(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097041
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】P75NTRニューロトロフィン結合タンパク質の治療的使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20240709BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240709BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K39/395 N
A61P19/02
A61K47/64
A61K45/00
A61P29/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024070329
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2017522743の分割
【原出願日】2015-07-17
(31)【優先権主張番号】1412748.4
(32)【優先日】2014-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517014505
【氏名又は名称】レヴィセプト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック サイモン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】変形性関節症の処置に有用である、p75NTRの細胞外ドメインに結合するタンパク質を提供する。
【解決手段】変形性関節症の処置での使用のための、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))であって、変形性関節症の処置は、変形性関節症の症状からの緩和を含む、p75NTR(NBP)である。前記p75NTR(NBP)は、1つまたは複数の補助分子に連結されたp75NTR(NBP)を含み、1つまたは複数の補助分子は、(a)トランスフェリンまたはその一部;(b)アルブミンまたはその一部;(c)免疫グロブリンFcまたはその一部;または(d)ポリエチレングリコールポリマー鎖から選択される、p75NTR(NBP)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形性関節症の処置での使用のための、
p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
変形性関節症の処置は、変形性関節症の症状からの緩和を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項3】
p75NTR(NBP)であって、
変形性関節症の症状からの緩和は、疼痛、炎症、腫れ、圧痛、関節硬直の低減、または関節可動性の増大、またはこれらの任意の組み合わせを含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項4】
請求項1に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
変形性関節症の処置は、疾患の進行の遅滞または阻止を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項5】
請求項1に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
変形性関節症の処置は、疾患進行の反転、軟骨の再成長および/または治癒的処置を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項6】
請求項4または5に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
疾患進行は、軟骨の喪失または再成長の割合により判定される、
p75NTR(NBP)。
【請求項7】
請求項1に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
変形性関節症の処置は、予防的処置を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、1つまたは複数の補助分子に連結されたp75NTR(NBP)を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項9】
請求項8に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記の1つまたは複数の補助分子は、(a)トランスフェリンまたはその一部;(b)アルブミンまたはその一部;(c)免疫グロブリンFcまたはその一部;または(d)ポリエチレングリコールポリマー鎖から選択される、
p75NTR(NBP)。
【請求項10】
請求項8または9のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、1つまたは複数のリンカーを介して、前記の1つまたは複数の補助分子に連結される、
p75NTR(NBP)。
【請求項11】
請求項9または10のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、免疫グロブリンFcまたはその一部に連結されたp75NTR(NBP)を含む、
p75NTR(NBP)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、配列番号3のアミノ酸配列を有する、
p75NTR(NBP)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、20℃で表面プラズモン共鳴により測定したときに、約5pM~約5nMの結合親和力(Kd)で、NGF、BDNF、NT3またはNT4/5のいずれかに結合する、
p75NTR(NBP)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、別々の、連続の、または、第二の薬理学的に活性の化合物と組み合わせた併用での同時の使用のためのものである、
p75NTR(NBP)。
【請求項15】
請求項14に記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記併用の前記の第二の薬理学的に活性の化合物は、オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、バルビツレート鎮静剤、鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、鎮静作用を有するH1拮抗薬、グルテチミド、メプロバメート、メタカロンまたはジクロラルフェナゾンのような、鎮静剤;骨格筋弛緩薬;NMD受容体拮抗薬、α-アドレナリン作用薬、三環系抗うつ薬、抗痙攣薬、タキキニン(NK)拮抗薬、具体的には、NK-3、NK-2またはNK-1拮抗薬、ムスカリン性拮抗薬、COX-2選択的阻害剤、コールタール鎮痛剤、具体的にはパラセタモール;神経遮断薬バニロイド受容体作動薬または拮抗薬;β-アドレナリン作用薬;局部麻酔薬;コルチコステロイド;5-HT受容体作動薬または拮抗薬;5-HT2A受容体拮抗薬;コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤;Tramadol(登録商標);PDEV阻害剤;カンナビノイド;代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)拮抗薬;セロトニン再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤;デュアルのセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)拮抗薬;ロイコトリエンB4拮抗薬;5-リポキシゲナーゼ阻害剤;ナトリウムチャネルブロッカー;または5-HT3拮抗薬、およびそれらの薬学的に許容できる塩類および溶媒和物、から選択される、
p75NTR(NBP)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の使用のためのp75NTR(NBP)であって、
前記p75NTR(NBP)は、経口、舌下、口腔、局所、直腸、吸入、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、関節滑液嚢内、皮内、腹腔内、経粘膜、膣、硝子体内、関節内、関節周囲、局部または経皮の投与のために製剤化される、
p75NTR(NBP)。
【請求項17】
p75NTR(NBP)をコードする核酸であって、
請求項1から16のいずれかに定義される変形性関節症の処置での使用のための、
核酸。
【請求項18】
細胞をトランスフェクトするための複製可能な発現ベクターであって、
p75NTR(NBP)をコードする核酸を含み、請求項1から16のいずれかに定義される変形性関節症の処置での使用のための、
複製可能な発現ベクター。
【請求項19】
p75NTR(NBP)を発現する宿主細胞であって、
請求項1から16のいずれかに定義される変形性関節症の処置での使用のための、
宿主細胞。
【請求項20】
医薬組成物であって、
請求項1から16のいずれか一項に記載のp75NTR(NBP)または請求項17に記載の核酸分子、または請求項18に記載の複製可能な発現ベクター、または請求項19に記載の宿主細胞、および薬学的に許容できる担体および/または賦形剤を含む、
医薬組成物。
【請求項21】
キットであって、
a.請求項1から16のいずれか一項に記載のp75NTR(NBP)または請求項17に記載の核酸分子、または請求項18に記載の複製可能な発現ベクター、または請求項19に記載の宿主細胞、または請求項20の医薬組成物;および
b.変形性関節症および/または変形性関節症の症状の予防または処置のいずれか1つまたは複数のため、または、変形性関節症および/または変形性関節症の症状の発生率を改善、制御、低下させ、または、その発達または進行を遅滞または反転させるための、個体への有効量の前記のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクターまたは医薬組成物の投与に関する説明書、
を含む、
キット。
【請求項22】
個体における変形性関節症および/または変形性関節症の症状を処置および/または予防する方法であって、
前記個体に、治療的に有効量の請求項1から16のいずれか一項に記載のp75NTR(NBP)または請求項17に記載の核酸分子、または請求項18に記載の複製可能な発現ベクター、または請求項19に記載の宿主細胞、または請求項20の医薬組成物(場合により、薬学的に許容できる担体をさらに含む)を投与するステップを含む、
方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記p75NTR(NBP)は、免疫グロブリンFcまたはその一部に連結されたp75NTR(NBP)を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節症の処置における、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質および関連分子の新規の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症は、関節が劣化して関節の疼痛、圧痛、硬直およびロッキングをもたらす状態のグループである。それは関節炎の最も一般的な形であり、世界中で何百万もの人々に影響を及ぼしている。
【0003】
その状態は概して、不十分な自己修復による、関節内の軟骨に対する機械的損傷の結果であると認識される。炎症、疼痛および腫れをもたらすことに加えて、軟骨の損失は、症状を悪化させる骨増殖体(骨棘)の形成をもたらし得て、関節の狭窄および歪みをもたらし得る。軟骨の損傷および損失の正確なメカニズムは、正確には理解されておらず、要因の組み合わせの結果であり得る。
【0004】
変形性関節症の処置は、利用可能な治癒的処置の選択肢がなく、状態の管理に制限される。また、この変性疾患の進行を停止する処置も報告されていない。管理の選択肢は、理学療法、鎮痛剤の投与および/または抗炎症薬の投与および、ある場合には、外科的処置を介した関節置換を含む。
【0005】
ニューロトロフィンである神経栄養成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT-3)、およびニューロトロフィン4/5(NT-4/5)は、4つの受容体:低親和性p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)および高親和性チロシンキナーゼ受容体;TrkA、TrkB、およびTrkCを介して作用する。低親和性受容体p75NTRは、4つのニューロトロフィンの全てに結合して活性化され、他の受容体から独立して機能することが報告されている。しかしながら、Trk受容体はより選択的に活性化され、すなわちNGFはTrkAに関する選択的なリガンドであり、BDNFはTrkBに関するリガンドであり、そして、NT-3、NT-4/5はTrkCに関するリガンドである。加えて、p75NTRとTrkタンパク質が共発現されると、それらは複合体を形成し、両方の受容体のシグナリングを変えることが報告されている(Huang and Reichardt,2003)。実際に、p75NTRは、各ニューロトロフィンのそれぞれのTrk受容体に関する選択性を促進することが示唆されている。
【0006】
p75NTRは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)のメンバーであり、このスーパーファミリーの完全に特徴付けられた最初のメンバーであった。スーパーファミリー(ヒトでは約30の遺伝子によりコードされる)は、p75NTRにおいて初めて同定された、40アミノ酸のシステインリッチドメイン(CRD)の1つまたは複数の(典型的に4つ)の繰り返しからなるリガンド結合ドメインにより定義づけられる(Johnson et al,1986;Radeke et al,1987)。対照的に、全てのTNFR-SFファミリーメンバーの細胞内ドメインで共通する配列モチーフはない。その結果として、TNFR-SFタンパク質のシグナリングメカニズムは非常に多様性がある。
【0007】
p75NTRの構造の独特な特徴は、膜貫通ドメイン内のシステイニル残基を介して形成された、ジスルフィド結合のp75NTR二量体の存在である。このジスルフィド結合は、p75NTRによる効果的なニューロトロフィン依存性シグナリングに必要であり、細胞内および細胞外ドメインの形成において重要な役割を果たす(Vilar et al,2009b)。ニューロトロフィンは、生理学的に、非共有結合的に関連する二量体として(Bothwell and Shooter,1977)、およそ5分の分布相半減期で(Tria et al,1994)、存在する。ニューロトロフィン依存性のp75NTRの活性化は、p75NTR二量体の2つの細胞外ドメインのCRD2~4とニューロトロフィン二量体の関連性に関与する(He and Garcia,2004)。最近の研究は、ニューロトロフィン結合が、p75NTR二量体の2つの細胞外ドメインを共により近くに動かし、ジスルフィド結合を中心としたスネイルトング様の動きの中で細胞内ドメインを広げて離れさせて、シグナリングアダプタータンパク質NRIFおよびTRAF6と細胞内ドメインとを関連させるモデルを支持する(Vilar et al,2009a, 2009b)。p75NTRに存在するような内部膜貫通ドメインのジスルフィド結合は、他のTNFR-SFファミリーメンバーまたは任意の他の膜タンパク質では、これまで開示されていない。
【0008】
p75NTRは、α-セクレターゼとγ-セクレターゼの活性およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)により連続的にタンパク質分解的に切断され、Notchとβ-アミロイド前駆体タンパク質の切断依存的シグナリングパスウェイに似た様式で、その細胞内ドメイン(ICD)を細胞質内に放出する(Jung et al.,2003;Kanning et al,2003)。このパスウェイによるp75NTR ICDの細胞質放出は、関連するNRIFによるシグナリングを促進する(Kenchappa et al,2006)。α-セクレターゼとγ-セクレターゼの活性およびMMPによるタンパク質分解的な切断の後の、p75NTRの細胞外ドメインの役割は、完全には理解されていない。
【0009】
NGFおよび他のニューロトロフィン(BDNF、NT-3およびNT-4/5)が、変形性関節症、膵炎、関節リウマチ、乾癬、掻痒症および多発性硬化症に起因する疼痛などの病変において、重大な役割を果たすことが示されている(Watanabe et al.,2010;Raychaudhuri et al.,2011;Barthel et al.,2009;Truzzi et al.,2011;McDonald et al.,2011;Yamaoka et al.,2007)。NGFまたはBDNFのいずれか、NT-3、およびNT-4/5の、任意のニューロトロフィンに対する選択的抗体が、著しく疼痛を軽減させることが示されている。さらに、ニューロトロフィン受容体p75NTR Trk A、Trk BまたはTrk Cに対する抗体もまた、疼痛モデルに有効であることが示されている(Orita S et al.,2010;Svensson P et al.,2010;Iwakura et al.,2010;Cirilio et al.,2010;Pezet et al.,2010;Hayashi et al.,2011;Chu et al.,2011;Ueda et al.,2010;Ghilardi et al.,2010;Fukui et al.,2010)。疼痛モデルにおいて、Fukui et al.(2010)(坐骨神経挫滅に続く機械的アロディニア)は、抗p75NTR抗体での処置後の、疼痛に関連するエンドポイントに対する有意な効能を示した。この研究から、p75NTR阻害抗体での処置は、CGRPおよびp75NTR発現を減少させて、疼痛の有意な低減をもたらすことが結論付けられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、p75NTRの細胞外ドメインが、変形性関節症の処置に有用であることを示す。p75NTRの細胞外ドメインは、疾患の進行を停止させ、さらに反転させることが示された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第一の態様では、変形性関節症の処置での使用のための、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))が提供される。
【0012】
好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、変形性関節症の症状からの緩和を含む。好ましくは、変形性関節症の症状からの緩和は、限定されないが、疼痛、炎症、腫れ、圧痛、関節硬直の低減、または関節可動性の増大、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0013】
特に好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、疾患進行の遅滞または阻止、および/または、軟骨の損失の低減を含む。好ましくは、変形性関節症の処置は、疾患の進行の反転、軟骨の再成長および/または治癒的処置を含む。好ましくは、疾患の進行は、軟骨の喪失または再成長の割合により判定される。他の好ましい実施態様では、疾患の進行は、関節内に存在する軟骨細胞の数を決定することによりモニタリングされ得る。
【0014】
他の好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、予防的処置を含む。
【0015】
特定の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)はヒトp75NTR(NBP)である。
【0016】
他の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、1つまたは複数の補助分子に連結されたp75NTR(NBP)を含む。好ましくは、1つまたは複数の補助分子は、(a)トランスフェリンまたはその一部;(b)アルブミンまたはその一部;(c)免疫グロブリンFcまたはその一部;または(d)ポリエチレングリコールポリマー鎖から選択される。さらに他の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、1つまたは複数のリンカーを介して、1つまたは複数の補助分子に連結される。
【0017】
特に好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0018】
特に好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、20℃で表面プラズモン共鳴により測定したときに、約5pM~約5nMの結合親和力(Kd)で、NGF、BDNF、NT3またはNT4/5のいずれかに結合する。
【0019】
好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、別々の、連続の、または、第二の薬理学的に活性の化合物と組み合わせた併用での同時の使用のためのものである。好ましくは、併用の第二の薬理学的に活性の化合物は、オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、バルビツレート鎮静剤、鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、鎮静作用を有するH1拮抗薬、グルテチミド、メプロバメート、メタカロンまたはジクロラルフェナゾンのような、鎮静剤;骨格筋弛緩薬;NMD受容体拮抗薬、α-アドレナリン作用薬、三環系抗うつ薬、抗痙攣薬、タキキニン(NK)拮抗薬、具体的には、NK-3、NK-2またはNK-1拮抗薬、ムスカリン性拮抗薬、COX-2選択的阻害剤、コールタール鎮痛剤、具体的にはパラセタモール;神経遮断薬バニロイド受容体作動薬または拮抗薬;β-アドレナリン作用薬;局部麻酔薬;コルチコステロイド;5-HT受容体作動薬または拮抗薬;5-HT2A受容体拮抗薬;コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤;Tramadol(登録商標);PDEV阻害剤;カンナビノイド;代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)拮抗薬;セロトニン再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤;デュアルのセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)拮抗薬;ロイコトリエンB4拮抗薬;5-リポキシゲナーゼ阻害剤;ナトリウムチャネルブロッカー;または5-HT3拮抗薬、およびそれらの薬学的に許容できる塩類および溶媒和物から選択される。
【0020】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、経口、舌下、口腔、局所、直腸、吸入、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、関節滑液嚢内、皮内、腹腔内、経粘膜、膣、硝子体内、関節内、関節周囲、局部または経皮の投与のために製剤化される。
【0021】
本発明のさらなる態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)をコードする核酸が提供される。
【0022】
本発明の別の態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)をコードする核酸を含む、細胞をトランスフェクトするための複製可能な発現ベクターが提供される。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)を発現する宿主細胞が提供される。
【0024】
また、本発明のさらなる態様では、上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、または宿主細胞、および薬学的に許容できる担体および/または賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0025】
本発明の別の態様は、以下を含むキットに関する:
a.上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、宿主細胞、または医薬組成物;および
b.変形性関節症および/または変形性関節症の症状の予防または処置のいずれか1つまたは複数のため、または、変形性関節症および/または変形性関節症の症状の発生率を改善、制御、低下させ、または、その発達または進行を遅滞または反転させるための、個体への有効量のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクターまたは医薬組成物の投与に関する説明書。
【0026】
本発明の別の態様では、個体における変形性関節症および/または変形性関節症の症状を処置および/または予防する方法が提供され、前記個体に、治療的に有効量の上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、宿主細胞、または医薬組成物(場合により、薬学的に許容できる担体をさらに含む)を投与するステップを含む。
【0027】
本発明は、添付図面の参照により、さらに理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】MIAまたはETF-PBSの注入後の、軟骨領域の損失の進行。データポイントは、平均±SEM、n=6である。
【
図2】コントロール抗体(A、B)またはp75NTR 0.3mg/kg(C、D)、1mg/kg(E、F)、3mg/kg(G、H)で処置された動物由来の、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色されたラットの膝の内側面。実験的な変形性関節症を、MIAの関節内注入により、各動物の左膝において誘導した(A、C、E、G)。右膝はETF-PBSを注入した(コントロール;B、D、F、H)(×4拡大)。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために個々の動物から撮られる。
【
図3】コントロール抗体(A、B)またはp75NTR 3mg/kg(C、D)で処置された動物由来の、サフラニンOで染色されたラットの膝の内側面。実験的な変形性関節症を、MIAの関節内注入により、各動物の左膝において誘導した(AおよびC)。右膝は、ETF-PBSを注入した(コントロール;BおよびD)(×4拡大)。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために個々の動物から撮られる。
【
図4】26日目の、膝関節後部における合計の軟骨領域(軟骨表面から下へ、石灰化した軟骨および軟骨下骨の間の境界まで)。コントロール抗体と比較した有意差を示す。
*P<0.1および
**P<0.05。
【
図5】26日の処置後の、膝関節後部における、130nmの閾値吸収波長でのサフラニンOにより染色された軟骨領域。データは、平均±SEM、n=6であり、コントロール抗体と比較した有意差を示す。
**P<0.05。
【
図6】p75NTR(NBP)-Fc融合タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列。αおよびγセクレターゼ切断部位をボールド体で示す。IgG1のFc部分をイタリックで示す。
【
図7】
図9に示す核酸配列(配列番号4)の、スタートコドンからストップコドンまでの翻訳物(配列番号2)である。
【
図8】好ましいp75NTR(NBP)-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列である(配列番号3)。IgG1のFc部分をイタリック体で示す。p75NTR(NBP)部分とFc部分との間のリンカー配列を下線で示す。
【
図9】5’クローニングサイトから3’クローニングサイトまでの、産物遺伝子全体の核酸配列である(配列番号4)。
【
図10】p75-NTR(NBP)-Fc融合タンパク質の変異体:1:p75_NTR(p75-NTR配列)(配列番号6);2:市販のp75-NTR-Fc融合タンパク質(配列番号7);3:p75_Fc(Fc配列をIgG1zaのLonza定常領域のものに改変した市販のp75-NTR-Fc融合タンパク質)(配列番号8);4:p75_Fc_C222S(Fc配列をIgG1zaのLonza定常領域のものに改変し、222位にシステインからセリンへの追加の変異を有する市販のp75-NTR-Fc融合タンパク質)(配列番号9);5:p75_Fc_G4x1-変異1(4残基グリシンリンカーを有するp75-NTR-Fc融合タンパク質案)(配列番号10);6:p75_Fc_G4Sx1-変異2(単一のテトラ-グリシンセリンリンカーを有するp75-NTR-Fc融合タンパク質案)(配列番号11);7:p75_Fc_G4Sx2-変異3(2つのテトラ-グリシンセリンリンカーを有するp75-NTR-Fc融合タンパク質案)(配列番号12);8:IgG1zaのLonza定常領域(配列番号13)。 このアライメントでは、フォーマットスキームを用いて、推定受容体、Fc-融合タンパク質およびFc定常領域の間の類似領域を強調する:囲み型(Boxed type)を用いて、変異タンパク質とp75-NTRとの間の同一配列領域を示す;一重下線を用いて、全てのFc-融合タンパク質とLonza IgG1za Fcとの間の同一配列領域を示す;イタリック体を用いて、p75-NTRとFc定常領域との接合部でのリンカー領域を示す;二重下線およびボールド体を用いて、リンカー領域の外側の非同一配列の位置(親のp75-NTR Fc-融合タンパク質における222に相当する位置)を示す。
【
図11】配列番号14 ヒトp75NTR全アミノ酸配列
【
図12】配列番号15 シグナル配列を含む、ヒトp75NTR細胞外ドメイン
【
図13】配列番号16 シグナル配列がない、ヒトp75NTR細胞外ドメイン
【
図14】配列番号17 ヒトp75NTR(NBP)ニューロトロフィン結合ドメイン1
【
図15】配列番号18 ヒトp75NTR(NBP)ニューロトロフィン結合ドメイン2
【
図16】配列番号19 ヒトp75NTR(NBP)ニューロトロフィン結合ドメイン3
【
図17】配列番号20 ヒトp75NTR(NBP)ニューロトロフィン結合ドメイン4
【
図18】配列番号21 ヒトp75NTR(NBP)ニューロトロフィン結合ドメイン5
【
図25】配列番号28 血清半減期の延長に関して改変された、ヒトFcフラグメント
【
図26】配列番号29 エフェクター機能の欠損に関して改変された、ヒトFcフラグメント
【
図27】配列番号30 p75NTR(NBP)-Fcリンカー
【
図28】配列番号31 p75NTR(NBP)-Fcリンカー
【
図29】配列番号32 p75NTR(NBP)-Fcリンカー
【
図30】0日目での平均体重。体重(g)は、平均±標準偏差としてプロットされる。グループ1の動物は1mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ2は3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ3は0.3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ4は3mg/kgのPG-007で、グループ5は3mg/kgのコントロールIgG Fcで処置した。
【
図31】実施例3に記載の8週間の試験中のラットの平均体重。体重(g)は、平均±標準偏差としてプロットされる。グループ1の動物は1mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ2は3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ3は0.3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ4は3mg/kgのPG-007で、グループ5は3mg/kgのコントロールIgG Fcで処置した。
【
図32】試験薬での処置後、経時的に判定した自発痛測定。データは、各タイムポイント(35日目~56日目)における各動物について示される。グループ1の動物は1mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ2は3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ3は0.3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ4は3mg/kgのPG-007で、グループ5は3mg/kgのコントロールIgG Fcで、グループ6はETF-PBSで処置し、グループ7は無処置であった。理論的平均0.5に対する1サンプルt検定に関して、
*p<0.05および
**<0.01。
【
図33】試験薬での処置後、経時的に判定した自発痛測定。データは、各タイムポイント(35日目~56日目)における各動物について示される。グループ1の動物は1mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ2は3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ3は0.3mg/kgのp75NTR-Fcで、グループ4は3mg/kgのPG-007で、グループ5は3mg/kgのコントロールIgG Fcで、グループ6はETF-PBSで処置し、グループ7は無処置であった。理論的平均0.5に対する1サンプルt検定に関して、*p<0.05および**<0.01。
【
図34】0日目に低MIAまたはETF-PBSを膝に注入後、28日目から56日目まで、3mg/kgのコントロールIgG-Fcで処置された動物由来の、Safranin O Fast Greenで染色されたラットの膝の内側面(×4拡大)。代表的な画像は、3mg/kgのコントロールIgG-Fcで処置された動物から撮られる。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために、1匹の個々の動物から撮られる。
【
図35】0日目に低MIAまたはETF-PBSを膝に注入後、28日目から56日目まで、3mg/kgのPG-007で処置された動物由来の、Safranin O Fast Greenで染色されたラットの膝の内側面(×4拡大)。代表的な画像は、3mg/kgのPG-007で処置された動物から撮られる。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために、1匹の個々の動物から撮られる。
【
図36】0日目に低MIAまたはETF-PBSを膝に注入後、28日目から56日目まで、3mg/kgのp75NTR-Fcで処置された動物由来の、Safranin O Fast Greenで染色されたラットの膝の内側面(×4拡大)。代表的な画像は、3mg/kgのp75NTR-Fcで処置された動物から撮られる。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために、1匹の個々の動物から撮られる。
【
図37】0日目に低MIAまたはETF-PBSを膝に注入後、28日目から56日目まで、1mg/kgのp75NTR-Fcで処置された動物由来の、Safranin O Fast Greenで染色されたラットの膝の内側面(×4拡大)。代表的な画像は、1mg/p75NTR-Fcで処置された動物から撮られる。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために、1匹の個々の動物から撮られる。
【
図38】0日目に低MIAまたはETF-PBSを膝に注入後、28日目から56日目まで、0.3mg/kgのp75NTR-Fcで処置された動物由来の、Safranin O Fast Greenで染色されたラットの膝の内側面(×4拡大)。代表的な画像は、0.3mg/kgのp75NTR-Fcで処置された動物から撮られる。左および右膝の画像の各セットは、対側性コントロールを示すために、1匹の個々の動物から撮られる。
【
図39】軟骨病理グレード。PG007の投与は、組織学的に有意な効能効果を示さなかった。P75NTR-Fcは、0.3および1.0mg/kgにおいて、軟骨保護に対して顕著な効能を示した。3.0mg/kgにおける効能プロファイルは、より変動的であり、グループの50%がコントロール群と重なった。
【
図40】軟骨下骨グレード。PG007の投与は、3.0mg/kgのP75NTRFcで観察されたプロファイルと同様に、コントロール群と比較して軟骨下骨の病理の組織学的に有意な増大と関連した。対照的に、0.3および1.0mg/kgでのP75NTR-Fcの投与は、軟骨下骨の組織学における顕著な改善と関連した。
【
図41】間質腔グレード。PG007の投与は、いかなる組織学的に有意な効能効果とも関連しなかった。対照的に、P75NTR-Fcの投与は、0.3および1.0mg/kgでの効果が最も顕著であったが-全ての用量において溶骨性の病理の低減および間質腔の拡張と関連し、両方のグループとも、ほぼ正常レベルまで病理を低減した。
【
図42】海綿骨グレード。PG007の投与は、コントロールと同様に海綿骨の病理と関連し-2つのサンプルはコントロールの範囲を超えた。対照的に、P75NTR-Fcは、0.3および1.0mg/kgの投与量レベルで、海綿骨の病理を著しく低減させた。3.0mg/kgでのP75NTF-Fcは、より変動的なプロファイルを示し、サンプルの大部分がコントロール群と重なった。
【
図43】骨髄細胞過多。PG007の投与は、骨髄内の骨髄性細胞の拡張と関連し、4つのサンプルが最高であるか、またはコントロールの範囲を超えた。P75NTR-Fcは-骨髄性の拡張の低減が顕著な特徴であり-0.3および1.0mg/kgの投与量において髄質細胞性を低減させた。3.0mg/kgの投与量は、阻害に向かう傾向を示すが、コントロール群における低レベルのレスポンダーと重なった。
【
図44】多病巣性骨硬化症。P75NTR-Fcサンプルはコントロール範囲の上端に向けてクラスタリングを見せたが、試験群の間に組織学的に有意な差は無かった。
【
図45】造骨細胞過形成。0.3および1.0mg/kgでのP75NTR-Fcの投与は、組織学的に有意な造骨細胞増殖と関連し、柵状配置(palisading)および造骨細胞板(osteoblastic plate)の形成は、軟骨下骨/軟骨ゾーンにおいて、骨端ゾーンで特に顕著であった。加えて、等級付けられはしないが、このゾーン内に、顕著な「線維芽細胞様」細胞が存在した。PG007およびP75NTR-Fc(3.0mg/kg)は、組織学的にコントロールと同様であった(
図45)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
変形性関節症の症状は、炎症、疼痛および腫れを含む。加えて、軟骨の損失は、症状を悪化させる骨増殖体(骨棘)の形成をもたらし得て、関節の狭窄および歪みをもたらし得る。処置の選択肢は現在のところ、理学療法、鎮痛剤の投与および/または抗炎症薬の投与、および、ある場合には、外科的処置を介した関節置換を含む、疾患管理の選択肢に制限されている。現在まで、変形性関節症のための治癒的処置の選択肢は報告がされていない。また、この変性疾患の進行を停止する処置も報告がされていない。したがって、本発明は、治癒的な変形性関節症の処置に関する必要性を対処すること、または、少なくとも変形性関節症における変性を停止することが可能な処置を提供することを求める。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、変形性関節症の容認された動物モデルにおけるp75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))の投与は、疾患の進行を停止するだけでなく、変形性関節症の進行に帰し得る損傷の有意な反転をもたらすことを発見した。
【0031】
したがって、第一の態様では、変形性関節症の処置での使用のための、p75NTRニューロトロフィン結合タンパク質(p75NTR(NBP))が提供される。
【0032】
好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、変形性関節症の症状からの緩和を含む。好ましくは、変形性関節症の症状からの緩和は、限定されないが、疼痛、炎症、腫れ、圧痛、関節硬直の低減、または関節可動性の増大、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
特に好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、疾患進行の遅滞または阻止、および/または、軟骨の損失の低減を含む。好ましくは、変形性関節症の処置は、疾患の進行の反転、軟骨の再成長および/または治癒的処置を含む。好ましくは、疾患の進行は、軟骨の損失または再成長の割合により判定される。軟骨の損失の割合は、制限されないが、磁気共鳴イメージング(MRI)またはX線コンピューター断層撮影(x線CT)を含む様々な方法によりモニタリングされ得る。他の好ましい実施態様では、疾患の進行は、関節内に存在する軟骨細胞の数を判定することによりモニタリングされ得る。
【0034】
本明細書において用いられる用語「治癒的処置」は、患者を彼らの疾患以前の状態に回復させる処置を含むことが意図される。そのような処置は、疾患以前の状態を維持するために、活性化合物の連続的な投与を必要とし得る。あるいは、治癒的処置は、疾患以前の状態に到達した時点で停止され得る。
【0035】
他の好ましい実施態様では、処置は、原発性または続発性変形性関節症のいずれかのものである。原発性変形性関節症の処置は、原発性の全身性結節性変形性関節症および糜爛性変形性関節症(EOA、炎症性変形性関節症とも呼ばれる)の両方の処置を含む。
【0036】
また、変形性関節症の処置は、WOMACの等級付けまたはOuterbridge分類システムの下で分類される疾患症状の改善を含むことも意図される。好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、疾患進行の反転をもたらし、疾患ステージ(WOMACの等級付け)またはグレード(Outerbridge分類)の変化へ導く。
【0037】
他の好ましい実施態様では、変形性関節症の処置は、予防的処置を含む。
【0038】
特定の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)はヒトp75NTR(NBP)である。
【0039】
他の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、1つまたは複数の補助分子に連結されたp75NTR(NBP)を含む。好ましくは、前記の1つまたは複数の補助分子は、(a)トランスフェリンまたはその一部;(b)アルブミンまたはその一部;(c)免疫グロブリンFcまたはその一部;または(d)ポリエチレングリコールポリマー鎖から選択される。さらに他の好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、前記の1つまたは複数の補助分子に、1つまたは複数のリンカーを介して連結される。好ましくは、リンカーは、(a)共有結合;(b)非共有結合;(c)ペプチド結合;または(d)1個のアミノ酸、または、ペプチドを含む複数のアミノ酸、から選択される。特に好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、場合によりリンカーを介して免疫グロブリンFcまたはその一部に連結された、p75NTR(NBP)を含む。
【0040】
p75NTR(NBP)が、1よりも多い補助分子に連結される場合は、場合により、各補助分子は、同じまたは異なるもののいずれか、または、同じものと異なるものとの混合である。同様に、p75NTR(NBP)が、1つまたは複数のリンカーを介して1よりも多い補助分子に連結される場合は、場合により、各リンカーは、同一または異なるもののいずれか、または、同じものと異なるものの混合である。
【0041】
特に好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0042】
特に好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、20℃で表面プラズモン共鳴により測定したときに、約5pM~約5nMの結合親和力(Kd)で、NGF、BDNF、NT3またはNT4/5のいずれかに結合する。
【0043】
好ましい実施態様では、p75NTR(NBP)は、別々の、連続の、または、第二の薬理学的に活性の化合物と組み合わせた併用での同時の使用のためのものである。好ましくは、併用の第二の薬理学的に活性の化合物は、オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、バルビツレート鎮静剤、鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、鎮静作用を有するH1拮抗薬、グルテチミド、メプロバメート、メタカロンまたはジクロラルフェナゾンのような、鎮静剤;骨格筋弛緩薬;NMD受容体拮抗薬、α-アドレナリン作用薬、三環系抗うつ薬、抗痙攣薬、タキキニン(NK)拮抗薬、具体的には、NK-3、NK-2またはNK-1拮抗薬、ムスカリン性拮抗薬、COX-2選択的阻害剤、コールタール鎮痛剤、具体的にはパラセタモール;神経遮断薬バニロイド受容体作動薬または拮抗薬;β-アドレナリン作用薬;局部麻酔薬;コルチコステロイド;5-HT受容体作動薬または拮抗薬;5-HT2A受容体拮抗薬;コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤;Tramadol(登録商標);PDEV阻害剤;カンナビノイド;代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)拮抗薬;セロトニン再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤;デュアルのセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)拮抗薬;ロイコトリエンB4拮抗薬;5-リポキシゲナーゼ阻害剤;ナトリウムチャネルブロッカー;または5-HT3拮抗薬、およびそれらの薬学的に許容できる塩類および溶媒和物から選択される。
【0044】
好ましいオピオイド鎮痛薬は、限定されないが、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンまたはペンタゾシンを含む。
【0045】
好ましい非ステロイド性抗炎症性薬(NSAID)は、限定されないが、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル(diflusinal)、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンまたはゾメピラックを含む。
【0046】
好ましいバルビツレート鎮静剤は、限定されないが、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール(butabital)、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール(phenobartital)、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール(theamylal)またはチオペンタールを含む。
【0047】
鎮静作用を有する好ましいベンゾジアゼピンは、限定されないが、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパムまたはトリアゾラムを含む。
【0048】
鎮静作用を有する好ましいH1拮抗薬は、限定されないが、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミンまたはクロルシクリジンを含む。
【0049】
好ましい鎮静剤は、限定されないが、グルテチミド、メプロバメート、メタカロンまたはジクロラルフェナゾンを含む。
【0050】
好ましい骨格筋弛緩薬は、限定されないが、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモールまたはオルフレナジンを含む。
【0051】
好ましいNMDA受容体拮抗薬は、限定されないが、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)またはその代謝物デキストロルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニン、シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN-3231(MorphiDex(登録商標)、モルヒネおよびデキストロメトルファンの組み合わせ製剤)、トピラマート、ネラメキサン、または、NR2B拮抗薬を含むペルジンホテル、例えばイフェンプロジル、トラキソプロジルまたは(-)-(R)-6-{2-[4-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシエチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンを含む。
【0052】
好ましいα-アドレナリン作用薬は、限定されないが、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デキスメタトミジン(dexmetatomidine)、モダフィニル、または4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリンを含む。
【0053】
好ましい三環系抗うつ薬は、限定されないが、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリンを含む。
【0054】
好ましい抗痙攣薬は、限定されないが、カルバマゼピン、ラモトリジン、トピラマート(topiratmate)、またはバルプロエートを含む。
【0055】
好ましいタキキニン(NK)拮抗薬は、限定されないが、(αR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6-13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾル-3-オン(MK-869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントまたは3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S)を含む。
【0056】
好ましいムスカリン性拮抗薬は、限定されないが、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリンおよびイプラトロピウムを含む。
【0057】
好ましいCOX-2選択的阻害剤は、限定されないが、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、またはルミラコキシブを含む。
【0058】
好ましいコールタール鎮痛剤は、限定されないが、パラセタモールを含む。
【0059】
好ましい神経遮断薬は、限定されないが、ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドール、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバン、メクリネルタント、Miraxion(登録商標)またはサリゾタンを含む。
【0060】
好ましいバニロイド受容体作動薬は、限定されないが、レシニフェラトキシンを含む。好ましいバニロイド受容体拮抗薬は、限定されないが、カプサゼピンを含む。
【0061】
好ましいβ-アドレナリン作用薬は、限定されないが、プロプラノロールを含む。好ましい局部麻酔薬は、限定されないが、メキシレチンを含む。好ましいコルチコステロイドは、限定されないが、デキサメタゾンを含む。
【0062】
好ましい5-HT受容体作動薬または拮抗薬、具体的には5-HT1B/1D作動薬は、限定されないが、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタンまたはリザトリプタンを含み;好ましい5-HT2A受容体拮抗薬は、限定されないが、R(+)-α-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907)を含む。
【0063】
好ましいコリン作動薬(ニコチン性)鎮痛剤は、限定されないが、イスプロニクリン(TC-1734)、(E)-N-メチル-4-(3-ピリジニル)-3-ブテン-1-アミン(RJR-2403)、(R)-5-(2-アゼチジニルメトキシ)-2-クロロピリジン(ABT-594)またはニコチンを含む。
【0064】
好ましいPDEV阻害剤は、限定されないが、5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニル-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン(シルデナフィル)、(6R,12aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-ピラジノ[2’,1’:6,1]-ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(IC-351またはタダラフィル)、2-[2-エトキシ-5-(4-エチル-ピペラジン-1-イル-1-スルホニル)-フェニル]-5-メチル-7-プロピル-3H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン(バルデナフィル)、5-(5-アセチル-2-ブトキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-エチル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-(5-アセチル-2-プロポキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-イソプロピル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-[2-エトキシ-5-(4-エチルピペラジン-1-イルスルホニル)ピリジン-3-イル]-3-エチル-2-[2-メトキシエチル]-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、4-[(3-クロロ-4-メトキシベンジル)アミノ]-2-[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]-N-(ピリミジン-2-イルメチル)ピリミジン-5-カルボキサミド、3-(1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-N-[2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミドを含む。
【0065】
好ましいカンナビノイドは、限定されないが、テトラヒドロカンナビノール、カンナビノール、カンナビジオール、カンナビゲロール、テトラヒドロカンナビバリン、カンナビジバリンおよびカンナビクロメンを含む。
【0066】
好ましいセロトニン再取り込み阻害剤は、限定されないが、セルトラリン、セルトラリン代謝物デメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l-フェンフルラミン、フェモキセチン、イフォキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミンおよびトラゾドンを含む。
【0067】
好ましいノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤は、限定されないが、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン(mirtazepine)、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝物ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシンおよびビロキサジン(Vivalan(登録商標))、特に選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばレボキセチン、特に(S,S)-レボキセチンを含む。
【0068】
好ましいデュアルのセロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害剤は、限定されないが、ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝物O-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびイミプラミンを含む。
【0069】
好ましい誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤は、限定されないが、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)-ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル;2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィドを含む。
【0070】
好ましいアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、限定されないが、ドネペジルを含む。
【0071】
好ましいプロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)拮抗薬は、限定されないが、N-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミドまたは4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸を含む。
【0072】
好ましいロイコトリエンB4拮抗薬は、限定されないが、1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸(CP-105696)、5-[2-(2-カルボキシエチル)-3-[6-(4-メトキシフェニル)-5E-ヘキセニル]オキシフェノキシ]-吉草酸(ONO-4057)またはDPC-11870を含む。
【0073】
好ましい5-リポキシゲナーゼ阻害剤は、限定されないが、ジレウトン、6-[(3-フルオロ-5-[4-メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル])フェノキシ-メチル]-1-メチル-2-キノロン(ZD-2138)、または2,3,5-トリメチル-6-(3-ピリジルメチル)、1,4-ベンゾキノン(CV-6504)を含む。
【0074】
好ましいナトリウムチャネルブロッカーは、限定されないが、リドカインを含む。好ましい5-HT3拮抗薬は、限定されないが、オンダンセトロンを含む。
【0075】
好ましくは、p75NTR(NBP)は、経口、舌下、口腔、局所、直腸、吸入、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、関節滑液嚢内、皮内、腹腔内、経粘膜、膣、硝子体内、関節内、関節周囲、局部または経皮の投与のために製剤化される。
【0076】
本発明のさらなる態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)をコードする核酸が提供される。
【0077】
本発明の別の態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)をコードする核酸を含む、細胞をトランスフェクトするための複製可能な発現ベクターが提供される。
【0078】
本発明のさらに別の態様では、上記に定義した変形性関節症の処置での使用のための、p75NTR(NBP)を発現する宿主細胞が提供される。
【0079】
また、本発明のさらなる態様では、上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、または宿主細胞、および薬学的に許容できる担体および/または賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0080】
好ましい薬学的に許容できる担体は、限定されないが、[・・・]を含む。
【0081】
本発明の別の態様は、以下を含むキットに関する:
a.上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、宿主細胞、または医薬組成物;および
b.変形性関節症および/または変形性関節症の症状の予防または処置のいずれか1つまたは複数のため、または、変形性関節症および/または変形性関節症の症状の発生率を改善、制御、低下させ、または、その発達または進行を遅滞または反転させるための、個体への有効量のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクターまたは医薬組成物の投与に関する説明書。
【0082】
本発明の別の態様では、個体における変形性関節症および/または変形性関節症の症状を処置および/または予防する方法が提供され、前記個体に、治療的に有効量の上述のp75NTR(NBP)、核酸分子、複製可能な発現ベクター、宿主細胞、または医薬組成物(場合により、薬学的に許容できる担体をさらに含む)を投与するステップを含む。
【実施例0083】
実施例1-ビアコアを用いた、p75NTRのアフィニティ測定
方法
p75NTRのカイネティクスおよびアフィニティは、ビアコアT200(GE Healthcare,Sweden)を用いた表面プラズモン共鳴技術により判定される。ビアコア法は、Abdiche and colleagues(Abdiche,et al.,2008)により推奨されるものに基づく。プロテインA(10mM酢酸ナトリウムバッファー中、10μg/mL)を、アミンカップリングキットに提供される1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)(EDC)およびN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)およびエタノールアミンを用いて、アミンカップリング法により、CM5バイオセンサーチップの表面上に固定化する。
【0084】
手短には、ビアコア装置のアミンカップリング固定化操作ガイドに関するステップは:
・EDCおよびNHSを、1:1混合する。
・EDC/NHS混合物を、10μL/分で420秒間、CM5チップの各フローセルの上に注入する。
・10mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)中のプロテインA[10μg/mL]を、10μL/分で420秒間、同一のフローセルの上に注入する。
・エタノールアミンを、10μL/分で420秒間、同一のフローセル上に注入する。
【0085】
およそ2200~2900応答単位(RU)が固定化される。1つのフローセルを、ブランクコントロールとしてセットする。p75NTR-Fcは、流速10μL/分でのp75NTR(HBS-EP[0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% v/v界面活性剤P20]中、10μg/mL)の30秒の注入を用いて、15℃で、バイオセンサーチップの他のフローセル上に捕捉されて、所望のp75NTR RUレベルを達成する(~400RU;p75NTR、関連のあるニューロトロフィンの分子量および化学量論比を用いて計算した)。リガンドではなくp75NTRを固定化することは、ニューロトロフィンが、それらの本来の状態であることを確認することを助ける。
【0086】
単一サイクルのカイネティクス試験は、ニューロトロフィン濃度あたり30μL/分で120秒間、HBS-EPバッファー中の増加濃度のニューロトロフィンを、フローセルの上に注入することにより行なわれる。最後のニューロトロフィン注入に続いて、HBS-EPがチップの上に600秒間流されて、解離速度を決定する。チップセンサー表面は、全ての新しい注入サイクルの前に、10mMグリシンHCl(pH2)を30μL/分で60秒間注入することにより、それらの元のプロテインA表面に再生される。
【0087】
複数サイクルのカイネティクス試験は、最も低いニューロトロフィン濃度を、30μL/分でフローセルの上に300秒間注入して、その後にHBS-EPバッファーを30μL/分で300秒間注入することにより行なわれる。それから、10mMグリシン、HCl pH2を2×60秒注入することによりチップを再生し、そのサイクルを、増加するニューロトロフィン濃度のそれぞれについて繰り返す。
【0088】
結果
p75NTRは、ニューロトロフィンNGF、BDNF、NT-3およびNT-4に可逆的に結合する。ビアコアを用いて測定されるアフィニティを表1に提供する。
【0089】
【0090】
実施例2-モノヨード酢酸誘導性の変形性関節症の試験
ラットの膝後部におけるモノヨード酢酸(MIA)の関節内注入により誘導される実験的な変形性関節症は、変形性関節症のよく認識されたモデルである。疾患の病理学的進行および疼痛の挙動が報告されている(Guzman,et al.,2003)(Fernihough,et al.,2004)。MIAは、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの阻害により解糖作用を破壊し、軟骨細胞の死をもたらす(Harvey&Dickenson,2009)。軟骨の構造的完全性は、軟骨細胞の正常機能に依存し、したがって、MIAにより誘導される軟骨細胞の損失は、軟骨変性および軟骨下骨の変化をもたらし、OAの臨床組織病理学と一致する(Janusz,et al.,2001;Kobayashi,et al.,2003;Naveen,et al.,2014)。0.3mgのMIAの注入は、10週の期間にわたって軟骨の損失を誘導する。軟骨の損失は3週目と6周目の間で最も大きい(
図1)。
【0091】
ペアで飼育された、-2日目に200~250gの体重の44匹の雄Wistarラット(Charles River,UK)を、各処置群の平均体重が同様になるように、ペアごとに無作為に処置に割り当てる。0日目に、ラットは、表1に示される処置を受ける。調製されたばかりのヒトIgG(エンドトキシン不存在のリン酸緩衝生理食塩水[ETF-PBS]中、3.25mg/mL)およびp75NTR(EF-PBS中、3.25mg/mL)を、皮下に投与する。検査技師は、動物試験全体を通じて動物の処置を見ていない。
【0092】
【0093】
3時間後、全ての動物をイソフルラン(isofluorane)で麻酔する。麻酔した動物はそれぞれ、無作為化スケジュールに従って、左または左膝のいずれかに、0.3mgのMIAを含む50μLのEF-PBSの関節内注入を受ける。麻酔した動物それぞれの対側膝に、50μLのEF-PBSを注入する。さらに、それぞれの抗体またはp75NTR処置を、5日目および15日目に投与する。
【0094】
試験は、軟骨の損失が明らかで活性であるときの26日目に終了する(
図1)。イソフルランを用いて動物を麻酔し、末端血液サンプルを心臓穿刺により採取して血漿サンプルを調製する。後肢下側の皮膚を除去して筋束を骨から分離するが、膝は無傷のままにする。大腿骨、腓骨および脛骨を切断して、筋肉が付着した膝を10%中性緩衝化ホルマリン中に置く。組織サンプルを、組織学的分析のための処理をする前に、緩衝化ホルマリン中に48~72時間保持する。
【0095】
組織サンプルは、ホルマリン固定により生じる損傷を最小限にするために、採取後できる限り迅速に、標準的な手順を用いて光学顕微鏡のために調製する。サンプルを10日間、8%ギ酸中で脱石灰化して、Shandon Citadel組織プロセッサを用いて処理して、溶解パラフィンワックス内に埋め込む。各ラットの膝組織ブロック由来の少なくとも4つの切片(10μm)を、自動化リニア染色装置(Leica ST4040)を用いた標準的なHaematoxylin and Eosin(H&E)染色のために処理する。さらなる切片を、Safranin Oを用いて染色する。スライドを4倍または10倍拡大のいずれかで観察して、画像解析を、コンピューター化システムを用いて行なう。軟骨表面から下へ石灰化した軟骨と軟骨下骨の間の境界までの軟骨領域全体を測定する。組織切片に付いた塗料の光吸収を、デジタルのデンシトメトリーを用いて単色光の下で定量する。Safranin Oによるグリコサミノグリカンの赤色染色の強度を、吸収閾値を130nmに設定した場合に染色される軟骨領域の測定により定量化する。
【0096】
血漿中の外因性p75NTRおよびコントロール抗体の濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてヒトIgGを測定することにより推定する。
【0097】
結果-MIAにより誘導したOAの後の、膝における組織学的変化に対する、p75NTRの効果
全ての処置群由来の動物で、ETF-PBSが注入された膝には、OAの特徴も組織変性も見られなかった(
図2B、D、F、H、
図3B、D、F、H)。対照的に、コントロール抗体で処置した動物において、MIAを注入した膝は、軽度の軟骨細胞変性の領域を示し、頻繁に関節軟骨の全層に関与した(
図2A)。一部の領域において最近の炎症性応答の証拠が存在し、白血球蓄積が著しかった。p75NTRでの処置は、OAの進行を加速しなかった(
図2C、E、G)。コントロール抗体で処置された動物と比較して、p75NTRで処置された低MIA処置の膝のアーキテクチャでは組織学的変化がより少なく、外傷からの保護または損傷の修復が示された。このことは、試験した全てのp75NTR濃度(0.3~3.0mg/kg)において明らかであった。実際に、p75NTR-Fcを最も高い投与量で処置した動物は、軟骨領域において有意な(P<0.05)増加を有した(OAにおけるp75NTR-Fcで誘導された修復の証拠は、
図4参照)。
【0098】
MIAで誘導したOAに後の、膝におけるプロテオグリカン密度に対する、p75NTRの効果
MIAで処置した膝における軟骨領域全体は、p75NTR-Fcで処置した動物において改善された:このことは、関節内注入後26日目に、対応するコントロール動物と比較して、3.0mg/kgのp75NTR-Fcで処置した動物に関して有意に異なった(P<0.05)(
図4)。
【0099】
画像解析により評価されるサフラニンO染色の強度は、軟骨のグリコサミノグリカン含有量に比例し、処置群の間で顕著な違いを示した(P<0.05)(
図5参照)。130nmの吸収閾値を用いると、コントロール抗体で処置した動物では、対側膝と比較して、MIAで処置した膝由来の軟骨の20%のみが、130nm閾値よりも上で赤色染色され、グリコサミノグリカンの実質的な損失が示された。対照的に、p75NTR-Fcを享受した動物のMIAで処置した膝における軟骨のおよそ50%が、130nm閾値よりも上だった(
図5)。このことは、p75NTR-Fcは、MIA注入後の軟骨の構造的完全性の進行する損失、およびさらにはOAにおける疾患改変を防止していることを示す。
【0100】
実施例3-PG-007と比較した、ラットでの変形性関節症の回帰に対する、p75NTR-Fcの効果
この試験の目的は、疾患が確立された時点で、p75NTR-Fcの上昇する投与量がOAの回帰を引き起こすことができるかどうかを評価することである。加えて、ラットにおけるMIAで誘導される関節炎と関連する疼痛の観点から処置の効能を評価し、タネズマブ様の抗-ニューロトロフィン成長因子(NGF)抗体、PG-007を用いた処置と比較する。
【0101】
【0102】
MIAの調製
MIAを、6mg/ml MIAストック溶液と同等である0.3mg/50μlETF-PBSの濃度で調製した(関節内注入それぞれに用いた容量)。68mgのMIAを量り取り、11.3mlのETF-PBS中に溶解させた。MIAを、1日前もって調製して、必要になるまで暗所に4℃で保管した。全ての動物は、同一バッチから調製されたMIAを受けた。
【0103】
【0104】
試験薬の調製
この試験で用いた試験薬を、動物が投薬される特定の日に新たに調製した(表4参照)。抗体を注入するインビボ科学者が、各バイアルにおいて何の処置であるか分からないように、可能な限り、調製された各抗体の容量は等量であった(表5参照)。
【0105】
【0106】
動物
体重120~150g(到着時)の39匹の雄Wistarラット(Charles River,UK由来)を実施例3において用いた。到着次第、各動物を検査して外見上健康であることが分かった。それらを3個のケージに無作為に割り当てて、各ラットに、入れ墨によって尾に固有の識別番号を割り当てた。動物を、0日目の試験の開始前に、少なくとも10日間、動物ユニットに慣れさせた。
【0107】
ラットがそれらの環境に慣れた時点で、それらを保管/手順室に移して、インビボ手順の全てを行なった。Home Office Animals(Scientific Procedures)Act 1986で推奨される12時間の明暗サイクル(オン7時オフ19時)を与えるように設定された蛍光灯により、動物を照らし続けた。部屋は空調管理し、空気温度(21℃+/-2℃)および相対的湿度を日常的に測定した。
【0108】
ラットに、ラット用のR105-25照射完全食(Scientific Animal Food and Engineering,Augy,France)を与え、オートクレーブした水を適宜利用可能にした。食事の各バッチを検査して、組成物および汚染物質に関して日常的にスクリーニングした。巣およびケージをオートクレーブして、各ケージは個別に換気した(IVCシステム)。
【0109】
実験設計
片方の膝におけるMIAの関節内注入による関節炎の誘導後に、ETF-PBSで処置されたその対側コントロールの肢と比較してMIAで処置された肢の荷重負荷(無能力(incapacitance)測定)に有意差が見られた時点で、動物を、侵害受容挙動(nociceptive behaviour)が同等の5つの処置群(n=6動物/群)および1つのビヒクルコントロール群(n=3)に無作為化した。6匹の無処置の動物を、ネガティブコントロールとして含めた。
【0110】
【0111】
試験を通して体重を定期的に記録して、自発痛の評価を週間隔で測定した。
抗NGF抗-ニューロトロフィンは、ラットが顔と首じゅうを引っ掻くのを引き起こすことが示されているので、動物を皮膚病変の兆候に関して定期的に観察して、具体的には6日目以降、任意の病変スコアを記録して、以前の試験で決定された人道的な臨床エンドポイントに我々が到達していないことを確認した(皮膚全体の病変の最大領域が10cm2を超えた場合、または、いずれか1つの病変のサイズが2cm×3cmよりも大きく、そしてより深く湿潤となり、24時間内に治癒する兆候がない場合に、動物は殺される)。
【0112】
末日に、血液サンプルを心臓穿刺により採取して、血漿を調製した。膝を取り出し、10%中性緩衝化ホルマール生理食塩水内に置き、組織学のために処理した。
【0113】
処置(単数または複数)の無作為化
MIAの注入
各ラットの左または右膝のいずれかにMIAが注入されるように、無作為化を行なった(各ラット由来の対側膝はETF-PBSを注入した)。各ラットについてMIAまたは生理食塩水をどちらの膝が受けるかという割り当ては、MacのMicrosoft Excel(Version 14.1.1)における乱数発生器を用いて作成した。動物と接触したことのない職員が、無作為化手順および割り当てを行なった(スケジュールについては別表1参照)。2個の7mlポリプロピレンバイアルを各動物に関して標識して、左または右膝を示した(合計66バイアル)。2人(1人は、スコア付け、およびマスター無作為化シートをチェックして、1人は、関節内注入のために溶液を等分化する)が、66バイアルを調製した。等分化は、MIAバイアルが最初に充填された後に残りのバイアルがETF-PBSで充填されるように順々に行なった(これは、各動物に関する対側膝のバイアルであった)。無処置の動物に関するバイアルは、空のままにした。
【0114】
試験薬の投与
ビヒクルコントロールで処置した膝と比較してMIAで処置された膝の侵害受容挙動(nociceptive behaviour)が等差の処置群に動物を無作為化した。これは、OAの誘導後28日目に行なった。
【0115】
動物手順
膝の関節内注入
ラットを、Boyles Apparatusを用いたイソフルランの吸入により麻酔した。各動物の両膝の毛を刈って、膝をエタノールで拭いた。50μlの、ETF-PBS中の0.3mg MIAまたはETF-PBSのみのいずれかを、27Gニードルが取り付けられた0.5mlの滅菌Becton Dickinson Micro-Fineインスリンシリンジを用いて、膝蓋下靭帯を通して各膝に注入した。6匹の無処置の動物を麻酔して、両膝の毛だけ刈った。試験全体を通じて、インビボ科学者は、全ての動物の処置状態が見えなかった。
【0116】
試験薬の投与
試験薬を、5ml/kgの投与容量を用いて、首の首筋または横腹に皮下経路により投与した。
【0117】
自発痛の評価
自発痛を、各動物に関して、無能力試験器(Linton Instruments,U.K.)を用いて左および右の後肢の荷重負荷を測定することにより、週間隔で判定した。ラットを、それらの後足が別々のセンサー上に乗るように、無能力試験器上の適切なサイズのパースペックス動物ボックス中に置いた。選択されるボックスのサイズは、ラットの体重に基づき(450gまでのラットに関しては小さいラットホルダー、および、450gを超えるラットに関しては大きいラット/モルモットホルダー)、ラットが押し潰されずに快適に座ることを可能にしたが、同様に、ラットが方向転換することができるような十分すぎる空間を与えなかった。ラットが安定して落ち着いた時点で、各肢の荷重負荷を5秒にわたり記録し、両後肢によって発揮される力(グラム)の平均を記録した。後足の荷重配分を各時点で各ラットに関して5回判定して、5回の測定値の平均を計算した。右肢の荷重を両後肢に関する合計荷重で割ることにより、個々の荷重負荷データを荷重配分に変換した。
【0118】
末端血液サンプル
末端血液サンプルを、MilliQ水中の1%EDTAカリウムで洗い流されたTerumoの2mlシリンジおよび21Gニードルを用いて、イソフルラン麻酔薬の下で心臓穿刺により採取した。回収した血液を、2mlポリプロピレンチューブに入れた。それから動物は頚椎脱臼により殺された。
【0119】
血漿調製
末端血液サンプルを、2700×gで10分間遠心分離して、血漿をポリプロピレンチューブ中に等分して(動物あたり4アリコート)、-80℃で凍結した。
【0120】
ラットの膝の取り出し
足の下側の皮膚を除去して筋束を骨から分離したが、膝は無傷のままにした。大腿骨、腓骨および脛骨を切断して、筋肉が付着した膝を取り出して、125mlのスクリューキャップ容器内の、およそ80mlの10%中性緩衝化ホルマリン中に置いた。膝を、組織学的分析のために処理される前に、緩衝化ホルマリン中に48~72時間保持した。
【0121】
組織学のための処理
組織サンプルを、標準的な手順を用いて光学顕微鏡のために調製して、ケンブリッジ大学獣医学校で外部的に行なった。手短には、膝関節を固定した後、組織をPBSでリンスした後に、10日間8%ギ酸中で脱石灰化した。脱石灰化の後に、一連の段階的なエタノール濃度(75%~100%エタノールの範囲、4時間の6交換)を通して、組織を脱水するShandon Citadel組織プロセッサを用いて組織を処理して、100%クロロホルムでリンスして(4時間の3交換)、最後に溶解パラフィンワックス中に埋め込んで組織ブロックを形成した(4時間の2交換)。Surgipath PEC 3001装置を用いて、溶解パラフィンワックスで組織をカセット中に埋め込んだ。組織切片が免疫組織化学に潜在的に用いられ得るようにホルマリン固定により生じる損傷を最小限化するために、採取後できる限り迅速に組織を処理した。
【0122】
少なくとも4つの10μm切片を、Leica RM2135ワックスミクロトームを用いて各ラットの膝の組織ブロックから切断した。2つの切片をガラススライド上に置いて、そのスライドを、標準的なHaematoxylin and Eosin(H&E)およびSafranin O Fast Green(Safranin O F/G)染色のために、自動化リニア染色装置(Leica ST4040)を用いて処理した。手短には、リニア染色装置は、染色スライドのための配置で並べられた23個の試薬ステーションおよび4個の水ステーションを備え、標準的なH&EまたはSafranin O F/Gプロトコルに従う。H&Eスライドは、27ステーション間で、それぞれで1分後に交換した。その後、キシレン、エタノール、水、ヘマトキシリン、水、酸アルコール、水、エオシン、水、エタノールおよびキシレンのシリーズを続ける(全ての溶媒はFisher Scientific由来であり、H&EはLeica由来である)。切片を空気乾燥させて、マウントして、そして、顕微鏡下で観察される用意がされたカバーガラスで覆った。
【0123】
画像解析
Image-Pro Plus画像解析ソフトウェア(suite v7.0,Media Cybernetics,U.K.)を用いたOlympus AX70顕微鏡を用いて、2倍、4倍または10倍拡大のいずれかでスライドを観察した。各ラットの内側膝関節の全体的な肉眼的変化を示すために、OA様の特徴に関する、染色された組織切片の最初の非公式の分析を行なった。
【0124】
画像解析を、×2対物を用いてSO/FGスライド上で行ない、軟骨の領域全体(mm2)を、全てのラットの膝(MIAおよびETF-PBSで処置された膝)に関して判定した。軟骨層の深さ(最低限6個の測定値を内側膝関節ごとに作成した)および、これを、同一の膝関節由来の軟骨下骨の深さと比較した。
【0125】
データ解析
画像解析(軟骨領域など)および疼痛評価データ(例えば、荷重配分の不均衡)を、古典統計学を用いて各動物について解析した。多数の測定値を収集して、p75-NTR-Fc(異なる投与量)またはPG-007のいずれかで処置した動物から平均して、適切な古典統計的試験を用いて、値をコントロール動物と比較した。全ての解析に関して、p<0.05は、統計的有意性を示すと理解した。
【0126】
結果
体重
異なる群内のラットの体重を、動物のサイズの違いについて試験するために比較した。0日目には、異なる処置群内の動物の体重間に、統計的に有意な差はなかった(p=0.76 n.s.,one-way ANOVA,
図30参照)。
【0127】
6個の処置群間の平均体重(コントロール抗体で処置されたラットと比較して、p75NTR-FcまたはPG-007で処置されたラット)は、試験の過程中、互いに統計的に有意ではなかった(p=n.s.,two way ANOVA、
図31参照)。
【0128】
自発痛測定
OAにより引き起される自発痛に対する、p75NTR-FcおよびPG-007の効果
後部肢を通した荷重の分配を測定するために、無能力試験器を用いて自発痛を評価した。評価をベースラインで行ない(グループ7、無処置の動物を除く)、再度、片膝へのMIAの注入後、15、21および28日目に行なった(対側膝はETF-PBSを注入した)。データを
図32に示し、MIAで処置された後部肢により支えられている後部肢にわたる合計荷重の比として表す。無処置の動物については、左後部肢を通る荷重の比を示す。
【0129】
全ての動物に関して、処置された後部肢の荷重の比と理論予想の0.5との間に、統計的に有意な差はなかった(0日目のベースラインにおいて、両方の後部肢にわたる均等分配(p=0.379、クラスカル・ワリス検定;
図32参照)。28日目には、5個の処置群全てが理論的平均の0.5とは有意に異なり、それらのMIAが注入された膝の荷重を本質的に受けていた(
図32参照)。以前の試験に基づき、このことは、OA病理の程度が、ラットに投与するのを開始するのに十分に重大であることを示した。
【0130】
30日目からずっと、56日目の試験終了まで、それぞれの処置レジメンを用いてラットにおいて投与を開始した(皮下経路を介して5日ごとに処置)。試験の過程中、自発痛のさらなる評価を測定した(35、42、49および56日目に行なった、
図4参照)。49日目までの試験全体を通じて、コントロールIgG Fcで処置された動物は、処置された後部肢の荷重の比と理論予想の0.5との間は有意に異なったままであり、MIAで処置された膝が動物に疼痛を引き起こしていることを示した(
図33参照)。対照的に、抗-NGF PG-007で処置された動物およびp75NTR-Fcで処置されたもの(0.3~3mg/kg)では、時間が進むにつれて、MIAで処置された後部肢の荷重の比と理論予想の0.5との間は有意でなかった(すなわち、後部肢における荷重の均等分配)。
【0131】
Miaにより誘導されたOaの後の、膝における組織学的変化
OAの回帰に対する、p75NTR-FcおよびPG007の効果
コントロール抗体で処置された動物由来のMIAを注入した膝は、軟骨細胞変性の領域を示し、一部の領域では、軟骨の完全な損失をもたらした(
図34)。このことは、軟骨におけるSafranin O Fast Green染色の関連する損失により強調される。加えて、最大の軟骨損傷の領域の下にある軟骨下骨において、有意な病理学的変化が存在した(
図34)。軟骨下骨には変化の分布(spectrum)が存在し、反応性変化(reactive change)、および、再構築から硬化性変化まで動因される進行の両方を反映する(
図34)。
【0132】
有意な病理が確立された後に3mg/kgのPG-007で28日間処置された動物は(処置された後部肢の荷重の比と理論予想の0.5が有意に異なる場合、疼痛評価により特定した)、コントロール抗体で処置され、ラットの膝の全般的な完全性を損失して効能の組織学的証拠がない動物と比較して、有意な組織学的変化を示した(
図35)。この病理は、関連する軟骨および骨髄の損失および骨壊死の証拠と一致し、それは概して、コントロール抗体で処置された動物と比較して、OAの、全般的に迅速な進行、および一部の動物では、悪化をもたらす(
図35)。対照的に、p75NTR-Fc(0.3~3mg/kg)で処置された動物は、非常に異なる組織病理を示し、有意な軟骨保護、およびコントロール抗体で処置された動物と比較して軟骨下骨の病理における関連する有意な増大(increase)の証拠が存在し、OAおよび骨の病理の重症度の全般的な低減をもたらす(
図36~38)。このことは、骨髄における低減された骨髄性拡張により表現型として表されていて、炎症性が仲介する溶骨性の動因を縮小させる。
【0133】
より少ない投与量のp75NTR-Fc(0.3および1mg/kg)で処置された動物は、組織病理において最も顕著な変化を示し(
図37および
図38参照)、両方の処置群において、病理はほぼ正常レベルであった。3mg/kgのp75NTR-Fcでの組織学的結果を考慮すれば(
図36参照)、全般的なプロファイルは、p75NTR-Fcが「釣鐘状」の用量応答曲線を示すことを示唆する。
【0134】
組織病理評価
組織病理を、脱石灰化された膝のSafranin O Fast Greenで染色された切片について行なった。概して組織の処理と染色の両方の質は優れていて、3つのスライドのみが質の理由で拒絶された。スライドを処置群に体系化したので、最初の病理評価は見えないものではなかった。しかしながら、等級付けの目的のために、全ての群(ビヒクルを除く)を、観察者の先入観および診断傾向を減らすために単純な乱数配列を用いて無作為化した。
【0135】
説明的な軟骨組織病理の表現型
コントロール群
対にしたスライドの間には明白な差異があった。最も顕著な軟骨病理を有するスライドは:4RA、5LA、6LB、10RA、11LB(スライド11RAに等級付けするには不十分な軟骨)および12RBである。軟骨変化の大部分は、明らかな末梢軟骨細胞壊死を有する全層浸食であった。
【0136】
グループ4-PG007、3mg/kg
対にしたスライドの間には明白な差異があった。最も顕著な軟骨病理を有するスライドは:1RA、2RB、3LB、34LA、35LA、36RBである。概して、軟骨病理は、コントロール群と組織学的に同様であった。
【0137】
グループ3-P75NTR-Fc、0.3mg/kg
対にしたスライドの間の差異は、コントロール群と比較してそれほど顕著でなかった。P75NTR-Fcの投与は、MIAで誘導された軟骨病理の顕著な阻害と関連し-実際に2つの場合において正常に近かった。3つのスライドは、質の理由でこのグループから拒絶された。
【0138】
グループ1-P75NTR-Fc、1.0mg/kg
対にしたスライドの間の差異は、コントロール群と比較してそれほど顕著でなかった。最も顕著な軟骨病理を有するスライドは(コントロールの病変と比較して控えめであるが):7LA、8LA、13RB、15RA、31RB、33LBである。P75NTR-Fcの投与は、MIAで誘導された軟骨病理の顕著な阻害と関連した。
【0139】
グループ2-P75NTR-Fc、3.0mg/kg
このグループは、軟骨病理に対する効能効果の観点から-コントロールタイプの病変からグループ1に似たものまでの効果の範囲で(50%)、顕著な変動性を示した。最も顕著な軟骨病理を有するスライドは:16LB、17RA、18RB、22RB、23LAおよび24LAである。最高の投与量でのP75NTR-Fcの投与は、0.3および1.0mg/kgと関連する明確な効果は示さなかった。
【0140】
組織病理のグレード基準
グレードの割り当ては、それぞれの解剖学的ゾーン内で観察される最も頻繁な病変に基づく。最初の評価に基づいて、重要な組織学的特徴をコントロール群において特定し、それは1.0mg/kgのP75NTR-Fc投与後に明白な変化を示した。グレード基準は、以前のMIA試験の病理評価(MLF)において用いられたものであった。
【0141】
軟骨病理
多くの刊行物が、ヒト軟骨病理の等級付けに関するMankin Scoreの使用を詳述する。オリジナルのMankin Score(またはHHGSスコア)は、0(正常)~14(重度の病理)の範囲であり、観察者間の著しい先入観の影響を受ける。加えて、このスコアシステムは、パンヌス病理の関与を過小評価し、早期の変化を正常な変動と融合することが多い。重要なことに、Mankin Scoreは、中度から重度の病理に関するグレード範囲を拡張し、軽度から中度の変化を著しく融合する。したがって、直接適用されるMankin Scoreは、薬力学的範囲の説明がほとんどなく、齧歯類と人との間の細胞ターンオーバーの違いに鈍いので、前臨床試験での有用性が疑わしい。この試験において用いられる等級付けシステムは、Pelletierの説明スキームを用いたOARSIシステムの改変である:
【0142】
0-重大でない異常;1-最小限の表面細動;2-表面浸食;表面ゾーン軟骨細胞の損失;3-深いゾーンの浸食;4-全層浸食;軟骨下骨の多病巣性曝露、<50%領域;5-軟骨板の損失;関節窩における使い古した(detritic)形態、>50%領域
【0143】
軟骨下骨
軟骨下骨板は、退行性の変化(本質的には骨溶解が介在する)を受ける前に、軟骨グレードの範囲にわたる軟骨の完全性の損失に反応する。0-重大でない異常;1-表面ゾーンの組織破壊(不規則な類骨ゾーン);2-全層組織破壊;3-多病巣性骨溶解;4-多病巣性骨減少;5-融合性の骨減少(osteopaenic)ゾーン
【0144】
間質腔
間質腔は、軟骨下板の中およびちょうど遠位(immediately distal)の髄質腔である。0-重大でない異常;1-最小限の骨溶解;2-中度の骨溶解;3-空洞の大部分において多数の溶解性ピットの証拠を有する顕著な骨溶解;4-溶骨後の空洞の融合;5-融合された空洞が軟骨下骨および/または骨膜を破壊(breach)
【0145】
海綿骨
海綿骨システムは、関節の生物力学における変化に起因して、最小限の軟骨病理における反応性変化を受けて-炎症に続発して、より退行性の表現型に進行する。
【0146】
0-重大でない異常;1-表面骨吸収/骨溶解の多病巣性領域;2-顕著な骨溶解の多数の領域;3-正常な石灰化線(tide-mark)の帯状分布が損失している骨溶解の多数の領域;4-明らかに骨細胞が損失した骨溶解の多病巣性ゾーン;5-骨融合を有する/有さない、海綿骨の切れ目(breach)
【0147】
骨髄細胞過多
0-重大でない異常;1-髄質間質内の細胞の多数の病巣が凝縮した病巣;2-髄質間質および骨膜ピット内の細胞の多数の病巣が凝縮した病巣;3-びまん性髄質細胞過多-帯状;4-間質腔への骨髄の拡張;5-軟骨下板、または、パンヌスの混合を有する/有さない骨膜への、髄質区画の切れ目
【0148】
骨硬化症
骨硬化症は、間質腔からの線維形成性の拡張の領域として通常見られる。0-重大でない異常;1-時折の小さな病巣;2-多数の病巣;3-多数の融合性の病巣;4-関連する骨変性を有する多数の融合性の病巣;5-骨嚢腫を有する多数の融合性の病巣
【0149】
造骨細胞過形成
0-重大でない異常;1-多数の造骨細胞板;2-多数の肥大性造骨細胞板;3-明らかな造骨細胞柵状配置;4-肥大性造骨細胞板-帯状;5-肥大性造骨細胞板-多数の帯状。
【0150】
組織学グレードの結果(対にしたセット由来の最も重度の軟骨病理サンプルをプロットした)
軟骨病理
PG007の投与は、組織学的に有意な効能効果を示さなかった。P75NTR-Fcは、0.3および1.0mg/kgにおいて、軟骨保護に対して顕著な効能を示した。3.0mg/kgにおける効能プロファイルは、より変動的であり-グループの50%がコントロール群と重なった(
図39)。
【0151】
軟骨下骨
PG007の投与は、3.0mg/kgのP75NTRFcで観察されたプロファイルと同様に、コントロール群と比較して軟骨下骨の病理の組織学的に有意な増大と関連した。対照的に、0.3および1.0mg/kgでのP75NTR-Fcの投与は、軟骨下骨の組織学における顕著な改善と関連した(
図40)。
【0152】
間質腔
PG007の投与は、いかなる組織学的に有意な効能効果とも関連しなかった。対照的に、P75NTR-Fcの投与は、0.3および1.0mg/kgでの効果が最も顕著であったが-両方のグループとも、ほぼ正常レベルまで病理を低減し、とにかく、溶骨性の病理の低減および間質腔の拡張と関連した(
図41)。
【0153】
海綿骨
PG007の投与は、コントロールと同様に海綿骨の病理と関連し-2つのサンプルはコントロールの範囲を超えた。対照的に、P75NTR-Fcは、0.3および1.0mg/kgの投与量レベルで、海綿骨の病理を著しく低減させた。3.0mg/kgでのP75NTF-Fcは、より変動的なプロファイルを示し、サンプルの大部分がコントロール群と重なった(
図42)。
【0154】
骨髄細胞過多
PG007の投与は、骨髄内の骨髄性細胞の拡張と関連し、4つのサンプルが最高であるか、またはコントロールの範囲を超えた。P75NTR-Fcは-骨髄性の拡張の低減が顕著な特徴であり-0.3および1.0mg/kgの投与量において髄質細胞性を低減させた。3.0mg/kgの投与量は、阻害に向かう傾向を示すが、コントロール群における低レベルのレスポンダーと重なった(
図43)。
【0155】
骨硬化症
P75NTR-Fcサンプルはコントロール範囲の上端に向けてクラスタリングを見せたが、試験群の間に組織学的に有意な差は無かった(
図44)。
【0156】
造骨細胞過形成
0.3および1.0mg/kgでのP75NTR-Fcの投与は、組織学的に有意な造骨細胞増殖と関連し、柵状配置および造骨細胞板の形成は、軟骨下骨/軟骨ゾーンにおいて、骨端ゾーンで特に顕著であった。加えて、等級付けられはしないが、このゾーン内に、顕著な「線維芽細胞様」細胞が存在した。PG007およびP75NTR-Fc(3.0mg/kg)は、組織学的にコントロールと同様であった(
図45)。
【0157】
副作用
3mg/kgのPG-007で処置された2匹のラットは、皮膚病変が発症した。非常に少数の皮膚病変が、45日目までに(処置後15日)、一部のラットにおいて、顔、首および肩の領域の周りに現れ始めたが、1匹のラットでは、49日目から(処置後19日)ずっと、より明らかになった。これらの病変は、注入部位と関連しなかった。ラットを定期的に検査して、数、サイズおよび各病変の程度を定量化して、試験の人道的臨床エンドポイント内に我々が留まっていることを確認した。いかなる濃度のp75NTR-Fcで処置されたラットも、皮膚病変を発症しなかった。
【0158】
考察
組織病理学
PG007は、効能の組織学的証拠と関連しなかった。対照的に、P75NTR-Fcは、0.3および1.0mg/kgで、組織学的に有意な軟骨保護と関連し、骨の病理の重症度および骨溶解が仲介する骨浸食が低減した。骨髄細胞過多(とりわけ骨髄性の拡張)が低減するという知見は、この表現型を支持し、炎症が仲介する溶骨性の動因の制限が、効能の応答に関与することを示唆する。重要なことに、これらの投与量は、造骨細胞プールの拡張とも関連し-P75NTR-Fcの効能のメカニズムが二重のメカニズムであり、骨溶解を制限し(したがって、骨髄性細胞の活性化の制限)、一方で、造骨細胞プールを拡張する(したがって、間葉細胞プールを増大させる)ことを示唆した。3.0mg/kgのP75NTR-Fc群の組織学的プロファイルは、P75NTR-Fcが、「釣鐘状」の用量応答曲線を示すことを示唆する。多くの点において3.0mg/kgのP75NTR-FcおよびPG007の組織学的プロファイルは似ているが、正確な表現型は、P75NTRFcの溶骨性の動因が、用量等価基準でPG007のものよりも少ないことを示唆する。古典的に、MIAモデルの組織病理評価は、原発性の軟骨病理からの線形関係に基づき、反応性の骨変化をもたらす。骨髄変化は、必然的であり、軟骨の損失に起因する生物力学的変化から生じる反応性の滑膜炎に続発するものと見なされることが多い。骨免疫学により蓄積しているデータがあり、この線形関係は無処置(naive)であること、および、骨区画が、軟骨応答の表現型および一時的な進行の両方の調整において重要な役割を発揮し得ることを示唆する。実際に、この研究は、最小限のグレードの軟骨病変においてさえ骨の再構築を示すヒト試験による画像データを支持する。したがって、軟骨および軟骨下骨は、統合された機能性ユニットとして見られるべきであり-後者は、軟骨細胞の増殖および生存を支持する調整を与えて、そのようにして、変形性関節症における構造的結果に影響を及ぼす可能性がある。この試験によるデータは、NGFパスウェイの操作が、骨溶解を低減する可能性を提供しながら、間葉細胞が仲介する骨保護を増大させることもできるという仮説に対する支持を提供し-したがって、表面軟骨壊死から深いゾーンの病変、それ故に、全層軟骨浸食および軟骨の損失までの動因を支持する。
【0159】
結論
この試験では、p75NTR-Fc(0.3~3mg/kg)を用いた治療的投与レジメンの効果を試験して、MIA注入後にOA病理の回帰を見ることができるかどうかを判定した。OAは、投与が開始される前に30日間進行させられて、理論的平均の0.5から有意に異なる疼痛の測定値により特定した。
【0160】
より少ない投与量のp75NTR-Fc(0.3および1mg/kg)で処置された動物は、どちらも鎮痛性および有効性であり、コントロール抗体で処置された動物と比較して有意により低いOA病理を示した。対照的に、3mg/kgのPG-007で処置されたラットは、無痛覚を示したにもかかわらず、効能の組織学的証拠およびOA病理におけるいかなる改善とも関連しなかった。より高い投与量のp75NTR-Fc(3mg/kg)で処置された動物は、鎮痛性であったが;3mg/kgのPG-007で処置された動物と、病理組織学的な類似性が一部存在した。
【0161】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様により範囲が制限されることはない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および付随する図面から、当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本明細書に記載される全ての実施態様は、必要に応じて、任意および全ての他の首尾一貫した実施態様に幅広く適用可能であり、組み合わせ可能であると考えられる。
【0162】
様々な刊行物が本明細書に挙げられ、それらの開示は、それらの全体で参照により援用される。