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特開2024-96956増強された抗体指向性免疫応答を有するヒトナチュラルキラー細胞のサブセット
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  • 特開-増強された抗体指向性免疫応答を有するヒトナチュラルキラー細胞のサブセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096956
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】増強された抗体指向性免疫応答を有するヒトナチュラルキラー細胞のサブセット
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240709BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/17
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067406
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2020564137の分割
【原出願日】2019-05-14
(31)【優先権主張番号】62/671,358
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519290345
【氏名又は名称】インダプタ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ディピエッロ ギー
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス ゲイリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗体療法に対する応答を改良したナチュラルキラー細胞を含有する組成物を提供する。
【解決手段】CD16 158V+について表面要請であるナチュラルキラー細胞サブセットを含む組成物であって、該組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+NK細胞サブセットを含み、一態様として、該サブセットが、FcRγ鎖を発現せず、KIRについて表面陽性であり、かつ/またはNkp30および/もしくはNkp46について表面陰性であるかもしくは低発現である、組成物が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD16 158V+について表面陽性であるナチュラルキラー(NK)細胞サブセットを含む、組成物であって、該組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+NK細胞サブセットを含む、前記組成物。
【請求項2】
CD16 158V+NK細胞サブセットが、FcRγ鎖を発現せず(CD16 158V+/g-)、KIRについて表面陽性であり、かつ/またはNkp30および/もしくはNkp46について表面陰性であるかもしくは低発現である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
CD16 158V+について表面陽性でありかつFcRγ鎖の発現を欠いているナチュラルキラー(NK)細胞サブセット(CD16 158V+/g-)を含む、組成物であって、該組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+/g-NK細胞サブセットを含む、前記組成物。
【請求項4】
CD16 158V+が、SEQ ID NO:11に示す配列を含むか、またはSEQ ID NO:11に対して少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を呈しかつ158V+多型を含む配列を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
NK細胞サブセットが、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
NK細胞サブセットがNKG2Cについて表面陽性である、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
組成物の体積が少なくとも10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLまたは少なくとも約10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLであり、かつ/または組成物が1×105から1×108個の細胞/mLを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
凍結保護物質をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
NK細胞サブセットが、対象から取得された初代NK細胞である、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記対象がヒトである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
NK細胞を濃縮するための方法であって、
(a)CD16 158V+NK細胞遺伝子型を有すると同定された対象からNK細胞またはそのサブセットを単離する工程、および
(b)単離されたNK細胞またはそのサブセットを、細胞を増大させるための条件下で培養し、それによって前記対象からのNK細胞またはそのサブセットを濃縮する工程
を含む、前記方法。
【請求項16】
工程(a)の前に、CD16 158V+NK細胞遺伝子型の存在について対象をスクリーニングする工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
NK細胞またはそのサブセットが、リンパ球を含む細胞の集団から単離される、請求項15または請求項16記載の方法。
【請求項18】
細胞の集団が、末梢血単核球(PBMC)試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
FcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)を含むかまたはFcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)が濃縮されているNK細胞サブセットが、前記対象から単離される、請求項15~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
NK細胞サブセットが、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、請求項15~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、請求項15~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
NK細胞またはそのサブセットがNKG2Cについて表面陽性である、請求項15~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
細胞が、フィーダー細胞の存在下、または1種もしくは複数種のサイトカイン、任意でIL-2、IL-15および/またはIL-7の存在下で、培養される、請求項15~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
培養前の単離されたNK細胞の数と比較して、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上の細胞の増大を達成するために、NK細胞が、ある期間にわたって培養される、請求項15~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
単離されたNK細胞が、7~28日間、任意で約14日、15日、16日、17日もしくは18日、19日、20日、または21日間、培養される、請求項15~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
治療有効量を達成するために、単離された細胞が培養される、請求項15~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞の、濃縮されたNK細胞の数を達成するために、単離された細胞が培養される、請求項15~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
単離された細胞または濃縮された細胞のHLAタイピングを行う工程をさらに含む、請求項15~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
凍結保護物質の存在下で、細胞を凍結保存するおよび/または細胞を製剤化する工程をさらに含む、請求項15~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
NK細胞またはそのサブセットを単離する前に、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2および/またはCCL5を前記対象に投与する工程を含む、請求項15~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記対象がヒトである、請求項15~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記対象が健康である、請求項15~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項記載の方法によって産生される濃縮されたNK細胞を含む、組成物。
【請求項35】
薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
凍結保護物質を含む、請求項34または請求項35記載の組成物。
【請求項37】
無菌である、請求項1~14および請求項34~36のいずれか一項記載の組成物。
【請求項38】
請求項1~14および請求項34~37のいずれか一項記載の組成物と、疾患の処置のための追加の作用物質とを含む、キット。
【請求項39】
前記組成物と疾患または状態の処置のための追加の作用物質との投与に関する説明書をさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
請求項1~14および請求項34~37のいずれか一項記載の組成物と、
疾患の処置のための追加の作用物質との併用治療における該組成物の投与に関する説明書と
を含む、キット。
【請求項41】
追加の作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、請求項38~40のいずれか一項記載のキット。
【請求項42】
抗体が、腫瘍関連抗原を認識するか、またはそれに特異的に結合する、請求項41記載のキット。
【請求項43】
抗体が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子(scatter factor)受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン(cytokerain)、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンを認識するか、またはそれに結合する、請求項41または請求項42記載のキット。
【請求項44】
抗体が完全長抗体であり、かつ/またはFcドメインを含む、請求項41~43のいずれか一項記載のキット。
【請求項45】
請求項1~14および請求項34~37のいずれか一項記載の組成物を、その必要がある個体に投与する工程を含む、疾患または状態を処置する方法。
【請求項46】
投与する工程が、前記個体への1×108もしくは約1×108から1×1010個の細胞/m2、または1×106もしくは約1×106から1×1010個のNK細胞/kgの投与を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
追加の作用物質を投与する工程をさらに含む、請求項45または請求項46記載の方法。
【請求項48】
追加の作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
抗体が腫瘍関連抗原を認識する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
抗体が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンを認識するか、またはそれに特異的に結合する、請求項48または請求項49記載の方法。
【請求項51】
抗体がFcドメインを含み、かつ/または完全長抗体である、請求項48~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
追加の作用物質と前記組成物とが逐次的に投与される、請求項47~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
追加の作用物質が前記組成物の投与に先だって投与される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
追加の作用物質と前記組成物とが同時に投与される、請求項47~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記疾患または状態が、炎症状態、感染症、およびがんからなる群より選択される、請求項45~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記疾患または状態が感染症であり、かつ該感染症がウイルス感染症または細菌感染症である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記疾患または状態ががんであり、かつ該がんが白血病またはリンパ腫である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記疾患または状態ががんであり、かつ該がんが固形腫瘍を含む、請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記個体がヒトである、請求項45~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記組成物中のNK細胞が前記個体にとって同種異系である、請求項45~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記組成物中のNK細胞が前記対象にとって自家である、請求項45~59のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年5月14日に出願された「SUBSETS OF HUMAN NATURAL KILLER CELLS WITH ENHANCED ANTIBODY DIRECTED IMMUNE RESPONSES」と題する米国仮出願第62/671,358号に基づく優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組入れ
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2019年5月14日に作成された776032000340SeqList.txtという名称のファイルとして提供され、サイズは7.04キロバイトである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、増強された抗体指向性免疫応答(antibody-directed immune response)を有する、ナチュラルキラー(NK)細胞の特殊なサブセットを含有する組成物を提供する。本組成物は、疾患関連組織または疾患関連細胞、例えば腫瘍細胞または感染細胞に結合することができる抗体との併用を含む、がんなどの疾患および状態の処置に有用である。
【背景技術】
【0004】
背景
抗体ベースの治療法は、がんおよび他の疾患適応の処置にしばしば用いられるようになっている。抗体療法に対する応答は、典型的には、腫瘍細胞に対するこれらの抗体の直接的阻害効果(例えば成長因子受容体の阻害とそれに続くアポトーシスの誘導)に集中していたが、これらの抗体のインビボ効果はもっと複雑であると思われ、それには宿主免疫系が関与しうる。ナチュラルキラー(NK)細胞は、抗原保持細胞に結合した抗体のFc部分にFc受容体(CD16;FcγRIII)が結合した時に抗体依存性細胞性細胞傷害を媒介する免疫エフェクター細胞である。抗体療法に対する応答を改良するには、改良された治療法が必要である。そのようなニーズを充足する態様が本明細書において提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
増強された抗体指向性免疫応答を呈する、NK細胞の特殊なサブセットが、本明細書において提供される。いくつかの態様では、前記NK細胞サブセットが濃縮された組成物が提供される。いくつかの態様では疾患または状態を処置するために、前記組成物を抗体または他のFcタンパク質と組み合わせて、例えば疾患もしくは状態を処置するための抗体もしくはFcタンパク質、または疾患もしくは状態と関連する抗原もしくはタンパク質に結合するかそれを認識する抗体もしくはFcタンパク質と組み合わせて、対象に投与することができる。いくつかの態様において、提供される方法は、通常のNK細胞が投与される方法と比べて、または抗体もしくはFcだけが投与される方法と比べて、改良された応答を達成する。いくつかの態様において、応答の増加は、特殊なNK細胞によるIgG抗体のFcフラグメントのアフィニティーの増加に起因し、これは、増強された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)をもたらすことができ、よって前記抗体またはタンパク質が標的とする細胞、例えば腫瘍細胞の増加した殺傷をもたらすことができる。いくつかの態様において、前記特殊なNK細胞は、158V+多型を有するCD16について表面陽性であり、かつ/またはFcRγ鎖の発現を欠いている。
【0006】
CD16 158V+について表面陽性であるナチュラルキラー(NK)細胞サブセットを含む組成物であって、組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+NK細胞サブセットを含む組成物が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞サブセットはFcRγ鎖を発現せず(CD16 158V+/g-)、KIRについて表面陽性であり、かつ/またはNkp30および/もしくはNkp46について表面陰性であるかもしくは低発現である。
【0007】
CD16 158V+について表面陽性でありかつFcRγ鎖の発現を欠いている(g-)ナチュラルキラー(NK)細胞サブセット(CD16 158V+/g-)を含む組成物であって、組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+/g-NK細胞サブセットを含む組成物が、本明細書において提供される。
【0008】
提供される態様のいずれかの一部において、CD16 158V+は、SEQ ID NO:11に示す配列を含むか、またはSEQ ID NO:11に対して少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を呈しかつ158V+多型を含む配列を含む、表面受容体である。
【0009】
提供される態様のいずれかの一部において、組成物のNK細胞サブセットは、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である。提供される態様のいずれかの一部において、組成物のNK細胞サブセットは、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である。提供される態様のいずれかの一部において、組成物のNK細胞サブセットは、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である。
【0010】
提供される態様のいずれかの一部において、組成物のNK細胞サブセットは、NKG2Cについて表面陽性である。
【0011】
提供される態様のいずれかの一部において、組成物は、105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞の前記NK細胞サブセットが存在している細胞を含む。いくつかの態様において、組成物の体積は、少なくとも10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLまたは少なくとも約10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLであり、かつ/または組成物は、1×105から1×108個の細胞/mLである濃度のNK細胞サブセットを含む。
【0012】
任意のそのような態様の一部において、組成物は薬学的に許容される担体を含有する。いくつかの態様において、組成物は凍結保護物質を含有する。
【0013】
任意のそのような態様の一部において、組成物中に存在するNK細胞サブセットは、対象から取得された初代NK細胞を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0014】
NK細胞を濃縮するための方法であって、(a)CD16 158V+NK細胞遺伝子型を有すると同定された対象からNK細胞またはそのサブセットを単離する工程、および(b)単離されたNK細胞またはそのサブセットを、細胞を増大させるための条件下で培養し、それによって対象からのNK細胞またはそのサブセットを濃縮する工程を含む方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、本方法は、工程(a)の前に、CD16 158V+NK細胞遺伝子型の存在について対象をスクリーニングまたは同定する工程を含む。
【0015】
任意のそのような態様の一部において、NK細胞またはそのサブセットは、リンパ球を含む細胞の集団から単離される。いくつかの態様において、細胞の集団は、末梢血単核球(PBMC)試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物を含む。
【0016】
任意のそのような態様の一部において、本方法は、FcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)を含むかまたはFcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)が濃縮されているNK細胞サブセットを、対象から単離する工程を含む。いくつかの態様において、NK細胞サブセットは、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である。いくつかの態様において、NK細胞サブセットは、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である。いくつかの態様において、NK細胞サブセットは、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である。いくつかの態様において、NK細胞またはそのサブセットは、NKG2Cについて表面陽性である。
【0017】
そのような態様のいずれかの一部において、本方法は、NK細胞またはそのサブセットを単離する前に、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2および/またはCCL5を対象に投与する工程を含む。
【0018】
任意のそのような態様の一部において、細胞は、フィーダー細胞の存在下、または1種もしくは複数種のサイトカイン、任意でIL-2、IL-15および/またはIL-7の存在下で、培養される。いくつかの態様では、培養前の単離されたNK細胞の数と比較して、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上の細胞の増大を達成するために、NK細胞が、ある期間にわたって培養される。いくつかの態様において、単離されたNK細胞は、7~28日間、任意で約または少なくとも約14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日間、培養される。いくつかの態様では、NK細胞またはそのサブセットの治療有効量を達成するために、単離された細胞が培養される。いくつかの態様では、105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞の、濃縮されたNK細胞またはそのサブセットの数を達成するために、単離された細胞が培養される。
【0019】
任意のそのような態様の一部において、本方法は、単離または濃縮された細胞のHLAタイピングを行う工程を、さらに含む。いくつかの態様において、本方法は、凍結保護物質の存在下で、細胞を凍結保存するおよび/または細胞を製剤化する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、結果として得られた濃縮された細胞は、疾患または障害を処置するために対象に投与される。任意のそのような態様の一部において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は健康である。
【0020】
上記方法のいずれかによって産生される濃縮されたNK細胞またはそのサブセットを含有する組成物も提供される。いくつかの態様において、組成物は薬学的に許容される賦形剤を含有する。いくつかの態様において、組成物は凍結保護物質を含有する。
【0021】
任意のそのような態様の一部において、組成物は無菌である。
【0022】
上記態様のいずれかの組成物と、疾患の処置のための追加の作用物質とを含有するキットが、本明細書において提供される。いくつかの態様において、キットは、組成物と疾患または状態の処置のための追加の作用物質との投与に関する説明書を、さらに含む。
【0023】
提供される態様のいずれかの組成物と、疾患の処置のための追加の作用物質との併用治療における前記組成物の投与に関する説明書とを含有するキットも、本明細書において提供される。
【0024】
そのような態様のいずれかの一部において、追加の作用物質は抗体またはFc融合タンパク質である。いくつかの態様において、抗体は腫瘍関連抗原を認識するか、またはそれに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子(scatter factor)受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン(cytokerain)、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンを認識するか、またはそれに結合する。いくつかの態様において、抗体は完全長抗体であり、かつ/またはFcドメインを含む。
【0025】
上記態様のいずれかの組成物を、その必要がある個体または対象に投与することによって、疾患または状態を処置する方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、本方法は、個体に1×108または約1×108から1×1010個の細胞/m2を投与する工程、または1×106もしくは約1×106から1×1010個のNK細胞/kgを投与する工程を含む。
【0026】
任意のそのような態様の一部において、本方法は、追加の作用物質を投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、追加の作用物質は、抗体またはFc融合タンパク質である。いくつかの態様において、抗体は腫瘍関連抗原を認識する。いくつかの態様において、抗体は、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンを認識するか、またはそれに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体はFcドメインを含み、かつ/または完全長抗体である。
【0027】
任意のそのような態様の一部では、追加の作用物質と前記組成物とが逐次的に投与される。いくつかの態様では、追加の作用物質が前記組成物の投与に先だって投与される。いくつかの態様では、追加の作用物質と前記組成物とが同時に投与される。
【0028】
任意のそのような態様の一部において、疾患または状態は、炎症状態、感染症、およびがんからなる群より選択される。いくつかの態様において、感染症はウイルス感染症または細菌感染症である。いくつかの態様において、がんは白血病またはリンパ腫である。いくつかの態様において、がんは固形腫瘍である。
【0029】
任意のそのような態様の一部において、個体はヒトである。任意のそのような態様の一部において、投与される、組成物中のNK細胞は、対象にとって自家である。任意のそのような態様の一部において、投与される、組成物中のNK細胞は、個体にとって同種異系である。いくつかの態様において、細胞は同じHLA型の対象に投与される。いくつかの態様では、HLA適合ドナーからの細胞が対象に投与される。
【0030】
いくつかの態様において、本方法は、対象に細胞を投与する前に、細胞を融解する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】5:1のE:T比での、SW-480/セツキシマブ、SKOV3/セツキシマブ、SKOV3/トラスツズマブ、MM.1S/ダラツムマブ、およびMM.1S/エロツズマブに対する、g-NK、通常のNK細胞、および158V g-NKのADCC活性を表す。値は平均±標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
増強された抗体指向性免疫応答を有するヒトナチュラルキラー(NK)細胞のサブセットを含有する組成物が、そのようなサブセットが濃縮された組成物を含めて、本明細書において提供される。いくつかの態様において、提供される組成物は、CD16(FcγRIII)遺伝子の158番目のアミノ酸位置に、バリン(V)でフェニルアラニン(F)が置換されている、特別な遺伝子多型を保持するNK細胞(158V+という)を含有するか、またはそのようなNK細胞が濃縮されている。いくつかの態様において、提供される組成物は、158V+を含有するか、または158V+が濃縮されていて、かつFcRγ欠損NK細胞(g-NKという)が濃縮されており、これにより、CD16 158V+/g-NK細胞を含有するか、またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮された組成物が提供される。提供される組成物を、対象に、疾患または状態を処置するための抗体と組み合わせて投与するための方法も提供される。
【0033】
いくつかの態様において、提供される組成物はヒトNK細胞を含み、組成物中のNK細胞の、または組成物の全細胞の、40%超もしくは約40%超、50%超もしくは約50%超、60%超もしくは約60%超、70%超もしくは約70%超、80%超もしくは約80%超、90%超もしくは約90%超、またはそれ以上が、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞である。
【0034】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、サイトカインおよびケモカインの分泌による、そして細胞傷害性顆粒の放出による、抗ウイルス免疫および抗がん免疫の媒介にとって重要な自然リンパ球である(Vivier et al.Science 331(6013):44-49(2011)、Caligiuri,Blood 112(3):461-469(2008)、Roda et al.,Cancer Res.66(1):517-526(2006))。NK細胞は、リンパ球の3番目に大きい集団を構成するエフェクター細胞であり、腫瘍細胞および病原体感染細胞に対する宿主の免疫監視にとって重要である。しかし、Tリンパ球およびBリンパ球とは異なり、NK細胞は、生殖細胞系にコードされた活性化受容体を用いる標的認識については限られた能力しか有しないと考えられている(Bottino et al.,Curr Top Microbiol Immunol.298:175-182(2006)、Stewart et al.,Curr Top Microbiol Immunol.298:1-21(2006))。
【0035】
NK細胞の活性化は、直接的な腫瘍細胞殺傷で見られるように、標的細胞上のリガンドへのNK細胞受容体の直接的結合を介して起こるか、または抗原保持細胞に結合した抗体のFc部分への結合によるFc受容体(CD16、CD16aまたはFcγRIIIaとしても公知である)の架橋を介して起こることができる。活性化すると、NK細胞はサイトカインおよびケモカインを豊富に産生し、同時に強力な細胞溶解活性を呈する。NK細胞は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によって腫瘍細胞を殺傷することができる。いくつかの事例では、ADCCは、細胞の表面に結合しているIgG1またはIgG3抗体をNK細胞表面の受容体(CD16など)が認識した時に、トリガーされる。これは、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞質顆粒の放出をトリガーし、それが標的細胞の死につながる。NK細胞は、IgG被覆標的細胞を認識する活性化Fc受容体CD16を発現するので、標的認識が広くなっている(Ravetch&Bolland,Annu Rev Immunol.19:275-290(2001)、Lanier Nat.Immunol.9(5):495-502(2008)、Bryceson&Long,Curr Opin Immunol.20(3):344-352(2008))。ADCCおよび抗体依存性サイトカイン/ケモカイン産生は主としてNK細胞によって媒介される。
【0036】
NK細胞上に発現して抗体依存性応答(NK細胞媒介性ADCCなど)に関与するCD16に加えて、CD16はグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型としても存在する(FcγRIIIBまたはCD16Bとしても公知である)。本明細書でいうCD16はNK細胞上に発現するCD16a型に関し、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型は指さないものとする。CD16受容体は、アダプターであるTCR-CD3複合体のζ鎖(CD3ζ)および/またはFcRγ鎖と会合して、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を介したシグナル伝達を行うことができる。一定の局面において、CD16エンゲージメント(CD16架橋)は、CD16関連アダプター鎖FcRγまたはCD3ζの一方または両方によって生成する細胞内シグナルを介して、NK細胞応答を開始する。CD16のトリガリングはγ鎖またはζ鎖のリン酸化につながり、次にそれがチロシンキナーゼ、sykおよびZAP-70を動員して、迅速かつ強力なエフェクター機能につながるシグナル伝達のカスケードを開始する。最も周知のエフェクター機能は、抗体依存性細胞性細胞傷害のプロセスによって近くの標的細胞を殺傷するための、毒性タンパク質を運ぶ細胞質顆粒の放出である。CD16架橋は、サイトカインおよびケモカインの産生ももたらし、次にそれが一連の免疫応答を活性化し、結集させる。
【0037】
サイトカインおよびケモカインのこの放出は、インビボでのNK細胞の抗がん活性に役割を果たすことができる。NK細胞は、その細胞質中に、パーフォリンおよびプロテアーゼ(グランザイム)を含有する小さな顆粒も有する。NK細胞から放出されると、パーフォリンは、標的とする細胞の細胞膜に小孔を形成し、グランザイムおよび関連分子はその小孔を通って進入して、アポトーシスを誘導することができる。NK細胞が標的細胞の壊死ではなくアポトーシスを誘導するという事実は重要である-ウイルス感染細胞の壊死はビリオンを放出することになるだろうが、アポトーシスなら細胞内でのウイルスの破壊につながる。
【0038】
大多数のヒトが、IgG1抗体に対して比較的低いアフィニティーを有するCD16を発現する。しかし、CD16遺伝子中に一塩基多型(SNP rs396991)、すなわち成熟型(プロセシングされた)タンパク質の位置158におけるフェニルアラニン(F)の、バリン(V)によるアミノ酸(aa)置換(F158V、本明細書では158V+とも呼ぶ)をもたらすヌクレオチド526[チミジン(T)→グアニン(G)]を保持する個体からのNK細胞は、IgG1抗体に対して実質的に高いアフィニティーで会合し、よりロバストなNK細胞媒介性ADCC応答を開始させる能力を有することが見いだされている(Mellor et al.(2013)Journal of Hematology&Oncology,6:1、Musolino et al.(2008)Journal of Clinical Oncology,26:1789-1796およびHatjiharissi et al.(2007)Blood,110:2561-2564)。
【0039】
FcRγ鎖欠損NK細胞(g-NKともいう)のサブセットがロバストなADCC応答を媒介できることも見いだされている(例えば特許出願番号US2013/0295044参照)。応答増加の機序は、FcRγの発現に影響を及ぼすエピジェネティック修飾の変化によるものでありうる。g-NK細胞は、シグナリングアダプターζ鎖を豊富に発現するが、シグナリングアダプターγ鎖の発現は欠失している。通常のNK細胞と比較すると、これらのγ欠損g-NK細胞は、抗体によって活性化された時に、劇的に増強された活性を呈する。例えばg-NK細胞は、CD16の抗体媒介性架橋によって、または抗体被覆腫瘍細胞によって、活性化されうる。いくつかの局面においてg-NK細胞は、γ鎖を発現する通常のNK細胞よりも、多量のサイトカイン(例えばIFN-γまたはTNF-α)およびケモカイン(例えばMIP-1α、MIP-1βおよびRANTES)を産生し、かつ/またはより高度な脱顆粒応答を示す。g-NK細胞では、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害機構の一構成要素であるグランザイムBの発現量が高くなる。そのうえ、g-NK細胞は通常のNK細胞と比較して寿命が長く、それらの存在は長期間維持される。いくつかの態様において、g-NK細胞は機能的にも表現型的にも安定である。
【0040】
いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞およびCD16 158V+/g-NK細胞は、ADCC応答の誘発に関して、通常のNK細胞、例えば158V+多型を含有せずかつ/またはγ鎖を欠損していないNK細胞よりも効果的である。いくつかの事例では、ADCCは、抗がん抗体を含む治療用抗体の作用機序である。いくつかの局面では、NK細胞を投与することによる細胞治療を、治療目的および関連する目的のための抗体と合わせて使用することができる。提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮された組成物と、抗体、例えば抗がん抗体との併用投与を伴う方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の抗体指向性ターゲティングは、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞サブセットの改良されたアフィニティー、細胞傷害性および/またはサイトカイン媒介性エフェクター機能により、患者にとって改良されたアウトカムにつながる。
【0041】
いくつかの態様において、g-NK細胞は、FcRγを発現するナチュラルキラー細胞よりも有意に多量のサイトカインを産生する。別の態様において、サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、またはそれらの組合せである。一態様において、g-NK細胞は有意に多量のケモカインを産生する。一態様において、ケモカインは、MIP-1α、MIP-1βまたはそれらの組合せである。別の態様において、g-NK細胞は、Fc受容体CD16を介して刺激されると、サイトカインまたはケモカインを産生する。
【0042】
本明細書において言及される参考文献は、特許出願、特許公報ならびに科学文献およびデータベースを含めてすべて、個々の参考文献が参照により本明細書に組み入れられることを具体的かつ個別に示した場合と同じ程度に、あらゆる目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
限定としてではなく、明快な開示のために、詳細な説明を以下のサブセクションに分割する。本明細書において使用されるセクション見出しには構成上の目的しかなく、記載されている主題を限定すると解釈してはならない。
【0044】
I.定義
別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される専門用語、表記ならびに他の技術的および科学的な用語および術語はすべて、本願請求項の対象が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有するものとする。場合によっては、一般に理解されている意味を持つ用語を、明確な記述のためにかつ/またはすぐに参照できるように、本明細書において定義するが、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当技術分野において一般に理解されているものとの実質的相違を表すと解釈されるべきではない。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「1つの分子(a molecule)」といえば、それは任意で、2つ以上のそのような分子の組合せを包含することになる。
【0046】
本明細書において使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者にはすぐにわかるそれぞれの値にとっての通常の誤差範囲を指す。本明細書において、ある値またはパラメータについて「約」という場合は、その値またはパラメータそのものに向けられる態様が包含され(そして記載され)る。
【0047】
本明細書に記載される本発明の局面および態様は、局面および態様「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」を包含すると理解される。
【0048】
本明細書でいう「任意の」または「任意で」とは、その後に記載される事象または状況が起こることまたは起きないこと、およびその記載は、該事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを包含することを意味する。例えば、任意で置換された基とは、その基が無置換であることまたは置換されていることを意味する。
【0049】
本明細書でいう「抗体」とは、天然物であるか、部分的にまたは全体が合成的に、例えば組換え的に産生されたものであるかを問わず、免疫グロブリンおよび免疫グロブリンフラグメントを指し、その免疫グロブリン分子の可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域のうち、抗原結合部位を形成するのに十分でありかつ集合した時に抗原に特異的に結合するのに十分である部分を少なくとも含有する、それらの任意のフラグメントを含む。したがって抗体は、免疫グロブリン抗原結合ドメイン(抗体結合部位)に相同なまたは実質的に相同な結合ドメインを有する任意のタンパク質を包含する。通例、抗体は、最小限、可変重(VH)鎖および/または可変軽(VL)鎖のすべてまたは少なくとも一部を含む。一般に、VHとVLは互いにペアリングして抗原結合部位を形成するが、いくつかの事例では、単一のVHドメインまたはVLドメインでも抗原結合には十分である。抗体は定常領域の全部または一部も含むことができる。本明細書でいう抗体には、完全長抗体および抗原結合フラグメントが含まれる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は本明細書では「抗体」と相互可換的に使用される。
【0050】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」という用語は、抗体フラグメントではなく、実質上無傷の形態にある抗体を指すために相互可換的に使用される。完全長抗体は、典型的には2つの完全長重鎖(例えばVH-CH1-CH2-CH3またはVH-CH1-CH2-CH3-CH4)と2つの完全長軽鎖(VL-CL)とヒンジ領域とを有する抗体、例えば抗体分泌B細胞によって哺乳動物種(例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類など)から産生される抗体、および同じドメインを持つ合成的に産生された抗体である。特に全抗体は、Fc領域を含めて重鎖および軽鎖を持つものである。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えばヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体でありうる。いくつかの事例において、インタクト抗体は、1種または複数種のエフェクター機能を有しうる。
【0051】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部、インタクト抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体フラグメントとして、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド連結Fv(dsFv)、Fdフラグメント、Fd'フラグメント、ダイアボディ、線状抗体(米国特許第5,641,870号の実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]参照)、一本鎖抗体分子、例えば一本鎖Fv(scFv)または一本鎖Fab(scFab)、上記のいずれかの抗原結合フラグメント、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本明細書に関して、抗体フラグメントは、典型的には、NK細胞の表面でCD16をエンゲージまたは架橋するのに十分なものを含む。
【0052】
「自家」という用語は、個体自身の組織内に起源を持つまたは個体自身の組織から採取された細胞または組織を指す。例えば、NK細胞の自家移入または自家移植では、ドナーとレシピエントが同じ人物である。
【0053】
「同種異系」という用語は、同じ種に属するまたは同じ種から取得されるが遺伝的には異なり、いくつかの事例では、それゆえに免疫学的に不適合である、細胞または組織を指す。典型的には「同種異系」という用語は、ドナーから同じ種のレシピエントに移植される細胞を規定するために使用される。
【0054】
「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(例えばmRNAまたは他のRNA転写産物などに)転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが、次いでペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写産物とコードされているポリペプチドとを「遺伝子産物」と総称しうる。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含みうる。
【0055】
タンパク質または核酸に関して「異種」という用語は、異なる遺伝子源に由来するタンパク質または核酸を指す。例えば、ある細胞にとって異種であるタンパク質または核酸は、それを発現させる細胞とは異なる生物または個体に由来する。
【0056】
本明細書において使用される「導入する」という用語は、インビトロまたはインビボのどちらかで細胞中にDNAを導入するさまざまな方法を包含し、そのような方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション(例えばエレクトロポレーション)および感染が含まれる。ベクターは、細胞中にDNAコード分子(DNA encoding molecule)を導入するのに役立つ。考えうるベクターとしてプラスミドベクターおよびウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、または他のベクター、例えばアデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ベクターが挙げられる。
【0057】
「組成物」という用語は、細胞または抗体を含む2種以上の産物、物質または化合物の任意の混合物を指す。これは、水性、非水性またはそれらの任意の組合せである、溶液、懸濁液、液状物、粉末、ペーストでありうる。調製物は、一般的には、活性成分(例えば抗体)の生物学的活性が有効であることを許すような形態にある。
【0058】
細胞組成物に関して「濃縮された」という用語は、細胞タイプまたは細胞集団の数またはパーセンテージが、同じ体積の出発組成物、例えば対象から直接取得または単離された出発組成物における当該細胞タイプの数またはパーセンテージと比較して増加している組成物を指す。この用語は、組成物からの他の細胞、細胞タイプまたは細胞集団の完全な除去を必要とせず、そのように濃縮された細胞が濃縮組成物中に100%存在することを必要とせず、100%近く存在することさえ必要としない。
【0059】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0060】
本明細書において使用される組合せとは、2種以上のアイテムの間の任意の関連を指す。組合せは、2種以上の別々のアイテム、例えば2種の組成物または2種の収集物であることができ、それらの混合物、例えば2種以上のアイテムの単一の混合物であるか、またはそれらの任意の変形であることもできる。組合せの要素は一般的には機能的に関連または関係する。
【0061】
本明細書でいうキットとは、梱包された組合せであって、任意で他の要素、例えば追加の作用物質と、限定するわけではないが例えば治療的使用などの目的でのその組合せまたはその要素の使用に関する説明書とを含む。
【0062】
本明細書において使用される「処置」または「処置する」という用語は、臨床病理の経過中に処置される個体または細胞の自然の経過を変化させるように計画された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行の速度を減じること、疾患状態を改善または軽減すること、および寛解または予後の改良が挙げられる。個体は、例えば障害(例えば好酸球媒介性疾患)に関連する1つまたは複数の症状が和らぐか除去されるのであれば、うまく「処置」されたことになる。例えば個体は、処置が疾患を患っている者の生活の質を向上させ、疾患を処置するのに必要な他の薬物投与の用量を減少させ、疾患の再発の頻度を低減し、疾患の重症度を下げ、疾患の発生または進行を遅延させ、かつ/または個体の生存期間を延長するのであれば、うまく「処置」されたことになる。
【0063】
「有効量」とは、少なくとも、必要な投薬量および期間において、治療結果または予防結果を含む所望の効果または表示した効果を達成するのに有効な量を指す。有効量は1回または複数回で提供することができる。「治療有効量」とは、少なくとも、特定障害の測定可能な改善を達成するのに必要な細胞の最小の用量である。いくつかの態様において、治療有効量は、動物におけるがん、ウイルス感染症、微生物感染症、または敗血症性ショックに関連する重症度、持続時間および/または症状を低減する組成物の量である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子に応じて変動しうる。治療有効量は、抗体の治療上有益な効果が抗体のいかなる毒性効果または有害効果をも凌ぐ量でもありうる。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するのに、必要な投薬量および期間において、有効な量を指す。予防用量は罹患前の対象または疾患の初期段階にある対象に使用されるので、必ずというわけではないが典型的には、予防有効量は治療有効量よりも少ない場合がある。
【0064】
本明細書でいう「個体」または「対象」は哺乳動物である。処置に関して、「哺乳動物」としては、ヒト、家畜および農用動物、ならびに動物園の動物、スポーツ動物またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどが挙げられる。いくつかの態様において、個体または対象はヒトである。
【0065】
II.ナチュラルキラーサブセットを含有する組成物を取得しかつ調製するための方法
初代CD16 158V+NK細胞もしくはCD16 158V+/g-NK細胞を含有するかそれらが濃縮された組成物を調製するための方法が提供される。その結果得られる、初代CD16 158V+またはCD16 158V+/g-NK細胞サブセットを含有するかそれらが濃縮された組成物も提供される。いくつかの態様において、提供される初代細胞は、対象、例えばヒト対象などの哺乳動物対象から濃縮される。いくつかの態様では、初代ヒトCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含有するかそれらが濃縮された組成物が提供される。
【0066】
いくつかの態様において、対象は健康な対象である。いくつかの態様において、対象は、がんなどの状態の疾患を有する対象である。いくつかの態様において、初代CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含有するかそれらが濃縮された組成物は、同種養子細胞療法または自家養子細胞療法のために投与することができる。
【0067】
いくつかの態様において、NK細胞を濃縮するための方法は、(a)CD16 158V+NK細胞遺伝子型を有すると同定された対象からNK細胞またはそのサブセットを単離する工程、および(b)単離されたNK細胞またはそのサブセットを、細胞を増大させるための条件下で培養し、それによって対象からのNK細胞またはそのサブセットを濃縮する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、工程(a)の前に、CD16 158V+NK細胞遺伝子型の存在について対象をスクリーニングする工程を含む。
【0068】
いくつかの態様において、対象は、CD16 158V+について、すなわちCD16におけるV158F多型(SNP rs396991)の存在について、スクリーニングされる。いくつかの態様において、ゲノムDNAは、対象からの生物学的試料、例えば血液試料または骨髄試料から抽出される。いくつかの態様において、試料は血液細胞、例えば末梢血単核球であるか、それらを含む。いくつかの態様において、試料は健康なドナー対象からの試料である。試料からDNAを抽出するための任意の方法を使用することができる。例えば核酸は、試料、例えば細胞から、グアニジウムチオシアネート-フェノール-クロロホルム抽出(Chomocyznski et al.(1987)Anal.Biochem.162:156)などの標準的技法を使って、容易に単離することができる。WizardゲノムDNA精製キット(Promega、ウィスコンシン州マディソン)など、ゲノムDNAを抽出するための市販のキットも、容易に入手することができる。
【0069】
ジェノタイピングは任意の適切な試料で行うことができる。本明細書に記載する態様のいずれにおいても、ジェノタイピング反応は、例えばパイロシーケンシング反応、DNAシーケンシング反応、MassARRAY MALDI-TOF、RFLP、アレル特異的PCR、リアルタイムアレル識別、またはマイクロアレイであることができる。いくつかの態様において、ゲノムDNAのPCRベースの技法、例えばRT-PCRは、多型に関してアレル特異的なプライマーを使って実行される。試料中の標的核酸配列を増幅するためのPCR法は当技術分野では周知であり、例えばInnis et al.(eds.)PCR Protocols(Academic Press,NY 1990)、「PCR:A Practical Approach」(McPherson et al.(eds.)IRL Press,Oxford)のTaylor(1991)「Polymerase chain reaction:basic principles and automation」、Saiki et al.(1986)Nature 324:163、ならびに米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号および同第4,889,818号などに記載されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0070】
158V+多型を検出するためのプライマーは公知であるか、当業者であれば容易に設計することができる。例えば国際公開公報WO2012/061814、Kim et al.(2006)Blood,108:2720-2725、Cartron et al.(2002)Blood,99:754-758、Koene et al.(1997)Blood,90:1109-1114を参照されたい。いくつかの態様では、ネステッドプライマーを使ってPCRを行った後、アレル特異的制限酵素消化を行うことができる。いくつかの態様において、第1PCRプライマーは核酸配列
を含み、一方、第2PCRプライマーは
である。これは、いくつかの事例において、アレルの性質に依存して、94bpフラグメントを生成させる。いくつかの態様において、プライマーペアは、
に示す核酸配列を含む。いくつかの態様において、プライマーペアは、
に示す核酸配列を含む。いくつかの態様において、プライマーペアは、
に示す核酸配列を含む。
【0071】
CD16aのゲノム配列はNCBIデータベースのNG_009066.1で入手できる。CD16Aの遺伝子IDは2214である。CD16に関する配列情報は、遺伝子多型を含めて、UniProtアクセッション番号P08637で入手できる。CD16(F158)の配列をSEQ ID NO:9に示す(残基F158を太字にして下線を付す)。いくつかの態様において、CD16(F158)は、
として示されるシグナルペプチドを、さらに含む。
【0072】
CD16 158V+(F158Vをもたらす多型)の配列はVAR_003960として公知であり、SEQ ID NO:11に示す配列を有する(158V+多型を太字にして下線を付す)。いくつかの態様において、CD16(158V+)は、
として示されるシグナルペプチドを、さらに含む。
【0073】
いくつかの態様において、提供される細胞は、SEQ ID NO:11に示すアミノ酸の配列またはSEQ ID NO:11に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈しかつ158V+多型を含有するアミノ酸の配列を有するCD16 158V+NK細胞を含むか、それが濃縮されている。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞は、SEQ ID NO:9に示すCD16(F158)を発現するNK細胞と比較して、IgG Fc領域などのFcに対して増加した結合アフィニティーを呈し、かつ/または腫瘍細胞殺傷の増加と関連する。いくつかの態様において、増加は、1.5倍超、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、9倍超、10倍超、20倍超、30倍超、40倍超、50倍超またはそれ以上である。
【0074】
いくつかの態様では、特異的一塩基多型(SNP)標的を検出するために、5'端に蛍光色素標識(例えばFAMまたはVIC)を含有し、3'端に副溝バインダー(minor groove binder)(MGB)および非蛍光クエンチャー(nonfluorescent quencher)(NFQ)を含有するアレル特異的プローブと、非標識PCRプライマーとを使用するSNP解析が、ゲノムデオキシリボ核酸(DNA)試料に対して使用される。いくつかの態様において、このアッセイは、プローブに付随する色素の蛍光の変化によって、SNPの存在を測定または検出する。そのような態様では、プローブが2つの非標識プライマー間で標的DNAにハイブリダイズし、5'端の蛍光色素からのシグナルを、その3'端のNFQが、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって消光する。PCR中は、Taqポリメラーゼがテンプレートをガイドとして非標識プライマーを伸長し、ポリメラーゼが標識されたプローブに到達すると、それはその分子を切断して色素をクエンチャーから分離する。いくつかの局面において、qPCR機器は、消光されていない標識からの蛍光を検出することができる。そのような例は市販のSNPアッセイ、例えばrs396991用のコードC_25815666_10(Applied Biosystems、カタログ番号4351379、CD16中のV158FのSNPジェノタイピング用)である。
【0075】
いくつかの態様では、CD16 158V+(V158F)多型についてヘテロ接合またはホモ接合の対象が同定される。いくつかの態様では、CD16 158V+(V158F)多型についてホモ接合の対象が同定される。いくつかの態様では、NK細胞またはNK細胞サブセットが、CD16 158 V+多型についてヘテロ接合またはホモ接合であると同定された対象から単離される。いくつかの態様では、NK細胞またはNK細胞サブセットが、CD16 158 V+多型についてホモ接合であると同定された対象から単離される。NK細胞を単離するための方法は当業者には周知である。
【0076】
いくつかの態様では、ナチュラルキラー細胞がまず単離され、次に利用可能な手順を使って選別される。例えば、リンパ球または末梢血単核球(PBMC)の集団を取得することができる。上述したような1種または複数種のナチュラルキラー細胞特異的マーカーを発現するナチュラルキラー細胞が、細胞集団から単離される。特定のマーカーまたは表面マーカーの組合せを選ぶことは当業者の水準内にある。いくつかの態様において、表面マーカーは、以下の表面抗原のうちの任意の1つまたは複数である:CD11a、CD3、CD7、CD14、CD16、CD19、CD25、CD27、CD56、CD57、CD161、CD226、NKB1、CD62L、CD244、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2A、NKG2C、KIR2DL1および/またはKIR2DL3。そのような表面抗原を検出するための作用物質は、蛍光色素コンジュゲート抗体を含めて、当業者には周知であり、利用可能である。
【0077】
いくつかの態様では、非NK細胞が、CD19および/またはCD14の陽性表面発現に基づいて除外される。
【0078】
いくつかの態様において、NK細胞は、CD3-CD56dim集団としてゲーティングされる部分集団中に存在するものとして単離される。いくつかの態様において、単離されたNK細胞は、CD3-CD56dimCD14-CD19-としてゲーティングされる部分集団中に存在する。
【0079】
いくつかの態様では、g-NK細胞サブセットが対象から単離され、または濃縮される。いくつかの態様では、g-NK細胞が、CD16 158V+多型を保持すると同定された対象から、例えば前記多型についてヘテロ接合またはホモ接合であると同定された対象から、単離され、または濃縮される。いくつかの態様では、CD16 158V+多型を保持する対象から、例えば前記多型についてヘテロ接合またはホモ接合であると同定された対象から、g-NK細胞を単離する方法であって、対象からのリンパ球の集団において、実質的なFcRγを発現しないナチュラルキラー細胞のサブセットを同定し、それによってg-NK細胞を同定する工程を含む方法が提供される。一態様では、リンパ球が対象から取得または単離される。いくつかの態様では、実質的なFcRγを発現しないが、ナチュラルキラー細胞のマーカーを少なくとも1種は発現する細胞が、同定される。
【0080】
FcRγ鎖(ヒト(Homo sapiens)、高アフィニティー免疫グロブリンガンマFc受容体Iともいう)のアミノ酸配列はNCBIデータベースにおいてアクセッション番号NP_004097.1(GI:4758344)として入手することができ、SEQ ID NO:12として以下に再掲する。
【0081】
いくつかの態様において、g-NK細胞の単離または濃縮は、イムノアフィニティーに基づく方法によって実行される。いくつかの態様では、1種または複数種のマーカーについて表面陽性であり、かつ/または1種もしくは複数種のマーカーについてはそれぞれ表面陰性であるかまたは低発現である細胞を濃縮するために、正および/または負の戦略を使用することができる。いくつかの態様において、単離または濃縮は、蛍光活性化細胞選別(FACs)によって、1種または複数種の特定マーカーの表面発現についてゲーティングされたまたは陽性である細胞を収集すること(正の濃縮)により、および/または1種もしくは複数種の特定マーカーの表面発現について陽性の細胞を除外すること(負の濃縮)により、実行される。いくつかの態様において、単離または濃縮は、リンパ球を、マーカーに特異的な1種または複数種の抗体が結合している固体表面と接触させ、抗体に結合していない細胞を回収するか(負の濃縮)または抗体に結合している細胞を回収する(正の濃縮)ことによって、実行される。
【0082】
いくつかの局面において、g-NK細胞は、NK細胞を他のリンパ球または免疫細胞と区別し、g-NK細胞を通常のNK細胞と区別する、1種または複数種のさまざまなマーカーの表面発現の存在、非存在またはレベルによって同定される。いくつかの態様において、g-NK細胞は、特許出願公開US2013/0295044またはZhang et al.(2013)J.Immunol.,190:1402-1406に記載されているように単離することができる。
【0083】
いくつかの態様において、細胞(例えばNK細胞サブセット)は、細胞上または細胞中に特定マーカー、典型的には表面マーカーの検出可能な存在があるなら、その特定マーカーについて陽性である。態様では、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し、マーカーへの抗体の結合を検出することにより、表面発現を決定することができ、この場合、染色が、アイソタイプ対応対照を使ってその他は同一の条件下で同じ手順を実行して検出される染色を実質的に上回るレベルで検出可能であり、かつ/またはそのマーカーについて陽性であることが公知である細胞と実質的に類似するレベルであり、もしくはいくつかの事例では、それより高いレベルであり、かつ/またはそのマーカーについて陰性であることが公知である細胞のレベルよりも高いレベルであるなら、表面発現は陽性である。
【0084】
いくつかの態様において、細胞(例えばNK細胞サブセット)は、細胞上または細胞中に特定マーカー、典型的には表面マーカーの検出可能な存在がなければ、その特定マーカーについて陰性である。態様では、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し、マーカーへの抗体の結合を検出することにより、表面発現を決定することができ、この場合、染色が、アイソタイプ対応対照を使ってその他は同一の条件下で同じ手順を実行して検出される染色を実質的に上回るレベルでは検出可能でなく、かつ/またはそのマーカーについて陽性であることが公知である細胞よりも実質的に低いレベルであり、かつ/またはそのマーカーについて陰性であることが公知である細胞と実質的に類似するレベルであるなら、表面発現は陰性である。
【0085】
いくつかの態様において、細胞(例えばNK細胞サブセット)は、細胞上または細胞中に特定マーカー、典型的には表面マーカーの検出可能な存在が、そのマーカーについて陽性であることが公知の細胞と比較して低いレベルであるなら、その特定マーカーについて低発現である。態様では、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し、マーカーへの抗体の結合を検出することにより、表面発現を決定することができ、この場合、染色が、そのマーカーについて陽性であることが公知の細胞よりも低いレベルであるならば、表面発現は低発現である。
【0086】
いくつかの態様において、ある表面マーカーについて陽性であることが公知のNK細胞は、対象中に存在するNK細胞の大多数を表す、または対照の集団に平均して存在するNK細胞の大多数を表す、通常のNK細胞および/またはNK細胞のサブセットであることができる。
【0087】
いくつかの態様において、NK細胞のg-NK細胞サブセットは、NK細胞の集団またはNK細胞の部分集団によってFcRγが発現されるかどうかを観察することによって検出することができる。FcRγを発現しないNK細胞がg-NK細胞である。いくつかの態様では、細胞がFcRγを発現しないことも確認しつつ、上述した他のNK細胞マーカーのいずれかの発現を、細胞がナチュラルキラー細胞であることの正の識別子として検出することも有用でありうる。FcRγの発現(またはその欠如)と相関するナチュラルキラー細胞表面マーカーの発現は、細胞を傷つけない任意の利用可能な手順によって検出することができる。例えばg-NK細胞は、FcRγ発現と相関するそのような細胞表面マーカーの使用により、フローサイトメトリーで、検出、同定および/または単離することができる。
【0088】
CD3ζおよび/またはFcRγタンパク質は、細胞内タンパク質が検出されうるように例えば固定および透過化などによって細胞を処理しない限り、容易には検出されない細胞内タンパク質である。実質的に純粋な細胞集団の正体を確認するためにそのような処理を使用することはできるものの、g-NK細胞を同定し、単離する時には、多くの場合、細胞を傷つけずに検出することができる細胞表面マーカーを使用することができる。いくつかの態様において、g-NK細胞は、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体(Killer cell immunoglobulin-like receptor))の陽性表面発現に基づいて、かつ/または自然細胞傷害性受容体(Natural cytotoxicity receptor)(NCR)の低表面発現もしくは陰性表面発現に基づいて、同定することができる。
【0089】
いくつかの態様において、g-NK細胞は、KIR(例えばKIR2DL1、KIR2DL2/3および/またはKIR3DL1)の表面発現について陽性であり、正の選択法などによってg-NK細胞を同定し単離するために使用することができる。いくつかの態様において、g-NK細胞は、KIR2DL1、KIR2DL2/3およびKIR3DL1のうちの1つまたは複数について表面陽性である。
【0090】
いくつかの態様において、NK細胞上に通常発現するNCR(例えばNkp30および/またはNkp46)は、g-NK細胞では発現しないか低レベルに発現し、それを使って、例えば負の選択方法によって、g-NK細胞を同定し、単離することができる。いくつかの態様において、g-NK細胞は、NkP30および/またはNkp46について表面陰性であるかまたは低発現である。いくつかの態様において、g-NK細胞はNKG2Cについて表面陽性である。いくつかの態様において、g-NK細胞はCD57を発現し、NKG2Aを低発現する。
【0091】
抗体および他の結合実体を使って、マーカータンパク質(例えばKIRおよび/またはNCR)の発現レベルを検出し、g-NK細胞を単離することができる。例えばいくつかの態様において、FcRγ発現細胞に特異的な抗体(例えばFcRγ発現と相関するNCRなどの細胞表面マーカーに特異的な抗体)を固体基板に結合させることができ、ナチュラルキラー細胞を抗体-基板と接触させ、抗体に結合しない細胞を収集することができる。当業者が利用できる他の方法も使用することができる。適切な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、フラグメント(例えばFabフラグメント)、一本鎖抗体および他の形態の特異的結合分子を挙げることができる。
【0092】
いくつかの態様において、ナチュラルキラー細胞は、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CD16、CD56およびCD161などの典型的ヒトナチュラルキラー細胞マーカーの表面発現に基づいて同定しうる。いくつかの態様では、リンパ球の集団におけるナチュラルキラー細胞のサブセットが同定され、リンパ球の試料をナチュラルキラー細胞特異的抗原に結合する抗体と接触させる工程を含む。一態様において、ナチュラルキラー細胞のマーカーは、CD16、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、NKp30、NKp46またはそれらの組合せである。g-NK細胞を含むNK細胞は、上記マーカーのいずれかの正または負/低表面発現に基づいて単離することができる。一方法において、本方法は、実質的に純粋なナチュラルキラー細胞の集団を、例えばKIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CD16、CD56および/またはCD161の表面発現に基づいて、単離する工程を伴う。
【0093】
いくつかの態様において、g-NK細胞は、NCRタンパク質の表面発現に関して、発現しないか、低発現であるものとして同定される。いくつかの態様において、NCRはNkp30および/またはNkp46である。例えば、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団は、フローサイトメトリーにより、NCRタンパク質(例えばNkp30および/またはNkp46)に特異的な抗体を使って選別することができる。抗NCR抗体によって標識される細胞は捨てられ、抗NCR抗体によって標識されない細胞は、g-NK細胞を含有する細胞である細胞として、またはg-NK細胞を含有する細胞が濃縮された細胞として、取り置かれる。あるいは、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団を、抗NCR抗体が結合している固体基板と接触させることができる。結合しない細胞はg-NK細胞であるかまたはg-NK細胞が濃縮されている。別の態様では、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団を、抗NCR抗体が結合している磁気ビーズと接触させることができ、インキュベーション後に、磁気ビーズを細胞集団から取り除くと、g-NK細胞であるかまたはg-NK細胞が濃縮された細胞が、実質的に純粋な細胞の集団として残る。
【0094】
いくつかの態様において、g-NK細胞は、1種または複数種のKIRを発現するものとして同定される。いくつかの態様において、KIRはKIR2DL1、KIR2DL2/3および/またはKIR3DL1である。例えば、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団は、フローサイトメトリーにより、KIRタンパク質(例えばKIR2DL1、KIR2DL2/3および/またはKIR3DL1)に特異的な抗体を使って選別することができる。抗KIR抗体によって標識される細胞は、g-NK細胞であるNK細胞のサブセットまたはg-NK細胞が濃縮されたNK細胞のサブセットとして、取り置かれ、抗KIR抗体によって標識されない細胞は捨てられる。あるいは、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団を、抗KIR抗体が結合している固体基板と接触させることができる。結合する細胞は、g-NK細胞であるか、g-NK細胞が濃縮されている。別の態様では、ナチュラルキラー細胞を含有する細胞の集団を、抗KIR抗体が結合している磁気ビーズと接触させることができ、インキュベーション後に、磁気ビーズを回収することにより、g-NK細胞であるかg-NK細胞が濃縮された細胞を、細胞集団から単離または取得する。
【0095】
いくつかの態様において、CD16およびKIR(例えばKIR2DL1、KIR2DL2/3および/またはKIR3DL1)について表面陽性であり、かつ/またはNCR(例えばNKp30および/またはNKp46)について表面陰性であるかまたは低発現であるg-NK細胞、例えばCD16+、KIR+およびNCR-/lo(例えばNkp30-/loおよび/またはNkp46-/lo)であるg-NK細胞が同定される。いくつかの態様において、g-NK細胞は、CD3-CD56dimCD14-CD19-の表面表現型も呈する。
【0096】
いくつかの態様では、単離または濃縮後に、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮された細胞を、例えば単離または濃縮された細胞を増大させるなどのために、細胞培養培地中で培養する。いくつかの事例では、NK細胞を投与用組成物として製剤化する前に、NK細胞を培養して増大させしておくことが必要または望ましいだろう。一部の態様において、工学的に操作されたNK細胞を含む組成物を産生する方法は、その必要がある個体にNK細胞を投与する前に、例えば細胞を治療有効量まで増大させるなどために、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が単離または濃縮されたNK細胞を、培養またはインキュベートする工程を含む。
【0097】
NK細胞を培養し増大させるのに適した方法は公知である。例えばNK細胞はそれらの成長および/または活性化を増強するために、フィーダー細胞を使って培養するか、サイトカインの存在下で培養しうる。本明細書でいう「培養」には、NK細胞の維持に必要な化学的および物理的条件(例えば温度、気体)ならびに成長因子類を提供することが含まれる。一態様では、NK細胞の培養には、増殖のための条件をNK細胞に提供することが含まれる。NK細胞の増殖をサポートしうる化学的条件の例として、緩衝液、栄養素、血清、ビタミンおよび抗生物質、ならびに典型的には成長(すなわち培養)培地に入れて提供されるサイトカインおよび他の成長因子が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。一態様では、NK培養培地は、10%FCSを含むMEMα、または5%ヒト血清/LiforCell(登録商標)FBS代替品(Replacement)(Lifeblood Products)を含むCellGro SCGM(Cell Genix)を含む。本発明での使用に適した他の培地としては、グラスコー培地(Glascow's medium)(Gibco、カリフォルニア州カールズバッド)、RPMI培地(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)またはDMEM(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例えばMEMα(8.19μMニコチンアミド)、RPMI(8.19μMニコチンアミド)、DMEM(32.78μMニコチンアミド)およびグラスコー培地(16.39μMニコチンアミド)など、培養培地の多くが、ニコチンアミドをビタミン補給物として含有することに留意されたい。
【0098】
いくつかの態様では、例えば細胞がヒト対象に導入(または再導入)される応用などにおいて、培養は、リンパ球培養用のAIM V(商標)無血清培地またはMARROWMAX(商標)骨髄培地などの無血清製剤を使って実行される。そのような培地製剤および補給物は、Invitrogen(GIBCO)(カリフォルニア州カールズバッド)などの商業的供給源から入手できる。培養物には、最適な生存能、増殖、機能性および/または生残を助長するためにアミノ酸、抗生物質、および/またはサイトカインを補足することができる。
【0099】
いくつかの態様において、工学的に操作されたNK細胞を含む細胞の集団の培養は、フィーダー層またはフィーダー細胞なしで達成される。これらの態様の一部では、工学的に操作されたNK細胞を成長因子と共に培養することができる。いくつかの態様によれば、前記少なくとも1種の成長因子は、SCF、FLT3、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12およびIL-21からなる群より選択される成長因子を含む。いくつかの態様によれば、前記少なくとも1種の成長因子は、IL-2またはIL-7およびIL-15である。いくつかの態様によれば、前記少なくとも1種の成長因子はIL-2だけである。いくつかの態様では、細胞が、3日~30日、例えば7~28日、例えば少なくともまたは少なくとも約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18日またはそれ以上にわたって培養される。
【0100】
いくつかの態様では、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の単離または濃縮に先だって、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2および/またはCCL5が対象に投与される。
【0101】
いくつかの態様において、細胞は、所望のMHC(HLA)拘束性のHLAアレルを発現するように選ばれた対象から単離することができる。いくつかの態様では、単離前または単離後に、細胞のHLAタイピングを実行することができる。いくつかの態様では、対象から取得した初代細胞を含む細胞のHLAタイピングを、当技術分野において周知の手順を使って、例えば分子ハプロタイプアッセイ(BioTest ABC SSPtray、BioTest Diagnostics Corp.、ニュージャージー州デンビル;SeCoreキット、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)を使って組織タイピングを行うことなどにより、決定することができる。いくつかの事例において、HLA遺伝子型を決定するために細胞の標準的なタイピングを、例えば配列ベースのタイピング(sequence-based typing:SBT)(Adams et al.,(2004)J.Transl.Med.,2:30、Smith(2012)Methods Mol Biol.,882:67-86)を使用することなどによって行うことは、十分に当業者の水準内である。
【0102】
III.組成物およびキット
CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮された細胞を含む組成物が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、組成物は、約5~99%のCD16 158V+NK細胞もしくはCD16 158V+/g-NK細胞、または両端を含む5~99%の任意のパーセンテージのCD16 158V+NK細胞もしくはCD16 158V+/g-NK細胞を含む。いくつかの態様において、組成物は、細胞の単離源となった対象において自然に存在する全NK細胞または全細胞に対するCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NKのパーセンテージと比較して、全NK細胞または全細胞に対して増加したパーセンテージまたはより大きなパーセンテージのCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含むことができる。いくつかの態様では、パーセンテージが、少なくともまたは少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍またはそれ以上、増加している。
【0103】
いくつかの態様において、組成物は、20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または実質的に100%のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含むことができる。いくつかの態様において、組成物は、50%超のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含む。別の態様において、組成物は、70%超のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含む。別の態様において、組成物は、80%超のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含む。いくつかの態様において、提供される組成物には、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が、組成物中の細胞の、または組成物中のNK細胞の、少なくとももしくは少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%もしくはそれ以上を構成するものが含まれる。
【0104】
組成物には、投与のための、例えば養子細胞療法のための、薬学的組成物および製剤が含まれる。いくつかの態様において、工学的に操作された細胞は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される。
【0105】
薬学的に許容される担体は、医薬としての投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などを含むことができる(Gennaro,2000,Remington:The science and practice of pharmacy,Lippincott,Williams&Wilkins、ペンシルベニア州フィラデルフィア)。そのような担体または希釈剤の例としては、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。リポソームおよび固定油などの非水性媒体も使用しうる。組成物には補助的な活性化合物も組み入れることができる。薬学的担体は、NK細胞に適するもの、例えば食塩溶液、デキストロース溶液またはヒト血清アルブミンを含む溶液などであるべきである。
【0106】
いくつかの態様において、上述のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞のための薬学的に許容される担体または媒体は、その中で、生きたCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の投与を可能とするのに十分な時間にわたって、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を維持することができる、またはCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が生存能を保つことができる、任意の非毒性水性溶液である。例えば薬学的に許容される担体または媒体は食塩溶液または緩衝食塩溶液であることができる。薬学的に許容される担体または媒体は、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の効力を増加させうるさまざまな生体物質も含むことができる。細胞培地および細胞担体は、例えば多糖類、例えばメチルセルロース(M.C.Tate,D.A.Shear,S.W.Hoffman,D.G.Stein,M.C.LaPlaca,Biomaterials 22,1113,2001、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、キトサン(Suh J K F,Matthew H W T.Biomaterials,21,2589,2000、Lahiji A,Sohrabi A,Hungerford D S,et al.,J Biomed Mater Res,51,586,2000、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、N-イソプロピルアクリルアミドコポリマーP(NIPAM-co-AA)(Y.H.Bae,B.Vernon,C.K.Han,S.W.Kim,J.Control.Release 53,249,1998、H.Gappa,M.Baudys,J.J.Koh,S.W.Kim,Y.H.Bae,Tissue Eng.7,35,2001、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、ならびにポリ(オキシエチレン)/ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(B.Jeong,K.M.Lee,A.Gutowska,Y.H.An,Biomacromolecules 3,865,2002、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、P(PF-co-EG)(Suggs L J,Mikos A G.Cell Trans,8,345,1999、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、PEO/PEG(Mann B K,Gobin A S,Tsai A T,Schmedlen R H,West J L.,Biomaterials,22,3045,2001、Bryant S J,Anseth K S.Biomaterials,22,619,2001、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、PVA(Chih-Ta Lee,Po-Han Kung and Yu-Der Lee、Carbohydrate Polymer,61,348,2005、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、コラーゲン(Lee C R,Grodzinsky A J,Spector M.,Biomaterials 22,3145,2001、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、アルギネート(Bouhadir K H,Lee K Y,Alsberg E,Damm K L,Anderson K W,Mooney D J.Biotech Prog 17,945,2001、Smidsrd O,Skjak-Braek G.,Trends Biotech,8,71,1990、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を含むことができる。
【0107】
いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、組成物中に有効量で存在することができる。活性化されたCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の有効量は、患者ならびに疾患のタイプ、重症度および程度によって変動しうる。したがって医師は、対象の健康状態、疾患の程度および重症度、ならびに他の変数を考慮した上で、何が有効量であるかを、決定することができる。
【0108】
一定の態様において、組成物中の細胞の数は、治療有効量のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を提供する。いくつかの態様において、その量は、動物におけるがん、ウイルス感染症、微生物感染症、または敗血症性ショックに関連する重症度、持続時間および/または症状を低減する量である。他の一定の態様において、治療有効量は、本明細書に記載する組成物を投与された患者または動物において、がんの成長または蔓延を、当該組成物を投与されていない患者(もしくは動物)または患者(もしくは動物)の群におけるがんの成長または蔓延と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減させる細胞の用量である。いくつかの態様において、細胞障害性に関する有効量は、がん、ウイルスおよび微生物細胞の成長を阻害または低減することができるNK細胞の量と定義される。
【0109】
いくつかの態様において、組成物は、105もしくは約105から約1012個の細胞、または約105から約108個の細胞、または約106から約1012個の細胞、または約108から約1011個の細胞、または約109から約1010個の細胞である、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮されたまたはCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含有する組成物の用量を含む。いくつかの態様において、組成物は、105超もしくは約105超、106超もしくは約106超、107超もしくは約107超、108超もしくは約108超、109超もしくは約109超、1010超もしくは約1010超、1011超もしくは約1011超、または1012超もしくは約1012超個の細胞を含む。いくつかの態様では、そのような量を、がん患者に投与することができる。
【0110】
いくつかの態様において、組成物の体積は、それぞれ両端を含んで、少なくとも10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLまたは少なくとも約10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mL、例えば10mL~500mLもしくは約10mL~500mL、10mL~200mLもしくは約10mL~200mL、10mL~100mLもしくは約10mL~100mL、10mL~50mLもしくは約10mL~50mL、50mL~500mLもしくは約50mL~500mL、50mL~200mLもしくは約50mL~200mL、50mL~100mLもしくは約50mL~100mL、100mL~500mLもしくは約100mL~500mL、100mL~200mLもしくは約100mL~200mL、または200mL~500mLもしくは約200mL~500mLである。いくつかの態様において、組成物は、少なくともまたは少なくとも約1×105個の細胞/mL、5×105個の細胞/mL、1×106個の細胞/mL、5×106個の細胞/mL、1×107個の細胞/mL、5×107個の細胞/mLもしくは1×108個の細胞/mLの細胞密度を有する。いくつかの態様において、組成物の細胞密度は、それぞれ両端を含む、1×105個の細胞/mL~1×108個の細胞/mLもしくは約1×105個の細胞/mL~1×108個の細胞/mL、1×105個の細胞/mL~1×107個の細胞/mLもしくは約1×105個の細胞/mL~1×107個の細胞/mL、1×105個の細胞/mL~1×106個の細胞/mLもしくは約1×105個の細胞/mL~1×106個の細胞/mL、1×106個の細胞/mL~1×107個の細胞/mLもしくは約1×106個の細胞/mL~1×107個の細胞/mL、1×106個の細胞/mL~1×108個の細胞/mLもしくは約1×106個の細胞/mL~1×108個の細胞/mL、1×106個の細胞/mL~1×107個の細胞/mLもしくは約1×106個の細胞/mL~1×107個の細胞/mL、または1×107個の細胞/mL~1×108個の細胞/mLもしくは約1×107個の細胞/mL~1×108個の細胞/mLである。
【0111】
いくつかの態様において、組成物は、薬学的組成物を含めて、無菌である。いくつかの態様において、細胞の単離または濃縮は、例えばエラー、ユーザーハンドリングおよび/または汚染を最小限に抑えるために、閉鎖環境または無菌環境で実行される。いくつかの態様において、無菌性は例えば無菌濾過膜による濾過などによって容易に達成することができる。
【0112】
提供されるNK細胞を凍結保存するのに適した組成物も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、組成物は、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞であるかそれらが濃縮されたNK細胞と凍結保護物質とを含む。いくつかの態様において、凍結保護物質は、DMSOおよび/またはsグリセロールであるか、またはDMSOおよび/もしくはsグリセロールを含む。いくつかの態様において、凍結保存用に製剤化された組成物は、例えば-40℃~-150℃の温度範囲、例えばまたは約80℃±6.0℃の範囲での貯蔵など、低温で、例えば極低温で貯蔵することができる。
【0113】
いくつかの態様において、組成物は、患者への投与前に極低温で保存することができる。組成物は、哺乳動物対象からの単離後、増大および/または対象への投与前に、極低温で保存することもできる。例えばCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を単離または濃縮し、極低温で貯蔵し、次に対象への投与前に、処理し、または増大させて、収穫することができる。あるいは、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を単離し、処理し、または増大させてから、対象への投与前に、極低温で貯蔵することもできる。
【0114】
小スケールでの極低温における保存のための典型的方法は、例えば米国特許第6,0168,991号に記載されている。小スケールの場合は、前もって冷却しておいた5%ヒトアルブミン血清(HAS)への(例えば約200×106/mlの濃度での)低密度懸濁により、極低温で細胞を保存することができる。そのHAS溶液には等量の20%DMSOを加えることができる。混合物のアリコートをバイアルに入れ、約-80℃の極低温チャンバー内で一晩凍結させることができる。
【0115】
いくつかの態様では、凍結保存されたNK細胞を、融解により、投与のために調製する。いくつかの事例では、NK細胞は、融解後、直ちに対象に投与することができる。そのような態様において、組成物は、さらなる処理が何もなくても、使用準備ができている。他の事例では、NK細胞は融解後に、対象への投与に先だって、例えば薬学的に許容される担体での再懸濁、活性化剤または刺激剤とのインキュベーションなどによってさらに加工されるか、または活性化され、洗浄され、薬学的に許容される緩衝液に再懸濁される。
【0116】
CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が濃縮されたまたはCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含有する提供される組成物を含むキットも、本明細書において提供される。例えばいくつかの態様では、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞と追加の作用物質とを含むキットが、本明細書において提供される。いくつかの態様において、追加の作用物質はFcドメインを含む。いくつかの態様において、追加の作用物質はFc融合タンパク質または抗体である。いくつかの態様において、追加の作用物質はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。これらの態様の一部において、追加の作用物質は完全長抗体である。例示的な抗体は以下に記載する。
【0117】
IV.処置の方法
いくつかの態様において、個体における状態を処置する方法であって、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含むかそれらが濃縮された組成物、例えば記載の組成物のいずれかを、その必要がある個体に投与する工程を含む方法が、本明細書において提供される。
【0118】
いくつかの態様において、本方法は、有効量の、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を含有する組成物を、個体に投与する工程を含む。いくつかの態様では、105もしくは約105から約1012個の細胞、または105もしくは約105から約108個の細胞、または106もしくは約106から約1012個の細胞、または108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞が、対象に投与される。いくつかの態様では、約105、約106、約107、約108、約109、約1010、約1011または約1012個の細胞が、個体に投与される。いくつかの態様において、細胞の数は、投与される組成物中のCD16 158V+NK細胞/kgの数またはCD16 158V+/g-NK細胞の数を基準とする。いくつかの態様では、106もしくは約106~1010個のCD16 158V+NK細胞/kgまたはCD16 158V+/g-NK細胞/kgが対象に投与される。
【0119】
いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、単離後すぐに個体に投与される。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、単離および工学的操作から1、2、3、4、5、6、7、14、21または28日以内に、個体に投与される。
【0120】
別の態様では、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が、投与に先だって、例えば上述の方法により、貯蔵されるか、培養下での成長によって増大される。例えばNK細胞は、個体への投与に先だって、6ヶ月超、12ヶ月超、18ヶ月超または24ヶ月超にわたって貯蔵することができる。
【0121】
いくつかの態様において、提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物は、皮下投与経路、筋肉内投与経路、静脈内投与経路、および/または硬膜外投与経路などの非経口経路を含む任意の好都合な経路で、対象に投与することができる。
【0122】
提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物は、腫瘍もしくは過剰増殖性障害または微生物感染症、例えばウイルス感染症、酵母感染症、真菌感染症、原生動物感染症および/もしくは細菌感染症を持つ個体を処置する方法において使用することができる。提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物で対象を処置する開示の方法は、治療用モノクローナル抗体、例えば抗腫瘍抗原抗体もしくは抗がん抗体、抗ウイルス抗体または抗細菌抗体などと組み合わせることができる。提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物は、動物、例えば哺乳類動物、例えばヒト対象の処置のために投与することができる。
【0123】
いくつかの例において、本方法は、過剰増殖性障害、例えば血液学的悪性疾患または固形腫瘍を処置することを含む。本明細書記載の組成物で処置することができるがんおよび増殖性障害のタイプの例としては、白血病(例えば骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、および慢性リンパ性白血病)、リンパ腫(例えばホジキン病および非ホジキン病)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、ユーイング腫瘍、大腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、異形成および過形成が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。がんの処置および/または防止には、がんに関連する1つまたは複数の症状の軽減、がんの進行の阻害または低減、がんの退縮の促進、および/または免疫応答の増進が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0124】
いくつかの例において、本方法は、ウイルス感染症、例えば体内にウイルスが存在することによって引き起こされる感染症を処置することを含む。ウイルス感染症には慢性または持続性ウイルス感染症が含まれる。これは、宿主に感染し、致命的になる前に、宿主の細胞内で長期間にわたって、通常は数週間、数ヶ月または数年にわたって、複製することができるウイルス感染症である。本発明に従って処置されうる慢性感染症を起こすウイルスとしては、例えばヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルスおよび他のヘルペスウイルス、B型およびC型肝炎のウイルス、ならびに他の肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および麻疹ウイルスが挙げられ、これらはいずれも、重大な臨床疾患を生じる場合がある。長期感染は最終的には、患者にとって致命的な疾患の誘導、例えばC型肝炎ウイルスの場合であれば肝がんの誘導につながりうる。本発明に従って処置しうる他の慢性ウイルス感染症としては、エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus)(EBV)、ならびに他のウイルス、例えば腫瘍に関連しうるものが挙げられる。
【0125】
本明細書記載の組成物および方法で処置または防止することができるウイルス感染症の例としては、レトロウイルス(例えばヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)I型およびII型ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV))、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)I型およびII型、エプスタイン・バン(Epstein-Ban)ウイルスならびにサイトメガロウイルス)、アレナウイルス(例えばラッサ熱ウイルス)、パラミクソウイルス(例えばモルビリウイルス属のウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、およびニューモウイルス)、アデノウイルス、ブニヤウイルス(例えばハンタウイルス)、コルナウイルス(cornavirus)、フィロウイルス(例えばエボラウイルス)、フラビウイルス(例えばC型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱ウイルスおよび日本脳炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス(HBV))、オルソミオウイルス(orthomyovirus)(例えばセンダイウイルスならびにインフルエンザウイルスA、BおよびC)、パポーバウイルス(例えばパピローマウイルス)、ピコルナウイルス(例えばライノウイルス、エンテロウイルスおよびA型肝炎ウイルス)、ポックスウイルス、レオウイルス(例えばロタウイルス)、トガウイルス(例えば風疹ウイルス)、ならびにラブドウイルス(例えば狂犬病ウイルス)によって引き起こされるウイルス感染症が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ウイルス感染症の処置および/または防止には、該感染症に関連する1つまたは複数の症状を軽減すること、ウイルス複製の阻害、低減もしくは抑制、および/または免疫応答の増進が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0126】
いくつかの態様において、提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物は、酵母感染症または細菌感染症を処置する方法に使用される。例えば、本明細書記載の提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物および方法は、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoea)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)、クレブシエラ・リノスクレロモチス(Klebsiella rhinoscleromotis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コレラ菌(Vibrio cholera)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンピロバクター(ビブリオ)・フィタス(Campylobacter(Vibrio)fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、セレウス菌(Bacillus cereus)、エドワージエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、フランベジアトレポネーマ(Treponema pertenue)、トレポネーマ・カラテネウム(Treponema carateneum)、ヴァンサンボレリア(Borrelia vincentii)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、黄疸出血性レプトスピラ(Leptospira icterohemorrhagiae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ・アボルツ(Brucella aborts)、ブタ流産菌(Brucella suis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazeki)、ツツガムシ病リケッチア(Rickettsia tsutsugumushi)、クラミジア属(Chlamydia spp.)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)またはそれらの組合せに関係する感染症を処置することができる。
【0127】
併用治療
いくつかの態様において、提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、抗体またはFc含有タンパク質によって活性化されるか、抗体またはFc含有タンパク質と接触させると、増強された活性を呈する。例えば、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、抗体被覆腫瘍細胞によるCD16の抗体媒介性架橋によって活性化されうる。
【0128】
いくつかの態様では、個体における状態を処置する方法であって、CD16 158V+NK細胞もしくはCD16 158V+/g-NK細胞またはその組成物と抗体とを対象に投与する工程を含む方法が、本明細書において提供される。当業者は、本明細書記載の提供されるCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞および組成物と共に対象に投与するための適当な治療用(例えば抗がん)モノクローナル抗体を、例えばその個体の特定疾患または特定状態に応じて、選択することができる。適切な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、フラグメント(例えばFabフラグメント)、一本鎖抗体および他の形態の特異的結合分子を挙げることができる。
【0129】
いくつかの態様において、抗体には、ヒト化抗体またはヒト抗体が、さらに含まれうる。ヒト化型の非ヒト抗体は、非ヒトIgに由来する最小限の配列を含有する、キメラIg、キメラIg鎖またはキメラIgフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合性部分配列)である。いくつかの態様において、抗体はFcドメインを含む。
【0130】
一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート」残基と呼ばれ、それらは通例「インポート」可変ドメインから採用される。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって達成される(Jones et al.,1986;Riechmann et al.,1988;Verhoeyen et al.,1988)。そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりもかなり小さな部分が非ヒト種からの対応する配列で置換されている、キメラ抗体(1989)である。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基と場合によってはいくつかのFc残基が齧歯類抗体中の類似する部位からの残基で置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置き換えられている、ヒト抗体(レシピエント抗体)が挙げられる。場合により、対応する非ヒト残基が、ヒト抗体のFvフレームワーク残基を置き換える。「ヒト化抗体」は、レシピエント抗体にもインポートされるCDR配列またはフレームワーク配列にも見いだされない残基を含みうる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてではないとしても大半が非ヒトIgのそれに対応し、FR領域のすべてではないとしても大半がヒト抗体コンセンサス配列のそれである、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質上すべてを含む。ヒト化抗体は、最適には、抗体定常領域(Fc)の、典型的にはヒト抗体のそれの、少なくとも一部分も含む(Jones et al.,1986;Presta,1992;Riechmann et al.,1988)。
【0131】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom et al.,1991;Marks et al.,1991)およびヒトmAbの調製(Boerner et al.,1991;Reisfeld and Sell,1985)を含むさまざまな技法を使って産生することもできる。同様に、内因性抗体遺伝子が部分的にまたは完全に非働化されているトランスジェニック動物へのヒトIg遺伝子の導入を、ヒトAbを合成するために利用することもできる。チャレンジすると、遺伝子の再編成、アセンブリおよび抗体レパトアを含めあらゆる面でヒトに見られるものとよく似たヒト抗体産生が観察される(1997a;1997b;1997c;1997d;1997;1997;Fishwild et al.,1996;1997;1997;2001;1996;1997;1997;1997;Lonberg and Huszar,1995;Lonberg et al.,1994;Marks et al.,1992;1997;1997;1997)。
【0132】
具体的には、本発明の細胞は、腫瘍関連抗原を認識する抗体と共に投与することにより、腫瘍にターゲティングすることができる。本CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞が、腫瘍関連抗原を認識する多種多様な抗体と共に使用するのに適していることは、当業者には理解されるだろう。腫瘍関連抗原の非限定的な例として、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンまたはテネイシンが挙げられる。いくつかの事例では、抗体が抗CD20抗体、抗HER2抗体、抗CD52抗体、抗EGFR抗体および抗CD38抗体である。例示的な抗体として、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレツズマブ(aletuzumab)、セルツキシマブ(certuximab)、ダラツムマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブが挙げられる。選択されたがんタイプに特異的な抗体を選ぶことができ、これにはがんの処置用に承認された任意の抗体が含まれる。例として、乳がん用のトラスツズマブ(ハーセプチン)、リンパ腫用のリツキシマブ(リツキサン)、および頭頸部扁平上皮癌用のセツキシマブ(アービタックス)が挙げられる。当業者は、特定の腫瘍抗原または疾患抗原に結合することのできるFDA承認モノクローナル抗体を熟知しており、それらはいずれも、腫瘍または疾患を処置するための、提供される方法に従って使用することができる。
【0133】
CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞と追加の作用物質は、逐次的にまたは同時に投与することができる。いくつかの態様において、追加の作用物質は、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の投与前に投与することができる。いくつかの態様において、追加の作用物質は、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の投与後に投与することができる。例えばCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、選択されたがんタイプに特異的な抗体と同時に投与することができる。あるいは、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、選択されたがんタイプに特異的な抗体が投与される時とは異なる選択された時点で投与することができる。
【0134】
特定の例では、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の集団の前、後または実質上同時に、有効量の抗体が、対象に投与される。いくつかの例では、約0.1mg/kg~約100mg/kg(例えば約0.5~10mg/kg、約1~20mg/kg、約10~50mg/kg、約20~100mg/kg、例えば約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約10mg/kg、約16mg/kg、約20mg/kg、約24mg/kg、約36mg/kg、約48mg/kg、約60mg/kg、約75mg/kg、または約100mg/kg)の抗体が、対象に投与される。熟練した臨床家は、特定の抗体、特定の疾患または状態(例えば腫瘍または他の障害)、対象の全身の状態、対象が受けているまたは対象が過去に受けていた任意の追加処置、および他の関連因子を考慮して、抗体の有効量を選択することができる。対象には、本明細書記載のCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞集団も投与される。抗体とCD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞の集団は、典型的には非経口的に、例えば静脈内に投与されるが、腫瘍へのもしくは腫瘍近くへの注射もしくは注入(局所投与)または腹膜腔への投与も使用することができる。当業者は適当な投与経路を決定することができる。
【0135】
CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、抗微生物剤、抗ウイルス剤および他の治療剤と、同時にまたは逐次的に投与することができる。本明細書に提供されるいくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、サイトカインおよび/または成長因子と組み合わせて個体に投与することができる。いくつかの態様によれば、前記少なくとも1種の成長因子は、SCF、FLT3、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12およびIL-21からなる群より選択される成長因子を含む。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞とサイトカインまたは成長因子は、逐次的に投与される。例えば、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を最初に投与し、次にサイトカインおよび/または成長因子を投与しうる。いくつかの態様において、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞は、サイトカインまたは成長因子と同時に投与される。
【0136】
いくつかの態様において、対象には、NK細胞の生残および/または成長をサポートするために、1種または複数種のサイトカイン(例えばIL-2、IL-15、IL-21および/またはIL-12)が投与される。サイトカインは、NK細胞の前、後、またはNK細胞と実質上同時に投与することができる。いくつかの例では、NK細胞の後に、サイトカインを投与することができる。一具体例では、NK細胞の投与から約1~8時間以内(例えば約1~4時間以内、約2~6時間以内、約4~6時間以内、または約5~8時間以内)に、サイトカインが対象に投与される。
【0137】
いくつかの態様において、提供される方法は、CD16 158V+NK細胞またはCD16 158V+/g-NK細胞を化学療法剤と組み合わせて個体に投与する工程も含むこともできる。いくつかの態様において、化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビン、メチルプレドナゾン(methyl prednasone)を含みうる。いくつかの態様において、化学療法剤は、サリドマイド;シスプラチン(cis-DDP)、オキサリプラチン、カルボプラチン、アントラセンジオン、ミトキサントロン;ヒドロキシ尿素、メチルヒドラジン誘導体、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MM)、副腎皮質抑制剤、ミトタン(.omicron.,.rho.'-DDD)、アミノグルテチミド、RXRアゴニスト、ベキサロテン、チロシンキナーゼ阻害剤、イマチニブ、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル-CCNTJ)、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、DNA合成アンタゴニスト、エストラムスチンホスフェート、トリアジン、ダカルバジン(OTIC、ジメチル-トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、テモゾロミド、葉酸アナログ、メトトレキサート(アメトプテリン)、ピリミジンアナログ、フルオロウラシン(fiuorouracin)(5-フルオロウラシル、5-FU、5FTJ)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン(fluorodeox>'uridine)、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ゲムシタビン、プリンアナログ、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)、ペントスタチン(2'-デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビンおよびフルダラビン、トポイソメラーゼ阻害剤、アムサクリン、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質結合型パクリタキセル(Abraxane(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標));エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシン、ブセレリン、副腎皮質ステロイド、プレドニゾン、プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、アナストロゾール;プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ビカルタミド、およびロイプロリドからなる群より選択される。
【0138】
いくつかの態様において、制がん薬はサリドマイドまたはその誘導体である。いくつかの態様において、制がん薬は、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンからなる群より選択される。一定の態様において、制がん薬は、パクリタキセル、Abraxane(登録商標)、およびTaxotere(登録商標)からなる群より選択される。一態様では、化学療法剤は、アスパラギナーゼ、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、5-フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、ストレプトゾシン、および6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、パクリタキセル、およびゲムシタビンからなる群より選択される。
【0139】
V.例示的態様
提供される態様には以下の態様が含まれる。
1. CD16 158V+について表面陽性であるナチュラルキラー(NK)細胞サブセットを含む、組成物であって、該組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+NK細胞サブセットを含む、前記組成物。
2. CD16 158V+NK細胞サブセットが、FcRγ鎖を発現せず(CD16 158V+/g-)、KIRについて表面陽性であり、かつ/またはNkp30および/もしくはNkp46について表面陰性であるかもしくは低発現である、態様1の組成物。
3. CD16 158V+について表面陽性でありかつFcRγ鎖の発現を欠いているナチュラルキラー(NK)細胞サブセット(CD16 158V+/g-)を含む、組成物であって、該組成物中の細胞の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がCD16 158V+/g-NK細胞サブセットを含む、前記組成物。
4. CD16 158V+が、SEQ ID NO:11に示す配列を含むか、またはSEQ ID NO:11に対して少なくとも85%、90%もしくは95%の配列同一性を呈しかつ158V+多型を含む配列を含む、態様1~3のいずれかの組成物。
5. NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である、態様1~4のいずれかの組成物。
6. NK細胞サブセットが、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、態様1~5のいずれかの組成物。
7. NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、態様1~6のいずれかの組成物。
8. NK細胞サブセットがNKG2Cについて表面陽性である、態様1~7のいずれかの組成物。
9. 105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞を含む、態様1~8のいずれかの組成物。
10. 組成物の体積が少なくとも10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLまたは少なくとも約10mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mLもしくは500mLであり、かつ/または組成物が1×105から1×108個の細胞/mLを含む、態様1~9のいずれかの組成物。
11. 薬学的に許容される担体をさらに含む、態様1~10のいずれかの組成物。
12. 凍結保護物質をさらに含む、態様1~11のいずれかの組成物。
13. NK細胞サブセットが、対象から取得された初代NK細胞である、態様1~12のいずれかの組成物。
14. 前記対象がヒトである、態様13の組成物。
15. NK細胞を濃縮するための方法であって、
(a)CD16 158V+NK細胞遺伝子型を有すると同定された対象からNK細胞またはそのサブセットを単離する工程、および
(b)単離されたNK細胞またはそのサブセットを、細胞を増大させるための条件下で培養し、それによって前記対象からのNK細胞またはそのサブセットを濃縮する工程
を含む、前記方法。
16. 工程(a)の前に、CD16 158V+NK細胞遺伝子型の存在について対象をスクリーニングする工程を含む、態様15の方法。
17. NK細胞またはそのサブセットが、リンパ球を含む細胞の集団から単離される、態様16の方法。
18. 細胞の集団が、末梢血単核球(PBMC)試料、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物を含む、態様17の方法。
19. FcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)を含むかまたはFcRγ鎖を発現しない細胞(CD16 158V+/g-)が濃縮されているNK細胞サブセットが、前記対象から単離される、態様15~18のいずれかの方法。
20. NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性である、態様19の方法。
21. NK細胞サブセットが、Nkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、態様15~20のいずれかの方法。
22. NK細胞サブセットが、KIRについて、任意でKIR2DL2/3について、表面陽性であり、かつNkp30および/またはNkp46の表面発現について陰性であるかまたは低発現である、態様15~21のいずれかの方法。
23. NK細胞またはそのサブセットがNKG2Cについて表面陽性である、態様15~22のいずれかの方法。
24. 細胞が、フィーダー細胞の存在下、または1種もしくは複数種のサイトカイン、任意でIL-2、IL-15および/またはIL-7の存在下で、培養される、態様15~23のいずれかの方法。
25. 培養前の単離されたNK細胞の数と比較して、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上の細胞の増大を達成するために、NK細胞が、ある期間にわたって培養される、態様15~24のいずれかの方法。
26. 単離されたNK細胞が、7~28日間、任意で約14日、15日、16日、17日もしくは18日、19日、20日、または21日間、培養される、態様15~25のいずれかの方法。
27. 治療有効量を達成するために、単離された細胞が培養される、態様15~26のいずれかの方法。
28. 105もしくは約105から約1012個の細胞、105もしくは約105から約108個の細胞、106もしくは約106から約1012個の細胞、108もしくは約108から約1011個の細胞、または109もしくは約109から約1010個の細胞の、濃縮されたNK細胞の数を達成するために、単離された細胞が培養される、態様15~27のいずれかの方法。
29. 単離された細胞または濃縮された細胞のHLAタイピングを行う工程をさらに含む、態様15~28のいずれかの方法。
30. 凍結保護物質の存在下で、細胞を凍結保存するおよび/または細胞を製剤化する工程をさらに含む、態様15~29のいずれかの方法。
31. NK細胞またはそのサブセットを単離する前に、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2および/またはCCL5を前記対象に投与する工程を含む、態様15~30のいずれかの方法。
32. 前記対象がヒトである、態様15~31のいずれかの方法。
33. 前記対象が健康である、態様15~31のいずれかの方法。
34. 態様15~33のいずれかの方法によって産生される濃縮されたNK細胞を含む、組成物。
35. 薬学的に許容される賦形剤を含む、態様34の組成物。
36. 凍結保護物質を含む、態様34または態様35の組成物。
37. 無菌である、態様1~14および態様34~36のいずれかの組成物。
38. 態様1~14および態様34~37のいずれかの組成物と、疾患の処置のための追加の作用物質とを含む、キット。
39. 前記組成物と疾患または状態の処置のための追加の作用物質との投与に関する説明書をさらに含む、態様38のキット。
40. 態様1~14および態様34~37のいずれかの組成物と、
疾患の処置のための追加の作用物質との併用治療における該組成物の投与に関する説明書と
を含む、キット。
41. 追加の作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、態様38~40のいずれかのキット。
42. 抗体が、腫瘍関連抗原を認識するか、またはそれに特異的に結合する、態様41のキット。
43. 腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンである、態様42のキット。
44. 抗体が完全長抗体であり、かつ/またはFcドメインを含む、態様41~43のいずれか一つのキット。
45. 態様1~14および態様34~37のいずれかの組成物を、その必要がある個体に投与する工程を含む、疾患または状態を処置する方法。
46. 投与する工程が、前記個体への1×108もしくは約1×108から1×1010個の細胞/m2、または1×106もしくは約1×106から1×1010個のNK細胞/kgの投与を含む、態様45の方法。
47. 追加の作用物質を投与する工程をさらに含む、態様45または態様46の方法。
48. 追加の作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、態様47の方法。
49. 抗体が腫瘍関連抗原を認識する、態様48の方法。
50. 抗体が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-α、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、細胞分散因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケライン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2(HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-α、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7(CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチンもしくはテネイシンを認識するか、またはそれに特異的に結合する、態様48または態様49の方法。
51. 抗体がFcドメインを含み、かつ/または完全長抗体である、態様48~50のいずれか一つの方法。
52. 追加の作用物質と前記組成物とが逐次的に投与される、態様47~51のいずれか一つの方法。
53. 追加の作用物質が前記組成物の投与に先だって投与される、態様52の方法。
54. 追加の作用物質と前記組成物とが同時に投与される、態様47~53のいずれか一つの方法。
55. 前記疾患または状態が、炎症状態、感染症、およびがんからなる群より選択される、態様45~54のいずれか一つの方法。
56. 前記感染症がウイルス感染症または細菌感染症である、態様55の方法。
57. 前記疾患または状態ががんであり、かつ該がんが白血病またはリンパ腫である、態様55の方法。
58. 前記疾患または状態ががんであり、かつ該がんが固形腫瘍を含む、態様55の方法。
59. 前記個体がヒトである、態様45~58のいずれか一つの方法。
60. 前記組成物中のNK細胞が前記個体にとって同種異系である、態様45~59のいずれか一つの方法。
61. 前記組成物中のNK細胞が前記対象にとって自家である、態様45~59のいずれか一つの方法。
【実施例0140】
VI.実施例
以下の実施例は例示のために含まれるに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0141】
実施例1: ヒトドナーからのg-158V+NK細胞サブセットの単離および濃縮
V158+多型を保因する対象を同定するために、健康なドナーから得られた試料の末梢血からDNAが抽出される。ゲノムDNAは、WizardゲノムDNA精製キット(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使って、血液試料から抽出される。CD16 158V+(V158V多型)に関するジェノタイピングは、実質的に既述のように(例えばCartron et al.(2002)Blood,99:754-758、Koene et al.(1997)Blood,90:1109-1114)、ネステッドPCRとそれに続くアレル特異的制限酵素消化を用いて実行される。
【0142】
簡単に述べると、第1PCRでは、多型部位を含有する1.2キロベースフラグメントを増幅するために、特異的プライマー
を使用する。最初のPCRアッセイは、およそ1.25μgのゲノムDNA、200ngの各プライマー、200μMの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)および1UのTaq DNAポリメラーゼで行われる。この第1PCRは、95℃で10分、次に35サイクル(各サイクルは95℃で1分、57℃で1.5分、および72℃で1.5分の工程を含む)、そして完全な伸長を達成するために72℃で8分にわたって行われる。第2PCRでは、プライマー
を使用することにより、94塩基対(bp)のフラグメントが増幅され、158V+アレルにのみNlaIII制限部位が生成する。このネステッドPCRは、増幅されたDNA 1μL、150ngの各プライマー、200μMの各dNTP、および1UのTaq DNAポリメラーゼで行われる。サイクルは、95℃で5分間、次に35サイクル(それぞれ95℃で1分、64℃で1分および72℃で1分の工程を含む)、そして伸長を完了させるための72℃で9.5分間を含む。
【0143】
次に、増幅されたDNA(10μL)を10UのNlaIIIを使って37℃で12時間消化し、8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分離する。臭化エチジウムによる染色後に、DNAバンドをUV光下で可視化する。ホモ接合型158Fドナーの場合は、消化されていないバンド(94bp)が一本だけ見える。ヘテロ接合型個体では3本のバンド(94bp、61bpおよび33bp)が見られ、一方、ホモ接合型158V+患者の場合は、2本の消化されたバンド(61bpおよび33bp)だけが得られる。
【0144】
Hwang et al.(2012)Int.Immunol.,24:793-802に記載されているように、158V+に関してホモ接合であるドナーからの末梢血単核球(PBMC)を取得し、CD56(N901)、CD3(UCHT1)、CD14(HCD14)およびCD19(HIB19)に特異的な抗体を使ってPBMCの表面マーカーを染色し、次に、CD56dimCD3-CD14-CD19-という表現型を有し、KIR2DL1(CD158a;HP-MA4)、KIR2DL2/3(CD158b;CH-L)またはKIR3DL1(CD158e;DX9)のうちのいずれかのKIRについて表面陽性であり、かつ/またはNkp46(CD335;9E2)もしくはNKp30(CD337;p30-15)のどちらかであるNCRについて表面陰性である細胞のゲーティングによって蛍光活性化細胞選別を行うことで、新鮮単離PBMCから非NK細胞を除外し、FcRγ欠損型(g-NK)を約70%以上の純度まで濃縮する。抗体は、Beckman Coulter(米国カリフォルニア州)、BD Biosciences(米国カリフォルニア州)、Biolegend(米国カリフォルニア州)またはeBiosciences(米国カリフォルニア州)などの商業的供給者から入手する。
【0145】
増大のために、結果として得られた濃縮された細胞を、NKクローニング培地[5%プールヒトAB血清(Cellgro、米国バージニア州)、10%ウシ胎児血清(Hyclone、米国ユタ州)、1μg/ml PHA(Roche、米国インディアナ州)、100U ml-1 IL-2および10ng ml-1 IL-15(Peprotech、米国ニュージャージー州)を補足したRPMI1640(Invitrogen、米国ニューヨーク州)]での限界希釈により、PHAで刺激(1μg ml-1で1時間)された同種異系PBMCおよびRPMI8866細胞(Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州)をマイトマイシンCで2時間、37℃で処理しておいたものと共に、プレーティングする。フィーダー細胞は最大2ヶ月にわたって10~14日ごとに1ウェルあたり25,000の密度で加える。
【0146】
濃縮されたCD16 158V+/g-NK細胞の抗体指向性活性を評価するために、およそ多発性骨髄腫MM1S標的細胞を100μCiの51Crを使って37℃で1時間標識し、PBSで2回洗浄し、RPMI培地に再懸濁する。RPMI培地100μl中の合計3×104個の標的細胞を、10μg/mLの抗CD38抗体ダラツムマブの存在下または非存在下で、V底96ウェルプレートに3つ一組にして入れる。腫瘍細胞を約20分間、室温でインキュベートした後、抗体を除去するために2回洗浄する。細胞を100μLの培地に再懸濁し、そこに等体積のCD16 158V+/g-NK細胞を1:3~10:1のさまざまなエフェクター:標的比で加え、細胞を4時間インキュベートする。Packard Cobra Auto-Gamma 5000シリーズカウントシステム(米国コネティカット州メリデン)を使って、上清のアリコートをカウントする。特異的51Cr放出パーセンテージを、式:特異的放出パーセント=[(実験的放出-自発的放出)/(最大放出-自発的放出)]×100に従って算出する。対照として、CD56+の通常のNK細胞を使って、または抗CD38抗体ダラツムマブの非存在下で、実験が実行される。結果は、CD16 158V+/g-NK細胞が、抗CD38被覆腫瘍細胞の存在下で、通常のNK細胞のADCC活性より強いADCC活性を呈することを示す。
【0147】
同様の実験がリツキシマブ被覆CD20+B細胞リンパ腫細胞を使って行われる。結果は、CD16 158V+/g-NK細胞が、リツキシマブ被覆EBV形質転換B細胞性リンパ腫細胞との共培養時に、通常のNK細胞または対照よりも強いADCC媒介能を呈することを示す。
【0148】
実施例2: NK細胞サブセットの抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)の評価
158Vは、タンパク質の158番目のアミノ酸位置に、一般的なフェニルアラニン(F)の代わりにアミノ酸バリン(V)が存在するCD16の遺伝子多型である(Koene et al.,1997,Blood 90:1109-14)。これは、CD16の発現量の増加と抗体アフィニティーの増加につながり、それがCD16 158V+NK細胞による増強されたADCCをもたらす(Hatjiharissi et al.,2007,Blood 110:2561-4)。具体的には、158V/Vドナーと158V/Fドナーは、158F/Fドナーよりもはるかに強く、ARH-77細胞およびDaudi細胞をADCCによって殺傷し、158V/Vドナーの能力が最も高い(Hatjiharissi et al.,2007)。
【0149】
BloodWorks NWからの40人のCMV血清陽性ドナーをスクリーニングして、g-NKを最も高い比率で持つ12人のドナーを決定した。これらのドナーのg-NK細胞を磁気ビーズ分離(CD3-/CD57+)によってPBMCから濃縮した。通常のドナーからのバルクNK細胞は、g-NKを有しないドナーからのPBMCから、磁気ビーズ分離(CD3-/CD57+)によって濃縮した。g-NK細胞の比率は、以下の細胞外マーカーに対する蛍光抗体を用いるフローサイトメトリーを使って決定した:CD45、7-AAD、CD3、CD56、CD16、CD57、CD7、およびCD161。抗体と共に室温、暗所で20分間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、7-AADneg/CD45pos白血球の数をフローサイトメトリーによって定量した。細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、細胞膜を透過化するために0.2%サポニンに再懸濁した。次に、蛍光コンジュゲート抗FceRI抗体を加えた。暗所、室温でさらに15分間インキュベートした後、細胞をフローサイトメトリーで分析し、g-NKのパーセンテージをCD45pos/7-AADneg/CD3neg/CD56pos/FceRInegリンパ球のパーセンテージとして評価した。
【0150】
濃縮された細胞を以下の組合せの腫瘍/抗体に対するADCCについて試験した:1)SW-480/セツキシマブ;2)SKOV3/トラスツズマブ;3)SKOV3/セツキシマブ;4)MM.1S/ダラツムマブ;および5)MM.1S/エロツズマブ。
【0151】
標的としての卵巣がん細胞株SKOV3(ATCC、米国バージニア州マナッサス)に対するADCC細胞傷害アッセイの場合は、NK細胞を、最終体積2.2mLの標的細胞特異的培地中、CD71標識SKOV3標的細胞(1.0×104細胞)と、0.5:1、1:1、2.5:1および5:1のNK細胞:標的細胞比で共培養した(Bigley et al.,2014,Brain Behav Immuno.,39:160-71)。ADCCアッセイに使用した培地は、1μg/mLトラスツズマブ(抗HER2)または5μg/mLセツキシマブ(抗EGFR)を含む10%FBS補足マッコイ5A培地である。いずれの場合も、処置抗体が存在しない状態で、基礎細胞傷害性も測定した。自発的細胞死(すべてのアッセイについて10%未満)を考慮に入れるために、標的細胞のみのチューブを使用した。37℃で4時間のインキュベーション後に、細胞を洗浄し、チューブ内のNK細胞の数を定量するために、抗CD3抗体および抗CD56抗体で染色した。最終洗浄後に、ヨウ化プロピジウム(PI)を加え、4色フローサイトメトリーを使って、NK細胞、生標的細胞、および死標的細胞の数を決定した(Bigley et al.,2018,J Appl Physiol,126:842-853)。
【0152】
標的としての多発性骨髄腫細胞株MM.1S(ATCC、米国バージニア州マナッサス)に対するADCC細胞傷害アッセイの場合は、NK細胞を、最終体積2.2mLの標的細胞特異的培地中、CD71標識MM.1S標的細胞(1.0×104細胞)と、0.5:1、1:1、2.5:1および5:1のNK細胞:標的細胞比で共培養した。ADCCアッセイに使用した培地は、1μg/mLダラツムマブ(抗CD38)または1μg/mLエロツズマブ(抗CD319)を含む10%FBS補足RPMI-1640培地である。いずれの場合も、処置抗体が存在しない状態で、基礎細胞傷害性も測定した。自発的細胞死(すべてのアッセイについて10%未満)を考慮に入れるために、標的細胞のみのチューブを使用した。37℃で4時間のインキュベーション後に、細胞を洗浄し、チューブ内のNK細胞の数を定量するために、抗CD3抗体および抗CD56抗体で染色した。最終洗浄後に、ヨウ化プロピジウム(PI)を加え、4色フローサイトメトリーを使って、NK細胞、生標的細胞、および死標的細胞の数を決定した(Bigley et al.,2018)。
【0153】
標的としてのCRC細胞株SW-480(ATCC、米国バージニア州マナッサス)に対するADCC細胞傷害アッセイの場合は、NK細胞を、最終体積2.2mLの標的細胞特異的培地中、CD71標識SW-480標的細胞(1.0×104細胞)と、0.5:1、1:1、2.5:1および5:1のNK細胞:標的細胞比で共培養した。ADCCアッセイに使用した培地は、5μg/mLセツキシマブ(抗EGFR)を含む10%FBS補足リーボビッツL-15培地である。セツキシマブが存在しない状態で、基礎細胞傷害性も測定した。自発的細胞死(すべてのアッセイについて10%未満)を考慮に入れるために、標的細胞のみのチューブを使用した。37℃で4時間のインキュベーション後に、細胞を洗浄し、チューブ内のNK細胞の数を定量するために、抗CD3抗体および抗CD56抗体で染色した。最終洗浄後に、ヨウ化プロピジウム(PI)を加え、4色フローサイトメトリーを使って、NK細胞、生標的細胞、および死標的細胞の数を決定した(Bigley et al.,2018)。
【0154】
図1に示すように、g-NKのADCCを、g-NKを有しないドナー(n=4)からの通常のNK細胞(c-NK)と比較した。これら12人のドナーのうち、5人の「スーパードナー」(super donor)とは、一貫して高いそのADCC値を意味する。
【0155】
次に、これらのドナーを評価して、各ドナーがCD16の158V多型(V/V、V/FおよびF/F)に関してどのサブグループに属するかを決定した。予想される分布は35%V/V、25%V/Fおよび40%F/Fだった(Hatjiharissi et al.,2007;Somboonyosdech et al.,2012,Asian Biomedicine,6:883-89)ので、この予想からの逸脱はいずれも、158V多型がこれらのドナーで見られた高いADCCにおいて役割を果たしうるという発見と合致することになる。多型試験のために凍結NK細胞を融解し、PBSで洗浄し、100gで遠心分離した。洗浄工程後に、上清を捨て、NK細胞をフローサイトメトリーによる細胞計数のために10mLに再懸濁した。簡単に述べると、50μLの細胞懸濁液をフローチューブに収集し、CD45に対する2μLの蛍光抗体(残存赤血球から白血球を識別するため)および2μLの7-AAD(生存性色素)で染色した。暗所、室温で10分間のインキュベーション後に、細胞を500μLのPBSで希釈し、7-AADneg/CD45pos白血球の数をフローサイトメトリーによって定量した。細胞カウント後に、CD16pos NK細胞の集団を単離するために、磁気ビーズ分離を行った。このプロトコールでは、Miltenyi MACS(商標)CD16マイクロビーズを製造者の説明書に従って使用することにより、磁気ビーズ分離を行った。磁気ビーズ分離後に、10X GenomicsシングルセルRNAシーケンシングを使って、ドナーがどのCD16多型群(V/V、V/F、またはF/F)に属するかを決定した。図1に示すように、158V(V/VまたはV/F)ドナーが最も高いADCCを有する。
【0156】
開示した特定態様は、例えば本発明のさまざまな局面を例示するなどの目的で提供されているのであって、本発明の範囲は、それらの特定態様に限定されるものではない。記載の組成物および方法のさまざまな変更態様は、本明細書における記載および教示から、明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および要旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0157】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Indapta Therapeutics, Inc.
<120> SUBSETS OF HUMAN NATURAL KILLER CELLS WITH ENHANCED
ANTIBODY-DIRECTED IMMUNE RESPONSES
<150> US 62/671,358
<151> 2018-05-14
<160> 12
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 21
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<223> 158V Primer
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<223> 158V Primer
<400> 8
gaaatctacc ttttcctcta atagggca 28

<210> 9
<211> 238
<212> PRT
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<220>
<223> CD16 (F158)
<400> 9
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1 5 10 15
Gln Trp Tyr Arg Val Leu Glu Lys Asp Ser Val Thr Leu Lys Cys Gln
20 25 30
Gly Ala Tyr Ser Pro Glu Asp Asn Ser Thr Gln Trp Phe His Asn Glu
35 40 45
Ser Leu Ile Ser Ser Gln Ala Ser Ser Tyr Phe Ile Asp Ala Ala Thr
50 55 60
Val Asp Asp Ser Gly Glu Tyr Arg Cys Gln Thr Asn Leu Ser Thr Leu
65 70 75 80
Ser Asp Pro Val Gln Leu Glu Val His Ile Gly Trp Leu Leu Leu Gln
85 90 95
Ala Pro Arg Trp Val Phe Lys Glu Glu Asp Pro Ile His Leu Arg Cys
100 105 110
His Ser Trp Lys Asn Thr Ala Leu His Lys Val Thr Tyr Leu Gln Asn
115 120 125
Gly Lys Gly Arg Lys Tyr Phe His His Asn Ser Asp Phe Tyr Ile Pro
130 135 140
Lys Ala Thr Leu Lys Asp Ser Gly Ser Tyr Phe Cys Arg Gly Leu Phe
145 150 155 160
Gly Ser Lys Asn Val Ser Ser Glu Thr Val Asn Ile Thr Ile Thr Gln
165 170 175
Gly Leu Ala Val Ser Thr Ile Ser Ser Phe Phe Pro Pro Gly Tyr Gln
180 185 190
Val Ser Phe Cys Leu Val Met Val Leu Leu Phe Ala Val Asp Thr Gly
195 200 205
Leu Tyr Phe Ser Val Lys Thr Asn Ile Arg Ser Ser Thr Arg Asp Trp
210 215 220
Lys Asp His Lys Phe Lys Trp Arg Lys Asp Pro Gln Asp Lys
225 230 235

<210> 10
<211> 16
<212> PRT
<213> artificial sequence
<220>
<223> Signal peptide
<400> 10
Met Trp Gln Leu Leu Leu Pro Thr Ala Leu Leu Leu Leu Val Ser Ala
1 5 10 15

<210> 11
<211> 238
<212> PRT
<213> artificial sequence
<220>
<223> CD16 (158V+)
<400> 11
Gly Met Arg Thr Glu Asp Leu Pro Lys Ala Val Val Phe Leu Glu Pro
1 5 10 15
Gln Trp Tyr Arg Val Leu Glu Lys Asp Ser Val Thr Leu Lys Cys Gln
20 25 30
Gly Ala Tyr Ser Pro Glu Asp Asn Ser Thr Gln Trp Phe His Asn Glu
35 40 45
Ser Leu Ile Ser Ser Gln Ala Ser Ser Tyr Phe Ile Asp Ala Ala Thr
50 55 60
Val Asp Asp Ser Gly Glu Tyr Arg Cys Gln Thr Asn Leu Ser Thr Leu
65 70 75 80
Ser Asp Pro Val Gln Leu Glu Val His Ile Gly Trp Leu Leu Leu Gln
85 90 95
Ala Pro Arg Trp Val Phe Lys Glu Glu Asp Pro Ile His Leu Arg Cys
100 105 110
His Ser Trp Lys Asn Thr Ala Leu His Lys Val Thr Tyr Leu Gln Asn
115 120 125
Gly Lys Gly Arg Lys Tyr Phe His His Asn Ser Asp Phe Tyr Ile Pro
130 135 140
Lys Ala Thr Leu Lys Asp Ser Gly Ser Tyr Phe Cys Arg Gly Leu Val
145 150 155 160
Gly Ser Lys Asn Val Ser Ser Glu Thr Val Asn Ile Thr Ile Thr Gln
165 170 175
Gly Leu Ala Val Ser Thr Ile Ser Ser Phe Phe Pro Pro Gly Tyr Gln
180 185 190
Val Ser Phe Cys Leu Val Met Val Leu Leu Phe Ala Val Asp Thr Gly
195 200 205
Leu Tyr Phe Ser Val Lys Thr Asn Ile Arg Ser Ser Thr Arg Asp Trp
210 215 220
Lys Asp His Lys Phe Lys Trp Arg Lys Asp Pro Gln Asp Lys
225 230 235

<210> 12
<211> 86
<212> PRT
<213> artificial sequence
<220>
<223> FcRgamma chain
<400> 12
Met Ile Pro Ala Val Val Leu Leu Leu Leu Leu Leu Val Glu Gln Ala
1 5 10 15
Ala Ala Leu Gly Glu Pro Gln Leu Cys Tyr Ile Leu Asp Ala Ile Leu
20 25 30
Phe Leu Tyr Gly Ile Val Leu Thr Leu Leu Tyr Cys Arg Leu Lys Ile
35 40 45
Gln Val Arg Lys Ala Ala Ile Thr Ser Tyr Glu Lys Ser Asp Gly Val
50 55 60
Tyr Thr Gly Leu Ser Thr Arg Asn Gln Glu Thr Tyr Glu Thr Leu Lys
65 70 75 80
His Glu Lys Pro Pro Gln
85
図1
【配列表】
2024096956000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
この出願の明細書に記載された発明