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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097079
(43)【公開日】2024-07-17
(54)【発明の名称】衛星の分離システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B64G1/64 500
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074170
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2022517152の分割
【原出願日】2019-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】522035281
【氏名又は名称】エキソローンチ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】グルーバー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィマー,ペーター
(57)【要約】
【課題】 打上げ機からの衝撃のない、円滑で直線的な衛星の展開を可能にする分離システムを提供する。
【解決手段】 本発明は、打上げ機に搭載するための第1のリングと、衛星に搭載するための第2のリングと、第1および第2のリングに分離力を作用させる展開手段と、を備えた、打上げ機から放出軸に沿って衛星を打ち出す分離システムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打上げ機から放出軸(D)に沿って衛星を打ち出す分離システム(20)であって、
- 前記打上げ機に取り付けるための第1のリング(22)と、
- 前記衛星に取り付けるための第2のリング(24)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)を保持位置に相互接続する保持手段と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)に分離力を作用させる展開手段(26)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)の相互接続を解放する解放手段(40)と、
を備え、
- 前記展開手段(26)によって作用される分離力は、解放されると同時に増加する、分離システム(20)。
【請求項2】
前記展開手段(26)は、第1のグループのスプリング(54)および第2のグループのスプリング(56)を備え、前記第1のグループのスプリング(54)は、前記第2のグループのスプリング(56)のスプリング力と比較して異なるスプリング力を有することを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項3】
少なくとも1つの作動リング(36a,36b,52)が、前記第1のリング(22)に摺動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項4】
少なくとも2つの作動リング(36a,36b)が、前記第1のリング(22)に摺動可能に取り付けられており、前記解放手段(40)が、前記2つの作動リング(36a,36b)を互いに対して反対方向に駆動することを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項5】
前記保持手段が、前記第1のリング(22)および前記第2のリング(24)の円周に沿って分散された複数の保持装置(30)を備えることを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項6】
前記保持装置(30)は、それぞれ、互いに対して反対方向に移動可能な2つの連結ブラケット(32a,32b)を備え、前記連結ブラケット(32a,32b)は、2つの作動リング(36a,36b)によって同時に移動することを特徴とする請求項5に記載の分離システム(20)。
【請求項7】
前記保持装置(30)は、それぞれ、前記連結ブラケット(32a,32b)の間に固定レセプタクル(34)を備えることを特徴とする請求項6に記載の分離システム(20)。
【請求項8】
複数の操作レバー(42)が、前記第1のリング(22)に枢動可能に取り付けられ、前記操作レバー(42)が、前記第1のリング(22)に互いに対して反対方向に摺動可能に取り付けられた、2つの作動リング(36a,36b)を駆動することを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項9】
前記分離システム(20)は、前記複数の操作レバー(42)の1つに連結されたスタータ機構(62)を備え、前記スタータ機構(62)は、前記操作レバー(42)を作動させることを特徴とする請求項8に記載の分離システム(20)。
【請求項10】
前記展開手段(26)が、複数のレバー機構を備え、前記レバー機構は、それぞれ、互いに枢動可能に接続された第1のレバー(48)および第2のレバー(50)を備えることを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項11】
第1のグループのスプリング(54)が、前記第1のリング(22)と、前記第1のリング(22)に摺動可能に取り付けられた作動リング(52)と、を接続することを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項12】
前記保持位置では、前記第1のレバー(48)および前記第2のレバー(50)の一方に配置されたスタータスプリング(56)が、前記第1のレバー(48)および前記第2のレバー(50)の他方にスプリング力を作用させることを特徴とする請求項10に記載の分離システム(20)。
【請求項13】
前記スタータスプリング(56)が、前記第1のリング(22)の接平面に配置されることを特徴とする請求項12に記載の分離システム(20)。
【請求項14】
前記第1のレバー(48)の第1の端部および前記第2のレバー(50)の第1の端部は、それぞれ、2つの垂直軸(S1,S2)を中心として旋回するように取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載の分離システム。
【請求項15】
前記各スプリング(54,56)の長手方向軸は、前記第1のリング(22)に対して接線方向に配置されることを特徴とする請求項2に記載の分離システム(20)。
【請求項16】
前記放出軸(D)に沿った、保持位置と解放位置との間の第1のリング(22)に対する第2のリング(24)の最大移動範囲は、少なくとも4cm、好ましくは少なくとも6cmであり、特に最大8cmであることを特徴とする請求項1に記載の分離システム(20)。
【請求項17】
打上げ機から放出軸(D)に沿って衛星を打ち出すための分離システム(20)であって、
- 前記打上げ機に取り付けるための第1のリング(22)と、
- 前記衛星に取り付けるための第2のリング(24)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)を保持位置に相互接続する保持手段と、
- 少なくとも1つのスプリング(54)によって前記第1のリング(22)を前記第2のリング(24)から分離する展開手段(26)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)の相互接続を解放する解放手段(40)と、
を備え、
- 前記スプリング(54)が、前記第2のリング(24)を解放可能に支持するレバー機構に連結されている、分離システム(20)。
【請求項18】
前記レバー機構のすべてのレバー(48,50)が、機械的制限誘導を介して連結されていることを特徴とする請求項17に記載の分離システム(20)。
【請求項19】
前記放出軸(D)に沿った前記レバー機構のレバー(48,50)の移動範囲は、前記スプリング(54)の移動範囲よりも大きいことを特徴とする請求項17に記載の分離システム(20)。
【請求項20】
前記展開手段(26)によって作用される分離力は、解放されると同時に増加することを特徴とする請求項17に記載の分離システム(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打上げ機に搭載するための第1のリングと、衛星に搭載するための第2のリングと、第1および第2のリングに分離力を作用させる展開手段と、を備えた、打上げ機から放出軸に沿って衛星を打ち出す分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星、特に最大約150kgのマイクロサテライトは、通常、打上げ機(launch vehicle)を備えたロケットによって軌道に運ばれ、打上げ機から分離システムによって分離される。公知の分離システムは、ベルトのような構造を使用して、衛星を打上げ機に固定して輸送する。軌道上では、ベルトが解放され、それによって、予荷重されたスプリングが弛緩し、衛星を打ち出す。スプリングは通常、わずか約2cmのストロークを特徴とする。したがって、蓄積されたエネルギー、つまりスプリング力は非常に短い移動経路に亘って完全に解放され、衛星に衝撃を及ぼす。これは、敏感な衛星、光ペイロード、および電子部品に損傷を与えるリスクをもたらす。保持力が分離システムの円周に沿って不均一に解放される場合、衛星の展開中に望ましくない傾斜モーメントが発生する可能性があることは、そのようなシステムのさらなるリスクである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、打上げ機からの衝撃のない、円滑で直線的な衛星の展開を可能にする分離システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の分離システムによって達成され、特に、第1および第2のリングに分離力を作用させる展開手段を備え、その展開手段によって作用される分離力は、解放されると同時に増加する、分離システムによって達成される。この目的はまた、請求項17に記載の分離システムによって達成され、特に、少なくとも1つのスプリングによって第1のリングを第2のリングから分離する展開手段を備え、前記のスプリングは、第2のリングを解放可能に支持するレバー機構に連結されている、分離システムによって達成される。
【0005】
本発明の実施形態によれば、打上げ機から放出軸に沿って衛星を打ち出す分離システムが、打上げ機に取り付けるための第1のリングと、衛星に取り付けるための第2のリングと、第1のリングおよび第2のリングを保持位置に相互接続する保持手段と、第1のリングと第2のリングに分離力を作用させる展開手段と、第1および第2のリングの相互接続を解放する解放手段と、を備え、展開手段によって作用される分離力は、解放されると同時に増加する。
【0006】
本発明の一般的な考え方は、衛星の円滑な加速を確実にするために、衛星の展開が最小の分離力のみで開始されるということである。展開プロセス中の分離力のさらなる増加は、軌道への衛星の効果的な打ち出しを確実にする。このようにして、打上げ機からの衛星の衝撃のない分離を達成することができ、そのコンポーネントとペイロードの構造的および機能的な完全性を保護する。
【0007】
一般に、分離システムでは、リング状の形状以外の形状も可能である。しかしながら、信頼性が高く軽量なコンポーネントは、宇宙用途にとって最も重要である。したがって、対称的なリング形状は、最小限の数の部品および機械的部品しか必要としないため、好ましい場合がある。打上げ機の負荷を最小限に抑えるために、分離システム、またはその部品の選択、特に第1のリングおよび第2のリング、およびそれに取り付けられた他のリングは、炭素繊維などの非常に軽い材料から製造され得る。
【0008】
第1のリングおよび第2のリングは、それらの全周に沿ってそれぞれ打上げ機および衛星に取り付けられるように適合され、その結果、リングの放射面は、それぞれ打上げ機と衛星の取り付け面に対して少なくともほぼ平行に指向される。保持位置において、すなわち、衛星を軌道に輸送している間、第1のリングおよび第2のリングは、保持手段によって互いに平行に向けられたそれらの放射面で相互接続することができる。放出軸は、リングの放射面に対して少なくともほぼ垂直に向けることができる。
【0009】
分離システムはさらに、衛星に分離力を加えるための展開手段と、第1および第2のリングの相互接続を解放するための解放手段と、を備える。一般に、展開および解放手段は、第1のリングまたは第2のリングのいずれかに配置することができる。第2のリングは展開後も衛星に残っているため、それらの手段の両方が第1のリングに配置されていると有利である。
【0010】
解放手段は、第1のリングと第2のリングとを分離できるように、保持手段のロックを解除することによって保持位置を解放するように装備されている。解放手段は、少なくとも1つのスプリングまたは一群のスプリングを含み得る。スプリングは、例えば、保持位置において予荷重が印加され、衛星展開の開始時に弛緩し、それにより、それらのスプリング力によって第1および第2のリングの相互接続を解除することができる。
【0011】
一実施形態では、展開手段は、第1のグループのスプリングおよび第2のグループのスプリングを備え、第1のグループのスプリングは、第2のグループのスプリングのスプリング力と比較して異なるスプリング力を有する。これらの2つのグループのスプリングは、互いに独立して機能し、異なる時点でスプリング力を作用させる。第1のグループのスプリングは、衛星を押し出すための展開手段のメインアクチュエータを構成し得るが、第2のグループのスプリングは、特に、低減されたスプリング力で、特に、展開プロセスを開始する、支持アクチュエータとして機能し得る。したがって、スプリングの2つのグループは、特に信頼性の高い展開を保証する。
【0012】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの作動リングが第1のリングに摺動可能に取り付けられる。このような作動リングは、第1のリングと共通の中心の周りに回転可能に取り付けることができ、したがって、第1のリングに対して移動可能であり、これは、(打上げ機に対して)静的な基礎と見なされ得る。放出軸に関して、作動リングは、軸方向および横方向の並進変位に対して固定することができる。摺動可能な剛性作動リングを提供することにより、作動リングのある点で開始された作動運動は、時間遅延または減衰することなく、機械的制限誘導(mechanical restricted guidance)により、作動リングの他のすべての点に直接伝達される。それにより、作動リングの全周にわたる動作、したがって分離システムの動作に即座に応答することが保証される。
【0013】
さらなる開発では、少なくとも2つの作動リングが第1のリングに摺動可能に取り付けられ、解放手段は、前記2つの作動リングを互いに対して(円周方向に)反対方向に駆動することを意味する。2つの作動リングは、第1のリングの両側、例えば、第1のリングの半径方向外側および内側に配置することができる。それらの少なくとも2つの作動リングは、その一方の作動リングのある点で開始された動きが、機械的制限誘導によって、両方の作動リング上の他のすべての点に伝達されると同時に、その一方のリングの動きが、他方の作動リングとは反対方向への同期運動によって達成されるように連結することができる。解放手段は、例えば、スプリング力を加えることによって、それらの同期運動を互いに対して反対方向に作動させる作動リングに連結することができる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段は、第1および第2のリングの円周に沿って分散された複数の保持装置を備える。これにより、第1および第2のリングの相互接続がマルチポイント接続になり、第1のリングと第2のリングとの間の安定した連結を提供すると同時に、打上げ機に接続されている間も衛星の負荷の分散、支持を確実にするという利点がある。例えば、保持装置は、第1のリング上に配置された複数の連結装置と、第2のリング上に配置された複数の対応する連結ピンと、を備え、それらのピンは、2つのリングの相互接続を確立するために連結装置によって取り込まれ、保持されるように設計される。
【0015】
さらなる開発では、各保持装置は、互いに対して反対方向に移動可能な2つの連結ブラケットを備える。それらの連結ブラケットは、第1のリング上の連結装置の一部であり、第1のリング自体またはその追加部分、特に作動リングと接続することができる。連結ブラケットは、第1のリングに対して移動可能に配置することができ、特に、それらのブラケットは、互いに対して最大距離にあるとともに、第2のリングの連結ピンを解放するために開いている開配置(open configuration)と、互いに対して最小距離にあるとともに、第2のリングの連結ピンを囲んで保持する閉配置(closed configuration)と、の間で互いに対して反対方向に移動可能である。例えば、連結ブラケットは、その閉配置では、2つの対向する側から連結ピンを囲み、それによりそれらの連結ピンを所定の位置に固定するように配置され得る。
【0016】
連結ブラケットは、特に2つの作動リングによって同期するように動かすことができる。連結ピンのグリップを解放するために、2つの作動リングを互いに反対方向に回転させることにより、両方の連結ブラケットを離すことができる。両方の連結ブラケットを同期して取り外すことにより、連結ピン全体の周りの保持力が均等に解放されるため、傾斜モーメントの発生を防ぐことができる。すべての連結装置は作動リングを介して連結できるため、開動作は、第1のリングの円周に沿って分散されたすべての連結装置の連結ブラケットに同時に到達する。それにより、傾斜モーメントを発生させることなく、第2のリングを均一に解放することができる。
【0017】
別の実施形態によれば、各連結装置は、前記の連結ブラケットの間に固定されたレセプタクルを備える。連結ブラケットと固定レセプタクルは一緒になって、第2のリングの連結ピンを保持位置にとるための連結装置を形成する。第1のリングと第2のリングとの間の接続を確立する際、固定レセプタクルは連結ピンを正しい位置にガイドするのに役立つ。第2のステップでは、連結ブラケットを使用することで、安定した接続を確保し、適切な連結面でピンを囲むことにより、放出軸に沿った並進運動(translational movements)ならびに放出軸に垂直な並進運動に対して連結ピンを固定することができる。
【0018】
さらなる実施形態では、複数の操作レバーが第1のリングに枢動可能に取り付けられ、操作レバーは、第1のリングに互いに対して反対方向に摺動可能に取り付けられた2つの作動リングを駆動する。操作レバーは、第1のリングの旋回軸に回動可能に取り付けることができる一方、操作レバーの両側のアームはそれぞれ作動リングに接続され、それにより2つの作動リングを同時に互いに対して反対方向に駆動する。例えば、1つの操作レバーを分離システムの各連結装置に関連付けることができ、それにより、第1のリングの円周全体の周りの2つの作動リングの円滑な操作を確実にする。操作レバーの動きは、例えば、解放手段の1つのスプリングまたは一群のスプリング、例えば、操作レバーごとに1つのスプリングによって発生させることができる。
【0019】
別の実施形態では、分離システムは、操作レバーの1つに連結されたスタータ機構を備え、前記のスタータ機構は、前記の操作レバーを作動させる。スタータ機構は、打上げ機からの衛星の分離プロセスを開始するように設計される。スタータ機構は、特に、操作レバーを解放して、その操作レバーに関連する解放手段の予荷重が加えられたスプリングを弛緩させることができる。また、解放手段の他のスプリングは、同時に自由に弛緩され、スプリングに蓄積されたエネルギーは、操作レバーにより、特に互いに対して反対の円周方向への、作動リングの摺動運動に変換される。分離システム全体に亘るこの運動の、即時の非減衰伝達は、作動リングによる制限された機械的連結によって保護することができ、それにより分離メカニズムの信頼性をさらに高めることができる。
【0020】
さらなる開発では、展開手段は、それぞれが互いに枢動可能に接続された第1のレバーおよび第2のレバーを含む複数のレバー機構を備える。したがって、第1および第2のレバーは、はさみのようなレバー機構を形成し得る。第1および/または第2のレバーは、レバー機構の力の伝達を最適化するために、ねじれた形状または真っ直ぐな形状を示し得る。空間的要件のために、レバー機構を第1のリングの外側に配置することは有益であるが、一般に、レバー機構を第1のリングの内側に配置することも可能である。
【0021】
レバー機構は、第1のレバーの第1の端部および第2のレバーの第1の端部が、第1のリングまたは第1のリングに取り付けられた構成要素に固定されるように設計することができる。各レバー機構は、第2のリングに分離力を加えるために、第2のリングとの接触を確立するための少なくとも1つの点を特徴とすることができる。第2のリングとの接触点は、例えば、第1のレバーの第2の端部および/または第2のレバーの第2の端部に配置することができる。第1および第2のレバーの第2の端部は、第1および第2のレバーの第1の端部から見て、レバー機構のピボット点を越えた各々のレバーアーム上にそれぞれ配置することができる。
【0022】
衛星の展開が放出軸に沿って行われるので、レバー機構と第2のリングとの接触点の効果的な動きも放出軸に沿って向けることができる。したがって、展開位置では、第1および第2のレバーの第2の端部は、第1のリングの平面から最大距離にあり、レバー機構全体は、X字形または逆Y字形に似ている。
【0023】
保持位置では、第1のレバーと第2のレバーのレバーアームは、少なくとも互いにほぼ整列させることができ、レバー機構全体は、閉じたはさみの形状に似ている。この位置では、レバー機構は少なくともほぼ平衡位置にある。ピボット点および第1および第2のレバーの第1の端部は、ほぼ直線上に配置される。
【0024】
閉じたはさみとXのような位置との間でレバー機構を作動させると、少なくともほぼ第1のリングの平面に位置する第1および第2のレバーの第1の端部の間の距離が変化する。第1または第2のレバーの一方の第1の端部は第1のリングに固定することができ、他方は第1のリングに対して移動可能に取り付けることができる。第1のレバーおよび第2のレバーの第1の端部の間の接続線が常に第1のリングに対して接線を維持するように、動きを制限することができる。
【0025】
分離力が分離システムの全周に亘って均等に分散されるようにするために、いくつかのレバー機構を第1のリングの円周の周りに配置することができる。たとえば、いくつかのレバー機構を第1のリングの周囲に均等に配置することができる。
【0026】
別の実施形態では、第1のグループのスプリングは、第1のリングと、第1のリングに摺動可能に取り付けられた作動リングと、を接続する。作動リングの任意の点で誘発された動きは、時間遅延または減衰することなく作動リングの他のすべての点に伝達される。第1のグループのスプリングは展開手段の一部であり、展開手段を駆動することができるので、展開手段の動き、例えば、レバー機構の動きを、作動リング全体に亘って前進させることができる。これにより、すべての展開手段が同時に作動することを確実にし、展開中の傾斜モーメントを回避するのに役立つ。
【0027】
さらなる実施形態では、保持位置において、第1および第2のレバーの一方に配置されたスタータスプリングが、第1および第2のレバーの他方にスプリング力を作用させる。この第2のグループのスプリングは、展開手段の他のコンポーネントとは独立して機能し、展開の開始を支援する。レバー機構は保持位置で平衡に近いため、第2グループのスプリングによって加えられる追加のスプリング力により、展開手段の確実なトリガーが保証される。
【0028】
保持位置では、第1レバーと第2レバーのレバーアームを密接に揃えることができる。スタータスプリングは、第1および/または第2のレバーのレバーアームに配置することができ、それにより他のレバーの隣接するレバーアームによって一緒に押される、すなわち予圧される。押し戻すと、スタータスプリングは、結果として生じるスプリング力を隣接するレバーアームに作用させる。
【0029】
別の実施形態のスタータスプリングは、第1のリングの接平面に配置されている。スタータスプリングまたは一群のスタータスプリングの長手方向のスプリング軸は、分離システムの展開中に向きを変えるが、スプリング軸の再方向付けは、第1のリングの接平面または第1のリングの接平面に平行な面に限定することができる。したがって、スプリング力は最大の効率でレバー機構に向けられる。
【0030】
別の実施形態では、第1のレバーの第1の端部および第2のレバーの第1の端部は、それぞれ、2つの垂直軸を中心として旋回するように取り付けられる。それらの軸の1つは放出軸に平行にすることができ、もう1つは第1のリングの平面に平行にすることができる。このように、はさみのようなレバー機構が無制限に機能し、第1のリングの平面における第1のレバーの第1の端部と第2のレバーの第1の端部との間の距離の変化、ならびに第1のレバーと第2のレバーと第1のリングの平面との間の角度の変化を可能にする。レバー機構の歪みのない低損失の操作により、衛星の力効率の高い展開が可能となる。
【0031】
さらなる開発では、各スプリングの長手方向軸は、第1のリングに対して接線方向に配置される。第1のグループまたは第2のグループのスプリングの、またはその両方のスプリングの長手方向軸は、第1のリングの接平面に配置され得るが、展開手段の一群のスプリング、例えば、展開手段の第1のグループのスプリングはまた、それらの長手方向軸が第1のリングの平面に平行であり、第1のリングに接するように配置することができる。
【0032】
放出軸は後者の方向に少なくともほぼ垂直であるため、衛星を展開するために、スプリング力は特定の手段、例えばレバー機構によって方向を変えられなければならない。スプリング力の方向転換は、展開手段によって及ぼされる分離力が衛星の解放時に増加するように、有利に生じる。
【0033】
代替的または付加的に、分離システムの解放手段のスプリング要素もまた、各スプリングの長手方向軸を第1のリングに対して接線方向に配置された方向に向けることができる。あるいは、解放手段のスプリングの軸はまた、接線方向に平行に、例えば、第1のリングの内側に配置されてもよい。
【0034】
さらなる実施形態では、保持位置と解放位置との間の放出軸に沿った第1のリングに対する第2のリングの最大移動範囲すなわちストロークは、展開時に、少なくとも4cm、好ましくは少なくとも6cm、特に最大8cmである。そのようなストロークは、最先端のものと比較して大きく、より長い移動範囲にわたって分離力を衛星に伝達することを可能にし、衛星の激しくない加速をもたらす。特に、放出軸に沿った展開手段の移動範囲は、展開手段を操作するスプリングのスプリング移動範囲よりも大きくてもよい。衛星の解放時に増加する、展開手段によって及ぼされる分離力と組み合わされて、円滑な加速、したがって、衛星の衝撃のない展開を達成することができる。
【0035】
しかしながら、上記の主題と組み合わせることができる本発明の別の態様は、打上げ機から放出軸に沿って衛星を打ち出すための分離システムであって、打上げ機に取り付けるための第1のリングと、衛星に取り付けるための第2のリングと、第1のリングと第2のリングを保持位置に相互接続する保持手段と、少なくとも1つのスプリングによって第1のリングを第2のリングから分離する展開手段と、第1のリングと第2のリングの相互接続を解放する解放手段と、を備え、前記スプリングが、第2のリングを解放可能に支持するレバー機構に連結されている。
【0036】
本発明のこの態様の一般的な考え方は、スプリングによって加えられる分離力が、第1のリングと第2のリングとの間に直接作用するのではなく、レバー機構を介して衛星に加えられるというものである。それにより、スプリング力の発達は、レバー機構の設計によって影響を受け、特に、長い移動範囲に亘る最小の初期力(initial force)での、衛星の誘導された滑らかな加速を実現することができる。レバー機構は、複数のレバーまたは一群のレバーを含み得る。
【0037】
本発明の第1の態様によるすべての利点は、本発明のこの態様でも達成することができる。
【0038】
一実施形態では、レバー機構のすべてのレバーは、機械的な制限された誘導を介して連結される。したがって、レバー機構の1つのレバーの動きは、時間遅延なしに、そして減衰することなく、レバー機構のすべてのレバーに伝達され、展開手段による第2のリングへの分離力の同時かつ同期の作用を確実にする。
【0039】
さらなる開発では、放出軸に沿ったレバー機構のレバーの移動範囲は、スプリングの移動範囲よりも大きい。したがって、スプリング力が作用する移動範囲を拡大しながら、スプリング力がレバー機構によって第2のリングに伝達され、それにより、展開手段、したがって衛星へのスプリング力の激しくない印加を提供する。
【0040】
別の実施形態では、展開手段によって及ぼされる分離力は、解放時に増加する。レバー機構は、衛星展開の開始時に展開手段に低い力を伝達するように設計することができるが、展開手段に伝達される力は展開プロセスに亘って増加する。これにより、衛星の円滑な加速が保証され、これは、敏感な機器の構造的および機能的な完全性を損なわないようにするために有益である。
【0041】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、説明、および図面から見ることができる。本発明は、概略図を参照しながら、以下に一例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】放出状態の分離システムの上面斜視図である。
図2】保持位置で打上げ機に取り付けられるように構成された図1の分離システムの一部の上面斜視図である。
図3図2の分離システムの一部の底面斜視図である。
図4】保持位置にある分離システムの展開手段のレバー機構の側面図である。
図5】保持位置にあるスタータ機構の上面図である。
図6】解放位置にある図5のスタータ機構の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面は、打上げ機に取り付けられ、それにより打上げ機に関する静止基盤を形成するように構成された第1のリング22と、衛星に取り付けられ、第1のリング22に対して可動であり、そこから解放可能なように構成された第2のリング24と、を備えた分離システム20を示す。第1のリング22および第2のリング24の中心軸は、それに沿って衛星が軌道上に打ち出される放出軸Dを規定する。
【0044】
図1は、解放状態の分離システム20を示す。これはまた、分離システム20を輸送状態にする前の地球上での状態であり、輸送状態では、第1のリング22および第2のリング24がしっかりと圧縮されて(図4)、同軸に配置される。解放状態では、第2のリング24は、接触部位28において第1のリング22の展開手段26のみによって支持される。
【0045】
第1のリング22および第2のリング24をしっかりと圧縮された輸送状態に保持するために、分離システム20は、保持手段を備える。保持手段は、分離システム20の周囲に沿って分散された複数の保持装置30を含み、各保持装置30は、それぞれ第1のリング22および第2のリング24上に配置された相補的な対応部を含む。各保持装置30は、第2のリング上に配置された連結ピン38と、第1のリング22上に配置された相補的な連結装置と、を備える。各連結装置は、第1のリング22に沿って互いに反対方向に移動可能な2つの連結ブラケット32a,32bと、それらの連結ブラケット32a,32bの間に配置された固定レセプタクル34と、を含む。解放状態では、図1に示すように、連結ブラケット32a,32bは、互いに最大距離にある(図6)。
【0046】
固定レセプタクル34は、第1のリング22上に配置される。連結ブラケット32a,32bは、別々の作動リング上、すなわち、第1のリング22にそれぞれ回転可能に取り付けられるとともに、同軸に配置された外側作動リング36aおよび内側作動リング36b上に配置される。作動リング36aおよび36bを互いに反対の円周方向に回転させることにより、連結ブラケット32a,32bは、図1,6に示す開配置と、図2,5に示す閉配置と、の間を同期して移動することができる。
【0047】
それらの開配置では、分離システム20を輸送状態にするために、連結装置は、第2のリング24の周囲に沿って配置されるとともに、第1のリング22上の連結装置の位置と位置合わせされた、第2のリング24の対応する連結ピン38を受け入れることができる。衛星を軌道上に展開している間、第2のリング24の連結ピン38は、それらの開配置において連結装置から解放することができる。
【0048】
連結ピン38は、様々な形状を有することができる。図1に示されるように、それらの連結ピンは、閉配置において、連結ブラケット32a,32bの対応する連結面によって閉じられ、所定の位置に保持されるように設計されたノブのような形状を示してもよい。
【0049】
外側および内側作動リング36aおよび36b、したがって連結ブラケット32a,32bの動作は、解放手段40によって行われる。解放手段40は、それぞれのピボット44において第1のリング22に枢動可能に取り付けられた複数の2アーム操作レバー42を備える。各操作レバー42の内側アームは内側作動リング36bに接続され、各操作レバー42の外側アームは外側作動リング36aに接続され、それによりピボット44を中心に枢動させると、作動リング36aおよび36bを互いに関して反対側の円周方向に駆動する。これは、図5図6を比較すると最もよく理解することができる。
【0050】
解放手段40は、複数の解放スプリング46をさらに備え、それらは、それぞれ、各操作レバー42に連結され、作動させるように設計される。図1,6に示されるように、解放スプリング46は弛緩位置にあり、これは、連結ブラケット32a,32bの開配置に対応する操作レバー42のレバー位置を確立する。
【0051】
衛星を軌道上に打ち出すために、分離システム20は、第1のリング22および第2のリング24に分離力を作用させる展開手段26を備える。
【0052】
展開手段26は、複数のレバー機構を備え、それらの機構は、それぞれ、はさみのような形状を有するように中央ピボット49で互いに枢動可能に接続された、第1のレバー48および第2のレバー50を備える。
【0053】
図1は、逆Yに似た形状をとる解放状態のレバー機構を示す。それぞれの第1の端部の領域において、第1および第2のレバー48,50の両方が、第1のリング22に直接、またはそのリングに取り付けられたコンポーネントに間接的に取り付けられる。特に、第2のレバー50の第1の端部は、第1のリング22に接続される一方、第1のレバー48の第1の端部は、第1のリング22に回転可能に取り付けられるとともに第1のリングと同軸である、第3の作動リング52に接続される。第3の作動リング52は、はさみのようなレバー機構が開状態(図1)と閉状態(図4)との間を移動するときに前後に回転する。
【0054】
図1~3に示されるように、分離システム20は、第1のリング22の円周の周りに均等に分散された4つのレバー機構を備える。4つのレバー機構の同時操作は、分離システム20により傾斜モーメントを誘発することなく、放出軸Dに沿った、すなわち第1のリング22の平面に対して垂直な、衛星の直線的な展開を確実にする。第1のレバー48の第2の端部は、それぞれ、第2のリング24との接触点28を形成し、それにより、軌道上での衛星の打ち出し時に第2のリング24に対し、展開手段26の分離力を作用させる。
【0055】
展開手段26は、第1のグループのスプリング54および第2のグループのスプリング56をさらに含む。第1のグループのスプリング54は、第2のグループのスプリング56のスプリング力とは異なるスプリング力を有する。スプリング54および56はそれぞれ、予荷重時にスプリングの圧縮が発生する長手方向軸を規定する。第1のグループの各スプリング54および第2のグループの各スプリング56の長手方向軸は、第1のリング22に対して接線方向に配置される。特に、第1のグループのスプリング54の長手方向軸は、第1のリング22の平面に対して平行に指向される一方、第2のグループのスプリング56の長手方向軸は、第1のリング22に接し、かつ放出軸Dに平行な平面に指向される。
【0056】
図1は、分離システムの解放状態に対応する弛緩状態にある第1のグループのスプリング54を示す。この位置では、第2のリング24は第1のリング22から取り外し可能である。第1のグループのスプリング54は、第1のリング22を第3の作動リング52に接続し、これは図3に最もよく見られる。この実施例では、第1のグループのスプリング54は、第2のレバー50と第1のリング22との接続点の領域で第1のリング22に連結され、第1のレバー48と第3の作動リング52との接続点の領域で第3の作動リング52に連結される。しかしながら、第1のグループのスプリング54を、第1のリング22および作動リング52の円周の周りの他の位置に配置することも可能である。
【0057】
第1のグループのスプリング54は、第1のリング22に対して第3の作動リング52を回転させるためのアクチュエータとして機能する。最終的に、展開手段26のレバー機構の第1および第2のレバー48,50のすべては、第1のリング22および第3の作動リング52による機械的制限誘導(mechanical restricted guidance)を介して互いに連結され、すなわち、レバー48,50の1つの動きは、リング22,52を介して他のすべてのレバー48,50に直ちに伝達される。
【0058】
第2のグループのスプリング56は、例えば、図4に見ることができ、これは、保持状態にある展開手段26のレバー機構の詳細な側面図を示している。第2のグループのスプリング56は、スタータスプリングとして作動し、衛星の展開時にレバー機構の初期操作を補助する。スタータスプリング56は、第2のレバー50の各々の1つのアームに配置され、保持状態では、それらは関連する第1のレバー48によって復元力に抗して圧縮される。次に、スタータスプリング56は、関連する第1のレバー48にスプリング力を作用させる。代替的に、スタータスプリング56は、第1のレバー48、または第1および第2のレバー48,50の両方に配置されてもよい。
【0059】
第1のレバー48の第1の端部および第2のレバー50の第1の端部はそれぞれ、互いに垂直である2つの軸S1およびS2を中心として回転可能に取り付けられている。したがって、第1のグループのスプリング54が弛緩状態から予荷重状態に、またはその逆となり、その過程でそれらの長手方向の伸びが変化するとき(図5および6)、第1のグループのスプリング54の長手方向軸は、第1のリング22に対して接線方向に配向されたままである。
【0060】
図2は、輸送または保持状態にある分離システム20を示す。図1の解放状態から図2の輸送状態への移行には、次の手順が含まれる。
【0061】
展開手段26は、レバー機構を閉じた状態に折り畳むことによって、例えば、第2のリング24を展開手段26の接点28と位置合わせし、第2のリング24を第1のリング22上に下向きに押すことによって、輸送状態にされる。したがって、第2のリング24の連結ピン38は、第1のリング22の固定レセプタクル34内の、連結装置の連結ブラケット32a,32bの間にもたらされる。
【0062】
それにより、第1のグループのスプリング54は、長さが延長され、したがって、第1のリング22に対する第3の作動リング52の回転によって予荷重が印加される(図3)。第1および第2のレバー48,50のアームは、互いに密接に位置合わせされ、第2のグループのスプリング56は、圧縮され、したがって、第1のレバー48によって予荷重が印加される。適切に設計された工具を使用して、展開手段26を保持位置に移動させ、それにより第1のグループのスプリング54および第2のグループのスプリング56に予荷重を掛けるように補助してもよい(図4)。この保持状態では、第1のレバー48の第1の端部、中央のピボット49、および第2のレバー50の第1の端部は、互いにほぼ整列している。したがって、この保持状態では、レバー機構は少なくともほぼ平衡状態にある。
【0063】
展開手段26をその保持位置に固定するために、固定ボルト58が、第1のレバー48および第2のレバー50、ならびに第1のリング22および第3の作動リング52の開口部60に挿入される。固定ボルト58は、第1のリング22に対する第3の作動リング52の移動、および、第1および第2のグループのスプリング54,56による展開手段26の作動を防止する。分離システム20を軌道に輸送する前に、固定ボルト58が取り外される。
【0064】
連結ブラケット32a,32bの閉配置への移動は、操作レバー42を旋回させることによって、外側および内側作動リング36a,36bを互いに対して反対方向に回転させることによって行われる。この目的のために、レバー延長部(図示せず)を、第1のリング22の反対側に位置する操作レバー42の付属物72に取り付けることができる。レバー延長部を操作することにより、すべての解放スプリング46の予荷重およびすべての連結ブラケット32a,32bの閉鎖が同時に達成される。
【0065】
予荷重された解放スプリング46によって操作レバー42にスプリング力が印加されるにもかかわらず、操作レバー42を保持位置に固定するために、分離システム20は、操作レバー42の1つに連結されたスタータ機構62を備える。スタータ機構62の動作は、図5,6から得ることができる。スタータ機構62は、関連する操作レバー42をその保持位置(図5)に固定する遮断ボルト64を備える。外側および内側作動リング36a,36bによるすべての操作レバー42の直接の連結により、すべての操作レバー42、したがって解放手段40は、保持位置に固定される。遮断ボルト64は、ロッカーレバー68の第1のアームに設けられた第1の磁性板70aと協働する第1の磁石66aと、ロッカーレバー68の第2のアームに設けられた第2の磁性板70bと協働する第2の磁石66bと、によって定位置に保持される。ロッカーレバー68は、ロッド69によって遮断ボルト64に接続され、そのロッド69は、第1および第2の磁石66a,66bが第1および第2の磁性板70a,70bを保持するときに、操作レバー42の動作を遮断する位置に遮断ボルト64を保持する。第1および第2の磁石66a,66bは、エネルギー入力なしで保持力を生成する永久磁石であってもよい。
【0066】
分離システム20の輸送状態から開始して、第2のリング24の展開は、以下のように行われる。展開の開始は、図6に示すように、スタータ機構62によって誘導される。第1の磁石66aの磁場が、例えば電気的に誘導された対向する場によって低減され、第1の磁石66aによって第1の磁性板70aに及ぼされる保持力が低減されまたは打ち消され、ロッカーレバー68を、例えばスプリング71によって回動させ、遮断ボルト64を解放する。冗長性は、ロッカーレバー68の第2のアームによってスタータ機構62に組み込まれる。衛星の展開中に、分離システム20は、ロッカーレバー68の両方のアームを互いに独立して連続して解放するようにプログラムされ得る。ロッカーレバー68の第1のアームが遮断ボルト64を解放できない場合、他のアームが作動され得る。
【0067】
遮断ボルト64によって以前に保持された操作レバー42が解放され、複数の予荷重された解放スプリング46が、分離システム20の円周全体に亘って同時に弛緩する。結果として複数の操作レバー42が同時に回転するため、外側および内側作動リング36a,36bが円周方向に互いに対して反対側に回転し、それにより、複数の連結ブラケット32a,32bを、分離システム20の円周全体に亘って同時にそれらの開配置に移動させる。
【0068】
したがって、連結ピン38上の連結ブラケット32a,32bの保持力はキャンセルされ、展開手段26の予圧されたスプリング54,56は弛緩することができる。一群のスタータスプリング56は、展開手段26の第1のレバー48に直ちに全スプリング力を作用させる。それにより、レバー機構は、その平衡状態から円滑に移動し、第1のグループのスプリング54が展開手段26を作動させて、図1に示されるように、解放位置に移行させる。この解放位置では、第2のリング24は、第1のリング22に接続されておらず、スプリング力によって持ち上げられ、それにより、第2のリング24を、衛星とともに打ち出す。
【0069】
レバー48の移動、特に放出軸Dに沿ったそれらの保持位置と解放位置との間の接触点28の移動は、好ましくは第1のグループのスプリング54のストロークよりも大きい。したがって、レバー機構の結果として、第1のグループのスプリング54によって加えられるスプリング力は、第1のリング22および第2のリング24の間に直接作用するスプリングの配置と比較して、より長い移動範囲に亘って、したがってより円滑に、第2のリング24に印加される。
【0070】
放出軸Dに沿った、第1のリング22に対するその保持位置とその解放位置との間の第2のリング24の最大移動範囲は、少なくとも4cm、好ましくは少なくとも6cm、特に最大8cmである。展開手段26のレバー機構の形状により、展開手段26によって及ぼされる分離力は、解放時に増加する。レバー機構の少なくともほぼ平衡位置から開始して、放出軸Dに沿って向けられる分離力は、展開の開始時に小さく、展開プロセス中に増加し、それにより、衛星の、軌道への円滑で正常な打ち出しが保証される。
【符号の説明】
【0071】
20…分離システム
22…第1のリング
24…第2のリング
26…展開手段
28…接触点
30…保持装置
32a…外側連結ブラケット
32b…内側連結ブラケット
34…固定レセプタクル
36a…外側作動リング
36b…内側作動リング
38…連結ピン
40…解放手段
42…操作レバー
44…操作レバーのピボット
46…解放スプリング
48…第1のレバー
49…レバー機構の中央ピボット
50…第2のレバー
52…第3の作動リング
54…第1のグループのスプリング
56…スタータスプリング
58…固定ボルト
60…開口部
62…スタータ機構
64…遮断ボルト
66a…第1の磁石
66b…第2の磁石
68…ロッカーレバー
69…ロッド
70a…第1の磁性板
70b…第2の磁性板
71…スタータ機構のスプリング
D…放出軸(dispensing axis)
S1…第1の旋回軸
S2…第2の旋回軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打上げ機から放出軸(D)に沿って衛星を打ち出すための分離システム(20)であって、
- 前記打上げ機に取り付けるための第1のリング(22)と、
- 前記衛星に取り付けるための第2のリング(24)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)を保持位置に相互接続する保持手段と、
- 複数のスプリング(54)によって前記第1のリング(22)を前記第2のリング(24)から分離する展開手段(26)であって、複数のレバー機構を備え、前記レバー機構が、それぞれ、スプリング(54)と、第1の端部および第2の端部を有する第1のレバー(48)と、前記第1のレバー(48)の前記第1の端部と前記第2の端部の間に配置されたピボット(49)で前記第1のレバー(48)と互いに枢動可能に接続された第2のレバー(50)と、を備えた、展開手段(26)と、
- 前記第1のリング(22)と前記第2のリング(24)の相互接続を解放する解放手段(40)と、
を備え、
- 前記スプリング(54)が、前記第1のリング(22)を前記第2のリング(24)から分離するように動作可能な前記レバー機構の各々に取り付けられており、
- 前記レバー機構が、前記第1のレバー(48)の前記第2の端部に位置する接触点(28)で前記第2のリング(24)を前記第1のリング(22)に対して解放可能に支持する、分離システム(20)。
【請求項2】
前記放出軸(D)に沿った前記レバー機構のレバー(48,50)の移動範囲は、前記スプリング(54)の移動範囲よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の分離システム(20)。
【請求項3】
前記展開手段(26)によって作用される分離力は、解放されると同時に増加することを特徴とする請求項に記載の分離システム(20)。