(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097105
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 29/12 20060101AFI20240710BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H02K29/12
G01D5/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084845
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕章
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 智矢
【テーマコード(参考)】
2F077
5H019
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077FF13
2F077FF31
2F077UU26
2F077VV02
5H019AA04
5H019BB01
5H019BB06
5H019BB15
5H019BB17
5H019CC03
5H019DD07
(57)【要約】
【課題】回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対するロータによる影響を低減する。
【解決手段】ロータと、非回転部と、ロータと一体に回転するセンサロータと、センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、コイルへの通電により生じる磁束によってセンサロータに渦電流を発生させることでロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、を備え、センサロータは、センシング部と軸方向に対向する周方向位置での外径等が、ロータの回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位を有し、ロータは、センサロータに対してセンシング部とは逆側から隣接するセンサ隣接部を有し、センサ隣接部における磁束により発生する渦電流の大きさは、ロータの回転角度が所定角度又はその整数倍変化するごとに周期的に変化する、回転電機が開示される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
ロータを回転可能に支持する非回転部と、
前記ロータと一体に回転するセンサロータと、
前記センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、前記コイルへの通電により生じる磁束によって前記センサロータに渦電流を発生させることで前記ロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、を備え、
前記センサロータは、前記センシング部と軸方向に対向する周方向位置での外径又は軸方向の厚みが、前記ロータの回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位を有し、
前記ロータは、前記センサロータに対して前記センシング部とは逆側から軸方向に隣接するセンサ隣接部を有し、
前記センサ隣接部における前記磁束により発生する渦電流の大きさは、前記ロータの回転角度が前記所定角度変化するごとに又は前記所定角度の整数倍の角度変化するごとに、周期的に変化する、回転電機。
【請求項2】
前記センサ隣接部は、ベース部位と、前記センシング部と軸方向に対向したときに前記磁束により発生する渦電流の大きさが前記ベース部位とは異なる特定部位とを有し、
前記特定部位は、前記ロータの回転角度が前記所定角度変化するごとに又は前記所定角度の整数倍の角度変化するごとに、前記センシング部と軸方向に対向する、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
ロータと、
ロータを回転可能に支持する非回転部と、
前記ロータと一体に回転するセンサロータと、
前記センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、前記コイルへの通電により生じる磁束によって前記センサロータに渦電流を発生させることで前記ロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、を備え、
前記センサロータは、前記センシング部と軸方向に対向する周方向位置での外径又は軸方向の厚みが、前記ロータの回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位を有し、
前記ロータは、前記センサロータに対して前記センシング部とは逆側から軸方向に隣接するセンサ隣接部を有し、
前記センサ隣接部における前記磁束により発生する渦電流の大きさは、前記ロータの回転角度が変化しても略一定を維持する、回転電機。
【請求項4】
前記センサ隣接部は、ベース部位と、前記センシング部と軸方向に対向したときに前記磁束により発生する渦電流の大きさが前記ベース部位とは異なる特定部位とを有し、
前記センサロータは、軸方向に視て、前記ベース部位及び前記特定部位に重なるように配置される、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記特定部位は、前記ベース部位よりも外径が大きい凸部、及び、前記ベース部位よりも外径が小さい凹部のうちの少なくともいずれか一方を含む、請求項2又は4に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
センシング部のコイルで発生させた磁界によりセンサロータにおいて発生する渦電流を利用して、ロータの回転に係るパラメータ(例えば回転角度)の値に応じた電気信号をセンシング部にて生成する回転検出器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機においては、ケース内の限られた空間に多様な構成要素が配置されているので、センシング部の周辺にセンサロータ以外の金属部材が位置する場合も多い。従って、渦電流を利用するセンサの検出結果は、このような周辺の金属部材による影響を受けやすくなる。この点、周辺の金属部材のうちのロータは、センサロータに軸方向に隣接する部位が径方向外側に延在するため、センサの検出結果に対して影響を与えやすい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対するロータによる影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ロータと、
ロータを回転可能に支持する非回転部と、
前記ロータと一体に回転するセンサロータと、
前記センサロータに軸方向に対向するコイルを有し、前記コイルへの通電により生じる磁束によって前記センサロータに渦電流を発生させることで前記ロータの回転に係るパラメータの値に応じた電気信号を生成するセンシング部と、を備え、
前記センサロータは、前記センシング部と軸方向に対向する周方向位置での外径又は軸方向の厚みが、前記ロータの回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位を有し、
前記ロータは、前記センサロータに対して前記センシング部とは逆側から軸方向に隣接するセンサ隣接部を有し、
前記センサ隣接部における前記磁束により発生する渦電流の大きさは、前記ロータの回転角度が前記所定角度変化するごとに又は前記所定角度の整数倍の角度変化するごとに、周期的に変化する、回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、回転電機において、渦電流を利用するセンサの検出結果に対するロータによる影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】本実施例による回転センサにおけるセンサロータとセンシング部を示す斜視図である。
【
図3】本実施例による回転センサのセンシング部とセンサロータとの関係を示す図である。
【
図4】本実施例によるセンサロータにおけるセンシング部と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
【
図5】本実施例によるセンシング部により生成されるセンサ出力の波形を説明する概略図である。
【
図6】本実施例の構成の特徴を概念的に説明する説明図であり、センサロータとその周辺の一部(ロータの一部)をX1側から視た斜視図である。
【
図8】
図6からセンサロータを取り除いた平面図である。
【
図9】
図6を軸方向に視た平面図であり、回転軸よりも上側半分だけを示す図である。
【
図10】ロータのセンサ隣接部によるセンサ出力への影響の説明図である。
【
図11】センシング部により生成されるセンサ出力の波形であって、センサ隣接部により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
【
図12】比較例によるセンサ隣接部とセンサロータとを概略的に示す軸方向の平面図である。
【
図13】センシング部により生成されるセンサ出力の波形であって、比較例によるセンサ隣接部により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
【
図14】実施例2によるモータにおけるセンサ隣接部とセンサロータとを概略的に示す軸方向の平面図である。
【
図15】実施例3によるモータにおけるセンサ隣接部とセンサロータとを概略的に示す軸方向の平面図である。
【
図16】実施例3によるセンサロータの斜視図である。
【
図17】実施例3におけるセンシング部により生成されるセンサ出力の波形であって、センサ隣接部により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
[実施例1]
図1Aは、本実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1Bは、
図1AのQ1部の拡大図である。
【0011】
図1Aには、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
また、
図1Aには、回転軸12の方向(すなわち軸方向)に平行なX方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
【0013】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0015】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、ロータシャフト34に焼き嵌め又はその類により固定されてよい。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0016】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。ロータコア32の磁石孔324には、永久磁石321が埋め込まれる。あるいは、永久磁石321のような永久磁石は、ロータコア32の外周面に埋め込まれてもよい。なお、永久磁石321の配列等は任意である。
【0017】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32の軸方向の端面を覆う。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32からの永久磁石321の離脱を防止する離脱防止機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスをなくす機能)を有してよい。
【0018】
エンドプレート35A、35Bは、非磁性材料により形成される。エンドプレート35A、35Bは、好ましくは、アルミにより形成される。この場合、切削が容易となり、エンドプレート35A、35Bによるロータ30のアンバランスの調整機能を効果的に実現できる。ただし、変形例では、エンドプレート35A、35Bは、ステンレス鋼等により形成されてもよい。
【0019】
ロータシャフト34は、
図1Aに示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、軸方向の両側で軸方向に開口してよい。中空部34Aは、冷却用の油が通る油路801として機能してもよい。
【0020】
なお、本実施例において、ロータコア32の磁極構成は、任意である。例えば、磁極数が8極又は8極以外であってもよいし、永久磁石321に代えて又は加えて、各磁極を形成する対の永久磁石が、径方向外側に向かうほど周方向の距離が広がる態様で配置されてもよい。また、ロータコア32は、フラックスバリアや油路等が形成されてもよい。
【0021】
また、本実施例では、ロータシャフト34は、中空部34Aを有するが、中実であってよい。また、ロータシャフト34は、2パーツ以上が結合されることで形成されてもよい。また、モータ1は、油に代えて又は加えて、冷却水(例えばライフロングクーラント)により冷却されてもよい。また、本実施例では、モータ1は、インナロータタイプであるが、アウタロータタイプであってもよい。
【0022】
本実施例では、モータ1は、ロータ30の回転に係るパラメータの値を検出する回転センサ80を有する。ロータ30の回転に係るパラメータは、任意であり、例えば、ロータ30の回転の有無や、ロータ30の所定基準角度からの回転角度、回転速度、磁極位置等であってよい。以下では、一例として、回転センサ80は、ロータ30の回転角度を検出するものとする。
【0023】
回転センサ80は、ロータシャフト34の一端側に設けられる。本実施例では、回転センサ80は、
図1Aに示すように、ロータシャフト34のX1側端部に設けられるが、X2側端部に設けられてもよい。
【0024】
図2は、回転センサ80におけるセンサロータ81とセンシング部82をX1側から視て示す斜視図である。なお、
図2(後出の
図3も同様)には、センサ支持部84の図示が省略されている。
【0025】
回転センサ80は、センサロータ81と、センシング部82と、センサ支持部84とを備える。
【0026】
センサロータ81は、導体により形成され、ロータ30と一体に回転する。センサロータ81は、回転軸12を中心とした円形状の中心孔811を有する円環状の形態である。センサロータ81は、その中心孔811にロータシャフト34が通されることで、ロータシャフト34とともに回転するように取り付けられてよい。例えば、センサロータ81は、ロータシャフト34に径方向の凹部又は凸部が形成され、センサロータ81の中心孔811の内周縁に、ロータシャフト34の径方向の凹部又は凸部に嵌合する径方向の凸部又は凹部が形成されてもよい。
【0027】
センサロータ81は、周期的に変化する外径を有する。これにより、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。所定角度は、設計時に、磁極数等に応じて適宜決定されてよい。本実施例では、センサロータ81は、1周あたり、8つの径方向の凸部と凹部とを交互に有する。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに周期的に変化する。
【0028】
なお、変形例では、センサロータ81は、周期的に変化する外径に代えて又は加えて、周期的に変化する厚み(軸方向の厚み)を有してもよい。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での厚みが、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。
【0029】
センシング部82は、基板820の形態であり、センサロータ81に軸方向に対向しつつ近接するように配置される。基板820は、
図2に示すように、軸方向に視て円弧状であってよく、全周のうちの一部の周区間のみに延在してよい。また、基板820は円弧状だけでなく、全周に延在してもよい。センシング部82は、センサ支持部84(
図1B参照)によりモータ1の非回転部(本実施例ではモータハウジング10)に支持される。
【0030】
センシング部82は、渦電流を利用して、ロータ30の回転角度を検出する。
図3から
図5は、センシング部82による検出原理の説明図である。
図3は、回転センサ80のセンシング部82とセンサロータ81との関係を示す図であり、
図4は、センサロータ81におけるセンシング部82と軸方向に対向する部分を、軸方向に視て示す図である。
図5は、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形を説明する概略図である。
図5では、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。なお、
図5では、ロータ30の回転角度における所定角度(本実施例では45度)分の時系列波形が模式的に示されている。
【0031】
センシング部82は、
図2に示すように、センサコイル821及び処理回路部822が実装された基板820の形態であってよい。なお、処理回路部822の機能の一部又は全部は、外部の制御装置(図示せず)により実現されてもよい。
【0032】
センサコイル821は、例えば
図3に示すように、基板820の両側の表面に形成されてもよい。なお、変形例では、センサコイル821は、基板820の両側の表面に代えて又は加えて、基板820の内層に形成されてもよい。センサコイル821は、例えばプリントされた導体により形成されてよい。センサコイル821は、X方向に平行な中心軸Oまわりに巻回されてなる。
【0033】
処理回路部822は、センサコイル821への通電によりセンサロータ81に渦電流を発生させる。具体的には、
図3に模式的に示すように、センサコイル821が通電されると、センサコイル821を貫く磁束B1が発生する。センサコイル821を貫く磁束B1は、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の表面に接触すると、センサロータ81の表面に渦電流が発生する。
図4には、渦電流の発生態様が矢印Ieで模式的に示されている。なお、
図4においては特定の向きの渦電流が模式的に示されているが、渦電流の向きは、センサコイル821を流れる電流の向きに応じて決まる。渦電流は、磁束B1を減らす磁束を発生させる向きに生じる。従って、渦電流に起因して、磁束B1を減らす磁束B2(図示せず)が発生する。磁束B2の大きさは、渦電流の大きさに比例する。渦電流の大きさは、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積が増加するほど大きくなる。本実施例では、上述したようにセンサロータ81は、周期的に変化する外径を有するので、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が変化すると変化する。より具体的には、センサコイル821に軸方向に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が変化すると、正弦波状に変化する。このため、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、
図5に示すように、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期の正弦波を描く。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を検出できる。
【0034】
センサ支持部84は、モータ1の非回転部(本実施例ではモータハウジング10)に固定され(
図1A及び
図1Bに模式的に図示)、センシング部82を支持する。センサ支持部84は、接着剤や固定具、嵌合のような任意の手段で、センシング部82を支持してもよい。本実施例では、一例として、センサ支持部84は、例えば、封止用のポッティング樹脂部86を介してセンシング部82を支持する。この場合、ポッティング樹脂部86は、センシング部82とセンサ支持部84とに接合することで、センシング部82とセンサ支持部84とを一体化する。この場合、センシング部82とセンサ支持部84とが別々の部品である場合に比べて、部品点数を低減できる。また、モータハウジング10にセンサ支持部84を組み付けることでセンシング部82の組み付けが実現されるので、センシング部82とセンサ支持部84とが別々の部品である場合に比べて、組付け性が良好である。ポッティング樹脂部86は、センサ支持部84のX2側の開口から充填されてよい。
【0035】
センサ支持部84は、好ましくは、センサロータ81にセンシング部82が軸方向に近接するようにセンシング部82を支持する。この場合、センサ支持部84は、センサロータ81とセンシング部82との間の軸方向の位置関係として、センサロータ81とセンシング部82との間の軸方向の隙間が、可動部と固定部との間に必要な最小クリアランスに対応するような位置関係を実現してもよい。
【0036】
ここで、
図6から
図11を参照して、本実施例の構成の特徴を概念的に説明する。
【0037】
図6から
図9は、本実施例の構成の特徴を概念的に説明する説明図であり、
図6は、センサロータ81とその周辺の一部(ロータ30の一部)をX1側から視た斜視図であり、
図7は、
図6からセンサロータ81を取り除いた斜視図であり、
図8は、
図6からセンサロータ81を取り除いた平面図(軸方向に視た平面図)である。
図9は、
図6を軸方向に視た平面図であり、回転軸12よりも上側半分だけを示す図である。なお、
図6から
図9は、概念図であり、特にロータ30の構成は非常に概略的に示されている。
図10は、ロータ30のセンサ隣接部300によるセンサ出力への影響の説明図であり、磁束の流れを模式的に示す図である。なお、
図10で示す磁束の流れは、センサ隣接部300やセンサロータ81の影響を受ける前の状態で模式的に示されている。
図11は、本実施例においてセンシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形であって、センサ隣接部300により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
図11では、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。なお、
図11(後出の
図13及び
図17についても同様)では、ロータ30の回転角度における所定角度(本実施例では45度)の2倍分(2周期分)の時系列波形が模式的に示されている。
【0038】
ロータ30は、センサロータ81に対してセンシング部82とは逆側(本実施例ではX2側)から軸方向に隣接するセンサ隣接部300を有する。センサ隣接部300は、ロータ30の任意の1つ以上の構成要素(ロータシャフト34とともに回転する構成要素)により実現されてよく、例えば
図1Aに示す例では、ロータシャフト34のX1側端部、ロータコア32のX1側端部、エンドプレート35A、ワッシャ39等であってよい。なお、ワッシャ39は、軸方向でフランジ部346(ロータシャフト34のX1側端部の部位)とロータコア32との間に設けられ、フランジ部346からエンドプレート35A(及びエンドプレート35Aを介してロータコア32)に付与される軸力に起因してロータコア32に生じうる応力を低減する機能を有してよい。
【0039】
ところで、センサ隣接部300は、センサロータ81に対してセンシング部82とは逆側(本実施例ではX2側)に配置されるものの、センサロータ81の近傍に配置されかつセンサロータ81よりも径方向外側に延在するがゆえに、センサコイル821を貫く磁束B1(
図10の磁束B1-1参照)に影響を与える可能性がある。すなわち、センサコイル821を貫く磁束B1に起因してセンサ隣接部300において渦電流が発生する可能性がある。かかる渦電流は、センサロータ81における渦電流と同様、磁束B1を減らす方向の磁束B3(図示せず)を発生する。
【0040】
この点、本実施例では、センサ隣接部300は、センサ隣接部300における磁束B1により発生する渦電流の大きさが、ロータ30の回転角度が所定角度(本実施例では45度)変化するごとに周期的に変化するように、構成される。
【0041】
具体的には、
図6から
図9に示すように、センサ隣接部300は、外径が一定の第1部位301と、第1部位301よりも外径が有意に大きい第2部位302とを周方向に沿って周期的に有する。すなわち、センサ隣接部300は、センサロータ81と同様の位相且つ周期で、周期的に変化する外径を有する。更に換言すると、センサロータ81は、第1部位301に対応する周方向位置に、小径部810を有し、センサロータ81は、第2部位302に対応する周方向位置に、大径部812を有する。この場合、大径部812の外径は、第2部位302の外径よりも有意に小さい(
図9参照)。このようにして本実施例では、センサ隣接部300は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が所定角度(本実施例では45度)変化するごとに周期的に変化する。なお、本明細書において「2つの部位の一方の外径が他方よりも有意に大きい又は小さい」とは、一方の部位がセンサコイル821に軸方向に対向したときと他方の部位がセンサコイル821に軸方向に対向したときとの間で、センサ出力に有意な差(例えば、センサ出力の最小分解能を超えるような差)を生むような態様を指す。
【0042】
ところで、センサ隣接部300における渦電流の大きさは、上述したセンサロータ81の場合と同様、センサコイル821に軸方向に直接的に対向するセンサ隣接部300の部位の表面積が増加するほど大きくなる。なお、センサ隣接部300がセンサコイル821に軸方向に直接的に対向するとは、センサコイル821から磁束B1がセンサロータ81により遮断されることなく到達できる位置関係を指す。本実施例では、上述したようにセンサ隣接部300は、周期的に変化する外径を有するので、センサコイル821に軸方向に直接的に対向するセンサロータ81の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が変化すると変化する。より具体的には、センサコイル821に軸方向に対向するセンサ隣接部300の部位の表面積は、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期分の正弦波、矩形波、三角波、又はその類に対応した変化態様で変化する。
【0043】
このため、本実施例では、磁束B1に起因してセンサ隣接部300において発生する渦電流は、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期の正弦波又は矩形波若しくは三角波を描く態様で周期的に変化する。従って、このようなセンサ隣接部300において発生する渦電流に起因して生じる磁束B3も、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期の正弦波、矩形波、三角波、又はその類を描く態様で周期的に変化する。
【0044】
また、本実施例においては、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに周期的に変化する部位(小径部810及び大径部812)を有する。この結果、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、センサロータ81の小径部810及び大径部812に起因した基本波形に対して、センサ隣接部300(軸方向に視てセンサロータ81よりも径方向外側に延在する部位)に起因した略一定のオフセットを有する波形となる。具体的には、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、
図11に示すように、
図5に示した理想的な波形500に対して、磁束B3に対応する一定のオフセット量(
図11のΔ1参照)だけオフセットする波形501となる。本実施例では、上述したように、磁束B3はロータ30の回転角度が所定角度(本実施例では45度)変化するごとに周期的に変化するので、オフセットする波形501も、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、周期的に変化する(
図11では、正弦波を描く態様で周期的に変化する)。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を精度良く検出できる。
【0045】
なお、
図6から
図9に示す例では、第2部位302が第1部位301に対して径方向の凸部となり、第1部位301が第2部位302に対して径方向の凹部となる。この場合、第1部位301及び第2部位302のうちの、いずれか一方が、特許請求の範囲における「ベース部位」の一例であり、他方が、特許請求の範囲における「特定部位」の一例である。
【0046】
このようなセンサ隣接部300に係る凸部や凹部は、センサ隣接部300がエンドプレート35Aを含む場合、エンドプレート35Aに形成されうる油溝(油孔や油路等の形態を含む、以下同様)やバランス調整孔(ロータ30のアンバランスの調整用の孔)により実現されてもよい。また、エンドプレート35Aを設けない構成の場合、センサ隣接部300はロータコア32のX1側の端部を含んでよい。この場合、凸部や凹部は、ロータコア32のX1側の端部に形成されうる油溝やフラックスバリア、加締め部等により実現されてもよい。この場合、加締め部は、ロータシャフト34にロータシャフト34を固定するための加締め部であってよい。また、凸部や凹部は、センサ隣接部300がロータシャフト34(モータハブ)を含む場合、ロータシャフト34に形成されうる油溝や溶接部等により実現されてもよい。
【0047】
ここで、
図12及び
図13を参照して比較例と対比して、本実施例の効果を説明する。
図12は、比較例によるセンサ隣接部300’とセンサロータ81とを概略的に示す軸方向の平面図であり、
図9と同様、回転軸12よりも上側半分だけを示す図である。
図13は、比較例においてセンシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形であって、比較例によるセンサ隣接部300’により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
図13では、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。
【0048】
比較例によるセンサ隣接部300’は、
図12に模式的に示すように、外径が一定の第1部位301’と、第1部位301’よりも外径が有意に大きい第2部位302’とを周方向に沿って不規則に有する。例えば、第2部位302’-1は、第2部位302’-2よりも周方向の延在範囲が広く、45度以上の角度にわたって連続的に延在している。このような不規則な構成では、
図13に示すように、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が、不規則となる。すなわち、比較例では、センサ出力は、ロータ30の回転角度が45度変化するごとに、1周期の正弦波を描くような規則性を有さない。
図13に示す例では、ある一周期分の角度範囲A1では、センサ出力の中心値は、
図13において点線1300で示す理想的な中央値(例えば、
図5に示した理想的な波形500に係る振幅の中心値)に対して上側にオフセット(矢印R1301参照)するのに対して、続く一周期分の角度範囲A2では、センサ出力の中心値は、理想的な中央値に対して下側(矢印R1302参照)にオフセットするといった具合に、オフセット量が一定とならない。このような場合、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を精度良く検出できない。例えば、センサ出力のオフセットを補正することが難しく、回転センサ80からのセンサ情報の信頼性が低下するおそれがある。
【0049】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、磁束B3に対応する一定のオフセット量だけオフセットする波形501(
図11参照)のセンサ出力を得ることができる。従って、本実施例によれば、センサ隣接部300に起因して回転センサ80からのセンサ情報の信頼性が低下する可能性を、効果的に低減できる。
【0050】
なお、本実施例では、センサ隣接部300は、上述したように、センサ隣接部300における磁束B1により発生する渦電流の大きさが、ロータ30の回転角度が所定角度(本実施例では45度)変化するごとに周期的に変化するように、構成されるが、これに限られない。例えば、変形例では、センサ隣接部300は、センサ隣接部300における磁束B1により発生する渦電流の大きさが、ロータ30の回転角度が所定角度の整数倍の角度(例えば90度)変化するごとに周期的に変化するように、構成されてもよい。この場合、オフセット量(
図11のΔ1参照)は、一定とならないものの、センサロータ81の外径の変化周期(所定角度に対応する周期)の2以上の整数倍の周期で周期的に変化する。従って、この場合も、比較例に比べてロータ30の回転角度を精度良く検出可能なセンサ出力を得ることができる。
【0051】
[実施例2]
以下の実施例2の説明において、上述した実施例1と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0052】
図14は、実施例2によるモータ1Aにおけるセンサ隣接部300とセンサロータ81Aとを概略的に示す軸方向の平面図であり、
図9と同様、回転軸12よりも上側半分だけを示す図である。
【0053】
実施例2によるモータ1Aは、上述した実施例1によるモータ1に対して、センサロータ81がセンサロータ81Aで置換された点が異なる。
【0054】
上述した実施例1では、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じる渦電流の大きさを、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサロータ81において生じる渦電流の大きさとともに、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化させている。
【0055】
これに対して、本実施例では、センサロータ81Aの構成によって、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じうる渦電流の大きさを、ロータ30の回転角度とは無関係に略一定値に維持させることで、同様の効果を得る。
【0056】
具体的には、本実施例では、センサロータ81Aは、
図14に示すように、軸方向に視て、センサ隣接部300の第1部位301及び第2部位302に重なるように配置される。センサロータ81Aは、第1部位301に対応する周方向位置に、小径部810Aを有し、センサロータ81Aは、第2部位302に対応する周方向位置に、大径部812Aを有し、小径部810Aの外径は、第1部位301の外径以上であり、かつ、大径部812Aの外径は、第2部位302の外径以上であってよい。なお、センサ隣接部300における第2部位302よりも径方向外側の部位304は、凹凸や孔等を有さない部位であり、センシング部82からの磁束B1に起因して生じうる渦電流が略一定となる部位である。
【0057】
この場合、センサ隣接部300の第1部位301及び第2部位302がセンサコイル821に軸方向に直接的に対向することがなくなるので、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じる渦電流の大きさは、センサ隣接部300における第2部位302よりも径方向外側の部位304(凹凸や孔等を有さない部位)に起因した略一定値となる。この結果、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じうる渦電流の大きさを、ロータ30の回転角度とは無関係に略一定値に維持できる。なお、略一定値とは、変動量の10%程度に収まる態様を含む概念である。
【0058】
また、本実施例においても、センサロータ81Aは、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位(小径部810A及び大径部812B)を有する。この結果、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、小径部810A及び大径部812Aに起因した波形に対して、センサ隣接部300における第2部位302よりも径方向外側の部位304(凹凸や孔等を有さない部位)に起因した略一定のオフセット量を有する波形となる。具体的には、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、
図11に示した波形501と同様となる。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を精度良く検出できる。
【0059】
なお、本実施例によるセンサロータ81Aは、第1部位301よりも外径が大きい第2部位302を軸方向で覆う形態であることから、上述した実施例1のような、第2部位302を軸方向で覆うことのないセンサロータ81よりも径方向外側まで延在する。すなわち、本実施例によるセンサロータ81Aの小径部810A及び大径部812Aは、上述した実施例1によるセンサロータ81の小径部810及び大径部812よりも、それぞれ外径が大きい。これに対応して、本実施例では、センシング部82は、上述した実施例1の搭載位置(
図1A及び
図1B参照)よりも径方向外側に配置されてよい。
【0060】
また、本実施例によるセンサロータ81Aは、第2部位302を軸方向で覆う形態であることから、センシング部82のセンサ出力は、第2部位302による影響を実質的に受けない。従って、本実施例によるセンサロータ81Aは、センサ隣接部300に代えて、第2部位302を周期的に有さないセンサ隣接部に対して適用されてもよい。すなわち、本実施例の場合、センサ隣接部300における1つ以上の第2部位302は、センサロータ81Aの大径部812Aのいずれかに対応する径方向位置に配置されればよく、センサロータ81Aの大径部812Aのそれぞれに対して、1対1の対応関係で第2部位302が配置される必要はない。例えば、センサ隣接部は、8つに代えて、7つだけ第2部位302を有してもよく、この場合、7つの第2部位302のそれぞれが、センサロータ81Aの大径部812Aの対応する1つの径方向位置に配置されればよい。
【0061】
[実施例3]
以下の実施例3の説明において、上述した実施例1と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0062】
図15は、実施例3によるモータ1Bにおけるセンサ隣接部300とセンサロータ81Bとを概略的に示す軸方向の平面図であり、
図9と同様、回転軸12よりも上側半分だけを示す図である。
図16は、本実施例によるセンサロータ81Bの斜視図であり、
図17は、本実施例においてセンシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の波形であって、センサ隣接部300により影響を受けたセンサ出力の波形を示す図である。
図17では、横軸にロータ30の回転角度を取り、縦軸にセンサ出力の大きさを取り、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形が模式的に示されている。
【0063】
実施例3によるモータ1Bは、上述した実施例1によるモータ1に対して、センサロータ81がセンサロータ81Bで置換された点が異なる。
【0064】
上述した実施例1では、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じる渦電流の大きさを、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサロータ81において生じる渦電流の大きさとともに、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化させている。
【0065】
これに対して、本実施例では、センサロータ81Bの構成によって、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じうる渦電流の大きさを、ロータ30の回転角度とは無関係に略一定値に維持させることで、同様の効果を得る。
【0066】
具体的には、本実施例では、センサロータ81Bは、
図15及び
図16に示すように、小径部810及び大径部812のそれぞれの径方向外側に、カバー部813Bを有する。カバー部813Bは、小径部810及び大径部812のそれぞれよりも薄肉で形成されてよい。カバー部813Bは、小径部810及び大径部812と同じ材料により形成されるが、変形例では、小径部810及び大径部812とは異なる材料(例えば高透磁率材料)により形成されてもよい。カバー部813Bは、小径部810及び大径部812のそれぞれの径方向外側の縁部から連続し、センサロータ81B全体を外径が一定となるように径方向に延在する。この場合、センサロータ81Bの外径は、カバー部813Bの径方向外側縁部によって定まる。カバー部813Bは、軸方向に視て、センサ隣接部300の第2部位302(
図15では、カバー部813Bにより可視でない)に重なるように径方向に延在する。センサロータ81Bの外径は、センサ隣接部300の第2部位302(
図8参照)の外径以上であってよい。
【0067】
この場合、センサ隣接部300の第1部位301及び第2部位302がセンサコイル821に軸方向に直接的に対向することがなくなるので、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じうる渦電流の大きさは、センサ隣接部300におけるカバー部813Bよりも径方向外側の部位304(凹凸や孔等を有さない部位)に起因した略一定値となる。この結果、センシング部82からの磁束B1に起因してセンサ隣接部300において生じうる渦電流の大きさを、ロータ30の回転角度とは無関係に略一定値に維持できる。
【0068】
また、本実施例においても、センサロータ81Bは、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での外径が、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する部位(小径部810及び大径部812)を有する。また、本実施例では、センサロータ81Bのカバー部813Bがセンサコイル821に軸方向に直接的に対向することになるが、センシング部82からの磁束B1に起因してカバー部813Bにおいて生じうる渦電流の大きさは、略一定値となる。これは、上述したように、カバー部813Bの外径は、一定であるためである。この結果、本実施例では、センシング部82により生成されるセンサ出力(電気信号)の時系列波形は、小径部810及び大径部812に起因した波形に対して、カバー部813B及び部位304に起因した略一定のオフセット量を有する波形となる。具体的には、本実施例では、
図17に示すように、
図5に示した理想的な波形500に対して略一定のオフセット量(
図17のΔ2参照)を有する波形502となる。従って、このようなセンサ出力(電気信号)に基づいて、ロータ30の回転角度を精度良く検出できる。
【0069】
なお、本実施例によるセンサロータ81Bは、カバー部813Bにより第2部位302を軸方向で覆う形態であることから、センシング部82のセンサ出力は、第2部位302による影響を実質的に受けない。従って、センサ隣接部300に代えて、第2部位302を周期的に有さないセンサ隣接部に対して適用されてもよい。特に、本実施例の場合、カバー部813Bは全周にわたって形成されるので、第2部位302は、周方向の任意の位置に形成されてもよい。従って、本実施例によれば、センサ隣接部300の設計自由度を効果的に高めることができる。
【0070】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0071】
例えば、上述した実施例1(実施例2及び実施例3も同様)では、センサロータ81は、周期的に沿って周期的に変化する外径を有しているが、周期的に変化する外径に代えて又は加えて、周期的に変化する厚み(軸方向の厚み)を有してもよい。この場合、センサロータ81は、センシング部82と軸方向に対向する周方向位置での厚みが、ロータ30の回転角度が所定角度変化するごとに周期的に変化する。
【符号の説明】
【0072】
1・・・モータ(回転電機)、10・・・モータハウジング(非回転部)、30・・・ロータ、300・・・センサ隣接部、301・・・第1部位(ベース部位又は特定部位、凹部)、302・・・第2部位(ベース部位又は特定部位、凸部)、81・・・センサロータ、810、810A・・・小径部(部位)、812、812A・・・大径部(部位)、82・・・センシング部、821・・・センサコイル(コイル)