(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097131
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/921 20220101AFI20240710BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240710BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/112 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/1143 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/192 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/232 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/271 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/808 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/85 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/191 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/115 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/93 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/2122 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/2123 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/84 20220101ALI20240710BHJP
B01F 27/81 20220101ALI20240710BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20240710BHJP
B01F 101/21 20220101ALN20240710BHJP
B01F 101/06 20220101ALN20240710BHJP
【FI】
B01F27/921
B01F35/71
B01F35/53
B01F27/112
B01F27/1143
B01F27/192
B01F27/232
B01F27/271
B01F27/808
B01F27/85
B01F27/90
B01F27/191
B01F27/115
B01F27/93
B01F27/2122
B01F27/2123
B01F27/84
B01F27/81
B01F101:22
B01F101:21
B01F101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000392
(22)【出願日】2023-01-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 令和4年12月8日 集会名 国際粉体工業展東京2022の製品技術説明会 開催場所 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土井 尚俊
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037AA02
4G037DA27
4G037EA04
4G078AA01
4G078AA26
4G078AB09
4G078AB20
4G078BA05
4G078BA07
4G078BA09
4G078CA01
4G078CA08
4G078CA13
4G078DA01
4G078DA09
4G078DA16
4G078EA08
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】被処理物をホモジナイザへ安定して供給することができる機構を備えた攪拌装置を提供する。
【解決手段】攪拌装置は、被処理物を収容する攪拌槽1と、上下方向に延びる回転駆動軸2a、および、回転駆動軸2aに設けられた翼部2bを有し、回転駆動軸2aの回転に伴う翼部2bの回転により被処理物を攪拌する攪拌翼2と、回転駆動軸2aの下方側に配置され、同心状に配設されたステータ及びロータを有し、ロータの回転に伴うタービュランス効果により被処理物の吸い込み・押し出しを行うホモジナイザ3と、回転駆動軸2aの下端部に設けられ、回転駆動軸2aの回転に伴って回転し、被処理物をホモジナイザ3に向けて圧送する送り翼8とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する攪拌槽と、
上下方向に延びる回転駆動軸と、前記回転駆動軸に設けられた翼部とを有し、前記回転駆動軸の回転に伴う前記翼部の回転により前記被処理物を攪拌する攪拌翼と、
前記回転駆動軸の下方側に配置され、同心状に配設されたステータ及びロータを有し、前記ロータの回転に伴うタービュランス効果により前記被処理物の吸い込み・押し出しを行うホモジナイザと、
を備えた攪拌装置において、
前記回転駆動軸の下端部に、前記回転駆動軸の回転に伴って回転し、前記被処理物を前記ホモジナイザに向けて圧送する送り翼が設けられていることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記送り翼は、上方から下方側に向かって螺旋状に延びる翼部を有する請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記送り翼は、円周方向に所定間隔で配置された複数の翼部を有し、前記各翼部は、それぞれ、前記回転駆動軸の一方向への回転に対して、該回転方向の前方側に位置し、下端側から上端側に向かって、該回転方向の前方側に傾斜した傾斜状面に形成された第1側面と、前記回転駆動軸の他方向への回転に対して、該回転方向の前方側に位置し、下端側から上端側に向かって、該回転方向の前方側に傾斜した傾斜状面で形成された第2側面とを有する請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記送り翼の前記翼部の内周側に、上下方向に延びる軸状部材が所定の隙間を介して配置されている請求項2又は3に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記回転駆動軸の内部に同軸で挿通された原料供給管を更に備え、前記原料供給管の下端部は、前記回転駆動軸の下端部を貫通して下方に延び、前記軸状部材として、前記送り翼の前記翼部の内周側に配置される請求項4に記載の攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、電池材料、ファインケミカル、食品等の製造工程において、粘性の液体や粉体等の被処理物の混合、乳化、分散、脱泡等の処理に使用される攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、被処理物の混合、分散、乳化、脱泡等の処理を行うために、特許文献1、2に記載されているような攪拌装置が用いられている。これらの攪拌装置は、被処理物を収容する撹拌槽と、攪拌槽内の被処理物を攪拌する攪拌翼と、撹拌槽の下部に配置されたホモジナイザとを主要な要素として構成される。ホモジナイザは、同心状に配設された櫛歯状のステータとロータを有し、ロータの回転に伴うタービュランス効果により被処理物の吸い込み・押し出しを行い、その際の剪断作用により被処理物の混合、分散、乳化等を促進する。
【0003】
また、特許文献3~5には、ホモジナイザのロータ回転軸にインペラーやスクリュー等の回転翼を設け、ロータと伴に回転する回転翼により、被処理物をホモジナイザに向けて圧送する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―300280号公報
【特許文献2】特開2021-122784号公報
【特許文献3】特許第4888866号公報
【特許文献4】特開昭58-177128号公報
【特許文献5】実開平5-26138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被処理物の粘度が高くなると、ホモジナイザ自身の吸い込み作用だけでは、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が過小になり、処理効率の低下を来たすことがある。また、被処理物の粘度によっては、被処理物がホモジナイザに全く供給されなくなり、処理不能に陥ることがある。
【0006】
上記の事態に至ることを回避するため、特許文献3~5に記載されているような回転翼を設けて、被処理物をホモジナイザに圧送することが考える。しかし、特許文献3~5の送り翼は、ホモジナイザのロータ回転軸に設けられており、ホモジナイザ(ロータ)と同じ回転数(rpm)で高速回転するため(ホモジナイザの回転数は攪拌翼の回転数よりもかなり高い。)、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が、ホモジナイザの処理限界(ホモジナイザが単位時間当たりに吸い込み・押し出しすることができる被処理物の限界流量)を超えて過大になり、ホモジナイザの安定した吸い込み・押し出し作用が乱されて、被処理物に対して所要の剪断作用が与えられないことがある。また、高粘度の被処理物では、被処理物の流動が回転翼の高速回転に追いつかず、回転翼が空転状態になり、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が過小になり、あるいは、ホモジナイザに被処理物が供給されなくなることがある。
【0007】
本発明の課題は、被処理物をホモジナイザへ安定して供給することができる機構を備えた攪拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理物を収容する攪拌槽と、上下方向に延びる回転駆動軸と、前記回転駆動軸に設けられた翼部とを有し、前記回転駆動軸の回転に伴う前記翼部の回転により前記被処理物を攪拌する攪拌翼と、前記回転駆動軸の下方側に配置され、同心状に配設されたステータ及びロータを有し、前記ロータの回転に伴うタービュランス効果により前記被処理物の吸い込み・押し出しを行うホモジナイザと、を備えた攪拌装置において、前記回転駆動軸の下端部に、前記回転駆動軸の回転に伴って回転し、前記被処理物を前記ホモジナイザに向けて圧送する送り翼が設けられていることを特徴とする攪拌装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、攪拌翼の回転駆動軸の下端部に設けられた送り翼が、回転駆動軸の回転に伴って、回転駆動軸と同じ回転数で回転して、被処理物をホモジナイザに向けて圧送するので、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が過大又は過小にならず、被処理物をホモジナイザへ安定して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る攪拌装置の送り翼を側方から見た図である。
【
図3】第2の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。
【
図4A】第2の実施形態に係る攪拌装置の送り翼を上方から見た図である。
【
図4B】第2の実施形態に係る攪拌装置の送り翼を斜め下方から見た図である。
【
図4C】第2の実施形態に係る攪拌装置の送り翼を
図4Aにおけるb-b線の方向から見た一部断面図である。
【
図5】第3の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。
【
図6】攪拌翼の回転数(rpm)と、ホモジナイザへの被処理物の供給流量との関係を示す図である。
【
図7】ホモジナイザの回転数(rpm)と、ホモジナイザへの被処理物の供給流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。この実施形態の攪拌装置は、被処理物を収容する撹拌槽1と、攪拌槽1の内部に設けられた攪拌翼2およびホモジナイザ3とを主要な要素として構成される。
【0013】
撹拌槽1の底部と側部との間には循環パイプ4が配設されている。循環パイプ4の一部は、開閉可能な排出弁4aを介して排出管4bに接続されている。また、撹拌槽1の内部には、バッフル5が固定的に配置されている。
【0014】
撹拌翼2は、撹拌槽1の中心部に沿って上下方向に延び、その中心軸線X回りに回転可能な回転駆動軸2aと、回転駆動軸2aに設けられた翼部2bとで構成される。翼部2bは、回転駆動軸2aの中間部に取り付けられた第1翼2b1と、回転駆動軸2の下端部に取り付けられた第2翼2b2とを備えている。第2翼2b2は、回転駆動軸2の下端部の複数位置から外周方向に延び、さらに攪拌槽1の上部に向かって延びている。また、第2翼2b2には、攪拌槽1の内壁に付着した被処理物を掻き取るスクレーパ2b3が取り付けられている。回転駆動軸2aは、図示されていない駆動モータによって中心軸線X回りに回転駆動され、回転駆動軸2aの回転に伴って翼部2bが回転することにより、攪拌槽1内の被処理物が攪拌される。
【0015】
ホモジナイザ3は、回転駆動軸2aの下方側に配置され、周知のように、同心状に配設された櫛歯状のステータ及びロータを有し、ロータの回転に伴うタービュランス効果により被処理物の吸い込み・押し出しを行う。ロータは、図示されていない駆動モータにより、回転駆動軸2aの中心軸線Xと同軸の軸線回りに回転駆動される。
【0016】
この実施形態において、回転駆動軸2aは中空軸状に形成され、その内部に原料供給管7が回転駆動軸2aの中心軸線Xに沿って挿通されている。原料供給管7の上端部(図示省略)は、撹拌槽1の外部上方に配置されたホッパ等の原料投入部(図示省略)に連通し、原料供給管7の下端部7aは、回転駆動軸2aの下端部を貫通して下方に延び、ホモジナイザ3の中心部と所定の隙間を介して対向する。図示されていない原料投入部から原料供給管7に投入された原料(粉体、液体、これらの混合物等)は、原料供給管7の内部を下降して、下端部7aの下端からホモジナイザ3の中心部の直上に排出され、ホモジナイザ3(ロータ)の回転に伴うタービュランス効果により、ホモジナイザ3内に吸い込まれる。原料供給管7を経由した撹拌槽1内への原料投入は、原料を攪拌槽1内に初期投入する際や、攪拌槽1内で処理中の被処理物に原料を追加投入する際に行われる。原料供給管7は、回転駆動軸2aと伴に回転するものであってもよいし、回転しないものであってもよい。
【0017】
また、回転駆動軸2aの下端部に送り翼8が設けられている。
図2に拡大して示すように、この実施形態において、送り翼8は、回転駆動軸2aの下端部にネジ等の適宜の固定手段で取り付けられるリング状の取付部8aと、一端部8b1が取付部8aに固定され、一端部8b1から下方側の他端部8b2に向かって螺旋状に延びた翼部8bとを備えている。翼部8bは、金属製又は樹脂製の帯状部材を螺旋状に成形して形成され、上方側に向いた上面8b3と、下方側に向いた下面8b4とを有する。送り翼8を回転駆動軸2aの下端部に取付けた状態で、翼部8bは、回転駆動軸2aおよび取付部8aを貫通して下方側に延在した原料供給管7の下端部7aを、外周側から所定の隙間δ(下端部7aの外周と翼部8bの内周との間の隙間)を介して螺旋状に取り巻くようにして下方側に延び、他端部8b2が下端部7aの下端よりも若干上方側に位置する。回転駆動軸2aが上方から見て右回転方向(同図の矢印方向R)に回転すると、回転駆動軸2aの回転に伴って送り翼8が右回転方向Rに回転する。この送り翼8の回転により、攪拌槽1内の被処理物が翼部8bの下面8b4で押されて下方側に圧送される。
【0018】
攪拌槽1内での被処理物の処理は、攪拌翼2(回転駆動軸2a)とホモジナイザ3(ロータ)を回転駆動しながら行う。攪拌翼2の回転数(rpm)は、ホモジナイザ3の回転数(rpm)よりも、かなり低い回転数に設定される。攪拌翼2の回転により、攪拌槽1内の被処理物が攪拌される。同時に、回転駆動軸2aの下端部に設けられた送り翼8が攪拌翼2と同じ回転数で回転することにより、攪拌槽1内の被処理物が送り翼8の螺旋状の翼部8bで下方側に押されて、ホモジナイザ3の側に圧送される。送り翼8により下方側に圧送され、ホモジナイザ3の近傍に達した被処理物は、ホモジナイザ3(ロータ)の回転に伴うタービュランス効果により、ホモジナイザ3内に吸い込まれる。そして、ホモジナイザ3内で混合、乳化、分散等の作用を受けた被処理物は、ホモジナイザ3から押し出されて循環パイプ4に入り、循環パイプ4を経由して撹拌槽1の内部に戻される。撹拌槽1の内部に戻された被処理物は、撹拌翼2で撹拌されると共に、送り翼8で下方側に圧送されて、再びホモジナイザ3に吸い込まれる。また、被処理物の処理が完了した後は、ホモジナイザ3から押し出された被処理物は、循環パイプ4に接続された排出管4b(排出弁4aは開)から製品として排出される。
【0019】
図3は、第2の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。第2の実施形態に係る攪拌装置が、上述した第1の実施形態に係る攪拌装置と異なる点は、送り翼8と異なる構成の送り翼18を回転駆動軸2aの下端部に設けた点にある。
【0020】
図4A~
図4Cに示すように、第2の実施形態で採用した送り翼18は、回転駆動軸2aの下端部にネジ等の適宜の固定手段で取り付けられるリング状の取付部18aと、取付部18aに固定された複数、例えば4本の支持棒18bと、支持棒18bに取り付けられた複数のブロック状の翼部18cとを備えている。各翼部18cは、金属製又は樹脂製の部材で同一形状に形成され、その円周方向の両側部を、円周方向に隣接する2本の支持棒18bに固定される。円周方向に隣接する支持棒18b間には、上下方向に配列された複数、例えば4つの翼部18cの組があり、この翼部18cの組が円周方向に沿って等間隔で4組配置されている。円周方向に隣接する翼部18cの組は、相互間で翼部18cの位置を上下方向にずらして配列している。送り翼18を回転駆動軸2aの下端部に取付けた状態で(
図3を参照)、上記の翼部18cの組は、回転駆動軸2aの下端部および取付部18aを貫通して下方側に延在した原料供給管7の下端部7aを、外周側から所定の隙間(下端部7aの外周と翼部18cの内周との間の隙間)を介して取り囲み、最も下方側に位置する翼部18cが下端部7aの下端よりも若干上方側に位置する。
【0021】
図4Bに示すように、各翼部18cは、それぞれ、円周方向の一方側に第1側面18c1を有し、円周方向の他方側に第2側面18c2を有する。上方側から見て右回転方向(矢印方向R)の前方側に位置する第1側面18c1は、その下端側から上端側に向かって、右回転方向Rの前方側に傾斜した傾斜状面(傾斜平面または傾斜曲面)に形成され、左回転方向(矢印方向L)の前方側に位置する第2側面18c2は、その下端側から上端側に向かって、左回転方向Lの前方側に傾斜した傾斜状面(傾斜平面または傾斜曲面)に形成されている。そのため、回転駆動軸2aが右回転方向Rに回転し、回転駆動軸2aの回転に伴って送り翼18が右回転方向Rに回転すると、攪拌槽1内の被処理物が各翼部18cの回転方向前方側の第1側面18c1で押されて下方側に圧送される。また、回転駆動軸2aが左回転方向Lに回転し、回転駆動軸2aの回転に伴って送り翼18が左回転方向Lに回転すると、攪拌槽1内の被処理物が各翼部18cの回転方向前方側の第2側面18c2で押されて下方側に圧送される。従って、回転駆動軸2aの下端部に送り翼18を設けた第2の実施形態に係る攪拌装置では、回転駆動軸2aが左右いずれの回転方向に回転しても、攪拌槽1内の被処理物をホモジナイザ3に向けて圧送することができる。その他の事項は第1の実施形態に準じるので、重複する説明は省略する。
【0022】
図5は、第3の実施形態に係る攪拌装置の全体構成を示す縦断面図である。第3の実施形態に係る攪拌装置が、上述した第1の実施形態に係る攪拌装置と異なる点は、回転駆動軸2aの内部に挿通される原料供給管7を廃止した点にある。原料供給管7を廃止したことにより、送り翼8の翼部8bの内周側は空洞状態になる。攪拌槽1内への原料投入は、例えば、攪拌槽1の下部の側部に原料供給バルブを設置し、原料を原料供給バルブからホモジナイザ3の直上の位置に投入することにより行う。
【0023】
図1に示す第1の実施形態の攪拌装置では、送り翼8の翼部8bの内周側に原料供給管7の下端部7aが配置されている。これに対して、
図5に示す第3の実施形態に係る攪拌装置では、送り翼8の翼部8bの内周側が空洞状態になっている。両者を比較すると、第3の実施形態に係る攪拌装置に比べて、第1の実施形態の攪拌装置の方が、送り翼8による被処理物の圧送効果がより高いといえる。これは、翼部8bの内周側が空洞状態になっていると、翼部8bで下方側に圧送される被処理物の一部が、翼部8bの内周側を通って上方側に逆流する現象が起こるためと考えられる。送り翼8の翼部8bの内周側に原料供給管7の下端部7aのような軸状部材を配置すると、上記の逆流現象が軸状部材により抑えられて、被処理物がより効果的に圧送される。このような事状を勘案して、原料供給管7を廃止した構成において、翼部8bの内周側に配置される軸状部材を、回転駆動軸2aの下端部に一体的に形成するようにしてもよい。
【0024】
図示は省略するが、
図3に示す第2の実施形態に係る攪拌装置においても、上記と同様に、原料供給管7を廃止した構成としてもよい。
【実施例0025】
図1に示す第1の実施形態に係る攪拌装置(実施例)と、第1の実施形態の攪拌装置から送り翼8を取り外した比較例の攪拌装置を用いて、比較試験を行った。比較試験は、下記の表1~表3に示す条件{被処理物の粘度(mPa・s)、撹拌翼2(回転駆動軸2a)の回転数(rpm)、ホモジナイザ3(ロータ)の回転数(rpm)}で攪拌装置を運転し、ホモジナイザ3から排出される被処理物(ホモジナイザ3から押し出されて排出管4bから排出される被処理物)の流量(L/min)を測定することにより行った。ホモジナイザ3から排出される被処理物の流量(L/min)は、ホモジナイザ3への被処理物の供給流量(L/min)と同等とみなすことができる。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
表1及び表2に示すように、同じ条件で比較して、送り翼を備えた実施例の攪拌装置では、送り翼を備えていない比較例の攪拌装置に対して、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が増加することが確認された。このホモジナイザへの被処理物の供給流量の増加は、撹拌翼(回転駆動軸)の回転に伴って回転する送り翼により、被処理物をホモジナイザに向けて圧送する圧送力が働いたことによるものである。また、送り翼を備えた実施例の攪拌装置では、撹拌翼の回転数を高くすると、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が増加することも確認された。
【0030】
表3に示す試験は、粘度が300000MPa・sの高粘度クリームを被処理物としたものであるが、送り翼を備えていない比較例の攪拌装置では、ホモジナイザへの被処理物の供給流量(g/min)がゼロとなり、処理不能であったのに対し、送り翼を備えた実施例の攪拌装置では、被処理物をホモジナイザへ安定して供給することができた。この試験結果から、送り翼を備えた実施例の攪拌装置は、粘度が300000MPa・sといった高粘度の被処理物であっても、安定した処理が可能であることが確認された。また、
図6に示すように、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が攪拌翼の回転数(=送り翼の回転数)と比例関係にあることが確認された。
【0031】
下記の表4に示す試験は、表3に示す試験と同じ高粘度クリームを被処理物として、送り翼を備えた実施例の攪拌装置において、攪拌翼の回転数を一定にして、ホモジナイザの回転数を変化させたものである。
図7に示すように、ホモジナイザへの被処理物の供給流量(g/min)は、ホモジナイザの回転数の増加に応じて指数関数的に急激に増加することが確認された。
【0032】
【0033】
一般に、被処理物に作用するホモジナイザの剪断力は、被処理物の粘度とホモジナイザの構成(ロータとステータとの間のクリアランスを含む)が同じであれば、ホモジナイザの回転数(rpm)に比例する。表4(
図7)の試験結果から、ホモジナイザの回転数を調整することで、ホモジナイザへの被処理物の供給流量を調整することは可能ではあるが、供給流量がホモジナイザの回転数に応じて指数関数的に急激に変化するので、所望の供給流量に調整することが難しい。また、ホモジナイザの回転数を変えると、被処理物に作用する剪断力が変わり、被処理物の処理品質に影響する。これに対して、送り翼を備えた実施例の攪拌装置では、表3(
図6)の試験結果に示すように、ホモジナイザへの被処理物の供給流量が攪拌翼の回転数に比例して変化するので、所望の供給流量に調整し易い。また、供給流量を調整するに際し、ホモジナイザの回転数を変える必要がないので、被処理物に作用する剪断力を所望値に維持できる。