(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096953
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ケトン曝露を増加させるためのMCT製剤、並びにかかる製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/115 20160101AFI20240709BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240709BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A23L33/115
A23L33/17
A23D9/007
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067313
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2020568784の分割
【原出願日】2019-07-09
(31)【優先権主張番号】62/696,133
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(71)【出願人】
【識別番号】520481596
【氏名又は名称】ソクプラ サイエンシーズ サンテ エ ヒューメインズ, エス.イー.シー.
【氏名又は名称原語表記】SOCPRA Sciences Sante et Humaines, S.E.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】クナウド, ベルナルト
(72)【発明者】
【氏名】クネイン, ステファン, コスグレイブ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効な組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】個体に投与して、個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するための組成物であって、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも1.7gのタンパク質と、MCT1.0g当たり少なくとも4.7gの炭水化物と、を含む組成物とする。好ましくは、MCT1.0gあたり少なくとも0.1gの脂質という重量比の、MCT以外の脂質を更に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長する方法であって、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む組成物を、前記個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長する方法であって、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも0.4gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む組成物を、前記個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項3】
前記組成物が、(i)MCT1.0gあたり少なくとも0.1gの炭水化物という重量比の、炭水化物、及び/又は(ii)MCT1.0gあたり少なくとも0.1gの脂質という重量比の、MCT以外の脂質、を含む群から選択される少なくとも1つの原材料を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が粉末である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MCTが、前記組成物1L当たり少なくとも約40gである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記炭水化物が、前記組成物1L当たり少なくとも約36gである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が、前記組成物1L当たり少なくとも約52gである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記MCTが、前記組成物100g当たり少なくとも約40gである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記炭水化物が、前記組成物100g当たり少なくとも約36gである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質が、前記組成物100g当たり少なくとも約52gである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、前記MCT1.0g当たり少なくとも1.7gのタンパク質という重量比でタンパク質を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの原材料が、前記MCT1.0g当たり少なくとも4.7gの炭水化物という重量比で炭水化物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの原材料が、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.3gの脂質という重量比でMCT以外の脂質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記MCTの少なくとも一部分が、オクタン酸又はデカン酸のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記MCTが、オクタン酸又はデカン酸のMCTである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記MCTが、オクタン酸のMCTである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ケトンの少なくとも一部が、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の経口投与後の前記ケトンへの前記個体の曝露が、タンパク質及び/又は炭水化物の含有量がより少ないこと以外は同一に配合された別の組成物の経口投与によるものよりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、飲料、マヨネーズ、サラダドレッシング、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズスプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルション、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、UHTプディング、低温殺菌プディング、ゲル、ゼリー、ヨーグルト、脂肪ベースのフィリング又は含水フィリングを有する食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、一食につき少なくとも約10gのMCTを提供するものとして前記個体に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
中鎖トリグリセリド(MCT)と、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む組成物を、個体に投与する工程を含む、ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防する方法。
【請求項23】
前記組成物が、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.4gのタンパク質という重量比でタンパク質を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記状態が、てんかん、神経疾患、神経変性疾患、心不全、先天性代謝異常、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、癌、脳エネルギーの欠乏状態、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、脳卒中、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、軽度認知障害(MCI)、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性代謝異常症、双極性障害、統合失調症、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
中鎖トリグリセリド(MCT)と、前記化合物1.0g当たり少 なくとも0.1gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む組成物を、個体に投与する工程を含む、神経の健康状態、認知機能、又は運動能力のうちの少なくとも1つを改善又は維持する方法。
【請求項26】
個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するのに有効な組成物を製造する方法であって、前記方法が、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比でタンパク質とを混合する工程を含み、前記食品製品は、前記タンパク質の少なくとも一部と前記MCTの少なくとも一部とを含む食品マトリックスを含む、方法。
【請求項27】
ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効な組成物を製造する方法であって、前記方法は、中鎖トリグリセリド(MCT)と、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比でタンパク質とを混合する工程を含み、食品製品は、前記タンパク質の少なくとも一部と前記MCTの少なくとも一部とを含む食品マトリックスを含む、方法。
【請求項28】
前記状態が、てんかん、神経疾患、神経変性疾患、心不全、先天性代謝異常、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、癌、脳エネルギーの欠乏状態、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、脳卒中、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性代謝異常症、双極性障害、統合失調症、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
個体による食品製品の経口吸収に由来するデカン酸及び/又はオクタン酸に血液が曝露されるのを延長する方法であって、前記方法が、中鎖トリグリセリド(MCT)と、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む、組成物を、前記個体に投与する工程を含み、前記MCTが、前記デカン酸及び/又はオクタン酸の少なくとも一部を含む、方法。
【請求項30】
前記組成物が、前記MCT1.0g当たり少なくとも0.4gのタンパク質という重量比で前記タンパク質を含む、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効な組成物、及び/又は個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するのに有効な組成物であって、前記組成物が、中鎖トリグリセリド(MCT)と、更に(i)前記化合物1.0g当たり少なくとも0.4gのタンパク質という重量比のタンパク質、及び(ii)前記化合物1.0g当たり少なくとも0.3gの炭水化物という重量比の炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの原材料を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本開示は、概して、中鎖トリグリセリド(MCT)を含み、更にMCTの少なくとも一部が配合された食品マトリックスを含む、組成物に関する。該組成物は、食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長することができる。
【0002】
[0002]主要な2種類のケトンであるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)及びアセト酢酸(AcA)は、脳、心臓、又は骨格筋のような肝外組織にとって重要な代替エネルギー源である。更に、ケトンがシグナル伝達において直接的又は間接的な役割も有し得ることを示唆する証拠も増えている。血中ケトンを増加させることを目的とする製品は、てんかん、神経疾患及び神経変性疾患、心不全、先天性代謝異常、肥満、2型糖尿病、癌、運動能力、及び非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、例えば非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの状態において治療効果を有する可能性がある。
【0003】
[0003]BHB及びAcAは、モノカルボン酸トランスポーター1(MCT1)によって脳へと能動的に輸送され、その結果、脳内濃度は血中濃度に正比例する。したがって、血漿ケトン濃度をより持続的なものとする製品は、血中ケトンを上昇させる期間がより短い(半減期が短い)製品と比較して、より長い効果(より長い血漿ケトン半減期Tk
1/2)を有することが予想される。したがって、血中ケトンへの曝露時間を最大化することが重要である。しかしながら、ケトン前駆体から誘導されるケトンの血漿中半減期を制御する因子は知られていない。
【0004】
[0004]中鎖トリグリセリド(MCT)は、経口でボーラス投与された場合に効率的なケトン前駆体である。MCTは速やかに消化され、これにより生成された遊離中鎖脂肪酸(MCFA)は、長鎖脂肪酸の通常の消化吸収プロセスは通らずに門脈によって効率的に吸収され、肝臓に運ばれてその大部分がケトンへと代謝される。これらの特定の製剤は、ケトン体の生成効率及び消化管での忍容性に影響し得る。
【0005】
[0005]近年、様々なMCT製剤のヒトにおける薬物動態(PK)特性が報告されており、様々な鎖長のMCTから得られる内因性ケトンの産生効率は多様であること、炭素数8(C8)のMCTが最も有効であることが示されている。加えてヒトにおいては、MCT油の良好なエマルションは、乳化していないMCT油と比較して、経口摂取後にはるかに高いケトン産生を示すことが報告された。
【0006】
[0006]しかしながら、これらの研究全てにおいて、等効果量(equi-effective dose)でのTk
1/2に対する効果は検討されておらず、報告もされていない。
【発明の概要】
【0007】
[0007]驚くべきことに、かつ予想外にも、本発明者らは、MCT油が配合された食品マトリックス/タンパク質が、等効果量でTk
1/2に直接影響することを発見した。
【0008】
[0008]したがって、非限定的な実施形態において、本開示は、個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長する方法を提供する。本方法は、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも0.1gのタンパク質という重量比で更にタンパク質とを含む、組成物を、個体に投与する工程を含む。組成物は、所望により、(i)MCT1.0g当たり少なくとも0.1gの炭水化物という重量比の炭水化物、及び/又は(ii)MCT1.0g当たり少なくとも0.1gの脂質という重量比のMCT以外の脂質、を更に含むことができる。
【0009】
[0009]組成物は液体であってもよく、MCTは、該組成物1L当たり少なくとも約40gとなるよう含まれてもよく、タンパク質は、該組成物1L当たり少なくとも約4gとなるよう含まれてもよい。組成物は、一食につき少なくとも約10gのMCTを提供するものとして個体に投与できる。
【0010】
[0010]MCTの少なくとも一部は、オクタン酸又はデカン酸のうちの少なくとも1つを含み得る。ケトンの少なくとも一部は、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸塩、又はこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0011】
[0011]組成物の経口投与後の個体のケトンへの曝露量は、好ましくは、タンパク質の含有量がより少ないこと以外は同一に配合された別の組成物の経口投与によるものよりも大きい。
【0012】
[0012]組成物は、飲料、マヨネーズ、サラダドレッシング、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズスプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌した液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルション、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、UHTプディング、低温殺菌プディング、ゲル、ゼリー、ヨーグルト、脂肪ベースのフィリング又は含水フィリングを有する食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形態であり得る。
【0013】
[0013]他の実施形態では、組成物は、ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防する方法;神経の健康状態、認知機能、又は運動能力のうちの少なくとも1つを改善又は維持する方法;又は個体による食品製品の経口吸収に由来するデカン酸及び/若しくはオクタン酸に血液が曝露されるのを延長する方法、において使用される。
【0014】
[0014]他の実施形態では、本開示は、個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するのに有効な組成物の製造方法、又はケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効な組成物の製造方法を提供する。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、組成物は、てんかん、神経疾患、神経変性疾患、心不全、先天性代謝異常、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、癌、脳エネルギーの欠乏状態、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、脳卒中、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、軽度認知障害(MCI)、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天代謝異常症、双極性障害、統合失調症、及びこれらの組み合わせの治療又は予防に使用される。
【0016】
[0016]他の実施形態では、本開示は、ケトンへの長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効であり、及び/又は個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するのに有効である、組成物を提供する。
【0017】
[0017]追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】グルコース、ケトン及び遊離脂肪酸(FFA)の血液脳関門(BBB)通過の模式図である。本例において、ケトン(β-ヒドロキシ酪酸、すなわちBHB、及びアセト酢酸、すなわちAcA)及び遊離脂肪酸(C8 FFA及びC10 FFA)は、MCTに由来する。本図は、MCTが脳のエネルギー源として作用し得ることを示す。
【
図2】本明細書に開示される実験例で試験した製剤(製品A~C)を示す表である。
【
図3】本明細書に開示される実験例から、製品Aと製品Bの結果を比較するグラフである。
【
図4】本明細書に開示される実験例から、製品Aと製品Bの結果を比較する表である。
【
図5】本明細書に開示される実験例から、製品Bと製品Cの結果を比較するグラフである。
【
図6】本明細書に開示される実験例から、製品AのC8/C10 MCFAに対する薬物動態学的効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0024]定義
[0025]以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0020】
[0026]パーセンテージは全て、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比は全て、特に明記しない限り重量によるものとする。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0021】
[0027]更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数を、全体的に又は部分的に含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項を支持すると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲を支持するものと解釈されたい。
【0022】
[0028]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、かかる「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
【0023】
[0029]同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という用語は、排他的ではなく、包含的に解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは包括的なものであると解釈される。しかし、本開示により提供される実施形態は、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素を欠く場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的になる」、及び「からなる」実施形態の開示でもある。「から本質的になる」とは、実施形態又はその構成成分が、個別に特定された構成成分を50重量%超、好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも75重量%、より好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも85重量%、最も好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも95重量%、例えば、個別に特定された構成成分を少なくとも99重量%含むことを意味する。
【0024】
[0030]本明細書において使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合に、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示される全ての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0025】
[0031]「動物」としては、齧歯類動物、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどの飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。「動物」又は「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合には、これらの用語は、その節の文脈により示される又は示されることが意図される効果を可能にする任意の動物、例えば、ケトンから利益を受ける動物にも適用される。用語「個体」は、本明細書ではヒトに関して用いられることが多いが、本開示は、ヒトに限定されない。したがって、用語「個体」は、本明細書に開示される方法及び組成物から利益を得ることができる任意の動物、哺乳動物、又はヒトを指す。
【0026】
[0032]相対的な用語「改善された」、「増加した」、「増強された」などは、食品マトリックス中にMCTを含有する組成物(本明細書に開示される)の特性又は効果を、タンパク質及び/又は炭水化物の量が少ないことを除いて同一の配合を有する組成物を基準にして表す。用語「維持された」及び「持続的な」は、神経の健康状態、認知機能、又は運動能力などの個体の特徴が、前週の平均レベル、前月の平均レベル、又は前年の平均レベルとほぼ同じであることを意味する。
【0027】
[0033]本明細書で使用するとき、「治療する」及び「治療」という用語は、ある状態を有する対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状を減弱、低減若しくは改善することを目的として、かつ/又はその状態の進行を遅延、低下若しくは阻止することを目的として、本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。「予防する」及び「予防」という用語は、その状態の症状を何ら示していない対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状の発症を低減又は予防するために、本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。
【0028】
[0034]本明細書で使用するとき、「認知機能」とは、記号的操作、例えば、知覚、記憶(自由再生)、実行機能、処理速度、注意、会話の理解、音声生成、言語、読解力、イメージの作成、学習、及び推論、好ましくは少なくとも記憶が関与する任意の精神的プロセスを指す。
【0029】
[0035]用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取を意図するものであり、個体に少なくとも1つの栄養素を提供する、組成物を意味する。用語「食品マトリックス」は、様々な実施形態において、液体、固体、又は半固体であり得る食品組成物の物理的構造を意味する。「食品」及びその関連用語には、ヒト又は他の動物を対象とした任意の食品、餌、スナック、栄養補助食品、トリート、食事代用物、又は食事代替物が含まれる。動物用食品には、任意の飼いならされた動物又は野生種を対象とした食品又は餌が含まれる。好ましい実施形態では、動物用の食品は、栄養的に完全な食品又は食事組成物、例えば、ペレット状の食品、押出成形食品、又は乾燥食品を表す。このような動物用食品の例としては、イヌ及びネコ用の食品などの押出成形されたペットフードが挙げられる。
【0030】
[0036]トリグリセリド(トリアシルグリセロール又はトリアシルグリセリドとしても知られている)は、グリセロールと3つの脂肪酸とから誘導されるエステルである。脂肪酸は、不飽和又は飽和のいずれであってもよい。他の分子に結合していない脂肪酸は、遊離脂肪酸(FFA)と呼ばれる。
【0031】
[0037]中鎖トリグリセリド(MCT)は、分子中の3つの脂肪酸部分全てが中鎖脂肪酸部分であるトリグリセリドである。本明細書で定義されるように、中鎖脂肪酸(MCFA)は、6~14個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を有する脂肪酸である。8個の炭素原子を有する中鎖脂肪酸は、本明細書中、「C8脂肪酸」又は「C8」と呼ばれることがある。10個の炭素原子を有する中鎖脂肪酸は、本明細書中、「C10脂肪酸」又は「C10」と呼ばれることがある。
【0032】
[0038]用語「脂肪酸部分」とは、グリセロールとのエステル化反応において脂肪酸に由来するMCTの一部を指す。非限定的な例として、グリセロールとオクタン酸のみとの間のエステル化反応では、オクタン酸部分を含むMCTが生じる。別の非限定的な例として、グリセロールとデカン酸のみとの間のエステル化反応では、デカン酸部分を含むMCTが生じる。
【0033】
[0039]オクタン酸(カプリル酸としても知られる)は、式CH3(CH2)6COOHの飽和脂肪酸である。
【0034】
[0040]デカン酸(カプリン酸としても知られる)は、式CH3(CH2)8COOHの飽和脂肪酸である。
【0035】
[0041]実施形態
[0042]本開示の一態様は、中鎖トリグリセリド(MCT)と、更なるタンパク質とを含む組成物である。組成物は、好ましくは、MCTの少なくとも一部が配合された食品マトリックスを含み、組成物の特に好ましい非限定的な実施形態は、飲料などの液体である。組成物はまた、摂取前に水に容易に溶解できる粉末の形態であってもよい。一実施形態では、組成物は、一食につき少なくとも約5gのMCT、例えば、少なくとも約10gのMCTを提供するものとして個体に投与される。
【0036】
[0043]タンパク質のMCTに対する重量比は、好ましくは、MCT1.0g当たり少なくとも約0.1gのタンパク質、好ましくはMCT1.0g当たりタンパク質が少なくとも約0.4gのタンパク質、より好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約0.8gのタンパク質、より好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約1.0gのタンパク質、更により好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約1.5gのタンパク質、最も好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約1.7gのタンパク質となるものである。
【0037】
[0044]任意に、組成物は、MCTに加えて炭水化物及び/又は他の脂質を更に含んでもよい。
【0038】
[0045]炭水化物が存在する場合、炭水化物のMCTに対する重量比は、好ましくは、MCT1.0g当たり少なくとも約0.3gの炭水化物、好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約1.0gの炭水化物、より好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約2.0gの炭水化物、更により好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約3.0gの炭水化物、更により好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約4.0gの炭水化物、最も好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約4.7gの炭水化物となるものである。
【0039】
[0046]MCT以外の脂質が存在する場合、MCT以外の脂質のMCTに対する重量比は、好ましくは、MCT1.0g当たり約0.1gの脂質、MCT1.0g当たり少なくとも約0.2gの脂質、好ましくはMCT1.0g当たり少なくとも約0.3gの脂質、MCT1.0g当たり少なくとも約0.4gの脂質、MCT1.0g当たり少なくとも約0.6gの脂質、MCT1.0g当たり少なくとも約0.8gの脂質、又は少なくともMCT1.0g当たり1.0gの脂質となるものである。一実施形態において、MCT以外の脂質が存在する場合、MCT以外の脂質は、MCT以外の脂質:MCTの比が0.1:2.0~2.0:1.0、好ましくは0.1:1.0~1.0:2.0となるよう存在し得る。
【0040】
[0047]MCTは、好ましくは組成物の1~50重量%、例えば、組成物の1~30重量%、1~10重量%、2~10重量%、3~10重量%、4~10重量%、5~10重量%、6~10重量%、7~10重量%、又は8~10重量%である。組成物が液体である実施形態では、組成物は、少なくとも約40gのMCT/L、好ましくは少なくとも約50gのMCT/L、より好ましくは少なくとも約75gのMCT/L、更により好ましくは少なくとも約100gのMCT/L、最も好ましくは少なくとも約120gのMCT/Lを含み得る。MCTは、該液体中に、最大約250g/L、好ましくは最大約200gのMCT/L、より好ましくは最大約175gのMCT/L、最も好ましくは最大約150gのMCT/Lの濃度で存在し得る。
【0041】
[0048]組成物が液体である実施形態では、組成物は、少なくとも約52gのタンパク質/L、好ましくは少なくとも約60gのタンパク質/L、より好ましくは少なくとも約65gのタンパク質/L、最も好ましくは少なくとも約68gのタンパク質/Lを含み得る。組成物が液体である実施形態では、組成物は、少なくとも約36gの炭水化物/L、好ましくは少なくとも約50gの炭水化物/L、より好ましくは少なくとも約75gの炭水化物/L、更により好ましくは少なくとも約100gの炭水化物/L、更により好ましくは少なくとも約150gの炭水化物/L、最も好ましくは少なくとも約188gの炭水化物/Lを含み得る。
【0042】
[0049]MCTは、3つの脂肪酸部分を含み、その各々は独立して6~12、6~11、6~10、7~12、7~11、7~10、8~12、8~11又は8~10個の炭素原子を有する。一実施形態において、MCTの少なくとも一部は、1つ以上のオクタン酸部分を含有する。一実施形態において、MCTの少なくとも一部は、1つ以上のデカン酸部分を含有する。
【0043】
[0050]好ましくは、組成物は、MCTの少なくとも一部をもたらす1つ以上の天然資源を含有する。MCTの好適な天然資源の非限定的な例としては、ココナッツ、ココナッツ油、パーム核、及びパーム核油が挙げられる。例えば、デカン酸及びオクタン酸は、それぞれ、ココナッツ油の脂肪酸組成の約5~8%及び4~10%を占める。
【0044】
[0051]追加的に又は代替的に、MCTの少なくとも一部は、グリセロールと、6~12個の炭素原子からなる尾部を有する1つ以上の中鎖脂肪酸(MCFA)とのエステル化によって合成され得る。例えば、各々8個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含むホモトリグリセリドは、グリセロールをC8脂肪酸(例えば、オクタン酸)でエステル化することによって合成でき、各々10個の炭素原子を有する3つの脂肪酸部分を含むホモトリグリセリドは、グリセロールをC10脂肪酸(例えば、デカン酸)でエステル化することによって合成できる。
【0045】
[0052]一実施形態では、組成物は、少なくとも1つのオクタン酸部分又はデカン酸部分を含むMCTを含み、組成物は、任意の他のトリグリセリドを含まない、又は実質的に含まない。本明細書で使用するとき、用語「任意の他のトリグリセリドを含まない」とは、組成物が、少なくとも1つのオクタン酸部分又はデカン酸部分を含有しないトリグリセリドを何ら含まないことを意味する。本明細書で使用するとき、用語「任意の他のトリグリセリドを実質的に含まない」とは、組成物が他の微量のトリグリセリド、すなわち、5モル%未満、好ましくは3モル%未満、より好ましくは2モル%未満、更により好ましくは1モル%未満、又は最も好ましくは0.5モル%未満の他のトリグリセリドを含有し得ることを意味する。
【0046】
[0053]経口吸収後、MCTは遊離脂肪酸へと代謝され、更にケトンへと代謝される。遊離脂肪酸は、最初にβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)へと代謝され、次いでアセト酢酸塩(AcA)へと代謝される。MCFA及びケトンは、利用されるMCTに応じて、体液中で様々な量で産生され、これらの分子は、グルコースの代替エネルギー源として使用され、又はグルコースに由来するエネルギーを補うことができる。
【0047】
[0054]ケトンは、例えば、モノカルボン酸トランスポーター1(MCT1)によって脳へと輸送可能であり、脳では主にニューロンによって代謝される。C8遊離脂肪酸及びC10遊離脂肪酸などの遊離脂肪酸は、拡散によって脳に達することが可能であり、脳では主に星状膠細胞によって代謝される(
図1参照)。
【0048】
[0055]一実施形態では、対象への組成物の経口投与は、ケトン、C8脂肪酸、又はC10脂肪酸のうちの1つ以上を、該対象の体液に提供する。好ましくは、ケトンは、β-ヒドロキシ酪酸及び/又はアセト酢酸である。一実施形態では、本開示の組成物の経口投与後の、ケトン、C8脂肪酸、又はC10脂肪酸のうちの1つ以上への対象の曝露は、タンパク質及び/又は炭水化物がより少ない組成物の経口投与によるものよりも大きい。例えば、本発明による組成物の経口投与後における、対象のケトン、C8脂肪酸、又はC10脂肪酸のうちの1つ以上への曝露は、タンパク質及び/又は炭水化物がより少ない組成物の経口投与によるものよりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8モル%多くなり得る。
【0049】
[0056]対象のケトン及び/又は特定の脂肪酸(例えば、C8又はC10脂肪酸)への曝露は、対象の血漿中のケトン及び/又は特定の脂肪酸のレベルを、例えば経口投与後8時間にわたって、測定することによって定量することができる。対象のケトン及び/又は特定の脂肪酸への曝露は、時間(例えば8又は24時間超)に対する体液中(例えば血漿中)のケトン及び/又は脂肪酸の濃度のプロットにおける曲線下面積(AUC)を決定することによって算出され得る。一実施形態では、生体液は、分析前に、有機溶媒で処理してタンパク質を沈殿させ、質量分析(MS)に適した溶媒で再構成する。ケトン体及び中鎖脂肪酸の濃度は、高分解能質量分析を連結した液体クロマトグラフィー(LC-MS)を使用して評価できる。特に、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)、アセト酢酸(AcA)、及び特定の脂肪酸の濃度は、外部較正法(external calibration methodology)を使用して定量的に測定できる。
【0050】
[0057]一実施形態では、タンパク質は、乳性のタンパク質、植物性タンパク質、動物性タンパク質、人工タンパク質、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
[0058]乳性のタンパク質として、例えば、カゼイン、カゼイン加水分解物、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウムを含む全ての形態)、乳清加水分解物、乳清(例えば、濃縮物、単離物、脱塩物を含む全ての形態)、乳タンパク質濃縮物、及び乳タンパク質単離物が挙げられる。植物性タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、エンドウ豆タンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、キャノーラタンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)が挙げられ、市販のその他の植物性タンパク質は、小麦及び分画小麦タンパク質、トウモロコシ及びゼインを含むその画分、米、オート麦、ジャガイモ、落花生、並びに腎臓形の豆(beans)、ソバ、ヒラマメ(lentils)及び豆類(pulses)由来の任意のタンパク質である。動物性タンパク質としては、例えば、牛肉、家禽、魚、子羊、海産物、豚肉、卵、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
[0059]一実施形態において、タンパク質源は乳性のタンパク質を含む。一実施形態では、乳性のタンパク質は、カゼイン、カゼイン塩、カゼイン加水分解物、乳清、乳清加水分解物、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質単離物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0053】
[0060]組成物は、ミネラル類;ビタミン類;塩類;又は、機能性添加剤、例えば、嗜好剤(palatant)、着色剤、乳化剤、抗菌剤、又は他の保存料などの1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。本明細書に開示される組成物に好適なミネラル類の非限定的な例としては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、フッ化物、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に開示される組成物に好適なビタミンの例としては、水溶性ビタミン(チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、ミオイノシトール(ビタミンB8)、葉酸(ビタミンB9)、コバラミン(ビタミンB12)及びビタミンCなど)及び脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンKなど)、並びにこれらの塩、エステル又は誘導体が挙げられる。イヌリン、タウリン、カルニチン、アミノ酸、酵素、補酵素、及びこれらの任意の組み合わせが、様々な実施形態に含まれ得る。
【0054】
[0061]組成物は、神経の全般的な健康状態を促進若しくは維持し、又は認知機能を更に向上させる、1つ以上の作用物質を更に含み得る。このような作用物質の例としては、コリン、ホスファチジルセリン、α-リポ酸、CoQ10、アセチル-L-カルニチン、オメガ-3脂肪酸、ハーブ抽出物(イチョウ(Gingko biloba)、オトメアゼナ(Bacopa monniera)、シャンカプシュピ(Convolvulus pluricaulis)及びスノーフレーク(Leucojumaestivum)など)が挙げられる。
【0055】
[0062]組成物は、医療食品の形態であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「医療食品」は、医学的疾患又は状態の食事管理のために特別に配合された食品製品を指す。例えば、医学的疾患又は状態は、通常食のみでは満たされ得ない、特有の栄養必要量があることがある。医療食品は、医学的管理下で投与される場合がある。医療食品は、経口投与されてもよく、又は経管栄養として投与されてもよい。用語「経管栄養」とは、栄養を供給管によって対象の胃腸に直接導入することが意図された製品を指す。経管栄養は、例えば、対象の鼻を通して配置された供給管(経鼻胃管、経鼻十二指腸管、及び経鼻空腸管など)、又は対象の腹部に直接配置された供給管(胃瘻供給管、胃空腸瘻供給管、又は空腸供給管など)によって投与されてもよい。
【0056】
[0063]組成物は、栄養組成物又は栄養補助食品の形態であってもよい。用語「栄養補助食品」は、対象の普段の食生活を補助することを意図した製品を指す。
【0057】
[0064]組成物は完全栄養製品の形態であってよい。用語「完全栄養製品」は、対象にとって唯一の栄養源となり得る製品を指す。
【0058】
[0065]様々な実施形態では、組成物は、飲料、マヨネーズ、サラダドレッシング、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズスプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルション、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、UHTプディング、低温殺菌プディング、ゲル、ゼリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品、の形態であってもよい。
【0059】
[0066]一実施形態において、組成物は、乳児用調製粉乳であってもよい。更に他の実施形態において、組成物は、食品、スナック、ペットフード、又はペット用トリートを被覆するために使用することができる。
【0060】
[0067]本明細書に開示される組成物は、経腸投与又は非経口投与されてもよい。好ましくは、組成物は、経腸投与される。例えば、組成物は、食料品又は栄養補助食品の形態で投与されてもよい。経腸的投与は、経口、経胃、及び/又は経直腸投与であってよい。好ましくは、組成物は経口投与される。
【0061】
[0068]対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、又は霊長類などの哺乳動物であり得る。好ましくは、対象は、ヒトである。一実施形態において、対象は、乳児である。乳児は、例えば、新生児(すなわち、生後28日未満の乳児)又は未熟児(すなわち、37週の妊娠期間が完了する前に生まれた乳児)などのヒトであり得る。
【0062】
[0069]一実施形態において、対象は、年齢を重ねた対象である。例えば、対象は、その推定寿命の40、50、60、66、70、75又は80%に達した、年齢を重ねた対象であってよい。寿命の決定は、保険数理の表、計算又は推定を基準にしてもよく、かつ、過去、現在及び未来の影響、又は寿命にプラス若しくはマイナスに作用することが知られている因子を考慮してもよい。寿命を判定するときには、種、性別、体格、遺伝的因子、環境因子及びストレス因子、現在及び過去の健康状態、過去及び現在の栄養状態、並びにストレス因子が考慮され得る。年齢を重ねた対象は、例えば、年齢が40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100歳を超えたヒト対象であり得る。
【0063】
[0070]治療についての本明細書の全参照は、治癒的、緩和的、予防的治療を含む。処置に、疾患の重症度の進行を抑止することを更に含んでもよい。ヒトと動物の両方の治療が本開示の範囲内である。
【0064】
[0071]MCTから生成される遊離脂肪酸及びケトンは、グルコースの代替エネルギー源を供給し、星状膠細胞、筋細胞、心筋細胞又は神経細胞などの細胞のエネルギーを補充し、又はその代わりとなる。
【0065】
[0072]脳組織は、その体積に比して多量のエネルギーを消費する。平均的な健康な対象において、脳は、そのエネルギーの大部分を酸素依存的なグルコース代謝から得ている。典型的には、脳のエネルギーの大部分は、ニューロン又は神経細胞のシグナル伝達を助けるために使用され、残りのエネルギーは、細胞の健康維持のために使用される。例えば、グルコースの利用が障害されることによって引き起こされる脳のエネルギー欠乏は、神経活動の亢進、痙攣発作及び認知障害をもたらすことがある。
【0066】
[0073]脳エネルギーの欠乏状態又は欠乏疾患の例としては、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、ニューロリハビリテーション、脳卒中及び脳卒中後、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、軽度認知障害(MCI)、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性代謝異常症(グルコーストランスポーター1欠損症症候群及びピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症など)、双極性障害、統合失調症並びに/又はてんかんが挙げられる。
【0067】
[0074]本明細書で使用するとき、用語「神経学的状態」は、神経系の疾患を指す。神経学的状態は、病気又は外傷によって引き起こされた脳、脊柱又は神経への損傷に起因し得る。神経学的状態の症状の非限定的例としては、麻痺、筋力低下、協調運動不良、感覚喪失、痙攣発作、混乱、疼痛及び意識レベルの変化が挙げられる。接触、圧力、振動、四肢の位置、熱さ、冷たさ、及び痛み並びに反射に対する反応の評価を実施することで、対象において神経系に障害が生じているかを判定することができる。
【0068】
[0075]いくつかの神経学的状態は生涯にわたるものであり、その発症はいかなる時点においても経験され得る。脳性麻痺などのその他の神経学的状態は、出生時から存在する。デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどのいくつかの神経学的状態は、一般に幼児期に顕在化するが、アルツハイマー病及びパーキンソン病などの他の神経学的状態は、主に高齢者が罹患する。いくつかの神経学的状態は、頭部外傷若しくは脳卒中、又は脳及び脊椎の癌などの外傷又は病気によって突然発症する。
【0069】
[0076]一実施形態では、神経学的状態は、脳の外傷性損傷の結果である。付加的又は代替的に、神経学的状態は、脳又は筋肉におけるエネルギー欠乏の結果である。
【0070】
[0077]神経学的状態の例としては、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、ニューロリハビリテーション、脳卒中及び脳卒中後、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、軽度認知障害(MCI)、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性代謝異常症(グルコーストランスポーター1欠損症症候群及びピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症など)、双極性障害、統合失調症及び/又はてんかんが挙げられる。
【0071】
[0078]片頭痛は、悪心(体調不良)、視覚障害及び光又は音に対する感度の増大などの他の症状を伴う激しい頭痛である。片頭痛は、前兆が先に起こることがあり;前兆の主な症状は、ぼやけた視界(焦点を合わせるのが困難)、暗点、閃光又は中央視野から端に向かって動くジグザグパターンなどの視覚障害である。
【0072】
[0079]脳卒中(脳血管障害(CVA)及び脳血管傷害(CVI)としても知られる)は、脳への血流が不十分になり、その結果、細胞死が生じたときに起こる。脳卒中には、虚血性(血流不足に起因する)と、出血性(出血に起因する)の2つの主な種類がある。脳卒中により、脳の一部が正常に機能しなくなる。脳卒中の兆候及び症状には、身体の片側を運かすことができないこと、身体の片側の感覚がないこと、理解若しくは発話の問題、世界が回転しているような感覚、又は片側の視野欠損が含まれ得る。兆候及び症状は、多くの場合、脳卒中が起きた直後に現れる。
【0073】
[0080]筋萎縮性側索硬化症(ALS)(ルーゲーリッグ病、シャルコー病及び運動ニューロン病としても知られる)は、随意筋の制御を担うニューロンの死を伴う。ALSは、筋肉のこわばり、筋肉の単収縮、及び筋消耗によって徐々に悪化する虚弱を特徴とし;これにより、発話、嚥下、最終的には呼吸が困難になる。
【0074】
[0081]多発性硬化症は、脳及び脊髄の神経に影響を及ぼすものであり、筋肉運動の問題、運動機能及びバランスの問題、しびれ及びうずき、視界のぼやけ(典型的には片眼の視野欠損)並びに疲労を含む広範囲の症状を引き起こす。
【0075】
[0082]パーキンソン病は、主に運動系が冒される中枢神経系の変性疾患である。疾患の初期において、最も顕著な症状は、運動に関連するものであり;これらには、静止時振戦、固縮、動作緩慢及び歩行(walking and gait)の困難が含まれる。その後、疾患の経過中に思考及び行動上の問題が生じることがあり、疾患の進行期には一般に認知症が生じる。他の症状には、うつ症状、感覚、睡眠及び感情の問題が含まれる。
【0076】
[0083]アルツハイマー病は、進行性神経変性疾患である。アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な原因である。症状には、記憶喪失、及び思考、問題解決又は言語の困難が含まれる。ミニメンタルステート検査(MMSE)は、アルツハイマー病の診断に使用される試験の一例である。
【0077】
[0084]ハンチントン病は、脳内の特定の神経細胞に損傷を与える遺伝性の状態である。ハンチントン病は、筋肉の協調に影響し、精神機能の低下(mental decline)及び行動症状に至る。最初期の症状では、多くの場合、気分又は認知に関するささいな問題が生じる。次いで、協調運動の全般的欠如及び不安定歩行が起こる。疾患が進行するにつれて、精神的能力の低下及び行動症状とともに、ぎくしゃくした痙攣様の身体運動がより顕著になる。身体能力は、協調運動が困難になるまで徐々に悪化する。精神的能力は、一般に、認知症にまで低下する。
【0078】
[0085]先天性代謝異常症は、欠陥遺伝子によって引き起こされる様々な疾患である。典型的には、欠陥遺伝子(複数可)は、酵素又は輸送タンパク質の欠損をもたらし、これにより、身体による化合物の処理により当該化合物の毒性が蓄積するという仕組みで阻害が生じる。先天性代謝異常症は、あらゆる臓器に影響を及ぼし得、通常、2つ以上の臓器が影響を受ける。症状は、多くの場合、非特異的である傾向があり、通常、主要な臓器の機能障害又は機能不全に関係する。代謝異常症の発症及び重症度は、食生活及び併発している病気などの環境因子によって悪化する場合がある。
【0079】
[0086]グルコーストランスポーター1(Glut1)欠損症症候群は、血液脳関門、すなわち、小さな血管と脳組織を隔てる境界を通過してグルコースを輸送するGLUT1タンパク質が関与する遺伝性代謝異常である。最も一般的な症状は、痙攣発作(てんかん)であり、通常、生後数ヶ月以内に始まる。起こり得る更なる症状には、様々な程度の認知障害、並びに運動失調、ジストニア及び舞踏運動を特徴とする運動障害が含まれる。Glut1欠損症症候群は、GLUT1タンパク質を産生するSLC2A1遺伝子の変異によって引き起こされ得る。
【0080】
[0087]ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症(ピルビン酸脱水素酵素欠損症又はPDCD)は、ミトコンドリアの代謝異常及び炭水化物の代謝が崩れることに関連する神経変性疾患である。PDCDは、体内における乳酸の蓄積及び種々の神経障害を特徴とする。この状態の兆候及び症状は、通常、出生直後にまず現れるが、罹患した個体間で大きく異なる場合がある。最も一般的な特徴は、生命を脅かす場合がある乳酸の蓄積(乳酸アシドーシス)であり、この蓄積は悪心、嘔吐、重度の呼吸困難及び異常な鼓動を引き起こし得る。他の症状には、神経障害;精神的能力、及び着座及び歩行などの運動能力の発達遅延;知的障害;痙攣発作;筋緊張の低下(緊張低下);協調運動不良、並びに歩行困難が含まれる。罹患した個体の何人かは、脳の左半球と右半球とを連結する組織(脳梁)の発育不全、大脳皮質として知られる脳の外側部の衰弱(萎縮)、又は脳の一部における複数の損傷組織部分(病変)などの異常な脳構造を有する。
【0081】
[0088]PDCDは、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)中のタンパク質のうちの1つの欠損である。ピルビン酸脱水素酵素複合体は、E1、E2及びE3として識別された3つの酵素を含み;E1酵素は、α及びβとして識別されたサブユニットを含有する。最も一般的なPDCDの形態は、X染色体上に位置するE1αサブユニット(PDHA1遺伝子)における異常遺伝子によって引き起こされる。いくつかのPDCD症例は、PDHX遺伝子、PDHB遺伝子、DLAT遺伝子、PDP1遺伝子及びDLD遺伝子などの別のピルビン酸脱水素酵素複合体サブユニットの遺伝子変異によって引き起こされる。
【0082】
[0089]双極性障害は、気分、エネルギー、活動レベル、及び日々のタスクを実施する能力に異常な移り変わりをもたらす脳疾患である。双極性障害は、気分が高揚した期間とうつ状態の期間とを特徴とする。双極性障害は、精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM)又は世界保健機関の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases andRelatedHealth Problems)によるガイドラインを使用して診断することができる。
【0083】
[0090]統合失調症は、個体が現実を異常のものとして解釈する、慢性の重度の障害がある脳疾患である。統合失調症は、幻覚、幻聴、妄想並びに非常に混乱した思考及び行動のいくつかの組み合わせをもたらし得る。統合失調症は、精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM)又は世界保健機関の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases andRelatedHealth Problems)によるガイドラインを使用して診断することができる。
【0084】
[0091]てんかんは、脳内の神経細胞活性が崩れ、痙攣発作が生じる、又は異常な行動、感覚及び時に意識消失の期間が引き起こされる神経疾患である。
【0085】
[0092]「認知性障害」及び「認知障害」という用語は、認知に障害を生じさせる疾患、特に、学習、記憶、知覚及び/又は問題解決に主に影響を及ぼす疾患を指す。
【0086】
[0093]認知障害は、集中治療後の対象に生じることがある。認知障害は、老化の一部として、例えば軽度認知障害(MCI)として生じ得る。
【0087】
[0094]用語「認知」とは、知識、注意、長期記憶及び作業記憶、判断及び評価、推論及び「計算」、問題解決及び意思決定、言語の理解及び言語による創作を含む、一連の全ての精神的能力及び過程を指す。認知の水準及び改善は、情報処理速度、遂行機能及び記憶を評価するように設計された認知検査を含む、当該技術分野において既知である任意の好適な神経学的検査及び認知検査を用いて、当業者により容易に評価することができる。好適な試験の例としては、ミニメンタルステート検査(MMSE)、ケンブリッジ神経心理学的検査バッテリー(CANTAB)、アルツハイマー病評価尺度認知試験(ADAScog)、ウィスコンシンカード分類課題、言語及び図形流暢性検査並びにトレイルメイキングテスト、ウエクスラー記憶検査(WMS)、図形の即時再生及び遅延再生試験(immediate and delayedVisual Reproduction Test)(Trahan et al.Neuropsychology,1988 19(3)p.173-89)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)(Ivnik,RJ.et al.Psychological Assessment:A Journal of Consulting and Clinical Psychology,1990(2):p.304-312)、脳波記録(EEG)、脳磁図(MEG)、陽電子放出断層撮影法(PET)単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、コンピュータ断層撮影法並びに長期増強が挙げられる。
【0088】
[0095]EEG、脳の電気的活動度の測定は、様々なランドマークで頭皮に電極を配置し、脳信号を大きく増幅して記録することによって達成される。MEGは、電場に関係する磁場を測定するという点で、EEGに類似している。MEGは、神経系における同期波を含む自発的な脳活動を測定するために使用される。
【0089】
[0096]PETは、酸素利用及び/又はグルコース代謝の指標を提供する。この技術では、放射性ポジトロン放出トレーサーを投与し、脳によるトレーサーの取り込みは脳の活動度と相関する。これらのトレーサーはガンマ線を放出し、放出されたガンマ線は頭を取り囲むセンサによって検出され、これにより脳活動の3Dマップが得られる。トレーサーが脳によって取り込まれるとすぐに、局所的な脳血流量に応じ、放射能が検出される。活性化の間、脳の血流量及び神経のグルコース代謝の増大を、数秒以内に検出することができる。
【0090】
[0097]好適な分析はまた、神経心理学試験、臨床検査、及び個別の認知機能の低下についての訴え(例えば、主観的記憶喪失)に基づいてもよい。更に好適な検査は、運動、記憶及び注意、発作感受性、並びに社会的関わり合い及び/又は社会認識についての評価をベースにしてもよい。
【0091】
[0098]記憶障害は、記憶の保存、保持及び想起が阻害されるような、脳構造への神経損傷の結果である。記憶障害は、加齢に伴って進行することがあり(例えば、アルツハイマー病)、あるいは、例えば、頭部損傷から直接的に生じることもある。記憶障害のレベル及び改善は、アルツハイマー病評価尺度認知試験(ADAScog)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放出断層撮影法(PET)及び脳波記録(EEG)などの当該技術分野において知られている任意の好適な検査を使用して、当業者によって容易に評価することができる。
【実施例0092】
[0100]以下の非限定的な例は、本開示によって提供されるように、MCTを液体形式でタンパク質/食品マトリックスと予混合することによって作製される、MCT製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長する組成物の概念を開発及び支持する科学的データを提示する。
【0093】
[0101]代謝試験プロトコル
[0102]各参加者は、午前中にMCT製品を受領した。試験日は最低3日間の間隔を空けた。参加者は、自分が服用することになるるMCTの形態及び用量を知らされなかった。各代謝試験の前に、参加者は、12時間の終夜絶食を行った。代謝試験の朝に、血液サンプル採取用の静脈前腕カテーテルを設置し、ベースラインサンプルを採取して空腹時ケトンを評価した。カテーテルの設置及びベースラインの血液サンプルの採取後、MCT製品が供された。次いで、血液サンプルを、次の4時間にわたって30分毎に採取した。参加者は、できるだけリラックスした状態を保つこと、身体運動を行わないこと(ケトン生成を刺激する可能性があるため)、及び水のみを摂取することが求められた。
【0094】
[0103]ケトン分析(Current Dev.Nu.2017に基づく)
[0104]血漿ケトン濃度を、自動比色分析法によって評価した。簡潔に述べると、AcAcについては、25μLの血漿を、330μLの新鮮な試薬(トリス緩衝液(pH7.0)、100mM、20 114mMのオキサミン酸ナトリウム;0.15mMのNADH、及び1U/mLのβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ[BHBDH])と混合した。βOHBについては、試薬はトリス緩衝液(pH9.0;20mMのオキサミン酸ナトリウム、1mMのNAD、及び1U/mLのBHBDH)であった。トリス、オキサミン酸ナトリウム、DL-β-OHBナトリウム塩、Li-AcAc標準、及びNADはSigma(St.Louis,MO,USA)から、NADHはROCHE(Mannheim,Germany)から、BHBDHは東洋紡(大阪府)から、購入した。試薬の添加の15秒後~120秒後の340nmにおける吸光度の変化を、自動臨床化学分析器(Dimension Xpand Plus;Siemens,Deerfield,IL,USA)で測定した。アッセイは、10mM標準のLi-AcAc又はDL-β-OHBナトリウム塩の凍結アリコートから新たに希釈した標準で較正し、これは、-20℃でそれぞれ2ヶ月及び6ヶ月間安定である。各アッセイについて較正及び品質管理を行って、キットの精度を確保した(n=360の測定に基づいて、試験間の変動係数は5±1%であった)。
【0095】
[0105]結果として得られるT
k
1/2-その濃度になるまでの時間=消失中の[(Cmax-C0)/2+C0]
[0106]製品組成を
図2の表に示す。
図3は、10gのMCTの送達において製品Aと製品Bとを比較したグラフである。
図4は、製品Aと製品Bとを比較した表であり、
図5は、製品Cと製品Bとを比較する表であり、
図6は、C8/C10 MCFAに対する製品Aの薬物動態効果を示すグラフである。
【0096】
[0107]製品製造は、無菌の2段階プロセスで混合したMCTとラクトーフリースキムミルクとの混合物を用いるプロセスを使用することができる。得られたエマルションを、250mLのプラスチックボトルに詰め、ヒトによる消費の前に微生物試験を実施する。
【0097】
[0108]本明細書で説明されている現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び改変が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。かかる変更及び改変は、本発明の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、行うことができる。それゆえ、そのような変更及び改変は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
前記組成物の経口投与後の前記ケトンへの前記個体の曝露が、タンパク質及び/又は炭水化物の含有量がより少ないこと以外は同一に配合された別の組成物の経口投与によるものよりも大きい、請求項1又は2に記載の組成物。
前記組成物が、飲料、マヨネーズ、サラダドレッシング、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズスプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、液状エマルション、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、UHTプディング、低温殺菌プディング、ゲル、ゼリー、ヨーグルト、脂肪ベースのフィリング又は含水フィリングを有する食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、請求項1又は2に記載の組成物。
個体による食品製品の経口吸収に由来するケトンに血液が曝露されるのを延長するのに有効な組成物を製造する方法であって、前記方法が、中鎖トリグリセリド(MCT)と、MCT1.0g当たり少なくとも1.7gのタンパク質と、前記MCT1.0g当たり少なくとも4.7gの炭水化物とを混合する工程を含み、前記食品製品は、前記タンパク質の少なくとも一部と前記炭水化物の少なくとも一部と前記MCTの少なくとも一部とを含む食品マトリックスを含む、方法。
ケトンへの血液の長期曝露が有益である状態を治療又は予防するのに有効な組成物を製造する方法であって、前記方法は、中鎖トリグリセリド(MCT)と、前記MCT1.0g当たり少なくとも1.7gのタンパク質と、前記MCT1.0g当たり少なくとも4.7gの炭水化物とを混合する工程を含み、食品製品は、前記タンパク質の少なくとも一部と前記炭水化物の少なくとも一部と前記MCTの少なくとも一部とを含む食品マトリックスを含み、
前記状態が、てんかん、神経疾患、神経変性疾患、心不全、先天性代謝異常、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、癌、脳エネルギーの欠乏状態、片頭痛、記憶障害、加齢による記憶障害、脳損傷、脳卒中、アミロイド側索硬化症、多発性硬化症、認知障害、集中治療後認知障害、加齢による認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性代謝異常症、双極性障害、統合失調症、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。