(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097124
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20240710BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H02K1/22 Z
H02K7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000366
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌美
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
(72)【発明者】
【氏名】大平 丈夫
【テーマコード(参考)】
5H601
5H607
【Fターム(参考)】
5H601AA02
5H601AA08
5H601CC15
5H601EE13
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA23
5H601GA33
5H601GA40
5H601JJ08
5H601JJ10
5H601KK18
5H607AA12
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607EE26
(57)【要約】
【課題】非磁性体の振動を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供する。
【解決手段】磁極片回転子は、磁気ギヤ電気機械に設けられる。磁極片回転子は、磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状体と、軸方向の一方側における環状体の端部と磁気ギヤ電気機械の回転軸とを連結する本体部を含む連結部材とを備える。連結部材は、環状体よりも径方向の内側において、本体部から軸方向の他方側に突出する突出部をさらに含み、突出部の外周面は、複数の非磁性体の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面を有する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギヤ電気機械に設けられる磁極片回転子であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状体と、
軸方向の一方側における前記環状体の端部と前記磁気ギヤ電気機械の回転軸とを連結する本体部を含む連結部材と、
を備え、
前記連結部材は、前記環状体よりも径方向の内側において、前記本体部から前記軸方向の他方側に突出する突出部をさらに含み、
前記突出部の外周面は、前記複数の非磁性体の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面を有する
磁極片回転子。
【請求項2】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記突出部の前記外周面は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記非磁性体支持面よりも前記軸方向の前記一方側に位置するエンドリング支持面をさらに有する
請求項1に記載の磁極片回転子。
【請求項3】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記本体部は、前記環状体よりも前記径方向の内側、且つ、前記突出部よりも前記径方向の外側に形成された段部をさらに含み、
前記段部の外周面は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記非磁性体支持面よりも前記軸方向の前記一方側に形成されたエンドリング支持面をさらに有する
請求項1に記載の磁極片回転子。
【請求項4】
前記非磁性体支持面上に配置される内側ウェッジであって、前記軸方向の前記一方側に向かうにつれて前記径方向の内側に向かうように傾斜する外周面である傾斜外周面を含む内側ウェッジと、
前記内側ウェッジと前記非磁性体との間に配置される外側ウェッジであって、前記傾斜外周面に当接する内周面である傾斜内周面を含む外側ウェッジと、
前記本体部を前記軸方向に貫通する貫通穴に挿通されると共に、前記内側ウェッジに形成される差込穴に挿通される軸部を含み、前記傾斜外周面を前記傾斜内周面に押圧する締結部材と
をさらに備える
請求項3に記載の磁極片回転子。
【請求項5】
前記本体部は、前記軸方向の前記一方側における端面である一方側端面を含み、
前記一方側端面は、前記締結部材よりも前記径方向の内側に配置される傾斜面であって、前記径方向の内側に向かうにつれて前記軸方向の前記他方側に向かうよう延在する傾斜面を有する
請求項4に記載の磁極片回転子。
【請求項6】
前記内側ウェッジは、前記軸方向において間隙を空けて前記本体部と対向する
請求項5に記載の磁極片回転子。
【請求項7】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記エンドリングは、前記外側ウェッジの外周面と隙間を空けて前記径方向に対向するエンドリング内周面を含む
請求項4乃至6の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項8】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記突出部の前記外周面は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記軸方向の前記他方側に向かうにつれて前記径方向の内側に向かうよう傾斜するエンドリング支持面を含み、
前記磁極片回転子は、
前記エンドリング支持面と前記エンドリングとの間に挟まる介在部材と、
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記本体部に設けられた挿通孔と、前記エンドリングに設けられたエンドリング孔と、前記非磁性体に設けられた非磁性体孔とに差し込まれる締結軸と、
前記環状体から前記軸方向にずれた位置にて前記締結軸に螺合するナットと、
を備え、
前記非磁性体支持面は前記エンドリング支持面である
請求項1に記載の磁極片回転子。
【請求項9】
前記エンドリングは、
前記周方向に延在するエンドリング本体部と、
前記介在部材よりも前記軸方向の前記他方側にて前記エンドリング本体部から前記径方向の内側に突出するリング突起であって、前記介在部材に当接するリング突起と
をさらに含む
請求項8に記載の磁極片回転子。
【請求項10】
前記介在部材は、前記軸方向の前記他方側に向かうほど前記径方向の内側に傾斜する介在傾斜面であって、前記非磁性体支持面に当接する介在傾斜面を含む
請求項8または9に記載の磁極片回転子。
【請求項11】
前記連結部材は、前記本体部から前記軸方向の前記他方側に突出し、前記突出部と協働して、前記介在部材および前記エンドリングを挟む挟持突起部をさらに含む
請求項8に記載の磁極片回転子。
【請求項12】
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバーをさらに備え、
前記挟持突起部は、前記外カバーよりも前記軸方向の前記他方側に配置される
請求項11に記載の磁極片回転子。
【請求項13】
前記環状体の内周面上に配置される内カバーをさらに備え、
前記突出部は、前記内カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項14】
前記環状体の外周面上で前記周方向に延在すると共に前記環状体を前記径方向の内側に押圧する押圧リングであって、前記軸方向において前記突出部と重複する第1重複部を含む押圧リングをさらに備える
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項15】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記押圧リングは、前記軸方向において前記エンドリングと重複する第2重複部をさらに含む
請求項14に記載の磁極片回転子。
【請求項16】
前記押圧リングは、
前記周方向における一端部であるリング一端部と、
前記周方向における他端部であって、前記リング一端部と隙間を空けて前記周方向に対向するリング他端部と、を含む
請求項14に記載の磁極片回転子。
【請求項17】
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバーをさらに備え、
前記押圧リングは、前記外カバーよりも前記軸方向の前記他方側に配置される
請求項14に記載の磁極片回転子。
【請求項18】
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリングをさらに含み、
前記磁極片回転子は、
前記環状体の外周面に当接する当接プレートであって、前記軸方向において前記突出部と重複するように配置される当接プレートと、
前記当接プレートを前記径方向に貫通するプレート軸孔、前記エンドリングに設けられるエンドリング軸孔、および、前記突出部に設けられる突出穴に挿通される挿通軸部を含み、前記当接プレートを前記外周面に押圧するプレート締結部材と
をさらに備える
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項19】
前記当接プレートは、前記エンドリングと前記非磁性体の双方に当接する
請求項18に記載の磁極片回転子。
【請求項20】
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバーをさらに備え、
前記当接プレートは、前記外カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される
請求項18に記載の磁極片回転子。
【請求項21】
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記本体部に設けられた挿通孔と、前記非磁性体に設けられた非磁性体孔とに差し込まれる締結軸と
前記環状体から前記軸方向にずれた位置にて前記締結軸に螺合するナットと
をさらに備える
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項22】
各々の前記非磁性体は、前記軸方向において各々の前記磁極片よりも長い
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項23】
各々の前記磁極片は、各々の非磁性体の前記軸方向の前記一方側の端部よりも、前記他方側に配置され、
前記突出部は、各々の前記磁極片よりも前記軸方向において前記一方側に位置する
請求項22に記載の磁極片回転子。
【請求項24】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁極片回転子と、
前記磁極片回転子の前記環状体よりも前記径方向の内側において前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石を含む回転子と、
前記環状体よりも前記径方向の外側において前記周方向にならぶステータ磁石を含む固定子と
を備える磁気ギヤ電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁極片回転子を備える磁気ギヤ電気機械が知られている(例えば特許文献1参照)。磁極片回転子を構成する磁極片環状ユニットは、周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片および複数の非磁性体を含む。各磁極片および各非磁性体は軸方向に延在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021/149772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁極片環状ユニットには、径方向を向く励振力が作用する場合がある。例えば、磁極片回転子の回転に伴い発生する遠心力、または、磁極片において発生する電磁気的な力などが励振力となり得る。励振力によって複数の非磁性体の少なくとも1つが振動すると、非磁性体の軸方向における端部に大きな反力が作用し、非磁性体が破損する可能性がある。従って、非磁性体に防振設計が反映されることが望まれる。
【0005】
本開示の目的は、非磁性体の振動を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子は、
磁気ギヤ電気機械に設けられる磁極片回転子であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状体と、
軸方向の一方側における前記環状体の端部と前記磁気ギヤ電気機械の回転軸とを連結する本体部を含む連結部材と、
を備え、
前記連結部材は、前記環状体よりも径方向の内側において、前記本体部から前記軸方向の他方側に突出する突出部をさらに含み、
前記突出部の外周面は、前記複数の非磁性体の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面を有する。
【0007】
上記磁極片回転子と、
前記磁極片回転子の前記環状体よりも前記径方向の内側において前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石を含む回転子と、
前記環状体よりも前記径方向の外側において前記周方向にならぶステータ磁石を含む固定子と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、非磁性体の振動を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械の概略図である。
【
図2】一実施形態に係る磁極片回転子の概略図である。
【
図3A】第1実施形態に係る防振構造の一例を示す概略図である。
【
図3B】第1実施形態に係る防振構造の他の例を示す概略図である。
【
図4】第2実施形態に係る防振構造の一例を示す概略図である。
【
図5】一実施形態に係る押圧リングの概略図である。
【
図6】第3実施形態に係る防振構造の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
<1.磁気ギヤ電気機械1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1の概略図である。磁気ギヤ電気機械1は外部機器7に連結される回転軸5を備えている。以下の説明において、「周方向」は回転軸5の軸線Sを基準とした周方向であり、「軸方向」は軸線Sの軸方向であり、「径方向」は軸線Sを基準とした径方向である。「径方向の内側」は軸線Sに近づく方向側を示し、「径方向の外側」は軸線Sから遠ざかる方向側を示す。なお、軸線Sは、後述する環状体50の軸線でもある。
【0012】
磁気ギヤ電気機械1は、回転軸5を回転可能に支持するハウジング9と、ハウジング9の内側で回転軸5に連結される磁極片回転子30とを備える。磁極片回転子30は、軸線Sに沿って延在する円筒状の環状体50と、環状体50の一端部51と回転軸5とを連結する連結部材31と、環状体50の他端部52と回転軸5とを連結する連結部材32とを含む。一端部51は軸方向の一方側における環状体50の端部であり、他端部52は一端部51とは反対側の環状体50の端部である。環状体50は、周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片55と複数の非磁性体53(
図2参照)を有する。
図1の例では、連結部材31,32はそれぞれ回転軸5に固定され、磁極片回転子30は回転軸5と一体的に回転するように構成されている。
【0013】
磁気ギヤ電気機械1は、磁石回転子15をさらに備える。磁石回転子15は、環状体50よりも径方向の内側で周方向に並ぶ複数のロータ磁石19と、ロータ磁石19を支持するロータコア16とを有する。ロータコア16は回転軸5にベアリング介して固定されており、磁石回転子15は、回転軸5に対して相対的に回転するように構成されている。磁石回転子15は、内側エアギャップG1を間にして環状体50と径方向に対向する。
図1の例では、複数のロータ磁石19がロータコア16の表面に設けられる表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構成が採用されるが、複数のロータ磁石19がロータコア16の内側に配置される埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構成が採用されてもよい。
【0014】
磁気ギヤ電気機械1は、ハウジング9によって支持される固定子20を備える。固定子20は、環状体50よりも径方向の外側で周方向に並ぶ複数のステータ磁石29と、ステータ磁石29を支持するステータコア25と、ステータコア25に巻かれたステータコイル27とを含む。ステータコイル27は、電力系統6に電気的に接続される。固定子20は、外側エアギャップG2を間にして環状体50と径方向に対向する。
図1の例では、複数のステータ磁石29がステータコア25の表面に設けられるSPM型の構成が採用されるが、ステータ磁石29がステータコア25の内部に配置されるIPM型の構成が採用されてもよい。
【0015】
一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1は、電力系統6から電力の供給を受けて外部機器7を駆動する磁気ギヤモータである。動作原理は以下の通りである。ステータコイル27における通電に伴い発生する回転磁界によって、磁石回転子15が回転する。複数のロータ磁石19および複数のステータ磁石29に対する環状体50の相対的な位置関係が周方向において変化し、磁石回転子15と固定子20の間の磁束が複数の磁極片55によって変調されて、磁極片回転子30が回転する。磁極片回転子30と共に回転する回転軸5から外部機器7にトルクが伝達されて、外部機器7は駆動される。
【0016】
他の実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1は、磁気ギヤ発電機である。この場合、外部機器7が回転軸5を駆動することで、磁極片回転子30が回転軸5と共に回転する。複数のロータ磁石19および複数のステータ磁石29に対する環状体50の相対的な位置関係が周方向において変化し、磁石回転子15が回転する。磁極片回転子30と磁石回転子15の回転に伴って起こる電磁誘導によってステータコイル27にて電流が発生し、電力系統6に電力が供給される。
【0017】
なお、磁極片55の磁極数をNL、ロータ磁石19における磁極の対の数(極対数)をNH、ステータ磁石29における磁極の対の数(極対数)をNSとした場合、NL=NH+NSが成立する。この関係式が成立する場合、磁極片回転子30に対する磁石回転子15の回転数の比は、NL/NHで表される。本例では、NL/NHが1よりも大きく、磁石回転子15は高速ロータとして機能し、磁極片回転子30は低速ロータとして機能する。なお、磁極片55の磁極数NLは、ステータ磁石29の極対数NSよりも少ない。
【0018】
本開示の磁気ギヤ電気機械1は上記実施形態に限定されない。外部機器7は、回転軸5と同軸に配置される動力伝達軸(図示外)と連結されてもよい。動力伝達軸と回転軸5は互いに非連結である。この場合、連結部材31はベアリングを介して回転軸5に連結され、連結部材32は動力伝達軸に固定される。さらに、磁石回転子15のロータコア16は回転軸5に固定される。従って、磁石回転子15は回転軸5と一体的に回転し、磁極片回転子30は回転軸5に対して相対的に回転する。
【0019】
<2.磁極片回転子30の構成の詳細>
図2は、本開示の一実施形態に係る磁極片回転子30の概略図である。磁極片回転子30は、軸線Sを中心として回転するように構成される。
【0020】
連結部材31は、環状体50の一端部51と回転軸5(
図1参照)とを連結する本体部35を含む。本体部35は、回転軸5に連結される軸連結部38と、環状体50の一端部51に連結されるリング部37と、リング部37と軸連結部38とに接続される接続部39とを有する。軸連結部38は中心線が軸線Sと一致する円筒状であり、リング部37は周方向に延在するプレートリングである。リング部37の厚さ方向は軸方向である。また、接続部39は径方向に沿って延在する。本実施形態では、複数の接続部39が周方向に間隔を空けて配置される。連結部材32は、連結部材31と軸方向に対称な形状を呈する。詳細な説明は割愛するが、連結部材32のリング部37は、環状体50の他端部52に連結される。連結部材31,32は、例えばステンレス鋼といった非磁性の金属材料によって形成されることが好ましい。但し本開示はこれに限定されることはなく、連結部材31,32が磁性体によって形成されてもよい。
【0021】
上述したように、環状体50は、周方向に沿って交互に配置される複数の非磁性体53と複数の磁極片55とを含む。
非磁性体53は、一例として、繊維強化複合材料(FRP;Fiber Reinforced Plastics)によって形成される。FRPは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastics)、または、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)などであってもよい。
各磁極片55は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板によって形成されてもよいし、軸方向に延在する1または複数の圧粉磁心によって形成されてもよいし、または、電磁鋼板と圧粉磁心の組み合わせによって形成されてもよい。各磁極片55の軸方向の両側にはそれぞれ一対の絶縁体54が配置され、一対の絶縁体54とその間にある磁極片55とが1本の磁極片長尺ユニットを形成する。そして、周方向に交互に配置される複数の磁極片長尺ユニットと複数の非磁性体53とによって、環状体50の本体となるリングユニットが形成される。
【0022】
本開示の必須の構成要素ではないが、環状体50は、リングユニットを軸方向において挟む一対のエンドリング56をさらに含む。各エンドリング56は周方向に延在する。一対のエンドリング56の片方は、軸方向の一方側
における各々の磁極片55の端部に絶縁体54を介して接続され、かつ、一方側における各々の非磁性体53の端部に直接的に接続される。一対のエンドリング56の残る片方も同様に、各々の磁極片55と各々の非磁性体53に接続される。一対のエンドリング56はそれぞれ、環状体50の一端部51及び他端部52を構成する。即ち、一対のエンドリング56がそれぞれ連結部材31,32に連結される。エンドリング56は、連結部材31,32のリング部37と軸方向に対向するプレートリングである。エンドリング56は、ステンレス鋼などの非磁性の金属材料によって形成されてもよいし、プラスチックまたはゴムなどの非導電性部材によって形成されてもよい。
【0023】
図2において例示される連結部材31,32と環状体50との連結構造を説明する。磁極片回転子30は、軸方向に延在する締結軸21と、一対のナット22とを備える。締結軸21は、一対のリング部37の各々に設けられた挿通孔34と、一対のエンドリング56の各々に設けられたエンドリング孔59(
図3A参照)と、非磁性体53に設けられた非磁性体孔57(
図3A参照)とに挿通されている。より詳細には、締結軸21は、挿通孔34、エンドリング孔59、および、非磁性体孔57のそれぞれに隙間バメ状態で嵌っている。そして、一対のナット22が、環状体50から軸方向においてずれた位置にて締結軸21に螺合し、一対のエンドリング56を軸方向にて挟み込むように締結されている。これにより、連結部材31,32と環状体50とは連結される。
【0024】
図2では図面を見やすくする都合、締結軸21および一対のナット22によって構成される1つの締結ユニットのみを分解した状態で図示するが、本開示では複数の締結ユニットが周方向に沿って配置されている。より詳細には、複数の非磁性体53のうちの幾つかの各々に、締結軸21が挿通される。但し、本開示はこれに限定されず、全ての非磁性体53の各々に締結軸21が挿通されてもよい。あるいは、複数の磁極片長尺ユニットのうちで幾つかの各々に、締結軸21が挿通されてもよい。この場合、挿通孔34は、磁極片長尺ユニットと周方向にて揃うよう配置され、磁極片55と絶縁体54にそれぞれ貫通孔が設けられる。
さらに、連結部材31,32と環状体50との連結構造は、締結軸21と一対のナット22によって実現されることに本開示は限定されない。締結軸21がボルトであるならば、一対のナット22の一方のみが設けられればよい。なお、締結軸21を必須としない他の連結構造については、
図3Bを参照しながら後述する。
【0025】
図2の例では、各非磁性体53は、軸方向において各磁極片55よりも長く、磁極片55と一対の絶縁体54によって構成される磁極片長尺ユニットと略同じ軸方向長さを有するが、本開示はこのような構成に限定されない。例えば、非磁性体53と磁極片55が互いに同じ軸方向長さを有する構造が採用されてもよい。
【0026】
<3.環状体50の防振構造の概要>
図2で例示される磁極片回転子30が回転するとき、径方向を向く種々の励振力が環状体50に作用する。例えば、環状体50において作用する遠心力は励振力の一例である。また、磁束が変調される際に磁極片55において作用する電磁気的な力は励振力の他の例であり、非磁性体53に伝播する。このような励振力が発生した場合には、非磁性体53が撓み、荷重が集中的にかかる非磁性体53の軸方向の端部は破損するおそれがある。また、
図1を参照して説明した内側エアギャップG1と外側エアギャップG2の径方向長さは、数mm以下あるいは1mm以下であることが一般的である。従って、励振力により非磁性体53あるいは磁極片55が径方向に撓むと、環状体50が固定子20または磁石回転子15に接触してしまい好ましくない。このような接触は、励振力によって環状体50が共振する場合においても発生しうる。そこで、上記の技術的な課題を解消すべく、本願の発明者は環状体50の防振構造を想到するに至った。以下では、第1実施形態、第2実施形態、及び第3の実施形態に係る防振構造を順に詳説する。
【0027】
<4.第1実施形態に係る防振構造の詳細>
図3Aは第1実施形態に係る防振構造の一例を示し、
図3Bは他の例を示す。
【0028】
<4-1.防振構造の基本構成>
図3A、
図3Bで示される磁極片回転子30A,30B(30)の連結部材31A,31B(31)は、環状体50よりも径方向の内側に位置する突出部60A,60B(60)をさらに含む。突出部60A,60Bは、本体部35A,35B(35)のリング部37から軸方向の他方側に突出する。突出部60A,60Bは、周方向に延在するリング状であり、環状体50をその周方向長さの全長に亘って径方向の内側から直接的に支持する。
【0029】
突出部60A,60Bの外周面68A,68B(68)は、複数の非磁性体53の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面62A,62B(62)と、エンドリング56を支持するエンドリング支持面63A,63B(63)を含む。エンドリング支持面63は非磁性体支持面62よりも軸方向の一方側に位置する。第1実施形態では、非磁性体支持面62とエンドリング支持面63がいずれも、突出部60の外周面68に形成される。また、第1の実施形態では、非磁性体支持面62が複数の非磁性体53の各々を直接的に支持している。他方で、エンドリング支持面63は、エンドリング56を直接的に支持してもよいし、間接的に支持してもよい。
【0030】
上記構成によれば、非磁性体支持面62が少なくとも1つの非磁性体53を直接的に支持する。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体53の部位の軸方向長さを短くできる。従って、磁極片回転子30の回転時、非磁性体53の径方向における振動が抑制される。また、突出部60は径方向における剛性が比較的強い本体部35から突出しており、当該突出部60によって非磁性体53は支持されるので、環状体50の固有振動数が高まり、非磁性体53を含む環状体50の共振を抑制できる。以上より、非磁性体53の振動を抑制できる磁極片回転子30が実現される。
【0031】
また、非磁性体53の端部に接続されるエンドリング56も径方向の内側から支持されるので、非磁性体53の径方向における剛性を高めることができ、非磁性体53の振動を抑制できる。さらに、突出部60の外周面68に、非磁性体支持面62とエンドリング56支持面の双方が集約されるので、連結部材31の構造を簡素化できる。
【0032】
<4-2.防振構造の追加的な構成>
図3Aで例示される磁極片回転子30A(30)は、既述の締結軸21および一対のナット22をさらに備える。これら構成の詳細は既述の通りである。上記構成によれば、締結軸21が非磁性体53に挿通されるので、非磁性体53の径方向における振動を抑制できる。
【0033】
図3Bで例示される磁極片回転子30B(30)は、環状体50の外周面151に当接する当接プレート70と、当接プレート70を外周面151に押圧するプレート締結部材75とをさらに備える。当接プレート70は、軸方向において少なくとも突出部60と重複するように配置された、径方向に厚さを有するプレートである。本例の当接プレート70は、周方向に延在する単一のリングプレートである。他の例として、複数の当接プレート70が周方向に沿って配置されることで、リングプレートが形成されてもよい。いずれの例においてもリングプレートは、環状体50の周方向の全長に亘って外周面151に当接する。なお、当接プレート70は、例えば、ステンレス鋼などの非磁性の金属材料によって形成される。
【0034】
当接プレート70は、磁極片回転子30Bの構成要素であるプレート締結部材75によって、環状体50の外周面151に押圧される。プレート締結部材75は挿通軸部76を含む。挿通軸部76は、当接プレート70を径方向に貫通するプレート軸孔71、エンドリング56を径方向に貫通するエンドリング軸孔58、および、突出部60に設けられる突出穴73に挿通されている。
図3Bの例に係るプレート締結部材75はネジであり、突出穴73に形成されるメネジに挿通軸部76が螺合しており、プレート締結部材75の頭部79が当接プレート70を外周面151に押圧している。他の例では、プレート締結部材75はボルトであってもよい。この場合、突出穴73は突出部60を径方向に貫通する貫通穴であり、突出部60から径方向の内側に突き出る挿通軸部76に締結用ナット(図示外)が螺合する。
【0035】
上記構成によれば、非磁性体53が当接プレート70と突出部60とによって挟まれるので、非磁性体53の軸方向における端部をより強固に固定できる。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体53の部位の軸方向長さを短くでき、非磁性体53の振動を抑制できる。
【0036】
図3Bで例示されるように、当接プレート70は、エンドリング56と非磁性体53の双方に当接してもよい。上記構成によれば、当接プレート70がエンドリング56と非磁性体53の双方を径方向の外側から押圧するので、励振力の発生により非磁性体53の端部が破損してエンドリング56から剥離するのを抑制できる。
【0037】
図3Bで例示される磁極片回転子30Bは、環状体50の外周面151上に配置される外カバー91をさらに備えてもよい。外カバー91は、環状体50の周方向の全長に亘って外周面151上に配置される円筒状であり、外周面151に接着層(図示外)を介して間接的に当接してもよいし、直接的に当接してもよい。外カバー91は、例えばCFRPによって形成される。そして、当接プレート70は、外カバー91よりも軸方向の一方側に配置される。一般に、環状体50と固定子20との間に形成される外側エアギャップG2の径方向長さは、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記構成によれば、当接プレート70が外側エアギャップG2に進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子30の回転時、固定子20などの他の部品に当接プレート70が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい当接プレート70が外側エアギャップG2に進入することが抑制されることで、外側エアギャップG2において形成される磁束の流れを当接プレート70が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械1は正常に動作することができる。
【0038】
なお、磁極片回転子30Bは、
図2で示される締結軸21および一対のナット22をさらに備えてもよい。この場合、締結軸21を避けた周方向位置にて上述のエンドリング軸孔58が設けられればよく、このエンドリング軸孔58と径方向に対向するようにプレート軸孔71と突出穴73が設けられればよい。
【0039】
<4-3.防振構造のその他の追加的な構成>
図3A,
図3Bで例示されるように、磁極片回転子30A,30Bは、環状体50の内周面152上に配置される内カバー92をさらに備えてもよい。内カバー92は、環状体50の周方向の全長に亘って内周面152上に配置される円筒状であり、内周面152に接着層(図示外)を介して間接的に当接してもよいし、直接的に当接してもよい。内カバー92は、例えばCFRPによって形成される。
【0040】
突出部60A,60B(60)は、内カバー92よりも軸方向の一方側に配置される。環状体50と磁極片回転子30との間に形成される内側エアギャップG1の径方向長さは一般に、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記構成によれば、本体部35からの突出部60の突き出し量が低減するので、突出部60が内側エアギャップG1に進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子30の回転時、磁石回転子15などの他の部品に突出部60が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい突出部60が内側エアギャップG1に進入することが抑制されることで、内側エアギャップG1において形成される磁束の流れを突出部60が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械1は正常に動作することができる。
【0041】
上述したように、各々の非磁性体53は軸方向において各々の磁極片55よりも長い(
図2参照)。磁極片55よりも長い非磁性体53は、径方向における剛性の観点で不利になる。この点、上記構成によれば、軸方向に長い非磁性体53を突出部60が支持するので、非磁性体53の径方向における振動を抑制できる。
【0042】
また、
図3A、
図3Bでは、各々の磁極片55の軸方向の一方側の端部が配置される軸方向位置を二点鎖線Lによって図示する。同図で示されるように、各々の磁極片55は、非磁性体53の軸方向における一方側の端部よりも他方側に配置される。そして、突出部60A,60B(60)が、各々の磁極片55よりも軸方向において一方側に位置する。上記構成によれば、本体部35からの突出部60の突き出し量を低減できるので、励振力が突出部60に伝わる場合であっても、突出部60の変形を抑制できるので、環状体50の変形を抑制することが可能になる。
【0043】
<5.第2実施形態に係る防振構造の詳細>
図4は第2実施形態に係る防振構造の一例を示す概略図である。
【0044】
<5-1.防振構造の基本構成>
図4で示される磁極片回転子30C(30)の連結部材31C(31)は、環状体50よりも径方向の内側に位置する突出部60C(60)をさらに含む。突出部60Cは、本体部35C(35)のリング部37から軸方向の他方側に突出する。突出部60Cは、周方向に延在するリング状であり、環状体50をその周方向長さの全長に亘って径方向の内側から支持する。
【0045】
突出部60Cの外周面68C(68)は、複数の非磁性体53の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面62C(62)を含む。
図4で例示される第2実施形態では、非磁性体支持面62Cが、ウェッジユニット100を介して、複数の非磁性体53の各々の端部と、複数の絶縁体54(
図2参照)の各々とを間接的に支持する。ウェッジユニット100の構成の詳細は後述する。他方で、エンドリング支持面63C(63)は、エンドリング56を直接的に支持する。
【0046】
上記構成によれば、非磁性体支持面62が少なくとも1つの非磁性体53を間接的に支持するので、第1の実施形態で説明した理由によって、磁極片回転子30の回転時、非磁性体53の径方向における振動が抑制される。また、突出部60は径方向における剛性が比較的強い本体部35から突出しているので、第1の実施形態で説明した理由によって、非磁性体53を含む環状体50の共振を抑制できる。以上より、非磁性体53の振動を抑制できる磁極片回転子30が実現される。
【0047】
<5-2.防振構造の追加的な構成>
図4で例示される磁極片回転子30C(30)の本体部35C(35)は、環状体50よりも径方向の内側、且つ、突出部60Cよりも径方向の外側に形成された段部66をさらに含む。段部66は、リング部37よりも軸方向の他方側に突出すると共に、突出部60Cよりも軸方向の一方側に配置される。段部66の外周面65は、エンドリング支持面63C(63)を有する。段部66は周方向に延在するリング状であり、エンドリング支持面63は、エンドリング56をその周方向の全長に亘って支持する。上記構成によれば、エンドリング56を支持する機能を突出部60とは異なる段部66が担うので、突出部60の軸方向位置を設計段階において柔軟に調整することが可能になる。
【0048】
<5-3.ウェッジユニット100>
図4で例示されるウェッジユニット100は、磁極片回転子30Cの構成要素である締結部材80によって固定されている。詳細な構成は以下の通りである。
【0049】
ウェッジユニット100は、非磁性体支持面62C上に配置される内側ウェッジ110と、内側ウェッジ110と非磁性体53との間に配置される外側ウェッジ120とを含む。内側ウェッジ110の外周面は、軸方向の一方側に向かうにつれて径方向の内側に向かうよう直線状に傾斜する傾斜外周面115である。また、内側ウェッジ110には、軸方向に貫通された差込穴119が設けられる。外側ウェッジ120の内周面は、傾斜外周面115に略平行な傾斜内周面122であり、傾斜外周面115に直接的に当接する。外側ウェッジ120は、軸方向において非磁性体53とエンドリング56とに軸方向において重複するように配置される。
【0050】
締結部材80は、軸方向に延在する軸部88を含む。軸部88は、本体部35C(35)を軸方向に貫通する貫通穴135と、上述の内側ウェッジ110の差込穴119とに挿通されている。本例では、差込穴119の内側に形成されたメネジに軸部88が螺合している。締結状態にある締結部材80の軸力によって傾斜外周面115が傾斜内周面122を押圧する力は、軸方向の一方側を向く分力Pと、径方向の外側を向く分力Qとからなる。分力Qの発生によって、外側ウェッジ120は非磁性体53を径方向の外側へ押圧する。
【0051】
上記構成によれば、締結部材80を用いた締結によって内側ウェッジ110が外側ウェッジ120を非磁性体53に押圧するので、突出部60と非磁性体53との連結を強固にでき、非磁性体53の径方向における剛性を向上させることができる。これにより、非磁性体53の振動を抑制することができる。
なお、他の実施形態に係る締結部材80には、締結ナット(図示外)が螺合してもよい。この場合、差込穴119から軸方向の他方側に突き出た軸部88に締結ナットが螺合する。締結ナットが内側ウェッジ110を一方側へ押し当てることで、分力Qが得られる。あるいは、締結部材80が螺子軸であり、締結ナットが軸方向の一方側から螺子軸に螺合する構成が採用されてもよい。この場合、螺子軸は差込穴119に圧入される。
【0052】
幾つかの実施形態では、内側ウェッジ110が軸方向において間隙Kを空けて本体部35C(35)と対向してもよい。上記構成によれば、締結部材80による締結時に内側ウェッジ110が本体部35から離れた状態を維持するので、締結部材80の軸力が、内側ウェッジ110からの押圧力として外側ウェッジ120に伝播し易い。よって、突出部60と非磁性体53との連結を強固にすることができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、エンドリング56は、外側ウェッジ120の外周面129と隙間Mを空けて径方向に対向するエンドリング内周面156を含む。より詳細には、エンドリング内周面156の一部が径方向の外側に凹んでおり、この凹んだエンドリング内周面156が、外側ウェッジ120の外周面129と対向する。
【0054】
上記構成によれば、内側ウェッジ110から外側ウェッジ120への押圧力が、エンドリング56に伝播するのを抑制できるので、突出部60と非磁性体53との連結を強固にすることができる。
なお、他の実施形態では、エンドリング内周面156は径方向の外側に凹んでいなくてもよい。代わりに、外周面129の一部が径方向の内側に凹んでいてもよい。この場合であっても、エンドリング内周面156は隙間Mを空けて外周面129と対向し、上述の利点が得られる。
【0055】
幾つかの実施形態では、本体部35Cは、軸方向の一方側における端面である一方側端面33を含み、一方側端面33は、締結部材80よりも径方向の内側に配置される傾斜面3を有する。傾斜面3は、径方向の内側に向かうにつれて軸方向の他方側に向かうよう延在する。傾斜面3は、
図4で示されるように湾曲して延在してもよいし、直線状に延在してもよい(図示外)。
【0056】
励振力が内側ウェッジ110、外側ウェッジ120、または、締結部材80の少なくとも1つを経由して本体部35に伝わる場合、締結部材80よりも径方向の内側において本体部35は軸方向の一方側に付勢される(矢印R)。この点、上記構成によれば、連結部材31が傾斜面3を有することで、一方側端面33における応力集中を抑制でき、連結部材31の破損を抑制できる。
【0057】
<5-4.押圧リング160>
幾つかの実施形態では、磁極片回転子30C(30)は、環状体50の外周面151上で周方向に延在する押圧リング160をさらに備えてもよい。例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい押圧リング160は、環状体50を径方向の内側に押圧している。
図4の例では、押圧リング160は、軸方向において突出部60Cと重複する第1重複部161と、軸方向においてエンドリング56と重複する第2重複部162とを含む。
【0058】
押圧リング160が第1重複部161を含む構成によれば、第1重複部161と突出部60とによって非磁性体53が挟まれるので、非磁性体53の軸方向における一端部をより強固に固定できる。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体53の部位の軸方向長さを短くでき、非磁性体53の振動を抑制できる。
【0059】
押圧リング160が第1重複部161および第2重複部162を含む構成によれば、押圧リング160がエンドリング56と非磁性体53の双方を径方向の外側から押圧するので、励振力の発生によりエンドリング56と非磁性体53とが剥離するのを抑制できる。
【0060】
幾つかの実施形態では、磁極片回転子30Cは、環状体50の外周面151上に配置される外カバー91をさらに備えてもよい。外カバー91の詳細は、第1実施形態において説明した通りである。
図4の例では、押圧リング160は、外カバー91よりも軸方向の他方側に配置される。環状体50と固定子20との間に形成される外側エアギャップG2の径方向長さは一般に、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記構成によれば、押圧リング160が外側エアギャップG2に進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子30の回転時、固定子20などの他の部品に押圧リング160が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい押圧リング160が外側エアギャップG2に進入することが抑制されることで、外側エアギャップG2において形成される磁束の流れを押圧リング160が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械1は正常に動作することができる。
【0061】
図5は、本開示の一実施形態に係る押圧リング160の概略図である。同図で示される通り、押圧リング160は軸方向視においてCリング状である。換言すると、押圧リング160は、周方向における一端部であるリング一端部157と、周方向における他端部であるリング他端部158とを含み、リング他端部158は、リング一端部157と隙間Hを挟んで対向する。上記構成によれば、磁極片回転子30の組立工程において、隙間Hが周方向に広がるように変形した押圧リング160を環状体50に装着させることができるので、押圧リング160の装着工程を容易にできる。よって、磁極片回転子30の組立性を向上させることができる。
【0062】
<5-5.その他の構成>
磁極片回転子30C(30)は、第1実施形態において説明した構成の少なくとも1つが適用されてもよい。例えば、以下に示す(A1)~(A4)の構成の少なくとも1つが磁極片回転子30Cに適用されてもよい。適用されることで生じる利点は既述の通りであるので、詳説を割愛する。
(A1)磁極片回転子30が締結軸21を備える構成
(A2)突出部60が内カバー92よりも軸方向の一方側に配置される構成
(A3)各々の非磁性体53が軸方向において各々の磁極片55よりも長い構成
(A4)突出部60が、各々の磁極片55よりも軸方向において一方側に位置する構成
<6.第3実施形態に係る防振構造の詳細>
図6は第3実施形態に係る防振構造の一例を示す概略図である。
【0063】
<6-1.防振構造の基本構成>
図6で示される磁極片回転子30D(30)の連結部材31D(31)は、環状体50よりも径方向の内側に位置する突出部60D(60)をさらに含む。突出部60Dは、本体部35D(35)のリング部37から軸方向の他方側に突出する。突出部60Dは、周方向に延在するリング状であり、環状体50をその周方向長さの全長に亘って径方向の内側から支持する。
【0064】
突出部60Cの外周面68D(68)は、複数の非磁性体53の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面62D(62)を含む。非磁性体支持面62Dは、軸方向の他方側に向かうにつれて径方向の内側に向かうよう直線状に傾斜する。第3実施形態では、非磁性体支持面62Dは、エンドリング56D(56)を支持するエンドリング支持面63D(63)として機能することを通じて、非磁性体53を支持する。換言すると、第3の実施形態では、非磁性体支持面62D(62)は、エンドリング支持面63D(63)でもある。詳細な構成は以下の通りである。
【0065】
磁極片回転子30Dは、エンドリング支持面63Dとエンドリング56D(56)との間に挟まる介在部材95と、上述した締結軸21と、上述した一対のナット22とを備える。介在部材95は周方向に延在するリング状である。介在部材95は、非磁性の金属材料によって形成されてもよいし、ゴムなどの弾性部材によって形成されてもよい。締結軸21とナット22の構成は既述の通りであり、
【0066】
図6で示される連結部材31D(31)は、締結軸21に締結されるナット22によって軸方向の他方側に押圧され、傾斜してる非磁性体支持面62Dはエンドリング56を押圧する。非磁性体支持面62Dがエンドリング56を押圧する力は、軸方向の他方側を向く分力W1と、径方向の外側を向く分力W2とからなる。分力W2の発生によって、エンドリング56Dに差し込まれている締結軸21が径方向の外側へ押圧されて非磁性体53に当たる。つまり、非磁性体孔57に隙間バメ状態で嵌る締結軸21が、径方向の内側から非磁性体53に当たる。エンドリング支持面63D(64)は、介在部材95を介してエンドリング56Dを支持し、エンドリング56D(56)および締結軸21を介して非磁性体53を支持する。従って、エンドリング支持面63D(63)は、非磁性体支持面62D(62)としての機能を果たす。
【0067】
上記構成によれば、非磁性体支持面62が少なくとも1つの非磁性体53を、介在部材95、エンドリング56、および、締結軸21を介して間接的に支持するので、第1の実施形態で説明した理由によって、磁極片回転子30の回転時、非磁性体53の径方向における振動が抑制される。また、突出部60は径方向における剛性が比較的強い本体部35から突出しているので、第1の実施形態で説明した理由によって、非磁性体53を含む環状体50の共振を抑制できる。以上より、非磁性体53の振動を抑制できる磁極片回転子30が実現される。また、締結軸21が非磁性体53に当たることで、非磁性体53の径方向における剛性を高めることができ、非磁性体53の振動を抑制できる。
【0068】
<6-2.防振構造の追加的構成>
幾つかの実施形態では、エンドリング56D(56)は、周方向に延在するエンドリング本体部561と、介在部材95よりも軸方向の他方側にてエンドリング本体部561から径方向の内側に突出するリング突起566とを含んでもよい。リング突起566は、介在部材95に軸方向の他方側から当接する。上記構成によれば、非磁性体支持面62(即ちエンドリング支持面63)から介在部材95を経由してエンドリング56に押圧力が伝播しやすい。よって、径方向の内側から締結軸21を非磁性体53に更に確実に押圧させることができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、介在部材95は、軸方向の他方側に向かうほど径方向の内側に直線状に傾斜する介在傾斜面99を含んでもよい。介在傾斜面99は、介在部材95の内周面であり、非磁性体支持面62D(即ちエンドリング支持面63D)に当接する。上記構成によれば、非磁性体支持面62と介在傾斜面99とが互いに当接することで、非磁性体支持面62から介在部材95に押圧力が伝播し易く、径方向の内側から締結軸21を非磁性体53に更に確実に押圧させることができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、連結部材31D(31)は、本体部35D(35)から軸方向の他方側に突出し、突出部60D(60)と協働して、介在部材95およびエンドリング56Dを挟む挟持突起部599をさらに含んでもよい。挟持突起部599は、エンドリング56よりも径方向の外側において周方向に延在するリング状であり、本体部35Dと一体的に形成される。また、幾つかの実施形態では、挟持突起部599の軸方向における他方側の端部は、エンドリング56Dよりも軸方向の他方側に位置してもよく、挟持突起部599は径方向の外側から非磁性体53に当接してもよい。つまり、挟持突起部599は径方向の外側から非磁性体53を支持してもよい。
【0071】
上記構成によれば、挟持突起部599がエンドリング56を径方向において挟むことで、締結軸21から非磁性体53に伝播する力が分散されにくくなり、締結軸21が非磁性体53に更に積極的に当たることができる。これにより、非磁性体53の径方向における剛性はさらに強まり、非磁性体53の振動を抑制できる。また、挟持突起部599が径方向の外側から非磁性体53を支持する構成がさらに採用するのであれば、非磁性体53が径方向に撓むことができる部位の軸方向長さを短くでき、非磁性体53の振動をさらに抑制できる。
【0072】
幾つかの実施形態では、磁極片回転子30D(30)は上述の外カバー91をさらに備え、挟持突起部599は、外カバー91より軸方向の一方側に配置される。一般に、環状体50と固定子20との間に形成される外側エアギャップG2の径方向長さは、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記構成によれば、挟持突起部599が外側エアギャップG2に進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子30の回転時、固定子20などの他の部品に挟持突起部599が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい挟持突起部599が外側エアギャップG2に進入することが抑制されることで、外側エアギャップG2において形成される磁束の流れを挟持突起部599が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械1は正常に動作することができる
【0073】
<6-3.その他の構成>
磁極片回転子30D(30)は、第1実施形態および/または第2実施形態において説明した構成の少なくとも1つが適用されてもよい。例えば、以下に示す(B1)~(B5)の構成の少なくとも1つが磁極片回転子30Cに適用されてもよい。適用されることで生じる利点は既述の通りであるので、詳説を割愛する。
(B1)突出部60が内カバー92よりも軸方向の一方側に配置される構成
(B2)各々の非磁性体53が軸方向において各々の磁極片55よりも長い構成
(B3)突出部60が、各々の磁極片55よりも軸方向において一方側に位置する構成
(B4)磁極片回転子30が押圧リング160を備える構成
(B5)磁極片回転子30が当接プレート70およびプレート締結部材75を備える構成
例えば、構成(B4)または(B5)が磁極片回転子30Dに適用される実施形態では、挟持突起部599は設けられなくてもよい。
【0074】
<7.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0075】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子(30)は、
磁気ギヤ電気機械(1)に設けられる磁極片回転子(30)であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片(55)及び複数の非磁性体(53)を含む環状体(50)と、
軸方向の一方側における前記環状体の端部(一端部51)と前記磁気ギヤ電気機械の回転軸(5)とを連結する本体部(37)を含む連結部材(31)と、
を備え、
前記連結部材は、前記環状体よりも径方向の内側において、前記本体部から前記軸方向の他方側に突出する突出部(60)をさらに含み、
前記突出部の外周面(68)は、前記複数の非磁性体の少なくとも1つを支持する非磁性体支持面(62)を有する。
【0076】
上記1)の構成によれば、非磁性体支持面が少なくとも1つの非磁性体を直接的または間接的に支持する。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体の部位の軸方向長さを短くできる。従って、磁極片回転子の回転時、非磁性体の径方向における振動が抑制される。また、突出部は径方向における剛性が比較的強い本体部から突出しており、当該突出部によって非磁性体は支持されるので、環状体の固有振動数が高まり、非磁性体を含む環状体の共振を抑制できる。以上より、非磁性体の振動を抑制できる磁極片回転子が実現される。
【0077】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記突出部の前記外周面は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記非磁性体支持面よりも前記軸方向の前記一方側に位置するエンドリング支持面(63)をさらに有する。
【0078】
上記2)の構成によれば、非磁性体の端部に接続されるエンドリングも径方向の内側から支持されるので、非磁性体の径方向における剛性を高めることができ、非磁性体の振動を抑制できる。また、突出部の外周面に、非磁性体支持面とエンドリング支持面の双方とが集約されるので、連結部材の構造を簡素化できる。
【0079】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記本体部は、前記環状体よりも前記径方向の内側、且つ、前記突出部よりも前記径方向の外側に形成された段部(66)をさらに含み、
前記段部の外周面(65)は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記非磁性体支持面よりも前記軸方向の前記一方側に形成されたエンドリング支持面(63)をさらに有する。
【0080】
上記3)の構成によれば、エンドリングを支持する機能を突出部とは異なる段部が担うので、突出部の軸方向位置を設計段階において柔軟に調整することが可能になる。
【0081】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の磁極片回転子であって、
前記非磁性体支持面上に配置される内側ウェッジであって、前記軸方向の前記一方側に向かうにつれて前記径方向の内側に向かうように傾斜する外周面である傾斜外周面(115)を含む内側ウェッジ(110)と、
前記内側ウェッジと前記非磁性体との間に配置される外側ウェッジであって、前記傾斜外周面に当接する内周面である傾斜内周面(122)を含む外側ウェッジ(120)と、
前記本体部を前記軸方向に貫通する貫通穴(135)に挿通されると共に、前記内側ウェッジに形成される差込穴(119)に挿通される軸部(88)を含み、前記傾斜外周面を前記傾斜内周面に押圧する締結部材(80)と、
をさらに備える。
【0082】
上記4)の構成によれば、締結部材を用いた締結によって内側ウェッジが外側ウェッジを非磁性体に押圧するので、突出部と非磁性体との連結を強固にでき、非磁性体の径方向における剛性を向上させることができる。これにより、非磁性体の振動を抑制することができる。
【0083】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載の磁極片回転子であって、
前記本体部は、前記軸方向の前記一方側における端面である一方側端面(33)を含み、
前記一方側端面は、前記締結部材よりも前記径方向の内側に配置される傾斜面であって、前記径方向の内側に向かうにつれて前記軸方向の前記他方側に向かうよう延在する傾斜面(3)を有する。
【0084】
励振力が内側ウェッジ、外側ウェッジ、または、締結部材の少なくとも1つを経由して本体部に伝わる場合、締結部材よりも径方向の内側において本体部は軸方向の一方側に付勢される。この点、上記5)の構成によれば、連結部材が傾斜面を有することで、一方側端面における応力集中を抑制でき、連結部材の破損を抑制できる。
【0085】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載の磁極片回転子であって、
前記内側ウェッジは、前記軸方向において間隙(K)を空けて前記本体部と対向する。
【0086】
上記6)の構成によれば、締結部材による締結時に内側ウェッジが本体部から離れた状態を維持するので、締結部材の軸力が、内側ウェッジからの押圧力として外側ウェッジに伝播し易い。よって、突出部と非磁性体との連結を強固にすることができる。
【0087】
7)幾つかの実施形態では、上記4)から6)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記エンドリングは、前記外側ウェッジの外周面(129)と隙間(M)を空けて前記径方向に対向するエンドリング内周面(156)を含む。
【0088】
上記7)の構成によれば、内側ウェッジから外側ウェッジへの押圧力が、エンドリングに伝播するのを抑制できるので、突出部と非磁性体との連結を強固にすることができる。
【0089】
8)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記突出部の前記外周面は、前記エンドリングを支持するエンドリング支持面であって、前記軸方向の前記他方側に向かうにつれて前記径方向の内側に向かうよう傾斜するエンドリング支持面(63)を含み、
前記磁極片回転子は、
前記エンドリング支持面と前記エンドリングとの間に挟まる介在部材(95)と、
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記本体部に設けられた挿通孔(34)と、前記エンドリングに設けられたエンドリング孔(159)と、前記非磁性体に設けられた非磁性体孔(57)とに差し込まれる締結軸(21)と、
前記環状体から前記軸方向にずれた位置にて前記締結軸に螺合するナット(22)と、
を備え、
前記非磁性体支持面は前記エンドリング支持面である。
【0090】
上記8)の構成によれば、ナットが締結軸の締結によって、本体部は軸方向の他方側に押圧され、傾斜している非磁性体支持面はエンドリングを軸方向の他方側かつ径方向の外側に押圧する。従って、エンドリングに差し込まれている締結軸は径方向の外側へ押圧されて非磁性体に当たる。つまり、非磁性体支持面は、介在部材、エンドリング、および、締結軸を介して非磁性体を支持できる。これにより、非磁性体の径方向における剛性を高めることができ、非磁性体の振動を抑制できる。
【0091】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリングは、
前記周方向に延在するエンドリング本体部(561)と、
前記介在部材よりも前記軸方向の前記他方側にて前記エンドリング本体部から前記径方向の内側に突出するリング突起であって、前記介在部材に当接するリング突起(566)と
をさらに含む。
【0092】
上記9)の構成によれば、軸方向の他方側からもエンドリングは介在部材に当接するので、非磁性体支持面から介在部材を経由してエンドリングに押圧力が伝播しやすい。よって、径方向の内側から締結軸を非磁性体に更に確実に押圧させることができる。
【0093】
10)幾つかの実施形態では、上記8)または9)に記載の磁極片回転子であって、
前記介在部材は、前記軸方向の前記他方側に向かうほど前記径方向の内側に傾斜する介在傾斜面であって、前記非磁性体支持面に当接する介在傾斜面(99)を含む。
【0094】
上記10)の構成によれば、非磁性体支持面と介在傾斜面とが互いに当接することで、非磁性体支持面から介在部材に押圧力が伝播し易く、径方向の内側から締結軸を非磁性体に更に確実に押圧させることができる。)
【0095】
11)幾つかの実施形態では、上記8)から10)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記連結部材は、前記本体部から前記軸方向の前記他方側に突出し、前記突出部と協働して、前記介在部材および前記エンドリングを挟む挟持突起部(599)をさらに含む。
【0096】
上記11)の構成によれば、挟持突起部突出部がエンドリングを径方向において挟むことで、締結軸から非磁性体に伝播する力が分散されにくくなり、締結軸が非磁性体に更に積極的に当たることができる。これにより、非磁性体の径方向における剛性はさらに強まり、非磁性体の振動を抑制できる。
【0097】
12)幾つかの実施形態では、上記11)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバー(91)をさらに備え、
前記挟持突起部は、前記外カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される。
【0098】
環状体と固定子との間に形成される外側エアギャップの径方向長さは一般に、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記12)の構成によれば、挟持突起部が外側エアギャップに進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子の回転時、固定子などの他の部品に挟持突起部が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい挟持突起部が外側エアギャップに進入することが抑制されることで、外側エアギャップにおいて形成される磁束の流れを挟持突起部が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械は正常に動作することができる。
【0099】
13)幾つかの実施形態では、上記1)から12)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状体の内周面上に配置される内カバー(92)をさらに備え、
前記突出部は、前記内カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される。
【0100】
環状体と磁極片回転子との間に形成される内側エアギャップの径方向長さは一般に、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記13)の構成によれば、本体部からの突出部の突き出し量が低減するので、突出部が内側エアギャップに進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子の回転時、磁石ロータなどの他の部品に突出部が衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい突出部が内側エアギャップに進入することが抑制されることで、内側エアギャップにおいて形成される磁束の流れを突出部が阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械は正常に動作することができる。
【0101】
14)幾つかの実施形態では、上記1)から13)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状体の外周面(151)上で前記周方向に延在すると共に前記環状体を前記径方向の内側に押圧する押圧リングであって、前記軸方向において前記突出部と重複する第1重複部(161)を含む押圧リング(160)をさらに備える。
【0102】
上記14)の構成によれば、第1重複部と突出部とによって非磁性体が挟まれるので、非磁性体の軸方向における一端部をより強固に固定できる。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体の部位の軸方向長さを短くでき、非磁性体の振動を抑制できる。
【0103】
15)幾つかの実施形態では、上記14)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記押圧リングは、前記軸方向において前記エンドリングと重複する第2重複部(162)をさらに含む。
【0104】
上記15)の構成によれば、押圧リングがエンドリングと非磁性体の双方を径方向の外側から押圧するので、励振力の発生によりエンドリングと非磁性体とが剥離するのを抑制できる。
【0105】
16)幾つかの実施形態では、上記14)または15)に記載の磁極片回転子であって、
前記押圧リングは、
前記周方向における一端部であるリング一端部(157)と、
前記周方向における他端部であって、前記リング一端部と隙間(H)を空けて前記周方向に対向するリング他端部(158)とを含む。
【0106】
上記16)の構成によれば、磁極片回転子の組立工程において、隙間が周方向に広がるように変形した押圧リングを環状体に装着させることができるので、押圧リングの装着工程を容易にできる。よって、磁極片回転子の組立性を向上させることができる。
【0107】
17)幾つかの実施形態では、上記14)から16)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバー(91)をさらに備え、
前記押圧リングは、前記外カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される。
【0108】
環状体と固定子との間に形成される外側エアギャップの径方向長さは一般に、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記17)の構成によれば、押圧リングが外側エアギャップに進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子の回転時、固定子などの他の部品に押圧リングが衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい押圧リングが外側エアギャップに進入することが抑制されることで、外側エアギャップにおいて形成される磁束の流れを押圧リングが阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械は正常に動作することができる。
【0109】
18)幾つかの実施形態では、上記1)から17)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状体は、前記周方向に延在するエンドリングであって、前記軸方向の前記一方側における各々の前記磁極片の端部と各々の前記磁性体の端部とに接続するエンドリング(56)をさらに含み、
前記磁極片回転子は、
前記環状体の外周面(151)に当接する当接プレートであって、前記軸方向において前記突出部と重複するように配置される当接プレート(70)と、
前記当接プレートを前記径方向に貫通するプレート軸孔(71)、前記エンドリングに設けられるエンドリング軸孔(58)、および、前記突出部に設けられる突出穴(73)に挿通される挿通軸部(76)を含み、前記当接プレートを前記外周面に押圧するプレート締結部材(75)と
をさらに備える。
【0110】
上記18)の構成によれば、非磁性体が当接プレートと突出部とによって挟まれるので、非磁性体の軸方向における端部をより強固に固定できる。これにより、励振力によって径方向に撓む非磁性体の部位の軸方向長さを短くでき、非磁性体の振動を抑制できる。
【0111】
19)幾つかの実施形態では、上記18)に記載の磁極片回転子であって、
前記当接プレートは、前記エンドリングと前記非磁性体の双方に当接する。
【0112】
上記19)の構成によれば、当接プレートがエンドリングと非磁性体の双方を径方向の外側から押圧するので、励振力の発生により非磁性体の端部が破損してエンドリングから剥離するのを抑制できる。
【0113】
20)幾つかの実施形態では、上記18)または19)に記載の磁極片回転子であって、
前記環状体の前記外周面上に配置される外カバー(91)をさらに備え、
前記当接プレートは、前記外カバーよりも前記軸方向の前記一方側に配置される。
【0114】
一般に、環状体と固定子との間に形成される外側エアギャップの径方向長さは、例えば数mm以下、あるいは1mm以下といった非常に短い長さとする必要がある。この点、上記20)の構成によれば、当接プレートが外側エアギャップに進入することが抑制される。これにより、磁極片回転子の回転時、固定子などの他の部品に当接プレートが衝突するのを抑制できる。さらに、例えば非磁性の金属材料によって形成されてもよい当接プレートが外側エアギャップに進入することが抑制されることで、外側エアギャップにおいて形成される磁束の流れを当接プレートが阻害することを回避できるので、磁気ギヤ電気機械は正常に動作することができる。
【0115】
21)幾つかの実施形態では、上記1)から20)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記本体部に設けられた挿通孔(34)と、前記非磁性体に設けられた非磁性体孔(57)とに差し込まれる締結軸(21)と、
前記環状体から前記軸方向にずれた位置にて前記締結軸に螺合するナット(22)と
をさらに備える。
【0116】
上記21)の構成によれば、締結軸が非磁性体に挿通されるので、非磁性体の径方向における振動を抑制できる。
【0117】
22)幾つかの実施形態では、上記1)から21)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
各々の前記非磁性体は、前記軸方向において各々の前記磁極片よりも長い。
【0118】
磁極片よりも長い非磁性体は、径方向における剛性の観点で不利になる。この点、上記22)の構成によれば、軸方向に長い非磁性体を突出部が支持するので、非磁性体の径方向における振動を抑制できる。
【0119】
23)幾つかの実施形態では、上記22)に記載の磁極片回転子であって、
各々の前記磁極片は、各々の非磁性体の前記軸方向の前記一方側の端部よりも、前記他方側に配置され、
前記突出部は、各々の前記磁極片よりも前記軸方向において前記一方側に位置する。
【0120】
上記23)の構成によれば、本体部からの突出部の突き出し量を低減できるので、励振力が突出部に伝わる場合であっても、突出部の変形を抑制できるので、環状体の変形を抑制することが可能になる。
【0121】
24)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械(1)は、
上記1)乃至23)の何れかに記載の磁極片回転子(30)と、
前記磁極片回転子の前記環状体よりも前記径方向の内側において前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石(19)を含む磁石回転子(15)と、
前記環状体よりも前記径方向の外側において前記周方向にならぶステータ磁石(29)を含む固定子(20)と
を備える。
【0122】
上記24)の構成によれば、上記1)と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0123】
1 :磁気ギヤ電気機械
3 :傾斜面
5 :回転軸
19 :ロータ磁石
20 :固定子
21 :締結軸
22 :ナット
29 :ステータ磁石
30 :磁極片回転子
31,32 :連結部材
33 :一方側端面
34 :挿通孔
35 :本体部
50 :環状体
51 :一端部
52 :他端部
53 :非磁性体
55 :磁極片
56 :エンドリング
57 :非磁性体孔
58 :エンドリング軸孔
59 :エンドリング孔
60 :突出部
62 :非磁性体支持面
63 :エンドリング支持面
65,68,129,151 :外周面
66 :段部
68 :外周面
70 :当接プレート
71 :プレート軸孔
73 :突出穴
75 :プレート締結部材
76 :挿通軸部
80 :締結部材
88 :軸部
91 :外カバー
92 :内カバー
95 :介在部材
99 :介在傾斜面
110 :内側ウェッジ
115 :傾斜外周面
119 :差込穴
120 :外側ウェッジ
122 :傾斜内周面
135 :貫通穴
152 :内周面
156 :エンドリング内周面
157 :リング一端部
158 :リング他端部
160 :押圧リング
161 :第1重複部
162 :第2重複部
561 :エンドリング本体部
566 :リング突起
599 :挟持突起部
H,K,M :隙間