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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097119
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】流体の電気加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20220101AFI20240710BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F24H1/10 G
H05B3/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000349
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】末松 芳章
(72)【発明者】
【氏名】松田 まどか
【テーマコード(参考)】
3K058
3L034
【Fターム(参考)】
3K058AA87
3K058BA11
3K058FA02
3L034BA12
3L034BB02
3L034BB03
(57)【要約】
【課題】流体の加熱効率の高効率化と加熱装置の小型化とを可能にする、流体の電気加熱装置を提供する。
【解決手段】本発明は、導電性の加熱管で多管構造の加熱部をなし、通電加熱により昇温した加熱管から内部の被加熱流体を加熱する、流体の電気加熱装置であって、a)流体供給ヘッダーと、b)流体排出ヘッダーと、c)流体ヘッダーの加熱部側の壁部と一体的に構成され、複数の加熱管の両端部同士を片側ずつ短絡させる管端部短絡電極と、d)流体ヘッダーの本体部と管端部短絡電極との間で、互いを絶縁する電気絶縁体と、を備え、各加熱管は、対向する管端部短絡電極間で、加熱管の長手方向に沿って、加熱部内での加熱管位置を外側と内側とで入れ替わるように配設される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の加熱管が並行した複数本で多管構造の加熱部をなし、交流の通電加熱により昇温した前記加熱管の管壁から内部を流れる被加熱流体を加熱する、流体の電気加熱装置であって、
前記流体の電気加熱装置は、
(a)前記加熱管の各々に前記被加熱流体を分配する流体供給ヘッダーと、
(b)前記加熱管の各々から前記被加熱流体を回収する流体排出ヘッダーと、
(c)前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの各々の前記加熱部側の壁部と一体的に構成され、複数の前記加熱管の両端部同士を片側ずつそれぞれ電気的に短絡させる管端部短絡電極と、
(d)前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの各々の本体部と、前記管端部短絡電極との間で、互いを電気的に絶縁する電気絶縁体と、
を備え、
前記複数の加熱管のそれぞれは、
対向する一対の管端部短絡電極のそれぞれの対向面を、前記加熱管の横方向である前記加熱部の内外方向で内側領域および外側領域に区分したとき、
前記加熱管の一方の端部が、当該端部側の前記管端部短絡電極の前記内側領域または前記外側領域のいずれか一方に接続された場合に、
前記加熱管の他方の端部が、当該端部側の前記管端部短絡電極の前記内側領域または前記外側領域のいずれか他方に接続されるように、配設される、
流体の電気加熱装置。
【請求項2】
前記加熱管の一端または両端と、前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの一方または双方との間で、前記加熱管の熱変形を吸収する導電性の伸縮器を備える、請求項1に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項3】
前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーに配設される前記管端部短絡電極のいずれか一方を、前記流体供給ヘッダーまたは前記流体排出ヘッダーから独立させ、可撓性導体と組み合わせて前記加熱管の端部を電気的に短絡させる分離型の管端部短絡電極とする、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項4】
前記流体供給ヘッダーから前記加熱部を経て前記流体排出ヘッダーまでの各構成要素部が不活性ガスを充満させたシールボックス内に配設される、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の電気加熱装置に関し、詳しくは高い加熱効率を有して小型化可能な流体の電気加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のために、エネルギー効率の高効率化や二酸化炭素排出量の少ない燃料への転換が進められている。大規模で大容量の流体の加熱装置の分野では、従来より、種々なものが使用されており、例えば、燃焼ガスを利用したボイラ等の加熱装置が例示できる。しかし、燃焼ガスを使用するボイラ等の加熱装置は、加熱効率が高効率のものでも35%程度と効率の限界がある。また、流体を効率的に高温まで加熱するためには燃焼ガスの高温化とそれに伴う耐火断熱構造が必要であり、設備の大型化と高コスト化とが避けられないという問題がある。
【0003】
このような流体の加熱設備の小型化および加熱効率の効率化のいずれの問題に対しても、大電力を限られた空間に投入できる電気加熱手段が有利であるといえる。例えば、特許文献1には、図7の(a)縦断面図(ただし、発熱体62は、横断面図での記載より単純化して2本のみを記載)と(b)横断面図とで示すような、誘導加熱による流体の電気加熱装置60が開示されている。具体的には、発熱体62は、例えばSUS304からなる非磁性管62aおよび例えばSUS430からなる磁性体としての磁性管62bによって構成される。非磁性管62aの両端は、管支え板64、66で固定支持される。また、発熱体62の外側周囲には、図示しない交流電源に接続された誘導加熱コイル72が配設される。この誘導加熱コイル72は、円筒形状の内側断熱材68と外側断熱材70との間に介在し、内側断熱材68の両端が、管支え板64、66に固定支持されることにより、位置決めされる。管支え板64、66には、それぞれ流体入口ヘッダー74、流体出口ヘッダー76が設けられ、気体または液体の被加熱流体Aは、流体入口ヘッダー74から非磁性管62aを通って加熱されて流体出口ヘッダー76へと導かれる。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、磁性管62bは、被加熱流体Aが流れる非磁性管62aの外周面に接触しており、誘導加熱により磁性管62bにおいて生じた熱は磁性管62bから非磁性管62aに、非磁性管62aから被加熱流体に熱伝導している。そのため、非磁性管62aに比べ耐食性に劣る磁性管62bに被加熱流体が接触することがなく、耐食性が向上するとする。また、複数の発熱体62を、互いに平行に、且つ、誘導加熱コイル72内で互いに略均等間隔をもって分布して配置することで、流体の電気加熱装置60の大型化を抑えながら、有効に被加熱流体を加熱することもできるとする。
【0005】
また、特許文献2には、図8に示すような通電加熱による流体の電気加熱装置80が開示されている。その基本的な構成は、図8(a)に示すように、加熱管体82と、非加熱管体84と、管体継ぎ手86と、交流電源88とから「一加熱管体一電源」の構成である。加熱管体82は、通電により発熱する金属で形成される。この加熱管体82には、その一方の端部から他方の端部に電流を流す交流電源88が接続される。非加熱管体84は、加熱管体82の両端部に接続され、加熱管体82と同じ径寸法を有して、被加熱流体の流路をなす。管体継ぎ手86は、加熱管体82と非加熱管体84、84とを機械的に接続して流路を形成すると共に加熱管体82と非加熱管体84、84とを電気的に絶縁する。なお、加熱管体82を保持する支持台を必要とする場合には、図8(a)に示すように、支持台90と加熱管体82との間に電気絶縁体92を介在させる。
【0006】
特許文献2には、図8(b)、(c)に示すように、複数本の加熱管体82同士を接続する場合の実施形態も開示されている。図8(b)は、電気的絶縁性を有する管体継ぎ手86を使って加熱管体82同士を連結し、ジャンパー94によって加熱管体82同士を電気的に接続する場合の一例である。また、別法として、機械的に連結し且つ電気的にも接続するフランジを使って、加熱管体82同士を接続してもよいとする。あるいは、図8(c)に示すように、各加熱管体82を管体継ぎ手86で電気的に絶縁して、各加熱管体82毎に交流電源88を設けてもよいとする。
【0007】
このように、特許文献2に記載の流体の電気加熱装置80によれば、加熱管体82で被加熱流体の流路の少なくとも一部を構成するとともに、流体の流路自体を発熱手段として流体を直接電気加熱することにより、高いエネルギー効率で流体を加熱昇温することができるとする。具体的なエネルギー効率についての実験例としては、内径7mm、外形10.5mm、長さ8mのステンレス鋼管製の加熱管体に、60V、180Aの交流を流しながら、汚泥スラリーを流量80リットル/時間で流した例が示されている。この実験では、20℃から200℃まで約180℃昇温させることができ、加熱管体に与えた電気エネルギーの80~90%が汚泥スラリーの加熱に利用できたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-134041号公報
【特許文献2】特開2000-213807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のようなソレノイドコイル状の誘導加熱コイル72の内側の発熱体62(磁性管62b)を加熱する場合には、次のような理由により、その加熱効率を向上させるには、限界があった。これは、誘導加熱コイル72により生じる磁束を、誘導加熱コイル内の発熱体(導体)に全て通すことは難しいからである。このような効率低下の要因を、図7(b)を参照しながら具体的に説明すると次のとおりである。
(ア)誘導加熱コイル72で発生した磁束は、誘導加熱コイル72の内側では、誘導加熱コイル72に近接した発熱体62の表層を貫通して誘導電流を起こすが、磁束の性質上、加熱に寄与する発熱体62の部位は誘導加熱コイル72側の半周程度に限られる。
(イ)一方、誘導加熱コイル72の内側の発熱体62の内、外側の発熱体62では、誘導加熱コイル72と反対の面側が、発熱体62自体の誘導加熱コイル72側の陰に隠れて、有効な磁束の貫通量が少なくなる。また中心側の発熱体62では、全体的に誘導加熱コイル72から離れており、加えて外側の発熱体62の陰に隠れる配置により、有効な磁束の貫通量が少ない。
(ウ)さらに、誘導加熱コイル72の外側の磁束は自由に放射されるため、発熱体62以外の周囲の金属に入る磁束も相当程度多い。
以上のとおり、ソレノイドコイル状の誘導加熱コイルにより生じる磁束の全てを、被加熱材に集中させることは困難であり、そのためにソレノイドコイル状の誘導加熱コイルでの加熱効率向上には限界があるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載のような流体の電気加熱装置80では、加熱管体82から被加熱流体への伝熱は、加熱管体82の内面からとなる。そのため、このような加熱装置で数百℃というような高温加熱を効率よく加熱する場合には、加熱管体を延長して伝熱面積を大きく確保する必要がある。しかし、加熱管体の延長は加熱装置の大型化に結びつきやすいことから、特許文献2に記載の発明による加熱装置の小型化には限界があるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑み、流体の電気加熱の高効率化、大容量流体用の加熱装置の小型化、および複数の加熱管の交流加熱で生じ易い加熱温度の偏りの低減を可能にする、流体の電気加熱装置および流体の電気加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]導電性の加熱管が並行した複数本で多管構造の加熱部をなし、交流の通電加熱により昇温した前記加熱管の管壁から内部を流れる被加熱流体を加熱する、流体の電気加熱装置であって、
前記流体の電気加熱装置は、
(a)前記加熱管の各々に前記被加熱流体を分配する流体供給ヘッダーと、
(b)前記加熱管の各々から前記被加熱流体を回収する流体排出ヘッダーと、
(c)前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの各々の前記加熱部側の壁部と一体的に構成され、複数の前記加熱管の両端部同士を片側ずつそれぞれ電気的に短絡させる管端部短絡電極と、
(d)前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの各々の本体部と、前記管端部短絡電極との間で、互いを電気的に絶縁する電気絶縁体と、
を備え、
前記複数の加熱管のそれぞれは、
対向する一対の管端部短絡電極のそれぞれの対向面を、前記加熱管の横方向である前記加熱部の内外方向で内側領域および外側領域に区分したとき、
前記加熱管の一方の端部が、当該端部側の前記管端部短絡電極の前記内側領域または前記外側領域のいずれか一方に接続された場合に、
前記加熱管の他方の端部が、当該端部側の前記管端部短絡電極の前記内側領域または前記外側領域のいずれか他方に接続されるように、配設される、
流体の電気加熱装置。
【0013】
[2]前記加熱管の一端または両端と、前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーの一方または双方との間で、前記加熱管の熱変形を吸収する導電性の伸縮器を備える、[1]に記載の流体の電気加熱装置。
【0014】
[3]前記流体供給ヘッダーおよび前記流体排出ヘッダーに配設される前記管端部短絡電極のいずれか一方を、前記流体供給ヘッダーまたは前記流体排出ヘッダーから独立させ、可撓性導体と組み合わせて前記加熱管の端部を電気的に短絡させる分離型の管端部短絡電極とする、[1]または[2]に記載の流体の電気加熱装置。
【0015】
[4]前記流体供給ヘッダーから前記加熱部を経て前記流体排出ヘッダーまでの各構成要素部が不活性ガスを充満させたシールボックス内に配設される、[1]~[3]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱管を多管構造とすることで大きな伝熱面積を確保するとともに、被加熱流体を供給または排出するヘッダーの加熱管側の壁と加熱管に並列給電する管端部短絡電極とを一体的に構成することで加熱装置の小型化を同時に達成することができる。また、本発明では、通電加熱を採用することで、誘導加熱とは異なり、そもそも磁束漏れによる効率低下が小さく、高い加熱効率を確保することができる。さらに、本発明では、交流電源を用いた場合に加熱管の配置により生じ易い電流の偏りによる加熱管の温度偏差を解消して、均等な加熱をすることが可能である。
以上のように、本発明によれば、空間的な加熱装置の小型化、電気的な高効率化および同一設備空間での加熱能力増強が可能であり、交流加熱においても加熱管の電流の偏りおよび流体の加熱温度偏差を生じ難い制御性に優れた、流体の電気加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置1の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。
図2図1での奥行き方向の加熱管12の配列例を、図1のS-S断面矢視で模式的に示す図である。
図3】第1の実施形態の変形例に係る流体の電気加熱装置の加熱管12の配列を、図2と同等の断面矢視で回転対称配列とする例を模式的に示す図である。
図4】第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。
図5】第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。
図6】第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。
図7】従来技術に係る誘導加熱による流体の電気加熱装置を、(a)縦断面図と(b)横断面図とで模式的に示す図である。
図8】従来技術に係る通電加熱による流体の電気加熱装置を、(a)一加熱管体一電源の基本構成例、(b)加熱管体を複数直列配置した構成例、および(c)基本構成を複数直列に配した構成例で、それぞれ模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置1の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。また、図2は、図1での奥行き方向の加熱管12の配列例を、図1のS-S断面矢視で模式的に示す図である。図3は、第1の実施形態の変形例に係る流体の電気加熱装置の加熱管12の配列を、図2と同等の断面矢視で回転対称配列とする例を模式的に示す図である。図1図3を参照して、第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置について説明する。
【0020】
図1に示すように、第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置1では、導電性の加熱管12が並行した複数本で多管構造の加熱部(以下、単に加熱部ともいう。)10をなす。加熱部10の各加熱管12では、通電加熱により昇温した管壁から内部を流れる被加熱流体Aを加熱する。
【0021】
本実施形態に係る多管構造の加熱部10は、例えば図8に示すような従来技術に係る単管構造の加熱管からなる流体の電気加熱装置80と比較して、同等の加熱部容積の条件では、広い伝熱面(発熱面、加熱面ともいう。)の確保の点で有利である。すなわち、本実施形態では、短い加熱部10長さの範囲で流路の横方向に複数の加熱管12を設けることができることから、加熱部10の占める容積内に、複数の加熱管12の内周面の合計である伝熱面積を広く確保することができる。
【0022】
以上のとおり、本実施形態に係る流体の電気加熱装置1においては、装置を大型化させることなく加熱能力を大幅に増大させることができる。また逆に、本実施形態に係る流体の電気加熱装置1によれば、図8に示すような単管構造の加熱管からなる流体の電気加熱装置の代替として、加熱能力を損なうことなく小型化した加熱装置にすることもできる。
【0023】
本実施形態に係る多管構造の加熱部10をなす加熱管12は、導電性を有し、被加熱流体の加熱温度に耐える耐熱性および耐食性を有し、管体に成形できるものである等の要件を満たすものであれば特にその材質は限定されない。このような要件を満たす好ましい材質として、例えば、公知のCr合金鋼(炭素鋼に1質量%前後のCrが添加された合金鋼から、さらに高合金のCr系ステンレス鋼も含む。)がある。また他の合金鋼として、Cr-Ni合金鋼(炭素鋼に0.2~1.0質量%程度のCr、および、1.0~3.5質量%程度のNiが添加された合金鋼から、さらに高合金のCr-Ni系ステンレス鋼も含む。)が例示できる。さらに、特に1000℃超での使用に耐える、カーボン素材、または導電性セラミックスが例示できる。これらの材質は、比較的固有抵抗が大きいので、発熱管として好ましい材質である。導電性セラミックスとしては、公知のSiC等の導電性セラミックスを採用すればよい。その他、被加熱流体や設置場所等によっては、必要に応じて公知のタングステン、モリブデン等の高融点金属またはこれらの合金を用いてもよい。
【0024】
本実施形態に係る流体の電気加熱装置1では、加熱部10の流路方向両端部に、(a)加熱管12の各々に被加熱流体Aを分配する流体供給ヘッダー20と、(b)加熱管12の各々から被加熱流体Aを回収する流体排出ヘッダー22と、が配設される。また、(c)流体供給ヘッダー20および流体排出ヘッダー22の加熱部10側の壁部は、複数の加熱管12の両端部同士を片側ずつそれぞれ電気的に短絡させて各加熱管12に並列給電する管端部短絡電極30と一体的に構成される。なお、本明細書では、流体供給ヘッダー20および流体排出ヘッダー22の両者を合わせて、「流体ヘッダー」ということがある。
【0025】
このような管端部短絡電極30と、管端部短絡電極30を除くヘッダー本体部24とは、公知の電気絶縁体26を介して密閉構造となるように接続することで、公知の流体ヘッダーと同様のヘッダー機能を発揮させつつ、加熱部10と流体ヘッダー以遠とを絶縁する。なお、本実施形態に係るヘッダー本体部24は、当該ヘッダー本体部24に対応する公知の流体ヘッダーの構造および素材で構成されるものでよく、その詳細な説明は省略する。
以上のとおり、壁部を兼ねる一枚の板状の管端部短絡電極30は、従来技術に係る各加熱管12毎に配設される個別電極、各個別電極を短絡させる導体、およびヘッダー壁の各々の機能を兼ね備えることができ、加熱装置の著しい小型化に貢献することができる。
【0026】
本実施形態に係る流体の電気加熱装置1では、外部の電源は交流電源40を前提とする。一般に、電源としては、その汎用性、制御性等から交流電源が多く用いられるからである。
本実施形態では、図1に示すように、加熱管12と交流電源40とを、管端部短絡電極30および電線等を介して並列に結ぶ、並列給電回路を採用する。この給電回路を構成するには、多管構造の加熱部10の一方の端部および他方の端部で、管端部短絡電極30により加熱管12の管端部が相互に電気的に短絡されるようにすればよい。本実施形態に係る流体の電気加熱装置1は、電流、電圧、および電力等を制御する公知技術に基づいて、加熱制御することができる。また、電気加熱装置の加熱能力については、各加熱管12の抵抗、発熱量、および被加熱流体の昇温量等を勘案して設計すればよい。
【0027】
本実施形態に係る流体の電気加熱装置1では、加熱部10の複数の加熱管12の各々は、対向する一対の管端部短絡電極30の各々の対向面を加熱部10の内外方向(加熱管12の横方向)で内側領域及び外側領域に区分したとき、両領域を跨ぐように接続される。すなわち、加熱管12の一方の端部が、当該端部側の管端部短絡電極30の内側領域又は外側領域のいずれか一方に接続された場合に、加熱管の他方の端部が、当該端部側の管端部短絡電極30の内側領域または外側領域のいずれか他方に接続される。
【0028】
図1は、本実施形態に係る加熱管12の具体例を示すもので、長さ方向の両端側に、略同等長さで、かつ、互いの中心軸が所定間隔離れて略平行関係にある、第1および第2の加熱管直管部(単に加熱管直管部ともいう。)を有する。また、図1に示す本実施形態に係る加熱管12は、第1および第2の加熱管直管部の間に、加熱管遷移部を有する。なお、図1で示した加熱管の形状、長さ方向の寸法比率、および平行関係等は一例であって、上述した通り、本実施形態では、加熱管12と管端部短絡電極30との接続関係の要件を満たしていればよく、例えば曲管部のみからなる加熱管12であってもよい。
本実施形態では、このように配置される加熱管12を有することにより、次に説明するような交流電流による通電加熱の際の問題を回避できる。すなわち、交流加熱の場合に、対向する電極の間で、互いに並行に配設された複数の加熱管相互間で生じ易い、外側加熱管の加熱過多及び内側加熱管の加熱不足等の電極に対する加熱管のインダクタンス分布に基づく電流分配の問題が、本実施形態では回避できる。
【0029】
具体的にみると、本実施形態では、一方の管端部短絡電極30の外側領域に接続される加熱管12は、他方の管端部短絡電極30の内側領域に接続される。また、一方の管端部短絡電極30の内側領域に接続された加熱管12は、他方の管端部短絡電極30の外側領域に接続される。このような加熱管12の配置をすると、電流分布は平均化される。その結果、全ての加熱管12の間では、電流がほぼ均等に流れるため、加熱能力に差異が生じることはなく、加熱部10全体で均一加熱が可能となる。加えて、過加熱になる加熱管12をなくすことができ、加熱管12の損傷を防止できる。また、全ての加熱管12には平均化した電流が流れることから、加熱制御性を高めることができる。
【0030】
本実施形態において、加熱管12の両側の加熱管直管部12aの間に設けられる加熱管遷移部12bは、加熱管流路形成の上で必要不可欠であるが、その配設位置は両側の加熱管直管部12aが含まれる面内には限られない。例えば、加熱管遷移部12bは、周囲の加熱管12と接触せずインピーダンスがあまり変化しない範囲で面外に突出してもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る流体の電気加熱装置1の加熱部10内での加熱管12の配設例について図1図2を用いて説明する。
図1に示す例では、流体供給側(図中下側)で加熱管直管部12aが加熱部10の外側にある加熱管12i、12ivは、加熱管遷移部12bを経て、流体排出側(図中上側)では加熱管直管部12aが加熱部10の内側に遷移する。また逆に、流体供給側で加熱管直管部12aが加熱部10の内側にある加熱管12ii、12iiiは、加熱管遷移部12bを経て、流体排出側では加熱管直管部12aが加熱部10の外側に遷移する。このような加熱管直管部12aの流路方向投影面上での位置の遷移の様子は、図1のS-S断面矢視を示す図2からも分かる。
【0032】
図2では、加熱管12(12i~12iv)の流体排出側の加熱管直管部12a(図1の上側)は、図1のS-S断面矢視で直視できることから、いずれも円形に描かれる。また、流体供給側の加熱管直管部12a(図1の下側)は、図1のS-S断面矢視で流体排出側の加熱管直管部12a(図1の上側)と重ならない限り、加熱管遷移部12b(図1参照)と重なる半円部分を除く残りの半円状の輪郭として描かれる。図2で直管状または略螺旋状に描かれる加熱管遷移部12bには、手前に上昇してくる被加熱流体Aの流路方向矢印が併記されている。
【0033】
図2は、流路方向で互いに軸対称関係にある2本の加熱管12が図1で加熱管遷移部12bで重なって見える場合の、図1の奥行き方向の加熱管12の配置の3つのパターンを示している。
図2(a)は、1本の加熱管12の両端側の加熱管直管部12aのそれぞれの中心軸を含む平面(以下、単に加熱管中心面ともいう。)を仮定すると、図1の奥行き方向2本の加熱管が、加熱管中心面が平行になるようにして、互いに離隔した配置例を示している。図2(b)は、図1の奥行き方向2本の加熱管が、互いの加熱管の片側の加熱管直管部12aの中心軸位置で、互いの加熱管中心面が交差するようにした配置例を示している。図2(c)は、図1の奥行き方向2本の加熱管が、互いの加熱管の両側の加熱管直管部12aの中心軸を含めた、互いの加熱管中心面が重なるようにした配置例を示している。なお、図2(c)の場合は、図1の奥行き方向2本の加熱管は、加熱管遷移部12bで互いに干渉しないように、加熱管中心面から互いに逆方向の面外方向に突出する(例えば略螺旋状の)加熱管遷移部12bとするのが好ましい。また、図2(a)~(c)のいずれの配列においても、交流電源を用いた場合の加熱管相互間の電流の偏りによる加熱管の温度偏差を解消する効果については同等である。そのため、限られた空間での加熱部10内での加熱管12の大きさ(加熱能力)、加熱管12の配置、および周辺装置との干渉回避等により、加熱管12の配列を図2のいずれの配列とするか適宜選択すればよい。
【0034】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る流体の電気加熱装置の加熱管12の配列を図2と同等の断面矢視で模式的に示す図である。図3の加熱管12も図2と同等の加熱管であり、加熱管12の配列が回転対称配列とする点で異なるものである。図3(a)は、加熱管12の1本毎に、加熱管12の両側の加熱管直管部12aのそれぞれを加熱部10の外側と内側とに配設しながら、計8本の加熱管12を加熱部10に密に配設するものである。一方、図3(b)は、図2(c)と同様の2本の加熱管12を一組として、加熱管12の一組毎に、加熱管直管部12aを加熱部10の外側と内側とに配設しながら、4組、計8本の加熱管12を加熱部10に密に配設するものである。
図3のように加熱管12を回転対称配列とする場合は、図2の場合と比較して、より多くの加熱管12を配設できる利点がある。ただし、図3(a)、(b)の場合も、図2(a)~(c)の場合と同様に、交流電源を用いた場合の加熱管相互間の電流の偏りによる加熱管の温度偏差を解消する効果については同等である。そのため、具体的な設備設計に当たっては、いずれの加熱管配設とするかは、限られた空間での加熱部10内での加熱管12の大きさ(加熱能力)、加熱管12の配置、および周辺装置との干渉回避等により適宜選択すればよい。
【0035】
本実施形態に係る多管構造の加熱部10では、上述の交流電源を用いた場合の加熱管相互間の電流の偏りによる加熱管の温度偏差を解消する効果を考慮した加熱管12の配置としつつ、加熱管12同士を短絡しない範囲で束ねるように集合させて配置してもよい。これにより、周囲への熱放散による熱損失を低く抑えることができるため好ましい。この場合、束ねられた加熱管のうちで内側に位置する加熱管では、その表面を他の加熱管で囲まれることから熱損失を殆ど生じることがなく、熱損失の主体は、最外周に位置する加熱管の外側の周面からの熱放散に限られるからである。さらに、加熱管12から周囲への熱放散による熱損失を低く抑えるために、各加熱管12毎に、または、束ねるように集合させた加熱管12全体を、公知の断熱材で覆われるようにしてもよい。ここでの公知の断熱材としては、低熱伝導のセラミックスファイバーなどの断熱材を用いることができる。あるいは加熱部10全体を断熱したケース内に配置するようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、加熱管12単位でみると加熱管遷移部12bで流路方向が変わることで乱流となりやすく、また、加熱部10全体でみると多管であるために被加熱流体Aが狭い空間を通らざるを得ず乱流となりやすい、等により、伝熱能力が向上する。これに加えて、乱流による伝熱促進を高めるために、加熱管12の管壁の表面粗度を粗くしたり、凹凸等の流体が乱れやすい形状を管壁に付与することで、更に伝熱効率を向上させることができる。なお、加熱管12の内側の被加熱流体Aの流路の典型的な寸法を例示すると、内径は数mm~数十mm程度が望ましく、処理量、加熱温度および圧力損失等を考慮して決めればよい。
【0037】
加熱管12の断面形状は、円形または多角形であることが好ましい。円形の場合は、加熱管12の製造および偏流の回避等が他の形状と比較して有利だからである。また、多角形の場合も円形の場合に準じて、加熱管12の製造および偏流の回避等が比較的有利となる。さらに多角形のなかでも四角形の場合は、電気加熱装置の設置スペースが限られている場合に、周囲の設備等との干渉を避けながら加熱部10のスペースを最大化することが比較的容易であり、好ましい。
【0038】
また、加熱管12の内周面に電気的な絶縁層を有するようにしてもよい。このような電気的な絶縁層を設けることで、電気導電性を有する被加熱流体も、通電加熱による加熱が可能になるからである。なお、この電気的な絶縁層の素材については、電気的な絶縁性の他、被加熱流体の加熱温度に耐える耐熱性および耐食性を有するものである等の要件を満たすものであれば特にその素材は限定されない。例えば、Cr含有鋼からなる素管を高温酸化させて形成される酸化クロム皮膜や、溶融アルミニウムを被覆した後に高温酸化させて形成されるアルミナ等の絶縁性酸化物セラミックス等の公知の素材および被覆方法を用いればよい。
また、外面については断熱効果も持たせた絶縁・断熱被覆を持たせればよい。
【0039】
さらに、本実施形態では、被加熱流体Aの少なくとも温度および流量を含む物理量、ならびに加熱管12の少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力に基づいて、加熱管12への投入電力を制御する制御装置(図示せず。)を有する。この制御装置により、交流電源40から加熱管12へ投入する電力を制御しながら、加熱管12を通電加熱し管内を流通する流体を加熱する。また、この制御装置では、加熱管の監視箇所での測温データに基づいて加熱管の過加熱等の異常時ないし緊急時に、警報の発信および/または電力遮断等を行う機能を有するようにするのが好ましい。なお、ここでの制御装置は、演算装置、記憶装置、入出力装置等を含む公知の制御装置でよく、その詳細な説明は省略する。
【0040】
加熱制御に用いる、被加熱流体Aの温度および流量を含む、所定の物理量は、多管構造の加熱部10の被加熱流体Aの入口および/または出口の近傍で測定するのが好ましい。入口近傍および/または出口近傍での被加熱流体Aの物理量の測定結果は、投入電力、電流、および電圧等の電源へのフィードフォワード制御および/またはフィードバック制御による被加熱流体温度制御の高精度化に寄与できるからである。なお、電気加熱では制御の応答性が高いため、多管構造の加熱部10の被加熱流体入口近傍のみで、被加熱流体Aの物理量を測定し、フィードフォワード制御のみを行うようにしてもよい。加熱管12の少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力は、上記のフィードバック制御およびフィードフォワード制御のいずれにおいても、加熱管12への投入電力、電流、および電圧等の電源の制御をするための基礎データとして用いられる。ここでの被加熱流体Aの温度測定手段としては、公知の熱電対による温度測定等が例示できる。また、被加熱流体Aの流量測定手段としては、公知の電磁流量計、羽根車式流量計、超音波流量計、および差圧式流量計(オリフィス流量計)等が例示できる。
【0041】
次に図1に基づいて、本実施形態に係る流体の電気加熱装置1を用いた流体の電気加熱方法について説明する。本実施形態では、図1に示すように、被加熱流体Aは、流体供給ヘッダー20を経て4本の加熱管12内の流体流路のそれぞれに供給される。被加熱流体Aは、その後、多管構造の加熱部10内の4つ加熱管12で形成される流体流路を通過中に、通電加熱されて発熱面となりそのまま加熱面として働く加熱管12の管壁から、加熱されることになる。加熱された被加熱流体Aは、4つの加熱管12からそれぞれ排出され、流体排出ヘッダー22で回収されて、流体の電気加熱装置1の系外に排出される。なお、図1に示す例では、加熱管12が4本のみ記載されているが、さらに多くの加熱管12が配設されてもよい。
【0042】
被加熱流体Aの加熱制御では、不図示の制御装置により、加熱目標温度および加熱流量等の物理量、ならびに加熱管12の単位発熱量等の設備能力に基づいた加熱部10への投入電力制御がなされる。これに加えて、加熱後の被加熱流体Aの温度および流量に基づくフィードバック制御等が行われるのが好ましい。
【0043】
具体的な被加熱流体Aの加熱用途の例としては、燃焼装置へ送られる燃料および燃焼用空気の予熱、または重油アトマイズのための重油およびアトマイズ蒸気の加熱、等を例示できるが、これに限定されない。
【0044】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。図4を参照して、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2について説明する。
【0045】
図4に示すように、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2は、第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置1と比較した場合に、主に、加熱管12の流体供給側の一端と流体供給ヘッダー20との間に、伸縮器28が配設される点で相違する。第2の実施形態のその他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様である。
【0046】
以上のように構成される場合であっても、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2は、第1の実施形態に係る流体の電気加熱装置1とほぼ同様の効果が得られる。
【0047】
加えて、本実施形態では、加熱管12の流体供給側の一端と、流体供給ヘッダー20との間に配設される伸縮器28により、加熱条件に応じて加熱管12が熱膨張または熱収縮しても、その影響を有利に回避することができる。具体的には、この伸縮器28により、加熱管12の破断、給電回路の遮断、管端部短絡電極30を含む流体ヘッダーの変形、損傷等を回避可能であり、これを通じて、さらに設備のメンテナンス性および耐久性、等をも高めることができる。
【0048】
なお、図4の例では、伸縮器28は、被加熱流体Aの温度が低い加熱管12の流体供給側の一端と流体供給ヘッダー20との間に配設されているが、この場合、伸縮器28の耐熱性の要件を緩和できることから好ましい態様である。しかし、本実施形態ではこれに限らず、伸縮器28は、加熱管12の流体排出側の一端と流体排出ヘッダー22との間に配設されるようにしてもよい。さらに、伸縮器28は、加熱管12の両端と、流体供給ヘッダー20および流体排出ヘッダー22の双方との間に配設されるようにしてもよい。
【0049】
ここで、伸縮器28は、加熱管12とともに通電回路の一部であることから導電性を有することを要し、例えば公知の金属製ベローズ等が用いられる。また、伸縮器28の内部は、被加熱流体Aの流体流路でもあることから、被加熱流体を漏洩させない密閉性を有するものでなければならない。同様に、伸縮器28の両側の加熱管12および管端部短絡電極30との間には、導電性を有するメタルパッキンを使用して密閉性を担保するのが好ましい。
【0050】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。図5を参照して、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3について説明する。
【0051】
図5に示すように、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3は、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2と比較した場合に、主に、流体供給ヘッダー20側の管端部短絡電極30、32の構成で相違する。すなわち、第3の実施形態では、流体供給ヘッダー20から管端部短絡電極30を独立させ、個別管端電極34、可撓性導体36、および主接続導体38を組み合わせた、分離型の管端部短絡電極32とする点において、第2の実施形態と相違する。なお、主接続導体38は、加熱管12と離間して設置される銅板、銅管またはケーブル等からなる固定導体で、これに可撓性導体を接続する。可撓性導体とは、導体そのものが外力を受けても柔軟に折り曲がる等して熱膨張または熱収縮を吸収できる、いわゆる編組線、または水冷ケーブル、ばね式の導体等である。
【0052】
このような主な構成の相違に付随して、第3の実施形態では、流体供給ヘッダー20は、加熱部10側の壁部と一体的に構成される管端部短絡電極30を伴わない従来型となる。また、伸縮器28の加熱管12と管端部短絡電極30、32との位置関係が、第2の実施形態と第3の実施形態とで前後する、等の従属的な相違がある。しかし、これらは前述の管端部短絡電極30、32についての主たる構造変更に伴うものであり、第2の実施形態と第3の実施形態との相違点として重要なものではない。第3の実施形態のその他の構成については、第2の実施形態とほぼ同様である。
【0053】
以上のように構成される場合であっても、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3は、第2の実施形態に係る流体の電気加熱装置2とほぼ同様の効果が得られる。
【0054】
加えて、管端部短絡電極32を分離型とするため、加熱管12の熱変形を管端部短絡電極32としては受けなくなることから、これを通して、通電の安定性、設備のメンテナンス性および耐久性、等をさらに高めることが可能になる。
【0055】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4の流路方向に沿った全体的な構成を模式的に示す図である。図6を参照して、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4について説明する。
【0056】
図6に示すように、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4は、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置3と比較した場合に、次のような相違点を有する。すなわち、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4は、流体供給ヘッダー20から加熱部10を経て流体排出ヘッダー22までの各構成要素部が窒素ガス等の不活性ガスBを充満させたシールボックス50内に配設される点において第3の実施形態と相違する。その他の構成については、第3の実施形態とほぼ同様である。
【0057】
以上のように構成される場合であっても、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4は、第3の実施形態に係る流体の電気加熱装置とほぼ同様の効果が得られる。
【0058】
加えて、第4の実施形態に係る流体の電気加熱装置4は、主要構成要素部が全て窒素ガス等の不活性ガスBを充満させたシールボックス50内に配設されるため、引火や爆発等の危険性のある可燃性の被加熱流体Aであっても、安全に加熱することが可能になる。
なお、このシールボックスの中または排出口に、引火性ガスの検知器を設置し、電源の制御装置と連動させれば、可燃性ガスの漏洩の初期段階で電源の緊急停止等の安全対策が構築できる。
また、シールボックス50は断熱構造とすることでさらに加熱効率を向上させることが可能である。
【0059】
以上、本発明に係る種々の実施の形態の流体の電気加熱装置1、2、3、および4について説明してきたが、これらを同一の実施の形態同士でまたは異なる実施の形態同士で、流路方向に直列にまたは並列に連結して配設してもよい。これにより、限られた加熱装置の配設スペースのなかで、上流側と下流側とで流体の電気加熱装置の加熱能力の最適化を行う等、設備設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3、4 流体の電気加熱装置
10 多管構造の加熱部
12、12i、12ii、12iii、12iv 加熱管
12a 加熱管直管部
12b 加熱管遷移部
20 流体供給ヘッダー
22 流体排出ヘッダー
24 ヘッダー本体部
26 電気絶縁体
28 伸縮器
30 管端部短絡電極(一体型)
32 管端部短絡電極(分離型)
34 個別管端電極
36 可撓性導体
38 主接続導体
40 交流電源
50 シールボックス
60 流体の電気加熱装置
62 発熱体
62a 非磁性管
62b 磁性管
64、66 管支え板
68 内側断熱材
70 外側断熱材
72 誘導加熱コイル
74 流体入口ヘッダー
76 流体出口ヘッダー
80 流体の電気加熱装置
82 加熱管体
84 非加熱管体
86 管体継ぎ手
88 交流電源
90 支持台
92 電気絶縁体
94 ジャンパー
A 被加熱流体
B 不活性ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8