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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009706
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240116BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240116BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/44
A61K8/92
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111423
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内部 錦
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB232
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC392
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD092
4C083BB13
4C083BB24
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減することができ、且つ油性粒子の分散性に優れる水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、固形油分、液状油分及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散された水中油型乳化組成物であって、前記液状油分は、極性油及び炭化水素油を含み、前記炭化水素油と前記極性油の質量比は、1:0.8~1:1.6であり、前記粉末は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形油分、液状油分及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散された水中油型乳化組成物であって、
前記液状油分は、極性油及び炭化水素油を含み、
前記炭化水素油と前記極性油の質量比は、1:0.8~1:1.6であり、
前記粉末は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末である水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記液状油分は、シリコーン油を含まない請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸誘導体は、ラウロイルリシンである請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記粉末の含有量は、前記水中油型乳化組成物に対して0.01質量%~0.5質量%である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
前記炭化水素油は、スクワランである請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記固形油分は、50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
前記油性粒子は、香料を更に含み、
前記香料の含有量は、前記水中油型乳化組成物に対して0.05質量%~0.45質量%である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水相中に油性粒子が分散した水中油型乳化組成物は、肌表面を油膜で被覆することで水分の蒸散を防ぎ、肌を乾燥から保護し、肌に保湿効果等を付与することができるため、様々な化粧料に適用されている。水中油型乳化組成物には、目的とする品質特性を得るために、多種に亘る成分が配合されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、脂肪酸石鹸と、シリコーン油と、バチルアルコールと、水膨潤性粘土鉱物とを含む、水中油型メイクアップ化粧料が開示されている。また、水中油型メイクアップ化粧料は、タルク、マイカ等の粉体成分を含んでよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-16587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水中油型乳化組成物において、上述の成分の中でも、特に、タルク、マイカ等の粉末は、滑らかな使用感を付与するために広く用いられている。しかしながら、タルク、マイカ等の粉末は、自然環境に排出されると分解されることなく自然界に残存し、中には合成で製造され、アスベストなどの不純物が含有されていた報告がなされている。その為、消費者としても健康上の懸念を回避する為、タルクフリーといった化粧品が好まれつつある。そこで、タルク、マイカ等の粉末を抜去して水中油型乳化組成物を調整したところ、水相への油性粒子の分散性が低下するという問題が生じた。
【0006】
本発明の一態様は、環境負荷を低減することができ、且つ油性粒子の分散性に優れる水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、固形油分、液状油分及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散された水中油型乳化組成物であって、前記液状油分は、極性油及び炭化水素油を含み、前記炭化水素油と前記極性油の質量比は、1:0.8~1:1.6であり、前記粉末は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る水中油型乳化組成物は、環境負荷を低減することができ、且つ油性粒子の分散性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
本実施形態に係る水中油型乳化組成物は、固形油分、液状油分及び粉末を含有する油性粒子が、水相中に分散されている。即ち、油相は、固形油分、液状油分及び粉末を含有する。また、液状油分は、極性油及び炭化水素油を含み、炭化水素油と極性油の質量比は、1:0.8~1:1.6である。さらに、粉末は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末である。なお、本明細書において、「固形油分」とは、常温(25℃)で固体又は半固体の油分を意味し、「液状油分」とは、常温(25℃)で液体の油分を意味する。
【0011】
水中油型乳化組成物は、粉末が、アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末であることにより、従来のタルクやマイカ等と比較して、油性粒子が生分解され易いため、水中油型乳化組成物は、環境負荷を低減することができる。また、水中油型乳化組成物は、油性粒子の分散性に優れる。
【0012】
油性粒子の平均粒子径は、50μm~10mmであってよい。油性粒子の平均粒子径が、50μm~10mmであることにより、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、みずみずしくさっぱりした感触があり、時間をおくとしっとりした感触となるといった使用感を与えることができる。また、水中油型乳化組成物は、水相に目視可能な大きさの油性粒子が分散しているために、使用者に美感を与えることができる。
【0013】
以下に本実施形態の水中油型乳化組成物を構成する各成分について詳述する。
【0014】
液状油分に含まれる極性油は、化粧料等に通常配合されている極性油であればよく、特に限定されない。極性油としては、例えば、セバシン酸ジイソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ネオペンタン酸イソデシル等が挙げられる。
【0015】
炭化水素油としては、例えば、スクワラン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、イソヘキサデカン等が挙げられる。スクワランとしては、動物性スクワラン、植物性スクワラン、シュガースクワラン等の天然由来のスクワラン、及び合成スクワランを含む。
【0016】
炭化水素油は、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有する炭化水素油の炭素数は、10~40であることが好ましい。分岐構造を有する炭化水素油の炭素数が、10~40であることにより、天然由来の固形油分を油相に、良好に溶解することができる。また、油性粒子の強度を向上させることができ、油性粒子を水相に安定に分散させることができる。さらに、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、肌なじみが良いといった使用感を与えることができる。
【0017】
炭化水素油は、スクワランであることが好ましく、天然由来のスクワランであることがより好ましい。炭化水素油が、天然由来のスクワランであることにより、合成系の炭化水素である場合と比較して、油性粒子がより生分解され易いため、水中油型乳化組成物は、環境負荷をより低減することができる。また、水中油型乳化組成物は、油性粒子の分散性により優れる。
【0018】
炭化水素油の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7.5質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。分岐構造を有する炭化水素油の含有量が、水中油型乳化組成物に対して0.01質量%~10質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性に優れる。なお、粒子形成性に優れるとは、粒子の形状が球により近いことを意味する。
【0019】
炭化水素油と極性油の質量比は、1:0.5~1:3であることが好ましく、1:0.75~1:2であることがより好ましい。炭化水素油と極性油の質量比は、1:0.8~1:2であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0020】
液状油分は、極性油及び炭化水素油の他、微量のシリコーン油を含んでいてもよい。シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン(フェニルメチコン)、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油の変性シリコーン等が挙げられる。
【0021】
液状油分は、微量のシリコーン油を含む場合、シリコーン油の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、液状油分は、シリコーン油を含まないことが特に好ましい。
【0022】
また、シリコーン油の含有量は、固形油分及び液状油分の合計量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、液状油分は、シリコーン油を含まないことが特に好ましい。
【0023】
従来の水中油型乳化組成物において、シリコーン油は、タルク、マイカ等の粉末と同様に、滑らかな使用感を付与するために広く用いられている。しかしながら、シリコーン油は、自然環境に排出されると分解されることなく自然界に残存するため、環境への影響が懸念され、シリコーンフリーの水中油型乳化組成物の需要が高まっている。本実施形態の水中油型乳化組成物は、液状油分が、シリコーン油を含まないことにより、油性粒子がより生分解され易いため、環境負荷をより低減することができる。
【0024】
固形油分としては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、ビースワックス、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、高級アルコール(例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等)、バチルアルコール、カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ホホバロウ、ラノリン、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等)、エステル油(例えば、ミリスチン酸ミリスチル等)、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ポリエチレン、ワセリン、各種の水添動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。
【0025】
固形油分は、上記の中でも、50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類からなることが好ましい。50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類としては、例えば、カルナウバロウ(融点:82~86℃)、キャンデリラロウ(融点:68~72℃)、コメヌカロウ(融点:70~83℃)等が挙げられる。これらの固形油分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。固形油分は、ミツロウ(融点:62~65℃)であってもよい。
【0026】
固形油分が、50℃以上の融点を有する植物由来のロウ類からなることにより、合成系のロウ類である場合と比較して、油性粒子がより生分解され易いため、水中油型乳化組成物は、環境負荷をより低減することができる。また、油性粒子の外側に植物由来のロウ類からなる皮膜が形成され、油性粒子同士の付着を抑制することができる。よって、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。植物由来のロウ類の融点は、60℃~85℃であることがより好ましい。植物由来のロウ類の融点が、60℃~85℃であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性にさらに優れると共に、油性粒子の分散性にさらに優れる。
【0027】
固形油分は、キャンデリラロウ又はカルナウバロウであることが好ましい。固形油分が、キャンデリラロウ又はカルナウバロウであることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性にさらに優れると共に、油性粒子の分散性にさらに優れる。
【0028】
固形油分の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~4質量%であることがより好ましく、0.5質量%~3質量%であることがさらに好ましい。固形油分の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~5質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0029】
粉末が、アミノ酸である場合、アミノ酸としては、例えば、グルタミン酸等が挙げられる。粉末が、アミノ酸誘導体である場合、アミノ酸誘導体としては、例えば、ラウロイルリシン、ココイルグルタミン酸K、コイルグリシンNa等のアミノ酸系界面活性剤等が挙げられる。粉末が、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末である場合、当該粉末としては、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa被覆酸化鉄(赤)、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa被覆酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸2Na、パルミトイルグルタミン酸Mg、ココイルグルタミン酸2Na等のアミノ酸誘導体で表面処理した粉末が挙げられる。
【0030】
アミノ酸誘導体は、ラウロイルリシンであることが好ましい。アミノ酸誘導体が、ラウロイルリシンであることにより、水中油型乳化組成物の油性粒子は、環境負荷を低減することができる。また、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。また、ラウロイルリシンは、上述した他の粉末に対して比較的、摩擦係数が小さいため、水中油型乳化組成物は、皮膚に適用された際、使用者に、滑らかでシルキーな使用感を与えることができる。
【0031】
粉末(アミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末)の平均一次粒子径は、0.01μm~15μmであることが好ましく、0.05μm~12μmであることがより好ましい。アミノ酸又はアミノ酸誘導体の平均一次粒子径が、0.1μm~10μmであることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性により優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。
【0032】
粉末の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.0001質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることがさらに好ましい。粉末の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.0001質量%~0.5質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性により優れる。また、粉末の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.01質量%~0.5質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性にさらに優れる。
【0033】
水相は、一般的な水性媒体を含み、油性粒子の分散媒となる。水性媒体としては、例えば、水、エタノール等が挙げられる。水性媒体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0034】
水性媒体の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、50質量%~99質量%であることが好ましく、60質量%~98質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
水中油型乳化組成物の油性粒子は、香料を更に含んでいてもよい。具体的には、油性粒子を構成する液状油分の極性油は、香料を含んでいてもよい。水中油型乳化組成物は、香料を含むことにより、香料が有する精神・心理的効果又は身体への生理的効果を発揮することができる。香料としては、例えば、ユーカリ油、オリバナム油等の精油が挙げられる。
【0036】
香料の含有量は、水中油型乳化組成物に対して、0.05質量%~0.45質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~0.2質量%であることがさらに好ましい。香料の含有量が、水中油型乳化組成物に対して、0.05質量%~0.45質量%であることにより、水中油型乳化組成物は、香料を含んでいても、油性粒子の粒子形成性に優れると共に、油性粒子の分散性に優れる。
【0037】
水中油型乳化組成物は、上記の成分に加えて、化粧料等の皮膚外用剤に配合可能な他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。
【0038】
水中油型乳化組成物に配合可能な他の成分としては、限定されないが、水溶性増粘剤、油溶性増粘剤、アルブチン、アスコルビン酸グルコシド、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸塩等の水溶性薬剤、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3一ブチレングリコール、プロパンジオール等の保湿剤、ジモルホリノピリダジノン等の水溶性紫外線吸収剤、エデト酸ナトリウム、水酸化カリウム等のキレート剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、色素、界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
水溶性増粘剤としては、特に限定はされないが、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等が挙げられる。
【0040】
水溶性増粘剤として、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、その界面活性に基づいて油性粒子の凝集、合一を抑制する作用を発揮するので特に好適である。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)とも呼ばれ、例えば、CARBOPOL(登録商標)1342、PEMULEN(登録商標)TR-1、PEMULEN(登録商標)TR-2(BF Goodrich社製)の商品名で市販されている。
【0041】
油溶性増粘剤は、油性粒子を構成する固形油分の固化力を低下させて適度な硬度になるように調整することができる。油溶性増粘剤としては、特に限定はされないが、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、金属セッケン、親油性ベントナイト、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。
【0042】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えばデキストリンパルミチン酸エステル、キストリンオレイン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
金属セッケンとしては、例えば水酸基の残存しているアルミニウムステアレート、マグネシウムステアレート、ジンクミリステート等が挙げられる。
【0044】
親油性ベントナイトとしては、例えばジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイト、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリナイト等が挙げられる。
【0045】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば8個の水酸基のうち3個以下が高級脂肪酸でエステル化され、高級脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸であるものが挙げられる。
【0046】
ソルビトールのベンジリデン誘導体としては、例えばモノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、油溶性増粘剤としては、パルミチン酸デキストリンが安定性及び使用性の観点から特に好ましく用いられる。デキストリン脂肪酸エステルは、特に限定はされないが、例えば、レオパール(登録商標)KL、レオパール(登録商標)KE(千葉製粉社製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0048】
水中油型乳化組成物は、例えば、以下に示す方法にて調製することができる。まず、水相成分を混合し、配合する固形油分の融点以上に加熱し、同温に加熱混合した油相成分(固形油分、液状油分、粉末を含む)を攪拌下で水相成分に添加する。攪拌は、10~1500rpm、好ましくは20~300rpm程度の回転数のプロペラ又はパドルミキサーを用いて行うことができる。なお、攪拌は、ホモミキサーを使用すると微細化されてしまうため好ましくない。次いで、攪拌しながら冷却することにより調製可能である。
【0049】
このようにして製造される水中油型乳化組成物は、水相中に平均粒子径が50μm~10mmの油性粒子が分散されたものとなる。本実施形態の油性粒子は、内層が実質的に粉末と液状油分とからなり、その周囲を固形油分(外層)が被覆したカプセル構造を有すると考えられる。また、外層をなす固形油分が結晶化することにより、適度な硬さとなって独特の使用感触を生じる。
【0050】
本発明の組成物は、界面活性剤を用いなくても上記構造の油性粒子が形成されるが、粉末が油性粒子の内部(内層)に存在し、水相と油相との界面には固形油分が存在する構造をなしている点で、油-水界面に粉末が存在するピッカリング乳化物とは明確に区別される。
【0051】
本発明の水中油型乳化組成物は、化粧料の基剤として使用するのに適している。当該基剤を使用した化粧料としては、例えば、水性化粧料、ジェル化粧料、乳化化粧料等の形態が挙げられる。具体的な用途としては、化粧水、ジェル、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル、ボディ又はヘア用の化粧料として用いることが可能である。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0053】
表1~表4に示す組成で下記の方法により水中油型乳化組成物を調整し、得られた各水中油型乳化組成物について、下記の方法により評価を行った。
【0054】
<水中油型乳化組成物の調整>
表1~表4に示す組成で、水相成分を混合して、配合する固形油分の融点以上に加熱し、同温に加熱混合した油相成分(固形油分、液状油分、粉末を含む)を攪拌下で水相成分に添加した。次いで、攪拌しながら冷却することにより各水中油型乳化組成物を得た。
【0055】
調整した各水中油型乳化組成物について、油性粒子の形成性、分散性、及び硬さについて評価した。
【0056】
<粒子形成性の評価>
得られた水中油型乳化組成物に含まれる油性粒子の形状を顕微鏡で観察し、下記評価基準に基づき評価した。B以上を合格とし、その評価結果を表1~表4に示す。
[評価基準]
A:視野中、全ての油性粒子が球状であった
B:視野中、一部、歪な形状の油性粒子が見られた
C:視野中、大半の油性粒子が歪な形状であった
<分散性の評価>
得られた水中油型乳化組成物を容器に入れ常温で1週間放置した後、容器を手で振ることにより攪拌した際の油性粒子の分散性を目視で確認し、下記評価基準に基づき評価した。B以上を合格とし、その評価結果を表1~表4に示す。
[評価基準]
A:油性粒子がすぐに均一分散した
B:一部の油性粒子が凝集していたが、更に強く撹拌することにより均一に分散した
C:一部の油性粒子が凝集し、更に強く撹拌しても分散しなかった
【0057】
<硬さの評価>
得られた水中油型乳化組成物をテクスチャー試験機「TEX-100N」(日本計測システム社製)を用いて、テクスチャ―プロファイル分析法にて、油性粒子の硬さの測定を行い、下記評価基準に基づき評価した。B以上を合格とし、その評価結果を表3及び表4に示す。
[評価基準]
A:0.3N以上0.5N未満
B:0.1N以上0.3N未満、又は0.5N以上0.7N未満
C:0N以上0.1N未満、又は0.7N以上1.0N未満
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表1~4に示すように、実施例1~20の水中油型乳化組成物は、油性粒子が水相に均一に分散し、油性粒子の分散性に優れることを確認した。また、実施例1~5、7~20の水中油型乳化組成物は、油性粒子の形成性について、実使用上問題ないことを確認した。実施例6の水中油型乳化組成物は、油性粒子の分散性に優れるものの、油性粒子の形成性について、実使用上懸念が見られた。一方、油性粒子にアミノ酸、アミノ酸誘導体、又は、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体で被覆された粉末を含まない比較例1の水中油型乳化組成物は、油性粒子の形成性は、実使用上問題なかったが、一部の油性粒子が凝集し、強く攪拌しても分散しなかった。
【0063】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。