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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009702
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電線、多芯ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111410
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 賢治
(72)【発明者】
【氏名】梁川 奈侑
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309RA05
5G309RA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂材料の含有割合を抑制した電線を提供する。
【解決手段】導体11と、導体11を被覆する絶縁体12と、を有する電線10であって、絶縁体12は、樹脂材料と、生物由来材料から生成された化学物質である第一フィラーと、を含む。絶縁体は、第一フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁体と、を有しており、
前記絶縁体は、樹脂材料と、第一フィラーとを含み、
前記絶縁体は、前記第一フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含み、
前記第一フィラーは、生物由来材料から生成された化学物質である電線。
【請求項2】
前記第一フィラーがデンプンを含有する請求項1に記載の電線。
【請求項3】
前記第一フィラーが炭酸カルシウムを含有する請求項1に記載の電線。
【請求項4】
前記第一フィラーがセルロースを含有する請求項1に記載の電線。
【請求項5】
前記樹脂材料が架橋されている請求項1に記載の電線。
【請求項6】
撚り合わされた複数本の電線と、
前記複数本の電線を被覆する外被と、を有しており、
前記複数本の電線は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電線である多芯ケーブル。
【請求項7】
前記外被が第二フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含み、
前記第二フィラーは、生物由来材料から生成された化学物質である請求項6に記載の多芯ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線、多芯ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁体とを備えた絶縁電線において、
前記絶縁体は、バイオマスプラスチックと塩化ビニル樹脂とを含有する樹脂組成物よりなることを特徴とする絶縁電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-099380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年環境問題への関心が特に高まっている。このため、環境負荷を低減できるように石油由来の樹脂材料の含有割合を抑制した電線が求められている。
【0005】
そこで、本開示は、樹脂材料の含有割合を抑制した電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電線は、導体と、
前記導体を被覆する絶縁体と、を有しており、
前記絶縁体は、樹脂材料と、第一フィラーとを含み、
前記絶縁体は、前記第一フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含み、
前記第一フィラーは、生物由来材料から生成された化学物質である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、樹脂材料の含有割合を抑制した電線を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一態様に係る電線の長手方向と垂直な面での断面図である。
図2図2は、本開示の一態様に係る多芯ケーブルの長手方向と垂直な面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る電線は、導体と、
前記導体を被覆する絶縁体と、を有しており、
前記絶縁体は、樹脂材料と、第一フィラーとを含み、
前記絶縁体は、前記第一フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含み、
前記第一フィラーは、生物由来材料から生成された化学物質である。
【0012】
絶縁体が、生物由来材料から生成された化学物質である第一フィラーを含有することで、石油由来の樹脂材料の含有割合を従来よりも抑制できる。生物由来材料から生成された化学物質である第一フィラーは、枯渇性資源ではない。このため、絶縁体が該第一フィラーを含有し、樹脂材料の含有割合を抑制することで、環境負荷を抑制できる。
【0013】
第一フィラーは生物由来材料なので、第一フィラーを焼却した際に生じる二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素を増加させるものではない。
【0014】
従って、絶縁体が第一フィラーを含み、樹脂材料の使用量を抑制することで、該絶縁体を含む電線を廃棄等する際に絶縁体部分を焼却した場合でも大気中の二酸化炭素量の増加を抑制できる。このため、係る観点からも、本開示の一態様に係る電線によれば環境負荷を抑制できる。
【0015】
第一フィラーとして、米や、トウモロコシ、貝殻、木材等の生物由来材料をそのまま用いることも考えられる。しかしながら、生物由来材料をそのまま第一フィラーとして用いる場合、粒径の制御が難しく、耐電圧試験を行った場合に絶縁破壊が生じる場合がある。また、絶縁体は押出成形等により形成できるが、生物由来材料をそのままフィラーとして用いると加工時に第一フィラーが成形機で詰まる場合があり生産性が低下する恐れがある。
【0016】
そこで、本開示の一態様に係る電線では、生物由来材料から生成した化学物質を第一フィラーとして用いることができる。生物由来材料から生成した化学物質を第一フィラーとして用いることで、第一フィラーの粒径の制御を容易に行うことができる。このため、電線の生産性を向上させ、絶縁体や電線のバイオマス度を高めることもできる。また、絶縁体が薄肉の場合でも、耐電圧特性を高めることができる。
【0017】
絶縁体が、第一フィラーを10質量%以上含有することで、絶縁体や電線のバイオマス度を高め、樹脂材料の使用量を抑制できるため、環境負荷を抑制できる。また、絶縁体が第一フィラーを40質量%以下含有することで、電線の耐電圧特性を高められる。
【0018】
(2) 上記(1)において、前記第一フィラーがデンプンを含有してもよい。
【0019】
デンプンは、例えば米やトウモロコシから安価に製造できる。すなわち、デンプンは容易に入手できる生物由来材料から安価に製造できる。このため、第一フィラーが、化学物質としてデンプンを含有することで、電線の製造コストを抑制しつつ、電線の生産性を向上させ、絶縁体や電線のバイオマス度を高めることができる。また、絶縁体が薄肉の場合でも、電線の耐電圧特性を高めることができる。
【0020】
(3) 上記(1)または(2)において、前記第一フィラーが炭酸カルシウムを含有してもよい。
【0021】
炭酸カルシウムは例えば牡蠣や帆立の殻から安価に製造できる。すなわち、炭酸カルシウムは容易に入手できる生物由来材料から安価に製造できる。このため、第一フィラーが、化学物質として炭酸カルシウムを含有することで、電線の製造コストを抑制しつつ、電線の生産性を向上させ、絶縁体や電線のバイオマス度を高めることができる。また、絶縁体が薄肉の場合でも、電線の耐電圧特性を高めることができる。
【0022】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記第一フィラーがセルロースを含有してもよい。
【0023】
セルロースは例えば木材から安価に製造できる。すなわち、セルロースは容易に入手できる生物由来材料から安価に製造できる。このため、第一フィラーが、化学物質としてセルロースを含有することで、電線の製造コストを抑制しつつ、電線の生産性を向上させ、絶縁体や電線のバイオマス度を高めることができる。また、絶縁体が薄肉の場合でも、電線の耐電圧特性を高めることができる。
【0024】
(5) 上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記樹脂材料が架橋されていてもよい。
【0025】
樹脂材料を架橋することで、電線の耐熱性や、強度、耐腐食性を高めることができる。
【0026】
(6) 本開示の一態様に係る多芯ケーブルは、
撚り合わされた複数本の電線と、
前記複数本の電線を被覆する外被と、を有しており、
前記複数本の電線は、(1)から(5)のいずれかに記載の電線である。
【0027】
本開示の一態様に係る多芯ケーブルによれば、本開示の一態様に係る電線を含むため、環境負荷を抑制しつつ、電線が含有する絶縁体が薄肉の場合でも耐電圧特性が高く、生産性に優れる。
【0028】
(7) (6)において、前記外被が第二フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含み、
前記第二フィラーは、生物由来材料から生成された化学物質であってもよい。
【0029】
外被が、第二フィラーを10質量%以上含有することで、外被や多芯ケーブルのバイオマス度を高め、樹脂材料の使用量を抑制できるため、環境負荷を抑制できる。また、外被が第二フィラーを40質量%以下含有することで、多芯ケーブルの耐電圧特性を高められる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る電線、多芯ケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
[電線]
図1に、本実施形態の電線の長手方向と垂直な断面の構成例を示す。図1における紙面と垂直な方向が電線の長手方向になる。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の電線10は、導体11と、導体11を被覆する絶縁体12とを有することができる。
(1)電線が含有する各部材について
本実施形態の電線が含有する各部材について説明する。
(1-1)導体
導体11は、単線の導体素線、あるいは複数本の導体素線により構成できる。導体11が、複数本の導体素線を有する場合、該複数本の導体素線を撚り合せておくこともできる。すなわち、導体11が複数本の導体素線を有する場合、導体11は、複数本の導体素線の撚線とすることもできる。
【0032】
導体11の材料は特に限定されないが、例えば銅合金、銅、銀めっき軟銅、錫めっき軟銅から選択された1種類以上の導体材料を用いることができる。銅としては軟銅を好適に用いることができる。
【0033】
導体11の外径D11は特に限定されないが、例えば0.12mm以上5.20mm以下であることが好ましい。導体11の断面積は特に限定されないが、例えば断面積が0.05mm以上8mm以下であることが好ましい。
(1-2)絶縁体
絶縁体12は、図1に示すように導体11の外表面、具体的には電線10の長手方向に沿った外表面を被覆できる。絶縁体12は、以下に説明する樹脂材料と、第一フィラーとを含むことができる。
【0034】
絶縁体12の外径D12は特に限定されないが、例えば0.2mm以上8mm以下とすることができる。
(1-2-1)樹脂材料
絶縁体12は、樹脂材料を含有することができる。樹脂材料としては特に限定されないが、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルから選択された1種類以上を用いることが好ましい。樹脂材料は、バイオマス由来の樹脂材料であってもよく、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂等を用いることもできる。樹脂材料としてバイオマス由来の樹脂材料を用いることで、石油由来の樹脂材料の使用量を抑制し、かつ絶縁体や電線のバイオマス度を高めることができる。
【0035】
なお、本明細書において、バイオマス度とは、含有するバイオマス原料の質量割合を意味する。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレンアクリル酸エステル共重合体、エチレンαオレフィン共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸ブチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、部分ケン化EVA、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレンアクリル酸エステル無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は選択した1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0037】
樹脂材料は架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。
【0038】
ただし、樹脂材料が架橋されている場合、電線10の耐熱性や、強度、耐腐食性を高めることができる。このため、電線10について、耐熱性や、強度、耐腐食性を要求される用途に用いる場合には、樹脂材料は架橋されていることが好ましい。
(1-2-2)第一フィラー
絶縁体12は、第一フィラーを含有できる。第一フィラーには、生物由来材料から生成された化学物質を用いることができる。
【0039】
絶縁体12が、生物由来材料から生成された化学物質である第一フィラーを含有することで、石油由来の樹脂材料の含有割合を従来よりも抑制できる。生物由来材料から生成された化学物質である第一フィラーは、枯渇性資源ではない。このため、絶縁体12が該第一フィラーを含有し、樹脂材料の含有割合を抑制することで、環境負荷を抑制できる。
【0040】
第一フィラーは、生物由来材料なので、第一フィラーを焼却した際に生じる二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素を増加させるものではない。
【0041】
従って、絶縁体12が第一フィラーを含み、樹脂材料の使用量を抑制することで、該絶縁体を含む電線を廃棄等する際に絶縁体部分を焼却した場合でも大気中の二酸化炭素量の増加を抑制できる。このため、係る観点からも、本実施形態に係る電線によれば環境負荷を抑制できる。
【0042】
フィラーとして、米や、トウモロコシ、貝殻、木材等の生物由来材料をそのまま用いることも考えられる。しかしながら、生物由来材料をそのまま第一フィラーとして用いる場合、粒径の制御が難しく、耐電圧試験を行った場合に絶縁破壊が生じる場合がある。また、絶縁体12は押出成形等により形成できるが、生物由来材料をそのまま第一フィラーとして用いると加工時に第一フィラーが成形機で詰まる場合があり生産性が低下する恐れがある。
【0043】
そこで、本実施形態の電線では、生物由来材料から生成した化学物質を第一フィラーとして用いることができる。生物由来材料から生成した化学物質を第一フィラーとして用いることで、第一フィラーの粒径の制御を容易に行うことができる。このため、電線の生産性を向上させ、絶縁体12や電線10のバイオマス度を高めることもできる。また、絶縁体12が薄肉の場合でも、電線10の耐電圧特性を高めることができる。
【0044】
上記耐電圧特性とは、絶縁体12にピンホール等が生じることを抑制し、スパークテスタを用いて耐電圧試験を実施した場合に絶縁破壊が生じにくい特性を意味する。従って、耐電圧特性に優れるとは、絶縁体12について絶縁性を担保できていることを意味する。
【0045】
生物由来材料から生成した化学物質(以下、単に「化学物質」とも記載する。)としては特に限定されない。第一フィラーは、化学物質として、例えばデンプンを含有できる。第一フィラーは、化学物質として、例えば炭酸カルシウムを含有できる。また、第一フィラーは、化学物質として、例えばセルロースを含有できる。
【0046】
第一フィラーは異なる複数の化学物質を含有することもでき、第一フィラーは、例えば上記デンプン、炭酸カルシウム、およびセルロース等から選択された1種類以上を含有してもよい。
【0047】
デンプンは、例えば米やトウモロコシから、炭酸カルシウムは例えば牡蠣や帆立等の殻(貝殻)から、セルロースは例えば木材から安価に製造できる。すなわち、デンプン、炭酸カルシウム、セルロースは容易に入手できる生物由来材料から安価に製造できる。このため、第一フィラーが、化学物質としてデンプン、炭酸カルシウム、およびセルロース等から選択された1種類以上を含有することで、電線の製造コストを抑制しつつ、電線の生産性を向上させ、絶縁体12や電線10のバイオマス度を高めることができる。また、絶縁体12が薄肉の場合でも、電線10の耐電圧特性を高めることができる。
【0048】
本実施形態の電線10の絶縁体12は、第一フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含有できる。絶縁体12が、第一フィラーを10質量%以上含有することで、絶縁体12や電線10のバイオマス度を高め、樹脂材料の使用量を抑制できるため、環境負荷を抑制できる。また、絶縁体12が第一フィラーを40質量%以下含有することで、電線10の耐電圧特性を高められる。
(1-2-3)添加剤
絶縁体12は上記樹脂材料および第一フィラー以外に、各種添加剤を含有することもできる。絶縁体12は、添加剤として、例えば難燃剤等を含有できる。
(難燃剤)
難燃剤としては特に限定されない。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、ノンハロゲン系難燃剤のいずれを用いることもできるが、特に環境負荷を抑制する観点からは、ノンハロゲン系の難燃剤を用いることが好ましい。
【0049】
このため、絶縁体12は、例えば難燃剤として、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン等の金属水酸化物や金属酸化物から選択された1種類以上含有することができる。
(その他添加剤)
絶縁体12は、樹脂材料とフィラーのみから、もしくは樹脂材料と、フィラーと、難燃剤とのみから構成することもできる。ただし、絶縁体12はさらに添加剤を含有することもでき、絶縁体12は、例えば絶縁体に一般的に配合される酸化防止剤、劣化防止剤、着色剤、架橋助剤、粘着付与剤、滑剤、軟化剤、充填剤、加工助剤、カップリング剤などを含有することもできる。
【0050】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤などが例示される。
【0051】
劣化防止剤としては、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、加水分解防止剤などが例示される。
【0052】
着色剤としてはカーボンブラック、チタンホワイトその他有機顔料、無機顔料などが例示される。これらは、識別のため、または紫外線吸収のために絶縁体12に添加することができる。
【0053】
絶縁体12の樹脂成分を架橋する場合に、架橋効率を上げるために絶縁体12が含有する樹脂材料100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下の割合で架橋助剤を添加することもできる。架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N'-メタフェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛などが例示される。
【0054】
粘着付与剤としては、クマロン・インデン樹脂、ポリテルペン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、水素添加ロジンなどが例示される。滑剤としては、脂肪酸、不飽和脂肪酸、それらの金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルなどが挙げられる。軟化剤としては鉱物油、植物油、可塑剤などが挙げられる。充填剤としては炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、酸化亜鉛、酸化モリブデンなどが挙げられる。カップリング剤としては、シランカップリング剤や、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネートなどのチタネート系カップリング剤などを必要に応じて添加することもできる。
[多芯ケーブル]
図2に、本実施形態の多芯ケーブルの長手方向と垂直な断面の構成例を示す。図2における紙面と垂直な方向が多芯ケーブルの長手方向になる。
【0055】
図2に示すように、本実施形態の多芯ケーブル20は、撚り合わされた複数本の電線10と、複数本の電線10を被覆する外被21とを有することができる。
(1)多芯ケーブルが含有する各部材について
(1-1)電線
多芯ケーブル20が含有する複数本の電線10は、既に説明した本開示に係る電線10を用いることができる。このため、説明は省略する。
【0056】
図2においては、多芯ケーブル20が2本の電線10を含む例を示しているが、多芯ケーブル20が含む電線10の本数は特に限定されない。例えば3本以上の電線10を含むこともできる。
【0057】
また、多芯ケーブル20は、導体11、絶縁体12の外径や、材料等の構成が異なる複数種類の電線10を含むこともできる。
【0058】
本実施形態の多芯ケーブル20によれば、本開示の一態様に係る電線10を含むため、環境負荷を抑制しつつ、電線10が含有する絶縁体12が薄肉の場合でも耐電圧特性が高く、生産性に優れる。
(1-2)外被
外被21は、複数本の電線10を保護するために設けられており、複数本の電線10を束ねることができる。外被21の構成は特に限定されない。
【0059】
外被21は、例えば既述の電線10の絶縁体12の場合と同様に、樹脂材料と、第二フィラーとを含むことができる。
【0060】
樹脂材料については、絶縁体12で説明した材料と同じ材料を好適に用いることができるため、説明を省略する。
【0061】
第二フィラーについても、絶縁体12で説明した第一フィラーと同じ材料を好適に用いることができ、生物由来材料から生成された化学物質を好適に用いることができる。このため、第二フィラーについて、説明は省略する。
【0062】
外被21が第二フィラーを含有する場合、外被21は、第二フィラーを10質量%以上40質量%以下の割合で含むことが好ましい。外被21が、第二フィラーを10質量%以上含有することで、外被や多芯ケーブルのバイオマス度を高め、樹脂材料の使用量を抑制できるため、環境負荷を抑制できる。また、外被21が第二フィラーを40質量%以下含有することで、多芯ケーブル20の耐電圧特性を高められる。
【実施例0063】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実験例において作製した電線の評価方法について説明する。
(1)絶縁体厚さ
導体11の外径D11および絶縁体12の外径D12は、マイクロメータを用いて測定した。
【0064】
具体的には、導体11の外径D11の場合、電線10の長手方向と垂直な任意の一断面内において、電線10の直交する2本の直径に沿って、マイクロメータにより導体11の外径を測定した。そして、その平均値を電線10が有する導体11の外径D11とした。絶縁体12の外径D12についても同じ操作により測定、算出した。
【0065】
そして、絶縁体12の外径D12から、導体11の外径D11を引き、2で割ったものを絶縁体厚さT12とした。
【0066】
表1中、「絶縁体厚さ」の欄に示したXは0.2mm、Yは0.4mm、Zは0.4mmであることを意味する。
(2)耐電圧試験
スパークテスタを用いた耐電圧試験を行い、絶縁破壊による導通が無い場合を合格としてA、絶縁破壊による導通が確認された場合を不合格としてBと評価した。
【0067】
以下に各実験例における電線を説明する。
【0068】
実験例1、実験例3~実験例6が実施例、実験例2、実験例7が比較例になる。
(実験例1)
実験例1では、長手方向と垂直な断面において、図1に示すように、導体11と、導体11を被覆する絶縁体12とを有する電線10を作製した。
(導体)
導体11としては、素線径が0.1mmの錫めっき軟銅線である導体素線を7本撚り合わせた撚線を用いた。導体11の外径D11は0.3mmであった。導体11の断面積は表1の「導体断面積」の欄に示している。
(絶縁体)
樹脂材料であるPE(ポリエチレン)と、第一フィラーであるデンプンとを押出成形機に供給、混練し、導体11の外表面を被覆するように成形することで、絶縁体12を形成した。表1中、絶縁体を形成する際に用いた樹脂材料を「樹脂材料」の欄に、第一フィラーとして用いた材料を「フィラー」の欄に記載している。実験例1および後述する実験例3~実験例7では、第一フィラーの材料として、表1に示した生物由来材料から生成された化学物質を用いている。
【0069】
樹脂成分と、第一フィラーとは、絶縁体12内の第一フィラーの含有割合が表1の「フィラー量」の欄に示した値となるように押出成形機に供給し、混練した。得られた電線に電子線を照射することで、絶縁体12が含有する樹脂材料を架橋した。
【0070】
得られた電線について、耐電圧試験を行った。評価結果を表1に示す。
[実験例2]
第一フィラーとして、生物由来材料から生成された化学物質ではなく、生物由来材料そのものである、米を破砕した米破砕物を用いた。以上の点以外は実験例1と同じ条件で電線を作製し、評価を行った。
【0071】
評価結果を表1に示す。
[実験例3~実験例7]
導体11として、素線径が0.45mmの錫めっき軟銅線である導体素線を50本撚り合わせた撚線を用いた。導体11の外径D11は3.7mmであった。
【0072】
そして、樹脂材料と、第一フィラーの材料と、絶縁体12が含有する第一フィラーの質量割合とが、表1に示した値となるように押出成形機に原料を供給した。表1中のPVCはポリ塩化ビニルを意味する。
【0073】
以上の点以外は実験例1と同じ条件で電線を作製し、評価を行った。
【0074】
評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【符号の説明】
【0076】
10 電線
11 導体
12 絶縁体
D11 導体の外径
D12 絶縁体の外径
T21 絶縁体の厚さ
20 多芯ケーブル
21 外被
図1
図2