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特開2024-97146化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体および化学消防ポンプ自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097146
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体および化学消防ポンプ自動車
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A62C27/00 501
A62C27/00 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000449
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 良幸
(72)【発明者】
【氏名】玉田 将吾
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA03
2E189AE10
(57)【要約】
【課題】耐寒性を要しない薬剤を薬剤タンクに収容しても火災のときに使用することができる化学消防ポンプ自動車に使用される水・薬剤収容体を提供する。
【解決手段】化学消防ポンプ自動車1に積載され載置される水・薬剤収容体5であって、水23を収容する水タンク17と、水タンク17内に収容されている水23を加熱する水加熱部19と、消火用の薬剤25を収容する薬剤タンク21とを有し、薬剤タンク21に収容されている薬剤25が、水加熱部19で加熱された水23によって加熱されるように構成されている水・薬剤収容体5である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学消防ポンプ自動車に積載され載置される水・薬剤収容体であって、
水を収容する水タンクと、
前記水タンク内に収容されている水を加熱する水加熱部と、
消火用の薬剤を収容する薬剤タンクと、
を有し、前記薬剤タンクに収容されている薬剤が、前記水加熱部で加熱された水によって加熱されるように構成されている化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体。
【請求項2】
前記水加熱部は、外部電源によって熱を発し前記水タンク内に収容されている水を加熱する請求項1に記載の化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体。
【請求項3】
前記水タンクと前記薬剤タンクとは一体で形成されており、前記水タンクの水が収容される空間と、前記薬剤タンクの薬剤が収容される空間とは、板状の仕切り部材で仕切られている請求項1に記載の化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体。
【請求項4】
前記薬剤タンクは、前記水タンクの上側に位置しており、
前記水タンクに収容される水の量が所定の値以上であるときに、前記水タンクに収容される水が前記仕切り部材に接するように構成されている請求項3に記載の化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体。
【請求項5】
自動車本体と、
前記自動車本体に設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体と、
前記自動車本体に設けられ、前記水・薬剤収容体に収容されている水、もしくは、前記水・薬剤収容体に収容されている水と薬剤との混合物を、吐出口から所定の圧力で吐出する水・薬剤吐出部と、
を有する化学消防ポンプ自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体および化学消防ポンプ自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水タンクと薬剤タンクとを備え、水タンクに収容されている水を放出し、もしくは、水タンクに収容されている水と薬剤タンクに収容されている薬剤とを適宜混合して放出する化学消防ポンプ自動車が知られている(特許文献1参照)。なお、化学消防ポンプ自動車では、水タンクと薬剤タンクとが分かれて設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-225057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、寒冷地(たとえば北海道等の極寒地域)では、化学消防ポンプ自動車の薬液タンク(薬剤タンク)に積載(収容)される薬液(薬剤)は、凍結防止のために耐寒性能が必要とされる。本発明は、寒冷地において耐寒性を要しない薬剤を薬剤タンクに収容しても凍結することなく火災のときに使用することができる化学消防ポンプ自動車および化学消防ポンプ自動車に使用される水・薬剤収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に係る水・薬剤収容体は、化学消防ポンプ自動車に積載され載置される水・薬剤収容体であって、水を収容する水タンクと、前記水タンク内に収容されている水を加熱する水加熱部と、消火用の薬剤を収容する薬剤タンクとを有し、前記薬剤タンクに収容されている薬剤が、前記水加熱部で加熱された水によって加熱されるように構成されている化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体である。
【0006】
また、本発明の態様に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体では、前記水加熱部が、外部電源によって熱を発し前記水タンク内に収容されている水を加熱する。
【0007】
また、本発明の態様に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体では、前記水タンクと前記薬剤タンクとは一体で形成されており、前記水タンクの水が収容される空間と、前記薬剤タンクの薬剤が収容される空間とが、板状の仕切り部材で仕切られているである。
【0008】
また、本発明の態様に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体では、前記薬剤タンクが、前記水タンクの上側に位置しており、前記水タンクに収容される水の量が所定の値以上であるときに、前記水タンクに収容される水が前記仕切り部材に接するように構成されている。
【0009】
また、本発明の態様に係る化学消防ポンプ自動車は、自動車本体と、前記自動車本体に設けられている前記化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体と、前記自動車本体に設けられ、前記水・薬剤収容体に収容されている水、もしくは、前記水・薬剤収容体に収容されている水と薬剤との混合物を、吐出口から所定の圧力で吐出する水・薬剤吐出部とを有する化学消防ポンプ自動車である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、寒冷地において耐寒性を要しない薬剤を薬剤タンクに収容しても凍結することなく火災のときに使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る化学消防ポンプ自動車の概略構成を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるIB矢視図である。
図2】本発明の実施形態に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体の水加熱部を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る化学消防ポンプ自動車の水・薬剤吐出部等を示す図である。
図5】(a)は図2におけるVA矢視図であり、(b)は(a)に相当する図であって1つ目の変形例に係る水・薬剤収容体5aを示す図であり、(c)は(a)に相当する図であって2つ目の変形例に係る水・薬剤収容体5bを示す図であり、(d)は(a)に相当する図であって3つ目の変形例に係る水・薬剤収容体5cを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る化学消防ポンプ自動車1は、図1で示すように、自動車本体3と、化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体5と、水・薬剤吐出部7(図4参照)とを備えて構成される。なお、以下、「化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体5」を単に「水・薬剤収容体5」という。
【0013】
自動車本体3は、車体9と、エンジン(図示せず)と、車輪11とを備えて構成される。さらに、車体9は、水・薬剤収容体5、水・薬剤吐出部7(図4参照)、消火用ホース(図示せず)等が載置され設けられる荷台12と、運転者が搭乗する運転台13等とを備えて構成される。自動車本体3に水・薬剤収容体5の載置等がされていることで、化学消防ポンプ自動車1が得られる。なお、水・薬剤収容体5は、化学消防ポンプ自動車1に積載され載置される。すなわち、水・薬剤収容体5は、たとえば、図1で示すように荷台12の前端側(前部)に配置される。その他、薬剤収容体5が荷台12の中央や後部に配置される場合もある。
【0014】
水・薬剤吐出部7は、水・薬剤収容体5に収容されている水のみ、もしくは、水・薬剤収容体5に収容されている水と薬剤との混合物を、吐出口15(図4参照)から所定の圧力で吐出する。
【0015】
水・薬剤収容体5は、図2で示すように、水タンク17と水加熱部19と薬剤タンク21とを備えて構成される。水タンク17は、水23を内部に収容する。水加熱部19は、図3で示すように、水タンク17に設けられ、水タンク17内に収容されている水23の凍結を防止するために水23を直接加熱する。
【0016】
薬剤タンク21は、消火用の薬剤(薬液)25を内部に収容する。水・薬剤収容体5では、薬剤タンク21に収容されている薬剤25の凍結を防止するために、薬剤タンク21に収容されている薬剤25が、水タンク17に収容され水加熱部19で加熱された水23からの伝熱によって加熱される構成になっている。
【0017】
また、水・薬剤収容体5では、水加熱部19が、外部電源(たとえば、建屋に供給されているAC100Vの電源)から供給される電力によって熱を発し、水タンク17内に収容されている水23を加熱する。
【0018】
図2で示すように、水タンク17と薬剤タンク21とは一体で形成されている。水タンク17の水23が収容される空間(水収容室)27と、薬剤タンク21の薬剤25が収容される空間(薬剤収容室)29とは、熱伝導率が高く耐食性を備えた金属等の材料で板状に形成されている仕切り部材31で仕切られる。
【0019】
薬剤タンク21は、水タンク17の上側に位置する。水加熱部19は、水タンク17の下部で水タンク17に収容されている水23を加熱する。水タンク17に収容される水23の量が所定の値以上であるときに、水タンク17に収容される水23が仕切り部材31に接する構成になっている。そして、仕切り部材31を介して水23から薬剤25へ熱が伝わる。
【0020】
水タンク17と薬剤タンク21と仕切り部材31とは、たとえば、板状の2相ステンレス鋼で構成されている。2相ステンレス鋼とは、オーステナイト系ステンレスとフェライト系ステンレスを所定の割合で二相混合したステンレス鋼である。JIS規格では、SUS821L1、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4L等が2相系ステンレス鋼に属する。
【0021】
ここで、水タンク17と薬剤タンク21との外壁(仕切り部材31を除く部位)をタンク筐体33とする。タンク筐体33の外形形状は、凹部35が形成されている点を除けば、直方体状になっている。凹部35は、幅方向では、タンク筐体33の中央部に位置しており、上下方向では、タンク筐体33の下端から上側にへこんでおり、前後方向では、タンク筐体33の前端から後端にかけてタンク筐体33を貫通する態様で設けられる。
【0022】
タンク筐体33の3枚の底板部37(37A、37B、37C)は、矩形な平板状に形成され、厚さ方向が上下方向になっている。3枚の底板部37のうちの幅方向中央の底板部37Bは、凹部35を形成する。タンク筐体33の6枚の側板部39(39A、39B、39C、39D、39E、39F)も、矩形な平板状に形成される。なお、凹部35の代わりに凸部が設けられている場合や凹部35が設けられていない場合も有る。上記凸部は、たとえば、タンク筐体33の下端から下方に突出している。そして、上記凸部に水加熱部19が設けられている。
【0023】
6枚の側板部39のうちの2枚の側板部39A、39Cは、厚さ方向が幅方向になっており、タンク筐体33の幅方向の両端の側板部になっている。6枚の側板部39のうちの他の2枚の側板部39B、39Dは、厚さ方向が前後方向になっており、タンク筐体33の前後方向の両端の側板部になっている。なお、他の2枚の側板部39B、39Dには、凹部35を構成する矩形状の切り欠きが設けられている。6枚の側板部39のうちの残り2枚の側板部39E、39Fは、厚さ方向が幅方向になっており、凹部35を形成している。タンク筐体33の1枚の上板部41は、矩形な平板状に形成されており、厚さ方向が上下方向になっている。
【0024】
仕切り部材31は、タンク筐体33内でタンク筐体33に一体で設けられ、水収容室27の空間と薬剤収容室29の空間とを分ける。仕切り部材31は、矩形な平板状の第1の部位43と、矩形な平板状の第2の部位45とを備えて構成される。第1の部位43は、厚さ方向が上下方向になり、上下方向ではタンク筐体33の中間部に位置し、幅方向ではタンク筐体33の一方の側に位置している。第2の部位45は、厚さ方向が幅方向になり、上下方向ではタンク筐体33の上側に位置し、幅方向ではタンク筐体33の中間部に位置している。
【0025】
第1の部位43の前後方向の前端(辺)は、この全長にわたってタンク筐体33の側板部39Bに接合され、第1の部位43の前後方向の後端(辺)は、この全長にわたってタンク筐体33の側板部39Dに接合される。第1の部位43の幅方向の一方の端(辺)は、この全長にわたってタンク筐体33の側板部39Cに接合される。
【0026】
第2の部位45の前後方向の前端(辺)は、この全長にわたってタンク筐体33の側板部39Bに接合され、第2の部位45の前後方向の後端(辺)は、この全長にわたってタンク筐体33の側板部39Dに接合される。第2の部位45の上下方向の下端(辺)は、この全長にわたって、第1の部位43の幅方向の他方の端(辺)に接合される。第2の部位45の上下方向の上端(辺)は、この全長にわたって、タンク筐体33の上板部41に接合される。
【0027】
これにより、薬剤タンク21の薬剤収容室29は、直方体状になっている。また、水タンク17の水収容室27は、直方体から凹部35と薬剤収容室29とを取り除いた形状になっている。
【0028】
タンク筐体33の上板部41には、2つの貫通穴47(47A、47B)が設けられており、2つの貫通穴47のうちの1つ目の貫通穴47Aは、水タンク17の水収容室27とタンク筐体33の外部とをつないでいる。2つの貫通穴47のうちの2つ目の貫通穴47Bは、薬剤タンク21の薬剤収容室29とタンク筐体33の外部とをつないでいる。
【0029】
そして、1つ目の貫通穴47Aによって、水タンク17内に水23を入れるようになっており、2つ目の貫通穴47Bによって、薬剤タンク21内に薬剤25を入れるようになっている。タンク筐体33の上板部41には、2つの貫通穴47のそれぞれを閉じる蓋49が一体的に設置される。
【0030】
水加熱部19は、図3で示すように、水23を加熱するヒーター部51と水23の温度を検知する温度検知部(シース熱電対)53と制御部(デジタル指示調節計)55とを備えて構成される。制御部55は、温度検知部53が検知した水23の温度に応じて、ヒーター部51の発熱量を制御する。これにより、水収容室27内の水23の温度を所定の値に保つ。
【0031】
水・薬剤吐出部7は、図4で示すように、ポンプ57とメータリングバルブ59とバルブ61(61A、61B、61C、61D、61E)と逆止弁63とを備えて構成される。ポンプ57と水収容室27とは配管65Aでつながる。配管65Aの一方の端は、水収容室27内の下端部に位置しており、配管65Aの他方の端は、ポンプ57の吸引口に接続される。ポンプ57の吐出口には、逆止弁63が設けられている。
【0032】
配管65Aの中間部にはバルブ(たとえばボールバルブ)61Aが設けられている。逆止弁63とバルブ(たとえばボールバルブ)61Bとは、逆止弁63から延びている配管65Bでつながる。バルブ61Bの、配管65Bとは反対側の開口部は、水23または水23と薬剤25との混合物の吐出口15になる。ポンプ57は、自動車本体3のエンジンによる回転力で稼働する。タンク筐体33の凹部35には、自動車本体3のエンジンとポンプ57とをつなぐ駆動シャフトが通る。また、吐出口15には、ホース(図示せず)の一方の端が接続される。このホースは自動車本体3に載置されており、火災現場で火点の近くまで自動車本体3から延出する。
【0033】
配管65Aと配管65Bには、配管65Dが接続されている。配管65Dの一方の端は、配管65Bの、逆止弁63とバルブ61Bとの中間部に接続される。配管65Dの他方の端は、配管65Aの、ポンプ57とバルブ61Aとの中間部に接続される。
【0034】
配管65Dの中間部には、バルブ(たとえば手動開閉バルブ)61Cが設けられており、配管65Dの中間部であってバルブ61Cと配管65Aへの接続部位との間には、メータリングバルブ59が設けられている。薬剤収容室29とメータリングバルブ59とは配管65Cでつながる。配管65Cの一方の端は、薬剤収容室29内の下端部に位置しており、配管65Cの他方の端は、メータリングバルブ59の薬剤供給口に接続される。配管65Cの中間部には、バルブ(たとえばボールバルブ)61Dが設けられている。
【0035】
なお、メータリングバルブ59を操作することで、水23と薬剤25との混合比を適宜変更することができる。また、メータリングバルブ59は手動で操作もしくは電動で操作できる。
【0036】
配管65Aには、配管65Eが接続されている。配管65Eの一方の端は、配管65Aの中間部であってバルブ61Aと配管65Dが接続されている部位との中間部に接続されている。配管65Eの他方の端は、バルブ(たとえばボールバルブ)61Eに接続される。バルブ61Eの、配管65Eとは反対側の開口部は、吸水口67になる。この吸水口67を用いて、配管61Aに水タンク17以外の他の水源から水は供給される。
【0037】
ところで、タンク筐体33の外面を断熱材で覆ってもよい。また、水収容室27の水23の温度の偏りを少なくするために、水収容室27の水23を攪拌する水攪拌部を設けてもよい。この水攪拌部も、たとえば、外部電源で駆動する。
【0038】
次に、化学消防ポンプ自動車1の動作について説明する。待機状態では、水収容室27内が水23で満たされており、薬剤収容室29内が薬剤25で満たされている。水収容室27内が水23で満たされていることで、水23の水面は、仕切り部材31の第1の部位43よりも上側に位置しており、上下方向で仕切り部材31の第2の部位45の中間部(たとえば上端の近傍)に位置している。
【0039】
また、待機状態では、外部電源によって水加熱部19が水収容室27内の水23を適宜加熱しており、総てのバルブ61は閉じられており、水23、薬剤25の流路が遮断されており、ポンプ57は稼働を停止している。
【0040】
火災が発生した場合、外部電源を供給している電源コードを取り外し水加熱部19での水23の加熱を停止する。続いて、化学消防ポンプ自動車1を走らせて火災現場に向かい、火災現場に到着後、化学消防ポンプ自動車1を所定の場所に停止させる。
【0041】
続いて、火災がA火災(普通火災;木材、紙、衣類などが燃える火災)であるか、B火災(油火災)であるかを見極めるとともに、吐出口15からホース(図示せず)を延出しホース先端のノズル(図示せず)を火災現場(火点)に向ける。
【0042】
火災がA火災である場合、バルブ61Aを開き、ポンプ57を稼働し、バルブ61Bを開くとともに、ホース先端のノズルから水を放出し消火にあたる。なお、外部水源の水が使用可能であれば、吸水口67から供給された水を用いて消火を行ってもよい。
【0043】
火災がB火災である場合、バルブ61A、61Cを開き、ポンプ57を稼働し、バルブ61Bを開くとともに、ホース先端のノズルから水23と薬剤25とが混合された消火剤を放出し消火にあたる。この場合においても、外部水源の水が使用可能であれば、吸水口67から供給された水を用いて消火剤を生成し、この消火剤で消火を行ってもよい。
【0044】
なお、水・薬剤収容体5の水収容室27での水23の収容量(最大収容量)と、薬剤収容室29での薬剤25の収容量(最大収容量)とを比較すると、水収容室27での水23の収容量のほうが、薬剤収容室29での薬剤25の収容量よりも多い。しかし、水収容室27で満タンになっている水23と薬剤収容室29で満タンになっている薬剤25とを用いて、水23と薬剤25とが混合された消火剤を生成し放出し続けると、水収容室27内の水23のほうが薬剤収容室29内の薬剤25よりも先に無くなる。換言すれば、使用態様における(使用比率における)、薬剤収容室29での薬剤25の最大収容量は、水収容室27での水23の最大収容量よりも多くなっている。これは、消火剤(水23と薬剤25との混合物)を生成するときにおける水23の使用量が薬剤25の使用量よりも多いからである。
【0045】
したがって、水収容室27で満タンになっている水23と薬剤収容室29で満タンになっている薬剤25とを用いて、水23と薬剤25とが混合された消火剤を生成し放出し続けると、水収容室27内の水23が無くなっても、薬剤収容室29内の薬剤25は残る。これにより、水収容室27内の水23が無くなっても、吸水口67から供給された水を用いて消火剤(水23と薬剤25との混合物)を生成し、この消火剤で消火を行うことができる。
【0046】
水・薬剤収容体5では、薬剤タンク21に収容されている薬剤25が、水タンク17に収容され水加熱部19で加熱された水23によって加熱されるように構成されている。これにより、寒冷地において耐寒性を要しない薬剤25を薬剤タンク21に収容してあっても、薬剤25が凍結状態にならず、火災のときに薬剤25を使用することができる。
【0047】
また、水・薬剤収容体5では、水加熱部19が外部電源によって水タンク17の水23を加熱するようになっている。これにより、化学消防ポンプ自動車1が待機状態にあり化学消防ポンプ自動車1のエンジンが稼働していなくても、水加熱部19が水タンク17の水23の凍結、薬剤タンク21の薬剤25の凍結を長時間にわたって防止することができる。
【0048】
なお、火災が発生し化学消防ポンプ自動車1が火災現場に向かって走行するときには、外部電源による水加熱部19への電力の供給が停止され水加熱部19での発熱が停止される。しかし、化学消防ポンプ自動車1が火災現場に向かって走行する時間は長くとも1時間程度であるので、比熱の大きい水23が火災現場での使用時に凍結していることはなく、水23で温められる薬剤25が火災現場での使用時に凍結していることは無い。
【0049】
また、水・薬剤収容体5では、水タンク17と薬剤タンク21とが一体で形成されているので、水・薬剤収容体5がコンパクトになっており軽量化されている。また、水・薬剤収容体5では、水タンク17の水収容室27と薬剤タンク21の薬剤収容室29とが、金属製の板状の仕切り部材31で仕切られている。これにより、水タンク17に収容されている水23から薬剤タンク21に収容されている薬剤25への熱伝導が効率良くされる。
【0050】
また、水・薬剤収容体5では、薬剤タンク21が水タンク17の上側に位置している。これにより、水タンク17内の、対流によって温度が高くなっている水23で、薬剤タンク21に収容されている薬剤25を効率よく温めることができる。また、水・薬剤収容体5では、水タンク17に収容される水23の量が所定の値以上であるときに、水タンク17に収容される水23が仕切り部材31に接するように構成されている。これにより、薬剤タンク21の薬剤収容室29の容積が小さくても、薬剤タンク21を水タンク17の上側に位置させることが容易になる。
【0051】
なお、化学消防ポンプ自動車1が待機状態にあるときには、水タンク17に収容される水23が満タン状態になっており、薬剤タンク21に収容される薬剤25も満タン状態になっている。これにより、水タンク17に収容される水23によって薬剤タンク21に収容されている薬剤25を、仕切り部材31を介して確実に加熱することができる。
【0052】
また、従来の化学消防ポンプ自動車の水タンク、薬剤タンクは、表面にメッキがされている炭素鋼、SUS304等のステンレス鋼、PP樹脂、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)等で形成されている。炭素鋼、SUS304等のステンレス鋼で水タンク、薬剤タンクを形成すると、重くなってしまう。また、PP樹脂、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)等で水タンク、薬剤タンクを形成すると、強度不足を起こすおそれが高くなる。
【0053】
これに対して、水・薬剤収容体5では、水タンク17と薬剤タンク21とが2相ステンレス鋼で構成されているので、耐食性を高め、軽量化をはかることができ、高強度化をはかることができる。
【0054】
なお、水加熱部19は図3に図示される位置に限定されることはなく、たとえば、水加熱部19を薬剤タンク21の直下とすることで、さらに効率よく薬剤タンク21(薬剤25)を加熱してもよい。
【0055】
また、水・薬剤収容体5での水23と薬剤25との混合比を適宜変更して混合するメータリングバルブ59の構成に限定されることはなく、水23と薬剤25との混合比を適宜変更するために、たとえば、特開2016-174900号公報で示す混合装置を使用してもよい。
【0056】
特開2016-174900号公報で示す混合装置は、ベーンポンプ(図示せず)とピストンポンプ(図示せず)とカップリング(図示せず)とを備えて構成される。上記ベーンポンプは、ポンプ57によって圧送される水23の流れで駆動する。上記ピストンポンプは、上記ベーンポンプに連動して駆動され、上記ベーンポンプで圧送される水量に応じた量の薬剤25を薬剤タンク21から吸引し、ポンプ57に圧送される水量に応じた量の薬剤25を水23と混合する。上記カップリングは、上記ベーンポンプの駆動力を上記ピストンポンプに伝達する。特開2016-174900号公報で示す混合装置が駆動を開始した直後から、常に一定の混合比率の消火剤が放出される。
【0057】
また、特開2016-174900号公報で示す混合装置や水23と薬剤25との混合比を適宜変更して混合するメータリングバルブ59の構成に限定されることはない。水タンク17と薬剤タンク21を有する他の構成の混合装置(たとえば、薬剤25と水23の混合比を適宜設定変更することができる混合装置)を採用してもよい。
【0058】
ところで、図2図5(a)で示す水・薬剤収容体5では、薬剤タンク21が幅方向の一方の端部に設けられているが、図5(b)で示す水・薬剤収容体5aのように、薬剤タンク21が幅方向の中間部に設けられていてもよい。水・薬剤収容体5aでは、仕切り部材31が、1枚の矩形状の第1の部位43と2枚の矩形状の第2の部位45とで構成される。また、水・薬剤収容体5aでは、図2で示す水・薬剤収容体5のように、薬剤タンク21が上部に設けられている。これにより、図5(b)で示す右側の参照符号17で示す水タンクと図5(b)で示す左側の参照符号17で示す水タンクとは、水・薬剤収容体5の下側の部位で互いがつながっている。
【0059】
また、図5(c)で示す水・薬剤収容体5bのように、薬剤タンク21が幅方向および前後方向で中間部に設けられていてもよい。水・薬剤収容体5bでは、仕切り部材31が、1枚の矩形状の第1の部位43と4枚の矩形状の第2の部位45とで構成される。水・薬剤収容体5bでも、薬剤タンク21が上部に設けられている。
【0060】
また、図5(d)で示す水・薬剤収容体5cのように、薬剤タンク21が幅方向および前後方向で中間部に設けられているとともに、仕切り部材31が、1枚の円形状の第1の部位43と1つの円筒状の部位45とで構成されていてもよい。水・薬剤収容体5cでも、薬剤タンク21が上部に設けられている。
【0061】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 化学消防ポンプ自動車
3 自動車本体
5 化学消防ポンプ自動車の水・薬剤収容体
7 水・薬剤吐出部
15 吐出口
17 水タンク
19 水加熱部
21 薬剤タンク
23 水
25 消火用の薬剤
27 水が収容される空間(水収容室)
29 薬剤が収容される空間(薬剤収容室)
31 仕切り部材
図1
図2
図3
図4
図5