(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097078
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスを強力に中和する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/08 20060101AFI20240709BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240709BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240709BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240709BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240709BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240709BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240709BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240709BHJP
C07K 14/555 20060101ALN20240709BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C07K16/08 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P31/20
A61P31/14
A61K39/395 S
A61K39/395 D
A61K48/00
A61K35/12
A61P1/16
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K38/21
A61K31/513
C07K16/08
C07K14/555
C07K16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】87
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074160
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2022175909の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/001970
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516097907
【氏名又は名称】ヒューマブス バイオメド エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・コルティ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】B型肝炎ウイルス(HBV)及びデルタ型肝炎ウイルス(HDV)の両方を中和することができる抗体ベースの製品、更に、より優れた慢性B型肝炎治療を可能にする抗体ベースの製品を提供する。
【解決手段】本発明は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)の抗原性ループ領域に結合し且つB型肝炎ウイルス(HBV)及びデルタ型肝炎ウイルス(HDV)の両方の感染を強力に中和する抗体及びその抗原結合断片を提供する。また、本発明は、抗体及び抗原結合断片が結合するエピトープ、並びにかかる抗体及び抗体断片をコードしている核酸及び産生する細胞を提供する。更に、本発明は、B型肝炎及びD型肝炎の診断、予防、及び治療における本発明の抗体及び抗体断片の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HBsAgの抗原性ループ領域に結合し、且つB型肝炎ウイルス及びデルタ型肝炎ウイルスの感染を中和することを特徴とする単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
HBsAg及びHBVのクリアランスを促進する請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
Fc部分を含む請求項1から2のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
HBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJのうちの少なくとも6個、好ましくは少なくとも8個、より好ましくは10個全てに結合する請求項1から3のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
抗原性ループ領域に突然変異を有するHBsAg突然変異体:HBsAg Y100C/P120T、HBsAg P120T、HBsAg P120T/S143L、HBsAg C121S、HBsAg R122D、HBsAg R122I、HBsAg T123N、HBsAg Q129H、HBsAg Q129L、HBsAg M133H、HBsAg M133L、HBsAg M133T、HBsAg K141E、HBsAg P142S、HBsAg S143K、HBsAg D144A、HBsAg G145R、及びHBsAg N146Aのうちの少なくとも12個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは18個全てに結合する請求項1から4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記HBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、更により好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも1個、好ましくは前記少なくとも2個、より好ましくは前記少なくとも3個、更により好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸が、HBsAgのSドメインのアミノ酸115~133、好ましくは前記HBsAgのSドメインのアミノ酸120~133、より好ましくは前記HBsAgのSドメインのアミノ酸120~130から選択される請求項1から5のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記HBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸が、前記HBsAgのSドメインのアミノ酸120~133、好ましくはアミノ酸120~130から選択され、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸が、隣接する位置に位置する請求項6に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記エピトープが、立体構造的エピトープである請求項6から7のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記HBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸が、前記HBsAgのSドメインのアミノ酸120~133、好ましくはアミノ酸120~130から選択され、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸のうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個が、隣接する位置には位置しない請求項6から8のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、更により好ましくは少なくとも4個、最も好ましくは少なくとも5個のアミノ酸が、前記エピトープに含まれ且つ隣接する位置には位置しない前記少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のアミノ酸間に位置する請求項9に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記HBsAgのSドメインのアミノ酸P120、C121、R122、及びC124を少なくとも含むエピトープに結合する請求項6から10のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号88:
【表1】
(式中、Xは、任意のアミノ酸であるか又はアミノ酸が存在せず;好ましくは、Xは、任意のアミノ酸であり、より好ましくは、Xは、T、Y、R、S、又はFであり;更により好ましくは、Xは、T、Y、又はRであり;最も好ましくは、Xは、T又はRである)
に係るアミノ酸配列を含むエピトープに結合する請求項6から11のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
配列番号80:
【表2】
に係るアミノ酸配列、又は配列番号80と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むエピトープに結合する請求項6から12のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
配列番号85:
【表3】
に係るアミノ酸配列、又は配列番号85と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むエピトープに結合する請求項6から13のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
前記エピトープが、前記HBsAgのSドメインのアミノ酸145~151(配列番号81)を少なくとも含むアミノ酸配列を更に含む請求項6から14のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
前記エピトープが、配列番号80に係るアミノ酸配列及び配列番号81に係るアミノ酸配列を含む請求項6から15のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記エピトープが、配列番号85に係るアミノ酸配列及び配列番号87に係るアミノ酸配列を含む請求項6から16のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
配列番号1:
【表4】
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、及びX
7は、任意のアミノ酸であり得る)
に係るアミノ酸配列によって形成される前記HBsAgの抗原性ループにおけるエピトープに結合する請求項1から17のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
配列番号2:
【表5】
(式中、X
1は、P、T、又はSであり、
X
2は、C又はSであり、
X
3は、R、K、D、又はIであり、
X
4は、M又はTであり、
X
5は、T、A、又はIであり、
X
6は、T、P、又はLであり、
X
7は、Q、H、又はLである)
に係るアミノ酸配列によって形成される前記HBsAgの抗原性ループにおけるエピトープに結合する請求項18に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
配列番号5~33から選択されるアミノ酸配列を有する前記HBsAgのSドメインの抗原性ループ領域又はその配列変異体に結合する請求項19に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
モノクローナル抗体若しくはそのモノクローナル抗原結合断片及び/又はヒト抗体若しくはそのヒト抗原結合断片である請求項1から20のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
IgG型、好ましくはIgG1型である請求項1から21のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む請求項1から22のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む請求項23に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36に係るアミノ酸配列を含む請求項23から24のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40若しくは58に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む請求項1から25のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項27】
前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40又は58と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む請求項26に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40又は58に係るアミノ酸配列を含む請求項26から27のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項29】
前記少なくとも1つの重鎖CDRH1が、配列番号34に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つのCDRH2が、配列番号35に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む請求項23から28のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項30】
前記少なくとも1つの重鎖CDRH1が、配列番号34と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの重鎖CDRH2が、配列番号35若しくは66と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む請求項29に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項31】
前記少なくとも1つの重鎖CDRH1が、配列番号34に係るアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの重鎖CDRH2が、配列番号35若しくは66に係るアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの重鎖CDRH3が、配列番号36に係るアミノ酸配列を含む請求項29から30のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項32】
前記少なくとも1つのCDRL1が、配列番号37に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つのCDRL2が、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つのCDRL3アミノが、配列番号40に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む請求項23から31のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項33】
前記少なくとも1つの軽鎖CDRL1が、配列番号37に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL2が、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3アミノが、配列番号58に係るアミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含む請求項23から31のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項34】
前記少なくとも1つの軽鎖CDRL1が、配列番号37と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの軽鎖CDRL2が、配列番号38若しくは39と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40若しくは58と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む請求項32から33のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項35】
前記少なくとも1つの軽鎖CDRL1が、配列番号37に係るアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの軽鎖CDRL2が、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40若しくは58に係るアミノ酸配列を含む請求項32から34のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項36】
それぞれ、配列番号34から38及び40に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体、又は配列番号34から37及び39から40に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体を含む請求項1から32、34、及び35のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項37】
それぞれ、配列番号34、36から38、40、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体、又はそれぞれ、配列番号34、36から37、39から40、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体を含む請求項1から32、34、及び35のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
それぞれ、配列番号34から38及び58に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体、又は配列番号34から37、39、及び58に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体を含む請求項1から31及び33から35のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項39】
それぞれ、配列番号34、36から38、58及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体、又はそれぞれ、配列番号34、36から37、39、58及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列、若しくはこれらの機能性配列変異体を含む請求項1から31及び33から35のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項40】
(i)それぞれ、配列番号34から38及び40のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(ii)それぞれ、配列番号34から37、39及び40のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(iii)それぞれ、配列番号34から38及び58のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(iv)それぞれ、配列番号34から37、39及び58のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(v)それぞれ、配列番号34、36から38、40及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(vi)それぞれ、配列番号34、36から37、39、40及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(vii)それぞれ、配列番号34、36から38、58及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(viii)それぞれ、配列番号34、36から37、39、58及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む請求項36から39のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項41】
(i)それぞれ配列番号34から38及び40に係るか;(ii)それぞれ配列番号34から37、39及び40に係るか;(iii)それぞれ配列番号34から38及び58に係るか;(iv)それぞれ配列番号34から37、39及び58に係るか;(v)それぞれ配列番号34、36から38、40及び66に係るか;(vi)それぞれ配列番号34、36から37、39、40及び66に係るか;(vii)それぞれ配列番号34、36から38、58及び66に係るか;(viii)それぞれ配列番号34、36から37、39、58及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む請求項36から40のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
配列番号41に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体と、配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体とを含む請求項1から32、34から37、及び40から41のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項43】
配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体と、配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体とを含む請求項1から32、34から37、及び40から41のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項44】
(i)配列番号41又は67と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、(ii)配列番号42と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む請求項42から43のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項45】
配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む請求項42から44のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項46】
配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体と、配列番号59又は65に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体とを含む請求項1から31、33から35、及び38から41のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項47】
(i)配列番号41又は67と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、(ii)配列番号59又は65と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む請求項46に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項48】
配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号59又は65に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む請求項46から47に係る抗体又はその抗原結合断片。
【請求項49】
gHBC34、好ましくはHBC34である請求項1から32、34から36、及び40から45のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項50】
gHBC34v7又はgHBC34v23、好ましくは、HBC34v7又はHBC34v23である請求項1から31、33から35、38から41、及び46から48のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項51】
gHBC34v31、gHBC34v32、又はgHBC34v33、好ましくは、HBC34v31、HBC34v32、又はHBC34v33である請求項1から50のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項52】
精製抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvである請求項1から51のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項53】
医薬として使用するための、請求項1から52のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項54】
B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減において使用するための、請求項1から53のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項55】
請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片をコードしているポリヌクレオチドを含むことを特徴とする核酸分子。
【請求項56】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号43から51のいずれかに記載の核酸配列又はその機能性配列変異体を含むか又はからなる請求項51に記載の核酸分子。
【請求項57】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号43から51、60から64、及び68から78のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する核酸配列を含むか又はからなる請求項55に記載の核酸分子。
【請求項58】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号43から51、60から64、及び68から78のいずれかに記載の核酸配列を含むか又はからなる請求項55又は57に記載の核酸分子。
【請求項59】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号70から78のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する核酸配列を含むか又はからなる請求項55に記載の核酸分子。
【請求項60】
前記ポリヌクレオチド配列が、請求項70から78のいずれかに記載の核酸配列を含むか又はからなる請求項55及び57から59のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項61】
請求項55から60のいずれかに記載の核酸分子を含むことを特徴とするベクター。
【請求項62】
請求項1から54のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合断片を発現するか;又は請求項61に記載のベクターを含むことを特徴とする細胞。
【請求項63】
請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、及び/又は請求項62に記載の細胞を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項64】
薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体を含む請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
(i)B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減;又は(ii)B型肝炎及び/又はD型肝炎の診断において使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項66】
慢性B型肝炎の治療又は軽減において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項67】
特にB型肝炎誘発性肝不全のための肝移植後のB型肝炎(再)感染の予防において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項68】
非免疫被験体のB型肝炎の防止/予防において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項69】
血液透析患者のB型肝炎の予防において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項70】
新生児のB型肝炎の予防において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項71】
D型肝炎、好ましくはB型肝炎及びD型肝炎の治療又は軽減において請求項65に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項72】
ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される請求項65から66のいずれかに従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項73】
ポリメラーゼ阻害剤と組み合わせて投与される請求項72に従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記ポリメラーゼ阻害剤が、ラミブジンである請求項72から73のいずれかに従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記ポリメラーゼ阻害剤、前記インターフェロン、及び/又は前記チェックポイント阻害剤と同じ又は異なる投与経路を介して投与される請求項72から74のいずれかに従って使用するための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項76】
(i)請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物と、
(ii)ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と
の組合せ。
【請求項77】
B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減において使用するため、特に、慢性B型肝炎及び/又は慢性D型肝炎の治療又は軽減において使用するための請求項76に記載の組合せ。
【請求項78】
HBV単独感染患者又はHBV/HDV同時感染(co-infected)患者において使用される請求項77に従って使用するための組合せ。
【請求項79】
HBsAgのクリアランスを加速させる請求項76に記載の組合せ又は請求項77から78のいずれかに従って使用するための組合せ。
【請求項80】
(i)請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物と、
(ii)ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と
を含むことを特徴とするキット。
【請求項81】
抗B型肝炎又は抗D型肝炎ワクチンの抗原が正確な立体構造の特異的エピトープを含有していることを確認することによって前記ワクチンの品質をモニタリングするための請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項82】
B型肝炎及び/又はD型肝炎の診断における請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項83】
単離された血液サンプルがB型肝炎ウイルス及び/又はデルタ型肝炎ウイルスに感染しているかどうかの判定における請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項84】
被験体におけるB型肝炎及び/又はD型肝炎を予防及び/又は治療する方法であって、請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、及び/又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物を、それを必要としている被験体に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
肝移植を受けた被験体を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1から54のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項55から60のいずれかに記載の核酸、請求項61に記載のベクター、請求項62に記載の細胞、及び/又は請求項63から64のいずれかに記載の医薬組成物を、前記肝移植を受けた被験体に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
前記被験体が、慢性B型肝炎を有する請求項84から85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記抗体若しくはその抗原結合断片、前記核酸、前記ベクター、前記細胞、又は前記医薬組成物が、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される請求項84から86のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)及びデルタ型肝炎ウイルス(HDV)に対する抗体、並びにその使用の分野に関する。本発明の強力な抗B型肝炎抗体は、本発明において同定された通り、HBVエンベロープタンパク質のSドメインの抗原性ループ領域(HBsAg)に位置するエピトープに結合する。また、本発明は、かかる抗体及び抗体断片をコードしている核酸、並びにかかる抗体及び抗体断片を産生する不死化B細胞及び培養プラズマ細胞に関する。更に、本発明は、スクリーニング方法、並びに疾患、具体的にはB型肝炎及びD型肝炎の診断、予防、及び治療における本発明の抗体及び抗体断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、(i)3つの関連する表面タンパク質(B型肝炎表面抗原、HBsAg)及び脂質を含有するエンベロープと、(ii)ウイルスDNAゲノム及びDNAポリメラーゼを封入する正二十面体ヌクレオカプシドとからなる。HBVカプシドは、RNAプレゲノム複製複合体のパッケージング中に感染細胞のサイトゾルにおいて形成され、粒子の内腔におけるプレゲノムの逆転写によるウイルスDNAゲノムの合成中に出芽する能力を獲得する。3つのHBVエンベロープタンパク質S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgは、小胞体で複雑に膜を貫通して折り畳まれ、ジスルフィド結合したホモ及びヘテロ二量体を形成する。細胞内の膜において出芽している間、サイトゾルのpreS領域における短い線形ドメインが、カプシド表面における結合部位と相互作用する。続いて、ビリオンが血液中に分泌される。更に、表面タンパク質は、カプシドが存在しなくても出芽し、ビリオンに対して3log~4log過剰に分泌されるサブウイルス粒子(SVP)を形成することができる。高レベルのHBsAgは、HBsAg特異的T細胞応答を疲弊させることができ、慢性B型肝炎(CHB)患者におけるウイルスの免疫寛容の重要な因子として提案されている(非特許文献1)。
【0003】
B型肝炎ウイルスは、生命を脅かす急性及び慢性の肝臓感染症を引き起こす可能性がある。急性B型肝炎は、症候性又は無症候性のウイルス血症を特徴とし、劇症肝炎が生じるリスクがある(非特許文献2)。B型肝炎に対する有効なワクチンが1982年から利用可能であるにもかかわらず、2億4000万人がB型肝炎に慢性的に感染しており、毎年780,000人超がB型肝炎の合併症で死亡していることがWHOによって報告されている。慢性B型肝炎(CHB)患者の約3分の1が、肝硬変、肝不全、及び肝細胞癌を発現し、毎年600,000人の死因となる(非特許文献2)。
【0004】
慢性B型肝炎の現在利用可能な治療法としては、(ペグ化)インターフェロン-アルファ(IFN-α又はpegIFN-α)及びB型肝炎ウイルス(HBV)DNAポリメラーゼを阻害するヌクレオシ(チ)ドアナログ直接作用型抗ウイルス剤(DAA)(「ポリメラーゼ阻害剤」)が挙げられる。ポリメラーゼ阻害剤としては、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、及びテノホビルが挙げられる。ポリメラーゼ阻害剤(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、及びテノホビル)は、HBV DNAポリメラーゼの逆転写酵素機能を抑制するので、プレゲノムRNAからのウイルスDNAの合成に干渉する。この治療は、ウイルスの拡散、cccDNAの形成を阻止せず、HBsAgの放出に影響を与えない。更に、ポリメラーゼ阻害剤は、疾患の進行を制限するが、ウイルスを排除のは稀である。したがって、治療の中止後にウイルスの再発が一般的にみられるので、ポリメラーゼ阻害剤は、生涯に亘って使用しなければならない。更に、長期間治療後に薬物耐性変異体が生じる。PEG-IFN-αは、免疫調節効果を介して間接的に、またHBV転写物の定常状態レベルを低下させることによって直接HBVを阻害する(cccDNA結合ヒストンのアセチル化を増加させる)。しかし、PEG-IFN-αは、有効性が限定されており、重篤な副作用を引き起こす。
【0005】
pegIFN-αは、治療を受けた患者の約3分の1において有効であり、一方、ポリメラーゼ阻害剤は、治療を受けた患者の大部分でウイルス量を著しく低減する(非特許文献3)。インターフェロンαは、多くの有害反応に関連しているので、進行肝硬変又は医学的/精神医学的禁忌を有する患者において使用することはできない(非特許文献2)。エンテカビル及びテノホビル等のポリメラーゼ阻害剤は、有害作用が少ないと考えられ、これら薬物についてのHBeAGセロコンバージョン及びHBsAg喪失の速度は遅い。したがって、殆どの患者は、関連するコスト、並びに有害反応、薬物耐性、及びノンアドヒアランスのリスクを伴う生涯に亘る治療を必要とすることが多い。したがって、現在利用可能な慢性B型肝炎の治療法は、未だ様々な制約による問題点を抱えており、病気を治癒させるとみなすことはできない。したがって、HBVの治療は改善されてきてはいるが、HBV患者は、生涯に亘る治療を必要とすることが多く、治癒は未だ困難な目標である(非特許文献2)。慢性B型肝炎(CHB)の治癒に最も近い転帰及び治療の理想のエンドポイントは、B型肝炎表面抗原(HBsAg)を喪失させることであるが、これは、慢性B型肝炎の現在利用可能な治療法では未だ効率的に達成されてはいない(概説については、非特許文献4を参照)。
【0006】
急性肝炎又は肝細胞癌の重篤な非代償性HBV患者には、同所性肝移植(OLT)の適応がある。OLT後、B型肝炎の再発率は、予防無しで>80%であるが、移植レシピエントの>90%は、複合B型肝炎免疫グロブリン(HBIG)及びヌクレオシ(チ)ドアナログによる治療で臨床的に管理される。B型肝炎免疫グロブリン(HBIG)は、ワクチンを接種したドナーから精製されたポリクローナルな免疫グロブリンである。しかし、長期に亘るHBIGの投与は、アベイラビリティの制限及び極めて高いコストを含む幾つかの未解決の問題に関連している(非特許文献5)。更に、極めて高用量を投与しなければならない。即ち、移植中のレシピエントに静脈内注入により10グラム(結合アッセイに基づいて10,000IUを含有)を投与する。続いて、8日間毎日2グラムを静脈内投与し、更に、抗HBs血清レベルを100IU/mL超で維持するために1ヶ月間~3ヶ月間毎に注入する。これも、生涯に亘る治療を必要とする。
【0007】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV)の同時感染(coinfection)又は重複感染が生じたときに、更により重篤な合併症が観察される。WHOによれば、D型肝炎は世界中で約1,500万人が感染している。HDVは、HBVの存在下でのみ増殖することができるので、サブウイルスサテライトであると考えられる。HDVは、最小の動物ウイルス(40nm)の1つであるので、そのゲノムは僅か1.6kbであり、S及びL HDAgをコードしている。RNAポリメラーゼを含むHDVのゲノム複製に必要な全ての他のタンパク質は、宿主細胞によって提供され、HDVエンベロープは、HBVによって提供される。言い換えれば、HDVは、自身のビリオンコートとしてB型肝炎エンベロープタンパク質(HBsAg)を利用するので、その複製にHBVとの同時感染を必要とする欠陥ウイルスである。許容細胞に導入されたとき、HDV RNAゲノムが複製され、複数コピーのHDVコードタンパク質と会合して、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を構築する。RNPは、分泌される前にプレゴルジコンパートメントの内腔に出芽するリポタンパク質ベシクルを構築することができる、HBVエンベロープタンパク質によって細胞から排出される。更に、HBVエンベロープタンパク質は、HDVのターゲティングの機構を未感染細胞に提供して、HDVの拡散を確保する。
【0008】
HDVによって引き起こされる合併症は、急性感染症における肝不全及び肝硬変への急速な進行を経験する可能性の増大を含み、慢性感染症において肝癌を発現する可能性も増大する。B型肝炎ウイルスと共同して、D型肝炎は、全ての肝炎感染症の中でも最も高い死亡率(20%)を有する(非特許文献6)。慢性HDV感染症について唯一承認されている治療法は、インターフェロン-アルファである。しかし、インターフェロン-アルファによるHDVの治療は、比較的非効率であり、耐容性も高くない。インターフェロン-アルファにより治療すると、患者の4分の1において治療後6ヶ月間持続的ウイルス陰性化が生じる。また、ヌクレオシ(チ)ドアナログ(NA)は、デルタ型肝炎において広く試験されているが、効果がないと考えられる。NAとインターフェロン-アルファとの併用治療も期待外れであることが証明されているので、新規の治療選択肢が必要とされている(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chisari FV,Isogawa M,Wieland SF,Pathologie Biologie,2010;58:258-66
【非特許文献2】Liang TJ,Block TM,McMahon BJ,Ghany MG,Urban S,Guo JT,Locarnini S,Zoulim F,Chang KM,Lok AS.Present and future therapies of hepatitis B:From discovery to cure.Hepatology.2015 Aug 3.doi:10.1002/hep.28025.[印刷物に先駆けたオンライン出版]
【非特許文献3】Timothy M.Block,Robert Gish,Haitao Guo,Anand Mehta,Andrea Cuconati,W.Thomas London,Ju-Tao Guo Chronic hepatitis B:What should be the goal for new therapies? Antiviral Research 98(2013)27-34
【非特許文献4】Gish R.G.et al.,2015,Antiviral Research 121:47-58
【非特許文献5】Takaki A,Yasunaka T,Yagi T.Molecular mechanism to control post-transplantation hepatitis B recurrence.Int J Mol Sci.2015 Jul 30;16(8):17494-513
【非特許文献6】Fattovich G,Giustina G,Christensen E,Pantalena M,Zagni I,Realdi G,Schalm SW.Influence of hepatitis delta virus infection on morbidity and mortality in compensated cirrhosis type B.Gut.2000 Mar;46(3):420-6
【非特許文献7】Zaigham Abbas,Minaam Abbas Management of hepatitis delta:Need for novel therapeutic Options.World J Gastroenterol 2015 August 28;21(32):9461-9465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑みて、本発明の目的は、B型肝炎ウイルス(HBV)及びデルタ型肝炎ウイルス(HDV)の両方を中和することができる抗体ベースの製品を提供することにある。これによって、B型肝炎の予防及び治療を改善することができる。更に、現在D型肝炎に利用可能な治療法は存在しないので、D型肝炎を予防及び治療するための抗体ベースの製品を提供することも本発明の目的である。更に、本発明の目的は、より優れた慢性B型肝炎治療を可能にする抗体ベースの製品を提供することにある。この目的のために、(i)HBVを強力に中和し、(ii)HBsAg及びHBVのクリアランスを促進し、(iii)セロコンバージョン、即ち、ウイルスに対する免疫応答を誘導することによって、単一の抗体ベースの製品が様々な方法で作用する場合が有利である。更に、抗体は、有利なことに、改善された抗原提示を促進し、それによって、抗HBV T細胞応答の回復を促進することもできる。更に、本発明の目的は、B型肝炎ウイルス表面抗原の様々な(好ましくは全ての公知の)遺伝子型及びB型肝炎ウイルス表面抗原の様々な(好ましくは全ての公知の)感染性突然変異体に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。要約すると、本発明の目的は、関連技術の上記問題点を克服する、改善された抗体又はその抗原結合断片に加えて、関連する核酸分子、ベクター、及び細胞、並びに医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の根底にある目的は、以下及び特許請求の範囲に記載される発明主題によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の要素について説明する。これら要素は、具体的な実施形態と共に列挙されるが、これらを任意の方式で任意の数組み合わせて更なる実施形態を生み出すことができることを理解すべきである。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態をサポート及び包含すると理解すべきである。更に、特に指定しない限り、本願における全ての記載された要素の任意の入れ換え及び組合せが本願の記載によって開示されるとみなすべきである。
【0013】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0014】
本明細書及びその後に続く特許請求の範囲全体を通して、特に必要としない限り、用語「含む」並びに「含み」及び「含んでいる」等の変形は、指定されている部材、整数、又は工程を含むが、任意の他の指定されていない部材、整数、又は工程を除外するものではないことを意味すると理解される。用語「からなる」は、任意の他の指定されていない部材、整数、又は工程が除外される、用語「含む」の具体的な実施形態である。本発明において、用語「含む」は、用語「からなる」を包含する。したがって、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなっていてもよく、追加の何かを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0015】
用語「a」及び「an」及び「the」、並びに本発明の説明(特に、特許請求の範囲)において使用される同様の参照は、本明細書に指定されているか又は文脈上明示的に否定されていない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内の各別個の値を個別に参照する簡易的な方法として機能することを意図する。本明細書において特に指定しない限り、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。明細書中のいずれの言語も、本発明の実施に必須の任意の請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0016】
用語「実質的に」は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含んでいなくてもよい。必要な場合、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略されることもある。
【0017】
数値xに関連する用語「約」は、x±10%を意味する。
【0018】
用語「疾患」は、本明細書で使用するとき、ヒト若しくは動物の身体又は正常な機能が損なわれているその部分のうちの1つの異常な状態を全て反映し、典型的には、識別可能な徴候及び症状によって顕在化し、且つヒト又は動物の寿命又は生活の質を低減するという点で、用語「疾病」及び(健康状態のような)「状態」と略同義であることを意図し、互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用するとき、被験体又は患者の「治療」に対する言及は、防止、予防、軽減、寛解、及び療法を含むことを意図する。用語「被験体」又は「患者」は、本明細書では互換的に使用されて、ヒトを含む全ての哺乳類を意味する。被験体の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギが挙げられる。一実施形態では、患者はヒトである。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」、並びにこれら用語の変形は、通常のペプチド結合によって、又は例えば等配電子ペプチドの場合等、修飾ペプチド結合によって互いに結合している少なくとも2つのアミノ酸を含む分子、特に、それぞれペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、又は融合タンパク質を含むタンパク質を指す。例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、好ましくは、通常のペプチド結合によって互いに結合している、遺伝子コードによって定義される20種のアミノ酸から選択されるアミノ酸で構成される(「古典的」ポリペプチド)。ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、Lアミノ酸及び/又はDアミノ酸で構成され得る。具体的には、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、非ペプチド性構造要素を含有するペプチドアナログとして定義される「ペプチド模倣体」も含み、このペプチドは、天然親ペプチドの生物学的作用を模倣するか又は拮抗することができる。ペプチド模倣体は、酵素的に切断しやすいペプチド結合等、古典的なペプチドの特徴を有しない。具体的には、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、遺伝子コードによって定義される20種のアミノ酸に加えてこれらアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよく、遺伝子コードによって定義されている20種のアミノ酸以外のアミノ酸で構成されていてもよい。具体的には、本発明におけるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、等しく、当業者に周知の翻訳後成熟プロセス等の天然プロセス又は化学的プロセスによって修飾されたアミノ酸で構成され得る。かかる修飾は、文献に十分詳述されている。これら修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸鎖、又は更にはカルボキシ末端若しくはアミノ末端等、ポリペプチドの何処に存在していてもよい。具体的には、ペプチド又はポリペプチドは、ユビキチン化後に分岐してもよく、分枝を有するか又は有しない環状であってもよい。この種の修飾は、当業者に周知の天然又は合成翻訳後プロセスの結果であり得る。本発明における用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、具体的には、修飾ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質も含む。例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合性固定、脂質又は脂質誘導体の共有結合性固定、ホスファチジルイノシトールの共有結合性固定、共有結合性又は非共有結合性の架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、ペグ化を含むグリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セネロイル化、硫酸化、アルギニン化等のアミノ酸付加、又はユビキチン化を挙げることができる。かかる修飾は、文献に十分詳述されている(Proteins Structure and Molecular Properties(1993)2nd Ed.,T.E.Creighton,New York;Post-translational Covalent Modifications of Proteins(1983)B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York;Seifter et al.(1990)Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors,Meth.Enzymol.182:626-646 and Rattan et al.,(1992)Protein Synthesis:Post-translational Modifications and Aging,Ann NY Acad Sci,663:48-62)。したがって、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、好ましくは、例えば、リポペプチド、リポタンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質等を含む。
【0021】
本明細書で使用するとき、「(ポリ)ペプチド」は、上に説明した通りペプチド結合によって結合されているアミノ酸モノマーの1本の鎖を含む。「タンパク質」は、本明細書で使用するとき、1以上、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の(ポリ)ペプチド、即ち、上に説明した通りペプチドによって結合されているアミノ酸モノマーの1本以上の鎖を含む。好ましくは、本発明に係るタンパク質は、1個、2個、3個、又は4個のポリペプチドを含む。
【0022】
用語「組み換え」とは、本明細書で使用するとき(例えば、組み換え抗体、組み換えタンパク質、組み換え核酸等)、組み換え手段によって調製、発現、作製、又は単離され、且つ自然界には存在しない任意の分子(抗体、タンパク質、核酸等)を指す。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「核酸」、「核酸分子」、及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用され、全てのかかる表記は後代を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という用語は、初代対象細胞及び転換数に関係なくそれに由来する培養物を含む。また、全ての後代は、故意の又は故意ではない突然変異に起因して、DNA含量が正確に同一ではなくてもよいことが理解される。元々の形質転換細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能又は生物活性を有する変異体後代が含まれる。異なる表記が意図される場合、文脈から明らかになるであろう。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」、「断片」、及び「抗体断片」は、抗体の抗原結合活性を保持している本発明の抗体の任意の断片を指すために互換的に使用される。抗体断片の例としては、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvが挙げられるが、これらに限定されない。更に、用語「抗体」は、本明細書で使用するとき、抗体及びその抗原結合断片の両方を含む。
【0026】
本明細書で使用するとき、「中和抗体」は、宿主において感染を開始及び/又永続化させる病原体の能力を中和する、即ち、予防、阻害、低減、妨害、又は干渉することができるものである。用語「中和抗体」及び「中和する抗体」は、本明細書では互換的に使用される。これら抗体は、単独で使用してもよく、適切な製剤化に際して予防剤又は治療剤として、能動的ワクチン接種に関連して、診断ツールとして、又は本明細書に記載される生産ツールとして組み合わせて使用してもよい。
【0027】
用量は、多くの場合、体重に関連して表される。したがって、[g、mg、又は他の単位]/kg(又はg、mg等)として表される用量は、たとえ用語「体重」が明示的に言及されていないとしても、通常「体重1kg(又はg、mg等)当たりの」[g、mg、又は他の単位]を指す。
【0028】
用語「結合」及び「特異的結合」並びに類似の参照は、非特異的固着を包含しない。
【0029】
用語「ワクチン」とは、本明細書で使用するとき、典型的には、少なくとも1つの抗原、好ましくは免疫原を提供する予防又は治療的物質であると理解される。抗原又は免疫原は、ワクチン接種に好適な任意の物質に由来し得る。例えば、抗原又は免疫原は、細菌若しくはウイルス粒子等の病原体、又は腫瘍若しくは癌性組織に由来し得る。抗原又は免疫原は、身体の適応免疫系を刺激して適応免疫応答を提供する。具体的には、「抗原」又は「免疫原」は、典型的には、免疫系、好ましくは適応免疫系によって認識され得、且つ例えば、適応免疫応答の一部として抗体及び/又は抗原特異的T細胞を形成することによって、抗原特異的免疫応答を誘発することができる物質を指す。典型的には、抗原は、MHC又はT細胞によって提示され得るペプチド又はタンパク質であってもよく、これらを含んでいてもよい。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「配列変異体」は、レファレンス配列と比較して1以上の変化を有する任意の配列を指し、レファレンス配列は、「配列の表及び配列番号」(配列表)に列挙されている配列、即ち、配列番号1~配列番号88のいずれかである。したがって、用語「配列変異体」は、ヌクレオチド配列変異体及びアミノ酸配列変異体を含む。ヌクレオチド配列における配列変異体については、レファレンス配列もヌクレオチド配列であり、一方、アミノ酸配列における配列変異体については、レファレンス配列もアミノ酸配列である。「配列変異体」は、本明細書で使用するとき、レファレンス配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%同一である。配列同一性は、通常、レファレンス配列(即ち、本願に列挙される配列)の完全長に対して計算される。本明細書において言及するとき、同一性パーセントは、例えば、NCBI(the National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメータ[Blosum62マトリクス;ギャップオープンペナルティ=11、及びギャップエクステンションペナルティ=1]を用いるBLASTを使用して決定することができる。
【0031】
核酸(ヌクレオチド)配列における「配列変異体」は、レファレンス配列におけるヌクレオチドのうちの1以上が欠失若しくは置換されているか、又は1以上のヌクレオチドがレファレンスヌクレオチド配列の配列に挿入されている、変化した配列を有する。ヌクレオチドは、標準的な一文字表記(A、C、G、又はT)によって本明細書に言及される。遺伝子コードの縮重に起因して、ヌクレオチド配列の「配列変異体」は、それぞれのレファレンスアミノ酸配列を変化させる、即ち、アミノ酸「配列変異体」を生じさせる場合もあり、そうではない場合もある。アミノ酸配列変異体を生じさせないヌクレオチド配列変異体が好ましい(サイレント突然変異)。しかし、「非サイレント」突然変異につながるヌクレオチド配列変異体も範囲内であり、具体的には、レファレンスアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは98%又は99%同一のアミノ酸配列を生じさせる、かかるヌクレオチド配列変異体も範囲内である。
【0032】
アミノ酸配列における「配列変異体」は、レファレンスアミノ酸と比べてアミノ酸のうちの1以上が欠失、置換、又は挿入されている、変化した配列を有する。変化の結果、かかる配列変異体は、レファレンスアミノ酸と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%同一のアミノ酸配列を有する。例えば、レファレンス配列の100アミノ酸当たり10以下の変化、即ち、欠失、挿入、又は置換の任意の組合せを有する変異体配列は、レファレンス配列と「少なくとも90%同一」である。
【0033】
非保存的アミノ酸置換を有することが可能であるが、置換は、置換されたアミノ酸がレファレンス配列における対応するアミノ酸と類似の構造的又は化学的性質を有する保存的アミノ酸置換であることが好ましい。一例として、保存的アミノ酸置換は、ある脂肪族又は疎水性のアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、及びイソロイシン)の別の脂肪族又は疎水性のアミノ酸による置換;あるヒドロキシル含有アミノ酸(例えば、セリン及びトレオニン)の別のヒドロキシル含有アミノ酸による置換;ある酸性残基(例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸)の別の酸性残基による置換;あるアミド含有残基(例えば、アスパラギン及びグルタミン)の別のアミド含有残基による置換;ある芳香族残基(例えば、フェニルアラニン及びチロシン)の別の芳香族残基による置換;ある塩基性残基(例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジン)の別の塩基性残基による置換;並びにある小アミノ酸(例えば、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、及びグリシン)の別の小アミノ酸による置換を含む。
【0034】
アミノ酸配列の挿入は、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドに及ぶ長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、アミノ酸配列のN又はC末端のレポーター分子又は酵素への融合が挙げられる。
【0035】
重要なことに、配列変異体における変化は、それぞれのレファレンス配列の機能、本願の場合、例えば、抗体又はその抗原結合断片の配列が同じエピトープに結合する及び/又はHBV及びHDVの感染を十分に中和する機能を消失させるものではない。かかる機能を消失させることなしにそれぞれどのヌクレオチド及びアミノ酸残基を置換、挿入、又は欠失させることができるかを決定するための指針は、当技術分野において周知のコンピュータプログラムを使用することによって見出すことができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、指定の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に「由来する」核酸配列又はアミノ酸配列は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の起源を指す。好ましくは、特定の配列に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、これらが由来する配列又はその一部と本質的に同一のアミノ酸配列を有し、「本質的に同一」とは、上に定義した配列変異体を含む。好ましくは、特定のペプチド又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、特定のペプチド又はタンパク質における対応するドメインに由来する。それに関して、「対応する」とは、特に、同じ機能に言及する。例えば、「細胞外ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「細胞外ドメイン」に対応する、又は「膜貫通ドメイン」は、(別のタンパク質の)別の「膜貫通ドメイン」に対応する。したがって、ペプチド、タンパク質、及び核酸の「対応する」部分は、当業者によって容易に同定可能である。同様に、他の配列に「由来する」配列は、通常、前記配列中にその起源を有することが当業者によって容易に同定可能である。
【0037】
好ましくは、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質と同一であり得る。しかし、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に対して1以上の突然変異を有していてもよく、具体的には、別の核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に由来する核酸配列又はアミノ酸配列は、(それが由来する)出発核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の上記機能性配列変異体であってよい。例えば、ペプチド/タンパク質において、1以上のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換してもよく、1以上のアミノ酸残基の挿入又は欠失が生じていてもよい。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「突然変異」は、レファレンス配列、例えば、対応するゲノム配列と比較した、核酸配列及び/又はアミノ酸配列の変化に関する。例えばゲノム配列と比較した突然変異は、(自然界に存在する)体細胞突然変異、自然突然変異、例えば、酵素、化学物質、若しくは放射線によって誘導される誘導突然変異、又は部位特異的突然変異誘発(核酸配列及び/又はアミノ酸配列を特異的且つ故意に変化させるための分子生物学的方法)によって得られる突然変異であってよい。したがって、用語「突然変異」又は「突然変異する」とは、例えば、核酸配列及び/又はアミノ酸配列において突然変異を物理的に作製することも含むと理解されるものとする。突然変異は、1以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、及び挿入に加えて、幾つかの連続するヌクレオチド又はアミノ酸の逆位も含む。アミノ酸配列に突然変異を生じさせるために、好ましくは、(組み換え)突然変異型ポリペプチドを発現させるために、前記アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列に突然変異を導入してよい。突然変異は、例えば、あるアミノ酸をコードしている核酸分子のコドンを、例えば部位特異的突然変異誘発によって、変化させて異なるアミノ酸をコードしているコドンを生じさせることにより、又は核酸分子の1以上のヌクレオチドを突然変異させる必要無しに、ポリペプチドをコードしている核酸分子のヌクレオチド配列を理解し、ポリペプチドの変異体をコードしているヌクレオチド配列を含む核酸分子の合成を設計することによって、配列変異体を合成することにより行ってよい。
【0039】
本発明は、数ある知見の中でも、B型肝炎ウイルス及びデルタ型肝炎ウイルスの中和において非常に強力な抗体、及び本発明の抗体が結合するエピトープの発見及び単離に基づいている。かかる抗体は、B型肝炎ウイルスを中和するためにほんの少量の抗体しか必要としないので、望ましい。更に、現在D型肝炎に利用可能な治療法は存在しない。本発明に係る抗体は、HBV及びHDVの予防及び治療又は軽減において非常に有効である。更に、本発明に係る抗体は、B型肝炎ウイルス表面抗原の様々な(好ましくは全ての公知の)遺伝子型及びB型肝炎ウイルス表面抗原の様々な(好ましくは全ての公知の)感染性突然変異体に結合する。
【0040】
抗体及びその抗原結合断片
本発明の第1の態様では、HBsAgの抗原性ループ領域に結合し、B型肝炎ウイルス及びデルタ型肝炎ウイルスの感染を中和する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、本発明に係る特徴的な性質が保持されている限り、抗体全体、抗体断片、具体的には、抗原結合断片、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、組み換え抗体、及び遺伝子操作された抗体(変異体又は突然変異抗体)を含むがこれらに限定されない様々な形態の抗体を包含する。ヒト抗体及びモノクローナル抗体が好ましく、ヒトモノクローナル抗体、具体的には、組み換えヒトモノクローナル抗体が特に好ましい。
【0042】
ヒト抗体は、当技術分野において周知である(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。ヒト抗体は、免疫時に、内因性免疫グロブリンが産生されていなくてもヒト抗体の完全レパートリー又はセレクションを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)においても産生され得る。かかる生殖系列突然変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移植すると、抗原チャレンジ時にヒト抗体が産生される(例えば、Jakobovits,A.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)2551-2555;Jakobovits,A.,et al.,Nature 362(1993)255-258;Bruggemann,M.,et al.,Year Immunol.7(1993)3340を参照)。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリでも産生され得る(Hoogenboom,H.R.,and Winter,G.,J.Mol.Biol.227(1992)381-388;Marks,J.D.,et al.,J.Mol.Biol.222(1991)581-597)。Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);及びBoerner,P.,et al.,J.Immunol.147(1991)86-95)。好ましくは、ヒトモノクローナル抗体は、Traggiai E,Becker S,Subbarao K,Kolesnikova L,Uematsu Y,Gismondo MR,Murphy BR,Rappuoli R,Lanzavecchia A.(2004):An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells:potent neutralization of SARS coronavirus.Nat Med.10(8):871-5に記載の通り、改善されたEBV-B細胞の不死化を使用することによって調製される。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、本明細書に記載されている本発明に係る性質を生じさせるために、例えば可変領域が改変されたかかる抗体も含む。本明細書で使用するとき、用語「可変領域」(軽鎖(VL)の可変領域、重鎖(VH)の可変領域)は、抗体の抗原に対する結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の各対を意味する。
【0043】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgM、即ち、α、γ、又はμ重鎖)であってよいが、好ましくは、IgGである。IgGアイソタイプの中でも、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のサブクラスであってよく、IgG1が好ましい。本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖を有していてよい。IgG型のHBsAg特異的抗体は、有利なことに、FcRN-IgG受容体を介したIgGの肝細胞への抗原非依存性取り込みに基づいて、感染細胞からHBV及びHBsAgが放出されるのをブロックすることもできる。したがって、IgG型のHBsAg特異的抗体は、細胞内で結合することができ、それによって、HBVビリオン及びHBsAGの放出をブロックする。
【0044】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、精製抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvである。
【0045】
したがって、本発明の抗体は、好ましくは、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、組み換え抗体、又は精製抗体であってよい。また、本発明は、本発明の抗体の断片、特に、前記抗体の抗原結合活性を保持している断片を提供する。かかる断片としては、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvを含むが、これらに限定されない。特許請求の範囲を含む明細書は、一部の箇所では、抗体の抗原結合断片、抗体断片、変異体、及び/又は誘導体に明示的に言及するが、用語「抗体」又は「本発明の抗体」は、抗体の全てのカテゴリー、即ち、抗体の抗原結合断片、抗体断片、変異体、及び誘導体を含むことが理解される。
【0046】
本発明の抗体の断片は、酵素、例えばペプシン若しくはパパインによる切断を含む方法によって、及び/又は化学還元によりジスルフィド結合を切断することによって前記抗体から得ることができる。或いは、抗体の断片は、重鎖又は軽鎖の配列の一部のクローニング及び発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvを含む。また、重鎖又は軽鎖の単量体及び二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体に加えて、単鎖抗体、例えば、重鎖及び軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーによって結合している単鎖Fvも含まれる。
【0047】
本発明の抗体断片は、一価又は多価相互作用を付与し得、上記様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子を合成して、三価「トリアボディ」又は四価「テトラボディ」を作製することができる。scFv分子は、Fc領域のドメインを含んでいてよく、その結果、二価ミニボディが生じる。更に、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的に結合する多重特異的分子の成分であってよい。例示的な分子としては、二重特異的Fab2、三重特異的Fab3、二重特異的scFv、及びダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 9:1126-1136)。
【0048】
本発明に係る抗体は、精製形態で提供されてもよい。典型的には、抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物、例えば、前記組成物の90(重量)%未満、通常60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成される組成物中に存在する。
【0049】
本発明に係る抗体は、ヒト及び/又は非ヒト(又は異種)宿主、例えば、マウスにおいて免疫原性であり得る。例えば、前記抗体は、非ヒト宿主では免疫原性であるが、ヒト宿主では免疫原性でないイディオトープを有し得る。ヒトで使用するための本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳類等の宿主から容易には単離することができず、且つ一般的にヒト化によって又はゼノマウスから入手することができないものを含む。
【0050】
本発明に係る抗体及びその抗原結合断片は、HBsAgの抗原性ループ領域に結合する。B型肝炎ウイルスのエンベロープは、3つの「HBV」エンベロープタンパク質」(「HBsAg」、「B型肝炎表面抗原」としても知られている):Sタンパク質(「小さい」場合、S-HBsAgとも称される)、Mタンパク質(「中程度」の場合、M-HBsAgとも称される)、及びLタンパク質(「大きい」場合、L-HBsAgとも称される)を含有する。S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgは、同じC末端(「Sドメイン」とも称される、226アミノ酸)を共有しており、これは、Sタンパク質(S-HBsAg)に対応し、ウイルスの構築及び感染力にとって重要である。S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgは、小胞体(ER)で合成され、構築され、ゴルジ装置を通って粒子として分泌される。Sドメインは、4つの予測膜貫通(TM)ドメインを含み、それによって、SドメインのN末端及びC末端の両方が内腔に露出される。膜貫通ドメインTM1及びTM2は、いずれも、同時翻訳されるタンパク質をER膜に組み込むのに必要であり、膜貫通ドメインTM3及びTM4は、SドメインのC末端側の3分の1に位置する。HBsAgの「抗原性ループ領域」は、HBsAgのSドメインの予測TM3及びTM4膜貫通ドメイン間に位置し、前記抗原性ループ領域は、合計226アミノ酸を含有するSドメインのアミノ酸101~172を含む(Salisse J.and Sureau C.,2009,Journal of Virology 83:9321-9328)。感染力の決定因子がHBVエンベロープタンパク質の抗原性ループ領域に存在することに留意することが重要である。具体的には、HBsAgの119~125の残基は、CXXCモチーフを含有しており、これは、HBV及びHDVの感染力に必要な最も重要な配列であることが証明されている(Jaoude GA,Sureau C,Journal of Virology,2005;79:10460-6)。
【0051】
本明細書においてHBsAgのSドメインのアミノ酸配列における位置に言及するとき、配列番号3(以下に示す)に記載のアミノ酸配列又はその天然若しくは人工の配列変異体に言及する。
【表1】
【0052】
例えば、「Sドメインのアミノ酸101~172」という表現は、配列番号3に係るポリペプチドの101位~172位のアミノ酸残基を指す。しかし、当業者は、突然変異又は変異(置換、欠失、及び/又は付加を含むが、これらに限定されない、例えば、異なる遺伝子型のHBsA又は本明細書に記載される異なるHBsAg突然変異体)が、HBsAgのSドメインのアミノ酸配列に天然に生じる場合もあり、その生物学的性質に影響を与えることなしにHBsAgのSドメインのアミノ酸配列に人工的に導入される場合もあることを理解する。したがって、本発明では、用語「HBsAgのSドメイン」は、例えば、配列番号3に係るポリペプチド及びその天然又は人工の突然変異体を含む、全てのかかるポリペプチドを含むことを意図する。更に、HBsAgのSドメインの配列断片が本明細書に記載されるとき(例えば、HBsAgのSドメインのアミノ酸101~172又はアミノ酸120~130)、配列番号3の対応する配列断片だけでなく、その天然又は人工の突然変異体の対応する配列断片も含む。例えば、「HBsAgのSドメインの101位~172位のアミノ酸残基」という表現は、配列番号3の101位~172位のアミノ酸残基及びその突然変異体(天然又は人工の突然変異体)の対応する断片を含む。本発明によれば、「対応する配列断片」又は「対応する断片」という表現は、配列を最適化アラインメントに付したとき、即ち、最も高い同一性率が得られるように配列のアラインメントをとったとき、配列の同じ位置に配置される断片を指す。
【0053】
Mタンパク質(M-HBsAg)は、「pre-S2」と呼ばれる55アミノ酸のN末端ドメインによって伸長されたSタンパク質に対応する。Lタンパク質(L-HBsAg)は、「pre-S1」と呼ばれる108アミノ酸のN末端ドメインによって伸長されたMタンパク質に対応する(遺伝子型D)。Lタンパク質のpre-S1及びpre-S2ドメインは、ウイルス粒子の内面(ERの細胞質側)(ウイルス構築において重要な役割を果たす)又は外面(ERの内腔側)(標的細胞との相互作用に利用可能であり且つウイルスの感染力に必須である)のいずれに存在していてもよい。更に、HBV表面タンパク質(HBsAg)は、ビリオンエンベロープに組み込まれるだけでなく、ER-ゴルジ中間コンパートメント膜から自発的に出芽して、分泌によって細胞から放出される空の「サブウイルス粒子」(SVP)を形成する。
【0054】
3つのHBVエンベロープタンパク質S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgは全てSドメインを含むので、3つのHBVエンベロープタンパク質S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgは全て「抗原性ループ領域」も含む。したがって、HBVを中和し、HBsAgの抗原性ループ領域に結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、3つのHBVエンベロープタンパク質S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAg全てに結合する。
【0055】
更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、B型肝炎ウイルス及びデルタ型肝炎ウイルスによる感染を中和する。言い換えれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、B型肝炎ウイルス及びデルタ型肝炎ウイルスのウイルス感染力を低下させる。
【0056】
検査室でウイルス感染力(又は「中和」)を試験及び定量するために、当業者は、様々な標準的な「中和アッセイ」について理解している。中和アッセイでは、典型的には、動物ウイルスを細胞及び/又は細胞株において増殖させる。本発明においては、試験される抗体の存在(又は非存在)下で一定量のHBV又はHDVと共に培養細胞をインキュベートする中和アッセイが好ましい。読み出し情報として、細胞培養上清に分泌されるB型肝炎表面抗原(HBsAg)又はB型肝炎e抗原(HBeAg)のレベルを使用し得る及び/又はHBcAg染色をアッセイし得る。HDVについては、例えば、デルタ抗原免疫蛍光染色をアッセイしてよい。
【0057】
HBV中和アッセイの好ましい実施形態では、培養細胞、例えばHepaRG細胞、具体的には分化したHepaRG細胞を、例えば37℃で16時間、試験される抗体の存在又は非存在下で一定量のHBVと共にインキュベートする。このインキュベートは、好ましくは、(例えば、4% PEG8000を添加した)培地中で実施される。インキュベート後、細胞を洗浄し、更に培養してよい。ウイルス感染力を測定するために、例えば、感染後7日目~11日目に培養上清に分泌されるB型肝炎表面抗原(HBsAg)及びB型肝炎e抗原(HBeAg)のレベルを、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定してよい。更に、HBcAg染色を免疫蛍光アッセイで評価してよい。HDV中和アッセイの好ましい実施形態では、(HBVの代わりに)HDVキャリア由来の血清を、分化したHepaRg細胞へのHDV感染接種材料として用いてよいことを除いてHBVと本質的に同一のアッセイを使用してよい。検出については、デルタ抗原免疫蛍光染色を読み出し情報として使用してよい。
【0058】
本発明の抗体及び抗原結合断片は、高い中和能を有する。B型肝炎ウイルス(HBV)及びデルタ型肝炎ウイルス(HDV)を50%中和するのに必要な本発明の抗体の濃度は、例えば、約10μg/mL以下である。好ましくは、HBV及びHDVを50%中和するのに必要な本発明の抗体の濃度は、約5μg/mLであり、より好ましくは、HBV及びHDVを50%中和するのに必要な本発明の抗体の濃度は、約1μg/mLであり、更により好ましくは、HBV及びHDVを50%中和するのに必要な本発明の抗体の濃度は、約750ng/mLである。最も好ましくは、HBV及びHDVを50%中和するのに必要な本発明の抗体の濃度は、500ng/mL以下、例えば、450ng/mL以下、400ng/mL以下、350ng/mL以下、300ng/mL以下、250ng/mL以下、200ng/mL以下、175ng/mL以下、150ng/mL以下、125ng/mL以下、100ng/mL以下、90ng/mL以下、80ng/mL以下、70ng/mL以下、60ng/mL以下、又は約50ng/mL以下である。これは、HBV及びHDVを50%中和するのに低濃度の抗体しか必要としないことを意味する。特異性及び効力は、当業者に公知の標準的なアッセイを用いて測定することができる。
【0059】
HBD及びHDVの両方を強力に中和する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、B型肝炎及びD型肝炎の予防及び治療において有用である。この状況では、HDVによる感染は、典型的には、HBVの感染と同時に又はHBVの感染後に生じ(HDVは自身の複製のためにHBVの支援を必要とするので、HBVの非存在下でHDVを接種してもD型肝炎を引き起こさない)、D型肝炎は、典型的には、慢性HBVキャリアでみられることに留意すべきである。
【0060】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAg及びHBVのクリアランスを促進する。具体的には、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBV及びB型肝炎ウイルスのサブウイルス粒子(SVP)の両方のクリアランスを促進する。HBsAg又はサブウイルス粒子のクリアランスは、例えばB型肝炎患者由来の血液サンプル中のHBsAgレベルを測定することによって評価することができる。同様に、HBVのクリアランスは、例えばB型肝炎患者由来の血液サンプル中のHBVレベルを測定することによって評価することができる。
【0061】
HBVに感染した患者の血清中には、感染粒子(HBV)に加えて、典型的には、比較的小さな球形及び可変長のフィラメントの形態のHBVエンベロープタンパク質(HBsAg)のみで構成される空のサブウイルス粒子(SVP)が過剰に(典型的には、1,000倍~100,000倍)存在する。サブウイルス粒子は、HBVの細胞内ウイルス複製及び遺伝子発現を強く増強することが示されている(Bruns M.et al.1998 J Virol 72(2):1462-1468)。感染力はウイルスの数だけではなくSVPの数にも依存するので、HBVを含有する血清の感染力においてもこれは重要である(Bruns M.et al.1998 J Virol 72(2):1462-1468)。更に、過剰のサブウイルス粒子は、中和抗体を吸収することによってデコイとして機能し得るので、感染のクリアランスを遅延させ得る。したがって、典型的には、B型肝炎表面抗原(HBsAg)を喪失させることは、治療の理想のエンドポイントであり、慢性B型肝炎(CHB)の治癒に最も近い転帰であると考えられる。
【0062】
したがって、好ましくはHBsAgのクリアランス、具体的には、B型肝炎ウイルスのサブウイルス粒子及びHBVのクリアランスを促進する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、特に慢性B型肝炎の状況において、B型肝炎の治療を改善することができる。したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、デコイとして作用するSVPによって吸収される抗体が少ないので、その中和特性を更により強力に発揮させることができる。更に、好ましくはB型肝炎ウイルスのサブウイルス粒子のクリアランスを促進する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBVを含有する血清の感染力を低下させる。
【0063】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc部分を含む。より好ましくは、Fc部分は、ヒト起源、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4に由来し、ヒトIgG1が特に好ましい。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「Fc部分」とは、パパイン切断部位の直ぐ上流のヒンジ領域(例えば、重鎖定常領域の最初の残基が114であるとすると、ネイティブIgGにおける残基216)で始まり、免疫グロブリン重鎖のC末端で終わる免疫グロブリン重鎖の部分に由来する配列を指す。したがって、Fc部分は、完全Fc部分又はその一部(例えば、ドメイン)であってよい。完全Fc部分は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン(例えば、EUアミノ酸位置216~446)を少なくとも含む。時に、追加のリジン残基(K)がFc部分のC末端に存在するが、多くの場合、成熟抗体から切断される。Fc部分内のアミノ酸位置には、それぞれ、当技術分野において認識されているKabatのEU付番システムに従って番号が振られている。例えば、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,U.S.Dept.Health and Human Services,1983 and 1987を参照。
【0065】
好ましくは、本発明において、Fc部分は、ヒンジ(例えば、上方、中央、及び/又は下方ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はこれらの変異体、一部、若しくは断片のうちの少なくとも1つを含む。好ましい実施形態では、Fc部分は、ヒンジドメイン、CH2ドメイン又はCH3ドメインを少なくとも含む。より好ましくは、Fc部分は、完全Fc部分である。また、Fc部分は、天然Fc部分に対して1以上のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を含んでいてもよい。例えば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、又はCH3ドメイン(又はこれらの一部)のうちの少なくとも1つが欠失していてもよい。例えば、Fc部分は、(i)CH2ドメイン(又はその一部)に融合しているヒンジドメイン(又はその一部)、(ii)CH3ドメイン(又はその一部)に融合しているヒンジドメイン(又はその一部)、(iii)CH3ドメイン(又はその一部)に融合しているCH2ドメイン(又はその一部)、(iv)ヒンジドメイン(又はその一部)、(v)CH2ドメイン(又はその一部)、又は(vi)CH3ドメイン又はその一部を含んでいてもよく、これらからなっていてもよい。
【0066】
天然Fc部分によって付与される少なくとも1つの望ましい機能を保持しながら、天然免疫グロブリン分子の完全Fc部分とアミノ酸配列が異なるようにFc部分を改変し得ることを当業者であれば理解するであろう。かかる機能としては、Fc受容体(FcR)の結合、抗体の半減期の変更、ADCC機能、プロテインAの結合、プロテインGの結合、及び補体の結合が挙げられる。天然Fc部分のどこがかかる機能に関与する及び/又は必須であるかは、当業者に周知である。
【0067】
例えば、補体カスケードを活性化するために、C1qは、抗原性標的に結合している少なくとも2分子のIgG1又は1分子のIgMに結合する(Ward,E.S.,and Ghetie,V.,Ther.Immunol.2(1995)77-94)。Burton,D.R.は、アミノ酸残基318~337を含む重鎖領域が補体結合に関与していると記載している(Mol.Immunol.22(1985)161-206)。Duncan,A.R.及びWinter,G.(Nature 332(1988)738-740)は、部位特異的突然変異誘発を使用して、Glu318、Lys320、及びLys322がC1qに対する結合部位を形成すると報告した。C1qの結合におけるGlu318、Lys320、及びLys322残基の役割は、これら残基を含有する短い合成ペプチドが補体媒介性溶解を阻害する能力によって確認された。
【0068】
例えば、FcR結合は、造血細胞における特殊な細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)と(抗体の)Fc部分との相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、抗体でコーティングされた病原体の免疫複合体の食作用による除去と、抗体依存性細胞媒介細胞傷害作用(ADCC;Van de Winkel,J.G.,and Anderson,C.L.,J.Leukoc.Biol.49(1991)511-524)を介する、対応する抗体でコーティングされた赤血球及び様々な他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解とを両方媒介することが示されている。FcRは、免疫グロブリンクラスに対する特異性によって定義される;IgG抗体に対するFc受容体はFcγRと称され、IgEの場合はFcεRと称され、IgAの場合はFcαRと称され、新生児Fc受容体はFcRnと称される。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch,J.V.,and Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492;Capel,P.J.,et al.,Immunomethods 4(1994)25-34;de Haas,M.,et al.,J Lab.Clin.Med.126(1995)330-341;及びGessner,J.E.,et al.,Ann.Hematol.76(1998)231-248に記載されている。
【0069】
ネイティブIgG抗体のFcドメイン(FcγR)による受容体の架橋は、食作用、抗体依存性細胞傷害作用、及び炎症メディエータの放出を含む広範なエフェクタ機能に加えて、免疫複合体のクリアランス及び抗体産生の調節も誘発する。したがって、受容体の架橋を提供するFc部分(FcγR)が好ましい。ヒトでは、3つのクラスのFcγRが特徴付けられている。即ち、(i)高い親和性で単量体IgGに結合し、マクロファージ、単球、好中球、及び好酸球で発現するFcγRI(CD64);(ii)中~低親和性で複合体化IgGに結合し、広く、特に白血球で発現し、抗体媒介性免疫において中心的な役割を果たすことが知られており、FcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIICに分類することができ、免疫系において様々な機能を発揮するが、同様の低親和性でIgG-Fcに結合し、これら受容体のエクトドメインが高度に相同であるFcγRII(CD32);並びに(iii)中~低親和性でIgGに結合し、NK細胞、マクロファージ、好酸球、及び幾つかの単球、並びにT細胞でみられ、ADCCを媒介するFcγRIIIA及び好中球で高度に発現するFcγRIIIBの2つのタイプとして存在するFcγRIII(CD16)である。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)でみられ、殺傷プロセスを活性化することができると考えられる。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすと考えられ、B細胞、マクロファージ、並びに肥満細胞及び好酸球でみられる。重要なことに、全てのFcγRIIBのうちの75%が肝臓でみられる(Ganesan,L.P.et al.,2012:FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes.Journal of Immunology 189:4981-4988)。FcγRIIBは、LSECと呼ばれる肝臓洞様血管内皮及び肝臓のクッパー細胞で多量に発現し、LSECは、小免疫複合体のクリアランスの主な部位である(Ganesan,L.P.et al.,2012:FcγRIIb on liver sinusoidal endothelium clears small immune complexes.Journal of Immunology 189:4981-4988)。
【0070】
したがって、本発明では、FcγRIIbに結合することができるかかる抗体及びその抗原結合断片、例えば、FcγRIIbに結合するためのFc部分、特にFc領域を含む抗体、例えば、IgG型抗体が好ましい。更に、Chu,S.Y.et al.,2008:Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies.Molecular Immunology 45,3926-3933によって記載されている通り、突然変異S267E及びL328Fを導入することによってFc部分を改変してFcγRIIBの結合を強化することが可能である。それによって、免疫複合体のクリアランスを強化することができる(Chu,S.,et al.,2014:Accelerated Clearance of IgE In Chimpanzees Is Mediated By Xmab7195,An Fc-Engineered Antibody With Enhanced Affinity For Inhibitory Receptor FcγRIIb.Am J Respir Crit,American Thoracic Society International Conference Abstracts)。したがって、本発明では、特にChu,S.Y.et al.,2008:Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies.Molecular Immunology 45,3926-3933に記載されている通り、突然変異S267E及びL328Fを有する改変されたFc部分を含む係る抗体又はその抗原結合断片が好ましい。
【0071】
B細胞では、更なる免疫グロブリン産生及び例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチを抑制する機能を有すると考えられる。マクロファージでは、FcγRIIBは、FcγRIIAを介して媒介されたとき食作用を阻害する作用を有する。好酸球及び肥満細胞では、b形態は、IgEのその別個の受容体への結合を通してこれら細胞の活性化を抑制するのに役立ち得る。
【0072】
FcγRI結合に関しては、ネイティブIgGにおけるE233~G236、P238、D265、N297、A327、及びP329のうちの少なくとも1つを改変すると、FcγRIへの結合が減少する。233位~236位におけるIgG2残基をIgG1及びIgG4に置換すると、FcγRIへの結合が103倍減少し、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答が排除された(Armour,K.L.,et al.Eur.J.Immunol.29(1999)2613-2624)。FcγRII結合に関しては、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、及びK414のうちの少なくとも1つのIgG突然変異について、FcγRIIAの結合減少がみられる。FcγRIII結合に関しては、例えば、E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、及びD376のうちの少なくとも1つの突然変異について、FcγRIIIAへの結合減少がみられる。Fc受容体についてのヒトIgG1における結合部位のマッピング、上述の突然変異部位、並びにFcγIR及びFcγRIIAに対する結合を測定する方法は、Shields,R.L.,et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604に記載されている。
【0073】
重要なFcγRIIに対する結合に関しては、ネイティブIgG Fcの2つの領域、即ち、(i)IgG Fcの下方ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU付番)、及び(ii)IgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、下方ヒンジ領域に隣接する上方CH2ドメイン、例えば、P331の領域におけるループ及び鎖は、FcγRII及びIgGの相互作用にとって重要であると考えられる(Wines,B.D.,et al.,J.Immunol.2000;164:5313-5318)。更に、FcγRIは、IgG Fcにおける同じ部位に結合すると考えられ、一方、FcRn及びプロテインAは、IgG Fcにおける異なる部位(CH2-CH3界面であると考えられる)に結合する(Wines,B.D.,et al.,J.Immunol.2000;164:5313-5318)。
【0074】
例えば、Fc部分は、FcRnの結合又は半減期の延長に必要であることが当技術分野において公知であるFc部分の部分を少なくとも含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。それに代えて又はそれに加えて、本発明の抗体のFc部分は、プロテインAの結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む、及び/又は本発明の抗体のFc部分は、プロテインGの結合に必要であることが当技術分野において公知であるFcc分子の一部を少なくとも含む。好ましくは、保持される機能は、HBsAg及びHBVのクリアランスであり、これはFcγRの結合によって媒介されると考えられる。したがって、好ましいFc部分は、FcγRの結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む。したがって、上に概説した通り、好ましいFc部分は、(i)ネイティブIgG Fcの下方ヒンジ部位、特に、アミノ酸残基L、L、G、G(234~237、EU付番)、及び(ii)ネイティブIgG FcのCH2ドメインの隣接領域、特に、下方ヒンジ領域に隣接する上方CH2ドメイン、例えばP331の領域、例えば、ネイティブIgG Fcのアミノ酸320~340(EU付番)等のP331周辺のネイティブIgG Fcの上方CH2ドメインにおける少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の連続するアミノ酸の領域におけるループ及び鎖を少なくとも含み得る。
【0075】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、Fc領域を含む。本明細書で使用するとき、用語「Fc領域」とは、抗体重鎖の2以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの部分を指す。例えば、Fc領域は、単量体又は「単鎖」Fc領域(即ち、scFc領域)であってよい。単鎖Fc領域は、(例えば、単一の連続する核酸配列にコードされている)単一のポリペプチド鎖内で結合しているFc部分で構成される。例示的なscFc領域は、国際公開第2008/143954 A2号に開示されている。好ましくは、Fc領域は、二量体Fc領域である。「二量体Fc領域」又は「dcFc」は、2つの別個の免疫グロブリン重鎖のFc部分によって形成される二量体を指す。二量体Fc領域は、2つの同一のFc部分のホモ二量体(例えば、天然免疫グロブリンのFc領域)又は2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であってよい。
【0076】
Fc領域のFc部分は、同じ又は異なるクラス及び/又はサブクラスであってよい。例えば、Fc部分は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラスの免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)に由来していてよい。好ましくは、Fc領域のFc部分は、同じクラス及びサブクラスである。しかし、Fc領域(又はFc領域の1以上のFc部分)はキメラであってもよく、キメラFc領域は、異なる免疫グロブリンクラス及び/又はサブクラスに由来するFc部分を含み得る。例えば、二量体又は単鎖Fc領域のFc部分のうちの少なくとも2つは、異なる免疫グロブリンクラス及び/又はサブクラスに由来していてよい。それに加えて又はそれに代えて、キメラFc領域は、1以上のキメラFc部分を含み得る。例えば、キメラFc領域又は部分は、第1のサブクラスの免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来する1以上の部分を含み得るが、一方、Fc領域又は部分の残りは、異なるサブクラスである。例えば、FcポリペプチドのFc領域又は部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するCH2及び/又はCH3ドメインと、第2のサブクラス(例えば、IgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するヒンジ領域とを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するヒンジ及び/又はCH2ドメインと、第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、キメラFc領域は、第1のサブクラス(例えば、IgG4サブクラス)の免疫グロブリンに由来するFc部分(例えば、完全Fc部分)と、第2のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG3サブクラス)の免疫グロブリンに由来するFc部分とを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4免疫グロブリンに由来するCH2ドメインと、IgG1免疫グロブリンに由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4分子に由来するCH1ドメイン及びCH2ドメインと、IgG1分子に由来するCH3ドメインとを含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、抗体の特定のサブクラスに由来するCH2ドメインの一部、例えば、CH2ドメインのEU292位~340位を含み得る。例えば、Fc領域又は部分は、IgG4部分に由来するCH2の292位~340位のアミノ酸とIgG1部分に由来するCH2の残りとを含み得る(或いは、CH2の292~340は、IgG1部分に由来し、CH2の残りはIgG4部分に由来していてもよい)。
【0077】
更に、Fc領域又は部分は、(それに加えて又はそれに代えて)例えば、キメラヒンジ領域を含み得る。例えば、キメラヒンジは、例えば、一部はIgG1、IgG2、又はIgG4分子(例えば、上方及び下方の中央ヒンジ配列)に由来し得、一部はIgG3分子(例えば、中央ヒンジ配列)に由来し得る。別の例では、Fc領域又は部分は、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。別の例では、キメラヒンジは、IgG4分子由来の上方及び下方ヒンジドメインと、IgG1分子由来の中央ヒンジドメインとを含み得る。かかるキメラヒンジは、例えば、IgG4ヒンジ領域の中央ヒンジドメインにおけるEU228位にプロリン置換(Ser228Pro)を導入することによって作製され得る。別の実施形態では、キメラヒンジは、IgG2抗体に由来するEU233位~236位のアミノ酸及び/又はSer228Pro突然変異を含み得、この場合、ヒンジの残りのアミノ酸は、IgG4抗体由来である(例えば、配列ESKYGPPCPPCPAPPVAGPのキメラヒンジ)。更に、本発明に係る抗体のFc部分において用いることができるキメラヒンジは、米国特許出願第2005/0163783 A1号に記載されている。
【0078】
本発明では、Fc部分又はFc領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するアミノ酸配列(例えば、ヒトIgG分子由来のFc領域又はFc部分)を含むか又はからなることが好ましい。しかし、ポリペプチドは、別の哺乳類種由来の1以上のアミノ酸を含み得る。例えば、霊長類Fc部分又は霊長類結合部位が被験体ポリペプチドに含まれていてもよい。或いは、1以上のマウスアミノ酸がFc部分又はFc領域に存在していてもよい。
【0079】
好ましくは、本発明に係る抗体は、特に上記Fc部分に加えて、定常領域、特にIgGの定常領域、好ましくはIgG1の定常領域、より好ましくはヒトIgG1の定常領域に由来する他の部分を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体は、特に上記Fc部分に加えて、定常領域の他の部分全て、特にIgGの定常領域の他の部分全て、好ましくはIgG1の定常領域の他の部分全て、より好ましくはヒトIgG1の定常領域の他の部分全てを含む。
【0080】
上に概説した通り、本発明に係る特に好ましい抗体は、ヒトIgG1に由来する(完全)Fc領域を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体は、特にヒトIgG1に由来する(完全)Fc領域に加えて、IgGの定常領域の他の部分全て、好ましくは、IgG1の定常領域の他の部分全て、より好ましくはヒトIgG1の定常領域の他の部分全ても含む。
【0081】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が、HBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個に結合することも好ましい。HBsAgの様々な遺伝子型の例としては、以下が挙げられる:GenBankアクセッション番号J02203(HBV-D、ayw3)、GenBankアクセッション番号FJ899792.1(HBV-D、adw2)、GenBankアクセッション番号AM282986(HBV-A)、GenBankアクセッション番号D23678(HBV-B1 Japan)、GenBankアクセッション番号AB117758(HBV-C1 Cambodia)、GenBankアクセッション番号AB205192(HBV-E Ghana)、GenBankアクセッション番号X69798(HBV-F4 Brazil)、GenBankアクセッション番号AF160501(HBV-G USA)、GenBankアクセッション番号AY090454(HBV-H Nicaragua)、GenBankアクセッション番号AF241409(HBV-I Vietnam)、及びGenBankアクセッション番号AB486012(HBV-J Borneo)。様々な遺伝子型のHBsAgのSドメインの抗原性ループ領域のアミノ酸配列を表1(配列番号5~15)に示す。
【0082】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJのうちの少なくとも6種、更により好ましくは少なくとも8種、特に好ましくは10種全てに結合する。HBVは、ゲノム配列に従って多くの遺伝子型に分化する。今日まで、HBVゲノムの8種の周知の遺伝子型(A~H)が定義されている。更に、2種の新規遺伝子型I及びJも同定された(Sunbul M.,2014,World J Gastroenterol 20(18):5427-5434)。遺伝子型は、疾患の進行に影響を与えることが知られており、抗ウイルス治療に応答する遺伝子型間の差異が決定されている。例えば、遺伝子型Aは慢性化の傾向があり、一方、遺伝子型Cではウイルスの突然変異が頻繁に生じる。遺伝子型Dでは、慢性化及び突然変異の頻発の両方が一般的である。更に、HBVの遺伝子型は、世界中で異なった分布を有する(Sunbul M.,2014,World J Gastroenterol 20(18):5427-5434)。好ましくはHBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJのうちの少なくとも6種、好ましくは少なくとも8種、より好ましくは10種全てに結合する本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を提供することによって、様々な遺伝子型に対して非常に広く結合する抗体が提供される。
【0083】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、抗原性ループ領域に突然変異を有するHBsAg突然変異体:HBsAg Y100C/P120T、HBsAg P120T、HBsAg P120T/S143L、HBsAg C121S、HBsAg R122D、HBsAg R122I、HBsAg T123N、HBsAg Q129H、HBsAg Q129L、HBsAg M133H、HBsAg M133L、HBsAg M133T、HBsAg K141E、HBsAg P142S、HBsAg S143K、HBsAg D144A、HBsAg G145R、及びHBsAg N146Aのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、又は18個に結合する。これら突然変異体は、HBsAg遺伝子型DのSドメインに基づく天然突然変異体、Genbankアクセッション番号FJ899792(配列番号4)であり、突然変異しているアミノ酸残基をその名称中に示す。
【表2】
【0084】
様々な突然変異体のHBsAgのSドメインの抗原性ループ領域のアミノ酸配列を表1に示す(配列番号16~33)。
【0085】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、抗原性ループ領域に突然変異を有する感染性HBsAg突然変異体:HBsAg Y100C/P120T、HBsAg P120T、HBsAg P120T/S143L、HBsAg C121S、HBsAg R122D、HBsAg R122I、HBsAg T123N、HBsAg Q129H、HBsAg Q129L、HBsAg M133H、HBsAg M133L、HBsAg M133T、HBsAg K141E、HBsAg P142S、HBsAg S143K、HBsAg D144A、HBsAg G145R、及びHBsAg N146Aのうちの少なくとも12種、更により好ましくは少なくとも15種、特に好ましくは18種全てに結合する。
【0086】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個のアミノ酸、更により好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸は、HBsAgのSドメインのアミノ酸115~133、好ましくはHBsAgのSドメインのアミノ酸120~133、より好ましくはHBsAgのSドメインのアミノ酸120~130から選択される。留意すべきことに、アミノ酸の位置(例えば、115~133、120~133、120~130)は、3つのHBVエンベロープタンパク質S-HBsAg、M-HBsAg、及びL-HBsAgの全てに存在する上記HBsAgのSドメインを指し、S-HBsAgは、典型的には、HBsAgのSドメインに対応する。
【0087】
特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgの抗原性ループ領域におけるエピトープに結合し、前記エピトープは、典型的には、HBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される、より好ましくは120位~130位のアミノ酸から選択される位置に位置する1以上のアミノ酸によって形成される。
【0088】
用語「によって形成される」とは、本明細書で使用するとき、エピトープに関して、本発明の抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープが線状であってもよく(連続)、立体構造をとってもよい(不連続)ことを意味する。線状、即ち連続エピトープは、そのアミノ酸の線状配列、即ち一次構造が抗体に認識されるエピトープである。対照的に、立体構造的エピトープは、特定の三次元形状及びタンパク質構造を有する。したがって、エピトープが線状エピトープであり且つHBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される位置に位置する1超のアミノ酸を含む場合、エピトープに含まれるアミノ酸は、典型的には、一次構造の隣接する位置に位置する(即ち、アミノ酸配列における連続するアミノ酸)。立体構造的エピトープ(3D構造)の場合、対照的に、アミノ酸配列は、典型的には、エピトープとして3D構造を形成するので、エピトープを形成するアミノ酸(又はエピトープ「に含まれる」アミノ酸)は、一次構造の隣接する位置に位置していてもよく、位置していなくてもよい(即ち、アミノ酸配列における連続するアミノ酸であってもなくてもよい)。
【0089】
好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープは、HBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される、より好ましくは120位~130位のアミノ酸から選択されるアミノ酸のみによって形成される。言い換えれば、本発明の抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープを形成するために、115位~133位、好ましくは120位~133位、より好ましくは120位~130位の外側に位置する(更なる)アミノ酸を必要としないことが好ましい。
【0090】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が結合するHBsAgの抗原性ループ領域におけるエピトープは、HBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される、より好ましくは120位~130位のアミノ酸から選択される位置に位置する2以上のアミノ酸によって形成される。より好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合断片が結合するHBsAgの抗原性ループ領域におけるエピトープは、HBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される、より好ましくは120位~130位のアミノ酸から選択される位置に位置する3以上のアミノ酸によって形成される。更により好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合断片が結合するHBsAgの抗原性ループ領域におけるエピトープは、HBsAgのSドメインの115位~133位のアミノ酸から選択される、好ましくは120位~133位のアミノ酸から選択される、より好ましくは120位~130位のアミノ酸から選択される位置に位置する4以上のアミノ酸によって形成される。言い換えれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgのSドメインのアミノ酸115~アミノ酸133、好ましくはHBsAgのSドメインのアミノ酸120~アミノ酸133、より好ましくはHBsAgのSドメインのアミノ酸120~アミノ酸130から選択されるHBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、更により好ましくは少なくとも4個のアミノ酸に結合することが好ましい。
【0091】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgの抗原性ループ領域のうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸は、HBsAgのSドメインのアミノ酸120~アミノ酸133、好ましくはアミノ酸120~130から選択され、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸は、隣接する位置に位置する(即ち、アミノ酸配列/一次構造における連続するアミノ酸である)。
【0092】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープは、好ましくは、立体構造的エピトープである。したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgの抗原性ループ領域の少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸を含むエピトープに結合し、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸は、HBsAgのSドメインのアミノ酸120~アミノ酸133、好ましくはアミノ酸120~130から選択され、前記少なくとも2個、好ましくは前記少なくとも3個、より好ましくは前記少なくとも4個のアミノ酸のうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個は(一次構造の)隣接する位置に位置しないことが好ましい。
【0093】
言い換えれば、(i)抗体が結合するアミノ酸(即ち、エピトープを形成するアミノ酸)のいずれも一次構造の隣接する位置に位置しないか、又は(ii)抗体が結合するアミノ酸(即ち、エピトープを形成するアミノ酸)の一部、例えば、2個若しくは3個は(一次構造の)隣接する位置に位置するが、抗体が結合するその他のアミノ酸(即ち、エピトープを形成するアミノ酸)は(一次構造の)隣接する位置に位置しない。
【0094】
一次構造の隣接する位置には位置していない、抗体が結合するアミノ酸(即ち、エピトープを形成するアミノ酸)は、典型的には、抗体が結合しない1以上のアミノ酸によって離間している。好ましくは、エピトープに含まれ且つ隣接する位置に位置していない少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のアミノ酸の間に少なくとも1個、より好ましくは少なくとも2個、更により好ましくは少なくとも3個、最も好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは少なくとも5個のアミノ酸が位置していてよい。
【0095】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBsAgのSドメインのアミノ酸P120、C121、R122、及びC124を少なくとも含むエピトープに結合する。より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号88:
【表3】
(式中、Xは、任意のアミノ酸であるか又はアミノ酸が存在せず;好ましくは、Xは、任意のアミノ酸であり、より好ましくは、Xは、T、Y、R、S、又はFであり;更により好ましくは、Xは、T、Y、又はRであり;最も好ましくは、Xは、T又はRである)
に係るアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。
【0096】
更により好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号80:
【表4】
に係るアミノ酸配列を含むエピトープ、又は配列番号80と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列に結合する。
【0097】
最も好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号85:
【表5】
に係るアミノ酸配列を含むエピトープ、又は配列番号85と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列に結合する。
【0098】
また、前記抗体又は前記抗原結合断片は、HBsAgのSドメインのアミノ酸145~151:
【表6】
を少なくとも含むアミノ酸配列を含むエピトープに結合することが好ましい。
【0099】
より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号80に係るアミノ酸配列及び配列番号81に係るアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。
【0100】
より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号85に係るアミノ酸配列及び/又は配列番号87に係るアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。
【0101】
上記の通り、本発明の抗体が結合するエピトープは、線状であってもよく(連続)、立体構造をとってもよい(不連続)。好ましくは、本発明の抗体及び抗体断片は、立体構造的エピトープに結合し、より好ましくは、立体構造的エピトープは、非還元条件下でのみ存在する。
【0102】
しかし、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、線状エピトープに結合することも好ましく、より好ましくは、線状エピトープは、非還元条件下及び還元条件下の両方で存在する。
【0103】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1:
【表7】
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、及びX
7は、任意のアミノ酸である)(配列番号1)
に係るアミノ酸配列によって形成されるHBsAgの抗原性ループにおけるエピトープに結合する。
【0104】
好ましくは、X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7は、配列番号3のアミノ酸120~130と比較して保存的に置換されているアミノ酸である。また、X1、X2、X3、X4、X5、X6、及びX7は、配列番号5~33のいずれかのアミノ酸20~30と比較して保存的に置換されているアミノ酸であることも好ましい(表1;抗原性ループ領域、即ち、HBsAgの様々な変異体のSドメインのアミノ酸101~172を参照)。
【0105】
好ましくは、配列番号1におけるX1は、小アミノ酸である。「小」アミノ酸とは、本明細書で使用するとき、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、及びバリンからなる群から選択される任意のアミノ酸を指す。より好ましくは、X1は、プロリン、セリン、又はトレオニンである。
【0106】
好ましくは、配列番号1におけるX2は、小アミノ酸である。より好ましくは、X2は、システイン又はトレオニンである。
【0107】
好ましくは、配列番号1におけるX3は、荷電アミノ酸又は脂肪族アミノ酸である。「荷電」アミノ酸とは、本明細書で使用するとき、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びヒスチジンからなる群から選択される任意のアミノ酸を指す。「脂肪族」アミノ酸とは、本明細書で使用するとき、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、及びバリンからなる群から選択される任意のアミノ酸を指す。より好ましくは、X3は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、又はイソロイシンである。
【0108】
好ましくは、配列番号1におけるX4は、小アミノ酸及び/又は疎水性アミノ酸である。「疎水性」アミノ酸とは、本明細書で使用するとき、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、プロリン、及びグリシンからなる群から選択される任意のアミノ酸を指す。より好ましくは、X4は、メチオニン又はトレオニンである。
【0109】
好ましくは、配列番号1におけるX5は、小アミノ酸及び/又は疎水性アミノ酸である。より好ましくは、X5は、トレオニン、アラニン、又はイソロイシンである。
【0110】
好ましくは、配列番号1におけるX6は、小アミノ酸及び/又は疎水性アミノ酸である。より好ましくは、X6は、トレオニン、プロリン、又はロイシンである。
【0111】
好ましくは、配列番号1におけるX7は、極性アミノ酸又は脂肪族アミノ酸である。「極性」アミノ酸とは、本明細書で使用するとき、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、セリン、及びトレオニンからなる群から選択される任意のアミノ酸を指す。より好ましくは、X7は、グルタミン、ヒスチジン、又はロイシンである。
【0112】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2:
【表8】
(式中、X
1は、P、T、又はSであり、
X
2は、C又はSであり、
X
3は、R、K、D、又はIであり、
X
4は、M又はTであり、
X
5は、T、A、又はIであり、
X
6は、T、P、又はLであり、
X
7は、Q、H、又はLである)
(配列番号2)
に係るアミノ酸配列によって形成されるHBsAgの抗原性ループにおけるエピトープに結合することがより好ましい。
【0113】
配列番号1又は2に係るアミノ酸配列によって形成される好ましいエピトープに関して、用語「によって形成される」とは、本明細書で使用するとき、特に、抗体が配列番号1又は2のそれぞれ及び全てのアミノ酸に必ず結合することを意味することを意図するものではないことに留意する。特に、好ましい立体構造的エピトープの場合、抗体は、配列番号1又は2のアミノ酸の一部のみに結合し得、他のアミノ酸残基は、単に「スペーサ」として作用し得、それによって、エピトープの3D構造を提供する。
【0114】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下の表1に示す配列番号5~33から選択されるアミノ酸配列の1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更により好ましくは4以上のアミノ酸によって形成されるHBsAgの抗原性ループにおけるエピトープに結合する。
【0115】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下の表1に示す配列番号5~33のいずれかに係るアミノ酸配列を有するHBsAgの抗原性ループ領域又はその配列変異体に結合する。更により好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、以下の表1に示す配列番号5~33のいずれかに係るアミノ酸配列を有するHBsAgの抗原性ループ変異体の全てに結合する。言い換えれば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片が、配列番号5~33のいずれかに係るアミノ酸配列を有するHBsAgの様々な抗原性ループ領域の全てに結合し得る場合が特に好ましい。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0116】
一般に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、重鎖に(少なくとも)3個の相補性決定領域(CDR)及び軽鎖に(少なくとも)3個のCDRを含む。一般に、相補性決定領域(CDR)は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインに存在する超可変性領域である。典型的には、抗体の重鎖及び接続された軽鎖のCDRは共に抗原受容体を形成する。通常、3個のCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、可変ドメインに非連続的に配置される。抗原受容体は、典型的には、(2本の異なるポリペプチド鎖、即ち、重鎖及び軽鎖における)2つの可変ドメインで構成されるので、各抗原受容体につき6個のCDR(重鎖:CDRH1、CDRH2、及びCDRH3;軽鎖:CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)が存在する。単一の抗体分子は、通常、2個の抗原受容体を有するので、12個のCDRを含有する。重鎖及び/又は軽鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によって分離され得、フレームワーク領域(FR)は、CDRよりも「可変性」の低い可変ドメインにおける領域である。例えば、鎖(又はそれぞれの各鎖)は、3個のCDRによって分離されている4個のフレームワーク領域で構成され得る。
【0117】
重鎖に3個の異なるCDR及び軽鎖に3個の異なるCDRを含む本発明の例示的な抗体の重鎖及び軽鎖の配列を決定した。CDRアミノ酸の位置は、IMGT付番システムに従って定義される(IMGT:http://www.imgt.org/;Lefranc,M.-P.et al.(2009)Nucleic Acids Res.37,D1006-D1012を参照)。
【表10】
【0118】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表2に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【表11】
【0119】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表3に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことも好ましい。
【表12】
【0120】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表4に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことも好ましい。
【表13】
【0121】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表5に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【表14】
【0122】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表6に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことも好ましい。
【表15】
【0123】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、表7に示すCDR配列、VH配列、及び/又はVL配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことも好ましい。
【表16】
【0124】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、少なくとも1つのCDR、好ましくは、少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36に係るアミノ酸配列又は本明細書に記載するその機能性配列変異体を含むか又はからなる。したがって、少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36に係るアミノ酸配列を含む。
【0125】
また、前記抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3が、配列番号40若しくは配列番号58に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含むことも好ましい。したがって、少なくとも1つの軽鎖CDRL3は、配列番号40又は配列番号58と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの軽鎖CDRL3は、配列番号40又は配列番号58に係るアミノ酸配列を含む。
【0126】
より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号34に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つのCDRH2は、配列番号35に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つのCDRH3は、配列番号36に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む。より好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号34に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つのCDRH2は、配列番号35若しくは66に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む。したがって、前記少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号34と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号35又は66と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。より好ましくは、少なくとも1つの重鎖CDRH1は、配列番号34に係るアミノ酸配列を含む;少なくとも1つの重鎖CDRH2は、配列番号35若しくは66に係るアミノ酸配列を含む;及び/又は少なくとも1つの重鎖CDRH3は、配列番号36に係るアミノ酸配列を含む。
【0127】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つのCDRL1は、配列番号37に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つのCDRL2は、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つのCDRL3アミノは、配列番号40に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む。また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのCDRH1、少なくとも1つのCDRH2、及び少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖と、少なくとも1つのCDRL1、少なくとも1つのCDRL2、及び少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖とを含み、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL1は、配列番号37に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL2は、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含む、及び/又は前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3アミノは、配列番号58に係るアミノ酸配列又はその機能性配列変異体を含むことも好ましい。したがって、前記少なくとも1つの軽鎖CDRL1は、配列番号37と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;前記少なくとも1つの軽鎖CDRL2は、配列番号38又は39と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む;及び/又は前記少なくとも1つの軽鎖CDRL3は、配列番号40又は58と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの軽鎖CDRL1は、配列番号37に係るアミノ酸配列を含む;少なくとも1つの軽鎖CDRL2は、配列番号38若しくは39に係るアミノ酸配列を含む;及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDRL3は、配列番号40若しくは58に係るアミノ酸配列を含む。
【0128】
したがって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号34~38及び40に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片、又は配列番号34~37及び39~40に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片を含むことも好ましい。また、前記抗体又は前記抗原結合断片は、それぞれ、配列番号34、36~38、40、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片、又は配列番号34、36~37、39~40、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片を含むことも好ましい。また、前記抗体又は前記抗原結合断片は、それぞれ、配列番号34~38、及び58に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片、又は配列番号34~37、39、及び58に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片を含むことも好ましい。更に、前記抗体又は前記抗原結合断片は、それぞれ、配列番号34、36~38、58、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片、又は配列番号34、36~37、39、58、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列若しくはこれらの抗原結合断片を含むことも好ましい。
【0129】
したがって、前記抗体又は前記抗原結合断片は、(i)それぞれ配列番号34~38及び40のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(ii)それぞれ配列番号34~37、39、及び40のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(iii)それぞれ配列番号34~38、及び58のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(iv)それぞれ配列番号34~37、39、及び58のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(v)それぞれ配列番号34、36~38、40、及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(vi)それぞれ配列番号34、36~37、39、40、及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(vii)それぞれ配列番号34、36~38、58、及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するか;(viii)それぞれ配列番号34、36~37、39、58、及び66のそれぞれと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%若しくは99%の配列同一性を共有するCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を有することが好ましい。
【0130】
より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、(i)それぞれ配列番号34~38、及び40に係る;又は(ii)それぞれ配列番号34~37、39、及び40に係る;又は(iii)それぞれ配列番号34~38、及び58に係る;又は(iv)それぞれ配列番号34~37、39、及び58に係る;又は(v)それぞれ配列番号34、36~38、40、及び66に係る;又は(vi)それぞれ配列番号34、36~37、39、40、及び66に係る;又は(vii)それぞれ配列番号34、36~38、58、及び66に係る;又は(viii)それぞれ配列番号34、36~37、39、58、及び66に係るCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列並びにCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0131】
更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体及び/又は配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含むことも好ましい。したがって、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号42と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含むことが好ましい。より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む。
【0132】
更に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41若しくは67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体及び/又は配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列若しくはその機能性配列変異体を含むことも好ましい。したがって、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41又は67と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号42と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含むことが好ましい。より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号42に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む。
【0133】
好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41若しくは67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体と、配列番号59若しくは65に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列又はその機能性配列変異体とを含む。したがって、前記抗体又は前記抗原結合断片は、(i)配列番号41又は67と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、(ii)配列番号59又は65と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含むことが好ましい。より好ましくは、前記抗体又は前記抗原結合断片は、配列番号41又は67に係る重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列と、配列番号59又は65に係る軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列とを含む。
【0134】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号34~38、及び40のアミノ酸配列、又は配列番号34~37及び39~40のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖CDRH1、CDRH2、及びCDRH3並びに軽鎖CDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列とを含む。好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号34~38、及び58のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号34~37、39、及び58のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖CDRH1、CDRH2、及びCDRH3並びに軽鎖CDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列とを含む。好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号34、36~38、40、及び66のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号34、36~37、39~40、及び66のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖CDRH1、CDRH2、及びCDRH3並びに軽鎖CDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列とを含む。好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号34、36~38、58、及び66のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号34、36~37、39、58、及び66のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖CDRH1、CDRH2、及びCDRH3並びに軽鎖CDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列とを含む。
【0135】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41~42のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖可変領域(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含むことも好ましい。
【0136】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41及び59のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖可変領域(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含むことも好ましい。
【0137】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41及び65のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である少なくとも1つの重鎖可変領域(VH)及び少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含むことも好ましい。
【0138】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、gHBC34であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、HBC34である。
【0139】
本発明者らは、本発明に係るモノクローナル抗体(mAb)を単離した。これを本明細書ではHBC34(実施例1を参照)と称する。この抗体HBC34、特に、HBC34のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号40に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。特に、「gHBC34」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号40に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号41に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号42に係るアミノ酸配列を有する。
【0140】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はgHBC34v7であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はHBC34v7である。
【0141】
本発明者らは、本発明に係る更なるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。これを本明細書ではHBC34v7(実施例11を参照)と称する。この抗体HBC34v7、特に、HBC34v7のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34v7」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34v7」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号58に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34v7」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号41に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34v7」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号59に係るアミノ酸配列を有する。
【0142】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はgHBC34v23であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はHBC34v23である。
【0143】
本発明者らは、本発明に係る更なるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。これを本明細書ではHBC34v23(実施例12を参照)と称する。この抗体HBC34v23、特に、HBC34v23のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34v23」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34v23」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号58に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34v23」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号41に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34v23」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号59に係るアミノ酸配列を有する。
【0144】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はgHBC34v31であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はHBC34v31である。
【0145】
本発明者らは、本発明に係る更なるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。これを本明細書ではHBC34v31(実施例12を参照)と称する。この抗体HBC34v31、特に、HBC34v31のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34v31」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34v31」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号40に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34v31」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号67に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34v31」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号42に係るアミノ酸配列を有する。
【0146】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はgHBC34v32であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はHBC34v32である。
【0147】
本発明者らは、本発明に係る更なるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。これを本明細書ではHBC34v32(実施例12を参照)と称する。この抗体HBC34v32、特に、HBC34v32のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34v32」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34v32」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号40に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34v32」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号67に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34v32」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号59に係るアミノ酸配列を有する。
【0148】
特に好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はgHBC34v33であり、特に、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片はHBC34v33である。
【0149】
本発明者らは、本発明に係る更なるモノクローナル抗体(mAb)を同定した。これを本明細書ではHBC34v33(実施例12を参照)と称する。この抗体HBC34v33、特に、HBC34v33のVH及びVL遺伝子に基づいて、用語「gHBC34v33」とは、本明細書で使用するとき、それぞれの「ジェネリック」抗体又はその抗原結合断片を指す。即ち、「gHBC34v33」とは、配列番号34に係るCDRH1アミノ酸配列、配列番号35又は66に係るCDRH2アミノ酸配列、配列番号36に係るCDRH3アミノ酸配列、配列番号37に係るCDRL1アミノ酸配列、配列番号38又は39に係るCDRL2アミノ酸配列、及び配列番号40に係るCDRL3アミノ酸配列を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。「gHBC34v33」の重鎖可変領域(VH)は、配列番号67に係るアミノ酸配列を有し、「gHBC34v33」の軽鎖可変領域(VL)は、配列番号65に係るアミノ酸配列を有する。
【0150】
好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、精製抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvである。
【0151】
したがって、本発明の抗体は、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、組み換え抗体、又は精製抗体であってよい。また、本発明は、本発明の抗体の断片、特に、抗体の抗原結合活性を保持している断片を提供する。かかる断片としては、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
本発明の抗体の断片は、酵素、例えばペプシン又はパパインによる切断を含む方法によって、及び/又は化学還元によりジスルフィド結合を切断することによって、前記抗体から得ることができる。或いは、抗体の断片は、重鎖又は軽鎖の配列の一部のクローニング及び発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvを含む。また、重鎖又は軽鎖の単量体及び二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体に加えて、単鎖抗体、例えば、重鎖及び軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーによって結合されている単鎖Fvも含まれる。
【0153】
本発明の抗体断片は、一価又は多価相互作用を付与し得、上記様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子を合成して、三価「トリアボディ」又は四価「テトラボディ」を作製することができる。scFv分子は、Fc領域のドメインを含んでいてよく、その結果、二価ミニボディが得られる。更に、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的に結合する多重特異的分子の成分であってもよい。例示的な分子としては、二重特異的Fab2、三重特異的Fab3、二重特異的scFv、及びダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 9:1126-1136)。
【0154】
別の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載される本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を提供する。好ましくは、本明細書に記載される本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減において使用するためのものである。この態様の詳細な説明は、以下の「医学的処置及び使用」及び本発明の医薬組成物の説明において提供される。
【0155】
核酸分子
別の態様では、本発明は、また、上記本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしているポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。核酸分子及び/又はポリヌクレオチドの例としては、例えば、組み換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、RNA分子(例えば、rRNA、mRNA、miRNA、siRNA、又はtRNA)又はDNA分子(例えば、cDNA)が挙げられる。本発明の抗体の軽鎖、重鎖、及びCDRの一部又は全てをコードしている核酸配列が好ましい。表2~8は、好ましくは本明細書に記載されるポリヌクレオチド/核酸配列によってコードされている本発明に係る例示的な抗体のCDR及びVH及びVLのアミノ酸配列の配列番号を提供する。したがって、好ましくは、本発明の例示的な抗体の軽鎖及び重鎖、特にVH及びVL配列並びにCDRの一部又は全てをコードしている核酸配列が本明細書に提供される。以下の表9は、本発明に係る例示的な抗体のCDR並びにVH及びVLをコードしている核酸配列の配列番号を提供する。遺伝子コードの冗長性により、本発明は、これら核酸配列の配列変異体、特に、同じアミノ酸配列をコードしているかかる配列変異体も含む。
【0156】
核酸分子は、核酸成分を含む、好ましくはからなる分子である。核酸分子という用語は、好ましくは、DNA又はRNA分子を指す。特に、用語「ポリヌクレオチド」と同義で用いられる。好ましくは、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合しているヌクレオチドモノマーを含むか又はからなるポリマーである。また、用語「核酸分子」は、修飾核酸分子、例えば、塩基修飾、糖修飾、又は骨格修飾されたDNA又はRNA分子も包含する。
【表17-1】
【表17-2】
【表17-3】
【0157】
好ましくは、本発明に係る核酸分子の配列は、配列番号43~51のいずれか1つに係る核酸配列又はその機能性配列変異体を含むか又はからなる。また、本発明に係る核酸分子の配列は、配列番号43~51、60~64、及び68~78のいずれか1つに係る核酸配列を含むか又はからなることも好ましい。
【0158】
また、本発明に係る核酸配列は、本発明に係る(例示的な)抗体で使用されるCDR、VH配列及び/又はVL配列をコードしている核酸配列、例えば、表9に示す配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むことも好ましい。したがって、ポリヌクレオチド配列が配列番号43~51のいずれか1つに係る核酸配列又はその機能性配列変異体を含むか又はからなる核酸分子が好ましい。ポリヌクレオチド配列が配列番号43~51、60~64、及び68~78のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する核酸配列を含むか又はからなる核酸分子も好ましい。より好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、配列番号43~51、60~64、及び68~78のいずれか1つに係る核酸配列を含むか又はからなる。
【0159】
より好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、配列番号70~78のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する核酸配列を含むか又はからなる。配列番号70~78は、コドン最適化された核酸配列(表9を参照)である。特に好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、配列番号70~78のいずれか1つに係る核酸配列を含むか又はからなる。
【0160】
一般に、核酸分子を操作して、特定の核酸配列を挿入、欠失、又は変更することができる。かかる操作による変化としては、制限酵素部位を導入する、コドン使用頻度を変更する、転写及び/又は翻訳調節配列を付加若しくは最適化する等の変化が挙げられるが、これらに限定されない。また、核酸を変化させて、コードされているアミノ酸を変更することも可能である。例えば、1以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を抗体のアミノ酸配列に導入することが有用であり得る。かかる点突然変異は、エフェクタ機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性等を変化させることができたり、共有結合基(例えば、標識)を結合させるためのアミノ酸を導入することができたり、(例えば、精製目的のための)タグを導入することができたりする。突然変異は、特異的部位に導入することもでき、ランダムに導入し、続いてセレクション(例えば、分子進化)することもできる。例えば、本発明の(例示的な)抗体のCDR領域、VH配列及び/又はVL配列のいずれかをコードしている1以上の核酸をランダムに又は定向的に突然変異させて、コードされているアミノ酸に様々な性質を導入することができる。かかる変化は、初期変化が保持され、他のヌクレオチド位置に新たな変化が導入される反復プロセスの結果であり得る。更に、独立した工程で得られた変化を組み合わせてもよい。コードされているアミノ酸に導入される様々な性質としては、親和性の強化を挙げることができるが、これに限定されない。
【0161】
ベクター
本発明に係る核酸分子を含むベクター、例えば、発現ベクターも、本発明の範囲内に更に含まれる。好ましくは、ベクターは、上記核酸分子を含む。
【0162】
用語「ベクター」とは、核酸分子、好ましくは、組み換え核酸分子、即ち、自然界には存在しない核酸分子を指す。本発明におけるベクターは、所望の核酸配列を組み込むか又は保有させるのに好適である。かかるベクターは、ストレージベクター、発現ベクター、クローニングベクター、トランスファーベクター等であってよい。ストレージベクターは、核酸分子を便利に保管することができるベクターである。したがって、ベクターは、例えば、本発明にかかる所望の抗体又はその抗原断片に対応する配列を含み得る。発現ベクターは、例えばRNA(例えば、mRNA)、又はペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質等の発現産物を産生させるために使用することができる。例えば、発現ベクターは、プロモーター配列等のベクターの一続きの配列の転写に必要な配列を含んでいてよい。クローニングベクターは、典型的には、核酸配列をベクターに組み込むために用いることができるクローニングサイトを含むベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクター又はバクテリオファージベクターであってよい。トランスファーベクターは、細胞又は生物に核酸分子を移入するのに好適なベクター、例えば、ウイルスベクターであってよい。本発明におけるベクターは、例えば、RNAベクターであってもDNAベクターであってもよい。好ましくは、ベクターは、DNA分子である。例えば、本願におけるベクターは、クローニングサイト、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性因子)、及びベクターの増殖に好適な配列(例えば、複製起点)を含む。好ましくは、本願におけるベクターは、プラスミドベクターである。
【0163】
細胞
更なる態様では、本発明は、本発明にかかる抗体又はその抗原結合断片を発現する及び/又は本発明にかかるベクターを含む細胞も提供する。
【0164】
かかる細胞の例としては、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、又は植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、細胞は、哺乳類細胞、より好ましくは、哺乳類細胞株である。好ましい例としては、ヒト細胞、CHO細胞、HEK293T細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、例えば、Hepa RG細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0165】
特に、前記細胞に、本発明にかかるベクター、好ましくは発現ベクターをトランスフェクトしてよい。用語「トランスフェクション」とは、DNA又はRNA(例えば、mRNA)の分子等の核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞に導入することを指す。本発明において、用語「トランスフェクション」は、核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞、例えば哺乳類細胞に導入するための当業者に公知の任意の方法を含む。かかる方法は、例えば、エレクトロポレーション、(例えば、カチオン性脂質及び/又はリポソームに基づく)リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、又はカチオン性ポリマー(例えば、DEAE-デキストラン又はポリエチレンイミン等)に基づくトランスフェクションを含む。好ましくは、導入は、非ウイルス的である。
【0166】
更に、例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を発現させるために、本発明の細胞に本発明に係るベクターを安定的に又は一過的にトランスフェクトしてよい。好ましくは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしている本発明に係るベクターを細胞に安定的にトランスフェクトする。或いは、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードしている本発明に係るベクターを細胞に一過的にトランスフェクトすることも好ましい。
【0167】
抗体の任意の追加の特徴
本発明の抗体は、例えば、治療部位に送達するために薬物に結合させてもよく、対象となる細胞を含む部位のイメージングを容易にするために検出可能な標識に結合させてもよい。薬物及び検出可能な標識に抗体を結合させる方法は、検出可能な標識を使用するイメージング方法等、当技術分野において周知である。標識された抗体は、広範な標識を使用する広範なアッセイで使用することができる。本発明の抗体とHBsAg、特に、HBsAgの抗原性ループ領域における対象となるエピトープとの間の抗体-抗原複合体の形成の検出は、検出可能な物質を抗体に結合させることによって容易になり得る。好適な検出手段としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光物質、化学発光物質、色素原、酵素物質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、色素等の標識の使用が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例は、ルミノールであり;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ;好適な放射活性物質の例としては、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。かかる標識された試薬は、例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、例えば、ELISA、蛍光イムノアッセイ等の様々な周知のアッセイで使用することができる。したがって、本発明に係る標識された抗体は、例えば、米国特許第3,766,162号、同第3,791,932号、同第3,817,837号、及び同第4,233,402号に記載の通り、かかるアッセイにおいて使用することができる。
【0168】
本発明に係る抗体は、細胞毒、療法剤、又は放射性金属イオン若しくは放射性同位体等の治療部分にコンジュゲートさせることができる。放射性同位体の例としては、I-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、Bi-213、Pd-109、Tc-99、In-111等が挙げられるが、これらに限定されない。かかる抗体コンジュゲートは、所与の生物学的応答を調節するために用いることができ、薬物部分は、古典的な化学療法剤に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってよい。かかるタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、又はジフテリア毒素等の毒素を挙げることができる。
【0169】
かかる治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は、周知である。例えば、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Reisfeld等編(Alan R.Liss,Inc.)、pp.243-256におけるArnon等(1985)「Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery、Robinson等編(第2版;Marcel Dekker,Inc.)、pp.623-653におけるHellstrom等編(1987)「Antibodies for Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies’84:Biological and Clinical Applications、Pinchera等編、pp.475-506(Editrice Kurtis,Milano,Italy,1985)におけるThorpe(1985)「Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review」;Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、Baldwin等編(Academic Press,New York,1985)、pp.303-316における「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」;及びThorpe et al.(1982)Immunol.Rev.62:119-158を参照。
【0170】
或いは、抗体又はその抗原結合断片は、二次抗体又はその抗体断片にコンジュゲートさせて、米国特許第4,676,980号に記載の通り抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。更に、例えば米国特許第4,831,175号に記載の通り、標識と本発明の抗体との間にリンカーを使用してもよい。抗体又はその抗原結合断片は、放射性ヨウ素、インジウム、イットリウム、又は例えば米国特許第5,595,721号に記載の通り、当技術分野において公知の他の放射性粒子で直接標識し得る。治療は、例えば国際公開第00/52031号、同第00/52473号に記載の通り、同時に又は後で投与されるコンジュゲートした抗体及びコンジュゲートしていない抗体による治療との組合せからなっていてよい。
【0171】
また、本発明の抗体は、固体担持体に結合させてもよい。更に、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、例えば、その循環半減期を延長するために、共有結合によってポリマーにコンジュゲートさせることによって化学的に修飾してよい。ポリマー、及びそれをペプチドに結合させる方法の例は、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、及び同第4,609,546号に示されている。幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)から選択され得る。PEGは、室温で水に可溶性であり、一般式:R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素、又はアルキル基若しくはアルカノール基等の保護基であってよい)を有する。好ましくは、保護基は、1個~8個の炭素を有し得る。例えば、保護基は、メチルである。記号nは、正の整数である。一実施形態では、nは、1~1,000である。別の実施形態では、nは、2~500である。好ましくは、PEGは、1,000~40,000の平均分子量を有し、より好ましくは、PEGは、2,000~20,000の分子量を有し、更により好ましくは、PEGは、3,000~12,000の分子量を有する。更に、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し得、例えば、PEGは、末端ヒドロキシ基を有し得る。例えば、それは、活性化されて阻害剤の遊離アミノ基と反応する末端ヒドロキシ基である。しかし、本発明の共有結合によってコンジュゲートされたPEG/抗体を得るために、反応性基の種類及び量を変更してもよい。
【0172】
水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。例えば、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)等が挙げられる。一実施形態では、POGが用いられる。任意の理論に縛られるものではないが、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、例えば、動物及びヒトにおいて、モノ-、ジ-、トリグリセリドに天然に存在するのと同じ骨格であるので、この分岐は、身体において必ずしも異物として認識される訳ではない。POGは、PEGと同じ範囲の分子量を有し得る。循環半減期を延長するために用いることができる別の薬物送達系は、リポソームである。リポソーム送達系を調製する方法は、当業者に公知である。他の薬物送達系は、当技術分野において公知であり、例えば、Poznansky et al.(1980)及びPoznansky(1984)に記載されている。
【0173】
本発明の抗体は、精製形態で提供され得る。典型的には、抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在し、例えば、組成物の90(重量)%未満、通常は60%未満、より通常は50%未満が他のポリペプチドで構成される。
【0174】
本発明の抗体は、非ヒト(又は異種)宿主、例えば、マウスにおいて免疫原性であり得る。特に、抗体は、非ヒト宿主において免疫原性であるが、ヒト宿主においては免疫原性でないイディオトープを有し得る。特に、ヒトで使用するための本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳類等の宿主から容易に単離することができず、且つ一般にヒト化によってもゼノマウスからも得ることができないものが挙げられる。
【0175】
抗体の産生
本発明に係る抗体は、当技術分野において公知の任意の方法によって作製することができる。例えば、ハイブリドーマ技術を使用してモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論は、周知である(Kohler,G.and Milstein,C,.1975;Kozbar et al.1983)。一実施形態では、国際公開第2004/076677号に記載されている別のEBV不死化法を使用する。
【0176】
好ましい方法は、国際公開第2004/076677号に記載されている。この方法では、本発明の抗体を産生するB細胞を、EBV及びポリクローナルB細胞活性化剤で形質転換する。任意で、効率を更に高めるために、細胞の成長及び分化の更なる刺激剤を形質転換工程中に添加してもよい。これら刺激剤は、IL-2及びIL-15等のサイトカインであってよい。一態様では、IL-2を不死化工程中に添加して、不死化効率を更に向上させるが、その使用は必須ではない。次いで、これら方法を用いて産生された不死化B細胞を、当技術分野において公知の方法及びそれから単離された抗体を用いて培養してよい。
【0177】
別の好ましい方法は、国際公開第2010/046775号に記載されている。この方法では、プラズマ細胞を限定数又は単一プラズマ細胞としてマイクロウェル培養皿で培養する。プラズマ細胞培養物から抗体を単離することができる。更に、プラズマ細胞培養物からRNAを抽出することができ、当技術分野において公知の方法を使用してPCRを実施することができる。抗体のVH及びVL領域をRT-PCR(逆転写酵素PCR)によって増幅させ、配列を決定し、発現ベクターにクローニングし、次いで、HEK293T細胞又は他の宿主細胞にトランスフェクトすることができる。発現ベクターへの核酸のクローニング、宿主細胞のトランスフェクション、トランスフェクトされた宿主細胞の培養、及び産生された抗体の単離は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。
【0178】
抗体は、必要に応じて、濾過、遠心分離、及び様々なクロマトグラフィー法、例えば、HPLC又はアフィニティクロマトグラフィーを用いて更に精製することができる。医薬品グレードの抗体を産生するための技術を含む抗体、例えば、モノクローナル抗体を精製する技術は、当技術分野において周知である。
【0179】
本発明の抗体の断片は、酵素、例えばペプシン又はパパインによる切断を含む方法によって、及び/又は化学還元によりジスルフィド結合を切断することによって前記抗体から得ることができる。或いは、抗体の断片は、重鎖又は軽鎖の配列の一部のクローニング及び発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体由来のCDRを含むscFvを含む。また、重鎖又は軽鎖の単量体及び二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体に加えて、単鎖抗体、例えば、重鎖及び軽鎖の可変ドメインがペプチドリンカーによって結合されている単鎖Fvも含まれる。
【0180】
本発明の抗体断片は、一価又は多価相互作用を付与し得、上記様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子を合成して、三価「トリアボディ」又は四価「テトラボディ」を作製することができる。scFv分子は、Fc領域のドメインを含んでいてよく、その結果、二価ミニボディが生じる。更に、本発明の配列は、本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、分子の他の領域が他の標的に結合する多重特異的分子の成分であってよい。例示的な分子としては、二重特異的Fab2、三重特異的Fab3、二重特異的scFv、及びダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない(Holliger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 9:1126-1136)。
【0181】
分子生物学の標準的な技術を用いて、本発明の抗体又は抗原断片をコードしているDNA配列を調製することができる。オリゴヌクレオチド合成技術を用いて所望のDNA配列を完全に又は部分的に合成することができる。部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を適宜使用してよい。
【0182】
任意の好適な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子又はその断片をコードしているDNA配列を発現させるために用いることができる。一部では、Fab及びF(ab’)2断片等の抗体断片、特にFv断片及び単鎖抗体断片、例えば単鎖Fvを発現させるために細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系を使用してよい。完全抗体分子を含むより大きな抗体分子を産生させるために、真核生物、例えば哺乳類の宿主細胞発現系を使用してよい。好適な哺乳類宿主細胞としては、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫、又はハイブリドーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
また、本発明は、本発明に係る抗体分子を産生させるプロセスであって、本発明の核酸をコードしているベクターを含む宿主細胞を、本発明の抗体分子をコードしているDNAからタンパク質を発現させるのに好適な条件下で培養することと、前記抗体分子を単離することとを含むプロセスを提供する。
【0184】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでいてもよく、この場合、宿主細胞にトランスフェクトするために重鎖又は軽鎖ポリペプチドをコードしている配列のみを使用する必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む産物を産生させる場合、第1のベクターが軽鎖ポリペプチドをコードしており、第2のベクターが重鎖ポリペプチドをコードしている2つのベクターを細胞株にトランスフェクトしてよい。或いは、軽鎖及び重鎖のポリペプチドをコードしている配列を含む単一のベクターを使用してもよい。或いは、本発明に係る抗体は、(i)例えば、本発明に係るベクターを使用することによって、宿主細胞で本発明に係る核酸配列を発現させ、(ii)発現した抗体産物を単離することによって産生され得る。更に、前記方法は、(iii)単離抗体を精製することを含み得る。形質転換されたB細胞及び培養したプラズマ細胞を、所望の特異性又は機能の抗体を産生するものについてスクリーニングしてよい。
【0185】
スクリーニング工程は、任意のイムノアッセイ、例えば、ELISAによって、組織若しくは細胞(トランスフェクトされた細胞を含む)を染色することによって、中和アッセイによって、又は所望の特異性若しくは機能を同定するための当技術分野において公知の多数の他の方法のうちの1つによって実施してよい。アッセイでは、1以上の抗原の単純な認識に基づいて選択することもでき、更に所望の機能に基づいて選択して、例えば、単なる抗原結合抗体ではなく中和抗体を選択したり、標的細胞の特徴(例えば、そのシグナル伝達カスケード、形状、成長速度、他の細胞に影響を与える能力、他の細胞又は他の試薬又は条件の変化による影響に対する応答、分化状態等)を変化させることができる抗体を選択したりすることもできる。
【0186】
次いで、陽性形質転換B細胞培養物から個々の形質転換B細胞クローンが産生され得る。陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するためのクローニング工程は、限界希釈、マイクロマニピュレーション、セルソーティングによる単一細胞沈着、又は当技術分野において公知の別の方法を使用して実施することができる。
【0187】
当技術分野において公知の方法を用いて、培養プラズマ細胞から核酸を単離し、クローニングし、HEK293T細胞又は他の公知の宿主細胞で発現させることができる。
【0188】
本発明の不死化B細胞クローン又はトランスフェクトされた宿主細胞は、例えば、モノクローナル抗体源として、対象となるモノクローナル抗体をコードしている核酸(DNA又はmRNA)源として、研究のため等、様々な方法で使用することができる。
【0189】
また、本発明は、本発明に係る抗体を産生する不死化記憶B細胞又はトランスフェクトされた宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0190】
本発明の不死化B細胞クローン又は培養プラズマ細胞は、後で組み換え発現させるために抗体遺伝子をクローニングするための核酸源として使用することもできる。例えば、安定性、再現性、培養の容易さ等の理由から、B細胞又はハイブリドーマから発現させるよりも、組み換え源から発現させる方が医薬目的では一般的である。
【0191】
したがって、本発明は、また、組み換え細胞を調製する方法であって、(i)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から1以上の核酸(例えば、重鎖及び/又は軽鎖mRNA)を得る工程と、(ii)前記核酸を発現ベクターに挿入する工程と、(iii)宿主細胞において対象となる抗体を発現させるために、前記ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする工程とを含む方法を提供する。
【0192】
同様に、本発明は、組み換え細胞を調製する方法であって、(i)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から核酸の配列を決定する工程と、(ii)工程(i)で得られた配列情報を使用して、宿主細胞において対象となる抗体を発現させるために、前記宿主細胞に挿入するための核酸を調製する工程とを含む方法を提供する。工程(i)と(ii)との間に、制限酵素部位を導入する、コドンの使用頻度を変更する、及び/又は転写及び/又は翻訳調節配列を最適化するために前記核酸を操作してもよいが、必須ではない。
【0193】
更に、本発明は、また、トランスフェクトされた宿主細胞を調製する方法であって、対象となる抗体をコードしている1以上の核酸を宿主細胞にトランスフェクトする工程を含み、前記核酸が、本発明の不死化B細胞クローン又は培養プラズマ細胞に由来する核酸である方法も提供する。したがって、まず核酸を調製し、次いで、それを使用して宿主細胞をトランスフェクトする手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0194】
次いで、本発明のこれら組み換え細胞を発現及び培養目的のために使用することができる。前記組み換え細胞は、大規模に医薬品を生産するために抗体を発現させるのに特に有用である。また、前記組み換え細胞は、医薬組成物の活性成分として用いることもできる。静置培養、ローラーボトル培養、腹水液、中空繊維型バイオリアクタカートリッジ、モジュラーミニ発酵槽、撹拌槽、微粒子担体培養、セラミックコア灌流等が挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な培養技術を使用することができる。
【0195】
B細胞又はプラズマ細胞から免疫グロブリン遺伝子を得、配列を決定する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Kuby Immunology、第4版、2000年の第4章)。
【0196】
トランスフェクトされた宿主細胞は、酵母及び動物細胞を含む真核細胞、特に、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、NS0細胞、ヒト細胞(例えば、PER.C6又はHKB-11細胞)、骨髄腫細胞、又はヒト肝細胞(例えば、Hepa RG))に加えて、植物細胞であってよく、哺乳類細胞が好ましい。好ましい発現宿主は、特にそれ自体ヒトにおいて免疫原性ではない炭水化物構造で本発明の抗体をグリコシル価することができる。一実施形態では、トランスフェクトされた宿主細胞は、無血清培地において増殖することができる。更なる実施形態では、トランスフェクトされた宿主細胞は、動物由来の生成物が存在しなくても培養物中で増殖することができる。また、トランスフェクトされた宿主細胞を培養して、細胞株を得ることもできる。
【0197】
また、本発明は、対象となる抗体をコードしている1以上の核酸分子(例えば、重鎖及び軽鎖遺伝子)を調製する方法であって、(i)不死化B細胞クローンを調製するか又は本発明に係るプラズマ細胞を培養する工程と、(ii)対象となる抗体をコードしている核酸を、B細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得る工程とを含む方法を提供する。更に、本発明は、対象となる抗体をコードしている核酸配列を得る方法であって、(i)不死化B細胞クローンを調製するか又は本発明に係るプラズマ細胞を培養する工程と、(ii)対象となる抗体をコードしているB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得られた核酸の配列を決定する工程とを含む方法を提供する。
【0198】
本発明は、更に、対象となる抗体をコードしている核酸分子を調製する方法であって、本発明の形質転換B細胞クローン又は培養プラズマ細胞から得られた核酸を得る工程を含む方法を提供する。したがって、先ずB細胞クローン又は培養プラズマ細胞を得、次いで、前記B細胞クローン又は前記培養プラズマ細胞から核酸を得るための手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0199】
また、本発明は、本発明に係る(例えば、製薬に使用するための)抗体を調製する方法であって、(i)対象となる抗体を発現する選択されたB細胞クローン又は培養プラズマ細胞から1以上の核酸(例えば、重鎖及び軽鎖の遺伝子)を得る及び/又は配列を決定する工程と;(ii)前記核酸配列を発現ベクターに挿入するか又は前記核酸配列を使用して発現ベクターを調製する工程と;(iii)対象となる抗体を発現することができる宿主細胞にトランスフェクトする工程と;(iv)トランスフェクトされた宿主細胞を、前記対象となる抗体が発現する条件下で培養又は継代培養する工程と;任意で、(v)前記対象となる抗体を精製する工程とを含む方法を含む。
【0200】
また、本発明は、トランスフェクトされた宿主細胞集団、例えば、安定的にトランスフェクトされた宿主細胞集団を、対象となる抗体が発現する条件下で培養又は継代培養する工程と;任意で、前記対象となる抗体を精製する工程とを含む、抗体を調製する方法であって、前記トランスフェクトされた宿主細胞集団が、(i)上記の通り調製したB細胞クローン又は培養プラズマ細胞によって産生される、選択された対象となる抗体をコードしている核酸を提供し、(ii)前記核酸を発現ベクターに挿入し、(iii)前記対象となる抗体を発現することができる宿主細胞に前記ベクターをトランスフェクトし、(iv)挿入された核酸を含むトランスフェクトされた宿主細胞を培養又は継代培養して、前記対象となる抗体を産生させることによって調製される方法を提供する。したがって、先ず組み換え宿主細胞を調製し、次いで、それを培養して抗体を発現させるための手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時点で実施することができる。
【0201】
医薬組成物
また、本発明は、
(i)本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片;
(ii)本発明に係る抗体若しくは抗体断片をコードしている核酸;
(iii)本発明に係る核酸を含むベクター;又は
(iv)本発明に係る抗体を発現するか若しくは本発明に係るベクターを含む細胞
のうちの1以上を含む医薬組成物を提供する。
【0202】
言い換えれば、本発明は、また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る細胞を提供する。
【0203】
医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含有していてもよい。担体又は賦形剤は投与を容易にすることができるが、それ自体が、組成物を摂取する個体にとって有害な抗体の産生を誘導してはならない。また、毒性であってもならない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子等の、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子であってよい。一般的に、本発明に係る医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、活性成分であっても不活性成分であってもよい。好ましくは、本発明に係る医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、B型又はD型肝炎に関して活性成分ではない。
【0204】
薬学的に許容し得る塩、例えば、鉱酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、及び硫酸塩)又は有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩)を用いてもよい。
【0205】
医薬組成物中の薬学的に許容し得る担体は、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノール等の液体を更に含有していてもよい。更に、湿潤剤若しくは乳化剤等の補助物質、又はpH緩衝物質がかかる組成物中に存在していてもよい。かかる担体によって、被験体に服用させるために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤として製剤化することができるようになる。
【0206】
本発明の医薬組成物は、様々な形態で調製することができる。例えば、前記組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射液として調製してよい。注射する前に液体ビヒクルの溶液又は懸濁液にするのに好適な固体形態を調製してもよい(例えば、保存剤を含有する滅菌水で再構成するための、Synagis(商標)及びHerceptin(商標)と同様の凍結乾燥組成物)。前記組成物は、例えば軟膏剤、クリーム剤、又は粉剤として、局所投与用に調製してもよい。前記組成物は、例えば錠剤若しくはカプセル剤として、噴霧剤として、又はシロップ剤として(任意で、風味付けされる)経口投与用に調製してもよい。前記組成物は、例えば微粉末又はスプレーを用いる吸入器として、肺内投与用に調製してもよい。前記組成物は、坐剤又は膣坐剤として調製してもよい。前記組成物は、例えば点眼剤として、鼻腔内、耳内、又は眼内投与用に調製してもよい。前記組成物は、被験体に投与する直前に複合組成物が再構成されるように設計されたキット形態であってもよい。例えば、凍結乾燥した抗体を、滅菌水又は滅菌バッファと共にキット形態で提供してよい。
【0207】
前記組成物中の活性成分は、抗体分子、抗体断片、又はこれらの変異体及び誘導体であることが好ましく、特に、前記組成物中の活性成分は、本発明に係る抗体、抗体断片、又はこれらの変異体及び誘導体である。したがって、消化管において分解されやすい。したがって、前記組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、前記組成物は、前記抗体を分解から保護するが、一旦消化管から吸収されたら前記抗体を放出させる剤を含有していてよい。
【0208】
薬学的に許容し得る担体についての詳細な検討は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,ISBN:0683306472から入手可能である。
【0209】
本発明の医薬組成物は、一般的に、5.5~8.5のpHを有し、幾つかの実施形態では、これは、6~8であり、他の実施形態では、約7である。pHは、バッファを使用することによって維持することができる。前記組成物は、無菌及び/又はパイロジェンフリーであってよい。前記組成物は、ヒトに対して等張であってよい。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、密封容器で提供される。
【0210】
幾つかの投与形態で存在する組成物が、本発明の範囲内であり、前記形態としては、例えば、ボーラス注射又は持続点滴等の注射又は点滴による非経口投与に好適な形態が挙げられるが、これらに限定されない。製品が注射又は注入用である場合、油性又は水性のビヒクルの懸濁液、溶液、又はエマルションの形態をとってもよく、懸濁化剤、保存剤、安定剤、及び/又は分散剤等の調合剤を含有していてもよい。或いは、抗体分子は、適切な無菌液体を用いて使用前に再構成するために乾燥形態であってもよい。ビヒクルは、典型的には、薬学的活性化合物等の化合物、特に、本発明に係る抗体を保存、輸送、及び投与するのに好適な物質であると理解される。例えば、ビヒクルは、薬学的活性化合物、特に、本発明に係る抗体を保存、輸送、及び/又は投与するのに好適な生理学的に許容し得る液体であってよい。製剤化すると、本発明の組成物を被験体に直接投与することができる。一実施形態では、前記組成物は、哺乳類、例えば、ヒト被験体への投与に適応する。
【0211】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、経皮、局所、皮下、鼻腔内、経腸、舌下、膣内、又は直腸内経路が挙げられるがこれらに限定されない、任意の数の経路によって投与することができる。また、皮下噴射器を用いて、本発明の医薬組成物を投与してもよい。好ましくは、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル剤等として経口投与用に、局所投与用に、又は例えば液体溶液又は懸濁液等の注射剤として調製することができ、前記医薬組成物は、注射剤であることが特に好ましい。注射前に液体ビヒクルの溶液又は懸濁液にするのに好適な固体形態も好ましく、例えば、医薬組成物は凍結乾燥形態である。
【0212】
静脈内、皮膚、若しくは皮下への注射、又は罹患部位への注射等の注射については、活性成分は、好ましくは、パイロジェンフリーであり且つ好適なpH、等張性、及び安定性を有する非経口的に許容し得る水溶液の形態である。当業者は、例えば、生食注射、リンゲル液、乳酸加リンゲル液等の等張ビヒクルを用いて好適な溶液をうまく調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/又は他の添加剤が含まれていてもよい。個体に投与されるのが本発明に係るポリペプチドであろうと、ペプチドであろうと、核酸分子であろうと、他の薬学的に有用な化合物であろうと、個体に対して効果を示すのに十分な「予防的に有効な量」又は「治療的に有効な量」(場合による)が投与されることが好ましい。実際に投与される量、並びに投与の速度及び時間推移は、処置されるものの性質及び重篤度に依存する。注射の場合、本発明に係る医薬組成物を、例えばプレフィルドシリンジで提供してよい。
【0213】
上に定義された本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤が挙げられるがこれらに限定されない任意の経口的に許容し得る剤形で経口投与してよい。経口使用するための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も典型的に添加される。カプセル形態で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁剤が必要な場合、活性成分、即ち、上に定義された本発明のトランスポータ-カーゴコンジュゲート分子を乳化剤及び懸濁化剤と合わせる。必要に応じて、特定の甘味剤、着香剤、又は着色剤を添加してもよい。
【0214】
また、特に、治療の標的が、例えば皮膚又は任意の他のアクセス可能な上皮組織の疾患を含む、局所適用によって容易にアクセス可能な領域又は器官を含むとき、本発明の医薬組成物を局所的に投与してもよい。これら領域又は器官のそれぞれに好適な局所製剤が容易に調製される。局所適用の場合、本発明の医薬組成物は、1以上の担体に懸濁又は溶解している本発明の医薬組成物、特に、上に定義されたその成分を含有する好適な軟膏剤に製剤化してよい。局所投与用の担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、本発明の医薬組成物は、好適なローション又はクリームに製剤化することもできる。本発明において、好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
投薬治療は、単回投与スケジュールであっても複数回投与スケジュールであってもよく、本発明では、複数回投与スケジュールが好ましい。公知の抗体ベース医薬、特に、抗HBVベース医薬、例えば、Hepatect(登録商標)CPは、特に様々な適応症に関する投与頻度に関する指針、例えば、医薬を毎日、毎週、毎月投与すべきかどうか等を提供する。また、頻度及び投薬量は、症状の重篤度にも依存し得る。
【0216】
例えば、本発明に係る医薬組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、若しくは21日間、又はそれ以上の期間に亘って毎日、例えば、1日間当たり1回又は数回、例えば、1日間当たり1回、2回、3回、又は4回、好ましくは、1日間当たり1回又は2回、より好ましくは、1日間当たり1回、例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間の期間に亘って毎日投与してよい。好ましくは、本発明に係る医薬組成物は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、若しくは21週間、又はそれ以上の期間の期間に亘って毎週、例えば、1週間当たり1回又は2回、例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、若しくは12ヶ月間の期間の期間に亘って毎週、又は2年間、3年間、4年間、若しくは5年間の期間の期間に亘って毎週投与してよい。更に、本発明に係る医薬組成物は、好ましくは、1年間、2年間、3年間、4年間、若しくは5年間、又はそれ以上の期間の期間に亘って毎月、例えば、1ヶ月間当たり1回、又はより好ましくは2ヶ月間毎に投与してよい。投与の好ましいエンドポイントは、セロコンバーションに達したときであり、好ましくは、治療のエンドポイントは、抗HBV抗体へのセロコンバーションを伴う、HBsAgの血清からの永続的消失である。また、生涯投与を継続することも好ましい。更に、特に特定の適応症に関しては、例えば、非免疫被験体における偶発的曝露の場合にB型肝炎を予防するために1回だけ投与することも企図される。
【0217】
特に、単一用量、例えば、日用量、用量、又は月用量、好ましくは週用量については、本発明に係る医薬組成物中の抗体又はその抗原結合断片の量は、1gを超えない、好ましくは500mgを超えない、より好ましくは250mgを超えない、更により好ましくは、100mgを超えない、特に好ましくは50mgを超えないことが好ましい。
【0218】
医薬組成物は、典型的には、本発明の1以上の抗体を「有効」量、即ち、所望の疾患若しくは状態を治療、寛解、軽減、若しくは予防するか、又は検出可能な治療効果を呈するのに十分な量含む。治療効果は、病原性効力又は身体症状を低減又は軽減することも含む。任意の特定の被験体についての正確な有効量は、前記被験体の身長、体重、及び健康、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択された治療法又は治療法の組合せに依存する。所与の状況についての有効量は、ルーチンな実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。本発明の目的のために、本発明の抗体の有効量(例えば、医薬組成物中の抗体の量)は、一般的に、投与される個体の体重(例えば、kg)に関連して、約0.005mg/kg~約100mg/kg、好ましくは約0.0075mg/kg~約50mg/kg、より好ましくは約0.01mg/kg~約10mg/kg、更により好ましくは、約0.02mg/kg~約5mg/kgである。
【0219】
例えば、B型肝炎誘発性肝不全に起因する肝臓移植の状況では、本発明に係る医薬組成物中の抗体又はその抗原結合断片の量は、移植日の単一用量については、好ましくは50mgを超えず、より好ましくは10mg以下であってよく、次いで、周術期には、7日間に亘って1日間当たり10mg~50mg以下、好ましくは、2mg~10mg以下であってよく、そして、抗HB血清レベルを約100IU/Lで維持するために1ヶ月間~3ヶ月間毎に投与される単一用量当たり、10mg~50mg以下、好ましくは、2mg~10mg以下であってよい。
【0220】
慢性B型肝炎の治療の場合、例えば、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物は、好ましくは皮下に投与され、単一用量は、本発明に係る抗体500mg以下、好ましくは250mg以下、より好ましくは100mg以下である。かかる単一用量は、上記の通り、毎日、毎週、又は毎月投与してよい。
【0221】
更に、本発明に係る医薬組成物は、更なる抗体であってよい追加の活性成分又は抗体ではない成分を含んでいてもよい。追加の活性成分は、好ましくは、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤から選択される。好ましいポリメラーゼ阻害剤としては、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、及びテノホビルが挙げられる。ポリメラーゼ阻害剤は、DNAのプラス鎖の逆転写及び合成を抑制する。ポリメラーゼ阻害剤は、ウイルスの拡散、cccDNAの形成を予防せず、HBsAgの放出に影響を与えない。インターフェロンとしては、IFNアルファ及びIFNベータ、IFNベータが好ましい。好ましいチェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1及び/又はCTLA4のブロックを目的とし、したがって、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA4抗体を含む。本発明に係る医薬組成物は、追加の活性成分のうちの1以上を含み得る。
【0222】
本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、追加の活性成分と同じ医薬組成物中に存在していてもよく、又は好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、第1の医薬組成物に含まれ、追加の活性成分は、第1の医薬組成物とは異なる第2の医薬組成物に含まれる。したがって、1超の追加の活性成分が企図される場合、各追加の活性成分と本発明に係る抗体又は抗原結合断片とは、好ましくは、異なる医薬組成物に含まれる。かかる異なる医薬組成物は、合わせて/同時に、又は別々の時点で若しくは別々の箇所(例えば、身体の別々の部分)に投与してよい。
【0223】
好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片と追加の活性成分とは、相加的治療効果、又は好ましくは相乗的治療効果を提供する。用語「相乗作用」とは、2以上の活性剤の併用効果が、各活性剤の個々の効果の合計よりも大きいことを説明するために用いられる。したがって、2以上の剤の併用効果によって活性又はプロセスの「相乗的阻害」が生じる場合、前記活性又はプロセスの阻害が、各活性剤の阻害効果の合計よりも大きいことを意図する。用語「相乗的治療効果」とは、(多数のパラメータのうちのいずれかによって測定される)治療効果が、それぞれの個々の治療で観察される個々の治療効果の合計よりも大きい、2以上の治療の組合せで観察される治療効果を指す。
【0224】
gHCB34に係る抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物が好ましい。
【0225】
一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の抗体を含んでいてよく、前記抗体は、前記組成物中の全タンパク質の少なくとも50重量%(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)を構成し得る。かかる組成物では、抗体は、好ましくは、精製形態である。
【0226】
また、本発明は、医薬組成物を調製する方法であって、(i)本発明の抗体を調製する工程と、(ii)精製抗体を1以上の薬学的に許容し得る担体と混合する工程とを含む方法を提供する。
【0227】
別の実施形態では、医薬組成物を調製する方法は、抗体を1以上の薬学的に許容し得る担体と混合する工程を含み、前記抗体は、本発明の形質転換B細胞又は培養プラズマ細胞から得られたモノクローナル抗体である。
【0228】
治療目的のために抗体又はB細胞を送達する代りに、B細胞又は培養プラズマ細胞に由来する対象となるモノクローナル抗体(又はその活性断片)をコードしている核酸(典型的には、DNA)を被験体に送達することもでき、その結果、前記核酸は、被験体においてインサイチュで発現して所望の治療効果を提供することができる。好適な遺伝子療法及び核酸送達ベクターは、当技術分野において公知である。
【0229】
医薬組成物は、特に複数回投与フォーマットにパッケージ化されている場合、抗微生物剤を含んでいてよい。前記医薬組成物は、洗浄剤、例えばTween80等のTween(ポリソルベート)を含んでいてよい。洗浄剤は、一般的に、低濃度、例えば、0.01%未満で存在する。また、組成物は、等張にするためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでいてもよい。例えば、10±2mg/mLのNaCl濃度が典型的である。
【0230】
更に、医薬組成物は、特に、凍結乾燥される場合又は凍結乾燥物質から再構成された物質を含む場合、例えば、約15mg/mL~約30mg/mL(例えば、25mg/mL)の糖アルコール(例えば、マンニトール)又は二糖(例えば、スクロース又はトレハロース)を含んでいてよい。凍結乾燥用組成物のpHは、凍結乾燥前に5~8、又は5.5~7、又は約6.1に調整してよい。
【0231】
また、本発明の組成物は、1以上の免疫調節剤を含んでいてもよい。一実施形態では、免疫調節剤のうちの1以上は、アジュバントを含む。
【0232】
医学的処置及び使用
更なる態様では、本発明は、(i)B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、若しくは軽減、又は(ii)B型肝炎及び/又はD型肝炎の診断における、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用を提供する。
【0233】
医薬組成物に関して上に記載した通り、抗体若しくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞、又は医薬組成物の幾つかの形態及び投与経路も本発明の範囲内である。これは、特に好ましい形態及び投与経路に関して、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片、核酸、ベクター、及び細胞の使用にも当てはまる。
【0234】
診断方法は、抗体又は抗体断片をサンプルと接触させることを含んでいてよい。かかるサンプルは、被験体から単離することができ、例えば、鼻道、鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、眼、耳、胎盤、消化管、心臓、卵巣、脳下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、又は血液、好ましくは血清から採取した単離組織サンプルであってよい。また、前記診断方法は、特に抗体又は抗体断片をサンプルと接触させた後に、抗原/抗体複合体を検出することを含んでいてよい。かかる検出工程は、典型的には、作業台で、即ち、ヒト又は動物の身体と全く接触することなしに実施される。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)が挙げられる。
【0235】
また、本発明は、(a)B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減のための医薬の製造又は(b)B型肝炎及び/又はD型肝炎の診断における(i)本発明に係る抗体、抗体断片、若しくはこれらの変異体及び誘導体;(ii)本発明に係る不死化B細胞クローン;(iii)本発明に係る核酸若しくはベクター;又は(iv)本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0236】
また、本発明は、特にB型肝炎及び/又はD型肝炎の予防又は治療のために、医薬として使用するための、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を提供する。また、被験体を治療するための医薬の製造及び/又は被験体の診断における本発明の抗体の使用を提供する。また、本発明の組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、被験体は、ヒトであってよい。治療的処置の有効性を確認する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に疾患の症状をモニタリングすることを含む。治療は、単回投与スケジュールであってもよく、複数回投与スケジュールであってもよい。
【0237】
一実施形態では、本発明に係る抗体、抗体断片、不死化B細胞クローン、又は医薬組成物は、かかる治療を必要とする被験体に投与される。かかる被験体としては、特にB型肝炎及び/又はD型肝炎のリスクを有するか又は罹患しやすい被験体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、B型肝炎及び/又はD型肝炎を診断するためのキットにおいて使用することもできる。更に、本明細書に記載される本発明の抗体に結合することができるHBsAgの抗原性ループ領域におけるエピトープは、抗HBV保護抗体の存在を検出するか又は力価を測定することによって、適用手順の有効性をモニタリングするためのキットにおいて使用することもできる。
【0239】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、慢性B型肝炎の治療又は軽減において使用される。
【0240】
興味深いことに、本発明に係る抗体は、(i)HBV感染を強力に中和する、(ii)L-HBsAg(感染性HBV粒子に存在するラージHBVエンベロープタンパク質)に結合して、HBVの拡散を防ぐ、(iii)S-HBsAgに結合して、サブウイルス粒子(SVP)のクリアランスを促進する、及び(iv)セロコンバーション、即ち、ウイルスに対する能動的免疫応答を誘導することができる。
【0241】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、特に、B型肝炎誘発性肝不全について、肝移植後のB型肝炎の(再)感染の予防において使用される。
【0242】
この目的のために、好ましくは、移植日には肝移植を受けた患者に高用量を投与してよく、周術期には約1週間に亘って日用量を投与する。その後、好ましくは、抗HB抗体の血清レベルを100IU/mL超で維持するために1ヶ月間~3ヶ月間毎に更なる用量を投与してよい。
【0243】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、非免疫被験体におけるB型肝炎の防止/予防において用いられる。これは、例えば、HBVへの(想定上の)偶発的曝露の場合である(曝露後予防)。用語「非免疫被験体」としては、ワクチン接種を受けたことがないので免疫されていない被験体及びワクチン接種後に免疫応答(測定可能な抗B型肝炎抗体)を示さなかった被験体が挙げられる。特に後者の群では、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、B型肝炎の(持続)予防において用いられる、即ち、「曝露後予防」とは対照的に、(持続)予防は、ワクチン接種後に免疫応答(測定可能な抗B型肝炎抗体)を示さず且つ持続予防が必要な被験体にとって好ましい。
【0244】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、血液透析患者におけるB型肝炎の予防に用いられる。
【0245】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、新生児におけるB型肝炎の予防に用いられる。したがって、特に、B型肝炎ウイルスキャリアの母/非免疫母の新生児が好ましい。更に、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、出産時、又は出産後可能な限り速やかに投与することが好ましい。好ましくは、ワクチン接種後にセロコンバーションが生じるまで投与を繰り返してよい。
【0246】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、D型肝炎、好ましくはB型肝炎及びD型肝炎(特にB型肝炎及びD型肝炎の共存症)の治療又は軽減において用いられる。興味深いことに、本発明に係る抗体は、B型肝炎ウイルスだけでなく、デルタ型肝炎ウイルスも強力に中和する。したがって、本発明に係る抗体は、D型肝炎の第一選択治療を提供することができる。
【0247】
併用療法
本発明に係る方法及び使用における本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与は、単独で実施してもよく、治療又は抑制される疾患又は疾病を治療及び/又は安定化するのに有用な助剤(本明細書では「追加の活性成分」とも称される)と組み合わせて実施してもよい。
【0248】
本発明は、B型肝炎を治療及び/又は予防するのに有用な他の治療レジメン又は助剤の前、同時、又は後に被験体に投与される、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与を包含する。前記助剤と同時に投与される前記抗体、核酸、ベクター、細胞、又は医薬組成物は、同じ又は異なる組成物で、また、同じ又は異なる投与経路で投与してよい。
【0249】
前記他の治療レジメン又は助剤は、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤からなる群から選択してよい。
【0250】
したがって、本発明の別の態様では、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、上記(医学的)使用のために、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0251】
好ましいポリメラーゼ阻害剤としては、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、及びテノホビルが挙げられる。ラミブジンが、最も好ましいポリメラーゼ阻害剤である。ポリメラーゼ阻害剤は、DNAのプラス鎖の逆転写及び合成を抑制する。ポリメラーゼ阻害剤は、ウイルスの拡散、cccDNAの形成を予防せず、HBsAgの放出に影響を与えない。
【0252】
インターフェロンとしては、IFNアルファ及びIFNベータが挙げられ、IFNベータが好ましい。
【0253】
好ましいチェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1及び/又はCTLA4のブロックを目的とし、したがって、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA4抗体を含む。したがって、本発明に係る医薬組成物は、追加の活性成分のうちの1以上を含み得る。
【0254】
本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物と組み合わせて投与される更に好ましい助剤(追加の活性成分)としては、LTβRアゴニストが挙げられる。
【0255】
好ましくは、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、ポリメラーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。これは、特に、B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減におけるかかる組合せの使用にも当てはまる。この状況では、好ましいポリメラーゼ阻害剤としては、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、及びテノホビルが挙げられる。最も好ましいポリメラーゼ阻害剤は、ラミブジンである。
【0256】
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片、前記核酸、前記ベクター、前記細胞、又は前記医薬組成物は、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と同じ又は異なる投与経路を介して投与される。
【0257】
したがって、更なる態様では、本発明は、また、
(i)本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物と、
(ii)ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と
の組合せを提供する。
【0258】
かかる組合せは、好ましくは、B型肝炎及び/又はD型肝炎の予防、治療、又は軽減、特に、慢性B型肝炎及び/又は慢性D型肝炎の治療又は軽減において使用される。より好ましくは、前記組合せは、HBV単独感染患者又はHBV/HDV同時感染患者において使用される。
【0259】
かかる組合せは、好ましくは、HBsAgのクリアランスを加速させる。
【0260】
これらに鑑みて、本発明は、また、
(i)本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物と、
(ii)ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と
を含むキットを提供する。
【0261】
更に、前記キットは、シリンジ若しくは容器等、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の投与手段、及び/又は例えば、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、若しくは本発明に係る医薬組成物、及び/又はポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤の使用法が説明されているリーフレットを含んでいてよい。
【0262】
本発明に係る抗体若しくは抗原結合断片は、追加の活性成分(助剤)と同じ医薬組成物中に存在していてもよく、又は好ましくは、本発明に係る抗体若しくは抗原結合断片は、第1の医薬組成物に含まれ、追加の活性成分(助剤)は、第1の医薬組成物とは異なる第2の医薬組成物に含まれる。したがって、1超の追加の活性成分(助剤)が企図される場合、各追加の活性成分(助剤)及び本発明に係る抗体又は抗原結合断片は、好ましくは、異なる医薬組成物に含まれる。かかる異なる医薬組成物は、合わせて/同時に、又は別々の時点で若しくは別々の箇所(例えば、身体の別々の部分)に投与してよい。
【0263】
好ましくは、本発明に係る抗体又は抗原結合断片と追加の活性成分(助剤)とは、相加的治療効果、又は好ましくは相乗的治療効果を提供する。上記の通り、用語「相乗作用」とは、2以上の活性剤の併用効果が、各活性剤の個々の効果の合計よりも大きいことを説明するために用いられる。したがって、2以上の剤の併用効果によって活性又はプロセスの「相乗的阻害」を生じる場合、前記活性又はプロセスの阻害が、各活性剤の阻害効果の合計よりも大きいことを意図する。用語「相乗的治療効果」とは、(多数のパラメータのうちのいずれかによって測定される)治療効果が、それぞれの個々の治療で観察される個々の治療効果の合計よりも大きい、2以上の治療の組合せで観察される治療効果を指す。
【0264】
使用及び方法
別の態様では、本発明は、抗B型肝炎又は抗D型肝炎ワクチンの抗原が正確な立体構造の特異的エピトープを含有していることを確認することによって前記ワクチンの品質をモニタリングするための、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用を提供する。
【0265】
更に、本発明は、また、B型肝炎及び/又はD型肝炎の診断における、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用を提供する。
【0266】
更に、単離された血液サンプルがB型肝炎ウイルス及び/又はデルタ型肝炎ウイルスに感染しているかどうかの判定における、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物の使用も提供される。
【0267】
上記の通り、診断方法は、抗体又は抗体断片をサンプルと接触させることを含んでいてよい。かかるサンプルは、被験体から単離することができ、例えば、鼻道、鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、脳下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、又は血液、好ましくは血清から採取した単離組織サンプルであってよい。また、前記診断方法は、特に抗体又は抗体断片をサンプルと接触させた後に、抗原/抗体複合体を検出することを含んでいてもよい。かかる検出工程は、典型的には、作業台で、即ち、ヒト又は動物の身体と全く接触することなしに実施される。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)が挙げられる。
【0268】
また、本発明は、被験体におけるB型肝炎及び/又はD型肝炎を予防及び/又は治療する方法であって、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を、それを必要としている被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0269】
また、本発明は、肝移植を受けた被験体を治療する方法であって、治療的に有効な量の本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を、前記肝移植を受けた被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0270】
上記方法では、慢性B型肝炎に罹患している被験体が好ましい。
【0271】
更に、特に医薬組成物及び医学的使用に関して既に記載した詳細は、本明細書に記載される方法にも当てはまる。例えば、上記方法において、本発明に係る抗体若しくはその抗原結合断片、本発明に係る核酸、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、好ましくは、本明細書に記載されるポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。
【0272】
添付図面の簡単な説明を以下に記載する。図面は、本発明を更に詳細に説明することを意図する。しかし、如何なる方法でも本発明の発明主題を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0273】
【
図1】実施例1について、ELISAによって測定される3つの異なるHBsAg血清型(adw、ady、及びayw)に対するHBC34モノクローナル抗体の結合を示す。
【
図2】実施例2について、様々な抗HB抗体、即ち、HBV免疫グロブリン(HBIG)、HBC34、及びPreS1(18/7)又はHBsAgに対する更なるモノクローナル抗体の、インビトロにおいてHepaRG細胞のHBV感染を中和する能力を示す。5,000μg/mL、500μg/mL、及び50μg/mLで試験したHBIGを除いて、各抗体を3つの異なる濃度、即ち、5μg/mL、0.5μg/mL、及び0.05μg/mLで試験した。
【
図3】実施例2について、3つの異なる濃度(5μg/mL、0.5μg/mL、又は0.05μg/mL)のHBC34モノクローナル抗体の存在下において感染したHepaRG細胞におけるHBcAgの染色、及びレファレンスとしての核染色を示す。
【
図4】実施例2について、感染性HDVに対する様々な濃度のHBC34の中和活性を示す。0.12μg/mLの濃度のHBC34では、HDV陽性細胞は検出されず、これは、HDVの強力な中和を示す。対照的に、HBIGは、HDVを中和しなかった(1:1,000希釈、即ち、50μg/mLで試験)。
【
図5】実施例3について、10個のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJのHBsAgの抗原性ループのアミノ酸配列を示す。これら配列は、HBC34抗体によって認識されるエピトープ(灰色でハイライト)を含む。一番上の配列(HBV-D J02203)を用いて、実施例5、
図7のペプチドライブラリを設計した。
【
図6】実施例3について、図に示す通り様々なHBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJを発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした透過処理Hep2細胞に対する、ヒトモノクローナル抗体HBC34及び対照抗体(いずれも5μg/mL)の結合(細胞蛍光測定法によって測定)を示す。
【
図7】実施例4について、試験した19個のHBsAg突然変異体の抗原性ループのアミノ酸配列を示す。HBC34抗体に弱くしか(点線円)又は全く結合しなかったHBsAg突然変異体の残基を丸で囲む。
【
図8】実施例4について、図に示す通り様々なHBsAg遺伝子型D突然変異体を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHep2細胞における、ヒトモノクローナル抗体HBC34及び2つの他のHBsAg特異的抗体(Ab5及びAb6)(全て5μg/mLで試験)の結合を示す(「WT」:HBsAg遺伝子型D、Genbankアクセッション番号FJ899792)。
【
図9】実施例5について、Pepscan技術を用いて測定した650個の直鎖状及びループ状ペプチドのライブラリに対するHBC34の結合、並びにHBC34が結合する4個のペプチドの配列を示す。1と示される残基は、立体構造的エピトープを再構築するためにスカフォールドに化学結合することができるように導入されたシステインである。新たに導入されたシステインに加えて他のシステインが存在する場合、それはアラニンによって置換される(下線付きアラニン残基)。
【
図10】実施例5について、還元条件下のHBVウイルス粒子におけるAb4及びHBC34によるウエスタンブロット染色を示す。Ab4は、比較抗体であり、同様に抗原性ループに対して反応性である。
【
図11】実施例6について、6週間に亘ってHBC34(1週間に2回、1mg/kgをi.p.投与)、対照抗体(対照AB)、又はエンテカビル(ETV;1μg/mLで経口投与)のいずれかにより感染の3週間後から処理を受けた、5×10
7コピーのHBVゲノム等価物(遺伝子型D)を接種されたヒト化uPA/SCIDマウスにおけるHBVウイルス血症のレベルを示す。HBV感染の拡散相(p.i.(感染後)3週間目~6週間目)において、対照抗体を投与した群ではウイルス血症が>2log増加したが、HBC34又はエンテカビルで処理したマウスではHBV力価が低下した。
【
図12】実施例6について、実験の最後(9週間目)における、実施例6のマウス中のHBsAgの存在についての肝細胞の染色(肝内分析)を示す。対照抗体を投与したマウスでは殆ど全ての肝細胞がHBsAg陽性に染色されたが、エンテカビルによる処理及びHBC34による処理ではいずれも拡散が効率的にブロックされた(HBsAg陽性細胞は約1%~約5%)。
【
図13】実施例6のcccDNA測定について、HBV感染の3週間後に屠殺されたマウス(「3週間hbv」;即ち、非処理)と感染後3週間目から9週間目までHBC34又はエンテカビルで処理されたマウスとの間に著しい差は存在しなかった。対照的に、感染の9週間後に屠殺したとき、対照抗体を投与した群ではcccDNA/細胞の推定量が最高2log増加した。
【
図14】実施例6について、ベースライン(BL)、処理の3週間目(感染後6週間目)、及び処理の6週間目(感染後9週間目)における循環HBsAgのレベルを示す。HBC34を投与したマウスでは循環HBsAgのレベルが>1log(及び検出限界未満に)低下したが、エンテカビルで処理したマウスでは低下せず、一方、対照群ではHBsAgのレベルが>2log増加した(5,000IU/mL~10,000IU/mLのレベルに達した)。
【
図15】実施例7について、ベースライン(BL)、処理の3週間目(感染後15週間目、「3週間目」)、及び処理の6週間目(感染後18週間目、「6週間目」)における慢性B型肝炎の状況のHBV力価(左図)及び循環HBsAgのレベル(右図)を示す。HBV力価及び循環HBsAgのレベルは、処理の3週間目及び6週間目においてHBC34を投与したマウスで低下した。個々の曲線は、個々の動物を表す。対照抗体:点線、HBC34:連続線。
【
図16】実施例8について、一次ヒト肝細胞を再増殖させ、HDV-RNA及びHBV-DNAを含有する患者由来の血清を同時感染させたuPA/SCIDマウスにおけるHBV力価(左図)及びHDV力価(右図)を示す。感染後5週間目に、HBC34又は対照抗体(「対照」)による感染処理を開始した。ベースライン(3週間目、5週間目のBL)、処理の3週間目(感染後8週間目-「8週間目」)、及び処理の6週間目(感染後11週間目-「11週間目」)におけるHBV力価(左図)及びHDV力価(右図)を示す。個々の曲線は、個々の動物を表す。対照抗体:点線、HBC34:連続線。
【
図17-1】実施例9について、HBV-s-抗原の抗原性ループの概略図を示し、HBC34のエピトープを灰色でハイライトする。HBC34のエピトープをマッピングするために、Pepscan技術を用いて測定した通り、1,520個の異なるペプチドのライブラリを試験した。
【
図17-2】実施例9について、16種の異なるペプチドセットに対するHBC34の結合の規模(ELISA強度)を示す。不連続エピトープの2つの部分を表すコンビナトリアルCLIPSコンストラクトで構成されるセット13~16のペプチド(
図17-2)及びループ状ペプチドで構成されるセット9~12のペプチド(
図17-3)に対する結合によって証明される通り、HBC34は、立体構造的エピトープに結合している。
【
図17-3】実施例9について、16種の異なるペプチドセットに対するHBC34の結合の規模(ELISA強度)を示す。不連続エピトープの2つの部分を表すコンビナトリアルCLIPSコンストラクトで構成されるセット13~16のペプチド(
図17-2)及びループ状ペプチドで構成されるセット9~12のペプチド(
図17-3)に対する結合によって証明される通り、HBC34は、立体構造的エピトープに結合している。
【
図17-4】実施例9について、16種の異なるペプチドセットに対するHBC34の結合の規模(ELISA強度)を示す。直鎖状ペプチド1~4(
図17-4)及び5~8(
図17-5)のセットではHBC34の結合が観察されず、これは、HBC34が不連続な立体構造的エピトープに結合するという考えを更に支持する。
【
図17-5】実施例9について、16種の異なるペプチドセットに対するHBC34の結合の規模(ELISA強度)を示す。直鎖状ペプチド1~4(
図17-4)及び5~8(
図17-5)のセットではHBC34の結合が観察されず、これは、HBC34が不連続な立体構造的エピトープに結合するという考えを更に支持する。
【
図18-1】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-2】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-3】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-4】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-5】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-6】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-7】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-8】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-9】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図18-10】実施例9について、812個の不連続な、即ちループ状のT3 CLIPSペプチドで構成されるペプチドライブラリに対するHBC34の結合を示す。
図17-1に記載したエピトープマッピングを微調整するために、完全置換分析を用いて前述のセット(
図17-2~
図17-5)に基づいて3セットのペプチド(RN1、RN2、及びRN3と称する)を作製した。
図18-1~
図18-10は、枠で囲まれた位置における残基を、シリーズAEFGHKLPQRSVY_(式中、「_」は、残基の欠失を意味する)から選択される13個のアミノ酸のうちの1個で置換したセット1~3に対するHBC34の結合を示す。並び替えられた位置における元の残基を、各図の左に加えて(i)水平方向の枠付き配列内(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部であるとき)又は(ii)配列の下(元のアミノ酸が並び替えシリーズの一部ではないとき)のいずれかに示す。
【
図19】実施例10について、感染の8週間後から開始して4週間に亘って対照抗体(対照)、HBC34のみ(HBC34)、ラミブジンのみ(ラミブジン)、又は併用処理(HBC34及びラミブジン)による処理を受けた、2×10
9コピーのHBVゲノム等価物(遺伝子型D)を接種したヒト化uPA/SCIDマウスにおける、HBVウイルス血症(A図)及び循環HBV-s-抗原(B図)のレベルの低下に対するHBC34(1mg/kg i.p 1週間に2回)及びラミブジン(飲料水に0.4mg/mLで添加)による併用処理の効果を示す。併用療法は、薬物のみと比較してウイルス血症を大きく低減した。
【
図20】実施例11及び12について、抗体変異体1~32を得るために作製された2セットのVH(A図)及びVL(B図)の配列のアラインメントを示す。CDR(IMGTに従って定義)を灰色でハイライトする。
【
図21】実施例11について、ELISAによって測定された、18個の改変HBC34変異体(カラム2及び3に示す通り突然変異型VH及びVL配列を合わせることによって得られた)のHBsAg(adwサブタイプ)に対する結合を示す。カラム4では、結合の喪失を「-」で示し、強く減少した結合を「+/-」で示し、減少した結合を「+/~」で示し、元の抗体と同様又は等しい結合を「+」で示す。
【
図22】実施例11について、直接抗原ベースELISAアッセイにおいて測定した、HBC34の8個の異なる改変変異体のHBsAg(adw)に対する結合を示す。これら8個の変異体は、
図21に記載する18個のHBC34突然変異体の中から選択され;HBsAgの親和性をより深く特性評価するために、前記8個の抗体を滴定し、親抗体配列と比較した。
【
図23】実施例11について、
図22に記載した8個の抗体の特徴の概要を示す。EC50は、Graphpad prismを使用して
図22の曲線をフィッティングすることによって求めた。8個の変異体及び親抗体のそれぞれの293 Expi細胞へのトランスフェクト産物300mLの上清中に分泌されたIgGの(ELISA)定量によって生産性を決定した。
【
図24】実施例11及び12について、フレームワークに更なる突然変異を導入することにより前述のセットの結果に基づいて設計されたHBC34の12個の更なる改変変異体を含む15個の変異体の特徴を要約する表を示す(A図)。抗原ベースのELISAアッセイにおいて抗体を滴定することによって結合曲線を得、Graphpad prismを用いて曲線をフィッティングすることによってEC50を計算した。15個の変異体及び親抗体のそれぞれの293 Expi細胞へのトランスフェクト産物30mLの上清中に分泌されたIgGの定量に基づいて生産性を計算した。倍数変化をプロットし、B図に示す。
【
図25】実施例11及び12について、HBC34並びに変異体6、7、19、23、及び24の細胞蛍光測定分析によって測定したときの結合を示す。全ての抗体を5μg/mLから開始して滴定したところ、異なるHBsAg遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJを発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトした透過処理Hep2細胞に対して結合した。
【実施例0274】
本発明の様々な実施形態及び態様を示す具体例を以下に提示する。しかし、本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。以下の調製及び実施例は、当業者に本発明をより明確に理解させ、実施させるために与えられる。しかし、本発明は、例示される実施形態によって範囲が限定されるものではなく、前記実施形態は本発明の単一の態様の単なる例示を意図するものであり、機能的に等価である方法は本発明の範囲内である。実際、本明細書に記載されているものに加えて、本発明の様々な変形例が、前述の明細書、添付図面、及び下記実施例から当業者に容易に明らかになる。全てのかかる変形例は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0275】
実施例1:ヒトモノクローナル抗体HBC34の同定及び特性評価
ヒト患者からTraggiai E.et al.,2004,Nat Med 10(8):871-5に記載されているのと同様の方法でヒトモノクローナル抗体を単離した。その可変領域(表2及び3)及び相補性決定領域(CRD)のヌクレオチド及びアミノ酸配列を決定することによって抗体を特性評価し、「HBC34」と命名した。したがって、HBC34は、上の表2及び3に示すCDR、VH、及びVLの配列を有するIgG1型完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0276】
次に、3つのHBsAg血清型adw、ady、及びaywのうちのどれにヒトモノクローナル抗体HBC34が結合するのかを決定した。興味深いことに、ELISAによって測定したとき、HBC34は、3つのHBsAg血清型(adw、ady、及びayw)に対して高い親和性で結合し、EC50値は同様であり、且つ低かった(
図1)。
【0277】
HBV抗体の保護力価は、様々なアッセイに亘って標準化可能な国際単位(IU)で表される。1977年に、抗HB免疫グロブリンの国際標準品(W1042)が樹立された。この標準品の調製で使用された血漿は、B型肝炎に自然に感染していた個体に由来していた(Barker,L.F.,D.Lorenz,S.C.Rastogi,J.S.Finlayson,and E.B.Seligmann.1977.Study of a proposed international reference preparation for antihepatitis B immunoglobulin.WHO Expert Committee on Biological Standardization technical report series.WHO Expert Committee on Biological Standardisation 29th Report BS 77.1 164.Geneva,Switzerland,World Health Organization,1977;World Health Organization:Anti-hepatitis B immunoglobulin.WHO Tech Rep Ser 1978;626:18)。イムノアッセイ(Abbott Architect診断的イムノアッセイ)によって診断的に測定されたHBC34の活性は、5,000IU/mLである。比較として、HBIGの活性は~1IU/mgである。
【0278】
実施例2:抗体HBC34は感染性HBV及びHDVを強力に中和する
実施例2の第1の目的は、HBC34が感染性HBVを中和するかどうかを判定し、HBC34の中和活性を他の抗HB抗体の中和活性と比較することにあった。この目的のために、分化したHepaRG細胞を、37℃で16時間、4% PEG8000(Sigma-Aldrich)を添加した培地中において、抗体(HBC34、18/7、Ab2、Ab3、及びHBIG)の存在下又は非存在下で一定量のHBVと共にインキュベートした。インキュベーションの最後に、細胞を洗浄し、更に培養した。3日間毎に培地を交換した。感染後7日目から11日目までに培養上清に分泌されたB型肝炎表面抗原(HBsAg)及びB型肝炎e抗原(HBeAg)のレベルを酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で測定し、免疫蛍光アッセイでHBcAg染色を検出することによって、感染を検出した。
【0279】
図2及び3に示す通り、5μg/mL及び0.5μg/mLで試験したとき、HBC34はHBVの感染を完全に中和し、一方、同様にHBsAgに結合している比較ヒトモノクローナル抗HB抗体Ab2及びAb3は、完全には中和しなかった。これは、HBsAgに結合する抗体の全てがHBV感染を中和することができる訳ではない(例えば、Ab2及びAb3)ことを示す。注目すべきことに、HBIGは、5,000μg/mL及び500μg/mLで試験したときのみHBV感染を中和した、即ち、HBC34と比較して1,000倍効力が低かった。18/7は、HBsAgのpre-S1領域に対するマウスモノクローナル抗体である。
【0280】
実施例2の第2の目的は、分化したHepaRg細胞におけるHDVに対するHBC34の中和活性を測定することにあった。HDVキャリア由来の血清をHDV感染接種材料として使用した。デルタ型抗原の免疫蛍光染色を読み出し値として使用した。
図4に示す通り、0.12μg/mLで試験したとき、HBC34はHDV感染を完全にブロックした。比較として、HBIGについても試験したところ、効果がなかった(1/1,000、即ち、50μg/mLで試験)。
【0281】
実施例3:抗体HBC34は、10種のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJ全てを認識する
10種のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJ(
図5に示す)を認識する能力についてHBC34をフローサイトメトリー分析によって試験した。具体的には、10種のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJ(
図5に示す)の各HBsAgを発現するプラスミドをヒト上皮細胞(Hep2細胞)にトランスフェクトした。一過的にトランスフェクトされた透過処理細胞を染色するためにヒトモノクローナル抗体HBC34(5μg/mL)及び対照抗体(5μg/mL)を使用した。トランスフェクトの2日間後、HBC34又は対照Abで免疫染色するために、Hep2細胞を回収し、固定し、サポニンで透過処理した。FlowJoソフトウェア(TreeStar)を備えるBecton Dickinson FACSCanto2(BD Biosciences)を使用して、トランスフェクトされた細胞に対する抗体の結合を分析した。
図6に示す通り、HBC34は、同様の染色パターンを有する10種のHBV HBsAg遺伝子型全てを認識した。
【0282】
実施例4:抗体HBC34は全ての機能的HBsAg突然変異体を認識する
19種の異なるHBsAg遺伝子型D突然変異体(HBsAg遺伝子型Dに基づく、Genbankアクセッション番号FJ899792、
図7に図示)HBsAg Y100C/P120T、HBsAg P120T、HBsAg P120T/S143L、HBsAg C121S、HBsAg R122D、HBsAg R122I、HBsAg T123N、HBsAg T123N/C124R、HBsAg Q129H、HBsAg Q129L、HBsAg M133H、HBsAg M133L、HBsAg M133T、HBsAg K141E、HBsAg P142S、HBsAg S143K、HBsAg D144A、HBsAg G145R、及びHBsAg N146A(これら突然変異体の抗原性ループ領域のアミノ酸配列については、配列番号16~33を参照)に結合する能力についてHBC34をフローサイトメトリー分析によって試験した。具体的には、実施例3と同様に、様々なHBsAg突然変異体を発現するプラスミドをヒト上皮細胞(Hep2細胞)にトランスフェクトし、分析した。トランスフェクトされたHep2細胞に対するHBC34の結合を試験するために5μg/mLのヒトモノクローナル抗体HBC34及び2種の他のHBsAg特異的抗体(Ab5及びAb6)を使用した。
【0283】
図8に示す通り、HBC34は、19種のHBsAg突然変異体のうちの18種に結合することが見出された。突然変異体HBsAg T123N/C124Rにおいてのみ、即ち、残基123及び124が両方突然変異型であるときのみ、HBC34の結合が完全に消滅したが、Ab5及びAb6の結合は消滅しなかった。注目すべきことに、これら2つの残基(即ち、T123及びC124)のアラニンへの突然変異が、HBV感染力の喪失に関連することが示されており、これは、抗原性ループの立体構造を変化させ得るC124によって形成されるジスルフィド架橋が失われることによるものである可能性が最も高い(Salisse J.and Sureau C.,2009,Journal of Virology 83:9321-9328)。したがって、ヒトモノクローナル抗体HBC34は、18種のHBsAg突然変異体に結合する。
【0284】
実施例5:抗体HBC34は、抗原性ループにおける保存された立体構造的エピトープに結合する
HBsAgの抗原性ループ領域を完全に網羅するように設計された650個の直鎖状及びループ状ペプチドのライブラリ(Pepscan(Lelystad,The Netherlands)製の「CLIPS Discontinuous Epitope Mapping」技術)を使用することによって、HBC34に認識されるエピトープを同定した。標準的なFmocケミストリーに基づいて直鎖状及びCLIPSペプチドを合成する。ループ状ペプチドは、Timmerman et al.,2007,Journal of Molecular Recognition 20:283-99に記載の通り、CLIPS(Chemically Linked Peptides on Scaffolds)技術を使用して、立体構造的エピトープを再構築するために化学スカフォールドにおいて合成する。例えば、2つのシステインを含有する単一のループ状ペプチドを合成し、可変間隔でシステイン残基を導入することによってループのサイズを変化させる。新たに導入されたシステインに加えて他のシステインが存在する場合、アラニンに置換する。クレジットカード型のポリプロピレンPEPSCANカード(455個のペプチドフォーマット/カード)上において重炭酸アンモニウム中1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼン等のCLIPSテンプレートの0.5mM溶液と反応させることによって、ペプチドにおける複数のシステインの側鎖をCLIPSテンプレートに結合させる。各ペプチドに対する抗体の結合を、PEPSCANベースのELISAにおいて試験する。共有結合しているペプチドを含有する455ウェルのクレジットカード型のポリプロピレンカードを、ブロッキング溶液中で試験抗体(1μg/mL)と共にインキュベートする。洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンサルフェート(ABTS)及び2μLの3% H2O2を添加する。1時間後、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムを用いて発色を測定する。生データは、光学値であり、0~3,000の範囲である(標準的な96ウェルプレートELISAリーダの1~3と同様のログスケール)。
【0285】
図9に示す通り、HBC34は、配列番号52に係るアミノ酸配列を有する二重ループ状ペプチドを認識することが見出された:
【表18】
(式中、
Xと記載されている残基は、システインで置換されており、下線付き残基は、CからAに置換されている)(配列番号52)。
【0286】
3つの更なるペプチドがより低いシグナルで認識された:
(a)配列番号53に係るアミノ酸配列を有する直鎖状15merペプチド:
【表19】
(b)配列番号54に係るアミノ酸配列を有する別の直鎖状ペプチド:
【表20】
及び(c)配列番号55に係るアミノ酸配列を有する二重ループ状ペプチド:
【表21】
(式中、
Xと記載されている残基は、システインで置換されており、下線付き残基は、CからAに置換されている)(配列番号55)。
【0287】
この分析は、HBC34のコアエピトープが、配列番号56に係るアミノ酸配列によって形成される立体構造的エピトープによって形成されることを示した。
【表22】
【0288】
更に、
図10に示す通り、ヒトモノクローナル抗体HBC34は、還元条件下のHBVウイルス粒子におけるウエスタンブロットにおいて全く反応しない。
【0289】
これら結果は、HBC34が結合するHBsAgのエピトープが立体構造的エピトープであることを確認する。
【0290】
これら結果は、HBC34の結合がT123N/C124R突然変異の存在下で失われるという実施例4の所見と一致している。
【0291】
HBC34が結合する立体構造的エピトープを含むHBsAgの領域は、様々なHBV遺伝子型において多形である。HBsAgのエピトープ領域の以下の遺伝子配列では、様々な遺伝子型において突然変異している残基をXで示す:
【表23】
(式中、X
1は、好ましくは、R又はKであり、
X
2は、好ましくは、M又はTであり、
X
3は、好ましくは、T又はIであり、
X
4は、好ましくは、T、P又はLである)
(配列番号57)。
【0292】
更に、上記配列をヒトモノクローナル抗体HBC34が結合する18種のHBsAg突然変異体と更に比較すると、HBC34が配列番号2に係るアミノ酸配列によって形成されるエピトープに結合することが示される:
【表24】
(式中、X
1は、P、T又はSであり、
X
2は、C又はSであり、
X
3は、R、K、D又はIであり、
X
4は、M又はTであり、
X
5は、T、A又はIであり、
X
6は、T、P又はLであり、
X
7は、Q、H又はLである)。
【0293】
実施例6:HBV感染の3週間後に開始するHBC34の投与はヒト化uPaマウスにおけるウイルスの拡散を防ぐ
実施例6の目的は、ヒトモノクローナル抗体HBC34がHBVの拡散を防ぐことができるかどうかを調べることにあった。言い換えれば、初期感染確立後にマウスを処理することによって、侵入阻害剤HBC34抗体のインビボでヒト肝細胞の感染を阻害する能力を調べることが目的であった。この目的のために、一次ヒト肝細胞を再増殖させたナイーブuPA/SCIDマウス(Petersen et al.Nature Biotechnology,2008,26:335-341を参照)を使用した。脾臓内注射によって、冷凍保存していたヒト肝細胞をこれらマウスに移植した。8週間後、移植されたヒト肝細胞でしか発現しないヒト血清アルブミンを測定して、宿主肝臓におけるヒト肝細胞の再増殖が成功したと判定された。適切なヒトアルブミンレベルのマウスに5×107コピーのHBVゲノム等価物(遺伝子型D、HBeAg陽性)をi.p.接種して、ウイルスを侵入させた。感染の3週間後、処理プロトコールを開始して、HBC34処理(1mg/kg、1週間に2回i.p.投与)、対照抗体、又はエンテカビル(ETV;水中1μg/mLで経口投与、Baraclude Solution,Bristol-Myers Squibb)のいずれかをマウスに6週間投与した。屠殺時に採取した肝臓試料を、免疫蛍光アッセイ用に液体窒素で急速冷凍した。
【0294】
QiAmp MinElute Virus spin kit(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して血清サンプルからHBV DNAを抽出した。HBV特異的プライマー及びハイブリダイゼーションプローブを使用して、既に記載した通り、HBV DNAウイルス血症及びcccDNA量を定量的に測定した(Volz T et al.,Gastroenterology 2007;133:843-852)。Master Pure DNA purification kit(Epicentre,Biozym,Germany)及びRNeasy RNA purification kit(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して、肝臓試料からDNA及びRNAを抽出した。ベータ-グロビン遺伝子キット(Roche DNA control Kit;Roche Diagnostics)を使用して、肝内HBV DNA値を細胞内DNA含量に対して正規化した。合計HBV DNAからcccDNA量を減じることによって、rcDNAのレベルを推定した。オリゴdTプライマー及びTranscriptor Kit(Roche Applied Science)を使用してウイルスRNA及びゲノムRNAを逆転写し、全ウイルスRNAに特異的なプライマーを使用することによって定量した。HBV RNAレベルをヒト特異的GAPDH RNAに対して正規化した。製造業者によって推奨されている通り、Abbott Architect platform(quant.HBsAg kit,Abbott,Ireland,Diagnostic Division)を使用して血液サンプルからHBsAgの定量を実施した。ヒト特異的サイトケラチン-18モノクローナル(Dako,Glostrup,Denmark)を使用してキメラマウス肝臓のクリオスタット切片を免疫染色して、ヒト肝細胞を染色した。HBVコア抗原(HBcAg)を検出するために、ポリクローナルウサギ抗HBcAgを使用した。Alexa標識二次抗体(Invitrogen,Darmstadt,Germany)又はTSA-Fluorescein(HBcAg)System(Perkin Elmer,Juegesheim,Germany)を使用することによって特異的シグナルを可視化し、一方、Hoechst 33342(Invitrogen)を使用して核染色を得た。染色された切片を蛍光顕微鏡によって分析した。
【0295】
処理開始時のHBV DNAの中央ベースラインレベルは、2×10
6DNAコピー/mLであった。HBV感染の拡散相(p.i.(感染後)3週間目~6週間目)において、対照抗体を投与した群ではウイルス血症が>2log増加したが、HBC34又はエンテカビルで処理したマウスではHBV力価が低下した(
図11)。
【0296】
また、実験の最後(即ち、9週間目)にHBsAgの存在について肝細胞を染色することによって、マウスの肝内分析を行った。対照抗体を投与したマウスでは殆ど全ての肝細胞がHBsAg陽性に染色されたが、エンテカビルによる処理及びHBC34による処理ではいずれも拡散が効率的にブロックされた(HBsAg陽性細胞は約1%~約5%)。これら結果は、HBC34がHBV感染の増加相中にウイルスの拡散を効率的にブロックできることを示す(
図12)。
【0297】
組織学的及び血清学的データと一致して、cccDNA測定は、HBV感染の3週間後に屠殺したマウスと感染後3週間目から9週間目まで処理したマウスとの間で肝内cccDNA量が著しく異なってはいないことを示した。比較すると、cccDNA/細胞の推定量は感染の9週間後に屠殺した対照群において最高2log増加した。これは、処理マウスでは、新たに形成されたrcDNAをcccDNAに効率的に変換することができなかったことを示唆する(
図13)。また、弛緩環状DNA(rcDNA)及びHBV RNA転写産物のレベル等、他の肝内ウイルスパラメータを測定することによっても同じ傾向がみられた。
【0298】
更に、ベースライン(BL)、処理の3週間目(感染後6週間目)及び処理の6週間目(感染後9週間目)に血液循環HBsAgのレベルを測定した。HBC34を投与したマウスでは循環HBsAgのレベルが>1log(及び検出限界未満に)低下したが、エンテカビルで処理したマウスでは低下せず、一方、対照群ではHBsAgのレベルが>2log増加した(5,000IU/mL~10,000IU/mLのレベルに達した)ことは注目に値する(
図14)。HBC34抗体をHBsAg陽性マウスの血清に添加してもAbbott Architect diagnostic immunoassayを使用した予測測定値が変化しなかったspike-in実験において測定された通り、HBsAgの測定値は、HBC34抗体の存在によって影響を受けなかった。
【0299】
これら結果は、HBC34がHBVウイルスの拡散をブロックし、HBsAgのクリアランスを促進できることを示す。
【0300】
実施例7:慢性的にHBVに感染しているヒト化uPaマウスにHBC34を投与すると、HBV及びHBsAgのクリアランスを促進した
B型肝炎の慢性状況を模倣するために、ナイーブヒト化uPa/SCIDマウスにHBVを感染させたところ、感染の12週間後、HBV DNAの中央レベルは2×109コピー/mL、HBsAgのレベルは10,000IU/mLに達した。これらレベルは、慢性HBV感染ヒト患者において一般的にみられるレベルと同等である。
【0301】
その後、感染後12週間目から開始して6週間に亘ってHBC34又は対照抗体のいずれかでマウスを処理した(1mg/kg、1週間に2回i.p.)。
図15に示す通り、3週間(感染後15週間目)及び6週間(感染後18週間目)HBC34を投与したマウスでは、HBV力価及び血液循環HBsAgのレベルが低下した。したがって、6週間処理した後、HBC34は、HBVウイルス血症及びHBsAgレベルの両方の明らかな減少を促進した。HBeAg及びヒトアルブミンレベルはHBC34処理マウスで変化せず、これは、肝毒性が存在しないことを示す。
【0302】
実施例8:HBC34の投与はインビボでHDV感染をブロックする
ナイーブヒト化uPa/SCIDマウスに、HDV-RNA及びHBV-DNAを含有する患者由来血清を同時感染させた。感染の5週間後(HBV力価は107~109のレベルに達し、HDV RNAは103コピー/mL~106コピー/mLのレベルに達した)、6週間に亘ってHBC34又は対照抗体でマウスを処理した(1mg/kg、1週間に2回i.p.)。
【0303】
実施例6及び7に記載の通りHBV DNAウイルス血症を測定した。ウイルスRNA(QiAmp MinElute Virus Spin Kit(Qiagen,Venlo,Netherlands)を使用して血清サンプルから抽出)の逆転写、並びにABI Fast 1-Step Virus Master(Applied Biosystems(Carlsbad,USA))、HDV特異的プライマー、及びABI Viia7におけるプローブ(Applied Biosystems(Carlsbad,USA))を使用する定量RT-PCRを介してウイルス血症を測定した。
【0304】
図16に示す通り、処理の3週間後及び6週間後(それぞれ8週間目及び11週間目)の両方において、HBC34はHDVウイルスの拡散を効率的にブロックした。HBVに慢性的に感染しているマウスにおける所見と同様に、HBC34は、HBVウイルスDNA力価の2log減少を促進した(
図13)。
【0305】
実施例9:HBC34不連続エピトープの精細エピトープマッピング
実施例5に記載されたHBC34抗体によって認識されるエピトープを更に精密にするために、16種の異なるセットで構成される1,520個のペプチドの新規ライブラリを作製した:
- セット1(LIN15と称する):1個の残基がオフセットしている標的配列(配列番号5:QGMLPVCPLIPGSSTTSTGPCRTCMTTAQGTSMYPSCCCTKPSDGNCTCIPIPSSWAFGKFLWEWASARFSW;J02203(D、ayw3))に由来する直鎖状15merペプチド。ネイティブCys残基はアセトアミドメチル基(「Acm」とも称される;それぞれのアミノ酸配列において「2」と表される)によって保護されている。
- セット2(LIN22と称する):1個の残基がオフセットしている標的配列(配列番号5:QGMLPVCPLIPGSSTTSTGPCRTCMTTAQGTSMYPSCCCTKPSDGNCTCIPIPSSWAFGKFLWEWASARFSW;J02203(D、ayw3))に由来する直鎖状22merペプチド。ネイティブCys残基はAcm(「2」と表される)によって保護されている。
- セット3(LIN30と称する):1個の残基がオフセットしている標的配列(配列番号5:QGMLPVCPLIPGSSTTSTGPCRTCMTTAQGTSMYPSCCCTKPSDGNCTCIPIPSSWAFGKFLWEWASARFSW;J02203(D、ayw3))に由来する直鎖状30merペプチド。ネイティブCys残基はAcm(「2」と表される)によって保護されている。
- セット4(LIN15.AAと称する):9位及び10位の残基がAlaによって置換されていることを除いてセット1のペプチド。ネイティブAlaがいずれかの位置に存在していたとき、Glyによって置換した。
- セット5(LIN22.AAと称する):12位及び13位の残基がAlaによって置換されていることを除いてセット2のペプチド。ネイティブAlaがいずれかの位置に存在していたとき、Glyによって置換した。
- セット6(LIN30.AAと称する):16位及び17位の残基がAlaによって置換されていることを除いてセット3のペプチド。ネイティブAlaがいずれかの位置に存在していたとき、Glyによって置換した。
- セット7(CYS.Aと称する):長さ27のコンビナトリアルペプチド。1位~11位及び17位~27位では、対合しているCys残基を含有する直鎖状配列である。これら11mer配列は、「GGSGG」(配列番号79)リンカーを介して結合していた。ジスルフィド架橋の形成に関与していないCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット8(CYS.Bと称する):ジスルフィド架橋を形成する2個のCysを含有する直鎖状22mer配列。ジスルフィド架橋の形成に関与していないCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット9(LOOP12と称する):長さ12の拘束性ペプチド。2位~11位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する10mer配列である。1位及び12位は、mP2 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット10(LOOP15と称する):長さ15の拘束性ペプチド。2位~14位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する13mer配列である。1位及び15位は、mP2 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット11(LOOP21と称する):長さ21の拘束性ペプチド。2位~20位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する19mer配列である。1位及び21位は、mP2 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット12(LOOP31と称する):長さ31の拘束性ペプチド。2位~30位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する29mer配列である。1位及び31位は、mP2 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット13(MAT.Aと称する):長さ25のコンビナトリアルペプチド。2位~12位及び14位~24位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する11merペプチドである。1位、13位、及び25位は、T3 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット14(MAT.Bと称する):長さ28のコンビナトリアルペプチド。2位~12位及び14位~27位では、それぞれ11mer及び14merペプチドである。1位、13位、及び28位は、T3 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット15(MAT.Cと称する):長さ28のコンビナトリアルペプチド。2位~15位及び17位~27位では、それぞれ14mer及び11merのペプチドである。1位、16位、及び28位は、T3 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット16(MAT.Dと称する):長さ31のコンビナトリアルペプチド。2位~15位及び17位~30位では、HBV-S-Agの抗原性ループの標的配列に由来する14merペプチドである。1位、16位、及び31位は、T3 CLIPSによって結合されているCys残基である。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
【0306】
高ストリンジェンシー条件下で試験したとき、抗体HBC34は、アレイ上に存在するいずれのペプチドにも結合しなかった。低ストリンジェンシー条件下(0.1%Pepscanバッファ及びウマ血清及びオボアルブミンの組合せを含有するプレコンティショニング中5μg/mL)で試験したとき、抗体が結合している拘束性及びコンビナトリアルペプチド(セット14及びセット16に由来するペプチドに結合している)は、セット13及びセット15と比較して若干少なかった。直鎖状ペプチド模倣体では結合が記録されなかった。データを
図17に示す。これらデータは、抗体HBC34がペプチド伸長
18TGPCRTC
24(配列番号80)及び
45GNCTCIP
51(配列番号81)で構成される立体構造的不連続エピトープを認識することを示し、ここで、ペプチド伸長
18TGPCRTC
24(配列番号80)がエピトープのドミナントな部分である(
図17)。
【0307】
上記結果に基づく完全置換分析を用いて抗体HBC34のエピトープを精細にマッピングするために、3つの異なるセットで構成される812個の不連続又はループ状のT3 CLIPSペプチドを合成した:
- セット1(RN1と称する;不連続T3 CLIPS):不連続模倣体C2IPIPSSWAFGCSTTSTGP2RT2C(配列番号82)に由来するエピトープ突然変異体シリーズ。この配列の各位置について、置換分析を実施した。言い換えれば、ペプチド配列の各位置について、かかる位置における元のアミノ酸が、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、ロイシン(L)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、バリン(V)、チロシン(Y)、及び「_」(「_」は、残基の欠失を意味する)からなる群から選択される13種のアミノ酸のうちの1つによって置換されている変異体を作製した。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット2(RN2と称する;不連続T3 CLIPS):不連続模倣体CGN2T2IPIPSSWAFCSTTSTGP2RT2C(配列番号83)に由来するエピトープ突然変異体シリーズ。この配列の各位置について、セット1と同様に置換分析を実施した(即ち、GN2T残基は突然変異していなかった)。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
- セット3(RN3と称する;Loop T3 CLIPS):ループ状模倣体CGGGCSTTSTGP2RT2C_(配列番号84)に由来するエピトープ突然変異体シリーズ。この配列の6位~16位について、セット1と同様に置換分析を実施した。ネイティブCys残基は、Acmによって保護されている(「2」と表される)。
【0308】
0.1%SQ(ウマ血清及びオボアルブミンの組合せを0.1%含有するPepscanバッファ)でプレコンティショニングしたペプチドアレイ上にて20μg/mLでHBC34抗体をPEPSCANベースのELISAにおいて試験した。ペプチドアレイをHBC34抗体溶液と共にインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、25℃で1時間、適切な抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA)の1/1,000希釈物と共にペプチドアレイをインキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)及び20μL/mL 3%H2O2を添加した。1時間後、発色を測定した。電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムを用いて発色を定量した。
【0309】
予測通り、低ストリンジェンシー条件下で試験したとき、抗体HBC34は、全てのセットのペプチドに結合した。実験の結果は、残基
120PCR
122及びC
124が結合にとって重要であるが、特定の残基I150、I152、W156、及びF158の置換のみが結合を顕著に減少させることを示す(
図18)。更に、3つ全てのアレイに記録されたデータは、領域
114STTSTGPCRTC
124(配列番号85)内の任意の残基をEで置換すると結合が減少するが、R又はYで逆置換すると結合が増加することを明確に示した。しかし、これは領域
145GNCTCIPIPSSWAFC
159(配列番号86)では観察されなかった。
【0310】
まとめると、これら結果は、抗体HBC34が不連続エピトープを認識し、残基120PCR122及びC124が結合にとって重要であることを示唆する。残基145GNCTCIPIPSSWAF158(配列番号87)の存在は、エピトープを確立及び安定化するための構造的状況を提供することが示された(パラトープ相互作用)。この結論は、不連続エピトープ模倣体(145GNCTCIPIPSSWAF158(配列番号87)及び114STTSTGPCRTC124(配列番号85)が1つの模倣体中に存在するとき)が、配列114STTSTGPCRTC124(配列番号85)のみ(セット3、RN3)よりも置換に対する抵抗性が強いという知見から得られた。更に、ねじれ角を固定して立体構造の剛性を提供するP151は、特に逆の特性で知られているGによって置換されたとき、結合に影響を与えることが示された。置換G145Pは、同様に、HBC34の結合に影響を与える。R/Y置換はモチーフ114STTSTGPCRTC124(配列番号85)内の任意の位置に対する結合を改善するが、モチーフ145GNCTCIPIPSSWAF158(配列番号87)内では改善せず、一方、E置換は結合を減少させることが繰り返し観察された。この所見は、残基114STTSTGPCRTC124(配列番号85)が抗体HBC34内の負に帯電しているパラトープに結合し(即ち、負電荷のクラスタに近接し)、結合の改善及び静電力からの減少した結果であり、むしろ、エピトープではなくパラトープの特徴を特徴付けることを示唆し得る。
【0311】
実施例10:HBC34及びラミブジンの組合せで処理された慢性的にHBVに感染しているヒト化uPAマウスにおけるHBsAgの減少増大
更なる研究では、抗体HBC34を含む併用療法の有効性について調べた。HBC34との組合せでは、ポリメラーゼ阻害剤、即ち、ラミブジンを選択した。
【0312】
慢性B型肝炎の状況を模倣するために、ナイーブヒト化uPa/SCIDマウスにHBVを感染させたところ、感染の8週間後、HBV DNAの中央レベルは2×109コピー/mL、HBsAgのレベルは9,000IU/mLに達した。これらレベルは、慢性的にHBVに感染しているヒト患者において一般的にみられるレベルと同等である。
【0313】
その後、感染後8週間目から開始して4週間に亘って、抗体HBC34のみ、ポリメラーゼ阻害剤であるラミブジンのみ、HBC34とラミブジンとの組合せ、又は対照抗体のいずれかでマウスを処理した(HBC34:1mg/kg、1週間に2回i.p.;ラミブジン:飲料水中に0.4mg/mLで添加)。
【0314】
処理の0週間目(処理前)、処理の2週間目、処理の4週間目、及び処理の6週間目、又は処理の0週間目(処理前)、処理の3週間目、及び処理の6週間目にHBVウイルス血症及び血清中のHBsAgレベルを評価した。結果を
図19A(HBVウイルス血症)及びB(HBsAG)に示す。
【0315】
図19に示す通り、HBC34、ラミブジン、又は両薬物の組合せによる処理は、それぞれ、ウイルス血症(A)を平均0.7log、1.3log、及び2.4log減少させた。尚、HBsAg(B)は、HBC34のみを投与したマウスにおいて1.3log(平均BL=15,600IU/mL)、組合せ群において2.6log(平均BL=2,600IU/mL)低下したが、ラミブジンのみで処理したマウスでは著しいHBsAg減少は検出されなかった(0.2log;平均BL=9,000IU/mL)。
【0316】
要約すると、HBC34とラミブジンとの組合せによって、最も強い効果が明らかに得られた。興味深いことに、ラミブジンのみが有効ではなかった場合さえも、HBC34とラミブジンとの組合せのかかる強力な効果が観察された。それに鑑みて、HBC34とラミブジンとの組合せの観察された強力な効果は、明らかに、予想外の相乗効果である。
【0317】
要約すると、併用療法において達成された驚くほど強力なHBsAgの減少は、HBV単独感染患者及びHBV/HDV同時感染患者の両方においてHBsAgのクリアランスを促進するために、ポリメラーゼ阻害剤と組み合わせて、例えば慢性の状況において、HBC34抗体を使用できることを証明する。
【0318】
実施例11:HBC34抗体の配列操作:VH及びVLのCDR3
(i)VH CDR3の残基W107のA又はFへの、(ii)VH CDR3の残基M115のI又はLへの、及び/又は(iii)VL CDR3の残基W107のA又はFへの突然変異によって、VH及びVLのCDR3に突然変異を有するHBC34突然変異体の第1のシリーズを作製した。
図20及び
図21に示す通り、HBC34の突然変異していないVH又はVL(以後WT、野生型、又は親抗体と称する)とVH及びVL突然変異体の様々な組合せとを合わせることによって合計18種のHBC34変異体を作製した。
【0319】
実施例1と同様に、作製したHBC34抗体変異体をHBsAg adw抗原への結合についてELISAによって試験した。結果を
図21に示す。
【0320】
注目すべきことに、VH CDR3のW107のAへの突然変異(HBC34-V5、HBC34-V8、HBC34-V9、HBC34-V10、HBC34-V12、及びHBC34-V17変異体において、
図21)は、HBC34のHBsAgへの結合を完全に消失させた。これは、W107が抗原を認識するためのHBC34パラトープにおいて重要な残基であることを示す。VH CDR3のW107のF(Wと同様の芳香族特徴を有するアミノ酸)への突然変異は、HBC34の結合に部分的に影響を与え(HBC34-V1)、これは、HBC34のHBsAgに対する結合親和性を損なわせることなしにWを突然変異させることはできないことを示す。
【0321】
VH CDR3のM115のLへの突然変異はHBC34の結合に影響を与えなかった(HBC34-V13)が、Iへの突然変異(HBC34-V11)は、HBC34の結合を部分的に減少させた。このことは、HBC34の結合を損なわせることなしにM115をLによって置換することはできるが、Iによって置換することはできないことを示す。単一突然変異W107Aで得られた結果と一致して、二重突然変異W107A及びM115A(HBC34-V10)はHBC34の結合を完全に消失させた。
【0322】
VL CDR3のW107のFへの突然変異は、HBC34の結合に影響を与えなかった(HBC34-V7)が、Aへの突然変異(HBC34-V15)は、HBC34の結合を部分的に減少させた。このことは、HBC34の結合を損なわせることなしにVL CDR3のW107をFによって置換することはできるが、Aによって置換することができないことを示す。予測通り、VHのCDR3におけるW107F及びVLのCDR3におけるW107Aの突然変異の組合せは、結合を完全に消失させた(HBC34-v2)。VH CDR3におけるM115L及びVL CDR3におけるW107Fの突然変異の組合せ(HBC34-V6)、VH CDR3におけるM115I及びVL CDR3におけるW107Fの突然変異の組合せ(HBC34-v4)、並びにVH CDR3におけるW107F及びVL CDR3におけるW107Fの突然変異の組合せは、HBC34のHBsAgへの結合に部分的に影響を与えた。このことは、個々の突然変異ではなく、これら2つの突然変異の組合せが、親HBC34抗体の結合親和性を保持するために適合しないことを示す。
【0323】
次の工程では、(i)最初の結果を確認するため;(ii)ELISAによる結合親和性を測定するため(即ち、結合のEC50を測定するため);及び(iii)一過的にトランスフェクトされた293-Expi細胞からのこれらHBC34変異体の生産性を評価するために、上記18種のHBC34変異体のうちの6種を更なる特性評価のために選択した(HBC34-V1、V3、V4、V6、V7、V11、及びV13)(
図22及び
図23)。
【0324】
最初の実験で観察された通り、HBC34-V3変異体(二重突然変異VH CDR3のW107F及びVL CDR3のW107Fを保有)は、親HBC34抗体と比べて9倍高いEC50でHBsAg(adw血清型)に結合した。更に、HBC34-V3は、HBC34と比べて略5倍低い濃度で産生される。それぞれ単一突然変異M115I及びM115Lを保有しているHBC34-V11及びHBC34-V13変異体は、HBC34と同一であるか又は僅かに高いEC50でHBsAgに結合した。しかし、両変異体の生産性はHBC34よりも僅かに低かった(HBC34と比較したとき、0.6倍及び0.3倍生産性が低い)。これら結果は、HBC34-V11及び更にはHBC34-V13変異体が、HBsAgに対して高い親和性で結合するが、哺乳類細胞における産生効率は低いことを示す。同様に、VH CDR3における単一突然変異W107Fを保有しているHBC34-V1変異体は、HBC34と同等にHBsAgと結合した(1.6倍高いEC50)が、HBC34と比較して産生効率は4倍低かった(即ち、0.25倍)。VL CDR3のW107とVH CDR3のW107、M115I、又はM115Lとの組合せ(HBC34-V3、HBC34-V4、及びHBC34-V6)は、結合親和性(1.6倍~9.0倍高いEC50)及び生産性(培養上清中の抗体濃度が0.20倍~0.35倍低い)の両方を低下させた。驚くべきことに、VL CDR3の単一突然変異W107F(HBC34-V7)は、HBC34と同様にHBsAgに結合し、HBC34よりも更に高い効率で(最高1.7倍)産生され、培養上清中533μg/mLという顕著に高い濃度に達した(
図23)。
【0325】
実施例12:HBC34抗体の配列操作:フレームワーク領域
HBC34非突然変異型の共通祖先(HBC34-UCA)でみられる残基に対応するVH及びVLの両方のフレームワーク領域(FR)に幾つかの突然変異を導入し(
図20)、VH CDR3突然変異M115L及びVL CDR3突然変異W107Fと組み合わせた12種の追加のHBC34変異体を作製した(HBC34-V19~HBC34-V30;
図24A)。
【0326】
結果を
図24に示す。VL CDR3におけるW107突然変異の存在下でVLのFRに9個の突然変異を導入し(HBC34-27、HBC34-V28、HBC34-V29、及びHBC34-V30)、WT、M115Lと組み合わせると、HBC34のHBsAgへの結合が著しく減少した。したがって、これは、VLにおける突然変異型残基の重要な役割を示す(
図24A~B)。上記と同じVL変異体(即ち、W107F/FR1234-GL)をM115L突然変異及びFRにおける更なる9個の突然変異を保有しているVHと組み合わせたHBC34変異体は、HBsAgに結合しなかった。このことは、VH及びVLの両方における突然変異がHBsAg結合に本質的に寄与していることを示す。
【0327】
重要なことに、HBC34-V23及びHBC34-V24におけるVLのFRに導入された9個の突然変異のうちの1つだけ(即ち、K66Y)を除去すると、Y66K突然変異を保有している対応する変異体(HBC34-V27及びHBC34-V28)と比較してHBsAgに対する結合が著しく増加した(EC50が100倍低い)。同様に、HBC34-V25及びHBC34-V26においてK66Y突然変異を除去すると、Y66K突然変異を保有している対応する非結合変異体(HBC34-V27及びHBC34-V28)と比較してHBsAgの結合が回復した。
【0328】
これらの中でも、HBC34-V23変異体は、高親和性結合を保持しており(HBC34と比べてEC50が1.5倍高い)、親HBC34抗体と同様に産生された。注目すべきことに、HBC34-V23変異体とアミノ酸が1つだけ異なるHBC34-V24(即ち、VHにおけるM115L)は、HBC34-V23と同様のEC50でHBsAgに結合したが、効率的には産生されなかった(HBC34と比べて生産性が僅か0.14倍)。これら結果は、HBC34変異体のHBsAgに対する結合に著しく影響を与えることはないが、115位におけるLの存在がこの突然変異を保有しているHBC34変異体の生産性に対して負の影響を有していることを示す。実際に、M115L突然変異を保有している全てのHBC34変異体(HBC34-V6、HBC34-V13、HBC34-V19、HBC34-V20、HBC34-V21、HBC34-V22、HBC34-V24、HBC34-V25、HBC34-V26、HBC34-V28、HBC34-V29、及びHBC34-V30)は、平均して、親HBC34抗体と比較して0.3倍の平均生産性を有する。
【0329】
注目すべきことに、VH CDR3におけるM115L突然変異の存在下でVHのFRに5個又は9個の突然変異を導入しても(それぞれ、HBC34-V19及びHBC34-V20)、HBsAgへの結合は感知できるほどには減少しなかった。これは、突然変異型残基がHBC34抗体による高親和性抗原認識において重要な役割を有していないことを示唆する。HBC34-V21及びHBC34-V22におけるHBC34V19及びHBC34-V20変異体の骨格にW107F突然変異を導入すると、HBsAgに対する結合が20倍~30倍減少した。興味深いことに、同じ突然変異(即ち、VL CDR3におけるW107)は、VHのFRに同じ5個又は9個の突然変異を保有していない他の変異体の結合には影響を与えず、この結果は、VH FRにおける残基がHBsAgに対する結合においてVHの残基107と(例えば、可変領域のスカフォールドの特定の立体構造を安定化させることによって)協調的役割を有することを示し得る。
【0330】
最後に、
図23に示す実施例11の結果と一致して、VL CDR3に単一突然変異W107を保有しているHMB34-V7抗体は、HBC34と比較してHBsAgに対して同等の結合(即ち、1.4倍)を示し、HBC34よりも効率的に(1.2倍)産生された(実施した2回の実験の平均で、HBC34-V7は、HBC34抗体よりも1.5倍、即ち50%効率的に産生された)。この結果は、VL CDR3におけるW107F突然変異が、HBsAgに対する結合親和性には感知できるほどの影響は与えないが、HBC34抗体の生産性に対しては正の影響を有することを示唆する。
【0331】
最後に、HBC34並びに変異体HBC34-V6、HBC34-V7、HBC34-V19、HBC34-V23、及びHBC34-V24を、10種のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJ(
図25に示す)を認識する能力についてフローサイトメトリー分析によって試験した。具体的には、10種のHBV遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、H、I、及びJの各HBsAgを発現するプラスミドをヒト上皮細胞(Hep2細胞)にトランスフェクトした。一過的にトランスフェクトされた透過処理細胞を染色するために、複数の濃度(5,000ng/mL~7ng/mLの8つの連続希釈物)で全ての抗体を試験した。トランスフェクションの2日間後、HBC34及び5つの選択された変異体で免疫染色するために、Hep2細胞を回収し、固定し、サポニンで透過処理した。FlowJoソフトウェア(TreeStar)を備えるBecton Dickinson FACSCanto2(BD Biosciences)を使用して、トランスフェクトされた細胞に対する抗体の結合を分析した。
図25に示す通り、HBC34及び試験した5つの変異体全てが、同様のレベルで10種のHBV HBsAg遺伝子型全てを認識した。
【表25-1】
【表25-2】
【表25-3】
【表25-4】
【表25-5】
【表25-6】
【表25-7】