(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097126
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】光軸調整装置及び光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/00 20200101AFI20240710BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240710BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H05B47/00
B60Q1/04 E
B60Q1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000371
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智博
【テーマコード(参考)】
3K273
3K339
【Fターム(参考)】
3K273PA07
3K273QA36
3K273SA08
3K273SA17
3K273SA34
3K273SA52
3K273TA48
3K339AA02
3K339AA25
3K339AA32
3K339BA01
3K339BA11
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA12
3K339CA22
3K339CA24
3K339GB01
3K339JA12
3K339JA21
3K339KA22
3K339KA26
3K339KA37
3K339LA02
3K339MA10
3K339MC44
3K339MC45
3K339MC65
3K339MC71
3K339MC72
(57)【要約】
【課題】光軸が上向き又は下向きのまま停止してしまう事態の改善を図ると共に、短絡先となる機器の実行中の動作が適切に実行できなくなる可能性を低減させることができる光軸調整装置及び光軸調整方法を提供する。
【解決手段】光軸調整装置1は、レベリングアクチュエータ100に送信される電圧信号の算出された電圧値と検出された実際の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合に、アナログ電圧信号線Lにおいて短絡が発生したと判定する短絡判定部80と、短絡判定部80により短絡が発生したと判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する禁止部91と、短絡先となる機器を特定する特定部81と、特定部81により特定された短絡先となる機器が非動作状態であると判断したときに、禁止部91による送信禁止に優先して、灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する復帰指示部92とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の傾斜角に応じた電圧信号をアクチュエータに送信して灯具の光軸を調整する光軸調整装置であって、
車両の傾斜角に応じて前記アクチュエータに送信する電圧信号の電圧値を算出する電圧算出手段と、
前記アクチュエータに電圧信号を送信するための導電路の電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記電圧算出手段により算出された電圧信号の電圧値と前記電圧検出手段により検出された前記導電路の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合に、前記導電路において短絡が発生したと判定する短絡判定手段と、
前記短絡判定手段により短絡が発生したと判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する禁止手段と、
他の機器の動作状態を示す動作信号を入力する信号入力手段と、
前記短絡判定手段により短絡が発生したと判定された場合に、前記電圧検出手段により検出された前記導電路の電圧値と前記信号入力手段により入力された動作信号とに基づいて、短絡先となる機器を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記短絡先となる機器が、前記信号入力手段により入力された動作信号に基づいて非動作状態であると判断したときに、前記禁止手段による送信禁止に優先して、前記灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する復帰指示手段と、
を備えることを特徴とする光軸調整装置。
【請求項2】
前記灯具の光軸を基準位置まで動作させるべく前記アクチュエータに電圧信号を送信した場合に前記短絡先となる機器に所定の機能阻害及び破損の少なくとも一方の事象が発生するかを判断する判断手段をさらに備え、
前記復帰指示手段は、前記判断手段により前記事象が発生しないと判断された場合に、前記灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する
ことを特徴とする請求項1に記載の光軸調整装置。
【請求項3】
車両の傾斜角に応じた電圧信号をアクチュエータに送信して灯具の光軸を調整する光軸調整方法であって、
車両の傾斜角に応じて前記アクチュエータに送信する電圧信号の電圧値を算出する電圧算出工程と、
前記アクチュエータに電圧信号を送信するための導電路の電圧値を検出する電圧検出工程と、
前記電圧算出工程において算出された電圧信号の電圧値と前記電圧検出工程において検出された前記導電路の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合に、前記導電路において短絡が発生したと判定する短絡判定工程と、
前記短絡判定工程において短絡が発生したと判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する禁止工程と、
他の機器の動作状態を示す動作信号を入力する信号入力工程と、
前記短絡判定工程において短絡が発生したと判定された場合に、前記電圧検出工程において検出された前記導電路の電圧値と前記信号入力工程において入力された動作信号とに基づいて、短絡先となる機器を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定された前記短絡先となる機器が、前記信号入力工程において入力された動作信号に基づいて非動作状態であると判断したときに、前記禁止工程における送信禁止に優先して、前記灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する復帰指示工程と、
を備えることを特徴とする光軸調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸調整装置及び光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の傾斜角に応じて前照灯等の灯具の光軸を調整する光軸調整装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。この光軸調整装置は、アクチュエータに対して電圧信号を送信して灯具の光軸を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4356935号公報
【特許文献2】特開2015-107758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1,2に記載の光軸調整装置は、アクチュエータに対して電圧信号を送信するための導電路において他の機器側との短絡が生じることがある。この場合、光軸調整装置からの電圧信号によって短絡先となる機器に影響を及ぼしてしまうことから、光軸調整装置は、短絡検出後にアクチュエータへの電圧信号の送信を禁止して灯具の光軸調整を禁止することが考えられる。
【0005】
しかし、短絡検出後において灯具の光軸調整が禁止されてしまうと、例えば光軸が基準位置よりも上向きで停止したまま、又は基準位置より下向きで停止したままとなることがある。光軸が上向きで停止した場合、対向車の視界に悪影響を与えてしまうことがある。また、光軸が下向きで停止した場合、走行に充分な前方視界を得られない可能性がある。
【0006】
そこで、光軸を基準位置に戻すことを行ったとしても、短絡が発生している状況において、光軸を基準位置に戻してしまうと、アクチュエータに送信する電圧信号が短絡先となる機器に入力されてしまう。この結果、例えば短絡先となる機器が重要な動作の実行中に電圧信号が入力されてしまうこともあり、短絡先となる機器の実行中の動作を適切に実行し続けることができなくなる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光軸が上向き又は下向きのまま停止してしまう事態の改善を図ると共に、短絡先となる機器の実行中の動作が適切に実行できなくなる可能性を低減させることができる光軸調整装置及び光軸調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る光軸調整装置は、車両の傾斜角に応じた電圧信号をアクチュエータに送信して灯具の光軸を調整する光軸調整装置であって、車両の傾斜角に応じて前記アクチュエータに送信する電圧信号の電圧値を算出する電圧算出手段と、前記アクチュエータに電圧信号を送信するための前記導電路の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記電圧算出手段により算出された電圧信号の電圧値と前記電圧検出手段により検出された前記導電路の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合に、前記導電路において短絡が発生したと判定する短絡判定手段と、前記短絡判定手段により短絡が発生したと判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する禁止手段と、他の機器の動作状態を示す動作信号を入力する信号入力手段と、前記短絡判定手段により短絡が発生したと判定された場合に、前記電圧検出手段により検出された前記導電路の電圧値と前記信号入力手段により入力された動作信号とに基づいて、短絡先となる機器を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された前記短絡先となる機器が、前記信号入力手段により入力された動作信号に基づいて非動作状態であると判断したときに、前記禁止手段による送信禁止に優先して、前記灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する復帰指示手段と、を備える。
【0009】
本開示に係る光軸調整方法は、車両の傾斜角に応じた電圧信号をアクチュエータに送信して灯具の光軸を調整する光軸調整方法であって、車両の傾斜角に応じて前記アクチュエータに送信する電圧信号の電圧値を算出する電圧算出工程と、前記アクチュエータに電圧信号を送信するための導電路の電圧値を検出する電圧検出工程と、前記電圧算出工程において算出された電圧信号の電圧値と前記電圧検出工程において検出された前記導電路の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合に、前記導電路において短絡が発生したと判定する短絡判定工程と、前記短絡判定工程において短絡が発生したと判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する禁止工程と、他の機器の動作状態を示す動作信号を入力する信号入力工程と、前記短絡判定工程において短絡が発生したと判定された場合に、前記電圧検出工程において検出された前記導電路の電圧値と前記信号入力工程において入力された動作信号とに基づいて、短絡先となる機器を特定する特定工程と、前記特定工程において特定された前記短絡先となる機器が、前記信号入力工程において入力された動作信号に基づいて非動作状態であると判断したときに、前記禁止工程における送信禁止に優先して、前記灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する復帰指示工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光軸が上向き又は下向きのまま停止してしまう事態の改善を図ると共に、短絡先となる機器の実行中の動作が適切に実行できなくなる可能性を低減させることができる光軸調整装置及び光軸調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る光軸調整装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る光軸調整方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る光軸調整装置を示すブロック図である。
図1に示す光軸調整装置1は、不図示の車両の傾斜角に応じて灯具(例えば前照灯:不図示)の光軸を調整するものである。この光軸調整装置1は、車両の傾斜角に応じた電圧信号を、アナログ電圧信号線(導電路)Lを通じてレベリングアクチュエータ(アクチュエータ)100に対して送信する。レベリングアクチュエータ100は、例えば不図示のロッドとモータとを備え、光軸調整装置1からの電圧信号に基づいてモータを駆動させてロッドを進退させる。前照灯は、発光素子が例えばブラケットに支持されている。ブラケットは、特定箇所が固定状態とされると共に、他の箇所がロッドの進退にあわせて進退する構成となっている。このような構成であるため、レベリングアクチュエータ100は、ロッドの進退にあわせて特定箇所を中心にブラケットを回動させることができ、光軸を調整することとなる。
【0014】
光軸調整装置1は、傾斜角算出部10と、光軸角算出部20と、電圧算出部(電圧算出手段)30と、電圧信号生成部40とを備えている。傾斜角算出部10は、車両信号(主に不図示の傾斜角センサからの信号)を入力し、車両の傾斜角を算出するものである。特に傾斜角算出部10は、車両前後方向の傾斜角(ピッチ角)を算出する。
【0015】
光軸角算出部20は、傾斜角算出部10により算出された傾斜角に応じた光軸角を算出するものである。電圧算出部30は、光軸角算出部20により算出された光軸角(車両の傾斜角)に応じてレベリングアクチュエータ100に送信する電圧信号の電圧値を算出するものである。電圧信号生成部40は、電圧算出部30により算出された電圧値の電圧信号を生成してアナログ電圧信号線Lを通じてレベリングアクチュエータ100に送信するものである。
【0016】
さらに、本実施形態に係る光軸調整装置1は、電圧検出部(電圧検出手段)50と、電圧比較部60と、動作検出部(信号入力手段)70と、短絡判定部(短絡判定手段)80と、出力可否判定部90とを備えている。電圧検出部50は、アナログ電圧信号線Lの実際の電圧値を検出するものである。電圧検出部50は、検出した電圧値の情報を電圧比較部60に送信する。
【0017】
電圧比較部60は、電圧算出部30により算出された電圧信号の電圧値と、電圧検出部50により検出されたアナログ電圧信号線Lの電圧値とを比較し、双方の電圧値の差分が所定値以内であるかを判断するものである。この電圧比較部60は、差分が所定値以内であるか否かの情報を短絡判定部80に送信する。所定値は、ノイズ成分等を考慮して短絡発生時に生じる電圧差に基づく値とされる。
【0018】
動作検出部70は、他の機器(不図示)の動作状態を示す動作信号を入力するものである。ここで、他の機器とは、光軸調整される灯具と短絡の可能性がある機器(短絡先の候補となる機器)であって、例えば光軸調整される灯具が前照灯である場合にはターンシグナルランプやクリアランスランプ等のヘッドランプ機器内に存在する各種点灯機能が該当する。また、前照灯については、ロービームの短絡先となる機器がハイビームである等であってもよい。動作検出部70は、このような他の機器からの動作信号(例えば点灯、点滅、非点灯等の信号)を入力する。
【0019】
短絡判定部80は、電圧比較部60からの情報に基づいてアナログ電圧信号線Lにおける短絡を判定するものである。この短絡判定部80は、電圧比較部60より差分が所定値以内でない旨の情報を受信した場合に、アナログ電圧信号線Lにおいて短絡が発生していると判定する。
【0020】
出力可否判定部90は、アナログ電圧信号線Lを通じた電圧信号の出力の可否を判定するものであって、禁止部(禁止手段)91を備えている。
【0021】
禁止部91は、短絡判定部80によりアナログ電圧信号線Lにおいて短絡が発生していると判定された場合に、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止するものである。これにより、禁止部91は、光軸調整装置1からの電圧信号によって短絡先となる機器の動作に影響を与えないようにしている。
【0022】
ここで、電圧信号の送信を禁止して光軸調整が禁止されてしまうと、例えば光軸が基準位置よりも上向きで停止したまま、又は基準位置より下向きで停止したままとなってしまうことがある。そこで、光軸を基準位置に戻そうとして、レベリングアクチュエータ100に電圧信号を送信すると、例えば短絡先となる機器が重要な動作の実行中に電圧信号が入力されてしまうこともあり、他の機器の実行中の動作を適切に実行し続けることができなくなる可能性がある。
【0023】
このような問題に対応すべく、本実施形態に係る光軸調整装置1は、短絡判定部80に特定部(特定手段)81を備えると共に、出力可否判定部90に復帰指示部(復帰指示手段)92を備えている。
【0024】
特定部81は、短絡判定部80により短絡が発生したと判定された場合に短絡先となる機器を特定するものである。この特定部81は、電圧検出部50により検出されたアナログ電圧信号線Lの電圧値と、動作検出部70により入力された他の機器からの動作状態を示す動作信号に基づいて、短絡先となる機器を特定する。ここで、短絡発生時には、短絡した機器を制御するための信号の電圧が電圧検出部50により検出される。よって、特定部81は、短絡先となる機器を制御するための信号の電圧と、他の機器(短絡先の候補となる機器)の動作状態を示す動作信号に基づいて、短絡先となる機器を特定する。
【0025】
特定部81による特定を詳細に説明する。例えば電圧検出部50により検出された電圧値が12Vとオープンとを繰り返すものであり、動作検出部70により入力された動作信号に基づいてターンシグナルランプがオンになったことが確認されたとする。この場合、特定部81は、短絡先となる機器がターンシグナルランプであると特定する。また、例えばハイビームが12V電圧系であって、電圧検出部50により検出された電圧値が12Vからオープンに変化し、そのタイミングで動作検出部70により入力された動作信号に基づいてハイビームからロービームに切り替えられたとする。この場合、特定部81は短絡先となる機器がハイビームであると特定する。このように、本実施形態に係る光軸調整装置1は、例えば予め短絡先の候補となる機器の動作時における電圧状況を把握して記憶部(不図示)等に記憶しておき、記憶される電圧状況と検出された電圧値と動作信号とに基づいて短絡先となる機器を特定することができる。なお、電圧状況は記憶されていなくともよく、特定部81は、例えば短絡先の候補となる機器の動作信号に変化があったタイミングで、電圧値に変化があった場合に、その動作信号の変化があった機器を短絡先となる機器と特定してもよい。
【0026】
復帰指示部92は、禁止部91による電圧信号の送信禁止に優先して、灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号をレベリングアクチュエータ100に送信するよう指示するものである。復帰指示部92の指示信号は電圧算出部30に入力される。これにより、電圧算出部30は、光軸を基準位置に復帰させる電圧値を算出し、電圧信号生成部40は、算出された電圧値に応じた電圧信号をレベリングアクチュエータ100に送信することとなる。
【0027】
ここで、この復帰指示部92は、特定部81により特定された短絡先となる機器が、動作検出部70に入力された動作信号に基づいて、非動作状態であると判断したときに、電圧信号の送信を指示する。これにより、短絡先となる機器が重要な動作中には光軸を基準位置とするための電圧信号が送信されず、短絡先となる機器の実行中の動作を適切に実行し続けることができなくなる可能性の軽減を図っている。
【0028】
さらに、出力可否判定部90は、判断部(判断手段)93を備えることが好ましい。判断部93は、灯具の光軸を基準位置まで動作させるために電圧信号を送信した場合に短絡先となる機器に所定の機能阻害及び破損の少なくとも一方の事象が発生するかを判断するものである。
【0029】
ここで、所定の機能阻害とは、非動作状態である機器に予め定められた生じてはいけない動作が発生することをいい、例えば、走行時に勝手にハイビームが点灯してしまう事態が挙げられる。例えば判断部93は、短絡先となる機器がハイビームであって、ハイビームが所定電流値以上の電流で点灯する場合において、電圧信号の最大電流値が所定電流値未満であることを確認すると、所定の機能阻害(ハイビーム点灯)が発生しないと判断する。逆に、判断部93は、電圧信号の最大電流値が所定電流以上であることを確認すると、所定の機能阻害(ハイビーム点灯)が発生すると判断する。
【0030】
また、破損については以下のように判断する。例えば判断部93は、短絡先となる機器が12V系の機器であって、電圧信号が5V程度である場合には短絡先となる機器に破損が生じないと判断する。一方、判断部93は、短絡先となる機器が5V系の機器であって、電圧信号が12V程度である場合には短絡先となる機器に破損が発生すると判断する。
【0031】
光軸調整装置1が上記のような判断部93を備える場合、復帰指示部92は、所定の機能阻害及び破損の少なくとも一方の事象が発生しない場合に、光軸を基準位置まで戻すべく電圧信号の送信を指示することとなる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る光軸調整方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず電圧検出部50がアナログ電圧信号線Lにおける電圧値の検出を開始すると共に、動作検出部70が動作信号の入力を開始する(S1)。
【0033】
次に、傾斜角算出部10は、入力された傾斜角信号に基づいて車両の傾斜角を算出する(S2)。次に、光軸角算出部20は、ステップS2において算出された傾斜角に基づいて目標となる光軸角を算出する(S3)。次いで、電圧算出部30は、ステップS3において算出された光軸角に調整するための電圧信号の電圧値を算出する(S4)。
【0034】
その後、電圧信号生成部40は、ステップS4において算出された電圧値を有する電圧信号を生成してレベリングアクチュエータ100に送信する(S5)。電圧比較部60は、ステップS1において検出開始されたアナログ電圧信号線Lにおける実際の電圧値と、ステップS4において算出された電圧値とを比較する(S6)。
【0035】
次いで、短絡判定部80は、ステップS6の比較の結果、両者の電圧値の差分が所定値以内であるか判断する(S7)。両者の電圧値の差分が所定値以内に収まる場合(S7:YES)、処理はステップS2に移行する。
【0036】
一方、両者の電圧値の差分が所定値以内に収まらない場合(S7:NO)、すなわち両者の差分が所定値を超える場合、短絡判定部80は、アナログ電圧信号線Lに短絡が発生したと判定し(S8)、禁止部91は、車両の傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する(S9)。
【0037】
その後、特定部81は、短絡先となる機器を特定する処理を実行する(S10)。この処理において特定部81は、ステップS1において検出等が開始されたアナログ電圧信号線Lの電圧値及び動作信号に基づいて、短絡先となる機器を特定する処理を実行する。
【0038】
次いで、特定部81は、短絡先となる機器を特定できたかを判断する(S11)。特定部81が短絡先となる機器を特定できなかった場合(S11:NO)、
図2に示す処理は終了する。この場合、光軸調整装置1は電圧信号の送信が禁止されたままの状態となる。
【0039】
一方、特定部81が短絡先となる機器を特定した場合(S11:YES)、出力可否判定部90は、動作検出部70により入力される動作信号に基づいて、短絡先となる機器が非動作状態であるかを判断する(S12)。短絡先となる機器が非動作状態でない場合(S12:NO)、短絡先となる機器が非動作状態となるまで、この処理が繰り返し実行される。
【0040】
短絡先となる機器が非動作状態である場合(S12:YES)、すなわち、短絡先となる機器が動作中でない場合、判断部93は、光軸を基準位置に復帰させる電圧信号を送信した場合に、短絡先となる機器に機能阻害又は破損が生じるかを判断する(S13)。判断部93により機能阻害又は破損が生じると判断された場合(S13:YES)、走行の安全性等又は製品保護の観点から、復帰指示部92は光軸の基準位置への復帰指示を行うことなく
図2に示す処理は終了する。
【0041】
判断部93により機能阻害及び破損が生じないと判断された場合(S13:NO)、復帰指示部92は光軸を基準位置へ復帰させるべく電圧信号の送信を指示する(S14)。以上より、動作中の短絡先となる機器に対して電圧信号を送信することなく、また機能阻害や破損についても防止が図られたうえで、光軸を基準位置に復帰させることとなる。
【0042】
このようにして、本実施形態に係る光軸調整装置1及び光軸調整方法によれば、算出された電圧信号の電圧値と、検出されたアナログ電圧信号線Lの実際の電圧値との差分が所定値以内に収まらない場合、短絡発生であると判断して傾斜角に応じた電圧信号の送信を禁止する。この禁止状態において、特定部81は、検出されたアナログ電圧信号線Lの電圧値と、他の機器の動作状態を示す動作信号とに基づいて短絡先となる機器を特定する。このため、光軸調整装置1から電圧信号を送信した場合にどの機器に影響を及ぼすのかを特定することができる。また、短絡先となる機器が非動作状態において、復帰指示部92が灯具の光軸を基準位置とするための電圧信号の送信を指示する。このため、短絡先となる機器が動作すべき動作を実行している最中に当該機器に電圧信号が入力されてしまうことがなく、短絡先となる機器の実行中の動作が適切に実行できなくなる可能性を低減させることとなる。従って、光軸が上向き又は下向きのまま停止してしまう事態の改善を図ると共に、短絡先となる機器の実行中の動作が適切に実行できなくなる可能性を低減させることができる。
【0043】
また、短絡先となる機器に所定の機能阻害及び破損の少なくとも一方の事象が発生するかを判断し、事象が発生しないと判断された場合に、光軸を基準位置まで動作させるべく電圧信号の送信を指示する。このため、短絡先となる機器が非動作状態であっても、短絡先となる機器に生じてはいけない機能阻害や破損が生じる場合には、電圧信号が送信されることなく、最終的に車両走行に支障が生じてしまう事態等を防止することができる。
【0044】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0045】
例えば本実施形態に係る光軸調整装置1において、光軸調整される灯具の短絡先の候補となる機器は、同じヘッドランプ内の機器を想定したが特にこれに限られず、配線の状態によってはヘッドランプ外の機器であってもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る光軸調整装置1において判断部93は、機能阻害と破損との双方を判断しているが、特にこれに限らず、いずれか一方のみを判断するものであってもよい。例えば、短絡先の候補となる機器の全てについて機能阻害があり得ない場合には破損のみを判断してもよいし、短絡先の候補となる機器の全てについて電圧の関係上破損があり得ない場合には機能阻害のみを判断してもよい。
【0047】
さらに、本実施形態に係る光軸調整装置1は、イグニッションスイッチがオフされたタイミングで、短絡先となる機器が非動作状態となったと判断して、光軸を基準位置に復帰させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :光軸調整装置
10 :傾斜角算出部
20 :光軸角算出部
30 :電圧算出部(電圧算出手段)
40 :電圧信号生成部
50 :電圧検出部(電圧検出手段)
60 :電圧比較部
70 :動作検出部(信号入力手段)
80 :短絡判定部(短絡判定手段)
81 :特定部(特定手段)
90 :出力可否判定部
91 :禁止部(禁止手段)
92 :復帰指示部(復帰指示手段)
93 :判断部(判断手段)
100 :レベリングアクチュエータ(アクチュエータ)
L :アナログ電圧信号線(導電路)