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特開2024-97139粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤および抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097139
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤および抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20240710BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20240710BHJP
   A01M 21/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C09K17/32 H
C09K17/18 H
A01M21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000415
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】稲邉 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山本 凌
【テーマコード(参考)】
2B121
4H026
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CB02
2B121CB23
2B121CC05
2B121EA21
4H026AA09
4H026AA10
4H026AB03
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】造成等をした土壌面の粉塵飛散と雑草繁茂の抑制をする
【解決手段】ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩とをゲル化しない範囲で混合した複合物の水溶液に、ヘアリーベッチの種子と再生パルプとを混合した抑制剤を作成し、該抑制剤を土壌面に散布することで、粉塵抑制と雑草繁茂の抑制をする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土面が露出する土壌に散布して粉塵飛散および雑草繁茂の抑制をする抑制剤であって、該抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプンから選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロースから選択される少なくとも1種のアニオン性高分子と、
を含む水溶液であって、該水溶液は、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することでゲル化のないものに、雑草繁茂の抑制をするため発芽、生育の早い一年生植物の種子が混入されたものであることを特徴とする粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤。
【請求項2】
土壌に散布される抑制剤の水溶液には、パルプが種子の流亡防止材として含有されていることを特徴とする請求項1記載の粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤。
【請求項3】
カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、一年生植物はヘアリーベッチ、マルチムギの何れか、パルプは古紙パルプであることを特徴とする請求項2記載の粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤。
【請求項4】
土面が露出する土壌に抑制剤を散布して粉塵飛散および雑草繁茂の抑制をする方法であって、該抑制剤は、
カチオン性セルロース、カチオン性デンプン等のカチオン性高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含む水溶液であって、該水溶液は、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することでゲル化のない水溶液に、雑草繁茂の抑制をするため発芽、生育の早い一年生植物の種子が混入したものが散布されることを特徴とする粉塵飛散および雑草繁茂の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地やビル地等の造成工事、道路工事等の各種の土木工事の工事現場に接続する周辺土壌や、長期間放置されることになる造成地盤等の土壌において、粉塵発生および雑草繁茂の抑制をするための粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤および抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、住宅地や商業地として整地した土壌等の土面(土壌面)は、通常、露出(表出)したままの状態となっており、このように露出したままの状態では、乾燥環境下で風が吹いた場合に粉塵が飛散する。このような粉塵の飛散が公害となって社会的な問題になることもあり、そこでこのような粉塵の飛散抑制をするため、路面(土面)に水を散布することが試みられるが、このような土面のなかには、例えば数か月、半年等の長期間のあいだ放置される場合があり、このような長い期間、散水によって粉塵飛散の防止を図ることには無理がある。
そこでポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールを含む主剤に、アニオン性高分子とカチオン性高分子とを添加した粉塵飛散抑制剤が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-105354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記粉塵飛散抑制剤は、粉塵飛散抑制効果があるとされるアニオン性高分子とカチオン性高分子とを含有しているが、これらアニオン性高分子とカチオン性高分子とを混合したものは反応してゲル化、または固化して沈殿物が生成しやすく、この沈殿物(ダマ、固溶体)が生成した状態のまま散布した場合、散布用ノズルが早期のうちに詰まってしまうだけでなく、散布にムラが出て均一な粉塵飛散効果が期待できない等の問題がある。
そのうえこのものでは粉塵飛散の抑制についてはそれなりの効果は規定できるものの、雑草の繁茂に対しては効果がなく、このため場所によっては草刈等の除草作業が強いられることになる等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、土面が露出する土壌に散布して粉塵飛散および雑草繁茂の抑制をする抑制剤であって、該抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプンから選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロースから選択される少なくとも1種のアニオン性高分子と、を含む水溶液であって、該水溶液は、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することでゲル化のないものに、雑草繁茂の抑制をするため発芽、生育の早い一年生植物の種子が混入されたものであることを特徴とする粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤である。
請求項2の発明は、土壌に散布される抑制剤の水溶液には、パルプが種子の流亡防止材として含有されていることを特徴とする請求項1記載の粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤である。
請求項3の発明は、カチオン性高分子はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アニオン性高分子はポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、一年生植物はヘアリーベッチ、マルチムギの何れか、パルプは古紙パルプであることを特徴とする請求項2記載の粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤である。
請求項4の発明は、土面が露出する土壌に抑制剤を散布して粉塵飛散および雑草繁茂の抑制をする方法であって、該抑制剤は、カチオン性セルロース、カチオン性デンプン等のカチオン性高分子から選択される少なくとも1種のカチオン性高分子と、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種のアニオン性高分子とを含む水溶液であって、該水溶液は、アニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含有することでゲル化のない水溶液に、雑草繁茂の抑制をするため発芽、生育の早い一年生植物の種子が混入したものが散布されることを特徴とする粉塵飛散および雑草繁茂の抑制方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1または4の発明とすることにより、ゲル化のないカチオン性高分子とアニオン性高分子とが複合された水溶液に、発芽、生育の早い一年生植物の種子が混入された抑制剤が散布されることで、土壌面からの粉塵発生が抑制された状態で、該土壌面に播種された状態となる一年生植物が早期に発芽し、生育することになって、粉塵発生、雑草繁茂の防止ができ、しかも生育する一年生植物が土壌面全体に繁茂した状態になって景観の向上にも寄与することになる。
請求項2の発明とすることにより、抑制剤中に含有するパルプが種子の流亡防止材となる結果、播種された種子の流亡が抑制されて、播種土壌での発芽、生育が確保されるだけでなく、周辺土壌に種子が流亡して発芽、育成することも効果的に回避できることになる。
請求項3の発明とすることにより、カチオン性高分子として選択されるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アニオン性高分子として選択されるポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩は汎用性が高く、安全性に優れたものであり、また一年生植物として選択されるヘアリーベッチ、マルチムギは、発芽、生育が早いため、整地後の土壌に散播することで雑草の繁茂を防止でき、しかも種子の流亡防止材として古紙パルプが用いられるため、資源の有効利用も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】供試土の粉塵飛散実験の概略図である。
図2】供試土の粒径加積曲線のグラフ図である。
図3】供試土の性状を示す表図である。
図4】粉塵飛散実験の結果を示すグラフ図である。
図5】散布後28日を経過したときの粉塵飛散濃度を示すグラフ図である。
図6】ヘアリーベッチの生育状況を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明において採用されるカチオン性高分子としては、ポリカチオン性セルロース、ポリカチオン性デンプン等のポリカチオン性高分子から選択される少なくとも1種であり、具体的には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下「DADMAC」と称する。)を例示することができるが、該DADMACは、繊維加工、紙・パルプ、塗料、インキ等の多くの分野で採用されている高分子であって、人体、環境に影響を与えることが殆どないものとして知られている。
【0009】
【化1】
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)
【0010】
また、アニオン性高分子としては、ポリカルボキシメチルセルロース、ポリカルボキシメチルアミロースから選択される少なくとも1種であり、具体的には、ポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下「CMC」と称する。)を例示することができるが、該CMCについても、食品、医薬、化粧品等の多くの分野で採用されている高分子であって、人体、環境に影響を与えることが殆どないものとして知られている。
【0011】
【化2】
ポリカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)
【0012】
そして本発明は、特にアニオン性高分子がカチオン性高分子に対して過剰に含まれていることが特徴であり、このようにアニオン性高分子が過剰に含まれていることで、両高分子を高濃度で混合した水溶液を製造した場合において、両高分子同士が反応したときの沈殿物の生成が抑制され、また生成した沈殿物についても時間経過とともに過大化することが殆どなく、このため両高分子同士の反応を抑制するため従来公知の反応抑制剤(例えば塩化ナトリウム等の塩)を別途加える必要はない。
【0013】
また本発明が実施される抑制剤の溶剤(媒体)は原則として水であるが、必要において水溶性の有機溶剤、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、2プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、またはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類の水溶性の有機溶剤を水に配合して使用することができるが、有機溶剤の配合量としては、環境に影響を与えないよう10重量%以下程度とすることが好ましい。これらの有機溶剤は、本発明が実施される粉塵飛散抑制剤の水溶液の粘度調整や使用成分、生成した沈殿物の溶解を促進するものとして使用できるが、これらの有機溶剤を使用する場合、人体に対する影響と環境負荷を少なくするためにエチルアルコールとすることが好ましい。
【0014】
本発明が実施される粉塵飛散抑制剤のカチオン性高分子とアニオン性高分子との混合比であるが、当量比として1:3~1:300の範囲であり、好ましくは1:5~1:100の範囲である。
そしてカチオン性高分子とアニオン性高分子とが混合された水溶液の濃度としては、散布時において1重量%程度の低濃度に調整することが作業性等の観点から好ましいが、散布面積が広い場合、このような低濃度の粉塵飛散抑制剤を散布現場に搬送することは経済的観点から好ましいとは言えない。このため例えば数十重量%程度の高濃度の原液を調整し、該原液を散布現場に搬送後、水で希釈して散布するようにすることが好ましく、このためには、前記調整された高濃度の原液中に、両高分子を混合したことによる反応促進に伴う沈殿物の生成がないか、あっても僅かであって散布に支障がない程度であることが好ましい。
【0015】
また、本発明において種子として使用される植物は、一年生で、播種した後の発芽、生育が早く、土壌面を覆いつくすように成長するものであって、ヘアリーベッチ、マルチムギが例示される。ヘアリーベッチはマメ科の一年生植物であって、草高が50cmほどとなって土壌面全体を覆うように成長することで土壌面に日光の照射を遮ることで除草効果を発揮するだけでなく、根粒細菌による窒素の固定効果が期待できる。
マルチムギは、イネ科の植物であって、草丈が30~50cmほどとなって土壌面を覆う状態で生育して雑草の生育を阻害する効果が期待できる。
【0016】
さらに本発明の抑制剤には、混入する種子の流亡を防止するための流亡防止材としてパルプを混入することが好ましいが、該パルプとしては、バージンパルプでもよいが、回収した古紙をパルプに再生した古紙パルプ(再生パルプ)が再生材の有効利用の観点から好ましく、さらに古紙としては細断器(シュレッダー)により細断することで繊維長が短くなることにより再生紙の原料としては好ましくないとされるものを再生した細断古紙パルプであってもよい。このようなパルプを混入することにより、抑制剤の粘度を上昇(増粘)させ、散布した抑制剤のが散布土壌から流失してしまうことの防止が図れるが、混入するパルプに種子が絡みついた状態となって種子自体の流亡防止にも寄与できることになる。
【0017】
次に、本発明の有効性を確認するため次の作業、実験を試みた。
【0018】
<供試土および供試土が充填されたコンテナの作成>
ある国内の造成現場において採取した土壌について、風乾後、4.5mmメッシュの篩を透過したものを供試土として作成した。該供試土の粒径加積曲線は図2のグラフ図に示すとおりであり、その性状は、JIS(日本工業規格)A 1202の土粒子の密度試験、JIS A 1204の土の粒度実験、JIS A 1210の突固めによる供試土の締固め実験を行った結果を図3の表図に示す。
前記作成した供試土1を、縦横内幅が166mm×106mm、深さが86mmのコンテナ(容器)に充填するが、その充填方法として、供試土を30mmの厚さになるよう自然落下する状態でコンテナに充填したものに、重さ150g、直径25mmの突き棒を、高さ50cmのところから自然落下させて供試土を締固めることをコンテナ全面に亘って均等に行った。この供試土のコンテナへの充填、締固め作業を3回繰り返すことで、締固められた供試土が深さ(高さ、厚さ)略9割の状態で充填されたコンテナを作成した。
【0019】
<試験液の調整>
粉塵飛散抑制剤として、カチオン性高分子であるDADMAC(センカ株式会社製 商品名:ユニセンスFPA1001L 分子量10~50万)と、アニオン性高分子であるCMC(ダイセル化学工業株式会社製 商品名:CMCダイセル1330 分子量16~38万)とを選択し、そして当量比として、DADMAC:CMCを1:1、1:3、1:5、1:7、1:40、1:60、1:80、1:100、1:200、1:300、1:400、43:1となるよう試験液1~12を調整するが、これらの試験液1~12は、10重量%の高濃度水溶液である原液を調整し、該原液を6時間、温度20℃、湿度60%の室内に静置した後、1重量%の濃度の水溶液になるよう希釈することで作成した。
【0020】
<試験液の散布および粉塵飛散実験>
前記コンテナに充填された供試土に、前記調整された粉塵飛散抑制剤の試験液1~12を散布した後、温度20℃、湿度60%の屋内にて48時間養生した。試験液1~12の散布量は、2L/mとなるように調整した。因みに2L/mの散布量は、供試土の表面全体に、凡そ1~2mmの深さまで試験液が隙間なく浸透する程度に散布されるものである。
養生後、図1に示すように、供試土1が充填されたコンテナ2を台座3に載置する一方、送風機(ボッシュ株式会社製、ブロアGBL800E)4を、前記台座3よりも高い台座5に載置し、該送風機4からの送風を行うことになる。その際に、台座3、5間の距離および高低差、送風機4の向き等の送風条件として、供試土1部位において送風機4からの送風が、気象庁が定める「風の強さと吹き方」において「強い風」に分類される風速15m/sとなるよう調整されたものとなっており、この条件下で、送風機4から5分間、供試土1の表面に送風をした。
そして送風前後の供試土の重量差(実際にはコンテナ2を含めた重量差)を測定し、その差分を飛散した粉塵量とした。
【0021】
<粉塵飛散結果および考察>
前記粉塵飛散実験を、各試験液1~12ごとに3回繰り返し、各飛散した粉塵量から平均粉塵飛散量を求めたところ、図4に示すグラフ図のようになった。
尚、この粉塵飛散実験には、ブランクとして全く散水しないもの(ブランク1)、水のみを散水したもの(ブランク2)についても同様の実験をした。
これらの実験から、粉塵飛散の抑制効果があるものとして、DADMACとCMCとの当量比が、DADMACを1としたときに3~300の範囲であり、好ましくは、5~100の範囲であることが確認された。
【0022】
DADMACを1としたときの当量比が1のものは、原液中に沈殿物の発生が視認され、これを水で希釈して試験液にしても沈殿物は残留しており、この結果、飛散抑制効果が低下したものと推定される。因みに、当量比が3の原液は沈殿物の発生が僅かではあるが視認され、当量費が5以上のものは沈殿物が視認されず、このため粉塵飛散抑制効果に差が出たものと推定される。
そしてこの高い粉塵飛散抑制効果は、当量比が100のものまでは凡そ維持され、これを越えて300までのものは、若干劣るがそれなりの粉塵飛散抑制効果を発揮したものとなって実用性が認められる。一方、当量比が400のものは、飛散抑制効果が低く、実用的ではないと判断される。
これに対し、逆にCMCをDADMACに対して過剰にした試験液12のものは、水を散水したものよりも低い粉塵飛散抑制効果となった。
このようにカチオン性高分子であるDADMACを過剰にした場合には高い粉塵飛散抑制機能が確認されるのに対し、逆にアニオン性高分子であるCMCを過剰にしたものでは粉塵飛散抑制効果が認められないものとなったことにより本発明の有効性が確認される。
【0023】
<粉塵飛散および雑草繁茂の抑制実験>
次に、DADMACとCMCとを、等量比で1:7の割合で混合した複合物について、濃度が0.7重量%となるよう調整した水溶液を作成し、該水溶液の1.8kgに、ヘアリーベッチの種子を450gの割合で混合したもの、さらにこのものに古紙ファイバーを5kgの割合で混合したものを作成し、このようにすることで本発明が実施された抑制剤1、2を作成した。
このようにして作成された抑制剤1、2の180Lを、90m(9.5m四方)の造成直後の土壌面に均一になるようにして散布した。散布は汎用の散布機(ハイドロシーダー)を用いた。ブランク3として無散布の土壌、ブランク4としてヘアリーベッチのみを散播した土壌も用意した。
また実験土壌は、種子の周辺への流亡を確認するため、四周縁部を幅50cmのポリ塩化ビニール製のシート材で被覆した状態で抑制剤1、2、およびブランク4の種子のみの散布をした後、前記シート材を取り除いた状態とした。
【0024】
<抑制実験の結果と考察>
i.粉塵抑制結果の結果と考察
まず、粉塵の飛散状態について確認をした。散布後、28日を経過した土壌の粉塵飛散状態について検討した。粉塵飛散状態の確認は、前記粉塵飛散実験の場合と同様にした。この結果、図5に示すように、抑制剤1、2の粉塵濃度は、無処理のブランク1のものに比して28日経過後おいても、1/10程度の低減状態を維持していることが認められ、ヘアリーベッチの種子を混合したものでも、高い粉塵抑制効果があることが認められた。また抑制剤1、2とでは、古紙パルプを混合した抑制剤1の方が、粉塵抑制効果が高いことが認められた。
これは古紙パルプの混合により、散布された複合物の土壌に対する定着性が向上し、粉塵抑制効果が高まったものと推測される。
【0025】
ii.ヘアリーベッチの生育状態の結果と考察
一方、抑制剤1、2、ブランク2において播種されたヘアリーベッチの発芽、育成状態の確認をしたところ、何れのものも、図6に示す表図のように順調に生育した。
この結果、ヘアリーベッチは、粉塵抑制効果が認められるDADMACとCMCとの複合物の有無に関係なく成長することが確認された。このことより、DADMACとCMCとの複合物はヘアリーベッチの発芽、成長に影響を与えないものであるといえる。
【0026】
iii.雑草抑制効果の結果と考察
このように抑制剤1、2、ブランク2のヘアリーベッチが播種された土壌においては、ヘアリーベッチの発芽、育成が何れも同様になされ、一面に繁茂していることから雑草の発芽が僅かであった。これは、繁茂するヘアリーベッチにより土壌面への日光の照射が阻害され、その後に発芽する雑草の生育を抑制する効果が高くなったと推測される。因みに、なにも散布しなかったブランク1のものは雑草があちこちに発芽していることが確認された。
【0027】
iv.種子の流亡状態の結果と考察
次に、播種したヘアリーベッチが、実験土壌の外の外周縁部にどれだけはみ出た状態で生育しているかについて確認した。因みに外周縁部は、90mの実験土壌の外周縁から50cmまでの範囲とし、この範囲に散布後のヘアリーベッチの生育状況を確認した。
散布後、28日経過したときの各実験土壌における外周縁部に生育するヘアリーベッチの繁茂状態について確認したところ、ブランク2の種子のみを散布したものは、抑制剤1、2を散布したものに比して明らかに多数が繁茂していることが確認され、また抑制剤1、2とでは、古紙パルプが含有した抑制剤1を散布したものの方が、抑制剤2の古紙パルプがないものに比して少ないことが確認された。
これらの結果から、古紙パルプを含有する抑制剤1は、古紙パルプが種子の流亡に寄与していることが確認され、本発明の粉塵抑制、雑草繁茂の効果が、種子の流亡を回避する効果を有しながら高いことが認められる。また、古紙パルプを含有しない抑制剤2についても、DADMACとCMCとの複合物が種子に絡みつくことで流亡防止効果が発揮されたものと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、造成土壌等の土壌からの粉塵飛散と雑草繁茂とを抑制することができる粉塵飛散および雑草繁茂の抑制剤および抑制方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 供試土
2 コンテナ
3 台座
4 送風機
5 台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6