(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009705
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、嗜好改善剤、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 36/61 20060101AFI20240116BHJP
A61K 36/324 20060101ALI20240116BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240116BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240116BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240116BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240116BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K36/61
A61K36/324
A61P25/22
A61P3/02
A61P25/20
A61K8/9789
A61Q13/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111421
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】額賀 翔子
(72)【発明者】
【氏名】内部 錦
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC392
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD092
4C083AD241
4C083CC02
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
4C083KK01
4C088AB12
4C088AB57
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA01
4C088ZA05
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】優れた効果を有する睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、ユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む睡眠改善剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む睡眠改善剤。
【請求項2】
少なくとも2週間継続して投与される請求項1に記載の睡眠改善剤。
【請求項3】
ユーカリを0.03質量%以上10質量%以下含む睡眠改善剤。
【請求項4】
オリバナムを0.2質量%以上20質量%以下含む睡眠改善剤。
【請求項5】
少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む気分安定化剤。
【請求項6】
少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む疲労改善剤。
【請求項7】
少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む嗜好改善剤。
【請求項8】
請求項1から4の何れか一項に記載の睡眠改善剤を含む化粧料。
【請求項9】
固形油分、液状油分、及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散された水中油型乳化組成物を含み、
前記液状油分は、極性油及びスクワランからなり、
前記粉末は、ラウロイルリシンであり、
前記極性油は、請求項1から4の何れか一項に記載の睡眠改善剤を含む化粧料。
【請求項10】
前記油性粒子は、パルミチン酸デキストリンを更に含有する請求項9に記載の化粧料。
【請求項11】
ジェル化粧料である請求項10に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、嗜好改善剤、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ストレスや不安等から不眠に悩む人、睡眠の質に不満を持つ人が増えている。睡眠の質の低下は、心筋梗塞や脳梗塞等の重大な疾患に繋がるだけでなく、日中の眠気から作業能率を低下させ、重大な事故を誘発する可能性がある。
【0003】
これに対し、医薬としての催眠薬や睡眠導入剤、気分安定化剤、疲労改善剤、嗜好改善剤等の需要が増加傾向にあるが、長期使用に伴う副作用や依存性の問題が指摘されていることから、精油等の天然物由来成分の適用が望まれている。従来より、様々な精油について、リラックス効果、リフレッシュ効果等を有することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ラベンダー油、サンダルウッド油、ジャスミン油、スイートマジョラム油、フランキンセンス油、カモミール油およびネロリ油よりなる群から選択される1種または2種以上の精油を含有する軟膏剤よりなるリラックスおよび/または睡眠導入効果を有する香気剤が開示されている。また、ローズマリー油、ゼラニウム油、ベルガモット油、ハッカ油、メントール、レモングラス油およびユーカリ油よりなる群から選択される1種または2種以上の精油を含有する軟膏剤よりなるリフレッシュ効果を有する香気剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、精油の中には、未だその効果が知られていないものも多く存在し、また、科学的なデータが示されていないことも多いため、優れた睡眠改善作用、気分安定化作用、疲労改善作用、嗜好改善作用を有する有効成分の開発が望まれている。
【0007】
本発明の一態様は、優れた効果を有する睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様は、優れた効果を有する睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ユーカリ油の睡眠改善作用の評価結果を示すグラフである。
【
図2】オリバナムレジノイドの睡眠改善作用の評価結果を示すグラフである。
【
図3】パインニードル油の睡眠改善作用の評価結果を示すグラフである。
【
図4】ユーカリ油の気分安定化作用の評価結果を示すグラフである。
【
図5】オリバナムレジノイドの気分安定化作用の評価結果を示すグラフである。
【
図6】パインニードル油の気分安定化作用の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
本実施形態の睡眠改善剤は、ユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む。睡眠改善剤に含有されるユーカリ及びオリバナムの香りは、吸入されることにより睡眠の質を改善することができる。よって、本実施形態の睡眠改善剤は、優れた睡眠改善効果を発揮する。
【0013】
本明細書において、「睡眠改善効果」とは、本実施形態の睡眠改善剤に含有される香料成分の香りを嗅いでいない時の睡眠の質に比して、本実施形態の睡眠改善剤に含有される香料成分の香りを嗅いだ時の睡眠の質が向上することを意味する。
【0014】
本実施形態の香料成分は、ユーカリ若しくはオリバナムの樹木そのもの、又はその乾燥物から水蒸気蒸留によって得られる狭義の精油を好ましく用いることができるが、これに限定されない。例えば、抽出法や圧搾法等の他の方法で抽出された油分も、精油成分(芳香物質等)を含むものである限り、本実施形態における香料成分に包含される。
【0015】
精油を抽出する他の方法としては、例えば溶剤抽出法(アルコール抽出法、有機溶剤抽出法など)、油脂吸着抽出法(温浸法または冷浸法)、超臨界流体抽出法等が挙げられる。植物の精油含量が少ない等の理由により水蒸気蒸留が適用できないときには溶媒抽出法が用いられることが多い。抽出に用いる溶媒としては、限定するものではないが、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトンなどの比較的高極性のものからヘキサンなどの低極性のものを含む有機溶媒が挙げられる。
【0016】
本実施形態の香料成分は、上記の方法で得た油分を、例えば多孔性ビーズ、シリカゲルやアルミナなどの担体を用いた疎水性または吸着クロマトグラフィー等の各種精製手法を用いて、更に精製、濃縮したものであってもよい。
【0017】
睡眠改善剤は、少なくとも2週間継続して投与されることが好ましい。これにより、本実施形態の睡眠改善剤は、より優れた睡眠改善効果を発揮することができる。
【0018】
本実施形態の睡眠改善剤は、ユーカリを0.03質量%以上10質量%以下含む。ユーカリの含有量は、0.03質量%以上2量%以下が好ましい。睡眠改善剤は、ユーカリを0.03質量%以上10質量%以下含むことにより、より優れた睡眠改善効果を発揮することができる。
【0019】
本実施形態の睡眠改善剤は、オリバナムを0.2質量%以上20質量%以下含む。オリバナムの含有量は、0.2質量%以上2質量%以下が好ましい。睡眠改善剤は、オリバナムを0.2質量%以上20質量%以下含むことにより、より優れた睡眠改善効果を発揮することができる。
【0020】
睡眠改善剤は、香料成分のみで構成されていてもよいが、効果を妨げない範囲の量であれば、希釈剤、助剤、添加剤等の任意の他の成分を含有していてもよい。
【0021】
本実施形態の睡眠改善剤は、化粧料に含まれていてよい。これにより、本実施形態の化粧料は、優れた睡眠改善効果を有する。また、本実施形態の睡眠改善剤は、医薬品、医薬部外品、食品、飲料、雑貨等に含まれていてもよい。
【0022】
本実施形態の気分安定化剤は、少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む。気分安定化剤に含有されるユーカリ及びオリバナムの香りは、2週間継続して吸入されることにより気分を安定化する。よって、本実施形態の気分安定化剤は、優れた気分安定化効果を発揮する。
【0023】
本明細書において、「気分安定化効果」とは、本実施形態の気分安定化剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いでいない時の気分に比して、本実施形態の気分安定化剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いだ時の気分が安定することを意味する。
【0024】
気分安定化剤は、香料成分のみで構成されていてもよいが、効果を妨げない範囲の量であれば、希釈剤、助剤、添加剤等の任意の他の成分を含有していてもよい。
【0025】
本実施形態の気分安定化剤は、化粧料に含まれていてよい。これにより、本実施形態の化粧料は、優れた睡眠改善効果を有する。また、本実施形態の気分安定化剤は、医薬品、医薬部外品、雑貨等に含まれていてもよい。
【0026】
本実施形態の疲労改善剤は、少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む。疲労改善剤に含有されるユーカリ及びオリバナムの香りは、2週間継続して吸入されることにより疲労感を改善する。よって、本実施形態の疲労改善剤は、優れた疲労改善効果を発揮する。
【0027】
本明細書において、「疲労改善効果」とは、本実施形態の疲労改善剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いでいない時の疲労感に比して、本実施形態の疲労改善剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いだ時の疲労感が減少することを意味する。
【0028】
疲労改善剤は、香料成分のみで構成されていてもよいが、効果を妨げない範囲の量であれば、希釈剤、助剤、添加剤等の任意の他の成分を含有していてもよい。
【0029】
本実施形態の疲労改善剤は、化粧料に含まれていてよい。これにより、本実施形態の化粧料は、優れた睡眠改善効果を有する。また、本実施形態の疲労改善剤は、医薬品、医薬部外品、雑貨等に含まれていてもよい。
【0030】
本実施形態の嗜好改善剤は、少なくとも2週間継続して投与されるユーカリ及びオリバナムの少なくともいずれか一方からなる香料成分を含む。嗜好改善剤に含有されるユーカリ及びオリバナムの香りは、2週間継続して吸入されることにより嗜好性を改善する。よって、本実施形態の嗜好改善剤は、優れた嗜好改善効果を発揮する。
【0031】
本明細書において、「嗜好改善効果」とは、本実施形態の嗜好改善剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いでいない時の、当該香料成分に対する嗜好性に比して、本実施形態の嗜好改善剤に含有される香料成分の香りを2週間継続して嗅いだ時の、当該香料成分に対する嗜好性が向上することを意味する。
【0032】
嗜好改善剤は、香料成分のみで構成されていてもよいが、効果を妨げない範囲の量であれば、希釈剤、助剤、添加剤等の任意の他の成分を含有していてもよい。
【0033】
本実施形態の嗜好改善剤は、化粧料に含まれていてよい。これにより、本実施形態の化粧料は、優れた嗜好改善効果を有する。また、本実施形態の嗜好改善剤は、医薬品、医薬部外品、雑貨等に含まれていてもよい。
【0034】
なお、本実施形態の睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤は、香りを嗅いだ場合に限らず、肌から吸収された場合でも優れた睡眠改善効果、気分安定化効果、疲労改善効果、及び嗜好改善効果が奏される。
【0035】
本実施形態に係る睡眠改善剤は、化粧料に含まれる場合、化粧料は、固形油分、液状油分、及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散された水中油型乳化組成物を含み、液状油分は、極性油及びスクワランからなり、粉末は、ラウロイルリシンであり、極性油は、本実施形態の睡眠改善剤を含んでいてよい。
【0036】
水中油型乳化組成物の油相は、本実施形態の睡眠改善剤を含む液状油分、固形油分、及びラウロイルリシンを含有する。なお、本明細書において、「固形油分」とは、常温(25℃)で固体又は半固体の油分を意味し、「液状油分」とは、常温(25℃)で液体の油分を意味する。
【0037】
本実施形態の化粧料は、上述の構成により、睡眠の質を向上させることができる。また、粉末がラウロイルリシンであることにより、従来の水中油型乳化組成物に用いられているタルクやマイカ等である場合と比較して、油性粒子が生分解され易いため、本実施形態の化粧料は、環境負荷を低減することができる。さらに、粉末がラウロイルリシンであることにより、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。また、ラウロイルリシンは、タルクやマイカ等に比して比較的、摩擦係数が小さいため、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、滑らかでシルキーな使用感を与えることができる。
【0038】
液状油分は、極性油及びスクワランからなり、シリコーン油を含まない。従来の水中油型乳化組成物において、シリコーン油は、タルク、マイカ等の粉末と同様に、滑らかな使用感を付与するために広く用いられている。しかしながら、シリコーン油は、自然環境に排出されると分解されることなく自然界に残存するため、環境への影響が懸念され、シリコーンフリーの化粧料の需要が高まっている。本実施形態の水中油型乳化組成物は、液状油分が、シリコーン油を含まないことにより、油性粒子がより生分解され易いため、環境負荷をより低減することができる。
【0039】
油性粒子の平均粒子径は、50μm~10mmであってよい。油性粒子の平均粒子径が、50μm~10mmであることにより、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、みずみずしくさっぱりした感触があり、時間をおくとしっとりした感触となるといった使用感を与えることができる。また、水中油型乳化組成物は、水相に目視可能な大きさの油性粒子が分散しているために、使用者に美感を与えることができる。
【0040】
以下に本実施形態の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0041】
液状油分に含まれる睡眠改善剤以外の極性油は、一般的な化粧料等に通常配合されている極性油であればよく、特に限定されない。極性油としては、例えば、セバシン酸ジイソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ネオペンタン酸イソデシル等が挙げられる。
【0042】
スクワランとしては、動物性スクワラン、植物性スクワラン等の天然由来のスクワラン、及び合成スクワランを含む。スクワランは、天然由来のスクワランであることがより好ましい。スクワランが、天然由来のスクワランであることにより、油性粒子がより生分解され易いため、本実施形態の化粧料は、環境負荷をより低減することができる。
【0043】
固形油分が、天然由来の固形油分である場合、スクワランは、天然由来の固形油分を油相に、良好に溶解することができる。また、油性粒子の強度を向上させることができ、油性粒子を水相に安定に分散させることができる。さらに、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、肌なじみが良いといった使用感を与えることができる。
【0044】
スクワランの含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7.5質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。分岐構造を有する炭化水素油の含有量が、水中油型乳化組成物に対して0.01質量%~10質量%であることにより、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性に優れる。なお、粒子形成性に優れるとは、粒子の形状が球により近いことを意味する。
【0045】
スクワランと極性油の質量比は、1:0.5~1:3であることが好ましく、1:0.75~1:2であることがより好ましい。スクワランと極性油の質量比は、1:0.8~1:2であることにより、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0046】
極性油に含まれる睡眠改善剤の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.05質量%~0.45質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~0.2質量%であることがさらに好ましい。睡眠改善剤の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.05質量%~0.45質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、睡眠改善剤を含んでいても、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性に優れる。
【0047】
固形油分としては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、ビースワックス、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、高級アルコール(例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等)、バチルアルコール、カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ホホバロウ、ラノリン、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等)、エステル油(例えば、ミリスチン酸ミリスチル等)、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ポリエチレン、ワセリン、各種の水添動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。
【0048】
固形油分は、上記の中でも、50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類からなることが好ましい。50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類としては、例えば、カルナウバロウ(融点:82~86℃)、キャンデリラロウ(融点:68~72℃)、コメヌカロウ(融点:70~83℃)等が挙げられる。これらの固形油分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。固形油分は、ミツロウ(融点:62~65℃)であってもよい。
【0049】
固形油分が、50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類からなることにより、合成系のロウ類である場合と比較して、油性粒子がより生分解され易いため、本実施形態の化粧料は、環境負荷をより低減することができる。また、油性粒子の外側に植物由来のロウ類からなる皮膜が形成され、油性粒子同士の付着を抑制することができる。よって、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。植物由来のロウ類の融点は、60℃~85℃であることがより好ましい。植物由来のロウ類の融点が、60℃~85℃であることにより、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性にさらに優れると共に、油性粒子の分散性にさらに優れる。
【0050】
固形油分は、キャンデリラロウ又はカルナウバロウであることが好ましい。固形油分が、キャンデリラロウ又はカルナウバロウであることにより、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性にさらに優れると共に、油性粒子の分散性にさらに優れる。
【0051】
固形油分の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~4質量%であることがより好ましく、0.5質量%~3質量%であることがさらに好ましい。固形油分の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~5質量%であることにより、本実施形態の化粧料は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0052】
ラウロイルリシンの含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.0001質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることがさらに好ましい。ラウロイルリシンの含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.0001質量%~0.5質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0053】
水相は、一般的な水性媒体を含み、油性粒子の分散媒となる。水性媒体としては、例えば、水、エタノール等が挙げられる。水性媒体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0054】
水性媒体の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、50質量%~99質量%であることが好ましく、60質量%~98質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
化粧料に含まれる水中油型乳化組成物は、上記の成分に加えて、化粧料等の皮膚外用剤に配合可能な他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。
【0056】
水中油型乳化組成物に配合可能な他の成分としては、限定されないが、水溶性増粘剤、油溶性増粘剤、アルブチン、アスコルビン酸グルコシド、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸塩等の水溶性薬剤、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3一ブチレングリコール、プロパンジオール等の保湿剤、ジモルホリノピリダジノン等の水溶性紫外線吸収剤、エデト酸ナトリウム、水酸化カリウム等のキレート剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、色素、界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
水溶性増粘剤としては、特に限定はされないが、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等が挙げられる。
【0058】
水溶性増粘剤として、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、その界面活性に基づいて油性粒子の凝集、合一を抑制する作用を発揮するので特に好適である。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)とも呼ばれ、例えば、CARBOPOL(登録商標) 1342、PEMULEN(登録商標) TR-1、PEMULEN(登録商標) TR-2(BF Goodrich 社製)の商品名で市販されている。
【0059】
油溶性増粘剤は、油性粒子を構成する固形油分の固化力を低下させて適度な硬度になるように調整することができる。油溶性増粘剤としては、特に限定はされないが、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、金属セッケン、親油性ベントナイト、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。
【0060】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えばデキストリンパルミチン酸エステル、キストリンオレイン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル等が挙げられる。デキストリン脂肪酸エステルは、特に限定はされないが、例えば、レオパール(登録商標) KL、レオパール(登録商標) KE(千葉製粉社製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0061】
金属セッケンとしては、例えば水酸基の残存しているアルミニウムステアレート、マグネシウムステアレート、ジンクミリステート等が挙げられる。
【0062】
親油性ベントナイトとしては、例えばジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイト、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリナイト等が挙げられる。
【0063】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば8個の水酸基のうち3個以下が高級脂肪酸でエステル化され、高級脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸であるものが挙げられる。
【0064】
ソルビトールのベンジリデン誘導体としては、例えばモノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0065】
油性粒子は、油溶性増粘剤として、パルミチン酸デキストリンを更に含有することが好ましい。これにより、水中油型乳化組成物の安定性及び使用性を向上させることができる。
【0066】
水中油型乳化組成物は、例えば、以下に示す方法にて調製することができる。まず、水相成分を混合し、配合する固形油分の融点以上に加熱し、同温に加熱混合した油相成分(固形油分、睡眠改善剤を含む液状油分、ラウロイルリシンを含む)を攪拌下で水相成分に添加する。攪拌は、10~1500rpm、好ましくは20~300rpm程度の回転数のプロペラ又はパドルミキサーを用いて行うことができる。なお、攪拌は、ホモミキサーを使用すると微細化されてしまうため好ましくない。次いで、攪拌しながら冷却することにより調製可能である。
【0067】
このようにして製造される水中油型乳化組成物は、水相中に平均粒子径が50μm~10mmの油性粒子が分散されたものとなる。本実施形態の油性粒子は、内層が実質的にラウロイルリシンと液状油分とからなり、その周囲を固形油分(外層)が被覆したカプセル構造を有すると考えられる。また、外層をなす固形油分が結晶化することにより、適度な硬さとなって独特の使用感触を生じる。
【0068】
本実施形態の組成物は、界面活性剤を用いなくても上記構造の油性粒子が形成されるが、粉末が油性粒子の内部(内層)に存在し、水相と油相との界面には固形油分が存在する構造をなしている点で、油-水界面に粉末が存在するピッカリング乳化物とは明確に区別される。
【0069】
本実施形態の化粧料としては、ジェル化粧料、水性化粧料、乳化化粧料等の形態が挙げられる。具体的な用途としては、ジェル、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル、ボディ又はヘア用の化粧料として用いることが可能である。
【0070】
本実施形態の化粧料は、上記の中でも、ジェル化粧料であることが好ましい。これにより、睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、又は嗜好改善剤が肌に長く留まり、香りの吸入及び肌からの吸収により、より優れた効果を発揮することができる。
【0071】
本実施形態の睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤は、芳香剤、消臭剤、アロマキャンドル、インセンス、文房具、財布、バッグ、靴等の任意の雑貨類や、例えば下着、洋服、帽子、ストッキング、靴下等、任意の衣類に浸透または付着させることにより、浸透または付着した睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤から香料成分が揮発するので、雑貨、衣類等に睡眠改善効果、気分安定化効果、疲労改善効果、及び嗜好改善剤効果を付与することができる。雑貨、衣服等の素材に本実施形態の睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤を浸透または付着させ、その素材から製品を作製してもよいし、完成した製品に本実施形態の睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤を浸透または付着させてもよい。
【実施例0072】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0073】
ユーカリ油、オリバナムレジノイド(抽出物)、パインニードル油をエタノールで希釈したものを試験試料として用いて、試験試料の睡眠改善作用、気分安定化作用、疲労改善作用、及び嗜好改善作用を評価した。ユーカリ油(高砂香料工業株式会社製)2質量%、オリバナムレジノイド(抽出物)(IFF-LMR社製)2質量%、パインニードル油(ヴェ・マン・フィス香料株式会社製)0.5質量%を、それぞれエタノールに混合、希釈し、各香料成分を含有する3種のスプレー式のルームフレグランスを準備した。
【0074】
事前にアンケートを行い、普段の睡眠状態が悪すぎる、又は良すぎる人を除外した20~39歳の女性20名を被験者とした。1人の被験者に対し1種のルームフレグランスを2週間使用する方法(ピュアモナディック法)により試験した。具体的には、毎日、寝る15分程度前に、ルームフレグランスを3~5プッシュして香りを嗅いでもらい、使用前(0日目)と、使用後(2週間後)に各種アンケートを実施した。
【0075】
(睡眠改善作用の評価)
被験者に対し、使用前(0日目)と使用後(2週間後)に、睡眠の質、具体的には、睡眠状態、起床時の気分、起床時の体調の3つのカテゴリーに関するアンケートを実施し、3つのカテゴリーのスコアを合計した値を総合スコアとした。なお、各カテゴリーのスコアの合計は、満点の場合が100点となるように設定した。スコアが高い程、睡眠の質が高いことを意味する。総合スコア、睡眠状態、起床時の気分、起床時の体調の評価結果を表1~4に示す。表中のP値は、t検定により統計処理を行った場合の帰無仮説を考えている際の、得られた結果より極端な結果が出る確率を示す。すなわち、この場合は2週間後の値が高くならない確率を示す。また、
図1は、ユーカリ油の睡眠改善作用の評価結果を示すグラフであり、
図2は、オリバナムレジノイドの睡眠改善作用の評価結果を示すグラフであり、
図3は、パインニードル油の睡眠改善作用の評価結果を示すグラフである。
図1~3中の「‡」、「§」は、t検定(有意水準‡ p<0.005、§ p<0.001)により統計処理を行った場合、使用前に対し2週間後に有意差が認められたものを示した。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
(気分安定化作用の評価)
被験者に対し、使用前(0日目)と使用後(2週間後)に、肯定的感情、安静状態、否定的感情の3つのカテゴリーに関するアンケートを実施した。なお、各カテゴリーのスコアの合計は、満点の場合が96点となるように設定した。肯定的感情、安静状態、否定的感情の評価結果を表5~7に示す。表中のP値は、t検定により統計処理を行った場合の帰無仮説を考えている際の、得られた結果より極端な結果が出る確率を示す。また、
図4は、ユーカリ油の気分安定化作用の評価結果を示すグラフであり、
図5は、オリバナムレジノイドの気分安定化作用の評価結果を示すグラフであり、
図6は、パインニードル油の気分安定化作用の評価結果を示すグラフである。
図4~6中の「*」、「§」はt検定(有意水準* p<0.05、§ p<0.001)により統計処理を行った場合、使用前に対し2週間後に有意差が認められたものを示した。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
(疲労改善作用の評価)
被験者に対し、使用途中(1週間後)と使用後(2週間後)に、疲れが取れそう、リラックス感を感じさせる、という香りの印象についてアンケートを実施し、下記評価基準の基づき評価してもらった。香りの印象の評価結果を表8及び9に示す。
[評価基準]
1:全く感じていない
2:やや感じている
3:感じている
4:非常に感じている
【0085】
【0086】
【0087】
(嗜好改善作用の評価)
被験者に対し、使用途中(1週間後)と使用後(2週間後)に、この香りが好き、という香りの印象についてアンケートを実施し、下記評価基準の基づき評価してもらった。香りの印象の評価結果を表10に示す。
[評価基準]
1:全く感じていない
2:やや感じている
3:感じている
4:非常に感じている
【0088】
【0089】
表1~10、及び
図1~6に示すように、本実施形態の睡眠改善剤、気分安定化剤、疲労改善剤、及び嗜好改善剤は、優れた効果を有し、使用前又は1週間後に対して2週間後の効果に有意差または有意傾向があることを確認した。
【0090】
(化粧料の調整)
次に、睡眠改善剤を含むジェル化粧料を調製した。下記に示す組成で、水相成分を混合して、配合する固形油分の融点以上に加熱し、同温に加熱混合した油相成分(固形油分、睡眠改善剤を含む液状油分、ラウロイルリシンを含む)を攪拌下で水相成分に添加した。次いで、攪拌しながら冷却することにより水中油型乳化組成物を含むジェル化粧料を得た。
(実施例) 配合量は質量%とする。
ジェル化粧料
水 残余
キャンデリラロウ 2.0
テトラエチルヘキサン酸 4.0
ユーカリ油 0.03
スクワラン 4.0
ラウロイルリシン 0.1
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー 0.02
【0091】
そして、20~39歳の女性100名、男性30名を被験者とし、3日間、寝る直前にジェル化粧料を1.5g顔全体に塗布してもらい、3日後に、上述の睡眠改善作用の評価と同様のアンケートを実施した結果、睡眠の質が向上し、睡眠改善効果が得られることを確認した。
【0092】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。