(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097096
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】光学測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240710BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240710BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240710BHJP
【FI】
G01N21/64 F
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075774
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501078085
【氏名又は名称】バイオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】須下 幸三
【テーマコード(参考)】
2G043
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA03
2G043DA02
2G043DA08
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA03
2G043FA06
2G043GA02
2G043GA04
2G043GA06
2G043GA07
2G043GA14
2G043GA28
2G043GB07
2G043GB18
2G043GB21
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043LA01
2G043MA01
2G043NA01
4B063QA01
4B063QQ41
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で高い感度で光の測定を行うことができ、また、各種の波長の光を選択的に測定することができる光学測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光学測定装置は、試料が収容された試料容器Wが配置される試料部110と、前記試料部に光を入射させる光源121,122と、前記試料部から出射される光を受光する受光素子125とを有する光学測定装置であって、前記光源から前記試料部に至る光路L1,L2、および/または、前記試料部から前記光学素子に至る光路L3上に、前記光路に対応して光を通過させる絞り孔131,132,133が形成された遮光壁130を有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が収容された試料容器が配置される試料部と、
前記試料部に光を入射させる光源と、
前記試料部から出射される光を受光する受光素子とを有する光学測定装置であって、
前記光源から前記試料部に至る光路、および/または、前記試料部から前記光学素子に至る光路上に、前記光路に対応して光を通過させる絞り孔が形成された遮光壁を有することを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
前記試料容器を保持する筒状の容器ホルダーを有し、
前記容器ホルダーには、前記光源に係る前記光路、および/または、前記光学素子に係る前記光路に対応して光を通過させる窓孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記光源が複数設けられ、
複数の前記光源が、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を有するフルカラーLEDチップ、および、緑色LED素子からなる緑色LEDチップの2つを少なくとも含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記光源が複数設けられ、
前記絞り孔が、複数の前記光源および前記受光素子に係る前記光路ごとに独立して設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記光源に係る前記光路、および/または、前記光学素子に係る前記光路上に、光の波長帯域を制限するフィルターを着脱可能に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記試料部が複数設けられ、
複数の前記試料部の各々に対応する前記フィルターの複数が組み込まれたフィルターユニットを着脱可能に備えることを特徴とする請求項5に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記受光素子がフォトダイオードであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記試料が標的核酸を含み、リアルタイムPCRによって増幅された標的核酸に標識される蛍光色素からの蛍光を測定するリアルタイムPCR装置であることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムPCR装置等として用いることができる光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測定装置の或る種のものとして、例えば、微量の標的核酸の定性分析および定量分析の標準的手法として用いられるPCR法(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)を実施する際に増幅核酸量を同時に検出する、いわゆるリアルタイムPCRを行うリアルタイムPCR装置がある。
【0003】
リアルタイムPCR装置では、熱変性、プライマーとのアニーリング、およびポリメラーゼ伸長反応という増幅サイクルを連続的に行い、DNA等の標的核酸を数十万倍にも増幅させて得られた増幅産物をリアルタイムでモニタリングすることで、標的核酸の定性分析および定量分析を行う。そして、標的核酸の増幅反応が進行する際に励起光を照射することで、増幅産物の増幅の程度を蛍光信号としてリアルタイムに検出することができる。増幅産物に係る蛍光信号は、一般的にインターカレーターまたは蛍光標識プローブという蛍光レポーター色素(蛍光色素)を用いる手法によって得られる。これらの蛍光レポーター色素は、蛍光エネルギー転移などの現象を利用して増幅産物の量に相関して蛍光発光が増減するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種の蛍光レポーター色素は固有の励起波長および蛍光波長を有するので、このような蛍光レポーター色素を用いるリアルタイムPCR装置においては、通常、一の装置に固定的に蛍光レポーター色素が選択されるよう設計されている。一方、リアルタイムPCR装置を例えば臨床現場で用いる場合には、緊急的に入手可能な蛍光レポーター色素を用いざるを得ない場面もあり、このような事態を想定して一のリアルタイムPCR装置に対して各種の蛍光レポーター色素を使用可能にしたいという要請がある。
また、装置全体の小型化を図るために、リアルタイムPCR装置などの光学測定装置においては、少量の試料でも精確な結果を得るために高い感度で光信号を検出することが求められている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、簡単な構成で高い感度で光の測定を行うことができ、また、各種の波長の光を選択的に測定することができる光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学測定装置は、試料が収容された試料容器が配置される試料部と、
前記試料部に光を入射させる光源と、
前記試料部から出射される光を受光する受光素子とを有する光学測定装置であって、
前記光源から前記試料部に至る光路、および/または、前記試料部から前記光学素子に至る光路上に、前記光路に対応して光を通過させる絞り孔が形成された遮光壁を有することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学測定装置によれば、光源から試料部に至る光路、および/または、試料部から光学素子に至る光路上に、光路に対応して光を通過させる絞り孔が形成された遮光壁を有することにより、測定すべき光以外の光が遮断されて光が絞られた状態で受光素子に至るので、装置全体の小型化が図られた場合にも絞り孔を設けるという簡単な構成で試料部からの所期の光の測定を高い感度で行うことができる。また、遮光壁を断熱壁として試料部を囲う状態に設ける構成とすることによって、断熱壁の外方に光源および受光素子などの光学素子を配置することができ、試料を加熱する場合にも光学素子の温度変化による劣化や測定誤差を抑止することができる。
【0009】
本発明の光源および光学素子に係る光路に対応した窓孔が形成された容器ホルダーを有する光学測定装置によれば、容器ホルダーに保持された試料容器に入射される光や試料容器から出射される光がさらに絞られるので、試料部からの所期の光の測定をより高い感度で行うことができる。また、容器ホルダーによって不要な入射光および出射光を規制することができるので、小さな収容空間に多数の試料容器を収容することができて、装置全体の小型化および軽量化を図って持ち運びが容易になるとともに試料の温度管理のし易さを向上させることができる。さらに、容器ホルダーが窓孔以外の全周を所定の高さまで試料容器と密着して保持する構成とすることによって、容器ホルダーと試料容器との接触面積を増大させることができるので、試料の温度管理をより迅速にかつ精密に行うことができる。
【0010】
本発明の複数の光源が設けられた光学測定装置によれば、試料部に入射させる入射光として各種の波長の光から所期の波長の光を選択することができるので、各種の試料に対して各種の分析法や測定法を適用することができ、その結果、光学測定装置の汎用性を向上させることができる。特に、複数の光源がフルカラーLEDチップおよび緑色LEDチップの2つである場合には、極めて広い波長範囲から入射光を選択することが可能となり、入射光の波長の選択に高い自由度が得られて光学測定装置の汎用性をより向上させることができる。
【0011】
本発明の光源および光学素子に係る光路上に光の波長帯域を制限するフィルターを着脱可能に備える光学測定装置によれば、試料部に入射させる入射光や試料部から出射される出射光の波長域を規制することができるので、入射光や出射光の波長の選択に高い自由度が得られて光学測定装置の汎用性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の複数の試料部の各々に対応するフィルターが組み込まれたフィルターユニットを着脱可能に備える光学測定装置によれば、複数の試料部に対応するフィルターを一括して装着または脱離することができるので、入射光や出射光の波長の設定を容易に変更することができ、光学測定装置の取扱い性を向上させることができる。また、複数の試料部の各々に対して配置すべきフィルターの種類を互いに異なるものとするなどの誤認によるミスを生じ難くすることができる。
【0013】
本発明のリアルタイムPCR装置として用いられる光学測定装置によれば、入射光や出射光の波長の設定を容易に変更することができるので、リアルタイムPCRによって増幅された試料(標的核酸)にハイブリダイゼーションさせる蛍光レポーター色素として各種のものを使用することができ、さらに、微量の試料であっても試料から出射された所期の波長の蛍光を高い感度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学測定装置の構成の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の光学測定装置のA-A線断面図である。
【
図3】
図1の光学測定装置のB-B線断面図である。
【
図4】
図2の光学測定装置の試料部および遮光壁の付近Cを拡大して示す縦断面図である。
【
図5】
図3の光学測定装置の試料部および遮光壁の付近Dを拡大して示す横断面図である。
【
図6】
図1の光学測定装置の試料部および遮光壁の付近を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る光学測定装置のフィルターユニットの構成の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の光学測定装置は、例えば試料からの蛍光や反射光を測定して試料中の標的物質の定性分析や定量分析を行うためなどに用いられるものである。標的物質は、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって増幅されて得られ標的核酸であり、大腸菌、タンパク質、色素などであってもよい。
以下に、本発明の光学測定装置がリアルタイムPCR装置として構成された一実施形態について説明する。
【0016】
リアルタイムPCR装置100は、試料が標的核酸を含み、リアルタイムPCRによって増幅された標的核酸に標識される蛍光レポーター色素(蛍光色素)から放出される蛍光を測定するものである。
このリアルタイムPCR装置100は、
図1~
図6に示されるように、試料が収容された試料容器Wが配置される試料部110と、試料部110に励起光を入射させる2種の光源121,122およびこの試料部110に入射された励起光によって励起されて得られる蛍光を受光する受光素子125を有する光学系120と、光学系120に係る光路において光を通過させる絞り孔が形成された遮光壁130とを有する。
本実施形態に係るリアルタイムPCR装置100においては、試料部110および光学系120は、互いに一対一に対応しており、この試料部110および光学系120の組が複数(本実施形態においては2列16組)、備えられている。
複数の試料部110およびこれに対応する複数の光学系120は、リアルタイムPCR装置100の装置本体101の上部に設けられた試料配置領域Rに規則的に配置され、装置本体101の下部には、試料容器W内に収容された試料の温度調整をする加熱手段(図示せず)と、加熱された試料容器Wを循環冷却風によって急速に冷却するヒートシンク141および冷却用ファン142を有する冷却手段140とが備えられている。加熱手段としては、従来のPCR用サーマルサイクラーに一般的に使用される公知の温度調節手段を使用することができる。
また、リアルタイムPCR装置100には、図示されていないが、後述する枠体103および天面102とともに試料配置領域Rを閉塞可能な蓋部材が備えられている。
【0017】
光学系120は、試料部100に入射させる入射光を出射させるものであって、第1の光源121および第2の光源122の2種を有する。第1の光源121は赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を有するフルカラーLEDチップよりなり、第2の光源122は緑色LED素子からなる緑色LEDチップよりなる。第1および第2の光源121,122は、一方を単独で用いることもでき、両方を組み合わせて用いることもできる。
受光素子125は、試料部100から出射される出射光を受光するものであって、受光素子125としては、フォトダイオードや光電子増倍管(PMT:フォトマルチプライヤー)といった、特定の光を電流に変換できる素子を使用することができる。このような受光素子125によって、試料容器W内の蛍光レポーター色素から生じた蛍光を蛍光信号として検出することができる。
光学系120には、光源121,122および受光素子125の他に、任意に、ダイクロイックミラーや集光レンズ、迷光吸収部材などが備えられていてもよい。
光学系120は、後述の遮光壁130を介して試料部110に対して反対側に配置されており、すなわち、光源121、122と受光素子125とが、遮光壁130の同一側に配置されている。
【0018】
試料容器Wは、内部に試料(標的核酸サンプルや蛍光レポーター色素、反応の進行のために必要な試薬等)を保持するとともに反応場も兼ねており、所定の反応に影響を与えず、かつ、試料容器W内部に励起光を到達させることができ、さらに、加熱手段によって加熱された場合であっても変形を生じない容器が好ましく使用される。例えば、試料容器Wとしては、PCR用途に使用される一般的な蓋付きのポリプロピレン製のチューブを使用することができる。
試料容器Wは、その複数(8つ)が同じピッチで並列に配置された8連のものとして構成されている。本実施形態のリアルタイムPCR装置100においては、8連の試料容器Wが平行に2列、対応して2列に配置された試料部110の各々に挿入可能とされている。
【0019】
試料部110には、試料容器Wを保持する有底筒状の容器ホルダー111が備えられている。容器ホルダー111は、少なくとも筒状部を有していればよく、有底筒状のものに限定されず、試料容器Wの側周面のみに接触して保持する筒状のものであってもよい。
容器ホルダー111の内周面は、試料容器Wの外周に沿った形状とされ、具体的には、底部に向かって小径となるテーパ状に形成されており、試料容器Wが上方から下方に挿入可能とされている。容器ホルダー111には、第1の光源121から試料部110に至る光路L1、第2の光源122から試料部110に至る光路L2および試料部110から受光素子125に至る光路L3に対応して、これらの光路L1,L2,L3の光を通過させる1つの窓孔112が形成されている。本実施形態に係るリアルタイムPCR装置100においては、光路L1,L2,L3が直線光路なので、窓孔112は第1および第2の光源121,122並びに受光素子125と対向する位置に形成されている。容器ホルダー111の窓孔は、3つの光路L1,L2,L3のそれぞれに対応するよう、互いに独立して形成されていてもよい。
容器ホルダー111は、窓孔112以外の全周が所定高さまで試料容器Wと接触する状態とされている。また、容器ホルダー111は、断熱材からなるものであってもよく、熱伝達率の高い金属製のものであってもよい。
窓孔112は、光路L1,L2,L3の光の通過を阻害しない形状であればよく、本実施形態においては横(外周に沿った長さ)が2.0mm、縦が1.5mmの楕円形である。
【0020】
遮光壁130は、板状のものであって、一連の試料容器Wが保持される一列に並んだ試料部110(一連の試料部110)とこれらに対応する一列に並んだ光学系120(一連の光学系120)との間に介在されるように配置される。本実施形態においては、上列の一連の試料部110および下列の一連の試料部110のそれぞれに対して、合計2枚の遮光壁130が互いに平行に、装置本体101の上面である水平な天面102に垂設されている。そして、遮光壁130には、第1の光源121から試料部110に至る光路L1、第2の光源122から試料部110に至る光路L2、および、試料部110から受光素子125に至る光路L3上に、光路L1,L2,L3のそれぞれに対応して光を通過させる3つの絞り孔131,132,133が互いに独立して設けられている。3つの絞り孔131,132,133は、各光学系120に対応してそれぞれ設けられている。さらに、2枚の遮光壁130に加えてこれらの両端同士が同じ材質の材料によって連続する側壁137が設けられ、全体として矩形筒状の枠体103とされて試料配置領域Rを囲うよう配置されている。すなわち、装置本体101の天面102上において、枠体103の内側にすべての試料部110が配置されるとともに、枠体103の外側にすべての光学系120が配置され、対応する試料部110と光学系120との間に、遮光壁130が介在される状態とされている。
遮光壁130および側壁137は、光吸収性を有する材料より形成することができる。光吸収性を有する材料は、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブなどの黒色の粉末を含有する材料が挙げられる。
第1の光源121に係る光路L1の光軸に沿った光路長、第2の光源122に係る光路L2の光軸に沿った光路長、および受光素子125に係る光路L3の光軸に沿った光路長は、いずれも例えば5.0~7.0mmである。
また、遮光壁130の光源121,122に対応する絞り孔131,132の形状の一例は、横が0.6mm、縦が0.3mmの楕円形、遮光壁130の絞り孔131は横が0.8mm、縦が0.6mmの楕円形である。
【0021】
試料部110から受光素子125に至る光路L3上には、
図7に示すように、試料部110から出射される蛍光の波長帯域を制限するフィルター155が着脱可能に設けられている。具体的には、一連の試料容器Wが保持される一連の試料部110の各々に対応する複数(8つ)のフィルター155が組み込まれた1つのフィルターユニット150が、一連の試料部110と遮光壁130との間における天面102に凹んだ状態に形成されたフィルターユニット装着用凹部158に上方から挿入することによって遮光壁130と平行に垂立するように装着される。遮光壁130とフィルターユニット150とは、ごく近接して設けられることが好ましい。フィルターユニット150は、天面102に対して着脱可能とされており、装着時には、固定ねじ等の別途の固定具を要さず、フィルターユニット装着用凹部158に差し込むのみで装着状態を維持することができる。なお、
図7は、装着されたときに試料部110から視認される方向から見たフィルターユニット150を示している。
フィルターユニット150には、第1の光源121から試料部110に至る光路L1、第2の光源122から試料部110に至る光路L2、および、試料部110から受光素子125に至る光路L3上に、光路L1,L2,L3のそれぞれに対応して光を通過させる3つの通過孔151,152,153が互いに独立して設けられている。3つの通過孔151,152,153は、各光学系120に対応してそれぞれ設けられるとともに、その大きさは、遮光壁130の3つの絞り孔131,132,133にそれぞれ対応した大きさおよび形状、具体的には同じ大きさおよび形状とされる。
【0022】
フィルターユニット150には、試料部110から出射される蛍光の波長帯域を制限するフィルター155のみではなく、第1の光源121や第2の光源122から出射される光の波長帯域を制限するフィルターがさらに設けられていてもよい。本実施形態に係るリアルタイムPCR装置100においては、光路L3に係る通過孔153を塞ぐよう試料部110から出射される蛍光の波長帯域を制限するフィルター155が設けられ、その他の光路L1,L2に係る通過孔151,152にはフィルターは設けられずに貫通孔のままとされている。なお、フィルターユニット150は、測定に係る光の波長帯域を制限する必要がなければ装着する必要はなく、また、通過孔151,152,153のすべてにフィルターが設けられずに貫通孔のままの状態で装着していてもよい。
【0023】
リアルタイムPCR装置100には、さらに、用いる蛍光レポーター色素の種類に基づいて測定に係るプログラムを選択する制御部や、受光素子125によって検出された蛍光信号の演算処理が行われる演算処理部が設けられていてもよい。或いは、リアルタイムPCR装置100は、外部機器からの信号に従って、演算処理やプログラムの選択が行われるよう構成されたものであってもよい。
【0024】
制御部においては、試料容器Wに添加される蛍光レポーター色素の種類に基づいて、光学系120における光源121,122から出射される励起光の波長と、受光素子125において受光される蛍光の波長が適切に選択される。光源121,122においては、第1の光源121を構成するフルカラーLEDチップにおける各色のLED素子および第2の光源122を構成する緑色LEDチップを構成する緑色LED素子ごとに点灯/消灯を選択することや出力を変更することなどの動作制御、さらにはフィルターユニット150においてスペクトル幅を限定するバンドパスフィルターなどを励起用フィルターとして用いることによって、光源121,122から出射される励起光の波長を選択することができる。また、当該蛍光レポーター色素の種類に基づいて、フィルター155の制限する波長帯域を選択することにより、受光素子125において受光する蛍光の波長が適切に選択される。
【0025】
本実施形態に係るリアルタイムPCR装置100において、適用可能な蛍光レポーター色素としては、例えば、6-carboxyfluorescein(FAM(登録商標))、6-carboxy-X-rhodamine(ROX(登録商標))、Cyanine系色素(Cy5)および4,7,2’,4’,5’,7’-hexachloro-6-carboxyfluorescein(HEX(登録商標))等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
以上のようなリアルタイムPCR装置100においては、次のようにリアルタイムPCRが実行される。すなわち、標的核酸や蛍光レポーター色素等の必要な試料が収容された試料容器Wの複数(最大試料数16)を、各々の試料部110の容器ホルダー111に挿入し、試料の種類に応じて温度制御の設定を行ってから核酸増幅を開始させ、そして、制御部によって選択されたプログラムに従った励起光によって得られる蛍光について継続的に測定が行われ、標的核酸の増幅核酸量が検出される。用いる蛍光レポーター色素によっても異なるが、リアルタイムPCRに要する時間は30~60分間程度である。
リアルタイムPCR装置100における蛍光の測定は、次のように行われる。すなわち、
図6に示すように、光源121,122から選択された波長の励起光が前方に水平方向に出射し、光路L1および/または光路L2に沿って遮光壁130の絞り孔131,132および容器ホルダー111の窓孔112によって絞られながら、容器ホルダー111に受容された試料容器W内の試料に照射される。試料容器W内の試料に照射された励起光によって蛍光レポーター色素が励起されて蛍光が放出され、光路L3に沿って容器ホルダー111の窓孔112および遮光壁130の絞り孔133によって絞られながら、さらに必要に応じてフィルターユニット150のフィルター155によってその波長帯域が制限されながら、受光素子125に至り、その蛍光が蛍光信号として検出される。
【0027】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、本発明の光学測定装置は、リアルタムPCR装置のみに限定されず、FISH方法(fluorescent in situ hybridization)、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法(Strand displacement)、競合的ハイブリダイゼーション方法(Competitive hybridization)などの各種の蛍光レポーター色素を用いる増幅核酸量の検出方法を行う装置に適用することができ、さらに、試料に光を照射して出射される光を高い感度で検出する装置であれば、例えば反射光を測定する装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
100 リアルタイムPCR装置
101 装置本体
102 天面
103 枠体
110 試料部
111 容器ホルダー
112 窓孔
120 光学系
121,122 光源
125 受光素子
130 遮光壁
131,132,133 絞り孔
137 側壁
140 冷却手段
141 ヒートシンク
142 冷却用ファン
150 フィルターユニット
151,152,153 通過孔
155 フィルター
158 フィルターユニット装着用凹部
R 試料配置領域
W 試料容器