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特開2024-97143ジオポリマー組成物およびジオポリマー硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097143
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ジオポリマー組成物およびジオポリマー硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20240710BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B18/08 Z
C04B22/08 A
C04B22/06 Z
C04B24/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000432
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】堀田 太洋
(72)【発明者】
【氏名】シダート ロイ チョウドゥリー
(72)【発明者】
【氏名】ジン チェ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB02
4G112PA27
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB25
(57)【要約】
【課題】本発明は、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用しつつ、長時間において高流動性を確保し、かつ、簡便な手法により短期間において高強度の硬化体を得られるジオポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ジオポリマー組成物は、活性フィラー、骨材、分散剤および廃アルカリを含み、前記分散剤は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤であり、前記活性フィラーは、JIS A 6201で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性フィラー、骨材、分散剤および廃アルカリを含み、
前記分散剤は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤であり、
前記活性フィラーは、JIS A 6201で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰を含む、ジオポリマー組成物。
【請求項2】
アクティベーターをさらに含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
前記廃アルカリの粘度は0.85mPa・s以上である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
前記廃アルカリのpHは11以上である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項5】
前記廃アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を0.1質量%以上20質量%以下含有する、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項6】
前記廃アルカリの配合量は、前記ジオポリマー組成物の全質量に対して、1.5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物の硬化物である、ジオポリマー硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー組成物およびその硬化物であるジオポリマー硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、モルタル、人造石、建築用硬化部材等の硬化体は、一般的に、セメントを含んでいる。しかしながら、セメントは、焼成する際に多量のCOを排出してしまう。そのため、セメントを使用せず、環境面から好適である、コンクリート等の硬化体を製造する方法が注目されている。特に、ジオポリマー法を用いる硬化体の製造方法が盛んに研究されている。
【0003】
ジオポリマー法では、ケイ素やアルミニウムを主成分として含む粉体をバインダーとして用い、粉末同士を接合して、人工の岩石を製造する。ジオポリマー法により形成されるジオポリマー硬化体は、アルミノシリケート源としての活性フィラーとアクティベーターとしてのアルカリ水溶液とを用い、ジオポリマー反応を生じさせることによって製造される。活性フィラーとしては、カオリン、粘土等の天然物、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ、もみ殻灰等が利用できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)等の水溶液が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥、カオリンの少なくとも1つを含む活性フィラーと、シリカまたはシリカ化合物と、アルカリ水溶液とからなるジオポリマー組成物であって、溶液中に含まれるシリカ量とアルカリ量のモル比が0.50未満であり、溶液中に含まれるアルカリ量と水量のモル比が0.075以上であり、活性フィラーは、カルシウム化合物の含有量xが0<x≦30(vol%)であることを特徴とする耐久性を向上させたジオポリマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6284388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在までに研究および報告されているジオポリマー組成物の硬化体を、セメントを使用したコンクリート、モルタル等の硬化体の代替物として実用化する場合、多くの問題が存在する。
【0007】
具体的には、現在までに報告されているジオポリマー組成物の多くは、その硬化速度が速すぎる。そのため、練り上げから1時間程度経過後に流動性が顕著に低下し、凝結が始まる。硬化速度が速すぎると、モルタル、コンクリート等の硬化体製品の製造現場におけるジオポリマー組成物の取り扱いが悪くなる。一方、ジオポリマー組成物の硬化速度を遅くして、良好な流動性をなるべく長く維持するために、アクティベーター中に含有されている水以外に、別途水道水、イオン交換水等の添加水を組成物中に加える場合がある。しかしながら、組成物中に別途添加水を加えると、ジオポリマー硬化体が強度を得るために長期間の養生が必要となり、かつ、製造される硬化体の強度も十分とならない。あるいは、水中、湿潤、気中等の通常の養生を蒸気養生に代えることにより強度を得るための期間を短くすることができるが、蒸気養生は高価であるため、製造コストが顕著に高くなる。
【0008】
このように、現在までに報告されているジオポリマー組成物を用いた硬化体の製造方法によると、より長時間において良好な流動性を維持し、かつ、簡易な手法により短期間で所望する高強度の硬化体を得ることは難しい。
【0009】
一方、鋼板の製造時(特に、冷延鋼板の製造時)の洗浄工程、電解工程等の各工程、電子機器の製造、加工等の各工程では、アルカリ性の水溶液状廃棄物である廃アルカリが多量に排出される。廃アルカリは、産業廃棄物のうちの一種であるため、廃アルカリの無害化のために必要とされる処理コストが問題となっている。
【0010】
現在までに報告されているジオポリマー組成物の調製では、環境負荷低減の観点から、その原料として、石炭灰、高炉スラグ等の産業副産物が利用される場合がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ジオポリマー組成物の調製において、前述した廃アルカリを有効利用するための技術は知られていない。
【0011】
そこで、本発明は、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用しつつ、長時間において高流動性を確保し、かつ、簡便な手法により短期間において高強度の硬化体を得られるジオポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
【0013】
本発明の第一の局面に係るジオポリマー組成物は、活性フィラー、骨材、分散剤および廃アルカリを含み、
前記分散剤は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤であり、
前記活性フィラーは、JIS A 6201で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰を含む。
【0014】
前述のジオポリマー組成物において、アクティベーターをさらに含むことが好ましい。
【0015】
前述のジオポリマー組成物において、前記廃アルカリの粘度は0.85mPa・s以上であることがより好ましい。
【0016】
前述のジオポリマー組成物において、前記廃アルカリのpHは11以上であることがさらに好ましい。
【0017】
前述のジオポリマー組成物において、前記廃アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を0.1質量%以上20質量%以下含有することが特に好ましい。
【0018】
前述のジオポリマー組成物において、前記廃アルカリの配合量は、前記ジオポリマー組成物の全質量に対して、1.5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の第二の局面に係るジオポリマー硬化体は、前述の第一の局面に係るジオポリマー組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用しつつ、長時間において高流動性を確保し、かつ、簡便な手法により短期間において高強度の硬化体を得られるジオポリマー組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例におけるジオポリマー組成物の流動性試験結果を示すグラフである。
図2図2は、実施例におけるジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度試験結果を示すグラフである。
図3図3は、実施例における廃アルカリの粉体に対する親和性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用し、長時間において高流動性を確保し、かつ、簡便な手法により短期間において高強度の硬化体を得られるジオポリマー組成物について、様々な研究を重ねた。そして、ジオポリマー組成物中に別途加えられる水道水、イオン交換水等の添加水の一部、好ましくは全部を廃アルカリに代えることに着目し、本発明を完成した。
【0023】
具体的には、本実施形態におけるジオポリマー組成物は、活性フィラー、骨材、分散剤および廃アルカリを含み、該分散剤は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤である。ジオポリマー組成物が、このような特定の種類の分散剤を含み、かつ、廃アルカリを含むことによって、ジオポリマー組成物の長時間における高流動性を確保し、かつ、短期間において高強度の硬化体を得ることができる。すなわち、ジオポリマー組成物の調製後の良好な流動性をなるべく長く維持することができ、同時に、蒸気養生等の複雑な処理を行わなくても、通常の養生によって短期間で高強度の硬化体を得ることができる。さらに、廃アルカリは産業廃棄物であるため、産業廃棄物を有効利用することができ、処理コストの低減にも繋がる。また、活性フィラーとして、その品質を均一にするための特別な前処理(具体的には、JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理)を施していない石炭灰を含んでいても、このような本実施形態に係るジオポリマー組成物の効果を得ることができる。
【0024】
本明細書において、「水」とは、分散剤中に含有されている水、廃アルカリ中に含有されている水、任意で含まれる添加水、任意で含まれるアクティベーター中に含有されている水等、本実施形態におけるジオポリマー組成物中に含有されている全ての水を意味する。さらに、本明細書において、「合計水分量」(質量%)とは、本実施形態におけるジオポリマー組成物中の、これらの「水」の合計量(質量%)を意味する。このような「合計水分量」(質量%)は、後の実施例で述べる通り、モイスチャーアナライザを用いて水を含有する成分の合計の固形分量(質量%)を求め、合計の溶液量(質量%)から減算することによって算出することができる。
【0025】
また、本明細書において、「添加水」とは、分散剤中に含有されている水、廃アルカリ中に含有されている水、および任意で含まれるアクティベーター中に含有されている水とは別の水である、ジオポリマー組成物の流動性を調整する目的、ジオポリマー反応に寄与する各種イオンの移動を促進させる目的等で、本実施形態におけるジオポリマー組成物中に別途添加される水を意味する。例えば、これらに限定されないが、水道水、イオン交換水等が挙げられる。
【0026】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0027】
1.ジオポリマー組成物
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、活性フィラー、骨材、分散剤および廃アルカリを含む。分散剤は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤である。
【0028】
本実施形態において、ジオポリマー組成物に含まれる骨材は、細骨材および/または粗骨材を含む。すなわち、本実施形態におけるジオポリマー組成物は、細骨材を含み、粗骨材を含まないジオポリマーモルタル組成物、ならびに、細骨材および粗骨材を含むジオポリマーコンクリート組成物の両方に適用できる。
【0029】
各成分の機能およびその配合量、ジオポリマー組成物の合計水分量、ならびにジオポリマー組成物の調製方法を、以下詳細に説明する。なお、以下に記すジオポリマー組成物の各成分の配合量および配合比率は、特に記載がない限り、主として、ジオポリマー組成物がジオポリマーモルタル組成物として適用される場合の配合量および配合比率を意味する。ただし、当該各成分の配合量および配合比率は、ジオポリマー組成物がジオポリマーコンクリート組成物として適用される場合であっても、必要に応じて適宜調整し、採用することができる。
【0030】
<活性フィラー>
活性フィラーは、アルミノシリケートを主たる成分として含む粉末である。アルミノシリケートは、アルカリに対して活性を有する。活性フィラーに、後述する廃アルカリ、任意で含まれるアクティベーター等を加えると、活性フィラー中のケイ素やアルミニウムが部分的に溶解またはイオン化する。溶解後、アルカリシリカ溶液中で単量体(モノマー)に近い状態で存在するシリカ成分が、金属イオンを取り込む。その結果、脱水縮合反応が起こり、硬化した高分子化合物(ポリマー)が生成し、ジオポリマー組成物の硬化物となる。
【0031】
本実施形態において、活性フィラーは、JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰を含む。他に含まれる活性フィラーとしては、前述した機能を有する当業者に公知の任意の活性フィラーを使用することができる。例えば、活性フィラーは、石炭灰および高炉スラグ微粉末を含むことが好ましい。また、活性フィラーは、石炭灰と、高炉スラグ微粉末およびシリカフュームのうちの1つ以上とを含むことがより好ましい。これらの各々の活性フィラーを、以下詳細に説明する。
【0032】
(石炭灰)
本実施形態では、石炭灰として、JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理が施されていない、産業副産物として産生された石炭灰(以下、「未処理の石炭灰」とも称する)が含まれる。要するに、未処理の石炭灰とは、産生箇所からの運搬等を目的とした通常の粉砕等以外の処理が施されていない石炭灰である。活性フィラーとして未処理の石炭灰を用いると、産業副産物の石炭灰を未処理のまま資源として効率的に有効利用することができる。さらに、製造コストも下げることができる。このような未処理の石炭灰は、例えば、火力発電所、ボイラー等から石炭燃焼の際に生成する産業副産物として得ることができる。未処理の石炭灰は、主成分として、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)等を含む。
【0033】
本明細書において、「JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰」とは、換言すれば、粉砕処理および/または粒度調整(好ましくは粒度調整)がなされていない石炭灰である。または、例えば、「JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰」とは、換言すれば、2900cm/g~6000cm/g程度のブレーン比表面積を有し、粉砕処理および/または粒度調整(好ましくは粒度調整)がなされていない石炭灰である。あるいは、例えば、「JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰」とは、換言すれば、好ましくは、火力発電所およびボイラーのうちの少なくとも一つから産業副産物として生産される石炭灰(未処理の石炭灰)である。なお、一つの実施形態において、「JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施していない石炭灰」は、JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合しない石炭灰であってもよく、または当該規格に適合しない石炭灰を含んでもよい。
【0034】
具体的には、石炭灰(具体的には未処理の石炭灰)は、例えば、集塵機によって排ガスから捕捉されるフライアッシュ、ボイラー底部の灰の塊を粉砕したボトムアッシュ等を含む。石炭灰(具体的には未処理の石炭灰)は、2種以上の石炭灰を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本実施形態に係るジオポリマー組成物によると、活性フィラーとして未処理の石炭灰を含む場合であっても、ジオポリマー組成物自体の高流動性、および、短期間での高強度発現の効果を得ることができる。換言すると、使用する石炭灰の大きさ、組成等が均一でなく、その品質にある程度バラツキがある場合でも、前述した効果を得ることができる。
【0036】
活性フィラーの全質量に対する未処理の石炭灰の配合量は、特に限定されないが、3質量%~77質量%であることが好ましい。未処理の石炭灰の配合量が3質量%以上であると、産業副産物として生成する未処理の石炭灰を資源として有効利用することができ、環境面から好適であるジオポリマー組成物を得ることができる。さらに、製造コストも下げることができる。未処理の石炭灰の配合量が77質量%以下であると、短期間で所望する高強度の硬化体を容易に得ることができる。
【0037】
活性フィラーの全質量に対する未処理の石炭灰の配合量は、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、活性フィラーの全質量に対する未処理の石炭灰の配合量は、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。なお、任意にて、活性フィラーとしてJIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合するための処理を施した石炭灰を活性フィラーの全質量に対して例えば5質量%程度含んでも構わない。
【0038】
(高炉スラグ微粉末)
高炉スラグ微粉末は、主成分として、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)等を含む。
【0039】
高炉スラグ微粉末は、当業者に公知の任意の高炉スラグ微粉末を使用することができる。例えば、高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを微粉砕することによって得ることができる。高炉水砕スラグは、高炉で鉄を精製する際に副産物として得られる。また、市販の高炉スラグ微粉末を用いてもよい。市販の高炉スラグ微粉末としては、例えば、JIS A 6206の高炉スラグ微粉末4000の規格を満たす高炉スラグ微粉末を用いることができる。このような市販の高炉スラグ微粉末は、例えば、神鋼スラグ製品株式会社が販売する「ケイメント」、日鉄高炉セメント社製の「エスメント」等を含む。
【0040】
活性フィラーの全質量に対する高炉スラグ微粉末の配合量は、特に限定されないが、3質量%~77質量%であることが好ましい。高炉スラグ微粉末の配合量が3質量%以上であると、短期間で所望する高強度の硬化体を容易に得ることができる。高炉スラグ微粉末の配合量が77質量%以下であると、ジオポリマー組成物の長時間における良好な流動性を維持し易くなる。
【0041】
活性フィラーの全質量に対する高炉スラグ微粉末の配合量は、10質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。また、活性フィラーの全質量に対する高炉スラグ微粉末の配合量は、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
(シリカフューム)
シリカフュームは、主成分として、二酸化ケイ素(SiO)を含む。具体的には、シリカフュームは、高純度の二酸化ケイ素(SiO)の非晶質球状微粒子である。
【0043】
シリカフュームは、当業者に公知の任意のシリカフュームを使用することができる。例えば、シリカフュームは、フェロシリコン、金属シリコン、電解ジルコニア等を製造する際に発生する排ガス中のダストを集塵した副産物として得られる。また、市販のシリカフュームを用いてもよい。
【0044】
シリカフュームは、通常の活性フィラーとしての機能、すなわち脱水縮重合反応の起点となり硬化体の強度向上に繋がる機能だけでなく、調製後のジオポリマー組成物の流動性を高める機能も有する。これは、シリカフュームの形状が、球状であるためである。
【0045】
活性フィラーの全質量に対するシリカフュームの配合量は、特に限定されないが、1質量%~20質量%であることが好ましい。シリカフュームの配合量が1質量%以上であると、前述のシリカフュームの作用を良好に発揮させることができる。また、シリカフュームは高価であるため、シリカフュームの配合量が20質量%以下であると、ジオポリマー組成物の製造コストを抑えることができる。
【0046】
活性フィラーの全質量に対するシリカフュームの配合量は、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、活性フィラーの全質量に対するシリカフュームの配合量は、15質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
(他の活性フィラー)
本実施形態におけるジオポリマー組成物に含まれ得る他の活性フィラーとしては、例えば、赤泥、長石類、雲母類、沸石類、パーライト、粘土鉱物、カオリン、メタカオリン、下水道汚泥等が挙げられる。
【0048】
ジオポリマー組成物の全質量に対する活性フィラーの配合量は、ジオポリマー組成物中の廃アルカリのアルカリ成分の濃度およびその配合量、ならびに任意で含まれるアクティベーターの配合量との比率によって決定され得る。一例として、廃アルカリのアルカリ成分の濃度が低く、ジオポリマー組成物がアクティベーターをさらに含む場合を説明する。例えば、アクティベーターとして8mol/L~10mol/L程度のアルカリ水溶液を使用する場合、活性フィラーの合計配合量に対するアクティベーターの配合量の割合(すなわち、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量))が、5%~30%であることが好ましい。この場合において、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量)が5%以上であると、活性フィラーの脱水縮合反応を十分に生じさせることができ、最終的に、十分な強度を有するジオポリマー硬化体を得ることができる。また、この場合において、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量)が30%以下であると、過剰量のアクティベーターを原因とする偽凝結を防ぐことができる。
【0049】
同様に、この場合において、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量)は、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。また、この場合において、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量)は、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
前述した好ましい比率は、廃アルカリのアルカリ成分の濃度およびその配合量、ならびにアクティベーターの種類および濃度によって、多少変動する。しかし、アクティベーター(質量)/活性フィラー(合計質量)は、活性フィラーが十分に反応し、かつ偽凝結が生じない範囲において、適宜調整すればよい。
【0051】
また、廃アルカリのアルカリ成分の濃度が高く、ジオポリマー組成物が廃アルカリのみを含み、アクティベーターを含まない場合も、活性フィラーの配合量は、同様に換算することができる。すなわち、廃アルカリのアルカリ成分の濃度およびその配合量に応じて、廃アルカリ(質量)/活性フィラー(合計質量)を、前述のアクティベーターの場合と同様に、活性フィラーが十分に反応し、かつ偽凝結が生じない範囲に適宜調整すればよい。
【0052】
一方、ジオポリマー組成物の全質量に対する活性フィラーの合計配合量は、最終製造物であるジオポリマー硬化体の種類に応じて異なる。従って、活性フィラーの合計配合量は、所望するジオポリマー硬化体の種類に合わせて適宜調整すればよいが、活性フィラーの合計配合量は、例えば20質量%~60質量%程度である。ジオポリマー硬化体の種類としては、例えば、前述したように、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0053】
<骨材>
骨材は、当業者に公知の任意の骨材を使用することができる。例えば、コンクリート、モルタル、人造石等の製造時に用いられる一般的な公知の骨材が用いられ得る。
【0054】
骨材としては、粗骨材および細骨材のいずれの骨材を用いてもよい。粗骨材は、85%以上において直径が5mm以上の骨材である。細骨材は、85%以上において直径が5mm以下の骨材である。骨材の種類は、最終製造物であるジオポリマー硬化体の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、粗骨材および細骨材の組み合わせ等の2種以上の骨材を用いてもよい。
【0055】
細骨材としては、高炉スラグ細骨材、天然の骨材である一般的な珪砂等の細骨材等が挙げられる。これらのうち、高炉スラグ細骨材を用いることが好ましい。高炉スラグ細骨材は、潜在水硬性を有する。潜在水硬性とは、高炉スラグ細骨材中に含有される二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)等に起因して水和物が生成されることにより硬化物の強度が上がる性質である。そのため、骨材として高炉スラグ細骨材を用いることによって、最終製造物であるジオポリマー硬化体の長期間強度をより高くすることができる。
【0056】
高炉スラグ細骨材は、JIS A 5011-1:2018に規定されている。また、市販の高炉スラグ細骨材を用いてもよい。市販の高炉スラグ細骨材としては、例えば、神鋼スラグ製品株式会社が販売する「シンコーサンド」、JFEミネラル社製の高炉スラグ細骨材等が挙げられる。
【0057】
粗骨材としても、高炉スラグを原料とする高炉スラグ粗骨材を用いることが好ましい。骨材として高炉スラグ粗骨材および/または前述した高炉スラグ細骨材が用いられると、産業副産物を資源として有効利用することができ、環境適合性が高いジオポリマー組成物を得ることができる。さらに、製造コストも下げることができる。
【0058】
ジオポリマー組成物の全質量に対する骨材(好ましくは細骨材)の配合量は、特に限定されず、所望する最終製造物であるジオポリマー硬化体の用途に合わせて調整すればよい。例えば、ジオポリマー組成物の全質量に対する骨材(好ましくは細骨材)の配合量は、30質量%~70質量%であることが好ましい。骨材(好ましくは細骨材)の配合量が30質量%以上であると、骨材とジオポリマー組成物のペーストとが分離してしまうことを防ぎ、均一な硬化体を形成し易くすることができる。骨材(好ましくは細骨材)の配合量が70質量%以下であると、ジオポリマー組成物の長時間における良好な流動性を維持し易くなる。
【0059】
ジオポリマー組成物の全質量に対する骨材(好ましくは細骨材)の配合量は、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、ジオポリマー組成物の全質量に対する骨材(好ましくは細骨材)の配合量は、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
<廃アルカリ>
本明細書中において、「廃アルカリ」とは、後に詳細に述べるような、産業廃棄物として排出される、アルカリ成分および水を少なくとも含む水溶液を意味する。そのため、本実施形態におけるジオポリマー組成物は、任意においてアクティベーターを含めばよく、組成物が別途アクティベーターを含まない場合、廃アルカリがアクティベーターの役割を果たす。
【0061】
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、添加水の一部、好ましくは全部の代わりに廃アルカリを含む。廃アルカリは、アルカリ性の水溶液状の産業廃棄物であるが、そのほとんどの組成は水からなる。ジオポリマー組成物が添加水の一部、好ましくは全部の代わりに廃アルカリを含むことによって、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用できるため、廃アルカリの処理コストの低減に繋がる。加えて、添加水の一部、好ましくは全部の代わりに廃アルカリを含むことによって、ジオポリマー組成物の長時間における高流動性を確保することができ、かつ、短期間において高強度の硬化体を得ることができる。
【0062】
このような効果は、少なくとも、廃アルカリの次に述べる物性に関連していると考えられる。第1に、廃アルカリは、添加水(水道水)と比較すると粉体との親和性が高い。すなわち、ジオポリマー組成物が廃アルカリを含む場合、ジオポリマー組成物が略同量の添加水を含む場合と比べると、組成物中の水分と粉体とがより分散し難くなる傾向がある。そのため、ジオポリマー組成物の長時間における流動性が向上すると考えられる。第2に、廃アルカリは、一般的に、アクティベーターとしても機能する水酸化ナトリウム、水ガラス等の化合物を含有する。そのため、廃アルカリ中のこれらの化合物が、脱水縮合反応におけるアクティベーターとしての役割を果たすか、またはアクティベーターを補佐する。そして、最終的に、短期間における硬化体の圧縮強度が向上すると考えられる。さらに、水酸化ナトリウム、水ガラス等の化合物を含有していることが、廃アルカリと粉体との高い親和性に影響しているとも想定される。
【0063】
廃アルカリの種類としては、ジオポリマー組成物中に含ませた際に流動性向上および硬化物の強度向上の効果を奏するものであれば、当業者に公知の任意の廃アルカリを使用することができる。
【0064】
具体的には、廃アルカリは、例えば、鋼板(好ましくは冷延鋼板)の製造時におけるアルカリ洗浄工程または電解工程で排出される廃アルカリ、電子機器の製造、加工、処理、洗浄時等において使用された廃アルカリ(例えば、プリント基板等の洗浄等に使用された廃アルカリ)、綿糸等の精錬工程等で使用された廃アルカリ、製紙工場等において木材からパルプの原料を溶出させるために使用された廃アルカリ、レーヨンを製造する際にセルロースを溶かすために使用された廃アルカリ等を含む。詳細には、これらの廃アルカリは、廃ソーダ液、苛性ソーダ廃液、けい酸ソーダ廃液等を含む。より詳細には、これらのうち、廃アルカリは、冷延鋼板の製造時におけるアルカリ洗浄工程または電解工程で排出される廃アルカリであることが好ましく、廃NaOH溶液および廃NaSiO溶液であることがより好ましい。
【0065】
廃アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を含有する溶液であることが好ましい。廃アルカリがこれらのうちの1つ以上を含有する溶液であると、これらの成分がアクティベーターとして役割を十分に果たすか、またはアクティベーターの役割をより確実に補佐する。その結果、最終的に、短期間における硬化体の圧縮強度をより確実に向上することができる。
【0066】
さらに、廃アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を0.1質量%以上含有することが好ましい。水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を0.1質量%以上含有すると、アクティベーターとしての役割を良好に果たすか、またはアクティベーターが良好に補佐される。その結果、短期間において硬化体の圧縮強度を十分に高めることができる。また、廃アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水ガラスのうちの1つ以上を0.11質量%以上含有することがより好ましい。
【0067】
廃アルカリ中のこれらの化合物の上限値は、本実施形態における流動性向上および硬化物の強度向上の効果を奏する限り特に限定されない。例えば、廃アルカリ中のこれらの化合物は、50質量%以下であればよく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0068】
廃アルカリの粘度は、0.85mPa・s以上であることが好ましい。廃アルカリの粘度が0.85mPa・s以上であると、組成物中の水分と粉体とが良好に混ざり合い、長時間における高流動性をより確実に確保することができる。廃アルカリの粘度は、0.87mPa・s以上であることがより好ましく、0.9mPa・s以上であることがさらに好ましい。廃アルカリの粘度の上限値は、本実施形態における流動性向上および強度向上の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、廃アルカリの粘度は、100mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましい。
【0069】
本明細書において、廃アルカリの粘度は、後の実施例で詳細に述べるように、JIS K 2283:2000に規定される動粘度試験方法に準拠して測定される25℃における粘度とする。
【0070】
廃アルカリのpHは、11以上であることが好ましい。廃アルカリのpHが11以上であると、廃アルカリ中の十分量の水酸化ナトリウム、水ガラス等がアクティベーターとして十分に機能するか、またはアクティベーターの役割を補佐するため、短期間において硬化体の圧縮強度を十分に高めることができる。廃アルカリのpHは、12以上であることがより好ましい。
【0071】
ジオポリマー組成物の全質量に対する廃アルカリの配合量は、その粘度、水酸化ナトリウム、水ガラス等の含有量、任意で含まれる添加水の量および/またはその他の物性によっても変動し得るが、1.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。廃アルカリの配合量が1.5質量%以上であると、廃アルカリのアルカリ成分の濃度に応じて、短期間で所望する高強度の硬化体を容易に得ることができたり、または組成物の長時間における良好な流動性を維持し易くなる。廃アルカリの配合量が10質量%以下であると、同様に、廃アルカリのアルカリ成分の濃度に応じて、組成物の長時間における良好な流動性を維持し易くなったり、または短期間で所望する高強度の硬化体を容易に得ることができる。
【0072】
ジオポリマー組成物の全質量に対する廃アルカリの配合量は、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、ジオポリマー組成物の全質量に対する廃アルカリの配合量は、6質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、4質量%以下であることが特に好ましい。
【0073】
<アクティベーター>
前述したように、本実施形態におけるジオポリマー組成物は、廃アルカリを含むため、アクティベーターとしてのアルカリ水溶液を別途必須の成分として含まなくてもよい。ただし、一般的に、産業廃棄物として多量に排出される廃アルカリはアルカリ成分濃度が高くないとの観点から、ジオポリマー組成物は、アクティベーターをさらに含むことが好ましい。
【0074】
アクティベーターは、活性フィラーの脱水縮合反応によるポリマー化の起点となる成分である。具体的には、アクティベーターは、活性フィラー中のアルミノシリケートと接触し、ケイ素やアルミニウムを溶解するアルカリ水溶液である。アクティベーターとしては、一般的に使用されているものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ケイ酸カリウム等の水溶液を用いることができる。また、アクティベーターとして、アルカリ源を含有する市販のアクティベーターを用いてもよい。このような市販のアクティベーターとしては、例えば、ポゾリス ソリューションズ社製のマスタークリート ACシリーズ等を挙げることができる。
【0075】
アクティベーターであるアルカリ水溶液の濃度は、その種類およびその配合量に応じて適宜調整する必要があるが、例えば、6mol/L~12mol/Lであることが好ましい。アクティベーターの濃度が6mol/L以上であると、活性フィラーにおける脱水縮合反応を十分に生じさせることができる。アクティベーターの濃度が12mol/L以下であると、高濃度による過度な融解熱の発生を避けることができる。
【0076】
アクティベーターであるアルカリ水溶液の濃度は、その種類およびその配合量に応じて適宜調整すればよいが、7mol/L以上であることがより好ましく、8mol/L以上であることがさらに好ましい。また、アクティベーターであるアルカリ水溶液の濃度は、その種類およびその含有量に応じて適宜調整する必要があるが、11mol/L以下であることがより好ましく、10mol/L以下であることがさらに好ましい。
【0077】
ジオポリマー組成物の全質量に対するアクティベーターの配合量(質量%)は、前述したジオポリマー組成物中の活性フィラーの合計配合量(質量%)との比率だけでなく、廃アルカリのアルカリ成分の濃度とその配合量(質量%)に応じて、適宜調整することによって決定することができる。
【0078】
<分散剤>
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤を含む。具体的には、この分散剤は、水溶液の状態におけるポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤である(本明細書中、水溶液の状態であっても単に「分散剤」とも称する。)。
【0079】
ジオポリマー組成物中にこの分散剤が含まれることによって、ジオポリマー組成物中における粒子が分散し、組成物の硬化反応を遅くすることができる。加えて、この分散剤による硬化反応の遅延作用は、数時間においてその効果が消える。そのため、廃アルカリによる効果と同様に、ジオポリマー組成物がこの分散剤を含むと、長時間における高流動性と短期間での高強度発現とを両立することができる。
【0080】
本明細書において、「ポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤(具体的には、水溶液の状態におけるポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを部分構造として含む重縮合物系分散剤)」とは、前述した作用を有し、かつ、規定された構造を有する高分子の水溶液であれば、特に限定されない。このような分散剤としては、例えば、以下の構成単位A、構成単位B、構成単位Cおよび構成単位Dを含む重縮合物を含む高分子の水溶液が挙げられる。
【0081】
構成単位A:下記式(1)に示される、少なくとも1種のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル。
【化1】
[ただし、式(1)中、mは、3~280の整数である]
【0082】
構成単位B:少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物およびその誘導体。例えば、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシフタル酸、2,3-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族化合物。
【0083】
構成単位C:フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1もしくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、または、フォスフェートもしくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体。例えば、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェノキシエチルホスフェート、2-フェノキシエチルホスホネート、2-フェノキシ酢酸、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスフェート、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスホネート、2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、メトキシフェノール、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の他の芳香族化合物。
【0084】
構成単位D:アルデヒド類。例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、バニリン、イソバニリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルデヒド。
【0085】
ジオポリマー組成物の全質量に対する分散剤(水溶液)の配合量(質量%)は、その種類、その濃度等に応じて適宜調整されるが、0.5質量%~3.5質量%であることが好ましい。分散剤(水溶液)の配合量(質量%)が0.5質量%以上であると、前述した分散剤の作用を良好に発揮させることができ、長時間における高流動性と短期間での高強度発現とをより確実に両立することができる。分散剤(水溶液)の配合量(質量%)が3.5質量%以下であると、過剰な分散剤の添加によるジオポリマー組成物の分離やブリーディングの発生を抑制することができる。
【0086】
ジオポリマー組成物の全質量に対する分散剤(水溶液)の配合量(質量%)は、0.8質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散剤(水溶液)の配合量(質量%)は、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
<添加水>
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、任意において添加水をさらに含んでもよい。添加水の種類は特に限定されず、例えば、水道水、イオン交換水等が挙げられる。
【0088】
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、組成物の流動性を顕著に高める前述した特定の種類の分散剤だけでなく、水を多く含む廃アルカリも含んでいる。そのため、添加水の配合量はごくわずかで構わない。あるいは、産業廃棄物である廃アルカリをより多く有効利用するという観点から、ジオポリマー組成物は、添加水を含まないことが好ましい。
【0089】
<その他の材料>
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、流動性向上および強度向上の効果を損なわない限り、モルタル、コンクリート等の原料として一般的に添加され得る任意の材料を含んでもよい。例えば、アルカリに対して活性を持たない粉末である不活性フィラー、各種添加剤等を含んでもよい。不活性フィラーとしては、例えば、セメント、炭酸カルシウム等が挙げられる。各種添加剤としては、特に限定されないが、例えば、流動化剤、収縮低減材、防錆剤、防水材、消泡剤、粉塵低減剤、顔料等の従来公知の成分が挙げられる。
【0090】
<ジオポリマー組成物の合計水分量>
本実施形態におけるジオポリマー組成物の合計水分量は、7質量%~20質量%であればよい。合計水分量を7質量%以上とすることによって、ジオポリマー組成物の長時間における良好な流動性を維持し易くなる。合計水分量を20質量%以下とすることによって、ブリーディングの発生を低減させることができ、短期間で所望する高強度の硬化体を容易に得ることができる。
【0091】
合計水分量は、8質量%以上であることが好ましい。また、合計水分量は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。
【0092】
<ジオポリマー組成物の調製方法>
本実施形態におけるジオポリマー組成物は、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、ジオポリマー組成物の調製方法は、粉体混合工程と、その後の混練工程とを含む。粉体混合工程では、主たる粉体原料である活性フィラー(例えば、石炭灰(未処理の石炭灰を含む)、高炉スラグ微粉末およびシリカフュームを含む活性フィラー)および骨材を、所定の配合量で混合する。その後の混練工程では、粉体混合物に、廃アルカリと分散剤と任意で含まれるアクティベーターと任意で含まれる添加水とを、所定の配合量でさらに加えて、その混合物を混合および混練する。混合方法および混練方法としては、特に限定されず、ミキサー等を用いた当業者に公知の任意の方法を用いればよい。
【0093】
また、前述のジオポリマー組成物の調製方法において、主たる粉体原料である活性フィラー(例えば、石炭灰(未処理の石炭灰を含む)、高炉スラグ微粉末およびシリカフュームを含む活性フィラー)および骨材を所定の配合量で混合した粉体混合物を予め調製し、調製した粉体混合物をプレミックスジオポリマー組成物として用いてもよい。具体的には、施工、作業等の前に、廃アルカリと分散剤と任意で含まれるアクティベーターと任意で含まれる添加水とを所定の配合量でプレミックスジオポリマー組成物に加えて混合および混練する。これによって、任意の所望量におけるジオポリマー組成物を、現場で容易に調製することができる。
【0094】
本実施形態におけるジオポリマー組成物によると、産業廃棄物である廃アルカリを有効利用できるため、環境負荷低減および製造コスト低減の観点から有利である。それだけでなく、本実施形態におけるジオポリマー組成物は、長時間において高流動性を確保することができるため、硬化体製品の製造現場において、ジオポリマー組成物を良好に取り扱うことができる。加えて、本実施形態におけるジオポリマー組成物によると、長期間の養生や高価な蒸気養生を行わなくても、例えば気中、封緘等の通常の養生によって短期間で高強度の硬化体が得られる。
【0095】
2.ジオポリマー硬化体
本実施形態におけるジオポリマー硬化体は、前述の実施形態におけるジオポリマー組成物の硬化物である。ジオポリマー硬化体は、任意の成型方法、施工方法等によって形成され得る任意の形状を有する。詳細には、ジオポリマー硬化体は、次の方法によって製造することができる。まず、調製後のジオポリマー組成物を、例えば、型枠を用いた成型、左官工事におけるコテ塗り、吹付け、はりつけ等の当業者に公知の任意の方法を用いて、成型または施工する。その後、成型または施工後のジオポリマー組成物に、蒸気養生等の複雑な処理を行わなくても、例えば気中、封緘等の通常の養生を行うことによって、短期間で高強度のジオポリマー硬化体を製造することができる。
【0096】
また、前述の実施形態におけるジオポリマー組成物から型枠を用いてジオポリマー硬化体を製造する場合、予め剥離剤等を型枠に適宜塗布しておくことが好ましい。剥離剤は、硬化後のジオポリマー組成物(すなわち、ジオポリマー硬化体)に剥離性を付与する当業者に公知の任意の剥離剤であれば特に限定されない。
【0097】
本実施形態におけるジオポリマー硬化体は、特に限定されないが、例えば、道路用または護岸用ブロック、雨水路または用水路等のブロック、タイル、煉瓦、下水管、パイル、ポール、枕木等のプレキャスト製品、場所打ちコンクリート、吹き付けコンクリート、コンクリート補修、ダムコンクリート等の現場打ち製品等を含む。
【実施例0098】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0099】
本実施例では、原料の配合比を変更した各種ジオポリマー組成物を実際に調製し、ジオポリマー組成物の評価(ジオポリマー組成物の流動性試験およびジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度試験)を行った。さらに、原料として使用した廃アルカリの物性を分析および測定した。
【0100】
1.ジオポリマー組成物の調製
各実施例および各比較例のジオポリマー組成物の原料およびその調製方法を、以下詳細に説明する。
【0101】
[ジオポリマー組成物の原料]
各実施例および各比較例で用いたジオポリマー組成物の原料は、以下の通りである。
・石炭灰(未処理の石炭灰):火力発電所で採取される産業副産物の石炭灰をそのまま使用した。具体的には、電気集塵機で捕捉されるフライアッシュと、ボイラー内に付着および成長し、それを粉砕機で解砕したボトムアッシュとの混合物を使用した。すなわち、品質を均一にするための厳密な前処理(換言すれば、JIS A 6201:2015で規定されているコンクリート用フライアッシュの規格に適合させるための処理)を施さず、未処理の石炭灰をそのまま使用した。
・高炉スラグ微粉末:神鋼スラグ製品株式会社製、「ケイメント」(比表面積4700cm/g程度)
・シリカフューム:ポゾリス ソリューションズ社製、「マスタークリート SF 5000」、嵩密度:2.2g/cm
・骨材(高炉スラグ細骨材):神鋼スラグ製品株式会社製、「シンコーサンド」(最大粒径2.5mm、ふるいの呼び寸法0.6mmの場合のふるい通過質量分率55%)
・添加水:水道水
・廃アルカリA:冷延鋼板の製造時における連続焼鈍ライン(CAL:Continuous Annealing Line)のアルカリ洗浄工程で採取した廃NaOH溶液(0.11質量%NaOH溶液、pH11以上)
・廃アルカリB:冷延鋼板の製造時における電解洗浄ライン(ECL:Electrical Cleaning Line)の電解工程で採取した廃NaOH溶液(0.17質量%NaOH溶液、pH11以上)
・廃アルカリC:冷延鋼板の製造時における電解洗浄ライン(ECL:Electrical Cleaning Line)の電解工程で採取した廃NaSiO溶液(2質量%NaSiO溶液、pH11以上)
・アクティベーター(水溶液):ポゾリス ソリューションズ社製、「マスタークリート AC 5025」
・分散剤(水溶液):日本特許第6290176号公報の実施例5に記載の化合物の水溶液(この化合物の水溶液は、次の方法によって製造することができる。まず、撹拌機と計量供給ポンプを備えた加熱可能な反応器に、ポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(平均分子量2000g/モル)300質量部、3,4-ジヒドロキシ安息香酸46.2質量部、2-フェノキシエチルホスフェート33質量部およびパラホルムアルデヒド19.9質量部を、90℃で窒素下に充填する。続いて、この反応混合物を撹拌しながら110℃に加熱し、次いでメタンスルホン酸(70%)41質量部を、反応温度が115℃を上回らないようにして25分以内で添加する。計量供給後、この反応混合物を110℃でさらに2.5時間撹拌する。その後、反応混合物を冷却し、水350質量部と混合し、混合物を30分間100℃で加熱する。最後に、50%苛性ソーダ液で中和してpH値を約7.0にする。)
【0102】
[ジオポリマー組成物の調製方法]
後の表1に示す各々の原料を、(組成物の全質量に対する)各質量%において配合し、実施例1~実施例3ならびに比較例1および比較例2におけるジオポリマー組成物を調製した。具体的には、まず、後の表1に示す各配合量における、活性フィラーとしての石炭灰(未処理の石炭灰)、高炉スラグ微粉末およびシリカフュームを混合し、この混合粉末にさらに骨材としての高炉スラグ細骨材を加えて混合した。最後に、アクティベーター(水溶液)、分散剤(水溶液)および廃アルカリ(廃アルカリA、廃アルカリBもしくは廃アルカリC)または添加水としての水道水を各配合量において混合物に加えて、ホバート式ミキサーを用いて混合した。
【0103】
ジオポリマー組成物中の合計水分量は、水道水の量(質量%)または廃アルカリA、廃アルカリBもしくは廃アルカリC中に含有されている水の量(質量%)と、アクティベーター中に含有されている水の量(質量%)と、分散剤中に含有されている水の量(質量%)とを加算することによって、算出した。廃アルカリA、廃アルカリBもしくは廃アルカリC中に含有されている水の量(質量%)、アクティベーター中に含有されている水の量(質量%)および分散剤中に含有されている水の量(質量%)は、それぞれの溶液の量(質量%)から、それぞれの固形分量(質量%)を減算することによって求めた。固形分量(質量%)は、エー・アンド・デイ社製のモイスチャーアナライザ(「MX-50」)を用いて、110℃で約15分間蒸発乾固することによって求めた。
【0104】
【表1】
【0105】
2.ジオポリマー組成物の評価
上記のように調製した各ジオポリマー組成物を用いて、ジオポリマー組成物の流動性試験およびジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度試験を行った。試験方法および試験結果を、以下詳細に説明する。
【0106】
[ジオポリマー組成物の流動性試験]
ジオポリマー組成物の流動性は、JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)に規定されるフロー試験に準拠して測定した。ただし、タンピングを行わない状態でフロー試験を行った。
【0107】
各経過時間(min)における流動性の測定結果を以下の表2に示す。さらに、図1のグラフにおいて、以下の表2に示すジオポリマー組成物の流動性試験結果を示す。
【0108】
【表2】
【0109】
上記表2および図1に示すように、水道水の代わりに略同量の廃アルカリを含む実施例1~実施例3のジオポリマー組成物は、比較例1~比較例2のジオポリマー組成物と比べて、長時間にわたり高い流動性を維持していた。ジオポリマー組成物の流動性の向上の要因の一つとして、粉体と廃アルカリとの親和性の影響が考えられる。すなわち、添加水(水道水)の代替として添加される廃アルカリは、粉体との親和性が高いため、ジオポリマー組成物中の粉体が良好に分散され、組成物の流動性が高くなったと考えられる。廃アルカリの粉体に対する親和性の物性については、後に詳細に述べる。
【0110】
なお、比較例1のジオポリマー組成物は分散剤の配合量が少ないため、その流動性が、比較例2のジオポリマー組成物の流動性と比べて顕著に低くなっていると想定される。
【0111】
[ジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度試験]
ジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度は、次の方法によって測定した。直径5cmかつ高さ10cmの円柱型モールドに、調製した各ジオポリマー組成物を装入し、後の表2に示す各材齢日まで封緘養生した後、成型物を脱型した。脱型後、JIS A 1108:2018に準拠して、成型物の一軸圧縮強度を測定した。
【0112】
各材齢日(強度測定日)における一軸圧縮強度試験の測定結果を、以下の表3に示す。さらに、図2のグラフにおいて、以下の表3に示すジオポリマー組成物の硬化物の一軸圧縮強度試験結果を示す。
【0113】
【表3】
【0114】
上記表3および図2に示すように、水道水の代わりに略同量の廃アルカリを含有する実施例1~実施例3のジオポリマー組成物の硬化物は、比較例1~比較例2のジオポリマー組成物の硬化物と比べて、より短期間の材齢日においてより高い一軸圧縮強度を有していた。
【0115】
3.廃アルカリの物性の分析および測定
実施例1~実施例3のジオポリマー組成物の原料として用いた廃アルカリA、廃アルカリBおよび廃アルカリCの物性を分析した。具体的には、各廃アルカリの粉体に対する親和性および粘度を測定した。それぞれの測定方法および測定結果を、以下詳細に説明する。
【0116】
[廃アルカリの粉体に対する親和性の測定]
廃アルカリの粉体に対する親和性は、次のような試験を行うことによって測定した。まず、200mlのビーカーにマグネットスターラーを入れ、その中に前述の実施例1等で用いた未処理の石炭灰と同じ石炭灰35gを添加した。次いで、廃アルカリA、廃アルカリBおよび水道水のいずれかを100mlビーカーへさらに添加し、マグネットスターラーを用いて5分間攪拌し、これらの液体と粉体を混合した。その後、マグネットスターラーの電源を切り、経過時間の経過に伴い沈殿して薄くなる固体層の厚さ(mm)を、定規を用いて計測した。すなわち、攪拌後の粉体沈殿速度がより遅い程、液体と粉体の分離速度がより遅く、液体と粉体の親和性がより高いと想定される。
【0117】
各攪拌後経過時間(min)における固体層の厚さ(mm)の測定結果を、以下の表4に示す。さらに、図3のグラフにおいて、以下の表4に示す廃アルカリの粉体に対する親和性の測定結果を示す。
【0118】
【表4】
【0119】
上記表4および図3に示すように、廃アルカリAまたは廃アルカリBとフライアッシュを混合した場合、水道水とフライアッシュを混合した場合と比較して、固体層の厚さの減少が緩やかであった。すなわち、液体と粉体の分離速度が遅かった。さらに、上記表4および図3には示していないが、廃アルカリCとフライアッシュを混合した場合も、水道水とフライアッシュを混合した場合と比較して、液体と粉体の分離速度が遅かった。
【0120】
これらの結果から、廃アルカリの粉体に対する親和性は、添加水の粉体に対する親和性と比較すると、高いことが分かる。このような廃アルカリの粉体に対する親和性が、実施例1~実施例3のジオポリマー組成物の高い流動性の要因の一つとなっていると想定される。
【0121】
[廃アルカリの粘度の測定]
廃アルカリA、廃アルカリB、廃アルカリCおよびイオン交換水の25℃における粘度を、JIS K 2283:2000に規定される動粘度試験方法に準拠して測定した。
【0122】
各液体の粘度の測定結果を、以下の表5に示す。なお、イオン交換水の粘度は、比較例1および比較例2のジオポリマー組成物に含まれる水道水の粘度と実質的に同じ値と考えられる。
【0123】
【表5】
【0124】
上記表5に示すように、実施例1~実施例3のジオポリマー組成物中に含まれる廃アルカリA、廃アルカリBおよび廃アルカリCの粘度は、イオン交換水の粘度と比べて高かった。このように、廃アルカリA、廃アルカリBおよび廃アルカリCの粘度が高いため、廃アルカリがジオポリマー組成物の原料に良好にまとわりつき、前述したように粉体との親和性が高くなったとも想定される。
図1
図2
図3