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特開2024-97160自動改札機、改札システム、および改札方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097160
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】自動改札機、改札システム、および改札方法
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20240710BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20240710BHJP
【FI】
G07B15/00 H
G07B15/00 501
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000476
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 尭登
【テーマコード(参考)】
3E127
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3E127AA03
3E127BA09
3E127CA02
3E127CA37
3E127DA16
3E127DA17
3E127DA20
3E127DA28
3E127DA29
3E127DA35
3E127FA10
3E127FA12
3E127FA24
3E127FA42
3E127FA43
3E127FA48
3E127FA49
3E127FA55
3E127FA56
5L049CC43
5L050CC43
(57)【要約】
【課題】表示オブジェクトが使用できない縮退状態である場合に、利用者に対してその旨を適切に案内することが可能な改札機を提供する。
【解決手段】自動改札機は、利用者が所持する媒体の表示オブジェクトに応じて媒体の改札を行う。自動改札機は、読取部と、案内部とを備える。読取部は、翳された媒体の表示オブジェクトを読み取る。案内部は、読取部で表示オブジェクトは読み取られるが、読み取られた表示オブジェクトに応じた改札は行われない縮退状態である場合、読取部に表示オブジェクトが翳された際、縮退状態であることを利用者に案内する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が所持する媒体の表示オブジェクトに応じて前記媒体の改札を行う自動改札機であって、
翳された前記媒体の前記表示オブジェクトを読み取る読取部と、
前記読取部で前記表示オブジェクトは読み取られるが、読み取られた前記表示オブジェクトに応じた前記改札は行われない縮退状態である場合、前記読取部に前記表示オブジェクトが翳された際、前記縮退状態であることを前記利用者に案内する案内部と、を備える
自動改札機。
【請求項2】
前記読取部は、前記改札が実行可能な状態で点灯し、前記縮退状態で消灯する表示灯を有し、前記表示灯の点灯有無にかかわらず、前記媒体が翳された際に当該媒体から前記表示オブジェクトを読み取る
請求項1に記載の自動改札機。
【請求項3】
前記案内部は、前記縮退状態において前記読取部で前記表示オブジェクトが読み取られた場合、前記縮退状態であることを案内する
請求項2に記載の自動改札機。
【請求項4】
前記案内部は、前記縮退状態において前記読取部で前記表示オブジェクトが読み取られた場合にメッセージを表示する表示装置、音声を発するスピーカ、点灯もしくは点滅するランプ、閉扉して前記利用者の通行を禁止する開閉扉の少なくとも一つを含む
請求項3に記載の自動改札機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動改札機と、
前記自動改札機と通信可能に接続されて前記表示オブジェクトに応じて前記利用者が所持する前記媒体の改札可否を判定し、判定結果を前記自動改札機に付与するサーバ装置と、を備える
改札システム。
【請求項6】
前記自動改札機は、前記読取部において前記媒体の前記表示オブジェクトが読取可能で前記サーバ装置と通信不能である場合、前記縮退状態に遷移する
請求項5に記載の改札システム。
【請求項7】
利用者が翳した媒体の表示オブジェクトを読取部で読み取り、読み取られた前記表示オブジェクトに応じて前記媒体の改札を行う改札方法であって、
前記表示オブジェクトを読み取るが、読み取った前記表示オブジェクトに応じた前記改札を行わない縮退状態である場合、前記読取部に前記表示オブジェクトが翳された際、前記縮退状態であることを前記利用者に案内する
改札方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動改札機、改札システム、および改札方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道やバスなどの交通機関では、磁気券やIC(Integrated Circuit)カードなどにより改札を行う自動改札機(以下、単に改札機という)を備えた改札システムが利用されている。さらに、近年では、改札機で表示オブジェクトから光学的に情報を読み取って改札を行う改札システムも登場している。表示オブジェクトは、所定の暗号鍵を用いて暗号化された情報が機械によって光学的に読み取り可能な形状、模様、色彩などに変換されたものである。例えば、バーコードや二次元コード(一例としてQRコード(登録商標))などがこれに該当する。表示オブジェクトは、例えばスマートフォンなどの電子機器の画面に表示されて、あるいは紙券などに印刷されて、改札機の読取部に翳されることで読み取られる。
【0003】
改札機においては、何らかの異常が発生した際に、あるいは意図的に一部の機能を停止させ、それ以外の機能を継続させる縮退運転がなされる場合がある。例えば、縮退運転時に表示オブジェクトを使用した改札機能が停止される場合、端的には表示オブジェクトが使用できない場合、表示オブジェクトを読み取るための読取部の表示灯が消灯し、該読取部での表示オブジェクトの読み取りが停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-352646号公報
【特許文献2】特開2018-41392号公報
【特許文献3】特開2000-182108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、利用者は、改札機に接近するまで読取部の表示灯の点灯有無を把握できず、表示オブジェクトが使用できないことを端的に識別しづらい。このため、改札機への利用者の誤進入や誤操作(翳しミス)などが生じやすい。
【0006】
本実施形態が解決しようとする課題は、表示オブジェクトが使用できない縮退状態である場合に、利用者に対してその旨を適切に案内することが可能な改札機、改札システム、および改札方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の自動改札機は、利用者が所持する媒体の表示オブジェクトに応じて前記媒体の改札を行う。前記自動改札機は、読取部と、案内部とを備える。前記読取部は、翳された前記媒体の前記表示オブジェクトを読み取る。前記案内部は、前記読取部で前記表示オブジェクトは読み取られるが、読み取られた前記表示オブジェクトに応じた前記改札は行われない縮退状態である場合、前記読取部に前記表示オブジェクトが翳された際、前記縮退状態であることを前記利用者に案内する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る改札システムのネットワーク構成を概略的に示す図。
図2】実施形態に係る改札システムの構成を概略的に示すブロック図。
図3】実施形態に係る改札システムにおいて改札機が通常状態から縮退状態へ遷移した際の制御フローの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る改札システム1のネットワーク構成を概略的に示す図である。改札システム1は、例えば鉄道事業者などによって用いられ、鉄道駅の改札口における利用者の通行(入出場)を許可または禁止する改札業務を管理する機能を有する。利用者は、鉄道を利用する旅客(乗降客)、駅構内への入出場者、駅務員、保守作業員などである。
【0010】
図1に示すように、改札システム1は、改札機10およびサーバ装置20を備える。改札機10およびサーバ装置20は、ネットワーク30を介して接続されている。接続態様は、有線、無線、その両方のいずれであっても構わない。
【0011】
改札機10は、鉄道駅の改札口などに設置され、利用者が所持する媒体40の表示オブジェクトに応じて、該媒体40の改札を行う。媒体40は、利用者が所持して表示オブジェクトを表示させることが可能な端末装置(例えばスマートフォンやタブレット端末など)や紙券などである。表示オブジェクトは、媒体40を一意に識別する識別コード(以下、識別IDという)に対応して生成されている。なお、図1においては便宜的に一台の改札機10のみが示されているが、改札システム1は、複数の改札機10を備える。これらの改札機10は、例えば複数の鉄道駅の各々に少なくとも一台設置される。
【0012】
サーバ装置20は、例えばCPU、記憶装置(不揮発メモリ)、メモリ、入出力回路、タイマなどを含んで構成される。記憶装置には、媒体40の識別IDに紐付けられた乗車情報が格納されている。乗車情報は、例えばかかる識別ID、利用者の識別情報、有効区間、有効期間、入場記録、出場記録、SF(Stored Fare)残額などに関する各種情報を含む。
【0013】
サーバ装置20は、利用者が所持する媒体40の表示オブジェクトに応じて、媒体40の改札に要する各種の処理(以下、改札処理という)を行う。改札処理は、改札業務のために実行される処理であり、例えば運賃の収受、乗車情報の更新、改札機10における利用者の通行を許可するか禁止するかの判定、およびその判定結果の改札機10への付与などを含む。乗車情報の更新時には、例えば入場記録、出場記録、SF残額などが更新される。改札処理は、例えばサーバ装置20の記憶装置に格納されたプログラムが該記憶装置からメモリに読み出されて実行される。媒体40に対する改札処理での通行可否の判定結果に応じて、改札機10では該媒体40を所持する利用者の通行が許可もしくは禁止される。
【0014】
図2は、改札システム1の構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、改札機10は、読取部11、案内部12、および制御部13を備える。これらの読取部11、案内部12、および制御部13は、筐体の適所に配置される。筐体は、改札機10の外形を規定する要素であり、例えば主たる面を六つ有する扁平の立体形状をなす。鉄道駅の改札口においては、例えば複数台の改札機10が所定間隔をあけて平行に並んで設置され、隣り合う改札機10の筐体間に利用者が通行する通路が形成される。
【0015】
読取部11は、例えば改札機10の筐体の上部に配置され、利用者が所持する媒体40の表示オブジェクトを読み取って該表示オブジェクトに対応する媒体40の識別IDを取得する。図2に示すように、読取部11は、撮像装置11aと、表示灯11bなどを備えて構成される。読取部11は、利用者が媒体40を翳すための読取面を有する。読取面は、例えばガラスや樹脂などの透明な材料で形成され、撮像装置11aの撮像範囲に対応して配置される。かかる読取面は、撮像装置11aを覆うカバーなどの表面に相当する。
【0016】
撮像装置11aは、例えば撮像レンズ、該撮像レンズが捉えた対象像を撮像する撮像素子(例えば、C-MOSエリアセンサ、CCDエリアセンサなど)、および画像処理基板などを有する。例えば、撮像装置11aは、利用者が所持するスマートフォンなどの端末装置の画面に表示された表示オブジェクト、あるいは紙券などに印刷された表示オブジェクトなどを撮像する。撮像装置11aは、撮像した表示オブジェクトから対応する媒体40の識別IDを読み取り(取得し)、サーバ装置20に付与する。また、撮像装置11aは、表示オブジェクトの画像が撮像された旨を制御部13に通知する。例えば、撮像装置11aは、表示オブジェクトの画像が撮像されたことを示す信号を制御部13に送信する。
【0017】
表示灯11bは、撮像装置11aの撮像範囲に向けて照明光を照射する照明装置である。表示灯11bが点灯することにより、読取面に翳された媒体40の表示オブジェクトが照明光で照らされる。表示灯11bは、例えば改札機10がサーバ装置20とネットワーク30を介して適切に接続されている状態で点灯する。かかる適切に接続されている状態とは、改札機10において媒体40の表示オブジェクトを使用した改札が実行可能な状態、端的には表示オブジェクトを有する媒体40が使用可能な状態である。これに対し、表示灯11bは、改札機10が後述する縮退状態であれば消灯する。
【0018】
ただし、表示灯11bが消灯した状態であっても、撮像装置11aでの表示オブジェクトの撮像は可能である。この場合、表示灯11bが点灯した状態と比べて撮像精度は低下するが、撮像装置11aで表示オブジェクトが撮像されたか否かに応じて、読取部11の読取面に媒体40が翳されたか否かを判定することは可能である。換言すれば、読取部11は、表示灯11bの点灯有無にかかわらず、媒体40が読取面に翳された際に該媒体40から表示オブジェクトを読み取ることが可能である。
【0019】
縮退状態は、改札機10の稼働状態の一つであり、改札機10の機能の一部が停止し、それ以外の機能は停止せずに継続されている稼働状態である。本実施形態の縮退状態は、利用者が読取部11に媒体40の表示オブジェクトを翳した際、読取部11で該表示オブジェクトは読み取られるが、読み取られた表示オブジェクトに応じた改札は行われない状態である。端的には、表示オブジェクトを有する媒体40が使用できない状態が縮退状態である。したがって、縮退状態では、媒体40の表示オブジェクトを使用した改札は停止される。
【0020】
なお、改札機10は、媒体40の表示オブジェクトを読み取る読取部(第1の読取部)11に加えて、該媒体40とは別の媒体、例えば乗車情報が記録されたICカードや磁気券(磁気方式の乗車券)から該乗車情報を読み取る読取部(第2の読取部や第3の読取部)を備えていてもよい。この場合、縮退状態であっても、例えば第2の読取部でICカード、第3の読取部で磁気券から読み取られた各々の乗車情報に応じた改札を継続させることは可能である。すなわち、改札機10は、表示オブジェクトを有する媒体専用の改札機でなくともよい。
【0021】
案内部12は、改札機10が縮退状態である場合、読取部11に媒体40が翳された際、縮退状態であることを利用者に案内する。上述したとおり、縮退状態においては、媒体40の表示オブジェクトを使用した改札は停止されている。したがって、案内部12は、縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された際、該表示オブジェクトを使用した改札が停止されていること、つまり該媒体40が使用できないことを案内し、利用者に周知させる。
【0022】
案内部12は、例えばかかる縮退状態を案内するための機能のみを備えていてもよいが、その他の機能を兼ねていてもよい。本実施形態では一例として、案内部12は、改札機10が備える既存の機能を兼ねた複数の装置である場合を想定する。専用であるか兼用であるかを問わず、案内部12としての機能を果たす装置は、改札機10に少なくとも一つ備えられていればよい。
【0023】
図2に示す例において、改札機10は、表示装置14、スピーカ15、ランプ16、および開閉扉17を備えている。本実施形態においては、これらのうちの少なくとも一つが案内部12として機能する。例えば、縮退状態において読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、より具体的には読取部11で該表示オブジェクトが読み取られた場合、表示装置14はメッセージを表示する。同様の場合において、スピーカ15は音声を発し、ランプ16は点灯もしくは点滅し、開閉扉17は閉扉して利用者の通行を禁止する。
【0024】
表示装置14は、液晶パネルや複数の点光源を有する電光表示板(電光表示パネル)、これらを制御する制御基板などを備え、縮退状態であることを含む各種の情報を表示して利用者に案内する出力装置である。したがって、表示装置14には、縮退状態であることの他、例えば改札処理の実行結果、改札機10が規定する通路への進入可否などが表示される。縮退状態において読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、表示装置14には、例えば媒体40の表示オブジェクト、端的には表示オブジェクトを有する媒体40が使用できない旨のメッセージやその旨を示す記号(アイコン)などが表示される。かかるメッセージの表示態様は、利用者に一目で注意喚起させやすい態様、例えば赤色表示や点滅表示などであればよい。
【0025】
表示装置14は、改札機10において利用者が視認しやすい箇所に配置される。例えば、読取部11の近傍や改札機10が規定する通路入口側の筐体端面部などに配置される。配置される表示装置14の数は限定されず、一つであっても複数であってもよい。例えば、読取部11の近傍や上記筐体端面部にそれぞれ表示装置14を配置することが可能である。縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、読取部11の近傍の表示装置14には、表示オブジェクトを有する媒体40が使用できない旨のメッセージ、例えば「現在、表示オブジェクトは使用できません」などのメッセージが表示されればよい。また、前記筐体端面部の表示装置14には、例えば進入禁止を示す標識などが表示されればよい。縮退状態以外の状態において、例えば読取部11の近傍の表示装置14には媒体40の読取結果、前記筐体端面部の表示装置14には通路への進入可否などがそれぞれ表示可能である。
【0026】
スピーカ15は、縮退状態であることを含む各種の情報を音声で利用者に案内する出力装置である。ここでの音声は、音声メッセージや案内音(警告音)など、聴覚により聞き分け可能な音からなるものである。縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、スピーカ15は、例えば表示オブジェクトを有する媒体40が使用できない旨の音声メッセージや案内音(警告音)などを発する。縮退状態以外の状態において、スピーカ15は、例えば改札処理の実行結果、改札機10が規定する通路への進入可否などを音声出力することが可能である。
【0027】
スピーカ15は、改札機10において利用者が聞き取りやすい箇所に配置される。例えば、改札機10の筐体上面部や通路入口側端面部など、表示装置14の近傍に配置される。配置されるスピーカ15の数は限定されず、一つであっても複数であってもよい。スピーカ15が複数配置される場合、縮退状態において、例えば一部のスピーカ15は表示オブジェクトを有する媒体40が使用できない旨の音声メッセージを発し、それ以外のスピーカ15はその旨の案内音(警告音)を発すればよい。音声メッセージとしては、例えば表示装置14に表示される「現在、表示オブジェクトは使用できません」などのメッセージが読み上げ可能である。
【0028】
ランプ16は、縮退状態であることを含む各種の情報を光で利用者に案内する出力装置(発光装置)である。縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、ランプ16は、例えば表示オブジェクトを有する媒体40が使用できないことを示す光を発する。ランプ16の発光態様は、利用者に一目で注意喚起しやすい態様、例えば赤色での点灯や点滅などであればよい。縮退状態以外の状態において、ランプ16は、例えば改札処理の実行結果、改札機10が規定する通路への進入可否などを光で出力することが可能である。
【0029】
ランプ16は、改札機10において利用者が視認しやすい箇所に配置される。例えば、表示装置14の近傍や改札機10のポール部などに配置される。配置されるランプ16の数は限定されず、一つであっても複数であってもよい。ランプ16が複数配置される場合、縮退状態における各々のランプ16の発光態様は一致していても異なっていてもよい。
【0030】
開閉扉17は、改札機10の筐体の側面部に配置され、筐体に対して回動可能に支持されて開閉することで、通路における利用者の通行を規制する。筐体の側面部は、該筐体が形成する通路に沿って該通路に臨む面部である。開閉扉17は、例えば筐体における通路の入口側に配置された入口開閉扉17aと、出口側に配置された出口開閉扉17bを含む。入口開閉扉17aは、利用者が通路に進入可能な開扉状態と進入不可能な閉扉状態のいずれかとなる。すなわち、入口開閉扉17aは、通路の入口より先への利用者の進入を規制する。出口開閉扉17bは、利用者が通路から退出可能な開扉状態と退出不可能な閉扉状態のいずれかとなる。すなわち、出口開閉扉17bは、入口開閉扉17aを通過した利用者の通路の出口からの退出を規制する。
【0031】
縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、例えば入口開閉扉17aは、閉扉して通路の入口より先への利用者の進入を禁止する。これにより、表示オブジェクトを有する媒体40が使用できないことが利用者に対して周知される。またこの場合、例えば出口開閉扉17bが閉扉し、通路の出口からの利用者の退出を禁止することも可能である。
【0032】
制御部13は、例えばCPU、記憶装置(不揮発メモリ)、メモリ、入出力回路、タイマなどを含んで構成され、改札機10において媒体40の改札を行う。改札にあたって、制御部13は、ネットワーク30を介したサーバ装置20との間の通信を制御するとともに、読取部11および案内部12の動作を制御する。
【0033】
図2に示す例において、制御部13は、通信制御部13a、読取制御部13b、および案内制御部13cを有している。通信制御部13a、読取制御部13b、および案内制御部13cは、例えばプログラムとして制御部13の記憶装置に記憶されており、該記憶装置からメモリに読み出されて実行される。
【0034】
通信制御部13aは、ネットワーク30を介したサーバ装置20との間のデータ通信を制御する。サーバ装置20は、例えば通信制御部13aとのデータ通信を行う通信モジュールを備える。読取制御部13bは、読取部11の動作を制御し、該読取部11に翳された媒体40の表示オブジェクトを読み取らせる。案内制御部13cは、案内部12である表示装置14、スピーカ15、ランプ16、および開閉扉17の動作をそれぞれ制御する。
【0035】
以上のような構成を備えた改札システム1において、改札機10が通常の稼働状態から縮退状態に遷移した際の該改札機10の動作について、制御部13の制御フローに従って説明する。改札機10の通常の稼働状態(以下、通常状態という)は、本実施形態における縮退状態以外の状態、例えば媒体40の表示オブジェクトを使用した改札が可能な状態である。通常状態には、例えば媒体40の表示オブジェクトに加えてICカードや磁気券などの媒体を使用した改札が可能な状態も含まれる。
【0036】
図3は、通常状態から縮退状態へ遷移した際の制御部13の制御フローの一例である。図3に示すように、制御部13は、改札機10が通常状態であるか否かを判定する(S101)。判定にあたって、制御部13は、例えばサーバ装置20との間で通信異常が発生していないか、一例として読取部11が媒体40の表示オブジェクトを読み取って取得した識別IDをサーバ装置20に正常に送信可能であるか否かを判定する。この場合、例えば識別IDをサーバ装置20に送信し、所定時間内にサーバ装置20から受信信号を受信した場合、制御部13は、サーバ装置20に識別IDを正常に送信可能な通常状態であると判定する。一方、例えば識別IDをサーバ装置20に送信できない場合、あるいは識別IDをサーバ装置20に送信し、所定時間内にサーバ装置20から受信信号を受信しない場合、制御部13は通常状態でないと判定する。
【0037】
通常状態であると判定した場合(S101においてYes)、制御部13は、読取部11を動作制御し、表示灯11bを点灯させる(S102)。通常状態においては、改札機10において媒体40の表示オブジェクトを使用した改札が可能な状態、つまり表示オブジェクトを有する媒体40が使用可能な状態となっている。したがって、表示灯11bを点灯させることで、かかる改札が可能であること、つまり表オブジェクトを有する媒体40が使用可能であることが利用者に周知される。
【0038】
このように表示灯11bが点灯された状態においては、利用者が読取部11に媒体40の表示オブジェクトを翳すと、改札処理が実行される。すなわち、読取部11で該表示オブジェクトが読み取られて、識別IDが取得される。取得された識別IDは、サーバ装置20に付与される。サーバ装置20においては、付与された識別IDに紐付けられた乗車情報に応じて、改札機10の通路を利用者が通行可能か否か、つまり改札可否を判定する。サーバ装置20は、例えばかかる乗車情報に含まれる有効区間、有効期間、入場記録、出場記録などに基づいて通行可否(改札許否)を判定する。そして、サーバ装置20は、判定結果を制御部13に付与する。
【0039】
通行可能(改札許可)であることの判定結果が付与された場合、制御部13は、例えば入口開閉扉17aを開扉して改札機10が規定する通路の入口からの利用者の進入を許可し、出口開閉扉17bを開扉して該通路の出口からの利用者の退出を許可する。また、サーバ装置20は、付与された識別IDに紐付けられた乗車情報を更新する。例えば乗車情報の入場記録や出場記録、SF残額などを更新する。一方、通行不可能(改札不許可)であることの判定結果が付与された場合、制御部13は、例えば入口開閉扉17aを閉扉して改札機10が規定する通路の入口からの利用者の進入を禁止し、出口開閉扉17bを閉扉して該通路の出口からの利用者の退出を禁止する。この場合、サーバ装置20は、付与された識別IDに紐付けられた乗車情報を更新しない。
【0040】
これに対し、通常状態でないと判定した場合(S101においてNo)、制御部13は、改札機10を縮退状態に遷移させる。ここでは、読取部11を動作制御し、表示灯11bを消灯させる(S103)。本実施形態においては、上述したとおり、表示灯11bが消灯した縮退状態であっても、読取部11は媒体40の表示オブジェクトを読み取ることが可能である。すなわち、読取部11の撮像装置11aにおいて媒体40の表示オブジェクトの撮像は可能であり、該読取部11に媒体40が翳されたか否かを判定可能とされている。
【0041】
したがって、制御部13は、表示灯11bを消灯させる(S103)とともに、媒体40が翳された際に該媒体40の表示オブジェクトを読み取ることが可能な状態に読取部11の動作を継続させる(S104)。その際、制御部13は、例えば表示灯11bの点灯有無にかかわらず、媒体40が翳された際には該媒体40の表示オブジェクトを読み取る旨の動作指示を読取部11に与える。
【0042】
かかる縮退状態に遷移されると、改札機10においては、読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されたか否かが判定される(S105)。例えば、撮像装置11aから表示オブジェクトの画像が撮像された旨が制御部13に通知されたか否かが判定される。その際、制御部13は、表示オブジェクトの画像が撮像されたことを示す信号を撮像装置11aから受信したか否かを判定する。かかる信号を受信した場合、制御部13は、読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されたと判定する。一方、かかる信号を受信するまでの間、制御部13は、読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されていないと判定する。
【0043】
読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されていないと判定された場合(S105においてNo)、改札機10においては、媒体40の表示オブジェクトが翳されたか否かの判定が適宜繰り返される(S105)。例えば、制御部13は、表示オブジェクトの画像が撮像されたことを示す信号を撮像装置11aから受信したか否かを繰り返し判定する。
【0044】
これに対し、読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されたと判定された場合(S105においてYes)、改札機10において、縮退状態であることが利用者に案内される(S106)。その際、制御部13は、案内部12を動作させて、利用者に対して改札機10が縮退状態であることを案内する。これにより、改札機10において媒体40の表示オブジェクトを使用した改札が停止していること、端的には表示オブジェクトを有する媒体40は使用できないことが利用者に案内される。
【0045】
かかる案内時、制御部13は、読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳されたことをトリガーとして、案内部12、具体的には表示装置14,スピーカ15,ランプ16、および開閉扉17のうち、少なくとも一つを動作させる。制御部13は、例えば表示装置14へのメッセージの表示、スピーカ15からの音声出力、ランプ16の点灯もしくは点滅、開閉扉17の閉扉のいずれか、あるいはこれらの一部もしくは全部を組み合わせて案内を行う。これにより、表示オブジェクトを有する媒体40は使用できないことが利用者に案内され、該利用者を改札機10の通路から一旦後退させることが可能となる。かかる利用者は、例えば該改札機10でICカードや磁気券などの別媒体を使用して、あるいは別の改札機10で媒体40の表示オブジェクトを使用して、再度改札を受けることができる。
【0046】
案内部12に所定の案内をさせた後、制御部13は、改札機10が通常状態であるか否か、ここでは通常状態に復帰したか否かを判定する(S101)。そして、判定結果に応じて以降の処理(S102~S106)を選択的に繰り返す。
【0047】
このように本実施形態によれば、改札機10が縮退状態である場合、利用者に対してその旨を案内部12によって案内することができる。すなわち、縮退状態で読取部11に媒体40の表示オブジェクトが翳された場合、該媒体40の表示オブジェクトを使用した改札が停止されていること、端的には表示オブジェクトを有する媒体40が使用できないことを利用者に適切に案内できる。例えば、表示装置14にメッセージが表示されること、スピーカ15から音声が出力されること、ランプ16が点灯もしくは点滅すること、開閉扉17が閉扉することなどにより、表示オブジェクトを有する媒体40が使用できないことを利用者に案内できる。したがって、その旨を視覚や聴覚などにより利用者に案内することが可能となり、利用者に対する注意喚起の精度を高めることができる。結果として、改札機10の通路への誤進入や読取部11への誤操作(媒体40の翳しミス)などを抑制できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…改札システム、10…改札機(自動改札機)、11…読取部、11a…撮像装置、11b…表示灯、12…案内部、13…制御部、14…表示装置、15…スピーカ、16…ランプ、17…開閉扉、17a…入口開閉扉、17b…出口開閉扉、20…サーバ装置、30…ネットワーク、40…媒体。
図1
図2
図3