IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フラスクワークス, エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096961
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】樹状細胞を生成する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240709BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12N5/0784
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067477
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2021526723の分割
【原出願日】2019-11-11
(31)【優先権主張番号】16/192,062
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】521208310
【氏名又は名称】フラスクワークス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー コズビアル
(57)【要約】
【課題】樹状細胞を生成する装置および方法の提供。
【解決手段】複数のゾーンのそれぞれ内の流れにおけるデッド領域を回避するために、複数のゾーンのそれぞれと対称な流体の流れを提供するように幾何学的に構成された複数のゾーンを含む細胞培養カートリッジが提供される。ある特定の実施形態では、細胞培養カートリッジのそれぞれのコーナーに配置された入口を有する、少なくとも8つの入口を備える。ある特定の実施形態では、共有の出口は、細胞培養カートリッジの上面に配置される。本発明は、樹状細胞(DC)の自動生成に対する最適かつより効率的なアプローチを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養システムであって、前記細胞培養システムが、
細胞培養カードリッジであって、
上面、
底面、
前記上面に設けられ、前記上面の中央付近に配置された出口、
前記細胞培養カートリッジの周囲に対称に配置された複数の入口、および
前記底面から前記上面まで伸びる1つまたは複数の支柱
を含む細胞培養カードリッジ;
前記複数の入口に接続された培地リザーバー;
前記出口に接続された廃棄物リザーバー;ならびに
前記培地リザーバーから前記細胞培養カートリッジに、および/または前記細胞培養カートリッジから前記廃棄物リザーバーに、培地を移動させるためのポンプ
を含む細胞培養システム。
【請求項2】
前記複数の入口および前記出口が、培地が前記細胞培養カートリッジを通って移動する場合に対称な流体の流れを提供するように配置される、請求項1の記載の細胞培養システム。
【請求項3】
前記入口が、前記細胞培養カートリッジの上面に配置されている、請求項1の記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記細胞培養カートリッジの周囲は複数のコーナーを含み、それぞれが前記入口の1つを含む、請求項1の記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記細胞培養システムが、前記細胞培養カートリッジと作動可能に連結された1つまたは複数のセンサーと中央演算処理ユニットとをさらに含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記1つまたは複数のセンサーが、pH、溶存酸素、総生物量、細胞直径、グルコース濃度、ラクテート濃度もしくは細胞代謝産物濃度を含む1つまたは複数のパラメーターを測定する、請求項5に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記1つまたは複数のセンサーによって行われた測定に応答して、前記中央演算処理ユニットが、前記ポンプの作動状態を調整するための命令を実行する、請求項6に記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記細胞培養システムが、細胞を培養するための無菌環境を維持する、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記底面が、樹状細胞が前記底面に接着できるように構成されている、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項10】
前記ポンプが、毎分10マイクロリットル未満の速度で流体を前記培地リザーバーから前記細胞培養カートリッジに移動させる、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項11】
細胞培養の方法であって、
上面、
底面、
前記上面に設けられ、前記上面の中央付近に配置された出口、
前記細胞培養カートリッジの周囲に対称に配置された複数の入口、
前記底面から前記上面まで伸びる1つまたは複数の支柱、および
対称な流体の流れを提供するように形作られた複数のゾーンであって、前記複数のゾーンのそれぞれが入口を含む、複数のゾーン
を含む細胞培養カードリッジを提供するステップ;
前記細胞培養カートリッジに細胞を播種するステップ;ならびに
前記入口を介して前記細胞培養カートリッジへの培地の連続灌流を提供すること、および同時に前記細胞培養カートリッジの前記出口を介して廃棄物リザーバーに枯渇した培地を除去することにより、前記細胞培養カードリッジ内で前記細胞を培養するステップ
を含む、方法。
【請求項12】
前記細胞が樹状細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記入口が、前記細胞培養カートリッジの上面に配置されている、請求項11の記載の方法。
【請求項14】
前記細胞培養カートリッジへの培地の前記連続灌流の提供が、ポンプを用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ポンプが中央演算処理ユニットに作動可能に接続されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記樹状細胞を採取するステップをさらに含み、前記細胞を採取するステップが前記カートリッジを冷却するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
未成熟樹状細胞を第2のカートリッジに移動させるステップをさらに含み、前記第2のカートリッジが、前記細胞培養カートリッジと同じサイズか、またはそれより小さいサイズである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記未成熟樹状細胞が、前記第2のカートリッジ中で、成熟および抗原パルス化を受ける、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞培養カードリッジが、前記細胞培養カートリッジの外周に沿って配置された1つまたは複数のノッチを含む、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項20】
前記細胞培養カードリッジが、前記細胞培養カートリッジの外周に沿って配置された1つまたは複数のノッチを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年11月15日に出願された米国特許出願第16/192,062号に基づく利益および優先権を主張し、その内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
政府支援
【0002】
本発明は、全米科学財団によって付与された助成金番号1819306の政府支援により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
発明の分野
【0003】
本発明は、一般に、細胞培養チャンバー、およびその使用の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞に基づくがん免疫療法は、樹状細胞(DC)を含む免疫活性細胞を使用するがんを処置する方法である。DCは、別の方法では十分な数で回収することができないので、それらは、典型的には、末梢血から抽出された単球の分化によって生成される。しかしながら、治療的使用のための単球由来樹状細胞の臨床的に適切な数を生成することは、困難であり得る。標準的なウェルプレートおよびTフラスコ培養などの従来の生成技術は、細胞培養物を外部環境に曝す多くの手動のステップを有する面倒なプロセスを含み、高度な訓練を受けた技術者を必要とする。
【0005】
従来の生成技術は、多数の安全性および汚染の懸念、例えば、患者の試料の取り違えおよび誤認、層流フード内部での未知の汚染(例えば、微粒子、および70%エタノールなどの標準的な滅菌技術に耐性の細菌/真菌)への曝露、ならびに培養物の腐敗環境への偶発的曝露を有する。さらにまた、手動でのDC生成技術のスケールアップは、一般に、ワークフローへのより多くの培養容器の追加を除いて、実行可能ではない。枯渇した培地を同時に除去しながら、培養容器に新たな培地を連続的に灌流する自動システムは、従来の手動の生成技術の代替選択肢である。
【0006】
自動システムは、一般に、従来技術よりも安全性および汚染の懸念が低いが、自動システムは、スケールアップおよび他の問題に悩まされている。例えば、多くの市販の自動システムは、DCの研究または臨床レベルの生成のために拡張可能ではない。また、自動システムは、細胞培養容器内で、不均一な流れまたは流れにおけるデッドスポットに悩まされている。流れにおけるデッドスポット(デッド領域)は、新たな培地が提供され、枯渇した培地が除去される場合に均一な流れが維持されず、それによりDCの生成に影響を及ぼす、細胞培養容器中の領域である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明は、細胞培養カートリッジ内で均一で対称な流れを有する樹状細胞の生成のための、自動細胞培養カートリッジおよびシステムを提供する。本発明の態様は、対称な流体の流れを提供し、細胞培養チャンバー内の流れにおけるデッド領域を回避するように幾何学的にそれぞれ構成された複数のゾーンを有する細胞カートリッジチャンバーを設計することによって達成される。幾何学的な設計は、均一な流れを提供し、流れにおけるデッド領域またはデッドスポットを回避する。この様式において、本発明は、樹状細胞(DC)の自動生成に対する最適かつより効率的なアプローチを提供する。
【0008】
ある特定の実施形態では、細胞培養チャンバーは、複数のコーナーを含む。入口は、複数のコーナーのそれぞれのコーナーに配置され、出口は、細胞培養チャンバーの上面に配置される。入口の細胞培養チャンバーへの設置は、細胞培養チャンバー中の対称な流体の流れチャンネルを可能にする。一部の例では、細胞培養チャンバーは、入口をそれぞれ含む8つのコーナーを有する八角形を含む。出口は、細胞培養チャンバーの上面の中央に配置される。
【0009】
細胞培養チャンバーは、手動のプロセスの自動化を可能にするさまざまな技術的特徴も含み、プロセスにおける使用者の介入を劇的に低減し、それにより汚染のリスクを大きく低減する。細胞培養チャンバーは、培養培地およびサイトカインがチャンバーに灌流されるのを可能にし、より一貫したレベルの維持を可能にする。一貫した栄養分およびサイトカインのレベルの達成は、効率的な細胞培養および処理、したがって、予測通りの効果的なスケールアップを確実にするために重要である。さらにまた、鉛直流路が、流体がチャンバーを出る際に提供され、これは、培養プロセスに関与するDC、抗原特異的T細胞および他の細胞が、灌流の間にチャンバー中に残ったままにすることを確実にする。
【0010】
さらにまた、本発明は、均一な流れの達成を対象とする追加の特徴を含む。例として、細胞培養カートリッジは、底面と上面との間に伸びる1つまたは複数の支柱をさらに含む。別の例として、底面は、底面の外周に1つまたは複数のノッチを含む。本発明の一部の実施形態は、細胞培養チャンバーと作動可能に連結された1つまたは複数のストップコックをさらに含む。
【0011】
本発明の細胞培養チャンバーは、細胞が接着する材料で作られた底面を含むように製造されてもよい。一部の実施形態では、細胞は、底面材料に接着しない。一部の実施形態では、底面の材料は、グロー放電またはコロナ放電下、空気または酸素プラズマで処理されている。一部の実施形態では、底面の材料は、フィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンなどのタンパク質またはポリアミノ酸で改変されている。一部の実施形態では、底面の材料は、フィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンなどのタンパク質またはポリアミノ酸で改変されている。細胞培養チャンバーは、任意の好適な材料で作られている。ある特定の例では、1種または複数の材料は、ポリスチレンおよびアクリレートからなる群から選択された。本発明の一部の実施形態では、細胞培養カートリッジは、透明である。一部の実施形態では、細胞培養カートリッジの高さは、最大の長さまたは幅の寸法よりも10分の1またはそれよりも小さい。
【0012】
細胞培養カートリッジおよびシステムは、1つまたは複数のストップコックをさらに含んでいてもよい。1つまたは複数のストップコックは、細胞培養チャンバーと作動可能に連結されていてもよい。フィルターに取り付けられると、カートリッジにおけるストップコックは、カートリッジが細胞溶液で播種されるか、または回収されるときに、空気交換を可能にする。ルアー作動式移動バルブに取り付けられると、ストップコックは、入口ボトルを満たし、出口ボトルから廃棄物を除去するための分化培地の無菌的な移動を可能にする。このセットアップは、チューブおよびカートリッジシステムを、システムの無菌シールを破壊する必要なしに、セットアップから回収まで無菌のままにすることを可能にする。
【0013】
さらにまた、本発明は、臨床スケールで未成熟DC(iDC)を生成するための完全に密閉された無菌のiDC生成システムを提供し、多数のウェルプレート(またはTフラスコ/バッグ)についての必要性を効果的に排除し、無菌の微粒子を含まない培養システムを確実にし、細胞培養物を維持する技術者の時間を低減する。本発明は、単一の細胞培養カートリッジ中で、治療的に適切な数のiDCを無菌で生成するための自動細胞培養システムである。システムは、iDCをさらに処理して、成熟試薬の添加によりiDCを成熟させ、1種または複数の抗原の細胞培養チャンバーへの添加により刺激することもできる。細胞培養システムは、細胞培養チャンバー中で対称な流体の流れチャンネルを提供し、細胞培養チャンバー中の流れにおけるデッド領域を回避するように幾何学的に構成された複数のゾーンを含む細胞培養カートリッジを含む。細胞培養システムは、細胞培養チャンバーに作動可能に付随する1つまたは複数のポンプをさらに含む。一部の実施形態では、蠕動ポンプは、枯渇した培地の廃棄物リザーバーへの除去とともに、入口ごとに特定の流速、例えば、8μL/分で新たな培地の培養容器への連続灌流を提供する。新たな培地の移動、枯渇した培地の除去、細胞の播種、およびiDCの回収は、無菌で行われる。
【0014】
一部の実施形態では、細胞培養システムは、細胞培養チャンバーを、第2の細胞培養チャンバーであり得る第2の容器と流体連結するように構成された少なくとも1つの流体コネクターをさらに含む。例えば、細胞培養チャンバーは、成熟および抗原刺激(パルス化としても公知)ステップのためにそのような濃度が望まれる場合、細胞をより小さな体積に濃縮することを可能にするために、互いに流体接続するように構成される。システムが、T細胞をDCで刺激するために利用される場合、それらのT細胞は、新たな細胞培養チャンバー中でのT細胞のさらなる培養および増殖を可能にするために、チャンバー間を自動的に移動され得る。一部の実施形態では、移動を、第1の細胞培養チャンバーにガス流を導入することによって生じさせて、流体コネクターを通じて、第2の細胞培養チャンバーに、第1の細胞生成物を含む上清を移動させる。
【0015】
ある特定の態様では、例示の実施形態の細胞培養チャンバーは、患者の腫瘍を選択的に標的にする様式で患者自身の免疫系を動員することができる治療的T細胞生成物を提供するために、同じ患者由来の抗原提示細胞を使用するT細胞の増殖および刺激を提供する。これらの細胞培養システムおよび方法は、従来のプロトコールと比較して、手動のステップの数を大いに低減する。この方法では、汚染のリスクが大いに減少し、製造技術の頑健性および再現性が大いに増加し、これらは両方とも、正確な標的化が可能な個別化されたT細胞療法などの治療用製品の安全で信頼性の高い製造のための重要な考慮事項である。
【0016】
他の態様では、細胞培養チャンバーは、1つまたは複数のポンプに作動可能に連結される1つまたは複数の流体リザーバーをさらに含む。流体リザーバーは、栄養分およびサイトカインを含む培地をチャンバーに供給するように構成される。
【0017】
一部の実施形態では、本発明は、細胞培養カートリッジと作動可能に連結された1つまたは複数のセンサーをさらに含む。1つまたは複数のセンサーは、任意の好適なパラメーターを測定し得る。例では、1つまたは複数のセンサーは、pH、溶存酸素、総生物量、細胞直径、グルコース濃度、ラクテート濃度および細胞代謝産物濃度からなる群から選択される1つまたは複数のパラメーターを測定する。
【0018】
細胞培養チャンバーは、中央演算処理ユニット(CPU)をさらに含んでいてもよい。CPUは、1つまたは複数のセンサーと通信可能に連結され得、測定された1つまたは複数のパラメーターの関数として1つまたは複数のポンプの作動状態を調整するように構成され得る。ポンプよりもむしろ電気流体力学機構などの流れを生じさせる機構が用いられる実施形態では、中央演算処理ユニットは、1つまたは複数のパラメーターの関数として第1の細胞生成物の流れの速度を調整する流れを生じさせる機構の作動状態を変更し得る。
【0019】
実施形態では、中央演算処理ユニットは、システムに細胞培養チャンバーのサイズを含む第1のインプットデータを受信させる命令を実行する。第2のインプットデータが、次いで受信され、第2のインプットデータは、細胞培養チャンバーに導入される1つまたは複数の流体中の第1の細胞型の第1の濃度および第2の細胞型の第2の濃度を含む。第1および第2のインプットに基づいて、細胞培養チャンバーに導入される灌流流体の灌流速度が計算される。計算された灌流速度は、第1の細胞型および第2の細胞型が細胞培養チャンバー内で互いに接触する可能性を最大にする。第1の細胞型は、末梢血単核細胞であり、第2の細胞型は、樹状細胞である。
【0020】
実施形態では、システムは、1つまたは複数の灌流流体リザーバーに作動可能に連結され、かつ中央演算処理ユニットに作動可能に連結された、1つまたは複数のポンプをさらに含み、中央演算処理ユニットは、1つまたは複数のポンプを制御することによって、灌流流体の灌流速度を制御する。
【0021】
ある特定の実施形態では、本発明は、樹状細胞を培養する方法を提供する。方法は、細胞培養カートリッジを提供するステップを含む。細胞培養カートリッジは、複数のゾーンのそれぞれ内の流れにおけるデッド領域を回避するために、複数のゾーンのそれぞれと対称な流体の流れを提供するように幾何学的に構成された複数のゾーンを含む。一部の実施形態では、細胞培養カートリッジは、複数のコーナー、複数のコーナーのそれぞれのコーナーに配置された入口、および細胞培養チャンバーの上面に配置された出口を含む細胞培養チャンバーを含む。流体は、細胞培養チャンバーを対称に流れる。
【0022】
単球細胞は、細胞培養カートリッジに播種される。単球を、細胞培養チャンバーに播種して、入口を介して細胞培養カートリッジへの培地の連続灌流を提供すること、および出口を介して廃棄物リザーバーに枯渇した培地を除去することによって、樹状細胞が生成される。一部の実施形態では、方法は、樹状細胞を回収するステップをさらに含み、細胞を回収するステップは、カートリッジを冷却することを含む。
【0023】
実施形態では、方法は、未成熟樹状細胞を第2のカートリッジに移動させるステップをさらに含み、第2のカートリッジは、細胞培養カートリッジよりも小さい。未成熟樹状細胞は、第2のカートリッジ中で成熟し、かつ抗原パルス化を受ける。実施形態では、成熟および抗原パルス化は、第2のカートリッジを使用することなく、細胞カートリッジ中で行われてもよい。
【0024】
一部の実施形態では、本発明の方法は、樹状細胞の成熟、および細胞の抗原によるパルス化をさらに含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、細胞培養チャンバー中およびその周辺で所望の環境を維持するのを助けるために、チャンバーは、インキュベーター内に適合するようなサイズにされ、そのように構成される。一部の実施形態では、1つまたは複数のポンプは、インキュベーター内に位置する。他の実施形態では、1つまたは複数のポンプは、インキュベーターの外側に位置し、インキュベーター内の細胞培養チャンバーと作動可能に連結される。
【0026】
ある特定の態様では、システムの少なくとも一部は、使い捨ての構成要素を含み、その一部またはすべては、使い捨てでないフレーム内に収容され得る。他の態様では、システムのすべての構成要素は、使い捨てである。さらにまた、一部の実施形態では、システムは、患者材料を追跡し、記述するための試料追跡構成要素を含む。
【0027】
システムおよび方法は、任意の数の追加カートリッジまたは細胞培養チャンバーが提供され得るように、設計される。一部の実施形態では、システムは、T細胞を生成するための2つまたはそれよりも多くの細胞培養カートリッジを含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明のシステムは、細胞培養チャンバーのサイズ、ならびに樹状細胞および末梢血単核細胞を含む2種またはそれよりも多くの細胞型の濃度などのさまざまなインプットを与える灌流流体の所望の灌流速度を自動的に計算し、セットする能力を有する。例示の配置では、1つまたは複数の細胞培養チャンバー、ならびにシステムに、細胞培養チャンバーのサイズを含む第1のインプットデータとして受信させる、細胞培養チャンバーに導入される1つまたは複数の流体中の第1の細胞型の第1の濃度および第2の細胞型の第2の濃度を含む第2のインプットデータとして受信させる、ならびに第1および第2のインプットに基づいて、第1の細胞型および第2の細胞型が細胞培養チャンバー内で互いに接触する可能性を最大にする細胞培養チャンバーに導入される灌流流体の灌流速度を計算させる、中央演算処理ユニットによって実行される命令を含むメモリーを含む中央演算処理ユニットを含む細胞培養システムが提供される。ある特定の態様では、第1の細胞型は、末梢血単核細胞であり、第2の細胞型は、樹状細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明による細胞培養カートリッジの細胞培養チャンバーの実施形態を示す。
【0030】
図2図2は、細胞培養カートリッジおよびシステムの正面図を示す。
【0031】
図3図3は、細胞培養カートリッジおよびシステムの上面図を示す。
【0032】
図4図4は、細胞培養カートリッジおよびシステムの左側面図を示す。
【0033】
図5図5は、細胞培養カートリッジおよびシステムの右側面図を示す。
【0034】
図6図6は、本発明のシステム100の実施形態を示す。
【0035】
図7図7は、2つのカートリッジを有する本発明の実施形態を示す。
【0036】
図8図8は、より小さなカートリッジから輸液バッグへの移動を示す本発明の実施形態を示す。
【0037】
図9図9は、本発明の使い捨ておよび非使い捨ての構成要素を示す。
【0038】
図10図10は、EDEN自動流体システムの実施形態を示す。
【0039】
図11図11は、細胞培養カートリッジの流れチャンネルの細胞培養カートリッジの設計を示す。
【0040】
図12図12は、細胞が存在する細胞培養カートリッジの底部で(共有される)ポリスチレン表面の細胞培養カートリッジの設計を示す。
【0041】
図13図13は、細胞培養カートリッジ内の灌流に起因する流線の細胞培養カートリッジの設計を示す。
【0042】
図14図14は、細胞培養カートリッジ内の灌流に起因するゲージ圧力の細胞培養カートリッジの設計を示す。
【0043】
図15図15は、細胞培養カートリッジへのサイトカイン灌流を示す。
【0044】
図16-1】図16は、6日間でMOから分化した、細胞培養カートリッジおよび6ウェルプレートで生成されたiDCの表現型を示す。
図16-2】図16は、6日間でMOから分化した、細胞培養カートリッジおよび6ウェルプレートで生成されたiDCの表現型を示す。
【0045】
図17-1】図17は、細胞培養カートリッジからのiDCおよびmDCの表現型を示す。iDCは、細胞培養カートリッジ中で生成され、次いで、1日または3日の成熟のために本発明の細胞培養システムに播種された。図の上部のラベルは、プロットが由来するゲートを示す。
図17-2】図17は、細胞培養カートリッジからのiDCおよびmDCの表現型を示す。iDCは、細胞培養カートリッジ中で生成され、次いで、1日または3日の成熟のために本発明の細胞培養システムに播種された。図の上部のラベルは、プロットが由来するゲートを示す。
【0046】
図18図18は、本発明の実施形態に従う免疫療法生成物を生成するための例示の方法を示す。
【0047】
図19図19は、ある特定の実施形態に従う本発明のシステムを表す。
【0048】
図20-1】図20は、MicroDEN N3 iDCの表現型を示す。実験N1~N2についてのデータを図28および30に示す。
図20-2】図20は、MicroDEN N3 iDCの表現型を示す。実験N1~N2についてのデータを図28および30に示す。
【0049】
図21-1】図21は、6ウェルプレートのN3 iDCの表現型を示す。実験N1~N2についてのデータを図29および31に示す。
図21-2】図21は、6ウェルプレートのN3 iDCの表現型を示す。実験N1~N2についてのデータを図29および31に示す。
【0050】
図22図22は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての分化データ、特に、本発明のカートリッジ(39.7cm)または6ウェルプレート(9.5cm/ウェル)の表面積に対して正規化された回収されたiDCを示す。
【0051】
図23図23は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての分化データ、特に、本発明のカートリッジまたは6ウェルプレートの表面積に対して正規化された回収された平均iDCを示す。データは、示された実験の平均±標準偏差として表した。データは表1~3において一覧にする。
【0052】
図24図24は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての分化データ、特に、200k~600k MO/cmの播種密度でのそれぞれの実験についてのiDC収率を示す。
【0053】
図25図25は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての分化データ、特に、200k~600k MO/cmの播種密度でのそれぞれの実験についての平均iDC収率を示す。データは、示された実験の平均±標準偏差として表した。データは表1~3において一覧にする。
【0054】
図26-1】図26は、200k~600k MO/cmの分化播種密度で本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての同種機能アッセイの増殖統計を示す。凡例は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および単一のドナー由来の100万個の同種T細胞と共培養されたiDCの数を表す。表形式データを表4~6に示す。
図26-2】図26は、200k~600k MO/cmの分化播種密度で本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての同種機能アッセイの増殖統計を示す。凡例は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および単一のドナー由来の100万個の同種T細胞と共培養されたiDCの数を表す。表形式データを表4~6に示す。
図26-3】図26は、200k~600k MO/cmの分化播種密度で本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについての同種機能アッセイの増殖統計を示す。凡例は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および単一のドナー由来の100万個の同種T細胞と共培養されたiDCの数を表す。表形式データを表4~6に示す。
【0055】
図27-1】図27は、実験N1についての同種機能アッセイの増殖ヒストグラムを示す。列は、本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについてのMO播種密度を表す。行は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および100万個の同種T細胞とともに5日間共培養されたiDCの数を表す。緑色の垂直線は、非分裂細胞の位置でもある、染色された未刺激の対照のピーク位置を表す。より太い曲線は、全体的なフィットを表し、より細い曲線は、個々のT細胞の生成を表す。実験N2~N3についてのヒストグラムを図32および33に示す。未刺激のT細胞対照を図34~36に示す。
図27-2】図27は、実験N1についての同種機能アッセイの増殖ヒストグラムを示す。列は、本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについてのMO播種密度を表す。行は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および100万個の同種T細胞とともに5日間共培養されたiDCの数を表す。緑色の垂直線は、非分裂細胞の位置でもある、染色された未刺激の対照のピーク位置を表す。より太い曲線は、全体的なフィットを表し、より細い曲線は、個々のT細胞の生成を表す。実験N2~N3についてのヒストグラムを図32および33に示す。未刺激のT細胞対照を図34~36に示す。
図27-3】図27は、実験N1についての同種機能アッセイの増殖ヒストグラムを示す。列は、本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートにおいて生成されたiDCについてのMO播種密度を表す。行は、iDCの供給源(本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレート)、および100万個の同種T細胞とともに5日間共培養されたiDCの数を表す。緑色の垂直線は、非分裂細胞の位置でもある、染色された未刺激の対照のピーク位置を表す。より太い曲線は、全体的なフィットを表し、より細い曲線は、個々のT細胞の生成を表す。実験N2~N3についてのヒストグラムを図32および33に示す。未刺激のT細胞対照を図34~36に示す。
【0056】
図28-1】図28は、本発明の細胞培養システムのN1のiDCの表現型を示す。
図28-2】図28は、本発明の細胞培養システムのN1のiDCの表現型を示す。
【0057】
図29-1】図29は、6ウェルプレートのN1のiDCの表現型を示す。
図29-2】図29は、6ウェルプレートのN1のiDCの表現型を示す。
図29-3】図29は、6ウェルプレートのN1のiDCの表現型を示す。
【0058】
図30-1】図30は、本発明の細胞培養システムのN2のiDCの表現型を示す。
図30-2】図30は、本発明の細胞培養システムのN2のiDCの表現型を示す。
【0059】
図31-1】図31は、6ウェルプレートのN2のiDCの表現型を示す。
図31-2】図31は、6ウェルプレートのN2のiDCの表現型を示す。
【0060】
図32-1】図32は、実験N2:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
図32-2】図32は、実験N2:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
図32-3】図32は、実験N2:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
【0061】
図33-1】図33は、実験N3:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
図33-2】図33は、実験N3:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
図33-3】図33は、実験N3:同種機能アッセイのヒストグラムを示す。T細胞対照を図34~36に示す。
【0062】
図34図34は、N1についての同種機能アッセイのT細胞対照を示す。100万個のT細胞(N1~N3と同じドナー)を、iDCなしで5日間培養した。
【0063】
図35図35は、N2についての同種機能アッセイのT細胞対照を示す。100万個のT細胞(N1~N3と同じドナー)を、iDCなしで5日間培養した。
【0064】
図36図36は、N3についての同種機能アッセイのT細胞対照を示す。100万個のT細胞(N1~N3と同じドナー)を、iDCなしで5日間培養した。
【発明を実施するための形態】
【0065】
詳細な説明
樹状細胞(DC)は、循環血液および身体の他の部分の両方に存在する抗原提示細胞である。DCは、免疫系の重要な構成要素である。これらの細胞による抗原の提示は、すべての種類の感染に対する免疫系の動員、ならびに免疫記憶の発生および持続を推進するものである。DCを標的にするように特異的に設計されたワクチンは、現在、がんを含む幅広い範囲の疾患のために開発されており、感染性疾患、がんおよび移植拒絶反応のための個別化DCワクチンを開発するための主要な試みが現在進行中である。これらの疾患カテゴリーでは、in vitroで増殖したT細胞を使用する細胞に基づく療法は、主要な進展が現在生じている別の未研究分野を代表する。DCは、最も強力な抗原提示細胞(APC)であり、APCのみがナイーブT細胞を誘導することができる。DCは、T細胞のin vivoの増殖において重要な役割を果たし、in vitroでT細胞を増殖するために使用することができる。機構的な見地から、DCは、がんおよび感染性疾患に対する防御免疫、ならびに自己免疫および移植拒絶反応の防止のために重要なヒト応答の研究の必須部分である。
【0066】
臨床研究および基礎研究の背景の両方におけるDCの極めて重要な役割にもかかわらず、個体からこれらの細胞を入手するための方法は、開発中で、非効率的なプロセスのままである。DCは血液中に非常に低濃度(<1%)で存在するので、これらの細胞は、静置培養および培養培地中に含有されるサイトカイン(IL-4およびGM-CSF)での刺激の多くの時間と労力を要するプロセスを伴って、単球から生成しなければならない。特に、多数の手動のステップが、患者由来全血、白血球フェレーシス生成物、または末梢血単核細胞(PBMC)の試料から、ワクチン開発、T細胞療法または機構的研究のために利用され得る十分な数のDCに進めるために必要である。スケーリングは、1つもしくは2つの条件、または別々の採血を含む研究のための数10個の試料のレベルでさえ、職員の時間および手動のステップの数に関するリソースの要件に起因して厄介である。自己DCに基づく細胞療法およびワクチンにおけるなどのより大きなスケールでのこれらの細胞の既存の使用および計画された使用を考えると、DC生成に対する従来のアプローチは、最も重大には、製造プロセスの効率性および信頼性だけでなく、供給および労働力の費用の観点から、非常に大きな負担をもたらす。
【0067】
本発明は、細胞培養カートリッジ内で均一で対称な流れを有する樹状細胞の生成のための、自動細胞培養カートリッジおよびシステムを提供する。細胞培養カートリッジの上面および細胞培養カートリッジの底面の間に形成された細胞培養チャンバーを含む細胞培養カートリッジが提供される。細胞培養チャンバーは、細胞培養チャンバー中で対称な流体の流れチャンネルを提供し、細胞培養チャンバー中のデッドスポットまたはデッド領域を回避するように幾何学的に構成された複数のゾーンを含む。流れにおけるデッドスポット(デッド領域)は、新たな培地が提供され、枯渇した培地が除去される場合に均一な流れが維持されず、それによりDCの生成に影響を及ぼす、細胞培養容器中の領域である。細胞培養カートリッジ中に複数のゾーンを提供することにより、本発明は、流体の流れに関してデッドスポットまたはデッド領域がない対称な流れチャンネルを提供する。加えて、例示の実施形態の細胞培養チャンバーは、新たな培地の均一な流れおよび枯渇した培地の除去を可能にする特徴を提供する。
【0068】
図1は、細胞培養チャンバー1000の上面図を示す。細胞培養チャンバー1000は、細胞培養カートリッジの上面と底面との間に形成される。複数の流体の流れの入口1130が、チャンバー中に提供される。図1に示される実施形態は、8つの入口を含み、入口の1つは、極めて細い線1135によって示されている。入口1130は、細胞培養カートリッジのそれぞれのコーナー1120に配置される。入口1130は、細胞培養カートリッジの上面に位置してもよい。1つの出口1150は、細胞培養カートリッジの上面の細胞培養チャンバーの中央に位置する。チャンバー1000は、細胞培養チャンバー1000中で対称な流体の流れチャンネルを提供するように幾何学的に構成された複数のゾーン1160を含む。ノッチ1110は、細胞培養チャンバーの外側の外周に配置され、細胞培養チャンバー中で不均一な流体の流れが存在するデッド領域またはデッドスポットを回避するのを助ける。支柱1140は、底面から上面に伸び、その結果、上面は、たるまず、またはたわまず、チャンバー中で増加した圧力を作り出す。図1に示される実施形態は、本発明の例示的な非限定的な実施形態である。他の非限定的な実施形態は、異なる数の入口を含んでいてもよい。非限定的な実施形態の一部の例では、本発明によるカートリッジは、2つの入口、5つの入口、10の入口、13の入口、14の入口、20の入口、30の入口、および100の入口を含んでいてもよい。非限定的な実施形態は、異なる数のコーナーをさらに含んでいてもよい。非限定的な実施形態の一部の例では、本発明によるカートリッジは、5つのコーナー、10のコーナー、17のコーナー、25のコーナー、50のコーナー、および100のコーナーを含んでいてもよい。
【0069】
本発明では、流体の流れの対称性は、細胞培養カートリッジ中で達成される。例えば、カートリッジは、個々のゾーンで構成され、それぞれの個々のゾーンは、2つの流体の入口の間の空間である。図1に示されるように、それぞれのゾーンは、中央で先細になる三角形の底辺を有し、それぞれのゾーンは他のゾーンと対称である。一部の例では、カートリッジ中の流体の入口の数は、8つの流体の入口よりも多くてもよく、またはそれよりも少なくともよい。好ましい実施形態では、カートリッジは、入口および共有の出口(中央)を有する、8つの個々の領域またはゾーンに分割される。これは、カートリッジ全体が、新たな分化培地で灌流され、流れにおけるデッド領域またはデッドスポットが形成されないことを確実にする。さらにまた、4つの三角形のノッチ1110は、これらの領域中に生じる流れにおけるデッド領域またはデッドスポットを回避するために、周辺の周囲に位置する。カートリッジは、細胞培養カートリッジの上面を支持する8つの支柱を含み、これは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMAまたはアクリレート)で構築されていてもよい。支柱なしでは、PMMAの上面はたるみ、培地がカートリッジの上部を支えることになるので、圧力がカートリッジ内に蓄積されるだろう。
【0070】
カートリッジは、任意の好適な材料で構築されていてもよい。一部の例では、カートリッジは、ポリスチレン、アクリレートまたはそれらの組合せから構築される。例として、底部または底面はポリスチレンを含み、上面および側面はアクリレートである。別の例として、高体積の製造のために、カートリッジは、全体的にポリスチレンで生成されてもよい。
【0071】
例示の一実施形態では、底面は、ポリスチレンおよび/またはアクリレートを含む。培養が起こる底面についてポリスチレンを使用する1つの利点は、この材料がPBMCから樹状細胞を生成するプロセスにおいて有用な役割を果たすことである。特に、ポリスチレン表面は、PBMCの異種懸濁液から単球を濃縮するために使用することができる。これは、例えば、IL4およびGM-CSFを含有する培地中での培養による単球の分化によってDCを生成するために利用される培養プロセスにおける第1ステップである。樹状細胞生成に同じポリスチレン表面を、T細胞刺激の1サイクルを通して使用することは、それが、他の方法では必要とされるであろう多数の移動ステップを排除し、それによってDC刺激された治療用T細胞の製造のための閉鎖系を可能にするので、バイオプロセスの観点から非常に価値がある。
【0072】
さらにまた、任意の好適な材料の処理を、カートリッジにおいて行ってもよい。一部の実施形態では、底部のポリスチレン表面は、細胞接着を容易にするために改変されてもよい。例えば、底部のポリスチレン表面は、グロー放電またはコロナ放電としても公知の、空気または酸素プラズマによる処理を受けてもよい。例えば、底部のポリスチレン表面は、限定されるものではないが、フィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンを含む、細胞接着を容易にすることが公知のタンパク質またはポリアミノ酸による改変を受けてもよい。
【0073】
底面は、6および24ウェルプレート(それぞれ、9.5cmおよび1.9cm)またはTフラスコ(25cm~225cm)などの従来のウェルプレートと同等の表面積を有し得る。表面積は、従来のウェルプレート(例えば、標準的な細胞培養皿およびフラスコと同等の表面積を有する)よりも小さくてもよく、またはさらに大きくてもよいことも理解され、例えば、約2.0cm~約500cm、例えば、約2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、100.0、125.0、150.0、175.0、200.0、400.0、500.0cmの表面積、およびこれらの間の任意の表面積を有する。
【0074】
細胞培養カートリッジの表面は、機械的固定、接着剤および溶剤結合、ならびに溶接などの当技術分野において公知の任意の方法を使用して、互いに連結することができる。しかしながら、本発明の実施形態のシステムおよび方法を使用して生成される細胞免疫療法生成物がヒト患者に投与されることを考えると、規制の問題は、細胞培養チャンバーを組み立てる際にある特定のまたはすべての接着剤の使用を妨げる場合がある。したがって、ある特定の実施形態では、表面は、接着剤を使用することなく連結される。一実施形態では、底壁、側壁および上壁などの細胞培養チャンバーのすべての表面は、第1の材料(例えば、ポリスチレン)を含み、超音波溶接を使用して互いに連結される。前述の配置が例にすぎないこと、および表面を連結するための他の配置も本発明の企図される実施形態であることが理解されるべきである。
【0075】
1つまたは複数の細胞培養チャンバーの高さは、変えることができる。例えば、限定されないが、細胞培養チャンバーの高さの範囲の例としては、0.5mm~100mm、例えば、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0、100.0mmまたはそれよりも高いいずれかの高さ、またはこれらの間の任意の高さが挙げられる。ある特定の実施形態では、チャンバーの高さは、約0.8mL~6mLの体積量で、2~6mmなどの典型的には6および24ウェルプレートで行われる培養における液体の高さと同等であり得る。他の実施形態では、細胞培養チャンバーは、約50cmの培養表面を有する、10mm~50mmなどの大きなサイズである。
【0076】
本発明の一部の実施形態では、カートリッジは、光学的に透明(clear)、または透明(transparent)である。このような光学的透明性は、適当に分離された流体ポートと組み合わせて、使用者がカートリッジ内の任意の垂直面で細胞を見ることを可能にする。図2~5に示されるように、本発明の実施形態は、光学的に透明(clear)、または透明(transparent)な細胞培養カートリッジを含む。
【0077】
図2は、細胞培養カートリッジおよびシステムの正面図を示す。図3は、細胞培養カートリッジおよびシステムの上面図を示す。図4は、細胞培養カートリッジおよびシステムの左側面図を示す。図5は、細胞培養カートリッジおよびシステムの右側面図を示す。
【0078】
さらに、図2~5に示されるように、ストップコックは、カートリッジ上、またはリザーバーボトル上に設置されてもよい。特に、ストップコックは、カートリッジ上の特定のポートに設置され、それぞれ、特定の機能を果たす。設置は、それぞれの機能に特有であり、作業は、プロセスが成功し、ワークフローが容易であることを確実にする最適な位置を決定するために行った。例えば、前面のストップコックは、播種および回収するためであり、ストップコックの上部のルアー作動バルブ(LAV)は、シリンジを無菌的に接続するのを可能にする。前右側のストップコックは、播種および回収する(洗浄のための冷緩衝液を添加する)ためであり、カートリッジ内部の空気は、細胞溶液がカートリッジに播種されるにつれて、このストップコックでフィルターを通して流れ出す。別の例として、後左側のストップコックは、回収のためであり、カートリッジ内部の空気は、細胞溶液が除去されるにつれて、カートリッジに流れ込む。ストップコックに取り付けられたフィルターは、液体がカートリッジに添加またはカートリッジから除去されるにつれて、カートリッジ内の圧力または減圧の蓄積を回避する。
【0079】
本発明では、LAVは、培地を添加および/または除去するために、ボトルにおいて使用されてもよい。伝統的には、LAVは、麻酔およびIVラインのために使用するために販売および市販されている。したがって、培地の添加または除去のためのLAVの使用は、従来の使用から逸脱している。
【0080】
計算流体力学(CFD)は、現在のEDENカートリッジの設計に役立った。特に、CFDは、カートリッジのサイズ、支柱の設置、ならびに三角形のノッチの設置およびサイズの設計において役立った。
【0081】
一部の実施形態では、8μL/分の灌流流速が維持され得る。これは、MicroDENなどの細胞培養システムと同じ灌流速度であるので、本発明によるシステム(EDEN)を使用して行われるMicroDENの線形スケールアップは可能性が高い。EDENカートリッジの8つのサブセクションのそれぞれは、単一のMicroDENカートリッジよりもわずかに大きく、そのため、細胞に対する灌流の効果は、MicroDENにおけるように、EDENにおいて同様であるはずである。したがって、本発明は、異なる流体の流速などの未知の因子なく、MicroDENの実験を容易にEDENにスケール調整することを可能にする。
【0082】
図6は、本発明のシステム100の実施形態を示す。蠕動ポンプ110を備える。ポンプ110は、流体を、細胞培養カートリッジ120に、およびそこからポンプで送るために使用される。細胞培養カートリッジ120は、細胞が接着する底面125を有する。他の実施形態では、細胞は、底面に接着しない。細胞培養カートリッジ120は、細胞培養カートリッジ120のコーナーに配置された8つの流体入口145を有する。1つの流体出口135は、細胞培養カートリッジ120の中央に配置される。接続チューブ140は、流体入口を、分化培地182を含有する分化培地リザーバー(灌流源)180と接続する。分化培地リザーバー180は、細胞培養カートリッジ120にポンプで送られる分化培地182を含有する。接続チューブ140は、流体出口135を廃棄物リザーバー184とも接続する。枯渇した培地は、出口135を通って細胞培養カートリッジ120を出て、廃棄物リザーバー184にポンプで送られる。分化培地リザーバー180および廃棄物リザーバー184上の蓋170および175は、除去できず、それにより無菌系を維持する。他の実施形態では、蓋170および175は除去できる。リザーバーボトル180および184におけるストップコックおよび/またはLAV160および165は、分化培地を入口ボトルに満たし、出口ボトルから廃棄物を除去する無菌での移動を可能にする。コンソール190は、以前に述べた構成要素の配置のための設計空間を備え、ディスプレイ/ユーザーフェイス192、接続194およびオン/オフスイッチ196も備える。
【0083】
図7は、2つのカートリッジを有する本発明の実施形態を示す。細胞培養カートリッジ200は、単球から樹状細胞分化のために提供される。より小さなカートリッジ220は、成熟および抗原パルス化のために提供される。他の実施形態では、成熟および抗原パルス化は、第2のカートリッジを使用することなく、主たる細胞培養カートリッジ中で行われてもよい。
【0084】
図8は、成熟および抗原パルス化のためのより小さなカートリッジ320を有する本発明の実施形態を示す。より小さいカートリッジ320は、より小さいカートリッジ320から移動する最終生成物を含有する輸液バッグ330に流体接続される。
【0085】
図9は、本発明の使い捨ておよび非使い捨ての構成要素を示す。EDENのコンソール410は、非使い捨てであり、長さLを有する。この実施形態では、長さLは、14インチである。より小さなカートリッジ420は、成熟および抗原パルス化のためのものである。接続チューブ430は、入口および出口をリザーバーおよびカートリッジと接続する。より小さなカートリッジ420および接続チューブ430は、単回使用および使い捨てである。
【0086】
図10は、EDEN自動流体システムの実施形態を示す。EDENシステムは、新たな分化培地を細胞培養カートリッジに連続して灌流する間に、iDCに由来する単球を生成する。
【0087】
図11~14は、本発明の実施形態による細胞培養カートリッジの設計を示す。図11は、細胞培養カートリッジの流れチャンネルの細胞培養カートリッジの設計を示す。図12は、細胞が存在する細胞培養カートリッジの底部で(共有される)ポリスチレン表面の細胞培養カートリッジの設計を示す。図13は、細胞培養カートリッジ内の灌流に起因する流線の細胞培養カートリッジの設計を示す。図14は、細胞培養カートリッジ内の灌流に起因するゲージ圧力の細胞培養カートリッジの設計を示す。
【0088】
図15は、細胞培養カートリッジへのサイトカイン灌流を示す。この実施形態では、カートリッジは、最初、サイトカインなしの水(培地)で満たされる。サイトカインは、1.16mol/m3(IL-4)で8つの入口ポートでカートリッジに灌流され、カートリッジを通る流れは、灌流によって駆動され、中央で出口ポートを通って流出する。実際には、細胞培養カートリッジは、サイトカインを含有する培地で満たされる。データは、図12に示されるように、流れチャンネルのより低い面または底面で取得される。
【0089】
図16は、6日間でMOから分化した、細胞培養カートリッジおよび6ウェルプレートで生成されたiDCの表現型を示す。図の上部のラベルは、プロットが由来するゲートを示す。
【0090】
図17は、細胞培養カートリッジからのiDCおよびmDCの表現型を示す。iDCは、細胞培養カートリッジ中で生成され、次いで、1日または3日の成熟のために本発明の細胞培養システムに播種された。図の上部のラベルは、プロットが由来するゲートを示す。
【0091】
図18は、本発明の実施形態に従う免疫療法生成物を生成するための例示の方法を示す。図18は、本明細書に記載のシステムを使用する、細胞に基づく免疫療法生成物の生成のための方法の概要を示す。簡潔には、本発明のある特定の実施形態に従って細胞療法製品を生成するステップは、細胞培養チャンバーを含有する生物反応器中、刺激された抗原提示細胞を、T細胞を含有する細胞とともに共培養することを含む。増殖した治療用T細胞生成物を含有する上清は、培養の間に生成される。ある特定の態様では、患者において治療応答を生じさせるのに十分な抗原特異的T細胞の量を生成させるために、T細胞は、1つまたは複数の追加の細胞培養チャンバーにおいて追加培養を受けなければならない。この追加培養を達成するために、上清が生成された培養チャンバーから、抗原提示細胞の新たな供給物を含有するその後の細胞培養チャンバーへの上清の移動が生じなければならない。細胞培養チャンバー間の上清の移動は、第1の細胞生成物を含む上清を、流体コネクターを通して新たな細胞培養チャンバーに移動させる、第1の細胞培養チャンバーへのガス流の導入を含んでいてもよい。さらにまた、それぞれの培養ステップの間に、例えば、培地およびサイトカインを含有する灌流流体は、チャンバーに灌流され得る。ある特定の態様では、灌流流体は、細胞が培養の間にチャンバー内に残ることを確実にするために、垂直の流路に沿ってチャンバーを流れる。本発明のシステムを使用する含まれる唯一の手動のステップは、システムへの1つまたは複数のその後の細胞培養カートリッジの提供であり、それぞれの細胞培養カートリッジは、細胞培養チャンバーを含み、それぞれのチャンバーは抗原ペプチドパルス化自己抗原提示細胞の新たなバッチを含有する。移動を容易にするガスの使用はまた、システムのセットアップを操作する手動のステップを含んでいてもよいが、システムの無菌性は破壊しない。
【0092】
本発明のある特定の実施形態では、細胞は回収される。細胞回収は、典型的には、冷緩衝液をカートリッジに注射することによって達成される。本発明の一部の実施形態では、ペルチェ素子を、カートリッジを約20℃~約30℃の間のどこかに冷却するためにカートリッジの下に組み込んでもよく、これは、細胞をより多くの流体の体積に希釈する必要なく、放出を可能にする。
【0093】
一部の実施形態では、八角形のカートリッジ中で生成された樹状細胞を、より小さなカートリッジに動かしてもよい。樹状細胞に基づく免疫療法を製造する場合、単球の分化から生成される未成熟樹状細胞(第1のステップ)は、典型的には、追加ステップ(成熟および抗原パルス化)に付される。慣習的に、これは、複数のフラスコまたはウェル中で第1のステップを行い、次いで、未成熟樹状細胞を単一のフラスコまたはウェルに組み合わせることによって達成される。この種類の濃度/統合は、高価な成熟および抗原パルス化のために使用される試薬の使用、およびその後の廃棄を少なくすることを可能にする。本発明では、第1のステップが行われる八角形のカートリッジからの未成熟樹状細胞は、成熟および抗原パルス化のためのより小さなカートリッジに移動させる。本発明の一部の実施形態では、成熟および抗原パルス化は、主たる細胞培養カートリッジ中で行われ、第2のカートリッジを使用する必要はない。
【0094】
本発明の一部の実施形態は、それぞれ、単球(MO)および未成熟樹状細胞(iDC)を播種および回収するために、ルアー作動バルブ(LAV)を使用し得る。これは、細胞溶液が播種/回収の間に失われないように、ワークフローを改善する。シリンジは、MicroDENシステムなどのLAVに接続されてもよい。シリンジは、MO溶液(播種するため)および冷緩衝液(回収のため)を添加するための漏斗として使用されてもよい。シリンジは、「ピペッティング」動作によって引き起こされる乱流により、iDCの接着を取り、再懸濁するために上下に「ピペッティングする」ために使用されてもよい。この「ピペッティング」の上下は、実際には、シリンジのプランジャーの押し出し、および引き抜きである。
【0095】
本発明のシステムおよび方法が1つまたは複数の細胞培養カートリッジを利用する例示の配置をここに記載し、それぞれの細胞培養カートリッジは、免疫療法生成物を生成するための患者の細胞材料の処理を行うために互いに流体連結されるように構成された細胞培養チャンバーを含有する。細胞培養カートリッジが、ある特定の実施形態では、閉鎖環境に提供されることが理解されるべきである。この例示の実施形態のスケールアップは、直列および/または並列の処理を可能にするようにモジュール(例えば、細胞培養カートリッジ)を追加することによって、当業者の知識内である。当業者は、異なる配置または代替の配置が、生成される生成物に基づいて所望される場合があることも認識する。
【0096】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のポンプは、細胞培養チャンバーに灌流培地を灌流するために、細胞培養チャンバーに作動可能に連結される。灌流培地は、任意の好適な培地を含む。一部の実施形態では、灌流培地は、分化培地である。細胞培養カートリッジは、1つまたは複数の流体リザーバーを含むこともできる。流体リザーバーは、細胞培養チャンバーと流体連絡しており、1つまたは複数のポンプに作動可能に連結され得る。流体リザーバーをポンプおよび細胞培養チャンバーに接続するための1つまたは複数のチューブも備える。ある特定の態様では、1つまたは複数のポンプは、流体を、流体リザーバーから、細胞培養チャンバーを通って、および廃棄物収集リザーバーに、ポンプで送るために構成される。実施形態では、流体は、流体リザーバーからチューブを通ってポンプに、および入口を介して細胞培養チャンバーに、出口を介して細胞培養チャンバー後退し、チューブを通って、廃棄物収集リザーバーに、動く。
【0097】
ある特定の実施形態では、流体リザーバーおよび/または廃棄物収集リザーバーは、細胞培養チャンバー内に含まれるか、またはチャンバーに流体連結されるかのいずれかの1つまたは複数の蓋つきボトルとしてそれぞれ備えられ得る。それぞれのリザーバーは、入口ポートおよび出口ポート、または出口ポートおよび1つまたは複数の細胞培養チャンバーの入口に流体連結されたベントを含む。ある特定の態様では、例えば、ルアーコネクター、およびルアーコネクターの周囲にフィットするように切断されたシリコーンガスケットを使用して、入口もしくは出口のいずれかまたは両方を通じた漏出を防止することができる。
【0098】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の細胞培養カートリッジは、プロセスがインキュベーター内で行われるように、インキュベーター内にフィットするようにサイズを合わせ、構成される。インキュベーター内の条件は、37℃の温度、および95~100%の相対湿度の維持を含む。そのため、選択された材料は、材料(流体および生物を含む)がそのような条件下で増殖する傾向があることを考えると、これらの条件に耐える完全性を有していなければならない。さらにまた、一部の状況では、インキュベーター内の条件は安定なままであり、温度の自動記録は、インキュベーター中で行われる反応における任意の異常と相関する温度変動の知識を有することが可能である。したがって、任意の動力供給は、インキュベーター内の環境を変化させないはずである。例えば、ある特定のポンプは熱を生じる。
【0099】
したがって、一実施形態では、ポンプは、細胞培養カートリッジとは別に収容されるが、依然として、細胞培養カートリッジと、作動可能に流体連絡している。別の実施形態では、ポンプは、細胞培養カートリッジに直接取り付けられ、インキュベーター内に位置するが、熱はないか、または熱を散逸させるために放熱板および/もしくはファンに作動可能に接続される。この構成にかかわらず、ポンプは、細胞培養カートリッジに、次に細胞培養チャンバーに作動可能に連結される。灌流に基づく自動細胞培養システムに関する追加の詳細、例えば、ポリスチレン底面を有するチャンバーを使用する単球からの樹状細胞の生成のための搭載された使い捨ての蠕動ポンプおよび大スケールの培養システムによって可能になる、搭載された試薬の貯蔵および灌流を有する内皮細胞培養のための小スケールの培養システムは、国際特許出願第PCT/US2016/040042号および同第PCT/US2016/60701号に見ることができ、この両方とも、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0100】
このシステムは、細胞培養リザーバーの温度を制御するためのヒーター、および必要に応じて流体リザーバーを含むこともできる。このような構成では、インキュベーターは必要ではなく、システムは、電力源のみで自律的に作動し得る。システムがヒーターを欠く場合、これは、細胞培養インキュベーターの内部で作動し得る。本発明の一部の実施形態は、培地緩衝液のための二酸化炭素(CO)環境を含む。
【0101】
さらに他の態様では、細胞培養チャンバーは、細胞培養チャンバーに作動可能に連結された1つまたは複数のセンサー(示さない)を含む。センサーは、任意の好適なパラメーターを測定することが可能であり得る。例えば、センサーは、pH、溶存酸素、総生物量、細胞直径、グルコース濃度、ラクテート濃度および細胞代謝産物濃度などの細胞培養チャンバー内の1つまたは複数のパラメーターを測定ことが可能であり得る。システムが複数の細胞培養チャンバーを含む実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、1つまたは複数の細胞培養チャンバーに連結され得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、1つまたは複数の細胞培養チャンバーに連結されるが、システム中のすべてのチャンバーには連結されない。他の実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、システム中のすべての細胞培養チャンバーに連結される。1つまたは複数のセンサーに作動可能に連結された複数のチャンバーを有するシステムでは、センサーは、それらが連結されるそれぞれのチャンバー中と同じであり得るか、それらはすべて異なり得るか、または一部のセンサーが同じであり得、一部が異なり得る。ある特定の態様では、1つまたは複数のセンサーは、自動モニタリングおよびパラメーターの調整が可能であるように、命令を行うための中央演算処理ユニットを有するコンピュータシステムに作動可能に連結される。細胞培養チャンバーを使用する本発明の方法をインプリメントするためのコンピュータシステムに関する追加の詳細は下記に提供する。
【0102】
ある特定の実施形態では、細胞培養チャンバーは、入口および出口を有し、この両方とも、1つまたは複数の追加の容器との流体コネクターを介してチャンバーを流体連結するために使用することができる。ある特定の実施形態では、追加の容器は、1つまたは複数の追加の細胞培養チャンバーを含む。本発明のシステムは、例えば、免疫療法生成物を生成するために直列で互いに流体接続するように構成された、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、または100までの間、もしくは100よりも多くの任意の数の細胞培養チャンバーを含むことができる。あるいは、加えて、1つまたは複数の細胞培養チャンバーは、互いに平行に配置して、一度に2以上の個体に対する免疫療法生成物の生成を可能にすることができる。好ましい実施形態では、細胞培養カートリッジの細胞培養チャンバーは、無菌接続を介して接続される。
【0103】
システムおよびその構成要素の一部またはすべては、CADソフトウェアを使用して設計することができ、次いで、プラスチックを特定のサイズおよび形状に切断することを可能にするレーザーカッターに移すことができる。入口および出口などのさまざまな接続は、穴を通してレーザーで切断することによって生成することができ、次いで、それを手動で穴を開けて、雄型ルアー付属品を受け入れるためのねじ山を提供することができる。流体は、その後、ルアーアダプターを、尖っていない針の部分に押し込まれたチューブを有する尖っていない分注針に接続することによって、システムに導入することができる。流体システムの構成要素の構築に関する追加の詳細は、国際特許出願第PCT/US2016/040042号および同第PCT/US2016/60701号に見ることができ、この両方とも、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。システムおよびその構成要素の一部またはすべては、射出成型を使用して生成することもできる。
【0104】
上記の記載は、システムの構成要素およびさまざまな可能な配置に焦点を当てている。以下の説明は、本発明の例示の実施形態のシステムを使用して行われるプロセスに焦点を当てる。抗原特異的T細胞を刺激および増殖させるために、プロセスは、細胞培養チャンバー中、T細胞を含有する細胞と同じ個体から得られたAPCとの共培養で開始する。特定の実施形態では、T細胞を含有する細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を含み、APCは、DCを含む。T細胞を含有する細胞およびAPCは、約1000:1~1:1000の比(T細胞を含有する細胞:APC)、例えば、限定されないが、約1000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、400:1、300:1、200:1、100:1、75:1、50:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:50、1:75;1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000などの比、またはこれらの間の任意の比で、細胞培養チャンバーに提供することができる。一態様では、10:1の比が好ましい。
【0105】
APCとT細胞を含有する細胞との相互作用からT細胞の刺激および増殖を開始するために、APCを刺激する必要がある。これは、1つまたは複数の刺激分子の使用により行うことができる。ある特定の実施形態では、刺激分子は、非腫瘍特異的である。他の実施形態では、刺激分子は、腫瘍特異的である。例えば、刺激分子は、異なる抗原ペプチドなどの個体の腫瘍の1つまたは複数の特性から選択することができる。一部の実施形態では、刺激分子は、好ましくは、培養サイクルの開始の際にのみ添加される。刺激分子は、約数分のみ、1時間、数時間、またはそれよりも長い期間にわたって添加することができる。好ましい一実施形態では、刺激分子は、約1時間の期間にわたって添加される。
【0106】
2つの細胞材料の培養の間、より軽い非接着性T細胞を含有する上清が形成されるが、より重い成熟APC(例えば、樹状細胞)は、底面に接着するか、または底面に存在する。DCがAPCとして使用されるこれらの実施形態では、増殖したT細胞は、初代DCを培養物中で7日を超えて維持することができないので、7日の最後までに細胞培養チャンバーから抽出しなければならない。そのため、T細胞の追加の増殖が望ましい場合、樹状細胞の新たな供給が必要である。1バッチの樹状細胞を使用する細胞の培養が、7日よりも短い任意の期間であり得ることも理解されるべきである。例えば、細胞は、1分未満~7日の任意の期間培養することができ、培養期間は、所望の刺激の程度に依存する。
【0107】
例示の実施形態では、7日までの培養後、増殖したT細胞は、抽出され、例えば、最初の細胞培養チャンバー中で使用された同じ抗原ペプチドでパルスされた新たなDCを含有する新たな細胞培養チャンバーに移動される。刺激プロセスは、T細胞の治療用量のための十分に多くの数の細胞を生成するために、必要により、多くの回数繰り返すことができる。典型的なウェルプレートと同等の培養表面積を使用する場合、刺激プロセスは、典型的には、T細胞の十分な供給を生成するために、4回繰り返される。
【0108】
APCおよびT細胞の共培養は、培養培地中で行われる。培養培地の例としては、限定されるものではないが、RPMI培地、およびCellGenix Inc.(Portsmouth、NH)によって、商標CELLGENIXで販売されているDC培地が挙げられる。当技術分野において公知の任意の他の好適な培養培地を、本発明の実施形態に従って使用することができる。IL-4およびGM-CSFなどのサイトカインも培養培地に添加することができる。
【0109】
一実施形態では、培地およびサイトカインの灌流は、細胞に基づく免疫療法生成物の形成を助けるために、細胞培養チャンバー内の細胞混合物に提供され得る。DCによるT細胞の刺激のためのプレートに基づくプロトコールでは、およそ2mLの培養体積は、それぞれ7日の刺激期間内で2回起こるサイトカインの注入により、開始から維持される。灌流の主な利点は、培地およびサイトカインの一貫した局所濃度プロファイルを維持する能力であり、従来技術のプレートに基づくプロトコールと比較して、より高い収率、および単球のDCへの分化のプロセスを加速する潜在的な能力を確実にする。しかしながら、接着(DC)および非接着(T細胞)型の組合せは、機械力に対するDCの高い感受性とともに、特に、細胞培養チャンバーを通る流体の流れに関して、抗原特異的T細胞の刺激および増殖にとっての難題をもたらす。そのため、培地およびサイトカインが灌流により提供されるこれらの実施形態では、本発明のシステムは、DCなどのある特定の抗原提示細胞の剪断感受性も考慮に入れながら、細胞培養カートリッジから細胞を除去することなく、細胞に栄養分およびサイトカインを供給することができなければならない。特に、本発明の一部の実施形態のシステムおよび方法は、成長因子を回復させ、DCの最小の物理的刺激を維持しながら、T細胞増殖の好ましい自己分泌/傍分泌シグナルの保持を最適化することを目標とする。これを構成するために、細胞培養チャンバーを通る灌流の流れの方向および速度の両方を考慮に入れなければならない。例えば、本発明の一部の実施形態は、対向流の培地の流れの配置などの一方向流以外の培地の流れの配置を含み得る。
【0110】
ある特定の態様では、流体の流速は、抗原提示細胞の沈降速度よりも低く維持される。このようにして、抗原提示細胞は、それらの質量のために、培養チャンバー内に維持される。言い換えれば、抗原提示細胞は、細胞培養チャンバーの底部の方向に沈み、したがって、細胞培養チャンバー中に残る。
【0111】
他の態様では、細胞培養チャンバーの複数の入口および出口は、灌流流体などの流体が垂直の流路に沿って細胞培養チャンバー内を動くように配置される。この構成は、特に、チャンバーを通る流速が2~10mL/分の範囲である場合に、細胞(例えば、DCおよびT細胞の両方)がチャンバーから離れるのを防止するのに役立つ。対称な流入および垂直の流出による構成は、細胞がチャンバーから離れるのを防止する。少なくとも図1に示されるように、本発明の細胞培養カートリッジのある特定の実施形態は、8つの入口、および1つの垂直な出口を有する。
【0112】
8つの入口および1つの垂直な出口を有するように図1に示されるが、チャンバーの外に流れる流体が、チャンバーの上部から垂直方向に流出し、チャンバー内の対称な流体チャンネルを流れる限り、任意の数の入口および出口を備え得る。例えば、チャンバーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多くの灌流流体の入口および/または出口のいずれか1つを有し得る。
【0113】
ある特定の態様では、培地の灌流は、細胞がいずれか1つの細胞培養チャンバー中で培養されている期間にわたる特定の時点で、例えば、それぞれの日または週に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれより多く生じる。他の態様では、培地は、培養の間、連続して灌流される。連続灌流は、プロセス全体にわたって一定に近い培養体積を維持するのに役立つ。
【0114】
ある特定の態様では、サイトカインは、培養の間の1または複数のポイント、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれよりも多くの回数で注入される。あるいは、サイトカインは、培地とともに連続して灌流され得る。これらの実施形態では、連続灌流は、サイトカインの一貫した局所濃度プロファイルを維持するのに役立ち、これは、静的細胞培養法と比較して、より高い収率を確実にするのに役立ち得、T細胞が刺激され、増殖する速度を増加させる能力を有する。
【0115】
灌流パラメーターは、培養サイクルの間の任意の時に変えることができる。パラメーターの例としては、限定されるものではないが、流速の中央値、サイトカイン濃度および培養サイクルの期間が挙げられる。これらのパラメーターのそれぞれは、T刺激の有効性に対する影響を有し得る。例えば、DCへの単球の分化のための培養チャンバーを設計する最近の研究では、国際特許出願第PCT/US2016/040042号および同第PCT/US2016/60701号に記載されているように、0.1dyn/cmの壁剪断応力のレベルに相当する培地の灌流速度は、従来の6または24ウェルプレートに基づくプロトコールを使用して生成されたものと表現型的に同一のDCを生成することができることを決定した。このように、培養サイクルの間に上記に記載の1つまたは複数の表現型および機能の尺度を測定することにより、有効性に対する1つまたは複数の灌流パラメーターの効果をモニタリングすることができ、適当な調整を可能にする。
【0116】
ある特定の態様に従って、刺激の有効性は、培養の間の任意のポイントで、好ましくは7日後に評価することができる。表現型および機能の尺度は両方とも、有効性を評価するために使用することができる。例えば、細胞数(増殖倍数)は、指示された細胞計数法を使用して計算することができる。四量体染色による抗原特異性の評価を含む細胞表現型は、フローサイトメトリーによって特徴付けることができる。機能アッセイは、抗原が負荷された標的細胞および自己腫瘍細胞を認識する増殖したT細胞の能力を評価するために使用することもできる。結果は、24ウェルプレートおよびG-Rex(登録商標)フォーマットの両方で行われるDCに基づくT細胞刺激に対する基準に従って評価することができる。
【0117】
上記に記載のように、樹状細胞などのある特定のAPCが培養において7日を超えて生存することができないので、本発明のある特定の実施形態は、半バッチ式の構成で、2つ以上の細胞培養カートリッジを使用するT細胞刺激の複数サイクルを含む。それぞれのサイクルは、新たに生成された自己抗原提示細胞を用いて行われる。ある特定の実施形態では、抗原提示細胞は、それぞれの刺激サイクルについて、同じセットの抗原でパルスされる。他の実施形態では、異なるセットの抗原が1つまたは複数の刺激サイクルのために使用される。
【0118】
一般に、複数サイクルのT細胞刺激は、第1の細胞生成物を含む上清を生成する方式で第1の細胞培養チャンバー中での細胞の培養、第2の細胞培養チャンバーの提供、およびガス流を第1の細胞培養チャンバーに導入することによる第1の細胞培養チャンバーから第2の細胞培養チャンバーへの上清のその後の移動を含む。
【0119】
例えば、ある特定の実施形態では、細胞培養チャンバー、および中央演算処理ユニットによって実行される命令を含むメモリーを含む中央演算処理ユニットを含む細胞培養システムが提供される。ある特定の態様では、命令は、システムに、細胞培養チャンバーのサイズを含む第1のインプットデータとして受信させる、細胞培養チャンバーに導入される1つまたは複数の流体中の第1の細胞型の第1の濃度および第2の細胞型の第2の濃度を含む第2のインプットデータとして受信させる、ならびに第1および第2のインプットに基づいて、第1の細胞型および第2の細胞型が細胞培養チャンバー内で互いに接触する可能性を最大にする細胞培養チャンバーに導入される灌流流体の灌流速度を計算させる。
【0120】
一部の態様では、システムは、中央演算処理ユニットが、1つまたは複数のポンプを制御することによって、灌流流体の灌流速度も制御するように、1つまたは複数の灌流流体リザーバーに作動可能に連結され、かつ中央演算処理ユニットに作動可能に連結された、1つまたは複数のポンプも含む。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明のシステムおよび方法は、免疫療法生成物を生成するために個体の細胞材料を処理するために互いに流体連結されたモジュール(例えば、細胞培養チャンバーを含む細胞培養カートリッジおよびそのシステムなど)を利用する。本発明のシステムまたはデバイスは、モジュール式であり、直列(すなわち、あるデバイスから別のデバイスに流体が流れる)および/または並列の他の類似のデバイスに流体接続することができ、互いに物理的に積み重ねるように、またはインキュベーターなどの関連デバイス内への物理的な配置が可能であるように構成されてもよい。システムのモジュール設計は、特に、システム内に含まれる所望のプロセスに応じて、モジュールを柔軟に切り替えることを可能にする。
【0122】
細胞培養チャンバーを含む細胞培養カートリッジを含む本発明の流体デバイスは、ミクロ流体の実施形態(すなわち、1つまたは複数のチャンネルまたはその中のチャンバーが約1μm~約999μmの範囲内の寸法を有する)、またはマクロ流体実施形態(チャンネルまたはその中のチャンバーのすべてが約1mmまたはそれよりも大きい寸法を有する)のいずれかで提供され得る。
【0123】
流体デバイスは、特定の設計によって必要とされる、追加の流体チャンネルまたは区画、ガスケットまたはシール、混合ゾーン、バルブ、ポンプ、ベント、加圧ガスのためのチャンネル、導電体、試薬、ポートおよびチューブをさらに含むことができる。それらはまた、1つまたは複数の制御モジュール、送信機、受信機、プロセッサー、メモリーチップ、バッテリー、ディスプレイ、ボタン、制御装置、モーター、空気圧アクチュエータ、アンテナ、電気コネクターなどを含んでいてもよい。デバイスは、好ましくは、哺乳動物細胞に対して非毒性で、アルコールおよび/または熱もしくは他の手段の使用、例えば、ガンマ線もしくはエチレンオキシドガスへの曝露による滅菌に適合する、材料のみを含有する。
【0124】
機器の材料は、それぞれのプロセスに特異的な異なる温度および圧力定格下、適当な化学的適合性により選択される。加えて、シリンジ、蠕動ポンプ、圧力ポンプおよび回転ポンプなどのデバイスにインプリメントされるポンプの選択は、異なる機能のための流れおよび圧力の要件に応じて、nL~mLの流速、および10~10,000psiの圧力の範囲である。
【0125】
本発明のシステムは、入口チャンネルと流体連絡しているモジュールのさまざまな入口で、試料をデバイスに導入するための1つもしくは複数の試料溶液リザーバー、またはウェル、または他の装置を含むこともできる。本発明の流体デバイスに1つまたは複数の試料をロードするために使用されるリザーバーおよびウェルは、限定されるものではないが、シリンジ、カートリッジ、バイアル、エッペンドルフチューブ、および細胞培養材料(例えば、96ウェルプレート)を含む。
【0126】
有用な場合、デバイスの表面は、例えば、プラズマへの曝露によってより親水性にすることができ、あるいは1つもしくは複数のゲル、化学的機能化コーティング、タンパク質、抗体、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、サイトカイン、または細胞でコーティングすることができる。実施形態では、細胞培養カートリッジおよびシステムは、中央集中部位に位置する。機器は、単回使用であり、すなわち、患者材料は、単一の患者細胞のためにのみ使用される、バッグ、チューブおよび細胞培養容器内で処理される。
【0127】
本発明の流体デバイスは、好ましくは、操作条件下で流体の漏出がなく、数日~数週間の期間にわたって無菌操作が可能である。本発明の流体デバイスはまた、新たな材料または汚染をシステムに導入することなく、流体が試験のためにシステムから除去されるのを可能にする、試料採取機構を含む。
【0128】
ある特定の態様では、細胞培養システムの少なくとも一部は、使い捨ての構成要素を含み、その一部またはすべては、使い捨てでないフレームまたはコンソール内に収容され得る。他の態様では、システムのすべての構成要素は、使い捨てである。さらにまた、一部の実施形態では、細胞培養システムは、患者の材料を追跡し、記述するための試料追跡構成要素を含む。実施形態では、細胞培養カートリッジおよびシステムは、中央集中部位に位置する。機器は、単回使用であり、すなわち、患者材料は、単一の患者細胞のためにのみ使用される、バッグ、チューブおよび細胞培養容器内で処理される。
【0129】
少なくとも1つのステップで、時々は複数またはすべてのステップで、製造プロセスの間に、さまざまなインラインプロセス分析ツール(PTA)、または小型化されたマイクロ総分析システム(micro-TAS)を使用して、生成物の特性(例えば、純度および多型)についてモニタリングされる。
【0130】
上記に記載のように、本発明の細胞培養システムは、システム内の流体および実体の方向および流れを制御することができる。本発明のシステムは、例えば、バルブおよびポンプを利用する圧力駆動の流れ制御装置を使用して、1つもしくは複数の方向で、および/または流体デバイスの1つもしくは複数のチャンネルへの細胞、試薬などの流れを操作することができる。しかしながら、他の方法も、単独で、または電気浸透流制御装置、電気泳動および誘電泳動(Fulwyer, Science 156, 910 (1974);Li and Harrison, Analytical Chemistry
69, 1564 (1997);Fiedler, et al. Analytical Chemistry 70, 1909-1915 (1998);および米国特許第5,656,155号、これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれれる)などのポンプおよびバルブと組み合わせて使用され得る。
【0131】
本発明のシステムはまた、システムを通る流体の動きを制御するため、システム内の温度などのさまざまなパラメーターをモニタリングおよび制御するため、ならびに細胞に基づく免疫療法生成物の存在、生成物の量(直接的または間接的)、変換率などを検出するために、1つまたは複数の制御システムを含むことができ、またはこれらと作動可能に連結することができる。システムはまた、フィードバック制御を可能にする高度なリアルタイムプロセスモニタリングおよび制御プロセス、ならびにシステムを使用して得られた反応および精製の結果を考慮して統合およびスケールアップを可能にするプロセスなどの多数のクラスのソフトウェアを備えていてもよい。
【0132】
ある特定の実施形態では、システムは、デバイスの異なるモジュール間のチャンネルの寸法、流動形状および相互接続の観点で互換可能なマイクロ、ミリ、またはマクロ流体モジュールおよびチューブの組合せを含む。それぞれのモジュールおよびチューブは、特定の機能のために設計され得る。一実施形態では、システム内のすべてのモジュールは、細胞培養およびT細胞刺激のために設計される。他の実施形態では、システムを有するモジュールは、組織の処理、樹状細胞の生成、細胞培養、濃縮および/または精製などの異なる機能のために設計され、免疫療法生成物の連続的な製造のためにすべて統合される。フロー適用のために好適な均一および不均一なプロセスの両方が考慮される。これらのプロセスは、フロープロセスの間にシステムを簡単に詰まらせないように、出発原料、ならびに温度、圧力および流速などの条件の操作に関して、設計および最適化される。
【0133】
デバイスのスケールアップの方法は、モジュール反応器の並列追加またはモジュールチャンネルの拡大によって行われるが、それぞれのプロセス定数に特徴的な無次元パラメーターのセット、ならびに上限および下限内の寸法パラメーターは維持される。プロセスの統合および最適化の間に、温度、圧力、流速およびチャンネル寸法を含むプロセス決定変数は、収率、純度および処理能力の間の所望のトレードオフを達成するために変更される。最適化プロセス全体を通して、前述の無次元パラメーターのセットは、操作の制約により代数最適化を受ける。操作の制約は、決定変数の下界および上界である。目的関数は、純度、収率および処理能力の操作変数の組合せを考慮する。無次元パラメーターは、デバイスの定常状態の質を決定するが、デバイスの開始の質も、それが定常状態に達するのに必要な時間、ならびに次に遅延時間および廃棄物の形式でデバイスの生産性を決定するので、有用である。開始の動力学は、シミュレーションおよび実験の両方を使用して解析され、その結果を使用して、リアルタイムフィードバック制御のインプリメンテーションによる開始の最適化が行われる。
【0134】
上記に記載のシステムを通る流体の動きの制御、ならびにさまざまなパラメーターのモニタリングおよび制御などの本明細書に記載の本開示の態様は、プロセッサー、例えば中央演算処理ユニット、またはそれぞれのデバイスがプロセスもしくは方法の少なくとも一部を行うコンピュータデバイスの任意の組合せを含む、コンピュータまたはプログラム可能なロジックコントローラ(PLC)などの任意の種類のコンピュータデバイスを使用して行うことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、携帯用デバイス、例えば、スマートタブレット、スマートフォン、またはシステムのために作られた特定のデバイスで行われ得る。
【0135】
本開示の方法は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、ハードワイヤリング、またはこれらのいずれかの組合せを使用して行うことができる。機能をインプリメントする特徴は、さまざまな位置に物理的に位置させることもでき、機能の一部が異なる物理的位置でインプリメントされるように(例えば、ワイヤレスまたは有線接続して、イメージング装置はある部屋に、ホストワークステーションは別の部屋に、またはそれぞれ別個の建物に置くなど)、分散させることを含む。
【0136】
コンピュータプログラムの実行のために好適なプロセッサーとしては、例として、汎用および専用両方のマイクロプロセッサー、ならびにデジタルコンピュータの任意の種類のいずれか1つまたは複数のプロセッサーが挙げられる。一般に、プロセッサーは、リードオンリーメモリーもしくはランダムアクセスメモリー、またはその両方から、命令およびデータを受信する。コンピュータの要素は、命令を実行するためのプロセッサー、ならびに命令およびデータを格納するための1つまたは複数のメモリーデバイスである。
【0137】
一般に、コンピュータはまた、データを格納するための1つもしくは複数の非一時的大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスクまたは光ディスクを含むか、あるいはそれらからデータを受信するか、もしくはそれらにデータを転送するか、またはその両方を行うように作動可能に連結される。一部の実施形態では、システム上のセンサーは、ブルートゥース(登録商標)を介してインキュベーターの外側に位置する中央データ収集ユニットにプロセスデータを送る。一部の実施形態では、データは、物理的記憶装置よりもむしろクラウドに直接送られる。コンピュータプログラムの命令およびデータを具現化するために好適な情報担体としては、例として、半導体メモリーデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、ソリッドステートドライブ(SSD)、およびフラッシュメモリーデバイス)を含む、あらゆる形態の不揮発性メモリー;磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク);光磁気ディスク;および光ディスク(例えば、CDおよびDVDディスク)が挙げられる。プロセッサーおよびメモリーは、専用論理回路によって補完され得るか、またはそれに統合され得る。
【0138】
使用者との相互作用を提供するために、本明細書に記載の主題は、I/Oデバイス、例えば、CRT、LCD、LEDまたは使用者に情報を提示するためのプロジェクションデバイス、ならびにキーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)などのインプットまたはアウトプットデバイスを有するコンピュータにインプリメントされ得、それによって使用者はコンピュータへのインプットを提供することができる。他の種類のデバイスは、同様に、使用者との交流を提供するために使用することができる。例えば、使用者に提供されるフィードバックは、感覚フィードバック(例えば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバックまたは触覚的フィードバック)の任意の形態であり得、使用者からのインプットは、音響、音声または触覚インプットを含む任意の形態で受信することができる。
【0139】
本明細書に記載の主題は、バックエンド構成要素(例えば、データサーバー)、ミドルウェア構成要素(例えば、アプリケーションサーバー)、もしくはフロントエンド構成要素(例えば、使用者が本明細書に記載の主題のインプリメンテーションと交流できるグラフィカルユーザーインターフェースまたはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、またはこのようなバックエンド、ミドルウェア、フロントエンドの構成要素の任意の組合せを含むコンピュータシステムにインプリメントされ得る。システムの構成要素は、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体、例えば、通信ネットワークによって、ネットワークを通して相互接続することができる。通信ネットワークの例としては、セルネットワーク(例えば、3Gまたは4G)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、および広域ネットワーク(WAN)、例えばインターネットが挙げられる。
【0140】
本明細書に記載の主題は、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品、例えば、データ処理装置(例えば、プログラム可能なプロセッサー、1つのコンピュータ、または複数のコンピュータ)による実行のため、またはその動作を制御するために、情報担体(例えば、非一時的コンピュータ可読媒体)に明白に具体化された1つまたは複数のコンピュータプログラムとしてインプリメントされ得る。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、app、マクロまたはコードとしても公知)は、コンパイル型またはインタープリター型言語(例えば、C、C++、Perl)を含む任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、これは、スタンドアローンプログラムもしくはモジュールとして、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピュータ環境における使用のために好適な他のユニットを含む任意の形式で展開され得る。本発明のシステムおよび方法は、限定されないが、C、C++、Perl、Java(登録商標)、ActiveX、HTML5、Visual Basic、またはJavaScript(登録商標)を含む、当技術分野において公知の任意の好適なプログラム言語で記述された命令を含み得る。
【0141】
コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応しない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータを保持するファイルまたはファイルの一部、対象とするプログラムに専用の単一のファイル、あるいは複数の連携ファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータまたは1つの場所の複数のコンピュータにおいて実行されるように展開され得、あるいは複数の場所にわたって分散され得、通信ネットワークによって相互接続され得る。
【0142】
ファイルは、例えば、ハードドライブ、SSD、CD、または他の有形の非一時的な媒体に格納されたデジタルファイルであり得る。ファイルは、ネットワークを通じて(例えば、ネットワークインターフェースカード、モデム、ワイヤレスカードなどを通じて、例えば、サーバーからクライアントに送られるパケットとして)、あるデバイスから別のデバイスに送られ得る。
【0143】
本発明の実施形態によるファイルの書き込みは、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を、例えば、粒子を添加、除去または再配置することによって変換することを含み(例えば、リード/ライトヘッドによる磁化のパターンへの正味の電荷または双極子モーメントによる)、パターンは、次いで、使用者によって所望され、使用者に有用な目的の物理現象に関する情報の新しいコロケーションを表す。一部の実施形態では、書き込みは、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体中の物質の物理的変換を含む(例えば、ある特定の光学的性質により、次いで、光学的読み取り/書き込みデバイスが、新しく有用な情報のコロケーションを読み取ることができるようにする、例えば、CD-ROMを焼くことにより)。一部の実施形態では、ファイルの書き込みは、NANDフラッシュメモリーデバイスなどの物理フラッシュメモリー装置を変換すること、およびフローティングゲートトランジスタで作製されたメモリーセルのアレイ中の物理要素を変換することによって情報を格納することを含む。ファイルに書き込む方法は、当技術分野において周知であり、例えば、プログラムによって、またはソフトウェアからの保存コマンドもしくはプログラミング言語からの書き込みコマンドによって、手動または自動で呼び出すことができる。
【0144】
好適なコンピュータデバイスは、典型的には、大容量メモリー、少なくとも1つのグラフィカルユーザーインターフェース、少なくとも1つのディスプレイデバイスを含み、および典型的にはデバイス間の通信を含む。大容量メモリーは、コンピュータ可読媒体、すなわち、コンピュータストレージ媒体の種類を説明する。コンピュータストレージ媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報の記憶装置のための任意の方法または技術でインプリメントされた、揮発性、不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体を含み得る。コンピュータストレージ媒体の例としては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリーもしくは他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光学式記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、無線自動識別タグもしくはチップ、または所望の情報を格納するために使用することができ、コンピュータデバイスによってアクセスすることができる任意の他の媒体が挙げられる。
【0145】
当業者が本発明の方法の実行のために必要または最適であると認識するであろうように、本発明の実施形態において用いられるコンピュータシステムまたは機械は、バスを介して互いに通信する、1つまたは複数のプロセッサー(例えば、中央演算処理ユニット(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、またはその両方)、メインメモリーおよびスタティックメモリーを含み得る。
【0146】
図19に示される例示の実施形態では、システム600は、コンピュータ649(例えば、ラップトップ、デスクトップまたはタブレット)を含み得る。コンピュータ649は、ネットワーク609の全域で通信するように構成されてもよい。コンピュータ649は、1つまたは複数のプロセッサー659およびメモリー663、ならびにインプット/アウトプット機構654を含む。本発明の方法が、クライアント/サーバーアーキテクチャを用いる場合、本発明の方法の操作は、1つまたは複数のプロセッサー621およびメモリー629を含む、サーバー613を使用して行われ得、データ、命令などを得ることができるか、またはインターフェースモジュール625を介して結果を提供することができるか、またはファイル617として結果を提供することができる。サーバー613は、コンピュータ649もしくは端末667を通じてネットワーク609全域で連動してもよく、またはサーバー613は、1つまたは複数のプロセッサー675およびメモリー679を含む端末667、ならびにインプット/アウトプット機構671に直接接続されてもよい。
【0147】
本発明の例示の実施形態によるシステム600または機械は、I/O 649、637または671のいずれかについて、ビデオディスプレイユニット(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)またはブラウン管(CRT))をさらに含み得る。一部の実施形態によるコンピュータシステムまたは機械は、英数字インプットデバイス(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス(例えば、マウス)、ディスクドライブユニット、信号発生デバイス(例えば、スピーカー)、タッチスクリーン、加速度計、マイク、セルラーラジオ周波数アンテナ、および例えば、ネットワークインターフェースカード(NIC)、Wi-Fiカードまたはセルラーモデムであり得るネットワークインターフェースデバイスも含み得る。
【0148】
本発明の例示の実施形態よるメモリー663、679または629は、本明細書に記載の方法論または機能のいずれか1つまたは複数を具現化する命令の1つまたは複数のセット(例えば、ソフトウェア)が格納されている機械可読媒体を含み得る。ソフトウェアはまた、コンピュータシステムによるその実行の間に、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリー内および/またはプロセッサー内に常駐してもよく、メインメモリーおよびプロセッサーも機械可読媒体を構成する。ソフトウェアは、ネットワークインターフェースデバイスを介してネットワークの全域でさらに送信または受信されてもよい。
DC生成に対する単球の播種密度の効果
【0149】
樹状細胞(DC)は、研究および臨床的使用のためにますます重要になっているが、十分な数の樹状細胞を入手することは、難題となってきている。単球由来の未成熟DC(iDC)の生成に対する単球(MO)播種密度の効果を、本発明の灌流に基づく培養システム、および6ウェルプレートにおいて調査した。細胞表面マーカー、および同種T細胞の増殖を誘導するiDCの能力を調べた。データは、iDC表現型、特に、CD80/83/86発現、およびT細胞増殖の間の強い関係を示す。本発明のiDCを生成する細胞培養システムは、研究された200k~600k MO/cmの播種密度の範囲内でのT細胞増殖の誘導の際に、ウェルプレートで生成されたiDCよりも良好であることを証明した。これは、枯渇した培地および細胞呼吸の有毒な副産物を同時に除去しながら、分化しているMOに新たな分化培地を連続して供給する本発明の細胞培養システムにおける灌流に起因し得る。本発明の細胞培養システムは、より低いMO播種密度ではウェルプレートよりも正規化基準でより少ないiDCを生成したが、600kのMO播種密度では同等の数のiDCを生成した。この結果は、本発明の細胞培養システムが、標準的なウェルプレート培養よりも手動の作業が少なく、より多くの数のiDCを生成することができること、および本発明のiDCを生成する細胞培養システムが、T細胞増殖を誘導するより高い能力を有することを実証する。
【0150】
樹状細胞は、固形組織中に主に存在し、適応免疫応答および体液性免疫応答の両方を活性化する必須の役割を果たす、抗原提示細胞である。樹状細胞(DC)の主な機能は、身体にとって脅威である外来抗原を特定および捕捉すること、それらをより小さなペプチドに処理すること、ならびにこれらのペプチドをナイーブT細胞またはナイーブB細胞に提示することである。抗原提示の際に、DCは、CD4ヘルパーT細胞およびCD8細胞傷害性T細胞、ならびにナイーブB細胞およびメモリーB細胞を活性化することができる。加えて、DCは、ナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞を活性化する。各種の免疫細胞からの応答を誘発するそれらの能力を考えると、DCは、治療操作のための魅力的な標的である。T細胞およびB細胞のin vivo活性化および増殖のための抗原負荷DCを含有するワクチンは、感染性疾患の処置のために使用され、いくつかの臨床試験および前臨床試験においてがん性細胞を特異的に標的にするために開発されている。さらにまた、DCは、T細胞に基づく免疫療法の新興分野において重要な役割を果たし、in vitroで活性化T細胞を増殖するために使用される。
【0151】
患者特異的DCの直接単離は、それらが固形組織中に存在し、かつヒト血液中に非常に低濃度(<1%)で存在するので、難題である。したがって、DCは、多くの場合、循環血液から容易に単離することができる単球または幹細胞前駆体からex vivoで生成される。治療操作のためのDCを生成するために、標準的な方法は、末梢血白血球除去生成物から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、プラスチック接着によりCD14+単球(MO)を濃縮し、水簸し、または磁気ビーズにより陽性選択し、続いて5~10日間IL-4およびGM-CSFとともに培養することである。伝統的にウェルプレートおよびTフラスコで行われる、この方法は、培養期間中を通して、分化培地の補給を含む多数の手動の操作を必要とする。生成された未成熟DC(iDC)数は、6ウェルプレートおよびT-175フラスコ中に、それぞれ、およそ900~1500万個および600~2000万個の範囲であるが、治療は、単一用量についておよそ1億5000万個のDCを必要とし得る。臨床の免疫療法のために必要とされる適切な数のDCを製造するための現在のDC生成技術のスケールアップは、多数の手動の操作、必要とされる多数のウェルプレート/Tフラスコ、およびかなりの人件費の必要性に起因して、難題である。加えて、最適な単球播種密度の特定は、MOからiDCへの分化プロセスのスケールアップに関連する実質的な難題であり、このような情報は、文献から解明することが困難である。
【0152】
手動でのDC生成の前述の欠陥を克服するために、ウェルプレートで生成されたiDCと同様の機能性で単球からDCを生成する、密閉された自動細胞培養システムを設計した。本発明の細胞培養システムは、枯渇した培地および廃棄物(COおよびラクテート)を同時に除去しながら、カートリッジに新たな分化培地を連続して灌流する閉鎖チューブおよび細胞培養カートリッジシステムを組み込んでいる。この設定は、開始および培地補給のために必要な手動の操作ステップも低減する。
【0153】
iDCの収率、表現型および機能性に対するMO播種密度の効果を調べた。3つの播種密度を、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレート対照において研究した:200,000 MO/cm、400,000 MO/cmおよび600,000 MO/cm。iDCの播種密度が増加するにつれて、iDC収率は、本発明の細胞培養システムにおいて増加し、ウェルプレートにおいて一定のままであった。本発明の細胞培養システムにおけるiDC収率は、200kおよび400kのMO播種密度でのウェルプレート中より低く、600kのMO播種密度でのウェルプレート中と同等であった。iDC表現型は、本発明の細胞培養システムにおけるMO播種密度に対する強い依存を示し、ここで、低い播種密度から生成されたiDCは、より高いT細胞増殖を誘導した。本発明の細胞培養システムで生成されたiDCは、6ウェルプレートにおいて生成されたiDCと表現型的に同様であり、それにより、以前の研究が裏付けられ、本発明の細胞培養システムで生成されたiDCがウェルプレートで生成されたiDCよりも多くのT細胞増殖を誘導すること示す。
【0154】
合計で3つの同一実験(N1、N2、N3)を、本発明の細胞培養システムの性能を評価するために体系的に行った。それぞれの実験は、本発明の3つのカートリッジ(播種密度あたり1つのカートリッジ)および1つまたは2つの6ウェルプレート(播種密度あたり2~3ウェル)で構成された。単一のドナー由来のMOを、それぞれ個々の実験(N1、N2またはN3)のために使用し、iDC生成のために合計で3人のドナーが必要であった。4番目のドナー由来のT細胞を、すべての同種機能アッセイのために使用した。CellGenix GMP DC培地を、MOからiDCへの分化のための基本培地として使用した。培地は、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco 15140122)、ならびに350U/mLのiDC生成用の前臨床IL-4およびGM-CSF(CellGenix)で補充した。
【0155】
それぞれのMOからiDCへの分化実験は、6日の期間であった。すべての実験は、37℃および5%COで、飽和湿度近くで維持された標準的な細胞培養インキュベーター中で行った。すべての作業は、層流フード中、無菌条件下で行った。すべての細胞計数は、Countess II自動細胞計数機を使用して実施した。
本発明の細胞培養システム
【0156】
本発明の細胞培養システムによる実験は、本発明者らのグループによって以前に記載された自動細胞培養システムを使用して行った。それぞれの細胞培養カートリッジのポリスチレン表面を、50Wの出力で、90秒間、Oプラズマで処理した。それぞれのカートリッジは、ポリスチレン39.7cm2の表面積およびおよそ12.7mLの体積を有していた。分化培地の灌流速度は、実験の全期間にわたって、8.0μL/分であった。それぞれの実験について、本発明の1つのカートリッジを、合計で3つのカートリッジについて、それぞれの播種密度に対して使用した。これは、それぞれの装置が2つのカートリッジを保持するので、2つのポンプ装置を必要とした。以前の実験は、流出液の遠心分離とそれに続く細胞計数によって検証された、実験の過程にわたって8.0μL/分の培地灌流によって細胞がカートリッジから除去されなかったことを示した。
【0157】
0日目の設定で、分化培地を入口ボトルに添加して、3日間の培地灌流を可能にした。入口ボトルがほとんど空になった3日目に、新たな分化培地を添加して、さらに3日間の培地灌流を可能にした。流出液を、3日目に出口ボトルから除去した。6日目に、細胞を、細胞培地を吸引し、冷DPBS(4℃)でカートリッジを2回洗浄することによって、回収した。2回のDPBS洗浄後に残った接着細胞は収集しなかった。
6ウェルプレート
【0158】
Corning Costar 6ウェルプレート(3516)を、それぞれの実験についての対照として使用した。体積2.5mLの分化培地を、それぞれのウェルに添加した。空のウェルを、蒸発を最小限にするために、3.0mLのDPBSで満たした。3日目に、1mLの新たな分化培地を、それぞれのウェルに添加した。6日目に、細胞を、細胞培地を吸引し、冷DPBS(4℃)でそれぞれのウェルを2回洗浄することによって、回収した。2回のDPBS洗浄後に残った接着細胞は収集しなかった。
PBMCおよびMO/T細胞の単離
【0159】
正常な健康なドナーから採取した4単位の全血(およそ470mL/単位)を、StemExpressから購入した。血液を、静脈穿刺により採取し、同じ日に処理した。PBMCを、フィコール密度勾配培地を使用して単離し、1mLあたりおよそ5000万個のPBMCの濃度で、CryoStor CS10凍結保存培地に懸濁させた。細胞を、-80℃で12~24時間、Mr.Frosty容器中で冷却し、次いで、蘇生前に少なくとも1週間、極低温LN2保管場所に移動した。MOまたはT細胞を、Miltenyi Biotec CD14またはCD3マイクロビーズを使用して、PBMCから濃縮し、2つのLSカラムを通過させた。
同種T細胞機能アッセイ
【0160】
同種T細胞機能アッセイを、MicroDENまたは6ウェルプレートにおいて生成された0個、200,000個(200k)、もしくは500,000個(500k)のiDCを使用して、Corning Costar 24ウェルプレート(3526)において行った。それぞれのウェルは、100万個の同種T細胞を含有した。CellGenix DCMを、基本培地として使用し、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco 15140122)および5%のヒトAB血清(Sigma Aldrich H4522)で補充した。T細胞を、CellTrace Far Redで染色して、増殖を評価した。24ウェルプレートを、光から保護するためにホイルで覆い、インキュベーター(37℃および5%のCO)中に5日間置いた。回収の際に、細胞溶液を吸引し、ウェルを、冷DPBS(4℃)で2回洗浄して、残った細胞を収集した。データを、FCS Express 6 Flowソフトウェアを使用して解析した。
免疫表現型検査
【0161】
フローサイトメトリーを、488nmおよび640nmのレーザー線および4つの蛍光チャネルを有するACEA Biosciences NovoCyte装置において行った。細胞を、生存細胞染色の後かつ抗体染色の前に、最初に、10分間、Fc Block(BD Biosciences 564220)で染色した。パネルAは、生存率(Live/Dead Fixable Green;Invitrogen L34970)、CD209/DC-SIGN(R&D Systems FAB161P100)、CD14(Abcam abl57312)、およびCD45(R&D Systems FAB1430A)を試験した。パネルBは、CD80(BD Biosciences 557226)、CD83(BD Biosciences 556855)、CD86(BD Biosciences 561128)、およびCD45を試験した。パネルCは、生存率、HLA-DR(R&D Systems FAB4869P)、CD11c(BD Biosciences 565227)、およびCD45(R&D
Systems FAB1430A)を試験した。パネルDは、生存率、CD3(BD
Biosciences 555333)、CD45(BD Biosciences
340953)、およびCellTrace Far Redを試験した。ゲートは、パネルAについてCD209アイソタイプ対照(R&D Systems IC0041P)、およびfluorescence-minus-one(FMO)対照を使用してセットした。データを、FlowJoソフトウェアを使用して解析した。
フローサイトメトリーゲーティング戦略
【0162】
大型細胞をSSC-A/FSC-Aプロットで、続いて単一細胞をFSC-A/FSC-Hプロットでゲートした。パネルA:生存/CD45細胞をゲートし、次いで、CD14/CD209をプロットして、CD14/CD209集団に基づいてiDCのパーセンテージを決定した。パネルB:リンパ球をCD45ヒストグラムにおいてゲートし、次いで、CD80/83およびCD80/86をプロットして、iDC表現型を決定した。パネルC:生存/CD45細胞をゲートし、次いで、HLA-DR/CD11cをプロットして、iDC表現型を決定した。パネルD:生存細胞をゲートし、続いてCD3/CD45プロットを行って、T細胞を単離し、次いで、CellTrace Far Redヒストグラムを行って、T細胞増殖の絡まりを解いた。
3つの実験(N1、N2、N3)を継続的に行い(異なる日に開始する)、それぞれの実験は、それぞれのMO播種密度で、1つの本発明のカートリッジ、および6ウェルプレートの2~3ウェルを含んでいた。生存率およびiDCの免疫表現型検査を、フローサイトメトリーにより行った。生成されたiDC数およびiDC収率を以下によって計算した:
【0163】
回収された生存iDC=[回収された細胞]×[生存/CD45+細胞]×[CD209+/CD14-細胞]。
iDC収率=回収された生存iDC÷播種されたMO
iDC表現型
【0164】
本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートで生成されたiDCは、MO播種密度に依存するCD209(DC-SIGN)/80/83/86発現における微妙な相違で、表現型的に同様であった。MO由来iDCは、CD209であり、分化条件に応じて、低CD14発現を有し得る。この研究について、CD209CD14細胞のみをiDCと見なした。図20および21は、実験N3について、それぞれ本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートで生成されたiDCについての表現型発現を示す。N1およびN2からのデータを図28~32に示す。
【0165】
回収された細胞の生存率は、>90%であり、実験N1およびN3についての本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートの間で同等であった。実験N2は、本発明の細胞培養システムについておよそ70~90%、およびウェルプレートについておよそ77%の有意に低い生存率を有する。MO播種密度および生存率の間に相関はなく、すべての回収された細胞は、CD45+白血球であった。iDCのCD209発現は、本発明の細胞培養システムまたは6ウェルプレートのいずれにおいてもMO播種密度に対する任意の依存は示さなかったが、本発明の細胞培養システムのiDCは、実験N1およびN3について、ウェルプレートのiDCよりもわずかに低いCD209発現を有していた(CD209の蛍光の左シフトによって示される)。実験N2のiDCは、本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートの両方において、同様のCD209発現を有していた。
【0166】
本発明の細胞培養システムから回収された生存CD45+細胞のかなりの集団は、CD209であった。このCD209の集団は、実験N1/N3について回収された細胞のおよそ20~40%、および実験N2についておよそ2~7%の割合を占めた。6ウェルプレートは、3つの実験すべてで、およそ2~4%のCD209細胞を生成した。CD209-集団およびMO播種密度の間に明確な傾向はなかったが、200kおよび400kのMO播種密度は、600kのMO播種密度よりも少ないCD209-細胞を生じた。本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートから回収されたCD209-細胞の間の二分は、試験された条件下での分化の間の本発明の細胞培養システムにおける灌流に起因し得る。灌流は、MOからiDCへの動態の遅延において役割を果たし得、この集団がCD209+iDCにさらに分化するためのより長い分化期間またはより高いサイトカイン濃度を必要とする可能性がある。本発明の細胞培養システムは、ある特定の条件下で分化がより少ないiDCを生成し、本発明の細胞培養システムにおける分化条件(すなわち、分化期間、およびサイトカイン濃度、特にIL-4濃度)のさらなる最適化が必要であると考えられる。
【0167】
本発明の細胞培養システムにおけるCD80/83/86 iDC発現のMO播種密度に対する際立った依存がある。ウェルプレートで生成されたiDCは、比較的一定のCD83/86発現を示し、CD80発現は、200kのMO播種密度で最も高く、播種密度の増加とともに減少した。本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートの両方におけるすべてのiDCは、HLA-DRおよびCD11cであった。まとめると、本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートから回収された細胞の表現型発現は、MOに由来するiDCを示す。本発明の細胞培養システムで生成されたiDCは、低いMO播種密度でのわずかな相違で、同様の条件下の6ウェルプレートで生成されたiDCと表現型的に同様である。
回収されたiDC
【0168】
本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートの間の回収された細胞の総数の直接比較は、本発明の細胞培養システムが、より多くの数の播種されたMOを有していたので、有益ではなく、したがって、回収されたiDCの数を本発明の細胞培養システムまたはウェルプレートの表面積のいずれかに対して正規化し、iDC収率を、直接比較を可能するために、図22~25においてプロットする。それぞれの実験について異なるドナー細胞を使用する場合に予想される、本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートの両方におけるそれぞれの実験(N1~N3)の間に可変性があった。CD209(DC-SIGN)発現は、典型的には、MOに由来するiDCについて高く、本発明の細胞培養システムにおいて生成されたCD209-細胞の比較的高いパーセンテージは、回収されたiDCの数に負の影響を与える。表1は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートにおけるiDC生成実験についての実験データを示す。
正規化された回収されたiDC
【0169】
図22および23は、それぞれの実験についての細胞培養表面積に対して正規化された回収されたiDCの数および平均データを示す。本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートは両方とも、「1cmあたり」基準でMO播種密度および回収されたiDCの間に正の相関を示し、より多くのMOが播種された場合に、より多くのiDCが生成されることを示した。より低いMO播種密度では、ウェルプレートは、本発明の細胞培養システムよりも1cmあたりで多くのiDCを生成した。600kのMO播種密度で、本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートは両方とも、1cmあたりで同様の数のiDCを生成した。
iDC収率
【0170】
図24および25は、それぞれの実験についてのiDC収率および平均データを示す。本発明の細胞培養システムは、データが3つの実験の間で平均された場合に、MO播種密度およびiDC収率の間にわずかな正の相関を示したが、しかしながら、それぞれの個々の実験内に明確な傾向はなかった。600kのMO播種密度で、平均iDC収率は、本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートの両方について同様であった。6ウェルプレートは、実験N1およびN3においてMO播種密度の増加につれて、比較的一定のiDC収率を有していたが、しかしながら、iDC収率は、実験N2について、MO播種密度とともに急激に減少した。
【0171】
ウェルプレートのN2は、本研究および本発明者らの実験室において実施された他の実験において生成されたデータと矛盾した傾向を示した。実験手順は、このウェルプレートについて正確に同じであり、本発明者らには、この外れた傾向を引き起こす特定の問題が分かっていない。実験N2についての生存率は、予想よりも低く、これは、この実験において矛盾したiDC収率と関連する可能性がある。興味深いことに、表現型は、これらのウェルプレートで生成されたiDCについて、正常であった。平均iDCデータを、6ウェルプレートのN2のデータありおよびなしでプロットした。
【0172】
本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートは、最も高い播種密度で同様のiDC収率を有し、播種密度の減少につれて異なる。これは、MO播種密度がiDCに分化するMOの能力に影響を与えること、および本発明の細胞培養システムのiDC収率が、収率が6ウェルプレートと同様のより高い播種密度で最大であることを示す。さらに、600kを超えるMO播種密度の増加は、本発明の細胞培養システムにおけるiDC収率を改善し得るが、臨界上限を超えてMOの数が増加すると、生成された細胞の分化および表現型に負の影響を及ぼし得るので、これは実験的に決定する必要がある。同様に、本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートの間の600kのMO播種密度でのiDC収率は、本発明の細胞培養システムが、ウェルプレートと同様の収率で、表現型的に同様のiDCを生成することを示す。さらにまた、より多くのMOを、本発明の単一のカートリッジに播種することができ、複数のウェル/ウェルプレートの使用と比較して、より多くの数のiDCを本発明の単一のカートリッジから回収することを可能にする。これは、最終的に、使用者の時間を低減し、可能性のある誤りおよび汚染を最小限にする。
表1:本発明の細胞培養システムおよび6ウェルプレートについての分化データ
【表1-1】
【表1-2】
【0173】
表1において上記に示されるように、6ウェルプレートについて、N1は3ウェルを使用し、N2~N3は2ウェルを使用した。表現型データを、図20(本発明の細胞培養システム)および図21(6ウェルプレート)に示す。
同種機能アッセイ
【0174】
生成されたiDCのT細胞増殖を誘導する能力を、同種機能アッセイにより調べた。単一のドナーに由来する100万個のT細胞を、それぞれの実験(N1、N2、N3)について、異なるMOドナーに由来する200kまたは500kのiDCとともに共培養した。図26は、増殖統計を示し、図27は、実験N1についてのT細胞増殖ヒストグラムを示す。実験N2およびN3についてのヒストグラムを図32および33に示す。増殖統計は、分裂指数(それぞれの分裂した細胞から生じた細胞の平均数)、増殖指数(初期の世代0細胞の数と比べた細胞の平均数)、および分裂パーセント(分裂を受けていない初期の集団における細胞のパーセンテージ)を含む。この同種機能アッセイを行うことにより、本発明者らは2つの疑問に回答しようと試みた:(i)MO播種密度は、T細胞増殖を誘導するiDCの能力に影響を及ぼすのか、および(ii)どのようにして本発明の細胞増殖システムのiDCを所与のMO播種密度で6ウェルプレートのiDCと比較するか。
【0175】
(i)本発明の細胞培養システムで生成されたiDCについて使用されたMO播種密度、およびT細胞増殖を誘導するそれらのiDCの能力の間に明確な相関が存在するが、MO播種密度は、ウェルプレートで生成されたiDCの機能性に対して非常にわずかな効果を有すると思われる。低いMO播種密度(200kおよび400k)から生成された本発明の細胞培養システムのiDCは、600kのMO播種密度から生成されたiDCよりもT細胞増殖を誘導する高い能力を示す。T細胞増殖は、iDCを生成するために使用されるMO播種密度が本発明の細胞培養システムのiDCについて増加するにつれて減少し、本発明の細胞培養システムのiDCは、600kのMO播種密度で生成される場合に、ウェルプレートのiDCと同様の機能性を有する。
【0176】
(ii)本発明の細胞培養システムにおいて低いMO播種密度(200kおよび400k)から生成されたiDCは、6ウェルプレートのiDCと比較して、T細胞増殖の誘導で顕著に勝る。この効果は、本発明の細胞培養システムのiDCがウェルプレートで生成されたiDCよりもわずかに勝って行われる高いMO播種密度(600k)で低減する。これらの結果は、3つの実験すべてについて一致した。
【0177】
予想通り、T細胞増殖は、500kのiDCをT細胞アッセイに播種した場合に、200kのiDCと比較して、高かった。このアッセイからのデータは、本発明の細胞培養システムで生成されたiDCが、T細胞増殖のために使用される通常のサイトカインのIL-2の添加なしで、T細胞増殖を誘導することができることを示す。本発明の細胞培養システムで生成されたiDCはまた、MO播種密度にかかわらず、6ウェルプレートで生成されたiDCと比較して、より高いT細胞増殖を誘導する。同種T細胞アッセイが、DCの機能性を解明するために使用される正攻法のベンチマークであり、この研究内で観察された結果は、特殊な同系および他の混合リンパ球反応(MLR)機能アッセイにまで及ばない場合があることに留意することが重要である。
iDC表現型およびT細胞増殖の間の関係
【0178】
なぜ本発明の細胞培養システムのiDCがT細胞増殖を誘導するより高い能力を有するのかを解明するために、表現型データを比較し、図20、28および30(本発明の細胞培養システム)ならびに図21、29、および31(6ウェルプレート)に示す。2つの重要な傾向が観察された:(1)本発明の細胞培養システムのiDCの表現型の相違がT細胞増殖に強く相関する、ならびに(2)6ウェルプレートのiDCの表現型およびT細胞増殖の間に、非常に弱い相関が存在する~存在しない。
【0179】
(1)本発明の細胞培養システムのiDCの表現型は、MO播種密度に依存する。本発明の細胞培養システムは、600kのMO播種密度と比較して、より低いMO播種密度で、実質的により多くのCD80/83/86を生成した。これらのCD80/83/86iDCは、より分化しており、CD80/83/86iDCと比較して、成熟DC(mDC)により類似の表現型を示す。これは、場合により、より低いMO播種密度でのより低い、サイトカイン活性あたりのMOの比の結果であり、これらのiDCは、結果として、T細胞増殖を誘導するより高い能力を有する。サイトカイン活性あたりのMOの値について、表1を参照されたい。これらの結果は、試料中の主要な細胞がこれらのマーカーについて陰性である場合でさえ、より高い機能性を有するCD80/83/86iDCが関与する以前の研究と一致する。したがって、本発明の細胞培養システムにおいて生成されたCD80/83/86iDCの存在は、より高い機能的能力を示す。
【0180】
(2)6ウェルプレートのiDCの表現型は、MO播種密度に依存しない。ウェルプレートは、3つのMO播種密度すべてで、かなり多くのCD80集団とともに主にCD83/86iDCを生成した。さらにまた、異なるMO播種密度から生成されたウェルプレートのiDCにおいて識別できる表現型の相違はなかった。これは、サイトカイン活性あたりのMOの比が、本研究の範囲内で生成されたウェルプレートのiDCに影響を及ぼさないことを示唆する。これは、おそらく、サイトカイン活性あたりのMOの比が、静置培養において、任意の妥当なMO播種密度に対して十分であるためである。MOに対して利用可能なサイトカインは分化のために十分であり、表現型の相違は観察されなかったので、ウェルプレートのiDCによって誘導されたT細胞増殖は、研究したすべての条件で同様であった。
【0181】
T細胞増殖は、少数のiDCがCD80/83/86である場合に減少し、本発明の細胞培養システムのデータおよびウェルプレートのiDCについてのより低いT細胞増殖によって証拠付けられる。CD80/83/86iDCも、iDCがCD80/83/86である場合よりも低い程度であるが、T細胞増殖を誘導する。これは、CD209それ自身が、T細胞増殖を誘導するiDCの能力を予想するために十分ではなく、CD80/83/86発現の程度が良好な指標であることを示す。
【0182】
600kのMO播種密度から生成された本発明の細胞培養システムのiDCは、通常、同じ条件下で生成されたウェルプレートのiDCと比較して、より高いT細胞増殖を誘導する(図26)。この相違は、すべての他の条件が同等のままであるので、本発明の細胞培養システムにおける灌流の結果である可能性がある。灌流は、MOからiDCへの動態に影響を及ぼし得る。本発明の細胞培養システムにおける灌流はまた、カートリッジから培地を除去し、これは、細胞呼吸に起因する培地に溶解した毒性の副生物(COおよび乳酸)を同時に除去する。培地の連続除去は、毒性の副生物が除去されないウェルプレートと比較して、本発明の細胞培養システム内でより低いpHを維持し得る。加えて、1mL/ウェルの分化培地が、サイトカインを補給するために、3日目にウェルプレートに添加される。これは、本発明の細胞培養システムと異なるウェル内の全体のサイトカイン濃度に対する影響を有する。乳酸の動態およびCO産生とともにサイトカイン動態(例えば、MO分化の間の消費およびサイトカインの分解)の詳細な解析は、これらの結果の特異的原因をよく理解するために必要である。
【0183】
本発明の細胞培養システムおよびウェルプレートのiDCの間の機能的相違を説明することができる別の因子は、細胞と接触するポリスチレン表面の正確な性質である。本発明の細胞培養システムは、Oプラズマで処理されたポリスチレンを使用したが、6ウェルプレートは組織培養処理された。表面処理の種類およびポリスチレンの正確な性質は、iDC生成に影響を及ぼし得る。これらの相違にもかかわらず、本発明の細胞培養システムで生成されたiDCは、標準的なウェルプレート培養と表現型的に同様であり、同種T細胞の増殖において機能的に適格である。
iDC収率
表2:実験N1~N3についての1cmあたりの回収されたiDC
【表2】
【0184】
表2は、実験N1~N3、特に、本発明の細胞培養システム(39.7cm)または6ウェルプレート(9.5cm/ウェル)についての1cmあたりの回収されたiDCを示す。ウェルプレートのN2のデータを省略した1cmあたりの回収された平均iDC;平均±標準偏差。
表3:実験N1~N3についての平均(±標準偏差)iDC収率
【表3】
同種機能アッセイ
【0185】
表4~6は、図26におけるデータについての同種機能アッセイの増殖統計を示す。iDCを、100万個の同種T細胞とともに5日間共培養した。増殖ヒストグラムを、図27(実験N1)、図32(実験N2)および図33(実験N3)に示す。図34~36は、同種機能アッセイのT細胞対照を示す。
表4:実験N1についての同種機能アッセイの増殖統計
【表4】
表5:実験N2についての同種機能アッセイの増殖統計
【表5-1】
【表5-2】
表6:実験N3についての同種機能アッセイの増殖統計
【表6】
【0186】
本発明の細胞培養システムは、前駆体のPBMCまたは単球から樹状細胞を生成するプロセスを改善するための密閉された無菌細胞培養システムとして開発された。この研究は、本発明の細胞培養システムで生成されたiDCが、標準的なウェルプレートで生成されたiDCと表現型的および機能的に同等であることを示した。本発明の細胞培養システムについての最適なMO播種密度、およびT細胞増殖を誘導するiDCの能力に対する播種密度の効果を、体系的に決定した。データは、iDC表現型、特にCD80/83/86iDC発現の程度、およびT細胞増殖を誘導するそれらの能力の間の強い相関を示す。低いMO播種密度(200k MO/cm)から生成された本発明の細胞培養システムのiDCは、iDCのより高いCD80/83/86発現に起因して、T細胞増殖を誘導する最も高い能力を示した。本発明の細胞培養システムのiDCはまた、研究された200k~600kのMO播種密度の範囲内の6ウェルプレートのiDCと比較して、同種T細胞アッセイにおいて良好に働いた。さらにまた、本発明の細胞培養システムは、より高いMO播種密度で6ウェルプレートと同様の数のiDCを生成したが、本発明の細胞培養システムは、正規化基準でより低いMO播種密度で6ウェルプレートよりも少ないiDCを生成した。低いまたは高い播種密度でiDCを生成するための決定は、注意深く考慮されるべきであり、より多くの数のiDCを生成すること、またはより高い機能的能力を有するiDCを生成することがより重要であるか否かを考慮して、iDCの下流の適用に依存する。これらのトレードオフは、標準的な静置培養において一般的であり、当然ながら、本発明の細胞培養システムに及ぶ。
【実施例0187】
EDEN細胞培養カートリッジおよび流体システム
EDENを、完全に密閉され、外部環境に対して閉鎖された、単一の細胞培養カートリッジ中で治療的に適切な数のiDCを生成するために開発した。新たな分化培地を、カートリッジに灌流させ、枯渇した培地を除去した。EDENで生成されたiDCは、6ウェルプレートで生成されたiDCと同様の表現型発現およびiDC収率を示した。本発明によるカートリッジ中で成熟したiDCは、標準的なCD80/83/86の上方制御およびCD209の下方制御を示した。計算流体力学シミュレーションは、灌流する媒体がカートリッジ全体にわたって適切に流れ、サイトカインが十分に補給されるのを確実にするためのEDENカートリッジの設計に役立った。これらの結果は、EDENが、試験した条件で、20~35%のiDC収率で、およそ2500万個のiDCを成功裏に生成したことを示す。
【0188】
EDENシステムを図10に示す。EDEN細胞培養カートリッジを、市販のポリスチレンおよびアクリレートカットから、Epilog Zing 16レーザーシステムを使用して製造し、3M接着剤転写テープを使用して組み立てた。ポリスチレン基材をプラズマ処理した。カートリッジは、383.6cmの内部表面積、122mLの体積、および21.0cm×21.0cm×0.317mm(長さ×幅×高さ)のサイズを有する。外周の周囲の8つの入口ポートは、新たな分化培地がカートリッジに灌流されるのを可能にし、中央の単一の出口ポートは、枯渇した培地をカートリッジから除去するのを可能にする。
【0189】
流体システムは、新たな分化培地用の入口ボトル、蠕動ポンプ、およびカートリッジから流出液を収集するための出口ボトルで構成された。Ismatec IPC-N蠕動ポンプを、PharMED BPTチューブとともに使用して、8.0μL/分/入口で、新たな分化培地の連続灌流を維持した。シリコーンチューブを、培地とThermo Formaインキュベーター内部が37℃および5%のCOで維持された周囲環境との間のガス交換を容易にするために、蠕動チューブおよびカートリッジの入口の間で接続した。シリコーンチューブを、灌流流速が64μL/分であると推定される出口ポートでも使用した。廃棄物リザーバーに収集された流出液を、遠心分離して、細胞が灌流によりカートリッジから洗い出されたかを決定したところ、細胞は、流出液中に観察されず、生成されたiDCがカートリッジの内部に残ったままであり、これは、灌流流速が、ポリスチレン基材に存在する細胞を再懸濁するのに十分に高くはないことを示す。285mLの新たな分化培地を、開始時(0日目)および3日目に入口リザーバーに添加して、6日の分化にわたって灌流を維持した。細胞を、細胞溶液を収集し、冷DPBSでそれぞれのウェルを2回洗浄することによって、回収した。2回のDPBS洗浄後の接着細胞は収集しなかった。
分化培地
【0190】
RPMI 1640(Gibco 11875119)を、10%のウシ胎仔血清(FBS;熱失活;MilliporeSigma F2442)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S;Gibco 15140122)、500U/mLのIL-4(R&D Systems 204IL)、および500U/mLのGM-CSF(R&D Systems 215GM)で補充した。
PBMC単離および単球濃縮
【0191】
末梢血単核細胞(PBMC)を、whole blood StemExpressから、Ficoll-Paque(GE Healthcare)を使用して単離した。全血を、同じ日に、採取および処理した。単離されたPBMCを、CryoStor CS10中で、5000万~6000万個PBMC/mLで凍結保存し、蘇生前に少なくとも7日間、凍結保存のままにした。単球(MO)を、Miltenyi CD14マイクロビーズを使用して、蘇生されたPBMCから濃縮し、2つのLSカラムを通して、>95%の純度のMOを得た。単一ドナー由来の濃縮されたMOを、122mLの分化培地に懸濁させ、EDENカートリッジに播種した。それぞれの実験は、異なるドナー由来のMOを使用した。
6ウェルプレート対照
【0192】
Corning Costar 6ウェルプレート(3516)を、iDC生成のための静置対照として使用した。それぞれのウェルは、2.5mLの分化培地を含有し、空のウェルを、3.0mLのDPBSで満たした。1mLの新たな分化培地を、3日目に、それぞれのウェルに添加した。細胞を、細胞溶液を収集し、冷DPBSでそれぞれのウェルを2回洗浄することによって、回収した。2回のDPBS洗浄後の接着細胞は収集しなかった。
iDC成熟
【0193】
成熟を、17.4cmで、5.5mLの成熟培地を保持する小さい型のカートリッジを使用して、3.5μL/分の灌流で、本発明によるシステムにおいて実施した。成熟培地は、10%のHI-FBS、1%のP/S、2ng/mLのIL-1β(BD Biosciences 554602)、1000U/mLのIL-6(BD Biosciences 550071)、10ng/mLのTNF-α(MilliporeSigma 11088939001)、および1μg/mLのPGE2(MilliporeSigma P6532)で補充されたRPMI 1640で構成された。EDEN1実験からのiDCを、422,200個のiDC/cmで播種し、37℃および5%のCOのインキュベーター中、1日または3日のいずれかの間、成熟させた。細胞を、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるKozbial, 2018, Automated generation of immature dendritic cells in a single-use system, Journal of Immunological Methods, 457:53-65に記載の通り、2回の冷PBS洗浄を使用して、回収した。
免疫表現型検査
【0194】
ACEA Biosciences NovoCyteフローサイトメーターを、回収されたiDCの免疫表現型検査ために使用した。パネルAは、生存率(LIVE/DEAD Fixable Green Dead Cell Stain;Invitrogen L34970)、CD209(R&D Systems FAB161P100)、CD14(Abcam abl57312)、およびCD45(R&D Systems FAB1430A)を試験した。パネルBは、CD80(BD Biosciences 557226)、CD83(BD Biosciences 556855)、CD86(BD Biosciences 561128)、およびCD45を試験し、生存率は、チャネルの検出限界に起因して含めなかった。パネルCは、CD80、CD83、CD86、およびCD209(R&D Systems FAB161A)を試験した。ゲートは、パネルAについてCD209アイソタイプ対照(R&D Systems IC0041P)、およびfluorescence-minus-one(FMO)対照を使用してセットした。
フローサイトメトリーゲーティング戦略
【0195】
大型細胞をSSC-A/FSC-Aプロットで、続いて単一細胞をFSC-A/FSC-Hプロットでゲートした。パネルA:生存/CD45+細胞をゲートし、次いで、CD14/CD209をプロットして、MOまたはiDCのパーセンテージを決定した。パネルB:リンパ球をCD45ヒストグラムにおいてゲートした。次いで、CD80/83およびCD80/86をプロットして、iDC表現型を決定した。パネルC:DCを、CD209/80プロットにおいて、続いて、CD209+/80+またはCD209+/80-細胞におけるCD83/86プロットにおいてゲートした。
iDC生成
【0196】
1億1430万個および7830万個のMOをEDENカートリッジに播種した、2つのiDC生成実験を実施した。6日の分化後、2550万個および2480万個のiDCを、それぞれのカートリッジから回収した。回収された生存iDCを、回収された総細胞に、生存/CD45+細胞、iDC(CD209+/14-)を掛けることによって計算した。iDC収率(播種されたMOの数に対して正規化)を、播種されたMOで割った回収されたiDCの数として計算し、2つのEDEN実験について22.3%および31.7%であった。6ウェルプレート対照は、iDC収率が、ウェルプレートが実験1においてより高い収率を有し、実験2においてより低い収率を有して、EDENと同様であったことを示す。
【0197】
表形式データを表7に示す。表現型データを図16に示す。
表7:EDENおよび6ウェルプレートにおけるiDC生成についての分化データ
【表7】
iDC表現型
【0198】
生成されたiDCの免疫表現型検査を図16に示す。EDENおよび6ウェルプレートで生成されたiDCは、分化の6日後、表現型的に同様である。iDCは、CD209(DC-SIGN)陽性、CD14陰性であり、MO由来のiDCについての予想通り、CD80/83の低発現を示す。EDEN2のiDCにおけるCD86発現は、予想外に高かった。このレベルの発現は、成熟DCにおいて典型的に予想されるものである。FBSが動物由来であり、その組成を厳密に制御することができないので、基本培地に補充されたウシ胎仔血清(FBS)中の溶解したタンパク質が、この不規則な発現についての可能な説明であり得る。加えて、カートリッジへのタンパク質の混入は、それが実験室において手作業で組み込まれたので、この高い発現を説明する可能性もある。99.7%よりも多くの細胞は、パネルBヒストグラムにおいてCD45+であった(示さない)。EDENで生成されたiDCについてのこのタンパク質発現プロファイルは、ウェルプレートの静置培養に表現型的に類似する臨床的に適切な数のDCを生成する際のEDENの有効性を実証する。
iDC成熟
【0199】
EDEN1において生成されたiDCを、その後、本発明によるカートリッジにおいて、1日または3日のいずれかの間、成熟させた。731万個のiDCを、それぞれのカートリッジ(422,200個iDC/cm2)に播種し、600万個(1日成熟)および480万個(3日成熟)の成熟DC(mDC)を、それぞれ、81.9%および66.2%の収率で回収した。収率は、回収されたmDCの数で割った播種されたiDCの数として計算した。mDC数を、生存CD45+/209+細胞を計算することによって厳密に決定し、そのため100%未満の収率値は、それぞれの実験における細胞死の程度を示し、これは、2つのサブ実験について、18.1%(1日成熟)および33.8%(3日成熟)であった。
【0200】
成熟の結果を、表8において一覧にする。成熟を、小さい型のカートリッジで行った。表現型データを図17に示す。特に、EDEN1のmDCの免疫表現型検査を図17に示す。CD209発現は、mDCについてより低く、成熟の長さとともに減少した。CD80発現は、iDCについておよそ11%から、それぞれ、1日および3日成熟させたDCについて48%および55%に増加した。CD80発現は、一般に、iDCにおいて低く、mDCにおいて上方制御され、成熟が成功したことを示す。CD83/86発現は、CD80発現に明確に依存し、図17の最後の2段に示す。CD80+mDCは、CD80-mDCと比較して、CD86のより高い発現を示したが、CD83発現は変わらなかった。
表8:EDEN1で生成されたiDCについての成熟データ
【表8】
計算流体力学(CFD)シミュレーション
【0201】
COMSOL MultiphysicsにおけるCFDシミュレーションを、培地がカートリッジ内をどのように流れるかを理解するために、EDENを設計する際に利用した。37℃の水を、分化培地をシミュレーションするために使用した。カートリッジを、最初に、サイトカインなしのただの水で満たした。実際には、カートリッジは、サイトカインを含有する分化培地で満たされる。しかしながら、ただの培地(水)でカートリッジを最初に満たすことで、サイトカイン対流を可視化することを可能にした。サイトカインの拡散が極めて低く(9216μm/日)、対流がサイトカイン勾配の駆動力となっているからである。1.16mol/m(500U/mL)のR&D SystemsのIL-4を含有する水を、8μL/分/入口でカートリッジに灌流し、カートリッジ中央の出口を通って外に出した。本発明者らは新たな分化培地の最適な培地流を決定することに興味があったので、サイトカインの消費/枯渇は、この解析に織り込まなかった。図11は、培地が流れるカートリッジ内の体積を記載するカートリッジの流れチャンネルを示す。IL-4サイトカイン濃度は、図12において紫色の表面によって表される、細胞がカートリッジ基材上に存在する流れチャンネルのより低いポリスチレン表面をモデルにした。灌流に起因する流線およびゲージ圧力を、それぞれ、図13および14に示す。IL-4濃度勾配を、灌流のそれぞれ24時間の期間について、図15に示す。
【0202】
これらのCFDデータは、灌流される培地がカートリッジ全体にわたって十分に拡散されるカートリッジの設計において重要であった。サイトカイン濃度および流線データは、8μL/分/入口の層流で、カートリッジが8つの領域の間で分割されることを示す。それぞれの領域は、およそ4日後に新たな分化培地で補給される。初期のCFDシミュレーションは、流れにおけるデッド領域またはデッドスポットがv形状のノッチの場所で形成されることを示し、そのため、これらのノッチが、流れにおけるデッド領域またはデッドスポットを除き、所望の流体の流れを容易にするために追加された。カートリッジ内の8つの円柱状の支柱は、上部のアクリル表面を支える。これらが追加される前、アクリルのわずかなたるみが観察され、アクリルはカートリッジ内の培地によって支えられ、これは、細胞に影響を及ぼし得るカートリッジ内の不必要な圧力を引き起こすだろう。したがって、これらの特徴、すなわち、ノッチおよび支柱を加えて、流れにおけるデッド領域またはデッドスポットを改善し、圧力の懸念は、望ましくない圧力勾配を引き起こすことなく、灌流される培地がカートリッジ内を流れるのを十分に支援する、最終のEDENカートリッジ設計をもたらした。
参照による組み込み
【0203】
特許、特許出願、特許公開、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ等の他の文献への参照および引用を、本開示全体にわたって行った。このような文献すべてが、ここに、すべての目的で、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
均等
【0204】
本発明を、ある特定の実施形態と併せて記載したが、当業者であれば、前述の明細書を読んだ後、本明細書において説明される組成物および方法に対して、さまざまな変換、均等物の置換および他の変更をもたらすことができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
複数のゾーンのそれぞれ内の流れにおけるデッド領域を回避するために、前記複数のゾーンのそれぞれと対称な流体の流れを提供するように幾何学的に構成された前記複数のゾーン
を含む細胞培養カートリッジ。
(項目2)
細胞培養チャンバーが、複数のコーナー、前記複数のコーナーのそれぞれのコーナーに配置された入口、および前記細胞培養チャンバーの上面に配置された出口を含む、項目1に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目3)
前記細胞培養チャンバーが、入口をそれぞれ含む8つのコーナーを有する八角形を含む、項目2に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目4)
前記出口が、前記細胞培養チャンバーの前記上面の中央に配置される、項目2に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目5)
細胞培養チャンバーが、細胞が接着する材料で構成される底面を含む、項目1に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目6)
前記底面の前記材料が、グロー放電またはコロナ放電下、空気または酸素プラズマで処理されている、項目5に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目7)
前記底面の前記材料が、フィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンなどのタンパク質またはポリアミノ酸で改変されている、項目5に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目8)
前記底面と上面との間に伸びる1つまたは複数の支柱をさらに含む、項目5に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目9)
前記底面が、前記底面の外周に1つまたは複数のノッチを含む、項目5に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目10)
前記細胞培養カートリッジが、透明であり、ポリスチレンおよびアクリレートからなる群から選択される1種または複数の材料で作られている、項目1に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目11)
細胞培養チャンバーと作動可能に連結された1つまたは複数のストップコックをさらに含む、項目1に記載の細胞培養カートリッジ。
(項目12)
複数のゾーンのそれぞれ内の流れにおけるデッド領域を回避するために、前記複数のゾーンのそれぞれと対称な流体の流れを提供するように幾何学的に構成された前記複数のゾーンを含む細胞培養カートリッジ;および
細胞培養チャンバーに作動可能に付随する1つまたは複数のポンプ
を含む細胞培養システム。
(項目13)
前記細胞培養チャンバーが、複数のコーナー、前記複数のコーナーのそれぞれのコーナーに配置された入口、および前記細胞培養チャンバーの上面に配置された出口を含む、項目12に記載の細胞培養システム。
(項目14)
前記細胞培養チャンバーが、入口をそれぞれ含む8つのコーナーを有する八角形を含み、入口の設置が、前記細胞培養チャンバー中で対称な流体の流れチャンネルを可能にする、項目13に記載の細胞培養システム。
(項目15)
前記出口が、前記細胞培養チャンバーの前記上面の中央に配置される、項目13に記載の細胞培養システム。
(項目16)
前記細胞培養チャンバーが、細胞が接着する材料で構成される底面を含む、項目15に記載の細胞培養システム。
(項目17)
前記底面および前記上面の間に伸びる1つまたは複数の支柱をさらに含む、項目16に記載の細胞培養システム。
(項目18)
前記底面が、前記底面の外周に1つまたは複数のノッチを含む、項目16に記載の細胞培養システム。
(項目19)
前記細胞培養チャンバーと作動可能に連結された1つまたは複数のストップコックをさらに含む、項目12に記載の細胞培養システム。
(項目20)
前記細胞培養チャンバーを第2の容器と流体連結するように構成された少なくとも1つの流体コネクターをさらに含む、項目12に記載の細胞培養システム。
(項目21)
前記細胞培養カートリッジと作動可能に連結された1つまたは複数のセンサーをさらに含む、項目12に記載の細胞培養システム。
(項目22)
前記1つまたは複数のセンサーが、pH、溶存酸素、総生物量、細胞直径、グルコース濃度、ラクテート濃度および細胞代謝産物濃度からなる群から選択される1つまたは複数のパラメーターを測定する、項目21に記載の細胞培養システム。
(項目23)
中央演算処理ユニットをさらに含み、前記中央演算処理ユニットが、前記システムに、前記細胞培養チャンバーのサイズを含む第1のインプットデータを受信させる;
前記細胞培養チャンバーに導入される1つまたは複数の流体中の第1の細胞型の第1の濃度および第2の細胞型の第2の濃度を含む第2のインプットデータを受信させる;ならびに
前記第1および第2のインプットに基づいて、前記第1の細胞型および前記第2の細胞型が前記細胞培養チャンバー内で互いに接触する可能性を最大にする前記細胞培養チャンバーに導入される灌流流体の灌流速度を計算させる
命令を実行する、項目12に記載の細胞培養システム。
(項目24)
前記第1の細胞型が、末梢血単核細胞であり、前記第2の細胞型が、樹状細胞である、項目23に記載のシステム。
(項目25)
1つまたは複数の灌流流体リザーバーに作動可能に連結され、かつ前記中央演算処理ユニットに作動可能に連結された、1つまたは複数のポンプをさらに含み、前記中央演算処理ユニットが、前記1つまたは複数のポンプを制御することによって、前記灌流流体の前記灌流速度を制御する、項目23に記載のシステム。
(項目26)
樹状細胞を培養する方法であって、
複数のゾーンのそれぞれ内の流れにおけるデッド領域を回避するために、前記複数のゾーンのそれぞれと対称な流体の流れを提供するように幾何学的に構成された前記複数のゾーンを含む細胞培養カートリッジを提供するステップ;
前記細胞培養カートリッジに単球細胞を播種するステップ;ならびに
前記単球細胞を細胞培養チャンバー中でインキュベートして、入口を介して前記細胞培養カートリッジへの培地の連続灌流を提供すること、および出口を介して廃棄物リザーバーに枯渇した培地を除去することによって樹状細胞を生成するステップ
を含む、方法。
(項目27)
前記樹状細胞を回収するステップをさらに含み、前記細胞を回収するステップが、前記カートリッジを冷却することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
未成熟樹状細胞を第2のカートリッジに移動させるステップをさらに含み、前記第2のカートリッジが、前記細胞培養カートリッジよりも小さい、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記未成熟樹状細胞が、前記第2のカートリッジ中で成熟し、かつ抗原パルス化を受ける、項目28に記載の方法。
(項目30)
流体が、前記細胞培養チャンバーを対称に流れる、項目26に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
図26-1】
図26-2】
図26-3】
図27-1】
図27-2】
図27-3】
図28-1】
図28-2】
図29-1】
図29-2】
図29-3】
図30-1】
図30-2】
図31-1】
図31-2】
図32-1】
図32-2】
図32-3】
図33-1】
図33-2】
図33-3】
図34
図35
図36
【外国語明細書】