(www.ncbi.orgwww.ncbi.nlm.nih.gov/)において、例えば、アクセッション番号NP_005364.1で表わされる。典型的なMPL突然変異は、MPLS505N;MPLW515L、MPLW515K並びにレアなMPLW515A、PMLW515R及びMPLW515S突然変異を含む。細胞内膜隣接境界における515位におけるトリプトファン残基(W)により、通常、Mpl膜貫通ヘリックスの二量体化が阻害されることにより、レセプター自己活性化が妨げられる。W515を別のアミノ酸、例えば、ロイシン、リシン又はアルギニンにより置き換えることにより、この阻害の損失がもたらされ、構成的に活性なMplがもたらされる。V501A、S505C、A506T、V507I、G509C、L510P、R514K及びR519Tを含む別の突然変異も、稀な症例において報告されている。
【0011】
本明細書で使用する場合、「CALR」という用語は、当技術分野においてその一般的な意味を有し、小胞体の管腔において主要なCa(2+)結合(貯蔵)タンパク質として作用する多機能タンパク質であるカルレチクリンを指す。ヒトCALRのアミノ酸配列は、当技術分野において周知である。ヒトCALR配列は、例えば、NCBIデータベース(www.ncbi.orgwww.ncbi.nlm.nih.gov/)において、例えば、アクセッション番号NP_004334.1で表わされる。典型的なMPD関連突然変異は、挿入、欠失又は挿入及び欠失(indels)であり、エクソン9において生じ、コード配列の+1塩基対フレームシフトをもたらし、正常なCALR及び他の小胞体常在タンパク質に典型的な回収配列(KDEL)を欠く新規なC末端を有する翻訳タンパク質を生成する。具体的な例は、CALRdel52/I型;c.1092_1143del;L367 fs*46又は5-bp挿入CALRins5/II型;c1154_1155insTTGTC;K385 fs*47を含む。
【0012】
本発明の併用療法は、JAK2-STATシグナル伝達経路のディスレギュレーションに関与する少なくとも1つの突然変異を有する幹細胞を根絶するため、このような突然変異(例えば、JAK2V617F)アレル量(allele burden)を効率的に低減するのに特に適している。
【0013】
本明細書で使用する場合、「インターフェロンポリペプチド」又は「IFNポリペプチド」という用語は、例えば、任意のタイプのIFN(I型及びII型)、特に、IFN-アルファ、IFN-ベータ、IFN-オメガ及びIFN-ガンマを含む、文献中で定義されるような任意のポリペプチドを含むことが意図される。また、本明細書で使用する場合、インターフェロンポリペプチドという用語は、塩、機能的誘導体、変異体、突然変異タンパク質、融合タンパク質、その類似体及び活性フラグメントを包含することも意図される。ヒトインターフェロン-アルファについてのポリペプチド配列は、アクセッション番号:AAA 52716、AAA 52724及びAAA 52713でデータベースに寄託されている。ヒトインターフェロン-ベータについてのポリペプチド配列は、アクセッション番号AAC41702、NP_002167、AAH 96152、AAH 96153、AAH 96150、AAH 96151、AAH 69314及びAAH 36040でデータベースに寄託されている。ヒトインターフェロン-ガンマについてのポリペプチド配列は、アクセッション番号AAB 59534、AAM 28885、CAA 44325、AAK 95388、CAA 00226、AAP 20100、AAP 20098、AAK 53058及びNP-000610でデータベースに寄託されている。
【0014】
一部の実施態様では、インターフェロンは、インターフェロン-アルファ(IFN-a)である。「IFN-a」という用語は、血清半減期等の特定の特性を変化させるために誘導体化された(例えば、天然ペプチドに対して化学的に修飾された)IFN-aの誘導体を包含する。したがって、「IFN-a」という用語は、ポリエチレングリコールで誘導体化されたIFN-a(「PEG化IFN-a」)等を含む。PEG化IFN-a及びそれを製造するための方法は、例えば、US5,382,657;5,951,974;及び5,981,709において検討されている。PEG化IFN-aは、PEGと上記されたIFN-a分子のいずれかとのコンジュゲートを包含する。同コンジュゲートは、インターフェロンアルファ-2a(Roferon, Hoffman La-Roche, Nutley, N.J.)、インターフェロンアルファ-2b(Intron, Schering-Plough, Madison, N.J.)、インターフェロンアルファ-2c(Berofor Alpha, Boehringer Ingelheim, Ingelheim, Germany);及び天然のインターフェロンアルファのコンセンサス配列の決定により定義されたコンセンサスインターフェロン(Infergen(登録商標), InterMune, Inc., Brisbane, CA.)にコンジュゲートしたPEGを含むが、これらに限定されない。このため、一部の実施態様では、IFN-aは、1つ以上のポリエチレングリコール部分により修飾されている、すなわち、ペグ化されている。ペグ化インターフェロンの2つの形態であるペグインターフェロンアルファ-2a(40kD)(Pegasys, Hoffmann-La Roche)及びペグインターフェロンアルファ-2b(12kD)(Peglntron, Merck)が市販されており、これらは、それらの薬物動態、ウイルス動態、耐容性プロファイル、したがって、用量に関して異なる。特に、ペグインターフェロンアルファ-2a(Pegasys)は、40kDの分枝ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合したインターフェロンアルファ-2a(約20kD)からなる。PEG部分は、リシンへの安定なアミド結合を介して、インターフェロンアルファ部分に単一部位で連結される。ペグインターフェロンアルファ-2aは、約60,000ダルトンの分子量を有する。ペグインターフェロン-アルファ-2aの生物学的活性は、特定のウイルスに対する適応免疫応答及び先天性免疫応答の両方に影響を及ぼすそのインターフェロンアルファ-2a部分に由来する。天然のインターフェロンアルファ-2aと比較して、ペグインターフェロンアルファ-2aは、持続性の吸収、遅延した排出を有する。ペグインターフェロンアルファ-2aは、固定された週用量として使用される。ペグインターフェロンアルファ-2aは、注射後に比較的一定の吸収を有し、ほとんどが血液及び臓器に分布している。
【0015】
本明細書で使用する場合、「ヒ素化合物」という用語は、ヒ素及びヒ素と同じ生物学的特性を有する任意の化合物を含むことが意図される。「ヒ素と同じ生物学的特性を有する化合物」という表現は、ヒ素のように、ホスファターゼの阻害剤であり、及び/又は、ジチオール基と結合することにより共有結合付加物を生成可能な任意の化合物を意味すると理解される。一部の実施態様では、ヒ素化合物は、ヒ素、三酸化ヒ素(As2O3)、メラルソプロール及びヒ素硫黄誘導体からなる群より選択される。ヒ素の効果の多くは、酸化ストレスを介して媒介されるため、ヒ素のように反応性酸素種の生成を促進する薬剤が、本発明に包含される。
【0016】
本明細書で使用する場合、「同時投与」という用語は、本明細書で使用する場合、インターフェロンポリペプチドとヒ素化合物との組み合わせが同じ患者に投与されるプロセスを意味する。インターフェロンポリペプチド及びヒ素化合物は、同時に、本質的に同時に又は連続して投与することができる。インターフェロンポリペプチド及びヒ素化合物は、同じ媒体により投与される必要はない。インターフェロンポリペプチド及びヒ素化合物は、1回以上投与することができ、組合せの各成分の投与回数は、同じでも又は異なってもよい。加えて、インターフェロンポリペプチド及びヒ素化合物は、同じ部位に投与される必要はない。典型的には、ヒ素化合物は、好ましくは、静脈内又は経口経路により投与され、インターフェロンポリペプチドは、筋肉内又は皮下経路により投与される。
【0017】
使用する場合、「組み合わせ」及び「併用療法」という用語は互換的であり、同時に、別々に又は連続して投与される少なくとも2つの化合物の投与を含む処置を指す。本明細書で使用する場合、「共投与」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも2つの化合物の組み合わせが同じ患者に投与されるプロセスを意味する。少なくとも2つの化合物は、同時に、本質的に同時に又は連続して投与することができる。少なくとも2つの化合物は、異なる媒体又は組成物により別々に投与することができる。また、少なくとも2つの化合物は、同じ媒体又は組成物(例えば、医薬組成物)で投与することもできる。少なくとも2つの化合物は、1回以上投与することができ、組み合わせの各成分の投与回数は、同じでも又は異なってもよい。
【0018】
本明細書で使用する場合、「治療上有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間での有効量を指す。活性剤の治療上有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重並びに個体において所望の応答を誘発する活性剤の能力等の要因に従って変化させることができる。また、治療上有効量は、抗体又は抗体部分の任意の毒性又は有害な効果を治療上有益な効果が上回る量でもある。活性剤のための有効用量及び投薬計画は、処置される疾患又は状態により決まり、当業者により決定することができる。当技術分野における通常の技能を有する医師であれば、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するのに必要とされるレベルより低いレベルで、医薬組成物に利用される活性剤の用量で開始し、所望の効果が達成されるまで、用量を徐々に増加させることができる。一般的には、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投薬計画に従って治療効果を生じさせるのに有効な最低用量である化合物のその量であろう。このような有効用量は、一般的には、上記された要因により決まるであろう。例えば、治療的使用のための治療上有効量は、JAK2V617Fアレル負荷を減少させるか又はJAK2V617F幹細胞を根絶する疾患の進行を安定化させるその能力により測定することができる。想定される投与のための用量は、例えば、ヒ素化合物については、好ましくは静脈内経路により、1日あたりに1~50mg、好ましくは、1日あたりに10~15mgであることができ、IFNについては、1日あたりに又は2日ごとに、1~2000万国際単位(M IU)、好ましくは、1日あたりに3~900万国際単位(M IU)であることができる。
【0019】
典型的には、活性剤(すなわち、インターフェロンポリペプチド又はヒ素化合物)は、薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物の形態で患者に投与される。これらの組成物に使用することができる薬学的に許容し得る担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、バッファー物質、例えば、ホスファート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、ロウ、ポリエチレン-ポリプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含むが、これらに限定されない。患者への投与における使用のために、組成物は、患者への投与のために処方されるであろう。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸的に、経鼻的に、頬側に、膣内に又は埋め込まれた貯留部を介して投与することができる。本明細書で使用されるものは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内及び頭蓋内の注射又は注入技術を含む。本発明の組成物の無菌注射用形態は、水性又は油性懸濁液であることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、当技術分野において公知の技術に従って処方することができる。また、無菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液であることもできる。利用することができる許容し得る媒体及び溶媒の中でも、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の不揮発油を、溶媒又は懸濁媒として常用できる。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激の不揮発油を利用することができる。脂肪酸、例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、注射用製剤の製造に有用である。天然の薬学的に許容し得る油、例えば、オリーブ油又はひまし油(特に、それらのポリオキシエチル化版)も同様である。また、これらの油溶液又は懸濁液は、エマルジョン及び懸濁液を含む薬学的に許容し得る投薬形態の処方において一般に使用される長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤も含有することができる。また、他の一般的に使用される界面活性剤、例えば、Tweens、Spans及び他の乳化剤又は薬学的に許容し得る固体、液体又は他の投薬形態の製造において一般的に使用されるバイオアベイラビリティ向上剤も、処方の目的で使用することができる。本発明の組成物は、任意の経口的に許容し得る投薬形態で経口投与することができる。同投薬形態は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤又は溶剤を含むが、これらに限定されない。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体は、ラクトース及びトウモロコシデンプンを含む。また、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも、典型的に加えられる。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤は、例えば、ラクトースを含む。水性懸濁剤が経口使用に必要とされる場合、有効成分は、乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望であれば、特定の甘味剤、香味剤又は着色剤も添加することができる。代替的には、本発明の組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。これらは、薬剤を、室温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で融解して、薬剤を放出するであろう適切な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。このような材料は、ココアバター、蜜ロウ及びポリエチレングリコールを含む。本発明の組成物は、特に、処置のターゲットが眼、皮膚又は下部腸管の疾患を含む、局所適用により容易にアクセス可能な領域又は臓器を含む場合、局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、これらの領域又は臓器のそれぞれについて容易に調製される。局所適用のために、組成物は、1つ以上の担体に懸濁され又は溶解された有効成分を含有する適切な軟膏に配合することができる。本発明の化合物の局所投与用担体は、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ及び水を含むが、これらに限定されない。代替的には、組成物は、1つ以上の薬学的に許容し得る担体に懸濁され又は溶解された有効成分を含有する適切なローション剤又はクリーム剤に配合することができる。適切な担体は、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含むが、これらに限定されない。下部腸管のための局所適用は、直腸坐剤製剤(上記を参照のこと)又は適切な注腸製剤で行うことができる。パッチを使用することもできる。本発明の組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入により投与することもできる。このような組成物は、医薬製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させる吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を利用して、生理食塩水中の液剤として調製することができる。
【0020】
本発明は、下記図面及び実施例により更に例示するであろう。ただし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものと何ら解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
全ての図は、ヒト疾患を模倣するために、JAK2突然変異体と野生型骨髄細胞との混合物が移植された動物を指す。
【
図1】
図1は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおける白血球及び血小板レベルを示す。
【
図2】
図2は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおけるヘマトクリット及びヘモグロビンレベルを示す。
【
図3】
図3は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおける赤血球数及び体積レベルを示す。
【
図4】
図4は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおける顆粒球及び血小板におけるJAK2V617Fアレル負荷を示す。
【
図5】
図5は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおける赤血球及びBリンパ球におけるJAK2V617F「アレル負荷」(GFP)を示す。
【
図6】
図6は、IFN及びヒ素又はそれらの組み合わせで処置したマウスにおける臓器細胞性を示す。
【
図7】
図7は、突然変異赤血球コロニーの増殖の選択的かつ相乗的な障害が患者前駆細胞のクローン形成メチルセルロース培養物においてIFNとヒ素との組み合わせにより観察されることを示す。
【0022】
実施例1
方法
MPNマウスモデル(JAK2V617F KI/vav-Cre)及びこのモデルにおけるIFNa単独の前臨床作用が以前に記載された(Hasan et al.JAK2V617F expression in mice amplifies early hematopoietic cells and gives them a competitive advantage that is hampered by IFNα. Blood 2013)。簡潔には、このモデルは、5か月後に二次骨髄線維症に変換するヒト真性赤血球増加症(PV)を模倣する。12~13週間のIFNa処置により、分化の初期段階でJAK2V617F細胞を特異的にターゲッティングすることによって、疾患発生が予防され、疾患開始細胞が根絶された(二次レシピエントアッセイ)。前臨床モデルは、60% WTと40% KI JAK2V617F骨髄(BM)細胞との混合物を移植することにより、正常マウスにおいて作製される。JAK2V617F細胞を標識し、GFPを使用するFACS分析により血中及び組織中のJAK2V617Fアレル負荷を追跡するために、KI JAK2V617FマウスをUbi-GFP遺伝子導入マウスと予め交配する。分析には、i)血液細胞パラメータ及びアレル負荷(GFP)/2週間、ii)BM/SP分析(CFC、選別LSK/SLAMにおけるアレル負荷、組織学)、iii)二次レシピエントにおける疾患開始細胞の評価並びにiv)処置停止後の処置マウスにおける治癒又は再発の評価を含ませた。
【0023】
結果
IFN単独又はIFN+ARSは、白血球増加を正常値に有意に減少させた(p<0.05)(
図1)。この組み合わせは、ARS単独又はIFN単独の効果を有意に(p<0.05)増加させた(
図1)。IFN単独で処置の6週目及び8週目にIFN+ARSの組み合わせによりわずかに改善された(p<0.05、データを示さず)血小板減少症を誘発した以前の実験とは対照的に、この実験での血小板数におけるARS単独、IFN単独又はIFN+ARSの効果は無かった(
図1)。
【0024】
本発明者らにより、ヘモグロビン又はヘマトクリットレベルにおいて測定された赤血球増加症に対するARS単独の効果は観察されなかった(
図2)。IFN又はIFN+ARSにより、赤血球増加症をIFNにより正常レベル(P<0001)に、組み合わせにより重篤な貧血(P<0,0001)に減少させた(
図2)。ARSにより、ヘモグロビン又はヘマトクリットレベル低下におけるIFNの効果が効率的に増強された。
【0025】
ARS、IFN及びIFN+ARSにより、赤血球レベルを低下させた(P<0,0001)。ARSにより、RBCレベルの低下におけるIFNの効果が効率的に増強された(
図3)。ARSにより、RBC体積が大赤血球症に増加する(p<0.005)(RBC濃度の減少にもかかわらず、HB及びHtの変化しないレベルを説明する)(
図3)。IFNは、MCVの効果を有さず、組み合わせにより、MCVが一時的にのみ減少する(p<0.005)(
図3)。
【0026】
本発明者らにより、ARS単独での効果は観察されなかったが、WBCにおいて、JAK2V617Fアレル負荷を増加させる傾向(NTの約20%)が観察された(
図4)。IFNにより、以前に記載されたように(Hasan et al.Blood 2013)、WBC及び血小板(NTの約40%)アレル負荷が減少する(p<0.05)(
図4)。IFN+ARSの組み合わせにより、WBC(NTの80%)及び血小板(NTの85%)JAK2V617Fアレル負荷におけるIFN単独での効果が改善される(p<0.001)(
図4)。血小板における効果は、IFN単独での場合より有意に上昇する。
【0027】
本発明者らにより、新生物起源(JAK2V617F+)のRBCにおけるARS又はIFNの効果が観察されなかった(
図5)。本発明者らにより、IFN+ARSの組み合わせによる、新生物起源(JAK2V617F+)のRBCアレル負荷における減少が観察された(p<0.05)(
図5)。この効果は、8週間の処置後において、IFN単独での場合より有意に上昇する。
【0028】
本発明者らにより、IFN又はIFN+ARS後に、低いBリンパ球アレル負荷(
図5)における効果は観察されず、低いT細胞アレル負荷(3~5%)におけるわずかな増加が観察された(p<0.05)(データを示さず)。
【0029】
本発明者らにより、IFN後の脾腫の減少が観察され、IFN+ARSの組み合わせにより、IFN単独と比較して、脾腫を正常な脾臓重量に有意に減少させた(p<0.05)(
図6)。IFN又はIFN+ARS後にBM細胞性が減少する傾向にあった(
図6)。
【0030】
ARSにより、SLAM細胞におけるアレル負荷が増加し(p<0.05)、IFNにより、試験した全ての初期細胞におけるアレル負荷が減少した(p<0.05)(データを示さず)。IFN+ARSの組み合わせにより、特に、SLAMにおいて、アレル負荷におけるIFN単独での効果が改善した(p<0.005)(データを示さず)。ARS単独では、脾臓前駆細胞におけるアレル負荷が増加した(p<0.05)(データを示さず)。IFN+ARSの組み合わせにより、BM(データを示さず)及びSP(p<0.05)前駆細胞(データを示さず)におけるアレル負荷が減少したが、IFN単独では減少しなかった。
【0031】
ARS又はIFNによっては、骨髄前駆細胞の総数が変わらなかった。IFN+ARSの組み合わせには、前駆細胞の総数を減少させる傾向がある(p=0.05)(データを示さず)。
【0032】
処置動物からの骨髄細胞を二次照射レシピエントに移植して、疾患開始細胞における処置の効果を評価した。無処置動物又はARS処置動物由来の骨髄が移植された全ての動物は、移植後5週間で、高WBC及びHtを有する疾患を発症した。IFN処置動物からの骨髄が移植された動物の3分の2(4/6)も、この疾患を発症した。対照的に、IFN+ARS処置動物からの骨髄が移植された動物は、この疾患を発症しなかった(データを示さず)。同様に、他の群(無処置、ARS又はIFN処置動物)とは対照的に、IFN+ARS処置動物からの骨髄が移植された動物からのWBC、血小板及び赤血球において、JAK2V617Fアレル負荷は見出されなかったか又は非常に低かった(データを示さず)。
【0033】
処置の終了後、一部の動物を調べた。全ての無処置動物又はARS処置動物は、処置の停止後に再発する。対照的に、処置の停止後10又は4週で、IFNで処置した5/7(約70%)の動物が再発し、IFN+ARSで処置した3/7(約40%)の動物が再発した。例えば、実験1において、処置の停止の10週間後、IFN+ARSで処置した4匹のうち2匹の動物は、IFN処置動物又は無処置動物とは対照的に、正常なWBCカウント、ヘマトクリット及び脾臓重量を同時に示した(データを示さず)。
【0034】
結論
IFN単独
-白血球増加症の正常白血球数レベルへの低下
-血小板レベルの減少(血小板減少症)(1件の実験を除く、ただし、それは普通ではなかった)(5件中の1件)
-Ht、Hb及びRBCレベルの低下(p<0.001)及び微小細胞症の予防(RBC体積の増加)
-脾腫の減少
-WBC、血小板、RBC及び全ての初期細胞におけるアレル負荷の減少
-疾患開始細胞を部分的にサプレッションし、処置停止後の再発を予防する
ARS単独
-白血球増加症の有意な減少(p<0.05)
-血小板数に影響を及ぼさなかった
-Hb又はHtレベルに影響を及ぼさなかったが、RBCレベルは低下し、RBC体積は増加した(p<0.005)
-WBCアレル負荷(それを増加させる傾向)に影響を及ぼさなかった
-初期細胞におけるアレル負荷を増加させなかった
IFN+ARSの組み合わせ
-ARS又はIFN単独により誘発されたWBCの減少を改善する
-血小板数に影響を及ぼさず、IFN単独により誘発された血小板減少症を改善する
-IFN単独により誘発されたヘマトクリット、ヘモグロビン及びRBCレベルの低下を増強し、一過性の微小細胞症(RBC体積の減少、MCV)を引き起こす
-脾腫を正常重量に減少させ、IFN単独での効果を改善する
-WBC、血小板、RBC及び初期細胞におけるアレル負荷の減少におけるIFN効果を改善する
-疾患開始細胞の根絶及び処置停止後の再発予防におけるIFN効果を改善した
【0035】
これらの研究から、ARSをIFNと組み合わせることにより、MPN処置の間にIFN単独により提供される利益の大部分が改善されることが実証される。これは、以下のことから証明された。
-赤血球増加症の矯正
-白血球増加症の矯正
-IFNにより誘発された血小板減少症の矯正
-新生物JAK2V617Fクローン由来の循環顆粒球、血小板及び赤血球の減少
-骨髄及び脾臓新生物JAK2V617F前駆細胞及び幹細胞の減少
-JAK2V617F陽性疾患開始細胞のサプレッション
-治療停止後の疾患再発の予防
【0036】
全体として、この研究からは、MPN患者がARSをIFNと組み合わせる処置から強く利益を受けるであろうことが、強く示唆される。この処置により、IFNにより誘発される完全な分子寛解の割合が改善されるはずであるが、寛解の徴候前の処置の間にモニターされ、予防される必要があるであろう貧血に関連する場合がある。
【0037】
これらの研究から、MPN患者におけるIFN治療の作用メカニズムが、IFN及びヒ素により使用される共通経路と関連する場合があることが示唆される。予備的な結果から、IFN及びヒ素の共通のターゲットであるPMLのレベルが、マウスJAK2V617Fの骨髄及び脾臓細胞において低下し、PMLレベルの上昇及び核体への会合が、MPN JAK2V617F幹細胞の根絶に関与する場合があることが示された。
【0038】
実施例2
患者前駆細胞のクローン形成メチルセルロース培養物中でのIFNとARSとの組み合わせを探索すると、突然変異赤血球コロニーの増殖の選択的かつ相乗的な障害が観察され(
図7)、マウス観察の初代ヒト細胞への関連性を議論した。
【0039】
参考文献
本出願全体を通して、種々の参考文献には、本発明が属する技術水準が記載されている。これらの参考文献の開示は、本開示に参照により組み入れられる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン-アルファ(IFN-α)ポリペプチドとヒ素化合物を含む、JAK2、MPL又はCALRに少なくとも1つの突然変異を有する患者における骨髄増殖性障害を処置するための医薬組成物であって、
JAK2突然変異が、N542-E543del、K537L、E543-D544del及びF537-K39delinsL及びR541-E543delinsKからなる群より選択され;
MPL突然変異が、MPLS505N;MPLW515L、MPLW515K、MPLW515A、PMLW515R及びMPLW515Sからなる群より選択されるか、又はMPL突然変異が、V501A、S505C、A506T、V507I、G509C、L510P、R514K及びR519Tからなる群より選択され;そして
CALR突然変異が、CALRdel52/I型;c.1092_1143del;L367 fs
*
46及びc1154_1155insTTGTC;K385 fs
*
47からなる群より選択される、
医薬組成物。
【外国語明細書】