(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097107
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】撮像光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240710BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085535
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秋洋
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA01
2H087MA04
2H087PA04
2H087PA17
2H087PB04
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA34
2H087RA41
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】諸収差を良好に補正しつつ撮像光学系全体の小型化を図る。
【解決手段】撮像光学系(10)は、撮像素子(51)の光電変換部(51a)に被写体像を結像させるものであり、物体側から順に、入射光線を折り曲げるプリズム(Pr)と、正の屈折力を有する第1レンズ(L1)と、負の屈折力を有する第2レンズ(L2)と、負の屈折力を有する第3レンズ(L3)と、正の屈折力を有する第4レンズ(L4)とを備え、以下の条件式(1)を満足する。
0.30<f12/f<1.0 ・・・(1)
ただし、f12は第1レンズ(L1)と第2レンズ(L2)の合成焦点距離であり、fは撮像光学系(10)全系の焦点距離である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の光電変換部に被写体像を結像させる撮像光学系であって、
物体側から順に、
入射光線を折り曲げる反射光学素子と、
正の屈折力を有する第1レンズと、
負の屈折力を有する第2レンズと、
負の屈折力を有する第3レンズと、
正の屈折力を有する第4レンズと、
を備え、
以下の条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
0.30<f12/f<1.0 ・・・(1)
ただし、
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f:撮像光学系全系の焦点距離
【請求項2】
前記第4レンズの像側の面は、非球面形状に形成され、光軸との交点以外の位置に極値を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像光学系。
-1.45<f2/f<-0.30 ・・・(2)
ただし、
f2:第2レンズの像側面の焦点距離
f:撮像光学系全系の焦点距離
【請求項4】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ及び前記第4レンズのうち、少なくとも1つのレンズは、非円形形状であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記第2レンズよりも物体側に配置された非円形形状の開口絞りを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ及び前記第4レンズのうち、少なくとも1つのレンズは、ガラス材料で形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像光学系。
【請求項7】
前記第1レンズ及び前記第3レンズがガラス材料で形成され、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項6に記載の撮像光学系。
n1d<1.50、かつ、ν1d>80.0 ・・・(3)
n3d>1.75、かつ、ν3d<50.0 ・・・(4)
ただし、
n1d:第1レンズのd線に対する屈折率
ν1d:第1レンズのアッベ数
n3d:第3レンズのd線に対する屈折率
ν3d:第3レンズのアッベ数
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像光学系と、
前記第4レンズよりも像側に配置された前記撮像素子と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学系及びこれを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの携帯端末に、比較的短い焦点距離の広角単焦点レンズと、比較的長い焦点距離の望遠単焦点レンズの2つ以上のレンズを備える複眼カメラが搭載されるようになってきた。このような複眼カメラでは、電子ズームでその焦点距離の間をシームレスに繋げることで、あたかも光学ズームレンズのような撮影が可能となっている。
【0003】
このような複眼カメラの望遠単焦点レンズでは、焦点距離が長いために光学全長が大きくなってしまうことが課題となる。そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、レンズ群の最も物体側にプリズムを配置して光路を90°折り曲げることで、携帯端末本体の厚みを薄くしている。
一方で、望遠単焦点レンズにはより長い焦点距離が求められている。しかし、上記特許文献1に記載の光学系では、焦点距離に対する撮像光学系の全長が長くなってしまう。そのため、撮像光学系の体積が大きくなって、小型の携帯端末への搭載には適さないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0180847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、諸収差を良好に補正しつつ撮像光学系全体の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、撮像素子の光電変換部に被写体像を結像させる撮像光学系であって、
物体側から順に、
入射光線を折り曲げる反射光学素子と、
正の屈折力を有する第1レンズと、
負の屈折力を有する第2レンズと、
負の屈折力を有する第3レンズと、
正の屈折力を有する第4レンズと、
を備え、
以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.30<f12/f<1.0 ・・・(1)
ただし、
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f:撮像光学系全系の焦点距離
【0007】
また、本発明は、撮像装置であって、
上記撮像光学系と、
前記第4レンズよりも像側に配置された前記撮像素子と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、諸収差を良好に補正しつつ撮像光学系全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の撮像装置を備える携帯端末の断面図である。
【
図2】実施形態の撮像装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の撮像光学系の(a)物体距離が無限遠時の断面図であり、(b)縦収差図である。
【
図4】実施例2の撮像光学系の(a)物体距離が無限遠時の断面図であり、(b)縦収差図である。
【
図5】実施例3の撮像光学系の(a)物体距離が無限遠時の断面図であり、(b)縦収差図である。
【
図6】実施例4の撮像光学系の(a)物体距離が無限遠時の断面図であり、(b)縦収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[撮像装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態である撮像装置100を備える携帯端末300の模式的な断面図である。
この図に示すように、撮像装置100は、画像信号を形成するためのカメラモジュール30を備える。カメラモジュール30は、撮像光学系10とセンサー部50とを備える。
【0012】
撮像光学系10は、撮像素子51の撮像面(被投影面)Iに被写体像を結像させるための単焦点の光学系であり、鏡筒41内に収容されている。撮像光学系10は、物体側から順に、プリズムPrと、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4とを備える。撮像光学系10の光軸は、プリズムPrよりも物体側の光軸Ax1と、プリズムPrよりも像側の光軸Ax2とを含む。光軸Ax1と光軸Ax2とは、プリズムPrにより略90°折れ曲がっている。光軸Ax1は携帯端末300の厚さ方向に略沿っている。
撮像光学系10の構成の詳細については後述する。
【0013】
撮像光学系10を収容する鏡筒41は、物体側からの光を入射させる開口OPを有する。
また、鏡筒41には、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも一部のレンズ又はレンズ群を光軸Ax2に沿って移動させる駆動機構42が設けられている。駆動機構42は、当該一部のレンズ又はレンズ群を光軸Ax2上で移動させることにより、撮像光学系10の合焦の動作を可能にする。駆動機構42は、例えばボイスコイルモーターとガイドとを備える。なお、駆動機構42はボイスコイルモーター等に代えてステッピングモーター等で構成してもよい。
【0014】
センサー部50は、撮像光学系10によって形成された被写体像を光電変換する撮像素子(固体撮像素子)51を備える。
撮像素子51は、例えばCMOS型のイメージセンサーである。撮像素子51は、光軸Ax2に対して位置決めされた状態で固定されている。この撮像素子51は、撮像面Iとしての光電変換部51aを有し、その周辺には、不図示の信号処理回路が形成されている。光電変換部51aには、画素つまり光電変換素子が二次元的に配置されている。なお、撮像素子51は、上述のCMOS型のイメージセンサーに限るものでなく、CCD等の他の撮像素子を組み込んだものであってもよい。
【0015】
撮像装置100を搭載した携帯端末300は、例えばスマートフォンである。ただし、携帯端末300はスマートフォンに限定されず、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレットパソコン、モバイルパソコン、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等であってもよい。
【0016】
図2は、撮像装置100の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、撮像装置100は、カメラモジュール30を動作させる処理部60を備える。
処理部60は、レンズ駆動部61と、素子駆動部62と、入力部63と、記憶部64と、画像処理部65と、表示部66と、制御部67とを備える。
【0017】
レンズ駆動部61は、駆動機構42を動作させ、第1~第4レンズL1~L4のうちの一部のレンズ又はレンズ群を光軸Ax2に沿って移動させることにより、撮像光学系10の合焦等の動作を行わせる。
素子駆動部62は、制御部67から撮像素子51を駆動するための電圧やクロック信号の供給を受けて撮像素子51に付随する回路へ出力することによって、撮像素子51を動作させる。
入力部63は、ユーザーの操作又は外部装置からのコマンドを受け付ける部分である。
記憶部64は、撮像装置100の動作に必要な情報、カメラモジュール30によって取得した画像データ、画像処理に用いるレンズ補正データ等を保管する部分である。
画像処理部65は、撮像素子51から出力された画像信号に対して画像処理を行う。画像処理部65では、画像信号が例えば動画像に対応するものであるとしてこれを構成するコマ画像に対して加工を施す。画像処理部65は、色補正、階調補正、ズーミング等の通常の画像処理の他に、記憶部64から読み出されたレンズ補正データに基づいて画像信号に対して歪み補正処理を実行する。
表示部66は、ユーザーに提示すべき情報、撮影した画像等を表示する部分である。なお、表示部66は、入力部63の機能を兼用できる。
制御部67は、レンズ駆動部61、素子駆動部62、入力部63、記憶部64、画像処理部65、表示部66等の動作を統括的に制御し、例えばカメラモジュール30によって得た画像データに対して種々の画像処理を行う。
【0018】
[撮像光学系の具体構成]
続いて、撮像光学系10についてより詳細に説明する。
図1に示すように、撮像光学系10は、本実施形態では、物体側から順に、プリズムPrと、開口絞りSと、第1~第4レンズL1~L4とから実質的に構成される。
【0019】
プリズムPrは、本発明に係る反射光学素子の一例であり、入射光線を略90°折り曲げる。ただし、折り曲げる角度は特に限定されない。この反射光学素子をミラーなどの反射部材ではなく、光路を媒質で埋められるプリズムPrとすることで、光路長を短くして携帯端末300の厚さを薄くすることができる。
【0020】
開口絞りSは、非円形形状に形成され、プリズムPrと第1レンズL1との間に配置される。ただし、開口絞りSは、第2レンズL2よりも物体側に配置されていればよい。
開口絞りSを第2レンズL2よりも物体側に配置することにより、入射瞳位置を光軸Ax2上の物体側に近づけることができるため、プリズムPrの厚さを薄くすることができる。
また、開口絞りSを第1レンズL1の物体側面の少なくとも一部と重なるように配置した場合、撮像光学系10を光軸Ax2方向に見たときに、光線高さが規制された部分においては第1レンズL1の物体側面での屈折角を小さくすることができるので、第1レンズL1で発生する高次の球面収差やコマ収差の発生を抑えることができる。また、第1レンズL1を通過する光線高さを小さくすることができるので、第1レンズL1の縁厚を確保しやすくすることができ、製造難度が下がる。
また、開口絞りSを円形形状とすると、例えば厚さ方向に制限のある携帯端末300に搭載する場合において厚さが増大してしまう。そこで開口絞りSの形状を、非円形形状、例えば円形の上下を水平に切り取ったような形状とすることで、撮像光学系10ひいては携帯端末300の厚さを薄くすることができる。なお、この非円形形状は上下両側を水平に切り取ったものに限定されず、例えば上下いずれか一方のみを水平に切り取った形状などとしてもよい。
【0021】
第1レンズL1は、正の屈折力を有する。
第2レンズL2は、負の屈折力を有する。
第3レンズL3は、負の屈折力を有する。
第4レンズL4は、正の屈折力を有する。
【0022】
第4レンズL4の像側の面は、非球面形状に形成され、光軸Ax2との交点以外の位置に極値を有している。ここで、「極値」とは、有効半径内での光軸Ax2を面内に含む当該第4レンズL4の断面形状の曲線を考えた場合において、非球面の接線が光軸Ax2と垂直な線分となるような非球面上の点のことである。
このように、最も像側に配置された第4レンズL4の像側面を非球面形状とすることで、画面周辺部での諸収差を良好に補正することができる。さらに、第4レンズL4の像側面を光軸Ax2との交点以外の位置に極値を有する非球面形状とすることで、像側光束のテレセントリック特性が確保しやすくなる。
【0023】
第1~第4レンズL1~L4は、円形の上下を水平に切り取った所謂Iカットレンズとなっている。
ただし、全てのレンズがIカットレンズなどの非円形形状になっていなくともよく、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズが非円形形状であればよい。撮像装置100に搭載されるレンズを円形形状とすると、携帯端末300の厚さが増大してしまう。そこで、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズを非円形形状、例えばIカットレンズとすることで、撮像装置100ひいては携帯端末300の厚さを薄くすることができる。なお、この場合の非円形形状はIカットに限定されず、例えば一方向だけ切り取ったDカットやその他の形状であってもよい。
【0024】
第1~第4レンズL1~L4は、ガラス材料で形成されている。
ただし、全てのレンズがガラス材料で形成されていなくともよく、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズがガラス材料で形成されていればよい。第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズをガラス材料で形成することにより、撮像光学系10全系での温度変化時の像点位置変動を小さくすることができる。特に、屈折力の最も強い第1レンズL1をガラス材料で形成するのが、温度変化時の像点位置変動を小さく抑える点においてより望ましい。
【0025】
第4レンズL4とセンサー部50(撮像素子51)との間には、平行平板Fを配置してもよい。平行平板Fは、光学的ローパスフィルター、IRカットフィルター、撮像素子51のシールガラス等を想定した平行平板である。平行平板Fは、別体のフィルター部材として配置することもできるが、撮像光学系10のうちのいずれかのレンズ面にその機能を付与することもできる。例えば、赤外カットフィルターの場合、赤外カットコートを1枚又は複数枚のレンズの表面上に施してもよい。
【0026】
撮像光学系10は、以下の条件式(1)を満足する。
0.30<f12/f<1.0 ・・・(1)
ただし、f12は第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離であり、fは撮像光学系10全系の焦点距離である。
【0027】
条件式(1)は、第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離f12を適切に設定するための条件式である。f12/fが条件式(1)の上限を下回ることで、第1レンズL1と第2レンズL2の正の合成焦点距離f12が長くなりすぎないため、撮像光学系10全系の主点位置をより物体側に配置することができ、撮像光学系10の全長を短くすることができる。一方、f12/fが条件式(1)の下限を上回ることで、第1レンズL1と第2レンズL2の正の合成焦点距離f12が短くなりすぎず、第1レンズL1や第2レンズL2で発生する高次の球面収差やコマ収差を小さく抑えることができ、第1レンズL1及び第2レンズL2の個々の屈折力を適度に抑えることによって、製造誤差に対する像面変動を小さくすることができる。
なお、撮像光学系10は、以下の条件式(1)’を満足するのがより望ましい。
0.45<f12/f<0.60 ・・・(1)’
【0028】
また、撮像光学系10は、上記条件式(1)に加えて、以下の条件式(2)を満足するのが好ましい。
-1.45<f2/f<-0.30 ・・・(2)
ただし、f2は第2レンズL2の像側面の焦点距離であり、fは撮像光学系10全系の焦点距離である。
【0029】
条件式(2)は、第2レンズL2の焦点距離を適切に設定するための条件式である。f2/fが条件式(2)の上限を下回ることで、第2レンズL2の負の屈折力が必要以上に強くなりすぎず、周辺部でのコマ収差や歪曲収差を小さくすることができる。一方、f2/fが条件式(2)の下限を上回ることで、第2レンズL2の負の屈折力を適度に維持することができ、ペッツバール和の低減や像面湾曲の補正に効果がある。
なお、撮像光学系10は、以下の条件式(2)’を満足するのがより望ましい。
-1.30<f2/f<-0.35 ・・・(2)’
【0030】
さらに、第1レンズL1及び第3レンズL3がガラス材料で形成された場合に、撮像光学系10は、以下の条件式(3)及び(4)を満足するのが好ましい。
n1d<1.50、かつ、ν1d>80.0 ・・・(3)
n3d>1.75、かつ、ν3d<50.0 ・・・(4)
ただし、n1dは第1レンズL1のd線に対する屈折率であり、ν1dは第1レンズL1のアッベ数であり、n3dは第3レンズL3のd線に対する屈折率であり、ν3dは第3レンズL3のアッベ数である。
【0031】
条件式(3)及び条件式(4)は、第1レンズL1及び第3レンズL3の屈折率とアッベ数を適切に設定するための条件式である。第1レンズL1及び第3レンズL3の屈折率とアッベ数を条件式(3)及び条件式(4)の範囲内とすることで、撮像光学系10全系の色収差、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0032】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、撮像光学系10が、物体側より順に、正のパワーの第1レンズL1、負のパワーの第2レンズL2、負のパワーの第3レンズL3、正のパワーの第4レンズL4を備える。これら4枚構成のうち2枚を負レンズとすることで、発散作用を有する面を多くしてペッツバール和の補正を容易とし、画面周辺部まで良好な結像性能を確保した撮像光学系10を得ることが可能となる。
また、望遠単焦点レンズは焦点距離が長いため光学全長が大きくなりがちであるが、反射光学素子であるプリズムPrによって光路を折り曲げることで、携帯端末300の厚さを薄くすることができる。特に、反射光学素子をミラーなどの反射部材ではなく、光路を媒質で埋められるプリズムPrとすることで、光路長を短くして折り曲げ時の厚さをより薄くすることができる。
また、撮像光学系10が条件式(1)を満足することで、第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離f12を適切に設定できる。すなわち、f12/fが条件式(1)の上限を下回ることで、撮像光学系10全系の主点位置をより物体側に配置して撮像光学系10の全長を短くすることができる。また、f12/fが条件式(1)の下限を上回ることで、第1レンズL1と第2レンズL2で発生する高次の球面収差やコマ収差を小さく抑えつつ各々の屈折力を適度に抑えて、製造誤差に対する像面変動を小さくできる。
以上より、諸収差を良好に補正しつつ、撮像光学系10全体の小型化を図ることができる。
なお、特に限定はされないが、本実施形態では、下式(5)を満足することを撮像光学系10の「小型化」の指標としている。
L/f<0.75 ・・・(5)
ただし、Lは撮像光学系10全系のうち最も物体側のレンズ面から像側焦点までの光軸Ax2上の距離であり、fは撮像光学系10全系の焦点距離である。ここで、像側焦点とは、撮像光学系10に光軸と平行な光線が入射した場合の像点をいう。なお、撮像光学系10の最も像側の面と像側焦点位置との間に平行平板Fが配置される場合には、平行平板F部分は空気換算距離としたうえで、上記Lの値を計算するものとする。
【0033】
また、本実施形態によれば、最も像側に配置された第4レンズL4の像側面を非球面形状とすることで、画面周辺部での諸収差を良好に補正することができる。さらに、第4レンズL4の像側面を光軸Ax2との交点以外の位置に極値を有する非球面形状とすることで、像側光束のテレセントリック特性が確保しやすくなる。
【0034】
また、本実施形態によれば、撮像光学系10が条件式(2)を満足することで、第2レンズL2の負の屈折力を好適に設定でき、周辺部でのコマ収差や歪曲収差を小さく抑えつつ、ペッツバール和の低減や像面湾曲の補正に良好な効果が得られる。
【0035】
また、本実施形態によれば、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズを非円形形状とすることにより、撮像装置100ひいては携帯端末300の厚さを薄くすることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、開口絞りSを第2レンズL2よりも物体側に配置することにより、入射瞳位置を光軸Ax2上の物体側に近づけることができるため、プリズムPrの厚さを薄くすることができる。また、開口絞りSを非円形形状とすることにより、撮像光学系10ひいては携帯端末300の厚さを薄くすることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、第1~第4レンズL1~L4のうち少なくとも1つのレンズをガラス材料で形成することにより、撮像光学系10全系での温度変化時の像点位置変動を小さくすることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、撮像光学系10が条件式(3)、(4)を満足することで、撮像光学系10全系の色収差、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態及びその変形例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0040】
以下、本発明の撮像光学系の実施例を示す。各実施例に使用する記号は下記の通りである。
f :撮像光学系全系の焦点距離
fB :バックフォーカス
F :Fナンバー
2Y :固体撮像素子の撮像面対角線長
R :曲率半径
D :軸上面間隔
Nd :レンズ材料のd線に対する屈折率
νd :レンズ材料のアッベ数
各実施例において、レンズ面データの各面番号の後に「*」が記載されている面が非球面形状を有する面であり、非球面の形状は、面の頂点を原点とし、光軸方向にX軸をとり、光軸と垂直方向の高さをhとして以下の「数1」で表す。
【数1】
ただし、
Ai:i次の非球面係数
R :曲率半径
K :円錐定数
【0041】
(実施例1)
図3(a)、(b)に実施例1の撮像光学系の断面図及び縦収差図(球面収差、非点収差、歪曲収差)を示す。実施例1の撮像光学系では、開口絞りから平行平板までの全ての光学素子が合焦動作する。以降の実施例も同様である。
【0042】
実施例1の撮像光学系の全体諸元を以下に示す。
f=29.14mm
fB=2.27mm
F=4.1
2Y=5.5mm
【0043】
実施例1のレンズ面のデータを以下の表Iに示す。
【表1】
【0044】
実施例1のレンズ面の非球面係数を以下の表IIに示す。なお、これ以降(表のレンズデータを含む)において、10のべき乗数(たとえば2.5×10-02)をE(たとえば2.5E-02)を用いて表すものとする。
【表2】
【0045】
実施例1の単レンズデータを以下の表IIIに示す。
【表3】
【0046】
実施例1の撮像光学系における条件式(1)~(4)の各数値を以下に示す。
条件式(1):f12/f=0.55
条件式(2):f2/f=-0.74
条件式(3):n1d=1.49710、ν1d=81.6
条件式(4):n3d=1.76802、ν3d=49.2
【0047】
(実施例2)
図4(a)、(b)に実施例2の撮像光学系の断面図及び縦収差図(球面収差、非点収差、歪曲収差)を示す。
【0048】
実施例2の撮像光学系の全体諸元を以下に示す。
f=29.14mm
fB=2.27mm
F=4.1
2Y=5.5mm
【0049】
実施例2のレンズ面のデータを以下の表IVに示す。
【表4】
【0050】
実施例2のレンズ面の非球面係数を以下の表Vに示す。
【表5】
【0051】
実施例2の単レンズデータを以下の表VIに示す。
【表6】
【0052】
実施例2の撮像光学系における条件式(1)~(4)の各数値を以下に示す。
条件式(1):f12/f=0.86
条件式(2):f2/f=-0.31
条件式(3):n1d=1.49710、ν1d=81.6
条件式(4):n3d=1.77377、ν3d=41.7
【0053】
(実施例3)
図5(a)、(b)に実施例3の撮像光学系の断面図及び縦収差図(球面収差、非点収差、歪曲収差)を示す。
【0054】
実施例3の撮像光学系の全体諸元を以下に示す。
f=29.14mm
fB=2.27mm
F=4.1
2Y=5.5mm
【0055】
実施例3のレンズ面のデータを以下の表VIIに示す。
【表7】
【0056】
実施例3のレンズ面の非球面係数を以下の表VIIIに示す。
【表8】
【0057】
実施例3の単レンズデータを以下の表IXに示す。
【表9】
【0058】
実施例3の撮像光学系における条件式(1)~(4)の各数値を以下に示す。
条件式(1):f12/f=0.41
条件式(2):f2/f=-1.34
条件式(3):n1d=1.49710、ν1d=81.6
条件式(4):n3d=1.76802、ν3d=49.2
【0059】
(実施例4)
図6(a)、(b)に実施例4の撮像光学系の断面図及び縦収差図(球面収差、非点収差、歪曲収差)を示す。
【0060】
実施例4の撮像光学系の全体諸元を以下に示す。
f=29.14mm
fB=2.27mm
F=4.1
2Y=5.5mm
【0061】
実施例4のレンズ面のデータを以下の表Xに示す。
【表10】
【0062】
実施例4のレンズ面の非球面係数を以下の表XIに示す。
【表11】
【0063】
実施例4の単レンズデータを以下の表XIIに示す。
【表12】
【0064】
実施例4の撮像光学系における条件式(1)~(4)の各数値を以下に示す。
条件式(1):f12/f=0.55
条件式(2):f2/f=-0.78
条件式(3):n1d=1.49710、ν1d=81.6
条件式(4):n3d=1.73077、ν3d=40.5