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特開2024-96943マルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096943
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】マルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240709BHJP
   H01J 37/21 20060101ALI20240709BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20240709BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/21 B
H01J37/09 A
H01J37/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067136
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2020087225の分割
【原出願日】2020-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
(57)【要約】
【目的】本発明は、マルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法に関し、
複数の1次電子ビームを生成してこれらをサンプルに照射しつつサンプルを移動させ、そのときに放出された複数の電子ビームを検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことを目的とする。
【構成】複数ビーム生成装置と、複数の1次電子ビームをサンプルに照射する手段と、サンプルから放出あるいは反射された電子を検出して複数電子ビーム画像を出力する手段と、サンプルの移動と停止を繰り返し、停止したときに画像取得するステージと、ステージの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計とを備え、出力された複数電子ビームの画像情報の間のオーバーラップしている共通画像のレーザ干渉計で得られた位置情報をもとに、1枚の画像に合成するように構成している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置において、
2次元配置された複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、
前記複数ビーム生成装置で発生させた複数の1次電子ビームをサンプルに照射する手段と、
前記サンプルから放出あるいは反射された電子を検出して複数電子ビーム画像を出力する手段と、
前記サンプルの移動と停止を繰り返し、停止したときに画像取得するステージと、
前記ステージの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計と
を備え、
前記出力された複数電子ビームの画像情報の間のオーバーラップしている共通画像の
前記レーザ干渉計で得られた位置情報をもとに、1枚の画像に合成すること
を特徴とするマルチビーム画像生成装置。
【請求項2】
前記出力された複数電子ビームの画像情報および前記干渉計から出力された前記ステージのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとに前記ステージの移動量、回転量の補正を行う、あるいは前記ステージの移動量、回転量に対応する分だけ画像情報を移動、回転する補正を行うことを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項3】
前記ステージの高さ方向の位置をリアルタイムに測定してこれをもとに前記ステージの高さの補正を行い、あるいは電磁的に補正を行い、自動フォーカスすることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項4】
前記複数ビーム生成装置は、1本の1次電子ビームを2次元配置された複数の穴の開いたアパチャーに照射して複数の1次電子ビームを生成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項5】
前記サンプルに負のリターディング電圧を印加し、該サンプルに照射して走査する1次
電子ビームの高分解能を維持したままでエネルギーを低下させ、該サンプルのダメージを
軽減したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のマルチビーム画像生
成装置。
【請求項6】
複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成方法において、
2次元配置された複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、
前記複数ビーム生成装置で発生させた複数の1次電子ビームをサンプルに照射する手段と
前記サンプルから放出あるいは反射された電子を検出して複数電子ビーム画像を出力する手段と、
前記サンプルの移動と停止を繰り返し、停止したときに画像取得するステージと、
前記ステージの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計と
を設け、
前記出力された複数電子ビームの画像情報の間のオーバーラップしている共通画像の
レーザ干渉計で得られた位置情報をもとに、1枚の画像に合成することを特徴とするマルチビーム画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業はムーアの法則で有名な微細加工技術の進展によりもたらされるデバイス性能向上およびコストメリットで経済が支えられているが、半導体デバイスの微細加工限界は露光技術によって決定される。半導体露光技術はパターンを作り出すためのフォトマスクと呼ばれる原版と露光装置およびパターンを形成するレジストから成っている。現在露光装置は4対1の縮小露光技術が使用されているため、半導体デバイスが実際に作られるシリコンウエハー上のパターン構造物の4倍の大きさのパターン構造がフォトマスク上に形成されている。
【0003】
半導体回路設計データに基づいてフォトマスク上に作られたパターンを如何に正確にウエハー表面のレジスト膜パターンへと転写できるかが露光技術最大の課題である。仮にフォトマスクに異常があればそれは露光装置によってウエハー表面に転写されウエハー上に不具合が生じる。
【0004】
露光不良を防止するためには少なくともフォトマスクを全面検査して正しい状態に修正し設計通りの完璧なパターン状態にすることが必要である。微細加工限界は露光に利用される光の波長に比例するので露光に利用される光の波長は時代とともに短波長化が進められている。
【0005】
20世紀終盤から露光光源には波長193nmのレーザー光源が使用されてきたため、長期にわたってフォトマスク上のパターンは193nm等のレーザー光線を照明光とする光学式マスクパターン検査装置を用いて検査が行われてきた。
【0006】
しかしながら、2019年より波長が13.5nmと短いEUV光を用いた露光技術が本格導入され露光できる微細加工限界がより小さくなった。フォトマスク上のパターンも従来の最小パターンサイズ100nm程度の大きさから50nm以下と小さくなり、従来の193nmの光では十分な検査が出来なくなってきた。
【0007】
一方、露光波長と同じ波長である13.5nmの波長を用いたいわゆるアクティニック検査装置もある。しかしながら、波長が13.5nmと短くなると空気によって殆ど吸収されてしまうため、検査装置内部の真空化が必要で、従来の大気中で実装されていた装置と比べて非常に複雑に成る。また、13.5nmの光を透過できる光学レンズが存在しないため、光学系は全て反射光学系で構成することが必要となり、これもまた複雑で効率の悪いものに成る。例えば、13.5nmの波長を利用するEUV露光装置では光源全出力の1%程度しか利用できないほど効率が悪い。
【0008】
光学装置の解像度は開口率NAに比例する性質がある。例えば、波長193nmを用いた光学系の場合、液浸や油浸などを利用することにより1を超える大きな開口率が実現できるため、193nmと長い波長であるにもかかわらず1回の露光で40nm程度のパターンを解像することが出来る。ダブルパターニングを用いれば20nm程度のパターンを作ることさえ可能である。
【0009】
一方、EUV光を用いた場合、反射光学系を用いるためMAが0.33など小さな開口率しか実現できない。光源波長が従来波長と比較して10分の1と短いにもかかわらず精々13nm程度の解像度しか得られず、波長が短く成った割には性能向上が小さい。また、例えば検出対象がパーティクルの場合、パーティクルサイズの6乗に比例して反射光が弱まり、波長の2乗で反射光が強くなる。つまり、パーティクルサイズが小さくなると信号強度は急激に弱くなるため欠陥検出感度は激減する。このように光学技術を用いたフォトマスク検査技術は技術的に限界を迎えている。また、従来光学原理を用いた装置は大気中で動作したため、装置製造や運用が容易であったが、波長が短くなると空気に吸収されてしまうため大きな真空チャンバーが必要となり電子ビーム装置に対する使い勝手の優位性が無くなる。
【0010】
一方、nmオーダーの高解像度を実現する技術としては電子顕微鏡がある。30年以上前から電子ビームを用いた電子ビーム式欠陥検査技術が開発されてきている。商品化は行われているがスループットが光学式と比較して極端に小さいため中々主たる検査装置としては実用化していないのが現状である。光学式では出来ない電気的な欠陥を見つけることが出来るので、新ウエハープロセス開発用途に徐々に普及してきている。
【0011】
レーザー光線と違い電子ビームにはレーザーのようにエネルギーの分散が小さくて輝度の高い電子ビーム源が無い。さらに電子はマイナス電荷を持つためレンズ等で小さなスポットに絞り込むと電子同士がお互いに静電反発する。そのため、高速検査に必要とされる大電流を流すと光学限界以上に最小ビームスポットサイズが大きくなってしまい、分解能が劣化する。つまり、1本の電子ビームを用いた場合、分解能と検査速度との間には非常にきついトレードオフの関係があるため、微細化が進むほど速度が遅く成るという原理的な欠陥を持っている。
【0012】
例えば、現在の所、1つの電子ビームを用いて実現できる最高検査速度は精々数百Mピクセル毎秒である。フォトマスクは凡そ10cm角の領域にパターンが書かれているため、その領域を全て検査することが必要である。例えば、最先端のフォトマスク上のパターンが十分に解像できる10nmの分解能で検査するためには、10の14乗ピクセルの画素を取得する必要がある。例えば100Mピクセル毎秒で画素取得すると10の6乗秒が必要である。言い直すと277時間つまり10日以上掛かる。また、検査に必要なSNR10以上の画像を得るために何度も走査することが必要である。従来の光学式フォトマスク検査装置は約2時間で1枚のフォトマスクを検査することが可能なので、電子ビーム式は100倍も遅すぎて実用上使えない。
【0013】
一方,電子ビーム検査装置の速度改善を行うためにマルチ電子ビーム検査装置と呼ばれる電子ビームを複数個同時に並列にサンプルに照射して高速検査を行う方法が研究されている。この方法では、100本以上の小さな電子ビームを同時に照射して走査を行うため1本に流す電流量を小さく抑えることが可能で、ビームの静電反発の影響を受けず高分解能を維持したままで検査速度を従来の1本の電子ビームを用いた場合と比較して高速に出来るとされている。
【0014】
しかしながら、従来から多くの会社によって色々な形式のマルチビーム検査装置が開発されており、次世代の高速検査装置として非常に有望視されているが、当初思ったほどの高速化や高分解能化が実現できておらず、未だに半導体用検査装置としては商品化されていない。
【0015】
半導体産業で使用する装置は工業用計測装置であり一種のミッションクリティカルな装置で24時間365日不具合を起こさずに稼働し続ける必要があるため、高いロバスト性が必須である。理科学機器装置のように大学の先生や生徒が偶に使って論文が書ける程度では全く実用上使えない。いろいろな測定条件や測定対象あるいは装置設置環境変化に耐えさらに長期にわたって性能が安定に保たれている必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のシングルビーム方式の高速検査装置では連続ステージ方式が一般的であるが、2次元の画像取得を同時に行うマルチビーム方式では1回のスキャンで取得できる面積を出来るだけ多くして高速化するステップ&リピート方式が採用されてきたため、ステージ移動時間が支配的となり高速化が出来ないという問題があった。
【0017】
また、走査領域の境界には明確に感度差に基づくコントラスト差が生じ、検査画像としては使いにくいという問題もあった。
【0018】
また、シングルビーム方式の場合には、ビームが1本しかないため容易に照射位置補正が可能で所望の位置に電子ビーム照射することが出来る。しかし、マルチビーム方式の場合には、同時に複数の電子ビーム照射を行って2次元画像を取得するため、それぞれの電子ビーム照射位置を所望の位置に厳密に制御することは容易でないという問題があった。また、さらに高速化のために2次元の画像情報の取得後にステージ走行を行うと、走行中に起こるステージ回転、うねり、ステージ速度変動、高さ変動、振動などが2次元画像取得に影響し、画像の品質を低下させてしまうという問題があった。
【0019】
また、単に従来のシングルビームの場合と同じように画像を取得するだけでは画像が歪んだり飛んだりして正確な画像取得が出来ず、検査に利用できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した課題を解決するために、2次元配置された複数の1次電子ビームを生成してこれらをサンプルの停止時に走査し、次に移動することを繰り返し、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタで分離して電子検出装置でそれぞれの画像情報を検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことを実現した。
【0021】
そのため、本発明は、複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置において、2次元配置された複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを2段偏向して対物レンズの軸に入射させると共に、サンプルから放出された2次電子ビームを1次電子ビームと反対方向に2段偏向して投影レンズの軸に入射させるビームスプリッタと、ビームスプリッタで2段偏向されて軸に入射された1次電子ビームを細く絞る対物レンズと、対物レンズで細く絞られた1次電子ビームを偏向してサンプル上で走査する偏向系と、ビームスプリッタで2段偏向されて軸に入射された2次電子ビームを電子検出器に結像する投影レンズと、サンプルの移動と停止を繰り返し、停止したときに画像取得するステージと、サンプルの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計とを備え、複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームをビームスプリッタで対レンズの軸に偏向し、対物レンズでサンプルに細く絞った1次電子ビームを照射すると共に偏向系により走査し、サンプルから放出された2次電子をビームスプリッタで投影レンズの軸に偏向し、投影レンズで電子検出器に前記2次元配置された複数の1次電子ビームに対応する2次電子ビームを結像して複数電子ビームの画像情報を出力するようにしている。
【0022】
この際に、出力された複数電子ビームの画像情報をもとに、1枚の画像に合成する合成手段を備えるようにしている。
【0023】
また、出力された複数電子ビームの画像情報および干渉計から出力されたサンプルのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとにステージの移動量、回転量の補正を行う、あるいはステージの移動量、回転量に対応する分だけ画像情報を移動、回転する補正を行うようにしている。
【0024】
また、ステージの高さ方向の位置をリアルタイムに測定してこれをもとにステージの高さの補正を行い、あるいは電磁的に補正を行い、自動フォーカスするようにしている。
【0025】
また、複数ビーム生成装置は、1本の1次電子ビームを2次元配置された複数の穴の開いたアパチャーに照射して複数の1次電子ビームを生成するようにしている。
【0026】
また、ビームスプリッタは1次電子の入射側の第1段目を静電偏向器、第2段目を電磁偏向器とし、第2段目の電磁偏向器でサンプルから放出された2次電子ビームを1次電子ビームと逆方向に偏向して分離するようにしている。
【0027】
また、サンプルに負のリターディング電圧を印加し、サンプルに照射して走査する1次電子ビームの高分解能を維持したままでエネルギーを低下させ、サンプルのダメージを軽減するようにしている。
【0028】
また、投影レンズの前あるいは後に2次電子ビームの位置補正用の偏向系を設けるようにしている。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、2次元配置された複数の1次電子ビームを生成してこれらをサンプルの停止時に走査し、次に移動することを繰り返し、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタで分離して電子検出装置でそれぞれの画像情報を検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことが可能となった。
【0030】
また、2次元配置された複数の1次電子ビームをサンプルに走査して検出した複数の2次電子ビームの画像をオーバーラップして検出し、1枚の画像に合成したときの境界のコントラスト差の発生を低減することができた。
【0031】
また、2次元配置された複数の1次電子ビームのサンプルへの走査位置を予め取得して登録することにより、2次電子ビームの画像の中心位置を補正し、精密な画像を合成することが可能となった。
【0032】
また、サンプルを搭載したステージの移動時の位置、回転をリアルタイムにレーザ干渉計で精密に実測して記録し、複数の2次電子ビームの画像の移動量、回転量をそれぞれ補正し、精密な画像情報を生成できるようになった。
【0033】
これらにより、本発明ではマルチビームを構成する各1次電子ビームの位置制御はもとよりステージがS&R移動する間に起こるステージの姿勢変化あるいは速度変化をリアルタイムにステージ位置測定手段により測定しステージをリアルタイムで補正を行ってステージと対物レンズ間の位置関係および1次電子ビームの照射状態を理想あるいは基準状態に制御し、さらにコンピュータによって各走査画像間の位置補正処理を高速に行うことで、検査にとって理想的とされる境界効果のない正規化された1枚の大きな画像が得られる様になる。任意の走査画像間の加算処理などが可能で各1次電子ビームの電流値を小さく抑えて分解能が高い状態で高いS&Rと高いスループットが得られる様になる。S&R動作でありながら最高のスループットが実現できる。
【実施例0034】
まず、本発明の1例として、マルチビーム式検査装置では100本以上の1次電子ビームを同時にサンプルに照射し、2次元状の2次電子画像を取得することで検査速度を上げることに特徴である。マルチビームを構成する各1次電子ビームは1つの電子銃が発生する電子ビームをアパチャーで分割したものからなり、かつ小さなビームスポットサイズを実現するため、1つの1次電子ビームの量は例えば1nA程度とシングルビーム方式と比較すると小さいが、それぞれの1次電子ビームは数十MHz以上の速度で走査されるため、全体としてギガピクセル毎秒以上の検出速度を実現できる。サンプル表面に照射される1次電子ビームの位置はステージ移動とマルチ電子ビーム照射の相対運動で決まる。この相対運動が理想的に実現できるか否かが、高速検査装置の性能を決定する。
【0035】
相対運動的なので、1次電子ビームの照射位置はステージを制御しても1次電子ビームの照射位置を1次電子ビームの偏向装置を用いて制御しても制御できる。1次電子ビームの偏向装置には例えば1次電子ビームの描画装置と同じ様に2段の偏向装置を利用して1次電子ビームの照射角度を維持したままXY水平面内でシフトすることで実現できる。マルチビーム検査装置の場合、各1次電子ビームの個別の1次電子ビームの偏向は行わず、全ての1次電子ビームに対して均一な電場や磁場を印加することで一斉に走査する。
【0036】
一般的にステージには大きな慣性質量を伴うのに対して1次電子ビームには質量が殆どないため、応答速度において1次電子ビームの偏向を用いた位置補正の方が高速でかつ高位置精度が得られる。一方、時定数の大きいなゆっくりとしたステージの上下動変動は1次電子ビームで行うとフォーカス制御が複雑となるが、Z軸ステージなどで常に高さが一定に成るような補正すると制御がシンプルに出来る。以下順次詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の1実施例構造図を示す。
【0038】
図1において、電子銃1は、電子線を発生させる公知のものであって、数百Vないし数十KVに加速された1次電子ビームを発生させるものである。電子銃はWやLaB6などの熱電子源やZrO等を用いたTFEやコールドフィールドエミッタあるいはフォトカソードが使用されており、電子銃室はイオンポンプやゲッターポンプ等を用いて10のマイナス8乗Pa以上の超高真空あるいは極高真空に保たれている。
【0039】
ブランキング装置2は、電子銃1から放出された1次電子ビームを高速にONあるいはOFFするものであって、電圧をONあるいはOFFして1次電子ビームを偏向して通過あるいは遮断するものである。
【0040】
照明レンズ3は、電子銃1で発生・加速された電子ビームを集束、ここで、後述する図4に示す所定のビームになるように集束するものである。
【0041】
マルチビームアパチャー3-1は、照射された1次電子ビームから2次元配置された複数の1次電子ビームに分割(例えば100分割)して生成するものである(図2参照)。
【0042】
対物アパチャー4は、複数の1次電子ビームのうちのそれぞれの中心部分を通過させ、該通過させた各1次電子ビームについて、後述する対物レンズ6によってサンプル8の表面上に細く絞ってそれぞれ照射するためのものである。
【0043】
ビームスプリッタ5は、1次電子と、反対方向に進む2次電子とを分離するものであって、上段が静電偏向器5ー1、下段が電磁偏向器5ー2から構成されるものである。1次電子ビームは静電偏向器5ー1により図1に示すように、右側に偏向され、電磁偏向器5ー2により左側に偏向され、対物レンズ6の軸上に振り戻され、該対物レンズ6によってサンプル8の上に細く絞られて結像される。サンプル8から放出された2次電子は電磁偏向器5ー2によって図1に示すように、右側に偏向され、静電偏向器5ー1により左側に偏向され、投影レンズ12の軸上に振り戻され、投影レンズ12によって電子検出装置14の上に2次元配置された複数の2次電子ビームが結像され、複数の2次電子画像(2次電子信号)を出力する。
【0044】
静電偏向器5ー1は、ビームスプリッタ5を構成する電子銃1に近い側の偏向器であって、ここでは、静電偏向器である。
【0045】
電磁偏向器5ー2は、ビームスプリッタ5を構成する電子銃1から離れた側の偏向器であって、ここでは、電磁偏向器である。
【0046】
対物レンズ6は、複数の1次電子ビームを細く絞ってサンプル8の上に照射するものである。
【0047】
偏向装置7は、複数の1次電子ビームをサンプル8の表面上で走査するものであって、通常はステージ9を移動させ停止させた状態で2次元走査(XとY方向に走査)することを繰り返すものである(図6図7等を参照)。
【0048】
サンプル8は、マスク、ウェハなどの複数画像を取得して1枚に合成する対象の試料である。
【0049】
ミラー8ー1は、レーザ干渉計で位置をリアルタイムに実測するための反射鏡である。
【0050】
ステージ(XYZθステージ)9は、サンプルを搭載してXYZ、更にθ(回転)が可能なステージであって、図示外の干渉計により、XYZ,θをリアルタイムに実測して記録可能、更にリアルタイム補正可能な構成としたものである。
【0051】
真空チャンバー10は、サンプル8、ステージ9等を収納して真空排気可能な容器である。
【0052】
真空ポンプ10ー1は、真空チャンバー10の内部を真空排気するものであって、オイルフリーのポンプで排気するものである。
【0053】
アライメント11は、ビームスプリッタ5を構成する静電偏向器5ー1から投影レンズ12の軸上に偏向された複数の2次電子ビームの軸合わせを行うものである。
【0054】
投影レンズ12は、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームを、電子検出装置14の検出面に結像するものである。
【0055】
逆走査装置13は、2次元配置された複数の1次電子ビームをサンプル8上に細く絞って走査したときに放出された複数の2次電子ビームが、電子検出装置14の検出面上で所定領域内にそれぞれとどまるように逆走査(振り戻す、あるいは補正)するものである。
【0056】
電子検出装置14は、サンプル8上から放出された複数の2次電子ビームをそれぞれ検出するものである。例えばアバランシェフォトダイオードやCCD、CMOSセンサーあるいはTDIカメラなどが使用できる。電子を一旦シンチレータに衝突させて光に変換したのちに前述のデバイスで検出しても良いし、電子を直接前述のデバイスに打ち込んで検出しても良い。いずれにしても、検出面の所定領域内にそれぞれ結像された複数の2次電子ビームをそれぞれ独立して検出できればよい。
【0057】
次に、図1の構造の動作を説明する。
【0058】
(1)電子銃1から放出された1次電子ビームはマルチビームアパチャー3ー1を照射して2次元配置された複数の1次電子ビームを生成する(図2参照)。2次元配置された複数の1次電子ビームの生成は、この方法に限らず、電子銃1のエミッタの表面に複数の電子放出源を設けたりしてこれに対応する2次元配置された複数の1次電子ビームを発生させてもよい。
【0059】
(2)ビームアパチャー3ー1で分割されて生成された2次元配置された複数の1次電子ビームは、対物アパチャー4によりその中心部分をそれぞれ通過し、ビームスプリッタ5を構成する上段の静電偏向器5ー1で右側に偏向、電磁偏向器5ー2で左側に偏向して対物レンズ6の軸上に入射する。
【0060】
(3)対物レンズ6の軸上に入射した2次元配置された複数の1次電子ビームは、該対物レンズ6によって細く絞られてサンプル8の表面を、該サンプル8が移動して停止した状態のときに2次元走査した後、移動して停止することを繰り返す。この結果、サンプル8の移動が停止したときに2次元配置された複数の1次電子ビームをサンプル8の上に矩形状等に面走査されることとなる。この際、図示しないが、サンプル8に負のリターディング電圧を印加し、複数の1次電子ビームのエネルギーを例えば1KVにして照射(例として複数の1次電子ビームのエネルギー15KVに負のリターディング電圧14KVを印加して1KVの1次電子ビームにしてサンプル8を照射)するようにしている。
【0061】
(4)(3)で矩形状等に面走査された複数の1次電子ビームの領域から2次電子、反射電子、光、X線等が放出される。
【0062】
(5)(4)で放出された2次電子は、対物レンズ6の磁界により該対物レンズ6の軸上を逆方向に螺旋状に走行し、ビームスプリッタ5を構成する下段の電磁偏向器5ー2によりここでは、右方向に偏向(複数の1次電子ビームの偏向と逆方向に偏向)され、静電偏向器5ー1により左方向に偏向され、投影レンズ12の軸上に入射する。
【0063】
(6)投影レンズ12の軸上に、必要に応じてアライメント11で補正した後、電子検出装置14に、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームを結像し、該電子検出装置14の各複数の2次電子ビームの結像領域に照射する。結像領域からはみだす場合には、逆走査装置13によって、サンプル8上の複数の1次電子ビームの走査(偏向)に同期し、該逆走査装置13に電圧(あるいは電流)を供給して該結像領域内に収まるように補正する。そして、電子検出装置14から各複数の2次電子ビームを検出した2次電子画像(2次電子信号)をそれぞれ出力する。
【0064】
以上によって、2次元配置された複数の1次電子ビームを生成してこれらをビームスプリッタ5を介して対物レンズ6によって細く絞り、ステージ9でサンプル8を停止させた状態で矩形状等に面走査し、次に移動することを繰り返し、矩形状等の面領域を複数の1次電子ビームでそれぞれ走査する。そして、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタ5を介して分離し、投影レンズ12によって複数の2次電子ビームを電子検出装置14のそれぞれの検出面に結像して、各複数の2次電子ビームの2次電子画像(2次電子信号)を出力することが可能となる。
【0065】
図2は、本発明のマルチビームアパチャー模式配列例を示す。これは、既述した図1のマルチビームアパチャー3ー1の穴の配列の種類例を示す。尚、図2では穴は模式的に矩形としたが、実際は穴(円形の穴)が望ましい。
【0066】
図2の(a)は4角形(矩形)の例を示し、図2の(b)は6角形の例を示す。
【0067】
図2の(a)は4角形(矩形)の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような2次元配列された穴(実際は丸形状が良い)を設けた例を模式的に示す。例えば9個×9個の穴を4角形(矩形)に設けると、合計81個の1次電子ビームを生成できる。図示のように、穴のサイズをAx×Ay,横(X)方向の穴と穴の間隔をSx、縦(Y)方向の穴と穴の間隔をSyとする。
【0068】
図2の(b)は6角形の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような2次元配列された穴(実際は丸形状が良い)を設けた例を模式的に示す。例えば図示のように穴を設けると、下記のようになり、合計73個となる。
【0069】
・第1列:5個
・第2列:8個
・第3列:9個
・第4列:10個
・第5列:9個
・第6列:10個
・第7列:9個
・第8列:8個
・第9列:5個
合計:73個
したがって、合計73個の1次電子ビームを生成できる。図示のように、穴のサイズをAx×Ay,横(X)方向の穴と穴の間隔をSx、縦(Y)方向の穴と穴の間隔をSyとし、図示のように千鳥状に配置する。
【0070】
尚、図2の(a)から(b)の各マルチビームアパチャー3ー1はそれぞれの1次電子ビームを独立にON/OFFする機能を持たせ、物理的に異なった配列を持ったアパチャーを図示のように多数用意しなくても、全てのマルチビームの中で選択された任意の位置の電子ビームだけがサンプルに到達する様に制御できるようにして、作成してもよい。
【0071】
図3は、本発明のデータテーブル例(図2)を示す。本図3は、既述および後述するように、図1の構造のもとで、サンプル8(例えばマスク)を搭載したステージ9の位置XYZ、回転θ等をレーザ干渉計でリアルタイム測定し、該ステージ9を停止して1次電子ビームをサンプル8に走査して2次電子画像を取得した後、移動することを繰り返したときにそのステージ位置に対応づけてステージずれ量、ステージ回転量、ステージ高さを記録したものである。
【0072】
図3において、ステージ位置は、図1のサンプル8を搭載したXYZθステージ(以下ステージ)9を移動して停止し、1次電子ビームをサンプル8に面走査したとき等の位置を示し、レーザ干渉計でリアルタイムに測定したものである(後述する)。ステージ位置は、例えば取得しようとする画像の画素間の距離に対応するステップ(間隔)でリアルタイム測定して記録する。例えば100μm矩形の領域について1000画素×1000画素の画像を取得しようとする場合には、0.1μm毎に1エントリの情報(ステージ位置、ステージずれ量、ステージ回転量、ステージ高さ)をリアルタイム測定して記録する。更に、10μm、1μm矩形の領域に対応する0.01μm毎。0.001μm毎等にリアルタイム測定して記録する。尚、同じ値が連続する場合にはその差分を記録するようにしてもよい。また、ステージ9の各停止位置を記録するようにしてもよい。
【0073】
ステージずれ量は、ステージ位置におけるずれ量(理想的な位置からのずれ量)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定した値を記録したものである(後述する)。
【0074】
ステージ回転量は、ステージ位置における回転量(理想的な回転無からの回転量θ)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定したステージの回転量を記録したものである(後述する)。
【0075】
ステージ高さは、ステージ位置における高さZ(理想的な高さからのZ方向のずれ量)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定した高さのずれ量を記録したものである(後述する)。
【0076】
以上のように、図1のステージ9を移動して停止した状態のときに当該ステージ9の理想的な値からのずれ量(ステージずれ量(X.Y))、ステージ回転量θ、ステージ高さZの各ずれ量)をそれぞれリアルタイムにレーザー干渉計により精密測定して記録することが可能となる。そして、記録した各ずれ量をもとにリアルタイムにステージ9の位置等を補正あるいは取得した画像を補正することにより、ステージ9の移動に伴う誤差を補正し、複数の1次電子ビームをサンプルに照射して取得した複数の2次電子ビームの各画像を合成して精密な1枚の画像た生成することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0077】
図4は、本発明のマルチビーム作成例を示す。本図4は、既述した図1のマルチビームアパチャー3-1を用いたマルチビームの作成例を模式的に示したものである。
【0078】
図4において、電子銃1から放出された1次電子ビームは、照明レンズ3により図示のようにここではマルチビームアパチャー3ー1の2次元配置された複数の穴(図2参照)を丁度照射するように投影する。マルチビームアパチャー3ー1を通過して分割されて生成された複数の1次電子ビーム(マルチ電子ビーム3ー2)は、図4の図示外の図1の対物レンズ6によってサンプル8の表面に細く絞って照射される。ここでは、サンプル8がステージ9によって停止した状態のときに平面走査されるので、結果として、サンプル8の表面を矩形状等の平面にマルチ電子ビーム3ー2で平面走査することとなる。そして、放出された2次電子ビームを図1の電子検出装置14でそれぞれ検出して、2次電子画像をそれぞれ取得し、1枚に合成(図6図7参照)し、サンプル8の2次電子画像を生成することが可能となる。
【0079】
図5は、本発明のマルチビーム検出説明図を示す。これは、図1の投影レンズ12、逆走査装置13、電子検出装置14の詳細説明図を示す。
【0080】
図5において、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームがビームスプリッタ5を介して分離され、図4の上から下方向に入射すると、投影レンズ12によって電子検出装置14の検出面にそれぞれ結像される。このとき、複数の2次電子ビームが結像される結像領域は、自身の結像領域内のときは問題ないが、他の領域にはみだしてしまうと未検出となって2次画像の欠落となる。これを防止するために、逆走査装置13によって、サンプル8への1次電子ビームの走査(偏向装置7による複数1の次電子ビームの偏向による走査)に同期し、所定の結像領域内に入るように補正偏向し、確実に自身の結像領域内に入るように補正する。
【0081】
以上によって、サンプル8から放出された各複数の2次電子ビームは、電子検出装置14の各結像領域内にそれぞれ結像し、確実に該複数の2次電子ビームの2次電子画像をそれぞれ検出し、出力することが可能となる。
【0082】
図6は、本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(4角形)を示す。ここで、横方向はX方向を表し、縦方向はY方向を表す。1、2、3、4の数字は画像1、画像2、画像3、画像4を表す。
【0083】
図6において、画像1、画像2、画像3、画像4は、図2の(a)の4角形のマルチビームアパチャー3ー1を用いて生成した複数の1次電子ビームを、停止状態のサンプル8に照射し、次に所定距離移動することを4回繰り返し、図示のように隣接する部分が相互に重複する4枚の画像(2次電子画像)を取得し、これら4枚の画像を公知の合成ソフトを利用して1枚の画像に合成した様子を模式的に示したものである。以下詳細に説明する。
【0084】
(1)図6において、各1次電子ビームはサンプル8の表面上にXY方向に2次元に行ない、ステージ9は任意方向に決められた距離だけS&Rで移動する。ステージ移動量は1つの走査面がカバー出来る領域の幅に対応する。実際には位置合わせを行うためのオーバーラップ領域を隅に設けるため、走査面幅よりもオーバーラップ分だけ少ない距離だけステージは瞬間的に移動する。
【0085】
(2)1次電子ビームの移動量とステージの位置と、走査面の画像の輝度情報が記録されて行く。S&Rを繰り返すたびに走査面の画像が複数形成される。サンプル8を余す事なく走査するために、走査面の走査幅の5から10%程度をオーバーラップさせる。これにより、走査漏れが無くなると同時に、隣接する走査面の画像に共通画像が存在する様になるため、レーザー干渉計で得られる位置座票とパターンマッチング等を用いて、隣接する走査面の画像の位置関係を補正し、1枚の大きな画像にすることが出来る。
【0086】
(3)オーバーラップ領域は2度走査しているので、画像の加算効果により高いSNRを得ることが出来るので、より正確に位置合わせを実現できる。例えば図6の例ではそれぞれの走査面の画像1、2、3、4の位置合わせを行い、画像を合成することで4個の独立した走査面の画像から1つの大きな画像の領域が形成される。このように処理した画像が検査画像として利用される。検査対象がそれぞれの走査面の画像を跨がずに形成されている場合は、1つの走査面の画像を用いて検査が実現できるので、必ずしも1つの画像に合成する必要はない。
【0087】
図7は、本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(6角形)を示す。ここで、横方向はX方向を表し、縦方向はY方向を表す。1、2、3、4の数字は画像1、画像2、画像3、画像4を表す。
【0088】
図7において、画像1、画像2、画像3、画像4は、図2の(b)の6角形のマルチビームアパチャー3ー1を用いて生成した複数の1次電子ビームを、停止状態のサンプル8に照射し、次に所定距離移動することを4回繰り返し、図示のように隣接する部分が相互に重複する4枚の画像(2次電子画像)を取得し、これら4枚の画像を公知の合成ソフトを利用して1枚の画像に合成した様子を模式的に示したものである。以下詳細に説明する。
【0089】
ここで、4角形の場合の図6の(1)から(4)と同様に、図7の6角形の場合には、蜂の巣状に配列したアパチャー(図2の(b))を設けた場合に生じる走査面の画像1、2、3、4の例を示したように、電子ビームコラムは一般的に円柱状であり、電子ビームを走査した場合に同心円状に特性が変化あるいは劣化するため、蜂の巣状の6角形にすると劣化を抑えて同じ特性を持つ画像がたくさん取得出来るという特徴がある。
【0090】
図6の場合と同様に図7において、それぞれの1次電子ビームを走査することによって発生する2次電子画像は互いに独立しているため、それぞれの走査面の画像1、2、3、4は完全に独立した画像である。互いの位置関係が判明しているので、その位置関係を用いて画像処理を行なって、それぞれの走査面の画像を重ね合わせることにより、1枚の画像を得ることが出来る。画像の重ね合わせはオーバーラップしている部分をパターンマッチングすることで得られる。
【0091】
以上のように、本発明のS&R法を用いた場合、同じ場所を何度も走査して画像加算が出来るため、1つの電子ビーム電流が同じ場合、1回走査の場合よりも、高いSNRの画像を得ることが出来る。また、ごく僅かに異なる場所を電子ビームが走査することによるサンプリングの平均化効果もある。
【0092】
図8は、本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像の中心座標取得)を示す。
【0093】
図8において、S1は、間隔寸法既知のパターンを用意する。これは、パターン間隔および形状寸法が精密に判明しているパターンを有する基準サンプルを用意する。予め同じパターンを作り込んだ導電性を有するフォトマスクやシリコン基板が良い。パターンのサイズや配置間隔はCDSEMあるいは光学的な計測装置で予め測定しておく。測定を簡単にするために、予め電子ビームの偏向中心座標は設計値として判明しているので、設計上の偏向中心座標の場所にパターンを配置した基準サンプルを利用すると楽に校正できる。パターンサイズは任意であるが、プロセス変動が生じても中心位置が正確に出る様に左右上下対称のパターンが望ましい。
【0094】
S2は、ステージ停止状態で画像を取得する。これは、ステージを停止した状態で、S1で用意したパターンに対して複数の1次電子ビームの走査を行い、パターンの画像をそれぞれ取得する。
【0095】
S3は、取得された画像と間隔寸法既知パターンを比較する。
【0096】
S4は、各電子ビーム走査の中心座標を算出する。これらS3,S4は、S2で取得したそれぞれの画像と、基準サンプルの画像(あるいは設計データ)とをパターンマッチング等を用いて比較し、S4で中心位置のズレをそれぞれ算出する。中心位置の位置ズレ量と基準サンプルの設計データから各1次電子ビームの偏向中心座標を算出し、保存する。
【0097】
以上によって、2次元配列された図2のマルチビームアパチャーで分割されて生成さた複数の1次電子ビームが走査するサンプル8上の中心座標をそれぞれ算出(測定)することが可能となる。以降これら複数の1次電子ビームの中心座標をもとに、それぞれ平面走査し、取得した画像を合成して1枚の画像を生成することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0098】
図9は、本発明の動作説明フローチャート(校正)を示す。これは、ステージ9の移動に伴う誤差(XY,Z)を自動補正する手順例を示す。
【0099】
図9において、S11は、ステージ移動開始位置に設定する。これは、図1のステージ9のステージ移動開始位置、例えば画像を取得しようとするサンプル8上の移動開始位置(ホームポジション)に設定する。
【0100】
S12は、ステージを所望距離移動し停止命令を発行する。
【0101】
S13は、目標位置と現在位置の差を電子ビーム偏向装置にフィードバックする。
【0102】
S14は、電子ビーム走査の中心座標と目標位置を一致させる。これらS12、S13、S14は、S11で設定したステージ移動開始位置からステージ9を所定距離移動(例えばステージ移動開始位置から画像を取得する中心位置に移動、あるいは既に画像取得した画像の中心位置から次の画像の中心位置に移動)し、停止命令を発行し、停止させる。そして、停止させた現在位置(後述するレーザ干渉計でリアルタイム測定した現在位置(X,Y))と、指定された目標位置との差(ΔX,ΔY)を補正するように、図1の電子ビーム偏向装置7にフィードバックし、補正して指定された位置にステージ9が停止したように補正(複数の1次電子ビームの照射位置を補正)する。
【0103】
S15は、ステージ高さを目標値に一致させる。同様に、ステージ9の現在のリアルタイムに測定された高さZと、目標高さとが一致するようにステージ9の高さZをリアルタイムに補正する(後述する図14等参照)。
【0104】
S16は、画像取得する。これは、S11からS15でステージの位置、高さを目標位置、高さに一致させる補正を行った後、画像を取得する(図10図11を用いて後述する)。
【0105】
以上によって、ステージ9を移動して停止した状態で該ステー9の位置と高さとをリアルタイム測定し、目標位置と高さに一致(補正)させた後、画像を取得することにより、正確に所望の位置の画像(マルチビームによる画像)をそれぞれ取得することが可能となる。そして、取得した複数の画像を合成し、1枚の画像を生成する。
【0106】
図10は、本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像(4角形)を取得)を示す。これは、図6の4角形のマルチビーム画像を取得するときの動作説明フローチャートである。
【0107】
図10において、S21は、ステージ停止位置の画像を取得する。これは、ステージ9を停止させた位置の画像を取得する。例えば既述した図2の(a)の4角形のマルチビームアパチャーで分割した複数の1次電子ビームをサンプル8の表面に照射しつつ面走査し、そのときに放出された2次電子を電子検出装置14でそれぞれ検出して2次電子画像をそれぞれ取得して合成し、例えば図6に示す1枚の画像1を取得する。
【0108】
S22は、ステージを走査面幅X-オーバラップ幅x移動する。これは、図6に示すように、S21で画像取得した画像1から、画像2の位置に移動する場合、ステージ9を「走査面幅X」から「オーバラップ幅x」だけ減算した位置に移動する。
【0109】
S23は、画像取得する。これは、S22のオーバーラップ幅xを持たせて移動した位置で停止し、画像2を取得する。これにより、図6の画像1、2との間にオーバラップ幅xが重複して存在し、この重複部分を使って正確に1枚の画像に合成することが可能となる。
【0110】
S24は、終了か判別する。YESの場合には、S25に進む。NOの場合には、S22に戻り繰り返す。
【0111】
S25は、ステージを走査面幅Y-オーバラップ幅y移動する。これは、図6に示すように、画像取得した図示の画像2から、画像4の位置に移動する場合、ステージ9を「走査面幅Y」から「オーバラップ幅y」だけ減算した位置に移動する。
【0112】
S26は、画像取得する。これは、S25のオーバーラップ幅yを持たせて移動した下方向の位置で停止し、画像4を取得する。これにより、図6の画像2、4との間にオーバラップ幅yが重複して存在し、この重複部分を使って正確に1枚の画像に合成することが可能となる。
【0113】
S27は、終了か判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S25に戻り繰り返す。
【0114】
以上によって、図2の(a)の4角形のマルチビームアパチャーを使って複数の1次電子ビームを生成し、これらをサンプル8の表面に照射しつつ面走査して該サンプル8の画像を取得する際に、図6に示すように、画像間に重複するオーバーラップ幅x、yを持たせるようにステージ移動することにより、一部重複した画像1、2、3、4などを生成し、これら重複部分を使って1枚の画像に正確かつ迅速に合成することが可能となる。
【0115】
図11は、本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像(6角形)を取得)を示す。これは、図7の6角形のマルチビーム画像を取得するときの動作説明フローチャートである。
【0116】
図11において、S31は、ステージ停止位置の画像を取得する。これは、ステージ9を停止させた位置の画像を取得する。例えば既述した図2の(b)の6角形のマルチビームアパチャーで分割した複数の1次電子ビームをサンプル8の表面に照射しつつ面走査し、そのときに放出された2次電子を電子検出装置14でそれぞれ検出して2次電子画像をそれぞれ取得して合成し、例えば図7に示す1枚の画像1を取得する。
【0117】
S32は、ステージを走査面幅X-オーバラップ幅x移動する。これは、図7に示すように、S31で画像取得した画像1から、画像2の位置に移動する場合、ステージ9を「走査面幅X」から「オーバラップ幅x」だけ減算した位置に移動する。
【0118】
S33は、画像取得する。これは、S32のオーバーラップ幅xを持たせて移動した位置で停止し、画像2を取得する。これにより、図7の画像1、2との間にオーバラップ幅xが重複して存在し、この重複部分を使って正確に1枚の画像に合成することが可能となる。
【0119】
S34は、終了か判別する。YESの場合には、S35に進む。NOの場合には、S32に戻り繰り返す。
【0120】
S35は、ステージを走査面幅Y-オーバラップ幅y移動する。これは、図7に示すように、画像取得した画像2の位置から、画像4の位置に移動する場合、ステージ9を「走査面幅Y」から「オーバラップ幅y」だけ減算した位置に移動する。
【0121】
S36は、画像取得する。これは、S35のオーバーラップ幅yを持たせて移動した下方向の位置で停止し、画像4を取得する。これにより、図7の画像2、4との間にオーバラップ幅yが重複して存在し、この重複部分を使って正確に1枚の画像に合成することが可能となる。
【0122】
S37は、終了か判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S35に戻り繰り返す。
【0123】
以上によって、図2の(b)の6角形のマルチビームアパチャーを使って複数の1次電子ビームを生成し、これらをサンプル8の表面に照射しつつ面走査して該サンプル8の画像を取得する際に、図7に示すように、画像間に重複するオーバーラップ幅x、yを持たせるようにステージ移動することにより、一部重複した画像1、2、3、4などを生成し、これら重複部分を使って1枚の画像に正確かつ迅速に合成することが可能となる。
【0124】
図12は、本発明の動作説明図(ステージ移動のずれ量および回転量の測定)を示す。
【0125】
図12の(a)はXY位置測定用のレーザ干渉計31の位置関係の例を示し、図12の(b)は回転測定用のレーザ干渉計31の位置関係の例を示す。
【0126】
図12の(a)において、干渉計X1は、ステージ9のX方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0127】
干渉計Y1は、ステージ9のY方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0128】
以上のように、干渉計X1,Y1を配置することにより、ステージ9のX方向、Y方向の距離(位置)をリアルタイムに精密に実測して記録することが可能となる(図3参照)。
【0129】
図12の(b)において、干渉計X1は、ステージ9のX方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーをそれぞれ配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0130】
干渉計Y1、Y2は、ステージ9のY方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように、離れて回転角度が実測できるようにそれぞれ配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0131】
以上のように、干渉計X1,Y1、Y2を配置することにより、ステージ9の回転をリアルタイムに精密に実測することが可能となる(図3参照)。
【0132】
図13は、本発明のステージの傾斜補正説明図を示す。これは、既述した図1のステージ9の例を示し、ステージZ1(円錐)、ステージZ2(円錐)、ステージZ3(平坦)の3点支持のステージの例を示す。3点支持する各ステージがピエゾ素子に電圧を印加することにより収縮して任意の距離に外部から任意に調整できる構造となっている。
【0133】
詳細に説明すれば、図13は独立した3つの同じ性能を持つピエゾアクチュエータで構成され、サンプル中心に対して3点支持が出来るように配置されている。
【0134】
3つのピエゾアクチュエータの1つの端部はXYステージの可動部表面に支持点を持ち、もう一端はサンプルを支えるホルダーに接続されている。接続部は3点支持が正確に行われるように成形されている。例としては滑らない様に表面加工したルビー球を用いたり、円錐状にした金属やプラスチックを利用したりできる。出来るだけ大きな摩擦係数になるように表面処理することが望ましい。3つの支持部のうち少なくとも1つはサンプルにバイアス電圧を印加するために必要な回路を形成するため導電性を有している。
【0135】
3つのピエゾアクチュエータを駆動するために3つの独立した制御回路を有し、高さセンサ151、152からの信号をPCで処理しその処理結果を用いてPC等からの指令することで所望の距離高さを変えることが出来る。それぞれのアクチュエータには容量センサ等の変位センサが内蔵されており、実際に生じた変位量をモニターしてフィードバックする仕組みとなっておりピエゾ素子の非線形性を補正できるようになっている。位置精度はnmオーダーまで得られる(後述する図20参照)。
【0136】
Z軸制御に必要なストロークは数ミクロンから1000ミクロン程度の範囲である。Z軸ステージで支持することによってサンプルが振動しないように高い剛性を併せ持つ必要がある。サンプルホルダーを含めた変位拡大機構付きピエゾアクチュエータを用いた支持系はmsの高い応答速度と大きな機械剛性を合わせもつため、数百Hz以上の高い共振周波数を有し不要な振動は避けられる仕組みに成っている。そのためフォトマスクのように1kg近くある重いサンプルでも瞬時に水平維持できる。
【0137】
図14は、本発明のステージの蛇行説明図を示す。
【0138】
図14の(a)は蛇行無のステージの様子を模式的に示し、図14の(b)は蛇行が左の場合の様子を模式的に示し、図14の(c)は蛇行が右の場合の様子を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を示し、横方向は電子ビーム走査方法を示す。
【0139】
図14の(a)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行がない様子を模式的に示し、補正は必要ない場合を示す。
【0140】
図14の(b)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行が左にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、右に蛇行を補正する(図3のステージずれ量を参照)。
【0141】
図14の(c)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行が右にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、左に蛇行を補正する(図3のステージずれ量を参照)。
【0142】
一般にXYステージは駆動力の大きなミクロン以上の移動を高速で行うためのダイレクトモータ、サーボモータ、ステッピングモーター、超音波モーター、リニアモーターなどとミクロン以下nmオーダーの微動が可能なピエゾアクチュエータやブレーキを組み合わせたものが多い。
【0143】
XYステージはお互いに独立したX軸移動機構、Y軸移動機構を組み合わせることによってXY方向に移動自由度を持ち指定された座標点に移動する機能を有している。例えば、XYステージに対してY軸に沿って移動するように移動命令を与えたとする。完璧なステージであればX方向には移動せずY軸方向にのみ移動するが、図14に示したように実際のステージではX方向にも移動が生じる。
【0144】
ステージの移動精度を規定するガイドレールはセラミックなどで出来ており、非常に高精度な機械加工が施されているがミクロン程度の機械精度誤差がある。ステージが例えばY軸に沿って(X1,Y1)から(X1,Y2)に向かって移動すると、ステージ移動途中でステージの中心座標はX軸方向に左右に蛇行運動する。マルチビーム法では予め2次元に各電子ビームの間隔が決められて配置された1次電子ビーム群を利用する。連続検査中にステージが蛇行すると、1次電子ビームが照射される場所が意図した場所とは異なり不均一に1次電子ビームが照射され検査に不具合が生じる。
【0145】
図15は、本発明のステージの蛇行補正説明図を示す。
【0146】
図15の(a)は補正前の画像の例を模式的に示し、図15の(b)は補正後の画像の例を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を表し、横方向は1次電子ビームの走査方向を表す。
【0147】
図15の(a)において、各画像は、ステージの蛇行毎に図示の矩形領域の画像が左右に蛇行する様子を模式的に示したものである。
【0148】
図15の(b)において、各画像は、ステージの蛇行毎に図示の矩形領域の画像が補正された後の様子を模式的に示したものである。画像に蛇行はなく、ステージ移動方向に同じ幅で走査されている様子が分かる。
【0149】
以上のように、既述した図14で説明したように、ステージ9の蛇行(ステージ移動方向と直角方向のずれ量、更に、ステージ移動方向のずれ量)がある場合(検出された場合)には、これら蛇行分だけステージを移動(あるいは検出した画像を移動)する補正を行い、図15の(b)のように見かけ上、蛇行がないように補正することが可能となる。
【0150】
図16は、本発明のステージ回転説明図を示す。
【0151】
図16の(a)は水平回転が無の様子を模式的に示し、図16の(b)は水平回転が右の場合の様子を模式的に示し、図16の(c)は水平回転が左の場合の様子を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を示し、横方向は電子ビーム走査方法を示す。
【0152】
図16の(a)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転がない様子を模式的に示し、補正は必要ない場合を示す。
【0153】
図16の(b)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転が右にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、左に水平方向の回転を補正する(図3のステージ回転量を参照)。
【0154】
図16の(c)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転が左にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、右に水平方向の回転を補正する(図3のステージ回転量を参照)。
【0155】
一般にステージ9は可動部を挟んで左右対称に2つのレールの上に載っている。左右のレールの特性は必ずしも同じではなく、摩擦も異なるため、レールに沿ってステージ9を移動した場合、左右のレールでは移動量が異なってくる。そのため、ステージ9の可動部はXY平面内で僅かに回転揺れを生じる。これを本発明では補正する。
【0156】
図17は、本発明のステージの回転補正説明図を示す。
【0157】
図17の(a)は補正前の画像の例を模式的に示し、図17の(b)は補正後の画像の例を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を表し、横方向は1次電子ビームの走査方向を表す。
【0158】
図17の(a)において、各画像は、ステージの水平方向の回転毎に図示の矩形領域の画像が左回転あるいは右回転する様子を模式的に示したものである。
【0159】
図17の(b)において、各画像は、ステージの水平方向の回転毎に図示の矩形領域の画像が補正された後の様子を模式的に示したものである。画像の水平方向の回転はなく、ステージ移動方向に同じ向きで走査されている様子が分かる。
【0160】
以上のように、既述した図16で説明したように、ステージ9の水平方向の回転(ステージ移動方向に対する回転方向のずれ量)がある場合(検出された場合)には、これら水平方向の回転分だけステージを逆方向に回転(あるいは検出した画像を回転)する補正を行い、図17の(b)のように見かけ上、ステージの移動方向に対して水平方向の回転がないように補正することが可能となる。
【0161】
図18は、本発明のステージの傾き補正説明図(Zステージによる高さ制御および自動水平だし)を示す。
【0162】
図18の(a)は補正前の様子を模式的に示し、図18の(b)は補正後の様子を模式的に示す。ここで、横軸はステージの移動方向Y1からY2を表し、縦軸はそのときの高さZを表す。
【0163】
図18の(a)において、図示の凸状の曲線は、補正前の曲線の例を示し、ステージ9が座標Y1から座標Y2まで一定速度で移動したときの高さZの座標の変化の様子を模式的に示したものである。ここでは、凸状に高さZが変化していることが判明する(実測される(図3のステージた高さ参照))。
【0164】
図18の(b)において、図示の曲線は、補正後の曲線の例を示し、ステージ9の高さZを補正した後の様子を示す。これは、補正前の図18の(a)に示す凸状の曲線のように、ステージ9が座標Y1から座標Y2まで一定速度で移動したときの高さZの座標が変化した場合(図3のステージ高さ参照)、リアルタイム検出された高さZに対応して、当該高さZを自動補正する。
【0165】
以上のように、ステージ9が一定方向に一定速度で移動した場合にその高さZをリアルタイム検出してその高さ変化分だけステージの高さを自動補正することが可能となる(後述する図19参照)。
【0166】
尚、ステージ9のZ方向の移動に対して、上述した図18で説明したステージ9のZ方向の補正を行わずに、対物レンズ6(あるいは図示外の補助対物レンズ)を制御して自動フォーカスおよび自動倍率補正を行う方法を採用してもよい。
【0167】
図19は、本発明のステージの高さ補正説明図を示す。
【0168】
図19の(a)は補正無しの状態を模式的に示し、図19の(b)は補正有りの状態を模式的に示す。ここで、縦方向は電子ビーム走査方向であり、横方向はステージの移動方向である。
【0169】
図19の(a)において、図示の補正無しの場合の先端部、中央部、後端部の各画像は、ステージ9の移動(図18の座標Y1(先端部)から座標Y2(後端部)に伴い発生した高さZの変化に伴う画像のボケを模式的に表したものである。
【0170】
図19の(b)において、図示の補正有りの場合の先端部、中央部、後端部の各画像は、ステージ9の移動(図18の座標Y1(先端部)から座標Y2(後端部)に伴い発生した高さZの変化に伴う高さ補正を行った後の画像(ボケなし)を模式的に表したものである。
【0171】
以上のように、図19の(a)の補正無のボケた画像について、リアルタイムに高さZを検出してステージ9の高さを自動補正して図18の(b)の補正有りの画像に自動補正することが可能となる。
【0172】
図20は、本発明のサンプル高さおよび傾き補正説明図を示す。これは、既述した図1図13のステージを組み込んだ実施例構造図の例を示す。
【0173】
図20において、1次電子ビーム1-1は、複数の1次電子ビームを表す。
【0174】
2次電子ビーム1-2は、複数の1次電子ビーム1-1をサンプル51に照射したときに放出された複数の2次電子ビームを表す。
【0175】
高さセンサー151、152は、サンプル51の高さをリアルタイム測定して出力する装置であって、レーザ干渉計などである。
【0176】
サンプルホルダー52は、サンプル8を保持するものである。
【0177】
ピエゾ圧電素子(Z1)51、(Z2)52,(Z3)55は、既述した図12のステージZ1(円錐)、ステージZ2(円錐)、ステージZ3(平坦)に対応するものであって、3点支持でサンプルホルダー52を支持するものである。
【0178】
以上の構造のもとで、既述した図13で説明したように、サンプルホルダー52を3点支持するピエゾ圧電素子(Z1)51、(Z2)52,(Z3)55のいずれかに制御電圧を印加して所望の高さZにリアルタイムかつ超高速にサンプルホルダー52の高さ、傾きを自動補正することが可能となる。傾きを補正することでサンプルに対して電子ビームの入射角度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
図1】本発明の1実施例構造図である。
図2】本発明のマルチビームアパチャー模式配列例である。
図3】本発明のデータテーブル例(図2)である。
図4】本発明のマルチビーム作成例である。
図5】本発明のマルチビーム検出説明図である。
図6】本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(4角形)である。
図7】本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(6角形)である。
図8】本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像の中心座標取得)である。
図9】本発明の動作説明フローチャート(校正)である。
図10】本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像(4角形)を取得)である。
図11】本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像(6角形)を取得)である。
図12】本発明の動作説明図(ステージ移動のずれ量および回転量の測定)である。
図13】本発明のステージの傾斜補正説明図である。
図14】本発明のステージの蛇行説明図である。
図15】本発明のステージの蛇行補正説明図である。
図16】本発明のステージの回転説明図である。
図17】本発明のステージの回転補正説明図である。
図18】本発明のステージの傾き補正説明図である。
図19】本発明のステージの高さ補正説明図である。
図20】本発明のサンプル高さおよび傾き補正説明図である。
【符号の説明】
【0180】
1:電子銃
1-1:1次電子ビーム
1-2:2次電子ビーム
2:ブランキング装置
3:照明レンズ
3-1:マルチビームアパチャー
3-2:マルチ電子ビーム
4:対物アパチャー
5:ビームスプリッタ
5-1:静電偏向器
5-2:電磁偏向器
6:対物レンズ
7:偏向装置
8:サンプル
8-1:ミラー
9:XYZθステージ(ステージ)
10:真空チャンバー
10-1:真空ポンプ
11:アライメント
12:投影レンズ
13:逆走査装置
14:電子検出沿器
52:サンプルホルダー
53、54、55;ピエゾ圧電素子
151、152:高さセンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19
図20