(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009713
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01R15/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111445
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】南 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 博之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和輝
(72)【発明者】
【氏名】吉原 智朗
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】被測定導体の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、帰還コイルをシンプルな配線で接続することが可能な電流検出装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る電流検出装置10は、環状の磁気コア13と、直列接続されている複数の第1コイルLaを備える第1コイル群14と、直列接続されている複数の第2コイルLbを備える第2コイル群15と、検出部12と、を備える。第1コイル群14と第2コイル群15とは、第1ノード21と第2ノード22との間で並列接続されており、複数の第1コイルLaの個数と複数の第2コイルの個数Lbは同じであり、複数の第1コイルLaのうち第1ノード21からの順番がi番目(iは整数)の第1コイルLaと、複数の第2コイルLbのうち第1ノード21からの順番がi番目の第2コイルLbとは、対向する位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の電流が流れる被測定導体の周囲を囲むように配置可能な環状の磁気コアと、
前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第1コイルを備える第1コイル群と、
前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第2コイルを備える第2コイル群と、
前記第1コイル群に流れる電流及び前記第2コイル群に流れる電流の双方の電流を検出する検出部と、
を備え、
前記第1コイル群と前記第2コイル群とは、第1ノードと第2ノードとの間で並列接続されており、
前記複数の第1コイルの個数と前記複数の第2コイルの個数は同じであり、
前記複数の第1コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目(iは整数)の第1コイルと、前記複数の第2コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目の第2コイルとは、対向する位置に配置されている、電流検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記第1コイル群に流れる電流及び前記第2コイル群に流れる電流の双方の電流が流れる抵抗をさらに備え、
前記検出部は、前記抵抗の両端の電圧を検出する、電流検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記磁気コアは、円環状の形状、断面が楕円形の環状の形状及び断面が多角形の環状の形状のいずれかの形状である、電流検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記第1コイル群及び前記第2コイル群を収容するシールドをさらに備える、電流検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電流検出装置において、
隣接する前記第1コイルの間及び隣接する前記第2コイルの間に設置された複数のスペーサをさらに備える、電流検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記検出部は、前記第1コイル群に流れる電流と前記第2コイル群に流れる電流とを比較して、前記測定対象の電流の位置を推定する、電流検出装置。
【請求項7】
測定対象の電流が流れる被測定導体の周囲を囲むように配置可能な環状の磁気コアと、
前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第1コイルを備える第1コイル群と、
前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第2コイルを備える第2コイル群と、
前記第1コイル群に流れる電流が流れる第1抵抗と、
前記第2コイル群に流れる電流が流れる第2抵抗と、
前記第1抵抗の両端の電圧及び前記第2抵抗の両端の電圧を検出する検出部と、
を備え、
前記第1コイル群と前記第2コイル群とは、第1ノードと第2ノードとの間で並列接続されており、
前記複数の第1コイルの個数と前記複数の第2コイルの個数は同じであり、
前記複数の第1コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目(iは整数)の第1コイルと、前記複数の第2コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目の第2コイルとは、対向する位置に配置されている、電流検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電流検出装置において、
前記検出部は、前記第1コイル群に流れる電流と前記第2コイル群に流れる電流とを比較して、前記測定対象の電流の位置を推定する、電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象の電流が流れる被測定導体の周囲を囲む環状の磁気コアと、磁気コアを巻くように配置された帰還コイルとを備える電流検出装置が知られている。
【0003】
このような電流検出装置は、被測定導体に電流が流れると磁気コアに磁束が発生し、この磁束を打ち消すように帰還コイルに電流が流れる。電流検出装置は、この帰還コイルに流れる電流を検出することによって、被測定導体に流れる電流を検出することができる。
【0004】
上述のような電流検出装置は、通常、磁気コアの中心を被測定導体が通っていることを想定しているが、被測定導体の位置が磁気コアの中心からずれる場合がある。被測定導体の位置が磁気コアの中心からずれると、被測定導体に流れている電流が同じであっても、ばらついた電流値を検出してしまう場合がある。
【0005】
例えば、磁気コアの一部のみに帰還コイルが配置されていると、被測定導体の位置が帰還コイルに近いときは電流値を大きく検出してしまい、被測定導体の位置が帰還コイルから遠いときは電流値を小さく検出してしまう。
【0006】
このような電流測定値のばらつきを改善するため、磁気コアの円周方向全体に亘って帰還コイルを均等に配置する構成が知られている。こうすると、被測定導体が中心からずれた場合、被測定導体が近づいた帰還コイルに発生する磁束は大きくなるが、それと対向した位置にある帰還コイルに発生する磁束は小さくなり、全体として平均化されるため、電流測定値のばらつきを低減することができる。
【0007】
しかしながら、磁気コアの円周方向全体に亘って帰還コイルを均等に配置しても、対向する位置に配置されている帰還コイルの負荷の大きさが異なると、被測定導体に流れる電流が高周波電流である場合は、負荷の影響が無視できなくなるため電流測定値がばらついてしまう。帰還コイルの負荷には、浮遊容量、直流抵抗、インダクタンスなどがある。
【0008】
これに対応するため、磁気コアの円周方向全体に亘って帰還コイルを均等に配置し、且つ、対向する位置に配置されている帰還コイルの負荷の大きさをできるだけ揃えた電流検出装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されている電流検出装置は、直列に接続された単位巻線(帰還コイル)が磁気コアの円周方向全体に亘って均等に配置されている。また、対向する位置に配置されている帰還コイルの負荷が同等になるように、電気回路的に同等の位置にある帰還コイル同士が対向した位置に配置されるように接続されている。
【0011】
特許文献1に開示されている電流検出装置は、全ての帰還コイルが直列に接続されているため、対向する位置に配置されている帰還コイルの負荷を同等にすることを実現するに際し、帰還コイルを接続する配線が複雑になっている。
【0012】
そこで、本開示は、被測定導体の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、帰還コイルをシンプルな配線で接続することが可能な電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
幾つかの実施形態に係る電流検出装置は、測定対象の電流が流れる被測定導体の周囲を囲むように配置可能な環状の磁気コアと、前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第1コイルを備える第1コイル群と、前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第2コイルを備える第2コイル群と、前記第1コイル群に流れる電流及び前記第2コイル群に流れる電流の双方の電流を検出する検出部と、を備え、前記第1コイル群と前記第2コイル群とは、第1ノードと第2ノードとの間で並列接続されており、前記複数の第1コイルの個数と前記複数の第2コイルの個数は同じであり、前記複数の第1コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目(iは整数)の第1コイルと、前記複数の第2コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目の第2コイルとは、対向する位置に配置されている。このような電流検出装置によれば、被測定導体の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、帰還コイルをシンプルな配線で接続することが可能である。
【0014】
一実施形態に係る電流検出装置において、前記第1コイル群に流れる電流及び前記第2コイル群に流れる電流の双方の電流が流れる抵抗をさらに備え、前記検出部は、前記抵抗の両端の電圧を検出してもよい。これにより、シンプルな構成で第1コイル群に流れる電流及び第2コイル群に流れる電流の双方の電流を検出することができる。
【0015】
一実施形態に係る電流検出装置において、前記磁気コアは、円環状の形状、断面が楕円形の環状の形状及び断面が多角形の環状の形状のいずれかの形状であってもよい。このように、磁気コアは、様々な形状とすることができる。
【0016】
一実施形態に係る電流検出装置において、前記第1コイル群及び前記第2コイル群を収容するシールドをさらに備えていてもよい。これにより、浮遊容量の値を安定させることができる。
【0017】
一実施形態に係る電流検出装置において、隣接する前記第1コイルの間及び隣接する前記第2コイルの間に設置された複数のスペーサをさらに備えていてもよい。これにより、隣接する第1コイルの間隔及び隣接する第2コイルの間隔を一定の距離に保つことができる。
【0018】
幾つかの実施形態に係る電流検出装置は、測定対象の電流が流れる被測定導体の周囲を囲むように配置可能な環状の磁気コアと、前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第1コイルを備える第1コイル群と、前記磁気コアを巻くように配置され直列接続されている複数の第2コイルを備える第2コイル群と、前記第1コイル群に流れる電流が流れる第1抵抗と、前記第2コイル群に流れる電流が流れる第2抵抗と、前記第1抵抗の両端の電圧及び前記第2抵抗の両端の電圧を検出する検出部と、を備え、前記第1コイル群と前記第2コイル群とは、第1ノードと第2ノードとの間で並列接続されており、前記複数の第1コイルの個数と前記複数の第2コイルの個数は同じであり、前記複数の第1コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目(iは整数)の第1コイルと、前記複数の第2コイルのうち前記第1ノードからの順番がi番目の第2コイルとは、対向する位置に配置されている。このような電流検出装置によれば、被測定導体の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、帰還コイルをシンプルな配線で接続することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、被測定導体の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、帰還コイルをシンプルな配線で接続することが可能な電流検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る電流検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る電流検出装置の回路構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す回路構成に浮遊容量が生じているようすを示す図である。
【
図4】第1の変形例に係る電流検出装置の回路構成を示す図である。
【
図5】第2の変形例に係る電流検出装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る電流検出装置10の概略構成を示す図である。電流検出装置10は、抵抗11と、検出部12と、磁気コア13と、複数の第1コイルLa1~La4と、複数の第2コイルLb1~Lb4とを備える。
【0023】
第1コイルLa1~La4については、特に区別する必要がない場合、単に「第1コイルLa」と称して説明する場合がある。第2コイルLb1~Lb4については、特に区別する必要がない場合、単に「第2コイルLb」と称して説明する場合がある。
【0024】
電流検出装置10は、被測定導体30に流れる電流を検出する。被測定導体30は、測定対象の電流が流れる直線状の導体である。
図1に示す例においては、被測定導体30には、Z軸の正方向から負方向に向かって測定対象の電流が流れている。
【0025】
図2は、
図1に示す電流検出装置10の回路構成を示す図である。なお、
図2においては、磁気コア13の図示を省略している。
図3は、
図2に示す電流検出装置10の回路構成において、第1コイルLa1~La4に生じる浮遊容量及び第2コイルLb1~Lb4に生じる浮遊容量も合わせて示した図である。
【0026】
図1~
図3を参照して、電流検出装置10の構成及び機能について説明する。
【0027】
磁気コア13は、被測定導体30の周囲を囲むように配置可能である。例えば、被測定導体30を磁気コア13の中心付近に通すと、磁気コア13は、被測定導体30の周囲を囲むことができる。
【0028】
図1に示す例においては、磁気コア13は、円環状の形状である。しかしながら、磁気コア13の形状は、円環状の形状に限定されず、他の環状の形状であってよい。例えば、磁気コア13は、断面が楕円状の環状の形状、断面が多角形の環状の形状などであってよい。
【0029】
図1に示すように、第1コイルLa1~La4は、それぞれ、磁気コア13を巻くように配置されている。第1コイルLa1~La4は、直列接続されている。以後、
図2に示すように、第1コイルLa1~La4が直列接続した構成を「第1コイル群14」と称して説明する場合がある。第1コイルLa1~La4は、帰還コイルとして機能する。
【0030】
なお、第1コイル群14が4つの第1コイルLa1~La4を含む構成を示しているが、第1コイル群14が備える第1コイルLaの個数は4個に限定されない。第1コイル群14は、2~3個又は5個以上の第1コイルLaを備えていてもよい。本実施形態においては、第1コイル群14が4つの第1コイルLa1~La4を含む構成である場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図1に示すように、第2コイルLb1~Lb4は、それぞれ、磁気コア13を巻くように配置されている。第2コイルLb1~Lb4は、直列接続されている。以後、
図2に示すように、第2コイルLb1~Lb4が直列接続した構成を「第2コイル群15」と称して説明する場合がある。第2コイルLb1~Lb4は、帰還コイルとして機能する。
【0032】
なお、第2コイル群15が4つの第2コイルLb1~Lb4を含む構成を示しているが、第2コイル群15が備える第2コイルLbの個数は4個に限定されない。第2コイル群15は、2~3個又は5個以上の第2コイルLbを備えていてもよい。本実施形態においては、第2コイル群15が4つの第2コイルLb1~Lb4を含む構成である場合を例に挙げて説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すように、第1コイル群14と第2コイル群15とは、第1ノード21と第2ノード22との間で並列接続されている。また、第1コイル群14が備える第1コイルLaの個数と第2コイル群15が備える第2コイルLbの個数とは同じである。本実施形態においては、第1コイル群14は4個の第1コイルLa1~La4を備え、第2コイル群15は4個の第2コイルLb1~Lb4を備える。
【0034】
図1に示すように、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4は、磁気コア13に沿って等間隔に配置されている。本実施形態においては、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4が合わせて8個であるため、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4は、磁気コア13に沿って45度ごとに配置されている。
【0035】
図1に示すように、第1コイル群14の第1コイルLa1~La4のうち第1ノード21からの順番がi番目(iは整数)の第1コイルLaと、第2コイル群15の第2コイルLb1~Lb4のうち第1ノード21からの順番がi番目の第2コイルLbとは、対向する位置に配置されている。
【0036】
例えば、第1コイルLa1は、第1ノード21からの順番が1番目である。第2コイルLb1は、第1ノード21からの順番が1番目である。
図1を参照すると、第1コイルLa1と第2コイルLb1とは対向する位置に配置されている。対向する位置に配置されるとは、磁気コア13に沿って180度の位置に配置されるということを意味する。
【0037】
また、第1コイルLa2は、第1ノード21からの順番が2番目である。第2コイルLb2は、第1ノード21からの順番が2番目である。
図1を参照すると、第1コイルLa2と第2コイルLb2とは対向する位置に配置されている。第1コイルLa3及び第2コイルLb3も、同様に対向する位置に配置されている。第1コイルLa4及び第2コイルLb4も、同様に対向する位置に配置されている。
【0038】
また、第1コイル群14の第1コイルLa1~La4のうち第1ノード21からの順番がi番目の第1コイルLaと、第2コイル群15の第2コイルLb1~Lb4のうち第1ノード21からの順番がi番目の第2コイルLbとは、インダクタの特性が等しい。
【0039】
例えば、第1コイルLa1は、第1ノード21からの順番が1番目である。第2コイルLb1は、第1ノード21からの順番が1番目である。したがって、第1コイルLa1及び第2コイルLb1は、インダクタの特性が等しい。同様に、第1コイルLa2及び第2コイルLb2は、インダクタの特性が等しい。また、第1コイルLa3及び第2コイルLb3は、インダクタの特性が等しい。また、第1コイルLa4及び第2コイルLb4は、インダクタの特性が等しい。
【0040】
好適には、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4は、全てインダクタの特性が等しくてよい。
【0041】
このような配置とすることで、電気的な負荷の見え方が等しい第1コイルLaと第2コイルLb4とを、対向する位置に配置することができる。電気的な負荷の見え方が等しいことについて、
図3を参照して説明する。
【0042】
図3は、第1コイルLa1~La4に生じる浮遊容量及び第2コイルLb1~Lb4に生じる浮遊容量も合わせて示した図である。
図3において、浮遊容量Cp1は、第1コイルLa1~La4又は第2コイルLb1~Lb4とグランドとの間に生じる浮遊容量である。また、浮遊容量Cp2は、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4のそれぞれにおいて、端子間に生じる浮遊容量である。
【0043】
図3を参照すると、第1コイル群14の第1コイルLa1~La4のうち第1ノード21からの順番がi番目の第1コイルLaと、第2コイル群15の第2コイルLb1~Lb4のうち第1ノード21からの順番がi番目の第2コイルLbとは、浮遊容量Cp1及び浮遊容量Cp2を考慮しても、電気的な負荷の見え方が等しい。
【0044】
例えば、第1コイルLa1は、第1ノード21からの順番が1番目である。第2コイルLb1は、第1ノード21からの順番が1番目である。
図3を参照すると、第1コイルLa1から見る電気的な負荷の見え方と、第2コイルLb1から見る電気的な負荷の見え方は等しい。
【0045】
同様に、第1コイルLa2から見る電気的な負荷の見え方と、第2コイルLb2から見る電気的な負荷の見え方は等しい。また、第1コイルLa3から見る電気的な負荷の見え方と、第2コイルLb3から見る電気的な負荷の見え方は等しい。また、第1コイルLa4から見る電気的な負荷の見え方と、第2コイルLb4から見る電気的な負荷の見え方は等しい。
【0046】
このように、電流検出装置10は、浮遊容量を考慮しても電気的な負荷の見え方が等しい第1コイルLaと第2コイルLbとが対向する位置に配置されている。これにより、電流検出装置1は、被測定導体30に流れている電流が高周波の電流であっても、被測定導体30の位置が磁気コア13の中心からずれた場合に、小さいばらつきで被測定導体30に流れる電流を検出することができる。
【0047】
抵抗11は、第1ノード21と第2ノード22の間に接続されている。抵抗11には、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流が流れる。
【0048】
被測定導体30に電流が流れると、被測定導体30の周囲に磁界が発生する。被測定導体30の周囲に磁界が発生すると、磁気コア13の内部に磁束が発生する。
【0049】
磁気コア13の内部に磁束が発生すると、当該磁束を打ち消すように、第1コイル群14及び第2コイル群15に電流が流れる。第1コイル群14及び第2コイル群15に流れる電流は、抵抗11に流れる。
【0050】
第1コイル群14及び第2コイル群15に流れる電流は、磁気コア13の内部に発生する磁束に比例する。また、磁気コア13の内部に発生する磁束は、被測定導体30に流れる電流に比例する。したがって、抵抗11に流れる電流は、被測定導体30に流れる電流に比例する。
【0051】
被測定導体30が磁気コア13の中心にある場合、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流は等しい。
【0052】
被測定導体30の位置が磁気コア13の中心からずれている場合について考える。例えば、被測定導体30が第1コイルLa2の方に近づいているとする。この場合、第1コイル群14に流れる電流は大きくなり、第2コイル群15に流れる電流は小さくなる。抵抗11には、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流が流れるため、電流の大きくなった分と小さくなった分とが相殺し、被測定導体30が磁気コア13の中心にある場合とほぼ同等の電流が抵抗11に流れる。
【0053】
検出部12は、抵抗11の両端の電圧を検出する。抵抗11の両端の電圧は抵抗11に流れる電流に比例するため、検出部12は、抵抗11の両端の電圧を検出することで、被測定導体30に流れる電流を検出することができる。
【0054】
検出部12は、少なくとも電圧センサを備える。検出部12は、電圧を増幅する増幅器をさらに備えていてもよい。検出部12は、アナログ信号として検出した電圧をデジタル信号に変換するADコンバータをさらに備えてもよい。この場合、検出部12は、抵抗11の両端の電圧をデジタル信号として検出する。
【0055】
電流検出装置10は、第1コイル群14及び第2コイル群15を収容するシールドをさらに備えていてもよい。シールドは、例えば、導電性を有する箱形の形状であってよい。シールドをグランドに接続することにより、
図3に示す浮遊容量Cp1の値を安定させることができる。
【0056】
電流検出装置10は、隣接する第1コイルLaの間及び隣接する第2コイルLbの間に設置された複数のスペーサをさらに備えていてもよい。スペーサを設置することにより、隣接する第1コイルLaの間隔及び隣接する第2コイルLbの間隔を一定の距離に保つことができる。
【0057】
このように、電流検出装置10は、第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4が磁気コア13に沿って均等に配置されているため、被測定導体30の位置が中心からずれても電流測定値のばらつきを低減することができる。また、電流検出装置10は、電気的な負荷の見え方が等しい第1コイルLaと第2コイルLbとが対向する位置に配置されているため、被測定導体30に高周波の電流が流れている場合であっても、電流測定値のばらつきを低減することができる。
【0058】
また、電流検出装置10は、第1コイル群14と第2コイル群15とが並列接続される構成となっているため、電気的な負荷の見え方が等しい第1コイルLaと第2コイルLbとが対向する位置に配置されるような構成としても、シンプルな配線で第1コイルLa1~La4及び第2コイルLb1~Lb4を接続することができる。
【0059】
(残留磁束低減の効果)
本実施形態に係る電流検出装置10は、磁気コア13内に発生する残留磁束を低減することができるという効果も有する。以下、残留磁束を低減することができる効果について説明する。
【0060】
最初に、残留磁束を発生させてしまう構成として、磁気コア13に沿ってコイルが均等に配置されており、均等に配置されているコイルが全て直列接続されている構成の場合を考える。
【0061】
このような構成であっても、被測定導体30が磁気コア13の中心に位置していれば、被測定導体30に流れる電流によって磁気コア13に生じる磁束を、均等に配置されているコイルに電流が流れることによって打ち消すことができる。
【0062】
被測定導体30が磁気コア13の中心からずれている場合、被測定導体30が近づいた磁気コア13の位置には強い磁束が発生し、被測定導体30が遠ざかった磁気コア13の位置には弱い磁束が発生する。
【0063】
このとき、磁気コア13に沿って均等に配置されているコイルには、磁気コア13に生じる磁束を打ち消すように電流が流れるが、全てのコイルが直列接続されているため、これらのコイルは平均的な磁界を発生させる。すなわち、磁気コア13に沿って均等に配置されているコイルが発生させる磁界は、被測定導体30が近づいた磁気コア13の位置においては、磁束を打ち消すには弱すぎる磁界であり、被測定導体30が遠ざかった磁気コア13の位置においては、磁束を打ち消すには強すぎる磁界である。
【0064】
その結果、被測定導体30が近づいた磁気コア13の位置と、被測定導体30が遠ざかった磁気コア13の位置との双方で、残留磁束が発生してしまう。
【0065】
また、残留磁束が大きいと、磁気コア13が磁気飽和に達してしまい、被測定導体30に流れる電流の検出感度が低下してしまう場合がある。磁気飽和に達することを防ぐため、磁気コア13を大型化することも考えられるが、そうすると磁気コア13のコストが高くなってしまう。
【0066】
一方、本実施形態に係る電流検出装置10は、第1コイル群14と第2コイル群15とが並列接続されている構成である。この場合、例えば、被測定導体30が第1コイル群14の方に近づくと、第1コイル群14が配置されている位置において磁気コア13に生じる磁束は強くなるが、第1コイル群14には、この強い磁束を打ち消すための大きい電流が流れる。また、第2コイル群15が配置されている位置において磁気コア13に生じる磁束は弱くなるが、第2コイル群15には、この弱い磁束を打ち消すための小さい電流が流れる。
【0067】
このように、電流検出装置10は、第1コイル群14と第2コイル群15とで、異なる大きさの電流を独立して流すことができるため、残留磁束を低減することができる。
【0068】
また、残留磁束を低減することができるため、電流検出装置10は、磁気飽和を防ぐために磁気コア13を大型化する必要がない。そのため、電流検出装置10は、磁気コア13を低コスト化することができる。
【0069】
以上のような一実施形態に係る電流検出装置10によれば、被測定導体30の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができ、且つ、第1コイルLa及び第2コイルLbをシンプルな配線で接続することできる。より具体的には、電流検出装置10は、第1コイル群14と第2コイル群15とを備え、第1コイル群14の複数の第1コイルLaのうち第1ノード21からの順番がi番目の第1コイルLaと、第2コイル群15の複数の第2コイルLbのうち第1ノード21からの順番がi番目の第2コイルLbとが、対向する位置に配置されているため、被測定導体30の位置に応じた電流測定値のばらつきを低減することができる。また、第1コイル群14と第2コイル群15とが、第1ノード21と第2ノード22との間で並列接続されているため、第1コイルLa及び第2コイルLbをシンプルな配線で接続することできる。
【0070】
(第1の変形例)
図1に示す電流検出装置10は、第1ノード21と第2ノード22との間に抵抗11を備えるが、抵抗11の位置及び個数はこれに限らない。
図4に、抵抗11の位置及び個数を変えた第1の変形例に係る電流検出装置10aを示す。
【0071】
第1の変形例に係る電流検出装置10aについては、
図1に示した電流検出装置10との相違点について主に説明し、
図1に示した電流検出装置10と共通及び類似する点については説明を省略する。
【0072】
第1の変形例に係る電流検出装置10aは、第1コイル群14において、第1コイルLa2と第1コイルLa3との間に、第1抵抗16aを備える。また、第1の変形例に係る電流検出装置10aは、第2コイル群15において、第2コイルLb2と第2コイルLb3との間に、第2抵抗16bを備える。
【0073】
なお、第1抵抗16aが第1コイルLa2と第1コイルLa3との間に接続されているのは一例であり、第1抵抗16aは、他の隣接する第1コイルLaの間に接続されていてもよい。また、第2抵抗16bが第2コイルLb2と第2コイルLb3との間に接続されているのは一例であり、第2抵抗16bは、他の隣接する第2コイルLbの間に接続されていてもよい。
【0074】
第1抵抗16aと第2抵抗16bとは、同じ抵抗値であってもよいし、異なる抵抗値であってもよい。第1抵抗16aと第2抵抗16bとは、異なる抵抗値としてもよいため、それぞれ最適な抵抗値に調整することができる。
【0075】
第1抵抗16aには、第1コイル群14に流れる電流が流れる。第2抵抗16bには、第2コイル群15に流れる電流が流れる。
【0076】
検出部12は、第1抵抗16aの両端の電圧及び第2抵抗16bの両端の電圧を検出する。検出部12は、第1抵抗16aの両端の電圧及び第2抵抗16bの両端の電圧を加算した値に基づいて、被測定導体30に流れる電流を検出することができる。
【0077】
また、検出部12は、第1抵抗16aの両端の電圧に基づいて、第1コイル群14に流れる電流を検出することができる。検出部12は、第2抵抗16bの両端の電圧に基づいて、第2コイル群15に流れる電流を検出することができる。検出部12は、第1コイル群14に流れる電流と、第2コイル群15に流れる電流とを比較することによって、被測定導体30の位置を推定することができる。例えば、被測定導体30が中心にあるときは、第1コイル群14と第2コイル群15とに均等に電流が流れる。また、例えば、被測定導体30が第1コイル群14に近いときは、第1コイル群14に大きい電流が流れ、第2コイル群15に小さい電流が流れる。また、例えば、被測定導体30が第2コイル群15に近いときは、第2コイル群15に大きい電流が流れ、第1コイル群14に小さい電流が流れる。このように、検出部12は、第1コイル群14に流れる電流と、第2コイル群15に流れる電流とを比較することによって、被測定導体30の位置を推定することができる。
【0078】
例えば、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流とが同等の電流である場合、検出部12は、被測定導体30が磁気コア13の中心付近に位置すると推定する。また、第1コイル群14に流れる電流が第2コイル群15に流れる電流より大きい場合、検出部12は、被測定導体30が第1コイル群14に近づいていると推定する。また、第2コイル群15に流れる電流が第1コイル群14に流れる電流より大きい場合、検出部12は、被測定導体30が第2コイル群15に近づいていると推定する。
【0079】
(第2の変形例)
図5に、抵抗11の位置を変えた第2の変形例に係る電流検出装置10bを示す。第2の変形例に係る電流検出装置10bについては、
図1に示した電流検出装置10との相違点について主に説明し、
図1に示した電流検出装置10と共通及び類似する点については説明を省略する。
【0080】
第2の変形例に係る電流検出装置10bは、第1コイルLa2と第2コイルLb2とを接続したノードと、第1コイルLa3と第2コイルLb3とを接続したノードとの間に、抵抗17を備える。
【0081】
なお、なお、
図5に示した抵抗17の位置は一例であり、抵抗17は、第1コイルLa1と第2コイルLb1とを接続したノードと、第1コイルLa2と第2コイルLb2とを接続したノードとの間に位置してもよいし、第1コイルLa3と第2コイルLb3とを接続したノードと、第1コイルLa4と第2コイルLb4とを接続したノードとの間に位置してもよい。
【0082】
検出部12は、抵抗17の両端の電圧を検出する。検出部12は、抵抗17の両端の電圧を検出することで、被測定導体30に流れる電流を検出することができる。
【0083】
このように、第2の変形例に係る電流検出装置10bは、
図1に示した電流検出装置10とは異なる位置に抵抗17を備えているが、
図1に示した電流検出装置10と同様に、被測定導体30に流れる電流を検出することができる。
【0084】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0085】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0086】
例えば、上述した実施形態において、検出部12が、抵抗11の両端の電圧を検出することによって、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流を検出する場合を示したが、検出部12が、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流を検出する手段はこれに限定されない。検出部12は、任意の電流センサを用いて、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流を検出してよい。例えば、検出部12は、非接触の電流センサを用いて、第1コイル群14に流れる電流と第2コイル群15に流れる電流との双方の電流を検出してもよい。
【0087】
例えば、上述した実施形態において、第1コイル群14と第2コイル群15とが並列に接続されている構成を示したが、並列に接続されるコイル群は2つに限定されない。3つ以上のコイル群が並列に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10、10a、10b 電流検出装置
11 抵抗
12 検出部
13 磁気コア
14 第1コイル群
15 第2コイル群
16a 第1抵抗
16b 第2抵抗
17 抵抗
21 第1ノード
22 第2ノード
30 被測定導体
La1~La4 第1コイル
Lb1~Lb4 第2コイル
Cp1 浮遊容量
Cp2 浮遊容量