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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097159
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20240710BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240710BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B3/00 R
B66B5/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000475
(22)【出願日】2023-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠介
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CB42
3F303EA03
3F304BA26
3F304EA22
3F304ED18
3F502HB20
3F502HC07
3F502JA08
3F502JA10
3F502JB21
(57)【要約】
【課題】エレベータのドアに見られる異常の兆候に起因して、サービスロボットが、エレベータに乗車できない事態の発生、あるいは、エレベータから降車できない事態の発生を抑止すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、エレベータが停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する遠隔監視システムと、エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置と、を含む。エレベータシステムは、各階床のドアが正常に動作するかどうかを示す診断結果情報を記憶し、移動体から送信される建物の第1の階床から第2の階床に移動したい旨の移動要求を受信し、診断結果情報を参照して、移動要求にエレベータを応答させるか否かを判断し、当該判断の結果を示す応答可否通知を移動体に送信する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータが停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する遠隔監視システムと、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置と、を含むエレベータシステムであって、
前記各階床のドアが正常に動作するかどうかを示す診断結果情報を記憶する記憶手段と、
前記移動体から送信される前記建物の第1の階床から第2の階床に移動したい旨の移動要求を受信する受信手段と、
前記記憶された診断結果情報を参照し、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させるか否かを判断する管理手段と、
前記管理手段による判断結果を示す応答可否通知を前記移動体に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記管理手段は、
前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとが共に正常に動作することが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させると判断し、
前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとのうちの少なくとも一方に異常の兆候があることが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させないと判断することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記移動体は、
受信した応答可否通知の内容が前記移動要求に応答可能な旨を示す場合、現在位置から前記エレベータが到着する前記第1の階床の乗場まで移動し、
受信した応答可否通知の内容が前記移動要求に応答できない旨を示す場合、前記現在位置に留まることを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記送信手段は、
前記応答可否通知の内容が前記移動要求に応答できない旨を示す場合、当該応答可否通知を前記遠隔監視システムにも送信し、前記遠隔監視システムの監視員に対して、前記建物への保守員の派遣を促すことを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記管理手段は、前記エレベータの利用者が前記移動体と共に前記第1の階床から前記第2の階床まで移動する場合、前記記憶された診断結果情報を参照せずに、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させると判断し、
前記送信手段は、前記管理手段による判断結果に基づいて、前記移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を前記移動体に送信することを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記管理手段は、前記移動要求が受信された時点で、前記第2の階床以降の階床まで移動する旨の行先階呼びが登録されていた場合、前記利用者が前記移動体と共に前記第1の階床から前記第2の階床まで移動すると判断し、前記記憶された診断結果情報を参照せずに、前記送信手段に前記移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を前記移動体に送信させることを特徴とする、
請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記移動体は、
前記エレベータ内に異常が生じていることを検出した場合、この旨を前記エレベータ制御装置に通知することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記移動体は、
前記エレベータの床が汚損しているまたは前記エレベータの照明が点灯しないことを検出した場合、この旨を前記エレベータ制御装置に通知することを特徴とする、
請求項7に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内を自律走行型ロボットのような移動体(以下、サービスロボットと表記)が移動(走行)することによって、当該建物内において荷物を搬送(運搬)するサービスや当該建物内を警備するサービスのような各種サービスを提供することが考えられている。
【0003】
サービスロボットが移動する建物が例えば複数階建てのビルである場合、当該サービスロボットは、当該ビルに設けられているエレベータを利用することによって、当該ビル内の複数の階床(フロア)を移動することができる。
【0004】
しかしながら、エレベータのドアに異常の兆候が見られる場合に、平常時と同様に、サービスロボットがエレベータを利用して移動してしまうと、当該サービスロボットが、エレベータに乗車できない、あるいは、エレベータから降車できない可能性がある。これによれば、サービスロボットが、乗場に取り残されてしまう、あるいは、エレベータ内に閉じ込められてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-18645号公報
【特許文献2】特開2021-95258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、エレベータのドアに見られる異常の兆候に起因して、サービスロボットが、エレベータに乗車できない事態の発生、あるいは、エレベータから降車できない事態の発生を抑止することが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータが停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する遠隔監視システムと、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置と、を含む。前記エレベータシステムは、前記各階床のドアが正常に動作するかどうかを示す診断結果情報を記憶する記憶手段と、前記移動体から送信される前記建物の第1の階床から第2の階床に移動したい旨の移動要求を受信する受信手段と、前記記憶された診断結果情報を参照し、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させるか否かを判断する管理手段と、前記管理手段による判断結果を示す応答可否通知を前記移動体に送信する送信手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係る診断結果情報を説明するための図である。
図3図3は、同実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
図4図4は、同実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例を説明するための図である。
図5図5は、同実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
本実施形態においては、各種サービスを提供するために、建物内を移動体が移動する場合を想定する。この移動体は、例えば建物内において荷物を搬送(運搬)するサービスや当該建物内を警備するサービス等を提供する自律走行型ロボット(以下、サービスロボットと表記)を含む。
【0011】
ここで、サービスロボットが移動する建物が複数の階床(フロア)を有するビル等である場合、当該サービスロボットは、例えば当該ビルに設置されているエレベータを利用することによって複数の階床を移動することができる。
【0012】
本実施形態に係るエレベータシステムは、ある階床の乗場ドアに異常の兆候があることが確認されてから、当該異常の兆候が保守員による保守作業により解消(修繕)されるまでの間に有用に機能するシステムである。
【0013】
以下、図1を参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの概要について説明する。図1に示すように、エレベータシステムは、遠隔監視システム10と、乗りかご20と、エレベータ制御装置30と、サービスロボット40とにより構成される。
【0014】
遠隔監視システム10は、エレベータの状態を遠隔から監視するシステムであり、図1に示すように、遠隔ドア診断指令部11と、遠隔ドア診断結果受信部12と、応答可否通知受信部13と、を備えている。
【0015】
遠隔ドア診断指令部11は、エレベータ(乗りかご20)が停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する、遠隔ドア診断の実施を指示する旨の遠隔ドア診断指令をエレベータ制御装置30に送信する。
【0016】
遠隔ドア診断結果受信部12は、エレベータ制御装置30により実施された遠隔ドア診断の結果を示す診断結果情報を受信する。遠隔監視システム10の監視員は、受信された診断結果情報を参照して、エレベータのドアの状態を遠隔から監視することができる。例えば、遠隔監視システム10の監視員は、診断結果情報に基づきエレベータのドアに異常があることを確認した場合、当該エレベータが設置されている建物に保守員を派遣することができる。
【0017】
応答可否通知受信部13は、後述するエレベータ制御装置30による判断結果に関する通知であって、サービスロボット40からの後述する移動要求に乗りかご20を応答させるか否かを示す応答可否通知を受信する。遠隔監視システム10の監視員は、受信された応答可否通知を参照して、エレベータとサービスロボット40とが連携して動作することができているかどうかを遠隔から監視することができる。例えば、遠隔監視システム10の監視員は、応答可否通知に基づきエレベータとサービスロボット40とが連携して動作することができていないことを確認した場合、当該エレベータが設置されている建物に保守員を派遣することができる。
【0018】
エレベータ制御装置30は、例えばインターネットのようなネットワーク(公衆回線網)を介して、遠隔監視システム10およびサービスロボット40と通信可能に接続される。エレベータ制御装置30は、乗りかご20を昇降動作させるための図示せぬ巻上機の制御や、ドアの戸開閉制御、乗りかご20内の各種機器類(例えば、照明等)の制御、サービスロボット40と連携した動作の制御等を行う。
【0019】
図1に示すように、エレベータ制御装置30は、制御部31と、遠隔ドア診断指令受信部32と、遠隔ドア診断結果管理部33(管理手段)と、診断結果情報記憶部34(記憶手段)と、移動要求受信部35(受信手段)と、応答可否通知送信部36(送信手段)と、を備えている。
【0020】
制御部31は、各部32,33,35,36の動作を制御すると共に、各部32,33,35,36からの各種要求に基づき乗りかご20の動作を制御する。
【0021】
遠隔ドア診断指令受信部32は、遠隔監視システム10から送信された遠隔ドア診断指令を受信し、当該遠隔ドア診断指令を制御部31に転送する。制御部31は、遠隔ドア診断指令受信部32から転送された遠隔ドア診断指令を受けると、当該遠隔ドア診断指令に従って、遠隔ドア診断を実施する。より詳しくは、制御部31は、乗りかご20を各階床に移動させ、各階床でドアを開閉させることで、当該乗りかご20のドア(かごドア)と、当該かごドアに係合して開く各階床の乗場ドアとが正常に動作するかどうかを確認する。
【0022】
遠隔ドア診断結果管理部33は、制御部31により実施された遠隔ドア診断の結果を示す診断結果情報を診断結果情報記憶部34に記憶する(書き込む)と共に、当該診断結果情報を、応答可否通知送信部36を介して、遠隔監視システム10に送信する。この際に、遠隔監視システム10の監視員に対して、保守員の派遣を促すことができる。
【0023】
移動要求受信部35は、サービスロボット40から送信された移動要求を受信し、当該移動要求を遠隔ドア診断結果管理部33に転送する。移動要求は、サービスロボット40が出発階に相当する階床(第1の階床)から行先階に相当する階床(第2の階床)に移動したい旨の要求であり、出発階と行先階を示す情報を含む。なお、遠隔ドア診断結果管理部33は、移動要求受信部35から転送された移動要求を受けると、当該移動要求に乗りかご20を応答させるか否かを判断する。つまり、遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40を、移動要求により示される出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることが可能か否かを判断する。
【0024】
応答可否通知送信部36は、遠隔ドア診断結果管理部33による判断結果に関する通知であって、サービスロボット40からの移動要求に乗りかご20を応答させるか否かを示す応答可否通知(換言すると、サービスロボット40を、移動要求により示される出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることが可能か否かを示す通知)を、当該サービスロボット40に送信する。なお、上記したように、応答可否通知は、遠隔監視システム10にも送信される。
【0025】
図1に示すように、サービスロボット40は、移動要求送信部41と、応答可否通知受信部42と、移動制御部43と、を備えている。
【0026】
移動要求送信部41は、上記した移動要求をエレベータ制御装置30に送信する。なお、移動要求は、例えば、サービスロボット40が各種サービスを提供する際にエレベータを利用する必要がある場合に、当該サービスロボット40に搭載されているCPU等により生成される。
【0027】
応答可否通知受信部42は、エレベータ制御装置30から送信された応答可否通知を受信し、当該応答可否通知を移動制御部43に転送する。
【0028】
移動制御部43は、応答可否通知受信部42から転送された応答可否通知に基づいて、サービスロボット40の移動を制御する。より詳しくは、移動制御部43は、乗りかご20が移動要求送信部41から送信された移動要求に応答可能な旨の応答可否通知(換言すると、エレベータを利用してサービスロボット40を移動させることが可能な旨の通知)を受けると、現在位置から当該移動要求により示される出発階の乗場までサービスロボット40を移動させる。また、移動制御部43は、乗りかご20が移動要求送信部41から送信された移動要求に応答できない旨の応答可否通知(換言すると、エレベータを利用してサービスロボット40を移動させることができない旨の通知)を受けると、現在位置に留まるようにサービスロボット40を制御する。
【0029】
次に、図2を参照して、診断結果情報について説明する。図2は、診断結果情報記憶部34に記憶される診断結果情報のデータ構造の一例を説明するための図である。なお、ここでは、本実施形態に係るエレベータシステムが、3階建ての建物に設置された1台のエレベータを含む場合を想定する。
【0030】
診断結果情報は、遠隔ドア診断の結果を示す情報であり、図2に示すように、診断項目と、診断結果とを対応づけて含む情報である。診断項目は、遠隔ドア診断における診断項目を示し、例えば、かごドアと、各階床の乗場ドアとを示す。診断結果は、対応づけられた診断項目に対して実施された遠隔ドア診断の結果を示し(換言すると、対応づけられた診断項目により示されるかごドアまたは乗場ドアの状態を示し)、「正常」、「異常」、「異常の兆候あり」のいずれかを示す。
【0031】
図2に示す例では、診断結果情報記憶部34には、診断結果情報34a~34dが記憶されている。
【0032】
診断結果情報34aは、診断項目「かごドア」と、診断結果「正常」とを対応づけて含む。このような診断結果情報34aによれば、かごドアに対して実施された遠隔ドア診断の結果、当該かごドアの状態が正常であったことが示されている。
【0033】
診断結果情報34bは、診断項目「乗場ドア:1階」と、診断結果「正常」とを対応づけて含む。このような診断結果情報34bによれば、1階の乗場ドアに対して実施された遠隔ドア診断の結果、当該1階の乗場ドアの状態が正常であったことが示されている。
【0034】
診断結果情報34cは、診断項目「乗場ドア:2階」と、診断結果「正常」とを対応づけて含む。このような診断結果情報34cによれば、2階の乗場ドアに対して実施された遠隔ドア診断の結果、当該2階の乗場ドアの状態が正常であったことが示されている。
【0035】
診断結果情報34dは、診断項目「乗場ドア:3階」と、診断結果「異常の兆候あり」とを対応づけて含む。このような診断結果情報34dによれば、3階の乗場ドアに対して実施された遠隔ドア診断の結果、当該3階の乗場ドアに異常の兆候があることが確認されたことが示される。
【0036】
続いて、図3のシーケンスチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例について説明する。なお、ここでは、遠隔監視システム10からの遠隔ドア診断指令に応じて、エレベータ制御装置30による遠隔ドア診断が既に実施され、当該遠隔ドア診断の結果を示す診断結果情報が、診断結果情報記憶部34に既に記憶されている場合を想定する。
【0037】
ここで、サービスロボット40は、各種サービスを提供するために建物内を移動する必要があるが、当該サービスロボット40の内部には、当該サービスロボット40が移動する建物(各階床)の地図を示す地図情報が予め保持されているものとする。また、サービスロボット40は、当該サービスロボット40の現在位置を検知する機能(以下、位置検知機能と表記)を有しているものとする。なお、位置検知機能は、例えばビーコンやGPS(Global Positioning System)等を利用することによって実現され得るが、他の技術を適用することによって実現されてもよい。
【0038】
この場合、サービスロボット40は、当該サービスロボット40の内部に保持されている地図情報、位置検知機能によって検知されたサービスロボット40の現在位置および上記したサービスを提供するために設定された目的地等に基づいて、サービスロボット40が現在位置から目的地に移動するためにエレベータを利用する際の出発階および行先階を特定する(ステップS1)。例えば、現在位置が第1の階床上の所定の位置であり、目的地が第2の階床上の所定の位置である場合には、出発階として第1の階床、行先階として第2の階床が特定される。なお、ステップS1の処理等は、サービスロボット40に搭載されているCPU等によって実行される。
【0039】
ステップS1の処理が実行されると、サービスロボット40は、当該ステップS1の処理において特定された出発階および行先階を示す移動要求(つまり、サービスロボット40が出発階から行先階に移動したい旨の移動要求)を生成し、当該移動要求をエレベータ制御装置30に送信する(ステップS2)。
【0040】
ステップS2においてサービスロボット40から送信された移動要求は、エレベータ制御装置30に含まれる移動要求受信部35により受信され、当該移動要求受信部35により遠隔ドア診断結果管理部33に転送される。
【0041】
遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40から送信された移動要求を受けると、当該移動要求により示される出発階に対応した診断結果情報(より詳しくは、出発階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報)と、当該移動要求により示される行先階に対応した診断結果情報(より詳しくは、行先階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報)とを、診断結果情報記憶部34から取得する(ステップS3)。
【0042】
その後、遠隔ドア診断結果管理部33は、出発階に対応する診断結果情報を参照して、当該出発階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認し、かつ、行先階に対応する診断結果情報を参照して、当該行先階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認する(ステップS4)。
【0043】
ステップS4の処理による確認の結果、出発階の乗場ドアと行先階の乗場ドアとの両方に異常の兆候がない、つまり、出発階の乗場ドアと行先階の乗場ドアとが共に正常に動作することが確認された場合(図3の[両者共に正常]の場合)、遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40を、受信された移動要求により示される出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることができると判断し、当該移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を、応答可否通知送信部36を介して、サービスロボット40に送信する(ステップS5)。
【0044】
サービスロボット40は、エレベータ制御装置30から送信された応答可否通知であって、ステップS2の処理において送信した移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を受信すると、エレベータが到着する乗場への移動を開始する(ステップS6)。この場合、サービスロボット40は、当該サービスロボット40の内部に保持されている地図情報および当該サービスロボット40の現在位置に基づいて、当該現在位置からエレベータの乗場までの経路を決定(計算)し、当該決定された経路に沿って移動する。これによれば、サービスロボット40は、エレベータの乗場に到着した後に、当該エレベータを利用して行先階に移動することができる。また、サービスロボット40は、エレベータを利用して行先階に移動すると、当該行先階における現在位置(つまり、降車位置)から目的地までの経路を決定し、当該決定された経路に沿って移動することにより、当該目的地まで移動することができる。
【0045】
一方、上記したステップS4の処理による確認の結果、出発階の乗場ドアと行先階の乗場ドアとのうちの少なくとも一方に異常の兆候があることが確認された場合(図3の[少なくとも一方に異常の兆候あり]の場合)、遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40を、受信された移動要求により示される出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることができないと判断し、当該移動要求に応答できない旨の応答可否通知を、応答可否通知送信部36を介して、サービスロボット40に送信する(ステップS7)。
【0046】
サービスロボット40は、エレベータ制御装置30から送信された応答可否通知であって、ステップS2の処理において送信した移動要求に応答できない旨の応答可否通知を受信すると、当該移動要求に伴うサービスを提供することができないと判断し、現在位置にそのまま留まる(ステップS8)。
【0047】
ここで、具体的な状況を想定して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作について説明する。
以下では、まず、図4に示すように、3階建ての建物に設置された1台のエレベータを含むエレベータシステムにおいて、1階から3階に移動したい旨の移動要求が、サービスロボット40からエレベータ制御装置30に送信された場合を想定する。なお、ここでは、診断結果情報記憶部34には、図2に示した診断結果情報34a~34dが記憶されているものとする。
【0048】
この場合、まず、エレベータ制御装置30に含まれる遠隔ドア診断結果管理部33は、出発階に相当する1階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報34bと、行先階に相当する3階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報34dとを、診断結果情報記憶部34から取得する。
【0049】
その後、遠隔ドア診断結果管理部33は、診断結果情報34bを参照して、1階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認し、かつ、診断結果情報34dを参照して、3階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認する。この場合、診断結果情報34dにより、3階の乗場ドアに異常の兆候があることが示されるため、遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40を、1階から3階までエレベータを利用して移動させることはできないと判断し、移動要求に応答できない旨の応答可否通知を、応答可否通知送信部36を介して、サービスロボット40に送信する。
【0050】
これによれば、例えば、サービスロボット40が、3階の乗場ドアに見られる異常の兆候に起因して、乗りかご20から降車することができず、当該乗りかご20内に閉じ込められてしまう事態の発生を抑止することが可能である。
【0051】
次に、図5に示すように、3階建ての建物に設置された1台のエレベータを含むエレベータシステムにおいて、1階から2階に移動したい旨の移動要求が、サービスロボット40からエレベータ制御装置30に送信された場合を想定する。なお、ここでも、図4に示した場合と同様に、診断結果情報記憶部34には、図2に示した診断結果情報34a~34dが記憶されているものとする。つまり、診断結果情報34dにより示されるように、3階の乗場ドアからは、異常の兆候が確認されているものとする。
【0052】
この場合、まず、エレベータ制御装置30に含まれる遠隔ドア診断結果管理部33は、出発階に相当する1階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報34bと、行先階に相当する2階の乗場ドアの状態を示す診断結果情報34cとを、診断結果情報記憶部34から取得する。
【0053】
その後、遠隔ドア診断結果管理部33は、診断結果情報34bを参照して、1階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認し、かつ、診断結果情報34cを参照して、2階の乗場ドアに異常の兆候があるか否かを確認する。この場合、診断結果情報34b,34cにより、1階と2階の乗場ドアの両方に異常の兆候がないことが示されるため、遠隔ドア診断結果管理部33は、サービスロボット40を、1階から2階までエレベータを利用して移動させることができると判断し、移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を、応答可否通知送信部36を介して、サービスロボット40に送信する。
【0054】
このように、3階の乗場ドアから異常の兆候が確認されている場合であっても、移動要求により示される出発階と行先階の乗場ドアに異常の兆候がなければ、サービスロボット40の乗場への取り残しや、サービスロボット40のかご内への閉じ込めは発生しないため、平常通り、サービスロボット40を出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることが可能である。つまり、乗場ドアに異常の兆候がない階床(換言すると、乗場ドアが正常に動作する階床)における、サービスロボット40による各種サービスの提供を継続することが可能である。
【0055】
なお、本実施形態においては、遠隔ドア診断結果管理部33は、移動要求により示される出発階と行先階の乗場ドアのうちの少なくとも一方に異常の兆候が見られた場合、サービスロボット40を、当該移動要求により示される出発階から行先階までエレベータを利用して移動させることができないと判断し、当該移動要求に応答できない旨の応答可否通知を送信する。しかしながら、遠隔ドア診断結果管理部33は、エレベータを利用する利用者がサービスロボット40と共に、移動要求により示される出発階から行先階まで移動する場合、当該サービスロボット40が乗りかご20に乗車できない事態や乗りかご20から降車できない事態が発生したとしても当該利用者の補助を得られる可能性が高いため、当該出発階と当該行先階の乗場ドアの異常の兆候の如何にかかわらず、サービスロボット40を、当該出発階から当該行先階までエレベータを利用して移動させることができると判断し、当該移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を送信してもよい。なお、エレベータを利用する利用者がサービスロボット40と共に移動要求により示される出発階から行先階まで移動するかは、例えば、当該移動要求が受信された時点で、当該行先階以降の階床まで移動する旨の行先階呼びが登録されているか否かに基づいて判断することが可能である。
【0056】
また、本実施形態においては、エレベータシステムが1台のエレベータを含む場合について説明したが、例えば、エレベータシステムが複数台のエレベータを含む場合、サービスロボット40は、複数台のエレベータのそれぞれに対応して設けられる複数のエレベータ制御装置30に移動要求を送信してもよい。これによれば、例えば、あるエレベータに対応する所定階床の乗場ドアに異常の兆候が見られたとしても、別のエレベータに対応する当該所定階床の乗場ドアに異常の兆候がなければ、サービスロボット40は、当該別のエレベータを利用して当該所定階床まで移動することができるため、当該所定階床における各種サービスの提供を継続することが可能である。
【0057】
ここで、サービスロボット40には、自身の周囲を撮影可能なカメラが搭載されていてもよい。この場合、サービスロボット40は、カメラにより撮影された画像に基づいて、例えば、乗りかご20の床の汚損や、乗りかご20内の照明が点灯しないこと(つまり、乗りかご20内で発生した異常)を検出し、当該検出した異常をエレベータ制御装置30に通知する機能をさらに有していてもよい。なお、エレベータ制御装置30は、サービスロボット40から上記した通知を受けた場合、当該通知を遠隔監視システム10に送信する。これによれば、遠隔ドア診断では検出することができない異常を検出することが可能であり、遠隔監視システム10の監視員は、必要に応じて、当該建物に保守員を派遣することが可能である。
【0058】
以上説明した一実施形態によれば、エレベータの乗場ドアに見られる異常の兆候に起因して、サービスロボット40が、乗りかご20に乗車できない事態の発生、あるいは、乗りかご20から降車できない事態の発生を抑止することが可能なエレベータシステムを提供することが可能である。
【0059】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10…遠隔監視システム、11…遠隔ドア診断指令部、12…遠隔ドア診断結果受信部、13…応答可否通知受信部、20…乗りかご、30…エレベータ制御装置、31…制御部、32…遠隔ドア診断指令受信部、33…遠隔ドア診断結果管理部、34…診断結果情報記憶部、35…移動要求受信部、36…応答可否通知送信部、40…サービスロボット、41…移動要求送信部、42…応答可否通知受信部、43…移動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータが停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する遠隔監視システムと、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置と、を含むエレベータシステムであって、
前記各階床のドアが正常に動作するかどうかを示す診断結果情報を記憶する記憶手段と、
前記移動体から送信される前記建物の第1の階床から第2の階床に移動したい旨の移動要求を受信する受信手段と、
前記記憶された診断結果情報を参照し、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させるか否かを判断する管理手段と、
前記管理手段による判断結果を示す応答可否通知を前記移動体に送信する送信手段と、
を備え
前記管理手段は、
前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとが共に正常に動作することが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させると判断し、
前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとのうちの少なくとも一方に異常の兆候があることが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させないと判断することを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記移動体は、
受信した応答可否通知の内容が前記移動要求に応答可能な旨を示す場合、現在位置から前記エレベータが到着する前記第1の階床の乗場まで移動し、
受信した応答可否通知の内容が前記移動要求に応答できない旨を示す場合、前記現在位置に留まることを特徴とする、
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記送信手段は、
前記応答可否通知の内容が前記移動要求に応答できない旨を示す場合、当該応答可否通知を前記遠隔監視システムにも送信し、前記遠隔監視システムの監視員に対して、前記建物への保守員の派遣を促すことを特徴とする、
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記管理手段は、前記エレベータの利用者が前記移動体と共に前記第1の階床から前記第2の階床まで移動する場合、前記記憶された診断結果情報を参照せずに、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させると判断し、
前記送信手段は、前記管理手段による判断結果に基づいて、前記移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を前記移動体に送信することを特徴とする、
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記管理手段は、前記移動要求が受信された時点で、前記第2の階床以降の階床まで移動する旨の行先階呼びが登録されていた場合、前記利用者が前記移動体と共に前記第1の階床から前記第2の階床まで移動すると判断し、前記記憶された診断結果情報を参照せずに、前記送信手段に前記移動要求に応答可能な旨の応答可否通知を前記移動体に送信させることを特徴とする、
請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記移動体は、
前記エレベータ内に異常が生じていることを検出した場合、この旨を前記エレベータ制御装置に通知することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記移動体は、
前記エレベータの床が汚損しているまたは前記エレベータの照明が点灯しないことを検出した場合、この旨を前記エレベータ制御装置に通知することを特徴とする、
請求項に記載のエレベータシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータが停止可能な階床の乗場に設置されたドアの状態を遠隔から監視する遠隔監視システムと、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置と、を含む。前記エレベータシステムは、前記各階床のドアが正常に動作するかどうかを示す診断結果情報を記憶する記憶手段と、前記移動体から送信される前記建物の第1の階床から第2の階床に移動したい旨の移動要求を受信する受信手段と、前記記憶された診断結果情報を参照し、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させるか否かを判断する管理手段と、前記管理手段による判断結果を示す応答可否通知を前記移動体に送信する送信手段と、を備える。前記管理手段は、前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとが共に正常に動作することが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させると判断し、前記記憶された診断結果情報により、前記第1の階床のドアと前記第2の階床のドアとのうちの少なくとも一方に異常の兆候があることが示される場合、前記受信された移動要求に前記エレベータを応答させないと判断する。