(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009703
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】姿勢矯正器具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240116BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240116BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61F5/01 E
A47C27/00 D
A47C27/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111411
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】393023145
【氏名又は名称】株式会社ユメロン黒川
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕文
【テーマコード(参考)】
3B096
4C098
【Fターム(参考)】
3B096AB03
3B096AB07
3B096AC05
3B096AD04
3B096AD06
3B096BA00
4C098AA02
4C098BB04
4C098BB05
4C098BC22
4C098BC36
4C098BC37
4C098BD02
(57)【要約】
【課題】 横臥時に使用者の猫背や円背を正しい姿勢に矯正できる姿勢矯正パッドを使用者の体型に確実に合致させて、姿勢矯正パッドの矯正効果を最大限に引き出すことができる姿勢矯正器具を提供すること。
【解決手段】 シート状の中間材1をカバー体2の中に収容して、かつ、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する一方、
この膨出部4の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応した姿勢矯正パッド5を構成するとともに、
前記姿勢矯正パッド5の下面には、部位によって硬さが異なる弾性変形可能なクッションマット6を当接して積層した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の中間材がカバー体の中に収容され、かつ、前記中間材と前記カバー体とが所定間隔で線状に圧潰されて接合され、これら並列する接合部の間に膨出部が形成されている一方、
この膨出部の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨の位置に対応した姿勢矯正パッドが構成されているとともに、
前記姿勢矯正パッドの下面には、部位によって硬さが異なる弾性変形可能なクッションマットが当接して積層されており、
使用者の自重によって前記姿勢矯正パッドの下面の膨出部が前記クッションマットの上面に沈み込んで、前記姿勢矯正パッドの位置ズレを規制して、かつ、姿勢矯正パッドが使用者の体型の凹凸に適応した状態で横臥可能にしたことを特徴とする姿勢矯正器具。
【請求項2】
前記クッションマットが少なくとも頭部ピース、胴部ピースおよび脚部ピースの三部位に分割されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の姿勢矯正器具。
【請求項3】
前記クッションマットが、表裏で異なる硬さのマットを積層して構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の姿勢矯正器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢矯正器具の改良、更に詳しくは、横臥時に使用者の猫背や円背を正しい姿勢に矯正できる姿勢矯正パッドを使用者の体型に確実に合致させて、姿勢矯正パッドの矯正効果を最大限に引き出すことができる姿勢矯正器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
猫背や円背を正しい姿勢に矯正するための手段の一つとして、体圧分散機能を有する敷きパッドの上に横臥する方法が知られているが、その改良品として、本発明者は、かつて<特許文献1>に記載の姿勢矯正パッドを開発した。
【0003】
かかる姿勢矯正パッドは、パッドの表面に形成された膨出部の位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨の位置に対応しているため、横臥すると体重により膨出部が押し潰されて沈み込んで長手方向に延伸し、椎骨の間隔を広げるとともに、胸椎や腰椎付近の筋肉をストレッチしてほぐれやすくすることができる。
【0004】
ところで、このパッドを床や地面などの完全にフラットな面に敷設して使用する場合には、パッドが平面状になって使用者の体型の凹凸に沿わず、部位によっては、体圧が大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりして、ストレッチ効果にムラが生じてしまうおそれがあった。
【0005】
また、このパッドを布団やクッションの上に敷設して使用する場面もあるが、布団やクッションの内容物は一様の硬さであって変形量にアクセントがなく、床や地面の場合と比較しても若干の緩衝作用にとどまり、やはりパッドは平面状になりやすく、使用者の体型等への合致度が不十分になりやすい。
【0006】
また、使用者にとって、日々の体調によっても快適な姿勢やフィット感覚が異なるものであるし、長いスパンで考えても、年齢とともに体型が変化して姿勢が崩れていくことが考えられるため、高い矯正効果を得るためには、その変化に対応できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の姿勢矯正器具に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、横臥時に使用者の猫背や円背を正しい姿勢に矯正できる姿勢矯正パッドを使用者の体型に確実に合致させて、姿勢矯正パッドの矯正効果を最大限に引き出すことができる姿勢矯正器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、シート状の中間材1をカバー体2の中に収容して、かつ、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する一方、
この膨出部4の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応した姿勢矯正パッド5を構成するとともに、
前記姿勢矯正パッド5の下面には、部位によって硬さが異なる弾性変形可能なクッションマット6を当接して積層して、
使用者の自重によって前記姿勢矯正パッド5の下面の膨出部4が前記クッションマット6の上面に沈み込んで、前記姿勢矯正パッド5の位置ズレを規制して、かつ、姿勢矯正パッド5が使用者の体型の凹凸に適応した状態で横臥可能にするという技術的手段を採用したことによって、姿勢矯正器具を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記クッションマット6を少なくとも頭部ピース61、胴部ピース62および脚部ピース63の三部位に分割されて構成するという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記クッションマット6を、表裏で異なる硬さのマットを積層して構成するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、シート状の中間材をカバー体の中に収容して、かつ、前記中間材と前記カバー体とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部の間に膨出部を形成する一方、この膨出部の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨の位置に対応した姿勢矯正パッドを構成するとともに、前記姿勢矯正パッドの下面には、部位によって硬さが異なる弾性変形可能なクッションマットを当接して積層したことによって、
使用者の自重によって前記姿勢矯正パッドの下面の膨出部が前記クッションマットの上面に沈み込んで、前記姿勢矯正パッドの位置ズレを規制して、かつ、姿勢矯正パッドが使用者の体型の凹凸に適応した状態で横臥することができる。
【0014】
したがって、本発明の姿勢矯正器具によれば、横臥時に使用者の猫背や円背を正しい姿勢に矯正できる姿勢矯正パッドを使用者の体型に確実に合致させて、姿勢矯正パッドの矯正効果を最大限に引き出すことができることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の姿勢矯正器具の構造を表わす全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の姿勢矯正器具の構造を表わす説明断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の姿勢矯正器具の使用状態を表わす説明側面図である。
【
図4】本発明の実施形態のクッションマットの変形例を表わす全体斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態のクッションマットの変形例を表わす全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。初めに、本実施形態の姿勢矯正パッド5の構成について説明する。まず、シート状の中間材1をカバー体2の中に収容する。カバー体2の中には、基本的には中間材1のみを収容するが、必要に応じて、指圧を高めるための棒材等を挿入することもできる。パッドのサイズは、成人が横臥できるように、長手方向190cm、幅方向60~120cmとする。
【0017】
本実施形態では、中間材1として、例えば、繊維同士が絡んで粒状の繊維粒が形成され、これら複数の繊維粒が立体的に配置されてシート状に構成したもの(「特開2016-94692」に示す株式会社アライ社製品)を採用することができる。こうすることによって、適当な硬さと弾力性を持たせることができる。
【0018】
より具体的には、複数の繊維粒同士は、この繊維粒の塊から外側に突出繊維によって立体的に絡まっている。繊維粒は略球形状であることが好ましく、弾力性の観点から平均粒径が3~10mmの範囲内であることが好ましい。
【0019】
繊維粒の材料は合成繊維または天然繊維などを使用することができ、合成繊維としては、ポリエステル等のポリオレフィン系繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維などを採用することができるが、良好な弾力性が得られることからポリエステル繊維であることが好ましい。また、繊維粒を構成する繊維の繊維長は5~50mmの範囲内であることが好ましく、繊維の太さ(繊度)は1~40デニールの範囲内であることが好ましい。
【0020】
また、パッド表面を被覆するカバー体2の生地としては、ダブルラッセル編地を採用することができ、優れた通気性および伸長性を発揮することができる。生地を構成する素材としては、前記中間材1と同様に、合成繊維または天然繊維などを使用することができるが、ポリエステル繊維を採用する。
【0021】
次いで、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する。接合部3の形状は、直線や曲線、破線などを種々の形状を採用することができるが、適切な弾力性および伸長性を付与するためには、幅方向に渡って形成される複数の平行直線であることが好ましい。なお、この接合部3は、パッドを丸めて折り畳む際の折り目にもなる。
【0022】
そして、この膨出部4の形成位置を、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応させることができる。
【0023】
本実施形態では、前記接合部3を6~8cmの間隔で設けることができ、より好ましくは中間値である7cmにする。即ち、成人の平均的な体格において、胸椎および腰椎の椎骨Vの間隔は約3.5cmであるため、この7cmという値は、胸椎および腰椎の椎骨Vの間隔の約2倍に対応するものである。
【0024】
また、本実施形態では、前記膨出部4における最大厚みを4cm以上にすることができ、より好ましくは5cm以上にする。このように、本発明では、従来の敷きパッドに設けられている接合部の間隔よりも狭く、かつ、膨出部の厚みを大きくすることによって、弾力性を向上させることができ、ストレッチ効果を大きくすることができる。
【0025】
なお、前記接合部3を形成するためには、縫製や接着などの方法を選択し得るが、前記中間材1および前記カバー体2を熱可塑性樹脂製にすることにより、熱融着により形成することができ工程を簡素化することができる。この熱融着の方法としては、超音波振動のホーンを用いて所望の位置をヒートプレスすることによって接合する。また、中間材1とカバー体2とが一体となって確実に固定され、中間材1がカバー体2の内部で千切れたり移動したりするのを防止することができる。
【0026】
次に、本実施形態のクッションマット6の構成について説明する。クッションマット6のサイズは、前記姿勢矯正パッド5と略同様の大きさにして、素材としては、適度な反発力および復元力、通気性を有するものが好ましい。本実施形態では、ポリエステル製のハニカムメッシュ積層構造(立体構造織物)のマット(厚さ4~8cm)を採用することができ、軽量かつ頑丈で弾性変形が可能であるとともに、反復使用による荷重で陥没した変形履歴が残っていたとしても、その部位にドライヤー等で熱風をかけるだけで簡単に元通りの形状に復元することができる。
【0027】
また、本実施形態のクッションマット6は、部位によって硬さ(反発力)が異なるように構成する。こうすることによって、荷重比率の大きい身体の胴部がマットに沈み込みすぎないように硬めにしたり、痛みのある部位を柔らかめにすることなどができ、使用者の体型や特性、コンディションに合わせることができる。この際、部位による硬さの違いは、素材の種類やメッシュ密度などを調整して配置することによって付与することができ、位置は任意に選択することができる。
【0028】
そして、本実施形態では、前記姿勢矯正パッド5の下面に、クッションマット6を当接して積層する(
図1および
図2参照)。この際、姿勢矯正パッド5とクッションマット6とを図示しない薄手生地の外側カバーの中に共に収容することによって、両者がズレることなく、より確実に積層させることができる。また、外側カバーのみを洗濯できるため衛生的である。なお、外側カバーが、生地表面の滑りと柔軟性、伸縮性を有する薄手生地であるとによって、姿勢矯正パッド5とクッションマット6の機能には全く影響を及ぼすことはない。
【0029】
こうして構成された姿勢矯正器具の上面に使用者が横臥することによって、使用者の自重によって前記姿勢矯正パッド5の下面の膨出部4が前記クッションマット6の上面に沈み込んで、前記姿勢矯正パッド5の位置ズレを規制して、かつ、姿勢矯正パッド5が使用者の体型の凹凸に適応した状態で横臥することができる(
図3参照)。
【0030】
このようにして、本実施形態では、前記姿勢矯正パッド5をクッションマット6と積層したことによって、姿勢矯正パッド5を使用者の体型に確実に合致させて、姿勢矯正パッド5の矯正効果を最大限に引き出すことができる。
【0031】
また、本実施形態の前記姿勢矯正パッド5は、膨出部4で椎骨Vを確実に支持することになるため、横臥すると体重により膨出部が押し潰されて沈み込んで長手方向に延伸し、椎骨Vの間隔を広げるとともに、胸椎や腰椎付近の筋肉をストレッチしてほぐれやすくなる。
【0032】
特に、就寝時に使用する場合には、長時間ストレッチ状態を持続させることができ、しかも、睡眠中には筋肉が弛緩するため、よりストレッチ効果が高くなり、更に、寝返り等の運動により、胸椎や腰椎付近の筋肉がほぐれ、胸椎後弯および腰椎前弯の矯正が可能になるのである。
【0033】
本実施形態の変形例として、
図4に示すように、前記クッションマット6を、少なくとも頭部ピース61、胴部ピース62および脚部ピース63の三部位に分割して構成することができる。こうすることによって、部位による硬さの変更を容易にすることができるとともに、未使用時にコンパクトに収納することができる。
【0034】
更にまた、本実施形態では、
図5に示すように、前記クッションマット6を、表裏で異なる硬さのマットを積層して構成することができる。この際、例えば、マットの硬さを「ハード」「ややハード」「ソフト」の3段階に設定して、予め表裏一組で合わせたものを単位ユニットにしておくことができる。このような手段によっても、部位による硬さの変更を容易にして使い勝手を向上させることができ、しかも組み合わせ数が格段に多くなるので、確実に体型に合致させることができ、姿勢矯正パッドの効果を最大に発揮させることができる。
【0035】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、姿勢矯正パッド5の中間材1を構成する繊維の材質、長さ、太さなどは適宜変更することができる。
【0036】
また、カバー体2の生地はダブルラッセル編地に限らず、織物や不織布などの生地を採用することもできる。
【0037】
更にまた、クッションマット6を分割する場合の構造は、頭部ピース61、胴部ピース62および脚部ピース63の長手方向の三部位に限らず、幅方向に分割することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0038】
1 中間材
2 カバー体
3 接合部
4 膨出部
5 姿勢矯正パッド
6 クッションマット
61 頭部ピース
62 胴部ピース
63 脚部ピース
V 椎骨